説明

複合濾過媒体を含む流体フィルター

【課題】流体から溶解した化学的汚染物質および3〜4ミクロンの範囲のサイズの粒子を除去する水濾過カラフ用の複合濾過媒体を含む流体フィルターを提供する。
【解決手段】開口部104がある出口端部パネル102と、開口部104を耐密にカバーできるシート状複合濾過媒体10を含み、シート状複合濾過媒体10が、第1の外向きのひだ106a、内向きのひだ106b、および第2の外向きのひだ106cを持つようにひだが付けられており、これらのひだは、第1のフィルターパネル108a、第2のフィルターパネル108b、第3のフィルターパネル108cおよび第4のフィルターパネル108dを含む4つの濾過媒体パネルを画定しており、複合濾過媒体10は、溶解した汚染物質を除去するための吸着剤層及び粒子を除去するための親水性粒子捕捉層が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィルターと濾過媒体に関する。より詳細に述べると、この発明は流体から汚染物質を濾過する複合濾過媒体およびこの複合濾過媒体を含む流体フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体などの流体には、通常、粒子,化学物質,および微生物のような汚染物質が含まれている。多くの場合、流体からそのような汚染物質の一部またはすべてを除去することが望まれている。通常、流体をフィルターに通し、すなわち、濾過流体またはろ液から汚染物質を分離することにより、流体原液から汚染物質は除去される。
【0003】
水は、工業プロセスや家庭内で濾過されるので、おそらく最もよく濾過される流体である。水を濾過して飲料水をつくるには、粒子汚染物質,溶解有機化学物質および無機重金属を同時に低減することがしばしば必要になる。粒子汚染物質には、泥,鉄錆,シルト,およびその他の粒子、並びにCryptosporidium ParvumまたはGiardiaなどの耐塩素性原生動物シスト、またはコレラ菌や大腸菌などの潜在的に有害な微生物がある。有機化学物質には、味や臭いに影響があるもの、並びに潜在的に毒性のある農薬,塩素化炭化水素類,およびその他の合成有機化学物質がある。この殺菌剤の残留濃度が味に悪影響があるほど高い場合は、フリー塩素の低減も大きな目標になる。家庭の水道水に存在する最も普通の重金属は、真鍮製品,鉛のはんだ,鉛管またはその他の発生源に由来するものである。飲料水によく存在する重金属には、他に、銅,亜鉛,マンガンおよび鉄がある。
【0004】
最も普通の家庭用フィルターは、活性炭,イオン交換樹脂またはゼオライトなどのルーズな吸着媒体を充填した台形をした小型のプラスチック容器である。水を台形容器の広い方から狭い方へルーズな吸着媒体の中を軸方向に通して、水はそのようなフィルターにより濾過される。
【0005】
台形をしたフィルター・エレメントはカラフでよく使われ、そしてカラフで使われる場合は、通常、重力流カラフフィルターと呼ばれる。この種のフィルターは上下の各貯水槽と上の貯水槽の底部に取り付けられた濾過容器を具備する家庭用カラフの中に据え付けられる。台形をしたフィルター・エレメントは、フィルター容器に押し込められ、2つの貯水槽の間を密封するように、カラフ内に取り付けられている。上の貯水槽から下の貯水槽に通過する水は、フィルター・エレメントを通過しなければならない。通常、水は台形の広い頂部にある一連の小さな孔を通ってフィルター・エレメントに入る。水は、フィルターから狭い底部に流れ、その間に多孔性吸着剤のルーズなベッドを横断する。水はフィルター出口の狭い底部にある一連のミクロ多孔体を通り下の貯水槽に入る。一部のフィルターでは、細かいフィルターとして作用する一つ以上の不織布パッドが、フィルター・エレメントの底部か頂部または底部と頂部の両方に取り付けられ、吸着剤ベッドから粒子が放出されるのを防いでいる。
【0006】
上で述べた今日の重力流カラフフィルターを通過する流速は、一般に遅く、約30〜35重量%の量の水を含む湿り樹脂と炭素からなる混合濾過媒体を100グラム充填した場合、通常約200ml/分である。流速が遅いのは、次のような理由による。すなわち、(1)水は吸着粒子の深いベッドを横断しなければならない。(2)フィルターは、上部貯水槽にある通常数インチの水の圧力のみという低圧で水を通過させねばならない。(3)吸着剤粒子のサイズが制約されている。粒子が大きすぎると、流速は速いが、吸着速度が遅い。このために吸着速度の大きい比較的小さな粒子(約35メッシュ)を使わざるをえないが、流速は大いに制約される。上の制約条件の下では、今日のカラフフィルターは1リットルの水の処理に通常5〜10分かかる。
