説明

複合ファブリック

【課題】通気性を抑えつつ、適度な透湿性が確保された複合ファブリックを提供する。
【解決手段】直径が1μm未満の繊維から成るナノファイバー不織布に、接着剤を介して、少なくとも1層の編生地が積層されてなる複合ファブリック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバー不織布と編生地によって構成される複合ファブリックに関する。より詳細には、通気性を抑えて熱の移動を抑制し、良好な透湿性を確保することで蒸れ感を軽減する複合ファブリックに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、衣服内環境を快適に保つことを目的とした様々な肌着用途の素材が報告されている。例えば特許文献1には、熱可塑性エラストマーを用いた多孔質シートと繊維シートの積層体が開示されている。また、特許文献2には透湿防水性の樹脂と極細繊維の組み合わせた積層体が開示されている。
【0003】
しかしながら、上記のような従来技術では、防風性に対して透湿性が十分でなかったり、十分な透湿性を得ようとすれば防風性が十分でないなど、両性能を十分に両立させているとは言えなかった。また保温性に関する十分な検証がなされていないことや、生地が重くて着用感が悪いなどの様々な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−54009号公報
【特許文献2】特開平5−230770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、通気性を抑えつつ、適度な透湿性が確保された複合ファブリックを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ナノファイバー不織布を用いることによって、通気性が抑えられて保温性に優れ、適度な透湿性が確保されたファブリックが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果完成されたものである。
【0007】
本発明は、以下の複合ファブリック及びその製造方法を提供する。
項1.直径が1μm未満の繊維から成るナノファイバー不織布に、接着剤を介して、少なくとも1層の編生地が積層されてなる複合ファブリック。
項2.前記ナノファイバー不織布の表面及び裏面の両方にそれぞれ1層ずつ編生地が積層されてなる、項1に記載の複合ファブリック。
項3.前記編生地が、総繊度50dtex以上の繊維で製編されたものである、項1又は2に記載の複合ファブリック。
項4.前記接着剤がメッシュ状の熱融着フィルムである項1〜3のいずれかに記載の複合ファブリック。
項5.通気度がJIS L 1096(フラジール形法)で0.3cc/cm/sec未満であり、かつ透湿度がJIS L 1099 A−2法で3000cm/24h・m以上であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の複合ファブリック。
項6.KES法による熱伝達抵抗(クロー値)が0.1CLO以上であることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の複合ファブリック。
項7.目付が50g/m以上350g/m未満であることを特徴とする項1〜6のい
ずれかに記載の複合ファブリック。
項8.肌着の形態である項1〜7のいずれかに記載の複合ファブリック。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通気性を抑えながら適度な透湿性を有する快適な複合ファブリックを提供することができる。より詳しくは、本発明の複合ファブリックは、肌への直接的な外気の接触を抑制しながら衣服内の湿度を適度に保つことができる。また、本発明の複合ファブリックは、重すぎることがなく、着用時に不快感を与えることもない。この様な特性を有する本発明の複合ファブリックは、衣服、特に肌着の素材として有用である。本発明の複合ファブリックを素材とする肌着は、保温性に優れ、さらに蒸れや重さ等による不快感がなく、外気温が低い時でも肌着内を快適に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の複合ファブリックの好ましい一形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.複合ファブリック
