複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料
【課題】単一かつ光学的散乱が小さく、耐熱性及び耐酸化性に優れた二色性の複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料の提供。
【解決手段】少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッド1をシェル2で被覆してなるコアシェル構造からなる複合金属ナノロッドであって、前記複合金属ナノロッドの球相当半径が15nm以下であり、かつ該複合金属ナノロッドのアスペクト比が1.1〜10である複合金属ナノロッドである。該複合金属ナノロッドの両端面が、角のない曲面状である態様、などが好ましい。
【解決手段】少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッド1をシェル2で被覆してなるコアシェル構造からなる複合金属ナノロッドであって、前記複合金属ナノロッドの球相当半径が15nm以下であり、かつ該複合金属ナノロッドのアスペクト比が1.1〜10である複合金属ナノロッドである。該複合金属ナノロッドの両端面が、角のない曲面状である態様、などが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一かつ光学的散乱が小さく、耐熱性及び耐酸化性に優れた二色性の複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
可視から近赤外域領域に吸収を有し、二色性を示す無機材料として、アスペクト比2〜5の金ナノロッドがあり、特定波長領域に吸収を発現させるためにサイズが単一なナノロッドの合成に関する数多くの文献が開示されている。しかし、前記金ナノロッドはその短軸由来の吸収が530nm付近と視感度の高い領域にあるため、可視光域の無色透明性が要求される一般的な光学用途には不向きである。
一方、銀ナノロッドは短軸由来の吸収が410nmと比較的可視域の端にあり、またモル吸光係数が金ナノロッドより大きいため、金ナノロッドに比べて一般的な光学用途に適しているが、金ナノロッドのような単一かつ高収率な合成方法は知られていない。例えば銀ナノロッドの合成方法として、界面活性剤を用いた方法が開示されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法により合成された銀ナノロッドは単一性が低く、サイズも大きく、耐酸化性も低いという問題がある。
【0003】
また、単一な銀ナノロッド相当の吸収特性を持つ金属粒子の合成方法として、金ナノロッドの表面に銀を析出させた金銀複合金属ナノロッドが開示されている(非特許文献2参照)。この金銀複合金属ナノロッドは、同一アスペクト比の銀ナノロッドとほぼ同様の吸収特性を示すため、単一性に優れた二色性の金銀複合金属ナノロッドである。しかし、前記非特許文献2の合成方法により得られた金銀複合金属ナノロッドは、そのサイズが大きいため散乱が大きく、光学用途には不向きである。更に、金銀複合金属ナノロッド分散液中に界面活性剤を多量に含むため、精製しきれない界面活性剤が塗膜中で析出し、塗膜の透明性を損なってしまうという問題がある。
【0004】
また、特許文献1には、金、銀、及び銅から選ばれる2種類の金属からなる複合金属コロイド粒子が提案されている。しかし、この提案の複合金属コロイド粒子はアスペクト比が1の球形であり、二色性を示さないものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−256915号公報
【非特許文献1】Chem.Comm.,7(2001)617−618
【非特許文献2】J.Phys.Chem.B,108(2004)5882−5888
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光域の無色透明性が要求される一般的な光学用途において、単一なサイズに調整され、光学的散乱が小さく、かつ二色性を示し、特にコアシェル構造にすること、及びナノロッド端面(キャップ)形状を角のない曲面状にすることにより、耐酸化性及び耐熱性が向上した複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。即ち、
<1> 少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなる複合金属ナノロッドであって、
前記複合金属ナノロッドの球相当半径が15nm以下であり、かつ該複合金属ナノロッドのアスペクト比が1.1〜10であることを特徴とする複合金属ナノロッドである。
<2> 複合金属ナノロッドの両端面が、角のない曲面状である前記<1>に記載の複合金属ナノロッドである。
<3> 複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たす前記<2>に記載の複合金属ナノロッドである。
<4> コアを構成するコア金属に対してシェルを構成するシェル金属の方が卑である前記<1>から<3>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドである。
<5> コア金属が金、白金、及びパラジウムのいずれかであり、シェル金属が銀、銅、及びアルミニウムのいずれかである前記<4>に記載の複合金属ナノロッドである。
<6> コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)が、0.1〜130である前記<1>から<5>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドである。
<7> コアナノロッドの球相当半径が10nm以下であり、かつコアナノロッドのアスペクト比が1.5〜24である前記<1>から<6>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有分散物である。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドと、バインダーを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有組成物である。
<10> 前記<9>に記載の複合金属ナノロッド含有組成物からなることを特徴とする偏光材料である。
<11> 複合金属ナノロッド含有組成物からなるフィルムを延伸することにより、複合金属ナノロッドの長軸を延伸方向に配向させた前記<10>に記載の偏光材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、可視光域の無色透明性が要求される一般的な光学用途において、単一なサイズに調整され、光学的散乱が小さく、かつ二色性を示し、特にコアシェル構造にすること、及びナノロッド端面(キャップ)形状を角のない曲面状にすることにより、複合金属ナノロッドの耐酸化性及び耐熱性が向上した複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(複合金属ナノロッド)
本発明の複合金属ナノロッドは、少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなる。
前記ナノロッドとは、短軸よりも長軸が長い棒状粒子を意味する。
【0010】
