説明

複合荷電粒子ビーム装置及びそれにおける照射位置決め方法

【課題】最小限のイオンビーム照射で電子ビームとイオンビームの位置合わせを行い、イオンビームによるダメージを低減させた複合荷電粒子ビーム装置を提供する。更にイオン顕微鏡観察による位置特定が困難なイオンビーム照射においても電子ビーム照射にて位置特定することを可能にした複合荷電粒子ビーム装置を提供する。
【解決手段】SEM鏡筒2とFIB鏡筒1と二次電子検出器4とを備えた複合装置において、SEM鏡筒から電子ビームを試料面に走査し試料面上にマイナスの電荷を帯電させると共にその顕微鏡画像(SEM像)を観察する。観察しながらこの帯電した領域にFIB鏡筒からプラスイオンを照射すると、FIB照射位置にコントラスト変化が現れる。このコントラスト変化位置を測定することでFIB照射位置を特定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の荷電粒子ビーム鏡筒を備えた装置における照射位置決め方法および照射位置決め機能を備えた複合荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオンビーム(FIB)装置によってエッチング加工やCVD加工を行うに際して、試料の加工状態を観察するため、電子線鏡筒を別個備えるようにしてSEMによる観察機能を持たせた、所謂ダブル鏡筒型の複合荷電粒子ビーム装置は既に公知である。FIB装置はエッチング加工やCVD加工を行う機能に加え、イオン照射によって試料表面から放出される電子やイオンといった二次荷電粒子を検出し、その検出量を照射位置に対向させて画像化(SIM像)するイオン顕微鏡としての機能を備えている。従来のFIB装置は半導体ウエハやLSIデバイス等の所望箇所の断面構造を観察したいというニーズに対しては、試料表面上方からのFIB照射によるエッチング加工で穴空け加工を行い、試料ステージを傾斜させてその断面をFIB照射して観察するという形態で使用されてきた。しかしこの場合、加工してはその加工状態を観察するという作業を繰り返しながら進めなければならない。加工と観察はFIBの照射角を変えなければならずその都度試料ステージを動かさなければならない。そのため、加工と顕微鏡観察は別のビーム照射で行うように、即ち2つの鏡筒を試料面に対し角度を異ならせて配置して一方で加工を他方で顕微鏡観察を行わせるシステムが提示された。その基本構成は図14に示すようにFIB鏡筒1とSEM鏡筒2が角度を異ならせて真空に引かれたチャンバー3内の試料ステージに対して据えられており、各鏡筒にはビーム照射を切替制御するためのブランキング電極が設けられ、更に試料ステージ近傍に二次電子検出器4が設置されている(例えば特許文献1参照)。この断面加工観察装置は、従来のFIB装置における、試料ステージを加工角度(通常、水平)と観察角度(45度から60度位)を何回か往復させねばならず操作が煩わしいこと、試料の移動に伴う機械的誤差を生じること、また加工中は断面が見えないので、微小な異物や異常形状を見逃す危険があることなどの問題点を解決することを課題としたものである。そして上記した課題解決のため、試料面を走査照射するイオンビーム照射系1と電子ビーム照射系2、各ビーム照射時に試料から放出される二次電子を捕らえる検出器4、上記検出器の出力に基づき試料像を表示するディスプレイ26、および、FIBと電子ビームとで試料に照射されるビームを切り替えるビーム切換器33とを備えたものであり、イオンビーム照射系1と電子ビーム照射系2は互いにその照射軸を90度または90度より狭い角度に配置され、試料上の同一点にイオンビームおよび電子ビームを走査照射できるように、同一試料室に装着されている。図14のビームブランキングコイル30によりSEMの電子ビームをブランクし、FIBを試料に照射するか、あるいは図14のビームブランキング電極23によりFIBをブランクし、SEMの電子ビームを試料に照射している態様である。このようにビーム切換器33は、上記イオンビームと電子ビームとを交互に切換えるものであり、上記像表示装置は、上記切換器の切換え動作に応じて上記検出器の出力を試料表面像および断面加工像として表示する。
【0003】
上記したダブル鏡筒型の荷電粒子ビーム装置によれば、加工時と顕微鏡観察時とで従来のFIB装置におけるような試料ステージの傾斜移動を行う必要が無く、操作性の点、試料の移動に伴う機械的誤差の点で有利となったのであるが、イオンビーム照射系と電子ビーム照射系は試料上の同一点にイオンビームおよび電子ビームを照射する必要が生じる。また近年ではイオンビーム照射による試料への損傷や汚染を嫌い、イオンビーム照射を最小限にする必要が生じている。
イオンビームと電子ビームにより同一の登録マークを観察し、イオンビームによる顕微鏡像(SIM像)と電子ビームによる顕微鏡像(SEM像)を比較することによりあらかじめ視野合わせを行い、SEM像のみによりイオンビームの加工指定を行う技術が特許文献2に開示されている。しかし実際の試料上ではあらかじめ視野を合わせておいても、試料の位置よって二次電子検出器による電界や試料表面の帯電により電子ビームとイオンビームの位置がずれてしまうという問題が生じる。そこでイオンビームによる加工を行う際はかならずSIM像を観察し加工位置の指定を行っている。
【0004】
一方近年では加工性能向上のため走査を行わないイオンビームによる加工が行われている。例えばアパーチャに形成されたパターンを投影する技術が非特許文献1に記載されている。このような走査を行わないイオンビームではイオンビームによる顕微鏡像が得られないために従来手法では位置決めをすることが不可能である。またイオンビームによる試料へのダメージを除去するために該ダメージ部分にアルゴン等の希ガスを利用した気体放電型のイオンビームを照射する技術が特許文献3に記載されている。しかし、このような気体放電型のイオンビームではビーム径が大きいためにイオンビームによる顕微鏡像では位置決めをすることが不可能である。
