複合材および金属部品の製造、成形および接合システム
【課題】複合材若しくは接合金属部品を製造するための改良されたシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】複合材若しくは接合金属部品を製造するシステムは、弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバ1,2と、高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、その内部に複合材若しくは接合金属レイアップが配置される型キャビティを与える少なくとも一つの別個な型部分を有した、少なくとも一つの型組立体70と、を備え、このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは、前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向するように一体に保持され、前記少なくとも一つの型組立体が前記チャンバ壁間に収容された前記レイアップ72を含みつつ、前記レイアップが圧縮されて硬化され若しく成形されるように高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバを通って循環する。
【解決手段】複合材若しくは接合金属部品を製造するシステムは、弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバ1,2と、高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、その内部に複合材若しくは接合金属レイアップが配置される型キャビティを与える少なくとも一つの別個な型部分を有した、少なくとも一つの型組立体70と、を備え、このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは、前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向するように一体に保持され、前記少なくとも一つの型組立体が前記チャンバ壁間に収容された前記レイアップ72を含みつつ、前記レイアップが圧縮されて硬化され若しく成形されるように高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバを通って循環する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は複合材の製造、超塑性成形および金属薄板部品の接合を指向している。
【背景技術】
【0002】
複合材部品は、グラスファイバーのような繊維材料に樹脂マトリックス若しくは熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂のような接着媒質を含浸させ、または熱可塑性材料のシートを成形して接合しあるいはこれらを積層して部品を形成することによって製造される。この樹脂含浸材料は、その後、材料を圧縮するとともに樹脂マトリックス若しくは接合媒質を成形しあるいは硬化させることによって複合材/接着部品を製造するために、高められた圧力および温度にさらされる。接合金属部品は、薄い金属シートを成形し、接着剤若しくは接合材料をシート間に配置し、次いで十分な結合を確実なものとするために保持圧力若しくは締付力を維持しつつ温度を上昇させることによって形成される。いずれの場合においても、積層体を固い層に硬化させあるいは固い積層体を接合して最終的な部品を形成するべく、複合材のレイアップ若しくは接合金属材から過剰な空気および樹脂を排出するために材料を圧縮する必要がある。高強度の軽量部品、特に航空機、自動車および船舶用途に適したそのような部品をこの方法によって製造することができる。
【0003】
本願の出願人は、国際特許出願PCT/AU95/00593に記載したように、そのような複合材部品を製造するためのシステムを開発した。なお、その詳細についてはこの引用によって本願明細書に組み込まれるものとする。ここに記載されているシステムは、型表面および裏当て表面をそれぞれ有する一対の圧力チャンバを用いる。型表面は、圧力チャンバのうちの1つの壁を形成している浮いた状態の剛体若しくは半剛体の型によって与えることができる。裏当て表面は、協動する第2の浮いた状態の剛体若しくは半剛体の型、若しくは真空バッグ、あるいは他の圧力チャンバの壁を形成している弾性的に変形可能なブラダのいずれかによって与えることができる。複合材レイアップは、型表面と裏当て表面との間に配置することができる、剥離布およびブリーダークロスが重ねられた樹脂含浸材料の層から作ることができる。複合材レイアップを所定位置に配置すると、高められた圧力および温度の流体が各圧力チャンバ内を循環し、それによってレイアップを圧縮するとともに樹脂マトリックス若しくは接合媒質を成形しあるいは硬化させる。あるいは、材料の層を最初に型内に敷設して積層体を提供するとともに、積層体の内部に樹脂を導入するために樹脂トランスファ成形(RTF)若しくは樹脂フィルム注入(RFI)を用いることによって部品の形成を可能とする。流体の循環は、構成部品のきわめて均一な硬化と、速いサイクルタイム、加熱および冷却の効率的なエネルギーの使用をもたらす。さらに、このシステムの好適な実施例においては、同じ圧力の流体が各圧力チャンバ内を循環するので、複合材レイアップの両面に等しい圧力を負荷することができる。結果として得られる複合材部品は、他の周知の複合材製造工程によって製造される複合材部品と比較したときに材料の優れた均一性を有する。
【0004】
本願の出願人は、また、国際特許出願番号PCT/AU01/00224において、移動可能な当接表面を有しつつ高められた温度および圧力で流体が循環する少なくとも一つの圧力チャンバを用いる、複合材および金属部品の製造、修復、形成、接合システムを詳細に説明した。
【0005】
本願の出願人によって開発されたこれらのすべてのシステムにおける動作の共通の原則は、硬化プロセスを実行するために高められた温度および圧力の流体の循環を用いることである。加熱用若しくは冷却用の媒体として循環する流体を使用することの利点は、加熱する領域に対して急速かつ均一に熱を伝達する機能である。実際、このことは、複合材部品の製造における硬化時間が、従来のオートクレーブ製造工程において可能な硬化時間よりも実質的に短くなるということに帰結する。これは、空気に比較すると流体の熱伝達率が高い(すなわち、典型的に水の方が22倍高い)ことによる。この結果、製造速度が大幅に向上するとともに単位あたりの全体的な製造コストが低下する。
【0006】
循環流体を用いることの他の利点は、オートクレーブ若しくは他の加熱方法を用いたときに生じ得る「ホットスポット」なしに、レイアップに対してより均一に熱が伝達されることにある。
【0007】
本願出願人のシステムもまた、高められた圧力の循環流体を用することにより、レイアップに対して比較的均一な圧力を加える。さらに、レイアップの反対側に圧力を加える構造においては、負荷される大きな荷重を支持するために高い構造強度を有した装置の使用を不必要とするべく、圧力を釣り合わせることができる。
【0008】
さらに、本発明は、大きなパネルおよび部品の製造を可能とする「バランス密度」効果を利用することができる。この効果の詳細は以下に詳述される。
【0009】
ところが、国際特許出願PCT/AU95/00593に記載されている複合材部品製造システムを使用するときには、その時点で製造している複合材部品が硬化して成形されるまで、次の複合材レイアップを準備することができない。さらに、圧力チャンバから分離されるとともに構造が異なる他の剛体若しくは半剛体の型と交換される、浮いた状態の剛体若しくは半剛体の型を必要とするので、異なる複合材を製造するための型の交換を容易に行うことができない。
【0010】
圧力チャンバの壁に型が固定されているので、例えば複合材料を型内に配置するべく型に近づくために型を動かすことは困難である。
【0011】
加えて、圧力チャンバが囲んでいる圧力セル内に型があるときに、部品に補強材を配置するべく型上で作業することは困難である。型から複合材部品を取り出して治具内に配置し、補強材、例えばリブ、隔壁、ストロングバック等を嵌着することは可能である。しかしながら、補強材が所定位置に来るまでは複合材は全般的に剛体でなく曲がり易いので、これは好ましくない。したがって、型から部品を取り出す前に全ての補強材を配置して二次的なプロセスを完了させることが好ましい。このようにして寸法精度を最大限に確保することができる。
【0012】
また、いくつかの状況においては、型から部品を取り出すために型を分割することが必要であり若しくは好ましい。このことは、分割された圧力チャンバおよび流体の損失がないことを保証するために型を一体に保持する型壁の精巧なロック機構なしに、現在のプロセスで対応するのが困難である。
【0013】
また、浮いた状態の型構造のために、大きく異なるサイズの複合材を製造するために圧力チャンバを適合させることが困難である。したがって、これは、現在実行している硬化、成形プロセスが完了するまで更なる動作を始めることができない「バッチ」プロセスである。しかしながら、そのシステムが現在複合材若しくは接合金属部品を成形、硬化および形成しているときにおいても、少なくとも製造手順の一部を実行し得ると同時にそのようなシステムによって製造される部品の品質を維持することができる、「半連続的な」プロセスを可能とする複合材製造システムを備えることは有利である。また、密封された圧力チャンバおよびシステムからの流体の放出といった基本的な構成を変えることなしに機械加工コストを急進的に減少させつつ、様々に異なる部品およびそれらの部品のための型を製造できるようにすることが有利である。このことは、時間および製造効率が改良されることによって、大量製造用途へのそのようなシステムの導入を容易にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、複合材若しくは接合金属部品を製造するための改良されたシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このことを考慮して、本発明の一態様によれば、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバと、
高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、
その内部に複合材若しくは接合金属レイアップが配置される型キャビティを与える少なくとも一つの分離された型部分を有した、少なくとも一つの型組立体と、を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が対向するように配置された状態で一緒に保持され、前記レイアップを収容している前記少なくとも一つの型組立体は前記チャンバ壁間に収容され、前記レイアップを圧縮して硬化させ若しく成形するように各圧力チャンバに高められた温度および圧力の流体を通して循環させる、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0016】
各圧力チャンバを通って循環する流体は、型組立体およびレイアップの回りに作用する力が釣り合うように、実質的に等しい圧力に維持することができる。これは、寸法精度を維持するために実質的な機械強度を持つ必要がなく、したがってより軽い構造とすることができる、弾性的に変形可能な材料のチャンバ壁の使用を容易にする。したがって、型組立体およびレイアップに対して熱を容易に伝達するためにチャンバ壁を比較的薄することができる。
【0017】
弾性的に変形可能なチャンバ壁はまた、型組立体および支持されたレイアップの形状に密接に追従することができ、型組立体の全体にわたる相対的に均一な熱伝達を保証する。
【0018】
複雑な外側形状を備えるある種の部品においては、レイアップ上に重なるチャンバ壁は外側形状に対して適切に追従できなくとも良い。このことは、例えば製造する部品が深い空洞若しくは溝を有している場合に生じる。
【0019】
このような状況下では、レイアップ上に重なるチャンバ壁は、製造する部品の形状に対して少なくとも全般的に追従するように設定することができる。そのように設定されたチャンバ壁を支持している圧力チャンバを通る流体の循環は、そのように設定されたチャンバ壁を部品の形状に密着するように付勢する。
【0020】
型組立体が圧力チャンバから分離していて、型組立体およびレイアップを圧力チャンバとは別個に組み立てることができるから、本発明によるシステムの半連続的なプロセスの使用を容易にする。さらに、圧力チャンバを用いている間に、他の型組立体を準備することができる。
【0021】
本発明の他の態様によると、
型組立体の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置する段階と、
前記型組立体を、前記レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有している第1および第2の圧力チャンバ間に配置する段階であって、前記チャンバ壁が互いに対向して配置されるとともに前記チャンバ壁の間に前記型組立体が配置される段階と、
前記複合材若しくは接合金属レイアップを圧縮して硬化させ若しくは成形するように、高められた圧力および温度の流体を各圧力チャンバを通して循環させる段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0022】
型組立体は、2つの圧力チャンバ間に配置されたときに弾性的に変形可能な壁のうちの一つが複合材若しくは接合金属レイアップまたはレイアップ上に配置されたブリーダークロスと直接的に接触する、複合材若しくは接合金属レイアップを支持するための単一の型部分を有することができる。型部分は剛体若しくは半剛体な構造とすることができる。また、型組立体が、複合材若しくは接合金属レイアップをその間に配置できるように協動する一対の剛体若しくは半剛体な型部分を有することも考えられる。
【0023】
型部分は、完成した部品のそこからの取り出しを容易にするために分割することもできる。このことは、本発明によるシステムにおいては都合が良い。圧力チャンバから分離して外側に取り出すときに、圧力チャンバから分離している型部分を容易に分割することができるからである。このようにして、圧力チャンバは影響を受けることなく常に完全に密封される。したがって、部品を含む型部分を圧力チャンバから取り出せるという機能は、型部分を密封して圧力チャンバに付属させるためには好ましい。
【0024】
単一の型部分を用いる場合には、レイアップに初期圧縮を与えるために真空バッグを用いることができる。このために、真空バッグがレイアップ上に配置され、圧力チャンバ間において型組立体が圧縮される前にレイアップが圧縮される。
【0025】
圧力チャンバは、弾性的に変形可能なチャンバ壁をその一つの側に支持するハウジングを有することができる。前記壁は、型のためのポケット、リング若しくは取付個所を、弾力的な壁に、または各圧力チャンバの壁に、または剛体壁内に切り欠かれて型に合わせるための弾性材料で裏打ちされたポケットに有することができる。チャンバ壁は、ゴムのような弾性的に変形可能な材料から成形することができる。
【0026】
あるいは、圧力チャンバは、外側ハウジング若しくは柔軟なブラダをその内部に支持するフレームを含むことができる。ブラダの1つの表面は、圧力チャンバのための弾性的に変形可能なチャンバ壁をもたらすことができる。この構造は圧力チャンバの保守を容易なものとする。例えば、何らかの漏れが圧力ブラダに発見されたときには、単にそのブラダを取り出して他のブラダと交換することができる。また、ハウジングと、漏れを生じやすい別個の弾性的に変形可能な壁との間に、何らかの特別な密封構造を設ける必要がない。
【0027】
熱はチャンバ壁を介して伝達されるので、型組立体の外側表面およびその内部に配置されたレイアップの周りにおける相対的に均一な熱伝達を確実なものとするために、チャンバ壁は型組立体の形状に非常に密接に追従する必要がある。しかしながら、このことは、特に型組立体の形状が複雑である場合にはその達成が困難である。例えば、それに沿って延びる深い溝を有した型組立体は、チャンバ壁が型組立体およびその内部に配置されたレイアップに追従することを困難なものとする。
【0028】
したがって、本発明の別の態様によると、
反対側に位置する複数の表面を有する型部分を備え、
前記型部分の表面のうちの1つが型キャビティを提供しており、
前記型組立体は、前記型部分の表面に隣接して設けられた流体流れチャンバを更に備えており、この流体流れチャンバを通って循環する流体が対向する型部分の表面のかなりの部分と直接接触するようになっている、
複合接合金属部品を製造するシステムのための型組立体が提供される。
【0029】
流体流れチャンバは、その周縁に沿って型部分に固定され、それによって隣接する型部分表面のかなりの部分を少なくともカバーする、シリコンゴムのような弾性的に変形可能な材料から成形されたブラダを含むことができる。ブラダに対してさらなる支持を与えるとともに流体流れチャンバを通る流体の流れを導くために、少なくとも一つの支持膜がブラダと型部分表面とを相互に接続することができる。また、少なくとも一つの剛体若しくは半剛体の熱伝達フィンを型部分表面から延設することも考えられる。このフィンは、型部分に対する熱伝達を容易にするとともに流体流れの案内を助けることができる。さらに、このフィンは、ブラダに対するさらなる支持を提供するためにブラダに取り付けることができる。
【0030】
あるいは、流体流れチャンバは、そこを通って流体が循環する、剛体若しくは半剛体のハウジングまたはその周縁に沿って弾性的に型部分表面に固定されたプレートによって設けることも考えられる。
【0031】
流体流れチャンバを設けることは、型部分表面のかなりの部分に対する流体の直接接触をもたらして、流体から型表面への熱伝達を最大とする。上述した型組立体は、本発明による製造システムに用いることができる。
【0032】
したがって、本発明のさらに別の態様によると、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバと、
反対側に位置する複数の表面を有した型部分を含む少なくとも一つの型組立体であって、前記型部分の表面のうちの1つが、その内部に複合材若しくは接合金属レイアップを配置できる型キャビティを提供しており、かつ、この少なくとも一つの型組立体が、そこを通って循環する流体が対向する型部分の表面の少なくともかなりの部分と直接接触するように前記対向する型部分の表面に隣接して設けられた流体流れチャンバを更に有している、少なくとも一つの型組立体と、
前記圧力チャンバおよび前記流体流れチャンバを通して高められた温度および圧力の流体を循環させるための手段と、を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向した状態で一緒に保持され、前記レイアップを収容している前記少なくとも一つの型組立体が前記チャンバ壁間に収容され、前記レイアップが圧縮され硬化若しくは成形されるように、高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバおよび前記少なくとも一つの型組立体の流体流れチャンバを通って循環する、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0033】
本発明の更に別の態様によると、
型キャビティと対向する表面を有する型部分を含む型組立体の前記型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置し、流体流れチャンバが前記対向する型部分の表面と隣接して配置される段階と、
前記型部分を、前記レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁が互いに互いに対向するとともに前記チャンバ壁の間に前記レイアップが配置される段階と、
前記複合材若しくは接合金属レイアップが圧縮されて硬化若しくは成形されるように、高められた温度および圧力の流体を各圧力チャンバおよび流体流れチャンバを通して循環させる段階と、
を含む複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0034】
そこを通って流体が循環する流体流れチャンバを有した型組立体を用いることにより、圧力の負荷をもたらす要素(圧力チャンバ)と熱の負荷をもたらす要素(型組立体)とを分離できる。このことは、型組立体に対する圧力および熱の負荷の管理の改善を容易にする。
【0035】
流体が圧力チャンバおよび流体流れチャンバを通って別個に循環するので、圧力チャンバ内を循環する流体の温度を比較的一定に(例えば約80℃)に保つことができるとともに、流体流れチャンバを通って循環する流体の温度を高い温度と低い温度の間(例えば40℃〜200℃の間)で反復させることができる。この構造においては、圧力チャンバ壁を加熱し若しくは冷却する必要がないからである。したがって、型組立体に対して主要な熱若しくは冷却源を提供するものは流体流れチャンバを通過する流体である。この構造を用いることの他の利点は、流体流れチャンバ通って循環するのに必要な流体の体積が圧力チャンバに比較し少なくて済むということが温度の変化をもたらために必要な流体の量が少なくてすむことを意味し、より速いサイクルタイムに帰結するということにある。
【0036】
分離した頂部流体流れチャンバはまた、レイアップ上に配置することができる。頂部流体流れチャンバは、弾性的に変形可能な材料から成形されたブラダの形を取ることができる。このブラダは、そこを通って流体が循環するときに型キャビティの形状に追従するようにその表面を構成することができる。それよってレイアップに熱を供給するために、型組立体が圧力チャンバ間に配置されている間に、頂部流体流れブラダをレイアップ上に配置するとともに頂部流体流れブラダを通して高められた温度の流体を循環させることができる。このことはより均一な熱伝達をもたらし、頂部流体流れチャンバはレイアップに密接に追従する。したがって、頂部流体流れブラダは取付けられた流体流れチャンバを有する型組立体と連携して型部分およびレイアップの両方に熱を供給するように作用する。
【0037】
頂部流体流れチャンバを通って循環する流体の温度もまた、型組立体の流体流れチャンバ内の流体のように、高い温度と低い温度との間で反復させることができる。
【0038】
流体流れチャンバを有した型組立体は、型組立体内で支持されたレイアップ上に配置された頂部流体流れチャンバと共に、本発明による製造システムの圧力チャンバ間に配置することができる。
【0039】
時には複合材若しくは接合金属部品に他の要素部品を接合する必要がある。これらの要素部品には、縦通材、補強リブ若しくは取付けリングが含まれる。部品の製造と同時にこれらの要素部品を接合できることが好ましい。このことは、部品に対する要素のはるかに優れた結合をもたらす。
【0040】
したがって、本発明の更に別の態様によると、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバと、
高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバのそれぞれを通して循環させるための手段と、
複合材若しくは接合金属レイアップと少なくとも一つの要素部品とをその内部に配置し得る型キャビティを有する型組立体と、
前記レイアップ上に前記要素部品を位置決めするための構造と、を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向するように配置された状態で一緒に保持され、前記レイアップおよび前記構造によって所定位置に位置決めされた少なくとも一つの要素部品を含む前記キャビティが前記チャンバ壁間に収容され、レイアップを圧縮して硬化若しくは接合するとともに前記少なくとも一つの要素部品をそこに接合するように、高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバを通して循環させる、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0041】
この要素部品には、複合材若しくは接合金属部品への接合を必要とする縦通材、補強リブ若しくは他の任意の要素を含めることができる。
【0042】
真空バッグは、レイアップに初期圧縮を与えることができるようにレイアップ上に敷設することができる。
【0043】
この構造は、各要素部品に係合してレイアップ上の所定位置に位置決めするための少なくとも一つのストラップを含むことができる。例えば、要素部品が補強リブであるときには、ストラップはリブに対して横方向に延びることができるとともにリブの直立部分に係合する一つ以上の「U字形」の屈曲部を有し、それによってレイアップ上の所定位置にリブを位置決めすることができる。これらのストラップは、真空バッグの上方に若しくは下方に配置することができる。
【0044】
あるいは、この構造には、要素部品を収納してレイアップ上に位置決めするためのポケット若しくは溝を含むように構成された、型キャビティ上に配置される圧力チャンバのチャンバ壁を設けることができる。この圧力チャンバはブラダバッグを収容するための外側ハウジング若しくはフレームを有することができ、かつブラダバッグの表面がそのように構成されたチャンバ壁を与える。ブラダバッグは、外側ハウジングをブラダバッグ上に配置する前に、最初にレイアップおよび要素部品上の所定位置に配置することができる。次いで、ブラダバッグは循環流体によって一杯に膨張させることができる。この構造は、ブラダバッグを膨張させる前における、ブラダバッグのレイアップおよび要素部品上の所定位置への位置決めをより容易にする。複数のブラダバッグを外側ハウジングに収納することもまた考えられる。このことには、単一のブラダを使用することができない非常に大きな部品に対してもこのシステムを使用できるようにする。
【0045】
他の好ましい実施例においては、弾性的に変形可能な材料から成形されるとともに、要素部品およびレイアップ上に敷設されたときにそれらに追従し若しくは容易に追従するように構成された、さらなる流体流れブラダを設けることができる。ブラダは、その上のブラダへの追従を容易にするために、その全体的な厚みを比較的薄くすることができる。高められた温度および圧力の流体を流体流れブラダに循環させることができる。
【0046】
この構造は、要素部品とこの要素部品がその上に配置されているレイアップに対してより密接に追従するように、液体流れブラダに追従して付勢する圧力チャンバのチャンバ壁を設けることを含む。
【0047】
他の実施例においては、この構造は、型キャビティ上において圧力チャンバ内に位置決めされた内側支持フレームの形を取ることができる。この内側支持フレームは、圧力チャンバを通して流体を循環させる前にレイアップおよび要素部品に追従するように構成された、圧力チャンバの弾性的に変形可能なチャンバ壁を支持するように構成することができる。このチャンバ壁は、そこを通って流体が循環するときには支持フレームから離間して型組立体に係合するとともに、そこを通って流れる流体がないときには支持フレーム上へと後退する。
