説明

複合振動子およびそれを用いた自在曲面装置

【課題】 大きな出力が得られ、性能が低下しない複合振動子を提供すること、および静粛で、電磁波を発生せず、電磁波の影響を受けず、停止時に電力を消費せず、小型化が可能で、安定感があり、通気性の良い自在曲面装置を提供する。
【解決手段】 複合振動子1は2本の振動子2が互いに90度未満の角度でコネクタ4に設置され、それぞれの振動子2の軸方向と垂直な反射面3がコネクタ4に設けられたことを特徴とする。また、自在曲面装置は複合振動子1を用いた複数の振動モータとその制御装置とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モ−タ・超音波溶接機・超音波加工機などの振動応用機器で用いられる複合振動子およびそれを用いたベッド・手術台・ロボットハンド・ゴルフ練習コースなどの自在曲面装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モ−タ・超音波溶接機・超音波加工機などの振動応用機器では、その性能を向上させるため、一方向の振動ではなく複合振動が用いられることがある。従来の複合振動子には2つの振動子を直角に配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。しかし、振動子をL型に設置して超音波モ−タなどに使用する場合、振動子の電極などがスライダなどに干渉するため、振動子をスライダなどから離して設置する必要がある。そのため、複合振動放射面は振動子から離れた位置にせざるを得なく、エネルギの損失が大きいため、十分な出力が得られない問題点がある。また、振動子をスライダなどに近づけると、振動子への汚れの付着や温度の上昇により、性能が低下する問題点もある。さらに、ホーン形状になっていないため、振動振幅は拡大されない。
【0003】
また、振動子をV型に設置した超音波モータがある(例えば、特許文献2参照)。しかし、振動子に効率よく定在波を励振させるために必要な、それぞれの振動子の軸方向と垂直な反射面が十分に確保できないため、大きな出力が得られない問題点がある。
【0004】
従来の自在曲面装置には圧力に応じて複数のアクチュエータを制御するものがある(例えば、特許文献3参照)。しかし、通常のアクチュエータを駆動する場合、騒音を発生する、強い電磁波を発生する、電磁波の影響を受ける、停止時にも電力を消費する、小型化が難しいなどの問題点があり、広く普及するに至っていない。自在曲面装置として一般的なものには空気などの流体を用いた褥瘡軽減ベッドがあるが、騒音を発生する、通気性が悪い、自力体位変換時に十分な支持力がない(安定感がない)、などの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭64-8979号広報(第1図)
【特許文献2】特開2004-229402号広報(第1図)
【特許文献3】特開2006-34574号広報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり従来技術の複合振動子は、エネルギの損失が大きいため、十分な出力が得られない問題点がある。また、振動子をスライダなどに近づけると、振動子への汚れの付着や温度の上昇により、性能が低下する問題点もある。
【0007】
また、従来の自在曲面装置は、騒音を発生する、電磁波を発生する、電磁波の影響を受ける、停止時にも電力を消費する、小型化が難しい、安定性がない、通気性が悪いなどの問題点がある。
【0008】
本発明はこれらのような問題点を解決すべく案出されたものであり、大きな出力が得られ、性能が低下しない複合振動子を提供すること、および静粛で、電磁波を発生せず、電磁波の影響を受けず、停止時に電力を消費せず、小型化が可能で、安定感があり、通気性の良い自在曲面装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の複合振動子は、それぞれの振動子が互いに90度未満の角度でコネクタに設置され、それぞれの振動子の軸方向と垂直な反射面がコネクタに設けられたことを特徴とする。また、反射面を設けることが、振動振幅を拡大するホーンの役割も果たすことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、複合振動子を用いた複数の振動モータとその制御装置とを備えた自在曲面装置であって、該複合振動子が請求項1に記載の複合振動子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、それぞれの振動子を互いに90度未満の角度でコネクタに設置するため、片方の振動子を複合振動子の振動放射面に対して垂直に配置しても、もう片方の振動子の電極や圧電素子などがある後端部をスライダなどから離すことができる。そのため、振動子の先端部はスライダ駆動面により近づけることができ、エネルギの損失が少なく、大きな出力が得られる。また、振動子への汚れの付着や温度の上昇による性能低下を軽減することができる。