説明

複合光学素子および撮像光学系

【課題】第1の光学要素と第2の光学要素の間に樹脂層からなる第3光学要素を備え、かつ、第3の光学素子の端部において発生するフレアの発生を抑える遮光部材を備えた複合光学素子の環境耐久性を高める。
【解決手段】遮光部材の内側の径は第3の光学要素の外径よりも小さくし、該遮光部材の外側の径は第3の光学要素の外径よりも大きくし、かつ、前記遮光部材の第1の光学要素の第2面または第2の光学要素の第3面の面内における最大厚さを、第3光学要素の光線有効径の外側領域における最大厚さに対して1/2以下に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合面に樹脂層を有した複合光学素子およびそれを用いた撮像光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズやプリズム等の光学部品においては、その内面において反射する不要光(以下、フレア)を防止するために、反射する部分に遮光塗料を塗布して対策を行っている。これらの遮光塗料には、僅かに残る内面反射光の分光スペクトル強度が可視光領域では平均化されている必要があり、更に、塗料に機械的強度、密着性、硬度、耐久性、均一性などの塗膜物性が優れていて、コストが安いことが求められる。このような状況で、コールタールまたはコールタールピッチを原料に用いた遮光塗料が製品化されている。
【0003】
一方、カメラ用の撮像光学系等においては、高性能でコンパクトな光学系が求められ、
複合光学素子としての接合レンズが多く用いられている。また、光学系のコンパクト化と高性能化を両立するために、回折光学素子や、異常分散性を有した樹脂を応用した光学素子が提案されているが、これらの光学素子は、環境耐久性や素子作成の容易さから2枚のレンズの間に接合して作成されるものが多い。
【0004】
ここで、いずれの光学素子も樹脂材料を使用しており、光学素子の周辺付近においては樹脂のヒケや溢れ、樹脂のショートといった外観上の品位を落とす問題が発生し、歩留まりが低下するという問題がある。また、この外観上の問題と共に、樹脂端部の形状によってはフレアの発生を招くといった問題がある。
【0005】
特に、回折光学素子は、素子の外形付近に素子と硝子の間隔出しや溢れた樹脂を溜めるために、土手部を有すことが多い。この土手部が、外観上の問題やフレアを発生させる問題となる。また、回折光学素子の成形において、樹脂のショートや樹脂溢れ、ヒケといった問題が、回折光学素子の外周付近で発生し易い。これらの対策として、光学素子の外径を大きくした上で、遮光用の部品を光学素子の前に配置して隠すといった対策や、光線入射側の硝子のコバ部にV溝を入れて遮光剤をV溝に入れるといった対策が取られてきた。
【0006】
しかし、いずれの方法も、光学系の大型化やコストアップといった製品のスペックを低下させる方向の対策であった。これに対し、光学系の大型化を招くことなく遮光する方法として、特許文献1に開示されるものがある。これは、フレア光を遮光するため、樹脂を含む遮光部をプラスティックレンズに直接塗布し、この遮光部を硝子レンズとプラスティックレンズの間に挟み込む形で、硝子レンズとプラスティックレンズの側周部同士を接着剤で接着させるというものである。
【0007】
これにより、硝子レンズとプラスティックレンズの対向するレンズ面同士がマージナルコンタクトされる。なお、この遮光部は、プラスティックレンズの光学有効領域および光学非有効領域に設けられ、撮像光学系の有効光路が遮光部により決定されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−185772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、レンズの接合面に、遮光部材と樹脂製の光学要素(例えば接着剤)が共に設けられることを前提としていない。レンズの接合面に遮光部材と樹脂製の光学要素を設ける場合には、以下に述べる環境信頼性が維持できないことが問題となる。即ち、温度や湿度の変化が繰り返された時に、レンズと遮光部材の界面に剥がれが生じてしまい、フレアの発生や外観の劣化が問題となる。これは、以下の理由によると考えられる。通常接合レンズの接合面の厚みは15μm程度であるが、遮光部材は遮光性を持たせるためには10μm程度は必要である。