本発明の複合金属ナノロッドは、図1に示すように、コアナノロッド1をシェル2で被覆してなるコアシェル構造からなる。図1の複合金属ナノロッドのアスペクト比は、長軸長さ(以下、「長径」と称することもある)Aを、短軸長さ(以下、「短径」と称することもある)Bで割った値(A/B)から求められる。本発明において、前記複合金属ナノロッドのアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記複合金属ナノロッドのアスペクト比は1.1〜10であり、可視光領域に吸収を付与する観点からは1.3〜5が好ましい。前記アスペクト比が、1.1未満であると、十分な二色性が得られないことがあり、10を超えると、所望の可視域から近赤外域の吸収が得られないことがある。
【0011】
前記複合金属ナノロッドの球相当半径(R)は15nm以下であり、散乱の観点からは、13nm以下が好ましい。前記球相当半径(R)が15nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物の透過性が下がってしまうことがある。
ここで、前記球相当半径(R)とは、複合金属ナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、複合金属ナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
【数1】
ただし、Aは複合金属ナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。Bは複合金属ナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
【数2】
ただし、A及びBは、上記と同じ意味を表す。
【0012】
ここで、複合金属ナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、透過型電子顕微鏡(TEM)で複合金属ナノロッドを観察した際の形状から判別することができる。複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.2Bである場合(例えば球面状(図12のC及びE)、楕円面状(図12のD)、楕円体状(図12のF)など)には略円柱形状とする。
一方、複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、0.2B<L≦0.9Bである場合(例えば多面体状(図12のA及びBなど))には略直方体状とする。
なお、前記複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lは、後述する複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと同義である。
【0013】
本発明においては、前記複合金属ナノロッドの両端面は、図1に示すように、角のない曲面状であることが短軸由来の吸収ピークの線幅が細くなり、二色性が向上する点で好ましい。前記複合金属ナノロッドの両端面とは、ナノロッドの長軸方向における両端の面を意味し、両方の端面が角のない曲面状であることが好ましく、一方の端面が角のない曲面状であり、他方の端面が角のない曲面状でない複合金属ナノロッドは該当しない。
前記角のない曲面状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば球面、楕円面、楕円体、多面体面などが挙げられ、具体的には、図11に示すように、複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たすものが好ましく、L≦0.8Bを満たすものがより好ましい。前記Lが0.9Bを超えると、短軸の吸収がブロードになってしまうことがある。
前記複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子の平均値として求めた。
図13の(1)〜(8)で示す端面形状を有する複合金属ナノロッド(ただし、球相当半径が15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である)は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれる。
図14の(1)〜(3)、並びに図15及び図16で示す端面形状を有する複合金属ナノロッドは、本発明の複合金属ナノロッドには含まれない。
【0014】
本発明の複合金属ナノロッドは、少なくとも2種の金属を含有していれば特に制限はないが、コアナノロッドを構成するコア金属と、シェルを構成するシェル金属とが異なる金属であることが好ましい。なお、コアナノロッド又はシェルが複数種の金属を含有していても構わない。
前記コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい。このことは、前記シェル金属の還元電位が前記コア金属の還元電位よりも高いことを意味する。前記金属の還元電位は、「化学便覧改訂3版 基礎編II」に記載されている。
コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい理由としては、シェル金属よりコア金属の方が卑である場合、シェル金属を析出させる際にコア金属が溶出してしまうことがあるためである。
前記コア金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられる。これらの中でも、金が特に好ましい。
前記シェル金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、などが挙げられる。これらの中でも、銀が特に好ましい。
したがって本発明の複合金属ナノロッドとしては、コア金属が金、シェル金属が銀からなる金コア銀シェルナノロッドが特に好適である。
【0015】
前記コアナノロッドと前記シェルの体積比(シェル/コアナノロッド)は、0.1〜130が好ましく、耐酸化性の観点からは1〜40がより好ましい。前記体積比が、0.1未満であると、シェル金属によるコアナノロッドの被覆が不十分となり、シェル金属の光学特性が十分に発現されなくなることがあり、130を超えると、酸化されてしまうことがある。
ここで、前記コアナノロッドの体積Vコアと前記シェルの体積Vシェルとの体積比(シェル/コアナノロッド)は、複合金属ナノロッド及びコアナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
略直方体状の場合には、Vシェル=(A×B×B)−Vコア
Vコア=(a×b×b)
略円柱形状の場合には、Vシェル=(π×A×B×B/4)−Vコア
Vコア=(π×a×b×b/4)
ただし、A及びBは上記と同じ意味を表す。aはコアナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。bはコアナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
なお、複合金属ナノロッド又はコアナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、上記球相当半径の場合と同様にして判別することができる。
【0016】