【特許文献1】特開平2−123749号公報 「断面加工観察装置」 平成2年5月11日公開、第2頁、図3。
【特許文献2】特開平10−92364号公報 「集束イオンビーム加工位置合わせ方法」 平成10年4月10日公開。
【特許文献3】特開平6-260129号公報 「集束イオンビーム装置」 平成6年9月16日公開、第6頁、図1。
【非特許文献1】「電子イオンビームハンドブック第3版」 平成10年10月28日公開、第540頁、図15.26。
【非特許文献2】K.URA AND H.Fujioka “Electron Beam Testing” Advanced In Electronics AND Electron Physics VoL73 P247 FIG.8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、最小限のイオンビーム照射で電子ビームとイオンビームの位置合わせを行い、イオンビームによるダメージを低減させた複合荷電粒子ビーム装置を提供することにある。及びイオン顕微鏡観察による位置特定が困難なイオンビームにおいても電子ビームにて位置指定を行うことを可能にした複合荷電粒子ビーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、複数の荷電粒子ビーム鏡筒を同一真空チャンバーに配置した複合荷電粒子ビーム装置における前記複数の荷電粒子ビームの照射位置決め方法において、第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、前記帯電させた領域に前記第一の荷電粒子ビームとは反対の極性を持つ第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態とのコントラストの変化を第一の荷電粒子ビームにより顕微鏡観察して第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定することを特徴とする。
本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、この帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビームを照射したときの状態変化をSEM機能で顕微鏡観察して、逆電荷イオンビームの照射位置を特定する。
本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、正電荷のイオンビームを試料面に照射して正に帯電させた状態と、この帯電状態を示した領域に逆電荷の電子ビームを照射したときの状態変化をFIB機能で顕微鏡観察して、電子ビームの照射位置を特定する。
また本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームである第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、この帯電させた領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームである第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態変化を第一の荷電粒子ビームで顕微鏡観察して、第二の荷電粒子ビームの照射位置を特定し、第二の荷電粒子ビーム照射位置を第一の荷電粒子ビームの顕微鏡像から指定する。
また本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームである第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、この帯電状態させた領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームである第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態変化を第一の荷電粒子ビームで顕微鏡観察して、第二の荷電粒子ビームの照射位置を第一の荷電粒子ビームの顕微鏡像に対し画像処理を行い特定する。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームである第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームである第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態変化を第一の荷電粒子ビームで顕微鏡観察して、第二の荷電粒子ビームの照射位置を第一の荷電粒子ビームの顕微鏡像に対し画像処理を行い特定する機能を設ける。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームを試料面に照射して帯電させた状態と、この帯電させた領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときの状態変化を顕微鏡観察して解析するものであり、正電荷のイオンビームとして液体金属イオン源を使用する。
また、本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームを試料面に照射して帯電させた状態と、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときの状態変化を顕微鏡観察して解析する。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームを試料面に照射して帯電させた状態と、この高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときの状態変化を顕微鏡観察して解析する。