【0007】
GiardiaやCryptosporidium Parvumなどの耐塩素性の非常に小さなシストを捕捉できる高流速の重力流カラフフィルターを持つことが望まれている。味や臭いに関連する塩素の低減を増進する高流速の重力流カラフフィルター、並びに鉛などの重金属を吸収できるフィルターを提供することも望まれている。1インチの高さの水で高い流速を維持し、3〜4ミクロンの粒子を99.95%捕捉できるので、シストの低減に適しており、そしてNSFクラス1の粒子低減条件を満たしている高流速のフィルターを提供することが望まれている。簡単な装置を用いて、かつ、低コストでカラフフィルターを量産できることも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国同時係属出願番号第08/813,055号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の主要な目的は、流体の流れ抵抗を比較的低いレベルに維持しながら、比較的高い流速で流体から汚染物質を濾過できる流体フィルターを提供することである。
この発明のもう一つの目的は、GiardiaやCryptosporidium Parvumなどの耐塩素性のシストを濾過できる流体フィルターを提供することである。
この発明のもう一つの目的は、味や臭いに関連する塩素の低減を増進する高流速のカラフフィルター、並びに鉛などの重金属を吸収できるフィルターを提供することである。
この発明のさらにもう一つの目的は、簡単な装置を用いて、かつ、低コストで量産できるカラフフィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1に係るフィルターは、流体から溶解した化学的汚染物質および3〜4ミクロンの範囲のサイズの粒子を99.95%除去するひだ付きパネルフィルターにおいて、前記フィルターが、出口端部パネルに開口部がある前記出口端部パネルと、出口端部パネルの開口部を耐密にカバーできるシート状複合濾過媒体を含み、前記シート状複合濾過媒体が、前記出口端部パネルから離れた位置に配置された第1の外向きのひだ,前記出口端部パネルに近接して配置された内向きのひだ,および前記出口端部パネルから離れた位置に配置された第2の外向きのひだを持つようにひだが付けられており、前記ひだは、前記出口端部パネルと前記第1の外向きのひだの間に延在している第1のパネル,前記第1の外向きのひだから内向きのひだへ延在している第2のパネル,前記内向きのひだから前記第2の外向きのひだへ延在している第3のパネルおよび前記第2の外向きのひだから前記出口端部パネルへ延在している第4のパネルを含む4つの濾過媒体パネルを画定しており、前記複合濾過媒体には、さらに、吸着剤を含む吸着剤層と、前記吸着剤層に隣接して配設された親水性粒子捕捉層が含まれ、そして前記媒体が、平均流れ気孔直径は約1〜10ミクロン、バブル・ポイントは約3〜15ミクロンであり、空気浸透率は約0.5〜7リットル/分/cm2で約0.1barの圧力降下を伴う手段を採用している。
【0011】
また、本発明の請求項2に係るフィルターは、請求項1に記載のフィルターにおいて、前記フィルターが、さらに、隣接する濾過媒体パネルの間に配設された一つ以上の排水支持部材を具備する手段を採用している。また、本発明の請求項3に係るフィルターは、請求項2に記載のフィルターにおいて、前記排水支持部材に、前記部材から延在している複数の細長いリブを有するシートと前記細長いリブの間に配設された複数の隙間がある手段を採用している。また、本発明の請求項4に係るフィルターは、請求項1に記載のフィルターにおいて、前記フィルターがさらに、前記第1と第2の濾過媒体パネルの間に配設された第1の排水支持部材,前記第2と第3の濾過媒体パネルの間に配設された第2の排水支持部材および前記第3と第4の濾過媒体パネルの間に配設された第3の排水支持部材を具備する手段を採用している。また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1に記載のフィルターにおいて、前記フィルターがさらに、前記出口端部パネルから延在しているフレームを具備し、そして前記濾過媒体に前記フレームにより支持された一つ以上の端縁部がある手段を採用している。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、吸着剤を含む吸着剤層および吸着剤層に隣接して配設された親水性粒子捕捉層を含む流体から溶解した化学的汚染物質および3〜4ミクロンの範囲のサイズの粒子を99.95%除去できる流れ抵抗の低い複合濾過媒体を提供することにより実現することができる。複合媒体は、平均流れ気孔直径は約1〜10ミクロン、バブル・ポイントは約3〜15ミクロンであり、空気透過率は約0.5〜7リットル/分/cm2で約0.1barの圧力降下を伴う。
