製鉄業における最適酸素製造量の予測方法
【課題】製鉄プロセス等の複数の酸素製造プラントにおいて、最適な製造バランスを達成し、酸素製造電力を低減するため、酸素製造量の正確な予測方法を提供する。
【解決手段】数十〜数百種類の鋼種別に細分化し、酸素使用量及び吹錬時間をデータベース化する。データベース化した予測量と鋼種毎の実績量の誤差について、予測量による酸素ホルダーの圧力勾配と実績量による酸素ホルダーの圧力勾配の違いを自動的に比較して圧力勾配比率を算出し、それを次回の予測量にかけあわせて予測量を補正する。また、酸素使用開始予定時刻の誤差は、予定吹錬スケジュールの間隔に応じて、各番の酸素使用開始予定時刻すべてを自動的に修正する。更に、各酸素プラントの実績性能カーブを作成し、予測量に応じて稼動している酸素プラントの最適酸素発生バランスの組み合わせ計算を行い、各酸素プラント実績性能カーブから最も省電力な酸素発生バランスを算出する。
【解決手段】数十〜数百種類の鋼種別に細分化し、酸素使用量及び吹錬時間をデータベース化する。データベース化した予測量と鋼種毎の実績量の誤差について、予測量による酸素ホルダーの圧力勾配と実績量による酸素ホルダーの圧力勾配の違いを自動的に比較して圧力勾配比率を算出し、それを次回の予測量にかけあわせて予測量を補正する。また、酸素使用開始予定時刻の誤差は、予定吹錬スケジュールの間隔に応じて、各番の酸素使用開始予定時刻すべてを自動的に修正する。更に、各酸素プラントの実績性能カーブを作成し、予測量に応じて稼動している酸素プラントの最適酸素発生バランスの組み合わせ計算を行い、各酸素プラント実績性能カーブから最も省電力な酸素発生バランスを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄業等の酸素を大量に使用する産業における、酸素製造電力を低減することを目的とした酸素製造プラントの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、製鉄業では酸素を大量に使用している。そのため、製鉄所内に大規模な酸素プラントを設置し、酸素の製造を行っている。酸素プラントで製造された酸素は、酸素圧縮機で所定の圧力まで圧縮され、酸素ホルダーに一旦貯留された後、酸素を使用している各工場に供給されている。各工場に酸素を安定的に供給するためには、酸素を貯留する酸素ホルダーのガス圧力を一定の範囲内に保つ必要がある。
【0003】
そのため、各工場の酸素使用量の予測に基づいて、酸素プラントで酸素製造量の増減を行うことにより、酸素ホルダーのガス圧力を一定の範囲内に保つように調整を行っている。酸素ホルダーのガス圧力が一定の範囲を下回る場合は、液体酸素タンクに貯蔵された液体酸素を加圧蒸発させることにより、不足する酸素量を補う場合もある。
【0004】
工場の酸素使用パターンは、連続使用と間欠使用の大きく2つに分類できる。連続使用工場では、工場が稼動している間はほぼ一定量の酸素を連続的に使用している。従って、工場の稼動状態のみで酸素使用量を把握できるため、酸素使用量の予測が容易である。一方、間欠使用工場では、酸素の使用が間欠的であり、酸素使用量の変動が大きいため、酸素使用量の予測が困難である。そのため、酸素使用量を精度よく予測するためには、間欠使用工場の酸素使用量の予測が重要となる。
【0005】
製鉄所における間欠使用工場の代表は製鋼工場である。その製鋼工場の操業について次に説明する。製鋼工場では、転炉と呼ばれる容量最大350トン程度の炉の中に、高炉で製造された溶銑と鉄スクラップ等を装入する。そして、その転炉の中に1.6から2.5MPaGの高圧酸素を、最大約50,000Nm3/Hの速度で大量に吹き付け、溶銑中の炭素・珪素・リンなどの不純物を燃焼させる。ここで、溶銑に酸素を吹き付け不純物を燃焼させる処理を吹錬という。吹錬終了後、転炉内の溶鋼を鍋へ排出し、その後、溶鋼を連続的に鋳造し、スラブやブルームなどの鋼片を製造する。
【0006】
通常の転炉操業では、溶銑と鉄スクラップ等などを装入し、吹錬の準備をするのに10から15分の時間を要する。そして準備完了後、吹錬を10から20分間行う。その後、転炉から溶鋼を排出して一回分の吹錬作業は完了するが、この一回分の作業で30から40分程度の時間を要する。通常、製鋼工場には複数の転炉が設置され、それぞれの転炉で吹錬スケジュールに従い一連の吹錬作業が繰り返し行われている。従って、製鋼工場で使用される酸素量は、間欠的に大きく変動する。
【0007】
実際の転炉で使用する酸素量は、溶銑の成分、溶銑や鉄スクラップ等の装入量、また製造する溶鋼の目標成分等によって異なるため、吹錬毎に酸素使用量は変動する。また、実操業では、吹錬作業が、計画された吹錬スケジュール通りには進捗しない場合が多いため、酸素の使用スケジュールも時々刻々変化していくことになる。従って、転炉での酸素使用量を精度よく予測するためには、吹錬毎の酸素使用量、及び吹錬スケジュールを正確に把握することが必要となる。
【0008】
そのため、従来、酸素使用量を予測するいくつかの方法が実施されており、例えば、特許文献1(特開平6−207211号公報)に記載されている方法がある。その方法は、各転炉の吹錬実績から次回吹錬時の酸素使用量パターンと吹錬時間を予測するとともに、予め設定された転炉の吹錬スケジュールと転炉吹錬実績から転炉の次回吹錬開始時刻を予測し、次回吹錬終了時までの酸素ホルダー内の酸素圧力を逐次予測するものであった。
【特許文献1】特開平6−207211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の酸素使用量の予測方法では、特許文献1(特開平6−207211号公報)に記載されているような、各転炉の吹錬時の酸素実績使用量を用いて、次回吹錬時の酸素使用量の予測を行っていた。しかしながら、実際の操業では、吹錬毎に溶銑の成分、溶銑と鉄スクラップ等の装入量、また製造する溶鋼の目標成分が異なるため、吹錬毎に酸素使用量が変動する。そのため、従来の予測方法では、吹錬毎の酸素使用予測量と実績量の誤差が大きく発生していた。
【0010】
また、実際の操業では、吹錬作業の進捗状況などにより、次回の吹錬開始時刻は早まったり、遅くなったりするために、吹錬スケジュールは時々刻々と変化する。これに対して、従来の予測方法では、予め設定された転炉の吹錬スケジュールに基づいて、転炉吹錬実績から次回吹錬開始予定時刻のみを補正予測する手法であるため、吹錬スケジュールも次回吹錬分しか補正されていなかった。すなわち、次々回吹錬以降の吹錬開始予定時刻の誤差が補正されないために、長時間の酸素使用量の予測において、誤差が大きくなっていた。
【0011】
上記の酸素使用量予測方法では、特に長時間の酸素使用量の予測において、誤差が大きく発生する。その結果、酸素プラントでの酸素製造量の過不足が生じることになる。例えば、酸素使用量の真値に対して予測値が過大となるの場合は、酸素製造量が過剰となるため、酸素ホルダーのガス圧力は上昇する。その結果、酸素ホルダーへ酸素を供給する酸素圧縮機の消費電力が増加する。酸素ホルダーのガス圧力が更に上昇した場合には、酸素ホルダーの設備保護のために酸素を大気に放出しなければならない。
【0012】
一方、酸素使用量の真値に対して予測値が過小となるの場合は、酸素製造量が不足するため、酸素ホルダーのガス圧力は低下する。ガス圧力が吹錬に必要な圧力を下回る場合には、吹錬が出来なくなる。そのため、液体酸素タンクに貯蔵された液体酸素を加圧蒸発させて、酸素を供給しなければならない。従って、酸素使用量の予測値に誤差が発生することにより、酸素圧縮機の消費電力増加、酸素の大気放散、高価な液体酸素の使用などのコストロスが発生していた。
【0013】
また、一般的に、酸素製造を行う酸素プラントは、複数の性能の異なるプラントから構成されており、酸素使用量の増減に合わせて各酸素プラントの酸素製造量を増減させる運用を行っている。従来の酸素使用量予測方法では、各酸素プラントの性能を考慮して製造量の増減調整を行う方法となっていないため、結果的に、酸素製造電力に無駄が生じていた。
【0014】
従来技術には、上記のような問題点があり、必ずしも効率的な酸素製造が行われていなかったことから、これらの問題を解決するための手段が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するために成されたものであり、その要旨とするところは、(1)〜(3)に記載されているものである。
(1)製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、鋼種別に酸素使用実績量及び吹錬実績時間の操業データをデータベース化し、今後行う吹錬の鋼種と吹錬開始時刻から吹錬スケジュールを作成し、吹錬スケジュールの鋼種別に、該データベースから酸素使用実績量と吹錬実績時間を選択して製鋼工場以外の高炉工場やその他工場の酸素使用量を加算し、酸素使用予測量を算出し、算出した酸素使用予測量と各鋼種毎の酸素使用実績量の誤差について、予測量と実績量における酸素ホルダーの圧力降下勾配の違いを自動的に比較し補正係数を演算した後、次回の予測量に補正係数をかけあわせ、次回以降の酸素使用量の予測精度を向上させることを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
(2)製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、酸素使用開始予定時刻と酸素使用開始実績時刻がずれる場合、酸素使用開始予定時刻と酸素開始実績時刻を比較して酸素使用開始時刻の誤差を算出し、算出した誤差を次回以降の酸素使用開示時刻に加算して、酸素使用開始時刻を補正することを特徴とする前記(1)に記載の最適な酸素製造量予測方法。
