説明

複合弁および車両用冷暖房装置

【課題】制御弁の下流側に差圧弁を設ける装置において、差圧弁の安定作動を実現する。
【解決手段】ある態様の複合弁30は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する過冷却度制御弁21と、その過冷却度制御弁21の下流側通路を開閉する逆止弁25(差圧弁)とを含む。複合弁30は、過冷却度制御弁21の上流側圧力室と逆止弁25の上流側圧力室とを連通する連通路72を備える。そして、逆止弁25が、過冷却度制御弁21の上流側圧力と逆止弁25の下流側圧力との差圧を受け、その差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して過冷却度制御弁21の下流側通路を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御可能な複合弁、およびその複合弁を含む車両用冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷媒循環回路が構成され、暖房運転時および冷房運転時のそれぞれにおいて、冷媒の循環方向およびその流れの切り替え方向などが設定されている。また、そうした冷媒の流れの切り替えや減圧のために、冷媒循環回路の各所にはその冷媒の流れを制御する各種制御弁が設けられている。このような冷媒循環回路における冷媒の流れは圧縮機の仕事によりもたらされるが、冷暖房に要される負荷に応じて圧縮機の運転状態も変化する。しかしながら、車両用冷暖房装置の安定した運転状態を維持するためには、圧縮機がいかなる運転状態にあっても冷媒を定められた方向に流す必要がある。そのため、冷媒循環回路の各所には冷媒の逆流を防止するための逆止弁が設けられる。このような逆止弁としては、単に逆流方向の流れが生じたときに閉弁するものではなく、流れの順方向に所定の差圧(開弁差圧)が発生したときに開弁し、その順方向の冷媒の流れを許容する差圧弁として構成されるものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような差圧弁を設けた場合、その設定差圧が発生するまでは冷媒の流れが許容されないことになる。特に制御弁の下流側に差圧弁を設ける構成においては、その制御弁によって減圧がなされているため、差圧弁の前後差圧(差圧弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧)は小さくなる。このため、差圧弁の開弁差圧を低くすることも考えられるが、その場合には逆に小さな差圧の変化によって弁部が開閉を繰り返すようになり、安定性が得られない場合もある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、制御弁の下流側に差圧弁を設ける装置においてその差圧弁の安定作動を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する制御弁と、その制御弁の下流側通路を開閉する差圧弁とを含む複合弁であって、制御弁の上流側圧力室と差圧弁の上流側圧力室とを連通する連通路を備える。そして、差圧弁が、制御弁の上流側圧力と差圧弁の下流側圧力との差圧を受け、その差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して制御弁の下流側通路を開放する。
【0008】
この態様によると、差圧弁が制御弁の下流側圧力ではなく上流側圧力を受け、その制御弁の上流側圧力と差圧弁の下流側圧力との差圧に応じて開閉する。すなわち、上流側に制御弁が位置するにもかかわらず差圧弁の上流側圧力を高くすることができる。このため、差圧弁の開弁差圧(設定差圧)を大きく設定することが可能となり、それにより、差圧弁の前後差圧が変化してもその挙動を安定化させることができる。また、そのように設定差圧を大きくしても差圧弁の前後差圧そのものが大きくなるため、開弁時の応答性を維持することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、車両用冷暖房装置である。この冷暖房装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器と、凝縮器から送出された冷媒を減圧する膨張装置と、膨張装置にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備える。膨張装置は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する制御弁と、その制御弁の下流側通路を開閉する差圧弁とを含む複合弁であって、制御弁の上流側圧力室と差圧弁の上流側圧力室とを連通する連通路を備える。差圧弁は、制御弁の上流側圧力と差圧弁の下流側圧力との差圧を受け、その差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して制御弁の下流側通路を開放する。
【0010】
この態様においても、差圧弁が制御弁の下流側圧力ではなく上流側圧力を受け、その制御弁の上流側圧力と差圧弁の下流側圧力との差圧に応じて開閉する。このため、差圧弁の開弁差圧(設定差圧)を大きく設定することにより、差圧弁の前後差圧が変化してもその挙動を安定化させることができる。また、そのように設定差圧を大きくしても差圧弁の開弁時の応答性を維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御弁の下流側に差圧弁を設ける装置においてその差圧弁の安定作動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】複合弁の具体的構成を表す断面図である。
