説明

複合イオン交換体及びその製造方法

【課題】一方の面側にアニオン交換基を有し且つ他方の面側にカチオン交換基を有しており、アニオン交換基を有する側とカチオン交換基を有する側との間に接合界面が存在しておらず、しかも芯材となる樹脂製シート自体にイオン交換基が一様に導入された構造を有する複合イオン交換体を提供することにある。
【解決手段】イオン交換基が表面及び内部の全体に一様に導入された樹脂シートからなり、一方の表面側にカチオン交換基が分布し且つ他方の表面側にアニオン交換基が分布した2層構造を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン交換基とアニオン交換基とを併せ持つ複合イオン交換体及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、バイポーラ膜或いは一価イオン選択透過性を有するイオン交換膜として使用し得る複合イオン交換体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン交換基とアニオン交換基とを併せ持つ複合イオン交換体として代表的なものは、バイポーラ膜として知られている。このバイポーラ膜は、カチオン交換膜とアニオン交換膜が貼り合わされた複合膜であり、水をプロトンと水酸イオンに解離することができる機能を有する。このような特性を有しているバイポーラ膜は、例えばカチオン交換膜やアニオン交換膜とともに電気透析装置に組み込み、電気透析による中性塩から酸及びアルカリ製造する方法などの用途に広く利用されている。
【0003】
上記のようなバイポーラ膜に代表される複合イオン交換体は、カチオン交換膜とアニオン交換膜を貼り合せた構造を有しているため、膜の膨潤などによって膜の剥がれが生じないように、高い接合強度が要求されており、このために、種々の製造方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを、ポリエチレンイミン−エピクロルヒドリンの混合物で張り合わせ硬化接着する方法が提案されており、特許文献2には、カチオン交換膜とアニオン交換膜とをイオン交換性接着剤で接着させる方法が提案され、特許文献3には、カチオン交換膜或いはアニオン交換膜に微粉のイオン交換樹脂(アニオンまたはカチオン交換樹脂と熱可塑性物質とのペースト状混合物)を塗布して両者を圧着させる方法が提案されている。さらに、特許文献4には、カチオン交換膜の表面にビニルピリジンとエポキシ化合物からなる糊状物質を塗布しこれに放射線照射することによってバイポーラ膜を製造する方法が提案され、特許文献5には、アニオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後、電離性放射線を照射架橋させる方法が提案されている。
【0005】
一方、イオン交換膜は、適当な強度を付与するために、一般に、非イオン交換性の樹脂製基材シート(特に多数の貫通孔を有する多孔シート)を使用し、この基材シートにイオン交換基導入可能な重合性組成物を含浸させ、この重合性組成物を重合させた後、形成された重合体(イオン交換樹脂前駆体)にイオン交換基を導入することにより製造されている。即ち、非イオン交換性の樹脂基材シートを芯材として存在させることにより、イオン交換膜に強度が付与するというものである。
【0006】
しかしながら、上記のようなイオン交換膜は、内部に非イオン交換性の樹脂製基材シート(例えばオレフィン系樹脂シート)を含んでいるため、電気抵抗が高いという欠点がある。従って、このようなイオン交換膜を用いて形成されるバイポーラ膜においても、当然、電気抵抗が高いという欠点があり、より低電気抵抗のものが求められている。
【0007】
上記のような問題を回避するために、非イオン性交換樹脂製基材シートを使用せずにイオン交換膜を製造する方法も提案されており、例えば特許文献6、7には、ポリアミドフィルムや超高分子量ポリエチレンフィルム(基材フィルム)に電離放射線を照射することにより、ポリアミドにラジカルを発生させた後、このフィルムにイオン交換基或いはイオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性組成物をグラフト重合させ、次いで、必要によりイオン交換基を導入することによりイオン交換膜を製造する方法が提案されている。かかる方法により製造されるイオン交換膜は、電離放射線が基材フィルムを透過し、基材フィルムの表面及び内部の全体にわたってラジカルが発生するため、基材フィルム全体に均質にイオン交換基が導入され、この結果、低電気抵抗化を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭32−3962号公報
【特許文献2】特公昭34−3961号公報
【特許文献3】特公昭35−14531号公報
【特許文献4】特公昭38−16633号公報
【特許文献5】特公昭51−4113号公報
