複合体及びその製造方法、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
【課題】 電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の防止に有効な複合体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 課題を解決する複合体は、電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、前記フタロシアニン顔料と、前記有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものであることを特徴とする。
【解決手段】 課題を解決する複合体は、電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、前記フタロシアニン顔料と、前記有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の構成材料として使用される複合体及びその製造方法に関する。また、本発明は、該複合体を構成材料として使用した電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術の発展は著しく、レーザ光又はLEDを光源とする電子写真方式の画像形成は、高速・高画質という利点を有することから、複写機及び光プリンタ等の分野において広く利用されている。電子写真装置に用いられる電子写真感光体(以下、場合により単に「感光体」という)としては、従来の無機光導電材料を用いた無機感光体に比べ、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占める様になってきている。中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層とを積層させた機能分離型の有機感光体は、電子写真特性の点で優れており、種々の提案がなされ、実用化されている。
【0003】
ところで、電子写真感光体に要求される特性は年々厳しくなっている。そのため、有機感光体においても更なる性能の向上が求められている。このような要求の中、最近、感光体の高性能化を図る目的で有機電子アクセプターを利用する試みがなされている。
【0004】
例えば、電荷発生層と電荷輸送層と備える感光体の画質改善を目的として、電荷発生層にオキシチタニウムフタロシアニンと有機電子アクセプターとを含有させた感光体がある(例えば、特許文献1参照。)。また、高感度の感光体を得ることを意図した有機光導電材料として、チタニルフタロシアニン等の顔料化工程時に有機電子アクセプターを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−104495号公報
【特許文献2】特開2001−40237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記従来の感光体においてはフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの併用による電子写真特性の改善効果が必ずしも十分とは言えず、画像形成プロセスに繰り返し使用した場合、感度、帯電特性及び暗減衰率等の特性が低下したり、かぶりやゴースト等の画質欠陥が発生したりすることがある。
【0007】
より具体的には、特許文献1に記載の感光体のようにフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを各々単独で電荷発生層の構成材料として用いる場合、有機電子アクセプターの添加によりフタロシアニン顔料の電荷発生層における分散性が低下するため、感度、帯電特性及び暗減衰率等の特性が低下したり、かぶりやゴースト等の画像欠陥が発生しやすくなる。
【0008】
また、特許文献2における顔料化工程とは、フタロシアニンと有機電子アクセプターとの双方を溶剤に溶解させ、その溶液を水/メタノール混合溶媒等に滴下して結晶を析出させる工程である。かかる顔料化工程時に有機電子アクセプターを添加してフタロシアニン結晶を製造すると、有機電子アクセプターのほとんどは結晶化の際にフタロシアニン結晶の内部に取り込まれてしまう。更に、顔料化工程直後に有機電子アクセプターがフタロシアニン結晶の表面又はその近傍に存在していても、顔料化工程の後段に設けられる粉砕処理等の結晶変換の際に有機電子アクセプターがフタロシアニン結晶から離脱してしまう。そのため、最終的に得られるフタロシアニン結晶においては、有機電子アクセプターの添加効果が不十分となりやすく、特に表面特性がほとんど改善されていないことが多い。また、特許文献2に記載のフタロシアニン結晶の場合、粗大粒子や凝集体が形成されやすく、更には所望の結晶型への結晶変換が困難であるという問題がある。このようなフタロシアニン結晶を構成材料とした感光体では、繰り返し使用時に感度、帯電特性及び暗減衰率等の特性の低下やかぶり、ゴースト等の画質欠陥の発生を十分に抑制することができない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の防止に有効な複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能な電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、フタロシアニン顔料(顔料化工程後のフタロシアニン結晶)を有機電子アクセプター及び所定の溶剤と共に湿式粉砕することによって、フタロシアニン顔料の結晶型を変換させつつ、当該顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有させ、且つ微細化することができることを見出した。そして、そのようにして得られるフタロシアニン顔料を電子写真感光体用の構成材料として用いることによって上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の複合体は、電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、フタロシアニン顔料と、有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターと所定の溶剤とを含む混合物を湿式粉砕処理することにより、フタロシアニン顔料の結晶型を変換させつつ、当該顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを取込み、且つ微細化することができる。そのため、本発明の複合体を電子写真感光体の構成材料として用いることにより、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を十分に防止することが可能となる。
【0013】
なお、本発明の複合体により上述の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の複合体を電子写真感光体の構成材料として用いた場合、有機電子アクセプターを感光層中に添加した場合と比較して、フタロシアニン顔料とバインダー樹脂との界面において有機電子アクセプターが極めて効果的に作用し、上記界面における電荷の注入性が改善され、また、顔料表面に存在するキャリアトラップが低減されるものと考えられる。そして、かかる有機電子アクセプターの作用により、実用上十分な光感度や、繰返し使用しても鮮明な複写画像を安定的に得るための耐久性を電子写真感光体に付与することができ、また、フタロシアニン顔料のエレクトロン残存性に起因すると考えられるゴーストの発生を防止することができるものと考えられる。さらに、本発明の複合体の場合、有機電子アクセプターをフタロシアニン顔料表面に取込む際に微粒化しているので、優れた分散性を有している。そのため、本発明の複合体を電子写真感光体の構成材料として用いた場合、粗大粒子や凝集体の形成を十分に抑制することができ、かぶりや黒点/白点等の画質欠陥を防止することができる。
【0014】
また、本発明の複合体は、電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有することを特徴とする。
【0015】
このように、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域が存在すると、電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、フタロシアニン顔料とバインダー樹脂との界面において有機電子アクセプターが極めて効果的に作用するため、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を防止することが可能となる。
【0016】
本発明の複合体は、フタロシアニン顔料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0017】
更に、本発明の複合体は、フタロシアニン顔料として、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することが好ましい。
【0018】
フタロシアニン顔料は、その結晶中の分子配列によってフタロシアニン分子間の相互作用が変化し、結果として分子配列の状態がスペクトルに反映される。ここで、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを感光層に含有させることにより、感光層中でのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分散性が更に良好となり、感光体の光感度、帯電特性及び暗減衰特性がより向上し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の発生を生じることなく更に長期にわたって安定した画質品質を得ることが可能となる。
【0019】
なお、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、通常840〜870nmの範囲にピーク波長を有する従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料)のように、839nmを超える範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを感光層に含有させた場合、暗電流の増大やかぶり等が発生しやすくなる傾向にある。これは、吸収波長が長波長側にシフトしていることから、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は分子間の相互作用が比較的強い状態にあり、結晶中を電荷が流れやすい状態となっているためであると本発明者らは推察する。
【0020】
また、810nm未満の範囲において最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(810〜839nmの範囲や839nmを超える範囲にピークが存在するが、より吸光度の高いピークが810nm未満の範囲に存在する場合のものを含む)と有機電子アクセプターとを感光層に含有させた場合、感度の低下や残留電位の上昇等が発生しやすくなる傾向にある。これは、吸収波長が短波長側にシフトしていることから、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は分子間の相互作用が比較的弱い状態にあり、結晶中を電荷が流れ難い状態となっているためであると本発明者らは推察する。
【0021】
したがって、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを含有する感光層において、顔料の分子間の相互作用の程度が電荷の移動に対してより好ましい状態となっていることも上記の効果が得られる要因の一つであると本発明者らは考えている。
【0022】
なお、上記最大ピーク波長は、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を意味する。
【0023】
また、本発明の複合体において、有機電子アクセプターの含有量はフタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.5質量部であることが好ましい。有機電子アクセプターの含有割合が0.001質量部より少ない場合、ゴースト等の画質欠陥を生じやすくなる傾向にあり、他方、0.5質量部を超える場合、フタロシアニン顔料の分散性が低下してかぶり等の画質欠陥を生じたり、感光体の帯電特性、光感度、暗減衰特性が低下したりする等の問題が生じる傾向にある。
【0024】
また、本発明は、フタロシアニン顔料と、有機アクセプターと、溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕する湿式粉砕処理工程を有することを特徴とする、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体の製造方法を提供する。
【0025】
上記製造方法によれば、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターと所定の溶剤とを含む混合物を湿式粉砕処理することにより、フタロシアニン顔料の結晶型を変換させつつ、当該顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを取込み、且つ微細化することができるため、上述した優れた特性を有する本発明の複合体を有効に得ることが可能となる。
【0026】
上記製造方法は、湿式粉砕処理工程の前段に、粗ガリウムフタロシアニンをアシッドペースティング処理して、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得るアシッドペースティング処理工程を更に有することが好ましく、該アシッドペースティング処理工程により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、フタロシアニン顔料として前記湿式粉砕処理工程に供することが好ましい。
【0027】
上記のアシッドペースティング処理工程により得られた特定のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を上記湿式粉砕処理工程に供することにより、湿式粉砕処理工程での処理時間を短縮することができ、本発明の複合体の製造効率を向上させることができる。
【0028】
このような効果が得られる理由としては、上記のアシッドペースティング処理工程により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶構造が、上記湿式粉砕処理工程によって電子写真感光体用の光導電物質として優れた性能を発現する結晶型に変換される上でより好適な構造であることと、上記湿式粉砕処理工程において有機電子アクセプターが存在する場合であっても粗大粒子又は凝集体をより形成しにくい構造であるためと考えられる。
【0029】
また、本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられており、上記本発明の複合体を含有する感光層と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の電子写真感光体によれば、上記本発明の複合体を感光層に含有させることにより、帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を十分に改善することができ、かぶりやゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能となる。
【0031】
また、本発明のプロセスカートリッジは、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させるための帯電手段、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、及び電子写真感光体上残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種と、を備えることを特徴とする。
【0032】
かかるプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体を備えることにより、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を達成し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能なものとなっている。
【0033】
また、本発明の電子写真装置は、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、電子写真感光体上に静電潜像を形成するための露光手段と、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、トナー像を被転写体に転写するための転写手段と、を備えることを特徴とする。
【0034】
かかる電子写真装置は、本発明の電子写真感光体を備えることにより、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を達成し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能なものとなっている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の防止に有効な複合体及びその製造方法が提供可能となる。また、本発明によれば、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能な電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
図1(a)は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す模式断面図である。図1(a)に示す電子写真感光体100は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層1a)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層2)とに機能が分離された積層型感光層6aを備えるものであり、導電性支持体3上に電荷発生層1a、電荷輸送層2が順次積層された構造を有している。そして、電荷発生層1aには、電荷発生材料として、本発明の複合体が含まれる。
【0038】
本発明の複合体は、フタロシアニン顔料と、有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものである。この複合体を得る方法を、本発明の複合体の製造方法の好適な実施形態を挙げて以下に説明する。
【0039】
本実施形態における複合体の製造方法は、フタロシアニン顔料と、有機アクセプターと、所定の溶剤とを含む混合物を湿式粉砕する湿式粉砕処理工程を備えるものである。この湿式粉砕処理工程を経ることにより、フタロシアニン顔料の結晶変換及び微細化、並びに、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合化が行われる。この湿式粉砕処理工程の後、混合物を濾過して、適当な溶剤で洗浄し、乾燥することにより複合体が得られる。
【0040】
上記混合物に含まれるフタロシアニン顔料は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン又は無金属フタロシアニンの粗結晶を、アシッドぺースティング処理や粉砕処理等によって微細化したものが好ましい。
【0041】
フタロシアニン顔料としてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いる場合、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(以下、「I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶」という)を用いることが好ましい。I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は、従来公知の方法によって得ることができる。以下にその一例を示す。
【0042】
先ず、o−フタロジニトリルまたは1,3−ジイミノイソインドリンと三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウムおよびエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)、等により粗ガリウムフタロシアニンを製造する。上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどの不活性且つ高沸点の溶剤を用いることが好ましい。
【0043】
次に、上記の工程で得られた粗ガリウムフタロシアニンについてアシッドペースティング処理を行うことによって、粗ガリウムフタロシアニンを微粒子化するとともにI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンに変換する。ここで、アシッドペースティング処理とは、具体的には、粗ガリウムフタロシアニンを硫酸、トリフルオロ酢酸などの酸や、これらの酸を含む溶液に溶解させたものあるいは硫酸塩などの酸塩としたものを、アルカリ水溶液、水、氷水、又は、水と有機溶媒との混合溶媒中に注ぎ、再結晶させることをいう。このアシッドペースティング処理に用いる酸としては硫酸、トリフルオロ酢酸が好ましく、中でも濃度70〜100%(特に好ましくは95〜100%)の硫酸がより好ましい。
【0044】
さらに、本発明の複合体においては、上記のフタロシアニン顔料として、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが好ましい。
【0045】
上記のようなヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を電子写真感光体の電荷発生材料として用いた場合には、感光体の帯電特性、光感度、残留電位、暗減衰などに優れた光電特性を得ることができる点、及び、有機電子アクセプターとの複合体が、感光層に含まれる結着樹脂中への分散性に優れているので画質特性に優れる点で特に有効である。
【0046】
また、本実施形態においては、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが好ましい。このようなヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、有機電子アクセプターとの複合体が感光層に分散しやすく、十分な感度、帯電特性及び暗減衰特性、並びに、安定した画像品質をより長期間にわたって得ることができる。
【0047】
上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得る方法としては、上述のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を湿式粉砕処理することによって結晶変換させる製造方法が挙げられる。
【0048】
湿式粉砕処理は、外径0.1〜3.0mmの球形状メディアを使用した粉砕装置を用いて行われることが好ましく、外径0.2〜2.5mmの球形状メディアを用いて行われることがより好ましい。メディアの外形が3.0mmより大きい場合、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成し易い傾向にある。また、メディアの外径が0.1mmより小さい場合、メディアとヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とを分離し難くなる傾向にある。更に、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等、他の形状の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の特性を劣化させ易くなる傾向がある。
【0049】
ここで、湿式粉砕処理の時間は、粉砕過程のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の吸収波長を測定することにより決定することができる。例えば、湿式粉砕処理において、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するものとなるように、結晶変換状態を湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターしながら湿式粉砕処理時間を決定することができる。
【0050】
上記メディアの材質は特に制限されないが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー等が好ましい。
【0051】
また、上記湿式粉砕処理を行う容器の材質についても特に制限されないが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等が好ましい。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等をライニングしたものであっても良い。
【0052】
上記メディアの使用量は、使用する装置によっても異なるが、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、55〜100質量部であることがより好ましい。また、メディアの外径が小さくなると、同じ質量(使用量)でも装置内に占めるメディア密度が高まり、混合溶液の粘度が上昇して粉砕効率が変化するため、メディア外径を小さくするに従い、適宜メディア使用量と溶剤使用量とをコントロールすることによって最適な混合比で湿式処理を行うことが望ましい。
【0053】
また、上記の湿式粉砕処理において、溶剤の使用量はI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。
【0054】
また、湿式粉砕処理の温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは5〜80℃であり、特に好ましくは10〜50℃である。温度が低い場合には、結晶転移の速度が遅くなる傾向にあり、また、温度が高すぎる場合には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の溶解性が高くなり結晶成長しやすく微粒化が困難となる傾向にある。
【0055】
湿式粉砕処理に使用される溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンなどのケトン類の他に、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶剤の使用量は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
【0056】
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。
【0057】
上記混合物に含まれるフタロシアニン顔料としてクロロガリウムフタロシアニン顔料を用いる場合、クロロガリウムフタロシアニン顔料は、1,3−ジイミノイソインドリンを三塩化ガリウムと有機溶剤中で加熱縮合させるジイミノイソインドリン法、フタロニトリルと三塩化ガリウムとを加熱融解または有機溶剤の存在下で加熱するフタロニトリル法、無水フタル酸と尿素および三塩化ガリウムとを加熱融解または有機溶剤の存在下で加熱するワイラー法等により合成されたものを用いることができる。このとき使用する有機溶剤としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、メトキシナフタレン、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、ジメチルスルホアミド等の反応不活性な高沸点溶剤が望ましい。また、加熱縮合温度は130〜220℃、好ましくは140〜180℃の範囲が選択される。上記の方法により合成されたI型クロロガリウムフタロシアニンは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の27.1°に強い回折ピークを有している。
【0058】
本実施形態においては、上記のI型クロロガリウムフタロシアニンを乾式粉砕によって微細化したものを用いることがより好ましい。この乾式粉砕に使用される装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、スエコミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミル等が挙げられる。乾式粉砕した後のクロロガリウムフタロシアニン結晶の一次粒子径は、粉砕時間や回転数、メディアのサイズ、顔料/メディア比等の粉砕条件により調整する。このように乾式粉砕によって微細化されたクロロガリウムフタロシアニン結晶は、I型クロロガリウムフタロシアニン特有のCuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の27.1°の回折ピークが消失し、新たに7.4°、16.6°、25.5°、及び28.3°にブロードで弱い回折ピークを有する非晶型に近い結晶型に変換される。
【0059】
また、フタロシアニン顔料としてチタニルフタロシアニン顔料を用いる場合、非晶質または準非晶質の微細化されたチタニルフタロシアニン結晶を用いることが好ましい。このようなチタニルフタロシアニン結晶は、1,3−ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラブトキシドとを反応させる等の方法で合成されたチタニルフタロシアニン粗結晶を、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の場合と同様のアシッドぺースティング処理することによって得ることができる。
【0060】
また、フタロシアニン顔料として無金属フタロシアニン顔料を用いる場合、微細化されたα型無金属フタロシアニン結晶を用いることが好ましい。このような無金属フタロシアニン結晶は、以下の方法で合成された無金属フタロシアニン粗結晶を、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の場合と同様のアシッドぺースティング処理することによって得ることができる。
【0061】
無金属フタロシアニン粗結晶を合成する方法としては、o−フタロジニトリル、または1,3−ジイミノイソインドリンを強塩基触媒の存在下で適当な溶媒を用いて加熱反応させる方法、アルカリ金属フタロシアニンを中間体として生成し、次に酸またはアルコールで洗浄する方法等を好適に採用できる。これらの合成方法において使用する溶剤としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等の合成反応の際に不活性な高沸点の溶剤が好ましい。
【0062】
上記混合物に含まれる有機アクセプターとしては、下記一般式(I)〜(VIII)で示される化合物が挙げられる。
【0063】
【化1】
式(I)中、Zは、C(COORk1)2(Rk1は、水素原子又はアルキル基である。)、C(CN)2、O(酸素原子)、又はN−CNを示し、R1及びR2は、それぞれ独立に、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、又は−CRk2=CRk3Rk4で表されるビニル基(Rk2は、水素原子又はアルキル基であり、Rk3及びRk4は、それぞれ、水素原子、又は置換若しくは非置換フェニル基であり、但し、Rk3及びRk4の少なくとも一つが置換又は非置換フェニル基であり、他方が水素原子である。)を示し、n1及びn2は0〜4の整数を示す。
【0064】
【化2】
式(II)中、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、又は水酸基を示し、n3及びn4は0〜2の整数を示す。
【0065】
【化3】
式(II−a)中、R5及びR6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、又は水酸基を示し、n5は0〜2の整数を示し、n6は0〜4の整数を示す。
【0066】
【化4】
式(II−b)中、R7及びR8は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n7及びn8は0〜4の整数を示す。
【0067】
【化5】
式(III)中、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、又は芳香族基を有する1価の有機基を示し、R9とR10とが互いに連結して環を形成してもよい。
【0068】
【化6】
式(IV)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n11、n12、n13及びn14は、0〜2の整数を示す。
【0069】
【化7】
式(V)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。
【0070】
【化8】
式(VI)中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、CH、又は窒素原子を示し、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n17、n18及びn19は、0〜5の整数を示す。
【0071】
【化9】
式(VII)中、R20及びR21は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n20及びn21は、0〜5の整数を示す。
【0072】
【化10】
式(VIII)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n22及びn23は、0〜5の整数を示す。
【0073】
上記一般式(I)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)〜(3)で示される化合物が挙げられる。
【0074】
【化11】
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
【0077】
また、上記一般式(II)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0078】
【化14】
【0079】
また、上記一般式(II−a)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(5)及び(6)で示される化合物が挙げられる。
【0080】
【化15】
【0081】
【化16】
【0082】
また、上記一般式(II−b)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(7)及び(8)で示される化合物が挙げられる。
【0083】
【化17】
【0084】
【化18】
【0085】
また、上記一般式(III)で示される構造を有する化合物としては、例えば、上記一般式(1)、(2)及び(3)、並びに、下記一般式(9)及び(10)で示される化合物が挙げられる。
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
また、上記一般式(VI)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(11)で示される化合物が挙げられる。
【0089】
【化21】
【0090】
また、上記一般式(V)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(12)で示される化合物が挙げられる。
【0091】
【化22】
【0092】
また、上記一般式(VI)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(13)で示される化合物が挙げられる。
【0093】
【化23】
【0094】
また、上記一般式(VII)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(14)示される化合物が挙げられる。
【0095】
【化24】
【0096】
また、上記一般式(VIII)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(15)示される化合物が挙げられる。
【0097】
【化25】
【0098】
本実施形態においては、上記一般式(II)、(II−a)又は(II−b)で示されるキノン誘導体を用いることが好ましい。
【0099】
また、本実施形態において使用される有機電子アクセプターは、飽和カロメル電極を基準とした還元電位Ered1/2が−1.0V以上であることが好ましく、−0.8V以上であることがより好ましい。この還元電位が、−1.0V未満であると、アクセプター性が低いため、ゴーストの発生を抑制する効果が小さくなる傾向にある。
【0100】
上記の有機電子アクセプターは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