【0010】
従って、遮光部材を如何に接着させるかが重要となるが、硝子レンズの線膨張係数と樹脂の線膨張係数とは10倍程度異なるために、温度が変化すると硝子レンズと樹脂層との界面にせん断応力が発生する。
【0011】
硝子表面に樹脂が剥き出しとなっているタイプの素子においては、樹脂が徐々に変形することで応力が開放されるために、樹脂と硝子の界面は剥がれにくい。しかし、レンズとレンズの間の接合面が樹脂で接合される場合には、樹脂が変形することが出来ないために応力がたまりやすい。このような場合、接着剤については接着力が高くレンズとの界面が剥がれることは無いが、遮光部材については接着力が弱く剥がれが生じてしまう。
【0012】
特に、回折光学素子においては光線有効外にレンズとの間隔を規定するための土手部やダミーの格子等を設けることが多く、土手部の端部によるフレアを抑制するために遮光部材の幅が大きくなり、上述した環境信頼性を維持することが困難であった。
【0013】
本発明は、第1の光学要素と第2の光学要素の間に樹脂層からなる第3光学要素を備え、かつ、第3の光学素子の端部において発生するフレアの発生を抑える遮光部材を備えた複合光学素子および撮像光学系の環境耐久性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、光線入射側にあって入射側の第1面と出射側の第2面で屈折力を備える第1の光学要素と、第1の光学要素の光線出射側にあって入射側の第3面と出射側の第4面で屈折力を備える第2の光学要素と、第1の光学要素と第2の光学要素の間にあって樹脂で形成される第3の光学要素と、第1の光学要素の第2面または第2の光学要素の第3面の面内で光線有効径の外側領域に環状に設けられ、第3の光学要素の端部で生ずるフレアを遮光する遮光部材と、を有し、前記遮光部材が形成される方の光学要素が硝子で形成される複合光学素子であって、前記遮光部材の内側の径は第3の光学要素の外径よりも小さくし、かつ、前記遮光部材の第1の光学要素の第2面または第2の光学要素の第3面の面内における最大厚さを、第3光学要素の光線有効径の外側領域における最大厚さに対して1/2以下に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の光学要素と第2の光学要素の間に樹脂層からなる第3光学要素を備え、かつ、第3の光学素子の端部において発生するフレアの発生を抑える遮光部材を備えた複合光学素子の環境耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る複合光学素子の端部における説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る回折光学素子を含む複合光学素子の説明図である。
【図3】第2の実施形態の遮光部材の配置に関する説明図である。
【図4】第3の実施形態の遮光部材の配置に関する説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る回折光学素子を含む複合光学素子を適用した望遠レンズにおける、複合光学素子の端部のフレアの説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る複合光学素子を適用した撮像光学系の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《第1の実施形態》
図1は、本発明の第1の実施形態の複合光学素子の端部の説明図である。図1において、1は第1の光学要素としての硝子製の第1レンズ、2は第2の光学要素としての硝子製の第2レンズ、3は第3の光学要素としての接合用樹脂である。第1レンズ1は、光線入射側にあって入射側の第1面と出射側の第2面で屈折力を備え、第2レンズ2は、第1の光学要素の光線出射側にあって入射側の第3面と出射側の第4面で屈折力を備える。4は樹脂製の遮光部材、5は接合用樹脂3の厚み、6は光線有効径、7はレンズの研磨面(第1レンズ1の第2面の光線有効径の範囲)の延長線上での遮光部材4の塗布幅、8は接合用樹脂3の端部である。
【0018】
(第3の光学要素におけるフレア)
