説明

複合活性炭の製造方法

【課題】短時間で細孔内にシリカゲルを添着できると共に、ミクロ孔内にもシリカゲルを添着できる複合活性炭の製造方法を提供する。
【解決手段】シリカゲル原料となるケイ酸のアルカリ金属塩水溶液1に活性炭2を浸漬して、シリカゲル原料を活性炭2の細孔内に含浸させる含浸工程と、含浸工程後の活性炭2へ酸を添加するゾル化工程と、ゾル化工程後に固液分離して、活性炭2を加熱熟成するゲル化工程と、を有する、細孔内にシリカゲルが添着された複合活性炭の製造方法であって、含浸工程は、活性炭2を正極11側に浸漬して水溶液1に電場を印加しながら行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔内にシリカゲルが添着された複合活性炭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、その多孔質構造により吸脱着特性を有するため、種々の物質を吸脱着する吸着材として広い分野で使用されている。吸着現象には大きく分けて物理吸着と化学吸着があるが、活性炭ではファン・デル・ワールズ力により生じる可逆的な物理吸着が主となる。この可逆的な物理吸着により、細孔内に吸着した吸着物質を脱着(パージ)できる。ところで、活性炭の内部には種々のサイズの細孔が形成されている。具体的には、細孔直径2nm以下のミクロ孔、細孔直径2〜50nmのメソ孔、細孔直径50nm以上のマクロ孔が混在している。これらの細孔は基本的に各細孔が互いに連続した連続孔となっており、活性炭の内部から表面に向けて細孔直径が大きくなる傾向にある。すなわち活性炭の細孔は模式的に木に例えることができ、木の太い幹に相当するのマクロ孔と、幹から出ている枝に相当するメソ孔と、枝からさらに細かく分かれている多数の小枝に相当するミクロ孔とを有する。
【0003】
ミクロ孔は強力な吸着力を有しており、比較的分子サイズの小さい物質の吸着サイトになる。メソ孔は、比較的分子サイズの大きな高分子物質の吸着や薬剤等の担持(添着)に利用される。また、活性炭表面に吸着した吸着物のミクロ孔への移動に関与するため、動的吸着特性や吸着速度にも影響する。このように、活性炭に対する吸着物の吸着容量は、ミクロ孔及びメソ孔の容積や分布に大きく影響を受ける。一方、マクロ孔は主として吸着物やイオンが活性炭内部のミクロ孔などに吸着するための通路として機能し、吸着物質にもよるが、吸着容量には直接関与しないことが多い。しかも、マクロ孔容積が大きいと、活性炭の密度も低くなり、硬さも低下する。そのため、吸着材における高い吸脱着特性を確保するには、吸着対象の分子サイズに応じた適切な細孔直径の細孔を多く有する活性炭を使用することが求められる。
【0004】
例えば、ガソリンが揮発した蒸発燃料を吸着する場合、蒸発燃料の90%以上を占めるブタン、ペンタン、ヘキサンなどの低分子炭化水素に対する有効細孔直径は、BJH解析法で2〜4nm程度であることが知られている。したがって、蒸発燃料を吸脱着するための吸着材として使用する場合は、活性炭の細孔のうち、低分子炭化水素の内部への移動を鑑みても細孔直径10nm以上の細孔領域は、蒸発燃料の吸着量に関して無駄な領域であり、しかも密度や硬さ低下の原因となる。
【0005】
しかし、単に各種原料を賦活処理するだけでは細孔直径の制御は困難であり、均一な細孔直径を有する活性炭を得ることはほぼ不可能である。また、比表面積の増大を中心とする改良が検討されているが、比表面積の増大に伴う吸着材の密度減少が容積基準の吸着性能増大を拒むために高性能化には直結していない。そこで、活性炭の細孔内にシリカゲルを添着することで細孔の狭小化を図った複合活性炭として、特許文献1がある。当該特許文献1では、活性炭をケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)水溶液などに浸漬して、活性炭の細孔内にシリカゲルを添着している。具体的には、シリカゲル原料となるケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に活性炭を浸漬して、シリカゲル原料を活性炭の細孔内に含浸させる含浸工程と、含浸工程後の活性炭へ酸を添加し、シリカゲル原料をゾル化するゾル化工程と、ゾル化工程後に固液分離して活性炭を加熱熟成し、シリカゾルをゲル化するゲル化工程とを経て複合活性炭を製造している。なお、粒内拡散機構による活性炭の吸脱着速度について検討した文献として、非特許文献1がある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−289690号公報