【0048】
チャンバ壁上に型部分を正確に位置決めするとともに運転中における型の正確な位置決めおよび寸法の安定性を維持するために、位置決め手段を設けることができる。位置決め手段は、型組立体のための、チャンバ壁上の取付点の形をとることができる。例えば、型組立体がそこに固定される突起、ソケット、リング若しくはポケットをチャンバ壁上に設けることができる。取付点は、ワイヤ若しくは他の手段を用いて圧力チャンバのハウジングにつなぐことができる。これらは、取付点をそれらの正確な位置に維持することを助ける。あるいは、位置決め手段は、圧力チャンバのチャンバ壁を貫通して延びる少なくとも一つの位置決めピンを有する、圧力チャンバ内に配置された位置決めフレームとすることができる。複数の位置決めピンが好ましくはチャンバ壁から延びるとともに、各位置決めピンは位置決めフレームから延びる。この位置決めフレームは圧力チャンバのハウジングから分離し、したがってハウジングから独立して動くとともに、直接ハウジングに接続しないこともできる。位置決めフレームはまた、ハウジング内におけるその正確な位置を保つために、圧力チャンバハウジングにつなぐことができる。これにより、位置決めピンは、チャンバ壁を貫通して型部分に設けられて協動する孔と係合するように構成することができる。位置決めピンは、したがって、チャンバ壁上の特定位置に型部分を位置決めする。
【0049】
この位置決め構造はまた、圧力チャンバ壁を水平面に対してある角度に傾斜させて配置できるようにする。これは、型を傾ける機能にとって不可避であるというわけではないが、型部分がチャンバ壁上の所定位置に保持されるからである。この傾斜配置の利点は、複合材若しくは接合金属レイアップ内に残留しているあらゆる空気若しくはガスが、レイアップ以外の部分が樹脂で満たされるにつれてレイアップの最上方位置まで動くように促すことにある。この空気は、最終的に樹脂によって押し上げられ/動かされてレイアップから追い出される。このことは、気泡/空洞がほとんどない複合材をもたらす。
【0050】
圧力チャンバ内における位置決めフレームの使用は、この位置決めフレームを圧力チャンバ内に容易に収容できる限りにおいて許容できる。そこを通って循環流体が流れる圧力チャンバの容積は、より大きな位置決めフレームを支持するために増加しないことが好ましい。これは、圧力チャンバを通してより大きな容量の循環流体を循環させる必要があることは好ましくないからである。
【0051】
したがって、本発明のさらに別の態様によると、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有する第1および第2の圧力チャンバと、
高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、
少なくとも一つの型組立体であって、その内部に複合材若しくは接合金属レイアップが配置される型キャビティを与える型部分と、この少なくとも一つの型組立体を定位置に位置決めするための位置決め手段とを有し、前記圧力チャンバがこの少なくとも一つの型組立体の周りにこの少なくとも一つの型組立体に対して相対的にフローティングされて支持される、型組立体と、
を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向するように配置された状態で一緒に保持され、前記レイアップを収容する前記少なくとも1つの型組立体は前記チャンバ壁間に収容され、前記レイアップが圧縮されて硬化若しく成形されるように高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバを通って循環する、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0052】
型組立体は、圧力チャンバの外側に堅固に支持された位置決めフレームによって所定位置に固定することができる。したがって圧力チャンバの容積には、位置決めフレームをその中に収容するための容積を算入する必要はない。型組立体は、圧力チャンバのうちの少なくとも1つを貫通して延びている、位置決めフレームの少なくとも一つの支柱によって支持することができる。
【0053】
このシステムは前述した構造とは反対に作動する。すなわち、圧力チャンバが型組立体の周りで浮くことができるのに対して、型組立体は固定状態に保持される。前述した構造と比較すると、圧力チャンバは所定位置に固定され、型組立体は圧力チャンバ壁間で浮いている。しかしながら、製造プロセスは両システム構造において同じである。
【0054】
上述した構造においては、型組立体は位置決めフレーム上に支持されている型システムによって堅固に支持される。しかしながら、堅固に支持された型組立体上に位置決め可能な1つの圧力チャンバのみを用いることも考えられる。
【0055】
それゆえに、本発明の別の態様によると、
型キャビティを提供する堅固に固定された型部分を有する少なくとも一つの型組立体と、
弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する圧力チャンバと、
高められた温度の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、を備え、 このシステムを用いるときに、前記チャンバ壁が前記少なくとも一つの型組立体上に配置されるように前記圧力チャンバが前記少なくとも一つの前記型組立体上に配置され、前記型キャビティが前記レイアップを収容しており、前記レイアップが圧縮され硬化若しく成形されるように高められた温度の流体が圧力チャンバに通して循環する、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0056】
圧力チャンバは、型組立体の上方に浮いた状態で配置することができる。したがって、そこを通って流体が循環するときに、圧力チャンバは固定された型組立体に対して動くことができる。
【0057】
このシステムは、型部分に負荷される力の釣り合いには対応していない。それにもかかわらず、圧力チャンバ内の循環流体を使用することによって達成される利点は存在し、特に寸法精度を必要としない部品にとってこのシステムを有用なものとしている。
【0058】
流体循環手段は、相対的に異なる温度の流体をそれぞれ収容している複数の流体リザーバと、異なる温度の流体を圧力チャンバに導くための流れ制御手段とを備えている。この構造は本願の出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593に記載されているが、その詳細はこの参照によって本願明細書に記載されたものとする。
【0059】
圧力チャンバ内の流体に周期的な圧力変化をもたらすための手段を設けることができる。例えば、圧力チャンバおよびその内部の流体を振動させるために、振動発生器を圧力チャンバに固定することができる。この振動の使用は、複合材若しくは接合金属材料内の気泡の除去を容易にする。振動の使用は、全般的に本発明による製造システムの全体に適用することができる。
【0060】
留意されるべきことは、チャンバ壁が全般的に垂直平面内に配置される、圧力チャンバが垂直な状態において作動させることができるということである。このことは、「バランス密度効果」という、本発明によるシステム及び方法の重要な態様を示す。このことは、循環する流体の圧力と液化しているときの樹脂の流体圧力とがシステム内において概ね釣り合っているところにおいて生じる。流体および樹脂の密度が似ているからである。液化した樹脂の密度および粘度は、水や使用する熱伝達流体のそれに近い。したがって、圧力チャンバが垂直若しくは傾斜しているときでも、液化した樹脂に対して循環流体から負荷される圧力は、概ね釣り合う。液化した樹脂には型部分の下部に沈み込むという固有の傾向があるが、圧力チャンバ内における深さが増すにつれて循環する流体の流体圧力もまた増加する。このことは液化した樹脂と循環している流体との流体圧力が型部分に沿って釣合うことに帰結し、それによって型部分の下方に沈み込もうとする樹脂の傾向に対して反対方向に作用する。その結果、本発明による傾斜し若しくは垂直な圧力チャンバ内で製造される複合材においても一貫した厚みを維持することができる。このプロセスは、従来技術において体験される数多くの問題点を解決する。すなわち、深い側面を有した大きな部分の製造を可能にするとともに、真空バッグによって負荷する負圧を高くしても、重力の影響により樹脂が壁を流れ落ちるところにおいて樹脂がこれらの深い側面を流れ落ちて「逃げ」若しくは沈降効果に帰結し、壁の基部においては樹脂が過剰で頂部においては樹脂が不足する、ということにならないようにする。この効果を解決するべく、密閉された堅固な樹脂空間をもたらすために一般的にはマッチングさせた金型を用いるが、高いコストが伴う。本発明は、したがって、従来の複合材製造システムよりもはるかに大きなパネル若しくは他の部品を製造することができる。
【0061】
本発明の別の態様においては、圧力チャンバが空の状態から一杯な状態へと次第に流体で満たされる。熱い流体のカラムが圧力チャンバを満たすにつれて、それはブラダおよび型壁を押して、それらの間の積層体を圧縮し樹脂を溶解させる。このことが流体の上昇するカラムの前方で動く樹脂のライン若しくは波に帰結するということも考えられる。これは、積層体からの空気の強制的な排除に役立つとともに、流体カラム、したがって樹脂カラムが部品の表面を超えて上昇するときの部品の制御されたウェットアウトに帰結する。このことは、剛体の若しくは柔軟な空気が満たされるブラダの従来システムの使用によっては不可能である。バランスがとれた密度のシステムは、パーツの周囲を正確に成形して厚みの変化を埋め合わせるとともに上から下まで部品全体にわたって等しい圧力および樹脂含有量を与えることにより、積層体における樹脂および繊維のきわめて正確な制御をもたらす。
【0062】
流体を循環させる手段は、国際特許出願PCT/AU95/00593に示されている構造と同じ若しくは同様とすることができる。流体は、好ましくは油とすることができる。
【0063】
この構造は、異なる温度の流体をそれぞれ含んでいる一連の流体リザーバを備えている。例えば、低い温度および高い温度の流体を含むリザーバと、これらのリザーバの流体温度の中間の温度の流体を含む第3の流体リザーバとの、3つの流体リザーバを設けることができる。
【0064】
各圧力チャンバおよび流体流れチャンバは、異なる温度の流体がそこを通って循環することができるように、全ての流体リザーバと流体的に連通することができる。各リザーバからの流体の流れを制御するために、一連の流体ポンプおよび弁を設けることができる。リザーバから供給される流体の圧力が高められているように、各流体リザーバを加圧することができる。
【0065】
この構成の利点は、部品の製造サイクルの一つ一つにおいて流体を加熱し冷却する必要がなく、システムのエネルギ使用量が減少することにある。
【0066】
多数の製造システムを任意の時点においてリザーバに接続することができるように、各流体リザーバには「環状主ライン」を設けることができる。
【0067】
あらゆる時点において流体リザーバからの過剰な流体の排出がないように、異なる温度の流体の循環は各製造システム間でずらすことができる。このことは、硬化プロセスをいつでも開始できるようにするとともに、固定ステーションデザインにおいて非能率であるように、一旦準備した型が新しいサイクルの開始前に硬化サイクルの終わりを待たなくとも良いようにする。
【0068】
さらに、上述した国際特許出願に記載されているように圧力チャンバ内に圧力を負荷する期間の少なくとも一部分の間に、ウォーターハンマやピストンあるいは型を直接振動させることによって流体に振動若しくは圧力波を生じさせるべく、チャンバ内の圧力を周期的に変化させる手段を設けることができる。
【0069】
システムを使用するときに、少なくとも一つの型組立体を圧力チャンバ間に配置することができる。また、多数の複合材を同時に製造できるようにするために、使用するときに圧力チャンバ間に多数の型組立体を配置することもできる。
【0070】
型部分には、圧力チャンバ間に配置される前に、複合材レイアップ若しくは接合金属シートを装填することができる。このことは、したがって、他の複合材レイアップが圧縮されて硬化し若しくは成形されている間に、型部分内のさらなる複合材レイアップを運転中に準備できるようにする。さらに、分離した型部分の使用は、圧力チャンバの形状を変えることなしに異なる複合材を製造できるようにする。このことはまた、多数の型組立体を圧力チャンバ間に配置することができる場合、多数の複合材の同時製造を可能にする。
【0071】
その縁部が型部分に対してシールされるようにして、真空フィルムを複合材レイアップ上に配置することができる。次いで、複合材レイアップからできるだけ多くの空気およびガスを取り除くために、真空フィルムの下方から空気を抜き取ることができる。このことは、最終的な複合材部品の内部における気泡/空所の最小化を助ける。しかしながら、真空フィルムの使用が本発明の作動にとって必須でないことは注意しなければならない。
【0072】
型組立体を圧力チャンバ間に配置すると、型部分内に配置された複合材レイアップに圧力が負荷されて最終的な複合材部品の形状が型部分の形状によって定められるように、チャンバ内への加圧された流体の導入が、弾性的に変形可能なチャンバ壁が型組立体の周りに変形するよう付勢する。圧力チャンバの弾性的に変形可能な表面に対してそれらの表面が滑べりやすいことを確実なものとするために、これらの型部分の外側表面は好ましくは滑らかである。このスリップにより、弾性的に変形可能な圧力チャンバ壁は、スリップして型部分の形状と密接に接触するとともに、変形を最小としつつ最大の力および熱を型部分に与える。この動作を強化するために、潤滑油を型部分若しくは圧力チャンバ壁に塗布することができる。それ加えて若しくは潤滑の一部として、圧力チャンバ内の流体から型部分および型内の部品への最大限の熱伝達を得るために、流体若しくは伝達媒体に熱を伝達させることが好ましい。弾性的に変形可能な壁が型部分と密接に接触すると、圧力チャンバ内から圧力が複合材レイアップ若しくは接合金属部品を圧縮し、それによって過剰な樹脂若しくは接合媒体および気泡をそこから取り除く。前述したように、型組立体は流体流れチャンバを含む型部分を有することができる。さらに、頂部流体の流れチャンバを型組立体の上方に配置することができる。この型組立体およびオプションとしての頂部流体流れチャンバは、型組立体内に配置されているレイアップを圧縮して硬化させるために、圧力チャンバ壁間に配置することができる。流体に圧力波を生じさせる周期的に変化する圧力や振動の負荷あるいは型組立体の振動は気泡の取り出しを容易にし、最終的な複合材若しくは接合された金属部品がきわめて均一な材料特性を有することを確かなものとする。さらに、流体が圧力チャンバを通って循環するので、複合材レイアップ若しくは接合金属部品の表面全体に沿った比較的急速かつ均一な加熱および冷却が確実なものとなり、レイアップ/部品/金属部品の均一な硬化および冷却を確実なものとする。それに加え、サイクル内の任意の時点において、流体の流れを止めるとともに部品を完全に硬化させるべく温度を維持するために内部ヒータを用いることもできる。
【0073】
複合材レイアップは、樹脂含浸材料(これは「プリプレグ」として知られている)若しくは金属レイヤを含むことができる。レイアップはまた、最終的な複合材のための補強材および他の乾燥ファイバをも含むことができる。複合材レイアップの必要な箇所には、剥離布およびブリーダークロスをその上に配置することができる。樹脂の形の樹脂マトリックス若しくは接合媒体は、プリプレグ熱可塑性シート若しくは金属シート内に供給することができる。しかしながらまた、複合材レイアップを型部分に取り付けた後に、少なくともかなりの量の樹脂マトリックス若しくは接合媒体を複合材レイアップに供給することも考えられる。複合材レイアップは、連続した繊維のレイヤ若しくはプライから成形した、相対的に乾燥している「プリフォーム」とすることができる。樹脂マトリックス若しくは接合媒体は、乾燥プリフォームをチャンバ壁間に配置した後に、1つ若しくは複数の供給配管若しくは湯口によって型部分に供給することができる。このことは、本発明によるシステムが、複合材を製造するための樹脂トランスファモールディング(RTM)として知られているものを利用できるようにする。
【0074】
本発明の更に他の態様によると、
複合材若しくは接合金属レイアップを型組立体の型キャビティ内に配置する段階と、
前記型組立体を、複合材若しくは接合金属レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有するとともに少なくとも実質的に流体が満たされている第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁の間に前記少なくとも1つの型部分が配置された状態で前記チャンバ壁が対向するように配置される段階と、
前記型組立体の内部に配置されたレイアップを通して前記型組立体に樹脂を供給する段階と、
その後に続く他の型組立体への供給のためにその型組立体から溢れた樹脂を集める段階と、
レイアップを圧縮して硬化若しくは成形されるように、高められた圧力および温度の流体を各圧力チャンバを通して循環させる段階と、
を含む複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0075】
1つの型組立体から溢れた樹脂を集めて他の型組立体に供給する段階は、1つ若しくは複数の型組立体に対して順番に進めることができる。
【0076】
このことは、RTMを用いる多数の型組立体に樹脂が個別に供給されるときに、無駄になる樹脂の量がかなり減少することにつながる。
【0077】
樹脂は、第1の樹脂容器から第1の型組立体へと圧力下において供給することができるが、供給される樹脂の量は第1の型組立体内のレイアップのために必要な樹脂の量よりも多い。その結果は、型組立体を通って進行する波若しくは樹脂の移動である。この樹脂の波は、過剰な樹脂を含んでいる樹脂の移動する前面を有するとともに、そこを通過する樹脂の厚い波面の形を取ることができる。型組立体は、流体内の深さに伴って増加する流体の圧力がレイアップを通る樹脂の押し上げを助けるように、傾斜した状態で保持することができる。第1の型組立体から溢れた樹脂は、その後に続く型組立体へと供給することができる。進行する樹脂の波面によって空気がレイアップから押し出され、最終的な部品内における気泡が減少し若しくは除去される。この過剰な樹脂は最初に、負圧下にある次の樹脂リザーバに送ることができる。弁が第1の樹脂容器を切り離すとともに型組立体に圧力を負荷するときに、更なる樹脂をレイアップからしぼり出すことができるが、この追加された樹脂は次の樹脂リザーバ内に集められる。この樹脂リザーバから次の型組立体への樹脂の流れを制御する弁を開口するとともに、圧力下においてこの樹脂を次の型組立体へとポンプ送りすることができる。このことは、必要であればいくつかの型組立体にわたって続けることができる。
【0078】
1つの型組立体を次から次へと移動する樹脂の波面を使用することは、各型組立体に個別に供給する場合に生じ得る樹脂の浪費を最小化するように作用する。
【0079】
乾燥プリフォームに樹脂を供給する他の方法は、型部分内に支持されている乾燥プリフォームの表面上に分散可能な、多数の固体の樹脂ブロック若しくはタイルである。乾燥プリフォームおよび樹脂のブロック/タイルを支持している型部分を圧力チャンバ間に配置すると、圧力チャンバを通って循環する高められた温度の流体が樹脂を溶解させる。したがって、本発明によるシステムはまた、樹脂フィルム注入(RFI)として知られているプロセスを用いることができる。
【0080】
RTMプロセスが比較的壊れやすい複合材製品を生み出すことが分かっている。これは、樹脂が複合材レイアップの平面に沿って長手方向に容易に移動できなければならないからである。したがって、樹脂がレイアップを通って容易に移動できるために、樹脂は「短鎖分子」タイプでなければならない。その結果としての製品は、比較的壊れやすくものとなり得る。
【0081】
比較すると、RFGプロセスは複合材レイアップ上に固体の樹脂ブロックを分散させるので、樹脂は、溶解するときに、複合材レイアップのうち樹脂ブロックに隣接する領域をすぐに濡らすだけでよい。樹脂は、したがって、比較的長い鎖の分子を有する「堅い」タイプとすることができる。RFGプロセスで製造された結果として得られる複合材製品は、RTMプロセスを用いて製造した製品よりも大きな構造強度を持つことができる。
【0082】
RFGプロセスは、改良された複合材製品を製造できるにもかかわらず、乾燥プリフォーム上に樹脂ブロックを手作業で分散させる必要があるために労働集約的である。
【0083】
したがって、本発明によるさらに他の態様によると、
少なくとも一つの剛体若しくは半剛体の型部分の型表面上に凝固した樹脂のレイヤを付加する段階と、
少なくとも一つの剛体若しくは半剛体の型部分内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置する段階と、
前記少なくとも一つの型部分を、前記複合材若しくは接合金属レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁の間に前記少なくとも1つの型部分が配置された状態で前記チャンバ壁が対向するように配置される段階と、
前記樹脂レイヤが液化し、液化した樹脂が前記複合材レイアップの内部に移動し、圧縮されて硬化若しくは成形されるように、各前記圧力チャンバを通して高められた圧力および温度の流体を循環させる段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0084】
樹脂の粘度は実質的に温度によって変化する。したがって、液化した状態にある加熱された樹脂は型表面上に吹付ることができる。この型表面は樹脂より低い温度とすることができる。型部分を冷却するための手段を設けることができる。このことは、樹脂が凝固して型表面上で層になることに帰結する。型部分の予備的な冷却を可能とする1の方法は、そこを通って流体が循環できる冷却流路若しくは空洞を型部分内に設けることである。型表面を必要な温度に維持するために、これらの冷却流路を型表面のすぐ下に設けることができる。他の用途においては、型は、冷却されている別個のブラダおよび型を保持しているキャリアの上にに設置することができる。
【0085】
この方法は、RFGプロセスによって製造されるものと同様の製品を提供する。しかしながら、本発明の方法はより労働集約的ではない。
【0086】
樹脂は、低い温度においてきわめて高い粘度を有するとともに、振動がないと止まって動かなくなり、容易に型に付着して厚いレイヤを構築し、沈み込まず若しくは型表面から落ちることがない高いチキソトロピー性を保つ。樹脂の物理的なふるまいは、その特性がワックス状である。乾燥ファイバ製の補強材、プリプレグ若しくは濡れたレイアップ材料は型内に配置される。型部分はそれから圧力セル内に配置される。所定位置に配置した後、急速に樹脂を溶解させるために圧力を負荷するとともに温度を上昇させると、樹脂の粘度が減少してファイバ補強材を濡らす。その後の樹脂によるウェットアウトの準備をするために複合材レイアップを最初に加熱する、型部分の連続した加熱もあり得る。樹脂は加熱された複合材レイアップを容易に濡らす。次いで、樹脂レイヤが液化して樹脂の移動が生じるように型部分に熱を与えることができる。樹脂レイヤと複合材レイアップとの間に、ケブラー製の覆い布のような移動制御手段を配置することが好ましい。この覆い布は、複合材レイアップを容易に濡らすように樹脂が十分に低い粘度となるまで、樹脂の移動を防止する。これは、樹脂の粘度が高すぎる場合に複合材レイアップ中にドライスポットが生じる可能性を最小にする。
【0087】
型部分はまた、樹脂を行き渡らせつつ液化するとともに混入しているあらゆる空気を取り除くために振動させることができる。このようにして、樹脂レイヤが液化し、乾燥ファイバ製の補強材内に押し込まれ、積層体から空気を追い出し、積層体が圧縮されて部品が硬化する。
【0088】
別々の供給配管は、それぞれスプレーヘッドに樹脂および触媒を供給することができる。樹脂および触媒はスプレーヘッドを通過する間に混合することができる。しかしながらまた、異なる樹脂をスプレーヘッドによって同時に若しくはそのいずれかを型表面上に吹付し、樹脂が反応して樹脂レイヤを成形することも考えられる。樹脂はまた、最終的な樹脂レイヤ内に樹脂の厚みが異なる領域を設けるために、型表面上に異なるスプレーパターンで吹付ることができる。このことは、異なる厚みを有する複合材レイアップの領域に適切な量の樹脂を供給できるようにする。このことはまた、正確に計量されて配置された樹脂により「プリパック」を適切に含浸させて硬化させることができるようにする。この吹付プロセスは、樹脂が型に衝突したとき若しくはすぐその後に樹脂を「凍結する」若しくは冷却する能力と結び付けられると、樹脂が溶解したときに樹脂をプリパック内に押し込み若しくは移動させることよってプリパックを正確にウェットアウトさせるための、型上への樹脂のきわめて正確な配置をもたらす。このことは、樹脂スプレートランスファ若しくはRSTと称される。これらのプリパックは、例えば取付用突起等のプレインストールされる部品を有するので、プリパックの異なる領域に異なる量の樹脂を供給する必要がある。
【0089】
樹脂の特性の重要な利点は、冷却された表面に樹脂が接触するとすぐに樹脂が凝固するので、レイアップが型内の所定位置に直ちに保持できるようにすることにある。このことは表面が傾いてる若しくは垂直なときに有利である。
【0090】
樹脂を吹付るために用いる装置は、圧力チャンバを通して流体を循環させるために用いるものと同じ流体循環システムから供給される流体によって、加熱し若しくは冷却することができる。このため、樹脂供給配管は、それを通って流体が循環する外側管路と、少なくとも全般的に同軸に外側管路内に配置される内側管路とを有する。樹脂は内側管路を介してスプレーヘッドに供給される。樹脂を液状に保つ必要があるときには、高められた温度の流体を外側管路を通して循環させることができる。この構成は、樹脂がそこを通って流れるときに、内側管路内の樹脂が均一に加熱されることを確実なものとする。高められた温度の流体はまた、スプレーヘッド周り、および樹脂配管に供給される前に凝固した樹脂が最初に加熱されて溶解するところである樹脂ホッパの周りに循環させることができる。このホッパは、流体がそこを循環する外側中空壁を有することができる。あるいは、そこを通って流体が循環する管をホッパ壁の周りで延びるようにすることもできる。
【0091】
樹脂スプレー装置を循環する流体の温度は、システム内における樹脂の硬化を回避するように調整することができる。樹脂のあらゆる硬化反応を止めるために、樹脂を吹付しないときに冷却流体を装置に通して循環させることができる。
【0092】
複合材レイアップに樹脂マトリックス接着媒体を塗布するための他の手段もまた考えられる。例えばこの材料は、パウダー、フィルム、ウェットアウトした布、若しくは複合材レイアップ上にあてられる熱可塑性シートの一部の形を取ることができる。