(3)複数の酸素プラントの酸素製造電力原単位曲線をデータベース化し、予測量にあった最適な酸素プラント発生量を組み合わせ計算し、酸素製造電力を低減することを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素製造量の予測をより正確に把握することができるため、酸素ホルダーの圧力を低く保持することができ、酸素圧縮機の消費電力を低減し、更に大気への酸素の放出を削減できる。また高価な液体酸素を蒸発する必要がなくなるため、エネルギーロスを削減できる。更に酸素プラントは、最適な酸素製造バランスで稼動でき、酸素製造電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一般的に、製鉄所には複数の高炉工場、製鋼工場及びその他工場が設置されており、各工場が大量に酸素を使用している。図1に酸素供給設備の一例を示すが、酸素プラントのトラブル等による停止影響を最小限に抑えるため、一般的に複数の酸素プラントが設置され、酸素の製造が行われている。各酸素プラント1A、1B、及び、1Cで製造された酸素は、酸素吸込母管2を経由して、高炉送風工場12及び酸素圧縮機3A、3B、及び、3Cに供給される。高炉送風工場へ供給された酸素は、送風機に大気とともに吸込まれ、所定の圧力まで昇圧された後、高炉工場13A、13B、及び、13Cへ供給される。また、酸素圧縮機に供給された酸素は、1.6から2.5MPaG程度まで昇圧され、酸素ホルダー5A、5Bで一旦貯留された後、製鋼工場6A、6B及びその他工場7へ供給されていることが一般的である。更に、液体酸素タンク8A、8Bが設置され、酸素ホルダーからの酸素供給量で不足する場合には、液体酸素を蒸発器9で加圧蒸発して供給できる設備構成となっている。
【0018】
各工場の酸素使用量に合わせて、酸素プラントの稼働台数が決まる。そして、酸素使用量が変動した場合、各酸素プラントの製造量の増減調整を行う。酸素プラントが複数台設置されている場合は、酸素プラント毎に製造能力が異なる場合が多い。一方、各酸素プラントの酸素製造増減範囲は、プラント能力の約80から100%の範囲が一般的である。例えば、酸素使用量が増加した場合は、各プラントの製造量を増加させるが、稼動している全ての酸素プラントの製造能力が100%能力以上になる場合には、停止している酸素プラントを起動する。一方、酸素使用量が減少した場合は、各酸素プラントの製造量を減少させるが、稼動している全ての酸素プラントが製造能力の80%以下程度になる場合には、需給バランスに合わせ、適切な台数を停止する。
【0019】
また、各工場の酸素使用量に合わせて、酸素圧縮機の流量調整も必要となる。酸素圧縮機の流量調整は、圧縮機の稼働台数の増減と、各圧縮機の流量調節弁10A、10B、及び、10Cの開度調整により行う。流量調節弁による流量の増減範囲は、圧縮機能力の約80から100%の範囲が一般的である。例えば、酸素プラントの製造量を増加させた場合、酸素圧縮機の吸込圧力が上昇する。この場合は、酸素圧縮機の流量調節弁が、吸込圧力を一定に保つように開方向に動作し、酸素圧縮機から酸素ホルダーへの供給流量が増加する。それでも更に吸込圧力が上昇する場合には、停止している酸素圧縮機を起動し、酸素圧縮機の流量を増加させ、製造量と圧縮量の需給バランスを調整する。一方、酸素プラントの製造量を減少させた場合、酸素圧縮機の吸込圧力が低下する。この場合は、酸素圧縮機の流量調節弁は閉方向に動作し、酸素圧縮機から酸素ホルダーに供給される流量が減少する。それでも更に吸込圧力が低下する場合には、酸素圧縮機の吐出配管と吸込配管を繋ぐ配管に設置しているバイパス弁11A、11B、及び、11Cが開方向に動作する。そして、吐出配管から吸込配管へ供給され、酸素圧縮機からホルダーに供給される流量が低下する。通常、バイパス弁が開動作した状態で長時間運転する場合、酸素を圧縮する電力が無駄となるため、酸素需要にあわせ適切な台数を停止する。
【0020】
酸素ホルダーのガス圧力は、各工場の酸素使用量の変動に伴い変動する。したがって、各工場に酸素を安定的に供給するためには、酸素ホルダーのガス圧力を一定の範囲内に制御する必要がある。例えば、各工場の酸素使用量が増加した場合、酸素ホルダーのガス圧力が低下するため、酸素プラントの製造量を増加させる必要がある。しかし、製造量を増加させても酸素ホルダーのガス圧力が更に低下する場合には、液体酸素タンクから液体酸素を加圧蒸発させ、酸素ホルダーのガス圧力を上昇させる。一方、各工場の酸素使用量が減少した場合、酸素ホルダーのガス圧力は上昇するため、酸素プラントの製造量を減少させる。製造量が減少すると、前述の通り、酸素圧縮機の流量は減少し、酸素ホルダーのガス圧力は低下する。しかし、製造量を減少させても酸素ホルダーのガス圧力が更に上昇する場合には、酸素ホルダーの設備保護のために、酸素を大気に放出しなければならない。通常、酸素を大気に放出しながら長時間運転する場合は、酸素を製造するための電力が無駄となるため、酸素需要にあわせ酸素プラントと酸素圧縮機の適切な台数を停止する。
【0021】
以下、図面に基づき本発明の酸素使用量予測方法を説明する。図2に酸素使用量予測システムの概略図を示す。まず、酸素使用予測量(Qy)について述べる。酸素使用予測量(Qy)は、連続的に使用される高炉酸素使用予測量(QBFy)と他工場で使用される酸素雑用予測量(QZy)及び間欠的に使用される製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)の合計量である。高炉酸素使用予測量(QBFy)は、高炉工場からの指定量であり、酸素雑用予測量(QZy)は、各工場の生産量とその他から求められる酸素予測量で、これらは、酸素ホルダー圧力計算部16へ入力される。
【0022】
そして、間欠的に使用される製鋼工場の総合酸素使用予測量(ΣQLDy)は、次の2つのデータテーブルを用い算出する。表1に示すデータテーブルは、各製鋼工場の鋼種や吹錬開始予定時刻を示す吹錬スケジュールデータテーブルである。また、表2に示すデータテーブルは、各鋼種別使用量及び所要吹錬時間を求めるため、製鋼工場での吹錬において、過去の1チャージ当りにおける鋼種別酸素実績使用量(QLDj)及び吹錬実績時間(tj)の吹錬実績データテーブルである。吹錬実績データテーブルは、鋼種別使用予測量(QLDy)及び吹錬所要時間(ty)の誤差を少なくするために、現在から15〜50日間程度さかのぼった過去のある一定期間の平均値を使用する。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
次に、製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)について説明する。まず製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)は、ある時刻における各製鋼工場の各鋼種別使用量を加算したものである。その製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)を算出するため、各製鋼工場の1チャージ当りにおける鋼種別酸素使用予測量(QLDy)を求める。その方法は、表1に示すように鋼種や吹錬開始予定時刻のデータを吹錬情報入力部14へ入力し、表1に示すような吹錬スケジュールデータテーブルを作成する。そして、吹錬スケジュールデータテーブルの鋼種と一致するデータを、吹錬実績データテーブル15から探し出し、鋼種別酸素実績使用量(QLDj)及び吹錬実績時間(tj)のデータを、図2の酸素ホルダー圧力計算部16へ自動的に入力する。表1と表2においては、鋼種Cが一致している。複数(n)の製鋼工場がある場合は、同時刻(i)毎に鋼種別酸素使用予測量(QLDy)を加算し、製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)を算出する。その製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)の算出式を(1)式に示す。
ΣQLDy(i)= QLDy1(i)+QLDy2(i)+・・+ QLDy(n)(i)・・・(1)
図3に示す例では、3つの製鋼工場があるため、
ΣQLDy(i)= QLDy1(i)+QLDy2(i)+QLDy3(i) となる。
【0026】
したがって、図3に示すようにある時刻(i)における酸素使用予測量(Qy(i))は、[0021]に記載した酸素富化量(QBFy)と酸素雑用量(QZy)、及び、[0025]で算出した製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)を加算して算出する。その酸素使用予測量(Qy)の算出式を(2)式に示す。
Qy(i)= QBFy(i)+ QZy(i)+ ΣQLDy(i) ・・・(2)
【0027】
次に、現在発生している酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)は、図2に示すように複数台(n)設置している各酸素プラント製造量(QOK(n)j)を加算し、算出する。その酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)の算出式を(3)式に示す。そして、現在の酸素供給量(QKj)は、(3)式で求めた酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)と液体酸素蒸発量(QLOj)を加算し、算出する。その酸素供給量(QKj)の算出式を(4)式に示す。
ΣQOKj = QOK1j+QOK2j +・・・・+ QOK(n)j ・・・(3)
QKj = ΣQOKj+QLOj ・・・(4)
図2に示す例では、3基の酸素プラントがあるため、
ΣQOKj = QOK1j + QOK2j+ QOK3j となる。
次に、[0022]から[0027]で算出してきたデータを用い、酸素ホルダーの圧力変化を算出する。
【0028】
酸素ホルダーの圧力変化は、[0026]で求めた酸素使用予測量(Qy)と[0027]で求めた酸素供給量(QKj)の差によって発生する。その酸素ホルダーの圧力変化を、より正確に把握するために1から5分間隔のタイムステップ(dT)毎に、酸素使用量と酸素供給量の差を比較し算出する。タイムステップ(dT)毎の酸素需給量差(ΔQy/dT)は、(4)式の酸素供給量(QKj)から(2)式の酸素使用予測量(Qy)を減算して算出する。その酸素需給量差(ΔQy/dT)を(5)式に示す。そして、酸素ホルダーのタイムステップ(dT)毎に変化する時間当りの圧力予測変化値(dPy/dT)は、酸素需給量差(ΔQy/dT)を各酸素ホルダー容量(V)を加算した総合酸素ホルダー容量(ΣV)で除して算出する。その総合酸素ホルダー容量(ΣV)の算出式を(6)式に示し、酸素ホルダー圧力予測変化(dPy/dT)の算出式を(7)式に示す。