また、本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、第一の荷電粒子ビーム鏡筒と、前記第一の荷電粒子ビームとは反対の極性を有する荷電粒子ビームを照射する第二の荷電粒子ビーム鏡筒と、前記荷電粒子ビームを試料に照射した時に試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記荷電粒子ビーム鏡筒及び二次電子検出器を収容する真空チャンバーと、前記第一及び第二の荷電粒子ビーム鏡筒それぞれの制御電源と、
前記制御電源を制御し、かつ、前記二次電子検出器からの信号を処理し及びその処理したデータとその信号に対応するビーム照射位置と共に画像データとして記憶する制御用コンピュータと、前記画像データに基づく前記制御用コンピュータからの画像信号を入力し、画像表示するディスプレイとを有し、前記第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、前記帯電した領域に前記第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態とのコントラストの変化を示す第一の荷電粒子像に基づく画像データとして取得し、該取得した画像データから第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定する機能を有する。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定した後、この特定した照射位置の第一の荷電粒子像中心からの位置を計算し、第一の荷電粒子像における照射位置と、第二の荷電粒子像における照射位置のズレ量を算出し、この算出したズレ量に基づいて、第一の荷電粒子像上で、任意の第二の荷電粒子照射領域を指定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームである第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して高く帯電させた状態と、この高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームである第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態変化を、第一の荷電粒子ビームで顕微鏡観察して、第二の荷電粒子ビームの照射位置を特定するものであるから、単にビームスポット照射を特定領域に行うだけでよく、試料上を走査する必要がないため試料への荷電粒子ビーム照射量を減少できる。
本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビームを試料面に照射して高く帯電させた状態と、この高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビームを照射したときの状態変化をSEM機能で顕微鏡観察して、逆電荷イオンビームの照射位置を特定するものであるから、単にビームスポット照射を特定領域に行うだけでよく、試料上を走査する必要がないため試料へのイオンビーム照射量を減少し、試料上の目標箇所以外へのイオンビーム照射によるダメージを減少できる。
本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、正電荷のイオンビームを試料面に照射して正に高く帯電させた状態と、この高い帯電状態を示した領域に逆電荷の電子ビームを照射したときの状態変化をFIB機能で顕微鏡観察して、電子ビームの照射位置を特定するものであるから、単にビームスポット照射を特定領域に行うだけでよく、試料上を走査する必要がないため試料への電子ビーム照射量を減少し、試料上の目標箇所以外への電子ビーム照射によるダメージや汚染を軽減できる。
また本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームである第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームである第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態変化を第一の荷電粒子ビームで顕微鏡観察して、第二の荷電粒子ビームの照射位置を特定し、第二の荷電粒子ビーム照射位置を第一の荷電粒子ビームの顕微鏡像から指定するものであるから、単にビームスポット照射を特定領域に行うだけでよく、試料上を走査する必要がないため、試料中の目標箇所以外への荷電粒子ビーム照射量を最小限にした第二のビーム照射位置指定が可能となる。
また本発明の、複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームである第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームである第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態変化を第一の荷電粒子ビームで顕微鏡観察して、第二の荷電粒子ビームの照射位置を第一の荷電粒子ビームの顕微鏡像に対し画像処理を行い特定するものであるから、装置使用者の習熟度によることなく試料中の目標箇所以外への荷電粒子ビーム照射量を最小限にした第二のビーム照射位置特定が可能となる。