【非特許文献1】化学工学論文集、第10巻、第4号、1984、渡辺藤雄ら、P461〜468、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、大きな細孔直径を有する細孔の狭小化と、それ自体も吸脱着機能を有するシリカゲルの添着との相乗効果によって、水に対する吸脱着特性を効果的に向上している。しかし、特許文献1では、活性炭をケイ酸ナトリウム水溶液に浸漬してシリカゲルを活性炭の細孔内に添着させているが、この場合、シリカゲル原料となるケイ酸ナトリウムは、拡散により活性炭の細孔内へ浸入していく。当該拡散浸入は浸入速度が遅いので、細孔深く(奥方)にまで確実に浸入させるには長時間を要する問題がある。例えば非特許文献1には、粒径9mmの活性炭にジシアンジアミドを含浸吸着させる場合、粒子表面近傍の細孔内には比較的短時間でジシアンジアミドを吸着させられるが、20時間活性炭を浸漬しても、粒子中心部には殆どジシアンジアミドが吸着されておらず、48時間後でも粒子中心部には平衡吸着量の18%程度しかジシアンジアミドが吸着されていないという結果が開示されている(図4等参照)。
【0008】
一方、ミクロ孔は吸着特性が高いが、吸着物質に対する有効細孔直径より小さな細孔直径領域が多過ぎると、脱着特性の面で問題が懸念される。すなわち、吸着物質に対する有効細孔直径より小さな細孔直径領域に吸着された吸着物質は、高い吸着力によりパージされ難くなる。そこで、ミクロ孔にもシリカゲルを添着して、吸着物質に対する有効細孔直径より小さな細孔直径領域を埋めることが好ましい。しかし、ケイ酸ナトリウムは水溶液中でコロイド状になりやすいので、特許文献1ではミクロ孔にシリカゲルを添着し難く、吸着物質によっては有効細孔直径より小さな細孔直径領域が残存してしまう。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、短時間で細孔内にシリカゲルを添着できると共に、ミクロ孔内にもシリカゲルを添着できる複合活性炭の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シリカゲル原料となるケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に活性炭を浸漬して、シリカゲル原料を活性炭の細孔内に含浸させる含浸工程と、前記含浸工程後の活性炭へ酸を添加するゾル化工程と、前記ゾル化工程後に固液分離して、前記活性炭を加熱熟成するゲル化工程と、を有する、細孔内にシリカゲルが添着された複合活性炭の製造方法であって、前記含浸工程は、活性炭を正極側に浸漬して水溶液に電場を印加しながら行うことを特徴とする。ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に電場を印加すると、ケイ酸のアルカリ金属塩は電気分解されてケイ酸イオンとアルカリ金属イオンとに分離し、シリカゲル原料となるケイ酸イオンは正極側へ、アルカリ金属イオンは負極側へ移動する。これにより、正極側へ浸漬された活性炭周囲のケイ酸イオン濃度が増加するので、活性炭の細孔内へシリカゲル原料が効率良く含浸され、含浸時間を短縮できる。また、ケイ酸ナトリウムがコロイド状となることなく、ケイ酸がイオン状態となっているので、ミクロ孔内にもシリカゲル原料を含浸させることができる。
【0011】
活性炭は、必ずしも正極と接触していなくてもよいが、活性炭を正極に接する状態で浸漬するか、活性炭自体を正極とすることが好ましい。活性炭は導電性なので、活性炭にも通電される状態となっていれば、ケイ酸イオンは活性炭に引き寄せられ、より短時間でより細孔の奥方までシリカゲル原料を含浸させることができる。
【0012】
また、含浸工程で使用する貯留容器の負極側に、当該貯留容器外からケイ酸のアルカリ金属塩水溶液を導入する導入管と、貯留容器内の水溶液を貯留容器外へ排出する排出管とを対向状に設け、含浸工程では、負極側に導入管から排出管へ至る水流を形成しておくことが好ましい。負極側に貯留容器の内外へ通じる水流が形成されていれば、電気分解によって生じたアルカリ金属イオンが貯留容器外へ排出される。これにより、水溶液中のケイ酸イオン純度が高まり、細孔内へシリカゲルの生成に関係のないものが含浸されることを避け、効率良くシリカゲルを添着できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、短時間で細孔内にシリカゲルを添着できると共に、ミクロ孔内にもシリカゲルを添着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
