複合光学フィルタの製造方法
【課題】帯状コントラスト向上シートと帯状電磁波遮蔽シートとを貼り合わせて、コントラスト向上シートがバイアス角を有する枚葉の複合光学フィルタを、ロール・ツー・ロール方式で生産効率良く製造する。
【解決手段】多数配列した暗色線状部1aと透明樹脂層1bを有するコントラスト向上層1を含む帯状コントラスト向上シート10と、透明基材シート5上に特定厚み分布のプライマ層を介し導電体粒子が特定分布の導電体パターン層4を有する帯状電磁波遮蔽シート20とを貼り合せて帯状複合光学フィルタシート30wを製造する際、暗色線状部の延在方向と帯状コントラスト向上シートの長手方向MD(搬送方向)との成す角度である帯状シート上でのバイアス角θwを0°<θw<90°としたシートを用いる。帯状複合光学フィルタシート30wから、長手方向に1辺を平行に枚葉の複合光学フィルタを切り出せば良い。
【解決手段】多数配列した暗色線状部1aと透明樹脂層1bを有するコントラスト向上層1を含む帯状コントラスト向上シート10と、透明基材シート5上に特定厚み分布のプライマ層を介し導電体粒子が特定分布の導電体パターン層4を有する帯状電磁波遮蔽シート20とを貼り合せて帯状複合光学フィルタシート30wを製造する際、暗色線状部の延在方向と帯状コントラスト向上シートの長手方向MD(搬送方向)との成す角度である帯状シート上でのバイアス角θwを0°<θw<90°としたシートを用いる。帯状複合光学フィルタシート30wから、長手方向に1辺を平行に枚葉の複合光学フィルタを切り出せば良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合光学フィルタの製造方法に関する。特に、帯状コントラスト向上シートと帯状電磁波遮蔽シートとを、モアレを防ぐ形でロール・ツー・ロール方式で効率的に貼り合わせて複合化できる、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイとして、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。
【0003】
そして、ディスプレイの前面(観察者側面)には、例えばPDPでは、ディスプレイからの電磁波放出が強い為、該電磁波は遮蔽し画像光は透過させる電磁波遮蔽フィルタを配置している。また、ディスプレイから放出される赤外線によるリモートコントローラの誤動作を防ぐ、赤外線吸収フィルタ等の光学フィルタも配置している。この際、光透過率を低下させない為に、各フィルタ間には間隙(空気層)を空けずに粘着剤層などの樹脂層で密着する様に、各々のフィルタ同士を貼り合せて複合化した複合光学フィルタとして用いることが多い。
【0004】
また、複合光学フィルタを構成するフィルタ部材のなかに、コントラスト向上フィルタもある。コントラスト向上フィルタは、通常、ストライプ状の遮光部位(暗色線状部)が面方向に、その延在方向が互いに平行となる様にして多数配列された、面方向に周期性を有する構造のフィルタである。この様なコントラスト向上フィルタをディスプレイの前面に配置すると、ディスプレイパネルが有する画素の区画となる線との重ね合わせによる干渉模様(モアレと呼ばれる)が見えてしまうことがある。このモアレ現象を防ぐため、遮光部位のストライプの延在方向の角度を、モアレが出難い最適値に設定することが知られている(特許文献1)。
【0005】
ここで、図10の斜視図で例示する複合光学フィルタ30は、暗色線状部1aを透明樹脂層1bの層内片面に有するコントラスト向上層1を含むコントラスト向上シート10sと、導電体パターン層4と透明基材シート5とを含む電磁波遮蔽シート20sとが接着剤層3で密着積層された構成である。しかも、前記暗色線状部1aの延在方向dが複合光学フィルタ30の外形の辺と0度でも90度でもない角度θに設定されている一例である。この様に、ディスプレイの前面に複合光学フィルタ30を配置するときは、暗色線状部1aの延在方向には角度θが付けておく。
なお、この角度を、以降「バイアス角」と言うことにする。更に、バイアス角θを有するとは、角度θが0度及び90度以外の角度である事を言うことにする。具体的には、バイアス角を、0°<θ<90°の角度範囲に設定する。
【0006】
ところで、ストライプ状の遮光部位を有するコントラスト向上フィルタの製造は、例えば、ロール・ツー・ロール方式で、透明な帯状支持体シートをロールから巻き出して搬送し、この帯状支持体シートの片面に、搬送方向に平行な凹状溝を多数配列した透明樹脂層1bを金型を用いて賦型した後、該凹状溝の凹部の中に暗色材料を埋め込んで遮光部位(暗色線状部1a)を形成している。
このため、コントラスト向上フィルタをディスプレイパネルの水平方向に対して0度及び90度以外の角度のバイアス角θを持たせて配置する場合には、ロール・ツー・ロール方式で製造された帯状シートから、角度をつけて打ち抜く工程が必要であった。
ここで、図11は、この角度付き打ち抜き加工を概念的に示す説明図である。帯状コントラスト向上シート10は、ストライプ状の遮光部位を成す暗色線状部1aの延在方向dは、その製造時の搬送方向MDに対して平行であり、また、暗色線状部1aの配列方向は、搬送方向MDに直交するシートの幅方向TDに平行である(バイアス角θw=0°)。この為、枚葉のコントラスト向上シート10sにバイアス角θを持たせたものを製造するには、同図の様に、該枚葉のコントラスト向上シート10sを、搬送方向MDに対して角度αを付けて打ち抜くことで製造できる。この場合は、該打ち抜き角度αがバイアス角θwに対応する。
【0007】
また、プラズマディスプレイパネル用の光学フィルタには、パネルから放射される電磁波を遮蔽するため、導電性を有する導電体パターン層4を透明基材シート上5に設ける等した電磁波遮蔽シート(電磁波遮蔽フィルタ)が必要である。この電磁波遮蔽シートの製造も、通常、帯状透明基材シートのロールを用いて、ロール・ツー・ロール方式で製造している。
【0008】
この為、図10の様な、コントラスト向上シート10sと電磁波遮蔽シート20sとを積層して複合化した、複合化光学フィルタ30を製造しようとする場合、コントラスト向上シート10sは電磁波遮蔽シート20sと積層する前に、図10の様に、バイアス角θを持たせる様に、図11の如く所定角度及び所定寸法に打ち抜いた後で貼り合せていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−313360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、所定角度及び所定寸法に打ち抜く、角度付き打ち抜き加工は、図11でも分かる様に、廃棄される部分が多く存在すること、またその後の貼り合せ加工を枚葉のシート同士で行わなければならず、ロール・ツー・ロール方式を適用できず、生産効率が悪かった。
その上、角度付き打ち抜き加工と、貼り合せ加工の独立した2工程が必要となる点で、生産効率が悪かった。
【0011】
すなわち、本発明の課題は、コントラスト向上シートと電磁波遮蔽シートとを含む複合光学フィルタとして、コントラスト向上シートがバイアス角を有する複合光学フィルタを、ロール・ツー・ロール方式で生産効率よく、貼り合せできる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明では、次の様な構成の、複合光学フィルタの製造方法とした。
(1)ロールから巻き出した帯状コントラスト向上シートとロールから巻き出した帯状電磁波遮蔽シートとを貼り合せ、得られた帯状複合光学フィルタシートをロールに巻き取る、ロール・ツー・ロール方式での複合光学フィルタの製造方法であって、
上記帯状コントラスト向上シートは、多数配列した暗色線状部と該暗色線状部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とを有するコントラスト向上層を含み、上記帯状電磁波遮蔽シートは、透明基材シートと該透明基材シート上にプライマ層を介して形成された導電体パターン層を含み、該プライマ層は前記導電体パターン層の形成部での厚さが導電体パターン層の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電体パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であり、
前記帯状コントラスト向上シートの前記暗色線状部の延在方向が該帯状コントラスト向上シートの長手方向(搬送方向)に対する角度である帯状シート上でのバイアス角θwが、0°<θw<90°である、複合光学フィルタの製造方法。
(2)上記(1)において、上記帯状複合光学フィルタシートから更に、所定角度及び所定寸法で切り出して、四角形で枚葉の複合光学フィルタを製造する際に、前記帯状複合光学フィルタシートの長手方向(搬送方向)と枚葉の複合光学フィルタの外形4辺のうちの対向する何れか2辺が平行になる所定角度で切り出す、複合光学フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明によれば、帯状コントラスト向上シートとして最初から帯状シート上でバイアス角θwを有するものを用いるので、そのまま、ロール・ツー・ロール方式で帯状電磁波遮蔽シートと貼り合わせて、複合光学フィルタとして、バイアス角θwを持った帯状複合光学フィルタシートを製造出来、生産性が向上する。このため、下記(2)の様に、打ち抜き加工などで枚葉シートに切り出す時に切り出し角αを付けて(α≠0°)切り出す必要がなく、無駄を減らせる。
(2)そして、帯状複合光学フィルタシートから、打ち抜き加工などで枚葉シートの複合光学フィルタを切り出すときは、切り出し角αを付ける必要がなく切り出し角αは長手方向に平行で良いので(α=0°)、帯状シートから切り出す時の余白部分の面積を小さくできる。このため、廃棄する部分が少なくなり材料ロスを減らせ、その分低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による複合光学フィルタの製造方法を概念的に説明する説明面であり、図中、特に(A)は帯状コントラスト向上シートの平面図、(B)は同シートの拡大断面図、(C)は帯状電磁波遮蔽シートの拡大断面図、(D)は帯状複合光学フィルタシートの平面図、(E)は同シートの拡大断面図について各形態例を示す。
【図2】帯状電磁波遮蔽シートをその一形態例で詳しく示す断面図。
【図3】導電体パターン層の凸部(形成部)周辺にて、導電体パターン層の非形成部よりも形成部でプライマ層が厚く、導電体パターン層の凸部内での導電性粒子の分布が凸部の頂部近くが密でプライマ層近くが疎の形態を、概念的に示す断面図。
【図4】複合光学フィルタ(乃至はフィルタシート)をその一形態で例示する断面図。
【図5】本発明による帯状複合光学フィルタシートから、枚葉の複合光学フィルタを切り出すときの切り出し角度を示す平面図。
【図6】複合光学フィルタ(乃至はフィルタシート)を別の一形態で例示する断面図。
【図7】暗色線条部の主切断面形状の各種例を例示する断面図。
【図8】暗色線条部の主切断面形状に於ける底辺が平坦、凹状、凸状の3形態を例示する断面図。
【図9】暗色線条部の主切断面形状に於ける底辺が凹状と凸状の場合の空気の残留の具合を説明する断面図。
【図10】バイアス角を有する複合光学フィルタを説明する斜視図。
【図11】従来の、バイアス角の無い帯状コンラスト向上シートからバイアス角の有る枚葉のコンラスト向上シートを製造する角度付き打ち抜き加工を概念的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
《A1.第1の実施形態》
本発明による、複合光学フィルタの製造方法について、先ず図1〜図5を参照して、その実施形態を説明する。
【0017】
本発明では、図1で示す様に、帯状コントラスト向上シート10と、帯状電磁波遮蔽シート20とを、それぞれロールR1、R2から巻き出して、これらを貼り合わせて、複合光学フィルタとして、帯状複合光学フィルタシート30wを作製し、ロールR3に巻き取って製造する。この後、後述する様に、ロールR3から巻き出した帯状複合光学フィルタシート30wから、図5の様に所定角度(切り出し角α=0°)及び所定寸法で切り出して、図10に例示の様な枚葉の複合光学フィルタ30を製造する。
なお、「ロール・ツー・ロール方式」とは、被加工材をロールから巻き出した帯状の形態として供給し、適宜の加工を施した後、ロールに巻き取る加工形態のことをいう。
【0018】
[帯状コントラスト向上シート]
ロールR1から巻き出す、帯状コントラスト向上シート10は、図1(A)の平面図、図1(B)の断面図で示す様に、少なくとも、コントラス向上層1を含むシートである。コントラスト向上層1は、多数配列した暗色線状部1aを有し、該暗色線状部1aは透明樹脂層1bの層内部で且つ通常は層の片面に露出する形で支持されている。また、暗色線状部1aの延在方向が、帯状コントラスト向上シート10の長手方向MD(搬送方向MD)と成す劣角として定義される、帯状シート上(ウェブ上)でのバイアス角θwは0度及び90度以外の角度の、0°<θw<90°であり、バイアス角を持っている。
【0019】
また、帯状コントラスト向上シート10は、図1(B)で点線で示す様に、更に、コントラスト向上層1を支持する透明な帯状の支持体シート2、帯状電磁波遮蔽シート20などの他の被着体と貼り合わせる為の、接着剤層3などを含み得る(但し、図示の簡略化の為、図1(B)に於いては、これらの層は図示を略す)。
【0020】
[帯状電磁波遮蔽シート]
一方、ロールR2から巻き出す、帯状電磁波遮蔽シート20は、図1(C)の断面図で示す様に、導電体パターン層4が透明基材シート5上に形成されており、更に詳しくは、図2の断面図で例示する如く、導電体パターン層4はプライマ層6を介して透明基材シート5上に形成されたものであり、少なくとも、この導電体パターン層4、プライマ層6及び透明基材シート5を含むシートである。しかも、該プライマ層6は、導電体パターン層4の形成部での厚さが導電体パターン層4の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電体パターン層4の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、図3の拡大断面図に示すように、相対的に、プライマ層6近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である構成のシートである。また、導電体パターン層4の非形成部である開口部7が光透過性確保の為の領域となっている。