【0013】
この発明のその他の目的や利点は、以下に述べる詳細な説明と添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
縮尺は一定していないが、次のような図面がある。
【図1A】この発明の複合濾過媒体の第1実施態様の断面図である。
【図1B】この発明の複合濾過媒体の第2実施態様の断面図である。
【図1C】この発明の複合濾過媒体の第3実施態様の断面図である。
【図1D】この発明の複合濾過媒体の第4実施態様の断面図である。
【図1E】この発明の複合濾過媒体の第4実施態様の断面図である。
【図1F】この発明の複合濾過媒体の第4実施態様の断面図である。
【図2A】平坦なシート・フィルターの等角図である。
【図2B】図2Aに例示したフィルターの部分断面図である。
【図3A】基本的なひだ付き円筒フィルターの等角図である。
【図3B】図3Aに例示したフィルターの軸方向の断面図である。
【図4A】螺旋状に巻いた基本的なフィルターの部分的に切り取った等角図である。
【図4B】図4Aに例示したフィルターの濾過媒体装置を通過する流れの断面図である。
【図4C】図4Aに例示したフィルターの濾過媒体装置を通過する接線方向の流れの断面図である。
【図5A】この発明の複合濾過媒体を用いたひだ付き流体フィルターの切り取り斜視図である。
【図5B】図5Aに例示したフィルターの平面図である。
【図5C】図5Bに例示したひだ付きフィルターの線5Cー5Cに沿って切り取った断面図である。
【図5D】図5Aに例示したフィルターの出口端部パネルを示す端面図である。
【図5E】フレーム内に挿入成形して互いに接合したひだ付き濾過媒体の端縁部を示す部分断面図である。
【図5F】ホットメルト接着剤により接合されたひだ付き濾過媒体の端縁部を示す部分断面図である。
【図6】排水関連の支持部材の部分斜視図である。
【図7】図5A〜図5Fで例示したフィルターを含むカラフの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1A〜図1Fには、流体から汚染物質を除去するのに有用な、一般に吸着剤層11および親水性粒子捕捉層19を含むこの発明の複合濾過媒体10のいくつかの実施態様を例示している。図1Aに例示した実施態様について説明すると、吸着剤層11には、前面14と背面15を有する吸着剤支持ウエブ基板12がある。前面14の少なくとも一部は、吸着剤粒子16と結合材粒子18で被覆されており、結合材粒子18は前面14と吸着剤粒子16に融合している。吸着剤支持ウエブ基板12上のコーティングは、この明細書の参考文献の一つである、1997年3月3日に出願された米国同時係属出願番号第08/813,055号に記載されている方法により得られる。基本的には、この同時係属出願に記載されているように、このコーティングは、吸着剤粒子と結合材粒子の混合物を調製して得られる。結合材粒子の平均粒子サイズは、約80ミクロンを超えないことが好ましい。この混合物は吸着剤支持ウエブ基板12の前面14の一部または全部に塗布し、前面にルーズな粉末コーティングをつくる。ルーズな粉末コーティングを結合材粒子のビカット軟化点以上で、かつ、吸着剤支持ウエブ基板12および吸着剤粒子の融点未満に加熱すると、軟化した結合材粒子18が得られる。吸着剤支持ウエブ基板12に圧力をかけて、軟化した結合材粒子18を吸着剤粒子16および吸着剤支持ウエブ基板12と融合させる。
【0016】
図1Aに示した実施態様の親水性粒子捕捉層19には、吸着剤支持ウエブ基板12に隣接して配置された前面21を有する繊維支持ウエブ基板20が含まれていて、その前面が吸着剤支持ウエブ基板12の背面に面するようになっている。ガラスミクロ繊維22とFDAが承認したエポキシ結合材樹脂(図示していない)の混合物を、吸着剤支持ウエブ基板12の裏側15と繊維支持ウエブ基板20の前側21の間に配置する。ガラス繊維と結合材樹脂を、必要ならば、ホットメルト接着剤を用いてウエブ基板12,20の一つまたは両方と接着させる。この樹脂は親水性を得るように処置するのが好ましい。また、当業者は粒子捕捉層の親水性は、樹脂,ガラスミクロ繊維または支持ウエブ基板への表面活性剤の添加、得られた複合媒体を後処理してその表面に界面活性を得る方法、またはナイロンミクロ繊維などの本来親水性である物質を用いる方法を含めて多数の方法で得られることを知っている。