【図4】過冷却度制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図5】第2実施形態に係る第2制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図6】第2制御弁ユニットの動作過程を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0014】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁ユニット4、室外熱交換器5、第2制御弁ユニット6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0015】
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0016】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0017】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0018】
第1制御弁ユニット4は、開閉弁15と過冷却度制御弁17とを含む。開閉弁15は、室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ主通路を開閉する。開閉弁15は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。また、主通路を開閉弁15の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路に過冷却度制御弁17が設けられている。過冷却度制御弁17は、室外熱交換器5が室外蒸発器として機能するときに、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値となるように制御する。
【0019】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0020】
第2制御弁ユニット6は、過冷却度制御弁21、差圧弁22、切替弁23を含む。過冷却度制御弁21は、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ第1通路の開度を調整する。過冷却度制御弁21は、室外熱交換器5が室外凝縮器として機能するときに、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値となるように制御する。第1通路における過冷却度制御弁21の下流側には逆止弁25が配設されている。逆止弁25は、その前後差圧が設定された開弁差圧以上となったときに開弁する差圧弁として構成されている。ただし、逆止弁25は、その上流側圧力として過冷却度制御弁21の下流側圧力ではなく上流側圧力を受けるよう構成されている。逆止弁25は、過冷却度制御弁21の前後差圧がその開弁差圧以上となったときに開弁する。過冷却度制御弁21と逆止弁25とは一体に設けられて複合弁を構成するが、その具体的構成については後に詳述する。
【0021】
一方、差圧弁22は、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ第2通路の開度を調整する。すなわち、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ主通路は、過冷却度制御弁21および差圧弁22の上流側に設けられた分岐点にて第1通路および第2通路に分岐され、差圧弁22および逆止弁25の下流側に設けられた合流点にて合流する。また、第2制御弁ユニット6には、室外熱交換器5とアキュムレータ8とを蒸発器7を経由せずにつなぐバイパス通路9が設けられ、そのバイパス通路9に切替弁23が配設されている。
【0022】
差圧弁22は、第2通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。差圧弁22は、その前後差圧(差圧弁22の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が供給電流値に応じた一定の値(設定差圧)となるように動作する定差圧弁として機能可能に構成されている。すなわち、差圧弁22は、前後差圧がソレノイドへの供給電流値に対応づけられた値となるよう自律的に動作する。差圧弁22の前後差圧を制御することにより、過冷却度制御弁21の上流側圧力と逆止弁25の下流側圧力との差圧(本実施例においては逆止弁25の前後差圧)を制御することができる。切替弁23は、バイパス通路9を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。
【0023】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、過冷却度制御弁21や差圧弁22の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
【0024】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができる。
【0025】
切替弁23は、室外熱交換器5から導出された冷媒をバイパス通路9を経由するように流すか否かを切り替える。本実施形態において、切替弁23は通電により開弁する電磁駆動の開閉弁からなり、特に外部温度が低くなり、蒸発器7の凍結が予測される状況下にある場合には、適宜、差圧弁22を閉弁させて蒸発器7へつながる通路を遮断するとともに、切替弁23を開弁させて蒸発器7を迂回させるバイパス通路9を開放する。その間にダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められ、凍結防止を図ることができる。