【特許文献6】特開2009−126971号公報
【特許文献7】特開2008−255351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜5で提案されている方法で製造されたバイポーラ膜は、確かにアニオン交換体とカチオン交換体との接合強度は高められているものの、アニオン交換体とカチオン交換体とが貼り付けられた構造を有しているため、両者の間に接合界面が形成され、従って接合強度の向上には限界があり、例えば膜の剥がれなどの問題を完全に解消することはできない。また、アニオン交換体或いはカチオン交換体の少なくとも一方は、非イオン交換性の樹脂シートを芯材として含んでいるため、高電気抵抗であるという欠点もある。
【0010】
一方、特許文献6,7で提案されている方法で製造されたイオン交換膜は、グラフト重合によって芯材となる非イオン交換性の樹脂フィルムそのものにイオン交換基が導入された構造を有しているため、電気抵抗が小さいという利点を有している。しかしながら、バイポーラ膜等の複合イオン交換体は、2種のイオン交換膜を貼り合せた構造を有するものであるため、上記のようなイオン交換膜を使用した場合においても、2種の膜の間での剥離を完全に防止することはできない。この場合、特許文献6,7で提案されている方法によって互いに反対電荷を有する2種のイオン交換基を導入することによって複合イオン交換体を製造できればよいのであるが、この方法では、アニオン交換基或いはカチオン交換基の何れか一方しか導入することができず、したがって一方の面側にアニオン交換基を有しており、他方の面側にカチオン交換基を有している複合イオン交換体であって、アニオン交換基を有する側とカチオン交換基を有する側との間に接合界面が存在しないような複合イオン交換体は知られていない。
【0011】
従って、本発明の目的は、一方の面側にアニオン交換基を有し且つ他方の面側にカチオン交換基を有しており、アニオン交換基を有する側とカチオン交換基を有する側との間に接合界面が存在しておらず、しかも芯材となる樹脂製シート自体にイオン交換基が一様に導入された構造を有する複合イオン交換体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、イオン交換基が表面及び内部の全体に一様に導入された樹脂シートからなり、一方の表面側にカチオン交換基が分布し且つ他方の表面側にアニオン交換基が分布した2層構造を有していることを特徴とする複合イオン交換体が提供される。
【0013】
本発明によれば、また、
非イオン交換性の樹脂シート、及びカチオン交換基とアニオン交換基との何れをも導入可能な官能基とエチレン系不飽和二重結合とを有している重合性単量体を用意し、
電離放射線の照射によって、前記重合性単量体を前記樹脂シート全体にグラフト重合してイオン交換前駆体シートを調製し、
アニオン交換基導入用化合物またはカチオン交換基導入用化合物を、前記イオン交換前駆体シートの一方の面から、前記官能基の一部が残るように、該官能基に反応させてアニオン交換基またはカチオン交換基を導入し、
次いで、カチオン交換基導入用化合物またはアニオン交換基導入用化合物を、他方の面側に存在している未反応の官能基に反応させてカチオン交換基またはアニオン交換基を導入すること、
を特徴とする前記複合イオン交換体の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の製造方法においては、
(1)前記官能基に導入されるアニオン交換基が、第1級〜第3級アミノ基であり、前記官能基にアニオン交換基導入用化合物を反応させて該アニオン交換基を導入した後、アルキル化剤を反応させて第1級〜第3級アミノ基を第4級アンモニウム化すること、
ができ、上記のように第4級アンモニウム化を行う場合には、
(2)前記アニオン交換基を始めに導入した後にカチオン交換基を導入し、最後に前記アルキル化剤を反応させて第4級アンモニウム化を行うこと、
もできる。
【0015】
さらに、本発明の製造方法においては、
(3)前記重合性単量体が有する前記官能基がグリシジル基であること、
(4)前記重合性単量体としてグリシジルメタクリレートを使用すること、
が好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合イオン交換体は、芯材(補強材)となる樹脂シートの表面及び内部の全体にわたってイオン交換基が導入されており、このイオン交換基の内、カチオン交換基が一方の表面側に分布しており、アニオン交換基が他方の表面側に分布しているという2層構造を有している。即ち、この複合イオン交換体は、イオン交換基(カチオン交換基及びアニオン交換基)が樹脂シートの表面から内部の全体にわたって導入されているため、この樹脂シートによって所定の強度が付与されるばかりか、芯材となる非イオン交換性の樹脂シートによる電気抵抗の低下が有効に回避されている。しかも、この複合イオン交換体は、一枚の樹脂シートの一方側にカチオン交換基が導入され、他方の側にアニオン交換基が導入された2層構造を有していることから理解されるように、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを貼り付けて形成されるものではないため、カチオン交換基側とアニオン交換基側との間に接合界面が存在せず、従って、接合界面での剥がれの問題も確実に解消している。