【0021】
[貼り合わせ]
そして、本発明では、上記帯状コントラスト向上シート10と、上記帯状電磁波遮蔽シート20とを、帯状シートのまま、ラミネートローラなどで圧着して、貼り合わせることで、複合光学フィルタとして帯状複合光学フィルタシート30wを製造し、ロールR3に巻き取る。
帯状複合光学フィルタシート30wは、図1(D)の平面図、図1(E)の断面図で示す様に、帯状コントラスト向上シート10と同じままの、帯状シート上でのバイアス角θwを持っている。そして、図1(E)では、枚葉化された帯状コントラスト向上シート10と、枚葉化された帯状電磁波遮蔽シート20とが接着剤層3を介して、密着積層された構成例を示す。
図1(E)を更に詳しく示した図面が図4の断面図であり、図4に示す帯状複合光学フィルタシート30w(乃至は、複合光学フィルタ30の断面図である。図4では、更にプライマ層6、及び導電体パターン層4中の導電性粒子Cpも明示してある。
【0022】
[(角度無し)切り出し加工]
次に、ロールR3に巻き取った帯状複合光学フィルタシート30wから、所定角度及び所定寸法に切り出して、所定角度のバイアス角及び所定寸法の外形形状の、枚葉の複合光学フィルタ30を製造する。なお、所定角度及び所定寸法に切り出すには、打ち抜き加工など公知の裁断方法で良い。
図5は、この切り出し加工を概念的に説明する平面図である。本切り出し加工の工程では、既に帯状複合光学フィルタシート30wが備えるコンラスト向上シート10に於ける暗色線状部1aにバイアス角θwを持たせてある。すなちわ、バイアス角θwはゼロ度以外の角度で、0°<θw<90°を満たす角度に設定されている。従って、切り出し加工は、図10で説明した従来の角度付き切り出し加工の様に、角度を付けて切り出す必要はない。つまり、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MD(搬送方向MD)と、切り出すべき枚葉の複合光学フィルタ30の外形4辺のうちの対向する何れか2辺が平行になる所定角度の切り出し角αで切り出せば良い。該切り出し角αはゼロ度である(α=0°)。
【0023】
この様に、切り出し角αは長手方向MDに平行で良く、図11の如く帯状複合光学フィルタシート30wのバイアス角が0°の場合に比べて、切り出す時の余白部分の面積を小さくできる(最小の場合は余白部分の面積を0にすることも可能)。その為、廃棄する部分が少なくなり材料ロスを減らせ、その分低コストで製造できることになる。
【0024】
《A2.第2の実施形態》
ここで、上記第1の実施形態において、帯状コントラスト向上シート10、及び、帯状電磁波遮蔽シート20の夫々を、次の様な構成の帯状シートとした場合を、第2の実施形態として、更に説明する。なお、帯状シートの説明は、これら帯状シート同士を積層後の帯状複合光学フィルタシート30w(乃至は枚葉の複合光学フィルタ30を兼ねる)断面図である図6を参照して行う。
【0025】
[帯状コントラスト向上シート]
帯状コントラスト向上シート10は、暗色線状部1aと透明樹脂層1bとからなるコントラスト向上層1の片面に、反射防止層8aが形成された透明で帯状の支持体シート2、最終的には剥離する保護フィルム9aが積層され、また、コントララスト向上層1の他方の面に粘着剤層として接着剤層3、この接着剤層3の粘着面を一時的に保護するセパレータフィルム(積層後の図6では不図示)が積層された構成の帯状シートである。従って、観察者V側から言うと、保護フィルム9a、反射防止層8a、支持体シート2、コントラスト向上層1、接着剤層3、セパレータフィルム(不図示)、が積層された構成の帯状シートである。
【0026】
なお、この様な構成の帯状コントラスト向上シート10は、例えば、次の様にして準備することができる。先ず、保護フィルム9aを反射防止面に貼った反射防止層8a付きの支持体シート2に対して、その反射防止層8aとは反対側の裏面に対し、コントラスト向上層1を形成する。コントラスト向上層の形成は、帯状シート上での所定のバイアス角θwの暗色線状部1aとは逆凹凸形状の溝状の凹条部を透明樹脂層1bの表面に賦形する為に、該溝状の凹条部とは逆凹凸形状が(円周方向に対して)前記所定のバイアス角θwで螺旋状に形成されたロール状の賦形型を準備し、この型面に透明の紫外線硬化樹脂を塗布したのち、前記支持体シートの裏面に密着させて、反射防止層付き支持体シート2(及び保護フィルム9aを介して)、紫外線を照射して、所定の凹条部を有する透明樹脂層1bを形成する。そして、この透明樹脂層1bの凹条部が形成された面上に、暗色材料(暗色紫外線硬化樹脂)を塗布し、凹条部の内部にのみ暗色材料が充填されるよう、表面の不要な暗色材料は掻き取った後、紫外線を照射し固化させて、コントラスト向上層1を形成する。そして、コントラスト向上層1の前記暗色材料を充填した側の面に、透明粘着フィルムをラミネートして、粘着剤層として接着剤層3と、その粘着面にセパレータフィルムが積層された構成の帯状コントラスト向上シート10とする。そして、所定幅にスリットした後、連続帯状シートとしてロールに巻き取る。
【0027】
[帯状電磁波遮蔽シート]
一方、帯状電磁波遮蔽シート20は、透明基材シート5の片面にプライマ層6を介して導電体パターン層4が形成され、他方の面に着色された粘着剤層として接着剤層3aと、セパレータフィルム9bが積層された構成の帯状シートである。これを、積層後の状態で観察者V側から言うと、導電体パターン層4、プライマ層6、透明基材シート5、接着剤層3a、セパレータフィルム9bが積層された構成の帯状シートである。なお、上記接着剤層3aの着色は、画像光に対する色補正機能を有する。
【0028】
なお、この様な構成の帯状電磁波遮蔽シート20は、例えば、次の様にして準備することができる。先ず、導電体パターン層4がプライマ層6を介して透明基材シート5上に印刷形成された印刷メッシュシートを連続帯状で作製し一旦ロールに巻き取る。そして、このロールを巻き出して導電体パターン層4がない方の透明基材シート5の面に、着色された粘着フィルムをラミネートして、粘着剤層として着色された接着剤層3と、その粘着面にセパレータフィルム9bが積層された構成の帯状電磁波遮蔽シート20とする。そして、前記帯状コントラスト向上シート10のスリット幅よりも、20mm広い幅でスリットした後、連続帯状シートとしてロールに巻き取る。
【0029】
[貼り合わせ]
そして、これら2本の連続帯状シートのロールを、図1の様に、ロール・ツー・ロール方式のラミネート装置により、シート幅方向の中心をそろえて幅方向両端に10mmずつ導電体パターン層4がむき出しになって露出する様に、帯状コントラスト向上シート10の(セパレータフィルムを剥がした後の)接着剤層3の粘着面と、帯状電磁波遮蔽シート20の導電体パターン層4の面とで貼り合せ、貼り合わせて得られた、複合光学フィルタシート30wを連続帯状シートとしてロールに巻き取る。
【0030】
[(角度無し)切り出し加工]
そして後は、前記第1の実施形態と同じ様にして、(角度無し)切り出し加工を行えば、枚葉の複合光学フィルタシート30が得られる。
【0031】
この様に、反射防止機能や、色補正機能などの各種機能を持たせた複合光学フィルタにおいても、前記した同様に、切り出す時の余白部分の面積を小さくできるので、廃棄する部分が少なくなり材料ロスを減らせ、その分低コストで製造できる。しかも、ロール・ツー・ロール方式で生産できるので、生産性も高い。
【0032】
《B.用語の定義》
以下、バイアス角と切り出し角について説明する。
【0033】
バイアス角θwは、暗色線状部1aの延在方向dと、帯状コントラスト向上シート10乃至は帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MD(搬送方向MD)との成す劣角として定義する(図5参照)。
バイアス角θは、暗色線状部1aの延在方向dと、外形四角形形状で枚葉の複合コントラスト向上シート30の四辺の何れかの辺との成す劣角として定義するが、外形四角形形状が長方形の場合は長辺の方を優先して、該長辺と成す劣角として定義する(図10参照)。尚、図1(A)を初めとする各図に於いては、バイアス角θwはコントラスト向上層1或いは複合光学フィルタ30の長手方向MDと平行な辺から左回りに設定されている(暗色線条部1aが左下から右上方向に走行している)。但し、本発明に於いては、バイアス角θwの向きの設定はこのような形態には限定され無い。図1(A)等とは逆に、バイアス角θwを帯状のコントラスト向上層1或いは複合光学フィルタ30の長手方向の辺から右回りに設定(暗色線条部1aは右下から左上方向に走行する)しても良い。バイアス角θwを右回り、左回りの何れに設定しても画素或い導電体パターン層4とのモアレ防止效果の点では同等である。
切り出し角αは、帯状シートから、外形四角形形状の枚葉の複合光学フィルタ30又は枚葉のコントラスト向上シート10sを切り出すときの、これら枚葉シートの四辺の何れかの辺と前記帯状シートの長手方向MD(搬送方向MD)との成す劣角として定義するが、外形四角形形状が長方形の場合は長辺の方を優先して、該長辺と成す劣角として定義する(図10参照)。
導電体パターン層4に於けるバイアス角γは、平面視のパターンに於ける線(ライン)が延在する方向と、枚葉の複合光学フィルタ30の外形四角形の辺(外形が長方形の場合は長辺)との成す劣角として定義する。
【0034】
《C.各部材の詳細》
次に、本発明で用い得る、帯状コントラスト向上シート10と帯状電磁波遮蔽シート20とについて、更に詳述する。
【0035】
〔帯状コントラスト向上シート〕
帯状コントラスト向上シート10は、少なくともコントラスト向上層1を含む帯状シートであり、また前記第2の実施形態では、その他に、支持体シート2、接着剤層3、反射防止層8a等も含む形態を例示した。ここでは、必須な層であるコントラスト向上層1を中心に、支持体シート2、接着剤層3について説明する。
【0036】
[コントラスト向上層]
コントラスト向上層1は、延在方向を互いに平行に多数配列した直線状の暗色線状部1aと、該暗色線状部1aの少なくとも間に存在する透明樹脂層1bとからなる。透明樹脂層1bは、暗色条部1aを少なくとも側面から(面方向から)支持して、暗色線状部1aを所定の空間配置に維持する機能と、コントラスト向上層1に於いて光を透過する光透過部としての機能を有する。そして、暗色線状部1aが多数配列されてなる暗色線状群がストライプ状の縞模様となる。このとき、面方向に配列した配列周期が周期性を持つと、ディスプレイパネルの画素との重なり具合でモアレが発生する。コントラスト向上層1としては、例えば特開2007−272161号公報などで開示されている公知のものを適宜採用することができる。例えば、前記実施形態で図1、図4、図5などで例示のコントラスト向上層1では暗色線状部1aの主切断面形状は三角形形状であった。
【0037】
なお、暗色線状部1aの大きさとその配列周期は、用途により適宜設定し、二等辺三角形形状とする場合、例えば、底辺の大きさは17μm、高さ120μm、配列周期85μmである。
【0038】
コントラスト向上層1の作用は、外光に対しては、暗色線条部1aがフィルタ面の法線に対して傾斜した方向から来る外光を吸収し、暗色線条部1a同士の間の透明樹脂層1bの部分が画像光を透過する光透過部となる。これによって外光の影響を抑制して、明室コントラストを向上させることができる。また、画像光に対しては、画像光を拡散して視野角を増大したり、画像光を正面方向に集光して正面輝度を増大させたり、することができる。
【0039】
(暗色線条部)
暗色線条部1aは暗色材料で形成され、暗色材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の樹脂組成物を用いることができる。該光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、これら暗色色材でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。
【0040】
上記粒子は、各個の粒子が非凝集で独立している分散形態、或いは複数粒子が凝集して複合粒子となった分散形態の何れでも良い。該粒子の粒径(複合粒子の場合は複合状態での粒径)は、通常、平均粒径0.1〜10μm程度である。又、複数の異なった粒径の粒子を混合しても良い。該暗色色材の添加量は、通常、樹脂バインダのバインダ樹脂100質量部に対して5〜1000質量部である。
【0041】
上記樹脂バインダとしては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は固化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0042】
なお、コントラスト向上層1に画像光を拡散させて視野角を拡大させるときは、暗色線状部1aの側面、例えば主切断面形状が三角形ならば該三角形の斜辺の面で、画像光を効率良く全反射させることが好ましい。この為には、暗色線状部1aの屈折率naと、透明樹脂層1bの屈折率nbとの関係を、na<nbとすると良い。なお、この様な屈折率差は、暗色線状部1aのバインダ樹脂、及び透明樹脂層1bの樹脂を適宜選定することで付与できる。
【0043】
暗色線条部1aの形成は、先に表面に暗色線条部1aとは逆凹凸形状の凹条部を有する透明樹脂層1bを形成した後、該凹条部の中に暗色材料を充填することで形成できる。充填は、例えば、凹条部が形成された透明樹脂層1bの面に、暗色材料を塗布した後、凹条部以外の不要な暗色材料をドクターブレードで掻き取るいわゆるワイピング法によって除去して、凹条部内にのみに暗色材料を残す。その後、暗色材料は固化させる。
【0044】
(透明樹脂層)
透明樹脂層1bは、厚み方向では厚みが、暗色線条部1aの少なくとも厚み以上で、面方向では暗色線条部1a同士の間を埋めて暗色線条部1aを少なくとも側面から支持して機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光透過部を形成する、透明な樹脂層である。図1、図4等では、透明樹脂層1bは暗色線状部1aを(両側)側面と、断面三角形状の頂部側の3方向から支持している例である。なお、透明樹脂層1bの厚みは、暗色線条部1aの高さ(厚み)以上の厚みであり、例えば100〜300μm程度である。
