説明

複合成型体の製造方法

本発明は複合成型体の製造方法に関し、より具体的にはポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及び硝子繊維または炭素纎維を含む成型体を製造する段階及び上記成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングする段階を含む複合成型体の製造方法に関する。本発明による複合成型体はホイールハーブの鋳物代わりに用いられて、ホイールの重量を最小化させ、材料費用が低廉であるとともに、大量生産が可能であり、コーティング用組成物との接着力が非常に優れ、鋳鉄、ステンレススチールまたはアルミニウムなどの金属鋳物と相応するる強度及び耐久性を有する效果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合成型体の製造方法に関し、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及び硝子繊維または炭素纎維を含む成型体を製造する段階及び上記成型体に反応性コーティング用組成物、即ち、ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングする段階を含む複合成型体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、物体の移動を容易にする装置であるホイールの種類は、その用途によって分けられる。例えば、最大許容荷重135kg程度のホイールは、高級家電製品、陳列台、事務機器及び室内の装飾用家具、軽量物及び産業用運搬具などに用いられ、最大許容荷重200kg程度の中荷重用ホイールは各種重量物運搬具などに用いられ、最大許容荷重820kg程度の高荷重用ホイールは産業用備品、小型設備、軽荷重運搬具などに用いられる。
【0003】
一般的に、ホイールは鋳物に二液性ポリウレタン組成物をコーティングしたものと、ナイロンを射出成形して製作した剛性のあるプラスチック射出材などが用いられている。この中でもプラスチック射出材は接着による二重射出ではなく、ホイールハーブに溝または段を形成して二つの物質が互いに混ざっている結合形態である。
【0004】
この中、プラスチック射出材は、接着性及び耐久性の問題により、二液性ポリウレタン組成物をコーティングするのに限界があり、割れやすいという問題がある。
【0005】
一方、従来、鋳鉄、ステンレススチールまたはアルミニウムなどの金属鋳物を利用して製造されたホイールは、移動の時、騷音が大きく、鋳物重量(比重7.5以上)によって、運搬費用が高くてホイールの費用に影響を与え、且つ生産性が低下し、取り扱いが難しく、製造費用が高いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために創出されたもので、複合成型体を製造する時、反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物との接着性を高め、金属鋳物と相応する強度及び耐久性を有する成型体の組成と、この組成を利用して製造された成型体の外部を反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物でコーティングした複合成型体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及び硝子繊維または炭素纎維を含む成型体を製造する段階及び上記成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングする段階を含む工程で、従来、金属鋳物を利用して製造されたホイールが有する製造方法の困難性及び製造費用が高いという問題を改善した複合成型体の製造方法を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達するために創出されたもので、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及び硝子繊維または炭素纎維を含む成型体を製造する段階及び上記成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングする段階を含む複合成型体の製造方法を提供する。
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
ただし、用いられる技術用語及び科学用語において特に定義がない場合、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不必要に曖昧にする虞のある公知機能及び構成に対する説明は省略する。
【0011】
本発明は複合成型体の製造方法に関し、a)ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethyleneterephtalate)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS、acrylonitrile−butadiene−styrene)及び硝子繊維(GF、glass fiber)または炭素纎維を含む成型体を製造する段階;b)上記成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングする段階;を含む。
【0012】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と言う)は、当該分野で通常的に使われるものであれば制限されることなく使うことができるが、最近プラスチック産業の発達につれて、プラスチック製品の氾濫によって廃棄物の処理が大きな環境問題として台頭し、それによって本発明ではリサイクルPETの使用で環境汚染問題を減少させ、経済的な複合成型体及びその製造方法を提供する。
【0013】
本発明はポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(以下「ABS」と言う)及び硝子繊維または炭素纎維を含む成型体を製造して接着性を向上させ、鋳物と相応する強度及び耐久性を有する複合成型体を製造することができる。
【0014】
上記a)段階の成型体は、ポリエチレンテレフタレートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンが混合された混合物100重量部に対して硝子繊維(以下「GF」と称する)または炭素纎維(以下「CF」と称する)1〜30重量部を含むことが好ましく、上記硝子繊維または炭素纎維が1重量部未満である場合には、強度及び耐久性が弱くなる問題があり、30重量部を超える場合には、耐衝撃性の劣るという問題がある。
【0015】
上記ポリエチレンテレフタレートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンが混合された混合物は、ポリエチレンテレフタレート30〜70重量%、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン30〜70重量%を含むことが好ましい。
【0016】
上記ポリエチレンテレフタレートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンが混合された混合物及び硝子繊維または炭素纎維が上記範囲内にある場合、耐衝撃性、耐久性、耐熱性及び接着性が優れた成型体を製造することができる。
【0017】
また、上記a)段階の成型体は、ポリエチレン(PE、polyethylene)、ポリカーボネート(PC、polycarbonate)、ポリブチレンテレフタレート(PBT、polybutyleneterephthalate)、ナイロン(nylon)、熱可塑性ポリウレタン(TPU、thermoplastic polyurethane)、スチレン‐ブタジエン‐スチレン(SBS、styrene−butadiene−styrene)から選択される1種または2種以上の樹脂をさらに含んで製造されることができる。
【0018】
上記a)段階の成型体は、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及びポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン‐ブタジエン‐スチレンから選択される1種または2種以上の樹脂が混合された混合物100重量部に対して、硝子繊維または炭素纎維1〜30重量部を含むことが好ましく、上記硝子繊維または炭素纎維が1重量部未満である場合には、強度及び耐久性が弱くなるという問題があり、30重量部を超える場合には、耐衝撃性が劣るという問題がある。