【0017】
本発明の複合イオン交換体の製造方法においては、芯材となる樹脂シートに電離放射線を照射することによって該樹脂シートの表面及び内部の全体にわたってラジカルを発生させ、これによりイオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体を該樹脂シートにグラフト重合させ、このグラフト重合体(即ち、イオン交換前駆体シート)にイオン交換基を導入するという点では、公知の技術、例えば特許文献6及び7で提案されている製造方法と共通している。
【0018】
しかるに、本発明では、グラフト重合させるために使用する重合性単量体として、グラフト重合のためのエチレン系不飽和二重結合に加えて、カチオン交換基とアニオン交換基との何れを導入可能な官能基とを有しているものを使用し、これを利用して、グラフト重合された樹脂シートの一方の面側から該官能基の一部にカチオン交換基(或いはアニオン交換基)を導入し、次いで他方の面側に存在している未反応の官能基にアニオン交換基(或いはカチオン交換基)を導入する点に顕著な特徴を有しており、この点において、従来公知の技術と大きく異なっている。
【0019】
即ち、グラフト重合体が有している官能基は、カチオン交換基とアニオン交換基との何れをも導入可能なもの(例えばグリシジル基)であるため、この官能基の一部にカチオン交換基或いはアニオン交換基を導入した後、残りの官能基にアニオン交換基或いはカチオン交換基を導入することができ、従って、一方の面側からの反応によってアニオン交換基或いはカチオン交換基を導入し、次いで他方の面側に残った未反応の官能基にカウンターイオンの交換基(カチオン交換基またはアニオン交換基)を導入することにより、芯材となる樹脂シートの全体にわたってイオン交換基が導入されており、しかも一方の面側に導入されているイオン交換基と他方の面側に導入されているイオン交換基とは互いに異なる極性を有している複合イオン交換体を得ることができるのである。
【0020】
また、本発明の複合イオン交換体では、例えば一方の面側にアニオン交換体が分布した層が形成され、他方の面側にカチオン交換体が分布した層が形成されているため、この厚みを調整することにより、バイポーラ膜として機能させることもできるし、一価イオン選択透過性イオン交換膜としても使用することもできる。
【0021】
例えば、両層の厚みを同程度とすることにより、通常のバイポーラ膜として使用することができる。即ち、この膜を電解液に浸漬した状態で通電すると、塩水溶液はカチオンとアニオンとに解離しているため、該膜のアニオン交換体層側では、該膜(アニオン交換体層)から水酸化物イオン(OH)が供給され、従って、アルカリ濃度が次第に上昇する。一方、この膜のカチオン交換体層側では、該膜(カチオン交換体層)からプロトン(H)が供給され、従って酸濃度が次第に上昇することとなる。このため、このようなバイポーラ膜の機能を利用しての電気透析により、塩水溶液から酸及びアルカリを製造することが可能となる。
【0022】
これに対して、一方の側のイオン交換体層を薄くすることにより、一価イオン選択性イオン交換膜として使用することができる。例えば、一方の面側をアニオン交換体層とし、他方の面側のカチオン交換体層を薄くした場合において、このような膜を塩水溶液に浸漬した状態で通電を行うと、塩水溶液中の各種アニオンは、アニオン交換体層を透過するが、これらのアニオンの内、多価アニオン(例えばSO2−)はカチオン交換体層側での電気的反発力が大きいため、カチオン交換体層を透過しない。即ち、一価のアニオン(例えばCl)のみが、この膜(アニオン交換体層及びカチオン交換体層)を透過することとなり、これを利用して、一方の側での一価アニオン濃度を増大させることができる。また、一方の面側のアニオン交換体層を薄くし、他方の面側のカチオン交換体層を薄くした場合においては、上記と全く逆に、塩水溶液中の各種カチオンの内、一価のカチオン(例えばNa)のみが、この膜を透過し、多価カチオン(例えばCa2+)の透過をアニオン交換体層での電気的反発力によって防止することができる。
【0023】
このように、本発明の複合イオン交換体層は、バイポーラ膜として使用することもできるし、一価イオン選択透過性イオン交換膜として使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<複合イオン交換体の製造>