第3の光学要素としての接合用樹脂3は、第2レンズ2のコバの高さまで充填されておらず、端部8の位置で止まっている。この端部8に光線が入射すると、端部8で反射した光によりフレアが発生する。このフレアを遮光するために、本実施形態のように出来るだけフレア発生箇所の近くで遮光する方が望ましい。これは、フレア光の広がる前に遮光できるためである。ここで、フレア光を遮光するための樹脂製の遮光部材4は、コールタールやカーボンブラック等の可視域の光を吸収する材料を含んだ樹脂である。あるいは、遮光部材4として銀等の金属を蒸着しても良い。
【0019】
一方、第3の光学要素を形成する接合用樹脂3については、バルサ材等の接着剤が用いられるが、遮光部材4の遮光能力を高めるために、光線有効域の外側領域に光を吸収する材料をある程度の量入れる場合がある。そのため、このような接合用樹脂3を用いると、レンズ接合に通常使用される接着剤と比較して、遮光部材4のレンズへの接着力は弱くなる。
【0020】
ここで、環境温度が上昇した時に、遮光部材4は樹脂であるため、硝子である第1レンズや第2レンズと比較して10倍ほど伸びる。一方、接合用樹脂3も遮光用樹脂である遮光部材4と同じオーダで伸びる。ここで、密着力は、樹脂と樹脂の界面の方が、硝子と樹脂の界面よりも強く、ヤング率も近い。このため、結果として、接合用樹脂3と遮光部材4は一体として動き、相対的には剥がれにくい。
【0021】
一方、硝子と樹脂の界面である、第1レンズ1と遮光部材4の界面と、第2レンズと接合用樹脂3との界面では、強いせん断応力が発生する。この時、遮光部材4の接合用樹脂3に対する占有比率が小さい場合には、接合用樹脂3の強い接着力と、遮光部材4の弾性変形により、遮光部材4の硝子製の第1レンズ1からの剥がれを防止できる。
【0022】
本実施形態においては、遮光部材4の第1レンズの面(第2面)の面内における最大厚みを接合用樹脂3の光線有効領域の外側領域における最大厚み5に対して50%以下、即ち、接合用樹脂3の厚みを遮光部材4の厚みに対して2倍以上とする。更には、光線有効径の外側領域に環状に設けられる遮光部材4に関し、環状領域の径方向の幅を接合用樹脂3の径(外径)に対して10%以下としている。
【0023】
これにより、接合用樹脂3は、接着剤としての本来の接着特性が維持され、レンズと樹脂の間のせん断応力を緩和して、樹脂製の遮光部材4の硝子製のレンズ1からの剥がれを阻止することができる。即ち、本実施形態の遮光部材の幅と径であれば、温度の変化や湿度に変化により、接合用樹脂3が伸び縮みしても、硝子製のレンズ1と遮光部材4の界面が剥がれることが無い。
【0024】
ところで、遮光用の樹脂によっては、研磨面よりも、研磨面の外側に延長した領域の粗擦り面の方が、接着力が高まる場合もある。この現象は、粗擦り面の孔や谷間に樹脂が入り込んで固まるためであり、アンカー効果として知られている。このようなタイプの遮光用の樹脂の場合には、研磨面の延長線上を粗擦り面とすることで、接着力が高まり環境安定を高めることが可能となる。
【0025】
また、接合用樹脂3と樹脂製の遮光部材4とは、線膨張係数が近い方が、接合用樹脂3と遮光部材4の界面の剥がれを防止する上で、より望ましい。具体的には、接合用樹脂3の線膨張係数に対して、50%乃至150%の範囲の線膨張係数を有するように樹脂性の遮光部材を選択することが望ましい。
【0026】
(第2の光学要素である第2レンズにおけるフレア)
また、第2レンズのコバ部に樹脂が溢れて固まることにより、フレアが発生する可能性がある。この対策として、樹脂の硬化前に拭き取ることが考えられるが、コストアップが考えられる。従って、遮光部材4の塗布領域を第2レンズ2の外径より大きくすることが望ましい。これにより、第2レンズのコバ部への光線入射を防止することができ、フレアの発生を抑制することができる。
【0027】
なお、本実施形態では接合用樹脂3として接着剤を用いたが、後述する紫外線硬化樹脂を用いることもできる。
【0028】
《第2の実施形態》
図2は、回折光学素子を接合した本実施形態の説明図である。第1の実施形態では、第1、第2の光学要素としての硝子レンズの間に、第3の光学要素としての接合用樹脂3を備えた複合光学素子を示したが、第3の光学要素として、屈折率に異常分散性を有した樹脂を備えるものであっても良い。本実施形態では、屈折率に異常分散性を有した樹脂として回折光学素子を備える。
【0029】
