説明

複合濾材およびそれをプリーツしてなるフィルター

【課題】ガス除去粒子を挟み込んだ濾材においてプリーツ加工しても破れがなく高い捕集効率を有する複合濾材、および該濾材をプリーツ加工したエアフィルターユニットを提供する。
【解決手段】エレクトレットメルトブロー不織布シートを含む少なくとも2層の基材層間にガス除去粒子を挟み込んでなる複合濾材であり、概エレクトレットメルトブロー不織布シートの2%伸張時強力のタテ方向またはヨコ方向の大きい方の値が0.03〜0.4MPaであることを特徴とする複合濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に空気清浄機用フィルターとして好適に用いられる、集塵および脱臭の両方の性能を兼ね備えた複合濾材およびエアフィルターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭や居室内において用いられる空気清浄機エアフィルターには、花粉などの固体粒子を捕集する集塵フィルターと、アンモニア、アルデヒド類などのガス状粒子を吸着や科学反応作用により分解する脱臭フィルターがセットで搭載されることが一般的である。その構成として、集塵不織布と粉末活性炭層を重ねてをプリーツ加工した集塵部と、ハニカムコアに粒状の活性炭を充填した脱臭部とを重ねて、その周囲に枠材を接合させることにより、集塵および脱臭フィルターを一体化させたものが提案されている。(特許文献1)しかしながらこのフィルターは厚みが大きくなりやすく、小型化が求められる空気清浄機への搭載には好ましくない。
【0003】
一方、通気性基材とエレクトレットフィルターの間に脱臭材を挟み込んだ濾材をプリーツ化して集塵脱臭フィルターを得る方法が提案されている。(特許文献2)しかしながらこのフィルターはプリーツ加工にてプリーツ頂上の不織布が脱臭材により破れてしまう現象が起こり、特に捕集性能の高い濾材においては破れが多く発生し捕集性能が低下するため使用できない欠点があった。
【0004】
また、粒状活性炭によるプリーツ頂上の不織布の破れを改善する方法として引張強伸度の最大値が特定の値以上の不織布を使用する方法が提案されているが(特許文献3)、このような不織布では十分な捕集効率を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−114333号公報
【特許文献2】特開2000−279505号公報
【特許文献3】特開2002−19616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消し、ガス除去粒子を挟み込んだ濾材においてプリーツ加工しても破れがなく高い捕集効率を有する複合濾材、および該濾材をプリーツ加工したエアフィルターユニットを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の(1)〜(7)のいずれかの手段を採用する。
【0008】
(1)2層の基材層間にガス除去粒子を挟み込んでなる複合濾材であって、少なくとも1層の基材層がエレクトレットメルトブロー不織布シートであり、前記エレクトレットメルトブロー不織布シートの2%伸張時応力のタテ方向またはヨコ方向の大きい方の値が0.03〜0.40MPaであることを特徴とする複合濾材。
【0009】
(2)上記のエレクトレットメルトブロー不織布シートの平均繊維径が1.5〜4.0μm、目付が10〜40μmであることを特徴とする複合濾材。
【0010】
(3)(上記のガス除去粒子が、平均粒子径が150〜260μmの活性炭であることを特徴とする複合濾材。
【0011】
(4)上記の複合濾材の厚みの平均値が0.6〜0.8mmであり、かつ厚みのバラツキが3%以内であることを特徴とする複合濾材。
【0012】
(5)上記いずれかに記載の複合濾材を用いたことを特徴とするエアフィルターユニット。
【0013】
(6)上記いずれかに記載の複合濾材をプリーツ加工し、その周囲を枠体で画設したことを特徴とする空気清浄機用エアフィルターユニット。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複合濾材によれば、プリーツ加工してもエレクトレット不織布シートの破れが発生しないため、高い微細塵の捕集性能を有し、かつガス除去粒子による脱臭効果も有する薄型のフィルターユニットが得られる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、前期課題、すなわちガス除去粒子を挟み込んだ複合濾材において、プリーツ加工時の不織布シートの破れを防止し高い捕集効率を有するフィルターユニットを得る方法ついて鋭意検討した結果、到達したものである。以下、本発明について詳細に検討する。