【0045】
透明樹脂層1bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。尚、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は固化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。
【0046】
なお、暗色線条部1aとは逆凹凸形状の凹条部が形成された透明樹脂層1bを形成するには、公知の成形法、例えば、例えば、加熱された成形型を熱可塑性樹脂層に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、電離放射線硬化型樹脂組成物を成形型上(内)に注入して電離放射線で硬化させるフォトポリマー法(別名2P法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、フォトポリマー法は生産性に優れる点でより好ましい。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用して、帯状シートを供給しながら連続的に成形できる。該帯状シートを支持体シート2として、該支持体シート2上に、透明樹脂層1b及び暗色線状部1aを形成してコントラスト向上層1とする。
【0047】
((バイアス角θwの形成))
また、暗色線状部1aを、帯状コントラスト向上シート10の長手方向MDに対して、所定の帯状シート上でのバイアス角θwを有する様に形成するには、上記シリンダ状の成形型で賦形する場合で言えば、シリンダ状の成形型の型面に、円周方向に平行ではなく、ネジ山の様に螺旋状に、透明樹脂層1b上での溝状の凹条部に最終的に対応した型形状を、精密旋盤による切削加工で形成した成形型を用いれば良い。
【0048】
帯状シート上でのバイアス角θwは、前記実施形態の様に、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MDに対して、長方形の枚葉の複合光学フィルタ30の長辺を平行にして切り出して切り出し角αが0°のときは、枚葉の複合光学フィルタ30の長辺に対するバイアス角θと同じにすれば良い。
従って、枚葉シート上でのバイアス角θを、0°<θ<90°にするには、帯状シート上でのバイアス角θwを、0°<θw<90°とすれば良い。
ここで一具体例を挙げれば、上記に於ける切り出し角α=0°のとき、バイアス角θw=バイアス角θ=4.5°である。
【0049】
(暗色線条部の主切断面形状)
ところで、暗色線条部1aの主切断面形状は、特に限定されない。例えば、図1、図4、図5では三角形(二等辺三角形)であったが、この他、不等辺三角形、正方形、長方形、台形、五角形などの面方向に平行な底辺を有する多角形、或いは、三角形や台形などの片側又は両側の斜辺を曲線化して面方向に膨らませた或いは凹ませた形状など、多角形の辺を湾曲化させた形状などである。
ここで、図7は暗色線条部1aの主切断面形状を例示する断面図であり、図7(1)は三角形(二等辺三角形)、図7(2)は五角形、図7(3)は台形、図7(4)は長方形、図7(5)は三角形の両方の斜辺を(図面は外側に向かって凸の場合)曲線化した形状、の例を示す。
【0050】
また、暗色線条部1aの主切断面形状の底辺は、主切断面形状が台形形状で例示すれば、同図の台形形状では底辺は長い方の下底に該当するが、図8(a)で示す様に面方向に平行な直線の他、図8(b)で示す様に底辺が凹状に凹んだ形状、図8(c)で示す様に底辺が凸状に膨らんだ形状でも良い。なお、図8(b)及び図8(c)に例示する底辺は、いずれも、底辺の両端の間が尖った部分つまり尖点(せんてん)がない曲線を成す形状の場合である。すなわち、少なくとも底辺の両端自体は含まない部分での底辺の形状が尖点を持たない曲線からなる場合である。
なお、ここで、暗色線条部1aの主切断面形状の「底辺」とは、面方向での大きさである主切断形状の「幅」が、垂直方向の位置で最も大きい部分である。
【0051】
尚、暗色線条部1aの底辺について、図8(b)の如く凹状に凹んだ形態の場合は、透明樹脂層1bの表面の水準面から凹部の最低部迄の深さが1.5〜7μmであることが、その固有の効果を奏する上で好ましく、接着剤層3との投錨効果による接着性が向上するという長所がある。その反面、該凹部内に気泡が残留し易いという短所もある{図9(a)参照}。なお、図9(a)は、コントラスト向上層1の暗色線状部1aの底辺が凹状に露出した面に対して、他の部材40と貼る際に、該凹状の底辺に気泡Gが残留しやすい事を示す。他の部材40は、図9(b)も含めて、粘着剤層もあり得る接着剤層3を有する例である。
【0052】
一方、図8(c)の如く底辺が凸状に膨らんだ形態の場合は、透明樹脂層1bの表面の水準面から凸部の最高部迄の高さが1.5〜7μmであることが、その固有の効果を奏する上で好ましく、接着剤層3との間の空気が抜け易く気泡が残留し難いという長所が有る。且つ、投錨効果による接着剤層3との接着性が向上する効果も、図8(b)の形態程ではないが多少なりとも期待出来る{図9(b)参照}。なお、図9(b)は、コントラスト向上層1の暗色線状部1aの底辺が凸状に露出した面に対して、他の部材40と貼る際に、該凹状の底辺に空気Gが逃げ易い事を示す。
【0053】
図8(c)の如く暗色線条部1aの底辺が凸状に膨らんだ形態とする手法としては、例えば、以下の(1)、(2)の方法が挙げられる。
(1)透明樹脂層1b上の凹条部に充填する暗色材料の樹脂バインダの一部又は全部を硬化時に体積膨張する硬化性樹脂から構成し、該暗色材料の未硬化物を凹条部に充填後、該硬化性樹脂を硬化させて暗色材料を体積膨張させる。硬化時に体積膨張する樹脂としては、例えば、(I)特開2009−138116号公報記載の、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、分子内にオキセタン基、エポキシ基、水酸基、ビニルエーテル基、又は脂肪族若しくは脂環式不飽和炭化水素基を少なくとも1つ有し、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含むカチオン重合性樹脂組成物に、スピロオルソカーボネート、ジチオカーボネート類等の硬化膨張性モノマーを配合した樹脂組成物、(II)特許第3772913号公報記載の、シアナート樹脂と少なくとも1個以上のフェノール性水酸基を含む化合物とを反応させて得られる、シアナート樹脂硬化物の中間体であるイミドカーボネートと、エポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物、(III)特公昭59−4444号公報記載の、不飽和ポリエステル樹脂オリゴマー、ナフテン酸コバルト、メチルエチルケトンパーオキシドから成る組成物中に、不飽和ポリエステルに対して1.73倍重量以上のスチレンモノマーを加えた樹脂組成物、等が挙げられる。
(2)透明樹脂層1b上の凹条部に充填する暗色材料を構成する樹脂組成物中に熱分解型の発泡剤を添加し、該暗色材料を凹条部に充填後、該発泡剤の熱分解温度以上に加熱し、暗色材料を体積膨張させる。熱分解型の発泡剤の例としては、アゾジカーボンアミド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等が挙げられる。
【0054】
(暗色線状部の底辺の向き)
なお、暗色線条部1aの主切断面形状に於ける底辺の、観察者V(或いはディスプレイパネル)に対する向きは、いずれでも良い。
底辺をディスプレイパネル側に向けた形態は、ディスプレイパネルからの画像光の視野角を広げることができ、逆に、底辺を観察者側に向けた形態は、画像光の視野角を規制することができる。また、底辺の向きがこれらどちらの形態でも、外光、特に暗色線条部1aの配列方向から来る外光の影響を抑制して、明室コントラストを向上させることができる。
また、暗色線条部1aの主切断面形状に於ける底辺の、導電体パターン層4(乃至は帯状電磁波遮蔽シート20)に対する向きも、いずれでも良い。底辺を導電体パターン層4側に向けても良いし、その反対側に向けてもよい。
従って、観察者V(或いはディスプレイパネル)に対する向きと組み合わせると、都合4通りの組合せがあり、どの組合せでも良い。
【0055】
[支持体シート]
支持体シート2は、コントラスト向上層1のみでは機械的強度が不足する場合に、コントラスト向上層1を支持する機能を有する。この様な、支持体シート2としては、透明な樹脂シート(乃至フィルム)を使用できる。なお、「シート」は「フィルム」に対して一般に厚い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。
上記樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、支持体シート2の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
【0056】
[接着剤層]
接着剤層3は、帯状コントラスト向上シート10を、帯状電磁波遮蔽シート20と貼り合わせ密着積層する為のものである。図1を参照した説明では、帯状コントラスト向上シート10の構成要素となり得ることを説明したが、帯状電磁波遮蔽シート20側のその構成要素として設けておいても良く、また、貼り合わせ時に、どちらか一方、又は両方に塗工などで施しても良い。なお、この接着剤層3は、粘着剤層も含み得る。
【0057】
接着剤層3としては、透明で、上記帯状シート同士を接着できるものであれば特に制限はない。この様な接着剤層3は樹脂層として形成でき、該樹脂層の樹脂としては、熱可塑性樹脂の他、積層時までは未硬化とすれば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂も用いることができる。接着剤層3には、これらの樹脂の1種又は2種以上の混合樹脂を用い、更に必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤等が添加された樹脂組成物を用いる。また、通常は該樹脂組成物に更に溶剤希釈した塗液で塗工形成する。なお、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂などが挙げられ、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。又、接着剤層3の厚みは通常1〜500μm程度である。被接着面が帯状電磁波遮蔽シート20の導電体パターン層4側の面の如く凹凸を有する場合は、該凹凸を充填して接着剤層3表面が平坦面となし得るに足る厚みとする。特に、接着剤層3を粘着剤から構成し厚みを200μm以上とすると耐衝撃層(衝撃吸収層)として機能させることが出来る。
【0058】
なお、接着剤層3として粘着剤層を用いる場合は、通常、使用時まで表面を保護するセパレータフィルムを積層しておく。また、粘着剤層とする場合の樹脂は、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤など公知の粘着剤を用いることができる。セパレータフィルムとしては、樹脂フィルムの表面をシリコーン系樹脂やワックス等で剥離性を付与したものを用いることができる。
接着剤層3は、上記の様な樹脂の溶液の塗工、また粘着剤層の場合は粘着シートの積層など、公知の形成法で形成することができる。
【0059】
〔帯状電磁波遮蔽シート〕
帯状電磁波遮蔽シート20は、既に図1(C)、図2及び図3を参照して概説した様に、導電体パターン層4と、透明基材シート5と、これら層間のプライマ層6とを少なくとも含む。しかも、プライマ層6は、導電体パターン層4の形成部4aでの厚さTaが導電体パターン層4の非形成部4bでの厚さTbに比べて厚く、且つ、導電体パターン層4の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、プライマ層6近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である構成のシートである。なお、図3では透明基材シート5の図示は省略してある。
【0060】
[導電体パターン層]
導電体パターン層4は、透明基材シート5上にパターン状に形成された電磁波遮蔽機能を担う層であり、kHz〜GHz帯域の所謂電波領域の電磁波は遮蔽し可視光線は透過するフィルタ機能を有する。また、導電体パターン層4は、導電性粒子Cpとバインダ樹脂とを含む層である。導電体パターン層4は、導電性粒子と樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)を用いて形成でき、導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化させて得られる。
【0061】
上記導電性粒子及び樹脂バインダには公知の物を適宜採用できる。例えば、導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド、或いは、樹脂粒子や無機非金属物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属(乃至その合金)で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子、などを用いる。
【0062】
樹脂バインダは、導電体パターン層4を形成する為の液状の導電性組成物から導電性粒子を除いた残りの成分であり、樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。なお、電子線には通常紫外線や電子線等が用いられる。
【0063】
なお、導電体パターン層4のパターンの平面視形状は、公知の形状など任意であり、例えば、メッシュ形状(六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。導電体パターン層4の非形成部である開口部7(図2参照)の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電体パターン層4の形成部の線幅は、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。また、導電体パターン層4の開口率〔(導電体パターン層4の開口部7の合計面積/導電体パターン層4の開口部7及び導電体パターン層4の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の点から、50〜95%程度である。導電体パターン層4の厚みは電磁波遮蔽性の点からは3μm以上、好ましくは10μm以上とする。又、通常最大100μm以下とする。これ以上の厚みでは、通常用途に於いては過剰性能となる上、パターン形成が困難となったり、導電体パターン層4が外力を受けて破損し易くなる為である。