本発明の複合イオン交換体は、概説すると、基材となる樹脂シートと、この樹脂シートにグラフト重合するための重合性単量体を用意し、電離放射線によって該樹脂シート全体に該重合性単量体をグラフト重合し、得られたグラフト重合体シートの一方の面側からイオン交換基を導入し、次いで他方の面側に存在している未反応の官能基に対イオン交換基の導入を行うことにより製造される。
【0025】
樹脂シート;
基材として用いる樹脂シートとしては、最終的に形成される複合イオン交換体に適度な強度(例えば腰の強さ)などを付与するためのものであり、電離放射線の照射により、ラジカルを発生し得るものであってイオン交換基を有していないものであれば、公知の樹脂からなるシートを用いることができる。例えば、低、中または高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダム若しくはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフエニレンオキサイド樹脂;ポリ乳酸など生分解性樹脂;あるいはそれらの樹脂のブレンド物;などからなるシートを使用することができるが、一般的には、オレフィン系樹脂やスチレン系樹脂からなるシートが好適である。
【0026】
また、用いるシートの厚みは、該シートを形成する樹脂素材の種類に応じて適宜の強度が確保されるような範囲にあればよいが、一般的には、0.01mm以上、特に0.05乃至0.5mm程度の厚みを有しているのがよい。この厚みが薄すぎると、このシートから形成されるイオン交換前駆体シートにイオン交換基を導入するに際して、始めに導入するイオン交換基がシートの一方の面側から他方の面側にまで反応してしまい、反対側の面への対イオン交換基の導入が困難となってしまうおそれがあるからである。
【0027】
尚、従来公知のイオン交換膜を製造するに際しては、芯材となる基材樹脂シートとイオン交換樹脂とが別体であるため、基材樹脂シートとして、多数の貫通孔を有する多孔性シートあるいは不織布等を使用し、イオン交換樹脂と基材樹脂シートとの接合性を高めているが、本発明では、樹脂シート自体にイオン交換基が導入されるため、樹脂シートに貫通孔が形成されている必要はないし、また、一方の面側にイオン交換性基を導入した後、反対側の面側に対イオン交換基を導入するという観点から、このような貫通孔を有していない通常のシートを用いることが好ましい。
【0028】
重合性単量体;
上記の樹脂シートにグラフト重合させるために用いる重合性単量体は、重合性基としてエチレン系不飽和二重結合を有しているものであるが、同時に、カチオン交換基とアニオン交換基との何れも導入可能な官能基とを有しているものでなければならない。カチオン交換基或いはアニオン交換基の何れか一方のみを導入可能な官能基では、接合界面を形成することなく、カチオン交換基が分布している層とアニオン交換基が分布している層との2層構造を有する本発明の複合イオン交換体を形成することができないからである。
【0029】
上記のような2種のイオン交換基を導入可能な官能基として、代表的なものはグリシジル基を例示することができる。即ち、グリシジル基は、開環してアミノ基等のアニオン交換基やスルホン酸基等のカチオン交換基を導入することができる。
【0030】
本発明において、上記のような官能基とエチレン系不飽和結合を有する重合性単量体としては、これに限定されるものではないが、グリシジル(メタ)アクリレート、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートを例示することができ、反応性が高いという観点からグリシジルメタクリレートが最も好適である。
【0031】
上記のような官能基を有する重合性単量体は、適度なカチオン交換容量及びアニオン交換容量を確保するために、一般に、前記樹脂シート100重量部当り、0.1乃至200重量部、特に10乃至100重量部の量で使用することが好ましい。重合性単量体の量が少ないと、十分な量のイオン交換基を導入することができず、得られる複合イオン交換体の特性が低下してしまい、例えば使用に際して膜電圧の上昇などの不都合を生じてしまう。また、樹脂シートに比して必要以上に多量の重合性単量体の使用は、強度低下や膨潤による変形などの不都合を生じ易くなってしまう。
【0032】
また、本発明においては、上記のような官能基を有する重合性単量体と共に、架橋性単量体を併用することもできる。このような架橋性単量体の併用によって、最終的に得られる複合イオン交換体を緻密なものとし、その強度を高めると共に、使用に際しての膨潤などによる変形を有効に抑制することができる。このような架橋性単量体としては、重合性基を複数有するもの、例えばジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等を例示することができる。このような架橋性単量体は、得られる複合イオン交換体のイオン交換性能を低下させない程度の量で使用され、一般に、前記重合性単量体100重量部当り、0.01乃至30重量部、特に0.1乃至10重量部程度の量で使用することが好適である。
【0033】