【0093】
本発明は、複合材部品の大量製造を容易にする、複合材部品の半連続的な製造を可能とする。
【0094】
したがって、本発明のさらに他の態様によると、
複数の型組立体の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを準備して配置する段階と、
各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する2つの分離された圧力チャンバ間に1つ若しくは複数の型組立体を配置するとともに、前記型組立体が前記圧力チャンバのチャンバ壁間に配置されるように、前記圧力チャンバを製造ステージにおいて一緒にする段階と、
前記製造ステージの間に、高められた温度および圧力の流体を各圧力チャンバを通して循環させ、それによって前記部品を圧縮して硬化若しくは成形する段階と、
前記型組立体を前記圧力チャンバ間から取り除く段階と、
各型組立体から完成した部品を分離する段階と、
前記型組立体を、その後に続く製造ステージのためのレイアップを収容しているさらに他の一つ若しくは複数の組立体に置き換える段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0095】
型組立体は少なくとも一つの型部分を有することができる。あるいは、型組立体は、前述したような流体流れチャンバを有する型部分を含むことができる。
【0096】
流体は、それぞれが異なる温度の流体を含んでいる多数の流体リザーバを具備した流体循環手段と、圧力チャンバおよび流体流れチャンバへの流体流れを必要に応じて制御するための流体供給手段とによって循環させることができる。各流体リザーバは、多数の圧力チャンバへの流体の供給を容易にする環状主ラインを有することができる。
【0097】
上述した方法は複合材若しくは接合金属部品を製造するための半連続的なプロセスを可能にする。型組立体を予め準備することができるからである。
【0098】
国際特許出願PCT/AU95/00593に記述されている製造システムを半連続的なプロセスのために改造することも考えられる。
【0099】
したがって、本発明の他の態様によると、
複合材若しくは接合金属レイアップを準備して、各々が弾性的に固定されるとともに底部圧力チャンバのチャンバ壁を形成する複数の型部分内に配置する段階と、
弾性的なチャンバ壁を有する分離された各頂部圧力チャンバの下方に、前記底部圧力チャンバを配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置される段階と、
前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部および底部チャンバを一緒にする段階と、
高められた温度および圧力の流体を製造ステージの間に前記頂部および底部チャンバを通して循環させ、それによって前記部品を圧縮して硬化若しくは成形する段階と、
底部圧力チャンバを、次の製造ステージのためのレイアップを収容している他の底部圧力チャンバに置き換える段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0100】
底部圧力チャンバは、1つの位置に配置できるとともに少なくとも全般的に垂直に動くことができる頂部圧力チャンバの下方にそれぞれ配置できるようにするために、少なくとも全般的に水平に動くことができるように取り付けられる。
【0101】
例えば、圧力チャンバは、車輪を支持することができるし、あるいは台車上に取り付けることもできる。
【0102】
流体供給配管は、上側圧力チャンバに固定することができる。流体供給配管は、各底部圧力チャンバに接続されるとともに、上側圧力チャンバの下方に動かされるときに各底部圧力チャンバから解放される。しかしながらまた、底部圧力チャンバを静止状態に保つとともに上側圧力チャンバを底部圧力チャンバの上方で移動可能とすることも考えられる。
【0103】
ある種の用途においては、前述したような単一の圧力チャンバを用いた製造システムを利用することも受け入れることができる。
【0104】
したがって、本発明のさらに他の態様によると、
複数の堅固に取り付けられた型部分の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを準備して配置し、弾性的なチャンバ壁を有している頂部圧力チャンバの下方に前記型部分を配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置され、前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部チャンバを前記型部分の上に降ろす段階と、
製造ステージの間に頂部圧力チャンバを通して高められた温度および圧力の流体を循環させ、それによって部品を圧縮して硬化させ若しくは成形する段階と、
前記型部分を、次の製造ステージのための前記レイアップを収容している他の型部分に置き換える段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0105】
型部分の構造上の強度は、型部分の他の好ましい実施例において増加させることができる。この型部分は、型キャビティを与える内側型表皮と、型部分の反対側にある外側型表皮と、内外の型表皮間に延びている一連の補強フィンとを有する。内側型表皮は、寸法精度のために外側型表皮より厚くすることができる。補強材フィンは、型部分内に一連の箱構造を設けるように作用する。これは、補強材フィンが加熱若しくは冷却フィンとして作用し、型部分に対する熱伝達の効率を改善するからである。高められた温度の流体はまた、これらの箱構造を通して循環させることができる。外側型表皮には断熱材レイヤを設けることができる。
【0106】
補強された型部分は、典型的な単一壁の壁型部分よりも剛性が高いばかりでなく、より良好な熱伝達効率を有する。
【0107】
本発明による複合材若しくは接合金属製造システムの好ましい実施例を図解している添付の図面について本発明をさらに記述することが便利である。本発明の他の実施例が可能であり、したがって添付の図面の特殊性が本発明の普遍性に取って代わるものとして理解されてはならない。
【発明の実施の形態】
【0108】
本発明による複合材部品製造システムは別個の上下の圧力チャンバ1、2を有しているが、それらの一つが図2に示されている。各圧力チャンバは、弾性的に変形可能でありかつ容易に形状に追従するチャンバ壁5を支持しているメインハウジング3を有している。頂部圧力チャンバ1は、底部圧力チャンバ2の上方に、それらの弾性的に変形可能で容易に形に従うチャンバ壁が互いに対向するように配置することができる。型組立体7、9は、互いに対向しているチャンバ壁5の間に配置することができる。各型組立体は典型的に、例えば図3aおよび図3bに示したような上側型部分および下側型部分を有することができる。図3aは、上側型部分7aおよび下側型部分7bを有した、ボートの船体を製造するための型組立体7を示している。複合材レイアップは、上下の型部分7a、7b間に配置することができる。この複合材レイアップは典型的に、樹脂を含浸させた材料、乾燥繊維および補強材料を含むことができる。図3bは、上側型部分9aおよび下側型部分9bを有した、ボートの甲板成形品を製造するための型組立体9を示している。複合材レイアップは、上下の型部分9a、9b間にも配置することができる。
【0109】
頂部圧力チャンバ1を取り除くと、底部圧力チャンバ2の弾性的に変形可能なチャンバ壁5の上に型組立体を配置することができる。図4は、チャンバ壁5の表面の大部分を覆う単一の大きい甲板型組立体11を支持する底部圧力チャンバ2を示している。しかしながら、図5に示したように、底部チャンバ2のチャンバ壁5上に多くのより小さな型組立体13、15、17、19を配置することも可能である。
【0110】
底部圧力チャンバ2のブラダ若しくは変形可能な壁上に型部分を配置すると、図1に示したように、底部圧力チャンバ2の上に頂部圧力チャンバ1を載せることができる。次いで、水若しくは油のような流体を上下の圧力チャンバ1、2の内側空間6の両方に循環させる。この循環流体は、高められた温度および圧力で供給される。各圧力チャンバ内の流体は周囲の圧力よりも高められた圧力であるので、圧力チャンバの弾力的な壁は外側へと押しやられて隣接する型組立体7,9上で変形し、それらの間の複合材レイアップを圧縮することになる。流体の高められた温度は、複合材レイアップ内の樹脂マトリックス若しくは接合媒体の硬化/成形を行う。上下の圧力チャンバ1、2の内側空間6の両方の内部圧力は、釣り合った力を型組立体7、9上に与えるために、少なくとも実質的に同等とすることができる。このことは、型をより軽い構造とし、かつ圧力チャンバ1、2間の圧力が釣り合わない場合においても寸法精度を維持できるようにする。各圧力チャンバ1、2内の圧力を周期的に変化させ、またはピストン若しくは型組立体に取り付けた他の種類の振動供給源の使用により圧力チャンバ内の流体に振動若しくは圧力波を導入し、それによって型組立体7、9上に振動力を負荷することができる。このことは、複合材レイアップからの気泡の取り除きを助け、それによって最終的な複合材製品がむらのない均一なものになることを確実にするということが判明している。この振動はまた、RTM、RFG若しくはRSTを使用し、かつ型が傾斜し若しくは垂直であるときに積層体から空気の放出を強める。この振動は、気泡が積層体から放れて液体樹脂のカラムの頂部へと浮上する自然な傾向を強める。高められた圧力および温度で流体を循環させるとともに周期的に変化する圧力を与えるという構成は、本願の出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593内に詳述されているから、本願明細書においては説明しない。
【0111】
図6は、本発明による複合材部品製造システムを使用した半連続的な製造工程を示している。複合材若しくは接合金属部品の製造システムを設ける圧力チャンバ若しくはセルは、製造フローの位置Eに配置されている。このシステムは、型組立体をその中に支持するように示されている。複合材の製造を可能とするために流体が圧力チャンバを通って循環する硬化サイクル工程の間、他の型組立体は位置Dにおけるセル内への導入に備えて準備することができる。製造フローをより完全に説明すると、この工程は位置Aで始まり、型組立体はそれを支持するために移動架台内に保持され、必要ならば型組立体の全ての表面への効果的アクセスを可能にするためにそれを回転させる。ここで、型組立体は複数の型部分から成り、かつ型組立体には、最初にワックスが塗布されるとともに必要に応じて調製された型部分が準備されている。位置Bにおいては、塗布可能ならば型部分にゲルコートおよび樹脂を吹き付けることができる。位置Cにおいては、下側型部分には(プリプレグとして周知の)樹脂含浸材料、必要に応じて補強材発泡コアおよび乾燥繊維を含む複合材レイヤが装填される。位置Dにおいては、上側型部分、真空バッグ、あるいは蓋若しくは負荷を拡散するための別個の型が下側型部分上に配置され、または対向する圧力チャンバの弾力壁によって圧縮されるように型は開いたままとされる。最終的な型組立体は、位置Eにおいて圧力チャンバ間への配置の準備が完成している。用途に応じて樹脂配管を型部分の内側に挿入し、上側に若しくは外側表面上に配設し、樹脂マトリックス若しくは樹脂のような接合媒体を供給し、あるいは必要に応じて過剰な樹脂マトリックス若しくは接合媒体を排出できるようにする。位置Eにおける複合材の製造/硬化に続いて、型組立体は上下の圧力チャンバ間から取り除かれるとともに位置Fにおいてその保持架台に戻され、用途に応じて蓋、上型、真空バッグ、配管等が取り除かれるとともに、その用途において適用可能な使い捨ての成形材料、剥離層、ブリーダークロス等もまた取り除かれる。留意されるべきことは、この工程が正味の部分としてRTM、RFI若しくはRSTを用いて実施されるときに、この工程から生じるであろう使い捨ての材料を必要としないことを予見し得ることである。位置Gにおいては、追加的な補強材、ストロングバック、隔壁、および内装材を配置してボートに接合することができる。好ましくは、このために本願出願人の上述した国際特許出願(PCT/AU01/00224)に記載されているような接合および接続工程を使用する。さらに、未だ型組立体の内側にある甲板を、船体を型から取り除く前にこの船体に結合することができる。最後に、位置Hにおいて、完成した複合材部品は型から取り除かれる。一般的に、このことは、型を分割してボートを型から取り除くことを必要とする。型はそれから位置Aへと戻されて、成形品を硬化させる工程のために清浄化され、再結合され、かつ準備される。
【0112】
図7〜図11は、本発明による製造工程を使用した製造シーケンスをより詳細に示しているが、ここにおいては型表面上にRSTを使用して吹き付けた樹脂レイヤを有する型部分が用いられている。
【0113】
最初に図7を参照すると、型部分25は可動台車21によって支持されている。この型部分25の型表面26上には、最終的に複合材レイアップが配置される。複合材レイアップの配置に先だって、型表面26上に液化樹脂24を吹付るためにスプレーヘッド20を用いる。このスプレーヘッドは、別個の供給配管22、23によってそれぞれスプレーヘッド20に供給される樹脂と触媒との混合物を吹付る。混合された樹脂と触媒は、スプレーヘッドを離れて型表面26に接触すると合体する。型部分25、スプレーヘッドから出る樹脂の温度よりも低い温度に型表面を維持するのを助けるために、冷却流路、キャビティ27、若しくは台車上に据え付けられて型表面26の直下において型に接触する別個の冷却ブラダを有することができる。このことは、型表面26上の樹脂の凝固を助け、それによって樹脂レイヤを供給する。樹脂は、型表面26上の樹脂レイヤの厚みを変化させるために予め定められたパターンで型表面上に吹付ることができる。これは、複合材レイアップが繊維およびフォームの「プリパック」の形を取るときに有用である。そのようなプリパックは典型的に、最終製品内にその構成部品が配置される位置においてプリパック内に配置される、例えば取付け突起等の構成部品を有することができる。
【0114】
図8を参照すると、プリパック29が樹脂レイヤ上において型表面26上に配置された後に、真空フィルム30が型部分25の上に配置される。真空フィルム30の下から空気を排出できるように、この真空フィルム30は型部分25に対して密封される。このことは、プリパック内にある空気若しくは他のガスの量の最小化を助ける。次いで、準備された型部分25は図8に示したように台車21から持ち上げられて、下側圧力チャンバ2の弾性的に変形可能なチャンバ壁5上に配置される。圧力チャンバ2内に配置されているものは、底部圧力チャンバ2のメインハウジング3には物理的に接続されていない支持フレーム32である。支持フレーム32から延びているものは、チャンバ壁5を貫通して延びる複数の位置決めピン31である。これらのピン31は、チャンバ壁5上に型部分25をしっかりと位置決めするために、型部分25のフランジ28に沿って設けられている一連の開口と係合するようになっている。
【0115】
下側圧力チャンバ2が水平面に対してある角度で傾けられているので、支持フレーム32および位置決めピン31は、チャンバ壁5上の位置への型部分25の位置決めを助ける。
【0116】
ここで図10を参照すると、それらの間に位置決めされる型部分25と共に、頂部圧力チャンバ1が底部圧力チャンバ2上に位置決めされる。
【0117】
本発明による装置は、プリフォーム若しくは複合材レイアップを圧縮して硬化させるべく、前述したように働かせることができる。しかしながら、プリパック内への樹脂の均一な移動を確実なものとすることを助けるので、頂部および底部圧力チャンバ1,2を通って流れる流体の温度を変化させることが好ましい。プリパックが樹脂によって濡れるようにプリパックを準備するために、最初にプリパックに熱を与えることが好ましい。プリパックを暖めることは、それを貫通する樹脂の流れを促進する。これは、上側圧力チャンバ1にはより高い温度の流体を循環させつつ、より低い温度の流体が下側圧力チャンバ2内を循環するように維持する、本発明によって達成することができる。
【0118】
プリパック29が適切に加熱されると、型部分25したがってその上の樹脂レイヤを加熱するために、より暖かい流体が底部圧力チャンバ2を通過する。樹脂レイヤの加熱は、そのレイヤの液化およびその樹脂を介して隣接するプリパックの濡れに帰結する。プリパックが予熱されているので、このことはプリパック内への樹脂のより容易な移動に帰結する。樹脂が最初に型の底部において加熱されて液化し、プリパックの一方の側から他方の側への熱伝達効果をもたらしてプリパック内のあらゆる樹脂を完全に溶解させて液化させることも考えられる。また、樹脂が溶解してその粘度が減少するにつれて、それはプリパックを樹脂によって完全に充填する。前進する溶融ラインの前方にある空気および他のガスを樹脂カラムの頂部および型の頂部へと押しやるために、型内の最も低い位置においてこの工程を開始することが最も有利である。
【0119】
製造工程の間における連続した加熱は、空気を放出して圧力が釣り合っている樹脂カラムの頂部に上昇させるという積層体および樹脂カラム柱の自然な傾向を高める。これらの2つの自然現象は、プリパックの不適当な濡れにつながる樹脂の早すぎる液化の際に生じる、樹脂の沈み込み若しくは逃げの可能性を最小とする。また、圧力チャンバ間の型部分25へ挿入する前に、樹脂レイヤとプリパックとの間にケブラー製の覆いを設けることが有益である。この覆いは、プリパックから適切に外へとウェットアウトするのにふさわしい粘度となるまでそこを通る樹脂の移動を防止するように寸法決めされた、複数の開口を有している。樹脂の粘度が高すぎるとプリパック内におけるドライスポット、したがってプリパックの不適当な濡れに帰結する。ケブラー製の覆いの使用はしたがって、樹脂が容易にプリパックを濡らすように十分に低い粘度であることを確実なものとする。
【0120】
図11は、型組立体に樹脂をスプレーするために用いる樹脂吹付装置をより詳しく示している。
【0121】
吹付工程用の樹脂を溶解させるために樹脂ホッパ33が用いられている。樹脂34はブロック状として得られる。そのような樹脂は典型的に、その購入コストが相対的に低く、かつ長鎖タイプである。この種の樹脂はRTMにおいて使用する樹脂よりも堅い。さらに、液体樹脂に比較すると固体樹脂製品は長い貯蔵寿命を有する。樹脂ポンプ35は、液化された樹脂を樹脂供給配管22およびスプレーヘッド20に供給するためにホッパ33の下流に配置されている。
【0122】
ホッパ33には中空壁36が設けられており、圧力チャンバに流体を供給するために用いている流体循環システムからの流体がそこを通って循環する。代わりに管37をホッパ33の周りに延ばし、この管37を通して流体を循環させることもできる。
【0123】
樹脂供給配管22は、外側管路22aと、この外側管路22aの内側に配置されて少なくとも略同軸な内側管路22bとを有している。樹脂は内側管路22bを通って流れ、流体が外側管路22aを通って循環する。外側管路22aもまたスプレーヘッド20の周りに延びている。したがって、この装置による樹脂の吹き付けが必要なときに、高められた温度の流体は、樹脂供給配管22の外側管路22aに接続されている供給配管38およびホッパ33の中空壁36若しくは流体チューブ37を介して供給され、かつ流体ドレン管路39を介して戻される。この流体循環構造は、樹脂の供給経路に沿った均一な加熱を提供するとともに、電気的な加熱を用いた場合に生じ得るいかなるホットスポットをも排除する。スプレーヘッド20は、そこから樹脂の噴出24を放出するために、スプレーハンドルおよびトリガーコントロール20aによって作動させることができる。
【0124】
樹脂のスプレーが必要でないときには、その内部に保持されている樹脂の硬化を防止するために、装置内にはより低い温度の流体を循環させる。
【0125】
スプレーヘッド20は、異なる幅の樹脂のスプレーをもたらすために電子制御可能な放出開口を有している。このことは、スプレーヘッド20が型上を横切るときに、スプレーヘッド20からのより幅の狭い若しくはより幅の広い樹脂スプレーの噴出を可能にする。
【0126】
上述したように、本発明は型組立体が傾斜し若しくは垂直に取り付けられるようにする「バランス密度効果」を利用している。このことは、本発明によるシステムが、従来の製造プロセスを使用するときよりもはるかに大きなサイズの垂直な型組立体においてパネルを製造できるようにする。この効果は図12および図13を参照して説明される。
【0127】
図12は、柔軟なダイヤフラム5aによって分離された樹脂を含んでいる空間6aと空気を含んでいる空間6bとの間の境界面を示している。ダイヤフラム6bは垂直状態に保たれているが、樹脂含有空間6aが次第に満たされるにつれて空気含有空間6b内へと膨張することを強いられ、その膨張は底部近傍において最大である。これは、樹脂6cのカラムの重量に起因する壁5aに対する圧力が、深くなるほど次第に増加するからである。その理由は、空気の密度が樹脂のそれよりも小さいからである。ダイヤフラム5aに負荷される空気の圧力が樹脂カラム6cによって負荷される圧力を補うには不十分であり、結果としてダイヤフラム5aが変形することになる。
【0128】
図13は、樹脂含有空間6a、例えばレイアップを含んでいる型キャビティと、流体含有空間6b、例えば圧力チャンバとの間の境界を示している。2つの空間を分離している柔軟なダイヤフラム5aは、例えば圧力チャンバの弾性的に変形可能なチャンバ壁によってもたらされる。典型的に流体が油であることから、流体の密度は樹脂のそれに近い。したがって、樹脂カラムおよび流体カラムの両方によってダイヤフラムに負荷される圧力は、その内部の深さが増すに連れて増加するが、ダイヤフラム5aは膨張しない。これは、樹脂および流体カラムからダイヤフラム5aに負荷されるそれぞれの圧力が釣り合うからである。したがって、本発明による圧力チャンバ内の流体の循環は、チャンバ壁の変形を最小としつつ型組立体を傾け若しくは垂直に保持できるようにする、この釣り合いの取れた圧力の効果を利用することができる。
【0129】
図14および図15は、本発明によるシステムの他の好ましい実施例の詳細を示している。前述した実施例に対応する参照符号は、明快さのために、これらの図およびその後に続く図に用いられる。
【0130】
図14は、型キャビティ53を有した型部分51を備える型組立体50を示しているが、この型キャビティ53内には複合材若しくは接合金属レイアップ55が支持されている。この型組立体50は、2つの比較的深いチャネル部分57を有している。図1に示した構造とは異なり、単一の型部分51だけが設けられている。レイアップ55には、前述しかつ図8に示したような真空フィルムを使用することによって初期圧縮を加えることもできる。
【0131】
深いチャネル部分57および型部分51の断面に見られるそれぞれの90度の角度は、圧力チャンバ1のチャンバ壁5が型組立体50の全ての領域に接触することを困難にしている。この結果、熱および圧力が均一に負荷されないことによって、レイアップ55の圧縮および硬化は潜在的に満足がいくものより少ないものとなる。
【0132】
したがって、型組立体50は、弾性的に変形可能な材料から形成されるブラダ59をさらに備え、このブラダ59は型部分51に固着されて流体流れチャンバ61を提供する、る。支持膜63が底部の型表面52をブラダ59に接続している。このブラダは、高められた温度および圧力の流体が流体流れチャンバを通って循環できるようにするための手段(図示せず)を有している。このことは、したがって、循環する流体が底部の型部分表面52に直接接触できるようにして、型部分51およびレイアップ55に対する効率的かつ均一な熱伝達を確実なものとする。
【0133】
また、流体流れチャンバが固い表面を有した剛体若しくは半剛体のハウジング若しくはプレートによって設けられるとともに、これらのハウジング若しくはプレートをその周縁に沿って型部分51に弾性的に取り付けることも考えられる。支持膜は、流体流れチャンバを通る流体の流れの案内を助けるために、ハウジング若しくはプレートおよび型部分表面52に接続することができる。
【0134】
ここで図15を参照すると、複合材若しくは接合金属部品の製造工程の間に、型組立体50は頂部および底部圧力チャンバ1、2のチャンバ壁5の間に収容される。圧力チャンバ間に配置されるときに、更なる頂部流体流れチャンバ65を型組立体50の上に配設することができる。この頂部流体の流れチャンバ65は、弾性的に変形可能な材料から成形されたブラダの形を取っている。頂部流体流れチャンバ65の下側表面67は全般的に、型組立体50の形状に追従するように構成されている。この頂部流体流れチャンバ65はまた、高められた温度および圧力の流体がそこを通るように循環させるための手段(図示せず)を有する。
【0135】
この構成は、型組立体50およびレイアップ55の表面全体にわたって圧力および温度が比較的に均一に分布することを確実なものとする。
【0136】
前述した実施例におけるこの構成の利点は、圧力チャンバ1、2を加圧する機能と、型組立体の流体流れチャンバ61および頂部流体流れチャンバ65における温度調節機能との間で、その目的が分かれることである。流体流れチャンバ61,65の比較的小さな容積は、製造プロセスのための温度変化を達成しつつレイアップ55への熱伝達を最大にするために必要な流体のより少ない容積へと結びつく。圧力チャンバ1、2の機能はレイアップ55を圧縮するための圧力を負荷することである。したがって、圧力チャンバ1、2内の温度は一定な温度に維持することができる。
【0137】
図15に示した製造システムの実施例は、そのように構成された底部表面67を有する頂部流体流れチャンバ65を用いている。しかしながら、これに代えて、少なくとも全般的に型組立体50の全体的な形状にならうように、頂部圧力チャンバ1のチャンバ壁5を構成することも考えられる。
【0138】
図16〜図19は、下側圧力チャンバ2のチャンバ壁5上に型組立体70を位置決めするための他の位置決め手段を示している。この位置決め手段は、型組立体を堅固な状態に保つために、チャンバ壁5上の所定位置に型組立体70を保持する作用をなす。
【0139】
図16に示した実施例においては、型組立体70に、チャンバ壁5上に配設された対応孔73に係合する多くの突起71が設けられている。
【0140】
図17は、頂部および底部圧力チャンバ1、2間に配置されたレイアップ72をその内部に支持している型組立体70を示している。型組立体70の突起71は、底部圧力チャンバ2上に支持されている孔73に係合している。高められた温度および圧力の流体が頂部圧力チャンバ1を通って循環すると、頂部圧力チャンバ1のチャンバ壁5は型組立体70内に変形する。底部圧力チャンバ2のチャンバ壁5もまた、そこを通って循環する流体によって型組立体70の底部において同様に変形する。
【0141】
図18は、底部圧力チャンバ2のチャンバ壁5を通って延びる位置決めピン77を有した堅固なフレーム75を示している。したがって、この構成は図9および図10に示したものと似ているが、堅固なフレーム75は底部流体チャンバのハウジング3内に収納されてはいるもののそこには接続されていない。