本発明の複合ファブリックは、ナノファイバー不織布と、接着剤を介して積層される編生地とで構成される。以下に本発明の構成について詳細に説明する。
【0011】
(1)ナノファイバー不織布
本発明の複合ファブリックにおいて、ナノファイバー不織布は、衣服内の湿気を逃がしつつ外部からの空気の侵入を防いで、優れた保温効果を発揮するはたらきを有する。
【0012】
本発明において使用されるナノファイバー不織布を構成するナノファイバーの直径は、約1μm未満、好ましくは20〜900nm、より好ましくは50〜700nm、さらに好ましくは100〜500nmである。ここで、ナノファイバーの直径は、10000〜50000倍の倍率でSEM(Scanning Electron Microscope)にて撮影し、無作為に選んだ繊維の太さ(繊維軸に直交方向の長さ)を30点測定し、その平均値によって表される。
【0013】
ナノファイバーの材料としては、編生地の伸縮性に追従できるほどの伸度を持つ素材であれば特に限定されず従来公知のものを使用することができるが、例えば、ウレタン系ポリマー(例えば、スパンデックス等)、エラストマー系ポリマー(例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー)等が挙げられる。このようなポリマー素材のナノファイバーは伸縮性に優れることから、本発明の複合ファブリックを肌着等の素材として用いる場合に好適である。
【0014】
本発明において使用されるナノファイバー不織布は、上記の直径の繊維が得られるのであればその製造方法は限定されず、従来公知の方法に従って得ることができる。ナノファイバー不織布の製造方法としては、例えば電界紡糸法(ESD:Electro Spinning Deposition)、2成分系海島構造糸製造法(2種類の異なるポリマーを同時に紡糸し、最終的にいずれか1種類のポリマー(例えば、海部分を構成するポリマー)で形成された繊維成分を除去して海島構造を有する不織布を製造する方法)等が挙げられ、好ましくは電界紡糸法である。
【0015】
電界紡糸法を採用する場合の製造条件の典型例としては、電圧−70〜70kV、ノズル径14〜32G、コレクターまでの距離5〜30cmが挙げられる。また、使用されるポリマー素材によって適宜異なるが、例えばポリウレタン樹脂の場合、溶媒はN,N−ジ
メチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等に3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の濃度で溶解させるのが望ましい。他のポリマー素材を使用する場合は、各種ポリマーに適した従来公知の溶媒を用いることができ、上記濃度を参考に溶解濃度を適宜設定することができる。
【0016】
例えば、電界紡糸法でナノファイバー不織布を製造する場合、素材となる樹脂の重量平均分子量は7万以上であることが好ましく、より好ましくは10万以上であり、例えば7万〜50万程度、好ましくは10万〜50万程度である。また、樹脂は溶媒に完全に溶解していることが好ましく、必要に応じて赤外線ランプ等で生成場の雰囲気温度を高めることが望ましい。
【0017】
本発明の複合ファブリックに使用されるナノファイバー不織布は、見かけ密度1g/cm未満が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5g/cm、さらに好ましくは0.01〜0.1g/cmを有する。見かけ密度は、20cm×20cmのサンプルの厚みと重量を測定し、単位体積あたりの重量を算出した値である。このような見かけ密度を有するナノファイバー不織布は、多くの不動空気層を有している。不動空気層とは、不織布中の極めて微小な空気の層であり、湿気の移動に伴って熱の対流を起こさないことから高い保温性を実現することができる。
【0018】
本発明において使用されるナノファイバー不織布の総厚みは、通常10〜300μmであり、好ましくは50〜200μmである。ナノファイバー不織布の総厚みは、下記の測定方法により測定した値である。なお、後述する実施例におけるナノファイバー不織布の厚みも、下記の測定方法によるものである。
(測定方法)
厚み100μmのPET製フィルム2枚で、厚みを測定するナノファイバー不織布を挟み、全体の厚み(PET製フィルム2枚とナノファイバー不織布)をデジタルマイクロメーター(MDC−25MJ、(株)ミツトヨ製)で測定する(その時の厚みをAμmとする)。測定した値(Aμm)から、PET製フィルム2枚分の厚み(200μm)を引いた値、つまり、(A−200)μmが、ナノファイバー不織の厚みである。