上記一般式(I)におけるZがC(CN)2である化合物は、フルオレノン化合物若しくはアントラキノン化合物とマロノニトリルとを、ピリジン中で還流して反応させる、或いは、塩化メチレンなどの溶剤中、四塩化チタンなどのルイス酸触媒存在下で還流することにより得ることができる。また、ZがC(COORk1)2である上記一般式(I)で表される化合物は、フルオレノン化合物若しくはアントラキノン化合物とマロン酸エステルとを、ピリジン中で還流して反応させる、或いは、塩化メチレンなどの溶剤中、四塩化チタンなどのルイス酸触媒存在下で還流することにより得ることができる。また、ZがN−CNである上記一般式(I)で表されるシアンイミノ化合物は、フルオレノン化合物若しくはアントラキノン化合物とN,N’−ビス(トリメチルシリル)カルボジイミドとを、塩化メチレンなどの溶剤中、四塩化チタンなどのルイス酸触媒の存在下で還流することにより得ることができる。
【0102】
また、上記の有機電子アクセプターは、公知のものであれば特に制限されることなく用いることができる。
【0103】
所定の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンなどのケトン類の他に、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0104】
上記フタロシアニン顔料、上記有機電子アクセプター及び上記所定の溶剤を含む混合物の湿式粉砕処理は、外径0.1〜3.0mmの球形状メディアを使用した粉砕装置を用いて行われることが好ましく、外径0.2〜2.5mmの球形状メディアを用いて行われることがより好ましい。メディアの外形が3.0mmより大きい場合、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成し易い傾向にある。また、メディアの外径が0.1mmより小さい場合、メディアと複合体とを分離し難くなる傾向にある。更に、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等、他の形状の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となり複合体におけるフタロシアニン顔料の特性を劣化させ易くなる傾向がある。
【0105】
上記メディアの材質は特に制限されないが、複合体中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー等が好ましい。
【0106】
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。
【0107】
また、上記湿式粉砕処理を行う容器の材質についても特に制限されないが、複合体中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等が好ましい。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等をライニングしたものであっても良い。
【0108】
上記湿式粉砕処理に供される混合物における有機電子アクセプターの含有量は、フタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.5重量部であり、好ましくは0.001〜0.3重量部である。有機電子アクセプターの含有量が0.001重量部より少ない場合、アクセプター添加効果が小さすぎてしまい、0.5重量部より多い場合は分散性の低下や帯電性、感度、暗減衰特性の低下などの不具合を生じる傾向がある。
【0109】
また、溶剤の含有量は、フタロシアニン顔料1質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
【0110】
湿式粉砕処理の温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは5〜80℃であり、特に好ましくは10〜50℃である。温度が低い場合には、結晶転移の速度が遅くなる傾向にあり、また、温度が高すぎる場合には、フタロシアニン顔料の溶解性が高くなり結晶成長しやすく複合体の微粒化が困難となる傾向にある。
【0111】
湿式粉砕処理過程におけるフタロシアニン顔料の微粒化及び結晶変換の進行速度は、上記温度条件以外にも、湿式粉砕のスケール、攪拌スピード、メディア材質などによって大きく影響されるが、本発明の複合体を製造する場合、以下に述べるような方法により湿式粉砕時間を決定することが好ましい。
【0112】
湿式粉砕時間を決定する第一の方法として、フタロシアニン顔料の波長域700〜900nmでの分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長を湿式粉砕の時間ごとにプロットした曲線の極小点の時間をTaとしたときに、0.7Ta〜1.3Taの範囲内、好ましくは0.8Ta〜1.2Taの範囲内、さらに好ましくは0.9Ta〜1.1Taの範囲内から選んだ時間を湿式粉砕時間とする方法が挙げられる。
【0113】
なお、上記Taは、湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料の700〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおけるλMAXを、所定の粉砕時間ごとに測定し、測定されたλMAXの値を粉砕時間に対してプロットした点の集合を曲線と見なし、この曲線が有する極小点に対応する時間をTaとすることで、求めることができる。このとき、上記λMAXの測定は、好ましくは1〜50時間ごと、より好ましくは2〜40時間ごとに行うのがよい。
【0114】
湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料のλMAXは、例えば、湿式粉砕処理装置から顔料溶液を少量サンプリングし、これをアセトン、酢酸エチルなどの溶剤で希釈してから、分光光度計を用いて液セル法により容易に測定することができる。
【0115】
湿式粉砕時間を決定する第二の方法として、フタロシアニン顔料のBET比表面積を湿式粉砕の時間ごとにプロットした曲線の極大点の時間をTbとしたときに、0.7Tb〜1.3Tbの範囲内、好ましくは0.8Tb〜1.2Tbの範囲内、さらに好ましくは0.9Tb〜1.1Tbの範囲内から選んだ時間を湿式粉砕時間とする方法が挙げられる。
【0116】
なお、上記Tbは、湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料のBET比表面積を所定の粉砕時間ごとに測定し、測定されたBET比表面積の値を粉砕時間に対してプロットした点の集合を曲線と見なし、この曲線が有する極大点に対応する時間をTbとすることで、求めることができる。このとき、上記BET比表面積の測定は、好ましくは1〜50時間ごと、より好ましくは2〜40時間ごとに行うのがよい。
【0117】
湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料のBET比表面積を測定する方法としては、例えば、湿式粉砕処理装置から顔料溶液を少量サンプリングし、フタロシアニン顔料をろ別して洗浄した後、さらに乾燥して粉末状にしてから、BET比表面積測定装置を用いて測定する方法を好適に採用できる。より具体的には、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)により求めることができる。
【0118】
湿式粉砕時間を決定する第三の方法として、上記と同様のTa及びTbを用いて下記式(eq−1)で算出される時間をTcとしたときに、0.7Tc〜1.3Tc、好ましくは0.8Tc〜1.2Tc、さらに好ましくは0.9Tc〜1.1Tcの範囲内から選んだ時間を湿式粉砕時間とする方法が挙げられる。
Tc=(Ta+Tb)/2 ・・・(eq−1)
【0119】
上記のように、λMAXやBET比表面積の経時変化に基づいて湿式粉砕処理時間を決定する場合、実施しようとする湿式粉砕と同様の湿式粉砕条件で、湿式粉砕時間と、λMAXやBET比表面積との関係について測定し、これを基に湿式粉砕時間を予め決定しておくことが好ましい。粉砕過程にある顔料液をサンプリングしてから最大吸収極大波長やBET比表面積を測定するまでには、やや長い時間を要する場合があり、その場合、測定値を得るまでの間に湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料がさらに経時変化してしまう可能性があるが、予め湿式粉砕時間を決定しておけば、最適な時間で湿式粉砕を行うことが容易になるからである。
【0120】
さらに、湿式粉砕時間は、得られる複合体の平均粒径が0.1μm以下となる時間の範囲内とすることが、複合体の分散性を良好にし、画質欠陥をさらに減少させられる点で好ましい。
【0121】
複合体の平均粒径の調整は、湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料の平均粒径を確認することにより行うことができる。湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料の平均粒径は、湿式粉砕中の顔料液からフタロシアニン顔料を少量サンプリングし、レーザ回折散乱式や遠心沈降式などの粒度分布計を用いて測定できる。
【0122】
以上のようにして決定される湿式粉砕時間は、通常5〜500時間の範囲、好ましくは7〜300時間の範囲である。湿式粉砕時間が5時間未満であると、結晶変換が完結せず、電子写真特性の低下、特に感度不足の問題が生じやすくなる傾向にある。また、湿式粉砕時間が500時間を超えると、粉砕ストレスの影響により感度低下、生産性低下、メディアの摩滅粉の混入などの問題が生じやすくなる傾向にある。湿式粉砕時間をこのように決定することにより、複合体の粒子が均一に微粒子化した状態で湿式粉砕処理を完了することが可能となり、さらに、複数ロットの繰り返し湿式粉砕を実施した場合における、ロット間の品質ばらつきを抑制することが可能となる。
【0123】
本発明の複合体は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.10μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましい。また、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、55m2/g以上であることが特に好ましい。
【0124】
平均粒径が0.10μmより大きい場合、又は比表面積値が45m2/g未満である場合は、複合体粒子が粗大化しているか、又は複合体粒子の凝集体が形成されており、電子写真感光体の材料として用いた場合の分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それによりかぶりなどの画質欠陥を生じやすい傾向にある。
【0125】
以上説明した複合体の製造方法により得られた本発明の複合体は、顔料、染料、電子写真感光体、光ディスク、太陽電池、センサー、脱臭剤、抗菌剤、非線形光学材料などの種々の用途に利用することができる。中でも、本発明の複合体を電子写真感光体の電荷発生材料として用いた場合には、感光体の帯電性、光感度、残留電位、暗減衰などに優れた光電特性を得ることができる点、および感光層に含まれる結着樹脂中への分散性に優れているので画質特性に優れる点で特に有効である。
【0126】
次に、電子写真感光体100の各構成要素について詳述する。
【0127】
導電性支持体3としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属製のもの;ポリマー製シート、紙、プラスチック、ガラス等の基体上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着することで導電処理したもの;酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を上記基体上に蒸着することで導電処理したもの;金属箔を上記基体上にラミネートすることで導電処理したもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、上記基体上に塗布することで導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性支持体3の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
【0128】
導電性支持体3として金属パイプ基材を用いる場合、その表面は素管のままであってもよいが、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウェットホーニング、着色処理などの表面処理により基材表面を粗面化しておくことが好ましい。このように、基材表面を粗面化することにより、レーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に発生し得る感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0129】
電荷発生層1aは、上記の複合体及び結着樹脂を含有するものである。
【0130】
結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエステルカーボネート、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル単独重合体又は共重合体、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの部分架橋硬化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
また、電荷発生層1aにおける複合体と結着樹脂との配合比(質量比)は、好ましくは40:1〜1:4であり、より好ましくは20:1〜1:2である。複合体の配合量が、結着樹脂の配合量の40倍を超えると、電子写真感光体の製造工程において使用される分散液中の複合体の分散性が不十分となる傾向にあり、他方、結着樹脂の配合量の1/4未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
【0132】
さらに、電荷発生層1aは、上述の複合体以外の他の電荷発生材料を含有していてもよい。ここで、電荷発生層1aに含有される他の電荷発生材料としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、縮環芳香族系顔料等が挙げられる。本実施形態においては、電荷発生層1aが金属含有又は無金属のフタロシアニンをさらに含有することが好ましく、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料又はオキシチタニルフタロシアニン顔料をさらに含有することがより好ましい。また、これらの他の電荷発生材料の含有割合は、電荷発生層中に含まれる物質全量を基準として50質量%以下であることが好ましい。
【0133】
なお、電荷発生層1a上に電荷輸送層2などの他の層をさらに成膜する場合には、その塗工液に使用される溶剤によって電荷発生層1aが溶解あるいは膨潤することのないように、電荷発生層1aの結着樹脂と、電荷発生層1aの上に塗布される塗布液の溶剤との組み合わせを適宜選択することが好ましい。また、電荷発生層1aの結着樹脂と後述する電荷輸送層2の結着樹脂とは、互いの屈折率同士が近いものを組み合わせて使用することが好ましく、具体的には、互いの屈折率の差が1以下であることが好ましい。このように屈折率の近い結着樹脂を組み合わせて用いると、電荷発生層1aと電荷輸送層2との界面での光の反射が抑制され、干渉縞防止効果が向上する傾向にある。
【0134】
電荷発生層1aは、複合体及び結着樹脂を所定の溶剤に加え、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いて混合、分散させることにより得られる塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等により塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0135】
電荷発生層1aの塗工液に用いる溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0136】
このようにして得られる電荷発生層1aの膜厚は、良好な電気特性と画質とを得る観点から、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層1aの膜厚が0.05μm未満であると、感度が低下する傾向にあり、膜厚が5μmを超えると、帯電特性の不良などの弊害が生じやすくなる傾向がある。
【0137】
電荷輸送層2は電荷輸送材料と結着樹脂とを含有するものである。電荷輸送層2に使用される電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。更に、電荷輸送材料としては、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も使用することができる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0138】
電荷輸送層2に使用される結着樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用することができるが、電気絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂を用いることが好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が、電荷輸送材料との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0139】
また、結着樹脂と電荷輸送材料との配合比(質量比)は、電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。
【0140】
更に、電荷輸送層2の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。
【0141】
電荷輸送層2は、上記の電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶媒に混合/分散した塗布液を、電荷発生層1a上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0142】
電荷輸送層2の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0143】
電荷輸送層2の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0144】
図1(b)は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す模式断面図である。図1(b)に示す電子写真感光体110は、導電性支持体3と感光層6aとの間に中間層4を備えること以外は図1(a)に示した電子写真感光体100と同様の構造を有するものである。
【0145】
中間層4は、感光層6aの帯電時において、導電性支持体3から感光層6aへの電荷の注入を防止する機能を有する。また、中間層4は、感光層6aを導電性支持体3に対して一体的に接着保持させる接着層としても機能する。更に、この中間層4は、導電性支持体3の光反射を防止する機能を有する。
【0146】
また、中間層4は、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上、耐リーク性向上などの目的で設けてもよい。このような目的で設けられる中間層の構成材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子等を含有する有機金属化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独に或いは複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。中でも、ジルコニウム又はシリコン原子を含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また、繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れているので好ましい。
【0147】
シリコンを含有する有機金属化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤を用いることが特に好ましい。
【0148】
ジルコニウムを含有する有機金属化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0149】
チタニウムを含有する有機金属化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0150】
アルミニウムを含有する有機金属化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0151】
これらの中間層を形成する場合には、所望の特性が得られる範囲で任意の膜厚を設定できる。しかし、これらの中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たしているので、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす可能性がある。したがって、上述した材料を用いた中間層を形成する場合には、膜厚を0.1〜5μmの範囲に設定することが好ましい。
【0152】
また、リーク耐性獲得の目的で中間層を設ける場合には、中間層は適切な抵抗を有していることが好ましい。そのためには中間層に無機微粒子を含有させ、抵抗を制御することが好ましい。この無機微粒子としては、金属酸化物微粒子が好ましい。リーク防止性獲得のための中間層は、金属酸化物微粒子及び結着樹脂を含んで構成することができる。また、金属酸化物微粒子及び結着樹脂の種類、並びに、その配合量を適宜選定し、さらには金属酸化物微粒子の結着樹脂中への分散性を高めること、およびその分散液(塗布液)中の含水量を低く制御することによって、中間層の体積抵抗が所定の条件を満たすように制御することができる。かかる金属酸化物微粒子の好ましい例としては、具体的には、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0153】
これらの金属酸化物微粒子の粉体抵抗値は102〜1011Ω・cmであることが好ましく、104〜1010Ω・cmであることがより好ましい。金属酸化物微粒子の粉体抵抗値が102Ω・cm未満であると十分なリーク防止性が得られない傾向にあり、他方、この粉体抵抗値が1011Ω・cmを超えると電子写真プロセスおいて残留電位の上昇が起こりやすくなる傾向にある。
【0154】
これらの金属酸化物微粒子は従来の製造方法によって得ることができる。例えば酸化亜鉛の場合は、JIS K1410に記載されている間接法(フランス法)、直接法(アメリカ法)、湿式法等;酸化チタンは、硫酸法、塩素法、フッ酸法、塩化チタンカリウム法、四塩化チタン水溶液法、アークプラズマ法により金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0155】
間接法は、例えば、金属亜鉛を加熱し(通常1000℃程度)、亜鉛蒸気を熱空気によって酸化させて酸化亜鉛とし、冷却後に粒子の大きさによって分別するものである。また、直説法は、例えば、亜鉛鉱石を培焼することによって得られる酸化亜鉛を石炭等で還元し、生じた亜鉛蒸気を熱空気によって酸化させるか、又は亜鉛鉱石を硫酸で浸出して得られる鉱滓にコークス等を加え、その混合物を加熱して溶融した亜鉛を熱空気によって酸化させるものである。
【0156】
硫酸法は、例えば、鉱石と硫酸との反応による硫酸塩溶液の調製、溶液の清澄、加水分解による含水酸化チタンの沈殿、洗浄、焼成、粉砕、表面処理といった工程により酸化チタン微粒子を得るものである。また、塩素法は、例えば、鉱石の塩素化により四塩化チタン溶液を調製し、精留、燃焼により得られる酸化チタンを粉砕、後処理するものである。
【0157】
アークプラズマ法としては、直流アークプラズマ法、プラズマジェット法、高周波プラズマ法等が挙げられる。例えば、直流アークプラズマ法においては、金属原料を消費アノード電極とし、カソード電極からプラズマフレームを発生させて金属原料を加熱し蒸発させて、金属蒸気を酸化させ、冷却することによって金属酸化物微粒子が得られる。プラズマフレームを発生させるに際し、アーク放電はアルゴン等の単原子分子ガスや水素、窒素、酸素等の2原子分子ガス中で行われるが、2原子分子の熱解離により生じるプラズマは単原子分子ガス由来のプラズマ(アルゴンプラズマ等)に比べて反応性に富んでいるので、反応性アークプラズマと呼ばれる。また、これらの金属酸化物粒子は種類、径などが異なる2種以上を混合して使用することもできる。
【0158】
さらに、本実施形態では金属酸化物微粒子へカップリング剤による表面処理を行うこともできる。カップリング剤としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。具体的なカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して使用することもできる。
【0159】
表面処理方法は公知の方法を使用することが可能であり、例えば、乾式法又は湿式法等を用いることができる。乾式法により表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接、又は、有機溶媒若しくは水に溶解させたカップリング剤を添加する、又は、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に表面処理することができる。カップリング剤の添加又は噴霧は、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。乾式法においては、金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に加熱乾燥して表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を処理前に除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。金属酸化物微粒子の加熱乾燥は、せん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら行うことも可能である。
【0160】
湿式法により表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子を溶剤中で攪拌、又は、超音波、サンドミル、アトライター若しくはボールミル等を用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌又は分散した後、溶剤を除去することで均一に表面処理することができる。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においても、金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を除去する方法としては、乾式法と同様に加熱乾燥による方法の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が挙げられる。
【0161】
金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量に適宜設定すればよい。
【0162】
また、金属酸化物微粒子を表面処理する際、金属酸化物微粒子の表面積が表面処理後の電子写真特性に大きく影響する。そのため、金属酸化物微粒子は、比表面積が10m2/g以上のものが好ましく用いられる。比表面積値が10m2/g以下のものは帯電特性低下を招きやすく、良好な電子写真特性が得られにくい傾向にある。
【0163】
リーク防止性獲得のための中間層を形成するための結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。これらのうち、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂を用いることが好ましく、特に、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることが好ましい。
【0164】
中間層中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との含有割合は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0165】
中間層は、上記の金属酸化物微粒子と結着樹脂との混合物からなるものであってもよく、また、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のための添加物を更に含有してもよい。かかる添加物としては、クロラニルキノン、ブロモアニルキノン、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物等が挙げられる。
【0166】
シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、中間層の添加剤として用いることもできる。
【0167】
このような用途で用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0168】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0169】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0170】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0171】
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0172】
上記の中間層4は、例えば、金属酸化物微粒子と、結着樹脂と、必要に応じて添加剤とを所定の溶媒に混合/分散して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体3上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0173】
溶媒としては、結着樹脂を溶かすことができるものであれば特に限定されず、公知の有機溶剤を用いることができ、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系の溶媒が挙げられる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0174】
かかる塗布液を調製する際の混合/分散方法(金属酸化物微粒子を分散させる方法)としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法が挙げられる。
【0175】
また、塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。また、塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを添加することもできる。
【0176】
また、中間層は、ビッカース強度が35以上とされていることが好ましい。さらに、中間層の厚さは、15μm以上が好ましく、20μm以上50μm以下とされていることがより好ましい。さらに、中間層の表面粗さは、モアレ像防止のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)〜λに調整されることが好ましい。この表面粗さ調整は、中間層中に樹脂粒子を添加することで行ってもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整は、中間層を研磨することによって行うこともできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0177】
上述のように、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることによって、支持体から感光層での電荷の注入を防ぎ、黒点・白点などの画質欠陥を防止し、支持体と感光層の密着性を向上させて耐久性を改善することが可能となり、中間層に上記無機微粒子を含有することで、環境特性・繰返し特性の安定化や干渉縞の防止を図ることができる。
【0178】
図1(c)は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す模式断面図である。図1(c)に示す電子写真感光体120は、感光層6a上に保護層5を備えること以外は図1(a)に示した電子写真感光体100と同様の構成を有するものである。
【0179】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6aの機械的強度をさらに改善したりするために設けられる。この保護層5は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させた塗布液を感光層6a上に塗布することにより形成される。
【0180】
保護層5に含まれる導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したもの等が挙げられる。
【0181】
保護層5に含まれる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0182】
また、保護層5を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、この塗布液が塗布される感光層6aを溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0183】
保護層5を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。
【0184】
保護層5の膜厚は、1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
【0185】
本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図2(a)に示す電子写真感光体130(本発明の電子写真感光体の第四実施形態)のように、導電性支持体3と感光層6aとの間に中間層4を備え、更に感光層6a上に保護層5を備えるものであってもよい。
【0186】
また、上記の実施形態の電子写真感光体100、110、及び120においては、感光層6aが積層構造を有している場合について説明したが、例えば、図2(b)に示す電子写真感光体140(本発明の電子写真感光体の第五実施形態のように、感光層6aが単層構造を有するものであってもよい。なお、この場合にも、導電性支持体3と感光層6aとの間に中間層4を備えていてもよく、感光層6a上に保護層5を備えていてもよく、中間層4及び保護層5の両方を備えていてもよい。
【0187】
次に、本発明の電子写真感光体の別の実施形態について更に説明する。
【0188】
図3(a)は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す模式断面図である。図3(a)に示す電子写真感光体150は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層1b)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層2)とに機能が分離された積層型感光層6を備えるものであり、導電性支持体3上に電荷発生層1b、電荷輸送層2が順次積層された構造を有している。そして、電荷発生層1bにはフタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有する複合体が含有される。
【0189】
先ず、本実施形態の電子写真感光体100の電荷発生層1bについて説明する。
【0190】
電荷発生層1bは、先に述べた複合体を用いて形成することができるが、以下の方法によっても形成できる。
【0191】
先ず、所定の結晶変換がなされたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、上記有機電子アクセプター及び結着樹脂を所定の溶剤に加え、これをサンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いて混合、分散させることにより塗工液を得る。次いで、この塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等により塗布し、乾燥することによって電荷発生層を形成する。
【0192】
所定の結晶変換がなされたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が挙げられる。
【0193】
かかるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより、感光体の帯電特性、光感度、残留電位、暗減衰などに優れた光電特性、及び、優れた画質特性を得ることがより確実にできる。この理由としては、以下のことが考えられる。すなわち、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより結晶変換工程を更に設ける必要がなくなる。そのため、上述の塗工液を得るための混合、分散工程によって有機電子アクセプターとの複合化がなされた後、有機電子アクセプターがフタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍から脱離することを十分に防止できる。これにより、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有する複合体がより確実に形成可能となるものと考えられる。更に、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、有機電子アクセプター存在下においても粗大粒子や凝集体が形成され難いので、上記の複合体が電荷発生層中に良好に分散されると考えられる。これらの結果、上記の効果が得られたものと推察される。
