説明

複合スイッチ

【課題】押圧操作の検出が可能で、所定方向と逆方向との回転操作を2段階での検出が可能な複合スイッチを小型に構成する。
【解決手段】ロータリスイッチ部が、レバー72で回転操作されるブラシユニット60と、複数の固定接点とで構成されている。ブラシユニット60は、一対の主接触子62、63と、単一の副接触子64とを備えている。固定接点は、レバー72が中立姿勢Nにある際に主接触子62、63が接触する主接点24と、レバー72が操作された際に、最初に副接触子64が接触する一対の第1接点25L、25Rと、次に主接触子62、63の一方が接触する第2接点26L、26Rとで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧操作を検出するプッシュスイッチ部と回転操作を検出するロータリスイッチ部とを備えると共に、前記プッシュスイッチ部が、押圧操作により弾性変形する接点板と、この接点板の弾性変形により該接点板に接触して導通状態に達する被接触接点とを備えて構成され、前記ロータリスイッチ部が、レバーの操作によって軸芯の周りで回転する回転導体に複数の接触子を形成したブラシユニットと、複数の前記接触子に導通可能な複数の固定接点とを備えて構成されている複合スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された複合スイッチとして特許文献1は、下側の本体と上側のフレームとを備え、フレーム中央の孔部に露出する位置にプッシュスイッチを配置し、本体とフレームとの中間から側方に張り出すレバーを備えた構造を有している。本体上面の中央位置にはプッシュスイッチ用の複数の固定接点を備え、この固定接点の上部位置には押圧力によって弾性変形して固定電極を導通させる電極板を備えている。また、本体上面において中心位置から等距離となる位置にロータリスイッチ用の複数の固定接点を備え、これに接触可能な複数の接触子を有した環状のブラシを備え、このブラシを前記レバーに連係している。
【0003】
このような構成から、プッシュスイッチ部に圧力操作が作用した場合には、電極板の変形によりプッシュスイッチ用の固定電極が導通状態に達し、この押圧操作が検出される。また、レバーに回転操作力が作用した場合には、ブラシの複数の接触子がロータリスイッチ用の固定電極に対して選択的に接触することにより、右回転方向と左回転方向との回転操作を2段階で検出される。
【0004】
特に、この特許文献1では、ロータリスイッチ用の固定接点として、単一の共通接点と、右回転を検出する2つの個別接点と、左回転を検出する2つの固定接点とを有し、ブラシには、環状の固定部に対して4つの接触子を備えた構造を有し、この4つの接触子は前述した右回転を検出する2つの個別接点と、左回転を検出する2つの個別接点に対応している。
【0005】
このような構成から、ブラシが中立位置から右方向に回転操作された場合には、右回転を検出する2つの個別接点に対して、対応する接触子が順次接触し、この接触時には左回転を検出する接触子の1つが共通接点と接触する状態が維持される。これとは逆に、ブラシが中立位置から左方向に回転操作された場合には、左回転を検出する2つの個別接点に対して、対応する接触子が順次接触し、この接触時には右回転を検出する接触子の1つが共通接点と接触する状態が維持される。これにより、レバーの回転操作を右方向と左方向とにおいて2段に検出できるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008‐177098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される構成のものでは、ブラシに対して4つの接触子を形成し、これに対応する位置に複数の固定接点(個別接点と共通接点)を配置する構成であるため、複数の固定接点を回転中心の基準とする円周状の広い領域に配置する構成となる。また、回転操作においては適度のピッチで回転操作の回転角度を検出できるように、複数の固定接点同士の間隔(中心を基準とする周方向での間隔)を比較的大きい値に設定する必要がある。このような理由から複数の固定接点は、円周状の広い領域に分散して配置されることになり複合スイッチの小型化を制限するものであった。
【0008】