【0016】
まず、本発明におけるエレクトレットメルトブロー不織布シートとは、濾材として用いられるメルトブロー不織布シートの表面および内部に電荷を付与したもの、いわゆるエレクトレット加工を施したものをいい、電荷を付与する方法としてはメルトブロー不織布シートにコロナ放電法、純水サクション法、摩擦帯電法といった公知の方法から任意に選択することができる。
【0017】
本発明の最大のポイントは、エレクトレットメルトブロー不織布シートとして2%伸張時応力のタテ方向またはヨコ方向の大きい方の値が0.03〜0.4MPaであるものを用いることにある。即ちプリーツ加工にて、プリーツ頂上部の不織布シートに生じる引張力に対し、不織布を構成する繊維が追従するよう適度に伸長することができるものを用いる。このようなエレクトレットメルトブロー不織布シートを得る具体的な方法としては、公知の方法によって得られたメルトブロー不織布シートの長さ方向もしくは巾方向、およびその両方に対し複数組のニップローラーを使用し、その回転の表面速度差から不織布を一段あるいは多段で延伸する方法が挙げられる。該エレクトレットメルトブロー不織布シートはその伸長により繊維密度が高い接合部が外れ、密な繊維組織が開放され適度な伸長を有することができる。
【0018】
2%伸長時応力が高すぎると、プリーツ加工によってプリーツ頂上部の不織布シートに高い張力が発生し、接触するガス除去粒子によって不織布シートの繊維が破断し破れを生じさせるため好ましくない。
逆に2%伸長時応力が低すぎる場合は、プリーツ加工による不織布シートの伸びによって繊維密度が著しく小さくなりポアサイズが拡大し穴が開いたのと同様の状態となり、捕集効率の低下を引き起こすため好ましくない。
【0019】
また、高い捕集効率を有しかつガス除去粒子による破れを防止するためのエレクトレット不織布シートの平均繊維径は1.2〜4.5μmが好ましく、より好ましくは1.5〜4.0μmである。平均繊維径が4.5μmを超えると、不織布のポアサイズが大きくなり捕集効率が低下するため好ましくなく、逆に繊維径が1.2μm未満であると、繊維1本あたりの破断強度が著しく低くプリーツ加工時の破れが発生しやすくなるため好ましくない。
【0020】
上記と繊維径と同じ目的においてエレクトレット不織布シートの目付は10〜50g/m2が好ましく、より好ましくは15〜40μmである。目付が高すぎると複合濾材の厚みが増しフィルター圧損を上げる傾向にある。逆に低いと、捕集効率の低下が起こる傾向がある。
【0021】
本発明における複合濾材に用いるエレクトレット不織布シート以外の基材としては、特に限定されるものではなく、不織布、織物、ニットなど任意に選択できるが、通気性が高くかつプリーツ形状の保持性に優れる不織布を用いることが好ましい。その素材としては合成樹脂、合成繊維、天然繊維、無機繊維、金属繊維などを用いることできる。また、エレクトレット不織布を含む基材と他の基材との間にガス除去粒子を挟み込むことが好ましいが、複合濾材に対する要求性能によっては、更に他の基材層を積層してもよい。
【0022】
本発明の複合濾材におけるガス除去粒子とは、例えばアンモニアやアルデヒド類といったガス成分を吸着、反応などにより除去する性質を有する粒子状物質であり、その種類としては活性炭、多孔質シリカ、ゼオライト、セピオライトなどが挙げられる。中でも活性炭は細孔容積が大きく、幅広い径の細孔を有しているため、様々なガスの除去が可能でありより好ましい。
【0023】
本発明に用いるガス除去粒子の平均粒子径は100〜300μmが好ましく、より好ましくは150〜260μmである。平均粒子径が300μmを超えると濾材の厚みが増し、プリーツ加工後の隣接する山同士の間隔すなわち通風面積が狭くなり、圧力損失の上昇を引き起こすため好ましくない。逆に平均粒子径が100μm未満であると、基材の開孔部より流出する可能性が高くなるため好ましくない。なおここで言う平均粒子径とは、粒子をふるい分け法によって測定した粒径分布において、その蓄積質量が半分となる粒径を意味する。
【0024】
本発明に用いるガス吸着粒子の使用量としては、ガス吸着性能の効率および耐久性の面から40〜120g/m2が好ましい。使用量が40g/m2未満であると、吸着性能の耐久性が低く、フィルター寿命が短いものになってしまうため好ましくない。逆に使用量が120g/m2を超えると、複合濾材が著しく厚くなり、フィルターに収納できる濾材料が少なくなってしまうため好ましくない。
【0025】