ΔQy/dT= (QKj - Qy)/dT ・・・(5)
ΣV = V1 + V2 +・・・・+ V(n) ・・・(6)
dPy/dT = ΔQy/dT ÷ ΣV ・・・(7)
【0029】
その結果、ある時刻における酸素ホルダー圧力予測値(Py(i))は、実測した酸素ホルダー圧力実績値(Pj)に、[0028]で演算した酸素ホルダーのタイムステップ(dT)毎に変化する時間当りの圧力予測変化値(dPy/dT)を加算して算出する。その酸素ホルダー圧力予測変化値(dPy/dT)の算出式を(8)式に示す。更に、時刻(i+m)における酸素ホルダー圧力予測(Py(i+m))は、(8)式にタイムステップ(dT)毎に変化する時間当りの圧力予測変化値(dPy(i+m)/dT)を加算し、繰り返し計算することで、算出する。その酸素ホルダー圧力予測(Py(i+m))の算出式を(9)式に示す。
Py(i) = Pj +(d(Py(i))/dT)・dT ・・・(8)
Py(i+1) = Py(i) +(d(Py(i+1))/dT)・dT
Py(i+2) = Py(i+1) +(d(Py(i+2))/dT)・dT
Py(i+m) = Py(i+(m-1)) +(d(Py(i+m))/dT)・dT ・・・(9)
【0030】
オペレーターは、高炉工場や製鋼工場などへ酸素を安定供給するために、酸素ホルダー圧力Py(i+m)を特定の操業圧力範囲内に保つように、酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)や液体酸素蒸発量(QLOj)を調整する。その酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)や液体酸素蒸発量(QLOj)は、コンピュータを活用することで、各酸素プラント及び蒸発器能力範囲内で自動的に調整することは可能である。
【0031】
実操業では、過去のある時刻において予測した酸素ホルダー圧力値(Py(i))と酸素ホルダー圧力実績値(Pj(i))の誤差が、2つの要因から発生する。その第1の要因は、各製鋼工場の鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差である。そして、第2の要因は、吹錬準備作業が早くなったり、逆に遅くなったりするために発生する吹錬開始時刻の変動による誤差である。この2つの誤差要因を補正することで、より正確に酸素ホルダーの圧力予測ができる。
【0032】
最初に、第1の要因である吹錬実績データの鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差の補正方法について説明する。まず過去のある時刻(i)において予測した鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)についての誤差量(QG)の算出方法を説明する。誤差量(QG)は、予測していた酸素ホルダー圧力変化(ΔPy)と実際の酸素ホルダー圧力変化(ΔPj)の差から算出する。誤差量(QG)は、図4に示すように過去のある時刻(i)からタイムステップ(dT)毎に算出する。タイムステップ(dT)は、誤差量(QG)をより正確に把握するため、1から5分間隔内に設定する。
【0033】
酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))は、時刻iの酸素ホルダー圧力予測値(Py(i))からタイムステップ(dT)後の(i+1)時刻における酸素ホルダー圧力予測値(Py(i+1))を引いて算出する。その酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))の算出式を(6)式に示す。そして、タイムステップ(dT)毎に繰り返し計算を行い、酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))の算出する。その式を(11)式に示す。
ΔPy(i) = (Py(i) - Py(i+1))/dT ・・・(10)
ΔPy(i+1) = (Py(i+1) - Py(i+2))/dT
ΔPy(i+2) = (Py(i+2)) - Py(i+3))/dT
ΔPy(i+m) = (Py(i+m) - Py(i-(m+1)))/dT ・・・(11)
【0034】
次に、酸素ホルダー圧力実績変化(ΔPj(i))は、酸素ホルダー圧力予測値(Py(i))の算出方法と同様に、時刻(i)の酸素ホルダー圧力実績値(Pj(i))からタイムステップ(dT)後の(i+1)時刻における酸素ホルダー圧力実績値(Pj(i+1))を引いて算出する。酸素ホルダー圧力実績変化(ΔPy(i))の算出式を(12)式に示す。そして、タイムステップ(dT)毎に繰り返し計算を行い、酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPj(i))の算出する。その式を(13)式に示す。
ΔPj(i) = (Pj(i) - Pj(i+1))/dT ・・・(12)
ΔPj(i+1) = (Pj(i+1) - Pj(i+2))/dT
ΔPj(i+2) = (Pj(i+2)) - Pj(i+3))/dT
ΔPj(i+m) = (Pj(i+m) - Pj(i-(m+1)))/dT ・・・(13)
【0035】
酸素ホルダー圧力誤差(ΔPG(i))は、[0033]の式(10)により算出した酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))から[0034]の式(12)により算出した酸素ホルダー圧力実績変化(ΔPj(i))を引いて算出する。その酸素ホルダー圧力誤差(ΔPG(i))算出式を(14)式に示す。
ΔPG(i) = ΔPy(i) - ΔPj(i)
ΔPG(i+1) = ΔPy(i+1) - ΔPj(i+1)
ΔPG(i+2) = ΔPy(i+2) - ΔPj(i+2)
ΔPG(i+m) = ΔPy(i+m) - ΔPj(i+m) ・・・・・(14)
【0036】
したがって、時刻(i)における鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差量(QG)は、酸素ホルダー圧力誤差(ΔPG(i))に、総合酸素ホルダー容量(ΣV)を掛け合わせ算出する。その算出式を(15)式に示す。
QG(i) = ΔPG(i) × ΣV
QG(i+1) = ΔPG(i+1) × ΣV
QG(i+2) = ΔPG(i+2) × ΣV
QG(i+m) = ΔPG(i+m) × ΣV ・・・・・(15)
【0037】
次に、[0036]で算出した誤差量(QG(i))を用い、ある時刻(i+m)の未来における酸素使用予測量(Qy)を補正する方法について説明する。まず、酸素使用予測量(Qy(i))は、1時間当たりであるため、時刻(i)におけるdT時間当たりの酸素使用予測換算量(Qy(i)’)に換算する。その算出式を(16)式に示す。
Qy(i)’= (Qy(i)÷60) × dT
Qy(i+1)’= (Qy(i+1)÷60) × dT
Qy(i+2)’= (Qy(i+2)÷60) × dT
Qy(i+m)’= (Qy(i+m)÷60) × dT ・・・・・(16)
そして、時刻(i)における酸素使用予測補正量(QyH(i))は、酸素使用予測換算量Qy(i)’に誤差量(QG(i))を加算する。その算出式を(17)式に示す。そして、上記と同様に繰り返し計算を行い、時刻(i+m)における酸素使用予測補正量(QyH(i+m))を(18)式に示す。
QyH(i)= Qy(i)’ + QG(i) ・・・・・(17)
QyH(i+1)= Qy(i+1)’ + QG(i+1)
QyH(i+2)= Qy(i+2)’ + QG(i+2)
QyH(i+m)= Qy(i+m)’ + QG(i+m) ・・・・・(18)
【0038】
そして、[0037]の式(17)により算出した時刻(i)における酸素使用予測補正量(QyH(i))を酸素使用予測換算量Qy(i)’で除して、誤差率(H(i))を算出する。その算出式を(19)式に示す。そして、上記と同様に繰り返し計算を行い、時刻(i+m)における誤差率(H(i))を(20)式に示す。
H(i) = QyH(i) ÷ Qy(i)’ ・・・・・(19)
H(i+1) = QyH(i+1) ÷ Qy(i+1)’
H(i+2) = QyH(i+2) ÷ Qy(i+2)’
H(i+m) = QyH(i+m) ÷ Qy(i+m)’ ・・・・・(20)
誤差率H(i)は、各製鋼工場の吹錬開始時刻のずれによりばらつくため、時刻(i)から吹錬時間間隔の15から20分間毎に、誤差率H(i)を平均し、誤差率平均値H(i)Aveを算出する。
【0039】
そして、[0038]で算出した誤差率平均値H(i)Aveを時刻(i)における鋼種別使用予測量(QLDy(i))に掛け合わせ、鋼種別使用予測補正量(QLDyH(i))を算出する。その結果と[0025]に記載した方法を用い、製鋼総合使用予測補正量(ΣQLDyH(i+1))を算出し、上記の[0026]から[0029]の算出方法と同様に、酸素ホルダー圧力補正予測値(PyH(i+m))を算出する。
【0040】
次に、第2の要因である酸素使用開始予定時刻の誤差について、補正方法を説明する。吹錬時間は、[0006]で記載したように、種々の条件により、早くなったり遅くなったりする。例えば、スクラップの挿入準備が、10分かかる場合もあれば、15分かかる場合もあり、ばらつきにより吹錬開始時刻のずれが発生する。したがって、最適な酸素量を予測するために、予定時刻と実績時刻の差を把握する必要がある。図5に示すように、今回の吹錬開始予定時刻(Ty(i))と吹錬開始実績時刻(Tj(i))の吹錬開始時刻差(ΔT)を、(21)式で算出する。そして、算出した吹錬開始時刻差(ΔT)を、2番目の吹錬予定時刻(Ty(i+1))と3番目の吹錬予定時刻(Ty(i+2))の差(Δt)と比較する。吹錬開始時刻差(ΔT)が、吹錬準備間隔(Δt)のある特定範囲内の場合、2番目の吹錬予定時刻(Ty(i+1))に吹錬開始時刻差(ΔT)を加算し、吹錬開始時刻(Ty(i))を補正する。その算出式を(22)式に示す。しかし、逆に吹錬開始時刻差(ΔT)が、吹錬準備間隔(Δt)のある特定範囲を越える場合、2番目の吹錬予定時刻(Ty(i+1))は、補正しない。図5では、2番目、3番目の吹錬予定時刻はΔTで補正しているが、4番目の吹錬については、3番目と4番目の間の吹錬準備間隔ΔtとΔTを比較した場合、ΔTがΔtのある特定範囲(4倍超)を越えるため補正しないケースを示している。鋼種別の吹錬時間などの操業条件によって異なるが、一般的には、吹錬開始時刻差(ΔT)が、吹錬準備間隔(Δt)の4倍以内か4倍を越えるかが判断の基準になる。