【0026】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。図示の例では、制御部100は、第1制御弁ユニット4の開閉制御、第2制御弁ユニット6の開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
【0027】
制御部100は、差圧弁22の駆動回路に設定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、特に暖房運転時において、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定差圧を決定し、差圧弁22の前後差圧がその設定差圧となるよう通電制御を行う。言い換えれば、差圧弁22の弁部が供給電流値に対応した前後差圧が得られるよう自律的に動作し、その開度を調整する。また、制御部100は、特に冷房運転時において、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定流量を決定し、差圧弁22の前後差圧に対して必要な弁開度が得られるよう通電制御を行う。言い換えれば、差圧弁22の弁部が供給電流値に対応した弁開度が得られるよう自律的に動作する。
【0028】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示している。なお、ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「特定暖房運転」は、蒸発器7を実質的に機能させない暖房運転であり、外部環境等に応じて暖房運転時に適宜実行される。
【0029】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜fはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
【0030】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁ユニット4の開閉弁15が開弁される一方、第2制御弁ユニット6の差圧弁22は閉弁される。切替弁23は、バイパス通路9を遮断する。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、開閉弁15および過冷却度制御弁17、室外熱交換器5、過冷却度制御弁21、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。このとき、過冷却度制御弁17には高温・高圧のガス冷媒が導入されるため、過冷却度制御弁17は全開状態となる。
【0031】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、過冷却度制御弁21にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相液冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁21は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度(サブクール)が設定値SC1となるように弁部の開度を自律的に調整する。なお、過冷却度制御弁21の前後差圧が大きいため、逆止弁25は全開状態となる。過冷却度制御弁21を通過した冷媒は、蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却・除湿する。このとき、エアミックスドア14の開度が適度に調整され、その空気の温度調整が行われる。
【0032】
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、開閉弁15が閉弁される一方、差圧弁22が開弁される。切替弁23は、バイパス通路9を遮断する。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、過冷却度制御弁17、室外熱交換器5、差圧弁22、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。
【0033】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、過冷却度制御弁17にて断熱膨張され、低温・低圧の気液二相液冷媒となって室外熱交換器5に導入される。このとき、過冷却度制御弁17は、室内凝縮器3の出口側(c点)の過冷却度(サブクール)が設定値SC2となるように弁部の開度を自律的に調整する。なお、本実施形態では、これらの設定値SC1とSC2とが等しく設定されているが(「SC」と表記する)、変形例においては両者を異ならせてもよい。過冷却度制御弁17を通過した冷媒は、さらに差圧弁22にて断熱膨張され、冷温・低圧の冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却され、除湿される。蒸発器7によって冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3を経由することで加熱され、適度に温められて車内に供給される。
【0034】
図2(B)の上段に示すように、このとき室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が差圧弁22の前後差圧ΔPにより制御される。すなわち、前後差圧ΔPが比較的大きく設定されると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、前後差圧ΔPが比較的小さく設定されると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、前後差圧ΔPを適切に設定することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。