本発明の目的は、押圧操作の検出が可能で、所定方向と逆方向との回転操作を2段階での検出が可能な複合スイッチを小型に構成する点ある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、押圧操作を検出するプッシュスイッチ部と回転操作を検出するロータリスイッチ部とを備えると共に、前記プッシュスイッチ部が、押圧操作により弾性変形する接点板と、この接点板の弾性変形により該接点板に接触して導通状態に達する被接触接点とを備えて構成され、前記ロータリスイッチ部が、レバーの操作によって軸芯の周りで回転する回転導体に複数の接触子を形成したブラシユニットと、複数の前記接触子に導通可能な複数の固定接点とを備えて構成されている複合スイッチであって、
前記ブラシユニットの接触子として、隣接配置される一対の主接触子と、単一の副接触子とを前記軸芯を中心とする同一円周上に備え、
前記固定接点として、前記ブラシユニットが中立姿勢にある際に一対の前記主接触子が同時に接触する主接点と、この中立姿勢において前記副接触子を周方向から挟む位置に離間して配置される一対の第1接点と、この中立姿勢において前記主接点を周方向から挟む位置に離間して配置される一対の第2接点とを備え、
前記ブラシユニットが前記中立姿勢から正方向に回転した際には、一対の前記主接触子の一方が前記主接点に接触する状態で前記副接触子が一対の前記第1接点のうち正回転方向側のものに接触し、更に回転した際には、一対の前記主接触子の一方が前記主接点に接触する状態で一対の前記主接触子の他方が一対の前記第2接点のうち正回転方向側のものに接触し、
前記ブラシユニットが前記中立姿勢から逆方向に回転した際には、一対の前記主接触子の他方が前記主接点に接触する状態で前記副接触子が一対の前記第1接点のうち逆回転方向側のものに接触し、更に回転した際には、一対の前記主接触子の他方が前記主接点に接触する状態で一対の前記主接触子の一方が一対の前記第2接点のうち逆回転方向側のものに接触するように、接触子と固定接点とが配置されている点にある。
【0010】
この構成によると、プッシュスイッチ部において押圧操作の検出が可能になる。また、固定接点として単一の主接点と、一対の第1接点と、一対の第2接点との合計5つの接点を備えるものであるが、ブラシユニットの接触子として一対の主接触子と単一の副接触子との合計3つの接触子を備えている。つまり、接触子は3つで済むものとなり、これ対応する接点を回転軸芯を中心とする同一周上の広い領域に分散させる形態で配置する必要がなく、固定接点の配置スペースの小型化を図りながら回転操作の検出が可能となる。
その結果、押圧操作の検出が可能で、所定方向と逆方向との回転操作を2段階での検出が可能な複合スイッチが小型点に構成されたのである。
【0011】
本発明は、前記ブラシユニットに備えられる一対の前記主接触子と、単一の前記副接触子とが前記軸芯を基準にした一方の領域に配置され、このブラシユニットを操作する前記レバーが前記軸芯を基準にした他方の領域に配置されても良い。
これによると、複合スイッチの一層の小型化が実現する。
【0012】
本発明は、前記固定接点を支持するスイッチ本体が、前記レバーが配置される開放部と、直線状の3つの側壁とを備えると共に、前記主接点に導通するリード端子と、一対の前記第1接点に導通するリード端子と、一対の前記第2接点に導通するリード端子とが、側壁から突出形成されても良い。
この種の複合スイッチの実装を考えると、固定接点として単一の主接点と、一対の第1接点と、一対の第2接点との合計5つの接点と導通するリード端子を、レバーが突出する領域と異なる領域に配置することが合理的である。このような観点を考えると、本発明では、主接点と、一対の第1接点と、一対の第2接点との合計5つの接点を、レバーが突出する領域と反対側に配置できるので設計に無理がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】複合スイッチの斜視図である。
【図2】複合スイッチの分解斜視図である。
【図3】複合スイッチのレバーを含む部位の断面図である。
【図4】複合スイッチのレバーと直交する部位の断面図である。
【図5】ブラシユニットの構造と固定接点の配置とを示す平面図である。
【図6】中立姿勢でのブラシユニットと固定接点との関係を示す図である。
【図7】第1左操作位置でのブラシユニットと固定接点との関係を示す図である。
【図8】第2左操作位置でのブラシユニットと固定接点との関係を示す図である。
【図9】第1右操作位置でのブラシユニットと固定接点との関係を示す図である。