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、第一の荷電粒子ビーム鏡筒と、前記第一の荷電粒子ビームとは反対の極性を有する荷電粒子ビームを照射する第二の荷電粒子ビーム鏡筒と、前記荷電粒子ビームを試料に照射した時に試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記荷電粒子ビーム鏡筒及び二次電子検出器を収容する真空チャンバーと、前記第一及び第二の荷電粒子ビーム鏡筒それぞれの制御電源と、前記制御電源を制御し、かつ、前記二次電子検出器からの信号を処理し及びその処理したデータとその信号に対応するビーム照射位置と共に画像データとして記憶する制御用コンピュータと、前記画像データに基づく前記制御用コンピュータからの画像信号を入力し、画像表示するディスプレイとを有し、前記第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、前記帯電した領域に前記第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態とのコントラストの変化を示す画像データを取得し、該取得した画像データから第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定する機能を有するものであるから、装置使用者に負担をかけずに試料中の目標箇所以外への荷電粒子ビーム照射量を最小限にした第二のビーム照射位置特定を可能とした複合荷電粒子ビーム装置を構成できる。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームを試料面に照射して帯電させた状態と、この帯電状態させた領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときの状態変化を顕微鏡観察して解析するものであり、正電荷のイオンビームとして液体金属イオン源を使用した複合荷電粒子ビーム装置であるから、イオンビームを細く絞ることにより、特定の箇所において穴あけ等の微細加工を行うことが可能であり、かつイオンビーム照射位置の指定時に試料へのダメージを最小にした複合荷電粒子ビーム装置を構成できる。
また、本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームを試料面に照射して帯電させた状態と、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときの状態変化を顕微鏡観察して解析するものであるから、単にビームスポット照射を特定領域に行うだけでよく、試料上を走査する必要がないため、可変成型ビームのような走査を行わないイオンビームの位置決めを行うことができる。また電子ビームを用いてイオンビームの加工位置を指定することで、位置決めが困難な可変成型イオンビームの加工位置指定を行うことができる。
本発明の複合荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム又は正電荷のイオンビームを試料面に照射して帯電させた状態と、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときの状態変化を顕微鏡観察して解析するものであるから、単にビームスポット照射を特定領域に行うだけでよく、試料上を走査する必要がないため、アルゴンイオンビームに代表される希ガスを使用した気体放電型イオンビームのようなブロードなイオンビームにおいても位置決めを行うことができる。また電子ビームを用いてイオンビームの加工位置を指定することで、位置決めが困難なブロードな希ガス放電型イオンビームの加工位置指定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は走査型電子顕微鏡(SEM)と集束イオンビーム(FIB)装置を共に備えた複合装置において電子ビームとイオンビームの照射位置の位置合わせを行う機能に関するものである。これまで電子ビーム鏡筒とイオンビーム鏡筒とを備えた所謂ダブル鏡筒の複合装置は、FIBによって行う試料加工をSEMによって観察するという形態で、迅速かつ高精度の加工を行えるシステムとして実用化されている(特許文献1参照)。本発明は同様なSEM/FIB複合装置において、イオン源としてプラスイオンを採用した場合、電子とイオンの電荷が逆であることを利用して電子ビームとイオンビームの照射位置の位置合わせを行うという全く新しい技術的思想である。
本発明の原理は電子ビーム又は正電荷のイオンビームをあらかじめ試料面に照射して帯電させた状態にし、高い帯電状態を示した領域に逆電荷のイオンビーム又は電子ビームを照射したときに顕微鏡像に現れる状態変化を基にしている。この現象について詳述する。まずこの現象と同様な原理である導電性のプローブを半導体デバイスに接触させることで配線に生じるコントラスト(電位コントラスト)変化が非特許文献2に開示されている。システム中に導電性のプローブを備えたSEM装置で、試料を観察中にプローブが試料の局部に触れると、ディスプレイ上でその部分が明るくなったり、反対に暗くなったりする現象が見られる。この現象は電位コントラストと呼ばれ、図15の左に示すようにSEMによって表面に配線Rが露出している試料面を観察しているとき、その配線R部分がSEM観察画像では明るく表示されているとする。その明るく表示されている配線R部分に導電性のプローブ19が接触した瞬間、図15右に示すように配線Rの部分が暗くなるといった現象である。これはSEM観察に際して試料表面にはマイナスの電荷を帯びた電子が照射されることになり、その電子が配線R部分に帯電した状態となっていたところ、導電性のプローブ19が接触してそのチャージを放出しその部分の電位が変化したことによるものである。SEMの観察画像は電子ビームが試料面上で例えばラスタ状に走査されるとき、照射部分の性状に応じて二次電子が放出されるので、この二次電子を検出して照射位置と対応させ、二次元的に画像表示させたものである。図16の上段に示すように試料のある領域がプラスに帯電していたとすると、電子ビームの照射によって放出された二次電子はマイナスの電荷をもっているため、この領域に引きつけられ、二次電子検出器(SED)に届きにくく検出されにくい状態となる。したがって、その部分の画像は暗くなる。これに対し図16の下段に示すように試料のある領域がマイナスに帯電していたとすると、電子ビームの照射によって放出された二次電子にはこの領域のチャージによる反発力が及び、二次電子検出器方向に押し出され検出され易い状態となる。したがって、その部分の画像は明るくなる。