【0064】
なお、導電体パターン層4も通常は、コントラス向上層1に於けるモアレ防止と同様の観点から、バイアス角γを付ける。このバイアス角γも、0°<γ<90°に設定すると良い。但し、コントラスト向上層1に於けるバイアス角θとは、異なる角度、つまりγ≠θを満たす条件の角度とするのが、導電体パターン層4とコントラスト向上層1とによる、フィルタ内モアレの発生を防ぐ点で好ましい。例えば、該バイアス角γは、正方格子のパターンの場合では、例えば15°、85°等に設定する。
なお、バイアス角γは、前記実施形態の様な切り出し加工(角度α=0°)の場合、帯状シート上でのバイアス角γw=γとして、導電体パターン層4を印刷することで形成することができる。
【0065】
((印刷方式))
なお、導電体パターン層4を透明基材シート5上にパターン状に形成する方法は特に限定はない。公知のパターン形成法を用途、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。形成法の代表的な方法は、導電性組成物を用いた印刷法である。
導電性組成物を用いて導電体パターン層4を印刷形成する場合、その印刷方式としても基本的には特に制限はない。例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷などの有版印刷、或いはインキジェット印刷に代表される無版印刷等である。これらの印刷法の中でも、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された凹版印刷の一種である「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能となる点で好ましい印刷方式の一種であり、しかも、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる。そこで、以下この印刷方式について説明する。
【0066】
「引抜プライマ方式凹版印刷法」を被印刷物が透明基材シート5である場合で説明すると次の様になる。
「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、透明基材シート5上に施した流動状態のままのプライマ流動層上に導電性組成物のインキを凹版印刷する方法であり、しかもその際、版面上に透明基材シート5が存在している間に、版面と透明基材シート5間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで固化させてプライマ層6として固化させた後に透明基材シート5を凹版から離版して、透明基材シート5上にプライマ層6を介してパターン状の導電体パターン層4を印刷形成する方法である。このプライマ層6は流動状態のときに、版から被印刷物へのインキの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインキを引き抜いて被印刷物(透明基材シート5)に移す作用を有する。
【0067】
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図3の断面図(透明基材シート5は略して図示)で概念的に示す様に、プライマ層6と導電体パターン層4との界面について、プライマ層6は、導電体パターン層4の形成部4aでの厚さTaが導電体パターン層4の非形成部4bでの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部4bの厚さTbは、形成部4aの厚さTaの影響のない非形成部4bつまり開口部4の中央部での厚さとする。形成部4aの厚さTaは、通常、非形成部4bの厚さTbに較べて1〜10μm程度厚く形成される。
【0068】
更に、プライマ層6と導電体パターン層4との界面は、次の(A)〜(C)のいずれかの1以上の断面形態を有する(但し、図3では図示は省略)。(A)プライマ層6と導電体パターン層4との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(B)プライマ層6を構成する成分と導電体パターン層4を構成する成分とが混合している混合層を界面近傍に有する断面形態、(C)導電体パターン層4を構成する導電性組成物中にプライマ層6に含まれる成分が存在している断面形態。この様な、界面の断面形態は、プライマ層6がプライマ層6と導電体パターン層4との離版時の密着性を強化し、凹版からインキ(導電性組成物)の被印刷物(透明基材シート5)への転移を促進し高精度且つ高品質の凹版印刷を可能にしている理由であると思われる。
【0069】
また、導電体パターン層4の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、プライマ層6の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であることが好ましい。
すなわち、導電体パターン層4の形成部4aである導電体パターン層4の凸部の内部では、図3で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密で、頂部Pから遠いプライマ層6の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、プライマ層6近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電体パターン層4中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。また、導電性と津上パターン層3の表面への導電性金属層の電解めっき適性が向上する。更に、プライマ層6との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電体パターン層4とプライマ層6との密着性が向上する。
【0070】
なお、導電体パターン層4中に於ける導電性粒子Cpの分布状態は、パターン状に形成された導電体パターン層4の形成部である凸部が透明基材シート5上で延びる方向には依存性を持たない。つまり、図3で示す導電体パターン層4の凸部の断面図は、凸部が延びる方向に直交し且つ透明基材シート5のシート面に垂直な面である主切断面の断面図であり、紙面に垂直な方向が凸部が延びる方向(延在方向)であるが、凸部が延びる延在方向では、主切断面内での位置が同じであれば単位体積中の粒子の数密度は一定である。その為、この様な単位体積中の導電性粒子Cpの数密度は、凸部の主切断面に於ける単位面積中の導電性粒子Cpの数密度(面密度)で評価出来る。すなわち、図3の如く、主切断面内に於いて、導電性粒子Cpの面密度がプライマ層6近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であれば、導電性粒子Cpの体積密度もプライマ層6近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であると判断して良い。
この様に凸部の頂部Pの方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、プライマ流動層形成済みの透明基材シート5を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物は粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差については、通常は金属粒子である導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、となる為、プライマ層6に対して頂部Pを重力の向きと同じ向きにして導電体パターン層4を固化させると良い。
【0071】
[プライマ層]
なお、上記プライマ層6は透明な樹脂層で、その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、導電体パターン層4で列記したバインダ樹脂などを使用できる。
【0072】
[透明基材シート]
透明基材シート5は、連続帯状の樹脂シート(乃至フィルム)が使用される。該樹脂シート(乃至はフィルム)としては、前記した帯状コントラスト向上シート10に於ける支持体シートで列記したもの等が使用できる。よって、ここでは、更なる説明は省略する。
【0073】
〔その他の層〕
前記した実施形態でもそうである様に、帯状コントラスト向上シート10、及び帯状電磁波遮蔽シート20には、その他の層を更に積層したものを用いることができる。
例えば、導電体パターン層4に対しては、その表面の外光反射を低減するための黒化層、導電体パターン層4による凹凸を平坦化する平坦化樹脂層などである。
帯状コントラスト向上シート10及び帯状電磁波遮蔽シート20に共通して、シート面に、ディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層、その面を一時的に保護するセパレータフィルムなどがある。
或いは、各種光学フィルタ、光学フィルタ以外のその他の機能層などである。例えば、光学フィルタは、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などであり、光学フィルタ以外の機能層は、保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層などである。なお、これらの層には公知のものを適宜使用すれば良い。なお光学フィルタは、その機能の1又は2以上を、単層又は多層構成によって実現することができる。
【0074】
なお、例えば、これら光学フィルタは、例えば、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層などは、これらの光学機能に応じた色素(近赤外線吸収色素、ネオン光吸収色素、色補正色素)を用い、紫外線吸収層は紫外線吸収剤を用いるなど、公知の材料・方法で実現できる。例えば、これら材料を樹脂中に分散させた樹脂層として形成することができる。
【0075】
《D.変形形態》
本発明は、上記説明した以外の形態として、例えば、次の様な変形形態もとり得る。
【0076】
なお、上記説明では、暗色条部1aの延在方向は、1方向の場合であったが、該延在方向は複数の方向、例えば2方向に交差させたものでも良い。交差は例えば直角である。
また、帯状複合光学フィルタシート30wから、枚葉の複合光学フィルタ30を切り出すときは、上記説明では、枚葉の複合光学フィルタ30が長方形であり、その長辺の方を、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MDに平行にして、つまり切り出し角α=0°の切り出し条件で切り出したが、その短辺の方を、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MDに平行にして、つまり切り出し角α=90°の切り出し条件で切り出しても良い。もちろん、このときは、帯状シート上でのバイアス角θwは、切り出し後の枚葉シート上でのバイアス角θとはならないが(θ=90°−θwの関係)、結果として目的とする枚葉シート上でのバイアス角θを与える様な、帯状シート上でのバイアス角θwに設定して製造すれば良い。
また、上記説明では、多数配列する暗色線状部1aの形状の夫々は全て同じ前提で説明したが、2以上の複数の異なる形状を配置しても良い。
また、上記説明では、多数配列する暗色線状部1aは延在方向に直線で延びる形状であったが、1本の暗色線状部1aが全体として直線状に延在しているのであれば、直線を変調し例えば波形状の様な直線状であっても良い。
また、上記説明では、帯状コントラスト向上シート10は1枚を帯状電磁波遮蔽シート20と積層したが、同一装置上で或いは別の装置上で、2枚の帯状コントラスト向上シート10を1枚の帯状電磁波遮蔽シート20と積層しても良い。
【0077】
《E.用途》
本発明による複合光学フィルタは、特に、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 コントラスト向上層
1a 暗色線条部
1b 透明樹脂層
2 支持体シート
3,3a 接着剤層
4 導電体パターン層
5 透明基材シート
6 プライマ層
7 開口部
8a 反射防止層
9a 保護フィルム
9b セパレータフィルム
10 帯状コントラスト向上シート
10s 枚葉のコントラスト向上シート
20 帯状電磁波遮蔽シート
20s 枚葉の電磁波遮蔽シート
30 (枚葉の)複合光学フィルタ
30w 帯状複合光学フィルタシート
Cp 導電性粒子
d (暗色線状部の)延在方向
G 空気(気泡)
R1,R2,R3 ロール
α 切り出し角
θ (枚葉シート上での)バイアス角
θw (帯状シート上での)バイアス角
【技術分野】
【0001】
本発明は複合光学フィルタの製造方法に関する。特に、帯状コントラスト向上シートと帯状電磁波遮蔽シートとを、モアレを防ぐ形でロール・ツー・ロール方式で効率的に貼り合わせて複合化できる、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイとして、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。
【0003】
そして、ディスプレイの前面(観察者側面)には、例えばPDPでは、ディスプレイからの電磁波放出が強い為、該電磁波は遮蔽し画像光は透過させる電磁波遮蔽フィルタを配置している。また、ディスプレイから放出される赤外線によるリモートコントローラの誤動作を防ぐ、赤外線吸収フィルタ等の光学フィルタも配置している。この際、光透過率を低下させない為に、各フィルタ間には間隙(空気層)を空けずに粘着剤層などの樹脂層で密着する様に、各々のフィルタ同士を貼り合せて複合化した複合光学フィルタとして用いることが多い。