グラフト重合;
上記の重合性単量体或いは該重合性単量体と架橋性単量体との混合物(以下、単に単量体組成物と呼ぶ)と前記樹脂シートとのグラフト重合は、この単量体組成物中に前記樹脂シートを含浸させ、或いはスプレー、塗布などの手段によって該樹脂シートの両面に単量体組成物のコーティング層を形成して行われる。この際、必要に応じて、ベンゼン、キシレン、トルエン等の炭化水素系溶剤を用いて単量体組成物の溶液を調製し、この溶液を用いての塗布、乾燥により単量体組成物のコーティング層を形成することもできる。
【0034】
また、上記のグラフト重合は、電離放射線を照射することにより行われる。即ち、電離放射線の照射により、上記樹脂シートの内部までラジカルを発生させることができるため、樹脂シートに生成したラジカルを起点として、前記の単量体組成物がグラフト重合して樹脂シートと一体化したイオン交換前駆体シートが得られ、カチオン交換基及びアニオン交換基の何れをも導入することが可能となるのである。
【0035】
グラフト重合に用いる電離放射線には、電子線、α線、重粒子線、陽子線、β線、中性子線、γ線、X線などがあるが、操作の容易性、安全性、コストなどの観点から、一般的には電子線が適用される。
【0036】
また、電離放射線の照射によるグラフト重合には、前述した樹脂シートに照射した後、前記単量体組成物のコーティングを行ってグラフト重合せしめる前照射法と、樹脂シートに単量体組成物がコーティングされた状態で電離放射線を照射してグラフト重合せしめる同時照射法とがあり、本発明では何れの手法も採用することができるが、一般的には、前照射法が好適に採用される。即ち、同時照射法では、重合性単量体(及び架橋性単量体)同士の重合を生じ易く、グラフト率が低下するおそれがあるが、前照射法では、このような重合性単量体同士の重合を有効に回避することができるからである。
【0037】
電離放射線の前照射によるグラフト重合は、樹脂シートを不活性ガス中に保持した状態で電離放射線を照射するポリマーラジカル法と、樹脂シートを酸素含有雰囲気中に保持した状態で電離放射線を照射するパーオキサイド法とがあるが、本発明では、何れの方法も使用することができる。
【0038】
また、電離放射線の照射によるグラフト重合は、通常、−50乃至50℃程度の温度条件下で行われ、電離放射線量の照射線量、照射時間等は、前述した量の重合性単量体がグラフトされる程度の条件に設定される。
【0039】
上記のように重合性単量体を樹脂シートにグラフト重合することにより、得られたグラフト重合体(即ち、イオン交換前駆体シート)の全体にわたって、カチオン交換基及びアニオン交換基を導入可能な官能基が均一に分布することとなる。即ち、この官能基が樹脂シートの全体にわたって直接導入される。
【0040】
イオン交換基の導入;
このようにして、官能基を導入した後、カチオン交換基導入用化合物やアニオン交換基導入用化合物を使用し、この官能基の一部に、得られたイオン交換前駆体シートの一方の面からカチオン交換基及びアニオン交換基の何れか一方を導入し、次いで、他方の面側に残る未反応の官能基に、一方の面から導入されたイオン交換基とは異なる極性の対イオン交換基(即ち、アニオン交換基またはカチオン交換基)が導入される。即ち、始めに一方の面からイオン交換基が導入されるため、未反応の官能基は他方の面側に存在することとなり、従って、一方の面側にカチオン交換基あるいはアニオン交換基が分布し、他方の面側には、これと対のアニオン交換基或いはカチオン交換基が分布した2層構造を形成することが可能となるわけである。
【0041】
導入するイオン交換基の種類は、それ自体公知のものであり、例えばカチオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基が代表的であり、アニオン交換基としては、2級或いは3級アミノ基、4級アンモニウム基が代表的である。これらのイオン交換基の中でも、カチオン交換基としては、強酸性基であるスルホン酸基が好ましく、アニオン交換基としては、強塩基性基である第4級アンモニウム基が好ましい。
【0042】
本発明において、カチオン交換基導入用化合物としては、メルカプトアルキレンスルホン酸塩、メルカプトアルキレンカルボン酸塩、メルカプトアルキレンホスホン酸塩などを例示することができる。
即ち、上記のカチオン交換基導入用化合物を、前記イオン交換前駆体シートの官能基(例えばグリシジル基)に反応させることにより、例えば下記式:
−CH−Ep → −CH(OH)−CH−S−M・Na
式中、Epはエポキシ基、
は酸基である、
で表されるようにしてカチオン交換性基である酸基が導入される。
【0043】