本発明の基本原理は図15に示すプローブの替わりに電荷の正負が異なるイオンビームをスポット照射することにより生じる試料上の電位変化を観察することに基づいている。図2と図3はこの基本原理を説明するための図である。これらの図については後述する実施例の中で説明する。
本発明の照射位置決め方法のフローについて詳述する。第一に試料を帯電させることから始まる。この帯電には電子ビームを用いる場合とイオンビームを用いる場合がある。電子ビームを用いる場合は、SEMのビーム電流を大電流(nA程度)とし、試料面の観察を行う。大電流の電子ビームを試料に照射することで試料表面を負に帯電させる(ステップ1)。このとき試料の構造に対応して帯電状態は変化する。つぎに帯電に伴うコントラスト変化が明らかになったなら、帯電した部分の適当な箇所にイオンビームをスポット照射して正の電荷を注入する(ステップ2)。イオン照射を行いながら、そのときの試料面の様子をSEM観察する(ステップ3)。SEM像上にイオンビーム照射箇所が周囲の領域に対してコントラスト変化として観察でき、電子ビームとイオンビームの位置関係を検知することができる(ステップ4)。
【0009】
つぎに本発明のビーム位置調整法を実行するための装置の基本構成を図1に示す。1はFIB鏡筒、2はSEM鏡筒、3は真空チャンバー、4は二次電子検出器であり、5は本装置を制御するコンピュータ、6は制御コンピュータ5内に設けられているSEM及びFIBの位置決め手段、26はディスプレイ、7はFIB、SEM鏡筒に設けられている電界もしくは磁場によるビーム偏向機能を利用した位置合わせ機構、そして8はFIB用の電源、9はSEM用の電源である。
本構成図に基づいて上記フローの各ステップについて説明する。
ステップ1
帯電に電子を用いるかイオンを用いるかの選択、そしてビーム電流をいくらにするかの設定をキーボード等の入力手段を介してコンピュータ5へ入力する。それを受けてコンピュータ5は指定されたFIB鏡筒1又はSEM鏡筒2のFIB用電源8又はSEM用電源9へ設定情報を送り、荷電粒子を試料に照射して試料を観察すると共に帯電させる。以下ここではSEM鏡筒2により帯電に電子を用いることを選択した場合について述べる。試料の大電流観察で、帯電が十分進みコントラスト変化を明らかにする。
ステップ2
コンピュータ5からの走査指令を受けSEM鏡筒2が顕微鏡観察用の電子ビーム走査を実行すると、電子ビームは照射した箇所から二次電子を放出させ、二次電子検出器4が検出してコンピュータ5へその検出値を位置データと共に記憶する。走査領域のデータが記憶蓄積されたなら、コンピュータ5はそれを画像情報としてディスプレイへ出力しディスプレイはその時の試料画像を表示する。
ステップ3
上記試料画像からオペレータが適当な箇所を決めてディスプレイ上でその位置をマウス等の入力手段で指定すると、コンピュータ5はその位置情報を、チャージを中和する電荷をもった側の鏡筒であるFIB鏡筒に送る。信号を受信したFIB鏡筒は目標箇所にビームスポットが来るように偏向器を調整すると共に指示された加速電圧でイオンビームを照射して逆の電荷を注入する。
ステップ4
コンピュータ5の制御の下に電子ビーム鏡筒が顕微鏡機能で作動され、上記ステップ3のイオン照射がなされるときの試料面の様子をSEM観察する。先述したようにSEM像にイオンビーム照射位置がコントラスト変化として現れる。
ステップ5
コンピュータ5によりSEM像の画像解析を行い、FIBスポット箇所の位置を特定し、SEM像中心からの位置を計算しFIBとSEMの位置ズレ量を算出する。
ステップ6
コンピュータ5は算出した位置ズレ量をチャージを中和する電荷をもった側の鏡筒であるFIB鏡筒の偏向量に換算しメモリーに蓄える。
ステップ7
蓄えた偏向量をコンピュータ5はFIB鏡筒に送る。信号を受信したFIB鏡筒はSEM鏡筒中心位置にビームスポットが来るように偏向器を調整する。
ステップ8
SEM像を観察しながらFIBにて加工を行う場合には、コンピュータ5は、SEM像にて指定された加工位置をメモリーに蓄えた偏向量によりFIBの加工位置に換算し、その加工位置を指示する信号をFIB鏡筒に送る。信号を受信したFIB鏡筒は指定された加工位置にビームを照射し試料加工を行う。
上記と異なる態様のひとつとして、FIBの代わりにアパーチャの像を投影する可変成型イオンビームを使用する場合においても同様なフローが適用可能である。図11は通常の走査を行うFIBの代わりにアパーチャの像を投影する可変成型イオンビームを記述している。FIBにおいてイオンビームは試料上に集束されており、偏向電極によりある領域を走査することで特定領域の加工を行う。図11に示す可変成型イオンビームにおいては走査を行わずアパーチャの像を試料上に投影する。アパーチャの形状としては円孔、長方形等任意の形状が可能である。このような可変成型イオンビームにおいても上記機能を搭載した装置が可能である。この装置の形態において本機能、フローを搭載したシステムを追加することでビーム位置の調整が可能となる。またはSEM像を利用した加工領域の指定が可能となる。
さらに、上記と異なる態様のひとつとして、FIB鏡筒に加え、希ガスを使用した気体放電型のイオンビーム鏡筒を追加したFIB/SEM複合装置に関するものがある。図13は希ガスを使用した気体放電型のイオンビーム鏡筒を追加したFIB/SEM複合装置を記述している。希ガスを使用した気体放電型のイオンビーム鏡筒においてはビーム径が大きいためにビームを走査することによって得られる顕微鏡像だけではビーム位置の調整が困難である。この装置において本機能、フローを搭載したシステムを追加することでSEMで走査した領域内に気体イオンビームを一点に照射し、SEM像中に現れたコントラスト変化を観察することでビーム位置の調整が可能となる。またSEMと気体イオンビームの相対位置を測定することでSEM像を利用した加工領域の指定が可能となる。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の位置決め方法に用いる複合荷電粒子ビーム装置の形態を示す。