【0194】
また、本実施形態においては、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることがさらに好ましい。かかるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより、十分な感度、帯電特性及び暗減衰特性、並びに、安定した画像品質をより長期間にわたって得ることがさらに容易にできる。この理由としては、以下のことが考えられる。すなわち、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより結晶変換工程を更に設ける必要がなくなる。そのため、上述の塗工液を得るための混合、分散工程によって有機電子アクセプターとの複合化がなされた後、有機電子アクセプターがフタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍から脱離することを十分に防止できる。これにより、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有する複合体がより確実に形成可能となるものと考えられる。更に、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、有機電子アクセプター存在下においても粗大粒子や凝集体が形成され難いので、上記の複合体が電荷発生層中に良好に分散されると考えられる。これらの結果、上記の効果が得られたものと推察される。
【0195】
また、本実施形態で使用されるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、体積平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、体積平均粒径が0.10μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましい。一方、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、55m2/g以上であることが特に好ましい。
【0196】
顔料の体積平均粒径が0.10μmより大きい場合、又は比表面積値が45m2/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成されており、電子写真感光体の材料として用いた場合の分散性や、光感度、帯電特性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それによりかぶりなどの画質欠陥を生じやすい傾向にある。すなわち、上記の微細化した顔料と有機電子アクセプターとを結着樹脂中に分散保持させた場合、感度、帯電特性及び暗減衰特性のばらつきをより低減できるとともに、かぶりやゴースト等の画質欠陥の発生をより確実に防止し、より長期間にわたって安定した画像品質を得ることが可能となる。
【0197】
電荷発生層1aを形成するための塗工液における有機電子アクセプターの含有量は、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.2質量部であることが好ましく、0.005〜0.15質量部であることがより好ましい。有機電子アクセプターの含有量が0.001質量部より少ない場合、ゴースト等の画質欠陥を生じやすくなる傾向にあり、他方、0.2質量部を越える場合、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分散性が低下してかぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じたり、帯電特性、光感度、暗減衰特性が低下したりする等の不具合が生じる傾向にある。
【0198】
次に、電子写真感光体150の各構成要素について説明する。
【0199】
導電性支持体3及び電荷輸送層2は、それぞれ、先に述べた本発明の第一実施形態の電子写真感光体100の導電性支持体3及び電荷輸送層2と同様のものとすることができる。
【0200】
電荷発生層1bは、上述したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体と、結着樹脂とを含有するものである。
【0201】
結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエステルカーボネート、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル単独重合体又は共重合体、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの部分架橋硬化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0202】
電荷発生層1bにおける複合体と結着樹脂との配合比(質量比)は、好ましくは40:1〜1:4であり、より好ましくは20:1〜1:2である。複合体の配合量が、結着樹脂の配合量の40倍を超えると、電子写真感光体の製造工程において使用される分散液中の複合体の分散性が不十分となる傾向にあり、他方、結着樹脂の配合量の1/4未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
【0203】
さらに、電荷発生層1bは、上述の複合体以外の他の電荷発生材料を含有していてもよい。ここで、電荷発生層1bに含有される他の電荷発生材料としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、縮環芳香族系顔料等が挙げられる。本実施形態においては、金属含有又は無金属のフタロシアニンを含有することが好ましく、特には、上述のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料以外のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料又はオキシチタニルフタロシアニン顔料を含有することが好ましい。また、これらの他の電荷発生材料の含有割合は、電荷発生層中に含まれる物質全量を基準として50質量%以下であることが好ましい。
【0204】
なお、電荷発生層1b上に電荷輸送層2などの他の層をさらに成膜する場合には、その塗工液に使用される溶剤によって電荷発生層1bが溶解あるいは膨潤することのないように、電荷発生層1bの結着樹脂と、電荷発生層1bの上に塗布される塗工液の溶剤との組み合わせを適宜選択することが好ましい。また、電荷発生層1bの結着樹脂と電荷輸送層2の結着樹脂とは、互いの屈折率同士が近いものを組み合わせて使用することが好ましく、具体的には、互いの屈折率の差が1以下であることが好ましい。このように屈折率の近い結着樹脂を組み合わせて用いると、電荷発生層1bと電荷輸送層2との界面での光の反射が抑制され、干渉縞防止効果が向上する傾向にある。
【0205】
電荷発生層1bは、上述したように、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、有機電子アクセプター及び結着樹脂を所定の溶剤に加え、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いて混合、分散させることにより得られる塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等により塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0206】
電荷発生層1bの塗工液に用いる溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0207】
このようにして得られる電荷発生層1bの膜厚は、良好な電気特性と画質とを得る観点から、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層1bの膜厚が0.05μm未満であると、感度が低下する傾向にあり、膜厚が5μmを超えると、帯電特性の不良などの弊害が生じやすくなる傾向がある。
【0208】
図3(b)は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す模式断面図である。図1(b)に示す電子写真感光体160は、導電性支持体3と感光層6bとの間に中間層4を備えること以外は図3(a)に示した電子写真感光体150と同様の構造を有するものである。
【0209】
中間層4は、感光層6bの帯電時において、導電性支持体3から感光層6bへの電荷の注入を防止する機能を有する。また、中間層4は、感光層6bを導電性支持体3に対して一体的に接着保持させる接着層としても機能する。更に、この中間層4は、導電性支持体3の光反射を防止する機能を有する。
【0210】
なお、中間層4は、先に述べた本発明の第二実施形態の電子写真感光体110の中間層4と同様のものとすることができる。
【0211】
図3(c)は、本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す模式断面図である。図3(c)に示す電子写真感光体170は、感光層6b上に保護層5を備えること以外は図3(a)に示した電子写真感光体150と同様の構成を有するものである。
【0212】
保護層5は、電子写真感光体170の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6bの機械的強度をさらに改善したりするために設けられる。この保護層5は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させた塗布液を感光層6b上に塗布することにより形成される。
【0213】
なお、保護層5は、先に述べた本発明の第三実施形態の電子写真感光体120の保護層5と同様のものとすることができる。
【0214】
また、本発明の複合体を含有する電荷発生層を備える本発明の電子写真感光体は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示す電子写真感光体180(本発明の電子写真感光体の第九実施形態)のように、導電性支持体3と感光層6bとの間に中間層4を備え、更に感光層6b上に保護層5を備えるものであってもよい。
【0215】
また、上記の実施形態の電子写真感光体150、160、及び170においては、感光層6bが積層構造を有している場合について説明したが、例えば、図4(b)に示す電子写真感光体190(本発明の電子写真感光体の第十実施形態のように、感光層6bが単層構造を有するものであってもよい。なお、この場合にも、導電性支持体3と感光層6bとの間に中間層4を備えていてもよく、感光層6a上に保護層5を備えていてもよく、中間層4及び保護層5の両方を備えていてもよい。
【0216】
次に、本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0217】
(電子写真装置)
図5及び図6は、それぞれ本発明の電子写真装置の好適な一実施施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【0218】
図5に示す電子写真装置200は、本発明の電子写真感光体7と、電子写感光体7をコロナ放電方式により帯電させる帯電手段8と、帯電手段8に接続された電源9と、帯電手段8により帯電される電子写真感光体7を露光して静電潜像を形成する露光手段10と、露光手段10により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段11と、現像手段11により形成されたトナー像を被転写体20に転写する転写手段12と、クリーニング手段13と、除電器14と、定着装置15とを備える。
【0219】
また、図6に示す電子写真装置210は、本発明の電子写真感光体7を接触方式により帯電させる帯電手段8を備えていること以外は、図5に示した電子写真装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電手段を採用する電子写真装置においては、優れた耐摩耗性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器14が設けられていないものもある。
【0220】
ここで、帯電手段8としては、例えば、ローラー状、ブラシ状、フィルム状又はピン電極状の導電性又は半導電性の帯電部材を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器などが用いられる。
【0221】
露光手段10としては、電子写真感光体7の表面に、半導体レーザ、LED(light emitting diode)、液晶シャッターなどの光源を所望の像様に露光できる光学系装置などが用いられる。
【0222】
現像手段11としては、一成分系、二成分系などの正規または反転現像剤を用いた従来公知の現像手段などが用いられる。
【0223】
転写手段12としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器などが用いられる。
【0224】
なお、図5及び6には示していないが、本発明の電子写真装置は中間転写手段を備えるものであってもよい。本発明にかかる中間転写手段としては、導電性支持体上にゴム、エラストマー、樹脂などを含む弾性層と少なくとも1層の被服層とが積層された構造を有するものを使用することができ、その材料としては使用される材料は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素樹脂等の樹脂に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたもの等が挙げられる。また、中間転写手段の形状としては、ローラー状、ベルト状などが挙げられる。
【0225】
(プロセスカートリッジ)
図7は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、本発明の電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング手段13、露光のための開口部18、及び除電器14を、取り付けレール16を用いて組み合わせて一体化したものである。そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
【0226】
以上説明した本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジにおいては、本発明の電子写真感光体を備えているため、画質欠陥を生じることなく長期間にわたって安定した画像品質を得ることできる。
【実施例】
【0227】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0228】
<I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成>
(合成例1)
1,3−ジイミノイソインドリン30質量部及び三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28質量部を得た。
【0229】
次に、得られたI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶10質量部を60℃に加熱した硫酸(濃度97%)300部に十分に溶解させた溶液を、25%アンモニア水600質量部とイオン交換水200質量部との混合溶液中に滴下してヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を析出させた。この結晶を濾過により採取し、イオン交換水で洗浄した後、乾燥してI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン8質量部を得た。
【0230】
このようにして得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンについて、X線回折スペクトルの測定を行った。その結果を図8に示す。なお、本実施例におけるX線回折スペクトルの測定は、粉末法によりCuKα特性X線を用いて、以下の条件で行った。
使用測定器:理学電機社製X線回折装置Miniflex
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
ステップ角度(2θ):0.02deg.
【0231】
<ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成>
(合成例2)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部、及び外径0.9mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で150時間湿式粉砕処理した。
【0232】
次いで、得られた結晶をアセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。なお、湿式粉砕処理において結晶変換の進行度合いをモニターしたときの、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長(λMAX)は823nm、であった。BET式の比表面積測定器(フローソープII2300、島津製作所社製)を用いて測定したBET比表面積は60m2/gで、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)により測定した体積平均粒径は0.06μmであった。
【0233】
(合成例3)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部とともに、撹拌装置を有するガラス製撹拌槽を使用して25℃で48時間撹拌して湿式処理を行った後、アセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを図10に示す。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は35.9m2/gで、体積平均粒径は1.15μmであった。
【0234】
(合成例4)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド30質量部及び直径1mmのガラスビーズ60質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で24時間湿式粉砕処理した。次いで、得られた結晶をメタノールで洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4.4質量部を得た。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は42.4m2/gで、体積平均粒径は0.37μmであった。
【0235】
(合成例5)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部及び外径5.0mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で150時間湿式粉砕処理した。次いで、得られた結晶をアセトンで洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は39.8m2/gで、体積平均粒径は0.59μmであった。
【0236】
<チタニルフタロシアニン顔料の合成>
(合成例6)
1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、及びチタニウムテトラブトキシド1.7質量部を1−クロルナフタレン20質量部中に入れ、190℃において5時間反応させた後、生成物を濾過し、アンモニア水、水、アセトンで洗浄し、チタニルフタロシアニン粗結晶4.0質量部を得た。得られたチタニルフタロシアニン粗結晶2.0質量部を97%硫酸100質量部に5℃で溶解した後、氷水1300質量部中に注ぎ、チタニルフタロシアニンの析出物を濾過し、希アンモニア水と水で洗浄した後、乾燥して、1.6質量部の非晶質チタニルフタロシアニン結晶を得た。さらに、この非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部を、水10質量部とモノクロルベンゼン1質量部との混合溶媒中で、50℃において1時間攪拌した後、濾過し、メタノールと水で洗浄して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の27.1°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は40.5m2/gで、体積平均粒径は0.23μmであった。
【0237】
(実施例1)
[電子写真感光体シートの作製]
酸化亜鉛(平均粒子径70nm、テイカ社製試作品、比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名「KBR603」、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。得られた表面処理酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部、及びブチラール樹脂(商品名「BM−1」、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散し分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(商品名「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)3.4質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの中間層を得た。
【0238】
次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液と、合成例2で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部及び下記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散し、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0239】
【化26】
【0240】
次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4質量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6質量部、テトラヒドロフラン80質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体シートを作製した。
【0241】
[電子写真感光体ドラムの作製]
30mmφ×404mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(商品名「アルミナビーズCB−A30S」(平均粒径D50=30μm)、昭和タイタニウム社製)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性基体として準備した。次に、この導電性基体上に、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順で、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体ドラムを作製した。
【0242】
(実施例2)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの添加量を0.01質量部から0.005質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0243】
(実施例3)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの添加量を0.01質量部から0.1質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0244】
(実施例4)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの添加量を0.01質量部から0.15質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0245】
(実施例5)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(8)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0246】
【化27】
【0247】
(実施例6)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(14)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0248】
【化28】
【0249】
(実施例7)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(10)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0250】
【化29】
【0251】
(実施例8)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(11)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0252】
【化30】
【0253】
(比較例1)
合成例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0254】
(比較例2)
合成例6で得られたチタニルフタロシアニン顔料1質量部、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部、及び、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液を混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0255】
(比較例3)
合成例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0256】
(比較例4)
合成例5で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0257】
(比較例5)
合成例6で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、上記一般式(11)で示される有機電子アクセプター0.01質量部、及び、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0258】
<電子写真感光体の電子写真特性評価試験>
実施例1〜8、及び比較例1〜5の電子写真感光体シートの電子写真特性を評価するために、以下の手順で電子写真特性の測定を行った。
(1)使用初期の特性評価
先ず、20mmφの小面積マスクを使用し、20℃、50%RHの環境下において、静電複写紙試験装置(EPA8200、川口電機社製)を用いて−5.0kVのコロナ放電により感光体を負帯電させた。次いで、干渉フィルターを用いて780nmに分光したハロゲンランプ光を感光体表面上において5.0μW/cm2となるように調整して照射した。このときの初期表面電位V0[V]、表面電位がV0の1/2になるまでの半減露光量E1/2[μJ/cm2]、及び暗減衰率(DDR)[%](表面電位V0から1秒後の表面電位をV1としたときに、{(V0−V1)/V0}×100)をそれぞれ測定した。
(2)繰り返し特性の評価
上記帯電、露光及び除電の操作を1万回繰り返し、そのときの表面電位V0[V]、表面電位がV0の1/2になるまでの半減露光量E1/2[μJ/cm2]および暗減衰率DDR[%]をそれぞれ測定した。
(3)画質評価試験
実施例1〜8、及び比較例1〜5の電子写真感光体ドラムを、タンデム方式のフルカラー・レーザープリンター(DocuCentre Color400)、富士ゼロックス社製)に装着して画像品質を評価し、かぶりやゴースト等の画質欠陥がないかどうかを確認した。なお、上記のフルカラー・レーザープリンターにおいては、帯電装置としてローラー帯電器(BCR)、露光装置として780nmの半導体レーザを使用したROS、現像方式として2成分系反転現像方式、転写装置としてローラー帯電器(BTR)、転写装置としてベルト中間転写方式を採用した。
(4)電荷発生材料の分散性評価
実施例1〜8、及び比較例1、3〜5で用いたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、並びに、比較例2で用いたチタニルフタロシアニン顔料の分散性の評価を行うために、ガラスプレート上に実施例1〜8、及び比較例1〜5における電荷発生層形成用塗布液をそれぞれ用いて電荷発生層を形成し、顕微鏡を用いてその分散状態を観察した。
【0259】
上記の(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。なお、表1中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察された、或いは塗膜表面がざらついていたことを意味する。
【0260】
【表1】
【0261】
<フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体の合成>
(合成例7)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部及び外径0.9mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で150時間湿式粉砕処理した。次いで、得られた結晶をアセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有する複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルを図9に示す。また、BET式の比表面積測定器(フローソープII2300、島津製作所社製)を用いて測定したBET比表面積、及び、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)により測定した体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。また、上記の合成例3〜5のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及び合成例6のチタニルフタロシアニン顔料のBET比表面積及び体積平均粒径も表2にまとめる。
【0262】
【表2】
【0263】
(合成例8)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.001質量部に代えたこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0264】
(合成例9)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.1質量部に代えたこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0265】
(合成例10)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.4質量部に代えたこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0266】
(合成例11)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、上記一般式(8)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0267】
(合成例12)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(9)で示される有機電子化合物0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0268】
【化31】
【0269】
(合成例13)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、上記一般式(4)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0270】
(合成例14)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、上記一般式(10)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0271】
(合成例15)
アルゴン置換したフラスコ中へ、1,3−ジイミノイソインドリン(25g)、チタンテトラブトキシド(14.6g)、ジフェニルメタン(300g)を混合し、150℃まで昇温した。ここで発生する蒸気を反応系外へ留去しながら、系内温度を200℃まで昇温した。この後、さらに4時間撹拌し反応を行った。反応終了後、系内温度を150℃まで冷却した後、反応混合物をガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、あらかじめ加熱しておいたジメチルホルムアミド(DMF)で2回洗浄し、さらに、DMF、メタノールで洗浄し、真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン(24g)を得た。次に、得られたチタニルフタロシニン(5g)、有機電子アクセプターとして下記一般式(6)で示される有機電子アクセプター(0.2g)を混合し、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比4/1)100mlに溶解させた。この溶液を、メタノール/水(体積比1/1)1L中へ滴下させた。滴下終了後、15分間室温にて撹拌し、30分間静置した後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、ろ液が中性になるまで水洗した後、クロロベンゼン200ml中に再分散し、1時間撹拌後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を50℃で5時間真空乾燥を行い、複合体:4.2gを得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0272】
【化32】
【0273】
(実施例9)
[電子写真感光体シートの作製]
酸化亜鉛(平均粒子径70nm、テイカ社製試作品、比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名「KBR603」、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。得られた表面処理酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部、及びブチラール樹脂(商品名「BM−1」、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散し分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(商品名「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)3.4質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの中間層を得た。
【0274】
次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液と、合成例7で得られた複合体1質量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散し、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0275】
次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4質量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6質量部、テトラヒドロフラン80質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体シートを作製した。
【0276】
[電子写真感光体ドラムの作製]
30mmφ×404mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(商品名「アルミナビーズCB−A30S」(平均粒径D50=30μm)、昭和タイタニウム社製)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性基体として準備した。次に、この導電性基体上に、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順で、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体ドラムを作製した。