【0019】
(2)編生地
本発明の複合ファブリックは、ナノファイバー不織布に、接着剤(もしくは接着剤層)を介して、少なくとも1層の編生地が積層されている形態を有する。本発明の複合ファブリックの形態としては、編生地がナノファイバー不織布の表面又は裏面のいずれか一方に積層されているものも包含されるが、好ましくは編生地が前記ナノファイバー不織布の表面と裏面にそれぞれ一層ずつ積層されてなる形態を有する。このようにナノファイバー不織布を編生地で挟み込むことによって、ナノファイバーの磨耗を抑制することができ、複合ファブリックの耐久性を向上させることができる。
【0020】
編生地をナノファイバー不織布の表面と裏面に積層した場合、裏面に積層される編生地を裏地とし、表面に積層される編生地を表地とする。ここで、裏地とは、本発明の複合ファブリックを衣服として縫製した場合に肌に接触する面を構成する編生地であり、表地とは衣服の外側(外気と接触する)の面を構成する編生地である。
【0021】
本発明において使用される編生地は、総繊度が通常50dtex以上であり、好ましくは60〜300dtex、より好ましくは70〜200dtexの繊維で製編されている。このような範囲であれば本発明の複合ファブリックの強度を保つことができる。
【0022】
編生地の素材としては、好ましくは表地が親水性素材で構成され、裏地が疎水性素材で構成されるが、複合ファブリックの表面が親水性であり、裏面が疎水性の性質となるもの
であれば編生地の素材は特に限定されず、親水性素材と疎水性素材を組み合わせて用いることもできる。また、本発明の効果を損なわない限り、表地と裏地を同じ編生地で構成してもよい。
【0023】
親水性素材としては、従来公知の素材を採用することができるが、例えば、綿、麻等の植物性繊維や、ウールなどの獣毛繊維、親水性の付与されたポリエステル等の合成繊維が挙げられ、肌触りや保温性の観点から好ましくは綿、ウールである。これらの素材を単独又は2種以上を組み合わせて親水性繊維として使用することができる。また、キュプラ、レーヨン、アセテート、ポリノジック、リヨセル等の再生繊維を用いることもできる。
【0024】
疎水性素材も従来公知のものを適宜選択することができるが、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(例えば、ナイロン−6、ナイロン−66等のナイロン系繊維)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン等)等の樹脂で構成される合成繊維が挙げられ、好ましくはポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンである。これらの素材を単独又は2種以上を組み合わせて疎水性素材として使用することができる。
【0025】
上記素材の組み合わせとしては、キュプラ/ポリエステル、キュプラ/ポリエステル/ポリウレタン等が例示されるが、本発明の効果を損なわない限り、素材の組み合わせは特に限定されない。
【0026】
これらの編生地は、組織の種類(編み方の種類)、繊維の長短(フィラメント(長繊維)、ステープル(短繊維))等は特に限定されないが、表地と裏地の2枚の生地を使用することから、なるべく薄手で軽い構造であることが好ましい。より好ましくは、裏地は肌との接触面積の少ない組織にするなどして、肌触りや風合いに考慮することが望ましい。本発明において採用され得る組織としては、例えば、横編み、丸編からなる平編み組織、ゴム編み組織、両面編組織等が挙げられ、従来公知の方法に従って各種組織に製編することができる。また、ゴム編み等をベースにした組織を採用することもでき、例えば、特開2004−036051号公報に記載の方法で製造した組織(シンテレニット)、フライスメッシュ組織、タックメッシュ組織等が挙げられ、これらの組織も従来の方法に従って得ることができる。例えば、編立組織にあった丸編み機を用いて、ゲージ数16〜40Gの範囲内で糸長およびループ長、給糸テンション、生地張力等を設定し編みたてることができる。
【0027】
本発明の複合ファブリックにおいて、編み生地の総厚みは、通常100〜500μmであり、好ましくは140〜320μmである。
【0028】
(3)接着剤