【0004】
また、複合光学フィルタを構成するフィルタ部材のなかに、コントラスト向上フィルタもある。コントラスト向上フィルタは、通常、ストライプ状の遮光部位(暗色線状部)が面方向に、その延在方向が互いに平行となる様にして多数配列された、面方向に周期性を有する構造のフィルタである。この様なコントラスト向上フィルタをディスプレイの前面に配置すると、ディスプレイパネルが有する画素の区画となる線との重ね合わせによる干渉模様(モアレと呼ばれる)が見えてしまうことがある。このモアレ現象を防ぐため、遮光部位のストライプの延在方向の角度を、モアレが出難い最適値に設定することが知られている(特許文献1)。
【0005】
ここで、図10の斜視図で例示する複合光学フィルタ30は、暗色線状部1aを透明樹脂層1bの層内片面に有するコントラスト向上層1を含むコントラスト向上シート10sと、導電体パターン層4と透明基材シート5とを含む電磁波遮蔽シート20sとが接着剤層3で密着積層された構成である。しかも、前記暗色線状部1aの延在方向dが複合光学フィルタ30の外形の辺と0度でも90度でもない角度θに設定されている一例である。この様に、ディスプレイの前面に複合光学フィルタ30を配置するときは、暗色線状部1aの延在方向には角度θが付けておく。
なお、この角度を、以降「バイアス角」と言うことにする。更に、バイアス角θを有するとは、角度θが0度及び90度以外の角度である事を言うことにする。具体的には、バイアス角を、0°<θ<90°の角度範囲に設定する。
【0006】
ところで、ストライプ状の遮光部位を有するコントラスト向上フィルタの製造は、例えば、ロール・ツー・ロール方式で、透明な帯状支持体シートをロールから巻き出して搬送し、この帯状支持体シートの片面に、搬送方向に平行な凹状溝を多数配列した透明樹脂層1bを金型を用いて賦型した後、該凹状溝の凹部の中に暗色材料を埋め込んで遮光部位(暗色線状部1a)を形成している。
このため、コントラスト向上フィルタをディスプレイパネルの水平方向に対して0度及び90度以外の角度のバイアス角θを持たせて配置する場合には、ロール・ツー・ロール方式で製造された帯状シートから、角度をつけて打ち抜く工程が必要であった。
ここで、図11は、この角度付き打ち抜き加工を概念的に示す説明図である。帯状コントラスト向上シート10は、ストライプ状の遮光部位を成す暗色線状部1aの延在方向dは、その製造時の搬送方向MDに対して平行であり、また、暗色線状部1aの配列方向は、搬送方向MDに直交するシートの幅方向TDに平行である(バイアス角θw=0°)。この為、枚葉のコントラスト向上シート10sにバイアス角θを持たせたものを製造するには、同図の様に、該枚葉のコントラスト向上シート10sを、搬送方向MDに対して角度αを付けて打ち抜くことで製造できる。この場合は、該打ち抜き角度αがバイアス角θwに対応する。
【0007】
また、プラズマディスプレイパネル用の光学フィルタには、パネルから放射される電磁波を遮蔽するため、導電性を有する導電体パターン層4を透明基材シート上5に設ける等した電磁波遮蔽シート(電磁波遮蔽フィルタ)が必要である。この電磁波遮蔽シートの製造も、通常、帯状透明基材シートのロールを用いて、ロール・ツー・ロール方式で製造している。
【0008】
この為、図10の様な、コントラスト向上シート10sと電磁波遮蔽シート20sとを積層して複合化した、複合化光学フィルタ30を製造しようとする場合、コントラスト向上シート10sは電磁波遮蔽シート20sと積層する前に、図10の様に、バイアス角θを持たせる様に、図11の如く所定角度及び所定寸法に打ち抜いた後で貼り合せていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−313360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、所定角度及び所定寸法に打ち抜く、角度付き打ち抜き加工は、図11でも分かる様に、廃棄される部分が多く存在すること、またその後の貼り合せ加工を枚葉のシート同士で行わなければならず、ロール・ツー・ロール方式を適用できず、生産効率が悪かった。
その上、角度付き打ち抜き加工と、貼り合せ加工の独立した2工程が必要となる点で、生産効率が悪かった。
【0011】
すなわち、本発明の課題は、コントラスト向上シートと電磁波遮蔽シートとを含む複合光学フィルタとして、コントラスト向上シートがバイアス角を有する複合光学フィルタを、ロール・ツー・ロール方式で生産効率よく、貼り合せできる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明では、次の様な構成の、複合光学フィルタの製造方法とした。
(1)ロールから巻き出した帯状コントラスト向上シートとロールから巻き出した帯状電磁波遮蔽シートとを貼り合せ、得られた帯状複合光学フィルタシートをロールに巻き取る、ロール・ツー・ロール方式での複合光学フィルタの製造方法であって、
上記帯状コントラスト向上シートは、多数配列した暗色線状部と該暗色線状部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とを有するコントラスト向上層を含み、上記帯状電磁波遮蔽シートは、透明基材シートと該透明基材シート上にプライマ層を介して形成された導電体パターン層を含み、該プライマ層は前記導電体パターン層の形成部での厚さが導電体パターン層の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電体パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であり、
前記帯状コントラスト向上シートの前記暗色線状部の延在方向が該帯状コントラスト向上シートの長手方向(搬送方向)に対する角度である帯状シート上でのバイアス角θwが、0°<θw<90°である、複合光学フィルタの製造方法。
(2)上記(1)において、上記帯状複合光学フィルタシートから更に、所定角度及び所定寸法で切り出して、四角形で枚葉の複合光学フィルタを製造する際に、前記帯状複合光学フィルタシートの長手方向(搬送方向)と枚葉の複合光学フィルタの外形4辺のうちの対向する何れか2辺が平行になる所定角度で切り出す、複合光学フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明によれば、帯状コントラスト向上シートとして最初から帯状シート上でバイアス角θwを有するものを用いるので、そのまま、ロール・ツー・ロール方式で帯状電磁波遮蔽シートと貼り合わせて、複合光学フィルタとして、バイアス角θwを持った帯状複合光学フィルタシートを製造出来、生産性が向上する。このため、下記(2)の様に、打ち抜き加工などで枚葉シートに切り出す時に切り出し角αを付けて(α≠0°)切り出す必要がなく、無駄を減らせる。
(2)そして、帯状複合光学フィルタシートから、打ち抜き加工などで枚葉シートの複合光学フィルタを切り出すときは、切り出し角αを付ける必要がなく切り出し角αは長手方向に平行で良いので(α=0°)、帯状シートから切り出す時の余白部分の面積を小さくできる。このため、廃棄する部分が少なくなり材料ロスを減らせ、その分低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による複合光学フィルタの製造方法を概念的に説明する説明面であり、図中、特に(A)は帯状コントラスト向上シートの平面図、(B)は同シートの拡大断面図、(C)は帯状電磁波遮蔽シートの拡大断面図、(D)は帯状複合光学フィルタシートの平面図、(E)は同シートの拡大断面図について各形態例を示す。
【図2】帯状電磁波遮蔽シートをその一形態例で詳しく示す断面図。
【図3】導電体パターン層の凸部(形成部)周辺にて、導電体パターン層の非形成部よりも形成部でプライマ層が厚く、導電体パターン層の凸部内での導電性粒子の分布が凸部の頂部近くが密でプライマ層近くが疎の形態を、概念的に示す断面図。
【図4】複合光学フィルタ(乃至はフィルタシート)をその一形態で例示する断面図。
【図5】本発明による帯状複合光学フィルタシートから、枚葉の複合光学フィルタを切り出すときの切り出し角度を示す平面図。
【図6】複合光学フィルタ(乃至はフィルタシート)を別の一形態で例示する断面図。
【図7】暗色線条部の主切断面形状の各種例を例示する断面図。
【図8】暗色線条部の主切断面形状に於ける底辺が平坦、凹状、凸状の3形態を例示する断面図。
【図9】暗色線条部の主切断面形状に於ける底辺が凹状と凸状の場合の空気の残留の具合を説明する断面図。
【図10】バイアス角を有する複合光学フィルタを説明する斜視図。
【図11】従来の、バイアス角の無い帯状コンラスト向上シートからバイアス角の有る枚葉のコンラスト向上シートを製造する角度付き打ち抜き加工を概念的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
《A1.第1の実施形態》
本発明による、複合光学フィルタの製造方法について、先ず図1〜図5を参照して、その実施形態を説明する。
【0017】
本発明では、図1で示す様に、帯状コントラスト向上シート10と、帯状電磁波遮蔽シート20とを、それぞれロールR1、R2から巻き出して、これらを貼り合わせて、複合光学フィルタとして、帯状複合光学フィルタシート30wを作製し、ロールR3に巻き取って製造する。この後、後述する様に、ロールR3から巻き出した帯状複合光学フィルタシート30wから、図5の様に所定角度(切り出し角α=0°)及び所定寸法で切り出して、図10に例示の様な枚葉の複合光学フィルタ30を製造する。
なお、「ロール・ツー・ロール方式」とは、被加工材をロールから巻き出した帯状の形態として供給し、適宜の加工を施した後、ロールに巻き取る加工形態のことをいう。
【0018】
[帯状コントラスト向上シート]
ロールR1から巻き出す、帯状コントラスト向上シート10は、図1(A)の平面図、図1(B)の断面図で示す様に、少なくとも、コントラス向上層1を含むシートである。コントラスト向上層1は、多数配列した暗色線状部1aを有し、該暗色線状部1aは透明樹脂層1bの層内部で且つ通常は層の片面に露出する形で支持されている。また、暗色線状部1aの延在方向が、帯状コントラスト向上シート10の長手方向MD(搬送方向MD)と成す劣角として定義される、帯状シート上(ウェブ上)でのバイアス角θwは0度及び90度以外の角度の、0°<θw<90°であり、バイアス角を持っている。
【0019】
また、帯状コントラスト向上シート10は、図1(B)で点線で示す様に、更に、コントラスト向上層1を支持する透明な帯状の支持体シート2、帯状電磁波遮蔽シート20などの他の被着体と貼り合わせる為の、接着剤層3などを含み得る(但し、図示の簡略化の為、図1(B)に於いては、これらの層は図示を略す)。
【0020】
[帯状電磁波遮蔽シート]
一方、ロールR2から巻き出す、帯状電磁波遮蔽シート20は、図1(C)の断面図で示す様に、導電体パターン層4が透明基材シート5上に形成されており、更に詳しくは、図2の断面図で例示する如く、導電体パターン層4はプライマ層6を介して透明基材シート5上に形成されたものであり、少なくとも、この導電体パターン層4、プライマ層6及び透明基材シート5を含むシートである。しかも、該プライマ層6は、導電体パターン層4の形成部での厚さが導電体パターン層4の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電体パターン層4の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、図3の拡大断面図に示すように、相対的に、プライマ層6近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である構成のシートである。また、導電体パターン層4の非形成部である開口部7が光透過性確保の為の領域となっている。
【0021】
[貼り合わせ]
そして、本発明では、上記帯状コントラスト向上シート10と、上記帯状電磁波遮蔽シート20とを、帯状シートのまま、ラミネートローラなどで圧着して、貼り合わせることで、複合光学フィルタとして帯状複合光学フィルタシート30wを製造し、ロールR3に巻き取る。
帯状複合光学フィルタシート30wは、図1(D)の平面図、図1(E)の断面図で示す様に、帯状コントラスト向上シート10と同じままの、帯状シート上でのバイアス角θwを持っている。そして、図1(E)では、枚葉化された帯状コントラスト向上シート10と、枚葉化された帯状電磁波遮蔽シート20とが接着剤層3を介して、密着積層された構成例を示す。
図1(E)を更に詳しく示した図面が図4の断面図であり、図4に示す帯状複合光学フィルタシート30w(乃至は、複合光学フィルタ30の断面図である。図4では、更にプライマ層6、及び導電体パターン層4中の導電性粒子Cpも明示してある。
【0022】
[(角度無し)切り出し加工]
次に、ロールR3に巻き取った帯状複合光学フィルタシート30wから、所定角度及び所定寸法に切り出して、所定角度のバイアス角及び所定寸法の外形形状の、枚葉の複合光学フィルタ30を製造する。なお、所定角度及び所定寸法に切り出すには、打ち抜き加工など公知の裁断方法で良い。
図5は、この切り出し加工を概念的に説明する平面図である。本切り出し加工の工程では、既に帯状複合光学フィルタシート30wが備えるコンラスト向上シート10に於ける暗色線状部1aにバイアス角θwを持たせてある。すなちわ、バイアス角θwはゼロ度以外の角度で、0°<θw<90°を満たす角度に設定されている。従って、切り出し加工は、図10で説明した従来の角度付き切り出し加工の様に、角度を付けて切り出す必要はない。つまり、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MD(搬送方向MD)と、切り出すべき枚葉の複合光学フィルタ30の外形4辺のうちの対向する何れか2辺が平行になる所定角度の切り出し角αで切り出せば良い。該切り出し角αはゼロ度である(α=0°)。
【0023】
この様に、切り出し角αは長手方向MDに平行で良く、図11の如く帯状複合光学フィルタシート30wのバイアス角が0°の場合に比べて、切り出す時の余白部分の面積を小さくできる(最小の場合は余白部分の面積を0にすることも可能)。その為、廃棄する部分が少なくなり材料ロスを減らせ、その分低コストで製造できることになる。