【0277】
(実施例10)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例8で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0278】
(実施例11)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例9で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0279】
(実施例12)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例10で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0280】
(実施例13)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例11で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0281】
(実施例14)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例12で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0282】
(実施例15)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例13で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0283】
(実施例16)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例14で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0284】
(比較例6)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例15で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0285】
実施例9〜16、及び比較例6の電子写真感光体シートの電子写真特性を評価するために、上述の(1)使用初期の特性評価、(2)繰り返し特性の評価、(3)画質評価試験及び(4)電荷発生材料の分散性評価と同様の評価を行った。
【0286】
この(1)〜(4)の評価結果を表3に示す。また、上記の比較例1及び比較例5の評価結果も表3中に示す。なお、表3中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察された、或いは塗膜表面がざらついていたことを意味する。
【0287】
【表3】
【0288】
表1に示すように、結晶変換されたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及び有機電子アクセプターを含有する塗布液から形成された電荷発生層を備える実施例1〜8の電子写真感光体は、電荷発生層におけるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分散性が良好であり、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質が得られることが分かった。
【0289】
また、表3に示すように、電荷発生層にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとからなる複合体(合成例7〜14)を含有する実施例9〜16の電子写真感光体は、電荷発生層における複合体の分散性が良好であり、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質が得られることが分かった。
【0290】
以下、さらに別の実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0291】
(合成例16)
<I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の合成>
フタロニトリル31.8質量部及びガリウムトリメトキシド10.1質量部をエチレングリコール150mlに加え、窒素雰囲気下、200℃にて24時間攪拌して反応を進行させた。生成物をろ別してN,N−ジメチルホルムアミド、メタノールで順次洗浄した後、乾燥して、25.1質量部のガリウムフタロシアニンを得た。
【0292】
次に、得られたガリウムフタロシアニン2質量部を濃硫酸50質量部に溶解し、2時間攪拌した後、氷冷した蒸留水75ml、濃アンモニア水75mlおよびジクロロメタン150mlからなる混合溶液に滴下して結晶を析出させた。析出した結晶をろ別して蒸留水で十分に洗浄した後、乾燥して、微細化されたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1.8質量部を得た。
【0293】
このようにして得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトルを図11に示す。この結晶は、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.0°、13.4°、16.6°、26.0°および26.7°に強い回折ピークを有していた。
【0294】
(実施例17)
<複合体A1の調製>
合成例16で得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(7)で示される化合物0.01質量部及び直径1.0mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、テフロン製ライニング処理を施したSUS製ボールミルを使用して25℃で湿式粉砕処理した。
【0295】
湿式粉砕過程にあるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を24時間毎にサンプリングして、その分光吸収スペクトルにおけるλMAXを湿式粉砕時間192時間の時点まで測定し、得られた値を粉砕時間に対してプロットした曲線を図17に示す。図17から、湿式粉砕時間144時間の時点でλMAXが極小値となることが確認された。
【0296】
そこで、湿式粉砕時間を144時間として改めて同様の条件で湿式粉砕し、ろ別して酢酸n−ブチルで洗浄後、乾燥して複合体(A1)を得た。得られた複合体(A1)の粉末X線回折スペクトルを図12に示す。複合体(A1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0297】
なお、本実施例における分光吸収スペクトル測定は、日立製作所製のU−4000型分光光度計を用いて液セル法により行った。分光吸収スペクトル測定に供する試料液は、微量の複合体をアセトンと混合して調製した。
【0298】
(実施例18)
<複合体A2の調製>
有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.001質量部に代えたこと以外は、実施例17と同様に湿式粉砕時間を144時間として湿式粉砕処理を実施し、複合体(A2)0.9質量部を得た。得られた複合体(A2)のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0299】
(実施例19)
<複合体A3の調製>
有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.1質量部に代えたこと以外は、実施例17と同様に湿式粉砕時間を144時間として湿式粉砕処理を実施し、複合体(A3)0.9質量部を得た。得られた複合体(A3)のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0300】
(実施例20)
<複合体A4の調製>
有機電子アクセプターの使用量を0.01重量部から0.4重量部に代えたこと以外は、実施例17と同様に湿式粉砕時間を144時間として湿式粉砕処理を実施し、複合体(A4)0.9質量部を得た。得られた複合体(A4)のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0301】
(比較例7)
<ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料CA1の調製>
合成例1で得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部中で直径1.0mmのガラス製球状メディア30重量部を使用して24時間湿式粉砕した後、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料をろ別して酢酸n−ブチルで洗浄後、乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CA1)0.9質量部を得た。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CA1)のλMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0302】
(合成例17)
<微細化クロロガリウムフタロシアニン結晶の合成>
1,3−ジイミノイソインドリン30質量部および三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28質量部を得た。
【0303】
上記の工程で得られたI型クロロガリウムフタロシアニン20質量部を、直径5mmのアルミナ製ビーズ400質量部とともにアルミナ製ポットに入れた。これを振動ミル(MB−1型、中央化工機社製)に装着し、180時間乾式粉砕して一次粒子径が0.02μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶18質量部を得た。得られた微細化クロロガリウムフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルを図13に示す。
【0304】
(実施例21)
<複合体B1の調製>
合成例17で得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、ジメチルスルホキシド15質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(8)で示される化合物0.01質量部及び直径1.0mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、テフロン製ライニング処理を施したSUS製ボールミルを使用して25℃で湿式粉砕処理した。
【0305】
湿式粉砕過程にあるクロロガリウムフタロシアニン顔料を24時間毎にサンプリングしてその分光吸収スペクトルにおけるλMAXを湿式粉砕時間192時間の時点まで測定し、得られた値を粉砕時間に対してプロットした曲線を図18に示す。図18から、湿式粉砕時間96時間の時点でλMAXが極小値となることが確認された。
【0306】
そこで、湿式粉砕時間を96時間として改めて同様の条件で湿式粉砕し、ろ別して酢酸n−ブチルで洗浄後、乾燥して複合体(B1)を得た。B1のX線回折スペクトルを図14に示す。複合体(B1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0307】
(比較例8)
<クロロガリウムフタロシアニン顔料CB1の調製>
合成例17で得られた微細化クロロガリウムフタロシアニン5質量部を、ジメチルスルホキシド500質量部とともに傾斜パドル型攪拌翼および邪魔板を設けた恒温装置付きの攪拌槽に入れて、混合液温度24℃において24時間に亘り攪拌速度250rpmで攪拌し、ろ過乾燥機(タナベウィルテック社製)を用いてろ過した後、イオン交換水で洗浄し、さらに、攪拌しながら第一の乾燥処理として80℃において24時間真空乾燥した。次に、第二の乾燥として150℃で5時間真空乾燥することにより、クロロガリウムフタロシアニン結晶(CB1)4.7質量部を得た(特開2002−91039号公報の実施例1参照)。クロロガリウムフタロシアニン顔料(CB1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0308】
(合成例18)
<非晶質チタニルフタロシアニン顔料の合成>
まず、1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、チタニウムテトラブトキシド1.7質量部を1−クロルナフタレン20質量部に加え、190℃で5時間反応させた後、生成物をろ別後、アンモニア水、水、アセトンで順次洗浄して、チタニルフタロシアニン粗結晶4.0質量部を得た。
【0309】
次に、得られたチタニルフタロシアニン粗結晶2.0質量部を97%硫酸100質量部に5℃で溶解した後、氷水1300質量部中に注いで結晶を析出させた。析出した結晶をろ別して希アンモニア水、水で順次洗浄後、乾燥して、1.6質量部の非晶質チタニルフタロシアニン顔料を得た。
【0310】
(実施例22)
<複合体D1の調製>
合成例18で得られた非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部と有機電子アクセプターとして上記一般式(13)で示される化合物0.01質量部を、水15質量部/モノクロルベンゼン1.5質量部の混合溶媒中で、直径1.0mmのガラス製球形状メディア55質量部を使用してガラス製ボールミルにより25℃で湿式粉砕した。
【0311】
湿式粉砕過程において24時間ごとにサンプリングし、湿式粉砕過程にあるチタニルフタロシアニン顔料のBET比表面積を粉砕時間192時間の時点まで測定し、得られた値を粉砕時間に対してプロットした曲線を図19に示す。
【0312】
図19に示すように、湿式粉砕時間96時間の時点でBET比表面積が極大値(65m2/g)となった。そこで、湿式粉砕時間を96時間として改めて同様の条件で湿式粉砕を行い、ろ別してメタノールと水で洗浄後、乾燥して、複合体(D1)0.9重量部を得た。複合体(D1)の粉末X線回折スペクトルを図15に、分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0313】
(比較例9)
<チタニルフタロシアニン顔料CD1の調製>
合成例18で得られた非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部を水10質量部/モノクロルベンゼン1質量部の混合溶媒中で、50℃において1時間攪拌した後、ろ別してメタノールと水で洗浄し、チタニルフタロシアニン顔料(CD1)0.9質量部を得た。
【0314】
チタニルフタロシアニン顔料(CD1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。また、粉末X線回折図は、図15に示すものと同様であった。
【0315】
(合成例19)
<α型無金属フタロシアニン結晶の合成>
まず、o−フタロジニトリル100質量部とピペリジン10質量部とを、クロロトルエン300質量部に加え、200℃において10時間攪拌しながら反応させ、赤紫色結晶を得た。
【0316】
次いで、赤紫色結晶をろ別し、希塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液により洗浄した後、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンの順でさらに洗浄し、乾燥して、無金属フタロシアニン粗結晶を得た。
【0317】
得られた無金属フタロシアニン粗結晶12質量部を、0〜5℃に冷却した97%硫酸200質量部に均一に溶解し、これを2000質量部の純水中に滴下して結晶を析出させた。析出した結晶をろ別し、水酸化ナトリウム水溶液、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンの順で洗浄した後、乾燥して、α型無金属フタロシアニン結晶410質量部を得た。
【0318】
(実施例23)
<複合体E1の調製>
合成例19で得られたα型無金属フタロシアニン結晶1質量部と有機電子アクセプターとして上記一般式(15)で示される化合物0.01質量部を、別に準備したX型無金属フタロシアニン顔料0.05質量部とともに、メチルエチルケトン15質量部中で、直径1.0mmのアルミナ製球形状メディア60質量部を使用してアルミナ製ボールミルにより25℃で湿式粉砕した。
【0319】
湿式粉砕過程にあるX型無金属フタロシアニン顔料を24時間ごとにサンプリングしてそのλMAX及びBET比表面積を測定し、それぞれの値を粉砕時間に対して湿式粉砕時間240時間の時点までプロットした曲線を図20及び21に示す。
【0320】
図20に示すように、湿式粉砕時間168時間の時点でλMAXが極小値となり、一方、図21に示すように、湿式粉砕時間192時間の時点でBET比表面積が極大値(71m2/g)となった。
【0321】
そこで、Taを168、Tbを192として上記の式(eq−1)から算出される、180時間を湿式粉砕時間として、改めて同様の条件で湿式粉砕を行い、ろ別してメチルエチルケトンで洗浄後、乾燥して、複合体(E1)0.9質量部を得た。
【0322】
得られた複合体(E1)の粉末X線回折図を図16に示す。また、複合体(E1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0323】
(比較例10)
<X型無金属フタロシアニン顔料CE1の調製>
合成例19で得られたα型無金属フタロシアニン結晶1質量部を、別に準備したX型無金属フタロシアニン顔料0.05質量部とともに、直径5.0mmのアルミナ製球形状メディア60質量部を使用してアルミナ製ボールミルにより4日間乾式粉砕処理を行い、無金属フタロシアニン顔料(CE1)を得た。
【0324】
無金属フタロシアニン顔料CE1の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。なお、無金属フタロシアニン顔料CE1の粉末X線回折図は、図16に示すものと同様であった。
【0325】
(比較例11)
<チタニルフタロシアニン顔料CD2の調製>
1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、チタニウムテトラブトキシド1.7質量部を1−クロルナフタレン20質量部中に入れ、190℃において5時間反応させた後、生成物を濾過し、アンモニア水、水、アセトンで洗浄し、チタニルフタロシアニン粗結晶4.0質量部を得た。得られたチタニルフタロシアニン粗結晶2.0質量部を97%硫酸100部に5℃で溶解した後、氷水1300質量部中に注ぎ、チタニルフタロシアニンの析出物を濾過し、希アンモニア水と水で洗浄した後、乾燥して、1.6質量部の非晶質チタニルフタロシアニン結晶を得た。
【0326】
上記非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部を水10質量部、モノクロルベンゼン1質量部の混合溶媒中で、50℃において1時間攪拌した後、濾過し、メタノールと水で洗浄して、チタニルフタロシアニン顔料(CD2)0.9質量部を得た(特開平3−269061号公報の実施例1参照)。得られたチタニルフタロシアニン顔料(CD2)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0327】
(比較例12)
<複合体CD3の調製>
アルゴン置換したフラスコ中へ、1,3−ジイミノイソインドリン25質量部、チタンテトラブトキシド14.6質量部、ジフェニルメタン300質量部を混合し、150℃まで昇温した。ここで発生する蒸気を反応系外へ留去しながら、系内温度を200℃まで昇温した。この後、さらに4時間撹拌し反応を行った。反応終了後、系内温度を150℃まで冷却した後、反応混合物をガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、あらかじめ加熱しておいたジメチルホルムアミド(DMF)で2回洗浄し、さらに、DMF、メタノールで洗浄し、真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン24質量部を得た。
【0328】
次に、上記チタニルフタロシニン5質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(6)で示される化合物0.2質量部(チタニルフタロシニン1質量部に対して0.04質量部)を混合し、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比4/1)100mlに溶解させた。この溶液を、メタノール/水(体積比1/1)1L中へ滴下させた。滴下終了後、15分間室温にて撹拌し、30分間静置した後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、ろ液が中性になるまで水洗した後、クロロベンゼン200ml中に再分散し、1時間撹拌後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を50℃で5時間真空乾燥を行い、複合体(CD3)4.2質量部を得た(特開2001?40237号公報の合成例1参照)。
【0329】
得られた複合体(CD3)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0330】
(比較例13)
<複合体CB2の調製>
1,3−ジイミノイソインドリン30質量部及び三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28質量部を得た。
【0331】
次に、得られたI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶5質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(6)で示される化合物0.2質量部(フタロシアニン顔料1質量部に対して0.04質量部)を混合し、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比4/1)100mlに溶解させた。この溶液を、アセトン/水(体積比1/1)1L中へ滴下させた。滴下終了後、15分間室温にて撹拌し、30分間静置した後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、ろ液が中性になるまで水洗した後、N,N−ジメチルホルムアミド200ml中に再分散し、1時間撹拌後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を50℃で5時間真空乾燥を行い、複合体(CB2)4.2質量部を得た。得られた複合体(CB2)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0332】
(実施例24)
[電子写真感光体シートの作製]
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製試作品、比表面積値:15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。
【0333】
次に、表面処理を施した酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部及びブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学社製)15重量部を、メチルエチルケトン85質量部に溶解した。そして、この溶液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及び、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール145、GE東芝シリコーン社製)3.4質量部を添加し、中間層形成用塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの中間層を形成した。
【0334】
次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液と、実施例17で得られた複合体(A1)1質量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記中間層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して、膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0335】
さらに、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4質量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6質量部、テトラヒドロフラン80質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、実施例24の電子写真感光体シートを作製した。
【0336】
[電子写真感光体ドラムの作製]
外径30mmφ、長さ404mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(アルミナビーズCB−A30S、平均粒径D50=30μm、昭和タイタニウム社製)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性支持体として用い、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順で、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、実施例24の電子写真感光体ドラムを作製した。
【0337】
(実施例25〜30)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、実施例18〜23の各種複合体をそれぞれ用いたこと以外は実施例24と同様にして、実施例25〜30の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0338】
(比較例14〜17)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、比較例7〜10の各種フタロシアニン顔料をそれぞれ用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例14〜17の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0339】
(比較例18)
電荷発生材料として比較例11のチタニルフタロシアニン顔料(CD2)3質量部、ポリビニルブチラール(商品名エスレックBM―2、積水化学(株)製)2質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(11)で示される化合物0.03質量部及びシクロヘキサノン80質量部を1mmφガラスビーズを用いたサンドミルで4時間分散した後、メチルエチルケトン115質量部を加えて電荷発生層用塗料を調整した。この塗料を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例24と同様にして、比較例18の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した(特開平7?104495号公報の実施例1参照)。
【0340】
(比較例19)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、比較例12の複合体を用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例19の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0341】
(比較例20)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、比較例13の複合体を用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例20の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0342】
【表4】
【0343】
実施例24〜30及び比較例14〜20の電子写真感光体シートの電子写真特性について、上記した(1)使用初期の特性評価、及び(2)繰り返し特性の評価に基づいて評価した。得られた結果を表5に示す。
【0344】
また、実施例24〜30及び比較例14〜20の電子写真感光体ドラムについて、上記した(3)画質評価試験を行い、画質を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0345】
さらに、実施例24〜30及び比較例14〜20で用いた各種複合体又はフタロシアニン顔料の分散性について、上記した(4)電荷発生材料の分散性評価に基づいて評価した。得られた結果を表5に示す。なお、表5中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察された、或いは塗膜表面がざらついていたことを意味する。
【0346】
【表5】
【0347】
表5に示すように、フタロシアニン顔料と、有機電子アクセプターと、溶剤とを含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られた複合体を電荷発生層に含む実施例24〜30の電子写真感光体は、電荷発生層における複合体の分散性が良好であり、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質が得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0348】
【図1】図1(a)は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図であり、図1(b)は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図であり、図1(c)は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図であり、図2(b)は、本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図であり、図3(b)は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図であり、図3(c)は、本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の電子写真感光体の第九実施形態を示す断面図であり、図4(b)は、本発明の電子写真感光体の第十実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を示す概略構成図である。
【図6】本発明の電子写真装置の他の一実施形態の基本構成を示す概略構成図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を示す概略構成図である。
【図8】合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粉末X線回折図である。
【図9】合成例7で得られた複合体の粉末X線回折図である。
【図10】合成例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粉末X線回折図である。
【図11】合成例16において合成したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折図である。
【図12】実施例17において作製した複合体(A1)の粉末X線回折図である。
【図13】合成例17において合成した微細化クロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図である。
【図14】実施例21において作製した複合体(B1)の粉末X線回折図である。
【図15】実施例22において作製した複合体(D1)の粉末X線回折図である。
【図16】実施例23において作製した複合体(E1)の粉末X線回折図である。
【図17】実施例17において、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分光吸収スペクトルにおけるλMAXと湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図18】実施例21において、クロロガリウムフタロシアニン顔料の分光吸収スペクトルにおけるλMAXと湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図19】実施例22において、チタニルフタロシアニン顔料のBET比表面積値と湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図20】実施例23において、X型無金属フタロシアニン顔料の分光吸収スペクトルにおけるλMAXと湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図21】実施例23において、X型無金属フタロシアニン顔料のBET比表面積値と湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0349】
1a,1b…電荷発生層、2…電荷輸送層、3…導電性支持体、4…中間層、5…保護層、6a,6b…感光層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段、13…クリーニング手段、14…除電器、15…定着装置、16…取り付けレール、18…露光のための開口部、20…被転写体、100,110,120,130,140,150,160,170,180,190…電子写真感光体、200,210…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の構成材料として使用される複合体及びその製造方法に関する。また、本発明は、該複合体を構成材料として使用した電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術の発展は著しく、レーザ光又はLEDを光源とする電子写真方式の画像形成は、高速・高画質という利点を有することから、複写機及び光プリンタ等の分野において広く利用されている。電子写真装置に用いられる電子写真感光体(以下、場合により単に「感光体」という)としては、従来の無機光導電材料を用いた無機感光体に比べ、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占める様になってきている。中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層とを積層させた機能分離型の有機感光体は、電子写真特性の点で優れており、種々の提案がなされ、実用化されている。
【0003】
ところで、電子写真感光体に要求される特性は年々厳しくなっている。そのため、有機感光体においても更なる性能の向上が求められている。このような要求の中、最近、感光体の高性能化を図る目的で有機電子アクセプターを利用する試みがなされている。
【0004】
例えば、電荷発生層と電荷輸送層と備える感光体の画質改善を目的として、電荷発生層にオキシチタニウムフタロシアニンと有機電子アクセプターとを含有させた感光体がある(例えば、特許文献1参照。)。また、高感度の感光体を得ることを意図した有機光導電材料として、チタニルフタロシアニン等の顔料化工程時に有機電子アクセプターを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−104495号公報
【特許文献2】特開2001−40237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記従来の感光体においてはフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの併用による電子写真特性の改善効果が必ずしも十分とは言えず、画像形成プロセスに繰り返し使用した場合、感度、帯電特性及び暗減衰率等の特性が低下したり、かぶりやゴースト等の画質欠陥が発生したりすることがある。
【0007】
より具体的には、特許文献1に記載の感光体のようにフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを各々単独で電荷発生層の構成材料として用いる場合、有機電子アクセプターの添加によりフタロシアニン顔料の電荷発生層における分散性が低下するため、感度、帯電特性及び暗減衰率等の特性が低下したり、かぶりやゴースト等の画像欠陥が発生しやすくなる。
【0008】
