説明

複合弁

【課題】流体の流れを妨げることなく弁体の保守・点検を行うことができ、バイパス配管が不要で、流路の設置コストの低減を図ることのできる複合弁を提供する。
【解決手段】流体の流入口13および流出口14を有するバルブ本体11の内部に設置され流体の流路の開閉を行うボール弁体20と、ボール弁体20に形成された貫通流路22と、貫通流路22の内部に設置され流体の流路の開閉を行うジスク26と、ボール弁体20に形成されボール弁体20が閉状態のときに流体の流路を構成するバイパス流路23と、ボール弁体20が閉状態のときに貫通流路22に連通する点検用孔と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合弁に係り、特に、配管内部の流体の流れを妨げることなく、一方の弁体の保守・点検・交換などのメンテナンスを行うことを可能とした複合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バルブ本体の内部に流体の開閉動作を行うための主弁体を備えるとともに、この主弁体の内部に副弁体を備え、主弁体を開にした状態で、副弁体を開閉動作させることにより、流体の流量制御を行うようにした複合弁が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような特許文献1に記載された複合弁においては、流体の流れる方向に対して直交する方向に設けられた保守点検用の開口部を備えており、主弁体を閉にした状態で、保守点検用の開口部から副弁体の保守、点検を行うことができるように構成されている。
【0004】
また、従来から、複合弁ではないが、弁体の内部にストレーナを設け、弁体を閉にした状態で、開口からストレーナの交換などを行うことができるようにした弁装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−349726号公報
【特許文献2】特開2000−046211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の複合弁においては、副弁体の保守点検を行う場合に、主弁体により流体の流路を閉じてしまうので、例えば、空調設備など、常に流体を流しておく必要のある配管システムに適用する場合には、流体の流路を確保するため複合弁をバイパスするバイパス配管を設ける必要があり、しかも、バイパス配管の開閉を行うための別の開閉弁を設ける必要があり、部品点数の増大を招き、流路配管の設置コストが高くなってしまうという問題を有している。また、天井裏や機械室内など狭い空間に配管を敷設する場合には、バイパス配管を設置することができない場合も多いという問題をも有しており、空調停止など流体供給を遮断することによる障害を受忍せざるを得なかった。
【0007】
また、前記特許文献2に記載のものも、同様に、ストレーナの交換時に流体の流路を閉じてしまうため、やはりバイパス配管を設ける必要があり、流路配管の設置コストが増大してしまうという問題を有している。
【0008】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、流体の流れを妨げることなく弁体の保守・点検を行うことができ、バイパス配管が不要で、流路の設置コストの低減を図ることのできる複合弁を提供するを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、流体の流入口および流出口を有するバルブ本体と、このバルブ本体の内部に設置され前記バルブ本体の流入口および流出口を結ぶ前記流体の流路の開閉を行う第1の弁体と、前記第1の弁体に形成され前記流体の流路を構成する貫通流路と、前記貫通流路の内部に設置され前記流体の流路の開閉を行う第2の弁体と、前記第1の弁体に形成され前記第1の弁体が閉状態のときに前記流体の流路を構成するバイパス流路と、前記第1の弁体が閉状態のときに前記貫通流路に連通する点検用孔と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記バイパス流路は、前記第1の弁体が閉状態のときに前記バルブ本体の流入口および流出口を結ぶ流路に連通するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記バルブ本体の前記流入口および前記流出口より内側部分には、前記流入口および前記流出口より内径を大きく形成してなる拡径部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