【0017】
もちろん、当業者は図1Aに例示した第1の実施態様をつくる工程は順番を変更できることを認識している。たとえば、上で説明したように、吸着剤支持ウエブ基板12の上に吸着剤粒子16と結合材粒子18を塗布する前に吸着剤支持ウエブ基板12と繊維支持ウエブ基板20の間にガラスミクロ繊維22と樹脂の混合物を具備することができる。Hollingsworth & Voss Co.によりつくられ、HOVOGLASという商標で販売されている積層ガラス濾過媒体製品が、ガラスミクロ繊維22と結合材樹脂を有する吸着剤支持ウエブ基板および繊維支持ウエブ基板の両方の間で、これらの基板の形成に使用できる。吸着剤粒子16と結合材粒子18を、上で述べた方法により積層ガラス濾過媒体製品に塗布することができる。一方、PLEKXという商標でKX Industriesから製造・販売されているシート状吸着製品は、PLEX材料の吸着剤支持ウエブ基板の被覆していない裏側と隣接して配置された繊維支持ウエブ基板の前側の間にガラスミクロ繊維と樹脂の混合物を入れて部分的に改造することができる。
【0018】
一般的には、高強度スパンボンド法ポリエステル類やポリオレフィン類,乾湿両撚り合わせ繊維材料および多孔性メンブランなどの不織布繊維材料が、図1Aの実施態様で例示された吸着剤支持ウエブ基板12と繊維支持ウエブ基板20の形成に用いることができる。好適には、吸着剤支持ウエブ基板12は高強度スパンボンド法ポリエステル類やポリオレフィン類などの不織布繊維材料から形成され、繊維支持ウエブ基板20は不織布高強度スパンボンド法ポリエステルから形成される。ヨウ素処理樹脂,活性炭,活性アルミナ,アルミナ−シリケート類,イオン交換樹脂,およびマンガンや鉄酸化物などの物質を吸着剤粒子16として使用することができる。結合材粒子18を形成する物質には、通常、ポリプロピレン,線状低密度ポリエチレン,低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル・コポリマーなどの熱可塑性プラスチックがある。
【0019】
図1Bの実施態様について説明すると、図1Aの複合濾過媒体10には上に重ねられたウエブ基板30が新たに含まれており、この基板には吸着剤支持ウエブ基板12の前面14に面する表面32がある。吸着剤支持ウエブ基板12の吸着剤粒子および表面14に融合した結合材粒子18のコーティングは、上に重ねられたウエブ基板30の表面32にも融合することができる。吸着剤支持ウエブ基板12および上に重ねられたウエブ基板30への結合材粒子18の融合は、米国同時係属出願番号第08/813,055号に記載されている方法により行うことができる。本質的には、吸着剤支持ウエブ基板12の表面に粒子混合物を塗布すると、上で述べたその基板の表面の一部を被覆する粉末コーティングが得られ、上に重ねられたウエブ基板30が吸着剤支持ウエブ基板12およびその上の粉末コーティングの上に張り付けられる。好適には、吸着剤支持ウエブ基板12,上に重ねられたウエブ基板30,および粉末コーティングは結合材粒子のビカット軟化点以上で、かつ、吸着剤支持ウエブ基板,上に重ねられたウエブ基板,吸着剤粒子および結合材を形成する材料の融点未満に加熱する。結合材粒子をビカット軟化点まで加熱したら、粒子支持ウエブ基板12および上に重ねられたウエブ基板30に圧力をかけて軟化した結合材粒子を吸着剤粒子16と上に重ねられたウエブ基板30に融合させる。当業者は、このプロセスにおいて変形態様を行うことができることを認識しているであろう。たとえば、結合材をコーティングとして吸着剤支持ウエブ基板12に塗布する前および上に重ねられたウエブ基板30を張り付ける前に、結合材をビカット軟化点に加熱するだけで吸着剤層が得られる。図1Bに例示した実施態様には、繊維支持ウエブ基板20および図1Aで例示した実施態様について説明した繊維支持ウエブ基板20の間にガラスミクロ繊維22と結合材樹脂の混合物がある。
【0020】
図1Cには、この発明の複合濾過媒体の第3の実施態様を例示している。この実施態様では、図1Aで例示した濾過媒体が、ガラスミクロ繊維および樹脂の混合物22と吸着剤支持ウエブ基板12の裏側15の間に中間ウエブ基板40を配設して一部変更されている。この実施態様は、1枚のPLEKXシートとHOVOGLASガラスミクロ繊維ラミネートを組み合わせてつくることができる。
【0021】