ここで、図2は、コアナノロッドを示し、そのアスペクト比は、コアナノロッドの長軸長さaを、コアナノロッドの短軸長さbで割った値(a/b)から求められる。本発明において、前記コアナノロッドのアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記コアナノロッドのアスペクト比は、1.5〜24が好ましく、可視光領域に吸収を付与する観点から1.5〜10がより好ましい。前記アスペクト比が、1.5未満であると、複合金属ナノロッド吸収特性の可視光域での調整範囲が狭くなることがあり、24を超えると、可視光域に吸収を付与するためにシェル金属の厚みが厚くなり、その結果、粒子体積が大きくなってしまい透過性が低下することがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)は10nm以下が好ましく、複合金属ナノロッドの散乱を小さくし、かつ吸収特性を制御するためには8nm以下がより好ましい。前記コアナノロッドの球相当半径(r)が10nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物などの透過性が低くなることがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)とは、コアナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、上記複合金属ナノロッドの球相当半径と同様にして求めることができる。
【0017】
本発明の複合金属ナノロッドの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、種晶形成工程、コアナノロッド形成工程、及びシェル形成工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0018】
−種晶形成工程−
前記種晶形成工程は、第1の金属化合物を含む溶媒中で還元反応させて種晶を形成する工程である。
【0019】
−コアナノロッド形成工程−
前記コアナノロッド形成工程は、溶媒中に前記種晶、界面活性剤、及び第1の金属化合物を添加し、還元反応させて、コアナノロッドを形成する工程である。
【0020】
前記第1の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第1の金属化合物における金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられ、これらの中でも、金が特に好ましい。
前記金属塩を形成する酸としては、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硝酸;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば酢酸、酪酸、シュウ酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、安息香酸、などが挙げられる。
前記スルホン酸としては、例えばメチルスルホン酸などが挙げられる。
前記金属塩としては、例えば硝酸銀、塩化金酸、塩化白金酸などが挙げられる。
【0021】
前記金属錯体を形成するキレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアセチルアセトナート、EDTAなどが挙げられる。また、上記の金属塩と配位子とで錯体を形成してもよく、該配位子としては、例えばイミダゾール、ピリジン、フェニルメチルスルフィドなどが挙げられる。
なお、前記金属化合物には、金属イオンのハロゲン化錯体の酸(例えば塩化金酸、塩化白金酸など)、アルカリ金属塩(例えば塩化金酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウムなど)も含まれる。
【0022】
−シェル形成工程−
前記シェル形成工程は、溶媒中に前記コアナノロッド、第2の金属化合物、界面活性剤、及びビニルピロリドン化合物を添加し、還元反応によりコアナノロッドの表面にシェルを形成する工程である。
【0023】
前記第2の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第2の金属化合物における金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、などが挙げられ、これらの中でも、銀が特に好ましい。
前記金属塩、金属錯体、及び有機金属化合物としては、前記第1の金属化合物と同様である。
【0024】
前記還元は、溶媒を加熱、光還元、還元剤添加、化学還元法などが挙げられるが、還元剤添加が特に好ましい。
前記還元剤としては、例えば水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジン、アスコルビン酸、アミン類、チオール類などが挙げられる。なお、化学還元法としては、電気分解法を用いて行うこともできる。
【0025】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ビニルピロリドン化合物としては、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、ピロリドンユニットの繰り返し単位数が85以上であることが好ましく、300〜12,000がより好ましい。前記繰り返し単位数が85未満であると、PVPが金属粒子の特定の結晶面に吸着できずに、球状粒子となってしまうとなることがある。
【0027】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(CTAH)に代表されるセチルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、オクチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)に代表される4級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤は殺菌性を示し、水性生物への毒性など環境への影響が懸念される。そのため、工程中でCTABを粉体の形で回収することにより、環境影響を減少させることが必要である。例えば、金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別する操作を行うことにより、約75%のCTABを固体状態で回収することが可能である。途中工程でCTABを回収することにより、CTABを再利用することができるため、また限外濾過膜による精製時間の短縮されるため、コストダウンや環境影響の減少につながる。
【0028】
本発明の複合金属ナノロッドは、分散剤の他、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン等の高分子からなる誘電体で被覆されていてもよい。これらの誘電体で被覆されることにより、吸収特性の調整、熱安定性、耐酸化性等の機能を付与することが可能になる。
【0029】
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子表面に吸着し、電荷による反発や立体障害による凝集防止を付与したり、更には水溶性や油溶性を付与できる物質であればよい。
電荷による反発を付与する物質としては、例えば4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系、カルボン酸塩系等の低分子系イオン性物質、又は高分子系イオン性物質が挙げられ、分散したい粒子の表面電位や酸・塩基性により選択することができる。
立体障害を付与する物質としては、少なくとも粒子表面への吸着基と立体障害を付与する部位を有していればよく、粒子表面への吸着基としては、例えばチオール、ジスルフィド、スルフォキシド等のS元素含有官能基;リン酸やホスフィン等のP元素含有官能基;カルボニル、カルボキシル、エーテル、ヒドロキシル等のO元素含有官能基;アミン、アミノ、アンモニウム塩、ニトロ、ヒドロキシアミン、アゾ、イミン等のN元素を含む官能基などが好ましい。例えば、DISPERBIK-180、DISPERBIK-184、DISPERBIK-190、DISPERBIK-2000、DISPERBIK-2001(ビックケミー社製)、ポリエチレンイミン系のルパゾール、スルホン酸系のタモール(BASF社製)、末端チオールポリエチレングリコールや末端チオールポリスチレン等の末端チオールポリマー系(Polymer Source Inc.社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(複合金属ナノロッド含有組成物)