【図10】第2右操作位置でのブラシユニットと固定接点との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、ケースCに対して、2段階の押圧操作を検出するプッシュスイッチ部Pを備えると共に、中立姿勢Nを基準とし、軸芯Xを中心に左方向の第1左操作位置L1と第2左操作位置L2との2段階の回転操作と、軸芯Xを中心として右方向の第1右操作位置R1と第2右操作位置R2との2段階の回転操作を検出するロータリスイッチ部Rを備えて複合スイッチが構成されている。
【0015】
この複合スイッチは、例えば、デジタルカメラのシャッターボタンの部位に配置することが可能である。具体的な操作形態の一例を挙げると、ロータリスイッチ部Rを中立姿勢Nから一方に1段だけ回転操作することによりズームレンズの望遠側への作動を行い、更に、2段目まで回転操作することにより望遠側への作動を高速で行わせる。また、中立姿勢Nから他方に1段だけ回転操作することによりズームレンズの広角側への作動を行い、更に、2段目まで回転操作することにより広角側への作動を高速で行わせる。また、プッシュスイッチ部Pを1段目の押圧操作でフォーカシングや露出設定等の撮影のスタンバイへの移行を実現し、2段目までの押圧操作によりスチルモードでのシャッターの作動や、ムービーモードでの撮影の開始を行う。
【0016】
尚、ロータリスイッチ部Rの操作形態として、例えば、中立姿勢Nから一方に1段だけ回転操作することにより起動(電源をONし)し、更に、2段目まで回転操作することによりスチルモードを選択し、中立姿勢Nから他方に1段だけ回転操作することにより起動(電源をONし)し、更に、2段目まで回転操作することによりムービモードを選択する等のモード選択を実現しても良い。
【0017】
図1〜図4に示すように、この複合スイッチは、絶縁性材料で成る樹脂製のスイッチ本体10と、良導体で成る下側スイッチプレート30(接点板の一例)と、良導体で成る上側スイッチプレート40と、柔軟に変形する保護シート50と、良導体によりリング状に形成されるブラシユニット60と、レバー72が一体形成されたロータ70と、金属板材や樹脂製板材で成るカバー80とを備えている。尚、スイッチ本体10とカバー80とで複合スイッチのケースCが構成されている。
【0018】
本発明の複合スイッチは図1に示す姿勢で使用されるものとは限らないが、同図に示される如くスイッチ本体10を下側とし、カバー80を上側として説明する。
【0019】
〔スイッチ本体〕
スイッチ本体10は、複数の固定接点20を有した底壁部11と、底壁部11の外周部位において上方に突出する外壁部12と、前述したブラシユニット60を下側から支持する一対のリブ状部13と、前述した保護シート50に係合する一対の保持突起14とが一体的に形成されている。外壁部12は、底壁部11から上方に突出形成する壁状に形成されるものであり、この外壁部12のうち平面視において前述したレバー72が配置される開放部Wが形成されている。
【0020】
また、外壁部12のうち、開放部Wに隣接する部位と、軸芯Xを挟んで開放部Wに対向する部位とに直線状の側壁15が形成されている。更に、開放部Wには軸芯Xを中心とする円弧状のガイド壁16が形成され、このガイド壁16の端部位置には、平面視で側壁15に対して傾斜する姿勢の傾斜壁17が形成されている。これにより外壁部12の外面形状は、3つの側壁15と、一対の傾斜壁17とにより一辺を切り欠いた正方形に近似する形状を成す。そして、3つの側壁15と、一対の傾斜壁17との外面には係合突起18が一体的に形成されている。
【0021】
前述したように外壁部12は、底壁部11から上方に突出形成する壁状に形成されており、前記開放部Wに対応する領域を除く領域において軸芯Xを中心とする円形の内周面12Sを有している。リブ状部13は、底壁部11から帯状に上方に突出する一対の成形物であり、軸芯Xを中心とする円弧状に形成されている。
【0022】
図5に示すように、底壁部11に形成される固定接点20として、軸芯X上に配置される中央接点21と、この外周に配置される下側用接点22と、この下側用接点22より更に外周側に配置される上側用接点23とをプッシュスイッチ部Pの構成物として備えている。また、固定接点20として、軸芯Xを中心とする仮想円周上に配置される主接点24と、この仮想円周上において主接点24から離間する位置において周方向に隣接配置される左第1接点25Lと、右第1接点25Rと、この仮想円周上において主接点24を挟む位置に配置される左第2接点26Lと、右第2接点26Rとをロータリスイッチ部Rの構成物として備えている。
【0023】