【0035】
また、図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、暖房運転時と同様に開閉弁15が閉弁される。このとき、差圧弁22が閉弁されるとともに切替弁23が開弁され、冷媒通路がバイパス通路9に切り替えられる。その結果、過冷却度制御弁21の前後差圧が小さくなり(ほぼゼロとなり)、逆止弁25の閉弁状態も維持される。すなわち、蒸発器7へつながる通路が遮断されるとともに、バイパス通路9が開放される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せずに迂回する。それにより、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、蒸発器7の温度が極低温となって凍結するのを抑制できる。このとき、ダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められる。
【0036】
本実施形態において、制御部100は、外気温が予め設定する極低温(例えば−10℃以下)となっている場合、図2(B)に示す暖房運転と図2(C)に示す特定暖房運転とを併用し、これらを交互に切り替えるように制御する。これにより、暖房運転により除湿性能を確保するとともに、特定暖房運転により蒸発器7の凍結を防止することができる。
【0037】
次に、過冷却度制御弁21および逆止弁25を含む複合弁の具体的構成について説明する。図3は、複合弁の具体的構成を表す断面図である。図4は、過冷却度制御弁の具体的構成を表す断面図である。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
【0038】
図3に示すように、複合弁30は、共用の円筒状のボディ31に過冷却度制御弁21と逆止弁25とを組み込んで構成されている。過冷却度制御弁21は、ボディ31の上端開口部にOリング73を介して組み付けられ、その上部がボディ31から露出し、下半部がボディ31に収容されている。逆止弁25は、ボディ31の内部に過冷却度制御弁21と同軸状に支持されている。ボディ31は、その上端部には上流側から冷媒を導入する入口ポート32が設けられ、下端部には下流側へ冷媒を導出する出口ポート34が設けられている。これらのポートは、ボディ31に形成された冷媒通路を介して連通している。ボディ31の下端開口部には、円筒状のばね受け部材36が圧入されている。
【0039】
図4に示すように、過冷却度制御弁21は、上流側から導入された冷媒を絞り膨張する弁部と、その弁部を開閉駆動するパワーエレメント38を備えている。過冷却度制御弁21は、金属板をプレス成形して得られた段付円筒状のボディ40に段付円柱状の弁体42(「主弁体」に該当する)を収容して構成される。ボディ40の上端部には、パワーエレメント38が一体に設けられている。ボディ40の下半部は縮径されており、その縮径部に弁孔44(「主弁孔」に該当する)が形成されている。そして、弁孔44の開口端縁により弁座46が形成されている。ボディ40の上半部には内外を連通させる導入ポート48が設けられ、下半部には内外を連通させる導出ポート50が設けられている。図3にも示すように、導入ポート48は入口ポート32に連通し、導出ポート50は出口ポート34に連通する。また、ボディ40の下端開口部には有底円筒状のアジャスト部材52が圧入されている。
【0040】
弁体42は、弁孔44の上流側から弁座46に着脱して弁部を開閉する。弁体42には、その着脱部の下方に延びて弁孔44を貫通する細径部54を有し、その細径部54の先端に拡径されたガイド部56を有する。弁体42は、その上端部にもガイド部58が設けられ、ガイド部58がボディ40の上半部に摺動し、ガイド部56がボディ40の下半部に摺動するようにして弁部の開閉方向に動作する。すなわち、ボディ40の下半部には、導出ポート50に対して弁孔44とは反対側にガイド孔59が設けられ、ガイド部56はそのガイド孔59に摺動可能に支持されている。なお、ガイド部56の外周部にはシール用のOリングが嵌着されている。弁体42とアジャスト部材52との間には背圧室60が形成されている。
【0041】
また、弁体42とアジャスト部材52との間には、弁体42を開弁方向に付勢するスプリング61(「付勢部材」に該当する)が介装されている。スプリング61のばね荷重は、アジャスト部材52のボディ40への圧入量により調整することができる。その圧入量により弁部の開弁圧力、ひいては過冷却度制御弁21が制御する過冷却度の設定値が調整される。ボディ40における導出ポート50よりもやや下部の外周面には、リング状のストッパ67が圧入されている。
【0042】
パワーエレメント38は、中空のハウジング62と、ハウジング62内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設されたダイアフラム64(「感圧部材」に該当する)とを含んで構成されている。ハウジング62は、アッパーハウジング66およびロアハウジング68からなる。ダイアフラム64は、ステンレス等の金属薄板からなる。ロアハウジング68は、ボディ40の上端開口部に一体成形されている。パワーエレメント38は、アッパーハウジング66とロアハウジング68との間にダイアフラム64を挟んだ状態でその接合部の外周に沿ってTIG溶接等が施されることにより形成される。密閉空間S1は感温室を構成し、アッパーハウジング66内に基準圧力を保持するための基準ガスなどが充填された後、その上面中央に設けられた孔をボール状の封体69にて封止することにより密閉されている。本実施形態においては、基準ガスとして、冷凍サイクルを循環する冷媒ガス(HFC−134a)と窒素ガスとの混合ガスが用いられる。なお、変形例においては、基準ガスとして、冷凍サイクルを循環する冷媒ガスと同種類のガスを用いてもよい。
