説明

複写防止媒体及び複写防止用紙

【課題】
複写機での複写防止、及び複写牽制効果があり、かつ、低コストで大量製造できる複写防止媒体を提供する。
【解決手段】
基材11の少なくとも一方の面へ金属層15を設け、該金属層15面へ、グラデーション図柄である印刷層18、光反射率の差による潜像を有する潜像層19及び情報17を設けてなる複写防止媒体10で、該複写防止媒体10を複写して得られた複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報17のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できることを特徴とし、また、グラデーション図柄が網点ブロックの任意の組合せからなることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写防止媒体に関し、さらに詳しくは、金券類や証明書などのの重要書類などの複写を防止するための複写防止媒体及び複写防止用紙に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「Al」は「アルミニウム」、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、及び「VM」は「蒸着」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の複写防止媒体の主なる用途としては、例えば、紙幣、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、ギフト券、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場証、通行証、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書やその証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、化粧品、腕時計、ライター等のブランド装身具、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類などがある。しかしながら、複写を防止する用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、金券類、カード類、及び各種証明書類などのは、資格証明や一定の経済的価値や効果を持っている。複写、偽造、又は変造によって所有者以外の他人に使用された場合には、多大な経済的な損害を被るので、これらの媒体には複写防止をしておく
必要がある。近年、カラーコピー機などの複写機の技術的進歩により、複写性能がめざましく向上してきている。複写物は、高品質となり、被複写物の原本と比較してほとんど目視では判別することができない程度になっている。高度な偽造防止策が施されているはずの銀行券や商品券等の金券、入場券、定期券やIDカード等の重要書類も複写され、不正に使用されることが増加している。
従って、複写防止媒体は、複写機での複写が防止でき、かつ、低コストで大量製造できることが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、本出願人は、基材と、ホログラムまたは回折格子からなる多数の光回折パターン形成層を隣合う光回折パターン形成層同士の光学特性が異なるように前記基材上に形成した複写防止層と、前記複写防止層上に透明または半透明に形成され、情報が記録される情報記録層とを備える複写防止媒体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ホログラムまたは回折格子からなる多数の光回折パターン形成層を作成するには高度で精密な技術や設備を要し、高コストとなるという問題点がある。
また、シート基材と表面が金属鏡面である金属層からなる複写防止媒体が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、複写すると真っ黒となって、悪意で複写したかが判らないという問題点がある。
さらに、第1の光反射部と第2の光反射部とを含む複写防止媒体であって、前記第1の光反射部と前記第2の光反射部とが金属薄膜層を有し、前記金属薄膜層に入射する光の量を制限する第1の光透過層が、前記第2の光反射部に形成され、前記第1の光反射部に形成されていない複写防止媒体が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、第1の光反射部と第2の光反射部とで構成する潜像は2つの光反射部の差であり、該潜像は見る角度によって目視できてしまう欠点があり、見にくくするために、カムフラージュパターンを形成したりしている。また、通常の文字だけであればよいが、カラー画像であれば、最近の高精度のカラーコピー機ではある程度複写されてしまうという欠点がある。そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。