回折光学素子を望遠レンズに適用した、本実施形態に係わる撮像光学系について、図2および図5を用いて説明する。図2において、21は光軸、22は第1の光学要素としての第1レンズ、23は第2の光学要素としての第2レンズ、24は低屈折率高分散の紫外線硬化樹脂、25は高屈折率低分散の紫外線硬化樹脂、27は遮光部材、28は樹脂溜め部である。このように、第1の光学要素と第2の光学要素の両方に接する領域を有する第3の光学要素として、低屈折率高分散の紫外線硬化樹脂24と、高屈折率低分散の紫外線硬化樹脂25を組み合わせるのは、広い波長域で高い回折効率を得るためである。
【0030】
図5において、51は回折光学素子、52は絞り、53はCCD等の像面、54は最大画角の光束、55は撮像光学系の光軸、56は回折光学素子の端部で発生したフレアを示している。
【0031】
望遠レンズのように第1群のレンズが正のパワーを有するレンズの場合には、回折光学素子はできるだけ物体側で使用した方が倍率色収差の補正に効果があり、出来るだけ物体側に素子を配置することが望ましい。本実施形態においては、正の屈折力の第1群レンズ、負の屈折率の第2群レンズ、正の屈折率の第3群レンズにて構成されており、この系において最も倍率色収差の補正に効果があるのは、第1レンズに使用することである。回折光学素子としては、正のパワーを有している位相を付加するように格子中央から外側かけて格子ピッチを狭くした回折格子とすることで、光学系として色収差を改善している。
【0032】
回折光学素子の端部においては、回折光学素子の成形時の樹脂材料を溜めるための樹脂溜め用の土手に光が入ることで、フレアが発生する。図5において、フレアに対して対策を取らない場合のフレアの光路を56に示している。回折光学素子51の端部で発生したフレア光は、光学系を通過して像面53に到達し画像を劣化させる。この対策として図2に示したように第1レンズ22の回折光学素子側の面の端部に遮光部材27を塗布する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る回折光学素子と遮光部材の配置の説明図である。図3において、35は光線有効領域でブレーズ形状をした回折格子部が形成される領域、36は回折格子部の周辺に設けられるダミー格子の領域、37は土手部の領域である。
ダミー格子の領域36は、土手部の領域37に対して光線有効域側であって、光線有効域の外側に設けられる環状の領域で、ダミーの回折格子が設けられる。遮光部材27の内側の径は、ダミー格子36の領域内にかかっている。
【0034】
回折光学素子の成形は、金属の型と第2レンズ23の間に紫外線硬化性の高屈折率低分散材料25を充填して紫外線硬化させることで格子形状を作成する。この時、回折格子の格子高さは10μm程度であるため、樹脂の量は非常に微量である。従って、樹脂の量を高精度のコントロールする必要がある。一方、高精度の樹脂吐出量の制御には限界があるために、光線有効領域35の格子とダミー格子36からはみ出した樹脂を溜める樹脂溜め用の土手部の領域37が必要となる。
【0035】
この土手部の斜面部分は、矩形の形状に近い形状となるために、土手の両側で光線の反射が起こりやすい。この反射光がフレアとなり、像面に到達すると画像を劣化させることになる。
【0036】
本実施形態においては、第1レンズ22の回折格子側の面に遮光部材27を塗布することで、土手部に光線が入射しないようにしている。更に、前述した成形型から離型した格子と遮光部材27を塗布した第1レンズ22の間に低屈折率高分散材料24を充填して、紫外光を照射することで固めることにより、複合光学素子を作成する。この時、紫外光の照射方向としては第2レンズ23側から行うことで、遮光部材27により紫外光が遮光されることなく均一に硬化を行うことができる。
【0037】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、遮光部材の第1の光学要素の第2面または第2の光学要素の第3面の面内における最大厚さを、回折光学素子を備える第3光学要素の光線有効径の外側領域における最大厚さに対して1/2以下(50%以下)に設定する。更には、遮光部材4の環状領域の径方向の幅を第3の光学要素の径に対して10%以下とする。これにより、環境安定性が高くフレアの発生の無い複合光学素子を提供することができる。
【0038】