本発明の複合ファブリックは、ナノファイバー不織布と編生地が接着剤を介して積層されている。本発明に使用される接着剤としては、前記ナノファイバー不織布と編生地とを接着することができれば、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、従来公知の材料を使用することができる。ただし、ナノファイバー不織布と編生地を接着する際に、ナノファイバー不織布の細孔を塞ぐと透湿性を損なうおそれがあることから、例えばメッシュ状の熱融着フィルム、不織布状の熱融着フィルム等を用いたホットプレス、高透湿性接着剤等をスプレーする方法等を採用することが好ましい。あるいは、ナノファイバー不織布と編生地の間に何点か接着剤を塗布し、ポイント接着(ドット接着)等の方法を用いてもよい。
【0029】
熱融着フィルムの素材としては、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ブタジエン
ゴム系、ポリウレタン系等が挙げられ、特に接着性や伸縮性の観点から好ましくはポリウレタン系である。具体的には、例えば、ウレタン系熱融着フィルムとしては東海サーモ(
株)製FUSEC C6J5;ポリアミド系熱融着不織布としては東海サーモ(株)製FUSEC
1G8 D8等が挙げられるが、これらに限定されない。熱融着フィルムを使用する場合に
は、ナノファイバー不織布と編生地の間に接着剤層が形成される。また、高透湿性接着剤としては、例えば親水基を導入したポリウレタン等が挙げられる。
【0030】
接着剤の使用量は、編生地とナノファイバー不織布を十分に接着できるものであれば、特に限定されないが、複合ファブリックの風合いを損なわないためには、目付5〜100g/mが好ましく、より好ましくは8〜30g/mである。また、接着剤は、表地又は裏地とナノファイバー不織布を接着できるものであれば表地の接着と裏地の接着に同じ素材のものを用いてもよいが、表地と裏地が異なる種類の編生地によって構成される場合は、編生地の種類によってそれぞれ異なる接着剤を用いてもよい。
【0031】
(4)本発明の複合ファブリックは、好ましくは以下のような物性を有する。
(通気性)
本発明の複合ファブリックは、JIS L 1096(フラジール法)による通気度0.3cc/cm2/sec未満、好ましくは0.1cc/cm2/sec以上0.3cc/cm2/sec未満を有する。0.3cc/cm2/sec未満であれば、外部からの冷たい風が衣類内に入り込んで、保温効果を著しく阻害することがなく、優れた防風性を実現することができる。
【0032】
(透湿性)
本発明の複合ファブリックは、JIS L 1099 A−2法による透湿量3000g/24h・m以上、好ましくは4000g/24h・m以上を有する。透湿量が3000g/24h・m以上であれば、衣類内に蒸れて不快に感じることもなく好ましい。
【0033】
本発明の複合ファブリックは、好ましくは上記通気度と透湿度の両方満たすものである。
【0034】
(保温性)
本発明の複合ファブリックは、KES法による熱伝達抵抗(クロー値)が、0.1CLO以上、好ましくは0.13CLO以上である。0.1CLO以上であれば、衣服内の熱エネルギーが衣服外に大量に移動することがないため、寒く感じることもなく好ましい。この様な熱伝達抵抗を有するものであれば、冬場などの外気温が低い状況下において優れた保温性能を発揮することができる。
【0035】
(重量感)
本発明の複合ファブリックは、目付が50g/m以上350g/m未満、好ましくは100〜320g/mである。目付けが50g/m以上であれば肌着等に用いた場合、通常の取り扱いに必要とされる強度が十分得られ、350g/m未満であれば、着用していて不快でない程度の重量であり好ましい。
【0036】
以上のような物性を充足する本発明の複合ファブリックは、衣服、特に肌着(好ましくは防寒用肌着、保温性を目的とする肌着、スポーツウェア等)の素材として好適に使用され得る。この様な肌着としては、例えば、シャツ、ブリーフ、腹巻き、ステテコ、パッチ、ショーツ、ガードル、ペチコート、レギンス、ソックス、タイツ等が挙げられる。本発明の複合ファブリックを用いて肌着等を製造する場合は、従来公知の方法に従えばよく、裁断方法、縫製方法等は特に限定されない。
【0037】
2.製造方法