尚、固定接点20は、中央接点21(被接触接点の一例)と、下側用接点22と、上側用接点23と、主接点24と、左第1接点25Lと、右第1接点25Rと、一対の左第2接点26Lと、右第2接点26Rとの上位概念である。
【0024】
これら中央接点21と、下側用接点22と、上側用接点23と、主接点24と、左第1接点25Lと、右第1接点25Rと、左第2接点26Lと、右第2接点26Rとは銅合金等の良導体で成る金属板や金属箔等を底壁部11の上面に固着する形態で形成される。これらに対してプリント配線等の技術により電気的に接続するリード端子21T、22T、23T、24T、25LT、25RT、26LT、26RTが、3つの側壁15から外方に突出する形状に形成されている。尚、リード端子の符号として電気的に接続する各固定接点の番号に関連する符号を付している。
【0025】
図5に示すように、主接点24と、左第1接点25Lと、右第1接点25Rと、左第2接点26Lと、右第2接点26Rとは、軸芯Xを基準にして開放部Wの領域に拡がる扇状領域を避けた位置に配置されている。
【0026】
〔スイッチプレート〕
下側スイッチプレート30は、弾性変形が可能な銅板等の円盤状の良導体を用いて中央が上方に突出するドーム状の下側プレート本体31と、その外周から外方に突出する一対の下側突出部32とを有する形状に成形されている。また、上側スイッチプレート40も下側スイッチプレート30と同様に、弾性変形が可能な銅板等の円盤状の良導体を用いて中央が上方に突出するドーム状の上側プレート本体41と、その外周から外方に突出する4つの上側突出部42とを有する形状に成形されている。
【0027】
後述するように下側スイッチプレート30と上側スイッチプレート40とは、設定間隔を隔てた位置関係で上下に配置されるものであり、押圧力が作用した場合には上側スイッチプレート40が弾性変形により下側スイッチプレート30の上面に接触し、この接触状態を電気的に検出できるように構成されている。更に押圧力が作用した場合には下側スイッチプレート30が弾性変形することにより、この下側スイッチプレート30が中央接点21に接触し、この接触状態を電気的に検出できるように構成されている。
【0028】
このような操作により2段階の押圧操作の検出を可能にするものであるが、1段目の操作と2段目の操作とを指の感覚で確認できるように、1段目と2段目との夫々の操作の初期には操作反力の感触を得ると共に、操作の終了近くでは操作反力が大きく低下する感触を得るように変形の特性を設定してクリック感を得ている。このような理由から、下側スイッチプレート30と上側スイッチプレート40との少なくとも一方を鋼材のように良好に弾性変形する材料を用いて形成しても良い。また、鋼材を用いる場合には両面に金鍍金を施すことにより良好な導電性を維持しても良い。
【0029】
〔保護シート〕
保護シート50は、電気的に絶縁性を有し、摩擦係数が低い円滑な表面を有した樹脂製で柔軟に変形し得るシート材を円形のシート本体51と、湾曲するように上方に突出する中央部の膨出部52と、外周の2箇所に切り込み部53とを形成した形状に構成されている。尚、2箇所の切り込み部53に対して前述した保持突起14が係入することにより、この保護シート50の回転が阻止されると同時に位置が決まる。
【0030】
〔ブラシユニット〕
ブラシユニット60は、図5に示すように、銅合金等の良導体で成る金属板を用いてリング状部61(回転導体の一例)と、これに一体形成された左主アーム部62Aの先端において下方に突出形成された左主接触子62と、右主アーム部63Aの先端において下方に突出形成された右主接触子63と、リング状部61に一体形成された1つの副アーム部64Aの先端において下方に突出形成された副接触子64と、一対の係合凹部65とを形成した構造を有している。このブラシユニット60では、左主アーム部62Aと右主アーム部63Aと副アーム部64Aの外周縁との外周径を、スイッチ本体10の外壁部12の内周面12Sの内径より僅かに小さく設定することで、軸芯Xを中心として回転自在にスイッチ本体10に支持される。
【0031】
このブラシユニット60は、リング状部61の下面側を前述した一対のリブ状部13の上面の部位において保護シート50に載置される位置に支持される。また、2つの左主アーム部62Aと、右主アーム部63Aと、副アーム部64Aをリング状部61から下方に張り出す傾斜姿勢に成形することで左主接触子62、右主接触子63、副接触子64夫々を下方に突出させている。
【0032】