図1は装置の基本構成を示しており、FIB鏡筒1とSEM鏡筒2とが同一真空チャンバー内に配置されている。FIB鏡筒1、SEM鏡筒2ともにそれぞれ制御コンピュータ5、FIB制御電源8,SEM制御電源9で制御されている。またFIBとSEMを同一の位置に照射するための位置合わせ機構(Deflector)7を備えている。SEMの電子ビームを大電流に設定して試料面を走査させ、試料面上にマイナスの電荷を帯電させると共にその顕微鏡画像を観察する。この時の試料上の帯電状況を図2の左側に示す。そこで、顕微鏡画像上のある領域にカーソルを合わせてクリックする。すると制御コンピュータ5はその位置情報を読み取り、その位置情報をFIB鏡筒1に送る。これを受けたFIB鏡筒1はビーム照射位置がそこに来るように偏向機構を制御し設定されたビーム電流でGa+等のプラスイオンを照射する。SEMの観察がなされる中でFIB照射位置にコントラスト変化が現れる。図2の右側がこの状態を表している。SEM像においてコントラスト変化位置を測定することでイオンビーム照射位置を特定できる。
【実施例2】
【0011】
図3にFIBを帯電と観察に用い、電子ビームでチャージを中和し逆帯電させる形態を示す。Ga+等のプラスイオンを照射することにより、試料面はプラスに帯電することになる。そのため、配線部分は電位が高くなり、FIB照射によって放出される二次電子は試料側に引きつけられ、二次電子検出器4に届きにくくなる。そのため、図3の左側に示すように配線部分が周りの基板部分に比べより暗くなっている。そこで、顕微鏡画像上である領域にカーソルを合わせてクリックするとコンピュータ5はその位置情報を読み取り、その位置情報を今度はSEM鏡筒2に送る。これを受けたSEM鏡筒2はビーム照射位置がそこに来るように偏向機構を制御し設定されたビーム電流で電子ビームを照射する。走査型イオン顕微鏡(SIM)の観察がなされる中で照射位置にコントラスト変化が現れる。図3の右側がこの状態を表している。SEM像においてコントラスト変化位置を測定することでイオンビーム照射位置を特定できる。
【実施例3】
【0012】
図4に本発明の位置決め方法の他の形態の説明図を示す。基本的な装置構成は図1と同じである。図4においては制御PC内画面について表示している。SEMの電子ビームを大電流に設定して試料面を走査させ、試料面上にマイナスの電荷を帯電させると共にそのSEM像を観察する。図4上の左側SEM像がこの状態を示している。そこで、FIBの顕微鏡画像上で、ある領域にカーソルを合わせてクリックする。するとコンピュータ5はその位置情報を読み取り、その位置情報をFIB鏡筒1に送る。これを受けたFIB鏡筒1はビーム照射位置がそこに来るように偏向機構を制御し設定されたビーム電流でGa+等のプラスイオンを照射する。SEMの観察がなされる中でFIB照射位置にコントラスト変化が現れる。図4下左側SEM像がこの状態を表している。SEM像においてコントラスト変化位置を測定することで、イオンビーム照射位置、またはイオンビームと電子ビームのズレ量を特定できる。
【実施例4】
【0013】
図5に本発明の位置決め方法の他の形態の説明図を示す。基本的な装置構成は図1と同じである。図5においては制御PC内画面について表示している。SEMの電子ビームを大電流に設定して試料面を走査させ、試料面上にマイナスの電荷を帯電させると共にそのSEM画像を観察する。そこで、FIBの顕微鏡画像上である領域にカーソルを合わせてクリックする。するとコンピュータ5はその位置情報を読み取り、その位置情報をFIB鏡筒1に送る。これを受けたFIB鏡筒1はビーム照射位置がそこに来るように偏向機構を制御し設定されたビーム電流でGa+等のプラスイオンを照射する。SEMの観察がなされる中でFIB照射位置にコントラスト変化が現れる。図5上の左側がこの状態を表している。SEM像においてコントラスト変化位置を測定することでイオンビーム照射位置またはイオンビームと電子ビームのズレ量を特定できる。この情報を用いてSEM像中においてイオンビーム照射する加工位置を指定する。図5下左図がこの状態を示している。制御PCはSEM像中の指定された位置から測定したイオンビームと電子ビームのズレ量に基づき、イオンビームの照射座標を算出し、FIB電源に出力することでイオンビームの照射を行う機能を実現することができる。
【実施例5】
【0014】
図6に本発明の位置決め方法の他の形態の説明図を示す。基本的な装置構成は図1と同じである。図6においては制御PC内処理について表示している。図6左はSEM像の表示、操作を行なう画面であり、十字印はSEM像の中心を表している。また図6右はFIB像の表示、操作画面である。SEMの電子ビームを大電流に設定して試料面を走査させ、試料面上にマイナスの電荷を帯電させると共にSEMの顕微鏡画像を観察する。そこで、FIB顕微鏡画像上で、ある領域にカーソルを合わせてクリックする。図6右上がこの状態を示している。するとコンピュータ5はその位置情報を読み取り、その位置情報をFIB鏡筒1に送る。これを受けたFIB鏡筒1はビーム照射位置がそこに来るように偏向機構を制御し設定されたビーム電流でGa+等のプラスイオンを照射する。SEMの観察がなされる中でSEM像においてFIB照射位置にコントラスト変化が現れる。図6の左上側がこの状態を表している。
図6左下に示すようにSEM像において、画像処理を行うことでコントラスト変化箇所の位置を特定する。図6左下の十字印で表されている中心位置からのズレ量X,Yを測定することでイオンビーム照射位置またはイオンビームと電子ビームのズレ量を特定することができる。
【実施例6】
【0015】
図7に他の実施例による本発明のSEM/FIB複合装置の形態を示す。制御PC内に位置決めソフトウエアを内蔵し、位置決めをフローに沿って自動的に行う機能を有している。図8に制御PC内の位置決めソフトウエアの処理の説明図を示す。内部機能は先述した図6と同様であり、ビーム照射からイオンビーム照射位置算出までのフローの機能を自動化している。