しかし、90度未満の角度で設置しても、それぞれの振動子の軸方向と垂直な反射面がなければ、定在波は励振されず、大きな出力が得られない、そこで、それぞれの振動子の軸方向と垂直な反射面をコネクタに設けることでこの問題を解決する。該反射面を設けるために、それぞれの振動子の先端部を細くすることになるが、先端を細くすることが振動振幅を拡大する効果も生む。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、振動モータ、特に超音波モータを用いて自在曲面装置を構成することができる。超音波モータは従来のアクチュエータでは実現困難な程、静粛で、電磁波を発生せず、電磁波の影響を受けず、停止時に電力を消費せず強固に固まり、低速度領域で大トルクを発生し、小型化が可能なモータであるため、例えば静粛性が必要なベッドへの適用、特に複数のモータを圧力に応じて上下させ体圧を分散させる褥瘡軽減ベッドなどに適している。超音波モータは安定感や通気性にも優れている。電子機器や人体への影響から電磁波の発生が嫌われる病院などでも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の複合振動子の外観図である。
【図2】本発明の複合振動子を利用した、振動モータの外観図である。
【図3】本発明の複合振動子を利用した、振動溶接機の外観図である。
【図4】本発明の自在曲面装置(褥瘡軽減ベッド)の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の複合振動子1の外観図である。2本のボルト締めランジュバン型振動子等の振動子2を互いに90度未満の角度で設置し、かつそれぞれの振動子2の軸方向と垂直な反射面3をコネクタ4に設けている。2つの振動子2に入力する信号の位相差や電圧等を変化させると様々な形状の振動軌跡が得られる。
【0016】
振動モータへの適用例
図2は本発明の複合振動子1を振動モータ5へ適用した一例である。同図に示す本実施例の振動モータ5は本発明の複合振動子1、スライダ6、圧力印加機構7、筐体8で概略構成される。複合振動子1は例えばフランジ9で固定し、スライドガイド10に設置する。圧力印加機構7はナット等の固定具11、中心軸12、コイルばね等の弾性体13から概略構成され、固定具11の位置により複合振動子1をスライダ6に押しつける圧力を調整する。2つの振動子2に入力する信号の位相差等を変化させるとスライダ6の移動方向を変えることができる。
【0017】
超音波加工機への適用例
本発明の複合振動子は超音波溶接機、超音波切削加工機、超音波研磨機等の加工機に適用できる。図3は超音波溶接機に適用した一例である。同図に示す本実施例の超音波溶接機は、被溶接物14をアンビル15上に設置し、本装置を押し当てて溶接する。フランジ9は固定用に設けてある。
【0018】
褥瘡軽減ベッドへの適用例
本発明の自在曲面装置はベッド・手術台・ロボットハンド・ゴルフ練習コースなどに適用できる。図4は褥瘡軽減ベッドに適用した一例である。同図に示す本実施例の褥瘡軽減ベッドは、複数の振動モータ5をマトリクス状に配置し、それぞれの振動モータ5を上下に駆動させて自在曲面を形成する。褥瘡を予防・軽減するには、体とマットレス16との接触圧力を低圧に保つことが理想である。そこで、各振動モータ5に掛かる圧力に応じて振動モータ5を上下させて体圧を分散する。また、体位変換の際の補助や、長時間同一箇所に圧力が掛からないようにする制御も行う。
【0019】
以上、本発明の実施の形態および実施例を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の複合振動子は例えば 超音波モ−タ・超音波溶接機・超音波加工機などの振動応用機器に利用できる。また、本発明の複合振動子を用いた自在曲面装置は例えば、ベッド・手術台・ロボットハンド・ゴルフ練習コースなどに利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 複合振動子
2 振動子
3 反射面
4 コネクタ
5 振動モータ
6 スライダ
7 圧力印加機構
8 筐体
9 フランジ
10 スライドガイド
11 固定具
12 中心軸
13 弾性体
14 被溶接物
15 アンビル
16 マットレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに90度未満の角度で設置した2本の振動子と、それぞれの振動子の軸方向と垂直な反射面を有するコネクタとからなる複合振動子
【請求項2】
複合振動子を用いた複数の振動モータとその制御装置とを備えた自在曲面装置であって、前記複合振動子が請求項1に記載の複合振動子である自在曲面装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−178928(P2012−178928A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40332(P2011−40332)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(711002155)
【Fターム(参考)】