説明

製造法

改質粒状固体の製造法であって、粒状固体及び液状媒体の存在下で分散剤と化合物とを反応させることを含み、a)前記分散剤は、ケト、アルデヒド及びベータ−ジケトエステル基から選ばれる少なくとも1個の反応性基を有し;b)前記化合物は、前記ケト、アルデヒド及び/又はベータ−ジケトエステル基に対して反応性を有する少なくとも2個の基を有することを特徴とする製造法。該製造法は改良された安定性を有する改質粒状固体を提供する。該改質粒状固体は、様々な極性を有する液体ビヒクル及びインクジェット印刷用インクへの配合に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質粒状固体(例えば封入粒状固体)の製造法、及びそのような改質固体のインク、特にインクジェット印刷用インクにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インク、ミルベース(mill-bases)、塗料などの多くは、粒状固体を液体ビヒクル中に均一に分配させるための有効な分散剤を必要とする。液体ビヒクルは高度に極性の液体(例えば水)から高度に非極性の液体(例えばトルエン)まで様々でありうる。公知の分散剤は、ある範囲内の極性の液体ビヒクルに対してしか有効に働かない傾向がある。そのような極性の範囲外では粒状固体は通常凝集する。従って、異なる極性の液状媒体用に各種の分散剤が開発されてきた。
【0003】
従来の分散剤は、より強力な吸着材料によって粒状固体の表面から容易に追い出されうるので、その結果、分散の不安定化及び凝集を招く可能性がある欠点を有している。
従来の分散剤に付随する問題は、粒状固体を改質することによって、例えば粒状固体を架橋分散剤の中に封入する(encapsulate)ことにより、ある程度対処することが可能である。粒状固体を架橋可能な分散剤で封入する方法は典型的には液状媒体中で実施される。架橋可能な分散剤を、液状媒体中に分配させた粒状固体と混合すると、分散剤は粒状固体の表面に吸着する。次いで分散剤は、架橋剤を利用してその架橋可能基によって架橋できるので、分散剤を粒状固体の表面に“固定”することができる。そのような手法は、米国特許第6,262,152号、WO00/20520、JP1997−104834(特開平9−104834号公報)、JP1999−152424(特開平11−152424号公報)及びEP732,381に記載されている。我々はそうした封入法には欠陥があることを見出した。例えば、米国特許第6,262,152号及びWO00/20520に記載されている架橋化学は、架橋剤中のイソシアネート基と分散剤中のヒドロキシ基との間の反応を伴う。疎水性の架橋剤が米国特許第6,262,152号及びWO00/20520に開示されているが、そのような架橋剤は液状媒体中に分散しにくく、結果として相当程度の凝集と粒状固体の粒径の増加をもたらすことが分かった。JP1997−104834には酸析と再分散工程が記載されている。該工程は典型的にはメラミン架橋を利用するものである。JP1997−104834には架橋反応物質を硬化(cure)させるのに必要な約95℃の過酷な硬化条件と強酸触媒との組合せも記載されている。JP1999−152424にも同様の酸析と再分散が記載されている。そこでは硬化をもたらすために140℃という更に過酷な硬化温度が典型的には使用されている。我々は、このような過酷な温度や強酸触媒の使用は顔料分散液の凝集を招く結果になりやすいことを見出した。
【0004】
EP732,381には反応性架橋系としてイソシアネート架橋剤、アミン架橋剤及びヒドロキシプレポリマー分散剤が記載されている。該反応は典型的には約80℃の温度を必要とする。分散剤を溶解するのに分散工程で溶媒が必要となる。この溶媒はその後最終生成物から除去されるのが普通である。これらの熱条件及び溶媒の存在も粒状固体の凝集を生じさせる結果になりやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改質粒状固体の製造法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
該製造法は、粒状固体及び液状媒体の存在下で分散剤と化合物とを反応させることを含み、
a)前記分散剤は、ケト、アルデヒド及びベータ−ジケトエステル基から選ばれる少なくとも1個の反応性基を有し、
b)前記化合物は、前記ケト、アルデヒド及び/又はベータ−ジケトエステル基に対して反応性を有する少なくとも2個の基を有する
ことを特徴とする。
【0007】
好ましくは前記改質粒状固体は封入粒状固体である。
好ましくは前記化合物は架橋剤である。すべての態様で厳密に必要というわけではないが、前記化合物は実際分散剤を架橋するのが好ましい。これらの状況下で、前記粒状固体は好ましくは架橋分散剤内に封入されることによって改質される。そこで、該製造法の好適な態様において、
(i)該製造法によって製造された前記改質粒状固体は封入粒状固体であり;
(ii)前記分散剤は、ケト、アルデヒド及びベータ−ジケトエステル基から選ばれる少なくとも1個の架橋可能基を有する分散剤であり;
(iii)前記化合物は、前記架橋可能基に対して反応性を有する少なくとも2個の架橋基を有する架橋剤であり;そして
(iv)反応は、分散剤を架橋剤と架橋させ、それによって粒状固体を架橋分散剤内に封入することを含む。
【0008】
従って、本発明による好適な製造法は、粒状固体及び液状媒体の存在下で分散剤と架橋剤とを架橋させ、それによって粒状固体を架橋分散剤内に封入することを含み、
a)前記分散剤は、ケト、アルデヒド及びベータ−ジケトエステル基から選ばれる少なくとも1個の架橋可能基を有し、
b)前記架橋剤は、前記架橋可能基に対して反応性を有する少なくとも2個の架橋基を有する
ことを特徴とする封入粒状固体の製造法、と要約することができる。
【0009】
前記粒状固体は、液状媒体に不溶性の任意の無機又は有機粒状固体材料又はその混合物でありうる。好ましくは前記粒状固体は着色剤、さらに好ましくは顔料である。
適切な粒状固体の例は、塗料及びプラスチック材料用の無機及び有機顔料、エキステンダー、フィラー;液状媒体中の分散染料及び水溶性染料(前記液状媒体は前記染料を溶解しない);蛍光増白剤;溶剤染色浴、インク及びその他の溶剤使用系用の織物用助剤;オイルベース及び逆エマルジョン掘削泥水用固体;粒状セラミック材料;及び磁性粒子(例えば磁気記録媒体用)、殺生物剤;農薬;及び医薬である。
【0010】
好適な粒状固体は有機顔料で、例えば、カラーインデックス第3版(Third Edition of the Colour Index)(1971)及びその改訂版並びに補遺版の“顔料(Pigments)”の見出しの章に記載されている任意のクラスの顔料である。有機顔料の例は、アゾ(ジアゾ及び縮合アゾを含む)由来のもの、チオインディゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン、アントラキノン、イソジベンザントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドン及びフタロシアニン系、特に銅フタロシアニン及びその核ハロゲン化誘導体、さらに酸性、塩基性及び媒染染料のレーキなどである。カーボンブラックは無機顔料とみなされることが多いが、その分散特性においては有機顔料のような挙動を示すので、適切な粒状固体の別の例である。好適な有機顔料は、フタロシアニン、特に銅フタロシアニン顔料、アゾ顔料及びインダントロン、アンタントロン、キナクリドン及びカーボンブラック顔料である。
【0011】
好適な無機粒状固体は、エキステンダー及びフィラー、例えばタルク、カオリン、シリカ、バライト及びチョーク;粒状セラミック材料、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合窒化ケイ素−アルミニウム及び金属チタン酸塩;粒状磁気材料、例えば遷移金属、特に鉄及びクロムの磁性酸化物、例えばガンマ−Fe、Fe、及びコバルトをドープした酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライト;並びに金属粒子、特に金属鉄、ニッケル、コバルト及びそれらの合金などである。
【0012】
本発明の製造法を用いてインクジェットインクに使用する改質粒状固体を製造する場合、顔料は好ましくはシアン、マゼンタ、イエロー又はブラック顔料である。
液状媒体は非極性であってよいが、好ましくは極性である。“極性”液体は、例えば、Journal of Paint Technology,Vol.38,1966,269ページのCrowleyらによる論文“溶解度に対する三次元的アプローチ(A Three Dimensional Approach to Solubility)”に記載のように、一般的に中等度〜強度の水素結合が可能である。極性液状媒体は、上記論文で定義されているように、一般的に5以上の水素結合数を有する。
【0013】
適切な極性液状媒体の例は、エーテル、グリコール、アルコール、アミド及び特に水などである。極性液状媒体の多数の具体例が、Ibert Mellan著の書籍“相溶性及び溶解性(Compatibility and Solubility)”(Noyes Development Corporationより1968年に出版)の39〜40ページの表2.14(引用によって本明細書に援用する)に掲出されている。