【実施例7】
【0016】
図9に本発明のSEM/FIB複合装置の他の形態の説明図を示す。基本的な装置構成は図7と同じであり、制御PC内に位置決めソフトウエアを内蔵し、位置決めをフローに沿って自動的に行う機能を有している。図9においては制御PC内処理時の画面を示しており、図5で前述した機能を自動的に行うことを可能にしている。
【実施例8】
【0017】
図10に本発明のSEM/FIB複合装置の他の形態の装置構成図を示す。イオン源として液体金属イオン源を備えた液体金属イオン源FIB鏡筒11が設けられている。液体金属イオン源は細い針先端に液体金属を付け、高電界を加えることで金属イオンを取り出すことが可能な高輝度なイオン源であり、ビームを細く絞ることが必要なイオンビーム鏡筒のイオン源として有効である。イオン源種としてGa、In、Pb、Sb、Au等が可能である。またその他の基本的な装置構成は図7と同じであり、制御PC内に位置決めソフトウエアを内蔵し、位置決めをフローに沿って自動的に行う機能を有している。前記のイオンビーム鏡筒と同様に液体金属イオン源を使用したFIB鏡筒の位置決め、照射位置決定を行なうことができる。
【実施例9】
【0018】
図11に本発明のSEM/FIB複合装置の他の形態の装置構成図を示す。イオンビーム鏡筒として可変成型イオンビーム鏡筒を備えている。可変成型イオンビーム鏡筒について図12を用いて説明する。通常の集束イオンビーム鏡筒の場合図12の左に示すようにイオンビームはCL(コンデンサレンズ)16やOL(対物レンズ)17からなるレンズ系により試料上に集束されている。顕微鏡像を取得する場合、もしくは試料上を加工する場合は走査電極に電圧を印加し、試料上を走査する。他方、図12の右に示すように可変成型イオンビーム鏡筒においては試料上に集束するのではなくビームを制限する絞りである、任意形状のスリットを備えたアパーチャ14により形成されるパターンを投影する。絞りには任意の形状が使用可能であり、試料上に投影されたイオンビームにより試料は一定パターンに加工される。また通常の集束イオンビーム装置においてもレンズ条件を変更することで可変成型イオンビーム鏡筒と使用できる。このような可変成型イオンビーム鏡筒においては走査を行わないために試料表面の顕微鏡観察は不可能であり、特定の加工領域へのイオンビームの位置決めは不可能である。図11において図示されていないが、SEM、制御PC、電源等の基本的な装置構成は図7と同じであり、また制御PC内に位置決め機構を有している。前述したSEMによるFIB鏡筒の位置決め法が同様に可変成型イオンビーム鏡筒に対しても適用可能である。
【実施例10】
【0019】
図13に本発明のSEM/FIB複合装置の他の形態を示す。複数のイオンビーム鏡筒を同一チャンバー内に備えていることを特徴とする。イオンビーム鏡筒の一方は集束イオンビーム鏡筒であり、他方はAr、He、Kr、Xe等希ガスを利用した気体放電型イオンビーム鏡筒である。気体放電型イオンビーム鏡筒は集束イオンビーム鏡筒を使用して作成した試料表面のダメージ層、アモルファス層の軽減に使用される。特にダメージ層の軽減のためには1kV以下の低加速電圧が使用される。また集束イオンビームを使用した試料作成時にイオン源として使用されるGa等の元素が試料内部へ注入されてしまうが、混入層を取り除くためにも使用が可能である。気体放電型イオンビーム鏡筒は光源が大きいためビームを細く絞ることが困難であり、ビームの顕微鏡像を使用してビームの照射位置を特定することが困難である。図13においてSEM、FIB等の基本的な構成は図7と同じであり、気体放電型のイオン鏡筒がチャンバー内に追加されている。制御PC、電源等は図示されていないが制御PC内に位置決め機構を有している。前述したSEMによるFIB鏡筒の位置決め法が同様にこの気体放電型のイオン鏡筒に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の位置決め法により、最小限のイオンビーム照射で電子ビームとイオンビームの位置合わせを行うことが可能となり、近年問題となっているイオンビームによるダメージを低減させた複合荷電粒子ビーム装置を提供することができる。またイオン顕微鏡観察による位置特定が困難なイオンビームにおいても電子ビームにて位置指定を行うことを可能にした複合荷電粒子ビーム装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の位置決め方法を実施する装置の基本構成を示す図である。
【図2】電子チャージを利用した本発明の試料の帯電状況を説明する図である。
【図3】正電荷のイオンチャージを利用した本発明の試料の帯電状況を説明する図である。
【図4】本発明の位置決め法を説明する図である。
【図5】本発明の位置決め法を説明する図である。
【図6】本発明の位置決め法を説明する図である。
【図7】本発明の位置決め方法を実施する装置の基本構成を示す図である。
【図8】本発明の位置決め方法を実施する装置の内部機能を示す図である。
【図9】本発明の位置決め方法を実施する装置の内部機能を示す図である。
【図10】本発明の位置決め方法を実施する装置において液体金属イオン源を搭載したイオン鏡筒を示す図である。
【図11】本発明の位置決め方法を実施する装置において可変成型ビーム方式を搭載したイオン鏡筒を示す図である。
【図12】可変成型ビーム方式と集束イオンビームを説明する図である。
【図13】本発明の位置決め方法を実施する装置において、集束イオン鏡筒と希ガスイオン源を搭載したイオン鏡筒を搭載した構成を説明する図である。
【図14】従来例を説明する図である。
【図15】本発明の電位コントラストを説明する従来例である。
【図16】本発明の基本現象である電位コントラストを説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
1 FIB鏡筒 2 SEM鏡筒