【0024】
《A2.第2の実施形態》
ここで、上記第1の実施形態において、帯状コントラスト向上シート10、及び、帯状電磁波遮蔽シート20の夫々を、次の様な構成の帯状シートとした場合を、第2の実施形態として、更に説明する。なお、帯状シートの説明は、これら帯状シート同士を積層後の帯状複合光学フィルタシート30w(乃至は枚葉の複合光学フィルタ30を兼ねる)断面図である図6を参照して行う。
【0025】
[帯状コントラスト向上シート]
帯状コントラスト向上シート10は、暗色線状部1aと透明樹脂層1bとからなるコントラスト向上層1の片面に、反射防止層8aが形成された透明で帯状の支持体シート2、最終的には剥離する保護フィルム9aが積層され、また、コントララスト向上層1の他方の面に粘着剤層として接着剤層3、この接着剤層3の粘着面を一時的に保護するセパレータフィルム(積層後の図6では不図示)が積層された構成の帯状シートである。従って、観察者V側から言うと、保護フィルム9a、反射防止層8a、支持体シート2、コントラスト向上層1、接着剤層3、セパレータフィルム(不図示)、が積層された構成の帯状シートである。
【0026】
なお、この様な構成の帯状コントラスト向上シート10は、例えば、次の様にして準備することができる。先ず、保護フィルム9aを反射防止面に貼った反射防止層8a付きの支持体シート2に対して、その反射防止層8aとは反対側の裏面に対し、コントラスト向上層1を形成する。コントラスト向上層の形成は、帯状シート上での所定のバイアス角θwの暗色線状部1aとは逆凹凸形状の溝状の凹条部を透明樹脂層1bの表面に賦形する為に、該溝状の凹条部とは逆凹凸形状が(円周方向に対して)前記所定のバイアス角θwで螺旋状に形成されたロール状の賦形型を準備し、この型面に透明の紫外線硬化樹脂を塗布したのち、前記支持体シートの裏面に密着させて、反射防止層付き支持体シート2(及び保護フィルム9aを介して)、紫外線を照射して、所定の凹条部を有する透明樹脂層1bを形成する。そして、この透明樹脂層1bの凹条部が形成された面上に、暗色材料(暗色紫外線硬化樹脂)を塗布し、凹条部の内部にのみ暗色材料が充填されるよう、表面の不要な暗色材料は掻き取った後、紫外線を照射し固化させて、コントラスト向上層1を形成する。そして、コントラスト向上層1の前記暗色材料を充填した側の面に、透明粘着フィルムをラミネートして、粘着剤層として接着剤層3と、その粘着面にセパレータフィルムが積層された構成の帯状コントラスト向上シート10とする。そして、所定幅にスリットした後、連続帯状シートとしてロールに巻き取る。
【0027】
[帯状電磁波遮蔽シート]
一方、帯状電磁波遮蔽シート20は、透明基材シート5の片面にプライマ層6を介して導電体パターン層4が形成され、他方の面に着色された粘着剤層として接着剤層3aと、セパレータフィルム9bが積層された構成の帯状シートである。これを、積層後の状態で観察者V側から言うと、導電体パターン層4、プライマ層6、透明基材シート5、接着剤層3a、セパレータフィルム9bが積層された構成の帯状シートである。なお、上記接着剤層3aの着色は、画像光に対する色補正機能を有する。
【0028】
なお、この様な構成の帯状電磁波遮蔽シート20は、例えば、次の様にして準備することができる。先ず、導電体パターン層4がプライマ層6を介して透明基材シート5上に印刷形成された印刷メッシュシートを連続帯状で作製し一旦ロールに巻き取る。そして、このロールを巻き出して導電体パターン層4がない方の透明基材シート5の面に、着色された粘着フィルムをラミネートして、粘着剤層として着色された接着剤層3と、その粘着面にセパレータフィルム9bが積層された構成の帯状電磁波遮蔽シート20とする。そして、前記帯状コントラスト向上シート10のスリット幅よりも、20mm広い幅でスリットした後、連続帯状シートとしてロールに巻き取る。
【0029】
[貼り合わせ]
そして、これら2本の連続帯状シートのロールを、図1の様に、ロール・ツー・ロール方式のラミネート装置により、シート幅方向の中心をそろえて幅方向両端に10mmずつ導電体パターン層4がむき出しになって露出する様に、帯状コントラスト向上シート10の(セパレータフィルムを剥がした後の)接着剤層3の粘着面と、帯状電磁波遮蔽シート20の導電体パターン層4の面とで貼り合せ、貼り合わせて得られた、複合光学フィルタシート30wを連続帯状シートとしてロールに巻き取る。
【0030】
[(角度無し)切り出し加工]
そして後は、前記第1の実施形態と同じ様にして、(角度無し)切り出し加工を行えば、枚葉の複合光学フィルタシート30が得られる。
【0031】
この様に、反射防止機能や、色補正機能などの各種機能を持たせた複合光学フィルタにおいても、前記した同様に、切り出す時の余白部分の面積を小さくできるので、廃棄する部分が少なくなり材料ロスを減らせ、その分低コストで製造できる。しかも、ロール・ツー・ロール方式で生産できるので、生産性も高い。
【0032】
《B.用語の定義》
以下、バイアス角と切り出し角について説明する。
【0033】
バイアス角θwは、暗色線状部1aの延在方向dと、帯状コントラスト向上シート10乃至は帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MD(搬送方向MD)との成す劣角として定義する(図5参照)。
バイアス角θは、暗色線状部1aの延在方向dと、外形四角形形状で枚葉の複合コントラスト向上シート30の四辺の何れかの辺との成す劣角として定義するが、外形四角形形状が長方形の場合は長辺の方を優先して、該長辺と成す劣角として定義する(図10参照)。尚、図1(A)を初めとする各図に於いては、バイアス角θwはコントラスト向上層1或いは複合光学フィルタ30の長手方向MDと平行な辺から左回りに設定されている(暗色線条部1aが左下から右上方向に走行している)。但し、本発明に於いては、バイアス角θwの向きの設定はこのような形態には限定され無い。図1(A)等とは逆に、バイアス角θwを帯状のコントラスト向上層1或いは複合光学フィルタ30の長手方向の辺から右回りに設定(暗色線条部1aは右下から左上方向に走行する)しても良い。バイアス角θwを右回り、左回りの何れに設定しても画素或い導電体パターン層4とのモアレ防止效果の点では同等である。
切り出し角αは、帯状シートから、外形四角形形状の枚葉の複合光学フィルタ30又は枚葉のコントラスト向上シート10sを切り出すときの、これら枚葉シートの四辺の何れかの辺と前記帯状シートの長手方向MD(搬送方向MD)との成す劣角として定義するが、外形四角形形状が長方形の場合は長辺の方を優先して、該長辺と成す劣角として定義する(図10参照)。
導電体パターン層4に於けるバイアス角γは、平面視のパターンに於ける線(ライン)が延在する方向と、枚葉の複合光学フィルタ30の外形四角形の辺(外形が長方形の場合は長辺)との成す劣角として定義する。
【0034】
《C.各部材の詳細》
次に、本発明で用い得る、帯状コントラスト向上シート10と帯状電磁波遮蔽シート20とについて、更に詳述する。
【0035】
〔帯状コントラスト向上シート〕
帯状コントラスト向上シート10は、少なくともコントラスト向上層1を含む帯状シートであり、また前記第2の実施形態では、その他に、支持体シート2、接着剤層3、反射防止層8a等も含む形態を例示した。ここでは、必須な層であるコントラスト向上層1を中心に、支持体シート2、接着剤層3について説明する。
【0036】
[コントラスト向上層]
コントラスト向上層1は、延在方向を互いに平行に多数配列した直線状の暗色線状部1aと、該暗色線状部1aの少なくとも間に存在する透明樹脂層1bとからなる。透明樹脂層1bは、暗色条部1aを少なくとも側面から(面方向から)支持して、暗色線状部1aを所定の空間配置に維持する機能と、コントラスト向上層1に於いて光を透過する光透過部としての機能を有する。そして、暗色線状部1aが多数配列されてなる暗色線状群がストライプ状の縞模様となる。このとき、面方向に配列した配列周期が周期性を持つと、ディスプレイパネルの画素との重なり具合でモアレが発生する。コントラスト向上層1としては、例えば特開2007−272161号公報などで開示されている公知のものを適宜採用することができる。例えば、前記実施形態で図1、図4、図5などで例示のコントラスト向上層1では暗色線状部1aの主切断面形状は三角形形状であった。
【0037】
なお、暗色線状部1aの大きさとその配列周期は、用途により適宜設定し、二等辺三角形形状とする場合、例えば、底辺の大きさは17μm、高さ120μm、配列周期85μmである。
【0038】
コントラスト向上層1の作用は、外光に対しては、暗色線条部1aがフィルタ面の法線に対して傾斜した方向から来る外光を吸収し、暗色線条部1a同士の間の透明樹脂層1bの部分が画像光を透過する光透過部となる。これによって外光の影響を抑制して、明室コントラストを向上させることができる。また、画像光に対しては、画像光を拡散して視野角を増大したり、画像光を正面方向に集光して正面輝度を増大させたり、することができる。
【0039】
(暗色線条部)
暗色線条部1aは暗色材料で形成され、暗色材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の樹脂組成物を用いることができる。該光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、これら暗色色材でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。
【0040】
上記粒子は、各個の粒子が非凝集で独立している分散形態、或いは複数粒子が凝集して複合粒子となった分散形態の何れでも良い。該粒子の粒径(複合粒子の場合は複合状態での粒径)は、通常、平均粒径0.1〜10μm程度である。又、複数の異なった粒径の粒子を混合しても良い。該暗色色材の添加量は、通常、樹脂バインダのバインダ樹脂100質量部に対して5〜1000質量部である。
【0041】
上記樹脂バインダとしては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は固化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0042】
なお、コントラスト向上層1に画像光を拡散させて視野角を拡大させるときは、暗色線状部1aの側面、例えば主切断面形状が三角形ならば該三角形の斜辺の面で、画像光を効率良く全反射させることが好ましい。この為には、暗色線状部1aの屈折率naと、透明樹脂層1bの屈折率nbとの関係を、na<nbとすると良い。なお、この様な屈折率差は、暗色線状部1aのバインダ樹脂、及び透明樹脂層1bの樹脂を適宜選定することで付与できる。
【0043】
暗色線条部1aの形成は、先に表面に暗色線条部1aとは逆凹凸形状の凹条部を有する透明樹脂層1bを形成した後、該凹条部の中に暗色材料を充填することで形成できる。充填は、例えば、凹条部が形成された透明樹脂層1bの面に、暗色材料を塗布した後、凹条部以外の不要な暗色材料をドクターブレードで掻き取るいわゆるワイピング法によって除去して、凹条部内にのみに暗色材料を残す。その後、暗色材料は固化させる。
【0044】
(透明樹脂層)
透明樹脂層1bは、厚み方向では厚みが、暗色線条部1aの少なくとも厚み以上で、面方向では暗色線条部1a同士の間を埋めて暗色線条部1aを少なくとも側面から支持して機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光透過部を形成する、透明な樹脂層である。図1、図4等では、透明樹脂層1bは暗色線状部1aを(両側)側面と、断面三角形状の頂部側の3方向から支持している例である。なお、透明樹脂層1bの厚みは、暗色線条部1aの高さ(厚み)以上の厚みであり、例えば100〜300μm程度である。
【0045】
透明樹脂層1bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。尚、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は固化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。
【0046】
なお、暗色線条部1aとは逆凹凸形状の凹条部が形成された透明樹脂層1bを形成するには、公知の成形法、例えば、例えば、加熱された成形型を熱可塑性樹脂層に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、電離放射線硬化型樹脂組成物を成形型上(内)に注入して電離放射線で硬化させるフォトポリマー法(別名2P法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、フォトポリマー法は生産性に優れる点でより好ましい。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用して、帯状シートを供給しながら連続的に成形できる。該帯状シートを支持体シート2として、該支持体シート2上に、透明樹脂層1b及び暗色線状部1aを形成してコントラスト向上層1とする。
【0047】
((バイアス角θwの形成))
また、暗色線状部1aを、帯状コントラスト向上シート10の長手方向MDに対して、所定の帯状シート上でのバイアス角θwを有する様に形成するには、上記シリンダ状の成形型で賦形する場合で言えば、シリンダ状の成形型の型面に、円周方向に平行ではなく、ネジ山の様に螺旋状に、透明樹脂層1b上での溝状の凹条部に最終的に対応した型形状を、精密旋盤による切削加工で形成した成形型を用いれば良い。
【0048】
帯状シート上でのバイアス角θwは、前記実施形態の様に、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MDに対して、長方形の枚葉の複合光学フィルタ30の長辺を平行にして切り出して切り出し角αが0°のときは、枚葉の複合光学フィルタ30の長辺に対するバイアス角θと同じにすれば良い。
従って、枚葉シート上でのバイアス角θを、0°<θ<90°にするには、帯状シート上でのバイアス角θwを、0°<θw<90°とすれば良い。
ここで一具体例を挙げれば、上記に於ける切り出し角α=0°のとき、バイアス角θw=バイアス角θ=4.5°である。
【0049】
(暗色線条部の主切断面形状)