本発明の複合金属ナノロッド含有組成物は、本発明の前記複合金属ナノロッドと、バインダーとを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0031】
前記バインダーとしては、光透過性が高く、また熱可塑性のある樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記その他の成分としては、例えば溶媒、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、耐湿性向上剤、熱安定化剤、顔料、金属酸化物、金属窒化物、導電性粒子などが挙げられる。
【0033】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子表面に吸着し、電荷による反発や立体障害による凝集防止を付与したり、更には水溶性や油溶性を付与できる物質であればよい。
電荷による反発を付与する物質としては、例えば4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系、カルボン酸塩系等の低分子系イオン性物質、又は高分子系イオン性物質が挙げられ、分散したい粒子の表面電位や酸・塩基性により選択することができる。
立体障害を付与する物質としては、少なくとも粒子表面への吸着基と立体障害を付与する部位を有していればよく、粒子表面への吸着基としては、例えばチオール、ジスルフィド、スルフォキシド等のS元素含有官能基;リン酸やホスフィン等のP元素含有官能基;カルボニル、カルボキシル、エーテル、ヒドロキシル等のO元素含有官能基;アミン、アミノ、アンモニウム塩、ニトロ、ヒドロキシアミン、アゾ、イミン等のN元素を含む官能基などが好ましい。例えば、DISPERBIK-180、DISPERBIK-184、DISPERBIK-190、DISPERBIK-2000、DISPERBIK-2001(ビックケミー社製)、ポリエチレンイミン系のルパゾール、スルホン酸系のタモール(BASF社製)、末端チオールポリエチレングリコールや末端チオールポリスチレン等の末端チオールポリマー系(Polymer Source Inc.社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系、アルキルグルコシド系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、ショ糖脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩系、ジアルキルジメチルアンモニウム塩系、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩系、アミン塩系などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えばセッケン(脂肪酸ナトリウム、カリウム塩)、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、高級アルコール硫酸エステル塩系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系、α−スルホ脂肪酸エステル系、α−オレフィンスルホン酸塩系、モノアルキルリン酸エステル塩系、アルカンスルホン酸塩系などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばアルキルアミノ脂肪酸塩系、アルキルベタイン系、アルキルアミンオキシド系などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、クエン酸、ポリビニルアルコール樹脂、トリアゾール化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
なお、膜質を改良するために、架橋剤や可塑剤を含んでもよい。例えば、膜質を強くするためにはホウ酸等の架橋剤を添加し、逆にしなやかにするためにはグリセリン等の可塑剤を添加する。前記架橋剤及び可塑剤は、塗布膜作製時に添加してもよいし、塗布膜乾燥後や塗布膜延伸後にウエットコーティングにより付与してもよい。
なお、複合金属ナノロッド表面に吸着した分散剤は、溶媒やバインダーへの相溶性を考慮し、適宜置換してもよい。
前記複合金属ナノロッド以外の粒子を混合し、紫外線吸収や熱線吸収等の機能を付与したり、ガラスとの屈折率を合わせてもよい。例えば、金属酸化物半導体粒子を添加することにより、紫外線吸収や熱線遮蔽の機能を付与することが可能である。
【0038】
本発明の複合金属ナノロッド含有組成物は、本発明の前記複合金属ナノロッドを含有してなり、種々の用途に用いることができるが、以下の本発明の偏光材料として特に好適に用いられる。
【0039】
(偏光材料)
本発明の偏光材料は、本発明の前記記載の複合金属ナノロッド含有組成物からなる。
この場合、前記複合金属ナノロッド含有組成物からなるフィルムを延伸することにより、複合金属ナノロッドの長軸を延伸方向に配向させることが好ましい。
また前記複合金属ナノロッドの配向方法としては、延伸配向の他、ウェブコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ディップコート、ラングミュアブロジェット法等の塗布による流動配向や剪断応力による配向、塗布乾燥時のベナール対流を利用した自己組織化による配向、高粘度流体による配向、マイクロ流路からの吐出やエレクトロスピニング法による配向、ウェブラビングやナノインプリントにより表面に微細溝を設けた支持体への塗布配向などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して配向性を向上させてもよい。
【0040】
本発明の偏光材料は、例えばプロジェクター、液晶モニター、液晶テレビ等に応用できるが、更に、光アイソレータ、光ファイバ、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。これらの中でも、特開2007−334150号公報に開示されているような自動車の前窓等の乗り物用ガラスが特に好ましい。
【0041】
前記自動車の前窓等の乗り物用ガラスとしては、合わせガラスが好適である。
前記合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に中間層を介在させて一体化したものである。このような合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することがなく安全であるため、自動車等の乗り物のフロントガラス、建築物等の窓ガラスとして広く用いられている。前記中間層が本発明の前記偏光材料を含むことが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
−金ナノ粒子(種晶)の合成工程−
100mMのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、和光純薬株式会社製)水溶液100mlに、10mMの塩化金酸水溶液(関東化学株式会社製)5mlを添加し、更に直前に溶解した10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mlを添加し、強攪拌することにより、金ナノ粒子(種晶)を形成した。