記第1の弁体および前記第2の弁体は、それぞれ回転弁であり、前記第1の弁体と前記第2の弁体の回転軸は同軸に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項において、前記点検用孔には、点検用プラグが着脱自在に装着されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項において、前記バイパス流路には、バイパス流路閉塞プラグが着脱自在に装着されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6において、前記バルブ本体には、前記バイパス流路閉塞プラグの着脱用のプラグ用孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、第1の弁体を開にした状態で、第2の弁体を開閉動作させることにより、流体の流量制御を行うことができるとともに、第1の弁体を閉にした状態で、点検用孔から第2の弁体の保守・点検を行うことができる。また、第1の弁体を閉状態にして第2の弁体の保守・点検を行う際に、第1の弁体に形成されたバイパス流路により流体の流れを確保することができるので、従来のようにバイパス配管が不要となり、任意の場所に容易に設置することができ、さらに、流路設置コストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、バイパス流路を第1の弁体が閉状態のときにバルブ本体の流入口および流出口を結ぶ流路に連通するようにしているので、第1の弁体の貫通流路による流路とバイパス流路による流路とを共通の流路とすることができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、バルブ本体の流入口および流出口より内側部分に、流入口および流出口より内径を大きく形成してなる拡径部を形成するようにしているので、この拡径部により、流入口および流出口からずれた位置に貫通流路およびバイパス流路を配置した場合でも、流体の流路を確保することができ、バルブ本体または第1の弁体の形状を大きくすることなく、流入口から、貫通流路またはバイパス流路、流出口への流路を確保することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、第1の弁体および第2の弁体は、それぞれ回転弁であり、第1の弁体と第2の弁体の回転軸を同軸に配置するようにしているので、第1の弁体および第2の弁体のそれぞれに軸受構造を設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、点検用孔に点検用プラグを着脱自在に装着するようにしているので、保守・点検時以外には、点検用プラグを装着して点検用孔を閉塞することで、流体がバルブ本体の外部に漏洩することを防ぐことができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、バイパス流路にバイパス流路閉塞プラグが着脱自在に装着するようにしているので、バイパス流路にバイパス流路閉塞プラグを装着してバイパス流路を閉塞しておけば、例えば、空調システムにおける空調機コイルなど本複合弁の下流側に位置する本複合弁以外の部材のメンテナンスを行う必要が生じた場合に、第1の弁体を閉にするだけで、流体の完全な封止が可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、バルブ本体にバイパス流路閉塞プラグの着脱用のプラグ用孔を形成するようにしているので、例えば、第1の弁体が開状態のときにプラグ用孔からバイパス流路閉塞プラグの着脱を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る複合弁の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1から図4は本発明に係る複合弁の第1の実施形態を示したものである。
本発明に係る複合弁は、流体の流入口1および流出口2を有するバルブ本体3を備えており、このバルブ本体3の内部には、流体の流路の開閉を行う第1の弁体としてのボール弁体4が収容されている。このボール弁体4には、流体の流入口1および流出口2に連通するように貫通する貫通流路5が形成されている。
【0025】