【0014】
好適な極性液状媒体はアルカノール、特に合計6個以下の炭素原子を含有するような液体である。好適な極性液状媒体の例として、グリコール並びにグリコールエステル及びエーテル、例えばエチレングリコール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロピルプロパノール、3−エトキシプロピルプロパノール;アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びイソブタノール;環状エーテル及びアミド、特に環状アミド、例えばピロリドン及びn−メチルピロリドン;さらに特に水:並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0015】
極性液状媒体は所望によりポリオールである。すなわち、2個以上のヒドロキシ基を有する液体ということである。好適なポリオールは、グリセロール、アルファ−オメガジオール、特にアルファ−オメガジオールエトキシレートなどである。
【0016】
好ましくは液状媒体は水を含む。なぜならば、その方が、特に安定で微細な改質粒状固体が得られやすいからである。好ましくは液状媒体は、1〜100%、さらに好ましくは10〜100%、特に20〜90%、さらに特に30〜80重量%の水を含む。
【0017】
好適な非極性液状媒体は、非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えばトルエン及びキシレン);ハロゲン化芳香族炭化水素(例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びクロロトルエン):非ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば6個以上の炭素原子を含有する直鎖及び分枝鎖脂肪族炭化水素、完全及び部分飽和のものを含む)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えばジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン);天然非極性液体(例えば植物油、ヒマワリ油、アマニ油、テルペン及び脂肪グリセリド);並びにそれらの組合せなどである。
【0018】
液状媒体は、極性又は非極性液体でありうる液体の混合物を含んでいてもよい。好ましくは液状媒体の少なくとも一つの成分は極性液体、さらに好ましくは液状媒体の全成分が極性液体である。
【0019】
好ましくは、液状媒体は分散剤又は化合物に対して非反応性である。好ましくは、液状媒体は化合物(例えば架橋剤)又は分散剤のいずれかに対して非反応性である。従って、液状媒体は、アミン、イミン、チオール、(メタ)アクリレート、活性化オレフィン、ヒドラジド、ケト、アルデヒド又はベータ−ジケトエステル基を有する成分を含まない。アミン基の場合、第三級又は立体的に込み合ったアミン基は、本質的に非反応性基なので液状媒体中に存在してもよい。
【0020】
好ましくは分散剤はポリマー、例えばポリウレタン、ポリエステル又はさらに好ましくはポリビニル分散剤である。分散剤は異なるポリマータイプの組合せであってよい。分散剤は、少なくとも1個、さらに好ましくは少なくとも2個、特に少なくとも4個の反応性ケト、アルデヒド及び/又はベータ−ジケトエステル基を持たねばならない。少なくとも2個の反応性基を有する分散剤は、1個しか反応性基を持たないものと比べてより高い反応能力を示す傾向にある。反応性基は好ましくは架橋可能基である。好ましくは、反応性基はベータ−ジケトエステル基である。なぜならば、この基によって特に効果的な反応がもたらされる上に、この基は特に低い反応温度(例えば60℃未満)の使用を容易にするからである。
【0021】
上記反応性基は、好ましくは、少なくとも1個のケト、アルデヒド又はベータ−ジケトエステル基を含有するモノマーのコポリマー化によって分散剤に組み込まれる。ポリビニル分散剤の場合、少なくとも1個のケト、アルデヒド又はベータ−ジケトエステル基を含有する好適なモノマーは、アクロレイン、メチルビニルケトン又は、さらに好ましくは、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチルメタクリレート又は2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレート、又は特に好ましくは、アセトアセトキシエチルメタクリレート及びさらに特に好ましくはジアセトンアクリルアミドである。従って、好適なポリビニル分散剤は、少なくとも1個のそのようなモノマー残基を含む。
【0022】
少なくとも1個のベータ−ジケトエステル基を含有するモノマーは、当該技術分野で公知の方法、例えば“アセトアセチル化被覆用樹脂の製造法の比較(Comparison of Methods for the Preparation of Acetoacetylated Coating Resins)”,Witzeman,J.S.ら、Journal of Coating Technology,Vol 62,1990,101ページ〜(引用によって本明細書に援用する)に記載の方法によって製造できる。
【0023】
少なくとも1個のベータ−ジケトエステル基を含有するポリエステルは、1個以上の第一級ヒドロキシ基を有するポリエステルを適切なクロロ、ブロモ又はヨード−アルキルアセトアセテート又はジケテンと反応させることによって製造できる。
【0024】
少なくとも1個のベータ−ジケトエステル基を含有するポリウレタンは、上記ポリエステルと類似の方法で、ポリウレタン中の1個以上の第一級ヒドロキシ基を用いて製造できる。このような官能基化経路は、例えば、J.Coating Technology 62,(789),101,(1990)のような文献で公知である。あるいは、ケト及びアルデヒド基は、カルボン酸の還元によって又はアルコールの酸化によって容易に製造できる。
【0025】
前述のように、本発明の好適な態様において液状媒体は水を含む。水を含む液体組成物中での分散剤の製造及び/又は分散剤の貯蔵も望ましいことが多い。
少なくとも1個のベータ−ジケトエステル反応性基を有する分散剤を用いることの一つの潜在的欠点は、そのような基が水中、特に高温及びある種の塩基(例えばKOH及びNaOH)の存在下で加水分解されやすいことである。この加水分解反応は、分散剤からベータ−ジケトエステル反応性基を効果的に徐々に切断するので、本発明の製造法に従って反応し粒状固体を改質する分散剤の能力を減退させる。完全に加水分解されると、分散剤が反応し粒状固体を改質することができなくなる可能性がある。
【0026】
例を挙げると、アセトアセトキシ基を有する分散剤の加水分解は、まずアセト酢酸とヒドロキシ官能分散剤を生成する。アセト酢酸はその後分解してアセトンと二酸化炭素になる。
【0027】
従って、分散剤が少なくとも1個のベータ−ジケトエステル反応性基を有し、液状媒体が水である又は水を含む場合、分散剤は、分散剤を液状媒体と接触させた後24時間以内、さらに好ましくは12時間以内、特に8時間以内に化合物と反応させるのが好ましい。また、ベータ−ジケトエステル反応性基を有する分散剤が水を含む組成物の形態で貯蔵される場合、貯蔵温度は35℃を超えてはならず、且つ/又は該組成物は水酸化金属塩基を含んではならない。
【0028】
我々はまた、分散剤中のベータ−ジケトエステル反応性基の好ましくない加水分解の問題は、そのような基の保護、すなわち該ベータ−ジケトエステルを一官能価アミンで可逆的にキャッピングして少なくとも1個のエナミン/ケチミン基を有する分散剤を形成させることによって大幅に減少させることができることを見出した。当業者であればエナミンとケチミン基は互いに互変異性体であることは分かるであろう。これらの互変異性体は互いに動的平衡状態にある。ベータ−ジケトエステル基を有する分散剤を一官能価アミンでキャップした場合、生成物は概してベータ−ジケトエステルとエナミン/ケチミン基を有する分散剤分子の混合物となる(エナミン/ケチミン基が優勢)。この混合物は動的であり、ベータ−ジケトエステル基とエナミン/ケチミン基は絶えず互換している。
【0029】
【化1】

【0030】
上記平衡混合物においてベータ−ジケトエステル基を有する分散剤と化合物との次なる反応は、平衡を左に引っ張るので(上に示すとおり)、エナミン/ケチミン基を有する分散剤の一部はベータ−ジケトエステル基を有する分散剤に変換される。この過程はエナミン/ケチミン基がベータ−ジケトエステル基に変換されるにつれて続き、ベータ−ジケトエステル基は次に該化合物と反応して粒状固体を改質する。
【0031】
上記観点から、液状媒体は、ベータ−ジケトエステル基に変換可能な少なくとも1個のエナミン/ケチミン基を有する分散剤をさらに含むのが好適である。
好ましくは、少なくとも1個のエナミン/ケチミン基を有する分散剤は、少なくとも1個のベータ−ジケトエステル基を有する分散剤を一官能価アミンと反応させることによって得られる又は得られうる。アミンに関する一官能価という用語は、アミンが1分子あたり1個しかアミン基を持たないことを意味する。しかしながら、一官能価アミンは所望により、例えばヒドロキシル、カルボキシル又はポリアルキレンオキシド基のようなその他の官能基を1個以上有していてもよい。ただし、これらの任意の基は化合物又は分散剤と反応しないことが条件である。