【0019】
また上記ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及びポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン‐ブタジエン‐スチレンから選択される1種または2種以上の樹脂が混合された混合物は、ポリエチレンテレフタレート30〜60重量%、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン20〜60重量%及びポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン‐ブタジエン‐スチレンから選択される1種または2種以上の樹脂1〜50重量%を含むことが好ましく、上記範囲の場合、耐衝撃性、耐久性、耐熱性及び接着性が優れた成型体を製造することができる。
【0020】
上記ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン‐ブタジエン‐スチレンから選択される1種または2種以上の樹脂が上記成型体に1重量%未満で含まれる場合には、強度及び耐久性に変化がなく、50重量%を超える場合には、接着性が劣るという問題があり、費用も高くなって常用化されにくい。
【0021】
上記b)段階は、成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングした後、硬化する段階をさらに含んで、複合成型体を製造することができ、硬化の時、複合成型体の強度及び耐久性の向上に效果がある。
【0022】
上記反応性ポリウレタン組成物は、ポリオールを含む第1溶液とイソシアネートを含む第2溶液の2液性組成物を用いることが好ましく、上記反応性ポリウレタン組成物は、本発明の成型体と接着性が優れているとともに、費用の面でも低廉で複合成型体の商用化に效果的である。
【0023】
また、上記ゴム組成物は、複合成型体の強度及び耐久性の向上に效果的である。具体的に、例えばニトリルブタジエンゴム(nitrile butadiene rubber、NBR)、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、熱可塑性ゴム(thermoplastic rubber、TPR)、シリコーンゴムなどが用いられることができるが、これに限定されるのではない。
【0024】
本発明による複合成型体は、ホイールハーブの鋳物代わりに用いることができ、ホイールの重量を最小化し、材料費用が低廉であるとともに、大量生産が可能であり、コーティング用組成物との接着力が非常に優れ、鋳鉄、ステンレススチールまたはアルミニウムなどの金属鋳物と相応する強度及び耐久性を有するホイールを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による複合成型体は、ホイールハーブの鋳物代わりに使用可能であり、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethyleneterephtalate)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS、acrylonitrile−butadiene−styrene)及び硝子繊維(glass fiber)または炭素纎維を含む構成でホイールの重量を最小化しており、材料費用が低廉であるとともに、大量生産が可能であり、コーティング用組成物との接着力が非常に優れて、鋳鉄、ステンレススチールまたはアルミニウムなどの金属鋳物と相応する強度及び耐久性を有する效果がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態によって本発明をより詳しく説明するが、これは発明の構成及び效果を理解させるためのもので、本発明の範囲を制限するものではない。
【0027】
試験例1 ホイール接着試験
本発明による複合成型体の試験片を射出(hosung chemex)して、一般の接着剤(Dongsung Chemical、5100#)を用いてウレタン(TPU)を接着させた後、引張強度測定器で剥離(接着力試験)される状態によって複合成型体の接着性を確認した。(○;剥離が全くない場合、△;剥離の発生気味が見える場合、×;剥離が起きた場合)
【0028】
試験例2 耐久性、走行性、耐熱性及び耐衝撃性の試験
ホイール4つを1組にして750kgの荷重を積んで、2kmを運行してハーブとウレタンコーティング部分の離脱があってはいけなく、ベアリング挿入部分に伸びる現象もあってはいけない。このような方法で、耐久性及び走行状態を確認しており(○;離脱及び伸び現象が全くない場合、△;一部で離脱及び伸び気味が見える場合、×;離脱及び伸び現象が発生した場合)、耐熱性は、ドライオーブンで90〜120℃に温度を調節しながら、5分単位でホイール状態を確認した(○;変形が全くない場合、△;110℃以上で一部変形の発生する気味が見える場合、×;変形が発生した場合)。また、耐衝撃性はホイール4つを1組にして、750kgを積んで高さ1m上でホイールを落下してその状態を確認した(○;ハーブ部分にクラックが全くない場合、△;ハーブ部分にクラックが一部発生する気味が見える場合、×;ハーブ部分にクラックが発生した場合)。
【0029】
実施形態1〜 実施形態12
リサイクル用ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル、4080)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(LG化学、Hi100)及び硝子繊維(韓国ファイバー、硝子繊維チョップ)または炭素纎維を混合機で30分間混合した。必要によって、ポリエチレン(リサイクル)、ポリカーボネート(LG化学、Calibre201)、ポリブチレンテレフタレート(LG化学、5011)、ナイロン(コーロング、デュポン)、熱可塑性ポリウレタン(hosung chemex、5190AP)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンから(錦湖石油化学、KT201)選択される1種または2種以上の樹脂をさらに含むことができ、各組成と含量は下記の表1に表した。上記混合物を220〜250℃に温度が調節された60m/mシングル圧出機で1,400rpmで混錬した後、射出成型機(ユジン油圧)で金型温度を220〜240℃に調節して所定量を金型に射出して40秒間冷却して成型体を得た。上記成型体に2液性反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングして硬化する工程で複合成型体を製造した。それぞれの実施形態による複合成型体の接着性、耐久性、走行性及び耐衝撃性の試験結果を下記の表2に表した。
【0030】
比較例1
リサイクル用ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル、4080)、ポリカーボネート(LG化学、PC201)及び硝子繊維(韓国ファイバー、硝子繊維チョップ)を混合機で30分間混合した。各組成と含量は下記の表1に表した。上記混合物を220〜250℃に温度が調節された60m/mシングル圧出機で1,400rpmに混錬した後、射出成型機(ユジン油圧、20オンス)で金型温度を220 〜240℃に調節して所定量を金型に射出して40秒間冷却して成型体を得た。上記成型体に2液性反応性ポリウレタン組成物をコーティングして硬化する工程で複合成型体を製造した。比較例1による複合成型体の接着性、耐久性、走行性及び耐衝撃性の試験結果を下記の表2に表した。
【0031】
比較例2
リサイクル用ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル、4080)、ポリブチレンテレフタレート(LG化学、5011)及び硝子繊維(韓国ファイバー、硝子繊維チョップ)を混合機で30分間混合する以外には比較例1と同じく実施した。各組成と含量は下記の表1に表し、比較例2による複合成型体の接着性、耐久性、走行性及び耐衝撃性の試験結果を下記の表2に表した。
【0032】
【表1】