この貫通流路5には、その内部において流入口1側と流出口2側とを上下に仕切る仕切り壁6が形成されており、仕切り壁6の中途部には、開口7が形成されている。流体は、開口7の上面に導かれ開口の下面に流出する。この仕切り壁6の開口7部分には、昇降動作により開口7の開閉を行う第2の弁体としてのグローブバルブ用弁体8が配設されており、グローブバルブ用弁体8は、その上下動で開口7の開口面積を変化させて流体の流量を制御するように構成されている。
【0026】
さらに、ボール弁体4が閉状態のときに流入口1と流出口2とを直進して連通させるバイパス流路9が貫通流路5の形成方向に対して所定角度をもって形成されている。すなわち、本実施形態においては、バイパス流路9の軸心は、貫通流路5の軸心に対して約60°の角度となるように配置されている。なお、このバイパス流路9は、ボール弁体4が閉状態のときに流入口1と流出口2とを連通させることが可能であれば、貫通流路5に対していずれの角度をもって形成するようにしてもよい。
【0027】
また、バルブ本体3の上部には、ボール弁体4が閉状態のときに貫通流路5に連通する点検用孔10が形成されている。本実施形態においては、点検用孔10は、グローブバルブ用弁体8を取付けるための取付け用孔と兼用となっており、この点検用孔10は、複合弁として使用している際には、閉塞されている。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態における複合弁によれば、図1および図2に示すように、ボール弁体4を開状態にして、貫通流路5を流入口1と流出口2とに連通させた状態で、グローブバルブ用弁体8を開閉動作させることにより、貫通流路5を流れる流体の流量を制御するようになっている。
【0029】
そして、グローブバルブ用弁体8を保守・点検・交換などのメンテナンスを行う場合は、図3および図4に示すように、ボール弁体4を反時計回りに約60°回転動作させて閉状態に保持する。この状態で、バイパス流路9が流入口1と流出口2とに連通することになるので、流体の流れを妨げることがない。そして、バルブ本体3に設けた点検用孔10からグローブバルブ用弁体8のメンテナンスを行うようになっている。
【0030】
さらに、本実施形態においては、図3および図4に示す状態から、さらにボール弁体4を反時計回りに約60°回転動作させることにより、ボール弁体4の貫通流路5およびバイパス流路9をそれぞれ閉状態に保持することができ、完全な閉状態を確保することができる。
【0031】
したがって、本実施形態においては、流入口1と流出口2をバイパスするためのバイパス流路9を形成しているので、ボール弁体4を閉状態にすることにより、流体の流れを妨げることなく、容易にグローブバルブ用弁体8のメンテナンスを行うことができる。また、流入口1と流出口2をバイパスするためのバイパス流路9を流量調整用の貫通流路5を設けたボール弁体4に一体に形成しており、バルブ本体3に別途のバイパス流路9を設ける必要がないため、バイパス流路9を有する複合弁をコンパクトな構造で得ることができる。その結果、ボール弁体4を閉状態にしてグローブバルブ用弁体8のメンテナンスを行う際に、バイパス流路9により流体の流れを妨げることがないので、従来のようにバイパス配管が不要となり、任意の場所に容易に設置することができ、さらに、流路設置コストの低減を図ることができる。
【0032】
次に、本発明に係る複合弁の第2の実施形態について、図5から図11を参照して説明する。
図5および図6に示すように、複合弁は、内部が中空とされたバルブ本体11を備えており、バルブ本体11の一側には、蓋体12が螺合されるように構成されている。そして、この蓋体12の螺合によりバルブ本体11が構成されるようになっている。
【0033】
蓋体12には、流体の流入口13が設けられており、バルブ本体11の他側には、流体の流出口14が設けられている。バルブ本体11の上面には、上方に延在する上部ステム孔15が設けられており、バルブ本体11の上部ステム孔15の上端縁には、アクチュエータ用フランジ16,16が互いに上部ステム孔15の直径方向に突出形成されている。バルブ本体11の下面には、下方に延在する下部ステム孔17が設けられている。
【0034】
また、バルブ本体11の一側面には、流入口13と流出口14とを結ぶ方向に対して直交する方向に延在する点検用孔18がバルブ本体11から膨出するように形成されており、この点検用孔18は、この点検用孔18に螺合される点検用プラグ19により閉塞されている。
【0035】
このバルブ本体11の内部には、第1の弁体としてのほぼ球形状のボール弁体20が収容されている。ボール弁体20とバルブ本体11および蓋体12との間には、それぞれボールシート21,21が配設されており、ボール弁体20をバルブ本体11の内部の適正位置に保持するように構成されている。