ΔT(i) = Ty(i) - Tj(i) ・・・・・(21)
ΔT(i) < 吹錬準備間隔の4倍 のとき、
TyH(i+1) = Ty(i+1) + ΔT(i)
TyH(i+2) = Ty(i+2) + ΔT(i)
TyH(i+n) = Ty(i+n) + ΔT(i) ・・・・・(22)
【0041】
[0018]で述べたように、酸素需給調整では、酸素プラントの稼働台数と各酸素プラントの製造量を行っている。一般的に各酸素プラントは、経年劣化や機器性能などにより、酸素プラントの効率差が異なる。そのため、それら効率差を考慮した最適な各酸素プラントの製造量を調整することで、省エネを図ることができる。最初に、現状の各酸素プラント効率を正確に把握するため、1から2ヶ月間の酸素製造量(QOK)と、その際の酸素製造電力(QP)のデータを用いて、酸素製造電力(QP)から酸素製造量(QOK)を除した酸素製造電力原単位曲線を作成する。そして、酸素使用予測量(Qy)にあわせ、稼動している各酸素プラントの製造幅を500から1000Nm3/Hで変動させ、総合酸素製造電力(Σ(QP))を算出する。そして、総合酸素製造電力(Σ(QP))が、最も少ない酸素プラントの製造量組み合わせを出力し、各酸素プラント製造量(QOK)を決定する。
【実施例1】
【0042】
次に、図面に基づき本発明の一実施例を説明する。図6は、本発明の構成を説明する図である。[0004]で説明したように、所内の工場は、酸素を間欠的に使用する製鋼工場と連続的に使用する高炉工場やその他工場がある。そして図6に示す例では、No1製鋼工場とNo2の製鋼工場の2つの製鋼工場があり、各製鋼工場へは、4基の酸素ホルダーから酸素吐出配管により酸素が供給されており、供給された酸素によって吹錬される。酸素ホルダーには、7基の酸素プラントで酸素を製造し、6基の酸素圧縮機で1.6から2.5MPaG程度に昇圧し他酸素を供給する。さらに酸素が不足する場合は、2基の液体酸素タンク中の液酸を蒸発し供給する。
【0043】
図4の縦軸は、酸素ホルダー圧力を示し、横軸は、時間を示す。点線は、[0022]から[0027]で算出してきたデータを用いて算出した、酸素ホルダーの圧力変化予測値の推移を示す。
酸素ホルダーの圧力変化予測値の推移は、[0026]の(2)式から算出される酸素使用予測量(Qy)と[0027]の(4)式から算出される酸素供給量(QKj)を用い、[0028]の(6)式から算出される総合酸素ホルダー容量(ΣV)で除して、算出する。
次に図4中の実線は、実操業での酸素ホルダーの圧力変化実績値の推移を示す。実操業は、各製鋼工場の鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差及び吹錬開始時刻の変動による誤差が発生するため、上記の圧力変化予測値の推移と異なる。
したがって、5分毎に圧力変化予測値と圧力変化実績値を比較し、誤差量(QG)を(10)式から(15)式を用いて算出する。そして、その誤差量(QG)は、(17)式に示すように、次の吹錬の酸素使用予測換算量Qy(i)’に加算され、酸素使用予測補正量(QyH(i))を算出し補正する。
【0044】
図5は、圧力変化予測値と圧力変化実績値が異なる原因となる吹錬開始時刻の変動による誤差を説明するための吹錬スケジュールの概略図である。
まず、一番上の四角形は、吹錬予定スケジュールを示し、一番下の四角形は、吹錬実績スケジュールを示す。吹錬開始時刻は、スクラップの挿入準備などで、作業時間にばらつきが発生するため、ずれが発生する。
例えば図5に示すように、今回の吹錬開始時刻のずれがΔT発生した場合、補正後の予定に示すように、2番目以降の吹錬開始時刻をΔTづつ補正をする。ただし、吹錬準備間隔Δtが4倍以上の場合、補正後の予定に示すように、4番目の吹錬開始時刻は補正しない。
【0045】
図7に示すように同じ吹錬スケジュールにおいて、誤差率を演算しない場合と5分毎に誤差率を演算し、製鋼総合補正量を算出した場合の予測圧力と実績圧力の誤差を比較した。図7の各炉の上段は吹錬スケジユールの予測時刻であり、下段は実績時刻を示す。
誤差率を演算しない場合、図8に示すように実績平均圧力と予測平均圧力は推移し、そして実績平均圧力は、0.203MPaGに対し、予測平均圧力0.193MPaGとなり、実績平均圧力と予測平均圧力の圧力誤差は、0.010MPaGとなった。
それに対し、5分毎に誤差率を演算し、製鋼総合補正量を算出した場合、図9に示すように実績平均圧力と予測平均圧力は推移し、実績平均圧力は、0.203MPaGに対し、予測平均圧力0.205MPaGとなり、実績平均圧力と予測平均圧力の圧力誤差は、0.002MPaGとなった。したがって、5分毎に誤差率を演算し、製鋼総合補正量を算出した場合は、予測誤差が大幅に改善したことが判る。
【実施例2】
【0046】
次に、吹錬時間は一般に、吹錬の準備に10から15分かかり、ばらつきがあるため、吹錬開始時刻のずれが発生する。その結果、予定時刻と実績時刻の差を生じ、酸素需給予測に誤差が発生する。図10と図11、及び、図12と図13は、吹錬開始時刻の誤差を補正しない場合を示している。吹錬開始時刻の誤差を補正しない場合、図11からわかるように、11時30分以降は、吹錬が予定通り開始されると計算するため、酸素の放散がないと予測する。
しかし、実際、図12に示すように、前の吹錬が遅れることにより、次回以降の吹錬も遅れ、酸素ホルダーの圧力が上昇し、図13に示すように酸素の放散が更に発生する。
次に、吹錬開始時刻の誤差を補正した場合、下記の図14〜15に示すように、吹錬スケジュールが自動的に変更し、酸素需給予測の再計算するため、11時30分以降から酸素ホルダー圧力が上昇し、酸素の放散傾向となることが分かる。したがって、オペレーターは、酸素製造量を調整することで、図16に示すように、酸素ホルダー圧力を低減し、省エネを図ることができる。
【実施例3】
【0047】
酸素需給調整では、酸素プラントの稼働台数と各酸素プラントの製造量を行っている。一般的に各酸素プラントは、経年劣化や機器性能などにより、酸素プラントの効率差が異なる。そのため、それら効率差を考慮した最適な各酸素プラントの製造量を調整することで、省エネを図ることができる。
各酸素プラントの製造電力は、1から2ヶ月間の酸素製造量(QOK)と酸素製造電力(QP)の平均データを用いた酸素製造電力原単位曲線から算出する。そのため、表3及び表4に示すように酸素需要量126,000Nm3/Hにあわせ、稼動している酸素プラントの酸素発生量を500Nm3/H間隔毎に変化させ、酸素製造電力原単位曲線から算出される製造電力の組み合わせ計算を行う。その結果、表の各酸素プラントの製造量組み合わせでは、総製造電力が、55,371KWとなる。
それに対し、表3及び表4の各酸素プラントの製造量組み合わせでは、総製造電力が、54,476KWとなる。したがって、オペレーターは、総製造電力が最も小さくなる各酸素プラントの製造量組み合わせに従い、酸素製造量を調整し、省電力を図ることができる。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の酸素製造量予測方法は、最適な酸素発製造バランスを達成し、酸素製造電力を低減することができ、製鉄プロセス等の酸素製造プラントとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】酸素供給設備の全体構成を示す図。
【図2】酸素使用量予測システムの全体構成を示す図。
【図3】酸素使用予測量を算出する方法を示す図。
【図4】鋼種別使用実績量の誤差量を算出する方法を示す図。
【図5】吹錬スケジュールを修正する方法を示す図。
【図6】本発明を説明する構成図。
【図7】誤差率の修正有無を比較するための吹錬スケジュールを示す図。
【図8】誤差率を修正しない場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図9】誤差率を修正した場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図10】吹錬スケジュールを自動修正しない場合の吹錬スケジュールを示す図。
【図11】吹錬スケジュールを自動修正しない場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図12】吹錬スケジュールを自動修正せず吹錬スケジュールが遅れた場合の吹錬スケジュールを示す図。
【図13】吹錬スケジュールを自動修正せず吹錬スケジュールが遅れた場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図14】吹錬スケジュールを自動修正した場合の吹錬スケジュールを示す図。
【図15】吹錬スケジュールを自動修正した場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図16】吹錬スケジュールを自動修正し酸素製造量を変更した場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄業等の酸素を大量に使用する産業における、酸素製造電力を低減することを目的とした酸素製造プラントの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、製鉄業では酸素を大量に使用している。そのため、製鉄所内に大規模な酸素プラントを設置し、酸素の製造を行っている。酸素プラントで製造された酸素は、酸素圧縮機で所定の圧力まで圧縮され、酸素ホルダーに一旦貯留された後、酸素を使用している各工場に供給されている。各工場に酸素を安定的に供給するためには、酸素を貯留する酸素ホルダーのガス圧力を一定の範囲内に保つ必要がある。
【0003】