上記の反応は、一般に、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性有機溶媒と水との混合溶媒中で行われるが、この際、触媒として、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリを用いることが好適である。触媒として用いる水酸化アルカリは、一般に、カチオン交換基導入用化合物1モル当り、0.1乃至2モル程度の量で用いるのがよい。また、反応温度は、通常、0乃至100℃程度である。さらに、反応時間は、形成すべきカチオン交換層の厚みに応じて適宜設定されるが、特にアニオン交換基を導入後に、カチオン交換基を導入する場合には、残存する未反応の官能基の全てにカチオン交換基が導入されるまで、上記の反応が行われる。
【0044】
また、アニオン交換基導入用化合物としては、1〜3級アミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン塩酸塩などが使用される。
即ち、上記のアニオン交換基導入用化合物を、前記イオン交換前駆体シートの官能基(例えばグリシジル基)に反応させることにより、例えば下記式:
−CH−Ep → −CH(OH)−CH−NH−CH
−CH−Ep → −CH(OH)−CH−N(CH
−CH−Ep → −CH(OH)−CH−N(CH・HCl
式中、Epはエポキシ基である、
で表されるようにしてアニオン交換性基である2級アミノ基、3級アミノ基或いは第4級アンモニウム基が導入される。
【0045】
かかる反応は、溶媒として、水あるいは水とケトン系溶媒(例えばアセトン)との混合溶媒中で行われ、反応温度は0乃至80℃程度である。また、反応時間は、用いるアニオン交換基導入用化合物の種類に応じて、形成すべきアニオン交換層の厚みに応じて適宜設定されるが、特にカチオン交換基を導入後に、アニオン交換基を導入する場合には、残存する未反応の官能基の全てにアニオン交換基が導入されるまで、上記の反応が行われる。
【0046】
ところで、アニオン交換基として最も好適なものは、強塩基性基である第4級アンモニウム基であるが、第4級アンモニウム基を導入するために使用するトリメチルアミン塩酸塩は、反応速度が1級アミンや2級アミンに比して遅く、生産性がかなり低いという問題がある。従って、第4級アンモニウム基を導入する場合には、始めに第1級アミン或いは第2級アミンを反応させて第2級或いは第3級アミノ基を導入した後、アルキル化剤を用いて、これらのアミノ基を徹底的にアルキル化することにより第4級アンモニウム化を図ることが好ましい。
【0047】
上記のようなアルキル化に用いるアルキル化剤は、この分野では周知のヨウ化メチル、塩化メチル等のハロゲン化メチルが好適に使用される。また、このアルキル化は、パラフィンやケトン等の炭化水素系溶媒中で行われ、反応温度は0乃至100℃であり、反応時間は、導入された2級アミノ基や3級アミノ基の量によっても異なるが、一般的には0.1乃至30時間程度である。
【0048】
本発明においては、上記のようなイオン交換基導入用化合物を用いての導入を2段で行う。
【0049】
この場合において、始めに行われるイオン交換基の導入は、先に得られたイオン交換前駆体シートの一方の面側から行うため、用いるイオン交換導入用化合物の溶媒溶液(カチオン交換基導入の場合にはアルカリ触媒を含む)、該イオン交換前駆体一方の面側に選択的に接触させて行われる。この場合、反応時間を長くするほど、この溶媒溶液がイオン交換前駆体シートの内部に深く浸透し、一方の面側に形成されるイオン交換基の層は厚くなるため、この時間調整によって、イオン交換基の層の厚み調整が行われる。
【0050】
上記のようにして、イオン交換前駆体シートの一方の面側にイオン交換基を導入してカチオン交換基またはアニオン交換基を導入した後、必要により、乾燥等により溶媒を除去した後、前述したイオン交換導入用化合物を用いての反応によって、対イオンのイオン交換基(アニオン交換基またはカチオン交換基)を導入する。このときの対イオン交換基は、イオン交換前駆体シートの他方側に残っている未反応の官能基にイオン交換導入用化合物を反応させることにより導入されるが、この場合の反応は、一方の面側にイオン交換基が導入されているシートを、対イオン交換導入用化合物の溶媒溶液(カチオン交換基導入の場合にはアルカリ触媒を含む)に浸漬することにより行われる。即ち、一方の面側に存在していた官能基には、既に最初のイオン交換基が導入されているため、この一方の面側が対イオン交換導入用化合物の溶媒溶液と接触したとしても、既に導入されたイオン交換基が脱離することはなく、従って、該シートの他方側に存在している未反応の官能基が対イオン交換導入用化合物の溶媒溶液と接触する限り、該シートを対イオン交換導入用化合物の溶媒溶液に浸漬して、その全面が接触しても全く差し支えないからである。
【0051】
上記のように、イオン交換基の導入を2段で行うことにより、シートの一方の面側にカチオン交換基或いはアニオン交換基の層が形成され、他方の面側には、対となるアニオン交換基或いはカチオン交換基の層を形成することができる。
【0052】