【0142】
位置決めピン77は、型組立体70の周縁に沿って配設されている対応孔と係合することができる。図18に示した堅固なフレーム75が比較的薄い輪郭を有しているので、底部流体チャンバ2の容積は、その内部に堅固なフレームを収容するために特別に大きくする必要がない。
【0143】
図19に示した構成においては、底部流体チャンバ2内に支持されている堅固なフレーム75の寸法がかなり大きいものであるため、この堅固なフレーム75を底部圧力チャンバ2内に収容するためにより大きな空間を必要とする。通常のオートクレーブ複合材製造法に使用する型組立体は典型的に、図19に示したタイプの大きく堅固なフレームを用いる。
【0144】
きわめて大きな体積の流体を底部流体チャンバ2内で循環させることは有利ではない。過剰な流体は製造工程のために供給されず、この過剰な流体は不必要であるからである。したがって、堅固なフレーム75の上端部近傍に位置決めされる分離プレート79と、底部圧力チャンバのハウジング3から延びて堅固なフレーム75の周縁表面に係合するシール81とを設けることが好ましい。分離プレート79およびシール81は、そこを通って流体が循環するように仕向けられるより限られた流体流れ通路80を画成し、流体がシール81および分離プレート79上を流れるようにして、任意の時点において底部圧力チャンバ2を通って循環するために必要な流体の体積を最小とする。スペーサプレート83は、分離プレート79の正しい位置決めを助けるとともに流体流れ通路80を通過する流れのある程度の制御をもたらすために、画成された流路内に設けることができる。
【0145】
分離プレート79は、プレート間に配設されるとともに各プレートの周縁に沿って延びる周縁弾力シールと共に、一対のプレートから構成することができる。プレートは、その周縁を越えて延びて堅固なフレーム75内の収容スペースに係合するシールを圧縮するために、例えばナットおよびボルトによって一体に圧着することができる。
【0146】
底部圧力チャンバ2の残りの空間は、その内部に保持する必要のある流体の容積を減少させるために、岩石若しくはレンガのような材料で満たすことができる。
【0147】
前述したすべての構成において、型組立体は頂部および底部圧力チャンバ1、2のチャンバ壁5の間で浮いた状態に保持される。
【0148】
本発明によるシステムの他の好ましい実施例においては、図20、図21aおよび図21bに示したように、堅固に支持された型組立体70に対して頂部および底部チャンバ1、2が浮いた状態に支持される一方で、型組立体17は静止した状態に保持されている。型組立体70自体は、支持フレーム85上に堅固に取り付けられる。この支持フレーム85は、ボルト87によって床に固定することができる。型組立体70は、支持フレーム85から底部圧力チャンバ2のチャンバ壁5を貫通して延びる支持ピン77を介して、支持フレーム85上に支持されている。
【0149】
底部圧力チャンバ2は、周縁フランジ88を有している。底部圧力チャンバ2は、静止している型組立体70に対して移動できるように、それらの間に配設されるコイルスプリングのような弾力手段91により、そのフランジ88に沿って支柱89上に支持される。頂部圧力チャンバ1は、型組立体70上に載置されるとともに型組立体70に対して動くことができる。
【0150】
堅固なフレーム85は、底部圧力チャンバ2内に収容される部分を有している。このため、支持フレーム85は、底部圧力チャンバのハウジング3を貫通して延びる一連のフレーム部材86と、図18aおよび図18bに最も良く示されているように各フレーム部材86の周りに配設されたシール93とを有している。各フレーム部材86は、支持フレーム85の上部97が底部圧力チャンバ2内に取り付けられるとともにそれを介して支持フレーム85の残りの部分に接続されるようにする、フランジ接続95を有している。
【0151】
図21aおよび図21bは、各支持フレーム部材86の周りに配設されたシールをより詳細に示している。このシール93は環状のゴムリング95を有している。環状リング95の内側周縁は、フレーム部材86に固定されたフランジ97と第2の浮動フランジ99との間に捕らえられている。固定フランジ97および浮動フランジ99は、環状密封リング95の内側周縁を保持するために、ボルトによって一体に締め付けられている。その密封リング95の外周はハウジング壁3と環状外リング100との間に固定されている。
【0152】
図20、図21aおよび図21bに示した製造システムが作動する間、高められた温度および圧力の流体は頂部および底部圧力チャンバ1,2を通って循環する。型組立体70が堅固な状態に保たれているので、頂部および底部圧力チャンバ1、2は、各圧力チャンバ内の圧力の変化に伴って動き、それによって型組立体70およびその上に配置されたレイアップ72に対する全体的な圧力を釣り合わせる。したがって、このシステムから得られる製品は、前述した実施例と同一の温度分布および圧力を受けるので、同一でないとしても前述した製造システムを用いて製造した部品と似た物理的な特徴を有する。
【0153】
図22は、型組立体70を堅固に支持する堅固な支持フレーム85を有した、図17の実施例に類似した本発明の好ましい実施例を示している。しかしながら、本実施例においては頂部圧力チャンバ1だけが設けられている。本発明の製造システムの好ましい実施例においては、それぞれ流体が高められた温度および圧力で製造システム内を循環する。図19に示したシステムにおいても同様に、頂部圧力チャンバ1内で流体が循環するようになっている。圧力チャンバ1上に支持される振動装置により、圧力チャンバ内を循環する流体を振動させることができる。流体圧のこの周期的な変化は、レイアップからあらゆる気泡を取り除くように作用する。
【0154】
図22に示した流体循環システムは、3つの流体リザーバ105,107,109を有している。各流体リザーバはそれぞれ加圧され、同一で共通な圧力を分け合うようになっている。第1の流体リザーバ105が比較的高い温度の流体を供給するのに対して、最後の流体リザーバ109ははるかに低い温度の流体を供給する。中間の流体リザーバ107は、第1および最後の流体リザーバ105,109の流体温度の中間にある温度の流体を供給する。一連の供給および戻り配管が各流体リザーバから延びており、頂部圧力チャンバ1に供給されかつそこから戻る流体は弁(図示せず)およびポンプ111によって制御される。弁は、流体供給配管113を通って頂部圧力チャンバ1に流れる流体の温度を制御する。流体戻り配管115は、流体を各流体リザーバへと戻す。流体供給システムは、製造サイクルの特定位置において求められる流体の温度に応じて、異なるリザーバを頂部圧力チャンバ1に接続する作用を行う。このシステムは、本願出願人による国際出願PCT/AU95/00593により詳細に記載されている。
【0155】
第1の循環手段は、本発明の製造システムを作動させる際の熱損失が極めて少ないという重要な利点をもたらす。複合材の製造に用いる従来の単一ブラダシステムは、ある温度範囲の流体の循環を必要とする。このブラダ内の流体は、最初に加熱されて後に冷却されなければならない。したがって、この工程において熱が失われる。比較すると、図22に示した単一圧力チャンバシステムにおいては、流体循環システムの各流体リザーバ内の流体が予め設定された一定の温度に維持される。圧力チャンバ内にある温度の流体を循環させる必要があるときには、適切な温度の流体を含んでいる流体リザーバを圧力チャンバに接続する。流体温度の変化を必要とするときには、異なる流体リザーバを接続する。流体が圧力チャンバを通って循環するだけであり、部品を加熱するため必要なエネルギーが消費されて流体が冷却されないから、各流体リザーバに含まれている流体からの熱損失は最小となる。その結果、図22に示すような製造システムを運転する際の熱損失が最小となる。
【0156】
このようにして制御された温度で流体を貯蔵することは、型およびこの型の内部の部品を加熱し冷却するために適用し得る大量な熱を貯蔵することと同じである。冷たい状態と熱い状態との間を行き来するのではなく、流体が取り換えられる、すなわち貯蔵タンクに戻されるので、克服されるべきものは型および部品の熱慣性だけである。これは、一般的に、等価な質量の水の熱エネルギーの1/10〜1/3である。この方法は、その温度を低い状態と高い状態との間で行き来させることによって克服するためにHTF流体の高い熱慣性必要とするときには得られない、早いサイクルタイムに帰結する。このように熱伝達流体を別々に貯蔵する方法は、現在のブラダ硬化システムよりもはるかに速くてより効率的な部品硬化手段に帰結する。
【0157】
頂部圧力チャンバ1は、型組立体70上に浮いた状態に保たれている。この構造は、前述した実施例の利点の多くをもたらすとともに、寸法の正確さが重要でない部品にも用いることができる。
【0158】
ここで図23および図24を参照すると、数多くの異なる型組立体に連続して樹脂を供給できるようにした構造が示されている。図23は、レイアップ72を支持するとともに2つの圧力チャンバ1,2のチャンバ壁5間に配置された、そのような型組立体70を示している。型組立体70および圧力チャンバ1,2のすべてが傾斜した状態で取り付けられている。真空バッグ30がレイアップ72の上に配置され、かつ樹脂供給ライン94が第1の樹脂容器92から延びている。空気の圧力が、樹脂供給ライン94を介して樹脂をレイアップ72が占めている空間内に押し込む。圧力チャンバ1、2が流体を含んでいるので、深さの増加と共に増加する流体の圧力が型組立体の傾斜の頂部への樹脂の押し込みを助ける。その物理的な効果は、レイアップ72を通って上方に動く樹脂の波である。樹脂がそこからオーバーフローするように充分な樹脂が型組立体70に供給される。このオーバフローは、第2の樹脂容器92へと樹脂を送る樹脂ドレーン配管98によって集められる。真空配管96は、樹脂の引き上げを助けるために樹脂容器を真空に保つ。
【0159】
第2の樹脂容器92内の樹脂は、図24に示したように他の型組立体70に供給することができる。このプロセスは数多くの型組立体において連続的に続けることができる。
【0160】
図25〜図28は、製造される部品に接合する必要のある要素部品を位置決めして支持するための多くの異なる構造を示している。そのような要素部品には補強リブ、取付点、縦通材等が含まれる。
【0161】
最初に図25を参照すると、その上に複合材若しくは接合金属レイアップ72が支持される型部分121が示されている。完成部品に結合されるべき一連の平行な補強リブ123がレイアップ72の上に配置されている。真空フィルム30がレイアップ72およびリブ123上に敷設され、レイアップに初期圧縮を与えるとともにリブ123の所定位置への保持を助けるために真空が負荷される。リブ123を位置決めして支持するために、レイアップ72、リブ123および真空フィルム30上に一連のストラップ125を敷設することもできる。各ストラップ125は、リブ123の直立部分に係合可能な「U字形」に成形された一連の曲がり部分127を有している。これらのストラップ125はリブ123を所定位置に保持するが、弾性的に変形可能なチャンバ壁が係合して組立体の全体に圧力を負荷する。
【0162】
他の構造が図26に示されているが、この構造は圧力チャンバハウジング133内に支持可能なブラダバッグ131を備えている。このブラダ131は、ハウジング内で膨らまされると圧力チャンバハウジング133に対してチャンバ壁132を提供する。ブラダ131は一連の溝135を有している。チャンバ壁132がレイアップ72、補強リブ123および真空フィルム30を支持している型部分121上に降下すると、これらの溝135はリブ123の直立部分を収納するための空間をもたらす。この構造は圧縮、硬化若しくは接合ステージの間に、レイアップおよびリブ123に対するチャンバ壁135の改良された接触を提供する。
【0163】
図26に示した構造は単一のブラダ131を用いる。しかしながら、ハウジング133が同時に複数のブラダを収納することもまた考えられる。そのような構造は、単一のブラダの使用が実際的でない非常に大きな部品の製造を可能とする。
【0164】
図27に示したさらに他の構造の実施例には、リブ123を支持しているレイアップ72に追従するように成形された、弾性的に変形可能な材料でできている比較的狭い断面の流体流れブラダ137が示されている。圧力チャンバのチャンバ壁139はまた、流体流れブラダ137の全般的な形状に追従するように構成することができる。製造ステージの間、流体が流体流れブラダ137を通って循環する。
【0165】
図28は、圧力チャンバ133のチャンバ壁141を利用する構造の他の実施例を示している。チャンバ壁が弾性的に変形可能な材料から成形されているので、その設定形状を保持するための支持を必要とすることができる。これにより、内部支持フレーム145を圧力チャンバ133に設けることができるが、この支持フレーム145はそのように設定された支持部分147を有している。圧力チャンバ133内の圧力を解放すると、チャンバ壁141は支持フレーム145の支持部分147から後退し、それによってチャンバをその適切な一般状態に保持することができる。
【0166】
本願の出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593には、複合材若しくは接合金属製造システムが記載されている。この製造システムはまた、図29に示したような半連続的な製造のために改造することができる。このシステムは、弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する頂部圧力チャンバ151と、弾性的に取り付けられた型部分155を支持している底部チャンバ153とを用いている。製造ステージの間、両方の圧力チャンバ151、153内に高められた温度および圧力の流体を循環させることができる。この流体は、図22に示したシステムにおいて記述したものと同様の流体循環システムによって供給することができる。
【0167】
この製造システムは、それらの移動を容易にするためにそれぞれ台車157上に支持される複数の底部圧力チャンバ153を設けることによって、半連続製造用に改造される。単一の頂部圧力チャンバ151は上下動するように取り付けられる。したがって、底部圧力チャンバ153の数多くの型部分155を複合材若しくは接合金属レイアップ159を収容するために準備することができるが、他の準備された底部圧力チャンバは頂部圧力チャンバ151の下に位置する。それゆえに、製造ステージのために型部分を準備するのに必要な時間に起因して製造プロセスが遅延することはない。
【0168】
図30は図29の半連続製造システムの変形例を示しているが、その主要な相違点は図22に示した製造システムを用いることにある。このシステムは頂部圧力チャンバ151のみを必要とするとともに、台車157が堅固に取り付けられた型部分を支持している。
【0169】
上述した製造システムの大量製造のための改造においては、単一の製造システム159をそれぞれ支持する一連のステーションを用いることができる。これらのステーションのそれぞれへの循環流体の供給を可能にするために、本願出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593に記載されている流体循環システムに環状主ライン161を設けることができる。各流体リザーバ105,107,109には、別個の環状主ライン161を設けることができる。各ステーションに配置された製造システム163に循環流体を供給するために、各ステーションに流体供給システム163が設けられる。どの時点においても任意の流体リザーバから過剰に流体を取り出すことがないように、各ステーションにおける製造タイミングをずらすことができる。各流体リザーバ内の流体が特定の一定な温度に保たれるので、適切な流体リザーバに接続することによって必要な温度の流体を即座に供給することができる。本発明による流体循環システムを用いると必要な温度の流体をいつでも利用できるから、流体を加熱する必要はない。このことはまた、いつでも硬化サイクルを開始することができるという製造および硬化時期の柔軟性に結びつく。すなわち、その開始および終了を型が待たなければならない、固定された硬化サイクル時間がないからである。
【0170】
図32は、2つの圧力チャンバ壁5間に位置する補強された型部分180を示している。この型部分180は、型キャビティをもたらしている内側型表皮181と、型部分180の反対側にある外側型表皮182とを有している。内側型表皮181の厚みは、寸法精度をもたらすために外側型表皮182よりも大きい。
【0171】
型表皮間で延びているものは一連の補強フィン183である。これらの補強フィン183は、型部分180内に箱構造を画成する。その結果として得られる型部分は、従来の単一壁の型部分よりも剛性がありかつ軽量である。さらに流体は、型部分180に対して高い熱伝達効率をもたらしている型部分180の箱構造を通って、均衡のとれた圧力若しくは僅かに高い圧力で圧力チャンバへと循環することができる。これはまた、補強フィン183が加熱および冷却フィンとして作用するからである。外側の型表皮182には、熱損失を減らすために外側断熱材絶縁を設けることができる。
【0172】
したがって、本発明の方法およびシステムは、複合材および金属部品の半連続的な製造プロセスを可能にする。本発明による製造システムの主要な効果は、製造施設の空間のより良い利用を提供するということにある。例えばオートクレーブを用いるときには、オートクレーブを使用する前に型を輸送して保持するための空間を必要とする。本発明の製造システムには、そのような保持空間は必要ない。
【0173】
当業者にとって明らかであると考えられる修正および変更は、添付の請求の範囲に記載の本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明による複合材若しくは接合金属部品の製造システムを示す側面断面図。
【図2】図1のシステムの圧力チャンバのうちの1つの側面断面図。
【図3】それぞれボートの船体および甲板の成形品を製造するために協動する型部分を示す側面断面図。
【図4】大きなデッキ型組立体を支持している図1のシステムの圧力チャンバの上面図。
【図5】複数の型組立体を支持している図1のシステムの圧力チャンバを示す図。
【図6】本発明によるシステムを用いた半連続的な製造プロセスを示す模式図。
【図7】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図8】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図9】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図10】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図11】図7〜図10の製造プロセスのための樹脂吹付装置を示す模式図。
【図12】バランス密度効果の原理を示す図。
【図13】バランス密度効果の原理を示す図。
【図14】本発明による流体流れチャンバを有した型組立体を模式的に示す断面図。
【図15】本発明による圧力チャンバ間に配置された図14の型組立体を模式的に示す図。
【図16】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図17】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図18】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図19】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図20】本発明による製造システムの他の実施例を模式的に示す図。
【図21】本発明による製造システムの他の実施例を模式的に示す図。
【図22】本発明の製造システムの更なる実施例を模式的に示す図。
【図23】本発明によるシステムのための樹脂供給構造を模式的に示す図。
【図24】本発明によるシステムのための樹脂供給構造を模式的に示す図。
【図25】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図26】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図27】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図28】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図29】本発明による半連続的な製造システムを模式的に示す図。
【図30】本発明による半連続的な製造システムを模式的に示す図。
【図31】本発明による半連続的な製造システムを模式的に示す図。
【図32】内部フィンを有する型部分の概略断面図。
【技術分野】
【0001】
この発明は複合材の製造、超塑性成形および金属薄板部品の接合を指向している。
【背景技術】
【0002】
複合材部品は、グラスファイバーのような繊維材料に樹脂マトリックス若しくは熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂のような接着媒質を含浸させ、または熱可塑性材料のシートを成形して接合しあるいはこれらを積層して部品を形成することによって製造される。この樹脂含浸材料は、その後、材料を圧縮するとともに樹脂マトリックス若しくは接合媒質を成形しあるいは硬化させることによって複合材/接着部品を製造するために、高められた圧力および温度にさらされる。接合金属部品は、薄い金属シートを成形し、接着剤若しくは接合材料をシート間に配置し、次いで十分な結合を確実なものとするために保持圧力若しくは締付力を維持しつつ温度を上昇させることによって形成される。いずれの場合においても、積層体を固い層に硬化させあるいは固い積層体を接合して最終的な部品を形成するべく、複合材のレイアップ若しくは接合金属材から過剰な空気および樹脂を排出するために材料を圧縮する必要がある。高強度の軽量部品、特に航空機、自動車および船舶用途に適したそのような部品をこの方法によって製造することができる。
【0003】
本願の出願人は、国際特許出願PCT/AU95/00593に記載したように、そのような複合材部品を製造するためのシステムを開発した。なお、その詳細についてはこの引用によって本願明細書に組み込まれるものとする。ここに記載されているシステムは、型表面および裏当て表面をそれぞれ有する一対の圧力チャンバを用いる。型表面は、圧力チャンバのうちの1つの壁を形成している浮いた状態の剛体若しくは半剛体の型によって与えることができる。裏当て表面は、協動する第2の浮いた状態の剛体若しくは半剛体の型、若しくは真空バッグ、あるいは他の圧力チャンバの壁を形成している弾性的に変形可能なブラダのいずれかによって与えることができる。複合材レイアップは、型表面と裏当て表面との間に配置することができる、剥離布およびブリーダークロスが重ねられた樹脂含浸材料の層から作ることができる。複合材レイアップを所定位置に配置すると、高められた圧力および温度の流体が各圧力チャンバ内を循環し、それによってレイアップを圧縮するとともに樹脂マトリックス若しくは接合媒質を成形しあるいは硬化させる。あるいは、材料の層を最初に型内に敷設して積層体を提供するとともに、積層体の内部に樹脂を導入するために樹脂トランスファ成形(RTF)若しくは樹脂フィルム注入(RFI)を用いることによって部品の形成を可能とする。流体の循環は、構成部品のきわめて均一な硬化と、速いサイクルタイム、加熱および冷却の効率的なエネルギーの使用をもたらす。さらに、このシステムの好適な実施例においては、同じ圧力の流体が各圧力チャンバ内を循環するので、複合材レイアップの両面に等しい圧力を負荷することができる。結果として得られる複合材部品は、他の周知の複合材製造工程によって製造される複合材部品と比較したときに材料の優れた均一性を有する。
【0004】
本願の出願人は、また、国際特許出願番号PCT/AU01/00224において、移動可能な当接表面を有しつつ高められた温度および圧力で流体が循環する少なくとも一つの圧力チャンバを用いる、複合材および金属部品の製造、修復、形成、接合システムを詳細に説明した。
【0005】
本願の出願人によって開発されたこれらのすべてのシステムにおける動作の共通の原則は、硬化プロセスを実行するために高められた温度および圧力の流体の循環を用いることである。加熱用若しくは冷却用の媒体として循環する流体を使用することの利点は、加熱する領域に対して急速かつ均一に熱を伝達する機能である。実際、このことは、複合材部品の製造における硬化時間が、従来のオートクレーブ製造工程において可能な硬化時間よりも実質的に短くなるということに帰結する。これは、空気に比較すると流体の熱伝達率が高い(すなわち、典型的に水の方が22倍高い)ことによる。この結果、製造速度が大幅に向上するとともに単位あたりの全体的な製造コストが低下する。
【0006】
循環流体を用いることの他の利点は、オートクレーブ若しくは他の加熱方法を用いたときに生じ得る「ホットスポット」なしに、レイアップに対してより均一に熱が伝達されることにある。
【0007】
本願出願人のシステムもまた、高められた圧力の循環流体を用することにより、レイアップに対して比較的均一な圧力を加える。さらに、レイアップの反対側に圧力を加える構造においては、負荷される大きな荷重を支持するために高い構造強度を有した装置の使用を不必要とするべく、圧力を釣り合わせることができる。
【0008】
さらに、本発明は、大きなパネルおよび部品の製造を可能とする「バランス密度」効果を利用することができる。この効果の詳細は以下に詳述される。
【0009】
ところが、国際特許出願PCT/AU95/00593に記載されている複合材部品製造システムを使用するときには、その時点で製造している複合材部品が硬化して成形されるまで、次の複合材レイアップを準備することができない。さらに、圧力チャンバから分離されるとともに構造が異なる他の剛体若しくは半剛体の型と交換される、浮いた状態の剛体若しくは半剛体の型を必要とするので、異なる複合材を製造するための型の交換を容易に行うことができない。
【0010】
圧力チャンバの壁に型が固定されているので、例えば複合材料を型内に配置するべく型に近づくために型を動かすことは困難である。
【0011】
加えて、圧力チャンバが囲んでいる圧力セル内に型があるときに、部品に補強材を配置するべく型上で作業することは困難である。型から複合材部品を取り出して治具内に配置し、補強材、例えばリブ、隔壁、ストロングバック等を嵌着することは可能である。しかしながら、補強材が所定位置に来るまでは複合材は全般的に剛体でなく曲がり易いので、これは好ましくない。したがって、型から部品を取り出す前に全ての補強材を配置して二次的なプロセスを完了させることが好ましい。このようにして寸法精度を最大限に確保することができる。
【0012】