【0032】
好ましくは、一官能価アミンは第一級アミンである。好ましくは、該第一級アミンは、所望により置換されていてもよいアルキルアミン、さらに特に所望により置換されていてもよいC1−10アルキル第一級アミン(直鎖でも分枝でもよい)である。任意の置換基は、好ましくは、ハロゲン(例えばCl、I、Br及びF)、ニトリル、ニトロ、スルフェート、ホスフェート、ポリアルキレンオキシド、カルボキシ、エステル、アミド、エーテル及び特にヒドロキシから選ばれる。
【0033】
好ましくは、一官能価アミン中の第一級アミノ基は立体的に込み合っていない(例えば、一官能価アミンはアリールアミン又はt−ブチルアミンでない)。なぜならば、そうであるとエナミン/ケチミンの形成が妨害されるからである。好適な一官能価アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、アミノメチルプロパノール、イソ−アミルアミン、イソプロピルアミン及び特にアンモニアである。アンモニアを一官能価アミンとして使用すると、改質工程中にアンモニアを揮発性ガスとして実質的に除去でき、その結果反応及び改質がスピードアップされるので特に好ましい。
【0034】
分散剤中のベータ−ジケトエステル基の量との関連で使用される一官能価アミンの量は著しく変動しうるが、一官能価アミンを分散剤中のベータ−ジケトエステル基の量に対して化学量論的に等価な量以上で使用するのが好適である。一官能価アミンを少なくとも1個のベータ−ジケトエステル基を有する分散剤に加える好適な方法は、pH7〜11、特に好ましくは9〜10の達成及び安定化ができるように、十分な一官能価アミンを分散剤と水とを含む組成物に加えることである。
【0035】
ポリビニル分散剤の場合、ジアセトンアクリルアミドが、良好な反応性を有する反応性ケト基を提供する。該ケト基は前述の加水分解反応を受けることもない。
好ましくは、少なくとも1個のケト、アルデヒド又はベータ−ジケトエステル基を含有するモノマーは、分散剤を製造するのに使用されるすべてのモノマーを基にして80〜0.1モル%、さらに好ましくは70〜5モル%、特に70〜10モル%の割合で配合される。
【0036】
好ましくはポリマー分散剤は親水性及び疎水性モノマーの両方を含む。
ポリマー分散剤は、好ましくはランダムポリマー又は交互(統計的に短いブロック又はセグメントを有する)ポリマーであるが、ブロック又はグラフト(より長いブロック又はセグメントを有する)ポリマーであってもよい。ポリマー分散剤は枝分かれしていても星形でもよいが、好ましくは線形である。ポリマー分散剤は2個以上のセグメントを有していてもよい。好ましくはポリマー分散剤はランダムポリマーである。
【0037】
分散剤が2個以上のセグメントを有する態様においては、互いに対して少なくとも1個のセグメントが疎水性であり、少なくとも1個のセグメントが親水性であるのが好適である。親水性及び疎水性セグメントを製造するための好適な方法は、それぞれ親水性及び疎水性モノマーの重合による。分散剤が少なくとも1個の親水性セグメント及び少なくとも1個の疎水性セグメントを有する場合、反応性基は疎水性セグメント中、親水性セグメント中又はその両方に位置することができる。
【0038】
親水性モノマーは、イオン性又は非イオン性基でありうる親水基を含むモノマーである。イオン性基はカチオン性であってもよいが、好ましくはアニオン性である。カチオン性及びアニオン性基の両方を用いれば両性安定化が得られる。好適なアニオン性基は、フェノキシ、カルボン酸、スルホン酸及びリン酸基である。これらは遊離酸の形態でも塩の形態でもよい。好適な塩形は、アンモニウム、置換アンモニウム、第四級アンモニウム、ナトリウム、リチウム及びカリウムの各塩である。
【0039】
好適なカチオン性基は、置換アンモニウム、第四級アンモニウム、ベンザルコニウム、グアニジン、ビグアニジン及びピリジニウムである。これらは、遊離塩基の形態、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物のような塩の形態、又は例えばハロゲン化アルキル又は硫酸ジメチルを用いて形成される第四級アンモニウム塩の形態であり得る。
【0040】
好適な非イオン性基は、グルコシド、サッカリド、ピロリドン、アクリルアミドの各残基並びに特にポリエチレンオキシ及びヒドロキシ基である。分散剤は、分散剤全体で一つの非イオン性基、いくつかの非イオン性基、又は非イオン性基を含有する一つ以上のポリマー鎖を含有できる。ヒドロキシ基は、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシ官能アクリル樹脂及びセルロースのようなポリマー鎖を用いて組み込むことができる。ポリエチレンオキシ基は、ポリエチレンオキシドのようなポリマー鎖を用いて組み込むことができる。 疎水性モノマーは疎水基を含むモノマーである。好適な疎水基は、主に炭化水素、フルオロカーボン、ポリC3−4アルキレンオキシ及び3個未満の親水基を含む、さらに好ましくは親水基を含まないアルキルシロキサンである。該疎水基は好ましくはC3−C50鎖で、これが疎水性モノマーを側鎖とするか又は鎖中に含むかのいずれでもよい。
【0041】
ポリビニル分散剤は、当該技術分野で公知の任意の手段によって製造できる。ポリビニル分散剤を製造するための好適な方法は、ビニルモノマー、特に(メタ)アクリレート及びビニルナフタレンのような芳香族基を含有するビニルモノマー、特にスチレン性モノマーのラジカル重合である。適切なラジカル重合法は、懸濁重合、溶液重合、分散重合及び好ましくは乳化重合などであるが、これらに限定されない。好ましくは、ビニル重合は水を含む液体組成物中で実施される。
【0042】
親水性及び疎水性モノマーの両残基を含有するビニルコポリマーは本質的にセグメントなしに製造できる。コスト効率が高い、慣用の着実なラジカル重合法を用いると、セグメント長は統計的に非常に短い又は事実上存在しないことが多い。これは、“ランダム”重合とよく呼ばれる方法で起こるケースである。従って、よりセグメント長の長いあまり好適でないセグメント構造を製造するためには、リビング重合、特にグループトランスファー重合、原子転移重合(atom-transfer polymerization)、マクロモノマー重合、グラフト重合及びアニオン又はカチオン重合といった、より特殊(exotic)でコスト高の重合法が必要となる。
【0043】
適切な親水性ビニルモノマーは非イオン性及びイオン性モノマーなどである。
好適な非イオン性ビニルモノマーは、サッカリド、グルコシド、アミド、ピロリドン、特にヒドロキシ及びポリエチレンオキシ基を含有するものである。
【0044】
非イオン性ビニルモノマーの好適な例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、ポリエトキシル化(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドなどである。
【0045】
イオン性ビニルモノマーはカチオン性でもよいが、好ましくはアニオン性である。好適なアニオン性ビニルモノマーは、リン酸基、スルホン酸基、特にカルボン酸基を含むものである。これらは遊離酸(プロトン化)の形態でもその塩の形態でもよい。塩については先に記載の通りである。好適な例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸、モノアルキルイタコネート(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸モノオクチル)、シトラコン酸、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸及びアクリロイルオキシブチルスルホン酸)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸及びメタクリロイルオキシブチルスルホン酸)、2−アクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、2−メタクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、モノ(アクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェート及びモノ(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)並びにモノ(メタクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート及びモノ(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)である。
【0046】
特に好適なビニルアニオン性モノマーは、アクリル酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸、中でも特にメタクリル酸である。
好適なカチオン性モノマーは、置換アミン、第四級アミン、ピリジン、グアニジン及びビグアニジン基を含むものである。特に好適なカチオン性アクリルモノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及びジメチルアミノブチルアクリレートなどである。これらは遊離塩基(非プロトン化)の形態でも塩の形態でも第四級アンモニウム塩の形態でもよい。