また、特許文献2における顔料化工程とは、フタロシアニンと有機電子アクセプターとの双方を溶剤に溶解させ、その溶液を水/メタノール混合溶媒等に滴下して結晶を析出させる工程である。かかる顔料化工程時に有機電子アクセプターを添加してフタロシアニン結晶を製造すると、有機電子アクセプターのほとんどは結晶化の際にフタロシアニン結晶の内部に取り込まれてしまう。更に、顔料化工程直後に有機電子アクセプターがフタロシアニン結晶の表面又はその近傍に存在していても、顔料化工程の後段に設けられる粉砕処理等の結晶変換の際に有機電子アクセプターがフタロシアニン結晶から離脱してしまう。そのため、最終的に得られるフタロシアニン結晶においては、有機電子アクセプターの添加効果が不十分となりやすく、特に表面特性がほとんど改善されていないことが多い。また、特許文献2に記載のフタロシアニン結晶の場合、粗大粒子や凝集体が形成されやすく、更には所望の結晶型への結晶変換が困難であるという問題がある。このようなフタロシアニン結晶を構成材料とした感光体では、繰り返し使用時に感度、帯電特性及び暗減衰率等の特性の低下やかぶり、ゴースト等の画質欠陥の発生を十分に抑制することができない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の防止に有効な複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能な電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、フタロシアニン顔料(顔料化工程後のフタロシアニン結晶)を有機電子アクセプター及び所定の溶剤と共に湿式粉砕することによって、フタロシアニン顔料の結晶型を変換させつつ、当該顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有させ、且つ微細化することができることを見出した。そして、そのようにして得られるフタロシアニン顔料を電子写真感光体用の構成材料として用いることによって上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の複合体は、電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、フタロシアニン顔料と、有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターと所定の溶剤とを含む混合物を湿式粉砕処理することにより、フタロシアニン顔料の結晶型を変換させつつ、当該顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを取込み、且つ微細化することができる。そのため、本発明の複合体を電子写真感光体の構成材料として用いることにより、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を十分に防止することが可能となる。
【0013】
なお、本発明の複合体により上述の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の複合体を電子写真感光体の構成材料として用いた場合、有機電子アクセプターを感光層中に添加した場合と比較して、フタロシアニン顔料とバインダー樹脂との界面において有機電子アクセプターが極めて効果的に作用し、上記界面における電荷の注入性が改善され、また、顔料表面に存在するキャリアトラップが低減されるものと考えられる。そして、かかる有機電子アクセプターの作用により、実用上十分な光感度や、繰返し使用しても鮮明な複写画像を安定的に得るための耐久性を電子写真感光体に付与することができ、また、フタロシアニン顔料のエレクトロン残存性に起因すると考えられるゴーストの発生を防止することができるものと考えられる。さらに、本発明の複合体の場合、有機電子アクセプターをフタロシアニン顔料表面に取込む際に微粒化しているので、優れた分散性を有している。そのため、本発明の複合体を電子写真感光体の構成材料として用いた場合、粗大粒子や凝集体の形成を十分に抑制することができ、かぶりや黒点/白点等の画質欠陥を防止することができる。
【0014】
また、本発明の複合体は、電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有することを特徴とする。
【0015】
このように、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域が存在すると、電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、フタロシアニン顔料とバインダー樹脂との界面において有機電子アクセプターが極めて効果的に作用するため、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を防止することが可能となる。
【0016】
本発明の複合体は、フタロシアニン顔料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0017】
更に、本発明の複合体は、フタロシアニン顔料として、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することが好ましい。
【0018】
フタロシアニン顔料は、その結晶中の分子配列によってフタロシアニン分子間の相互作用が変化し、結果として分子配列の状態がスペクトルに反映される。ここで、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを感光層に含有させることにより、感光層中でのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分散性が更に良好となり、感光体の光感度、帯電特性及び暗減衰特性がより向上し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の発生を生じることなく更に長期にわたって安定した画質品質を得ることが可能となる。
【0019】
なお、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、通常840〜870nmの範囲にピーク波長を有する従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料)のように、839nmを超える範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを感光層に含有させた場合、暗電流の増大やかぶり等が発生しやすくなる傾向にある。これは、吸収波長が長波長側にシフトしていることから、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は分子間の相互作用が比較的強い状態にあり、結晶中を電荷が流れやすい状態となっているためであると本発明者らは推察する。
【0020】
また、810nm未満の範囲において最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(810〜839nmの範囲や839nmを超える範囲にピークが存在するが、より吸光度の高いピークが810nm未満の範囲に存在する場合のものを含む)と有機電子アクセプターとを感光層に含有させた場合、感度の低下や残留電位の上昇等が発生しやすくなる傾向にある。これは、吸収波長が短波長側にシフトしていることから、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は分子間の相互作用が比較的弱い状態にあり、結晶中を電荷が流れ難い状態となっているためであると本発明者らは推察する。
【0021】
したがって、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとを含有する感光層において、顔料の分子間の相互作用の程度が電荷の移動に対してより好ましい状態となっていることも上記の効果が得られる要因の一つであると本発明者らは考えている。
【0022】
なお、上記最大ピーク波長は、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を意味する。
【0023】
また、本発明の複合体において、有機電子アクセプターの含有量はフタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.5質量部であることが好ましい。有機電子アクセプターの含有割合が0.001質量部より少ない場合、ゴースト等の画質欠陥を生じやすくなる傾向にあり、他方、0.5質量部を超える場合、フタロシアニン顔料の分散性が低下してかぶり等の画質欠陥を生じたり、感光体の帯電特性、光感度、暗減衰特性が低下したりする等の問題が生じる傾向にある。
【0024】
また、本発明は、フタロシアニン顔料と、有機アクセプターと、溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕する湿式粉砕処理工程を有することを特徴とする、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体の製造方法を提供する。
【0025】
上記製造方法によれば、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターと所定の溶剤とを含む混合物を湿式粉砕処理することにより、フタロシアニン顔料の結晶型を変換させつつ、当該顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを取込み、且つ微細化することができるため、上述した優れた特性を有する本発明の複合体を有効に得ることが可能となる。
【0026】
上記製造方法は、湿式粉砕処理工程の前段に、粗ガリウムフタロシアニンをアシッドペースティング処理して、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得るアシッドペースティング処理工程を更に有することが好ましく、該アシッドペースティング処理工程により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、フタロシアニン顔料として前記湿式粉砕処理工程に供することが好ましい。
【0027】
上記のアシッドペースティング処理工程により得られた特定のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を上記湿式粉砕処理工程に供することにより、湿式粉砕処理工程での処理時間を短縮することができ、本発明の複合体の製造効率を向上させることができる。
【0028】
このような効果が得られる理由としては、上記のアシッドペースティング処理工程により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶構造が、上記湿式粉砕処理工程によって電子写真感光体用の光導電物質として優れた性能を発現する結晶型に変換される上でより好適な構造であることと、上記湿式粉砕処理工程において有機電子アクセプターが存在する場合であっても粗大粒子又は凝集体をより形成しにくい構造であるためと考えられる。
【0029】
また、本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられており、上記本発明の複合体を含有する感光層と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の電子写真感光体によれば、上記本発明の複合体を感光層に含有させることにより、帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を十分に改善することができ、かぶりやゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能となる。
【0031】
また、本発明のプロセスカートリッジは、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させるための帯電手段、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、及び電子写真感光体上残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種と、を備えることを特徴とする。
【0032】
かかるプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体を備えることにより、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を達成し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能なものとなっている。
【0033】
また、本発明の電子写真装置は、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、電子写真感光体上に静電潜像を形成するための露光手段と、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、トナー像を被転写体に転写するための転写手段と、を備えることを特徴とする。
【0034】
かかる電子写真装置は、本発明の電子写真感光体を備えることにより、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を達成し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能なものとなっている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電子写真感光体の構成材料として用いた場合に、電子写真感光体に十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰性を付与することができ、かぶり及びゴースト等の画質欠陥の防止に有効な複合体及びその製造方法が提供可能となる。また、本発明によれば、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質を得ることが可能な電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
図1(a)は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す模式断面図である。図1(a)に示す電子写真感光体100は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層1a)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層2)とに機能が分離された積層型感光層6aを備えるものであり、導電性支持体3上に電荷発生層1a、電荷輸送層2が順次積層された構造を有している。そして、電荷発生層1aには、電荷発生材料として、本発明の複合体が含まれる。
【0038】
本発明の複合体は、フタロシアニン顔料と、有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものである。この複合体を得る方法を、本発明の複合体の製造方法の好適な実施形態を挙げて以下に説明する。
【0039】
本実施形態における複合体の製造方法は、フタロシアニン顔料と、有機アクセプターと、所定の溶剤とを含む混合物を湿式粉砕する湿式粉砕処理工程を備えるものである。この湿式粉砕処理工程を経ることにより、フタロシアニン顔料の結晶変換及び微細化、並びに、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合化が行われる。この湿式粉砕処理工程の後、混合物を濾過して、適当な溶剤で洗浄し、乾燥することにより複合体が得られる。
【0040】
上記混合物に含まれるフタロシアニン顔料は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン又は無金属フタロシアニンの粗結晶を、アシッドぺースティング処理や粉砕処理等によって微細化したものが好ましい。
【0041】
フタロシアニン顔料としてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いる場合、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(以下、「I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶」という)を用いることが好ましい。I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は、従来公知の方法によって得ることができる。以下にその一例を示す。
【0042】
先ず、o−フタロジニトリルまたは1,3−ジイミノイソインドリンと三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウムおよびエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)、等により粗ガリウムフタロシアニンを製造する。上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどの不活性且つ高沸点の溶剤を用いることが好ましい。
【0043】
次に、上記の工程で得られた粗ガリウムフタロシアニンについてアシッドペースティング処理を行うことによって、粗ガリウムフタロシアニンを微粒子化するとともにI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンに変換する。ここで、アシッドペースティング処理とは、具体的には、粗ガリウムフタロシアニンを硫酸、トリフルオロ酢酸などの酸や、これらの酸を含む溶液に溶解させたものあるいは硫酸塩などの酸塩としたものを、アルカリ水溶液、水、氷水、又は、水と有機溶媒との混合溶媒中に注ぎ、再結晶させることをいう。このアシッドペースティング処理に用いる酸としては硫酸、トリフルオロ酢酸が好ましく、中でも濃度70〜100%(特に好ましくは95〜100%)の硫酸がより好ましい。
【0044】
さらに、本発明の複合体においては、上記のフタロシアニン顔料として、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが好ましい。
【0045】
上記のようなヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を電子写真感光体の電荷発生材料として用いた場合には、感光体の帯電特性、光感度、残留電位、暗減衰などに優れた光電特性を得ることができる点、及び、有機電子アクセプターとの複合体が、感光層に含まれる結着樹脂中への分散性に優れているので画質特性に優れる点で特に有効である。
【0046】
また、本実施形態においては、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが好ましい。このようなヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、有機電子アクセプターとの複合体が感光層に分散しやすく、十分な感度、帯電特性及び暗減衰特性、並びに、安定した画像品質をより長期間にわたって得ることができる。
【0047】
上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得る方法としては、上述のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を湿式粉砕処理することによって結晶変換させる製造方法が挙げられる。
【0048】
湿式粉砕処理は、外径0.1〜3.0mmの球形状メディアを使用した粉砕装置を用いて行われることが好ましく、外径0.2〜2.5mmの球形状メディアを用いて行われることがより好ましい。メディアの外形が3.0mmより大きい場合、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成し易い傾向にある。また、メディアの外径が0.1mmより小さい場合、メディアとヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とを分離し難くなる傾向にある。更に、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等、他の形状の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の特性を劣化させ易くなる傾向がある。
【0049】
ここで、湿式粉砕処理の時間は、粉砕過程のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の吸収波長を測定することにより決定することができる。例えば、湿式粉砕処理において、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するものとなるように、結晶変換状態を湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターしながら湿式粉砕処理時間を決定することができる。
【0050】
上記メディアの材質は特に制限されないが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー等が好ましい。
【0051】
また、上記湿式粉砕処理を行う容器の材質についても特に制限されないが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等が好ましい。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等をライニングしたものであっても良い。
【0052】
上記メディアの使用量は、使用する装置によっても異なるが、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、55〜100質量部であることがより好ましい。また、メディアの外径が小さくなると、同じ質量(使用量)でも装置内に占めるメディア密度が高まり、混合溶液の粘度が上昇して粉砕効率が変化するため、メディア外径を小さくするに従い、適宜メディア使用量と溶剤使用量とをコントロールすることによって最適な混合比で湿式処理を行うことが望ましい。
【0053】
また、上記の湿式粉砕処理において、溶剤の使用量はI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。
【0054】
また、湿式粉砕処理の温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは5〜80℃であり、特に好ましくは10〜50℃である。温度が低い場合には、結晶転移の速度が遅くなる傾向にあり、また、温度が高すぎる場合には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の溶解性が高くなり結晶成長しやすく微粒化が困難となる傾向にある。
【0055】
湿式粉砕処理に使用される溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンなどのケトン類の他に、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶剤の使用量は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
【0056】
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。
【0057】
上記混合物に含まれるフタロシアニン顔料としてクロロガリウムフタロシアニン顔料を用いる場合、クロロガリウムフタロシアニン顔料は、1,3−ジイミノイソインドリンを三塩化ガリウムと有機溶剤中で加熱縮合させるジイミノイソインドリン法、フタロニトリルと三塩化ガリウムとを加熱融解または有機溶剤の存在下で加熱するフタロニトリル法、無水フタル酸と尿素および三塩化ガリウムとを加熱融解または有機溶剤の存在下で加熱するワイラー法等により合成されたものを用いることができる。このとき使用する有機溶剤としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、メトキシナフタレン、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、ジメチルスルホアミド等の反応不活性な高沸点溶剤が望ましい。また、加熱縮合温度は130〜220℃、好ましくは140〜180℃の範囲が選択される。上記の方法により合成されたI型クロロガリウムフタロシアニンは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の27.1°に強い回折ピークを有している。
【0058】
本実施形態においては、上記のI型クロロガリウムフタロシアニンを乾式粉砕によって微細化したものを用いることがより好ましい。この乾式粉砕に使用される装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、スエコミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミル等が挙げられる。乾式粉砕した後のクロロガリウムフタロシアニン結晶の一次粒子径は、粉砕時間や回転数、メディアのサイズ、顔料/メディア比等の粉砕条件により調整する。このように乾式粉砕によって微細化されたクロロガリウムフタロシアニン結晶は、I型クロロガリウムフタロシアニン特有のCuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の27.1°の回折ピークが消失し、新たに7.4°、16.6°、25.5°、及び28.3°にブロードで弱い回折ピークを有する非晶型に近い結晶型に変換される。
【0059】
また、フタロシアニン顔料としてチタニルフタロシアニン顔料を用いる場合、非晶質または準非晶質の微細化されたチタニルフタロシアニン結晶を用いることが好ましい。このようなチタニルフタロシアニン結晶は、1,3−ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラブトキシドとを反応させる等の方法で合成されたチタニルフタロシアニン粗結晶を、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の場合と同様のアシッドぺースティング処理することによって得ることができる。
【0060】
また、フタロシアニン顔料として無金属フタロシアニン顔料を用いる場合、微細化されたα型無金属フタロシアニン結晶を用いることが好ましい。このような無金属フタロシアニン結晶は、以下の方法で合成された無金属フタロシアニン粗結晶を、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の場合と同様のアシッドぺースティング処理することによって得ることができる。
【0061】
無金属フタロシアニン粗結晶を合成する方法としては、o−フタロジニトリル、または1,3−ジイミノイソインドリンを強塩基触媒の存在下で適当な溶媒を用いて加熱反応させる方法、アルカリ金属フタロシアニンを中間体として生成し、次に酸またはアルコールで洗浄する方法等を好適に採用できる。これらの合成方法において使用する溶剤としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等の合成反応の際に不活性な高沸点の溶剤が好ましい。
【0062】
上記混合物に含まれる有機アクセプターとしては、下記一般式(I)〜(VIII)で示される化合物が挙げられる。
【0063】
【化1】
式(I)中、Zは、C(COORk1)2(Rk1は、水素原子又はアルキル基である。)、C(CN)2、O(酸素原子)、又はN−CNを示し、R1及びR2は、それぞれ独立に、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、又は−CRk2=CRk3Rk4で表されるビニル基(Rk2は、水素原子又はアルキル基であり、Rk3及びRk4は、それぞれ、水素原子、又は置換若しくは非置換フェニル基であり、但し、Rk3及びRk4の少なくとも一つが置換又は非置換フェニル基であり、他方が水素原子である。)を示し、n1及びn2は0〜4の整数を示す。
【0064】
【化2】
式(II)中、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、又は水酸基を示し、n3及びn4は0〜2の整数を示す。
【0065】
【化3】
式(II−a)中、R5及びR6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、又は水酸基を示し、n5は0〜2の整数を示し、n6は0〜4の整数を示す。
【0066】
【化4】
式(II−b)中、R7及びR8は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n7及びn8は0〜4の整数を示す。
【0067】
【化5】
式(III)中、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、又は芳香族基を有する1価の有機基を示し、R9とR10とが互いに連結して環を形成してもよい。
【0068】
【化6】
式(IV)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n11、n12、n13及びn14は、0〜2の整数を示す。
【0069】
【化7】
式(V)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。
【0070】
【化8】
式(VI)中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、CH、又は窒素原子を示し、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n17、n18及びn19は、0〜5の整数を示す。
【0071】
【化9】
式(VII)中、R20及びR21は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n20及びn21は、0〜5の整数を示す。
【0072】
【化10】
式(VIII)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、又は水酸基を示し、n22及びn23は、0〜5の整数を示す。
【0073】
上記一般式(I)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)〜(3)で示される化合物が挙げられる。
【0074】
【化11】
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
【0077】
また、上記一般式(II)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0078】
【化14】
【0079】
また、上記一般式(II−a)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(5)及び(6)で示される化合物が挙げられる。
【0080】
【化15】
【0081】
【化16】
【0082】
また、上記一般式(II−b)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(7)及び(8)で示される化合物が挙げられる。
【0083】
【化17】
【0084】
【化18】
【0085】
また、上記一般式(III)で示される構造を有する化合物としては、例えば、上記一般式(1)、(2)及び(3)、並びに、下記一般式(9)及び(10)で示される化合物が挙げられる。
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
また、上記一般式(VI)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(11)で示される化合物が挙げられる。
【0089】
【化21】
【0090】
また、上記一般式(V)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(12)で示される化合物が挙げられる。
【0091】
【化22】
【0092】
また、上記一般式(VI)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(13)で示される化合物が挙げられる。
【0093】
【化23】
【0094】
また、上記一般式(VII)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(14)示される化合物が挙げられる。
【0095】
【化24】
【0096】
また、上記一般式(VIII)で示される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(15)示される化合物が挙げられる。
【0097】
【化25】
【0098】
本実施形態においては、上記一般式(II)、(II−a)又は(II−b)で示されるキノン誘導体を用いることが好ましい。
【0099】
また、本実施形態において使用される有機電子アクセプターは、飽和カロメル電極を基準とした還元電位Ered1/2が−1.0V以上であることが好ましく、−0.8V以上であることがより好ましい。この還元電位が、−1.0V未満であると、アクセプター性が低いため、ゴーストの発生を抑制する効果が小さくなる傾向にある。
【0100】
上記の有機電子アクセプターは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
上記一般式(I)におけるZがC(CN)2である化合物は、フルオレノン化合物若しくはアントラキノン化合物とマロノニトリルとを、ピリジン中で還流して反応させる、或いは、塩化メチレンなどの溶剤中、四塩化チタンなどのルイス酸触媒存在下で還流することにより得ることができる。また、ZがC(COORk1)2である上記一般式(I)で表される化合物は、フルオレノン化合物若しくはアントラキノン化合物とマロン酸エステルとを、ピリジン中で還流して反応させる、或いは、塩化メチレンなどの溶剤中、四塩化チタンなどのルイス酸触媒存在下で還流することにより得ることができる。また、ZがN−CNである上記一般式(I)で表されるシアンイミノ化合物は、フルオレノン化合物若しくはアントラキノン化合物とN,N’−ビス(トリメチルシリル)カルボジイミドとを、塩化メチレンなどの溶剤中、四塩化チタンなどのルイス酸触媒の存在下で還流することにより得ることができる。
【0102】
また、上記の有機電子アクセプターは、公知のものであれば特に制限されることなく用いることができる。
【0103】
所定の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンなどのケトン類の他に、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0104】
上記フタロシアニン顔料、上記有機電子アクセプター及び上記所定の溶剤を含む混合物の湿式粉砕処理は、外径0.1〜3.0mmの球形状メディアを使用した粉砕装置を用いて行われることが好ましく、外径0.2〜2.5mmの球形状メディアを用いて行われることがより好ましい。メディアの外形が3.0mmより大きい場合、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成し易い傾向にある。また、メディアの外径が0.1mmより小さい場合、メディアと複合体とを分離し難くなる傾向にある。更に、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等、他の形状の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となり複合体におけるフタロシアニン顔料の特性を劣化させ易くなる傾向がある。
【0105】
上記メディアの材質は特に制限されないが、複合体中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー等が好ましい。
【0106】
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。
【0107】
また、上記湿式粉砕処理を行う容器の材質についても特に制限されないが、複合体中に混入した場合にも画質欠陥を発生し難いものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等が好ましい。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイド等をライニングしたものであっても良い。
【0108】
上記湿式粉砕処理に供される混合物における有機電子アクセプターの含有量は、フタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.5重量部であり、好ましくは0.001〜0.3重量部である。有機電子アクセプターの含有量が0.001重量部より少ない場合、アクセプター添加効果が小さすぎてしまい、0.5重量部より多い場合は分散性の低下や帯電性、感度、暗減衰特性の低下などの不具合を生じる傾向がある。
【0109】
また、溶剤の含有量は、フタロシアニン顔料1質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
【0110】
湿式粉砕処理の温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは5〜80℃であり、特に好ましくは10〜50℃である。温度が低い場合には、結晶転移の速度が遅くなる傾向にあり、また、温度が高すぎる場合には、フタロシアニン顔料の溶解性が高くなり結晶成長しやすく複合体の微粒化が困難となる傾向にある。
【0111】
湿式粉砕処理過程におけるフタロシアニン顔料の微粒化及び結晶変換の進行速度は、上記温度条件以外にも、湿式粉砕のスケール、攪拌スピード、メディア材質などによって大きく影響されるが、本発明の複合体を製造する場合、以下に述べるような方法により湿式粉砕時間を決定することが好ましい。