【0043】
ダイアフラム64の下面には弁体42の上端面が当接する。弁体42の上端部外周面の所定箇所には、軸線方向に平行に延びる連通溝70が形成され、その連通溝70とロアハウジング68の内周面との間に形成される通路を介して導入ポート48と開放空間S2と弁孔44とが連通している。一方、弁体42を軸線方向に貫通するように連通路72が形成されており、導入ポート48から導入された冷媒は、その連通路72を介して背圧室60に導かれるようになっている。
【0044】
図3に戻り、以上のように構成された過冷却度制御弁21は、シール用のOリング73を介してボディ31に組み付けられる。このとき、ハウジング62(ロアハウジング68)がボディ31の上端部に圧入されることにより、パワーエレメント38がボディ31に固定される。
【0045】
逆止弁25は、有底段付円筒状の弁体80(「差圧弁体」に該当する)を有し、過冷却度制御弁21の下半部を外方から取り囲むように配設されている。弁体80の上端開口部にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材82が嵌着されており、その弁部材82が過冷却度制御弁21のボディ40に着脱することにより導出ポート50を開閉できるように構成されている。すなわち、ボディ40における上半部と下半部との境界部に位置する段部が、逆止弁25の弁座81を構成する。逆止弁25とばね受け部材36との間には、逆止弁25を閉弁方向に付勢するスプリング85(「付勢部材」に該当する)が介装されている。
【0046】
図示のような逆止弁25の閉弁状態においては、弁体80によって導出ポート50が外方から封止されるため、弁体80の上端部と弁体42とに囲まれる空間により中間圧力室83が形成され、中間圧力P’が満たされるようになる。一方、弁体42の底部と弁体80の底部とに囲まれる空間には上述した背圧室60が形成される。ストッパ67と弁体80との間には、シール用のOリングが介装されており、中間圧力室83と背圧室60との間のシール性が確保されている。
【0047】
このような構成において、入口ポート32および導入ポート48を介して導入された上流側圧力P1の冷媒は、連通路72を介して背圧室60にも導入される。ここで、ボディ40において弁孔44の径Aとガイド孔59の径Bとが実質的に等しく構成されているため、弁体42に作用する上流側圧力P1の影響および中間圧力P’の影響はいずれもキャンセルされる。
【0048】
パワーエレメント38は、過冷却度制御弁21の入口側(つまり、室外熱交換器5の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるように動作し、弁部の開度を調整する。すなわち、弁体42は、ダイアフラム64から受ける基準圧力室(密閉空間S1)の圧力による力と、スプリング61による付勢力とがバランスする位置にて静止する。基準圧力室の圧力は、入口ポート32から導入される冷媒の過冷却度に対応して変化し、それによって弁体42の位置が制御される。
【0049】
すなわち、過冷却度の制御状態において過冷却度が設定値SCよりも大きくなると、パワーエレメント38が低温を感知して開弁方向に動作する。その結果、弁開度が大きくなるため上流側圧力P1が低くなり、過冷却度が小さくなる方向に変化する。逆に、過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、パワーエレメント38が高温を感知して閉弁方向に動作する。その結果、弁開度が小さくなるため上流側圧力P1が高くなり、過冷却度が大きくなる方向に変化する。このようにして過冷却度が設定値SCに保たれるようになる。
【0050】
なお、スプリング85の荷重設定により逆止弁25が開弁するときの開弁差圧(逆止弁25の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が設定されている。逆止弁25は、過冷却度制御弁21の開弁動作中は基本的に全開状態となる。本実施例においては、逆止弁25に上流側圧力P1が作用するようにしたため、逆止弁25には比較的大きな差圧が作用するようになる。このため、その上流側圧力P1に応じて逆止弁25が速やかに開弁し、その開弁状態も安定に維持される。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、複合弁30(過冷却度制御弁21および逆止弁25)、差圧弁22および切替弁23が一体化されている点を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図5は、第2実施形態に係る第2制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【0052】
第2制御弁ユニット206は、共用のボディ231に、複合弁30(過冷却度制御弁21および逆止弁25)、差圧弁22および切替弁23が組み付けられて構成される。ボディ231の側部には、入口ポート32および出口ポート34のほか、第2出口ポート236が設けられている。入口ポート32には室外熱交換器5につながる配管が接続され、出口ポート34には蒸発器7につながる配管が接続され、第2出口ポート236にはアキュムレータ8につながる配管が接続される。入口ポート32と第2出口ポート236とを連通する通路は、バイパス通路9の一部を構成する。複合弁30は、入口ポート32と出口ポート34とを連通する第1通路に設けられる。