【0006】
【特許文献1】特開平6−270581号公報
【特許文献2】特開昭62−199899号公報
【特許文献3】特開平10−81058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、複写機での複写防止、及び複写牽制効果があり、かつ、低コストで大量製造できる複写防止媒体及び複写防止用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる複写防止媒体は、基材と、該基材の少なくとも一方の面へ金属鏡面を有する金属層を設け、該金属層面へ情報、印刷層及び潜像層を設けてなる複写防止媒体において、前記印刷層がグラデーション図柄であり、前記潜像層の潜像が光反射率の差による潜像であり、かつ、前記複写防止媒体を複写して得られた複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できるように、したものである。
請求項2の発明に係わる複写防止媒体は、上記印刷層のグラデーション図柄が、異なる網点のブロックの任意の組合せからなるように、したものである。
請求項3の発明に係わる複写防止媒体は、上記情報が、潜像層面、金属層とグラデーション図柄の印刷層との間、グラデーション図柄の印刷層と潜像層との間、のいずれかであるように、したものである。
請求項4の発明に係わる複写防止用紙は、請求項1〜2のいずれかに記載の複写防止媒体に用いる複写防止用紙であって、基材と、該基材の少なくとも一方の面へ金属鏡面を有する金属層を設け、該金属層面へグラデーション図柄からなる印刷層及び光反射率の差による潜像からなる潜像層を設けてなり、該複写防止用紙の前記印刷層及び潜像層面へ情報を印画した後に複写した複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、複写機での複写防止、及び複写牽制効果があり、かつ、低コストで大量製造できる複写防止媒体が提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、グラデーション図柄の自由度が増す複写防止媒体が提供される。
請求項3の本発明によれば、請求項1〜2の効果に加えて、情報を予め形成しておいたり、後から形成したりしてもよい複写防止媒体が提供される。
請求項4の本発明によれば、情報を後で印刷でき、複写機での複写防止、及び複写牽制効果があり、かつ、低コストで大量製造できる複写防止用紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す複写防止媒体の平面図及び断面図である。
図2は、複写後の複写体の平面図である。
図3は、潜像層の構成例を示す断面図である。
図4は、情報の位置を示す断面図である。
図5は、グラデーション図柄の組合せ例の平面図である。
【0011】
(複写防止媒体)本発明の複写防止媒体10の1実施例を図1に示す。図1(A)は平面図、図1(B)はAA断面図である。複写防止媒体10は、基材11の少なくとも一方の面へ、金属鏡面を有する金属層基材15と、印刷層18、潜像層19及び情報17を設ける。グラデーション図柄からなる印刷層18、光反射率の差による潜像からなる潜像層19、及び情報17を設けておく。情報17が形成されている複写防止媒体10を複写すると、図2に示すように、複写して得られた複写体10Cは、金属鏡面からの高い光反射率によって全体が暗くなり、かつ、前記グラデーション図柄部分も暗く、グラデーション図柄に応じて迷彩化して情報17が判読できにくくなり、複写防止効果がある。同時に、複写前の潜像は通常では目視しにくいが、複写機で複写すると光線の反射で絵柄を検出するので、反射率が異なる潜像部分は顕在化して目視可能の図柄となって複写され、複写したことが一目で明確に判り、複写牽制効果がある。また、印刷層18のグラデーション図柄が、異なる網点のブロックの任意の組合せでもよく、情報17は潜像層19面、金属層15とグラデーション図柄の印刷層18との間、グラデーション図柄の印刷層18と潜像層19との間、のいずれかでもよい。
【0012】
また、本発明の複写防止用紙は、印刷層18及び潜像層19面へ情報を印画した後に複写することで、その複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できる。さらに、層間及び/又は層表面へ、必要に応じて他の層を設けてもよく、プライマ層、他の印刷層、保護層、帯電防止層、背面滑性層などがあり、それぞれ公知のものでよい。
【0013】