図1Dには、この発明の複合濾過媒体の第4の実施態様を例示している。図1Cで例示した実施態様が、吸着剤支持ウエブ基板12の表面14に面する表面32がある上に重ねられたウエブ基板30を具備することにより一部変更されている。吸着剤粒子に融合された結合材粒子18のコーティングおよび吸着剤支持ウエブ基板12の表面14が、図1Bの実施態様で例示したのと同じ方法で上に重ねられたウエブ基板30の表面32にも融合されている。この実施態様は、2枚のPLEKXシートとHOVOGLASガラスミクロ繊維ラミネートを組み合わせるだけでつくることができる。
【0022】
図1Eと図1Fには、複合濾過媒体のその他の実施態様を例示している。図1Eでは、複合媒体210には吸着剤支持ウエブ基板12の吸着剤粒子16と表面14に融合した吸着剤粒子16と結合材粒子18を有する吸着剤支持ウエブ基板12により形成された吸着剤層11が含まれている。親水性粒子捕捉層19は親水性メルトブローされたミクロ繊維媒体またはその他の適切な親水性ミクロ繊維構造から形成される。また、親水性粒子捕捉層19は、ミシガン州アンアーバーのPall−Gelman Sciences製のSupor多孔性メンブランなどの親水性メンブランからつくることができる。図1Fに例示した実施態様では、吸着剤層は、上に重ねられたウエブ基板30を具備し、そして結合材粒子18は吸着剤支持ウエブ基板12の表面14に面している上に重ねられたウエブ基板の表面32に融合している。親水性粒子捕捉層19は、上で述べた親水性メルトブローされたミクロ繊維媒体または親水性多孔メンブランからつくることができる。
【0023】
商業的に利用できる水濾過カラフでは、水を濾過媒体に押し込むのに、約1〜3インチ程度の圧力降下の水を利用できる。このような最終用途に適しているこの発明の複合濾過媒体10を用いて高流量のフィルターをつくるためには、吸着剤層11と親水性粒子捕捉層19は、COULTER Porometer IIを用いてテストした場合、複合濾過媒体の平均流れ気孔直径は約1〜10ミクロン、バブル・ポイントは約3〜15ミクロンであり、空気浸透率は約0.5〜7リットル/分/cm2で約0.1barの圧力降下を伴うような、上で述べた材料から選択する。平均流れ気孔直径は、流れの半分はより大きな気孔を通過し、流れの半分はより小さな気孔を通過する気孔直径である。バブル・ポイントは濾過媒体の中の最大の気孔サイズを指しており、空気浸透率は所定の差圧における試料を通過するガスの流速である。当業者は、例示した種々の実施態様における複合濾過媒体の最適化は下記事項を一つ以上を行えば実現できることを認識している。すなわち、下記事項とは、(1)ガラスミクロ繊維と樹脂混合物の密度,繊維直径および基本重量の変更、(2)上に重ねる基板,中間基板または両方の具備または排除、(3)吸着剤粒子および結合材粒子のサイズ,濃度および規定重量の変更、および(4)種々の材料の使用によるウエブ基板の特性の変更、の4つである。
【0024】
図1A〜図1Fに例示した複合濾過媒体のすべての実施態様は、種々の流体濾過装置に組み込むことができる。この種の流体濾過装置の例を、図2A〜図5Fに例示する。図2Aと図2Bについて説明すると、この発明の複合濾過媒体10は、単純な平坦シートフィルター50で使用することができる。平坦シートフィルター50には、濾過領域を画定するリム52がある。複合濾過媒体10はリム52により画定された濾過領域をカバーしている。複合濾過媒体10の端縁部54は、端縁部54上にリムを挿入成形するか、または端縁部54とリム52の間にホットメルト接着剤のビードを入れるなどのその他の適切な手段によりリムに耐密に固定することができる。図2Aと2Bで例示した実施態様において、フィルターは複合濾過媒体10の入口側57aに入口支持部材56aおよび複合濾過媒体10の出口側57bに出口支持部材56bを備えている。支持部材56a,56bはリムからリム52により画定された濾過領域に延在している。当業者は、個々の濾過には入口または出口濾過部材のみが必要であり、そしてこの種の部材は図2Aに例示されたものを含むあらゆる構造形態のものが形成できることを認識している。複合濾過媒体10の出口側57bのリム52の一部には、容器(図示していない)のリムと耐密に契合するために溝58を具備することができる。密封の質をよくするために、リムはゴム,熱可塑性エラストマーまたは低密度ポリエチレンなどの弾性変形材料からつくることができる。濾過媒体の入口側57aのリムの一部には、ネスティング・リッジ59を備えている。一つのフィルターのネスティング・リッジ59が隣接フィルターの溝58等に留まることができるように複数の平坦シートフィルター50を積み重ねることができる。