【0112】
湿式粉砕時間を決定する第一の方法として、フタロシアニン顔料の波長域700〜900nmでの分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長を湿式粉砕の時間ごとにプロットした曲線の極小点の時間をTaとしたときに、0.7Ta〜1.3Taの範囲内、好ましくは0.8Ta〜1.2Taの範囲内、さらに好ましくは0.9Ta〜1.1Taの範囲内から選んだ時間を湿式粉砕時間とする方法が挙げられる。
【0113】
なお、上記Taは、湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料の700〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおけるλMAXを、所定の粉砕時間ごとに測定し、測定されたλMAXの値を粉砕時間に対してプロットした点の集合を曲線と見なし、この曲線が有する極小点に対応する時間をTaとすることで、求めることができる。このとき、上記λMAXの測定は、好ましくは1〜50時間ごと、より好ましくは2〜40時間ごとに行うのがよい。
【0114】
湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料のλMAXは、例えば、湿式粉砕処理装置から顔料溶液を少量サンプリングし、これをアセトン、酢酸エチルなどの溶剤で希釈してから、分光光度計を用いて液セル法により容易に測定することができる。
【0115】
湿式粉砕時間を決定する第二の方法として、フタロシアニン顔料のBET比表面積を湿式粉砕の時間ごとにプロットした曲線の極大点の時間をTbとしたときに、0.7Tb〜1.3Tbの範囲内、好ましくは0.8Tb〜1.2Tbの範囲内、さらに好ましくは0.9Tb〜1.1Tbの範囲内から選んだ時間を湿式粉砕時間とする方法が挙げられる。
【0116】
なお、上記Tbは、湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料のBET比表面積を所定の粉砕時間ごとに測定し、測定されたBET比表面積の値を粉砕時間に対してプロットした点の集合を曲線と見なし、この曲線が有する極大点に対応する時間をTbとすることで、求めることができる。このとき、上記BET比表面積の測定は、好ましくは1〜50時間ごと、より好ましくは2〜40時間ごとに行うのがよい。
【0117】
湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料のBET比表面積を測定する方法としては、例えば、湿式粉砕処理装置から顔料溶液を少量サンプリングし、フタロシアニン顔料をろ別して洗浄した後、さらに乾燥して粉末状にしてから、BET比表面積測定装置を用いて測定する方法を好適に採用できる。より具体的には、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)により求めることができる。
【0118】
湿式粉砕時間を決定する第三の方法として、上記と同様のTa及びTbを用いて下記式(eq−1)で算出される時間をTcとしたときに、0.7Tc〜1.3Tc、好ましくは0.8Tc〜1.2Tc、さらに好ましくは0.9Tc〜1.1Tcの範囲内から選んだ時間を湿式粉砕時間とする方法が挙げられる。
Tc=(Ta+Tb)/2 ・・・(eq−1)
【0119】
上記のように、λMAXやBET比表面積の経時変化に基づいて湿式粉砕処理時間を決定する場合、実施しようとする湿式粉砕と同様の湿式粉砕条件で、湿式粉砕時間と、λMAXやBET比表面積との関係について測定し、これを基に湿式粉砕時間を予め決定しておくことが好ましい。粉砕過程にある顔料液をサンプリングしてから最大吸収極大波長やBET比表面積を測定するまでには、やや長い時間を要する場合があり、その場合、測定値を得るまでの間に湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料がさらに経時変化してしまう可能性があるが、予め湿式粉砕時間を決定しておけば、最適な時間で湿式粉砕を行うことが容易になるからである。
【0120】
さらに、湿式粉砕時間は、得られる複合体の平均粒径が0.1μm以下となる時間の範囲内とすることが、複合体の分散性を良好にし、画質欠陥をさらに減少させられる点で好ましい。
【0121】
複合体の平均粒径の調整は、湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料の平均粒径を確認することにより行うことができる。湿式粉砕過程にあるフタロシアニン顔料の平均粒径は、湿式粉砕中の顔料液からフタロシアニン顔料を少量サンプリングし、レーザ回折散乱式や遠心沈降式などの粒度分布計を用いて測定できる。
【0122】
以上のようにして決定される湿式粉砕時間は、通常5〜500時間の範囲、好ましくは7〜300時間の範囲である。湿式粉砕時間が5時間未満であると、結晶変換が完結せず、電子写真特性の低下、特に感度不足の問題が生じやすくなる傾向にある。また、湿式粉砕時間が500時間を超えると、粉砕ストレスの影響により感度低下、生産性低下、メディアの摩滅粉の混入などの問題が生じやすくなる傾向にある。湿式粉砕時間をこのように決定することにより、複合体の粒子が均一に微粒子化した状態で湿式粉砕処理を完了することが可能となり、さらに、複数ロットの繰り返し湿式粉砕を実施した場合における、ロット間の品質ばらつきを抑制することが可能となる。
【0123】
本発明の複合体は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.10μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましい。また、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、55m2/g以上であることが特に好ましい。
【0124】
平均粒径が0.10μmより大きい場合、又は比表面積値が45m2/g未満である場合は、複合体粒子が粗大化しているか、又は複合体粒子の凝集体が形成されており、電子写真感光体の材料として用いた場合の分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それによりかぶりなどの画質欠陥を生じやすい傾向にある。
【0125】
以上説明した複合体の製造方法により得られた本発明の複合体は、顔料、染料、電子写真感光体、光ディスク、太陽電池、センサー、脱臭剤、抗菌剤、非線形光学材料などの種々の用途に利用することができる。中でも、本発明の複合体を電子写真感光体の電荷発生材料として用いた場合には、感光体の帯電性、光感度、残留電位、暗減衰などに優れた光電特性を得ることができる点、および感光層に含まれる結着樹脂中への分散性に優れているので画質特性に優れる点で特に有効である。
【0126】
次に、電子写真感光体100の各構成要素について詳述する。
【0127】
導電性支持体3としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属製のもの;ポリマー製シート、紙、プラスチック、ガラス等の基体上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着することで導電処理したもの;酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を上記基体上に蒸着することで導電処理したもの;金属箔を上記基体上にラミネートすることで導電処理したもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、上記基体上に塗布することで導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性支持体3の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
【0128】
導電性支持体3として金属パイプ基材を用いる場合、その表面は素管のままであってもよいが、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウェットホーニング、着色処理などの表面処理により基材表面を粗面化しておくことが好ましい。このように、基材表面を粗面化することにより、レーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に発生し得る感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0129】
電荷発生層1aは、上記の複合体及び結着樹脂を含有するものである。
【0130】
結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエステルカーボネート、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル単独重合体又は共重合体、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの部分架橋硬化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
また、電荷発生層1aにおける複合体と結着樹脂との配合比(質量比)は、好ましくは40:1〜1:4であり、より好ましくは20:1〜1:2である。複合体の配合量が、結着樹脂の配合量の40倍を超えると、電子写真感光体の製造工程において使用される分散液中の複合体の分散性が不十分となる傾向にあり、他方、結着樹脂の配合量の1/4未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
【0132】
さらに、電荷発生層1aは、上述の複合体以外の他の電荷発生材料を含有していてもよい。ここで、電荷発生層1aに含有される他の電荷発生材料としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、縮環芳香族系顔料等が挙げられる。本実施形態においては、電荷発生層1aが金属含有又は無金属のフタロシアニンをさらに含有することが好ましく、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料又はオキシチタニルフタロシアニン顔料をさらに含有することがより好ましい。また、これらの他の電荷発生材料の含有割合は、電荷発生層中に含まれる物質全量を基準として50質量%以下であることが好ましい。
【0133】
なお、電荷発生層1a上に電荷輸送層2などの他の層をさらに成膜する場合には、その塗工液に使用される溶剤によって電荷発生層1aが溶解あるいは膨潤することのないように、電荷発生層1aの結着樹脂と、電荷発生層1aの上に塗布される塗布液の溶剤との組み合わせを適宜選択することが好ましい。また、電荷発生層1aの結着樹脂と後述する電荷輸送層2の結着樹脂とは、互いの屈折率同士が近いものを組み合わせて使用することが好ましく、具体的には、互いの屈折率の差が1以下であることが好ましい。このように屈折率の近い結着樹脂を組み合わせて用いると、電荷発生層1aと電荷輸送層2との界面での光の反射が抑制され、干渉縞防止効果が向上する傾向にある。
【0134】
電荷発生層1aは、複合体及び結着樹脂を所定の溶剤に加え、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いて混合、分散させることにより得られる塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等により塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0135】
電荷発生層1aの塗工液に用いる溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0136】
このようにして得られる電荷発生層1aの膜厚は、良好な電気特性と画質とを得る観点から、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層1aの膜厚が0.05μm未満であると、感度が低下する傾向にあり、膜厚が5μmを超えると、帯電特性の不良などの弊害が生じやすくなる傾向がある。
【0137】
電荷輸送層2は電荷輸送材料と結着樹脂とを含有するものである。電荷輸送層2に使用される電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。更に、電荷輸送材料としては、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も使用することができる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0138】
電荷輸送層2に使用される結着樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用することができるが、電気絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂を用いることが好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が、電荷輸送材料との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0139】
また、結着樹脂と電荷輸送材料との配合比(質量比)は、電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。
【0140】
更に、電荷輸送層2の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。
【0141】
電荷輸送層2は、上記の電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶媒に混合/分散した塗布液を、電荷発生層1a上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0142】
電荷輸送層2の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0143】
電荷輸送層2の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0144】
図1(b)は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す模式断面図である。図1(b)に示す電子写真感光体110は、導電性支持体3と感光層6aとの間に中間層4を備えること以外は図1(a)に示した電子写真感光体100と同様の構造を有するものである。
【0145】
中間層4は、感光層6aの帯電時において、導電性支持体3から感光層6aへの電荷の注入を防止する機能を有する。また、中間層4は、感光層6aを導電性支持体3に対して一体的に接着保持させる接着層としても機能する。更に、この中間層4は、導電性支持体3の光反射を防止する機能を有する。
【0146】
また、中間層4は、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上、耐リーク性向上などの目的で設けてもよい。このような目的で設けられる中間層の構成材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子等を含有する有機金属化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独に或いは複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。中でも、ジルコニウム又はシリコン原子を含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また、繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れているので好ましい。
【0147】
シリコンを含有する有機金属化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤を用いることが特に好ましい。
【0148】
ジルコニウムを含有する有機金属化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0149】
チタニウムを含有する有機金属化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0150】
アルミニウムを含有する有機金属化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0151】
これらの中間層を形成する場合には、所望の特性が得られる範囲で任意の膜厚を設定できる。しかし、これらの中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たしているので、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす可能性がある。したがって、上述した材料を用いた中間層を形成する場合には、膜厚を0.1〜5μmの範囲に設定することが好ましい。
【0152】
また、リーク耐性獲得の目的で中間層を設ける場合には、中間層は適切な抵抗を有していることが好ましい。そのためには中間層に無機微粒子を含有させ、抵抗を制御することが好ましい。この無機微粒子としては、金属酸化物微粒子が好ましい。リーク防止性獲得のための中間層は、金属酸化物微粒子及び結着樹脂を含んで構成することができる。また、金属酸化物微粒子及び結着樹脂の種類、並びに、その配合量を適宜選定し、さらには金属酸化物微粒子の結着樹脂中への分散性を高めること、およびその分散液(塗布液)中の含水量を低く制御することによって、中間層の体積抵抗が所定の条件を満たすように制御することができる。かかる金属酸化物微粒子の好ましい例としては、具体的には、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0153】
これらの金属酸化物微粒子の粉体抵抗値は102〜1011Ω・cmであることが好ましく、104〜1010Ω・cmであることがより好ましい。金属酸化物微粒子の粉体抵抗値が102Ω・cm未満であると十分なリーク防止性が得られない傾向にあり、他方、この粉体抵抗値が1011Ω・cmを超えると電子写真プロセスおいて残留電位の上昇が起こりやすくなる傾向にある。
【0154】
これらの金属酸化物微粒子は従来の製造方法によって得ることができる。例えば酸化亜鉛の場合は、JIS K1410に記載されている間接法(フランス法)、直接法(アメリカ法)、湿式法等;酸化チタンは、硫酸法、塩素法、フッ酸法、塩化チタンカリウム法、四塩化チタン水溶液法、アークプラズマ法により金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0155】
間接法は、例えば、金属亜鉛を加熱し(通常1000℃程度)、亜鉛蒸気を熱空気によって酸化させて酸化亜鉛とし、冷却後に粒子の大きさによって分別するものである。また、直説法は、例えば、亜鉛鉱石を培焼することによって得られる酸化亜鉛を石炭等で還元し、生じた亜鉛蒸気を熱空気によって酸化させるか、又は亜鉛鉱石を硫酸で浸出して得られる鉱滓にコークス等を加え、その混合物を加熱して溶融した亜鉛を熱空気によって酸化させるものである。
【0156】
硫酸法は、例えば、鉱石と硫酸との反応による硫酸塩溶液の調製、溶液の清澄、加水分解による含水酸化チタンの沈殿、洗浄、焼成、粉砕、表面処理といった工程により酸化チタン微粒子を得るものである。また、塩素法は、例えば、鉱石の塩素化により四塩化チタン溶液を調製し、精留、燃焼により得られる酸化チタンを粉砕、後処理するものである。
【0157】
アークプラズマ法としては、直流アークプラズマ法、プラズマジェット法、高周波プラズマ法等が挙げられる。例えば、直流アークプラズマ法においては、金属原料を消費アノード電極とし、カソード電極からプラズマフレームを発生させて金属原料を加熱し蒸発させて、金属蒸気を酸化させ、冷却することによって金属酸化物微粒子が得られる。プラズマフレームを発生させるに際し、アーク放電はアルゴン等の単原子分子ガスや水素、窒素、酸素等の2原子分子ガス中で行われるが、2原子分子の熱解離により生じるプラズマは単原子分子ガス由来のプラズマ(アルゴンプラズマ等)に比べて反応性に富んでいるので、反応性アークプラズマと呼ばれる。また、これらの金属酸化物粒子は種類、径などが異なる2種以上を混合して使用することもできる。
【0158】
さらに、本実施形態では金属酸化物微粒子へカップリング剤による表面処理を行うこともできる。カップリング剤としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。具体的なカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して使用することもできる。
【0159】
表面処理方法は公知の方法を使用することが可能であり、例えば、乾式法又は湿式法等を用いることができる。乾式法により表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接、又は、有機溶媒若しくは水に溶解させたカップリング剤を添加する、又は、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に表面処理することができる。カップリング剤の添加又は噴霧は、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。乾式法においては、金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に加熱乾燥して表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を処理前に除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。金属酸化物微粒子の加熱乾燥は、せん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら行うことも可能である。
【0160】
湿式法により表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子を溶剤中で攪拌、又は、超音波、サンドミル、アトライター若しくはボールミル等を用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌又は分散した後、溶剤を除去することで均一に表面処理することができる。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においても、金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を除去する方法としては、乾式法と同様に加熱乾燥による方法の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が挙げられる。
【0161】
金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量に適宜設定すればよい。
【0162】
また、金属酸化物微粒子を表面処理する際、金属酸化物微粒子の表面積が表面処理後の電子写真特性に大きく影響する。そのため、金属酸化物微粒子は、比表面積が10m2/g以上のものが好ましく用いられる。比表面積値が10m2/g以下のものは帯電特性低下を招きやすく、良好な電子写真特性が得られにくい傾向にある。
【0163】
リーク防止性獲得のための中間層を形成するための結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。これらのうち、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂を用いることが好ましく、特に、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることが好ましい。
【0164】
中間層中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との含有割合は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0165】
中間層は、上記の金属酸化物微粒子と結着樹脂との混合物からなるものであってもよく、また、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のための添加物を更に含有してもよい。かかる添加物としては、クロラニルキノン、ブロモアニルキノン、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物等が挙げられる。
【0166】
シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、中間層の添加剤として用いることもできる。
【0167】
このような用途で用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0168】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0169】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0170】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0171】
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0172】
上記の中間層4は、例えば、金属酸化物微粒子と、結着樹脂と、必要に応じて添加剤とを所定の溶媒に混合/分散して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体3上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0173】
溶媒としては、結着樹脂を溶かすことができるものであれば特に限定されず、公知の有機溶剤を用いることができ、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系の溶媒が挙げられる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0174】
かかる塗布液を調製する際の混合/分散方法(金属酸化物微粒子を分散させる方法)としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法が挙げられる。
【0175】
また、塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。また、塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを添加することもできる。
【0176】
また、中間層は、ビッカース強度が35以上とされていることが好ましい。さらに、中間層の厚さは、15μm以上が好ましく、20μm以上50μm以下とされていることがより好ましい。さらに、中間層の表面粗さは、モアレ像防止のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)〜λに調整されることが好ましい。この表面粗さ調整は、中間層中に樹脂粒子を添加することで行ってもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整は、中間層を研磨することによって行うこともできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0177】
上述のように、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることによって、支持体から感光層での電荷の注入を防ぎ、黒点・白点などの画質欠陥を防止し、支持体と感光層の密着性を向上させて耐久性を改善することが可能となり、中間層に上記無機微粒子を含有することで、環境特性・繰返し特性の安定化や干渉縞の防止を図ることができる。
【0178】
図1(c)は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す模式断面図である。図1(c)に示す電子写真感光体120は、感光層6a上に保護層5を備えること以外は図1(a)に示した電子写真感光体100と同様の構成を有するものである。
【0179】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6aの機械的強度をさらに改善したりするために設けられる。この保護層5は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させた塗布液を感光層6a上に塗布することにより形成される。
【0180】
保護層5に含まれる導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したもの等が挙げられる。
【0181】
保護層5に含まれる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0182】
また、保護層5を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、この塗布液が塗布される感光層6aを溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0183】
保護層5を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。
【0184】
保護層5の膜厚は、1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
【0185】
本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図2(a)に示す電子写真感光体130(本発明の電子写真感光体の第四実施形態)のように、導電性支持体3と感光層6aとの間に中間層4を備え、更に感光層6a上に保護層5を備えるものであってもよい。
【0186】
また、上記の実施形態の電子写真感光体100、110、及び120においては、感光層6aが積層構造を有している場合について説明したが、例えば、図2(b)に示す電子写真感光体140(本発明の電子写真感光体の第五実施形態のように、感光層6aが単層構造を有するものであってもよい。なお、この場合にも、導電性支持体3と感光層6aとの間に中間層4を備えていてもよく、感光層6a上に保護層5を備えていてもよく、中間層4及び保護層5の両方を備えていてもよい。
【0187】
次に、本発明の電子写真感光体の別の実施形態について更に説明する。
【0188】
図3(a)は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す模式断面図である。図3(a)に示す電子写真感光体150は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層1b)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層2)とに機能が分離された積層型感光層6を備えるものであり、導電性支持体3上に電荷発生層1b、電荷輸送層2が順次積層された構造を有している。そして、電荷発生層1bにはフタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有する複合体が含有される。
【0189】
先ず、本実施形態の電子写真感光体100の電荷発生層1bについて説明する。
【0190】
電荷発生層1bは、先に述べた複合体を用いて形成することができるが、以下の方法によっても形成できる。
【0191】
先ず、所定の結晶変換がなされたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、上記有機電子アクセプター及び結着樹脂を所定の溶剤に加え、これをサンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いて混合、分散させることにより塗工液を得る。次いで、この塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等により塗布し、乾燥することによって電荷発生層を形成する。
【0192】
所定の結晶変換がなされたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が挙げられる。
【0193】
かかるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより、感光体の帯電特性、光感度、残留電位、暗減衰などに優れた光電特性、及び、優れた画質特性を得ることがより確実にできる。この理由としては、以下のことが考えられる。すなわち、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより結晶変換工程を更に設ける必要がなくなる。そのため、上述の塗工液を得るための混合、分散工程によって有機電子アクセプターとの複合化がなされた後、有機電子アクセプターがフタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍から脱離することを十分に防止できる。これにより、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有する複合体がより確実に形成可能となるものと考えられる。更に、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、有機電子アクセプター存在下においても粗大粒子や凝集体が形成され難いので、上記の複合体が電荷発生層中に良好に分散されると考えられる。これらの結果、上記の効果が得られたものと推察される。
【0194】
また、本実施形態においては、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることがさらに好ましい。かかるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより、十分な感度、帯電特性及び暗減衰特性、並びに、安定した画像品質をより長期間にわたって得ることがさらに容易にできる。この理由としては、以下のことが考えられる。すなわち、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより結晶変換工程を更に設ける必要がなくなる。そのため、上述の塗工液を得るための混合、分散工程によって有機電子アクセプターとの複合化がなされた後、有機電子アクセプターがフタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍から脱離することを十分に防止できる。これにより、フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に有機電子アクセプターを含有する領域を有する複合体がより確実に形成可能となるものと考えられる。更に、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、有機電子アクセプター存在下においても粗大粒子や凝集体が形成され難いので、上記の複合体が電荷発生層中に良好に分散されると考えられる。これらの結果、上記の効果が得られたものと推察される。
【0195】
また、本実施形態で使用されるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、体積平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、体積平均粒径が0.10μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましい。一方、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、55m2/g以上であることが特に好ましい。
【0196】
顔料の体積平均粒径が0.10μmより大きい場合、又は比表面積値が45m2/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成されており、電子写真感光体の材料として用いた場合の分散性や、光感度、帯電特性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それによりかぶりなどの画質欠陥を生じやすい傾向にある。すなわち、上記の微細化した顔料と有機電子アクセプターとを結着樹脂中に分散保持させた場合、感度、帯電特性及び暗減衰特性のばらつきをより低減できるとともに、かぶりやゴースト等の画質欠陥の発生をより確実に防止し、より長期間にわたって安定した画像品質を得ることが可能となる。
【0197】
電荷発生層1aを形成するための塗工液における有機電子アクセプターの含有量は、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.2質量部であることが好ましく、0.005〜0.15質量部であることがより好ましい。有機電子アクセプターの含有量が0.001質量部より少ない場合、ゴースト等の画質欠陥を生じやすくなる傾向にあり、他方、0.2質量部を越える場合、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分散性が低下してかぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じたり、帯電特性、光感度、暗減衰特性が低下したりする等の不具合が生じる傾向にある。