【0036】
本実施形態においては、ボール弁体20の上方には、流入口13と流出口14とを結ぶ軸心と軸心が平行となるように直径方向に貫通する貫通流路22が形成されており、ボール弁体20の貫通流路22より下方には、貫通流路22に対して直交する方向に貫通し貫通流路22より小径とされたバイパス流路23が形成されている。すなわち、バイパス流路23の軸心は、貫通流路22の軸心に対して約90°の角度となるように配置されている。
【0037】
また、本実施形態においては、バルブ本体11の流入口13および流出口14より内側部分には、流入口13および流出口14より内径を大きく形成してなる拡径部50が形成されている。さらに、ボール弁体20の流入口13および流出口14に対向する側端面は、流入口13と流出口14とを結ぶ軸心に対して直交する方向に削った形状に形成されている。したがって、このボール弁体20の側端面の形状および拡径部50により、流入口13および流出口14からずれた位置に貫通流路22およびバイパス流路23を配置した場合でも、流体の流路を確保することができ、バルブ本体11またはボール弁体20の形状を大きくすることなく、流入口、貫通流路またはバイパス流路、流出口への流路を確保することができる。
【0038】
また、ボール弁体20の貫通流路22の中途部上方には、上部ステム孔15と同軸であって上部ステム孔15に連通するとともに貫通流路22に小径となって連通するステム用孔24が形成されており、ボール弁体20の貫通流路22の中途部下方には、ステム用孔24と同軸の軸受部25が形成されている。ボール弁体20の貫通流路22のステム用孔24および軸受部25に対応する位置には、円板状のバタフライ弁を構成する第2の弁体としてのジスク26が配置されており、ジスク26の中央には、上下方向に貫通する係合孔27が形成されている。
【0039】
バルブ本体11の上部ステム孔15およびステム用孔24の内部には、アクチュエータ用ステム28が収容されており、このアクチュエータ用ステム28の下部には、ジスク26の係合孔27に挿入されて軸受部25に支持されるジスク係合部29が形成されている。そして、このアクチュエータ用ステム28を回転させることにより、ジスク係合部29を介してジスク26を回転動作させることができるように構成されている。
また、アクチュエータ用ステム28の周面には、例えばOリングなどの封止部材(図示せず)を受け入れる2つの環状溝30,30が形成されており、アクチュエータ用ステム28の上端部には、電動アクチュエータの出力軸に連結される連結部31が形成されている。
【0040】
上部ステム孔15の上端部内側には、アクチュエータ用ステム28を回転自在に支持するとともにアクチュエータ用ステム28の抜け落ちを防止するためのグランド32が螺合されている。
アクチュエータ用フランジ16の上面には、スペーサ33を介して電動アクチュエータ34がその出力軸35がアクチュエータ用ステム28の連結部31に連結された状態で設置されており、この電動アクチュエータ34は、アクチュエータ用フランジ16にボルト36により固定されている。
【0041】
バルブ本体11の下部ステム孔17の内部には、手動用ステム37が収容されており、この手動用ステム37の上端部には、ボール弁体20の下面に形成された係合凹部38に係合される係合突起39が形成されている。そして、手動用ステム37の係合突起39をボール弁体20の係合凹部38に係合させた状態で、手動用ステム37の回転によりボール弁体20を回転動作させることができるように構成されている。
【0042】
このとき、本実施形態においては、ボール弁体20をアクチュエータ用ステム28および手動用ステム37により、回転自在に支持するとともに、ジスク26をアクチュエータ用ステムにより回転自在に支持する構造であり、ボール弁体20およびジスク26の回転軸を同軸に配置した構造としているので、ボール弁体20およびジスク26を容易に支持することが可能となる。
【0043】
また、手動用ステム37の下端部には、ハンドル40の一端部がナット48により取付けられている。バルブ本体11の下面には、図示しないストッパ突起が下方に向けて突出形成されており、ハンドル40の基端部には、ハンドル40を回動動作させた際に、ストッパ突起に当接し、ハンドル40の回動角度を規制するストッパ部41が形成されている。
なお、本実施形態においては、ハンドル40の回動角度は、貫通流路22とバイパス流路23の軸心に合わせてほぼ90°とされているが、所定の角度範囲で任意に設定することができる。
【0044】