本発明におけるガス除去粒子は、除去対象とするガス成分との反応性を高める目的で薬剤を添着したものであってもよい。その場合の薬剤としては特に限定されるものではないが、例えば酸化反応を発生させアンモニアなどのアルカリ系のガスの除去を行うリン酸、塩酸や、アルカリ反応を発生させ酢酸など酸系ガスの除去を行う水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルデヒド類との反応を発生させる第1級から第3級アミン化合物であるアジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドなどのヒドラジド化合物や、p−アミノベンゼンスルホン酸、エチレン尿素縮合体薬剤などが挙げられる。薬剤の添着量としては、ガス除去粒子の重量に対して3〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である
本発明の複合濾材においてガス除去粒子が挟み込まれた状態としては、基材表面に対しポリエチレンやポリオレフィン系の熱融着の接着パウダーなどの接着剤を介しての接着、基材の一部を熱によって溶融させたものに粒子を接着させたものなど任意に選択できる。この際、エレクトレット不織布シートと異なる側の基材にガス除去粒子を接着させ、後からエレクトレット不織布シートを貼り合せて挟み込む方法が好ましい。
【0026】
本発明における複合濾材は、厚みの平均値が0.45〜0.9mmであることが好ましく、より好ましくは0.6〜0.8mmである。更に厚みのバラツキが5%以内であることが好ましく、より好ましくは3%以内である。厚みが大きすぎると、プリーツ加工によるフィルターユニット加工後の通風間隔が狭くなり、望まれない圧力損失の上昇を引き起こす傾向がある。逆に厚みが小さすぎると、ガス吸着粒子の挟み込み量が十分でなく短寿命となってしまう傾向がある。ため好ましくない。
【0027】
本発明における複合濾材は、たとえば、プリーツ加工やコルゲート加工を施す、あるいは枠体に収納(すなわち画設)することにより、エアフィルターユニットとして使用することができる。得られるエアフィルターユニットは、上記した複合濾材と同様の効果を奏する。そのため、かかる複合濾材はプリーツ加工し周囲を枠体にて接合することにより、各種空気清浄機において好ましく利用される。なお、本発明における空気清浄機とは、主に一般住宅やホテルなどの居室内空気を清浄する目的に使用されるものである。なお、枠体との接合においては接着剤等を使用してもよい。また、必要により、その他の部材を配置する。なお、枠体やその他の部材については、公知の形状、素材のものを使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示すが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[測定方法]
(1)厚み(mm)、厚みバラツキ(%)
20cm×20cmにカットした基材について、厚み計(テクロック社製 TECLOCK (登録商標) SM−114)を使用しランダムに10点測定し、平均値を算出した。さらに標準偏差を算出し、その偏差を平均値で除した値をバラツキとした。
【0030】
(2)目付(g/m2
25cm×25cmにカットした基材の重量を重量計(エー・アンド・ディ社製 FY−300)にて4枚分計測し、その平均値から1m2あたりの重量に換算した。
【0031】
(3)平均粒子径(μm)
ガス吸着粒子の粒径分布をふるい分け法によって測定し、その質量の中位径を平均粒子径とした。
【0032】
(4)平均繊維径(μm)
エレクトレット不織布シートをSEMにて100倍に撮影し、ランダムに100本分の繊維径を測定し、その平均値を算出した。
【0033】
(5)伸長時応力(MPa)
エレクトレット不織布シートをその製造時の方向から特定される長さ方向をタテ方向、長さ方向と直角の巾方向をヨコ方向とし、ヨコ5cm×タテ30cmに各3枚づつ採取し、引張試験機(インストロンジャパン社製 INSTRON(登録商標)3360)を使用し、つかみ巾5cm、つかみ間隔20cm、引張速度15cm/minで引張試験を実施した時の、2%伸張時の強力(N)を測定する。測定した強力をシートの厚み(mm)とつかみ巾(mm)より算出する断面積(mm2)で除し、応力を算出した。
【0034】
(6)濾材圧力損失(Pa)、濾材捕集効率(%)
測定対象物である複合濾材を有効間口サイズ118cm2のホルダーにセットし、処理風速5.0cm/秒で空気を通過させて、濾材上下流の差圧をデジタルマノメーター(MODUS社製 MA2−04P)にて測定した。
【0035】
(7)濾材捕集効率(%)
上述(5)の測定時に、濾材上流および下流の0.3〜0.5μmの大気塵粒子数をパーティクルカウンター(RION社製 KC−01D)で測定し、次式
捕集効率(η)=1−(下流粒子数/上流粒子数)×100
により算出した。
【0036】
(8)ユニット圧力損失(Pa)