左主接触子62と、右主接触子63とは周方向で隣接する位置に配置され、これらから離間する位置に1つの副接触子64が配置され、これらは軸芯Xを中心とする仮想円周上に配置されている。
【0033】
〔ロータ〕
ロータ70は、絶縁性の樹脂材料等によりリング状のロータ本体71と、レバー72とを一体形成すると共に、下面側にはブラシユニット60の係合凹部65に係入する突起部(図示せず)を形成した構造を有している。このロータ本体71の外周径をスイッチ本体10の外壁部12の内周面12Sの内径より僅かに小さく設定することで、ロータ70は軸芯Xを中心として回転自在にスイッチ本体10に支持される。
【0034】
ロータ本体71の外周面のうちレバー72が形成された部位の近傍に小径領域71Aの外周径を小径化しており、この小径領域71Aにおいて一対の傾斜壁17に制限されることなくロータ70の回転が許容される。
【0035】
〔カバー〕
カバー80は、平面視でスイッチ本体10と略一致する形状のカバー本体81を有すると共に、外周の5箇所に突出片82が形成され、これらに係合孔部83が穿設されている。また、カバー本体81の中央部には開口84が形成され、この開口84から下方に突出する押圧片85が形成されている。
【0036】
このような構成から、中央接点21と、下側用接点22と、上側用接点23と、下側スイッチプレート30と、上側スイッチプレート40とでプッシュスイッチ部Pが構成されている。更に、主接点24と、一対の第1接点25R、25Lと、一対の第2接点26R、26Lと、ブラシユニット60の2つの左主接触子62、右主接触子63及び1つの副接触子64と、レバー72で操作されるロータ70とによってロータリスイッチ部Rが構成されている。
【0037】
〔複合スイッチの構造〕
スイッチ本体10に対して、下側スイッチプレート30、上側スイッチプレート40、保護シート50、ブラシユニット60、ロータ70、カバー80夫々を重ね合わせ、スイッチ本体10に対して軸芯Xに沿う方向にカバー80を押圧することで、カバー80の複数の突出片82を外側に弾性変形させ、この突出片82の係合孔部83に対してスイッチ本体10の複数の係合突起18が係合した状態で、突出片82の弾性的な復元力により係合孔部83に対する係合突起18の係合状態が維持され、複合スイッチの組み立てが完了する。
【0038】
この組み立て状態では、図3、図4に示すように、下側プレート本体31の下側突出部32が底壁部11に係合すると同時に、この下側プレート本体31の外周部が下側用接点22に接触して電気的な導通状態に達する。また、上側プレート本体41の上側突出部42(図2を参照)が底壁部11に係合すると同時に、この上側突出部42が上側用接点23に接触して電気的な導通状態に達する。また、下側プレート本体31と上側プレート本体41とは上下方向で設定距離だけ離間した位置関係で配置されることになり、保護シート50のシート本体51の膨出部52が上側プレート本体41の上面を覆い、このシート本体51の外周部分が一対のリブ状部13の上面に接触する状態となる。
【0039】
このシート本体51の切り込み部53が保持突起14に係合することで、保護シート50の位置が決まると同時に回転が抑制される。このシート本体51の外周部分の上面にブラシユニット60のリング状部61が支持され、このブラシユニット60の2つの左主接触子62、右主接触子63及び1つの副接触子64は、主接点24と、左第1接点25Lと、右第1接点25Rと、左第2接点26Lと、右第2接点26Rとのうち対応するものに接触する(この接触の形態は後述する)。
【0040】
ブラシユニット60の上面にロータ70のロータ本体71が接触し、このロータ本体71の突起部(図示せず)がブラシユニット60の係合凹部65に係合することで、レバー72の回転操作時にはブラシユニット60が一体的に回動する。そして、この組み立て状態では、前述したようにプッシュスイッチ部Pにおいて押圧操作の2段階の検出が可能となり、また、ロータリスイッチ部Rにおいて、中立姿勢Nを基準にするレバー72の左回転と右回転とにおける2段階の検出が可能となる。
【0041】
カバー80の下面にロータ本体71が接触することで、このロータ本体71とブラシユニット60との分離が抑制され、また、カバー80の開口84の押圧片85がシート本体51の浮き上がりを抑制する。
【0042】
〔検出形態〕