【0047】
好適な疎水性ビニルモノマーは親水基を持たない。好適な疎水性ビニルモノマーは、C1−20ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、ブタジエン、スチレン及びビニルナフタレンなどである。特に好適なC1−20ヒドロカルビル(メタ)アクリレートは、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート及びステアリルアクリレートである。
【0048】
ポリエステルは典型的にはジオールによるジカルボン酸のエステル化によって製造される。カルボン酸の代わりに、酸塩化物、無水物又は該酸のアルキル(典型的にはメチル又はエチル)エステルも使用できる。少量の一官能価及び/又は三官能価以上の官能価モノマーが存在してもよい。カルボン酸及び/又はアルコールの混合物も使用できる。ポリエステル製造の別経路は環状ラクトンの反応で、そのような方法はカプロラクトンのようなモノマーに典型的である。またカプロラクトンポリマーを反応させてジオールを得ることもできる。該ジオールはポリエステル又はポリウレタン合成の両方に使用できる。
【0049】
ポリエステル製造のための好適な疎水性モノマーは、エステル、酸、酸塩化物、無水物、環状ラクトン及びC1−50ヒドロカルビレン、さらに好ましくはC4−50ヒドロカルビレン、特にC6−20ヒドロカルビレン残基を含有するアルコールである。これらは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレンでありうる。これらは、好ましくは、ポリエステル重合に必要となる以外の親水基を含有しない。その他の好適な疎水性モノマーは、ポリC3−4アルキレンオキシ(特にポリプロピレンオキシ)を含有するもの、フルオロカーボン及びシロキサンなどである。疎水性ウレタン、ポリカーボネート及びポリビニルは、カルボン酸又はヒドロキシ基を用い、それらがポリエステルに組み込まれるように製造すればよい。
【0050】
ポリエステル製造のための好適な親水性モノマーは、未反応のヒドロキシ基及び/又は酸基、又はエチレンオキシを含有する。
特に好適なのはポリエチレンオキシポリオールである。
【0051】
ポリエステル製造のための適切な親水性モノマーは、スルホン酸とヒドロキシ及び/又はカルボン酸基を含みうる。例えばイオン化スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸である。特に好適なのはソジオ(sodio)−5−スルホイソフタル酸(SSIPA)である。容易にエステル縮合反応を受ける2個以上の基と1個以上のスルホン酸基を有するその他の有用なモノマーは、少なくとも1個のスルホネート基を有するジヒドロキシアリールモノマーである。
【0052】
ポリエステル反応はそれ自体が酸及びヒドロキシ基の量及び反応によって決定されるので、親水性ポリエステル製造の更なる方法は、酸又はヒドロキシ基のいずれかを非化学量論的過剰量で使用する、又はこれらの基を化学量論的等価量で使用するがポリエステル合成を完全転化させずに終わらせて一部の親水基を未反応のまま残す、というものである。親水性残基を導入する別の方法は、保護された親水基(重合後に脱保護される)を含有するポリエステルモノマーを組み込むことである。保護/脱保護の利点は、分子量及び残存する酸/ヒドロキシ官能基をより別個に制御できることである。
【0053】
ポリウレタンは、好ましくはジイソシアネートとジオールとの反応によって製造する。少量の一官能価及び/又は三官能価以上の官能価モノマーが存在してもよい。イソシアネート及び/又はアルコールの混合物も使用できる。
【0054】
ポリウレタン製造のための好適な疎水性モノマーは、イソシアネート、及びC1−50ヒドロカルビレン、さらに好ましくはC4−50ヒドロカルビレン、特にC6−20ヒドロカルビレン残基を含むアルコールである。これらは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレン及びアルカリーレンでありうる。好ましくは、該疎水性モノマーはウレタン重合に必要となる以外の親水基を含有しない。ポリウレタン製造のための代替の好適な疎水性モノマーは、シロキサン及びフルオロカーボン基を含有する。疎水性ポリカーボネート、ポリエステル及びポリビニルは、イソシアネート又はヒドロキシ基を用い、それらがポリウレタンに組み込まれるように製造すればよい。
【0055】
適切な疎水性イソシアネートの例は、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニル−メタンジイソシアネート及びその水素化誘導体、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素化誘導体、並びに1,5−ナフチレンジイソシアネートなどである。ポリイソシアネートの混合物、特にトルエンジイソシアネートの異性体混合物又はジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物(又はそれらの水素化誘導体)、並びにウレタン、アロファネート、ウレア、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン又はイソシアヌレート残基の導入によって改質されている有機ポリイソシアネートも使用できる。
【0056】
好適な疎水性アルコールは、ポリC3−4アルキレンオキシ(特にポリプロピレンオキシ)、フルオロカーボン、シロキサン、ポリカーボネート及びC1−20ヒドロカルビルポリ(メタ)アクリレート残基を含有する。
【0057】
ポリウレタン製造のための好適な疎水性ジオールの例は、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、プロピレンオキシジオール、ポリカプロラクトン由来のジオール、ポリバレロラクトン由来のジオール、ポリC1−20アルキル(メタ)アクリレートジオール、シロキサンジオール、フルオロカーボンジオール及びアルコキシル化ビスフェノールAなどである。
【0058】
ポリウレタン製造のための好適な親水性モノマーの例は、ポリエチレンオキシ基、酸性基又は第四級アンモニウム基を含有する。酸性基を含有するそのようなモノマーの好適な例は、ビス(2−ヒドロキシエチル)−5−ソジオスルホイソフタレート及びジヒドロキシアルカン酸、特に2,2−ジメチロールプロピオン酸である。第四級アンモニウム基を含有するそのようなモノマーの好適な例は、第四級アンモニウム塩ジオール、例えばジメタノールジエチルアンモニウムブロミドである。酸性基及び第四級アンモニウム基は前述のように塩の形態でもよい。ポリエチレンオキシ基を含有する好適なポリウレタンモノマーは、ポリエチレンオキシドジオール、特にEP317258(教示内容は本明細書に援用する)に記載のポリエチレンオキシアミンである。
【0059】
親水性残基のポリウレタンへの導入は、イソシアネート基を上回る過剰のヒドロキシ基を使用して、得られた親水性ポリウレタンが重合後も未反応のヒドロキシ基を持つようにすればよい。さらに、保護されたエステルに変換されるカルボン酸又は保護されたエステル又はシラノールに変換されるヒドロキシ基のような保護された親水基を含有するモノマーも使用できる。これらは後に脱保護される。
【0060】
分散剤は好ましくは、改質粒状固体の製造法に使用される液状媒体に適合するように、そして所望により、改質粒状固体が使用される最終目的組成物(例えばインク)に使用される液体ビヒクルにも適合するように選ばれる。従って、例えば改質粒状固体が水性インクジェットインクに使用される場合、分散剤は主に親水性の性質を有するのが好ましい。同様に、改質粒状固体が油性(非水性)塗料又はインクに使用される場合、分散剤は主に疎水性の性質を有するのが好ましい。
【0061】
分散剤の酸価(AV)は、分散剤1gに対して好ましくは10〜200、さらに好ましくは30〜150、特に60〜120mgKOH/gである。
好ましくは、分散剤は、数平均分子量500〜100,000、さらに好ましくは1,000〜50,000、特に1,000〜35,000を有する。
【0062】
分散剤は液状媒体に完全に可溶性である必要はない。すなわち、完全に透明で非散乱性の溶液が必須ではないということである。分散剤は界面活性剤様のミセル中に凝集して液状媒体中でわずかに曇った溶液になってもよい。さらに、分散剤は、分散剤の一部がコロイド分散又はミセル分散を形成しやすいようなものであってもよい。分散剤は液状媒体中で均一且つ安定な分散液を形成し、放置しても沈降又は分離しないのが好ましい。
【0063】
分散剤は、実質的に液状媒体中に可溶性で、透明又は曇った溶液を生成するのが好ましい。
好適なランダムポリマー分散剤は透明組成物を生じやすい一方、2個以上のセグメントを有するあまり好適でないポリマー分散剤は液状媒体中で前述の曇った組成物を生じやすい。
【0064】
化合物を分散剤と反応させて粒状固体を改質する。改質は一般的に、様々な極性を有する液状媒体中でのより高い安定性をもたらす。該化合物は好ましくは分散剤の反応性基と、粒状固体を封入するような様式で反応する。
【0065】