活性炭は、各種原料を賦活処理して得られた炭化物多孔質体である。活性炭の原料としては特に限定されず、公知の動植物系原料や合成樹脂系原料を使用できる。動植物系の原料としては、例えば松などの木質、竹、椰子殻、胡桃殻などの植物質、石炭質、獣骨や血液など動物質などがある。合成樹脂系の原料としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のいずれも適用できるが、とくに薬品賦活での活性炭収率が大きいポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、又はポリイミドが好ましい。
【0015】
賦活処理としては、各種ガスを使用した物理的作用により多孔質化する高温炭化法や、化学薬品を使用する化学法がある。高温炭化法で使用する賦活ガスとしては、水蒸気、二酸化炭素、空気などがある。賦活薬品としては、代表的には水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、塩化亜鉛(ZnCl)等が挙げられ、その他にもリン酸などのアルカリ金属塩や、アルカリ金属の水酸化物も使用できる。
【0016】
活性炭の形態は特に限定されないが、粉砕された粒子状が好ましい。活性炭を粒子状とする場合は、粒径0.01〜3.0mm程度が好ましい。この範囲であれば、シリカゲル原料を細孔内に容易に浸入させられると共に、根本的な吸脱着特性も良好になる。平均粒子径としては、0.05〜2.0mm程度である。
【0017】
(製造方法)
活性炭の細孔内にシリカゲルを添着する本発明では、基本的には、シリカゲル原料となるケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に活性炭を浸漬して、シリカゲル原料を活性炭の細孔内に含浸させる含浸工程と、含浸工程後の活性炭へ酸を添加するゾル化工程と、ゾル化工程後に固液分離して活性炭を加熱熟成するゲル化工程とを有する、公知の液相法を採用しているが、含浸工程において水溶液に電場を印加している点に特徴を有する。図1に、本発明に係る複合活性炭の製造方法のフローを示し、図2に、含浸工程の概念図を示す。
【0018】
まず、含浸工程に先だって、賦活処理された活性炭を真空脱気する。加熱条件下で真空脱気することで、活性炭に吸着されている水分等が脱離除去されると共に、後工程においてシリカゲル原料が活性炭の細孔内に侵入し易くなる。加熱条件としては、350〜400K程度とすればよい。脱気時間は、2時間以上が好ましい。
【0019】
(含浸工程)
活性炭から余分な吸着物を脱離できたら、次いで、冷却してから活性炭の細孔内にシリカゲル原料を含浸させる。シリカゲル原料の含浸は、図2に示すように、ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液1に、活性炭2を浸漬することで行える。ケイ酸のアルカリ金属塩としては、代表的にはケイ酸ナトリウム(Na2nSiO3)が使用される。ここで、ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液1を貯留する貯留容器10内の左右両端には、図2に示されるように、正極11と負極12とが対向状に立設されている。正極11側には、活性炭収容空間13が設けられており、当該活性炭収容空間13内に活性炭2を充填する。活性炭収容空間13は、多数の貫通孔14を有する枠壁15によって区画される。枠壁15は、貯留容器10に一体形成されていてもよいし、貯留容器10とは別体の収容容器を貯留容器10内へ配してもよい。収容容器を使用する場合は、当該収容容器の周壁が枠壁15となる。収容容器は、メッシュ体により形成することもできる。
【0020】
活性炭2は、正極10の近傍に浸漬されていれば必ずしも正極10と接触していなくてもよいが、正極10に接触する状態で浸漬することが好ましい。例えば、枠壁15として収容容器を使用する場合、当該収容容器外近傍に正極10を配しても良いが、収容容器内に正極10を配すことが好ましい。枠壁15を貯留容器10に一体成形する場合は、一枚壁とする。また、貯留容器10の負極側には、貯留容器10外からケイ酸のアルカリ金属塩水溶液を導入する導入管16と、貯留容器10内の水溶液1を貯留容器10外へ排出する排出管17とが、負極12と平行となるよう上下対向状に設けられている。なお、導入管16と排出管17とは、どちらが上になってもよい。
【0021】
活性炭2をケイ酸のアルカリ金属塩水溶液1に浸漬できたら、導入管16と排出管17との間で負極12と平行な水流を発生させながら、正極11及び負極12間に電場を印加する。すると、ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液1が電気分解されて、ケイ酸イオンとアルカリ金属イオンとに分離する。例えば、ケイ酸ナトリウム(Na2OSiO2)水溶液に電場を印加すると、ケイ酸イオン((SiO32-)とナトリウムイオン(Na+)に分離する。そして、ケイ酸イオンは正極11側へ引き寄せられ、アルカリ金属塩イオンは負極12側へ引き寄せられる。このとき、活性炭2が正極11と接する状態で浸漬されていれば、当該正極11にも通電されるので、ケイ酸イオンは正極11にも引き寄せられる。各電極11・12及び活性炭2での反応は、次の通りである。