このような複合スイッチにおいて、カバー80の開口84を介して押圧操作力が作用した場合には、保護シート50の膨出部52が柔軟に変形することにより、上側スイッチプレート40の上側プレート本体41の中央部が下方に向けて窪むように弾性変形が行われる。この弾性変形により、その中央部の下面が下側スイッチプレート30の下側プレート本体31の中央部に接触し、上側用接点23と下側用接点22とが電気的な導通状態に達し、この1段目までの操作の検出が可能となる。
【0043】
この押し操作を継続することにより、上側プレート本体41の中央部から下側プレート本体31の中央部に押圧操作力が作用して、下側プレート本体31の中央部が下方に向けて窪むように弾性変形が行われる。この弾性変形により、その中央部の下面が中央接点21に接触し、下側用接点22と中央接点21とが電気的な導通状態に達し、この2段目までの操作の検出が可能となる。
【0044】
この複合スイッチでは、中立姿勢Nを基準にしてレバー72を右方向(一方)に向け第1右操作位置R1と第2右操作位置R2とに操作でき、これと同様に、レバー72を左方向(他方)に向け第1左操作位置L1と第2左操作位置L2とに操作できるように構成されている。
【0045】
レバー72が中立姿勢Nにある状態では、図6に示すように、左主接触子62と右主接触子63とが主接点24に接触して電気的な導通状態にあるが、副接触子64は左第1接点25Lと右第1接点25Rとの中間位置で、何れにも接触しない状態となる。
【0046】
この中立姿勢Nを基準にしてレバー72が第1左操作位置L1まで回転操作された際には、図7に示すように、少なくとも右主接触子63が主接点24に接触する状態を維持しながら、副接触子64が左第1接点25Lに接触することで、この左第1接点25Lを主接点24と同電位にする。更に、レバー72が第2左操作位置L2まで回転操作された際には、図8に示すように、右主接触子63が主接点24に接触する状態を維持しながら、副接触子64が左第2接点26Lに接触することで、この左第2接点26Lを主接点24と同電位にする。
【0047】
これとは逆に、中立姿勢Nを基準にしてレバー72が第1右操作位置R1まで回転操作された際には、図9に示すように、少なくとも左主接触子62が主接点24に接触する状態を維持しながら、副接触子64が右第1接点25Rに接触することで、この右第1接点25Rを主接点24と同電位にする。更に、レバー72が第2右操作位置R2まで回転操作された際には、図10に示すように、左主接触子62が主接点24に接触する状態を維持しながら、副接触子64が右第2接点26Rに接触することで、この右第2接点26Rを主接点24と同電位にする。
【0048】
つまり、ブラシユニット60が中立姿勢Nから正方向(例えば、左側)に回転した際には、一対の主接触子62、63の一方(右主接触子63)が主接点24に接触する状態で、副接触子64が一対の第1接点25L、25Rのうち正回転方向側のもの(左第1接点25L)に接触する。更に回転した際には、一対の主接触子62、63の一方(右主接触子63)が主接点24に接触する状態で一対の主接触子62、63の他方(左主接触子62)が一対の第2接点26L、26Rのうち正回転方向側のもの(左第2接点26L)に接触する。
【0049】
これとは逆に、ブラシユニット60が中立姿勢Nから逆方向(例えば、右側)に回転した際には、一対の主接触子62、63の他方(左主接触子62)が主接点24に接触する状態で副接触子64が一対の第1接点25L、25Rのうち逆回転方向側のもの(右第1接点25R)に接触し、更に回転した際には、一対の主接触子62、63の他方(左主接触子62)が主接点24に接触する状態で一対の主接触子62、63の一方(右主接触子63)が一対の第2接点26L、26Rのうち逆回転方向側のもの(右第2接点26R)に接触するのである。
【0050】
この複合スイッチでは、主接点24をグランドレベルの電位に設定することで、固定接点20の電位がグランドレベルまで低下することからスイッチの操作を検出する形態で使用することを想定しているが、この主接点に24に任意の電圧を印加して使用しても良い。この場合、固定接点20の電圧が上昇することからスイッチの操作が検出されることになる。
【0051】
このように、本発明の複合スイッチでは、プッシュスイッチ部Pにおいて押圧操作が行われた場合には、押圧操作のストロークに対応してクリック感を伴う2段階の検出が可能となる。また、ロータリスイッチ部Rにおいて回転操作が行われた場合には、中立姿勢Nを基準として一方と他方とにおいて回転操作のストロークに対応して2段階の検出が可能となる。
【0052】