また、いくつかの状況においては、型から部品を取り出すために型を分割することが必要であり若しくは好ましい。このことは、分割された圧力チャンバおよび流体の損失がないことを保証するために型を一体に保持する型壁の精巧なロック機構なしに、現在のプロセスで対応するのが困難である。
【0013】
また、浮いた状態の型構造のために、大きく異なるサイズの複合材を製造するために圧力チャンバを適合させることが困難である。したがって、これは、現在実行している硬化、成形プロセスが完了するまで更なる動作を始めることができない「バッチ」プロセスである。しかしながら、そのシステムが現在複合材若しくは接合金属部品を成形、硬化および形成しているときにおいても、少なくとも製造手順の一部を実行し得ると同時にそのようなシステムによって製造される部品の品質を維持することができる、「半連続的な」プロセスを可能とする複合材製造システムを備えることは有利である。また、密封された圧力チャンバおよびシステムからの流体の放出といった基本的な構成を変えることなしに機械加工コストを急進的に減少させつつ、様々に異なる部品およびそれらの部品のための型を製造できるようにすることが有利である。このことは、時間および製造効率が改良されることによって、大量製造用途へのそのようなシステムの導入を容易にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、複合材若しくは接合金属部品を製造するための改良されたシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このことを考慮して、本発明の一態様によれば、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバと、
高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、
その内部に複合材若しくは接合金属レイアップが配置される型キャビティを与える少なくとも一つの分離された型部分を有した、少なくとも一つの型組立体と、を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が対向するように配置された状態で一緒に保持され、前記レイアップを収容している前記少なくとも一つの型組立体は前記チャンバ壁間に収容され、前記レイアップを圧縮して硬化させ若しく成形するように各圧力チャンバに高められた温度および圧力の流体を通して循環させる、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0016】
各圧力チャンバを通って循環する流体は、型組立体およびレイアップの回りに作用する力が釣り合うように、実質的に等しい圧力に維持することができる。これは、寸法精度を維持するために実質的な機械強度を持つ必要がなく、したがってより軽い構造とすることができる、弾性的に変形可能な材料のチャンバ壁の使用を容易にする。したがって、型組立体およびレイアップに対して熱を容易に伝達するためにチャンバ壁を比較的薄することができる。
【0017】
弾性的に変形可能なチャンバ壁はまた、型組立体および支持されたレイアップの形状に密接に追従することができ、型組立体の全体にわたる相対的に均一な熱伝達を保証する。
【0018】
複雑な外側形状を備えるある種の部品においては、レイアップ上に重なるチャンバ壁は外側形状に対して適切に追従できなくとも良い。このことは、例えば製造する部品が深い空洞若しくは溝を有している場合に生じる。
【0019】
このような状況下では、レイアップ上に重なるチャンバ壁は、製造する部品の形状に対して少なくとも全般的に追従するように設定することができる。そのように設定されたチャンバ壁を支持している圧力チャンバを通る流体の循環は、そのように設定されたチャンバ壁を部品の形状に密着するように付勢する。
【0020】
型組立体が圧力チャンバから分離していて、型組立体およびレイアップを圧力チャンバとは別個に組み立てることができるから、本発明によるシステムの半連続的なプロセスの使用を容易にする。さらに、圧力チャンバを用いている間に、他の型組立体を準備することができる。
【0021】
本発明の他の態様によると、
型組立体の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置する段階と、
前記型組立体を、前記レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有している第1および第2の圧力チャンバ間に配置する段階であって、前記チャンバ壁が互いに対向して配置されるとともに前記チャンバ壁の間に前記型組立体が配置される段階と、
前記複合材若しくは接合金属レイアップを圧縮して硬化させ若しくは成形するように、高められた圧力および温度の流体を各圧力チャンバを通して循環させる段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0022】
型組立体は、2つの圧力チャンバ間に配置されたときに弾性的に変形可能な壁のうちの一つが複合材若しくは接合金属レイアップまたはレイアップ上に配置されたブリーダークロスと直接的に接触する、複合材若しくは接合金属レイアップを支持するための単一の型部分を有することができる。型部分は剛体若しくは半剛体な構造とすることができる。また、型組立体が、複合材若しくは接合金属レイアップをその間に配置できるように協動する一対の剛体若しくは半剛体な型部分を有することも考えられる。
【0023】
型部分は、完成した部品のそこからの取り出しを容易にするために分割することもできる。このことは、本発明によるシステムにおいては都合が良い。圧力チャンバから分離して外側に取り出すときに、圧力チャンバから分離している型部分を容易に分割することができるからである。このようにして、圧力チャンバは影響を受けることなく常に完全に密封される。したがって、部品を含む型部分を圧力チャンバから取り出せるという機能は、型部分を密封して圧力チャンバに付属させるためには好ましい。
【0024】
単一の型部分を用いる場合には、レイアップに初期圧縮を与えるために真空バッグを用いることができる。このために、真空バッグがレイアップ上に配置され、圧力チャンバ間において型組立体が圧縮される前にレイアップが圧縮される。
【0025】
圧力チャンバは、弾性的に変形可能なチャンバ壁をその一つの側に支持するハウジングを有することができる。前記壁は、型のためのポケット、リング若しくは取付個所を、弾力的な壁に、または各圧力チャンバの壁に、または剛体壁内に切り欠かれて型に合わせるための弾性材料で裏打ちされたポケットに有することができる。チャンバ壁は、ゴムのような弾性的に変形可能な材料から成形することができる。
【0026】
あるいは、圧力チャンバは、外側ハウジング若しくは柔軟なブラダをその内部に支持するフレームを含むことができる。ブラダの1つの表面は、圧力チャンバのための弾性的に変形可能なチャンバ壁をもたらすことができる。この構造は圧力チャンバの保守を容易なものとする。例えば、何らかの漏れが圧力ブラダに発見されたときには、単にそのブラダを取り出して他のブラダと交換することができる。また、ハウジングと、漏れを生じやすい別個の弾性的に変形可能な壁との間に、何らかの特別な密封構造を設ける必要がない。
【0027】
熱はチャンバ壁を介して伝達されるので、型組立体の外側表面およびその内部に配置されたレイアップの周りにおける相対的に均一な熱伝達を確実なものとするために、チャンバ壁は型組立体の形状に非常に密接に追従する必要がある。しかしながら、このことは、特に型組立体の形状が複雑である場合にはその達成が困難である。例えば、それに沿って延びる深い溝を有した型組立体は、チャンバ壁が型組立体およびその内部に配置されたレイアップに追従することを困難なものとする。
【0028】
したがって、本発明の別の態様によると、
反対側に位置する複数の表面を有する型部分を備え、
前記型部分の表面のうちの1つが型キャビティを提供しており、
前記型組立体は、前記型部分の表面に隣接して設けられた流体流れチャンバを更に備えており、この流体流れチャンバを通って循環する流体が対向する型部分の表面のかなりの部分と直接接触するようになっている、
複合接合金属部品を製造するシステムのための型組立体が提供される。
【0029】
流体流れチャンバは、その周縁に沿って型部分に固定され、それによって隣接する型部分表面のかなりの部分を少なくともカバーする、シリコンゴムのような弾性的に変形可能な材料から成形されたブラダを含むことができる。ブラダに対してさらなる支持を与えるとともに流体流れチャンバを通る流体の流れを導くために、少なくとも一つの支持膜がブラダと型部分表面とを相互に接続することができる。また、少なくとも一つの剛体若しくは半剛体の熱伝達フィンを型部分表面から延設することも考えられる。このフィンは、型部分に対する熱伝達を容易にするとともに流体流れの案内を助けることができる。さらに、このフィンは、ブラダに対するさらなる支持を提供するためにブラダに取り付けることができる。
【0030】
あるいは、流体流れチャンバは、そこを通って流体が循環する、剛体若しくは半剛体のハウジングまたはその周縁に沿って弾性的に型部分表面に固定されたプレートによって設けることも考えられる。
【0031】
流体流れチャンバを設けることは、型部分表面のかなりの部分に対する流体の直接接触をもたらして、流体から型表面への熱伝達を最大とする。上述した型組立体は、本発明による製造システムに用いることができる。
【0032】
したがって、本発明のさらに別の態様によると、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバと、
反対側に位置する複数の表面を有した型部分を含む少なくとも一つの型組立体であって、前記型部分の表面のうちの1つが、その内部に複合材若しくは接合金属レイアップを配置できる型キャビティを提供しており、かつ、この少なくとも一つの型組立体が、そこを通って循環する流体が対向する型部分の表面の少なくともかなりの部分と直接接触するように前記対向する型部分の表面に隣接して設けられた流体流れチャンバを更に有している、少なくとも一つの型組立体と、
前記圧力チャンバおよび前記流体流れチャンバを通して高められた温度および圧力の流体を循環させるための手段と、を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向した状態で一緒に保持され、前記レイアップを収容している前記少なくとも一つの型組立体が前記チャンバ壁間に収容され、前記レイアップが圧縮され硬化若しくは成形されるように、高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバおよび前記少なくとも一つの型組立体の流体流れチャンバを通って循環する、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0033】
本発明の更に別の態様によると、
型キャビティと対向する表面を有する型部分を含む型組立体の前記型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置し、流体流れチャンバが前記対向する型部分の表面と隣接して配置される段階と、
前記型部分を、前記レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁が互いに互いに対向するとともに前記チャンバ壁の間に前記レイアップが配置される段階と、
前記複合材若しくは接合金属レイアップが圧縮されて硬化若しくは成形されるように、高められた温度および圧力の流体を各圧力チャンバおよび流体流れチャンバを通して循環させる段階と、
を含む複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0034】
そこを通って流体が循環する流体流れチャンバを有した型組立体を用いることにより、圧力の負荷をもたらす要素(圧力チャンバ)と熱の負荷をもたらす要素(型組立体)とを分離できる。このことは、型組立体に対する圧力および熱の負荷の管理の改善を容易にする。
【0035】
流体が圧力チャンバおよび流体流れチャンバを通って別個に循環するので、圧力チャンバ内を循環する流体の温度を比較的一定に(例えば約80℃)に保つことができるとともに、流体流れチャンバを通って循環する流体の温度を高い温度と低い温度の間(例えば40℃〜200℃の間)で反復させることができる。この構造においては、圧力チャンバ壁を加熱し若しくは冷却する必要がないからである。したがって、型組立体に対して主要な熱若しくは冷却源を提供するものは流体流れチャンバを通過する流体である。この構造を用いることの他の利点は、流体流れチャンバ通って循環するのに必要な流体の体積が圧力チャンバに比較し少なくて済むということが温度の変化をもたらために必要な流体の量が少なくてすむことを意味し、より速いサイクルタイムに帰結するということにある。
【0036】
分離した頂部流体流れチャンバはまた、レイアップ上に配置することができる。頂部流体流れチャンバは、弾性的に変形可能な材料から成形されたブラダの形を取ることができる。このブラダは、そこを通って流体が循環するときに型キャビティの形状に追従するようにその表面を構成することができる。それよってレイアップに熱を供給するために、型組立体が圧力チャンバ間に配置されている間に、頂部流体流れブラダをレイアップ上に配置するとともに頂部流体流れブラダを通して高められた温度の流体を循環させることができる。このことはより均一な熱伝達をもたらし、頂部流体流れチャンバはレイアップに密接に追従する。したがって、頂部流体流れブラダは取付けられた流体流れチャンバを有する型組立体と連携して型部分およびレイアップの両方に熱を供給するように作用する。
【0037】
頂部流体流れチャンバを通って循環する流体の温度もまた、型組立体の流体流れチャンバ内の流体のように、高い温度と低い温度との間で反復させることができる。
【0038】
流体流れチャンバを有した型組立体は、型組立体内で支持されたレイアップ上に配置された頂部流体流れチャンバと共に、本発明による製造システムの圧力チャンバ間に配置することができる。
【0039】
時には複合材若しくは接合金属部品に他の要素部品を接合する必要がある。これらの要素部品には、縦通材、補強リブ若しくは取付けリングが含まれる。部品の製造と同時にこれらの要素部品を接合できることが好ましい。このことは、部品に対する要素のはるかに優れた結合をもたらす。
【0040】
したがって、本発明の更に別の態様によると、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有した第1および第2の圧力チャンバと、
高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバのそれぞれを通して循環させるための手段と、
複合材若しくは接合金属レイアップと少なくとも一つの要素部品とをその内部に配置し得る型キャビティを有する型組立体と、
前記レイアップ上に前記要素部品を位置決めするための構造と、を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向するように配置された状態で一緒に保持され、前記レイアップおよび前記構造によって所定位置に位置決めされた少なくとも一つの要素部品を含む前記キャビティが前記チャンバ壁間に収容され、レイアップを圧縮して硬化若しくは接合するとともに前記少なくとも一つの要素部品をそこに接合するように、高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバを通して循環させる、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0041】
この要素部品には、複合材若しくは接合金属部品への接合を必要とする縦通材、補強リブ若しくは他の任意の要素を含めることができる。
【0042】
真空バッグは、レイアップに初期圧縮を与えることができるようにレイアップ上に敷設することができる。
【0043】
この構造は、各要素部品に係合してレイアップ上の所定位置に位置決めするための少なくとも一つのストラップを含むことができる。例えば、要素部品が補強リブであるときには、ストラップはリブに対して横方向に延びることができるとともにリブの直立部分に係合する一つ以上の「U字形」の屈曲部を有し、それによってレイアップ上の所定位置にリブを位置決めすることができる。これらのストラップは、真空バッグの上方に若しくは下方に配置することができる。
【0044】
あるいは、この構造には、要素部品を収納してレイアップ上に位置決めするためのポケット若しくは溝を含むように構成された、型キャビティ上に配置される圧力チャンバのチャンバ壁を設けることができる。この圧力チャンバはブラダバッグを収容するための外側ハウジング若しくはフレームを有することができ、かつブラダバッグの表面がそのように構成されたチャンバ壁を与える。ブラダバッグは、外側ハウジングをブラダバッグ上に配置する前に、最初にレイアップおよび要素部品上の所定位置に配置することができる。次いで、ブラダバッグは循環流体によって一杯に膨張させることができる。この構造は、ブラダバッグを膨張させる前における、ブラダバッグのレイアップおよび要素部品上の所定位置への位置決めをより容易にする。複数のブラダバッグを外側ハウジングに収納することもまた考えられる。このことには、単一のブラダを使用することができない非常に大きな部品に対してもこのシステムを使用できるようにする。
【0045】
他の好ましい実施例においては、弾性的に変形可能な材料から成形されるとともに、要素部品およびレイアップ上に敷設されたときにそれらに追従し若しくは容易に追従するように構成された、さらなる流体流れブラダを設けることができる。ブラダは、その上のブラダへの追従を容易にするために、その全体的な厚みを比較的薄くすることができる。高められた温度および圧力の流体を流体流れブラダに循環させることができる。
【0046】
この構造は、要素部品とこの要素部品がその上に配置されているレイアップに対してより密接に追従するように、液体流れブラダに追従して付勢する圧力チャンバのチャンバ壁を設けることを含む。
【0047】
他の実施例においては、この構造は、型キャビティ上において圧力チャンバ内に位置決めされた内側支持フレームの形を取ることができる。この内側支持フレームは、圧力チャンバを通して流体を循環させる前にレイアップおよび要素部品に追従するように構成された、圧力チャンバの弾性的に変形可能なチャンバ壁を支持するように構成することができる。このチャンバ壁は、そこを通って流体が循環するときには支持フレームから離間して型組立体に係合するとともに、そこを通って流れる流体がないときには支持フレーム上へと後退する。
【0048】
チャンバ壁上に型部分を正確に位置決めするとともに運転中における型の正確な位置決めおよび寸法の安定性を維持するために、位置決め手段を設けることができる。位置決め手段は、型組立体のための、チャンバ壁上の取付点の形をとることができる。例えば、型組立体がそこに固定される突起、ソケット、リング若しくはポケットをチャンバ壁上に設けることができる。取付点は、ワイヤ若しくは他の手段を用いて圧力チャンバのハウジングにつなぐことができる。これらは、取付点をそれらの正確な位置に維持することを助ける。あるいは、位置決め手段は、圧力チャンバのチャンバ壁を貫通して延びる少なくとも一つの位置決めピンを有する、圧力チャンバ内に配置された位置決めフレームとすることができる。複数の位置決めピンが好ましくはチャンバ壁から延びるとともに、各位置決めピンは位置決めフレームから延びる。この位置決めフレームは圧力チャンバのハウジングから分離し、したがってハウジングから独立して動くとともに、直接ハウジングに接続しないこともできる。位置決めフレームはまた、ハウジング内におけるその正確な位置を保つために、圧力チャンバハウジングにつなぐことができる。これにより、位置決めピンは、チャンバ壁を貫通して型部分に設けられて協動する孔と係合するように構成することができる。位置決めピンは、したがって、チャンバ壁上の特定位置に型部分を位置決めする。
【0049】
この位置決め構造はまた、圧力チャンバ壁を水平面に対してある角度に傾斜させて配置できるようにする。これは、型を傾ける機能にとって不可避であるというわけではないが、型部分がチャンバ壁上の所定位置に保持されるからである。この傾斜配置の利点は、複合材若しくは接合金属レイアップ内に残留しているあらゆる空気若しくはガスが、レイアップ以外の部分が樹脂で満たされるにつれてレイアップの最上方位置まで動くように促すことにある。この空気は、最終的に樹脂によって押し上げられ/動かされてレイアップから追い出される。このことは、気泡/空洞がほとんどない複合材をもたらす。
【0050】
圧力チャンバ内における位置決めフレームの使用は、この位置決めフレームを圧力チャンバ内に容易に収容できる限りにおいて許容できる。そこを通って循環流体が流れる圧力チャンバの容積は、より大きな位置決めフレームを支持するために増加しないことが好ましい。これは、圧力チャンバを通してより大きな容量の循環流体を循環させる必要があることは好ましくないからである。
【0051】
したがって、本発明のさらに別の態様によると、
弾性的に変形可能なチャンバ壁をそれぞれ有する第1および第2の圧力チャンバと、
高められた温度および圧力の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、
少なくとも一つの型組立体であって、その内部に複合材若しくは接合金属レイアップが配置される型キャビティを与える型部分と、この少なくとも一つの型組立体を定位置に位置決めするための位置決め手段とを有し、前記圧力チャンバがこの少なくとも一つの型組立体の周りにこの少なくとも一つの型組立体に対して相対的にフローティングされて支持される、型組立体と、
を備え、
このシステムを用いるときに、前記圧力チャンバは前記弾性的に変形可能なチャンバ壁が互いに対向するように配置された状態で一緒に保持され、前記レイアップを収容する前記少なくとも1つの型組立体は前記チャンバ壁間に収容され、前記レイアップが圧縮されて硬化若しく成形されるように高められた温度および圧力の流体が各圧力チャンバを通って循環する、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0052】
型組立体は、圧力チャンバの外側に堅固に支持された位置決めフレームによって所定位置に固定することができる。したがって圧力チャンバの容積には、位置決めフレームをその中に収容するための容積を算入する必要はない。型組立体は、圧力チャンバのうちの少なくとも1つを貫通して延びている、位置決めフレームの少なくとも一つの支柱によって支持することができる。
【0053】
このシステムは前述した構造とは反対に作動する。すなわち、圧力チャンバが型組立体の周りで浮くことができるのに対して、型組立体は固定状態に保持される。前述した構造と比較すると、圧力チャンバは所定位置に固定され、型組立体は圧力チャンバ壁間で浮いている。しかしながら、製造プロセスは両システム構造において同じである。
【0054】
上述した構造においては、型組立体は位置決めフレーム上に支持されている型システムによって堅固に支持される。しかしながら、堅固に支持された型組立体上に位置決め可能な1つの圧力チャンバのみを用いることも考えられる。
【0055】
それゆえに、本発明の別の態様によると、
型キャビティを提供する堅固に固定された型部分を有する少なくとも一つの型組立体と、
弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する圧力チャンバと、
高められた温度の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、を備え、 このシステムを用いるときに、前記チャンバ壁が前記少なくとも一つの型組立体上に配置されるように前記圧力チャンバが前記少なくとも一つの前記型組立体上に配置され、前記型キャビティが前記レイアップを収容しており、前記レイアップが圧縮され硬化若しく成形されるように高められた温度の流体が圧力チャンバに通して循環する、
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムが提供される。
【0056】
圧力チャンバは、型組立体の上方に浮いた状態で配置することができる。したがって、そこを通って流体が循環するときに、圧力チャンバは固定された型組立体に対して動くことができる。
【0057】
このシステムは、型部分に負荷される力の釣り合いには対応していない。それにもかかわらず、圧力チャンバ内の循環流体を使用することによって達成される利点は存在し、特に寸法精度を必要としない部品にとってこのシステムを有用なものとしている。
【0058】
流体循環手段は、相対的に異なる温度の流体をそれぞれ収容している複数の流体リザーバと、異なる温度の流体を圧力チャンバに導くための流れ制御手段とを備えている。この構造は本願の出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593に記載されているが、その詳細はこの参照によって本願明細書に記載されたものとする。
【0059】
圧力チャンバ内の流体に周期的な圧力変化をもたらすための手段を設けることができる。例えば、圧力チャンバおよびその内部の流体を振動させるために、振動発生器を圧力チャンバに固定することができる。この振動の使用は、複合材若しくは接合金属材料内の気泡の除去を容易にする。振動の使用は、全般的に本発明による製造システムの全体に適用することができる。
【0060】
留意されるべきことは、チャンバ壁が全般的に垂直平面内に配置される、圧力チャンバが垂直な状態において作動させることができるということである。このことは、「バランス密度効果」という、本発明によるシステム及び方法の重要な態様を示す。このことは、循環する流体の圧力と液化しているときの樹脂の流体圧力とがシステム内において概ね釣り合っているところにおいて生じる。流体および樹脂の密度が似ているからである。液化した樹脂の密度および粘度は、水や使用する熱伝達流体のそれに近い。したがって、圧力チャンバが垂直若しくは傾斜しているときでも、液化した樹脂に対して循環流体から負荷される圧力は、概ね釣り合う。液化した樹脂には型部分の下部に沈み込むという固有の傾向があるが、圧力チャンバ内における深さが増すにつれて循環する流体の流体圧力もまた増加する。このことは液化した樹脂と循環している流体との流体圧力が型部分に沿って釣合うことに帰結し、それによって型部分の下方に沈み込もうとする樹脂の傾向に対して反対方向に作用する。その結果、本発明による傾斜し若しくは垂直な圧力チャンバ内で製造される複合材においても一貫した厚みを維持することができる。このプロセスは、従来技術において体験される数多くの問題点を解決する。すなわち、深い側面を有した大きな部分の製造を可能にするとともに、真空バッグによって負荷する負圧を高くしても、重力の影響により樹脂が壁を流れ落ちるところにおいて樹脂がこれらの深い側面を流れ落ちて「逃げ」若しくは沈降効果に帰結し、壁の基部においては樹脂が過剰で頂部においては樹脂が不足する、ということにならないようにする。この効果を解決するべく、密閉された堅固な樹脂空間をもたらすために一般的にはマッチングさせた金型を用いるが、高いコストが伴う。本発明は、したがって、従来の複合材製造システムよりもはるかに大きなパネル若しくは他の部品を製造することができる。