ところで、暗色線条部1aの主切断面形状は、特に限定されない。例えば、図1、図4、図5では三角形(二等辺三角形)であったが、この他、不等辺三角形、正方形、長方形、台形、五角形などの面方向に平行な底辺を有する多角形、或いは、三角形や台形などの片側又は両側の斜辺を曲線化して面方向に膨らませた或いは凹ませた形状など、多角形の辺を湾曲化させた形状などである。
ここで、図7は暗色線条部1aの主切断面形状を例示する断面図であり、図7(1)は三角形(二等辺三角形)、図7(2)は五角形、図7(3)は台形、図7(4)は長方形、図7(5)は三角形の両方の斜辺を(図面は外側に向かって凸の場合)曲線化した形状、の例を示す。
【0050】
また、暗色線条部1aの主切断面形状の底辺は、主切断面形状が台形形状で例示すれば、同図の台形形状では底辺は長い方の下底に該当するが、図8(a)で示す様に面方向に平行な直線の他、図8(b)で示す様に底辺が凹状に凹んだ形状、図8(c)で示す様に底辺が凸状に膨らんだ形状でも良い。なお、図8(b)及び図8(c)に例示する底辺は、いずれも、底辺の両端の間が尖った部分つまり尖点(せんてん)がない曲線を成す形状の場合である。すなわち、少なくとも底辺の両端自体は含まない部分での底辺の形状が尖点を持たない曲線からなる場合である。
なお、ここで、暗色線条部1aの主切断面形状の「底辺」とは、面方向での大きさである主切断形状の「幅」が、垂直方向の位置で最も大きい部分である。
【0051】
尚、暗色線条部1aの底辺について、図8(b)の如く凹状に凹んだ形態の場合は、透明樹脂層1bの表面の水準面から凹部の最低部迄の深さが1.5〜7μmであることが、その固有の効果を奏する上で好ましく、接着剤層3との投錨効果による接着性が向上するという長所がある。その反面、該凹部内に気泡が残留し易いという短所もある{図9(a)参照}。なお、図9(a)は、コントラスト向上層1の暗色線状部1aの底辺が凹状に露出した面に対して、他の部材40と貼る際に、該凹状の底辺に気泡Gが残留しやすい事を示す。他の部材40は、図9(b)も含めて、粘着剤層もあり得る接着剤層3を有する例である。
【0052】
一方、図8(c)の如く底辺が凸状に膨らんだ形態の場合は、透明樹脂層1bの表面の水準面から凸部の最高部迄の高さが1.5〜7μmであることが、その固有の効果を奏する上で好ましく、接着剤層3との間の空気が抜け易く気泡が残留し難いという長所が有る。且つ、投錨効果による接着剤層3との接着性が向上する効果も、図8(b)の形態程ではないが多少なりとも期待出来る{図9(b)参照}。なお、図9(b)は、コントラスト向上層1の暗色線状部1aの底辺が凸状に露出した面に対して、他の部材40と貼る際に、該凹状の底辺に空気Gが逃げ易い事を示す。
【0053】
図8(c)の如く暗色線条部1aの底辺が凸状に膨らんだ形態とする手法としては、例えば、以下の(1)、(2)の方法が挙げられる。
(1)透明樹脂層1b上の凹条部に充填する暗色材料の樹脂バインダの一部又は全部を硬化時に体積膨張する硬化性樹脂から構成し、該暗色材料の未硬化物を凹条部に充填後、該硬化性樹脂を硬化させて暗色材料を体積膨張させる。硬化時に体積膨張する樹脂としては、例えば、(I)特開2009−138116号公報記載の、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、分子内にオキセタン基、エポキシ基、水酸基、ビニルエーテル基、又は脂肪族若しくは脂環式不飽和炭化水素基を少なくとも1つ有し、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含むカチオン重合性樹脂組成物に、スピロオルソカーボネート、ジチオカーボネート類等の硬化膨張性モノマーを配合した樹脂組成物、(II)特許第3772913号公報記載の、シアナート樹脂と少なくとも1個以上のフェノール性水酸基を含む化合物とを反応させて得られる、シアナート樹脂硬化物の中間体であるイミドカーボネートと、エポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物、(III)特公昭59−4444号公報記載の、不飽和ポリエステル樹脂オリゴマー、ナフテン酸コバルト、メチルエチルケトンパーオキシドから成る組成物中に、不飽和ポリエステルに対して1.73倍重量以上のスチレンモノマーを加えた樹脂組成物、等が挙げられる。
(2)透明樹脂層1b上の凹条部に充填する暗色材料を構成する樹脂組成物中に熱分解型の発泡剤を添加し、該暗色材料を凹条部に充填後、該発泡剤の熱分解温度以上に加熱し、暗色材料を体積膨張させる。熱分解型の発泡剤の例としては、アゾジカーボンアミド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等が挙げられる。
【0054】
(暗色線状部の底辺の向き)
なお、暗色線条部1aの主切断面形状に於ける底辺の、観察者V(或いはディスプレイパネル)に対する向きは、いずれでも良い。
底辺をディスプレイパネル側に向けた形態は、ディスプレイパネルからの画像光の視野角を広げることができ、逆に、底辺を観察者側に向けた形態は、画像光の視野角を規制することができる。また、底辺の向きがこれらどちらの形態でも、外光、特に暗色線条部1aの配列方向から来る外光の影響を抑制して、明室コントラストを向上させることができる。
また、暗色線条部1aの主切断面形状に於ける底辺の、導電体パターン層4(乃至は帯状電磁波遮蔽シート20)に対する向きも、いずれでも良い。底辺を導電体パターン層4側に向けても良いし、その反対側に向けてもよい。
従って、観察者V(或いはディスプレイパネル)に対する向きと組み合わせると、都合4通りの組合せがあり、どの組合せでも良い。
【0055】
[支持体シート]
支持体シート2は、コントラスト向上層1のみでは機械的強度が不足する場合に、コントラスト向上層1を支持する機能を有する。この様な、支持体シート2としては、透明な樹脂シート(乃至フィルム)を使用できる。なお、「シート」は「フィルム」に対して一般に厚い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。
上記樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、支持体シート2の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
【0056】
[接着剤層]
接着剤層3は、帯状コントラスト向上シート10を、帯状電磁波遮蔽シート20と貼り合わせ密着積層する為のものである。図1を参照した説明では、帯状コントラスト向上シート10の構成要素となり得ることを説明したが、帯状電磁波遮蔽シート20側のその構成要素として設けておいても良く、また、貼り合わせ時に、どちらか一方、又は両方に塗工などで施しても良い。なお、この接着剤層3は、粘着剤層も含み得る。
【0057】
接着剤層3としては、透明で、上記帯状シート同士を接着できるものであれば特に制限はない。この様な接着剤層3は樹脂層として形成でき、該樹脂層の樹脂としては、熱可塑性樹脂の他、積層時までは未硬化とすれば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂も用いることができる。接着剤層3には、これらの樹脂の1種又は2種以上の混合樹脂を用い、更に必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤等が添加された樹脂組成物を用いる。また、通常は該樹脂組成物に更に溶剤希釈した塗液で塗工形成する。なお、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂などが挙げられ、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。又、接着剤層3の厚みは通常1〜500μm程度である。被接着面が帯状電磁波遮蔽シート20の導電体パターン層4側の面の如く凹凸を有する場合は、該凹凸を充填して接着剤層3表面が平坦面となし得るに足る厚みとする。特に、接着剤層3を粘着剤から構成し厚みを200μm以上とすると耐衝撃層(衝撃吸収層)として機能させることが出来る。
【0058】
なお、接着剤層3として粘着剤層を用いる場合は、通常、使用時まで表面を保護するセパレータフィルムを積層しておく。また、粘着剤層とする場合の樹脂は、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤など公知の粘着剤を用いることができる。セパレータフィルムとしては、樹脂フィルムの表面をシリコーン系樹脂やワックス等で剥離性を付与したものを用いることができる。
接着剤層3は、上記の様な樹脂の溶液の塗工、また粘着剤層の場合は粘着シートの積層など、公知の形成法で形成することができる。
【0059】
〔帯状電磁波遮蔽シート〕
帯状電磁波遮蔽シート20は、既に図1(C)、図2及び図3を参照して概説した様に、導電体パターン層4と、透明基材シート5と、これら層間のプライマ層6とを少なくとも含む。しかも、プライマ層6は、導電体パターン層4の形成部4aでの厚さTaが導電体パターン層4の非形成部4bでの厚さTbに比べて厚く、且つ、導電体パターン層4の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、プライマ層6近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である構成のシートである。なお、図3では透明基材シート5の図示は省略してある。
【0060】
[導電体パターン層]
導電体パターン層4は、透明基材シート5上にパターン状に形成された電磁波遮蔽機能を担う層であり、kHz〜GHz帯域の所謂電波領域の電磁波は遮蔽し可視光線は透過するフィルタ機能を有する。また、導電体パターン層4は、導電性粒子Cpとバインダ樹脂とを含む層である。導電体パターン層4は、導電性粒子と樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)を用いて形成でき、導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化させて得られる。
【0061】
上記導電性粒子及び樹脂バインダには公知の物を適宜採用できる。例えば、導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド、或いは、樹脂粒子や無機非金属物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属(乃至その合金)で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子、などを用いる。
【0062】
樹脂バインダは、導電体パターン層4を形成する為の液状の導電性組成物から導電性粒子を除いた残りの成分であり、樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。なお、電子線には通常紫外線や電子線等が用いられる。
【0063】
なお、導電体パターン層4のパターンの平面視形状は、公知の形状など任意であり、例えば、メッシュ形状(六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。導電体パターン層4の非形成部である開口部7(図2参照)の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電体パターン層4の形成部の線幅は、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。また、導電体パターン層4の開口率〔(導電体パターン層4の開口部7の合計面積/導電体パターン層4の開口部7及び導電体パターン層4の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の点から、50〜95%程度である。導電体パターン層4の厚みは電磁波遮蔽性の点からは3μm以上、好ましくは10μm以上とする。又、通常最大100μm以下とする。これ以上の厚みでは、通常用途に於いては過剰性能となる上、パターン形成が困難となったり、導電体パターン層4が外力を受けて破損し易くなる為である。
【0064】
なお、導電体パターン層4も通常は、コントラス向上層1に於けるモアレ防止と同様の観点から、バイアス角γを付ける。このバイアス角γも、0°<γ<90°に設定すると良い。但し、コントラスト向上層1に於けるバイアス角θとは、異なる角度、つまりγ≠θを満たす条件の角度とするのが、導電体パターン層4とコントラスト向上層1とによる、フィルタ内モアレの発生を防ぐ点で好ましい。例えば、該バイアス角γは、正方格子のパターンの場合では、例えば15°、85°等に設定する。
なお、バイアス角γは、前記実施形態の様な切り出し加工(角度α=0°)の場合、帯状シート上でのバイアス角γw=γとして、導電体パターン層4を印刷することで形成することができる。
【0065】
((印刷方式))
なお、導電体パターン層4を透明基材シート5上にパターン状に形成する方法は特に限定はない。公知のパターン形成法を用途、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。形成法の代表的な方法は、導電性組成物を用いた印刷法である。
導電性組成物を用いて導電体パターン層4を印刷形成する場合、その印刷方式としても基本的には特に制限はない。例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷などの有版印刷、或いはインキジェット印刷に代表される無版印刷等である。これらの印刷法の中でも、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された凹版印刷の一種である「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能となる点で好ましい印刷方式の一種であり、しかも、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる。そこで、以下この印刷方式について説明する。
【0066】
「引抜プライマ方式凹版印刷法」を被印刷物が透明基材シート5である場合で説明すると次の様になる。