特に、本実施形態においては、遮光部材27の厚みは、低屈折率高分散の紫外線硬化樹脂24の厚みの1/5、即ち20%程度としている。低屈折率高分散の紫外線硬化樹脂24の厚みに対して比率が小さいために、温度の変化に対して樹脂と硝子の線膨張の差によるせん断応力を緩和することができる。これにより環境温度の変化の繰り返しによっても回折光学素子が硝子レンズから剥がれることが無く、環境変化に強い複合回折光学素子とすることができる。
【0039】
なお、本実施形態では接合用樹脂として紫外線硬化樹脂を用いたが、第1の実施形態で述べた接合用樹脂3を用いることもできる。
【0040】
《第3の実施形態》
図4は、本実施形態の複合光学素子の遮光部材の配置の説明図である。図4において、41は第1レンズ、42は第2レンズ、43は低屈折率高分散の紫外線硬化樹脂、44は高屈折率低分散の紫外線硬化樹脂、45は光線有効領域、46はダミー格子の領域、47は土手部の領域、48は遮光部材である。本実施形態においては、遮光部材48の外側に低屈折率高分散材料である紫外線硬化性樹脂43が第1レンズ41と接して配置されている。即ち、前述した実施形態と異なり、遮光部材48の外側の径は、第3の光学要素としての43の外径よりも小さい。
【0041】
従って、接合力の強い紫外線硬化性の樹脂と硝子レンズが直接接しているために、温度変化等の環境変化によって樹脂が伸び縮みしても第1レンズ41と低屈折率高分散材料である紫外線硬化樹脂43は剥がれることが無い。従って、大きな環境変化に対しても回折光学素子が硝子から剥がれることが無く、環境安定性が高めることができる。
【0042】
《第4の実施形態》
以下に、上述した実施形態の複合光学素子が用いられた撮像光学系を備えた撮像装置について説明する。撮像光学系において、使用波長は波長400nm〜700nm付近の可視光となる。図6において、210は一眼レフカメラ本体、211は複合光学素子が組み込まれた交換レンズである。212は交換レンズ211を通して得られる被写体像を記録するフィルムや撮像素子等の感光体である。213は交換レンズ211からの被写体像を観察するファインダー光学系である。214は交換レンズ211からの光を感光体212方向とファインダー光学系213方向に切り替えて伝送するための回動するクイックリターンミラーである。
【0043】
ファインダーで被写体像を観察する場合は、クイックリターンミラー214を介してピント板215に結像した被写体像をペンタプリズム216で正立像とした後、接眼光学系217で拡大して観察する。撮影時にはクイックリターンミラー214が矢印方向に回動して被写体像は感光体212に結像して記録される。このように本実施形態の撮像装置として、前述した撮像光学系を用いることにより、高い光学性能を有した撮像装置を実現している。なお、本実施形態の撮像装置はクイックリターンミラーのない一眼レフカメラにも同様に適用することができる。
【0044】
(変形例)
以上、遮光部材を光線入射側の第1の光学要素の出射側の面に形成することを述べたが、第1の光学要素の光線出射側にある第2の光学要素の入射側の面に形成しても良い。即ち、遮光材を第2レンズ側に塗布することによっても、接着用樹脂の端部で発生したフレアを遮光するこが出来るため、同様の効果を得る事が出来る。
【0045】
また、第3の光学要素が挟持される第1、第2の光学要素を共に硝子製のレンズとしたが、遮光部材が形成される方の光学要素(例えば第1の光学要素)のみを硝子製のレンズとしても良い。この場合、他方の光学要素(第2の光学要素)は硝子以外(例えばプラスティック)で形成される。
【0046】
なお、第1の光学要素の出射面(第2面)と、第2の光学要素の入射面(第3面)が共に曲面である場合を述べたが、一方あるいは双方が平面であっても良い。
【0047】
また、本発明の範囲内で、上述した実施形態、変形例を適宜組合せて使用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1・・硝子製の第1レンズ、2・・硝子製の第2レンズ、3・・接合用樹脂、4・・樹脂製の遮光材、5・・接合用樹脂の厚み、6・・光学有効径、7・・レンズの研磨面の延長線上での遮光材の塗布幅、8・・接合用樹脂の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線入射側にあって入射側の第1面と出射側の第2面で屈折力を備える第1の光学要素と、
第1の光学要素の光線出射側にあって入射側の第3面と出射側の第4面で屈折力を備える第2の光学要素と、