(基材)基材11としては、特に限定されるではなく、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、木材、布などのいずれのものでもよい。また、好ましくは、紙基材であり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙が例示でき、これらの紙へ加工したアート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙などの加工紙、その他等を使用することができる。また、該基材に、各種の樹脂のフィルム乃至シ−トなどを貼合したものを用いてもよい。基材の厚さとしては、特に限定されないが、坪量約20〜600g/m2位のもの、好ましくは、坪量約50〜450g/m2位のものを使用することが望ましい。
【0014】
(金属層)金属層15としては、Al、銅、錫、鉄など特に限定されないが、低コストで入手し易く加工し易い、Al箔(ミラー面を使用)、又はAl蒸着薄膜が好ましい。厚さとしては、金属層鏡面であれば特に限定されないが、100nm〜50μm程度、薄ければ薄いほどよい。
【0015】
(積層)基材11と金属層15との積層は特に限定されないが、Al箔を用いたウェットラミ、ポリサンドラミ、ドライラミなどの公知の方法で、Al箔の光沢面が潜像面となるようにする。また、基材11へ直接又はプライマ層などの層を介して、金属を蒸着、スパッタリングなどの真空成膜法で金属層15を形成してもよく、金属鏡面の光沢の点で好ましい。
【0016】
(印刷層)金属層15面へ設ける印刷層18は、図1に示すような色濃度が連続変化するグラデーション図柄とする。また、異なる網点からなる複数のブロックとし、網点率の異なるブロックを網点率が順次変化するように配置して、ブロック単位のグラデーション図柄としたり、網点率の順次変化を繰り返したり、異なる網点率からなるブロックを任意の組合せて図柄状とし、即ち、ブロック状のランダム図柄としたり、してもよい。このようにすることで、グラデーション図柄の自由度が増し、より複雑とすることで、複写防止性が向上できる。例えば、図5(A)に示すような、異なる網点率からなる矩形のブロックを任意に組合せたものや、図5(B)に示すような、異なる網点率からなる楕円状を任意に組合せたものなどで、形状も矩形や楕円形に限らず、またそれらを組み合わせてもよい。グラデーションが淡い過ぎると金属層反射と差がすくなく、ある程度の濃度が必要であり、色によっても異なり、暗色ほど低い色濃度でよい。グラデーションの色は、下層の金属鏡面での反射のよい透明色が好ましく、複数色を用いてもよい。印刷層18の形成は、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷など公知の印刷法でよく、特にUVオフセット印刷、UVインクジェット印刷が好ましい。
【0017】
(グラデーションの複写)一般に、複写機では、複写しようとする被複写物の表面に光を照射し、被複写物の表面で反射散乱する光のうち、一定方向に設けられた受光部で受光し、その受光強度を読み取り、それを再現している。カラーコピー機では、3原色の各成分ごとに読み取り、濃度階調や色調が再現される。一般的な白色紙を複写すると、反射散乱光の分布はほぼ均等で反射率が大きく白く、金属鏡面では正反射して黒く再現される。インキによる印刷面では、反射散乱光の分布が偏っており、印刷に応じた中間的な再現となる。本発明では、金属層15を設けているので、複写して得られた複写体10Cは、金属鏡面からの高い光反射率によって全体が暗くなり、情報17が判読できにくくなる。
かつ、前記グラデーション図柄部分も解像度の違いもあって、元のグラデーション図柄より暗く、より暗色となり、境界部も入り混じって不明確化して、被複写物の目視画像と複写物の画像とではかなり変化して、情報17が判読できにくくなり、複写防止効果がある。
【0018】
(潜像層)印刷層18面へ潜像層19を設ける。該潜像層19は図3に示すように、低光透過層19Aと高光透過層19Bとを隣接又は重ねて設け、これらの境界線で潜像が形成されている。該低光透過層19Aと高光透過層19Bとの構成は、図3(A)、図3(B)、図3(C)のように低光透過層19A又は高光透過層19Bのポジ像又はネガ像で潜像としたり、図3(D)のようにポジ像又はネガ像を組合せてもよい。低光透過層19Aと高光透過層19Bの反射率差は2〜10%程度、好ましくは3〜5%の範囲である。この範囲を超えると、本物の複写防止媒体10であっても角度によっては目視でき、この範囲未満であるとカラーコピー機によっては顕在化せず見分けられないことがある。
【0019】