正極・活性炭:2OH-+SiO32- → H2O+SiO2+O2+4e-
負極:2H2O+2e− → H2+2OH-
【0022】
このように、水溶液1に電場を印加することで、シリカゲル原料となるケイ酸イオンが正極11側に引き寄せられることで、活性炭2付近のシリカゲル原料濃度が上昇し、効率良く細孔内へシリカゲル原料が含浸され、含浸時間を短縮できる。しかも、活性炭2が正極11に接していれば、シリカゲル原料が活性炭2に直接引き寄せられるので、拡散浸入の場合と比べて飛躍的に含浸時間を短縮できる。そのうえ、シリカゲル原料はイオン状態になっているので、活性炭2のミクロ孔内にもシリカゲル原料を含浸させることができる(図3参照)。同時に、負極12側に貯留容器10の外から内部を通る水流があるので、シリカゲル原料として不要なアルカリ金属イオンを貯留容器10外へ排出でき、より効率良くシリカゲル原料を活性炭2の細孔内へ含浸させられる。
【0023】
ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液の濃度は特に限定されないが、0.01wt%以上とすればよい。ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液の濃度が低すぎると、含浸時間を長くする必要があり、電場を印加した意義が薄れる。または、最終的にシリカゲルの添着量が少なすぎて、細孔の狭小化を的確に行えなくなる。ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液の濃度の上限は、20wt%程度とすればよい。これ以上濃度が高くても、含浸時間の短縮効果はあまり上がらないからである。
【0024】
電場の強さは、0.01〜1.0VA程度が好ましい。電場の強さが0.01VAより低いと、ケイ酸のアルカリ金属塩のイオン化が不充分となる。また、ケイ酸イオンの電気泳動が弱まり、効率良く活性炭の細孔内へシリカゲル原料を導入させ難くなる。電場の強さが1.0VAより高いと操作が困難になる。また、含浸時間は10〜48h程度とする。これより短いと、含浸量が少なすぎる。これより長いと十分に含浸できるが、従来の拡散浸入と含浸時間が同程度になるからである。例えば、活性炭の比表面積(m2/g)に対する複合活性炭の充填密度(g/l)の割合(充填密度/比表面積)が0.14〜0.18となるように、0.3g/ccの割合で活性炭の細孔内にシリカゲルを添着する場合、電場の強さ0.1〜0.5VA程度、含浸時間10〜20h程度とすればよい。
【0025】
(定着工程)
活性炭へシリカゲル原料を充分に含浸させたら、次いで、固液分離した活性炭を乾燥することで、シリカゲル原料を活性炭の細孔内に定着させる。固液分離方法としては、一般的な濾過のほか、フィルタープレスや遠心分離などでもよい。乾燥は、加熱状態で行う。常温では、細孔内の水分除去、及びシリカゲル原料の定着が困難だからである。加熱温度は、加熱時間の長短を気にしなければ特に限定されないが、330K以上が好ましく、より好ましくは350K以上である。加熱温度を高くすれば加熱時間を短縮できる。例えば、350〜400K程度の温度で乾燥する場合、乾燥時間は24時間以上が好ましい。一方、加熱温度が高すぎると、シリカゲル原料が変性する恐れがあるので、その上限は500K程度とする。
【0026】
(ゾル化&洗浄工程)
シリカゲル原料含浸後の活性炭を充分に乾燥できたところで、酸性条件下で活性炭を洗浄する。酸性条件下で洗浄することで、同時にシリカゲル原料がゾル化する。具体的には、シリカゲル原料を含浸させた活性炭を硫酸水溶液に導入する。ゾル化&洗浄の条件としては、pH3〜6において水溶液の電気伝導度が420〜600μS/cm程度になるまで繰り返せばよい。なお、効率的なゾル化&洗浄を行うため、水溶液を撹拌しておくことが好ましい。また、硫酸水溶液のpHによって、シリカゲルの細孔容積や表面積を制御できる。具体的には、pHを比較的高く(例えばpH5〜6程度)すればA型シリカゲルとなり、pHを低く(例えばpH3〜4程度)とすれば、B型シリカゲルとなる。中でも、B型シリカゲルとすることが好ましい。B型シリカゲルは、吸着物質の濃度が高濃度になるにつれて多量の蒸発燃料を吸着する特性を有し、A型シリカゲルと比べて吸着物質の濃度に応じた吸脱着特性が高いからである。
【0027】
(ゲル化工程)