【0044】
−金ナノロッド(コアナノロッド)の合成工程−
100mMのCTAB水溶液1000mlに、10mMの硝酸銀水溶液100ml、10mMの塩化金酸水溶液200ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液50mlを添加し、攪拌することにより、無色透明の液を得た。更に前記金ナノ粒子(種晶)水溶液100mlを添加し、2時間攪拌することにより、金ナノロッド水溶液を得た。
<金ナノロッドの評価>
得られた金ナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、金ナノロッドの短軸の吸収に帰属する510nmと、長軸に帰属する800nmのピークを示した。
得られた金ナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図3のTEM写真に示すように、短径が6nm、長径が21nm、アスペクト比が3.5、球相当半径が5.7nmのロッド状粒子であることが分かった。結果を表1に示す。
【0045】
−銀シェル形成工程−
1質量%のPVP(ポリビニルピロリドンK30、和光純薬株式会社製)水溶液8kgに、前記金ナノロッド分散液を2kg、10mMの硝酸銀水溶液100ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液100mlを添加し、攪拌した。更に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液280mlを5分間かけて添加し、溶液のpHを7〜8に調整することにより、銀を金ナノロッド表面に析出させて、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮し、更に分散液の電気伝導度が70mS/m以下になるまで精製を行い、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
【0046】
次に、得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、以下のようにして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面形状を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
<光学特性>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、紫外可視近赤外分光度計(日本分光株式会社製、V−670)で吸収スペクトルを測定したところ、図4に示すように、短軸の吸収に帰属する410nmと、長軸に帰属する650nmのピークを示した。
【0048】
<粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面形状の測定>
各粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM)((日本電子株式会社製、EX1200))観察により、短径、長径、アスペクト比、端面形状を測定した。またアスペクト比の平均値は、TEMにより観察された写真から任意に抽出した200個の粒子について、画像処理装置(Mountech社製、Macview(Ver.3))を用いて求めた。
図5に、実施例1の金コア銀シェルナノロッドのTEM写真を示す。
【0049】
−球相当半径の測定−
前記球相当半径とは、ナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、ナノロッドの形状に応じて以下の式により求めた。
【数3】
ただし、Aはナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。Bはナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測した。
【数4】
ただし、Aはナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。Bはナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測した。
ここで、前記ナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、透過型電子顕微鏡(TEM)でナノロッドを観察した際の形状から判別した。ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.2Bである場合(例えば球面状(図12のC及びE)、楕円面状(図12のD)、楕円体状(図12のF)など)には略円柱形状とした。
一方、複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、0.2B<L≦0.9Bである場合(例えば多面体状(図12のA及びB)など)には略直方体状とした。
また複合金属ナノロッドの端面(キャップ)形状を判別するには、TEMにより観察された写真から任意に抽出した200個の粒子について、デジタルノギスを用いて求めた。
【0050】
−コアナノロッドとシェルの体積比−
前記コアナノロッドの体積Vコアと前記シェルの体積Vシェルとの体積比(シェル/コアナノロッド)は、複合金属ナノロッドの形状及びコアナノロッドの形状に応じて以下の式で算出した。
略直方体状の場合には、Vシェル=(A×B×B)−Vコア
Vコア=(a×b×b)
略円柱形状の場合には、Vシェル=(π×A×B×B/4)−Vコア
Vコア=(π×a×b×b/4)
ただし、A及びBは上記と同じ意味を表す。aはコアナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。bはコアナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測した。
【0051】
(実施例2)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を25mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を55mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例4)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を150mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例5)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を200mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
図6に、実施例5の金コア銀シェルナノロッドのTEM写真を示す。
【0055】
(実施例6)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程で添加する金ナノ粒子(種晶)水溶液量を300mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例7)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程で添加する金ナノ粒子(種晶)水溶液量を20mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