また、ボール弁体20が開状態のときに点検用プラグ19を誤って取り外してしまうことのないように、ハンドル40の回動動作に連動して点検用プラグ19の取り外し動作を規制する連動機構を設けることが好ましい。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0046】
通常の開閉動作を行う場合は、図5および図6に示すように、貫通流路22が流入口13および流出口14に連通するように、ボール弁体20を配置し、この状態で、電動アクチュエータ34を動作させてアクチュエータ用ステム28を介してジスク26を回転動作させることにより、任意の開度で冷水などの熱媒その他の流体の流量を調整するようになっている。
【0047】
次に、複合弁をメンテナンスする手順について説明する。
まず、図7および図8に示すように、ハンドル40を操作してボール弁体20を約90°回転させることにより、閉にして、貫通流路22とバイパス流路23との流路位相を変更する。この状態で、貫通流路22が閉になる一方、バイパス流路23が流入口13および流出口14に連通することになり、かつ、ボール弁体20とボールシート21,21とは、シール状態を維持していることから、流体の流れはバイパス流路23を介して保持される。続いて、電動アクチュエータ34を動作させてジスク26を回転動作させて閉にする。
【0048】
その後、図9に示すように、点検用プラグ19を緩めてバルブ本体11とボール弁体20との間に内封された流体を漏出させ、点検用プラグ19を取り外す。続いて、電動アクチュエータ34のボルト36を外して電動アクチュエータ34を取り外す。
そして、スペーサ33およびグランド32を取り外し、アクチュエータ用ステム28を上部ステム孔15から抜き取る。このとき、ボール弁体20によりジスク26の上方への移動が規制されるため、ジスク26の係合孔27からアクチュエータ用ステム28のジスク係合部29が引き抜かれる。この状態で、貫通流路22に対向した点検用孔18から図示しない治具を用いてジスク26を取り外し、ジスク26の保守・点検・交換などのメンテナンスを行う。
【0049】
次に、メンテナンスの終了後にジスク26を組み付ける場合は、図示しない治具により、点検用孔18からジスク26を挿入し、係合孔27をステム用孔24の軸心方向に合わせて保持する。この状態で、上部ステム孔15からアクチュエータ用ステム28を挿入し、アクチュエータ用ステム28のジスク係合部29をジスク26の係合孔27に挿入させる。その後、グランド32によりアクチュエータ用ステム28を取付け、スペーサ33を介して、電動アクチュエータ34を取付ける。
【0050】
したがって、本実施形態においては、流入口13と流出口14をバイパスするためのバイパス流路23を形成しているので、ボール弁体20を閉状態にすることにより、流体の流れを妨げることなく、容易にジスク26の保守・点検を行うことができる。また、流入口13と流出口14をバイパスするためのバイパス流路23を流量調整用の貫通流路22を設けたボール弁体20に一体に形成しており、バルブ本体11に別途のバイパス流路23を設ける必要がないため、バイパス流路23を有する複合弁をコンパクトな構造で得ることができる。その結果、ボール弁体20を閉状態にしてジスク26の保守・点検を行う際に、バイパス流路23により流体の流れを妨げることがないので、従来のようにバイパス配管が不要となり、任意の場所に容易に設置することができ、さらに、流路設置コストの低減を図ることができる。
【0051】
図10および図11は本発明の第3の実施形態を示したもので、バイパス流路にバイパス流路閉塞プラグを装着することにより、バイパス流路を閉塞することができるようにしたものである。
本実施形態においては、バルブ本体11の点検用孔18の反対側には、この点検用孔18の膨出方向と反対の方向に膨出するプラグ用孔42が形成されており、このプラグ用孔42には、閉塞操作用プラグ43が装着されている。さらに、バイパス流路23のプラグ用孔42側の内面には、雌ねじが形成されており、このバイパス流路23の雌ねじには、バイパス流路閉塞プラグ44が螺合して固定されている。
【0052】
このようにバイパス流路23を閉塞できる構造としたのは、例えば、空調システムなどにおいて、空調機コイルなど本複合弁の下流側に位置する本複合弁以外の部材のメンテナンスを行う必要が生じた場合に、ジスク26のみでは、流路の完全な封止ができない場合があるためである。本実施形態のように、バイパス流路23をバイパス流路閉塞プラグ44で閉塞した状態で、流入口13および流出口14にバイパス流路23を対向させて、貫通流路22を流入口13および流出口14から外れた状態にすることにより、完全な封止が可能となる。なお、通常状態でバイパス流路閉塞プラグ44を装着した状態(着状態)とするか、取り外した状態(脱状態)とするかは任意であるが、通常は着状態としておき、ジスク26のメンテナンス時に初めて脱状態とする方がバイパス流路閉塞プラグ44の部品の管理の面で有利である。