3 真空チャンバー 4 二次電子検出器
5 制御コンピュータ 6 位置決め機能
7 位置合わせ機構 8 FIB用電源
9 SEM用電源 10 試料
11 液体金属イオン源FIB鏡筒 12 位置決めソフト
13 可変成型イオンビーム鏡筒 14 任意形状のスリットを備えたアパーチャ
15 アパーチャ 16 CL
17 OL 18 気体放電型イオン源を使用したイオンビーム鏡筒
19 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷電粒子ビーム鏡筒を同一真空チャンバーに配置した複合荷電粒子ビーム装置における前記複数の荷電粒子ビームの照射位置決め方法において、第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、前記帯電させた領域に前記第一の荷電粒子ビームとは反対の極性を持つ第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態とのコントラストの変化を第一の荷電粒子ビームにより顕微鏡観察して第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定することを特徴とする複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法。
【請求項2】
前記第一の荷電粒子ビームが電子ビーム、前記第二の荷電粒子ビームがイオンビームであり、前記イオンビームの照射はスポット照射である請求項1に記載の複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法。
【請求項3】
前記第一の荷電粒子ビームが集束イオンビーム、前記第二の荷電粒子ビームが電子ビームであり、前記電子ビームの照射はスポット照射である請求項1に記載の複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法。
【請求項4】
前記第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定した後、前記特定した照射位置の第一の荷電粒子像中心からの位置を計算することで、第一の荷電粒子像における照射位置と、第二の荷電粒子像における照射位置のズレ量を算出し、この算出したズレ量に基づいて、第一の荷電粒子像上で、任意の第二の荷電粒子照射領域を指定する請求項1に記載の複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法。
【請求項5】
複数の荷電粒子ビーム鏡筒を同一真空チャンバーに配置した複合荷電粒子ビーム装置において第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、前記帯電させた領域に第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態とのコントラスト変化を第一の荷電粒子ビームにより顕微鏡観察して第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定し、所望の第二の荷電粒子ビーム照射領域の指定をコントラスト変化の観察を行った第一の荷電粒子ビームによる顕微鏡像で行うことを特徴とする複合荷電粒子ビーム装置における照射位置決め方法。
【請求項6】
第一の荷電粒子ビーム鏡筒と、前記第一の荷電粒子ビームとは反対の極性を有する荷電粒子ビームを照射する第二の荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームを試料に照射した時に試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、
前記荷電粒子ビーム鏡筒及び二次電子検出器を収容する真空チャンバーと、
前記第一及び第二の荷電粒子ビーム鏡筒それぞれの制御電源と、
前記制御電源を制御し、かつ、前記二次電子検出器からの信号を処理し及びその処理したデータとその信号に対応するビーム照射位置と共に画像データとして記憶する制御用コンピュータと、
前記画像データに基づく前記制御用コンピュータからの画像信号を入力し、画像表示するディスプレイとを有し、
前記第一の荷電粒子ビームを試料面に照射して帯電させた状態と、前記帯電した領域に前記第二の荷電粒子ビームを照射したときの状態とのコントラストの変化を示す画像データを取得し、該取得した画像データから第二の荷電粒子ビーム照射位置を特定する機能を有することを特徴とする複合荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記荷電粒子ビーム鏡筒のうちイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒は液体金属イオン源を使用した集束イオンビーム鏡筒である請求項6に記載の複合荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記荷電粒子ビーム鏡筒のうちイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒は絞りのパターンを投影することを特徴とした可変成型イオンビーム鏡筒である請求項6に記載の複合荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
電子ビーム鏡筒と複数のイオンビーム鏡筒と二次荷電粒子検出器とをそなえた複合装置であって、第一のイオンビーム鏡筒は液体金属イオン源を使用した集束イオンビーム鏡筒であって第二のイオンビーム鏡筒は希ガスを使用した気体放電型イオンビーム鏡筒であることを特徴とした請求項6に記載の複合荷電粒子ビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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