【0198】
次に、電子写真感光体150の各構成要素について説明する。
【0199】
導電性支持体3及び電荷輸送層2は、それぞれ、先に述べた本発明の第一実施形態の電子写真感光体100の導電性支持体3及び電荷輸送層2と同様のものとすることができる。
【0200】
電荷発生層1bは、上述したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体と、結着樹脂とを含有するものである。
【0201】
結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエステルカーボネート、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル単独重合体又は共重合体、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの部分架橋硬化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0202】
電荷発生層1bにおける複合体と結着樹脂との配合比(質量比)は、好ましくは40:1〜1:4であり、より好ましくは20:1〜1:2である。複合体の配合量が、結着樹脂の配合量の40倍を超えると、電子写真感光体の製造工程において使用される分散液中の複合体の分散性が不十分となる傾向にあり、他方、結着樹脂の配合量の1/4未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
【0203】
さらに、電荷発生層1bは、上述の複合体以外の他の電荷発生材料を含有していてもよい。ここで、電荷発生層1bに含有される他の電荷発生材料としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、縮環芳香族系顔料等が挙げられる。本実施形態においては、金属含有又は無金属のフタロシアニンを含有することが好ましく、特には、上述のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料以外のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料又はオキシチタニルフタロシアニン顔料を含有することが好ましい。また、これらの他の電荷発生材料の含有割合は、電荷発生層中に含まれる物質全量を基準として50質量%以下であることが好ましい。
【0204】
なお、電荷発生層1b上に電荷輸送層2などの他の層をさらに成膜する場合には、その塗工液に使用される溶剤によって電荷発生層1bが溶解あるいは膨潤することのないように、電荷発生層1bの結着樹脂と、電荷発生層1bの上に塗布される塗工液の溶剤との組み合わせを適宜選択することが好ましい。また、電荷発生層1bの結着樹脂と電荷輸送層2の結着樹脂とは、互いの屈折率同士が近いものを組み合わせて使用することが好ましく、具体的には、互いの屈折率の差が1以下であることが好ましい。このように屈折率の近い結着樹脂を組み合わせて用いると、電荷発生層1bと電荷輸送層2との界面での光の反射が抑制され、干渉縞防止効果が向上する傾向にある。
【0205】
電荷発生層1bは、上述したように、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、有機電子アクセプター及び結着樹脂を所定の溶剤に加え、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いて混合、分散させることにより得られる塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等により塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0206】
電荷発生層1bの塗工液に用いる溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0207】
このようにして得られる電荷発生層1bの膜厚は、良好な電気特性と画質とを得る観点から、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層1bの膜厚が0.05μm未満であると、感度が低下する傾向にあり、膜厚が5μmを超えると、帯電特性の不良などの弊害が生じやすくなる傾向がある。
【0208】
図3(b)は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す模式断面図である。図1(b)に示す電子写真感光体160は、導電性支持体3と感光層6bとの間に中間層4を備えること以外は図3(a)に示した電子写真感光体150と同様の構造を有するものである。
【0209】
中間層4は、感光層6bの帯電時において、導電性支持体3から感光層6bへの電荷の注入を防止する機能を有する。また、中間層4は、感光層6bを導電性支持体3に対して一体的に接着保持させる接着層としても機能する。更に、この中間層4は、導電性支持体3の光反射を防止する機能を有する。
【0210】
なお、中間層4は、先に述べた本発明の第二実施形態の電子写真感光体110の中間層4と同様のものとすることができる。
【0211】
図3(c)は、本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す模式断面図である。図3(c)に示す電子写真感光体170は、感光層6b上に保護層5を備えること以外は図3(a)に示した電子写真感光体150と同様の構成を有するものである。
【0212】
保護層5は、電子写真感光体170の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6bの機械的強度をさらに改善したりするために設けられる。この保護層5は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させた塗布液を感光層6b上に塗布することにより形成される。
【0213】
なお、保護層5は、先に述べた本発明の第三実施形態の電子写真感光体120の保護層5と同様のものとすることができる。
【0214】
また、本発明の複合体を含有する電荷発生層を備える本発明の電子写真感光体は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示す電子写真感光体180(本発明の電子写真感光体の第九実施形態)のように、導電性支持体3と感光層6bとの間に中間層4を備え、更に感光層6b上に保護層5を備えるものであってもよい。
【0215】
また、上記の実施形態の電子写真感光体150、160、及び170においては、感光層6bが積層構造を有している場合について説明したが、例えば、図4(b)に示す電子写真感光体190(本発明の電子写真感光体の第十実施形態のように、感光層6bが単層構造を有するものであってもよい。なお、この場合にも、導電性支持体3と感光層6bとの間に中間層4を備えていてもよく、感光層6a上に保護層5を備えていてもよく、中間層4及び保護層5の両方を備えていてもよい。
【0216】
次に、本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0217】
(電子写真装置)
図5及び図6は、それぞれ本発明の電子写真装置の好適な一実施施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【0218】
図5に示す電子写真装置200は、本発明の電子写真感光体7と、電子写感光体7をコロナ放電方式により帯電させる帯電手段8と、帯電手段8に接続された電源9と、帯電手段8により帯電される電子写真感光体7を露光して静電潜像を形成する露光手段10と、露光手段10により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段11と、現像手段11により形成されたトナー像を被転写体20に転写する転写手段12と、クリーニング手段13と、除電器14と、定着装置15とを備える。
【0219】
また、図6に示す電子写真装置210は、本発明の電子写真感光体7を接触方式により帯電させる帯電手段8を備えていること以外は、図5に示した電子写真装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電手段を採用する電子写真装置においては、優れた耐摩耗性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器14が設けられていないものもある。
【0220】
ここで、帯電手段8としては、例えば、ローラー状、ブラシ状、フィルム状又はピン電極状の導電性又は半導電性の帯電部材を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器などが用いられる。
【0221】
露光手段10としては、電子写真感光体7の表面に、半導体レーザ、LED(light emitting diode)、液晶シャッターなどの光源を所望の像様に露光できる光学系装置などが用いられる。
【0222】
現像手段11としては、一成分系、二成分系などの正規または反転現像剤を用いた従来公知の現像手段などが用いられる。
【0223】
転写手段12としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器などが用いられる。
【0224】
なお、図5及び6には示していないが、本発明の電子写真装置は中間転写手段を備えるものであってもよい。本発明にかかる中間転写手段としては、導電性支持体上にゴム、エラストマー、樹脂などを含む弾性層と少なくとも1層の被服層とが積層された構造を有するものを使用することができ、その材料としては使用される材料は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素樹脂等の樹脂に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたもの等が挙げられる。また、中間転写手段の形状としては、ローラー状、ベルト状などが挙げられる。
【0225】
(プロセスカートリッジ)
図7は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、本発明の電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング手段13、露光のための開口部18、及び除電器14を、取り付けレール16を用いて組み合わせて一体化したものである。そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
【0226】
以上説明した本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジにおいては、本発明の電子写真感光体を備えているため、画質欠陥を生じることなく長期間にわたって安定した画像品質を得ることできる。
【実施例】
【0227】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0228】
<I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成>
(合成例1)
1,3−ジイミノイソインドリン30質量部及び三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28質量部を得た。
【0229】
次に、得られたI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶10質量部を60℃に加熱した硫酸(濃度97%)300部に十分に溶解させた溶液を、25%アンモニア水600質量部とイオン交換水200質量部との混合溶液中に滴下してヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を析出させた。この結晶を濾過により採取し、イオン交換水で洗浄した後、乾燥してI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン8質量部を得た。
【0230】
このようにして得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンについて、X線回折スペクトルの測定を行った。その結果を図8に示す。なお、本実施例におけるX線回折スペクトルの測定は、粉末法によりCuKα特性X線を用いて、以下の条件で行った。
使用測定器:理学電機社製X線回折装置Miniflex
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
ステップ角度(2θ):0.02deg.
【0231】
<ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成>
(合成例2)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部、及び外径0.9mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で150時間湿式粉砕処理した。
【0232】
次いで、得られた結晶をアセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。なお、湿式粉砕処理において結晶変換の進行度合いをモニターしたときの、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長(λMAX)は823nm、であった。BET式の比表面積測定器(フローソープII2300、島津製作所社製)を用いて測定したBET比表面積は60m2/gで、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)により測定した体積平均粒径は0.06μmであった。
【0233】
(合成例3)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部とともに、撹拌装置を有するガラス製撹拌槽を使用して25℃で48時間撹拌して湿式処理を行った後、アセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを図10に示す。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は35.9m2/gで、体積平均粒径は1.15μmであった。
【0234】
(合成例4)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド30質量部及び直径1mmのガラスビーズ60質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で24時間湿式粉砕処理した。次いで、得られた結晶をメタノールで洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4.4質量部を得た。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は42.4m2/gで、体積平均粒径は0.37μmであった。
【0235】
(合成例5)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部及び外径5.0mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で150時間湿式粉砕処理した。次いで、得られた結晶をアセトンで洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は39.8m2/gで、体積平均粒径は0.59μmであった。
【0236】
<チタニルフタロシアニン顔料の合成>
(合成例6)
1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、及びチタニウムテトラブトキシド1.7質量部を1−クロルナフタレン20質量部中に入れ、190℃において5時間反応させた後、生成物を濾過し、アンモニア水、水、アセトンで洗浄し、チタニルフタロシアニン粗結晶4.0質量部を得た。得られたチタニルフタロシアニン粗結晶2.0質量部を97%硫酸100質量部に5℃で溶解した後、氷水1300質量部中に注ぎ、チタニルフタロシアニンの析出物を濾過し、希アンモニア水と水で洗浄した後、乾燥して、1.6質量部の非晶質チタニルフタロシアニン結晶を得た。さらに、この非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部を、水10質量部とモノクロルベンゼン1質量部との混合溶媒中で、50℃において1時間攪拌した後、濾過し、メタノールと水で洗浄して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の27.1°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料0.9質量部を得た。合成例2と同様にして測定したBET比表面積は40.5m2/gで、体積平均粒径は0.23μmであった。
【0237】
(実施例1)
[電子写真感光体シートの作製]
酸化亜鉛(平均粒子径70nm、テイカ社製試作品、比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名「KBR603」、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。得られた表面処理酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部、及びブチラール樹脂(商品名「BM−1」、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散し分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(商品名「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)3.4質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの中間層を得た。
【0238】
次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液と、合成例2で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部及び下記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散し、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0239】
【化26】
【0240】
次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4質量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6質量部、テトラヒドロフラン80質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体シートを作製した。
【0241】
[電子写真感光体ドラムの作製]
30mmφ×404mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(商品名「アルミナビーズCB−A30S」(平均粒径D50=30μm)、昭和タイタニウム社製)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性基体として準備した。次に、この導電性基体上に、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順で、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体ドラムを作製した。
【0242】
(実施例2)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの添加量を0.01質量部から0.005質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0243】
(実施例3)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの添加量を0.01質量部から0.1質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0244】
(実施例4)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの添加量を0.01質量部から0.15質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0245】
(実施例5)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(8)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0246】
【化27】
【0247】
(実施例6)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(14)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0248】
【化28】
【0249】
(実施例7)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(10)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0250】
【化29】
【0251】
(実施例8)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(11)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0252】
【化30】
【0253】
(比較例1)
合成例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0254】
(比較例2)
合成例6で得られたチタニルフタロシアニン顔料1質量部、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部、及び、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液を混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0255】
(比較例3)
合成例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0256】
(比較例4)
合成例5で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0257】
(比較例5)
合成例6で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部と、上記一般式(11)で示される有機電子アクセプター0.01質量部、及び、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0258】
<電子写真感光体の電子写真特性評価試験>
実施例1〜8、及び比較例1〜5の電子写真感光体シートの電子写真特性を評価するために、以下の手順で電子写真特性の測定を行った。
(1)使用初期の特性評価
先ず、20mmφの小面積マスクを使用し、20℃、50%RHの環境下において、静電複写紙試験装置(EPA8200、川口電機社製)を用いて−5.0kVのコロナ放電により感光体を負帯電させた。次いで、干渉フィルターを用いて780nmに分光したハロゲンランプ光を感光体表面上において5.0μW/cm2となるように調整して照射した。このときの初期表面電位V0[V]、表面電位がV0の1/2になるまでの半減露光量E1/2[μJ/cm2]、及び暗減衰率(DDR)[%](表面電位V0から1秒後の表面電位をV1としたときに、{(V0−V1)/V0}×100)をそれぞれ測定した。
(2)繰り返し特性の評価
上記帯電、露光及び除電の操作を1万回繰り返し、そのときの表面電位V0[V]、表面電位がV0の1/2になるまでの半減露光量E1/2[μJ/cm2]および暗減衰率DDR[%]をそれぞれ測定した。
(3)画質評価試験
実施例1〜8、及び比較例1〜5の電子写真感光体ドラムを、タンデム方式のフルカラー・レーザープリンター(DocuCentre Color400)、富士ゼロックス社製)に装着して画像品質を評価し、かぶりやゴースト等の画質欠陥がないかどうかを確認した。なお、上記のフルカラー・レーザープリンターにおいては、帯電装置としてローラー帯電器(BCR)、露光装置として780nmの半導体レーザを使用したROS、現像方式として2成分系反転現像方式、転写装置としてローラー帯電器(BTR)、転写装置としてベルト中間転写方式を採用した。
(4)電荷発生材料の分散性評価
実施例1〜8、及び比較例1、3〜5で用いたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、並びに、比較例2で用いたチタニルフタロシアニン顔料の分散性の評価を行うために、ガラスプレート上に実施例1〜8、及び比較例1〜5における電荷発生層形成用塗布液をそれぞれ用いて電荷発生層を形成し、顕微鏡を用いてその分散状態を観察した。
【0259】
上記の(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。なお、表1中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察された、或いは塗膜表面がざらついていたことを意味する。
【0260】
【表1】
【0261】
<フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体の合成>
(合成例7)
合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部及び外径0.9mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で150時間湿式粉砕処理した。次いで、得られた結晶をアセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°及び28.3°に回折ピークを有する複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルを図9に示す。また、BET式の比表面積測定器(フローソープII2300、島津製作所社製)を用いて測定したBET比表面積、及び、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)により測定した体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。また、上記の合成例3〜5のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及び合成例6のチタニルフタロシアニン顔料のBET比表面積及び体積平均粒径も表2にまとめる。
【0262】
【表2】
【0263】
(合成例8)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.001質量部に代えたこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0264】
(合成例9)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.1質量部に代えたこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0265】
(合成例10)
上記一般式(1)で示される有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.4質量部に代えたこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0266】
(合成例11)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、上記一般式(8)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0267】
(合成例12)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、下記一般式(9)で示される有機電子化合物0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0268】
【化31】
【0269】
(合成例13)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、上記一般式(4)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0270】
(合成例14)
合成例7において、上記一般式(1)で示される有機電子アクセプター0.01質量部に代えて、上記一般式(10)で示される有機電子アクセプター0.01質量部を使用したこと以外は合成例7と同様にして、複合体0.9質量部を得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0271】
(合成例15)
アルゴン置換したフラスコ中へ、1,3−ジイミノイソインドリン(25g)、チタンテトラブトキシド(14.6g)、ジフェニルメタン(300g)を混合し、150℃まで昇温した。ここで発生する蒸気を反応系外へ留去しながら、系内温度を200℃まで昇温した。この後、さらに4時間撹拌し反応を行った。反応終了後、系内温度を150℃まで冷却した後、反応混合物をガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、あらかじめ加熱しておいたジメチルホルムアミド(DMF)で2回洗浄し、さらに、DMF、メタノールで洗浄し、真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン(24g)を得た。次に、得られたチタニルフタロシニン(5g)、有機電子アクセプターとして下記一般式(6)で示される有機電子アクセプター(0.2g)を混合し、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比4/1)100mlに溶解させた。この溶液を、メタノール/水(体積比1/1)1L中へ滴下させた。滴下終了後、15分間室温にて撹拌し、30分間静置した後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、ろ液が中性になるまで水洗した後、クロロベンゼン200ml中に再分散し、1時間撹拌後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を50℃で5時間真空乾燥を行い、複合体:4.2gを得た。得られた複合体のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び体積平均粒径をそれぞれ表2に示す。
【0272】
【化32】
【0273】
(実施例9)
[電子写真感光体シートの作製]
酸化亜鉛(平均粒子径70nm、テイカ社製試作品、比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名「KBR603」、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。得られた表面処理酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部、及びブチラール樹脂(商品名「BM−1」、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散し分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(商品名「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)3.4質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの中間層を得た。
【0274】
次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「VMCH」、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液と、合成例7で得られた複合体1質量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散し、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0275】
次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4質量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6質量部、テトラヒドロフラン80質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記の電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体シートを作製した。
【0276】
[電子写真感光体ドラムの作製]
30mmφ×404mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(商品名「アルミナビーズCB−A30S」(平均粒径D50=30μm)、昭和タイタニウム社製)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性基体として準備した。次に、この導電性基体上に、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順で、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体ドラムを作製した。
【0277】
(実施例10)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例8で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0278】
(実施例11)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例9で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0279】
(実施例12)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例10で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0280】
(実施例13)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例11で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0281】
(実施例14)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例12で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0282】
(実施例15)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例13で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0283】
(実施例16)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例14で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0284】
(比較例6)
合成例7で得られた複合体1質量部に代えて、合成例15で得られた複合体1質量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0285】
実施例9〜16、及び比較例6の電子写真感光体シートの電子写真特性を評価するために、上述の(1)使用初期の特性評価、(2)繰り返し特性の評価、(3)画質評価試験及び(4)電荷発生材料の分散性評価と同様の評価を行った。
【0286】
この(1)〜(4)の評価結果を表3に示す。また、上記の比較例1及び比較例5の評価結果も表3中に示す。なお、表3中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察された、或いは塗膜表面がざらついていたことを意味する。
【0287】
【表3】
【0288】
表1に示すように、結晶変換されたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及び有機電子アクセプターを含有する塗布液から形成された電荷発生層を備える実施例1〜8の電子写真感光体は、電荷発生層におけるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分散性が良好であり、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質が得られることが分かった。