【表2】

【0033】
以上の実施形態1〜12、比較例1及び比較例2から分かるように、本発明によって製造された複合成型体は鋳物と相応する優秀な耐久性、走行性、耐熱性及び耐衝撃性を有し、プラスチック射出材製品より向上された物性を有する。
【0034】
また、比較例1及び比較例2から分かるように、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及び硝子繊維または炭素纎維が一緒に使われる時複合成型体の物性が極大に向上されることを確認することができた。
【0035】
本発明によって製造された複合成型体は、従来の金属鋳物製品の重量の1/5であるので、運搬費用が節減されるとともに、製造工数が画期的に短縮され、また、移動の時に発生する騷音を減らし、取り扱いが容易で、且つ多様な製品に商用化されるのに非常に效果的である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及び硝子繊維または炭素纎維を含む成型体を製造する段階と;
b)上記成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングする段階と;を含むことを特徴とする複合成型体の製造方法で製造されたホイール。
【請求項2】
上記a)段階のポリエチレンテレフタレートはリサイクル用ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の複合成型体の製造方法で製造されたホイール。
【請求項3】
上記a)段階の成型体はポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン‐ブタジエン‐スチレンから選択される1種または2種以上の樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合成型体の製造方法で製造されたホイール。
【請求項4】
上記b)段階は成型体に反応性ポリウレタン組成物またはゴム組成物をコーティングした後、硬化する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合成型体の製造方法で製造されたホイール。
【請求項5】
上記反応性ポリウレタン組成物はポリオールを含む第1溶液とイソシアネートを含む第2溶液との2液性組成物であることを特徴とする請求項4に記載の複合成型体の製造方法で製造されたホイール。
【請求項6】
上記a)段階の成型体はポリエチレンテレフタレートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンが混合された混合物100重量部に対して硝子繊維または炭素纎維1〜30重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合成型体の製造方法で製造されたホイール。


【公表番号】特表2013−503235(P2013−503235A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526662(P2012−526662)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005767
【国際公開番号】WO2011/025292
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512048653)ペトロ.カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】