該化合物中の基は、分散剤中のケト、アルデヒド及び/又はベータ−ジケトエステル基に対して反応性を有するものでなければならない。2種類のタイプの反応が好適である。最も好適なタイプの反応は、化合物中の反応性基によるケト、アルデヒド又はベータ−ジケトエステル基中のカルボニル基の炭素に対する求核攻撃である。従って、この種類の反応の場合の化合物中の好適な基は求核剤である。好適な基は、アミン、イミン、ヒドラジド及びチオールの各基からそれぞれ独立して選ばれる。求核基を有するこれらの化合物は、低分子量(特に数平均分子量が1000未満のもの)であっても、ポリマー(数平均分子量が1000を超える)であってもよい。好適な低分子量化合物は、脂肪族ジアミン、ヒドロキシ官能脂肪族ジアミン、及びヒドラジドなどである。その好適な例は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサミンジアミンヒドラジン及びアジピン酸ジヒドラジドなどである。求核基を有する好適なポリマー化合物は、ポリアミン、アミン末端ポリオキシアルキレンポリマー(特にJeffamines(登録商標))、特にポリイミンである。好適なポリアミンは、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びポリ(4−アミノスチレン)などである。好適なポリイミンは、ポリプロピレンイミン及び特にポリエチレンイミンなどである。
【0066】
第二のタイプの反応は、ケトン、アルデヒド又はベータ−ジケトエステルのカルボニル基に隣接する炭素におけるエノラートアニオン又はカルバニオン(互変異性体の構造による)の形成を伴う。エノラートアニオン又はカルバニオンの形成は、分散剤に塩基を添加することによって達成される。ベータ−ジケトエステルでのエノラートアニオン又はカルバニオンの形成は、アルデヒド及びケトンの場合に使用する塩基(例えば金属水素化物及び有機アルカリ塩基)よりずっと弱い塩基(例えば水酸化物、炭酸水素塩及びアミン)で達成できる。従って、この反応タイプの場合、ベータ−ジケトエステルがずっと好適である。次いで分散剤のエノラートアニオン又はカルバニオンは求電子基を有する化合物と反応できる。従って、該化合物中において、このタイプの反応にとって好適な反応性基は求電子剤であり、好適な基は、それぞれ独立に、活性化オレフィン基、ジアゾニウム基及びカルボニル含有基から選ばれる。特に好適な活性化オレフィン基はアクリレート基である。
【0067】
化合物中に存在する反応性基は同一でも異なっていてもよい。好ましくは化合物中のすべての反応性基は同一である。2種類以上の化合物も使用できる。2種類以上の化合物を使用する場合、これらは異なる数の反応性基を有してもよく、及び/又は、異なる種類の反応性基を有してもよい。
【0068】
化合物は好ましくは液状媒体に可溶性である。我々は、可溶性化合物は粒状固体のより高い安定性とより微細な分散をもたらすことを見出した。
好ましくは、反応は、粒状固体、分散剤、化合物及び液状媒体を混合することによって実施される。好ましくは、粒状固体の液状媒体に対する重量比は1:100〜1:2.5、さらに好ましくは1:100〜1:3、特に1:100〜1:5である。好ましくは、分散剤の液状媒体に対する重量比は1:1000〜1:2.5、さらに好ましくは1:100〜1:3.3、特に1:100〜1:5である。好ましくは、化合物は液状媒体中に、化合物中の反応性基の分散剤中の反応性基に対するモル比が10:1〜1:10、さらに好ましくは1:5〜5:1、特に1:2〜2:1になるような濃度で存在する。これは典型的には、化合物の液状媒体に対する重量比1:10,000〜1:10、さらに好ましくは1:2000〜1:20に相当する。
【0069】
従って、好ましくは前記反応は、以下の成分:
a)前記液状媒体;
b)重量比1:100〜1:3、さらに好ましくは1:100〜1:5の前記粒状固体;
c)重量比1:100〜1:3.3、さらに好ましくは1:100〜1:5の前記分散剤;及び
d)重量比1:10000〜1:10、さらに好ましくは1:2000〜1:20の前記化合物;
(前記重量比はいずれも液状媒体の重量に対する)を混合することによって実施される。
【0070】
好ましくは、混合は60℃未満の温度で実施する。混合は、任意の方法、例えば機械的撹拌、撹拌などによって実施できる。
反応は低温が好ましい。そのほうが液状媒体中での粒状固体の凝集及び粒径成長が低レベルに抑えられるからである。好ましくは反応は60℃未満、さらに好ましくは40℃未満、特に30℃未満の温度で実施される。反応の下限温度は液状媒体の凝固点及び所望の反応速度によって決まるが、好適な下限は0℃である。
【0071】
反応時間は、温度及び触媒の有無にある程度左右される。しかしながら、好適な反応時間は1〜24時間、さらに好ましくは1〜8時間である。所望であれば、触媒を加えて反応をスピードアップすることもできる。
【0072】
粒状固体、液状媒体及び分散剤は任意の順序で又は同時に混合できる。混合物は機械的処理にかけて固体の粒径を所望のサイズに減少させることができる。例えば、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、砂利ミル粉砕によって、又はもっと複雑な技術、例えばマイクロ流動化(microfluidizing)(Microfluidics(登録商標)装置を使用)又は流体力学的キャビテーション(例えばCaviPro(登録商標)装置を使用)によって分散液が形成されるまで処理する。粒状固体はその粒径を削減するために独自に処理しても、液状媒体又は分散剤のいずれかと混合して処理してもよい。その後その他の成分(一つ又は複数)を加え、該混合物を撹拌して分散液にする。
【0073】
所望であれば、分散液は分散剤と化合物の反応前にろ過又は遠心して、何らかの分散不良又は過大サイズの粒状物質を除去することができる。特に、製造法には、分散剤、粒状固体及び液状媒体を含む混合物を反応前に、好ましくは孔径10ミクロン未満、さらに好ましくは5ミクロン未満、特に1ミクロン未満のフィルターを通してろ過する工程を含むのが好ましい。
【0074】
粒状固体の機械的処理時に化合物が存在すると、固体の粒径が十分減少する前に分散液の望ましくない前反応(pre-reaction)が起こる可能性がある。粒状固体を分散剤及び液状媒体の存在下でミル粉砕する場合、温度は40℃を超えず、特に30℃を超えないことが好ましい。
【0075】
化合物は、好ましくは、粒状固体、分散剤及び液状媒体を含む混合物に、粒状固体の粒径を削減する機械的処理後に加える。反応は該化合物の添加中にも起こりうるが、該化合物の完全添加後に大部分の反応が起こるほうが好ましい。該化合物の完全添加30分後に10%未満の反応しか起こっていないことも好適である。これにより、該化合物が組成物全体にわたってより均一に分散することが促進され、より均一な反応がもたらされる。
【0076】
該化合物を、粒状固体、分散剤及び液状媒体を含む混合物に添加する間、反応を抑制するために、該化合物は好ましくは前記混合物に60℃未満、特に30℃未満の温度で添加する。また、反応速度を上げるために触媒を工程で使用する場合、触媒は好ましくは該化合物の添加後に加える。
【0077】
好ましくは、該製造法によって、化合物添加前の粒状固体のZ平均粒径と比べ50%以下、さらに好ましくは25%以下、さらに特に好ましくは15%以下の大きさのZ平均粒径を有する改質粒状固体が得られる。
【0078】
好ましくは、改質粒状固体は、300nm未満、さらに好ましくは10〜300nmのZ平均粒径を有する。なぜならば、そのような粒径は、特に塗料、インク、とりわけインクジェット印刷用インクに有用だからである。このサイズの従来型粒状固体は適正に安定化させるのが特に困難である。
【0079】
Z平均粒径は任意の公知手段によって測定できるが、好適な方法は、Malvern(登録商標)及びCoulter(登録商標)から入手できる光相関分光法による。
本発明によって製造される改質粒状固体は、初期の固体に関しても、得られた生成物に関しても、粒子であることは理解されるであろう。従って、本発明は、固体、半固体、ゲル又はコーティングを形成する方法に関するものではない。
【0080】
本発明の製造法から得られる粒状固体は、好ましくは液状媒体中に分散液として存在することになる。好ましくは、この分散液は実質的に均一である。
所望であれば、本製造法は、得られた改質粒状固体を液状媒体から単離する工程をさらに含んでいてもよい。これは、例えば、液状媒体を蒸発することによって、又は改質粒状固体を沈殿又は凝集させ、その後ろ過することによって達成しうる。
【0081】
蒸発の好適な方法は、凍結乾燥、噴霧乾燥及び撹拌乾燥などである。沈殿及び凝集の好適な方法は、金属塩の添加及び遠心分離などである。
本発明の製造法は、代替の反応性基を有する反応性分散剤にとって適切な温度より低い温度で実施できる。その結果、凝集のレベルが減少し、粒径の成長が最小限となる。インクジェット印刷では大きい粒子はプリントヘッドに使用されている微細なノズルを詰まらせる可能性があるので望ましくない。さらに、低い温度を使用できることによって、感温性粒状固体、例えば医薬及び農薬の改質及び分散が可能になる。
【0082】
本発明の第二の側面は、本発明の第一の側面の製造法によって得られうる又は得られる改質粒状固体を提供する。
本発明の製造法によって製造される改質粒状固体は、該改質粒状固体と液体ビヒクルとを含む組成物の製造に有用である。好ましくは、そのような組成物はインクであり、粒状固体は着色剤、特に顔料である。