本発明の複合ファブリックは、従来公知の方法に従って製造することができるが、例えば接着剤として熱融着フィルムを用いる場合は、編生地とナノファイバー不織布の間に熱融着フィルムを配置し、熱融着フィルムの融点+10℃以内程度の温度で、通常2MPa程度の圧力で加圧接着することによって得られる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0039】
下記実施例1〜4において使用されたナノファイバー不織布は、以下の方法に従って製造した。
【0040】
[ナノファイバー不織布の製造方法]
DIC Bayer Polymer Ltd.製の熱可塑性ポリウレタン樹脂(Pnadex1185)を23重量%の割合でDMF(N,N‐ジメチルホルムアミド)に溶解させ、これを電界紡糸装置の溶液
充填部に充填し、55kVの電圧をかけて電界紡糸を行った。なお、この時に用いた金属製ノズルの径は26Gで、コレクターまでの距離は15cmであった。
【0041】
[実施例1]
厚み100μm、目付け3.47g/m、平均繊維径500nmのナノファイバー不織布の両面に、メッシュタイプのウレタン系熱融着フィルム(東海サーモ(株)製FUSEC C6J5;目付28g/m)を用いて、総繊度167dtexの繊維で製編された2枚のシンテレニット(特開2004−036051号公報に記載の方法に従って製造した目付け117.6g/mの編生地、ポリエステル50/キュプラ50(重量%)、厚み320μm)を115℃、2MPaの圧力で加圧接着し、複合ファブリックを得た。
【0042】
[実施例2]
総繊度143dtexの繊維で製編されたゴム編み組織をベースとしたフライスメッシュ組織で目付け126.1g/mの編生地(ポリエステル79/キュプラ18/ウレタン3(重量%);厚み250μm)2枚の間に実施例1のナノファイバー不織布を配置し、実施例1の熱融着フィルムを介して貼り付け、複合ファブリックを得た。貼り付け方法は実施例1に記載の通りである。
【0043】
[実施例3]
総繊度112dtexの繊維で製編されたゴム編み組織をベースとしたタックメッシュ組織で目付け117.7g/mの編生地(ポリエステル50キュプラ50(重量%);厚み350μm)2枚の間に実施例1のナノファイバー不織布を配置し、実施例1の熱融着フィルムを介して貼り付け、複合ファブリックを得た。貼り付け方法は実施例1に記載の通りである。
【0044】
[実施例4]
総繊度143dtexの繊維で製編されたゴム編み組織をベースとしたフライスメッシュ組織で目付け126.1g/mの編生地(ポリエステル79/キュプラ18/ウレタン3(重量%);厚み250μm)2枚の間に実施例1のナノファイバー不織布を配置し、ポリアミド系熱融着不織布(東海サーモ(株)製FUSEC 1G8 D8;目付:8g/m2)を
115℃、2MPaの圧力で加圧接着して貼り付け、複合ファブリックを得た。
【0045】
[比較例1]
ナノファイバー不織布の代わりに、BASFジャパン(株)製エラストランXOP90Aを融点以上に加熱し、熱プレス機を用いて100μmの厚みのフィルムに成型した透湿性ウレタンフィルムを用い、200℃で加圧接着する以外は実施例1と同様に複合ファブリックを得た。
【0046】
[比較例2]
ナノファイバー不織布の代わりに目付け3.5g/m、平均繊維径5μmのものを用いる以外は実施例1と同様に複合ファブリックを得た。
【0047】
以上のようにして得られた複合ファブリックを、下記評価方法に従って通気度、透湿性、保湿性、目付け、着用感について評価した。
【0048】
[評価方法]
〈通気度〉
JIS L 1096(フラジール形法)に従って評価した。
【0049】
〈透湿度〉
JIS L 1099 A−2法に従って評価した。
【0050】
〈保温性〉
クロー値(カトーテック(株)製 KES-F7サーモラボIIを用いて測定)
【0051】
〈目付け〉
150×150mmの試験片の重量と厚みを測定し、単位厚みあたりの目付け(g/m)を測定した。
【0052】
〈着用感〉
モニター10名(男性5名、女性5名、平均年齢32歳)に対し、上記実施例及び比較例の複合ファブリックを用いて得られた肌着を実際に着用した際の着用感をA評価(蒸れ感)、B評価(重量感)、C評価(保温性)の3項目について以下に示される点数で評価した。評価A〜Cが4点以上の場合に良好な着用感が得られるとした。
A評価(蒸れ感)
各複合ファブリックで作製した肌着(上半身着用型)を着用し、1分間に30往復の踏み台昇降運動を行った後に、衣服内の蒸れ感をどう感じたかを以下の5項目より選択した。
1点:かなり不快に感じる。
2点:不快に感じる。
3点:どちらかというと不快に感じる。