尚、上記のようにして2段でイオン交換基を導入する場合において、アルキル化によってアニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入する場合には、このアルキル化を最後に行うこともできる。即ち、始めに、アニオン交換基として2級アミノ基或いは3級アミノ基を一方の面側に導入し、次いで他方の面側にカチオン交換基を導入した後、最後に、2級アミノ基或いは3級アミノ基を徹底的にアルキル化することにより、アニオン交換基として最適な第4級アンモニウム基を導入することができる。
【0053】
<複合イオン交換体>
上記のようにして製造される本発明の複合イオン交換体は、シート形状を有しており、例えば、その一方側に面にカチオン交換基の層が形成され、他方の面側にアニオン交換基の層が形成された2層構造を有している。
【0054】
即ち、本発明の複合イオン交換体は、樹脂製シートの表面から内部までの全体にわたってイオン交換基が導入されており、このイオン交換基の内、カチオン交換基が一方の表面側に分布してカチオン交換基層を形成し、このカチオン交換基に面接する他方の面側にアニオン交換基が分布してアニオン交換基層が形成されている。従って、この複合イオン交換体は、シートの表面から内部までの全体にわたってイオン交換基(カチオン交換基及びアニオン交換基)が一様に分布しているため、基材(芯材)として用いた樹脂シートによる強度の向上と共に、電気抵抗が極めて小さく、電気透析等の使用に際して、低電圧で高い効率を得ることができる。
【0055】
また、アニオン交換基層とカチオン交換基層とは、元々一体形状の樹脂シートにアニオン交換基及びカチオン交換基を導入することにより形成されており、両層を貼り合せた構造を有するものではなく、従って、両層の間に接合界面は存在しない。従って、膨潤による接合界面での剥がれの問題を生じることはない。
【0056】
このような本発明の複合イオン交換体においては、先にも述べたように、アニオン交換基層は、第4級アンモニウム基により形成されていることが最適であり、カチオン交換基層は、スルホン酸基により形成されていることが最も好ましい。
【0057】
また、本発明の複合イオン交換体は、バイポーラ膜或いは一価イオン選択透過性イオン交換膜として好適に使用される。
【0058】
例えば、バイポーラ膜として使用される場合には、一方の面側に形成されるアニオン交換基層と他方の面側に形成されるカチオン交換基層とは、ほぼ同一厚みに設定され、ほぼ同一のイオン交換容量に設定される。このようなバイポーラ膜は、先にも説明したように、塩水溶液に浸漬しての通電により、アニオン交換基層側でアルカリを生成させ、カチオン交換基層側には、酸を生成せしめることができるため、塩水溶液から酸及びアルカリの製造に利用することができる。
【0059】
また、一価イオン選択透過性イオン交換膜として使用する場合には、一方の面側のイオン交換基層を厚く、他方の面側のイオン交換基層を薄くし、例えば他方側の層のイオン交換容量を一方側のイオン交換容量の1/1000乃至1/5程度に設定される。
即ち、アニオン交換基層を厚く、カチオン交換基層を薄くしたときには、一価イオン選択透過性アニオン交換膜として好適な特性を示し、SO2−等の多価アニオンの透過を、薄いカチオン交換基層側での電気的反発力によって有効に抑制するができ、Cl等の一価アニオンを選択的に透過せしめることができる。上記とは逆に、カチオン交換基層を厚く、アニオン交換基層を薄くしたときには、一価イオン選択透過性カチオン交換膜として好適な特性を示し、Ca2+等の多価カチオンの透過を、薄いアニオン交換基層側での電気的反発力によって有効に抑制するができ、Na等の一価カチオンを選択的に透過せしめることができる。
このような一価イオン選択透過性イオン交換膜は、各種塩水溶液を用いての精製処理や一価イオンの濃縮などに利用される。
【実施例】
【0060】
本発明の優れた効果を次の例で説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、グラフト率、イオン交換容量、電気抵抗は次のごとく測定した。
【0061】
(グラフト率)
グラフト重合した樹脂シートをトルエン溶液中、室温で1時間浸漬し洗浄させ、更にメタノールで洗浄した後、乾燥させて重量を測定し、下記式から算出した。
グラフト率(%)=100×(グラフト重合後の重量)/(グラフト重合前の重量)
【0062】
(イオン交換容量)
カチオン交換容量(meq/g乾燥シート)は従来公知の方法により算出し、アニオン交換容量(meq/g乾燥シート)は、グラフト率から得られるグラフト重合したモノマー当量(meq/g乾燥シート)からカチオン交換容量を差し引いて算出した。
【0063】
(電気抵抗)
得られた複合イオン交換体を0.5N食塩水中に十分平衡させた後、0.5N食塩水中で、交流1000サイクルで25℃にて、電気抵抗(Ω・cm)を測定した。
【0064】
<実施例1〜4>
膜厚40μm、0.92g/cm2の高密度ポリエチレンシートを酸素不透過性ポリエチレン袋中に入れた後、この袋内を窒素置換した。