【0061】
本発明の別の態様においては、圧力チャンバが空の状態から一杯な状態へと次第に流体で満たされる。熱い流体のカラムが圧力チャンバを満たすにつれて、それはブラダおよび型壁を押して、それらの間の積層体を圧縮し樹脂を溶解させる。このことが流体の上昇するカラムの前方で動く樹脂のライン若しくは波に帰結するということも考えられる。これは、積層体からの空気の強制的な排除に役立つとともに、流体カラム、したがって樹脂カラムが部品の表面を超えて上昇するときの部品の制御されたウェットアウトに帰結する。このことは、剛体の若しくは柔軟な空気が満たされるブラダの従来システムの使用によっては不可能である。バランスがとれた密度のシステムは、パーツの周囲を正確に成形して厚みの変化を埋め合わせるとともに上から下まで部品全体にわたって等しい圧力および樹脂含有量を与えることにより、積層体における樹脂および繊維のきわめて正確な制御をもたらす。
【0062】
流体を循環させる手段は、国際特許出願PCT/AU95/00593に示されている構造と同じ若しくは同様とすることができる。流体は、好ましくは油とすることができる。
【0063】
この構造は、異なる温度の流体をそれぞれ含んでいる一連の流体リザーバを備えている。例えば、低い温度および高い温度の流体を含むリザーバと、これらのリザーバの流体温度の中間の温度の流体を含む第3の流体リザーバとの、3つの流体リザーバを設けることができる。
【0064】
各圧力チャンバおよび流体流れチャンバは、異なる温度の流体がそこを通って循環することができるように、全ての流体リザーバと流体的に連通することができる。各リザーバからの流体の流れを制御するために、一連の流体ポンプおよび弁を設けることができる。リザーバから供給される流体の圧力が高められているように、各流体リザーバを加圧することができる。
【0065】
この構成の利点は、部品の製造サイクルの一つ一つにおいて流体を加熱し冷却する必要がなく、システムのエネルギ使用量が減少することにある。
【0066】
多数の製造システムを任意の時点においてリザーバに接続することができるように、各流体リザーバには「環状主ライン」を設けることができる。
【0067】
あらゆる時点において流体リザーバからの過剰な流体の排出がないように、異なる温度の流体の循環は各製造システム間でずらすことができる。このことは、硬化プロセスをいつでも開始できるようにするとともに、固定ステーションデザインにおいて非能率であるように、一旦準備した型が新しいサイクルの開始前に硬化サイクルの終わりを待たなくとも良いようにする。
【0068】
さらに、上述した国際特許出願に記載されているように圧力チャンバ内に圧力を負荷する期間の少なくとも一部分の間に、ウォーターハンマやピストンあるいは型を直接振動させることによって流体に振動若しくは圧力波を生じさせるべく、チャンバ内の圧力を周期的に変化させる手段を設けることができる。
【0069】
システムを使用するときに、少なくとも一つの型組立体を圧力チャンバ間に配置することができる。また、多数の複合材を同時に製造できるようにするために、使用するときに圧力チャンバ間に多数の型組立体を配置することもできる。
【0070】
型部分には、圧力チャンバ間に配置される前に、複合材レイアップ若しくは接合金属シートを装填することができる。このことは、したがって、他の複合材レイアップが圧縮されて硬化し若しくは成形されている間に、型部分内のさらなる複合材レイアップを運転中に準備できるようにする。さらに、分離した型部分の使用は、圧力チャンバの形状を変えることなしに異なる複合材を製造できるようにする。このことはまた、多数の型組立体を圧力チャンバ間に配置することができる場合、多数の複合材の同時製造を可能にする。
【0071】
その縁部が型部分に対してシールされるようにして、真空フィルムを複合材レイアップ上に配置することができる。次いで、複合材レイアップからできるだけ多くの空気およびガスを取り除くために、真空フィルムの下方から空気を抜き取ることができる。このことは、最終的な複合材部品の内部における気泡/空所の最小化を助ける。しかしながら、真空フィルムの使用が本発明の作動にとって必須でないことは注意しなければならない。
【0072】
型組立体を圧力チャンバ間に配置すると、型部分内に配置された複合材レイアップに圧力が負荷されて最終的な複合材部品の形状が型部分の形状によって定められるように、チャンバ内への加圧された流体の導入が、弾性的に変形可能なチャンバ壁が型組立体の周りに変形するよう付勢する。圧力チャンバの弾性的に変形可能な表面に対してそれらの表面が滑べりやすいことを確実なものとするために、これらの型部分の外側表面は好ましくは滑らかである。このスリップにより、弾性的に変形可能な圧力チャンバ壁は、スリップして型部分の形状と密接に接触するとともに、変形を最小としつつ最大の力および熱を型部分に与える。この動作を強化するために、潤滑油を型部分若しくは圧力チャンバ壁に塗布することができる。それ加えて若しくは潤滑の一部として、圧力チャンバ内の流体から型部分および型内の部品への最大限の熱伝達を得るために、流体若しくは伝達媒体に熱を伝達させることが好ましい。弾性的に変形可能な壁が型部分と密接に接触すると、圧力チャンバ内から圧力が複合材レイアップ若しくは接合金属部品を圧縮し、それによって過剰な樹脂若しくは接合媒体および気泡をそこから取り除く。前述したように、型組立体は流体流れチャンバを含む型部分を有することができる。さらに、頂部流体の流れチャンバを型組立体の上方に配置することができる。この型組立体およびオプションとしての頂部流体流れチャンバは、型組立体内に配置されているレイアップを圧縮して硬化させるために、圧力チャンバ壁間に配置することができる。流体に圧力波を生じさせる周期的に変化する圧力や振動の負荷あるいは型組立体の振動は気泡の取り出しを容易にし、最終的な複合材若しくは接合された金属部品がきわめて均一な材料特性を有することを確かなものとする。さらに、流体が圧力チャンバを通って循環するので、複合材レイアップ若しくは接合金属部品の表面全体に沿った比較的急速かつ均一な加熱および冷却が確実なものとなり、レイアップ/部品/金属部品の均一な硬化および冷却を確実なものとする。それに加え、サイクル内の任意の時点において、流体の流れを止めるとともに部品を完全に硬化させるべく温度を維持するために内部ヒータを用いることもできる。
【0073】
複合材レイアップは、樹脂含浸材料(これは「プリプレグ」として知られている)若しくは金属レイヤを含むことができる。レイアップはまた、最終的な複合材のための補強材および他の乾燥ファイバをも含むことができる。複合材レイアップの必要な箇所には、剥離布およびブリーダークロスをその上に配置することができる。樹脂の形の樹脂マトリックス若しくは接合媒体は、プリプレグ熱可塑性シート若しくは金属シート内に供給することができる。しかしながらまた、複合材レイアップを型部分に取り付けた後に、少なくともかなりの量の樹脂マトリックス若しくは接合媒体を複合材レイアップに供給することも考えられる。複合材レイアップは、連続した繊維のレイヤ若しくはプライから成形した、相対的に乾燥している「プリフォーム」とすることができる。樹脂マトリックス若しくは接合媒体は、乾燥プリフォームをチャンバ壁間に配置した後に、1つ若しくは複数の供給配管若しくは湯口によって型部分に供給することができる。このことは、本発明によるシステムが、複合材を製造するための樹脂トランスファモールディング(RTM)として知られているものを利用できるようにする。
【0074】
本発明の更に他の態様によると、
複合材若しくは接合金属レイアップを型組立体の型キャビティ内に配置する段階と、
前記型組立体を、複合材若しくは接合金属レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有するとともに少なくとも実質的に流体が満たされている第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁の間に前記少なくとも1つの型部分が配置された状態で前記チャンバ壁が対向するように配置される段階と、
前記型組立体の内部に配置されたレイアップを通して前記型組立体に樹脂を供給する段階と、
その後に続く他の型組立体への供給のためにその型組立体から溢れた樹脂を集める段階と、
レイアップを圧縮して硬化若しくは成形されるように、高められた圧力および温度の流体を各圧力チャンバを通して循環させる段階と、
を含む複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0075】
1つの型組立体から溢れた樹脂を集めて他の型組立体に供給する段階は、1つ若しくは複数の型組立体に対して順番に進めることができる。
【0076】
このことは、RTMを用いる多数の型組立体に樹脂が個別に供給されるときに、無駄になる樹脂の量がかなり減少することにつながる。
【0077】
樹脂は、第1の樹脂容器から第1の型組立体へと圧力下において供給することができるが、供給される樹脂の量は第1の型組立体内のレイアップのために必要な樹脂の量よりも多い。その結果は、型組立体を通って進行する波若しくは樹脂の移動である。この樹脂の波は、過剰な樹脂を含んでいる樹脂の移動する前面を有するとともに、そこを通過する樹脂の厚い波面の形を取ることができる。型組立体は、流体内の深さに伴って増加する流体の圧力がレイアップを通る樹脂の押し上げを助けるように、傾斜した状態で保持することができる。第1の型組立体から溢れた樹脂は、その後に続く型組立体へと供給することができる。進行する樹脂の波面によって空気がレイアップから押し出され、最終的な部品内における気泡が減少し若しくは除去される。この過剰な樹脂は最初に、負圧下にある次の樹脂リザーバに送ることができる。弁が第1の樹脂容器を切り離すとともに型組立体に圧力を負荷するときに、更なる樹脂をレイアップからしぼり出すことができるが、この追加された樹脂は次の樹脂リザーバ内に集められる。この樹脂リザーバから次の型組立体への樹脂の流れを制御する弁を開口するとともに、圧力下においてこの樹脂を次の型組立体へとポンプ送りすることができる。このことは、必要であればいくつかの型組立体にわたって続けることができる。
【0078】
1つの型組立体を次から次へと移動する樹脂の波面を使用することは、各型組立体に個別に供給する場合に生じ得る樹脂の浪費を最小化するように作用する。
【0079】
乾燥プリフォームに樹脂を供給する他の方法は、型部分内に支持されている乾燥プリフォームの表面上に分散可能な、多数の固体の樹脂ブロック若しくはタイルである。乾燥プリフォームおよび樹脂のブロック/タイルを支持している型部分を圧力チャンバ間に配置すると、圧力チャンバを通って循環する高められた温度の流体が樹脂を溶解させる。したがって、本発明によるシステムはまた、樹脂フィルム注入(RFI)として知られているプロセスを用いることができる。
【0080】
RTMプロセスが比較的壊れやすい複合材製品を生み出すことが分かっている。これは、樹脂が複合材レイアップの平面に沿って長手方向に容易に移動できなければならないからである。したがって、樹脂がレイアップを通って容易に移動できるために、樹脂は「短鎖分子」タイプでなければならない。その結果としての製品は、比較的壊れやすくものとなり得る。
【0081】
比較すると、RFGプロセスは複合材レイアップ上に固体の樹脂ブロックを分散させるので、樹脂は、溶解するときに、複合材レイアップのうち樹脂ブロックに隣接する領域をすぐに濡らすだけでよい。樹脂は、したがって、比較的長い鎖の分子を有する「堅い」タイプとすることができる。RFGプロセスで製造された結果として得られる複合材製品は、RTMプロセスを用いて製造した製品よりも大きな構造強度を持つことができる。
【0082】
RFGプロセスは、改良された複合材製品を製造できるにもかかわらず、乾燥プリフォーム上に樹脂ブロックを手作業で分散させる必要があるために労働集約的である。
【0083】
したがって、本発明によるさらに他の態様によると、
少なくとも一つの剛体若しくは半剛体の型部分の型表面上に凝固した樹脂のレイヤを付加する段階と、
少なくとも一つの剛体若しくは半剛体の型部分内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置する段階と、
前記少なくとも一つの型部分を、前記複合材若しくは接合金属レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁の間に前記少なくとも1つの型部分が配置された状態で前記チャンバ壁が対向するように配置される段階と、
前記樹脂レイヤが液化し、液化した樹脂が前記複合材レイアップの内部に移動し、圧縮されて硬化若しくは成形されるように、各前記圧力チャンバを通して高められた圧力および温度の流体を循環させる段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0084】
樹脂の粘度は実質的に温度によって変化する。したがって、液化した状態にある加熱された樹脂は型表面上に吹付ることができる。この型表面は樹脂より低い温度とすることができる。型部分を冷却するための手段を設けることができる。このことは、樹脂が凝固して型表面上で層になることに帰結する。型部分の予備的な冷却を可能とする1の方法は、そこを通って流体が循環できる冷却流路若しくは空洞を型部分内に設けることである。型表面を必要な温度に維持するために、これらの冷却流路を型表面のすぐ下に設けることができる。他の用途においては、型は、冷却されている別個のブラダおよび型を保持しているキャリアの上にに設置することができる。
【0085】
この方法は、RFGプロセスによって製造されるものと同様の製品を提供する。しかしながら、本発明の方法はより労働集約的ではない。
【0086】
樹脂は、低い温度においてきわめて高い粘度を有するとともに、振動がないと止まって動かなくなり、容易に型に付着して厚いレイヤを構築し、沈み込まず若しくは型表面から落ちることがない高いチキソトロピー性を保つ。樹脂の物理的なふるまいは、その特性がワックス状である。乾燥ファイバ製の補強材、プリプレグ若しくは濡れたレイアップ材料は型内に配置される。型部分はそれから圧力セル内に配置される。所定位置に配置した後、急速に樹脂を溶解させるために圧力を負荷するとともに温度を上昇させると、樹脂の粘度が減少してファイバ補強材を濡らす。その後の樹脂によるウェットアウトの準備をするために複合材レイアップを最初に加熱する、型部分の連続した加熱もあり得る。樹脂は加熱された複合材レイアップを容易に濡らす。次いで、樹脂レイヤが液化して樹脂の移動が生じるように型部分に熱を与えることができる。樹脂レイヤと複合材レイアップとの間に、ケブラー製の覆い布のような移動制御手段を配置することが好ましい。この覆い布は、複合材レイアップを容易に濡らすように樹脂が十分に低い粘度となるまで、樹脂の移動を防止する。これは、樹脂の粘度が高すぎる場合に複合材レイアップ中にドライスポットが生じる可能性を最小にする。
【0087】
型部分はまた、樹脂を行き渡らせつつ液化するとともに混入しているあらゆる空気を取り除くために振動させることができる。このようにして、樹脂レイヤが液化し、乾燥ファイバ製の補強材内に押し込まれ、積層体から空気を追い出し、積層体が圧縮されて部品が硬化する。
【0088】
別々の供給配管は、それぞれスプレーヘッドに樹脂および触媒を供給することができる。樹脂および触媒はスプレーヘッドを通過する間に混合することができる。しかしながらまた、異なる樹脂をスプレーヘッドによって同時に若しくはそのいずれかを型表面上に吹付し、樹脂が反応して樹脂レイヤを成形することも考えられる。樹脂はまた、最終的な樹脂レイヤ内に樹脂の厚みが異なる領域を設けるために、型表面上に異なるスプレーパターンで吹付ることができる。このことは、異なる厚みを有する複合材レイアップの領域に適切な量の樹脂を供給できるようにする。このことはまた、正確に計量されて配置された樹脂により「プリパック」を適切に含浸させて硬化させることができるようにする。この吹付プロセスは、樹脂が型に衝突したとき若しくはすぐその後に樹脂を「凍結する」若しくは冷却する能力と結び付けられると、樹脂が溶解したときに樹脂をプリパック内に押し込み若しくは移動させることよってプリパックを正確にウェットアウトさせるための、型上への樹脂のきわめて正確な配置をもたらす。このことは、樹脂スプレートランスファ若しくはRSTと称される。これらのプリパックは、例えば取付用突起等のプレインストールされる部品を有するので、プリパックの異なる領域に異なる量の樹脂を供給する必要がある。
【0089】
樹脂の特性の重要な利点は、冷却された表面に樹脂が接触するとすぐに樹脂が凝固するので、レイアップが型内の所定位置に直ちに保持できるようにすることにある。このことは表面が傾いてる若しくは垂直なときに有利である。
【0090】
樹脂を吹付るために用いる装置は、圧力チャンバを通して流体を循環させるために用いるものと同じ流体循環システムから供給される流体によって、加熱し若しくは冷却することができる。このため、樹脂供給配管は、それを通って流体が循環する外側管路と、少なくとも全般的に同軸に外側管路内に配置される内側管路とを有する。樹脂は内側管路を介してスプレーヘッドに供給される。樹脂を液状に保つ必要があるときには、高められた温度の流体を外側管路を通して循環させることができる。この構成は、樹脂がそこを通って流れるときに、内側管路内の樹脂が均一に加熱されることを確実なものとする。高められた温度の流体はまた、スプレーヘッド周り、および樹脂配管に供給される前に凝固した樹脂が最初に加熱されて溶解するところである樹脂ホッパの周りに循環させることができる。このホッパは、流体がそこを循環する外側中空壁を有することができる。あるいは、そこを通って流体が循環する管をホッパ壁の周りで延びるようにすることもできる。
【0091】
樹脂スプレー装置を循環する流体の温度は、システム内における樹脂の硬化を回避するように調整することができる。樹脂のあらゆる硬化反応を止めるために、樹脂を吹付しないときに冷却流体を装置に通して循環させることができる。
【0092】
複合材レイアップに樹脂マトリックス接着媒体を塗布するための他の手段もまた考えられる。例えばこの材料は、パウダー、フィルム、ウェットアウトした布、若しくは複合材レイアップ上にあてられる熱可塑性シートの一部の形を取ることができる。
【0093】
本発明は、複合材部品の大量製造を容易にする、複合材部品の半連続的な製造を可能とする。
【0094】
したがって、本発明のさらに他の態様によると、
複数の型組立体の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを準備して配置する段階と、
各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する2つの分離された圧力チャンバ間に1つ若しくは複数の型組立体を配置するとともに、前記型組立体が前記圧力チャンバのチャンバ壁間に配置されるように、前記圧力チャンバを製造ステージにおいて一緒にする段階と、
前記製造ステージの間に、高められた温度および圧力の流体を各圧力チャンバを通して循環させ、それによって前記部品を圧縮して硬化若しくは成形する段階と、
前記型組立体を前記圧力チャンバ間から取り除く段階と、
各型組立体から完成した部品を分離する段階と、
前記型組立体を、その後に続く製造ステージのためのレイアップを収容しているさらに他の一つ若しくは複数の組立体に置き換える段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0095】
型組立体は少なくとも一つの型部分を有することができる。あるいは、型組立体は、前述したような流体流れチャンバを有する型部分を含むことができる。
【0096】
流体は、それぞれが異なる温度の流体を含んでいる多数の流体リザーバを具備した流体循環手段と、圧力チャンバおよび流体流れチャンバへの流体流れを必要に応じて制御するための流体供給手段とによって循環させることができる。各流体リザーバは、多数の圧力チャンバへの流体の供給を容易にする環状主ラインを有することができる。
【0097】
上述した方法は複合材若しくは接合金属部品を製造するための半連続的なプロセスを可能にする。型組立体を予め準備することができるからである。
【0098】
国際特許出願PCT/AU95/00593に記述されている製造システムを半連続的なプロセスのために改造することも考えられる。
【0099】
したがって、本発明の他の態様によると、
複合材若しくは接合金属レイアップを準備して、各々が弾性的に固定されるとともに底部圧力チャンバのチャンバ壁を形成する複数の型部分内に配置する段階と、
弾性的なチャンバ壁を有する分離された各頂部圧力チャンバの下方に、前記底部圧力チャンバを配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置される段階と、
前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部および底部チャンバを一緒にする段階と、
高められた温度および圧力の流体を製造ステージの間に前記頂部および底部チャンバを通して循環させ、それによって前記部品を圧縮して硬化若しくは成形する段階と、
底部圧力チャンバを、次の製造ステージのためのレイアップを収容している他の底部圧力チャンバに置き換える段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0100】
底部圧力チャンバは、1つの位置に配置できるとともに少なくとも全般的に垂直に動くことができる頂部圧力チャンバの下方にそれぞれ配置できるようにするために、少なくとも全般的に水平に動くことができるように取り付けられる。
【0101】
例えば、圧力チャンバは、車輪を支持することができるし、あるいは台車上に取り付けることもできる。
【0102】
流体供給配管は、上側圧力チャンバに固定することができる。流体供給配管は、各底部圧力チャンバに接続されるとともに、上側圧力チャンバの下方に動かされるときに各底部圧力チャンバから解放される。しかしながらまた、底部圧力チャンバを静止状態に保つとともに上側圧力チャンバを底部圧力チャンバの上方で移動可能とすることも考えられる。
【0103】
ある種の用途においては、前述したような単一の圧力チャンバを用いた製造システムを利用することも受け入れることができる。
【0104】
したがって、本発明のさらに他の態様によると、
複数の堅固に取り付けられた型部分の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを準備して配置し、弾性的なチャンバ壁を有している頂部圧力チャンバの下方に前記型部分を配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置され、前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部チャンバを前記型部分の上に降ろす段階と、
製造ステージの間に頂部圧力チャンバを通して高められた温度および圧力の流体を循環させ、それによって部品を圧縮して硬化させ若しくは成形する段階と、
前記型部分を、次の製造ステージのための前記レイアップを収容している他の型部分に置き換える段階と、
を含む、複合材若しくは接合金属部品を製造する方法が提供される。
【0105】
型部分の構造上の強度は、型部分の他の好ましい実施例において増加させることができる。この型部分は、型キャビティを与える内側型表皮と、型部分の反対側にある外側型表皮と、内外の型表皮間に延びている一連の補強フィンとを有する。内側型表皮は、寸法精度のために外側型表皮より厚くすることができる。補強材フィンは、型部分内に一連の箱構造を設けるように作用する。これは、補強材フィンが加熱若しくは冷却フィンとして作用し、型部分に対する熱伝達の効率を改善するからである。高められた温度の流体はまた、これらの箱構造を通して循環させることができる。外側型表皮には断熱材レイヤを設けることができる。
【0106】
補強された型部分は、典型的な単一壁の壁型部分よりも剛性が高いばかりでなく、より良好な熱伝達効率を有する。
【0107】
本発明による複合材若しくは接合金属製造システムの好ましい実施例を図解している添付の図面について本発明をさらに記述することが便利である。本発明の他の実施例が可能であり、したがって添付の図面の特殊性が本発明の普遍性に取って代わるものとして理解されてはならない。
【発明の実施の形態】
【0108】
本発明による複合材部品製造システムは別個の上下の圧力チャンバ1、2を有しているが、それらの一つが図2に示されている。各圧力チャンバは、弾性的に変形可能でありかつ容易に形状に追従するチャンバ壁5を支持しているメインハウジング3を有している。頂部圧力チャンバ1は、底部圧力チャンバ2の上方に、それらの弾性的に変形可能で容易に形に従うチャンバ壁が互いに対向するように配置することができる。型組立体7、9は、互いに対向しているチャンバ壁5の間に配置することができる。各型組立体は典型的に、例えば図3aおよび図3bに示したような上側型部分および下側型部分を有することができる。図3aは、上側型部分7aおよび下側型部分7bを有した、ボートの船体を製造するための型組立体7を示している。複合材レイアップは、上下の型部分7a、7b間に配置することができる。この複合材レイアップは典型的に、樹脂を含浸させた材料、乾燥繊維および補強材料を含むことができる。図3bは、上側型部分9aおよび下側型部分9bを有した、ボートの甲板成形品を製造するための型組立体9を示している。複合材レイアップは、上下の型部分9a、9b間にも配置することができる。
【0109】
頂部圧力チャンバ1を取り除くと、底部圧力チャンバ2の弾性的に変形可能なチャンバ壁5の上に型組立体を配置することができる。図4は、チャンバ壁5の表面の大部分を覆う単一の大きい甲板型組立体11を支持する底部圧力チャンバ2を示している。しかしながら、図5に示したように、底部チャンバ2のチャンバ壁5上に多くのより小さな型組立体13、15、17、19を配置することも可能である。
【0110】