測定対象物であるフィルターユニットを間口面積0.07m2のホルダーにセットし、処理風量3.0m3/minで空気を通過させた時のフィルターユニット上下流の差圧をデジタルマノメーター(MODUS社製 MA2−04P)にて測定した。
【0037】
(9)ユニット捕集効率
上述(8)の測定時に、フィルターユニット上流および下流の0.3〜0.5μmの大気塵粒子数をパーティクルカウンター(RION社製 KC−01D)で測定し、次式
捕集効率(η)=1−(下流粒子数/上流粒子数)×100
により算出した。
【0038】
(10)フィルター脱臭性能(%)
測定対象物であるフィルターユニットを、シャープ(株)製空気清浄機「FU−Y30CX」に装着し、日本電機工業会が定める「JEM1467脱臭性能試験方法」に準じて風量3.0m3/minにおける初期脱臭性能を測定した。
【0039】
(11)プリーツ頂点穴あき(個)
複合濾材を山高さが29.5〜30.0mmになるよう、レシプロプリーツ機でエレクトレットメルトブロー不織布シートのタテ方向に連続400山分プリーツ加工した時の、エレクトレット不織布シートの穴あきを3人の外観判定者が以下の定義を基に判定し平均を算出した。なお、レシプロプリーツ機の運転条件として、加熱ヒータの熱版温度は上面、下面とも80℃、熱版の間隔は31.2mm、濾材への圧力は6kgとした。
【0040】
穴あきの定義:エレクトレット不織布シートが長さ1mm以上で破れており、挟み込んだガス吸着粒子もしくは他の基材層が見えるもの。
【0041】
[実施例1]
ポリエステルスパンボンド不織布骨材シート(厚み0.30mm)上にガス吸着粒子としてアジピン酸ジヒドラジド(大塚化学社製 ケムキャッチH−6000HS)を6重量%添着させた多孔質シリカ粒子(AGCエスアイテック社製 D−300−60A、平均粒子径200μm)20g/m2およびゼオライト粒子(日東粉化工業社製 日東ゼオライト#70、平均粒子径200μm)20g/m2、エチレン−作酸ビニル系熱接着パウダーを35g/m2均一に散布し、加熱により接着パウダーを溶融させ、その表面にエレクトレット化ポリプロピレンメルトブロー不織布シート(平均繊維径15.3μm、目付13g/m2、厚み0.12mm、タテ方向2%伸長時応力0.40MPa)を積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せて濾材を得た。
【0042】
この濾材の圧力損失は27.2Pa、捕集効率は97.2%、厚みは0.50mm、厚みのバラツキは4.1%であった。
【0043】
さらにこの濾材をエレクトレットメルトブロー不織布のタテ方向にプリーツ加工し、タテ370mm、ヨコ234mm、厚み32mmの枠体に70山分を収納しフィルターユニットを得た。このユニットの圧力損失は30Pa、捕集効率は97.1%、脱臭性能は81%であった。また、プリーツ濾材の頂点の穴あきは1.3個であった。
【0044】
[実施例2]
ポリエステルサーマルボンド不織布骨材シート(厚み0.51mm)上に実施例1と同様の品種、使用量のガス吸着粒子、接着パウダーを均一に散布し、濾材を得た。この濾材の圧力損失は22.8Pa、捕集効率は96.8%、厚みは0.90mm、厚みのバラツキは3.9%であった。
【0045】
さらにこの濾加熱により接着パウダーを溶融させた後に、その溶融面にエレクトレット化ポリプロピレンメルトブロー不織布シート(平均繊維径4.2μm、目付45g/m2、厚み0.25mm、タテ方向2%伸長時応力0.04MPa)、を積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せ材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このユニットの圧力損失は33.5Pa、捕集効率は96.5%、脱臭性能は80%であった。また、プリーツ濾材頂点の穴あきは1.0個であった。
【0046】
[実施例3]
ポリエステル、ビニロン、パルプの混合繊維を抄紙法によりシート化しスチレン−アクリルバインダーを付着させた骨材シート(厚み0.44mm)上に、実施例1と同様の品種、使用量のガス吸着粒子、接着パウダーを均一に散布し、加熱により接着パウダーを溶融させた後に、その溶融面にエレクトレット化ポリプロピレンメルトブロー不織布シート(平均繊維径3.1μm、目付40g/m2、厚み0.35mm、タテ方向2%伸長時応力0.10MPa)を積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せ濾材を得た。この濾材の圧力損失は20.0Pa、捕集効率は98.9%、厚みは0.83mm、厚みのバラツキは3.5%であった。
【0047】