4点:どちらともいえない。
5点:快適である。
B評価(重量感)
各複合ファブリックで作製した肌着(上半身着用型)を着用した際に、重量感をどのように感じたかを以下の5項目より選択した。
1点:かなり重く感じ、かなり不快である。
2点:重く感じ、不快である。
3点:やや重く感じ、不快である。
4点:重くは感じない。
5点:軽く感じ、快適である。
C評価(保温性)
各複合ファブリックで作製した肌着(上半身着用型)を着用し、気温25℃の室内にて
、20cm離れた位置から10℃の冷気を直径20cmのホースから流し、どのように感じたかを以下の5項目より選択した。
1点:寒い。保温性をまったく感じない。
2点:やや寒い。保温性をあまり感じられない。
3点:どちらともいえない。
4点:やや保温性を感じる。
5点:暖かい。保温性を感じる。
【0053】
実施例1〜4と比較例1〜2で得られたサンプルそれぞれについての評価結果を表1に示す。なお、官能評価については、得られた点数の平均値を各評価項目の結果とした。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示される結果より、目付が271.7〜311.7g/mの範囲であれば、肌着として適度な重量感であり不快な重さを感じることもなかった。また、通気度が0.128〜0.285cc/cm・sであり、CLO値が0.133〜0.166の範囲であれば、外気が肌着内に入り込みにくく、良好な保温性が保たれていた。さらに、透湿量が4106〜5498cm/24h・mの範囲であれば蒸れ感がなく肌着内の環境が快適な状態であることが示された。
【0056】
このように、本発明の複合ファブリックは優れた防風性、透湿性及び保温性を実現し得るものであり、特に冬用(防寒用)肌着に最適な素材であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が1μm未満の繊維から成るナノファイバー不織布の表面及び裏面の両方に、接着剤を介して、それぞれ1層ずつ編生地が積層されてなる複合ファブリックであって、
通気度がJIS L 1096(フラジール形法)で0.1cc/cm/sec以上であり、かつ透湿度がJIS L 1099 A−2法で3000cm/24h・m以上の複合ファブリック。
【請求項2】
通気度がJIS L 1096(フラジール形法)で0.1cc/cm/sec以上0.3cc/cm/sec未満である、請求項1に記載の複合ファブリック。
【請求項3】
前記表面の編生地が親水性素材で構成され、裏面の編生地が疎水性素材で構成されている、請求項1又は2に記載の複合ファブリック。
【請求項4】
前記親水性素材が綿、麻、ウール、親水性の付与されたポリエステル、キュプラ、レーヨン、アセテート、ポリノジック及びリヨセルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の複合ファブリック。
【請求項5】
前記疎水性素材がポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン及びポリオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3又は4に記載の複合ファブリック。
【請求項6】
KES法による熱伝達抵抗(クロー値)が0.1CLO以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合ファブリック。
【請求項7】
目付が50g/m以上350g/m未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合ファブリック。
【請求項8】
前記接着剤がメッシュ状の熱融着フィルムである請求項1〜7のいずれかに記載の複合ファブリック。

【図1】
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【公開番号】特開2012−192748(P2012−192748A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156588(P2012−156588)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2009−6606(P2009−6606)の分割
【原出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】