底部圧力チャンバ2のブラダ若しくは変形可能な壁上に型部分を配置すると、図1に示したように、底部圧力チャンバ2の上に頂部圧力チャンバ1を載せることができる。次いで、水若しくは油のような流体を上下の圧力チャンバ1、2の内側空間6の両方に循環させる。この循環流体は、高められた温度および圧力で供給される。各圧力チャンバ内の流体は周囲の圧力よりも高められた圧力であるので、圧力チャンバの弾力的な壁は外側へと押しやられて隣接する型組立体7,9上で変形し、それらの間の複合材レイアップを圧縮することになる。流体の高められた温度は、複合材レイアップ内の樹脂マトリックス若しくは接合媒体の硬化/成形を行う。上下の圧力チャンバ1、2の内側空間6の両方の内部圧力は、釣り合った力を型組立体7、9上に与えるために、少なくとも実質的に同等とすることができる。このことは、型をより軽い構造とし、かつ圧力チャンバ1、2間の圧力が釣り合わない場合においても寸法精度を維持できるようにする。各圧力チャンバ1、2内の圧力を周期的に変化させ、またはピストン若しくは型組立体に取り付けた他の種類の振動供給源の使用により圧力チャンバ内の流体に振動若しくは圧力波を導入し、それによって型組立体7、9上に振動力を負荷することができる。このことは、複合材レイアップからの気泡の取り除きを助け、それによって最終的な複合材製品がむらのない均一なものになることを確実にするということが判明している。この振動はまた、RTM、RFG若しくはRSTを使用し、かつ型が傾斜し若しくは垂直であるときに積層体から空気の放出を強める。この振動は、気泡が積層体から放れて液体樹脂のカラムの頂部へと浮上する自然な傾向を強める。高められた圧力および温度で流体を循環させるとともに周期的に変化する圧力を与えるという構成は、本願の出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593内に詳述されているから、本願明細書においては説明しない。
【0111】
図6は、本発明による複合材部品製造システムを使用した半連続的な製造工程を示している。複合材若しくは接合金属部品の製造システムを設ける圧力チャンバ若しくはセルは、製造フローの位置Eに配置されている。このシステムは、型組立体をその中に支持するように示されている。複合材の製造を可能とするために流体が圧力チャンバを通って循環する硬化サイクル工程の間、他の型組立体は位置Dにおけるセル内への導入に備えて準備することができる。製造フローをより完全に説明すると、この工程は位置Aで始まり、型組立体はそれを支持するために移動架台内に保持され、必要ならば型組立体の全ての表面への効果的アクセスを可能にするためにそれを回転させる。ここで、型組立体は複数の型部分から成り、かつ型組立体には、最初にワックスが塗布されるとともに必要に応じて調製された型部分が準備されている。位置Bにおいては、塗布可能ならば型部分にゲルコートおよび樹脂を吹き付けることができる。位置Cにおいては、下側型部分には(プリプレグとして周知の)樹脂含浸材料、必要に応じて補強材発泡コアおよび乾燥繊維を含む複合材レイヤが装填される。位置Dにおいては、上側型部分、真空バッグ、あるいは蓋若しくは負荷を拡散するための別個の型が下側型部分上に配置され、または対向する圧力チャンバの弾力壁によって圧縮されるように型は開いたままとされる。最終的な型組立体は、位置Eにおいて圧力チャンバ間への配置の準備が完成している。用途に応じて樹脂配管を型部分の内側に挿入し、上側に若しくは外側表面上に配設し、樹脂マトリックス若しくは樹脂のような接合媒体を供給し、あるいは必要に応じて過剰な樹脂マトリックス若しくは接合媒体を排出できるようにする。位置Eにおける複合材の製造/硬化に続いて、型組立体は上下の圧力チャンバ間から取り除かれるとともに位置Fにおいてその保持架台に戻され、用途に応じて蓋、上型、真空バッグ、配管等が取り除かれるとともに、その用途において適用可能な使い捨ての成形材料、剥離層、ブリーダークロス等もまた取り除かれる。留意されるべきことは、この工程が正味の部分としてRTM、RFI若しくはRSTを用いて実施されるときに、この工程から生じるであろう使い捨ての材料を必要としないことを予見し得ることである。位置Gにおいては、追加的な補強材、ストロングバック、隔壁、および内装材を配置してボートに接合することができる。好ましくは、このために本願出願人の上述した国際特許出願(PCT/AU01/00224)に記載されているような接合および接続工程を使用する。さらに、未だ型組立体の内側にある甲板を、船体を型から取り除く前にこの船体に結合することができる。最後に、位置Hにおいて、完成した複合材部品は型から取り除かれる。一般的に、このことは、型を分割してボートを型から取り除くことを必要とする。型はそれから位置Aへと戻されて、成形品を硬化させる工程のために清浄化され、再結合され、かつ準備される。
【0112】
図7〜図11は、本発明による製造工程を使用した製造シーケンスをより詳細に示しているが、ここにおいては型表面上にRSTを使用して吹き付けた樹脂レイヤを有する型部分が用いられている。
【0113】
最初に図7を参照すると、型部分25は可動台車21によって支持されている。この型部分25の型表面26上には、最終的に複合材レイアップが配置される。複合材レイアップの配置に先だって、型表面26上に液化樹脂24を吹付るためにスプレーヘッド20を用いる。このスプレーヘッドは、別個の供給配管22、23によってそれぞれスプレーヘッド20に供給される樹脂と触媒との混合物を吹付る。混合された樹脂と触媒は、スプレーヘッドを離れて型表面26に接触すると合体する。型部分25、スプレーヘッドから出る樹脂の温度よりも低い温度に型表面を維持するのを助けるために、冷却流路、キャビティ27、若しくは台車上に据え付けられて型表面26の直下において型に接触する別個の冷却ブラダを有することができる。このことは、型表面26上の樹脂の凝固を助け、それによって樹脂レイヤを供給する。樹脂は、型表面26上の樹脂レイヤの厚みを変化させるために予め定められたパターンで型表面上に吹付ることができる。これは、複合材レイアップが繊維およびフォームの「プリパック」の形を取るときに有用である。そのようなプリパックは典型的に、最終製品内にその構成部品が配置される位置においてプリパック内に配置される、例えば取付け突起等の構成部品を有することができる。
【0114】
図8を参照すると、プリパック29が樹脂レイヤ上において型表面26上に配置された後に、真空フィルム30が型部分25の上に配置される。真空フィルム30の下から空気を排出できるように、この真空フィルム30は型部分25に対して密封される。このことは、プリパック内にある空気若しくは他のガスの量の最小化を助ける。次いで、準備された型部分25は図8に示したように台車21から持ち上げられて、下側圧力チャンバ2の弾性的に変形可能なチャンバ壁5上に配置される。圧力チャンバ2内に配置されているものは、底部圧力チャンバ2のメインハウジング3には物理的に接続されていない支持フレーム32である。支持フレーム32から延びているものは、チャンバ壁5を貫通して延びる複数の位置決めピン31である。これらのピン31は、チャンバ壁5上に型部分25をしっかりと位置決めするために、型部分25のフランジ28に沿って設けられている一連の開口と係合するようになっている。
【0115】
下側圧力チャンバ2が水平面に対してある角度で傾けられているので、支持フレーム32および位置決めピン31は、チャンバ壁5上の位置への型部分25の位置決めを助ける。
【0116】
ここで図10を参照すると、それらの間に位置決めされる型部分25と共に、頂部圧力チャンバ1が底部圧力チャンバ2上に位置決めされる。
【0117】
本発明による装置は、プリフォーム若しくは複合材レイアップを圧縮して硬化させるべく、前述したように働かせることができる。しかしながら、プリパック内への樹脂の均一な移動を確実なものとすることを助けるので、頂部および底部圧力チャンバ1,2を通って流れる流体の温度を変化させることが好ましい。プリパックが樹脂によって濡れるようにプリパックを準備するために、最初にプリパックに熱を与えることが好ましい。プリパックを暖めることは、それを貫通する樹脂の流れを促進する。これは、上側圧力チャンバ1にはより高い温度の流体を循環させつつ、より低い温度の流体が下側圧力チャンバ2内を循環するように維持する、本発明によって達成することができる。
【0118】
プリパック29が適切に加熱されると、型部分25したがってその上の樹脂レイヤを加熱するために、より暖かい流体が底部圧力チャンバ2を通過する。樹脂レイヤの加熱は、そのレイヤの液化およびその樹脂を介して隣接するプリパックの濡れに帰結する。プリパックが予熱されているので、このことはプリパック内への樹脂のより容易な移動に帰結する。樹脂が最初に型の底部において加熱されて液化し、プリパックの一方の側から他方の側への熱伝達効果をもたらしてプリパック内のあらゆる樹脂を完全に溶解させて液化させることも考えられる。また、樹脂が溶解してその粘度が減少するにつれて、それはプリパックを樹脂によって完全に充填する。前進する溶融ラインの前方にある空気および他のガスを樹脂カラムの頂部および型の頂部へと押しやるために、型内の最も低い位置においてこの工程を開始することが最も有利である。
【0119】
製造工程の間における連続した加熱は、空気を放出して圧力が釣り合っている樹脂カラムの頂部に上昇させるという積層体および樹脂カラム柱の自然な傾向を高める。これらの2つの自然現象は、プリパックの不適当な濡れにつながる樹脂の早すぎる液化の際に生じる、樹脂の沈み込み若しくは逃げの可能性を最小とする。また、圧力チャンバ間の型部分25へ挿入する前に、樹脂レイヤとプリパックとの間にケブラー製の覆いを設けることが有益である。この覆いは、プリパックから適切に外へとウェットアウトするのにふさわしい粘度となるまでそこを通る樹脂の移動を防止するように寸法決めされた、複数の開口を有している。樹脂の粘度が高すぎるとプリパック内におけるドライスポット、したがってプリパックの不適当な濡れに帰結する。ケブラー製の覆いの使用はしたがって、樹脂が容易にプリパックを濡らすように十分に低い粘度であることを確実なものとする。
【0120】
図11は、型組立体に樹脂をスプレーするために用いる樹脂吹付装置をより詳しく示している。
【0121】
吹付工程用の樹脂を溶解させるために樹脂ホッパ33が用いられている。樹脂34はブロック状として得られる。そのような樹脂は典型的に、その購入コストが相対的に低く、かつ長鎖タイプである。この種の樹脂はRTMにおいて使用する樹脂よりも堅い。さらに、液体樹脂に比較すると固体樹脂製品は長い貯蔵寿命を有する。樹脂ポンプ35は、液化された樹脂を樹脂供給配管22およびスプレーヘッド20に供給するためにホッパ33の下流に配置されている。
【0122】
ホッパ33には中空壁36が設けられており、圧力チャンバに流体を供給するために用いている流体循環システムからの流体がそこを通って循環する。代わりに管37をホッパ33の周りに延ばし、この管37を通して流体を循環させることもできる。
【0123】
樹脂供給配管22は、外側管路22aと、この外側管路22aの内側に配置されて少なくとも略同軸な内側管路22bとを有している。樹脂は内側管路22bを通って流れ、流体が外側管路22aを通って循環する。外側管路22aもまたスプレーヘッド20の周りに延びている。したがって、この装置による樹脂の吹き付けが必要なときに、高められた温度の流体は、樹脂供給配管22の外側管路22aに接続されている供給配管38およびホッパ33の中空壁36若しくは流体チューブ37を介して供給され、かつ流体ドレン管路39を介して戻される。この流体循環構造は、樹脂の供給経路に沿った均一な加熱を提供するとともに、電気的な加熱を用いた場合に生じ得るいかなるホットスポットをも排除する。スプレーヘッド20は、そこから樹脂の噴出24を放出するために、スプレーハンドルおよびトリガーコントロール20aによって作動させることができる。
【0124】
樹脂のスプレーが必要でないときには、その内部に保持されている樹脂の硬化を防止するために、装置内にはより低い温度の流体を循環させる。
【0125】
スプレーヘッド20は、異なる幅の樹脂のスプレーをもたらすために電子制御可能な放出開口を有している。このことは、スプレーヘッド20が型上を横切るときに、スプレーヘッド20からのより幅の狭い若しくはより幅の広い樹脂スプレーの噴出を可能にする。
【0126】
上述したように、本発明は型組立体が傾斜し若しくは垂直に取り付けられるようにする「バランス密度効果」を利用している。このことは、本発明によるシステムが、従来の製造プロセスを使用するときよりもはるかに大きなサイズの垂直な型組立体においてパネルを製造できるようにする。この効果は図12および図13を参照して説明される。
【0127】
図12は、柔軟なダイヤフラム5aによって分離された樹脂を含んでいる空間6aと空気を含んでいる空間6bとの間の境界面を示している。ダイヤフラム6bは垂直状態に保たれているが、樹脂含有空間6aが次第に満たされるにつれて空気含有空間6b内へと膨張することを強いられ、その膨張は底部近傍において最大である。これは、樹脂6cのカラムの重量に起因する壁5aに対する圧力が、深くなるほど次第に増加するからである。その理由は、空気の密度が樹脂のそれよりも小さいからである。ダイヤフラム5aに負荷される空気の圧力が樹脂カラム6cによって負荷される圧力を補うには不十分であり、結果としてダイヤフラム5aが変形することになる。
【0128】
図13は、樹脂含有空間6a、例えばレイアップを含んでいる型キャビティと、流体含有空間6b、例えば圧力チャンバとの間の境界を示している。2つの空間を分離している柔軟なダイヤフラム5aは、例えば圧力チャンバの弾性的に変形可能なチャンバ壁によってもたらされる。典型的に流体が油であることから、流体の密度は樹脂のそれに近い。したがって、樹脂カラムおよび流体カラムの両方によってダイヤフラムに負荷される圧力は、その内部の深さが増すに連れて増加するが、ダイヤフラム5aは膨張しない。これは、樹脂および流体カラムからダイヤフラム5aに負荷されるそれぞれの圧力が釣り合うからである。したがって、本発明による圧力チャンバ内の流体の循環は、チャンバ壁の変形を最小としつつ型組立体を傾け若しくは垂直に保持できるようにする、この釣り合いの取れた圧力の効果を利用することができる。
【0129】
図14および図15は、本発明によるシステムの他の好ましい実施例の詳細を示している。前述した実施例に対応する参照符号は、明快さのために、これらの図およびその後に続く図に用いられる。
【0130】
図14は、型キャビティ53を有した型部分51を備える型組立体50を示しているが、この型キャビティ53内には複合材若しくは接合金属レイアップ55が支持されている。この型組立体50は、2つの比較的深いチャネル部分57を有している。図1に示した構造とは異なり、単一の型部分51だけが設けられている。レイアップ55には、前述しかつ図8に示したような真空フィルムを使用することによって初期圧縮を加えることもできる。
【0131】
深いチャネル部分57および型部分51の断面に見られるそれぞれの90度の角度は、圧力チャンバ1のチャンバ壁5が型組立体50の全ての領域に接触することを困難にしている。この結果、熱および圧力が均一に負荷されないことによって、レイアップ55の圧縮および硬化は潜在的に満足がいくものより少ないものとなる。
【0132】
したがって、型組立体50は、弾性的に変形可能な材料から形成されるブラダ59をさらに備え、このブラダ59は型部分51に固着されて流体流れチャンバ61を提供する、る。支持膜63が底部の型表面52をブラダ59に接続している。このブラダは、高められた温度および圧力の流体が流体流れチャンバを通って循環できるようにするための手段(図示せず)を有している。このことは、したがって、循環する流体が底部の型部分表面52に直接接触できるようにして、型部分51およびレイアップ55に対する効率的かつ均一な熱伝達を確実なものとする。
【0133】
また、流体流れチャンバが固い表面を有した剛体若しくは半剛体のハウジング若しくはプレートによって設けられるとともに、これらのハウジング若しくはプレートをその周縁に沿って型部分51に弾性的に取り付けることも考えられる。支持膜は、流体流れチャンバを通る流体の流れの案内を助けるために、ハウジング若しくはプレートおよび型部分表面52に接続することができる。
【0134】
ここで図15を参照すると、複合材若しくは接合金属部品の製造工程の間に、型組立体50は頂部および底部圧力チャンバ1、2のチャンバ壁5の間に収容される。圧力チャンバ間に配置されるときに、更なる頂部流体流れチャンバ65を型組立体50の上に配設することができる。この頂部流体の流れチャンバ65は、弾性的に変形可能な材料から成形されたブラダの形を取っている。頂部流体流れチャンバ65の下側表面67は全般的に、型組立体50の形状に追従するように構成されている。この頂部流体流れチャンバ65はまた、高められた温度および圧力の流体がそこを通るように循環させるための手段(図示せず)を有する。
【0135】
この構成は、型組立体50およびレイアップ55の表面全体にわたって圧力および温度が比較的に均一に分布することを確実なものとする。
【0136】
前述した実施例におけるこの構成の利点は、圧力チャンバ1、2を加圧する機能と、型組立体の流体流れチャンバ61および頂部流体流れチャンバ65における温度調節機能との間で、その目的が分かれることである。流体流れチャンバ61,65の比較的小さな容積は、製造プロセスのための温度変化を達成しつつレイアップ55への熱伝達を最大にするために必要な流体のより少ない容積へと結びつく。圧力チャンバ1、2の機能はレイアップ55を圧縮するための圧力を負荷することである。したがって、圧力チャンバ1、2内の温度は一定な温度に維持することができる。
【0137】
図15に示した製造システムの実施例は、そのように構成された底部表面67を有する頂部流体流れチャンバ65を用いている。しかしながら、これに代えて、少なくとも全般的に型組立体50の全体的な形状にならうように、頂部圧力チャンバ1のチャンバ壁5を構成することも考えられる。
【0138】
図16〜図19は、下側圧力チャンバ2のチャンバ壁5上に型組立体70を位置決めするための他の位置決め手段を示している。この位置決め手段は、型組立体を堅固な状態に保つために、チャンバ壁5上の所定位置に型組立体70を保持する作用をなす。
【0139】
図16に示した実施例においては、型組立体70に、チャンバ壁5上に配設された対応孔73に係合する多くの突起71が設けられている。
【0140】
図17は、頂部および底部圧力チャンバ1、2間に配置されたレイアップ72をその内部に支持している型組立体70を示している。型組立体70の突起71は、底部圧力チャンバ2上に支持されている孔73に係合している。高められた温度および圧力の流体が頂部圧力チャンバ1を通って循環すると、頂部圧力チャンバ1のチャンバ壁5は型組立体70内に変形する。底部圧力チャンバ2のチャンバ壁5もまた、そこを通って循環する流体によって型組立体70の底部において同様に変形する。
【0141】
図18は、底部圧力チャンバ2のチャンバ壁5を通って延びる位置決めピン77を有した堅固なフレーム75を示している。したがって、この構成は図9および図10に示したものと似ているが、堅固なフレーム75は底部流体チャンバのハウジング3内に収納されてはいるもののそこには接続されていない。
【0142】
位置決めピン77は、型組立体70の周縁に沿って配設されている対応孔と係合することができる。図18に示した堅固なフレーム75が比較的薄い輪郭を有しているので、底部流体チャンバ2の容積は、その内部に堅固なフレームを収容するために特別に大きくする必要がない。
【0143】
図19に示した構成においては、底部流体チャンバ2内に支持されている堅固なフレーム75の寸法がかなり大きいものであるため、この堅固なフレーム75を底部圧力チャンバ2内に収容するためにより大きな空間を必要とする。通常のオートクレーブ複合材製造法に使用する型組立体は典型的に、図19に示したタイプの大きく堅固なフレームを用いる。
【0144】
きわめて大きな体積の流体を底部流体チャンバ2内で循環させることは有利ではない。過剰な流体は製造工程のために供給されず、この過剰な流体は不必要であるからである。したがって、堅固なフレーム75の上端部近傍に位置決めされる分離プレート79と、底部圧力チャンバのハウジング3から延びて堅固なフレーム75の周縁表面に係合するシール81とを設けることが好ましい。分離プレート79およびシール81は、そこを通って流体が循環するように仕向けられるより限られた流体流れ通路80を画成し、流体がシール81および分離プレート79上を流れるようにして、任意の時点において底部圧力チャンバ2を通って循環するために必要な流体の体積を最小とする。スペーサプレート83は、分離プレート79の正しい位置決めを助けるとともに流体流れ通路80を通過する流れのある程度の制御をもたらすために、画成された流路内に設けることができる。
【0145】
分離プレート79は、プレート間に配設されるとともに各プレートの周縁に沿って延びる周縁弾力シールと共に、一対のプレートから構成することができる。プレートは、その周縁を越えて延びて堅固なフレーム75内の収容スペースに係合するシールを圧縮するために、例えばナットおよびボルトによって一体に圧着することができる。
【0146】
底部圧力チャンバ2の残りの空間は、その内部に保持する必要のある流体の容積を減少させるために、岩石若しくはレンガのような材料で満たすことができる。
【0147】
前述したすべての構成において、型組立体は頂部および底部圧力チャンバ1、2のチャンバ壁5の間で浮いた状態に保持される。
【0148】
本発明によるシステムの他の好ましい実施例においては、図20、図21aおよび図21bに示したように、堅固に支持された型組立体70に対して頂部および底部チャンバ1、2が浮いた状態に支持される一方で、型組立体17は静止した状態に保持されている。型組立体70自体は、支持フレーム85上に堅固に取り付けられる。この支持フレーム85は、ボルト87によって床に固定することができる。型組立体70は、支持フレーム85から底部圧力チャンバ2のチャンバ壁5を貫通して延びる支持ピン77を介して、支持フレーム85上に支持されている。
【0149】
底部圧力チャンバ2は、周縁フランジ88を有している。底部圧力チャンバ2は、静止している型組立体70に対して移動できるように、それらの間に配設されるコイルスプリングのような弾力手段91により、そのフランジ88に沿って支柱89上に支持される。頂部圧力チャンバ1は、型組立体70上に載置されるとともに型組立体70に対して動くことができる。
【0150】
堅固なフレーム85は、底部圧力チャンバ2内に収容される部分を有している。このため、支持フレーム85は、底部圧力チャンバのハウジング3を貫通して延びる一連のフレーム部材86と、図18aおよび図18bに最も良く示されているように各フレーム部材86の周りに配設されたシール93とを有している。各フレーム部材86は、支持フレーム85の上部97が底部圧力チャンバ2内に取り付けられるとともにそれを介して支持フレーム85の残りの部分に接続されるようにする、フランジ接続95を有している。
【0151】
図21aおよび図21bは、各支持フレーム部材86の周りに配設されたシールをより詳細に示している。このシール93は環状のゴムリング95を有している。環状リング95の内側周縁は、フレーム部材86に固定されたフランジ97と第2の浮動フランジ99との間に捕らえられている。固定フランジ97および浮動フランジ99は、環状密封リング95の内側周縁を保持するために、ボルトによって一体に締め付けられている。その密封リング95の外周はハウジング壁3と環状外リング100との間に固定されている。
【0152】
図20、図21aおよび図21bに示した製造システムが作動する間、高められた温度および圧力の流体は頂部および底部圧力チャンバ1,2を通って循環する。型組立体70が堅固な状態に保たれているので、頂部および底部圧力チャンバ1、2は、各圧力チャンバ内の圧力の変化に伴って動き、それによって型組立体70およびその上に配置されたレイアップ72に対する全体的な圧力を釣り合わせる。したがって、このシステムから得られる製品は、前述した実施例と同一の温度分布および圧力を受けるので、同一でないとしても前述した製造システムを用いて製造した部品と似た物理的な特徴を有する。
【0153】
図22は、型組立体70を堅固に支持する堅固な支持フレーム85を有した、図17の実施例に類似した本発明の好ましい実施例を示している。しかしながら、本実施例においては頂部圧力チャンバ1だけが設けられている。本発明の製造システムの好ましい実施例においては、それぞれ流体が高められた温度および圧力で製造システム内を循環する。図19に示したシステムにおいても同様に、頂部圧力チャンバ1内で流体が循環するようになっている。圧力チャンバ1上に支持される振動装置により、圧力チャンバ内を循環する流体を振動させることができる。流体圧のこの周期的な変化は、レイアップからあらゆる気泡を取り除くように作用する。
【0154】
図22に示した流体循環システムは、3つの流体リザーバ105,107,109を有している。各流体リザーバはそれぞれ加圧され、同一で共通な圧力を分け合うようになっている。第1の流体リザーバ105が比較的高い温度の流体を供給するのに対して、最後の流体リザーバ109ははるかに低い温度の流体を供給する。中間の流体リザーバ107は、第1および最後の流体リザーバ105,109の流体温度の中間にある温度の流体を供給する。一連の供給および戻り配管が各流体リザーバから延びており、頂部圧力チャンバ1に供給されかつそこから戻る流体は弁(図示せず)およびポンプ111によって制御される。弁は、流体供給配管113を通って頂部圧力チャンバ1に流れる流体の温度を制御する。流体戻り配管115は、流体を各流体リザーバへと戻す。流体供給システムは、製造サイクルの特定位置において求められる流体の温度に応じて、異なるリザーバを頂部圧力チャンバ1に接続する作用を行う。このシステムは、本願出願人による国際出願PCT/AU95/00593により詳細に記載されている。
【0155】
第1の循環手段は、本発明の製造システムを作動させる際の熱損失が極めて少ないという重要な利点をもたらす。複合材の製造に用いる従来の単一ブラダシステムは、ある温度範囲の流体の循環を必要とする。このブラダ内の流体は、最初に加熱されて後に冷却されなければならない。したがって、この工程において熱が失われる。比較すると、図22に示した単一圧力チャンバシステムにおいては、流体循環システムの各流体リザーバ内の流体が予め設定された一定の温度に維持される。圧力チャンバ内にある温度の流体を循環させる必要があるときには、適切な温度の流体を含んでいる流体リザーバを圧力チャンバに接続する。流体温度の変化を必要とするときには、異なる流体リザーバを接続する。流体が圧力チャンバを通って循環するだけであり、部品を加熱するため必要なエネルギーが消費されて流体が冷却されないから、各流体リザーバに含まれている流体からの熱損失は最小となる。その結果、図22に示すような製造システムを運転する際の熱損失が最小となる。
【0156】
このようにして制御された温度で流体を貯蔵することは、型およびこの型の内部の部品を加熱し冷却するために適用し得る大量な熱を貯蔵することと同じである。冷たい状態と熱い状態との間を行き来するのではなく、流体が取り換えられる、すなわち貯蔵タンクに戻されるので、克服されるべきものは型および部品の熱慣性だけである。これは、一般的に、等価な質量の水の熱エネルギーの1/10〜1/3である。この方法は、その温度を低い状態と高い状態との間で行き来させることによって克服するためにHTF流体の高い熱慣性必要とするときには得られない、早いサイクルタイムに帰結する。このように熱伝達流体を別々に貯蔵する方法は、現在のブラダ硬化システムよりもはるかに速くてより効率的な部品硬化手段に帰結する。
【0157】