そのため、各工場の酸素使用量の予測に基づいて、酸素プラントで酸素製造量の増減を行うことにより、酸素ホルダーのガス圧力を一定の範囲内に保つように調整を行っている。酸素ホルダーのガス圧力が一定の範囲を下回る場合は、液体酸素タンクに貯蔵された液体酸素を加圧蒸発させることにより、不足する酸素量を補う場合もある。
【0004】
工場の酸素使用パターンは、連続使用と間欠使用の大きく2つに分類できる。連続使用工場では、工場が稼動している間はほぼ一定量の酸素を連続的に使用している。従って、工場の稼動状態のみで酸素使用量を把握できるため、酸素使用量の予測が容易である。一方、間欠使用工場では、酸素の使用が間欠的であり、酸素使用量の変動が大きいため、酸素使用量の予測が困難である。そのため、酸素使用量を精度よく予測するためには、間欠使用工場の酸素使用量の予測が重要となる。
【0005】
製鉄所における間欠使用工場の代表は製鋼工場である。その製鋼工場の操業について次に説明する。製鋼工場では、転炉と呼ばれる容量最大350トン程度の炉の中に、高炉で製造された溶銑と鉄スクラップ等を装入する。そして、その転炉の中に1.6から2.5MPaGの高圧酸素を、最大約50,000Nm3/Hの速度で大量に吹き付け、溶銑中の炭素・珪素・リンなどの不純物を燃焼させる。ここで、溶銑に酸素を吹き付け不純物を燃焼させる処理を吹錬という。吹錬終了後、転炉内の溶鋼を鍋へ排出し、その後、溶鋼を連続的に鋳造し、スラブやブルームなどの鋼片を製造する。
【0006】
通常の転炉操業では、溶銑と鉄スクラップ等などを装入し、吹錬の準備をするのに10から15分の時間を要する。そして準備完了後、吹錬を10から20分間行う。その後、転炉から溶鋼を排出して一回分の吹錬作業は完了するが、この一回分の作業で30から40分程度の時間を要する。通常、製鋼工場には複数の転炉が設置され、それぞれの転炉で吹錬スケジュールに従い一連の吹錬作業が繰り返し行われている。従って、製鋼工場で使用される酸素量は、間欠的に大きく変動する。
【0007】
実際の転炉で使用する酸素量は、溶銑の成分、溶銑や鉄スクラップ等の装入量、また製造する溶鋼の目標成分等によって異なるため、吹錬毎に酸素使用量は変動する。また、実操業では、吹錬作業が、計画された吹錬スケジュール通りには進捗しない場合が多いため、酸素の使用スケジュールも時々刻々変化していくことになる。従って、転炉での酸素使用量を精度よく予測するためには、吹錬毎の酸素使用量、及び吹錬スケジュールを正確に把握することが必要となる。
【0008】
そのため、従来、酸素使用量を予測するいくつかの方法が実施されており、例えば、特許文献1(特開平6−207211号公報)に記載されている方法がある。その方法は、各転炉の吹錬実績から次回吹錬時の酸素使用量パターンと吹錬時間を予測するとともに、予め設定された転炉の吹錬スケジュールと転炉吹錬実績から転炉の次回吹錬開始時刻を予測し、次回吹錬終了時までの酸素ホルダー内の酸素圧力を逐次予測するものであった。
【特許文献1】特開平6−207211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の酸素使用量の予測方法では、特許文献1(特開平6−207211号公報)に記載されているような、各転炉の吹錬時の酸素実績使用量を用いて、次回吹錬時の酸素使用量の予測を行っていた。しかしながら、実際の操業では、吹錬毎に溶銑の成分、溶銑と鉄スクラップ等の装入量、また製造する溶鋼の目標成分が異なるため、吹錬毎に酸素使用量が変動する。そのため、従来の予測方法では、吹錬毎の酸素使用予測量と実績量の誤差が大きく発生していた。
【0010】
また、実際の操業では、吹錬作業の進捗状況などにより、次回の吹錬開始時刻は早まったり、遅くなったりするために、吹錬スケジュールは時々刻々と変化する。これに対して、従来の予測方法では、予め設定された転炉の吹錬スケジュールに基づいて、転炉吹錬実績から次回吹錬開始予定時刻のみを補正予測する手法であるため、吹錬スケジュールも次回吹錬分しか補正されていなかった。すなわち、次々回吹錬以降の吹錬開始予定時刻の誤差が補正されないために、長時間の酸素使用量の予測において、誤差が大きくなっていた。
【0011】
上記の酸素使用量予測方法では、特に長時間の酸素使用量の予測において、誤差が大きく発生する。その結果、酸素プラントでの酸素製造量の過不足が生じることになる。例えば、酸素使用量の真値に対して予測値が過大となるの場合は、酸素製造量が過剰となるため、酸素ホルダーのガス圧力は上昇する。その結果、酸素ホルダーへ酸素を供給する酸素圧縮機の消費電力が増加する。酸素ホルダーのガス圧力が更に上昇した場合には、酸素ホルダーの設備保護のために酸素を大気に放出しなければならない。
【0012】
一方、酸素使用量の真値に対して予測値が過小となるの場合は、酸素製造量が不足するため、酸素ホルダーのガス圧力は低下する。ガス圧力が吹錬に必要な圧力を下回る場合には、吹錬が出来なくなる。そのため、液体酸素タンクに貯蔵された液体酸素を加圧蒸発させて、酸素を供給しなければならない。従って、酸素使用量の予測値に誤差が発生することにより、酸素圧縮機の消費電力増加、酸素の大気放散、高価な液体酸素の使用などのコストロスが発生していた。
【0013】
また、一般的に、酸素製造を行う酸素プラントは、複数の性能の異なるプラントから構成されており、酸素使用量の増減に合わせて各酸素プラントの酸素製造量を増減させる運用を行っている。従来の酸素使用量予測方法では、各酸素プラントの性能を考慮して製造量の増減調整を行う方法となっていないため、結果的に、酸素製造電力に無駄が生じていた。
【0014】
従来技術には、上記のような問題点があり、必ずしも効率的な酸素製造が行われていなかったことから、これらの問題を解決するための手段が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するために成されたものであり、その要旨とするところは、(1)〜(3)に記載されているものである。
(1)製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、鋼種別に酸素使用実績量及び吹錬実績時間の操業データをデータベース化し、今後行う吹錬の鋼種と吹錬開始時刻から吹錬スケジュールを作成し、吹錬スケジュールの鋼種別に、該データベースから酸素使用実績量と吹錬実績時間を選択して製鋼工場以外の高炉工場やその他工場の酸素使用量を加算し、酸素使用予測量を算出し、算出した酸素使用予測量と各鋼種毎の酸素使用実績量の誤差について、予測量と実績量における酸素ホルダーの圧力降下勾配の違いを自動的に比較し補正係数を演算した後、次回の予測量に補正係数をかけあわせ、次回以降の酸素使用量の予測精度を向上させることを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
(2)製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、酸素使用開始予定時刻と酸素使用開始実績時刻がずれる場合、酸素使用開始予定時刻と酸素開始実績時刻を比較して酸素使用開始時刻の誤差を算出し、算出した誤差を次回以降の酸素使用開示時刻に加算して、酸素使用開始時刻を補正することを特徴とする前記(1)に記載の最適な酸素製造量予測方法。
(3)複数の酸素プラントの酸素製造電力原単位曲線をデータベース化し、予測量にあった最適な酸素プラント発生量を組み合わせ計算し、酸素製造電力を低減することを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素製造量の予測をより正確に把握することができるため、酸素ホルダーの圧力を低く保持することができ、酸素圧縮機の消費電力を低減し、更に大気への酸素の放出を削減できる。また高価な液体酸素を蒸発する必要がなくなるため、エネルギーロスを削減できる。更に酸素プラントは、最適な酸素製造バランスで稼動でき、酸素製造電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一般的に、製鉄所には複数の高炉工場、製鋼工場及びその他工場が設置されており、各工場が大量に酸素を使用している。図1に酸素供給設備の一例を示すが、酸素プラントのトラブル等による停止影響を最小限に抑えるため、一般的に複数の酸素プラントが設置され、酸素の製造が行われている。各酸素プラント1A、1B、及び、1Cで製造された酸素は、酸素吸込母管2を経由して、高炉送風工場12及び酸素圧縮機3A、3B、及び、3Cに供給される。高炉送風工場へ供給された酸素は、送風機に大気とともに吸込まれ、所定の圧力まで昇圧された後、高炉工場13A、13B、及び、13Cへ供給される。また、酸素圧縮機に供給された酸素は、1.6から2.5MPaG程度まで昇圧され、酸素ホルダー5A、5Bで一旦貯留された後、製鋼工場6A、6B及びその他工場7へ供給されていることが一般的である。更に、液体酸素タンク8A、8Bが設置され、酸素ホルダーからの酸素供給量で不足する場合には、液体酸素を蒸発器9で加圧蒸発して供給できる設備構成となっている。
【0018】
各工場の酸素使用量に合わせて、酸素プラントの稼働台数が決まる。そして、酸素使用量が変動した場合、各酸素プラントの製造量の増減調整を行う。酸素プラントが複数台設置されている場合は、酸素プラント毎に製造能力が異なる場合が多い。一方、各酸素プラントの酸素製造増減範囲は、プラント能力の約80から100%の範囲が一般的である。例えば、酸素使用量が増加した場合は、各プラントの製造量を増加させるが、稼動している全ての酸素プラントの製造能力が100%能力以上になる場合には、停止している酸素プラントを起動する。一方、酸素使用量が減少した場合は、各酸素プラントの製造量を減少させるが、稼動している全ての酸素プラントが製造能力の80%以下程度になる場合には、需給バランスに合わせ、適切な台数を停止する。
【0019】