(潜像、模様)潜像は特に限定されないが、「複写禁止」、「複写厳禁」、「COPY」、「偽物」、「無効」等の警告文字又はマークから、適宜選択すればよい。また、図形、迷彩、地紋、及び/又は幾何学模様でもよい。このように、複写前の潜像は通常では目視しにくいが、複写機で複写すると光線の反射で絵柄を検出するので、反射率が異なる潜像部分は顕在化して目視可能の図柄となって複写され、複写したことが一目で明確に判り、複写牽制効果がある。また、潜像層19は低光透過層19Aと高光透過層19Bの2層ではなく、光透過性の異なる3層以上であってもよい。
【0020】
(潜像の形成)潜像は低光透過層19Aと高光透過層19Bとから構成する。低光透過層19Aとしては光が散乱又は吸収などにより、入射光に比べて光量が少なくなる層で、ポリエステル系樹脂などの合成樹脂(バインダー)と微粒子との混合物が使用できる。微粒子としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ等の無期顔料、及び、ポリエチレンパウダー等のプラスチックパウダー等で、著しく透明性を損なわない程度の量とする。高光透過層19Bとしては、金属層15への入射光量を制限すればよく、低光透過層19Aより光透過率が高く、ポリエステル系樹脂などの合成樹脂(バインダー)が使用できる。低光透過層19Aの光透過率より高い範囲なら、無期顔料やポリエチレンパウダー等を添加してもよい。低光透過層19Aと高光透過層19Bの形成は特に限定されないが、オフセット印刷、グラビア印刷など公知の印刷法でよく、特にUVオフセット印刷、UVインクジェット印刷が好ましい。
【0021】
(情報)本発明の複写防止媒体10では、情報17を上記で得た基材11/金属層15/印刷層18/潜像層19の潜像層19面へ設けるが、情報17の位置を変更してよく、基材11/金属層15/印刷層18/潜像層19/情報17、基材11/金属層15/印刷層18/情報17/潜像層19、基材11/金属層15/情報17/印刷層18/潜像層19、の構成としてもよい。また、大量に作る場合には基材11/金属層15へ情報17/を形成した後に、印刷層18及び潜像層19を形成してもよい。
【0022】
また、本発明の複写防止媒体10に用いる複写防止用紙を予め作成し保存しておいて、必要に応じて、情報17を形成してもよい。本発明の複写防止用紙は情報17以外は複写防止媒体10と同様の構成、製造法でよく、印刷層18及び潜像層19面へ情報17を印画した後に複写することで、その複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できる。なお、情報17の形成はオフセット印刷やグラビア印刷など公知の印刷法でよく、特に限定されないが、好ましくはUVオフセット印刷又はUVインクジェット印刷である。本発明の複写防止用紙によれば、複写防止用紙を事前に低コストで大量生産しておき、必要に応じて、情報17を印刷又は印画すれば、複写防止媒体10とすることができる。
【0023】
情報17は、個人や個別情報で、例えば、銀行券であれば、金額、シリアルナンバー、製造所名等の文字、及び、人物像、日本銀行印、彩紋等の図形であり、印刷や印字等の適宜手段で設ける。また、詳細地図であれば、居住者名、住所、電話番号などである。情報17の形成は特に限定されないが、オフセット印刷、グラビア印刷など公知の印刷法でよく、特にUVオフセット印刷、UVインクジェット印刷が好ましい。さらに、これら情報17と共に、土手、ガケ、旧斜面及び/又は水路、並びに過去のガケ崩れ、浸水地域などの危険度をグラデーション図柄とした印刷層18を形成すれば、極めてみやすく、しかも、部外者には複写防止を発揮する。また、印刷層18、潜像層19及び情報17の形成は同じでも異なってもよいが、好ましくはUVオフセット印刷又はUVインクジェット印刷で同時に形成することである。
【0024】
(複写)情報17が形成されている複写防止媒体10を複写すると、図2に示すように、複写して得られた複写体10Cは、金属鏡面からの高い光反射率によって全体が暗くなり、かつ、前記グラデーション図柄部分も暗く不明確化して情報17が判読できにくくなり、複写防止効果がある。同時に、複写前の潜像は通常では目視しにくいが、複写機で複写すると光線の反射で絵柄を検出するので、金属層15面からの反射層光は低光透過層19Aと高光透過層19Bとを経由することで、反射率が異なり、潜像部分は顕在化して目視可能の図柄となって複写され、複写したことが一目で明確に判り、複写牽制効果がある。
【0025】
(層構成)基材11/金属層15/印刷層18/潜像層19/情報17の基本構成であるが、潜像層19の位置を変更してよく、基材11/金属層15/印刷層18/情報17/潜像層19、基材11/金属層15/潜像層19/印刷層18/情報17、の構成でも同様の効果が得られる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0027】