【0083】
したがって、本発明の第三の側面は、液体ビヒクルと本発明の第一の側面による製造法によって得られる又は得られうる改質粒状固体とを含む組成物を提供する。
該組成物は、本製造法の生成物を希釈することによって、又は本製造法の生成物を単離し、単離した改質粒状固体を液体ビヒクルと混合することによって製造できる。該組成物は、所望の液体ビヒクル成分を、本発明の第一の側面による製造法から得られた改質粒状固体及び液状媒体を含む組成物に加えることによって製造するのが好ましい。改質粒状固体を“乾燥状態”で単離しないこの製造法は、より小粒径の改質粒状固体をもたらす傾向にある。
【0084】
液体ビヒクルは、改質粒状固体の製造法に使用される液状媒体と同一でも異なっていてもよい。ここで明確にしておくと、液体ビヒクルとは、インク、塗料などの“最終用途”組成物中に存在する液体又は液体混合物である。液体ビヒクルは高い割合で水を含んでおり、且つ所望の組成物(例えばインク)の製造に必要な更なる液体は、本発明の第一の側面による製造法の後で加えるのが望ましいことが多い。
【0085】
液体ビヒクルは、好ましくは有機溶媒又は水又はそれらの混合物である。
好ましくは、液体ビヒクルは、特に組成物をインクジェット印刷に使用することを意図している場合、水を含む。好ましくは、液体ビヒクルは、組成物の総重量を基にして、50〜95%、さらに好ましくは60〜95%、特に60〜90重量%の水を含む。
【0086】
インクジェット印刷用組成物の場合、液体ビヒクルは、水と有機溶媒、好ましくは水混和性の有機溶媒、の両方を含むのが好ましい。液体ビヒクルに含有させるのに好適な水混和性有機溶媒は、C1−6アルカノール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;直鎖アミド、好ましくはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;水混和性エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール及びチオジグリコール並びにオリゴ−及びポリ−アルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノC1−4アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノC1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]−エタノール及びエチレングリコールモノアルキルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドンなどである。好ましくは、液体ビヒクルは、水と2種類以上、特に2〜8種類の水混和性有機溶媒を含む。
【0087】
特に好適な水混和性有機溶媒は、環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン及びN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;並びにジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル及びC1−4アルキルエーテル、さらに好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノール;並びにグリセロールである。
【0088】
好適な組成物は、
a)本発明の第一の側面による製造法によって得られうる又は得られる改質粒状固体0.1〜50部、さらに好ましくは1〜25部;
b)水、有機溶媒又は水と有機溶媒の両方を含む液体ビヒクル50〜99.9部、さらに好ましくは99〜75部;
を含む。ここで、すべての部は重量部であり、成分a)とb)を足すと100部になる。
【0089】
液体ビヒクル中に水と有機溶媒のどちらも存在する場合に、水と有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜5:95、さらに好ましくは95:5〜60:40、特に95:5〜80:20である。
【0090】
本発明の組成物はインクジェットプリンタ用インク、特に粒状固体が顔料の場合に特に適している。
インクジェット印刷の場合、本発明の第三の側面による組成物は、好ましくは25℃で50mPa.s未満、さらに好ましくは20mPa.s未満、特に10mPa.s未満の粘度を有する。
【0091】
インクジェット印刷の場合、本発明の第三の側面による組成物は、好ましくは25℃で20〜65ダイン/cm、さらに好ましくは25〜50ダイン/cmの表面張力を有するのが好適である。
【0092】
本発明のインクジェット印刷用組成物は、インクジェット印刷用インクに従来から使用されている追加の成分、例えば粘度調整剤、pH緩衝剤(例えば1:9のクエン酸/クエン酸ナトリウム)、腐食防止剤、殺生物剤、バインダ、染料及びコゲーション削減用添加剤を含有していてもよい。
【0093】
本発明の第四の側面は、画像を基材上に印刷する方法を提供する。該方法は、本発明の第三の側面による組成物を基材に好ましくはインクジェットプリンタによって適用することを含む。
【0094】
本発明の第五の側面は、本発明の第三の側面による組成物を用いて、好ましくはインクジェットプリンタによって印刷される紙、プラスチックフィルム又は織物材料(a textile material)を提供する。好適な紙は普通紙又は処理紙であり、これらは酸性、アルカリ性又は中性の性質を有しうる。市販紙の例は、HPプレミアムコート紙(HP Premium Coated Paper)、HPフォトペーパー(HP Photopaper)(いずれもHewlett Packard Incより入手可)、スタイラスプロ720dpiコート紙(Stylus Pro 720 dpi Coated Paper)、エプソンフォトクオリティ光沢フィルム(Epson Photo Quality Glossy Film)、エプソンフォトクオリティ光沢紙(Epson Photo Quality Glossy Paper)(Seiko Epson Corp.より入手可)、キャノンHR101高解像度紙(Canon HR 101 High Resolution Paper)、キャノンGP201光沢紙(Canon GP 201 Glossy Paper)、キャノンHG101高光沢フィルム(Canon HG 101 High Gloss Film)(いずれもCanon Inc.より入手可)、ウィギンスコンケラー紙(Wiggins Conqueror paper)(Wiggins Teape Ltdより入手可)、ゼロックス酸性紙(Xerox Acid Paper)及びゼロックス中性紙(Xerox Alkaline paper)、ゼロックス酸性紙(Xerox Acid Paper)(Xeroxより入手可)などである。
【0095】
プラスチックフィルムは不透明又は透明でありうる。オーバーヘッドプロジェクタ用スライドとして使用するのに適切な透明プラスチックフィルムは、例えば、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、セルロースジアセテート及びセルローストリアセテートフィルムなどである。
【0096】
本発明の第六の側面は、インクジェットプリンタ用カートリッジを提供する。該カートリッジはチャンバと本発明の第三の側面による組成物とを含み、前記組成物はチャンバ内に存在する。
【0097】
本発明の製造法によって得られうる又は得られる改質粒状固体は、改質粒状固体、液体ビヒクル及びバインダを含む表面コーティング及び塗料に使用するのに特に適切である。粒状固体は好ましくは着色剤又はフィラーである。インクの場合と同様、塗料は単離した改質粒状固体を用いても製造できるが、改質粒状固体を単離せずに本発明の第一の側面による製造法の結果得られる改質粒状固体と液状媒体とを含む組成物を使用するほうがより好ましい。
【0098】
そこで本発明の第七の側面は、本発明の第一の側面による製造法によって得られうる又は得られる改質粒状着色剤又はフィラー、バインダ及び液体ビヒクルを含む組成物を提供する。バインダは、液状媒体の揮発時に組成物を結合できるポリマー材料である。
【0099】
適切なバインダは、天然及び合成ポリマーなどである。好適なバインダは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、ポリサッカリド(例えばセルロース)及びプロテイン(例えばカゼイン)などである。好ましくは、バインダは組成物中に、粒状固体の重量を基にして100%を上回り、さらに好ましくは200%を上回り、特に300%を上回り、最も好ましくは400%を上回って存在する。
【0100】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例中、すべての部及びパーセンテージは特に断りのない限り重量による。
【実施例】
【0101】
実施例1:改質シアン顔料
分散剤(1)の製造
モノマー供給組成物は、メタクリル酸(25.82部)、アセトアセトキシエチルメタクリレート(128.54部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(45.64部)及びイソプロパノール(100部)を混合することによって製造した。開始剤供給組成物は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(7.25部)及びイソプロパノール(50部)を混合することによって製造した。