【0025】
図3Aと図3Bについて説明すると、この発明の複合濾過媒体10は流体から汚染物質を除去する円筒状のひだ付きフィルター60において使用することができる。図3Aにおいて、このフィルターには基部62(点線で示した)があり、基部には出口開口部(図示していない)がある。ひだ付きフィルター60には頂部64もあり、そして流体浸透管66が基部62から頂部64まで延在している。基部62に隣接した管の端部は、基部にある出口開口部に接続している。この発明のシート状の複合濾過媒体10は、基部62と頂部64の間に円筒状に耐密に配設されており、そして基部62から頂部64へ縦方向に延在して複数の外側放射状ひだおよび流体浸透管66の近くに配置された内側の放射状ひだ72を備えている。内外の放射状ひだが、複数の濾過パネル68を画定している。濾過される流体は、図内の矢印で指示されているように、一般的な方向、すなわち、外側の放射状ひだから内側の放射状ひだへ、次いで管へと流れを生じることができる。
【0026】
図4A〜図4Cについて説明すると、この発明の複合濾過媒体は螺旋状に巻いた濾過装置80で使用することができる。螺旋状に巻いた濾過装置には、複数の孔84が頂部82にあり、流体は孔を通ってフィルターに入る。同様に、フィルターには、流体をフィルターから排出させる複数の孔を備えた底部86がある。フィルターの頂部82と底部86は、頂部から底部まで延在している支持管88により隔置された関係で保持されている。頂部に隣接して頂部端縁部90aおよび底部に隣接して底部端縁部90bがあるこの発明のシート状の複合濾過媒体10は、支持管88の周りに螺旋状に巻き付けられている。螺旋状に巻き付けられた複合濾過媒体10をカバーし、かつ、収容するために、頂部から底部まで延在している円筒状ハウジング92が備えられている。
【0027】
図4Bの実施態様では、流体は、矢印で示されているように、複合濾過媒体10に関して接線方向に流れるようになっている。しかし、この装置は化学物質や重金属の低減には効果があるが小粒子の低減にはあまり効果がない。図4Cでは、流体は、矢印で示されているように、螺旋状に巻き付けられた濾過媒体の交互に隣接する端縁部がバリア94を備えており、底部86からフィルターを出る前に濾過媒体の中を流れる仕組みになっている。バリア94は、ホットメルト接着剤,ポリウレタンまたはその他の適切な材料からつくることができる。
【0028】
図5A〜図5Fについて説明すると、この発明の複合濾過媒体10は、流体から汚染物質を濾過するひだ付きパネルフィルター100の形成に用いることができる。パネルフィルター100には出口端部パネル102があり、このパネルには開口部104がある。複合濾過媒体10は出口端部パネルの開口部104を耐密にカバーしている。複合濾過媒体10は、出口端部パネルから離れた位置に配置された第1の外向きのひだ106a,出口端部パネルに近接して配置された内向きのひだ106b,および出口端部パネルから離れた位置に配置された第2の外向きのひだ106cを持つようにひだが付けられている。ひだ106a−106cは集合的に4つの濾過媒体パネルを画定している。第1のフィルターパネル108aは、出口端部パネル102と第1の外向きのひだ106aの間に延在している。第2のフィルターパネル108bは、第1の外向きのひだ106aから内向きのひだ106bへ延在している。第3のフィルターパネル108cは内向きのひだ106bから第2の外向きのひだ106cへ延在している。最後に、第4のフィルターパネル108dは第2の外向きのひだ106cから出口端部パネル102へ延在している。
【0029】
パネルフィルター100において大きな表面積の濾過媒体を持ちたいという理由でパネル108a−108dを比較的大きくつくった場合は、それ自身の上で濾過媒体の崩壊を防ぐために一つ以上の排水支持部材を備えることができる。支持部材を設けないと、崩壊したフィルター表面が閉ざされて、フィルターの圧力降下が増加しフィルターを通過する流体の流れが制約を受けることになり望ましくない。図5Aと図5Cに例示しているように、フィルターには、第1と第2のフィルターパネル108a,108bの間に配設された第1の排水支持部材110a、第2と第3のフィルターパネル108b,108cの間に配設された第2の排水支持部材110b、および第3と第4のフィルターパネル108c,108dの間に配設された第3の排水支持部材110cが具備されている。
【0030】