また、各工場の酸素使用量に合わせて、酸素圧縮機の流量調整も必要となる。酸素圧縮機の流量調整は、圧縮機の稼働台数の増減と、各圧縮機の流量調節弁10A、10B、及び、10Cの開度調整により行う。流量調節弁による流量の増減範囲は、圧縮機能力の約80から100%の範囲が一般的である。例えば、酸素プラントの製造量を増加させた場合、酸素圧縮機の吸込圧力が上昇する。この場合は、酸素圧縮機の流量調節弁が、吸込圧力を一定に保つように開方向に動作し、酸素圧縮機から酸素ホルダーへの供給流量が増加する。それでも更に吸込圧力が上昇する場合には、停止している酸素圧縮機を起動し、酸素圧縮機の流量を増加させ、製造量と圧縮量の需給バランスを調整する。一方、酸素プラントの製造量を減少させた場合、酸素圧縮機の吸込圧力が低下する。この場合は、酸素圧縮機の流量調節弁は閉方向に動作し、酸素圧縮機から酸素ホルダーに供給される流量が減少する。それでも更に吸込圧力が低下する場合には、酸素圧縮機の吐出配管と吸込配管を繋ぐ配管に設置しているバイパス弁11A、11B、及び、11Cが開方向に動作する。そして、吐出配管から吸込配管へ供給され、酸素圧縮機からホルダーに供給される流量が低下する。通常、バイパス弁が開動作した状態で長時間運転する場合、酸素を圧縮する電力が無駄となるため、酸素需要にあわせ適切な台数を停止する。
【0020】
酸素ホルダーのガス圧力は、各工場の酸素使用量の変動に伴い変動する。したがって、各工場に酸素を安定的に供給するためには、酸素ホルダーのガス圧力を一定の範囲内に制御する必要がある。例えば、各工場の酸素使用量が増加した場合、酸素ホルダーのガス圧力が低下するため、酸素プラントの製造量を増加させる必要がある。しかし、製造量を増加させても酸素ホルダーのガス圧力が更に低下する場合には、液体酸素タンクから液体酸素を加圧蒸発させ、酸素ホルダーのガス圧力を上昇させる。一方、各工場の酸素使用量が減少した場合、酸素ホルダーのガス圧力は上昇するため、酸素プラントの製造量を減少させる。製造量が減少すると、前述の通り、酸素圧縮機の流量は減少し、酸素ホルダーのガス圧力は低下する。しかし、製造量を減少させても酸素ホルダーのガス圧力が更に上昇する場合には、酸素ホルダーの設備保護のために、酸素を大気に放出しなければならない。通常、酸素を大気に放出しながら長時間運転する場合は、酸素を製造するための電力が無駄となるため、酸素需要にあわせ酸素プラントと酸素圧縮機の適切な台数を停止する。
【0021】
以下、図面に基づき本発明の酸素使用量予測方法を説明する。図2に酸素使用量予測システムの概略図を示す。まず、酸素使用予測量(Qy)について述べる。酸素使用予測量(Qy)は、連続的に使用される高炉酸素使用予測量(QBFy)と他工場で使用される酸素雑用予測量(QZy)及び間欠的に使用される製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)の合計量である。高炉酸素使用予測量(QBFy)は、高炉工場からの指定量であり、酸素雑用予測量(QZy)は、各工場の生産量とその他から求められる酸素予測量で、これらは、酸素ホルダー圧力計算部16へ入力される。
【0022】
そして、間欠的に使用される製鋼工場の総合酸素使用予測量(ΣQLDy)は、次の2つのデータテーブルを用い算出する。表1に示すデータテーブルは、各製鋼工場の鋼種や吹錬開始予定時刻を示す吹錬スケジュールデータテーブルである。また、表2に示すデータテーブルは、各鋼種別使用量及び所要吹錬時間を求めるため、製鋼工場での吹錬において、過去の1チャージ当りにおける鋼種別酸素実績使用量(QLDj)及び吹錬実績時間(tj)の吹錬実績データテーブルである。吹錬実績データテーブルは、鋼種別使用予測量(QLDy)及び吹錬所要時間(ty)の誤差を少なくするために、現在から15〜50日間程度さかのぼった過去のある一定期間の平均値を使用する。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
次に、製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)について説明する。まず製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)は、ある時刻における各製鋼工場の各鋼種別使用量を加算したものである。その製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)を算出するため、各製鋼工場の1チャージ当りにおける鋼種別酸素使用予測量(QLDy)を求める。その方法は、表1に示すように鋼種や吹錬開始予定時刻のデータを吹錬情報入力部14へ入力し、表1に示すような吹錬スケジュールデータテーブルを作成する。そして、吹錬スケジュールデータテーブルの鋼種と一致するデータを、吹錬実績データテーブル15から探し出し、鋼種別酸素実績使用量(QLDj)及び吹錬実績時間(tj)のデータを、図2の酸素ホルダー圧力計算部16へ自動的に入力する。表1と表2においては、鋼種Cが一致している。複数(n)の製鋼工場がある場合は、同時刻(i)毎に鋼種別酸素使用予測量(QLDy)を加算し、製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)を算出する。その製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)の算出式を(1)式に示す。
ΣQLDy(i)= QLDy1(i)+QLDy2(i)+・・+ QLDy(n)(i)・・・(1)
図3に示す例では、3つの製鋼工場があるため、
ΣQLDy(i)= QLDy1(i)+QLDy2(i)+QLDy3(i) となる。
【0026】
したがって、図3に示すようにある時刻(i)における酸素使用予測量(Qy(i))は、[0021]に記載した酸素富化量(QBFy)と酸素雑用量(QZy)、及び、[0025]で算出した製鋼総合酸素使用予測量(ΣQLDy)を加算して算出する。その酸素使用予測量(Qy)の算出式を(2)式に示す。
Qy(i)= QBFy(i)+ QZy(i)+ ΣQLDy(i) ・・・(2)
【0027】
次に、現在発生している酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)は、図2に示すように複数台(n)設置している各酸素プラント製造量(QOK(n)j)を加算し、算出する。その酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)の算出式を(3)式に示す。そして、現在の酸素供給量(QKj)は、(3)式で求めた酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)と液体酸素蒸発量(QLOj)を加算し、算出する。その酸素供給量(QKj)の算出式を(4)式に示す。
ΣQOKj = QOK1j+QOK2j +・・・・+ QOK(n)j ・・・(3)
QKj = ΣQOKj+QLOj ・・・(4)
図2に示す例では、3基の酸素プラントがあるため、
ΣQOKj = QOK1j + QOK2j+ QOK3j となる。
次に、[0022]から[0027]で算出してきたデータを用い、酸素ホルダーの圧力変化を算出する。
【0028】
酸素ホルダーの圧力変化は、[0026]で求めた酸素使用予測量(Qy)と[0027]で求めた酸素供給量(QKj)の差によって発生する。その酸素ホルダーの圧力変化を、より正確に把握するために1から5分間隔のタイムステップ(dT)毎に、酸素使用量と酸素供給量の差を比較し算出する。タイムステップ(dT)毎の酸素需給量差(ΔQy/dT)は、(4)式の酸素供給量(QKj)から(2)式の酸素使用予測量(Qy)を減算して算出する。その酸素需給量差(ΔQy/dT)を(5)式に示す。そして、酸素ホルダーのタイムステップ(dT)毎に変化する時間当りの圧力予測変化値(dPy/dT)は、酸素需給量差(ΔQy/dT)を各酸素ホルダー容量(V)を加算した総合酸素ホルダー容量(ΣV)で除して算出する。その総合酸素ホルダー容量(ΣV)の算出式を(6)式に示し、酸素ホルダー圧力予測変化(dPy/dT)の算出式を(7)式に示す。
ΔQy/dT= (QKj - Qy)/dT ・・・(5)
ΣV = V1 + V2 +・・・・+ V(n) ・・・(6)
dPy/dT = ΔQy/dT ÷ ΣV ・・・(7)
【0029】
その結果、ある時刻における酸素ホルダー圧力予測値(Py(i))は、実測した酸素ホルダー圧力実績値(Pj)に、[0028]で演算した酸素ホルダーのタイムステップ(dT)毎に変化する時間当りの圧力予測変化値(dPy/dT)を加算して算出する。その酸素ホルダー圧力予測変化値(dPy/dT)の算出式を(8)式に示す。更に、時刻(i+m)における酸素ホルダー圧力予測(Py(i+m))は、(8)式にタイムステップ(dT)毎に変化する時間当りの圧力予測変化値(dPy(i+m)/dT)を加算し、繰り返し計算することで、算出する。その酸素ホルダー圧力予測(Py(i+m))の算出式を(9)式に示す。
Py(i) = Pj +(d(Py(i))/dT)・dT ・・・(8)
Py(i+1) = Py(i) +(d(Py(i+1))/dT)・dT
Py(i+2) = Py(i+1) +(d(Py(i+2))/dT)・dT
Py(i+m) = Py(i+(m-1)) +(d(Py(i+m))/dT)・dT ・・・(9)
【0030】
オペレーターは、高炉工場や製鋼工場などへ酸素を安定供給するために、酸素ホルダー圧力Py(i+m)を特定の操業圧力範囲内に保つように、酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)や液体酸素蒸発量(QLOj)を調整する。その酸素プラント製造総合計(ΣQOKj)や液体酸素蒸発量(QLOj)は、コンピュータを活用することで、各酸素プラント及び蒸発器能力範囲内で自動的に調整することは可能である。
【0031】
実操業では、過去のある時刻において予測した酸素ホルダー圧力値(Py(i))と酸素ホルダー圧力実績値(Pj(i))の誤差が、2つの要因から発生する。その第1の要因は、各製鋼工場の鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差である。そして、第2の要因は、吹錬準備作業が早くなったり、逆に遅くなったりするために発生する吹錬開始時刻の変動による誤差である。この2つの誤差要因を補正することで、より正確に酸素ホルダーの圧力予測ができる。
【0032】