【0102】
イソプロパノール(50部)を反応容器中で連続撹拌及び窒素ガス雰囲気でパージしながら加熱還流した。モノマー供給組成物と開始剤供給組成物を該反応容器にゆっくり供給し、その間、内容物の撹拌、加熱還流及び窒素雰囲気の維持をした。モノマー供給物は反応容器に2時間かけて供給し、開始剤供給物は3時間かけて供給した。反応容器内容物の還流加熱は、開始剤供給物の完全添加後さらに1時間継続し、その後25℃に冷却した。得られた生成物は、固体含有量49.6重量%のアクリルポリマー溶液であった。溶媒と未反応モノマーをアクリルポリマー溶液から減圧蒸発によって除去し、数平均分子量14,188、重量平均分子量39,386及びGPCによる測定で多分散度2.7の固体アクリルポリマーを得た。これが分散剤(1)である。
【0103】
分散剤溶液(1)
分散剤(1)(15部)を水(85部)に溶解し、水酸化カリウム水溶液で中和してpH8.1の水溶液を得た。これが分散剤溶液(1)である。
【0104】
ミルベース(1)
粒状固体(C.I.ピグメントブルー15:3、120部、Clariant社から販売)を分散剤溶液(1)(80部)及び脱イオン水(588部)と混合した。該混合物をEigerミルで3時間粉砕した。この結果、Z平均粒径136nmの粒状固体及び15重量%の顔料含有量を含むミルベースが得られた。これがミルベース(1)である。
【0105】
粒状固体改質のための分散剤(1)の反応
反応性化合物(ジエチレントリアミン、0.077部)をミルベース(1)(50部)にゆっくり加え、該混合物を40〜50℃の温度で6時間撹拌した。得られた改質粒状固体のZ平均粒径は161nmで、該粒径は18%しか増加していなかった。これが改質粒状固体(1)である。
【0106】
実施例2:改質イエロー顔料
ミルベース(2)
粒状固体(C.I.ピグメントイエロー74、60部、Clariant社から販売)を分散剤溶液(1)(340部)と混合した。該混合物をBlackleyミルで6時間粉砕した。この結果、Z平均粒径110nmの粒状固体及び15重量%の顔料含有量を含むミルベースが得られた。これがミルベース(2)である。
【0107】
粒状固体改質のための分散剤(1)の反応
反応性化合物(アジピン酸ジヒドラジド、0.229部)をミルベース(2)(50部)にゆっくり加え、該混合物を40〜50℃の温度で6時間撹拌した。得られた改質粒状固体のZ平均粒径は116nmで、該粒径は5%しか増加していなかった。これが改質粒状固体(2)である。
【0108】
実施例3:改質シアン着色顔料
分散剤(2)の製造
モノマー供給組成物は、メタクリル酸(129部)、メチルメタクリレート(75部)、ジアセトンアクリルアミド(190.5部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(355.5部)及びイソプロパノール(375部)を混合することによって製造した。開始剤供給組成物は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)及びイソプロパノール(187.5部)を混合することによって製造した。
【0109】
イソプロパノール(187.5部)を反応容器中で連続撹拌及び窒素ガス雰囲気でパージしながら80℃に加熱した。モノマー供給組成物と開始剤供給組成物を該反応容器にゆっくり供給し、その間、内容物の撹拌、80℃の温度維持及び窒素雰囲気の維持をした。モノマー供給物及び開始剤供給物は反応容器に2時間かけて供給した。反応容器内容物は、開始剤及びモノマー供給物の完全添加後さらに4時間80℃に維持した。反応容器内容物はその後25℃に冷却した。得られた生成物は、固体含有量49.6重量%のアクリルポリマー溶液であった。アクリルポリマーを減圧下での回転蒸発によってイソプロパノール及び未反応モノマー(存在すれば)から単離した。得られたアクリルポリマーは、数平均分子量11,037、重量平均分子量29,339及びGPCによる測定で多分散度2.7を有していた。これが分散剤(2)である。
【0110】
分散剤溶液(2)
分散剤(2)(150部)を水(470部)に溶解し、水酸化カリウム水溶液で中和してpH7.7の水溶液を得た。これが分散剤溶液(2)である。
【0111】
ミルベース(3):改質シアン顔料
粒状固体(C.I.ピグメントブルー15:3、60部、Clariant社から販売)を分散剤溶液(2)(340部)と混合した。該混合物をBlackleyミルで3時間粉砕した。この結果、Z平均粒径145nmの粒状固体及び15重量%の顔料含有量を含むミルベースが得られた。これがミルベース(3)である。
【0112】
粒状固体改質のための分散剤(2)の反応
反応性化合物(アジピン酸ジヒドラジド、0.229部)をミルベース(3)(50部)にゆっくり加え、該混合物を40〜50℃の温度で6時間撹拌した。得られた改質粒状固体のZ平均粒径は151nmで、該粒径は4%しか増加していなかった。これが改質粒状固体(3)である。
【0113】
実施例4:改質マゼンタ顔料
ミルベース(4)
粒状固体(C.I.ピグメントレッド122、60部、Sun社から販売)を分散剤溶液(2)(340部)と混合した。該混合物をBlackleyミルで11時間粉砕した。この結果、Z平均粒径143nmの粒状固体及び15重量%の顔料含有量を含むミルベースが得られた。これがミルベース(4)である。
【0114】
粒状固体改質のための分散剤(2)の反応
反応性化合物(アジピン酸ジヒドラジド、0.686部)をミルベース(4)(50部)にゆっくり加え、該混合物を40〜50℃の温度で6時間撹拌した。得られた改質粒状固体のZ平均粒径は148nmで、該粒径は3%しか増加していなかった。これが改質粒状固体(4)である。
【0115】
比較例1:NCO/OH架橋
比較分散剤(1)の製造
メタクリル酸(12.04部)、メチルメタクリレート(20部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(36.4部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(31.73部)及びメチルエチルケトン(200部)を含むモノマー装填混合物を、撹拌反応容器に装填し、窒素でパージし、80℃で加熱還流した。開始剤装填混合物は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(35部)及びメチルエチルケトン(187.5部)を混合することによって製造した。次いで該開始剤装填混合物を反応容器に装填した。
【0116】
モノマー供給物は、メタクリル酸(48.16部)、メチルメタクリレート(80部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(145.6部)及び2−エチルヘキシルメタクリレート(126.9部)を混合することによって製造した。開始剤供給物は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10部)及びメチルエチルケトン(65部)を混合することによって製造した。モノマー供給物と開始剤供給物を反応容器に供給した。この間、還流、連続撹拌及び窒素雰囲気下を維持した。開始剤供給物は反応容器に5時間かけて供給し、モノマー供給物は4時間かけて供給した。開始剤供給の完了後、反応容器内容物はさらに30分時間還流を維持した。次いで反応容器及びその内容物を25℃に冷却した。メチルエチルケトン(188.39部)を反応容器に加えて最終固形分を56.32%に調整した。得られたアクリルポリマーを減圧下での回転蒸発によってメチルエチルケトン及び未反応モノマー(存在すれば)から単離した。該アクリルポリマーは、GPCによる測定では、数平均分子量9,600、重量平均分子量18,359及び多分散度1.9を有していた。これが比較分散剤(1)である。
【0117】
比較分散剤溶液(1)
分散剤(1)(39.6部)、水(292.4部)及びアミノプロパノール(7.98部)を一緒に混合し、分散剤を溶解させた。これが比較分散剤溶液(1)である。
【0118】
比較ミルベース(1)
粒状固体(C.I.ピグメントブルー15:3、60部、Clariant社から販売)を比較分散剤溶液(1)と混合した。該混合物をBlackleyミルで3時間粉砕した。この結果、Z平均粒径139nmの粒状固体及び15重量%の顔料含有量を含むミルベースが得られた。これが比較ミルベース(1)である。
【0119】
粒状固体改質のための比較分散剤(1)の反応
反応性化合物(メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、TMXDI、1.755部、Aldrich社から供給)を、比較ミルベース(1)(50部)とジブチルスズジラウレート(0.1部)の撹拌混合物にゆっくり加え、該混合物を40〜50℃の温度でさらに6時間撹拌した。得られた改質粒状固体のZ平均粒径は176nmで、該粒径が27%増加していた。これが比較改質粒状固体(1)である。
【0120】
粒状固体改質時の粒径の成長
表1
【0121】
【表1】

【0122】