【0053】
また、本複合弁が空調システムなどに適用される場合、流体は温水または冷水であることから、複合弁全体を保温材で被覆して放熱量を低減させることが必要となる。
そのため、本実施形態においては、保温材で被覆するスペースを確保するため、上部ステム孔15部分の長さ寸法を大きく形成するように構成されている。また、保温材で被覆するに際して、ハンドルが邪魔となり、しかもハンドル部分における結露が生じるおそれがあることから、ハンドルを省略するように構成されている。
【0054】
すなわち、本実施形態においては、手動用ステム37の下端部には、ハンドルの代わりに手動用ステム37の回転量を規制するストッパ板45がC型止め輪46により装着されており、手動用ステム37の下端部には、手動用ステム37の回転を防止する押さえ板47がねじ48により固定されている。本実施形態においては、ストッパ板45により規制される手動用ステム37の回転量は、流路の確実な変換のためほぼ90°に設定されている。
【0055】
その他の構成は前記第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0057】
本実施形態においても前記実施形態と同様に、通常の開閉動作を行う場合は、貫通流路22が流入口13および流出口14に連通するように、ボール弁体20を配置し、この状態で、電動アクチュエータ34を動作させてアクチュエータ用ステム28を介してジスク26を回転動作させることにより、任意の開度で流量を調整するようになっている。
【0058】
そして、複合弁の点検を行う場合は、ねじ48を緩めて押さえ板47を取り外し、手動用ステム37の下端部に所定の工具を装着して手動用ステム37を約90°回転動作させて、ボール弁体20を閉にするとともに、電動アクチュエータ34を動作させてジスク26を閉にする。このとき、本実施形態においては、バイパス流路閉塞プラグ44によりバイパス流路23を閉塞しているので、流体を完全に封止することができる。なお、バイパス流路23をバイパス流路閉塞プラグ44で閉塞しない場合には、前記実施形態と同様に、バイパス流路23が流入口13および流出口14に連通して流体の流れはそのまま保持される。
【0059】
その後、同様に、点検用プラグ19を緩めてバルブ本体11とボール弁体20との間に内封された流体を抜き、点検用プラグ19を取り外す。続いて、電動アクチュエータ34、スペーサ33およびグランド32を取り外し、アクチュエータ用ステム28を上部ステム孔15から抜き取った後、貫通流路22に対向した点検用孔18からジスク26を取り外し、ジスク26のメンテナンスを行う。
【0060】
したがって、本実施形態においても前記実施形態と同様に、ボール弁体20を閉状態にすることにより、流体を完全に封止した状態で、容易にジスク26の保守・点検を行うことができる。しかも、バイパス流路23にバイパス流路閉塞プラグ44で閉塞するようにしているので、例えば、空調システムなどにおいて、空調機コイルなど本複合弁の下流側に位置する本複合弁以外の部材のメンテナンスを行う必要が生じた場合であっても、ボール弁体20を閉状態にし、バイパス流路閉塞プラグ44を流入口13に対向させることにより、完全な封止が可能となる。
【0061】
また、本実施形態においては、流入口13と流出口14をバイパスするためのバイパス流路23を流量調整用の貫通流路22を設けたボール弁体に一体に形成しており、バルブ本体11に別途のバイパス流路23を設ける必要がないため、バイパス流路23を有する複合弁をコンパクトな構造で得ることができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、バルブ本体11にプラグ用孔42を形成し、このプラグ用孔42からバイパス流路閉塞プラグ44の着脱を行うようにしたが、例えば、バルブ本体11の点検用孔18の径を、貫通流路22およびバイパス流路23を露出させる程度に大きく形成し、点検用孔18によりバイパス流路閉塞プラグ44の着脱を行うようにしてもよい。
【0063】
また、前記各実施形態においては、1つのバイパス流路9,23を設けるようにしているが、例えば、複数のバイパス流路を設けるようにしてもよいし、また、バイパス流路の断面形状も円形に限るものではなく、楕円形状その他いずれの形状に形成するようにしてもよい。