最初に、第1の要因である吹錬実績データの鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差の補正方法について説明する。まず過去のある時刻(i)において予測した鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)についての誤差量(QG)の算出方法を説明する。誤差量(QG)は、予測していた酸素ホルダー圧力変化(ΔPy)と実際の酸素ホルダー圧力変化(ΔPj)の差から算出する。誤差量(QG)は、図4に示すように過去のある時刻(i)からタイムステップ(dT)毎に算出する。タイムステップ(dT)は、誤差量(QG)をより正確に把握するため、1から5分間隔内に設定する。
【0033】
酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))は、時刻iの酸素ホルダー圧力予測値(Py(i))からタイムステップ(dT)後の(i+1)時刻における酸素ホルダー圧力予測値(Py(i+1))を引いて算出する。その酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))の算出式を(6)式に示す。そして、タイムステップ(dT)毎に繰り返し計算を行い、酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))の算出する。その式を(11)式に示す。
ΔPy(i) = (Py(i) - Py(i+1))/dT ・・・(10)
ΔPy(i+1) = (Py(i+1) - Py(i+2))/dT
ΔPy(i+2) = (Py(i+2)) - Py(i+3))/dT
ΔPy(i+m) = (Py(i+m) - Py(i-(m+1)))/dT ・・・(11)
【0034】
次に、酸素ホルダー圧力実績変化(ΔPj(i))は、酸素ホルダー圧力予測値(Py(i))の算出方法と同様に、時刻(i)の酸素ホルダー圧力実績値(Pj(i))からタイムステップ(dT)後の(i+1)時刻における酸素ホルダー圧力実績値(Pj(i+1))を引いて算出する。酸素ホルダー圧力実績変化(ΔPy(i))の算出式を(12)式に示す。そして、タイムステップ(dT)毎に繰り返し計算を行い、酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPj(i))の算出する。その式を(13)式に示す。
ΔPj(i) = (Pj(i) - Pj(i+1))/dT ・・・(12)
ΔPj(i+1) = (Pj(i+1) - Pj(i+2))/dT
ΔPj(i+2) = (Pj(i+2)) - Pj(i+3))/dT
ΔPj(i+m) = (Pj(i+m) - Pj(i-(m+1)))/dT ・・・(13)
【0035】
酸素ホルダー圧力誤差(ΔPG(i))は、[0033]の式(10)により算出した酸素ホルダー圧力予測変化(ΔPy(i))から[0034]の式(12)により算出した酸素ホルダー圧力実績変化(ΔPj(i))を引いて算出する。その酸素ホルダー圧力誤差(ΔPG(i))算出式を(14)式に示す。
ΔPG(i) = ΔPy(i) - ΔPj(i)
ΔPG(i+1) = ΔPy(i+1) - ΔPj(i+1)
ΔPG(i+2) = ΔPy(i+2) - ΔPj(i+2)
ΔPG(i+m) = ΔPy(i+m) - ΔPj(i+m) ・・・・・(14)
【0036】
したがって、時刻(i)における鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差量(QG)は、酸素ホルダー圧力誤差(ΔPG(i))に、総合酸素ホルダー容量(ΣV)を掛け合わせ算出する。その算出式を(15)式に示す。
QG(i) = ΔPG(i) × ΣV
QG(i+1) = ΔPG(i+1) × ΣV
QG(i+2) = ΔPG(i+2) × ΣV
QG(i+m) = ΔPG(i+m) × ΣV ・・・・・(15)
【0037】
次に、[0036]で算出した誤差量(QG(i))を用い、ある時刻(i+m)の未来における酸素使用予測量(Qy)を補正する方法について説明する。まず、酸素使用予測量(Qy(i))は、1時間当たりであるため、時刻(i)におけるdT時間当たりの酸素使用予測換算量(Qy(i)’)に換算する。その算出式を(16)式に示す。
Qy(i)’= (Qy(i)÷60) × dT
Qy(i+1)’= (Qy(i+1)÷60) × dT
Qy(i+2)’= (Qy(i+2)÷60) × dT
Qy(i+m)’= (Qy(i+m)÷60) × dT ・・・・・(16)
そして、時刻(i)における酸素使用予測補正量(QyH(i))は、酸素使用予測換算量Qy(i)’に誤差量(QG(i))を加算する。その算出式を(17)式に示す。そして、上記と同様に繰り返し計算を行い、時刻(i+m)における酸素使用予測補正量(QyH(i+m))を(18)式に示す。
QyH(i)= Qy(i)’ + QG(i) ・・・・・(17)
QyH(i+1)= Qy(i+1)’ + QG(i+1)
QyH(i+2)= Qy(i+2)’ + QG(i+2)
QyH(i+m)= Qy(i+m)’ + QG(i+m) ・・・・・(18)
【0038】
そして、[0037]の式(17)により算出した時刻(i)における酸素使用予測補正量(QyH(i))を酸素使用予測換算量Qy(i)’で除して、誤差率(H(i))を算出する。その算出式を(19)式に示す。そして、上記と同様に繰り返し計算を行い、時刻(i+m)における誤差率(H(i))を(20)式に示す。
H(i) = QyH(i) ÷ Qy(i)’ ・・・・・(19)
H(i+1) = QyH(i+1) ÷ Qy(i+1)’
H(i+2) = QyH(i+2) ÷ Qy(i+2)’
H(i+m) = QyH(i+m) ÷ Qy(i+m)’ ・・・・・(20)
誤差率H(i)は、各製鋼工場の吹錬開始時刻のずれによりばらつくため、時刻(i)から吹錬時間間隔の15から20分間毎に、誤差率H(i)を平均し、誤差率平均値H(i)Aveを算出する。
【0039】
そして、[0038]で算出した誤差率平均値H(i)Aveを時刻(i)における鋼種別使用予測量(QLDy(i))に掛け合わせ、鋼種別使用予測補正量(QLDyH(i))を算出する。その結果と[0025]に記載した方法を用い、製鋼総合使用予測補正量(ΣQLDyH(i+1))を算出し、上記の[0026]から[0029]の算出方法と同様に、酸素ホルダー圧力補正予測値(PyH(i+m))を算出する。
【0040】
次に、第2の要因である酸素使用開始予定時刻の誤差について、補正方法を説明する。吹錬時間は、[0006]で記載したように、種々の条件により、早くなったり遅くなったりする。例えば、スクラップの挿入準備が、10分かかる場合もあれば、15分かかる場合もあり、ばらつきにより吹錬開始時刻のずれが発生する。したがって、最適な酸素量を予測するために、予定時刻と実績時刻の差を把握する必要がある。図5に示すように、今回の吹錬開始予定時刻(Ty(i))と吹錬開始実績時刻(Tj(i))の吹錬開始時刻差(ΔT)を、(21)式で算出する。そして、算出した吹錬開始時刻差(ΔT)を、2番目の吹錬予定時刻(Ty(i+1))と3番目の吹錬予定時刻(Ty(i+2))の差(Δt)と比較する。吹錬開始時刻差(ΔT)が、吹錬準備間隔(Δt)のある特定範囲内の場合、2番目の吹錬予定時刻(Ty(i+1))に吹錬開始時刻差(ΔT)を加算し、吹錬開始時刻(Ty(i))を補正する。その算出式を(22)式に示す。しかし、逆に吹錬開始時刻差(ΔT)が、吹錬準備間隔(Δt)のある特定範囲を越える場合、2番目の吹錬予定時刻(Ty(i+1))は、補正しない。図5では、2番目、3番目の吹錬予定時刻はΔTで補正しているが、4番目の吹錬については、3番目と4番目の間の吹錬準備間隔ΔtとΔTを比較した場合、ΔTがΔtのある特定範囲(4倍超)を越えるため補正しないケースを示している。鋼種別の吹錬時間などの操業条件によって異なるが、一般的には、吹錬開始時刻差(ΔT)が、吹錬準備間隔(Δt)の4倍以内か4倍を越えるかが判断の基準になる。
ΔT(i) = Ty(i) - Tj(i) ・・・・・(21)
ΔT(i) < 吹錬準備間隔の4倍 のとき、
TyH(i+1) = Ty(i+1) + ΔT(i)
TyH(i+2) = Ty(i+2) + ΔT(i)
TyH(i+n) = Ty(i+n) + ΔT(i) ・・・・・(22)
【0041】
[0018]で述べたように、酸素需給調整では、酸素プラントの稼働台数と各酸素プラントの製造量を行っている。一般的に各酸素プラントは、経年劣化や機器性能などにより、酸素プラントの効率差が異なる。そのため、それら効率差を考慮した最適な各酸素プラントの製造量を調整することで、省エネを図ることができる。最初に、現状の各酸素プラント効率を正確に把握するため、1から2ヶ月間の酸素製造量(QOK)と、その際の酸素製造電力(QP)のデータを用いて、酸素製造電力(QP)から酸素製造量(QOK)を除した酸素製造電力原単位曲線を作成する。そして、酸素使用予測量(Qy)にあわせ、稼動している各酸素プラントの製造幅を500から1000Nm3/Hで変動させ、総合酸素製造電力(Σ(QP))を算出する。そして、総合酸素製造電力(Σ(QP))が、最も少ない酸素プラントの製造量組み合わせを出力し、各酸素プラント製造量(QOK)を決定する。
【実施例1】
【0042】
次に、図面に基づき本発明の一実施例を説明する。図6は、本発明の構成を説明する図である。[0004]で説明したように、所内の工場は、酸素を間欠的に使用する製鋼工場と連続的に使用する高炉工場やその他工場がある。そして図6に示す例では、No1製鋼工場とNo2の製鋼工場の2つの製鋼工場があり、各製鋼工場へは、4基の酸素ホルダーから酸素吐出配管により酸素が供給されており、供給された酸素によって吹錬される。酸素ホルダーには、7基の酸素プラントで酸素を製造し、6基の酸素圧縮機で1.6から2.5MPaG程度に昇圧し他酸素を供給する。さらに酸素が不足する場合は、2基の液体酸素タンク中の液酸を蒸発し供給する。
【0043】
図4の縦軸は、酸素ホルダー圧力を示し、横軸は、時間を示す。点線は、[0022]から[0027]で算出してきたデータを用いて算出した、酸素ホルダーの圧力変化予測値の推移を示す。