表1に、ミルベースの粒径から対応する改質粒状固体の粒径へのZ平均粒径の成長を示す。分散剤と媒体不溶性のジイソシアネート化合物との反応による粒径の成長は、本発明の製造法、特に液状媒体に可溶性の化合物を使用している本発明の製造法で見られる成長より著しく大きい。反応時の粒径成長は、改質粒状固体をインクジェットインクに使用する予定の場合には特に望ましくない。なぜならば凝集した粒子がインクジェットノズルを詰まらせ、操作性及び印刷性能の低下につながりうるからである。粒径の著しい成長(例えば25%超)は、改質粒状固体をインクジェットインクでの使用により適切なものにするために、改質粒状固体から凝集物を除去するための追加の製造ステップ(例えばマイクロろ過)が必要となる可能性がある。そうなると技術的な複雑さが加わるだけでなく、改質された生成物に無駄が生じる。
【0123】
試験
熱安定性
ミルベース(1〜4及び比較ミルベース1)及び改質粒状固体(1〜4及び比較改質粒状固体)のサンプルを60℃の温度で2週間貯蔵した。その後Z平均粒径を再測定し、成長%を計算した。表2に結果をまとめた。
【0124】
表2
【0125】
【表2】

【0126】
表2から、本発明の製造法で得られた組成物は非改質等価物のミルベースより優れた熱安定性を示すことが分かる。
耐溶媒性
有機液体に対するミルベース(1〜4及び比較ミルベース1)及び改質粒状固体(1〜4及び比較改質粒状固体)の耐性をブトキシエタノール/水混合物にそれらを加えることによって測定した。表3に、分散液が肉眼で見たところまだ安定であり、凝集(アグリゲーション又はフロキュレーション)が視認されないブトキシエタノールの最大量を重量%で示す。
【0127】
表3
【0128】
【表3】

【0129】
高いパーセンテージほどブトキシエタノールに対する高い安定性及び大きい耐性を表す。
耐溶媒性は改質粒状固体のほうが対応するミルベース及び比較改質粒状固体と比べてはるかに改善されていることが分かる。
【0130】
表4の各カラムの成分を混合することによって、インクジェットインク組成物を製造した。
表4
【0131】
【表4】

【0132】
Tegowet(登録商標)510はTego社製の湿潤剤である。
インクジェットインク安定性試験
インク1〜6のZ平均粒径及び粘度を混合直後及び60℃の温度で2週間貯蔵後に測定した。改質粒状固体を含むインク1〜3は、貯蔵後、粘度の増大を示さず、Z平均粒径の成長も5%未満であった。ミルベースを含むインク4〜6は、顕著な目に見える増粘と少なくとも50%のZ平均粒径の増加を示した。従って、本発明の製造法で得られた改質粒状固体は、従来のミルベースと比べインクジェットインク組成物において大きな安定性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質粒状固体の製造法であって、粒状固体及び液状媒体の存在下で分散剤と化合物とを反応させることを含み、
a)前記分散剤は、ケト、アルデヒド及びベータ−ジケトエステル基から選ばれる少なくとも1個の反応性基を有し、
b)前記化合物は、前記ケト、アルデヒド及び/又はベータ−ジケトエステル基に対して反応性を有する少なくとも2個の基を有する
ことを特徴とする製造法。
【請求項2】
(i)前記製造法によって製造された改質粒状固体が封入粒状固体であり;
(ii)前記分散剤が、ケト、アルデヒド及びベータ−ジケトエステル基から選ばれる少なくとも1個の架橋可能基を有する分散剤であり;
(iii)前記化合物が、前記架橋可能基に対して反応性を有する少なくとも2個の架橋基を有する架橋剤であり;そして
(iv)反応が、分散剤を架橋剤で架橋させ、それによって粒状固体を架橋分散剤内に封入することを含む、
請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記化合物が液状媒体に可溶性の架橋剤である、請求項1又は2に記載の製造法。
【請求項4】
前記化合物が、前記架橋可能基に対して反応性を有する少なくとも2個の架橋基を有する架橋剤であり、前記架橋基が求核剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項5】
前記架橋基が、アミン、イミン、ヒドラジド及びチオール基からそれぞれ独立して選ばれる、請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
前記化合物が、前記架橋可能基に対して反応性を有する少なくとも2個の架橋基を有する架橋剤であり、前記架橋基が求電子剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項7】
前記架橋基が、活性化オレフィン、ジアゾニウム及びカルボニル含有基からそれぞれ独立して選ばれる、請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
前記分散剤がポリマーである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
前記分散剤がポリビニル分散剤である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項10】
前記ポリビニル分散剤が、アクロレイン、メチルビニルケトン、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドから選ばれる少なくとも1個のモノマー残基を含む、請求項9に記載の製造法。
【請求項11】
前記ポリビニル分散剤がジアセトンアクリルアミド由来の少なくとも1個のモノマー残基を含む、請求項9又は10に記載の製造法。
【請求項12】
前記分散剤が少なくとも1個のベータ−ジケトエステル架橋可能基を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項13】
前記液状媒体が、ベータ−ジケトエステル基に変換可能な少なくとも1個のエナミン/ケチミン基を有する分散剤をさらに含む、請求項12に記載の製造法。
【請求項14】
少なくとも1個のエナミン/ケチミン基を有する分散剤が、少なくとも1個のベータ−ジケトエステル基を有する分散剤と一官能価アミンとの反応によって得られる又は得られうる、請求項13に記載の製造法。
【請求項15】
前記一官能価アミンがアンモニアである、請求項14に記載の製造法。
【請求項16】
反応が60℃未満の温度で実施される架橋である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項17】
前記改質粒状固体が、化合物添加前の粒状固体のZ平均粒径に比べ50%以下の大きさのZ平均粒径を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項18】
前記液状媒体が水を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項19】
得られた改質粒状固体を液状媒体から単離する更なるステップを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項20】
前記反応が、以下の成分:
a)前記液状媒体;
b)重量比1:100〜1:3の前記粒状固体;
c)重量比1:100〜1:3.3の前記分散剤;及び
d)重量比1:10000〜1:10の前記化合物;
(前記重量比はいずれも前記液状媒体の重量に対する)を混合することによって実施される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造法によって得られる又は得られうる改質粒状固体。
【請求項22】
液体ビヒクルと請求項21に記載の改質粒状固体とを含む組成物。
【請求項23】
25℃で20mPa.s未満の粘度を有する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記液体ビヒクルが、水と有機溶媒を99:1〜5:95の重量比で含む、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項22、23又は24に記載の組成物を基材に適用することを含む、基材上への画像の印刷法。
【請求項26】
印刷がインクジェットプリンタによって実施される、請求項25に記載の印刷法。
【請求項27】
請求項22、23又は24に記載の組成物を用いて請求項25又は26に記載の印刷法によって印刷される紙、プラスチックフィルム又は織物材料。
【請求項28】
チャンバと組成物とを含むインクジェットプリンタ用カートリッジであって、前記組成物はチャンバ内に存在し、前記組成物は請求項22、23又は24に記載の通りであるインクジェットプリンタ用カートリッジ。
【請求項29】
前記粒状固体が着色剤又はフィラーであり、前記組成物がバインダをさらに含む、請求項22に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−513233(P2007−513233A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541999(P2006−541999)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004960
【国際公開番号】WO2005/056700
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】