頂部圧力チャンバ1は、型組立体70上に浮いた状態に保たれている。この構造は、前述した実施例の利点の多くをもたらすとともに、寸法の正確さが重要でない部品にも用いることができる。
【0158】
ここで図23および図24を参照すると、数多くの異なる型組立体に連続して樹脂を供給できるようにした構造が示されている。図23は、レイアップ72を支持するとともに2つの圧力チャンバ1,2のチャンバ壁5間に配置された、そのような型組立体70を示している。型組立体70および圧力チャンバ1,2のすべてが傾斜した状態で取り付けられている。真空バッグ30がレイアップ72の上に配置され、かつ樹脂供給ライン94が第1の樹脂容器92から延びている。空気の圧力が、樹脂供給ライン94を介して樹脂をレイアップ72が占めている空間内に押し込む。圧力チャンバ1、2が流体を含んでいるので、深さの増加と共に増加する流体の圧力が型組立体の傾斜の頂部への樹脂の押し込みを助ける。その物理的な効果は、レイアップ72を通って上方に動く樹脂の波である。樹脂がそこからオーバーフローするように充分な樹脂が型組立体70に供給される。このオーバフローは、第2の樹脂容器92へと樹脂を送る樹脂ドレーン配管98によって集められる。真空配管96は、樹脂の引き上げを助けるために樹脂容器を真空に保つ。
【0159】
第2の樹脂容器92内の樹脂は、図24に示したように他の型組立体70に供給することができる。このプロセスは数多くの型組立体において連続的に続けることができる。
【0160】
図25〜図28は、製造される部品に接合する必要のある要素部品を位置決めして支持するための多くの異なる構造を示している。そのような要素部品には補強リブ、取付点、縦通材等が含まれる。
【0161】
最初に図25を参照すると、その上に複合材若しくは接合金属レイアップ72が支持される型部分121が示されている。完成部品に結合されるべき一連の平行な補強リブ123がレイアップ72の上に配置されている。真空フィルム30がレイアップ72およびリブ123上に敷設され、レイアップに初期圧縮を与えるとともにリブ123の所定位置への保持を助けるために真空が負荷される。リブ123を位置決めして支持するために、レイアップ72、リブ123および真空フィルム30上に一連のストラップ125を敷設することもできる。各ストラップ125は、リブ123の直立部分に係合可能な「U字形」に成形された一連の曲がり部分127を有している。これらのストラップ125はリブ123を所定位置に保持するが、弾性的に変形可能なチャンバ壁が係合して組立体の全体に圧力を負荷する。
【0162】
他の構造が図26に示されているが、この構造は圧力チャンバハウジング133内に支持可能なブラダバッグ131を備えている。このブラダ131は、ハウジング内で膨らまされると圧力チャンバハウジング133に対してチャンバ壁132を提供する。ブラダ131は一連の溝135を有している。チャンバ壁132がレイアップ72、補強リブ123および真空フィルム30を支持している型部分121上に降下すると、これらの溝135はリブ123の直立部分を収納するための空間をもたらす。この構造は圧縮、硬化若しくは接合ステージの間に、レイアップおよびリブ123に対するチャンバ壁135の改良された接触を提供する。
【0163】
図26に示した構造は単一のブラダ131を用いる。しかしながら、ハウジング133が同時に複数のブラダを収納することもまた考えられる。そのような構造は、単一のブラダの使用が実際的でない非常に大きな部品の製造を可能とする。
【0164】
図27に示したさらに他の構造の実施例には、リブ123を支持しているレイアップ72に追従するように成形された、弾性的に変形可能な材料でできている比較的狭い断面の流体流れブラダ137が示されている。圧力チャンバのチャンバ壁139はまた、流体流れブラダ137の全般的な形状に追従するように構成することができる。製造ステージの間、流体が流体流れブラダ137を通って循環する。
【0165】
図28は、圧力チャンバ133のチャンバ壁141を利用する構造の他の実施例を示している。チャンバ壁が弾性的に変形可能な材料から成形されているので、その設定形状を保持するための支持を必要とすることができる。これにより、内部支持フレーム145を圧力チャンバ133に設けることができるが、この支持フレーム145はそのように設定された支持部分147を有している。圧力チャンバ133内の圧力を解放すると、チャンバ壁141は支持フレーム145の支持部分147から後退し、それによってチャンバをその適切な一般状態に保持することができる。
【0166】
本願の出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593には、複合材若しくは接合金属製造システムが記載されている。この製造システムはまた、図29に示したような半連続的な製造のために改造することができる。このシステムは、弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する頂部圧力チャンバ151と、弾性的に取り付けられた型部分155を支持している底部チャンバ153とを用いている。製造ステージの間、両方の圧力チャンバ151、153内に高められた温度および圧力の流体を循環させることができる。この流体は、図22に示したシステムにおいて記述したものと同様の流体循環システムによって供給することができる。
【0167】
この製造システムは、それらの移動を容易にするためにそれぞれ台車157上に支持される複数の底部圧力チャンバ153を設けることによって、半連続製造用に改造される。単一の頂部圧力チャンバ151は上下動するように取り付けられる。したがって、底部圧力チャンバ153の数多くの型部分155を複合材若しくは接合金属レイアップ159を収容するために準備することができるが、他の準備された底部圧力チャンバは頂部圧力チャンバ151の下に位置する。それゆえに、製造ステージのために型部分を準備するのに必要な時間に起因して製造プロセスが遅延することはない。
【0168】
図30は図29の半連続製造システムの変形例を示しているが、その主要な相違点は図22に示した製造システムを用いることにある。このシステムは頂部圧力チャンバ151のみを必要とするとともに、台車157が堅固に取り付けられた型部分を支持している。
【0169】
上述した製造システムの大量製造のための改造においては、単一の製造システム159をそれぞれ支持する一連のステーションを用いることができる。これらのステーションのそれぞれへの循環流体の供給を可能にするために、本願出願人の国際特許出願PCT/AU95/00593に記載されている流体循環システムに環状主ライン161を設けることができる。各流体リザーバ105,107,109には、別個の環状主ライン161を設けることができる。各ステーションに配置された製造システム163に循環流体を供給するために、各ステーションに流体供給システム163が設けられる。どの時点においても任意の流体リザーバから過剰に流体を取り出すことがないように、各ステーションにおける製造タイミングをずらすことができる。各流体リザーバ内の流体が特定の一定な温度に保たれるので、適切な流体リザーバに接続することによって必要な温度の流体を即座に供給することができる。本発明による流体循環システムを用いると必要な温度の流体をいつでも利用できるから、流体を加熱する必要はない。このことはまた、いつでも硬化サイクルを開始することができるという製造および硬化時期の柔軟性に結びつく。すなわち、その開始および終了を型が待たなければならない、固定された硬化サイクル時間がないからである。
【0170】
図32は、2つの圧力チャンバ壁5間に位置する補強された型部分180を示している。この型部分180は、型キャビティをもたらしている内側型表皮181と、型部分180の反対側にある外側型表皮182とを有している。内側型表皮181の厚みは、寸法精度をもたらすために外側型表皮182よりも大きい。
【0171】
型表皮間で延びているものは一連の補強フィン183である。これらの補強フィン183は、型部分180内に箱構造を画成する。その結果として得られる型部分は、従来の単一壁の型部分よりも剛性がありかつ軽量である。さらに流体は、型部分180に対して高い熱伝達効率をもたらしている型部分180の箱構造を通って、均衡のとれた圧力若しくは僅かに高い圧力で圧力チャンバへと循環することができる。これはまた、補強フィン183が加熱および冷却フィンとして作用するからである。外側の型表皮182には、熱損失を減らすために外側断熱材絶縁を設けることができる。
【0172】
したがって、本発明の方法およびシステムは、複合材および金属部品の半連続的な製造プロセスを可能にする。本発明による製造システムの主要な効果は、製造施設の空間のより良い利用を提供するということにある。例えばオートクレーブを用いるときには、オートクレーブを使用する前に型を輸送して保持するための空間を必要とする。本発明の製造システムには、そのような保持空間は必要ない。
【0173】
当業者にとって明らかであると考えられる修正および変更は、添付の請求の範囲に記載の本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明による複合材若しくは接合金属部品の製造システムを示す側面断面図。
【図2】図1のシステムの圧力チャンバのうちの1つの側面断面図。
【図3】それぞれボートの船体および甲板の成形品を製造するために協動する型部分を示す側面断面図。
【図4】大きなデッキ型組立体を支持している図1のシステムの圧力チャンバの上面図。
【図5】複数の型組立体を支持している図1のシステムの圧力チャンバを示す図。
【図6】本発明によるシステムを用いた半連続的な製造プロセスを示す模式図。
【図7】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図8】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図9】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図10】型表面上に樹脂レイヤを有した型部分を用いた本発明による製造プロセスをより詳細に示す模式的な断面図。
【図11】図7〜図10の製造プロセスのための樹脂吹付装置を示す模式図。
【図12】バランス密度効果の原理を示す図。
【図13】バランス密度効果の原理を示す図。
【図14】本発明による流体流れチャンバを有した型組立体を模式的に示す断面図。
【図15】本発明による圧力チャンバ間に配置された図14の型組立体を模式的に示す図。
【図16】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図17】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図18】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図19】チャンバ壁上に型組立体を位置決めするための代わりの手段を模式的に示す図。
【図20】本発明による製造システムの他の実施例を模式的に示す図。
【図21】本発明による製造システムの他の実施例を模式的に示す図。
【図22】本発明の製造システムの更なる実施例を模式的に示す図。
【図23】本発明によるシステムのための樹脂供給構造を模式的に示す図。
【図24】本発明によるシステムのための樹脂供給構造を模式的に示す図。
【図25】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図26】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図27】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図28】要素部品をレイアップ上に位置決めする構造の変形例を模式的に示す図。
【図29】本発明による半連続的な製造システムを模式的に示す図。
【図30】本発明による半連続的な製造システムを模式的に示す図。
【図31】本発明による半連続的な製造システムを模式的に示す図。
【図32】内部フィンを有する型部分の概略断面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合接合金属部品を製造するシステムのための型組立体であって、
反対側に位置する複数の表面を有する型部分を備え、
前記型部分の表面のうちの1つが型キャビティを提供しており、
前記型組立体は、前記型部分の表面に隣接して設けられた流体流れチャンバを更に備えており、この流体流れチャンバを通って循環する流体が対向する型部分の表面のかなりの部分と直接接触するようになっており、前記流体流れチャンバは、前記型部分に固定されるとともに前記対向する型部分の表面の少なくともかなりの部分をカバーするブラダを含んでいることを特徴とする型組立体。
【請求項2】
前記対向する型部分の表面と前記ブラダとを相互に接続する少なくとも一つの支持膜をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の型組立体。
【請求項3】
前記流れ制御チャンバ内において前記対向する型部分の表面から延びる少なくとも一つの熱伝達フィンをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の型組立体。
【請求項4】
複合材若しくは接合金属部品を製造する方法であって、
型キャビティと対向する表面を有する型部分を含む型組立体の前記型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置し、流体流れチャンバが前記対向する型部分の表面と隣接して配置される段階と、
前記型部分を、前記レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁が互いに互いに対向するとともに前記チャンバ壁の間に前記レイアップが配置される段階と、
前記複合材若しくは接合金属レイアップが圧縮されて硬化若しくは成形されるように、高められた温度および圧力の流体を各圧力チャンバおよび流体流れチャンバを通して循環させる段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記流体流れチャンバを通る流体の温度を周期的に変化させつつ、前記圧力チャンバ内を通る流体の温度を一定に維持する段階を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記型キャビティ上に頂部流体流れチャンバを配置する段階と、高められた温度および圧力の流体を前記頂部流体チャンバを通して循環させる段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記頂部流体流れチャンバ内の流体温度を周期的に変化させる段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムであって、
型キャビティを提供する堅固に固定された型部分を有する少なくとも一つの型組立体と、
弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する圧力チャンバと、
高められた温度の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、を備え、 このシステムを用いるときに、前記チャンバ壁が前記少なくとも一つの型組立体上に配置されるように前記圧力チャンバが前記少なくとも一つの前記型組立体上に配置され、前記型キャビティが前記レイアップを収容しており、前記レイアップが圧縮され硬化若しく成形されるように高められた温度の流体が圧力チャンバに通して循環する、システム。
【請求項9】
前記圧力チャンバは、前記型組立体に対して相対的にフローティングされて支持されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記圧力チャンバ内の圧力を周期的に変化させるための手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
複合材若しくは接合金属部品を製造する方法であって、
複合材若しくは接合金属レイアップを準備して、各々が弾性的に固定されるとともに底部圧力チャンバのチャンバ壁を形成する複数の型部分内に配置する段階と、
弾性的なチャンバ壁を有する分離された頂部圧力チャンバの下方に、前記底部圧力チャンバをそれぞれ配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置される段階と、
前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部および底部チャンバを一緒にする段階と、
高められた温度および圧力の流体を製造ステージの間に前記頂部および底部チャンバを通して循環させ、それによって前記部品を圧縮して硬化若しくは成形する段階と、
底部圧力チャンバを、次の製造ステージのためのレイアップを収容している他の底部圧力チャンバに置き換える段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
複合材若しくは接合金属部品を製造する方法であって、
複数の堅固に取り付けられた型部分の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを準備して配置し、弾性的なチャンバ壁を有している頂部圧力チャンバの下方に前記型部分を配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置され、前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部チャンバを前記型部分の上に降ろす段階と、
製造ステージの間に頂部圧力チャンバを通して高められた温度および圧力の流体を循環させ、それによって部品を圧縮して硬化させ若しくは成形する段階と、
前記型部分を、次の製造ステージのための前記レイアップを収容している他の型部分に置き換える段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
複合材若しくは接合金属部品を製造するシステムのための樹脂スプレー装置であって、 樹脂を溶解させるための樹脂ホッパと、
溶解した前記樹脂を吹き付けるためのスプレーヘッドと、
前記スプレーヘッドに溶解した樹脂を供給するための樹脂供給配管と、
溶解した前記樹脂の温度を制御する温度制御手段と、
を備え、
少なくとも前記樹脂供給配管は、そこを通して制御された温度の流体を循環させることによって加熱または冷却され、これにより前記樹脂の温度が吹き付け前に制御されることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記樹脂供給配管は、そこを通って流体が循環する外側管路と、そこを通って樹脂が流れる内側管路とを備えることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項1】
複合接合金属部品を製造するシステムのための型組立体であって、
反対側に位置する複数の表面を有する型部分を備え、
前記型部分の表面のうちの1つが型キャビティを提供しており、
前記型組立体は、前記型部分の表面に隣接して設けられた流体流れチャンバを更に備えており、この流体流れチャンバを通って循環する流体が対向する型部分の表面のかなりの部分と直接接触するようになっており、前記流体流れチャンバは、前記型部分に固定されるとともに前記対向する型部分の表面の少なくともかなりの部分をカバーするブラダを含んでいることを特徴とする型組立体。
【請求項2】
前記対向する型部分の表面と前記ブラダとを相互に接続する少なくとも一つの支持膜をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の型組立体。
【請求項3】
前記流れ制御チャンバ内において前記対向する型部分の表面から延びる少なくとも一つの熱伝達フィンをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の型組立体。
【請求項4】
複合材若しくは接合金属部品を製造する方法であって、
型キャビティと対向する表面を有する型部分を含む型組立体の前記型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを配置し、流体流れチャンバが前記対向する型部分の表面と隣接して配置される段階と、
前記型部分を、前記レイアップと共に、各々が弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する第1および第2の圧力チャンバ間に配置し、前記チャンバ壁が互いに互いに対向するとともに前記チャンバ壁の間に前記レイアップが配置される段階と、
前記複合材若しくは接合金属レイアップが圧縮されて硬化若しくは成形されるように、高められた温度および圧力の流体を各圧力チャンバおよび流体流れチャンバを通して循環させる段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記流体流れチャンバを通る流体の温度を周期的に変化させつつ、前記圧力チャンバ内を通る流体の温度を一定に維持する段階を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記型キャビティ上に頂部流体流れチャンバを配置する段階と、高められた温度および圧力の流体を前記頂部流体チャンバを通して循環させる段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記頂部流体流れチャンバ内の流体温度を周期的に変化させる段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複合材若しくは接合金属部品を製造するためのシステムであって、
型キャビティを提供する堅固に固定された型部分を有する少なくとも一つの型組立体と、
弾性的に変形可能なチャンバ壁を有する圧力チャンバと、
高められた温度の流体を前記圧力チャンバを通して循環させるための手段と、を備え、 このシステムを用いるときに、前記チャンバ壁が前記少なくとも一つの型組立体上に配置されるように前記圧力チャンバが前記少なくとも一つの前記型組立体上に配置され、前記型キャビティが前記レイアップを収容しており、前記レイアップが圧縮され硬化若しく成形されるように高められた温度の流体が圧力チャンバに通して循環する、システム。
【請求項9】
前記圧力チャンバは、前記型組立体に対して相対的にフローティングされて支持されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記圧力チャンバ内の圧力を周期的に変化させるための手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
複合材若しくは接合金属部品を製造する方法であって、
複合材若しくは接合金属レイアップを準備して、各々が弾性的に固定されるとともに底部圧力チャンバのチャンバ壁を形成する複数の型部分内に配置する段階と、
弾性的なチャンバ壁を有する分離された頂部圧力チャンバの下方に、前記底部圧力チャンバをそれぞれ配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置される段階と、
前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部および底部チャンバを一緒にする段階と、
高められた温度および圧力の流体を製造ステージの間に前記頂部および底部チャンバを通して循環させ、それによって前記部品を圧縮して硬化若しくは成形する段階と、
底部圧力チャンバを、次の製造ステージのためのレイアップを収容している他の底部圧力チャンバに置き換える段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
複合材若しくは接合金属部品を製造する方法であって、
複数の堅固に取り付けられた型部分の型キャビティ内に複合材若しくは接合金属レイアップを準備して配置し、弾性的なチャンバ壁を有している頂部圧力チャンバの下方に前記型部分を配置し、前記チャンバ壁が前記型キャビティの上方に配置され、前記頂部チャンバのチャンバ壁が前記型部分の上方に配置されるように、製造ステージにおいて前記頂部チャンバを前記型部分の上に降ろす段階と、
製造ステージの間に頂部圧力チャンバを通して高められた温度および圧力の流体を循環させ、それによって部品を圧縮して硬化させ若しくは成形する段階と、
前記型部分を、次の製造ステージのための前記レイアップを収容している他の型部分に置き換える段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
複合材若しくは接合金属部品を製造するシステムのための樹脂スプレー装置であって、 樹脂を溶解させるための樹脂ホッパと、
溶解した前記樹脂を吹き付けるためのスプレーヘッドと、
前記スプレーヘッドに溶解した樹脂を供給するための樹脂供給配管と、
溶解した前記樹脂の温度を制御する温度制御手段と、
を備え、
少なくとも前記樹脂供給配管は、そこを通して制御された温度の流体を循環させることによって加熱または冷却され、これにより前記樹脂の温度が吹き付け前に制御されることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記樹脂供給配管は、そこを通って流体が循環する外側管路と、そこを通って樹脂が流れる内側管路とを備えることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2008−179150(P2008−179150A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36414(P2008−36414)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【分割の表示】特願2002−559233(P2002−559233)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(502321032)クイックステップ、テクノロジーズ、プロプライエタリ、リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】QUICKSTEP TECHNOLOGIES PTY,LTD.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【分割の表示】特願2002−559233(P2002−559233)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(502321032)クイックステップ、テクノロジーズ、プロプライエタリ、リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】QUICKSTEP TECHNOLOGIES PTY,LTD.
【Fターム(参考)】
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