「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、透明基材シート5上に施した流動状態のままのプライマ流動層上に導電性組成物のインキを凹版印刷する方法であり、しかもその際、版面上に透明基材シート5が存在している間に、版面と透明基材シート5間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで固化させてプライマ層6として固化させた後に透明基材シート5を凹版から離版して、透明基材シート5上にプライマ層6を介してパターン状の導電体パターン層4を印刷形成する方法である。このプライマ層6は流動状態のときに、版から被印刷物へのインキの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインキを引き抜いて被印刷物(透明基材シート5)に移す作用を有する。
【0067】
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図3の断面図(透明基材シート5は略して図示)で概念的に示す様に、プライマ層6と導電体パターン層4との界面について、プライマ層6は、導電体パターン層4の形成部4aでの厚さTaが導電体パターン層4の非形成部4bでの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部4bの厚さTbは、形成部4aの厚さTaの影響のない非形成部4bつまり開口部4の中央部での厚さとする。形成部4aの厚さTaは、通常、非形成部4bの厚さTbに較べて1〜10μm程度厚く形成される。
【0068】
更に、プライマ層6と導電体パターン層4との界面は、次の(A)〜(C)のいずれかの1以上の断面形態を有する(但し、図3では図示は省略)。(A)プライマ層6と導電体パターン層4との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(B)プライマ層6を構成する成分と導電体パターン層4を構成する成分とが混合している混合層を界面近傍に有する断面形態、(C)導電体パターン層4を構成する導電性組成物中にプライマ層6に含まれる成分が存在している断面形態。この様な、界面の断面形態は、プライマ層6がプライマ層6と導電体パターン層4との離版時の密着性を強化し、凹版からインキ(導電性組成物)の被印刷物(透明基材シート5)への転移を促進し高精度且つ高品質の凹版印刷を可能にしている理由であると思われる。
【0069】
また、導電体パターン層4の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、プライマ層6の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であることが好ましい。
すなわち、導電体パターン層4の形成部4aである導電体パターン層4の凸部の内部では、図3で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密で、頂部Pから遠いプライマ層6の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、プライマ層6近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電体パターン層4中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。また、導電性と津上パターン層3の表面への導電性金属層の電解めっき適性が向上する。更に、プライマ層6との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電体パターン層4とプライマ層6との密着性が向上する。
【0070】
なお、導電体パターン層4中に於ける導電性粒子Cpの分布状態は、パターン状に形成された導電体パターン層4の形成部である凸部が透明基材シート5上で延びる方向には依存性を持たない。つまり、図3で示す導電体パターン層4の凸部の断面図は、凸部が延びる方向に直交し且つ透明基材シート5のシート面に垂直な面である主切断面の断面図であり、紙面に垂直な方向が凸部が延びる方向(延在方向)であるが、凸部が延びる延在方向では、主切断面内での位置が同じであれば単位体積中の粒子の数密度は一定である。その為、この様な単位体積中の導電性粒子Cpの数密度は、凸部の主切断面に於ける単位面積中の導電性粒子Cpの数密度(面密度)で評価出来る。すなわち、図3の如く、主切断面内に於いて、導電性粒子Cpの面密度がプライマ層6近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であれば、導電性粒子Cpの体積密度もプライマ層6近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であると判断して良い。
この様に凸部の頂部Pの方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、プライマ流動層形成済みの透明基材シート5を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物は粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差については、通常は金属粒子である導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、となる為、プライマ層6に対して頂部Pを重力の向きと同じ向きにして導電体パターン層4を固化させると良い。
【0071】
[プライマ層]
なお、上記プライマ層6は透明な樹脂層で、その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、導電体パターン層4で列記したバインダ樹脂などを使用できる。
【0072】
[透明基材シート]
透明基材シート5は、連続帯状の樹脂シート(乃至フィルム)が使用される。該樹脂シート(乃至はフィルム)としては、前記した帯状コントラスト向上シート10に於ける支持体シートで列記したもの等が使用できる。よって、ここでは、更なる説明は省略する。
【0073】
〔その他の層〕
前記した実施形態でもそうである様に、帯状コントラスト向上シート10、及び帯状電磁波遮蔽シート20には、その他の層を更に積層したものを用いることができる。
例えば、導電体パターン層4に対しては、その表面の外光反射を低減するための黒化層、導電体パターン層4による凹凸を平坦化する平坦化樹脂層などである。
帯状コントラスト向上シート10及び帯状電磁波遮蔽シート20に共通して、シート面に、ディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層、その面を一時的に保護するセパレータフィルムなどがある。
或いは、各種光学フィルタ、光学フィルタ以外のその他の機能層などである。例えば、光学フィルタは、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などであり、光学フィルタ以外の機能層は、保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層などである。なお、これらの層には公知のものを適宜使用すれば良い。なお光学フィルタは、その機能の1又は2以上を、単層又は多層構成によって実現することができる。
【0074】
なお、例えば、これら光学フィルタは、例えば、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層などは、これらの光学機能に応じた色素(近赤外線吸収色素、ネオン光吸収色素、色補正色素)を用い、紫外線吸収層は紫外線吸収剤を用いるなど、公知の材料・方法で実現できる。例えば、これら材料を樹脂中に分散させた樹脂層として形成することができる。
【0075】
《D.変形形態》
本発明は、上記説明した以外の形態として、例えば、次の様な変形形態もとり得る。
【0076】
なお、上記説明では、暗色条部1aの延在方向は、1方向の場合であったが、該延在方向は複数の方向、例えば2方向に交差させたものでも良い。交差は例えば直角である。
また、帯状複合光学フィルタシート30wから、枚葉の複合光学フィルタ30を切り出すときは、上記説明では、枚葉の複合光学フィルタ30が長方形であり、その長辺の方を、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MDに平行にして、つまり切り出し角α=0°の切り出し条件で切り出したが、その短辺の方を、帯状複合光学フィルタシート30wの長手方向MDに平行にして、つまり切り出し角α=90°の切り出し条件で切り出しても良い。もちろん、このときは、帯状シート上でのバイアス角θwは、切り出し後の枚葉シート上でのバイアス角θとはならないが(θ=90°−θwの関係)、結果として目的とする枚葉シート上でのバイアス角θを与える様な、帯状シート上でのバイアス角θwに設定して製造すれば良い。
また、上記説明では、多数配列する暗色線状部1aの形状の夫々は全て同じ前提で説明したが、2以上の複数の異なる形状を配置しても良い。
また、上記説明では、多数配列する暗色線状部1aは延在方向に直線で延びる形状であったが、1本の暗色線状部1aが全体として直線状に延在しているのであれば、直線を変調し例えば波形状の様な直線状であっても良い。
また、上記説明では、帯状コントラスト向上シート10は1枚を帯状電磁波遮蔽シート20と積層したが、同一装置上で或いは別の装置上で、2枚の帯状コントラスト向上シート10を1枚の帯状電磁波遮蔽シート20と積層しても良い。
【0077】
《E.用途》
本発明による複合光学フィルタは、特に、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 コントラスト向上層
1a 暗色線条部
1b 透明樹脂層
2 支持体シート
3,3a 接着剤層
4 導電体パターン層
5 透明基材シート
6 プライマ層
7 開口部
8a 反射防止層
9a 保護フィルム
9b セパレータフィルム
10 帯状コントラスト向上シート
10s 枚葉のコントラスト向上シート
20 帯状電磁波遮蔽シート
20s 枚葉の電磁波遮蔽シート
30 (枚葉の)複合光学フィルタ
30w 帯状複合光学フィルタシート
Cp 導電性粒子
d (暗色線状部の)延在方向
G 空気(気泡)
R1,R2,R3 ロール
α 切り出し角
θ (枚葉シート上での)バイアス角
θw (帯状シート上での)バイアス角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールから巻き出した帯状コントラスト向上シートとロールから巻き出した帯状電磁波遮蔽シートとを貼り合せ、得られた帯状複合光学フィルタシートをロールに巻き取る、ロール・ツー・ロール方式での複合光学フィルタの製造方法であって、
上記帯状コントラスト向上シートは、多数配列した暗色線状部と該暗色線状部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とを有するコントラスト向上層を含み、
上記帯状電磁波遮蔽シートは、透明基材シートと該透明基材シート上にプライマ層を介して形成された導電体パターン層を含み、該プライマ層は前記導電体パターン層の形成部での厚さが導電体パターン層の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電体パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であり、
前記帯状コントラスト向上シートの前記暗色線状部の延在方向が該帯状コントラスト向上シートの長手方向(搬送方向)に対する角度である帯状シート上でのバイアス角θwが、0°<θw<90°である、複合光学フィルタの製造方法。
【請求項2】
上記帯状複合光学フィルタシートから更に、所定角度及び所定寸法で切り出して、四角形で枚葉の複合光学フィルタを製造する際に、前記帯状複合光学フィルタシートの長手方向(搬送方向)と枚葉の複合光学フィルタの外形4辺のうちの対向する何れか2辺が平行になる所定角度で切り出す、請求項1に記載の複合光学フィルタの製造方法。
【請求項1】
ロールから巻き出した帯状コントラスト向上シートとロールから巻き出した帯状電磁波遮蔽シートとを貼り合せ、得られた帯状複合光学フィルタシートをロールに巻き取る、ロール・ツー・ロール方式での複合光学フィルタの製造方法であって、
上記帯状コントラスト向上シートは、多数配列した暗色線状部と該暗色線状部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とを有するコントラスト向上層を含み、
上記帯状電磁波遮蔽シートは、透明基材シートと該透明基材シート上にプライマ層を介して形成された導電体パターン層を含み、該プライマ層は前記導電体パターン層の形成部での厚さが導電体パターン層の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電体パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であり、
前記帯状コントラスト向上シートの前記暗色線状部の延在方向が該帯状コントラスト向上シートの長手方向(搬送方向)に対する角度である帯状シート上でのバイアス角θwが、0°<θw<90°である、複合光学フィルタの製造方法。
【請求項2】
上記帯状複合光学フィルタシートから更に、所定角度及び所定寸法で切り出して、四角形で枚葉の複合光学フィルタを製造する際に、前記帯状複合光学フィルタシートの長手方向(搬送方向)と枚葉の複合光学フィルタの外形4辺のうちの対向する何れか2辺が平行になる所定角度で切り出す、請求項1に記載の複合光学フィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−213043(P2011−213043A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85128(P2010−85128)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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