特に、ロータリスイッチ部Rでは、中立姿勢Nを基準にして、一方(例えば左側)への回転操作を2段階で検出し、他方(例えば右側)への回転操作を2段階で検出することで、中立姿勢Nを除いても4姿勢への回転操作検出するものでありながら、ブラシユニット60の外周に形成される接触子を3つで済むものにしている。このようにブラシユニット60の外周に形成される接触子を3つにすることで、例えば、4姿勢に対応して接触子を4つ備えるものと比較すると、ブラシユニット60の小型化を実現すると同時に、接触子に接触する接点が配置されるエリアを小さくして、複合スイッチの小型化を実現しているのである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、デジタルカメラ以外にオーディオ機器や携帯電話機に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 スイッチ本体
11 底壁部
15 側壁
21 被接触接点(中央接点)
24 主接点
24T リード端子
25L 第1接点(左第1接点)
25LT リード端子
25R 第1接点(右第1接点)
25RT リード端子
26L 第2接点(左第2接点)
26LT リード端子
26R 第2接点(右第2接点)
26RT リード端子
30 接点板(下側スイッチプレート)
60 ブラシユニット
61 回転導体(リング状部)
62 主接触子(左主接触子)
62 主接触子(右主接触子)
63 副接触子
72 レバー
N 中立姿勢
P プッシュスイッチ部
R ロータリスイッチ部
W 開放部
X 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作を検出するプッシュスイッチ部と回転操作を検出するロータリスイッチ部とを備えると共に、前記プッシュスイッチ部が、押圧操作により弾性変形する接点板と、この接点板の弾性変形により該接点板に接触して導通状態に達する被接触接点とを備えて構成され、前記ロータリスイッチ部が、レバーの操作によって軸芯の周りで回転する回転導体に複数の接触子を形成したブラシユニットと、複数の前記接触子に導通可能な複数の固定接点とを備えて構成されている複合スイッチであって、
前記ブラシユニットの接触子として、隣接配置される一対の主接触子と、単一の副接触子とを前記軸芯を中心とする同一円周上に備え、
前記固定接点として、前記ブラシユニットが中立姿勢にある際に一対の前記主接触子が同時に接触する主接点と、この中立姿勢において前記副接触子を周方向から挟む位置に離間して配置される一対の第1接点と、この中立姿勢において前記主接点を周方向から挟む位置に離間して配置される一対の第2接点とを備え、
前記ブラシユニットが前記中立姿勢から正方向に回転した際には、一対の前記主接触子の一方が前記主接点に接触する状態で前記副接触子が一対の前記第1接点のうち正回転方向側のものに接触し、更に回転した際には、一対の前記主接触子の一方が前記主接点に接触する状態で一対の前記主接触子の他方が一対の前記第2接点のうち正回転方向側のものに接触し、
前記ブラシユニットが前記中立姿勢から逆方向に回転した際には、一対の前記主接触子の他方が前記主接点に接触する状態で前記副接触子が一対の前記第1接点のうち逆回転方向側のものに接触し、更に回転した際には、一対の前記主接触子の他方が前記主接点に接触する状態で一対の前記主接触子の一方が一対の前記第2接点のうち逆回転方向側のものに接触するように、接触子と固定接点とが配置されている複合スイッチ。
【請求項2】
前記ブラシユニットに備えられる一対の前記主接触子と、単一の前記副接触子とが前記軸芯を基準にした一方の領域に配置され、このブラシユニットを操作する前記レバーが前記軸芯を基準にした他方の領域に配置されている請求項1記載の複合スイッチ。
【請求項3】
前記固定接点を支持するスイッチ本体が、前記レバーが配置される開放部と、直線状の3つの側壁とを備えると共に、前記主接点に導通するリード端子と、一対の前記第1接点に導通するリード端子と、一対の前記第2接点に導通するリード端子とが、側壁から突出形成されている請求項2記載の複合スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−282756(P2010−282756A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133299(P2009−133299)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】