図6について説明すると、第1の排水支持部材110aなどの支持部材には、部材の表面から延在している一つ以上の細長いリブ114を含む剛性または半剛性のシート112が含まれている。これらの部材は、流体の流れを開口部104に向けるために出口端部パネル102における開口部104に細長いリブがほぼ向いて整列するようにパネルの間に配設される。流体を排水支持部材の一つの側から他の側へ流すために、リブ114の間のシートに隙間116が備えられている。デラウエア州ミドルタウンのApplied Extrusion TechnologiesがDELNETという商標で販売している材料およびジョージア州アトランタのAmoco Fabrics Co.がVEXARという商標で販売している材料が排水支持部材として使える。
【0031】
図5A,5B,5Eおよび5Fについて説明すると、フィルターにはさらに出口端部パネル102から延在しているフレーム120がある。出口端部パネル102の開口部を耐密にカバーするために、複合濾過媒体10の端縁部122a,122bがフレーム120に取り付けられ、かつ、フレームにより支持されている。一方、出口端部パネル102の開口部を耐密にカバーするために、濾過媒体のそれぞれの端縁部122a,122bはホットメルト接着剤のビード124により互いに結合することができる。
【0032】
この発明の濾過媒体を用いている上述のフィルターは、重力流濾過カラフで用いることができる。図7に示すように、この種のカラフ130は、その底部に開口部(図示していない)を有するフィルター受け入れ容器138を備えている仕切壁136により上部貯水槽132と下部貯水槽134に分割されている。図5A〜図5Fに例示されているフィルターは、容器138に挿入して、容器138の出口端部パネル102の上で支えられる。下部貯水槽134から上部貯水槽を密封するために出口端部パネル102と容器138の底部の間にガスケット(図示していない)を備えることができる。ある量の水が上部貯水槽132に入ると、水は、この発明の濾過媒体を含むフィルターを重力により通過して下部貯水槽134に流入する。濾過水は出口140を介して下部貯水槽から移すことができる。
【0033】
以上の説明から分かるように、この発明の濾過媒体は水濾過カラフ用のフィルターをつくる場合に非常に有用である。何故ならば、この濾過媒体は、この種のカラフフィルターで通常利用できる数インチの水圧を用いて高い濾過流速が得られる濾過装置を使用できるようにするからである。高流速なのは、従来の台形カラフフィルター・エレメントに比べて、濾過流れの断面積がかなり増えたためである(約20倍まで)。したがって、大きな流れ断面積が用意されているので、流体流れに提供された吸着剤のベッド深さは、従来のカラフフィルター・エレメントに比べて、60分の1にすることができる。
【0034】
従来のカラフフィルターで現在使用しているサイズより吸着粒子のサイズを小さくできることも、この発明の濾過媒体の増加した断面積の利点に挙げられる。粒子が小さいほど吸着速度は速いので、同じ圧力降下と流速条件下で、通常のカラフフィルターに比べて、この発明のフィルターの全体的性能を大いに改善することができる。より効果的な小さな吸着剤粒子を用いると、性能目標を満たすために必要な吸着剤の容積を大幅に減らすことができる。この発明の濾過媒体では流れ抵抗が低いので、3〜4ミクロンの範囲にある非常に小さな粒子の捕捉に使うことができる。この範囲は、GiardiaやCryptosporidium Parvumなどの水に媒介される病原性のコシスト類を捕捉するのに必要な範囲である。
【0035】
以上の詳細な説明と図面から分かるように、この発明のフィルターは重力流カラフフィルターで通常見られる低圧条件下で高い濾過流速を得ることを可能にする。濾過装置は一つ以上の個々の実施態様について述べたが、この発明の精神と範囲を逸脱することなくこの発明のその他の実施態様を用いることができる。したがって、この発明は添付クレイムとそれに関する理に適った説明によってのみ制約を受けるものと考えられる。
【符号の説明】
【0036】
10 複合濾過媒体
11 吸着剤層
12 吸着剤支持ウエブ基板
14 前面(表面)
15 背面(裏側)
16 吸着剤粒子
18 結合材粒子
19 親水性粒子捕捉層
20 繊維支持ウエブ基板
21 前面(前側)
22 ガラスミクロ繊維
30 上に重ねられたウエブ基板
32 表面
40 中間ウエブ基板
50 平坦シートフィルター
52 リム
54 端縁部
56a 入口支持部材
56b 出口支持部材
57a 入口側
57b 出口側
58 溝
59 ネスティング・リッジ
60 ひだ付きフィルター
62 基部
64 頂部