【0064】
また、点検用プラグ19、閉塞操作用プラグ43、バイパス流路閉塞プラグ44は、いずれもねじ部分をテーパ状に形成してそれぞれ孔部に螺合させることが有利である。
【0065】
また、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る複合弁の第1の実施形態を示す開閉制御状態の動作説明図である。
【図2】本発明に係る複合弁の第1の実施形態を示す図1のA視側面図である。
【図3】本発明に係る複合弁の第1の実施形態を示す保守・点検状態を示す動作説明図である。
【図4】本発明に係る複合弁の第1の実施形態を示す図3のB視側面図である。
【図5】本発明に係る複合弁の第2の実施形態を示す開閉制御状態の正面断面図である。
【図6】本発明に係る複合弁の第2の実施形態を示す開閉制御状態の側面断面図である。
【図7】本発明に係る複合弁の第2の実施形態を示す保守・点検状態の正面断面図である。
【図8】本発明に係る複合弁の第2の実施形態を示す保守・点検状態の側面断面図である。
【図9】本発明に係る複合弁の第2の実施形態における保守・点検手順を示す概略図である。
【図10】本発明に係る複合弁の第3実施形態を示す開閉制御状態の正面断面図である。
【図11】本発明に係る複合弁の第3実施形態を示す開閉制御状態の側面断面図である。
【符号の説明】
【0067】
11 バルブ本体
12 蓋体
13 流入口
14 流出口
15 上部ステム孔
16 アクチュエータ用フランジ
17 下部ステム孔
18 点検用孔
19 点検用プラグ
20 ボール弁体
22 貫通流路
23 バイパス流路
24 ステム用孔
26 ジスク
28 アクチュエータ用ステム
32 グランド
33 スペーサ
34 電動アクチュエータ
37 手動用ステム
40 ハンドル
42 プラグ用孔
43 バイパス流路閉塞プラグ
44 閉塞操作用プラグ
45 ストッパ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口および流出口を有するバルブ本体と、
このバルブ本体の内部に設置され前記バルブ本体の流入口および流出口を結ぶ前記流体の流路の開閉を行う第1の弁体と、
前記第1の弁体に形成され前記流体の流路を構成する貫通流路と、
前記貫通流路の内部に設置され前記流体の流路の開閉を行う第2の弁体と、
前記第1の弁体に形成され前記第1の弁体が閉状態のときに前記流体の流路を構成しうるバイパス流路と、
前記第1の弁体が閉状態のときに前記貫通流路に連通する点検用孔と、
を備えていることを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記バイパス流路は、前記第1の弁体が閉状態のときに前記バルブ本体の流入口および流出口を結ぶ流路に連通するものであることを特徴とする複合弁。
【請求項3】
前記バルブ本体の前記流入口および前記流出口より内側部分には、前記流入口および前記流出口より内径を大きく形成してなる拡径部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合弁。
【請求項4】
前記第1の弁体および前記第2の弁体は、それぞれ回転弁であり、前記第1の弁体と前記第2の弁体の回転軸は同軸に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合弁。
【請求項5】
前記点検用孔には、点検用プラグが着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の複合弁。
【請求項6】
前記バイパス流路には、バイパス流路閉塞プラグが着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の複合弁。
【請求項7】
前記バルブ本体には、前記バイパス流路閉塞プラグの着脱用のプラグ用孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の複合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−41588(P2009−41588A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204302(P2007−204302)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】