(実施例1)斤量80g/m2の上質紙(基材11)に、トリアセチルセルロース系樹脂よ溶媒からなる透明プライマインクを用いて、乾燥後の厚さが5μmになるようにグラビア印刷で塗布し乾燥してプライマ層を形成した。該プライマ層面へ、Alを500オングストロームの厚さまで真空蒸着して、金属鏡面の金属層15を設けた。
該金属層15面へ印刷層18を設ける。ある地域の水害時の水没度合の分布図を、透明青インクを用いて、図1(A)のような、深い水没から浅い水没地区へ淡くなるグラデーションを、UVオフセット印刷法で印刷しUV硬化して、印刷層18をとした。同時に、情報17としてある地域の地図を、水没分布図に合わせて黒インクでUVオフセット印刷法で印刷した。
さらに、潜像層19を設ける。低光透過層19Aとして、アクリル系樹脂:マイクロシリカ=100:10(質量部)からなる透明インクを用いて、UVオフセット印刷法で「COPYのポジ像」文字を印刷しUV硬化し、引き続いて、高光透過層19Bとして、アクリル系樹脂らなる透明インクを用いて、UVオフセット印刷法で「COPYのネガ像」を印刷しUV硬化し、「COPY」の潜像を有する潜像層19を設けて、実施例1の複写防止媒体10を得た。
該複写防止媒体10を、カラーコピー機(CLC500、キャノン製)で複写したところ、複写して得られた複写体10Cは、金属鏡面からの高い光反射率によって全体が暗くなり、かつ、前記グラデーション図柄部分も暗く不明確化して情報17が判読できにくくなり、複写防止効果があった。
同時に、潜像は顕在化して目視可能の図柄「COPY」となって複写され、複写したことが一目で明確に判り、複写牽制効果があった。
【0028】
(実施例2)情報17を印刷しない以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複写防止媒体10を得、該複写防止媒体10の表面へ、情報17としてある地域の地図を、水没分布図に合わせて、プリンターで黒印字した。
カラーコピー機(CLC500、キャノン製)で複写したところ、実施例1と同様の複写防止、及び複写牽制効果があった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の1実施例を示す複写防止媒体の平面図及び断面図である。
【図2】複写後の複写体の平面図である。
【図3】潜像層の構成例を示す断面図である。
【図4】情報の位置を示す断面図である。
【図5】グラデーション図柄の組合せ例の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10:複写防止媒体
11:基材
15:金属層
17:情報
17C:複写情報
18:印刷層
18C:複写印刷層
19:潜像
19C:可視像
19A:低光透過層
19B:高光透過層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の面へ金属鏡面を有する金属層を設け、該金属層面へ情報、印刷層及び潜像層を設けてなる複写防止媒体において、前記印刷層がグラデーション図柄であり、前記潜像層の潜像が光反射率の差による潜像であり、かつ、前記複写防止媒体を複写して得られた複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できることを特徴とする複写防止媒体。
【請求項2】
上記印刷層のグラデーション図柄が、異なる網点のブロックの任意の組合せからなることを特徴とする請求項1記載の複写防止媒体。
【請求項3】
上記情報が、潜像層面、金属層とグラデーション図柄の印刷層との間、グラデーション図柄の印刷層と潜像層との間、のいずれかであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の複写防止媒体。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の複写防止媒体に用いる複写防止用紙であって、基材と、該基材の少なくとも一方の面へ金属鏡面を有する金属層を設け、該金属層面へグラデーション図柄からなる印刷層及び光反射率の差による潜像からなる潜像層を設けてなり、該複写防止用紙の前記印刷層及び潜像層面へ情報を印画した後に複写した複写体は全体が暗くなり、前記印刷層のグラデーション図柄部分はグラデーション図柄に応じて迷彩化して、前記情報のグラデーション図柄部分を判読できにくくし、前記潜像層の光反射率の差による潜像部分は顕在化して目視可能となって、複写したことが判別できることを特徴とする複写防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220378(P2009−220378A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66973(P2008−66973)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】