J.Phys.Chem.B,108(2004)5882−5888(非特許文献2)に従って、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェル複合ナノロッド分散液を得た。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
図7に、比較例1の金コア銀シェルナノロッドのTEM写真を示す。
【0058】
(比較例2)
−銀ナノロッドの合成−
Chem.Comm.,7(2001)617−618(非特許文献1)に従って、銀ナノロッドを合成した。
得られた銀ナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状などを測定した。結果を表1に示す。
図8に、比較例2の銀ナノロッドのTEM写真を示す。
【0059】
(比較例3)
−金コア銀シェルナノ粒子の合成−
特開2004−256915号公報(特許文献1)の実施例2に従って、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例4)
−金ナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッドについて、実施例1と同様にして、光学特性、球相当半径、粒子サイズ、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例5)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程にて添加する10mMの塩化金酸水溶液量を1400mlに、100mMのアスコルビン酸量を350mlに変更し、また銀シェル形成工程にて添加した10mMの硝酸銀水溶液量を700mlに、100mMのアスコルビン酸水溶液量を500mlに、また0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液量を800mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られ金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例6)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程にて添加した金ナノ粒子(種晶)水溶液量を20mlに変更し、また銀シェル形成工程にて添加した100mMアスコルビン酸水溶液量を200mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
図9に、比較例6の銀ナノロッドのTEM写真を示す。
【0063】
次に、得られたナノロッド及びナノ粒子について、以下のようにして、散乱強度、及び短軸副吸収の有無、及び耐酸化性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
<散乱強度>
下地及び背景を黒紙にした上に、光路長10mmの石英セルに入れた金属ナノ粒子分散液を設置し、手前斜め45°から懐中電灯の光をあてた時の分散液の濁り具合で散乱強度を評価した。
【0065】
<短軸副吸収の有無>
複合金属ナノロッドの吸収スペクトルから、短軸副吸収の有無を評価した。
【0066】
<耐酸化性の評価>
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液0.1mlと、純水4.0mlを混合し、更に1質量%の過酸化水素水0.1mlを添加した後の吸光度変化により耐酸化性を下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:室温で10日間経時後、極大吸収波長及び吸光度に変化は認められなかった
×:室温で10日間経時後、極大吸収波長及び吸光度に変化が認められた
【0067】
【表1−1】
【0068】
【表1−2】
【0069】
(実施例8)
<金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムの作製>
−CTABの除去−
実施例1で作製した金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別し、CTABを粗除去した金ナノロッド分散液を得た。この時のCTABの回収率は、約75%であった。
得られたCTABを粗除去した金ナノロッド分散液を用いて実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッドを形成した。得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮した。また、分散液の電気伝導度が70mS/m以下になるまで精製を行い、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
【0070】
−金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムの作製−
次に、10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)10.0g、純水10.0g、及び得られた前記金コア銀シェルナノロッド分散液1.0gを混合し、清浄なPETベース(東洋紡績株式会社製、200μm厚み)に1mm厚みのアプリケーターを設置し、塗布バー(#0)を用いてバーコート塗布し、12時間室温で乾燥させた後、PETベースよりPVAフィルムを剥離し、厚み40μmの金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムを作製した。
【0071】
<分光スペクトルの測定>
得られたPVAフィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、含有する金銀複合ナノロッドに由来する吸収を示した。
【0072】
<ヘイズ値の測定>
得られたPVAフィルムのヘイズ値をヘイズメーター(日本電色株式会社製、NDH2000)により測定したところ、1.8%であった。
【0073】
<合わせガラス作製適応性>
得られた金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムを、ポリビニルブチラールフィルム2枚(厚み300μm)とクリアガラス2枚(厚み1mm)で挟んだ状態で、クリーンオーブン中で150℃にて1時間加熱し、合わせガラスを作製した。
得られた合わせガラスの吸収スペクトルを測定し、加熱前後で金コア銀シェルナノロッドの吸収特性に変化は認められなかった場合を○、変化があった場合を×で評価した。結果を表2に示す。
【0074】
−偏光板の作製−
得られた厚み40μmのPVAフィルムを、90℃で加熱しながら、4倍まで自動二軸延伸機で一軸延伸し、偏光性を示すフィルム(偏光板)を作製した。
【0075】
<配向度>
得られた偏光板の偏光性を評価した。分光スペクトルは、紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)の試料側の光路に偏光子を1枚設置し、偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を0°、90°に変えて、偏光スペクトルを測定した。結果を図10に示す。そして、0°と90°のスペクトルから金銀複合ナノロッドの長軸由来の極大吸収波長の吸光度の比率を配向度Sとした。この配向度Sは下記数式1で表される。作製した実施例8の偏光板の配向度は0.94であった。
<数式1>
S=(A0deg.−A90deg.)/(A0deg.+2A90deg.)