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このユニットの圧力損失は25.1Pa、捕集効率は99.1%、脱臭性能は81%であった。また、プリーツ濾材頂点の穴あきは1.0個であった。
【0048】
[実施例4]
実施例4と同様の骨材シート上に、ガス吸着粒子として粒状活性炭(フタムラ化学社製 太閤QG、平均粒子径240μm)45g/m2、およびリン酸を10重量%添着した活性炭(日本エンバイロ社製 HGI−220、平均粒径150μm)30g/m2、実施例1と同様の接着パウダーを35g/m2均一に散布し、加熱により接着パウダーを溶融させた後に、その溶融面に実施例3と同様のエレクトレット不織布シートを積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せ濾材を得た。この濾材の圧力損失は22.3Pa、捕集効率は99.0%、厚みは0.83mm、厚みのバラツキは3.6%であった。
【0049】
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このフィルターの圧力損失は27.1Pa、捕集効率は99.1%、脱臭性能は93%であった。また、プリーツ濾材頂点の穴あきは1.0個であった。
【0050】
[実施例5]
実施例3と同様の骨材シート上に、粒状活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製 HGI−218、平均粒子径180μm)35g/m2、リン酸を20重量%添着した活性炭(産栄サービス社製 SNC−40/80DB、平均粒子径180μm)35g/m2、および実施例1と同様の接着パウダーを35g/m2均一に散布し、加熱により接着パウダーを溶融させた後に、その溶融面に実施例3と同様のエレクトレット不織布シートを積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せ濾材を得た。この濾材の圧力損失は18.9Pa、捕集効率は99.0%、厚みは0.77mm、厚みのバラツキは2.6%であった。
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このフィルターの圧力損失は21.9Pa、捕集効率は99.3%、脱臭性能は91%であった。また、プリーツ頂上の穴あきは0.3個であった。
【0051】
[比較例1]
実施例1と同様の骨材シート上に、同じく実施例1と同じ2種類のガス吸着粒子を各35g/m2、実施例1と同じ接着パウダーを35g/m2均一に散布し、加熱により接着パウダーを溶融させた後に、その溶融面に非エレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布シート(平均繊維径3.1μm、目付40g/m2、厚み0.35mm、タテ方向2%伸長時応力0.10MPa)を積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せ濾材を得た。この濾材の圧力損失は19.2Pa、捕集効率は43.2%、厚みは0.75mm厚みのバラツキは2.8%であった。
【0052】
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このフィルターの圧力損失は23.0Pa、捕集効率は41.3%、脱臭性能は85%であった。また、プリーツ頂上の穴あきは0.7個であった
[比較例2]
実施例2と同様の骨材シート上に、実施例1と同様の接着パウダー5g/m2を散布し、加熱により接着パウダーを溶融させた後に、その溶融面に実施例3と同様のエレクトレット不織布シートを積層後、ニップロールによって加圧して貼り合せ濾材を得た。この濾材の圧力損失は17.3Pa、捕集効率は99.0%、厚みは0.62mm、厚みのバラツキは1.2%であった。
【0053】
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このフィルターの圧力損失は19.6Pa、捕集効率は99.3%、脱臭性能は23%であった。また、プリーツ頂上の穴あきは無かった。
【0054】
[比較例3]
エレクトレット不織布シートにエレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布シート(平均繊維径2.1μm、目付30g/m2、厚み0.15mm、タテ方向2%伸長時の応力0.50MPa)を用いた以外は実施例1と同様の方法で濾材を得た。この濾材の圧力損失は26.8Pa、捕集効率は99.98%、厚みは0.75mm、厚みのバラツキは2.7%であった。
【0055】