【0289】
また、表3に示すように、電荷発生層にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとからなる複合体(合成例7〜14)を含有する実施例9〜16の電子写真感光体は、電荷発生層における複合体の分散性が良好であり、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質が得られることが分かった。
【0290】
以下、さらに別の実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0291】
(合成例16)
<I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の合成>
フタロニトリル31.8質量部及びガリウムトリメトキシド10.1質量部をエチレングリコール150mlに加え、窒素雰囲気下、200℃にて24時間攪拌して反応を進行させた。生成物をろ別してN,N−ジメチルホルムアミド、メタノールで順次洗浄した後、乾燥して、25.1質量部のガリウムフタロシアニンを得た。
【0292】
次に、得られたガリウムフタロシアニン2質量部を濃硫酸50質量部に溶解し、2時間攪拌した後、氷冷した蒸留水75ml、濃アンモニア水75mlおよびジクロロメタン150mlからなる混合溶液に滴下して結晶を析出させた。析出した結晶をろ別して蒸留水で十分に洗浄した後、乾燥して、微細化されたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1.8質量部を得た。
【0293】
このようにして得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトルを図11に示す。この結晶は、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.0°、13.4°、16.6°、26.0°および26.7°に強い回折ピークを有していた。
【0294】
(実施例17)
<複合体A1の調製>
合成例16で得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(7)で示される化合物0.01質量部及び直径1.0mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、テフロン製ライニング処理を施したSUS製ボールミルを使用して25℃で湿式粉砕処理した。
【0295】
湿式粉砕過程にあるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を24時間毎にサンプリングして、その分光吸収スペクトルにおけるλMAXを湿式粉砕時間192時間の時点まで測定し、得られた値を粉砕時間に対してプロットした曲線を図17に示す。図17から、湿式粉砕時間144時間の時点でλMAXが極小値となることが確認された。
【0296】
そこで、湿式粉砕時間を144時間として改めて同様の条件で湿式粉砕し、ろ別して酢酸n−ブチルで洗浄後、乾燥して複合体(A1)を得た。得られた複合体(A1)の粉末X線回折スペクトルを図12に示す。複合体(A1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0297】
なお、本実施例における分光吸収スペクトル測定は、日立製作所製のU−4000型分光光度計を用いて液セル法により行った。分光吸収スペクトル測定に供する試料液は、微量の複合体をアセトンと混合して調製した。
【0298】
(実施例18)
<複合体A2の調製>
有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.001質量部に代えたこと以外は、実施例17と同様に湿式粉砕時間を144時間として湿式粉砕処理を実施し、複合体(A2)0.9質量部を得た。得られた複合体(A2)のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0299】
(実施例19)
<複合体A3の調製>
有機電子アクセプターの使用量を0.01質量部から0.1質量部に代えたこと以外は、実施例17と同様に湿式粉砕時間を144時間として湿式粉砕処理を実施し、複合体(A3)0.9質量部を得た。得られた複合体(A3)のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0300】
(実施例20)
<複合体A4の調製>
有機電子アクセプターの使用量を0.01重量部から0.4重量部に代えたこと以外は、実施例17と同様に湿式粉砕時間を144時間として湿式粉砕処理を実施し、複合体(A4)0.9質量部を得た。得られた複合体(A4)のX線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0301】
(比較例7)
<ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料CA1の調製>
合成例1で得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド15質量部中で直径1.0mmのガラス製球状メディア30重量部を使用して24時間湿式粉砕した後、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料をろ別して酢酸n−ブチルで洗浄後、乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CA1)0.9質量部を得た。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CA1)のλMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0302】
(合成例17)
<微細化クロロガリウムフタロシアニン結晶の合成>
1,3−ジイミノイソインドリン30質量部および三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28質量部を得た。
【0303】
上記の工程で得られたI型クロロガリウムフタロシアニン20質量部を、直径5mmのアルミナ製ビーズ400質量部とともにアルミナ製ポットに入れた。これを振動ミル(MB−1型、中央化工機社製)に装着し、180時間乾式粉砕して一次粒子径が0.02μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶18質量部を得た。得られた微細化クロロガリウムフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルを図13に示す。
【0304】
(実施例21)
<複合体B1の調製>
合成例17で得られた微細化ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1質量部を、ジメチルスルホキシド15質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(8)で示される化合物0.01質量部及び直径1.0mmのガラス製球形状メディア55質量部とともに、テフロン製ライニング処理を施したSUS製ボールミルを使用して25℃で湿式粉砕処理した。
【0305】
湿式粉砕過程にあるクロロガリウムフタロシアニン顔料を24時間毎にサンプリングしてその分光吸収スペクトルにおけるλMAXを湿式粉砕時間192時間の時点まで測定し、得られた値を粉砕時間に対してプロットした曲線を図18に示す。図18から、湿式粉砕時間96時間の時点でλMAXが極小値となることが確認された。
【0306】
そこで、湿式粉砕時間を96時間として改めて同様の条件で湿式粉砕し、ろ別して酢酸n−ブチルで洗浄後、乾燥して複合体(B1)を得た。B1のX線回折スペクトルを図14に示す。複合体(B1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0307】
(比較例8)
<クロロガリウムフタロシアニン顔料CB1の調製>
合成例17で得られた微細化クロロガリウムフタロシアニン5質量部を、ジメチルスルホキシド500質量部とともに傾斜パドル型攪拌翼および邪魔板を設けた恒温装置付きの攪拌槽に入れて、混合液温度24℃において24時間に亘り攪拌速度250rpmで攪拌し、ろ過乾燥機(タナベウィルテック社製)を用いてろ過した後、イオン交換水で洗浄し、さらに、攪拌しながら第一の乾燥処理として80℃において24時間真空乾燥した。次に、第二の乾燥として150℃で5時間真空乾燥することにより、クロロガリウムフタロシアニン結晶(CB1)4.7質量部を得た(特開2002−91039号公報の実施例1参照)。クロロガリウムフタロシアニン顔料(CB1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0308】
(合成例18)
<非晶質チタニルフタロシアニン顔料の合成>
まず、1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、チタニウムテトラブトキシド1.7質量部を1−クロルナフタレン20質量部に加え、190℃で5時間反応させた後、生成物をろ別後、アンモニア水、水、アセトンで順次洗浄して、チタニルフタロシアニン粗結晶4.0質量部を得た。
【0309】
次に、得られたチタニルフタロシアニン粗結晶2.0質量部を97%硫酸100質量部に5℃で溶解した後、氷水1300質量部中に注いで結晶を析出させた。析出した結晶をろ別して希アンモニア水、水で順次洗浄後、乾燥して、1.6質量部の非晶質チタニルフタロシアニン顔料を得た。
【0310】
(実施例22)
<複合体D1の調製>
合成例18で得られた非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部と有機電子アクセプターとして上記一般式(13)で示される化合物0.01質量部を、水15質量部/モノクロルベンゼン1.5質量部の混合溶媒中で、直径1.0mmのガラス製球形状メディア55質量部を使用してガラス製ボールミルにより25℃で湿式粉砕した。
【0311】
湿式粉砕過程において24時間ごとにサンプリングし、湿式粉砕過程にあるチタニルフタロシアニン顔料のBET比表面積を粉砕時間192時間の時点まで測定し、得られた値を粉砕時間に対してプロットした曲線を図19に示す。
【0312】
図19に示すように、湿式粉砕時間96時間の時点でBET比表面積が極大値(65m2/g)となった。そこで、湿式粉砕時間を96時間として改めて同様の条件で湿式粉砕を行い、ろ別してメタノールと水で洗浄後、乾燥して、複合体(D1)0.9重量部を得た。複合体(D1)の粉末X線回折スペクトルを図15に、分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0313】
(比較例9)
<チタニルフタロシアニン顔料CD1の調製>
合成例18で得られた非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部を水10質量部/モノクロルベンゼン1質量部の混合溶媒中で、50℃において1時間攪拌した後、ろ別してメタノールと水で洗浄し、チタニルフタロシアニン顔料(CD1)0.9質量部を得た。
【0314】
チタニルフタロシアニン顔料(CD1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。また、粉末X線回折図は、図15に示すものと同様であった。
【0315】
(合成例19)
<α型無金属フタロシアニン結晶の合成>
まず、o−フタロジニトリル100質量部とピペリジン10質量部とを、クロロトルエン300質量部に加え、200℃において10時間攪拌しながら反応させ、赤紫色結晶を得た。
【0316】
次いで、赤紫色結晶をろ別し、希塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液により洗浄した後、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンの順でさらに洗浄し、乾燥して、無金属フタロシアニン粗結晶を得た。
【0317】
得られた無金属フタロシアニン粗結晶12質量部を、0〜5℃に冷却した97%硫酸200質量部に均一に溶解し、これを2000質量部の純水中に滴下して結晶を析出させた。析出した結晶をろ別し、水酸化ナトリウム水溶液、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンの順で洗浄した後、乾燥して、α型無金属フタロシアニン結晶410質量部を得た。
【0318】
(実施例23)
<複合体E1の調製>
合成例19で得られたα型無金属フタロシアニン結晶1質量部と有機電子アクセプターとして上記一般式(15)で示される化合物0.01質量部を、別に準備したX型無金属フタロシアニン顔料0.05質量部とともに、メチルエチルケトン15質量部中で、直径1.0mmのアルミナ製球形状メディア60質量部を使用してアルミナ製ボールミルにより25℃で湿式粉砕した。
【0319】
湿式粉砕過程にあるX型無金属フタロシアニン顔料を24時間ごとにサンプリングしてそのλMAX及びBET比表面積を測定し、それぞれの値を粉砕時間に対して湿式粉砕時間240時間の時点までプロットした曲線を図20及び21に示す。
【0320】
図20に示すように、湿式粉砕時間168時間の時点でλMAXが極小値となり、一方、図21に示すように、湿式粉砕時間192時間の時点でBET比表面積が極大値(71m2/g)となった。
【0321】
そこで、Taを168、Tbを192として上記の式(eq−1)から算出される、180時間を湿式粉砕時間として、改めて同様の条件で湿式粉砕を行い、ろ別してメチルエチルケトンで洗浄後、乾燥して、複合体(E1)0.9質量部を得た。
【0322】
得られた複合体(E1)の粉末X線回折図を図16に示す。また、複合体(E1)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0323】
(比較例10)
<X型無金属フタロシアニン顔料CE1の調製>
合成例19で得られたα型無金属フタロシアニン結晶1質量部を、別に準備したX型無金属フタロシアニン顔料0.05質量部とともに、直径5.0mmのアルミナ製球形状メディア60質量部を使用してアルミナ製ボールミルにより4日間乾式粉砕処理を行い、無金属フタロシアニン顔料(CE1)を得た。
【0324】
無金属フタロシアニン顔料CE1の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。なお、無金属フタロシアニン顔料CE1の粉末X線回折図は、図16に示すものと同様であった。
【0325】
(比較例11)
<チタニルフタロシアニン顔料CD2の調製>
1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、チタニウムテトラブトキシド1.7質量部を1−クロルナフタレン20質量部中に入れ、190℃において5時間反応させた後、生成物を濾過し、アンモニア水、水、アセトンで洗浄し、チタニルフタロシアニン粗結晶4.0質量部を得た。得られたチタニルフタロシアニン粗結晶2.0質量部を97%硫酸100部に5℃で溶解した後、氷水1300質量部中に注ぎ、チタニルフタロシアニンの析出物を濾過し、希アンモニア水と水で洗浄した後、乾燥して、1.6質量部の非晶質チタニルフタロシアニン結晶を得た。
【0326】
上記非晶質チタニルフタロシアニン結晶1.0質量部を水10質量部、モノクロルベンゼン1質量部の混合溶媒中で、50℃において1時間攪拌した後、濾過し、メタノールと水で洗浄して、チタニルフタロシアニン顔料(CD2)0.9質量部を得た(特開平3−269061号公報の実施例1参照)。得られたチタニルフタロシアニン顔料(CD2)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0327】
(比較例12)
<複合体CD3の調製>
アルゴン置換したフラスコ中へ、1,3−ジイミノイソインドリン25質量部、チタンテトラブトキシド14.6質量部、ジフェニルメタン300質量部を混合し、150℃まで昇温した。ここで発生する蒸気を反応系外へ留去しながら、系内温度を200℃まで昇温した。この後、さらに4時間撹拌し反応を行った。反応終了後、系内温度を150℃まで冷却した後、反応混合物をガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、あらかじめ加熱しておいたジメチルホルムアミド(DMF)で2回洗浄し、さらに、DMF、メタノールで洗浄し、真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン24質量部を得た。
【0328】
次に、上記チタニルフタロシニン5質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(6)で示される化合物0.2質量部(チタニルフタロシニン1質量部に対して0.04質量部)を混合し、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比4/1)100mlに溶解させた。この溶液を、メタノール/水(体積比1/1)1L中へ滴下させた。滴下終了後、15分間室温にて撹拌し、30分間静置した後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、ろ液が中性になるまで水洗した後、クロロベンゼン200ml中に再分散し、1時間撹拌後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を50℃で5時間真空乾燥を行い、複合体(CD3)4.2質量部を得た(特開2001?40237号公報の合成例1参照)。
【0329】
得られた複合体(CD3)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0330】
(比較例13)
<複合体CB2の調製>
1,3−ジイミノイソインドリン30質量部及び三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28質量部を得た。
【0331】
次に、得られたI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶5質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(6)で示される化合物0.2質量部(フタロシアニン顔料1質量部に対して0.04質量部)を混合し、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比4/1)100mlに溶解させた。この溶液を、アセトン/水(体積比1/1)1L中へ滴下させた。滴下終了後、15分間室温にて撹拌し、30分間静置した後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を、ろ液が中性になるまで水洗した後、N,N−ジメチルホルムアミド200ml中に再分散し、1時間撹拌後ガラスフィルターにて濾過した。得られた固体を50℃で5時間真空乾燥を行い、複合体(CB2)4.2質量部を得た。得られた複合体(CB2)の分光吸収スペクトルにおける最大吸収極大波長λMAX、X線回折スペクトルにおける特徴的な回折ピークのブラッグ角度(2θ±0.2°)、BET比表面積、及び平均粒径をそれぞれ表4に示す。
【0332】
(実施例24)
[電子写真感光体シートの作製]
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製試作品、比表面積値:15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。
【0333】
次に、表面処理を施した酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部及びブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学社製)15重量部を、メチルエチルケトン85質量部に溶解した。そして、この溶液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及び、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール145、GE東芝シリコーン社製)3.4質量部を添加し、中間層形成用塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの中間層を形成した。
【0334】
次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)1質量部を酢酸n−ブチル100質量部に溶解させた溶液と、実施例17で得られた複合体(A1)1質量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150質量部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記中間層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して、膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0335】
さらに、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4質量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6質量部、テトラヒドロフラン80質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、実施例24の電子写真感光体シートを作製した。
【0336】
[電子写真感光体ドラムの作製]
外径30mmφ、長さ404mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(アルミナビーズCB−A30S、平均粒径D50=30μm、昭和タイタニウム社製)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性支持体として用い、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順で、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、実施例24の電子写真感光体ドラムを作製した。
【0337】
(実施例25〜30)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、実施例18〜23の各種複合体をそれぞれ用いたこと以外は実施例24と同様にして、実施例25〜30の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0338】
(比較例14〜17)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、比較例7〜10の各種フタロシアニン顔料をそれぞれ用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例14〜17の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0339】
(比較例18)
電荷発生材料として比較例11のチタニルフタロシアニン顔料(CD2)3質量部、ポリビニルブチラール(商品名エスレックBM―2、積水化学(株)製)2質量部、有機電子アクセプターとして上記一般式(11)で示される化合物0.03質量部及びシクロヘキサノン80質量部を1mmφガラスビーズを用いたサンドミルで4時間分散した後、メチルエチルケトン115質量部を加えて電荷発生層用塗料を調整した。この塗料を用いて電荷発生層を形成したこと以外は、実施例24と同様にして、比較例18の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した(特開平7?104495号公報の実施例1参照)。
【0340】
(比較例19)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、比較例12の複合体を用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例19の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0341】
(比較例20)
電荷発生材料として複合体(A1)の代わりに、比較例13の複合体を用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例20の電子写真感光体シート及び電子写真感光体ドラムを作製した。
【0342】
【表4】
【0343】
実施例24〜30及び比較例14〜20の電子写真感光体シートの電子写真特性について、上記した(1)使用初期の特性評価、及び(2)繰り返し特性の評価に基づいて評価した。得られた結果を表5に示す。
【0344】
また、実施例24〜30及び比較例14〜20の電子写真感光体ドラムについて、上記した(3)画質評価試験を行い、画質を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0345】
さらに、実施例24〜30及び比較例14〜20で用いた各種複合体又はフタロシアニン顔料の分散性について、上記した(4)電荷発生材料の分散性評価に基づいて評価した。得られた結果を表5に示す。なお、表5中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察された、或いは塗膜表面がざらついていたことを意味する。
【0346】
【表5】
【0347】
表5に示すように、フタロシアニン顔料と、有機電子アクセプターと、溶剤とを含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られた複合体を電荷発生層に含む実施例24〜30の電子写真感光体は、電荷発生層における複合体の分散性が良好であり、十分な帯電特性、光感度及び低暗減衰特性を有し、かぶり及びゴースト等の画質欠陥を生じることなく長期にわたって安定した画像品質が得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0348】
【図1】図1(a)は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図であり、図1(b)は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図であり、図1(c)は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図であり、図2(b)は、本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図であり、図3(b)は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図であり、図3(c)は、本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の電子写真感光体の第九実施形態を示す断面図であり、図4(b)は、本発明の電子写真感光体の第十実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を示す概略構成図である。
【図6】本発明の電子写真装置の他の一実施形態の基本構成を示す概略構成図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を示す概略構成図である。
【図8】合成例1で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粉末X線回折図である。
【図9】合成例7で得られた複合体の粉末X線回折図である。
【図10】合成例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粉末X線回折図である。
【図11】合成例16において合成したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折図である。
【図12】実施例17において作製した複合体(A1)の粉末X線回折図である。
【図13】合成例17において合成した微細化クロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図である。
【図14】実施例21において作製した複合体(B1)の粉末X線回折図である。
【図15】実施例22において作製した複合体(D1)の粉末X線回折図である。
【図16】実施例23において作製した複合体(E1)の粉末X線回折図である。
【図17】実施例17において、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の分光吸収スペクトルにおけるλMAXと湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図18】実施例21において、クロロガリウムフタロシアニン顔料の分光吸収スペクトルにおけるλMAXと湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図19】実施例22において、チタニルフタロシアニン顔料のBET比表面積値と湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図20】実施例23において、X型無金属フタロシアニン顔料の分光吸収スペクトルにおけるλMAXと湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【図21】実施例23において、X型無金属フタロシアニン顔料のBET比表面積値と湿式粉砕時間の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0349】
1a,1b…電荷発生層、2…電荷輸送層、3…導電性支持体、4…中間層、5…保護層、6a,6b…感光層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段、13…クリーニング手段、14…除電器、15…定着装置、16…取り付けレール、18…露光のための開口部、20…被転写体、100,110,120,130,140,150,160,170,180,190…電子写真感光体、200,210…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、前記フタロシアニン顔料と、前記有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものであることを特徴とする複合体。
【請求項2】
電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、前記フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に前記有機電子アクセプターを含有する領域を有することを特徴とする複合体。
【請求項3】
前記フタロシアニン顔料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記フタロシアニン顔料として、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記有機電子アクセプターの含有量が前記フタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.5質量部であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
フタロシアニン顔料と、有機アクセプターと、溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕する湿式粉砕処理工程を有することを特徴とする、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体の製造方法。
【請求項7】
前記湿式粉砕処理工程の前段に、粗ガリウムフタロシアニンをアシッドペースティング処理して、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得るアシッドペースティング処理工程を更に有し、該アシッドペースティング処理工程により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、前記フタロシアニン顔料として前記湿式粉砕処理工程に供することを特徴とする、請求項6に記載の複合体の製造方法。
【請求項8】
導電性支持体と、
該導電性支持体上に設けられており、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の複合体を含有する感光層と、
を備えることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項9】
請求項8に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、及び前記電子写真感光体上残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項8に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、
前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するための露光手段と、
前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写するための転写手段と、
を備えることを特徴とする電子写真装置。
【請求項1】
電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、前記フタロシアニン顔料と、前記有機電子アクセプターと、所定の溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕処理することにより得られたものであることを特徴とする複合体。
【請求項2】
電子写真感光体の構成材料として使用されるフタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体であって、前記フタロシアニン顔料の表面及び/又は表面近傍に前記有機電子アクセプターを含有する領域を有することを特徴とする複合体。
【請求項3】
前記フタロシアニン顔料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記フタロシアニン顔料として、600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記有機電子アクセプターの含有量が前記フタロシアニン顔料1質量部に対して0.001〜0.5質量部であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
フタロシアニン顔料と、有機アクセプターと、溶剤と、を含む混合物を湿式粉砕する湿式粉砕処理工程を有することを特徴とする、フタロシアニン顔料と有機電子アクセプターとの複合体の製造方法。
【請求項7】
前記湿式粉砕処理工程の前段に、粗ガリウムフタロシアニンをアシッドペースティング処理して、ブラッグ角度(2θ±0.2°)6.9°、13.2〜14.2°、16.5°、26.0°及び26.4°、又は、7.0°、13.4°、16.6°、26.0°及び26.7°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得るアシッドペースティング処理工程を更に有し、該アシッドペースティング処理工程により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、前記フタロシアニン顔料として前記湿式粉砕処理工程に供することを特徴とする、請求項6に記載の複合体の製造方法。
【請求項8】
導電性支持体と、
該導電性支持体上に設けられており、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の複合体を含有する感光層と、
を備えることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項9】
請求項8に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、及び前記電子写真感光体上残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項8に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、
前記電子写真感光体上に静電潜像を形成するための露光手段と、
前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写するための転写手段と、
を備えることを特徴とする電子写真装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−72304(P2006−72304A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86966(P2005−86966)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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