【0076】
<合わせガラス作製適応性>
得られた偏光板をポリビニルブチラールフィルム2枚(厚み300μm)と、クリアガラス2枚(厚み1mm)で挟んだ状態で、クリーンオーブン中で150℃にて1時間加熱し、合わせガラスを作製した。
作製した合わせガラスの吸収スペクトルを測定し、加熱前後で金コア銀シェルナノロッドの吸収特性に変化は認められなかった場合を○、変化があった場合を×で評価した。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例9〜14及び比較例7〜12)
実施例8において、金コア銀シェルナノロッド分散液を、表2に示す粒子分散液に変えた以外は、実施例8と同様にして、実施例9〜14及び比較例7〜12のPVAフィルム及び偏光板を作製した。
得られた各フィルム及び各偏光板について、実施例8と同様にして、ヘイズ値、合わせガラス作製適応性、及び配向度を評価した。それぞれの結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の複合金属ナノロッドは、単一かつ光学的散乱が小さく、耐熱性及び耐酸化性に優れ、二色性を有するので、偏光材料などに好適に用いられる。
本発明の偏光材料は、例えばプロジェクター、液晶モニター、液晶テレビ等に応用できるが、更に、光アイソレータ、光ファイバ、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の複合金属ナノロッドの一例を示す模式図である。
【図2】図2は、複合金属ナノロッドにおけるコアナノロッドの一例を示す模式図である。
【図3】図3は、実施例1で合成した金ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図4】図4は、実施例1で合成した複合金属ナノロッドの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図6】図6は、実施例5で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図7】図7は、比較例1で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図8】図8は、比較例2で合成した銀ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図9】図9は、比較例6で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図10】図10は、実施例8の偏光板の偏光性を示すグラフである。
【図11】図11は、ナノロッドの端面が角のない曲面状であるが否かの判定方法を説明するための図である。
【図12】図12は、本発明のナノロッドの両端面が角のない曲面状であるものの具体例を示した図である。
【図13】図13は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれる端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例を示す図である。
【図14】図14は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれない端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例を示す図である。
【図15】図15は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれない端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図16】図16は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれない端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【符号の説明】
【0081】
1 コアナノロッド
2 シェル
A 複合金属ナノロッドの長軸長さ
B 複合金属ナノロッドの短軸長さ
a コアナノロッドの長軸長さ
b コアナノロッドの短軸長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一かつ光学的散乱が小さく、耐熱性及び耐酸化性に優れた二色性の複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
可視から近赤外域領域に吸収を有し、二色性を示す無機材料として、アスペクト比2〜5の金ナノロッドがあり、特定波長領域に吸収を発現させるためにサイズが単一なナノロッドの合成に関する数多くの文献が開示されている。しかし、前記金ナノロッドはその短軸由来の吸収が530nm付近と視感度の高い領域にあるため、可視光域の無色透明性が要求される一般的な光学用途には不向きである。
一方、銀ナノロッドは短軸由来の吸収が410nmと比較的可視域の端にあり、またモル吸光係数が金ナノロッドより大きいため、金ナノロッドに比べて一般的な光学用途に適しているが、金ナノロッドのような単一かつ高収率な合成方法は知られていない。例えば銀ナノロッドの合成方法として、界面活性剤を用いた方法が開示されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法により合成された銀ナノロッドは単一性が低く、サイズも大きく、耐酸化性も低いという問題がある。
【0003】
また、単一な銀ナノロッド相当の吸収特性を持つ金属粒子の合成方法として、金ナノロッドの表面に銀を析出させた金銀複合金属ナノロッドが開示されている(非特許文献2参照)。この金銀複合金属ナノロッドは、同一アスペクト比の銀ナノロッドとほぼ同様の吸収特性を示すため、単一性に優れた二色性の金銀複合金属ナノロッドである。しかし、前記非特許文献2の合成方法により得られた金銀複合金属ナノロッドは、そのサイズが大きいため散乱が大きく、光学用途には不向きである。更に、金銀複合金属ナノロッド分散液中に界面活性剤を多量に含むため、精製しきれない界面活性剤が塗膜中で析出し、塗膜の透明性を損なってしまうという問題がある。
【0004】
また、特許文献1には、金、銀、及び銅から選ばれる2種類の金属からなる複合金属コロイド粒子が提案されている。しかし、この提案の複合金属コロイド粒子はアスペクト比が1の球形であり、二色性を示さないものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−256915号公報
【非特許文献1】Chem.Comm.,7(2001)617−618
【非特許文献2】J.Phys.Chem.B,108(2004)5882−5888
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光域の無色透明性が要求される一般的な光学用途において、単一なサイズに調整され、光学的散乱が小さく、かつ二色性を示し、特にコアシェル構造にすること、及びナノロッド端面(キャップ)形状を角のない曲面状にすることにより、耐酸化性及び耐熱性が向上した複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。即ち、
<1> 少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなる複合金属ナノロッドであって、
前記複合金属ナノロッドの球相当半径が15nm以下であり、かつ該複合金属ナノロッドのアスペクト比が1.1〜10であることを特徴とする複合金属ナノロッドである。