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このフィルターの圧力損失は36.8Pa、捕集効率は98.1%、脱臭性能は77%であった。また、プリーツ頂上の穴あきは16.3個であった。
【0056】
[比較例4]
エレクトレット不織布シートにエレクトレットポリプロピレンメルトブロー不織布シート(平均繊維径4.0μm、目付15g/m2、厚み0.24mm、タテ方向2%伸長時応力0.01MPa)を用いた以外は実施例1と同様の方法で濾材を得た。この濾材の圧力損失は13.3Pa、捕集効率は95.1%、厚みは0.80mm、厚みのバラツキは2.1%であった。
【0057】
さらにこの濾材を実施例1と同様の条件でプリーツ加工、枠体に収納しフィルターユニットを得た。このフィルターの圧力損失は16.7Pa、捕集効率は90.1%、脱臭性能は80%であった。また、プリーツ頂上の穴あきは9.6個であった。
【0058】
なお、実施例1〜5の結果を表1に、そして比較例1〜4の結果を表2にまとめて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
上で説明した事項から明らかなように、実施例1〜5は、プリーツ加工された際プリーツ頂上に生じる引張力に対し、適度に伸張するエレクトレット不織布シートを用いてガス吸着粒子を挟み込んでいるためエレクトレット不織布シートの破れが殆ど発生せず濾材の高い捕集効率を維持しかつ外観も良好な集塵脱臭フィルターユニットが得られる。
【0062】
各実施例に対して比較例1は、エレクトレット素材を用いていないため、高い捕集効率が得られず空気清浄機用の集塵脱臭フィルターユニットへの適用に向かないものであった。
【0063】
比較例2は、ガス除去粒子を挟み込んでいないため、ガス吸着粒子がエレクトレット不織布シートに集中して付着するため、エレクトレット性能の早期の低下や、付着した臭気の再発臭を引き起こしやすくなっていた。
【0064】
比較例3は、プリーツ頂上に生じる引張力に対し応力の高い、即ち伸びないエレクトレット不織布シートを使用しているため、ガス除去粒子との接触によりプリーツ頂上の繊維が破断し、シートの破れとなって捕集効率の低下や外観の不良を引き起こしていた。
【0065】
比較例4は、プリーツ頂上に生じる引張力に対して応力の低い、すなわち伸びの大きいエレクトレット不織布シートを使用しているため、繊維密度が部分的に低下して捕集効率の低下や外観の不良を引き起こしていた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によるエアフィルターユニットは、主に家庭用空気清浄機エアフィルターの空気を正常化するためのエアフィルターに使用される。さらにはエアコン用エアフィルター、OA機器の吸気・廃棄フィルター、ビル空調、個別空調用エアフィルター、産業用クリーンルーム用エアフィルター、自動車や鉄道車両などの社室内等のエアフィルターとして好ましく利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層の基材層間にガス除去粒子を挟み込んでなる複合濾材であって、少なくとも1層の基材層がエレクトレットメルトブロー不織布シートであり、前記エレクトレットメルトブロー不織布シートの2%伸張時応力のタテ方向またはヨコ方向の大きい方の値が0.03〜0.4MPaであることを特徴とする複合濾材。
【請求項2】
エレクトレットメルトブロー不織布シートの平均繊維径が1.5〜4.0μm、目付が15〜40μmであることを特徴とする請求項1記載の複合濾材。
【請求項3】
ガス除去粒子が、平均粒子径が150〜260μmの活性炭を少なくとも含むものであることを特徴とする請求項1または2記載の複合濾材。
【請求項4】
請求項1に記載の複合濾材の厚みの平均値が0.6〜0.8mmであり、かつ厚みのバラツキが3%以内であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の複合濾材。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の複合濾材を用いたことを特徴とするエアフィルターユニット。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の複合濾材をプリーツ加工し、その周囲を枠体で画設したことを特徴とする空気清浄機用エアフィルターユニット。

【公開番号】特開2011−212636(P2011−212636A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85736(P2010−85736)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】