【0053】
差圧弁22は、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。差圧弁22は、主弁105とパイロット弁106とを有する。主弁105の開度が調整されることにより、第2通路の開度が調整される。主弁105の開度は、パイロット弁106の開閉により背圧室108の中間圧力Ppを変化させることにより調整される。パイロット弁106は、ソレノイド102により開閉駆動される。差圧弁22は、ソレノイド102がオフの状態では差圧制御は行わず、その主弁105が閉弁状態となる。
【0054】
一方、ソレノイド102がオンにされると、差圧弁22は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧(第1設定差圧)となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに膨張装置としても機能する。すなわち、差圧弁22の差圧制御状態において差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が小さくなるため、パイロット弁106が閉弁方向に動作する。その結果、中間圧力Ppが上昇して主弁105の開度を小さくするため、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が大きくなるため、パイロット弁106が開弁方向に動作する。その結果、中間圧力Ppが低下して主弁105の開度を大きくするため、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁106の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁105の開度が調整される。
【0055】
切替弁23は、通電の有無により開閉するパイロット作動式の制御弁として構成されている。切替弁23は、主弁115とパイロット弁116とを有する。パイロット弁116の開閉によって背圧室118の圧力が変化することにより、主弁115が開弁方向または閉弁方向に駆動される。パイロット弁116は、ソレノイド112により開閉駆動される。切替弁23は、ソレノイド112がオフの状態では閉弁状態となる。一方、ソレノイド112がオンにされると、パイロット弁116が開弁され、上流側圧力P1が背圧室118に導入されるため、主弁115が開弁方向に駆動される。
【0056】
次に、本実施例の第2制御弁ユニット206の主要な動作について説明する。図5および図6は、第2制御弁ユニット206の動作過程を例示する断面図である。図5は、過冷却度制御弁21および逆止弁25が開弁する一方、切替弁23が閉弁した状態を示し、図2(A)に示された状態に対応する。図6は、過冷却度制御弁21および逆止弁25が閉弁する一方、切替弁23が開弁した状態を示し、図2(C)に示された状態に対応する。
【0057】
図5に示す冷房運転状態においては、室外熱交換器5にて凝縮された冷媒が入口ポート32を介して導入され、過冷却度制御弁21は開弁状態となる。また、逆止弁25の前後差圧(P1−P2)がその開弁差圧よりも大きくなるため、逆止弁25は図示のように全開状態となる。過冷却度制御弁21は、入口ポート32を介して導入される冷媒の過冷却度が設置値SCとなるようその弁開度を調整する。このとき、差圧弁22および切替弁23はいずれもオフ(ソレノイド102,112がオフ)にされているため、閉弁状態を維持する。その結果、入口ポート32から導入された冷媒は、複合弁30を経て減圧され、出口ポート34から蒸発器7に向けて導出されるようになる。
【0058】
一方、図6に示す特定暖房運転状態においては、切替弁23がオン(ソレノイド112がオン)にされて開弁状態となるため、蒸発器7の入口と出口の圧力差がほとんどなくなり、差圧(P1−P2)がほぼゼロとなる。このため、逆止弁25が閉弁状態となる。また、室外熱交換器5にて蒸発された冷媒が入口ポート32を介して導入され、過冷却度制御弁21も閉弁状態を維持する。一方、差圧弁22はオフ(ソレノイド102がオフ)にされているため、閉弁状態を維持する。その結果、入口ポート32から導入された冷媒の全てが第2出口ポート236からアキュムレータ8に向けて導出されるようになる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0060】
上記実施形態では、過冷却度制御弁の下流側に逆止弁(差圧弁)を配置して複合弁を構成する例を示した。変形例においては、前後差圧が供給電流値に応じた一定の値となるように弁部が自律的に動作する定差圧弁、弁部の開度が駆動力に応じた一定の開度となるように動作する比例弁、供給電流に応じた一定の流量となるよう冷媒の流れを制御する流量制御弁、上流側圧力が供給電流値に応じた一定の値となるように動作する定圧弁、あるいは室外熱交換器の出口側の過熱度(スーパーヒート)を供給電流に応じた一定の過熱度となるよう冷媒の流れを制御する蒸発過熱度制御弁など、種々の制御弁の下流側に上記実施形態のような逆止弁(差圧弁)を設けて複合弁を構成してもよい。その場合も、差圧弁は、制御弁の上流側圧力と当該差圧弁の下流側圧力との差圧が設定差圧となったときに開弁し、設定差圧未満のときには閉弁状態を保持する。なお、制御弁は、アクチュエータとしてソレノイドを備える電磁弁であってもよいし、アクチュエータとしてステッピングモータ等の電動機を備える電動弁であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、圧縮機に対して室外熱交換器5と室内凝縮器3とを直列に接続する冷媒循環回路を有する冷凍サイクルについて上記複合弁を適用する例を説明した。変形例においては、圧縮機に対して室外熱交換器5と室内凝縮器3とを並列に接続する冷媒循環回路を有する冷凍サイクルに上記複合弁を適用してもよい。具体的には、圧縮機、室外熱交換器、室内蒸発器、補助凝縮器を備えた車両用冷暖房装置において、冷房運転時および暖房運転時に圧縮機から吐出された冷媒が補助凝縮器および室内蒸発器を順次経由して圧縮機に戻るように循環可能な第1冷媒循環通路と、暖房運転時に圧縮機から吐出された冷媒が補助凝縮器および室外熱交換器を順次経由して圧縮機に戻るように循環可能な第2冷媒循環通路と、冷房運転時に圧縮機から吐出された冷媒が室外熱交換器および室内蒸発器を順次経由して圧縮機に戻るように循環可能な第3冷媒循環通路とを備え、少なくともいずれかの凝縮器(室内凝縮器、室外凝縮器)の下流側に本発明の複合弁を設けるようにしてもよい。