次いで、このシートを含む袋に電子線を、加速電圧2.0MeV、電子線電流20mAで、200kGy照射した。次に、予め重合禁止剤を除去したグリシジルメタクリレートの10Vol%のトルエン混合溶液(架橋剤としてジビニルベンゼンをグリシジルメタクリレートに対して1.0mol%加えた。)を袋内に充填した。充填後、袋を40℃恒温槽に20分間浸漬させグラフト重合させた。
その後、袋よりグラフト重合したシートを取り出し、トルエン溶液中室温で1時間浸漬し洗浄させ、更にメタノールで洗浄した後、乾燥させた。
グラフト率は、表1に示すとおり33〜36%であった。
【0065】
また、得られたシートの片面を高密度ポリエチレンシートで覆い、四辺をヒートシールして貼り合わせたものを、0.5mol/Lのトリメチルアミン水溶液に40℃で表1に示す時間ほど浸漬させシートの片面から4級化反応を行った。次いで、トリメチルアミン水溶液からシートを取り出した後、被覆材として用いた高密度ポリエチレンシートを除去して得られた4級化反応せしめたシートを2mol/Lの2−メルカトエタンスルホン酸ナトリウム水溶液、ジオキサン、1mol/LのNaOH水溶液を10/80/10vol%で調製した溶液に80℃で24時間浸漬させ、残存グリシジル基にスルホン酸基を導入することにより、複合イオン交換シートを得た。
【0066】
得られた複合イオン交換シートのイオン交換容量、電気抵抗を測定した結果を表1に示した。得られた何れの膜も異種のイオン交換基が存在しているにもかかわらず一体シートであるために、湿潤下膨潤状態においても異種イオン交換層の剥離は全く認められなかった。
【0067】
【表1】

【0068】
<比較例1>
実施例1と同様にグラフトしたシートをトリメチルアミンで4級化せずに、実施例1と同じ条件でシート全体をスルホン化した。得られたシートの片面に4級アンモニウム塩基の交換容量0.92meq/gの部分アミノ化ポリスチレン(スチレンとクロロメチルスチレンのモノマーのモル比10:1をトルエン中で70℃、重合開始剤ベンゾイルパーオキサイドの存在下に10時間共重合し、次いで反応液をメタノール中に注ぎ、共重合体を得て、この共重合体のクロロメチル基をテトラメチルエチレンジアミンにて4級アンモニウム基化したもの)を15wt%でテトラヒドロフランに溶解したものをコートし、室温にて乾燥し、複合イオン交換シートを得た。
得られたシートを水に浸漬させ膨潤させるとカチオン交換層とアニオン交換層が完全に剥離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換基が表面及び内部の全体に一様に導入された樹脂シートからなり、一方の表面側にカチオン交換基が分布し且つ他方の表面側にアニオン交換基が分布した2層構造を有していることを特徴とする複合イオン交換体。
【請求項2】
非イオン交換性の樹脂シート、及びカチオン交換基とアニオン交換基との何れをも導入可能な官能基とエチレン系不飽和二重結合とを有している重合性単量体を用意し、
電離放射線の照射によって、前記重合性単量体を前記樹脂シート全体にグラフト重合してイオン交換前駆体シートを調製し、
アニオン交換基導入用化合物またはカチオン交換基導入用化合物を、前記イオン交換前駆体シートの一方の面から、前記官能基の一部が残るように、該官能基に反応させてアニオン交換基またはカチオン交換基を導入し、
次いで、カチオン交換基導入用化合物またはアニオン交換基導入用化合物を、他方の面側に残った未反応の官能基に反応させてカチオン交換基またはアニオン交換基を導入すること、
を特徴とする請求項1に記載の複合イオン交換体の製造方法。
【請求項3】
前記官能基に導入されるアニオン交換基が、第1級〜第3級アミノ基であり、前記官能基にアニオン交換基導入用化合物を反応させて該アニオン交換基を導入した後、アルキル化剤を反応させて第1級〜第3級アミノ基を第4級アンモニウム化する請求項2に記載の複合イオン交換体の製造方法。
【請求項4】
前記アニオン交換基を始めに導入した後にカチオン交換基を導入し、最後に前記アルキル化剤を反応させて第4級アンモニウム化を行う請求項3に記載の複合イオン交換体の製造方法。
【請求項5】
前記重合性単量体が有する前記官能基がグリシジル基である請求項2乃至4の何れかに記載の複合イオン交換体の製造方法。
【請求項6】
前記重合性単量体としてグリシジルメタクリレートを使用する請求項5に記載の複合イオン交換体の製造方法。

【公開番号】特開2011−72860(P2011−72860A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224552(P2009−224552)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(503361709)株式会社アストム (46)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】