第1の光学要素と第2の光学要素の間にあって樹脂で形成される第3の光学要素と、
第1の光学要素の第2面または第2の光学要素の第3面の面内で光線有効径の外側領域に環状に設けられ、第3の光学要素の端部で生ずるフレアを遮光する遮光部材と、
を有し、
前記遮光部材が形成される方の光学要素が硝子で形成される複合光学素子であって、
前記遮光部材の内側の径は第3の光学要素の外径よりも小さくし、かつ、
前記遮光部材の第1の光学要素の第2面または第2の光学要素の第3面の面内における最大厚さを、第3光学要素の光線有効径の外側領域における最大厚さに対して1/2以下に設定したことを特徴とする複合光学素子。
【請求項2】
前記遮光部材の外側の径は、第3の光学要素の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の複合光学素子。
【請求項3】
前記遮光部材の外側の径は、第3の光学要素の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の複合光学素子。
【請求項4】
前記遮光部材の径方向の幅は、第3の光学要素の外径の10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合光学素子。
【請求項5】
前記遮光部材は、樹脂であって塗布されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項6】
前記遮光部材は、第3の光学要素に対して50%乃至150%の線膨張係数である材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項7】
前記第3の光学要素は、回折光学素子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項8】
前記回折光学素子は、ブレーズ形状をした回折格子部と、前記回折格子部の周辺に設けられブレーズ形状とは異なる形状をした土手部とを備え、前記遮光部材の内側の径は前記土手部の内側の径よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の複合光学素子。
【請求項9】
前記回折光学素子は、前記土手部に対して光線有効域側で光線有効域の外側に環状のダミーの回折格子の領域を備え、前記遮光部材の内側の径が前記ダミーの回折格子の領域内にかかっていることを特徴とする請求項8に記載の複合光学素子。
【請求項10】
前記第3の光学要素は、接着剤で形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項11】
前記第3の光学要素は、異常分散性のある材料で形成されることを特徴とするに請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項12】
前記第3の光学要素は、紫外線硬化樹脂で形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項13】
前記遮光部材の外側の径は、第2の光学要素の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項14】
前記第3の光学要素は、第1の光学要素と第2の光学要素の両方に接する領域を有していることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項15】
前記第1の光学要素の第2面の光線有効径の範囲を研磨面とし、その外側に延長した領域に粗擦り面を備えたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の複合光学素子。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の複合光学素子を有することを特徴とする撮像光学系。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−252307(P2012−252307A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127169(P2011−127169)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】