【0062】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 4 第1制御弁ユニット、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁ユニット、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 9 バイパス通路、 15 開閉弁、 17,21 過冷却度制御弁、 22 差圧弁、 23 切替弁、 25 逆止弁、 30 複合弁、 32 入口ポート、 34 出口ポート、 38 パワーエレメント、 42 弁体、 44 弁孔、 46 弁座、 48 導入ポート、 50 導出ポート、 59 ガイド孔、 60 背圧室、 64 ダイアフラム、 72 連通路、 80 弁体、 81 弁座、 82 弁部材、 83 中間圧力室、 85 スプリング、 100 制御部、 102 ソレノイド、 105 主弁、 106 パイロット弁、 108 背圧室、 112 ソレノイド、 115 主弁、 116 パイロット弁、 118 背圧室、 206 第2制御弁ユニット、 231 ボディ、 236 第2出口ポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側への冷媒の流れを制御する制御弁と、その制御弁の下流側通路を開閉する差圧弁とを含む複合弁であって、
前記制御弁の上流側圧力室と前記差圧弁の上流側圧力室とを連通する連通路を備え、
前記差圧弁が、前記制御弁の上流側圧力と前記差圧弁の下流側圧力との差圧を受け、その差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して前記制御弁の下流側通路を開放することを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記制御弁は、
上流側から冷媒を導入する導入ポートと、下流側へ冷媒を導出する導出ポートと、その導入ポートと導出ポートとを連通する主弁孔とが設けられたボディと、
前記主弁孔に接離して弁部の開度を調整する主弁体と、
を備え、
前記差圧弁は、
前記制御弁のボディに着脱して前記導出ポートを開閉する差圧弁体と、
前記差圧弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
【請求項3】
前記制御弁は、前記導入ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、前記弁部の上流側の温度が設定値となるよう前記主弁体を開閉駆動する感温部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の複合弁。
【請求項4】
前記連通路が前記主弁体を貫通するように形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の複合弁。
【請求項5】
前記ボディにおける前記導出ポートに対して前記主弁孔とは反対側に、前記主弁体を前記弁部の下流側にて摺動可能に支持するガイド孔が設けられ、
前記主弁体において前記ガイド孔に支持される部分であるガイド部と前記差圧弁体との間に背圧室が形成され、
前記連通路が前記背圧室に連通するように設けられることにより、前記制御弁の上流側圧力が前記背圧室に導入されるように構成され、
前記主弁孔と前記ガイド孔との内径が等しくされることにより、前記主弁体に作用する前記制御弁の上流側圧力の影響がキャンセルされるキャンセル構造を備えたことを特徴とする請求項4に記載の複合弁。
【請求項6】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器と、
前記凝縮器から送出された冷媒を減圧する膨張装置と、
前記膨張装置にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を備えた車両用冷暖房装置であって、
前記膨張装置は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する制御弁と、その制御弁の下流側通路を開閉する差圧弁とを含む複合弁であって、前記制御弁の上流側圧力室と前記差圧弁の上流側圧力室とを連通する連通路を備え、
前記差圧弁が、前記制御弁の上流側圧力と前記差圧弁の下流側圧力との差圧を受け、その差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して前記制御弁の下流側通路を開放することを特徴とする車両用冷暖房装置。
【請求項7】
前記制御弁が、前記凝縮器の出口側の過冷却度が設定値となるよう冷媒の流量を調整する過冷却度制御弁として構成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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