酸素ホルダーの圧力変化予測値の推移は、[0026]の(2)式から算出される酸素使用予測量(Qy)と[0027]の(4)式から算出される酸素供給量(QKj)を用い、[0028]の(6)式から算出される総合酸素ホルダー容量(ΣV)で除して、算出する。
次に図4中の実線は、実操業での酸素ホルダーの圧力変化実績値の推移を示す。実操業は、各製鋼工場の鋼種別使用予測量(QLDy)と鋼種別使用実績量(QLDj)の誤差及び吹錬開始時刻の変動による誤差が発生するため、上記の圧力変化予測値の推移と異なる。
したがって、5分毎に圧力変化予測値と圧力変化実績値を比較し、誤差量(QG)を(10)式から(15)式を用いて算出する。そして、その誤差量(QG)は、(17)式に示すように、次の吹錬の酸素使用予測換算量Qy(i)’に加算され、酸素使用予測補正量(QyH(i))を算出し補正する。
【0044】
図5は、圧力変化予測値と圧力変化実績値が異なる原因となる吹錬開始時刻の変動による誤差を説明するための吹錬スケジュールの概略図である。
まず、一番上の四角形は、吹錬予定スケジュールを示し、一番下の四角形は、吹錬実績スケジュールを示す。吹錬開始時刻は、スクラップの挿入準備などで、作業時間にばらつきが発生するため、ずれが発生する。
例えば図5に示すように、今回の吹錬開始時刻のずれがΔT発生した場合、補正後の予定に示すように、2番目以降の吹錬開始時刻をΔTづつ補正をする。ただし、吹錬準備間隔Δtが4倍以上の場合、補正後の予定に示すように、4番目の吹錬開始時刻は補正しない。
【0045】
図7に示すように同じ吹錬スケジュールにおいて、誤差率を演算しない場合と5分毎に誤差率を演算し、製鋼総合補正量を算出した場合の予測圧力と実績圧力の誤差を比較した。図7の各炉の上段は吹錬スケジユールの予測時刻であり、下段は実績時刻を示す。
誤差率を演算しない場合、図8に示すように実績平均圧力と予測平均圧力は推移し、そして実績平均圧力は、0.203MPaGに対し、予測平均圧力0.193MPaGとなり、実績平均圧力と予測平均圧力の圧力誤差は、0.010MPaGとなった。
それに対し、5分毎に誤差率を演算し、製鋼総合補正量を算出した場合、図9に示すように実績平均圧力と予測平均圧力は推移し、実績平均圧力は、0.203MPaGに対し、予測平均圧力0.205MPaGとなり、実績平均圧力と予測平均圧力の圧力誤差は、0.002MPaGとなった。したがって、5分毎に誤差率を演算し、製鋼総合補正量を算出した場合は、予測誤差が大幅に改善したことが判る。
【実施例2】
【0046】
次に、吹錬時間は一般に、吹錬の準備に10から15分かかり、ばらつきがあるため、吹錬開始時刻のずれが発生する。その結果、予定時刻と実績時刻の差を生じ、酸素需給予測に誤差が発生する。図10と図11、及び、図12と図13は、吹錬開始時刻の誤差を補正しない場合を示している。吹錬開始時刻の誤差を補正しない場合、図11からわかるように、11時30分以降は、吹錬が予定通り開始されると計算するため、酸素の放散がないと予測する。
しかし、実際、図12に示すように、前の吹錬が遅れることにより、次回以降の吹錬も遅れ、酸素ホルダーの圧力が上昇し、図13に示すように酸素の放散が更に発生する。
次に、吹錬開始時刻の誤差を補正した場合、下記の図14〜15に示すように、吹錬スケジュールが自動的に変更し、酸素需給予測の再計算するため、11時30分以降から酸素ホルダー圧力が上昇し、酸素の放散傾向となることが分かる。したがって、オペレーターは、酸素製造量を調整することで、図16に示すように、酸素ホルダー圧力を低減し、省エネを図ることができる。
【実施例3】
【0047】
酸素需給調整では、酸素プラントの稼働台数と各酸素プラントの製造量を行っている。一般的に各酸素プラントは、経年劣化や機器性能などにより、酸素プラントの効率差が異なる。そのため、それら効率差を考慮した最適な各酸素プラントの製造量を調整することで、省エネを図ることができる。
各酸素プラントの製造電力は、1から2ヶ月間の酸素製造量(QOK)と酸素製造電力(QP)の平均データを用いた酸素製造電力原単位曲線から算出する。そのため、表3及び表4に示すように酸素需要量126,000Nm3/Hにあわせ、稼動している酸素プラントの酸素発生量を500Nm3/H間隔毎に変化させ、酸素製造電力原単位曲線から算出される製造電力の組み合わせ計算を行う。その結果、表の各酸素プラントの製造量組み合わせでは、総製造電力が、55,371KWとなる。
それに対し、表3及び表4の各酸素プラントの製造量組み合わせでは、総製造電力が、54,476KWとなる。したがって、オペレーターは、総製造電力が最も小さくなる各酸素プラントの製造量組み合わせに従い、酸素製造量を調整し、省電力を図ることができる。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の酸素製造量予測方法は、最適な酸素発製造バランスを達成し、酸素製造電力を低減することができ、製鉄プロセス等の酸素製造プラントとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】酸素供給設備の全体構成を示す図。
【図2】酸素使用量予測システムの全体構成を示す図。
【図3】酸素使用予測量を算出する方法を示す図。
【図4】鋼種別使用実績量の誤差量を算出する方法を示す図。
【図5】吹錬スケジュールを修正する方法を示す図。
【図6】本発明を説明する構成図。
【図7】誤差率の修正有無を比較するための吹錬スケジュールを示す図。
【図8】誤差率を修正しない場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図9】誤差率を修正した場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図10】吹錬スケジュールを自動修正しない場合の吹錬スケジュールを示す図。
【図11】吹錬スケジュールを自動修正しない場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図12】吹錬スケジュールを自動修正せず吹錬スケジュールが遅れた場合の吹錬スケジュールを示す図。
【図13】吹錬スケジュールを自動修正せず吹錬スケジュールが遅れた場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図14】吹錬スケジュールを自動修正した場合の吹錬スケジュールを示す図。
【図15】吹錬スケジュールを自動修正した場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【図16】吹錬スケジュールを自動修正し酸素製造量を変更した場合の酸素ホルダー圧力推移を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、鋼種別に酸素使用実績量及び吹錬実績時間の操業データをデータベース化し、今後行う吹錬の鋼種と吹錬開始時刻から吹錬スケジュールを作成し、吹錬スケジュールの鋼種別に、該データベースから酸素使用実績量と吹錬実績時間を選択して製鋼工場以外の高炉工場やその他工場の酸素使用量を加算し、酸素使用予測量を算出し、算出した酸素使用予測量と各鋼種毎の酸素使用実績量の誤差について、予測量と実績量における酸素ホルダーの圧力降下勾配の違いを自動的に比較し補正係数を演算した後、次回の予測量に補正係数をかけあわせ、次回以降の酸素使用量の予測精度を向上させることを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
【請求項2】
製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、酸素使用開始予定時刻と酸素使用開始実績時刻がずれる場合、酸素使用開始予定時刻と酸素開始実績時刻を比較して酸素使用開始時刻の誤差を算出し、算出した誤差を次回以降の酸素使用開始時刻に加算して、酸素使用開始時刻を補正することを特徴とする請求項1に記載の最適な酸素製造量予測方法。
【請求項3】
複数の酸素プラントの酸素製造電力原単位曲線をデータベース化し、予測量にあった最適な酸素プラント発生量を組み合わせ計算し、酸素製造電力を低減することを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
【請求項1】
製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、鋼種別に酸素使用実績量及び吹錬実績時間の操業データをデータベース化し、今後行う吹錬の鋼種と吹錬開始時刻から吹錬スケジュールを作成し、吹錬スケジュールの鋼種別に、該データベースから酸素使用実績量と吹錬実績時間を選択して製鋼工場以外の高炉工場やその他工場の酸素使用量を加算し、酸素使用予測量を算出し、算出した酸素使用予測量と各鋼種毎の酸素使用実績量の誤差について、予測量と実績量における酸素ホルダーの圧力降下勾配の違いを自動的に比較し補正係数を演算した後、次回の予測量に補正係数をかけあわせ、次回以降の酸素使用量の予測精度を向上させることを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
【請求項2】
製鉄プロセス中の複数の酸素使用先と複数の酸素供給元において、酸素使用開始予定時刻と酸素使用開始実績時刻がずれる場合、酸素使用開始予定時刻と酸素開始実績時刻を比較して酸素使用開始時刻の誤差を算出し、算出した誤差を次回以降の酸素使用開始時刻に加算して、酸素使用開始時刻を補正することを特徴とする請求項1に記載の最適な酸素製造量予測方法。
【請求項3】
複数の酸素プラントの酸素製造電力原単位曲線をデータベース化し、予測量にあった最適な酸素プラント発生量を組み合わせ計算し、酸素製造電力を低減することを特徴とした最適な酸素製造量予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−75150(P2008−75150A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257474(P2006−257474)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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