66 流体浸透管
68 濾過パネル
72 放射状ひだ
80 螺旋状に巻いた濾過装置
82 頂部
84 孔
86 底部
88 支持管
90a 頂部端縁部
90b 底部端縁部
92 ハウジング
94 バリア
100 パネルフィルター
102 出口端部パネル
104 開口部
106a 第1の外向きのひだ
106b 内向きのひだ
106c 第2の外向きのひだ
108a 第1のフィルターパネル
108b 第2のフィルターパネル
108c 第3のフィルターパネル
108d 第4のフィルターパネル
110a 第1の排水支持部材
110b 第2の排水支持部材
110c 第3の排水支持部材
112 シート
114 リブ
116 隙間
120 フレーム
122a 端縁部
122b 端縁部
124 ビード
130 カラフ
132 上部貯水槽
134 下部貯水槽
136 仕切壁
138 容器
140 出口
210 複合媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体から溶解した化学的汚染物質および3〜4ミクロンの範囲のサイズの粒子を99.95%除去するひだ付きパネルフィルターにおいて、前記フィルターが、
出口端部パネルに開口部がある前記出口端部パネルと、
出口端部パネルの開口部を耐密にカバーできるシート状複合濾過媒体を含み、
前記シート状複合濾過媒体が、前記出口端部パネルから離れた位置に配置された第1の外向きのひだ,前記出口端部パネルに近接して配置された内向きのひだ,および前記出口端部パネルから離れた位置に配置された第2の外向きのひだを持つようにひだが付けられており、前記ひだは、前記出口端部パネルと前記第1の外向きのひだの間に延在している第1のパネル,前記第1の外向きのひだから内向きのひだへ延在している第2のパネル,前記内向きのひだから前記第2の外向きのひだへ延在している第3のパネルおよび前記第2の外向きのひだから前記出口端部パネルへ延在している第4のパネルを含む4つの濾過媒体パネルを画定しており、
前記複合濾過媒体には、さらに、吸着剤を含む吸着剤層と、前記吸着剤層に隣接して配設された親水性粒子捕捉層が含まれ、そして
前記媒体が、平均流れ気孔直径は約1〜10ミクロン、バブル・ポイントは約3〜15ミクロンであり、空気浸透率は約0.5〜7リットル/分/cm2で約0.1barの圧力降下を伴う前記ひだ付きパネルフィルター。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルターにおいて、前記フィルターが、さらに、隣接する濾過媒体パネルの間に配設された一つ以上の排水支持部材を具備する前記フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルターにおいて、前記排水支持部材に、前記部材から延在している複数の細長いリブを有するシートと前記細長いリブの間に配設された複数の隙間がある前記フィルター。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルターにおいて、前記フィルターがさらに、前記第1と第2の濾過媒体パネルの間に配設された第1の排水支持部材,前記第2と第3の濾過媒体パネルの間に配設された第2の排水支持部材および前記第3と第4の濾過媒体パネルの間に配設された第3の排水支持部材を具備する前記フィルター。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルターにおいて、前記フィルターがさらに、前記出口端部パネルから延在しているフレームを具備し、そして前記濾過媒体に前記フレームにより支持された一つ以上の端縁部がある前記フィルター。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図5F】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−167416(P2010−167416A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55993(P2010−55993)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願2000−593880(P2000−593880)の分割
【原出願日】平成11年8月5日(1999.8.5)
【出願人】(507274892)ケイエックス テクノロジーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】