ゾル化工程後、再度含浸工程後と同じように固液分離および乾燥する。次いで、ゾル化工程にて生成した硫酸ナトリウムを洗浄除去した後、加熱熟成することで、図3に示すように、細孔22〜24内にシリカゲル21が添着された複合活性炭20が得られる。詳しくは、複合活性炭20のマクロ孔22及びメソ孔23は、シリカゲル21によって狭小化されている。一方メソ孔24は、シリカゲル21によって閉塞されている。
【0028】
このようにして得られた複合活性炭は、そのまま、若しくは必要に応じてバインダー樹脂と混練した周知の造粒方法によってペレット状等の所定形状に造粒してから、種々の吸着材として使用できる。例えば、自動車のキャニスタに充填することで、蒸発燃料の吸着材として好適に使用される。
【0029】
(変形例)
上記実施例では、活性炭2とは別に正極11を配したが、これに限らず活性炭自体を正極とすることもできる。例えば、粒子状の活性炭を所定形状に造粒したものや、所定形状の活性炭に直接導線を繋げればよい。所定形状の又は所定形状に造粒した活性炭を正極とする場合は、枠壁15は不要である。または、収容容器に収容した活性炭に、直接導線を繋げてもよい。
【0030】
また、上記実施例では、電極11・12及び水流を縦方向に設けたが、これに限らず、図4に示すように、電極11・12及び水流を横方向に設けることもできる。具体的には、貯留容器10の底部に正極11を配し、貯留容器10の上部に負極12を配し、導入管16及び排出管17を左右対向状に設ける。この場合、比重が大きくケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に沈む活性炭であれば、活性炭は貯留容器10内に沈むので、枠壁15を廃すことができる。比重が小さくケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に浮く活性炭であれば、蓋状の枠壁15で押さえておく。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】シリカゲル添着手順のフロー図である。
【図2】含浸工程の概念図である。
【図3】複合活性炭の要部拡大断面図である。
【図4】含浸工程で使用する装置の変形例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ケイ酸のアルカリ金属水溶液
2 活性炭
10 貯留容器
11 正極
12 負極
13 活性炭収容空間
14 貫通孔
15 枠壁
16 導入管
17 排出管
20 複合活性炭
21 シリカゲル
22 マクロ孔
23 メソ孔
24 ミクロ孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカゲル原料となるケイ酸のアルカリ金属塩水溶液に活性炭を浸漬して、シリカゲル原料を活性炭の細孔内に含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後の活性炭へ酸を添加するゾル化工程と、
前記ゾル化工程後に固液分離して、前記活性炭を加熱熟成するゲル化工程と、
を有する、細孔内にシリカゲルが添着された複合活性炭の製造方法であって、
前記含浸工程は、活性炭を正極側に浸漬して水溶液に電場を印加しながら行うことを特徴とする、複合活性炭の製造方法。
【請求項2】
前記活性炭が正極に接する状態で浸漬されている、請求項1に記載の複合活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記活性炭自体が正極とされている、請求項1に記載の複合活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記含浸工程で使用する貯留容器の負極側には、貯留容器外からケイ酸のアルカリ金属塩水溶液を導入する導入管と、貯留容器内の水溶液を貯留容器外へ排出する排出管とが、対向状に設けられており、
前記含浸工程では、負極側に前記導入管から排出管へ至る水流を形成している、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の複合活性炭の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−138047(P2010−138047A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318151(P2008−318151)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(304000836)学校法人 名古屋電気学園 (22)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】