<2> 複合金属ナノロッドの両端面が、角のない曲面状である前記<1>に記載の複合金属ナノロッドである。
<3> 複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たす前記<2>に記載の複合金属ナノロッドである。
<4> コアを構成するコア金属に対してシェルを構成するシェル金属の方が卑である前記<1>から<3>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドである。
<5> コア金属が金、白金、及びパラジウムのいずれかであり、シェル金属が銀、銅、及びアルミニウムのいずれかである前記<4>に記載の複合金属ナノロッドである。
<6> コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)が、0.1〜130である前記<1>から<5>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドである。
<7> コアナノロッドの球相当半径が10nm以下であり、かつコアナノロッドのアスペクト比が1.5〜24である前記<1>から<6>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有分散物である。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の複合金属ナノロッドと、バインダーを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有組成物である。
<10> 前記<9>に記載の複合金属ナノロッド含有組成物からなることを特徴とする偏光材料である。
<11> 複合金属ナノロッド含有組成物からなるフィルムを延伸することにより、複合金属ナノロッドの長軸を延伸方向に配向させた前記<10>に記載の偏光材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、可視光域の無色透明性が要求される一般的な光学用途において、単一なサイズに調整され、光学的散乱が小さく、かつ二色性を示し、特にコアシェル構造にすること、及びナノロッド端面(キャップ)形状を角のない曲面状にすることにより、複合金属ナノロッドの耐酸化性及び耐熱性が向上した複合金属ナノロッド、並びに複合金属ナノロッド含有組成物、及び偏光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(複合金属ナノロッド)
本発明の複合金属ナノロッドは、少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなる。
前記ナノロッドとは、短軸よりも長軸が長い棒状粒子を意味する。
【0010】
本発明の複合金属ナノロッドは、図1に示すように、コアナノロッド1をシェル2で被覆してなるコアシェル構造からなる。図1の複合金属ナノロッドのアスペクト比は、長軸長さ(以下、「長径」と称することもある)Aを、短軸長さ(以下、「短径」と称することもある)Bで割った値(A/B)から求められる。本発明において、前記複合金属ナノロッドのアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記複合金属ナノロッドのアスペクト比は1.1〜10であり、可視光領域に吸収を付与する観点からは1.3〜5が好ましい。前記アスペクト比が、1.1未満であると、十分な二色性が得られないことがあり、10を超えると、所望の可視域から近赤外域の吸収が得られないことがある。
【0011】
前記複合金属ナノロッドの球相当半径(R)は15nm以下であり、散乱の観点からは、13nm以下が好ましい。前記球相当半径(R)が15nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物の透過性が下がってしまうことがある。
ここで、前記球相当半径(R)とは、複合金属ナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、複合金属ナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
【数1】
ただし、Aは複合金属ナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。Bは複合金属ナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
【数2】
ただし、A及びBは、上記と同じ意味を表す。
【0012】
ここで、複合金属ナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、透過型電子顕微鏡(TEM)で複合金属ナノロッドを観察した際の形状から判別することができる。複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.2Bである場合(例えば球面状(図12のC及びE)、楕円面状(図12のD)、楕円体状(図12のF)など)には略円柱形状とする。
一方、複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、0.2B<L≦0.9Bである場合(例えば多面体状(図12のA及びBなど))には略直方体状とする。
なお、前記複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lは、後述する複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと同義である。
【0013】
本発明においては、前記複合金属ナノロッドの両端面は、図1に示すように、角のない曲面状であることが短軸由来の吸収ピークの線幅が細くなり、二色性が向上する点で好ましい。前記複合金属ナノロッドの両端面とは、ナノロッドの長軸方向における両端の面を意味し、両方の端面が角のない曲面状であることが好ましく、一方の端面が角のない曲面状であり、他方の端面が角のない曲面状でない複合金属ナノロッドは該当しない。
前記角のない曲面状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば球面、楕円面、楕円体、多面体面などが挙げられ、具体的には、図11に示すように、複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たすものが好ましく、L≦0.8Bを満たすものがより好ましい。前記Lが0.9Bを超えると、短軸の吸収がブロードになってしまうことがある。
前記複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子の平均値として求めた。
図13の(1)〜(8)で示す端面形状を有する複合金属ナノロッド(ただし、球相当半径が15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である)は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれる。
図14の(1)〜(3)、並びに図15及び図16で示す端面形状を有する複合金属ナノロッドは、本発明の複合金属ナノロッドには含まれない。
【0014】
本発明の複合金属ナノロッドは、少なくとも2種の金属を含有していれば特に制限はないが、コアナノロッドを構成するコア金属と、シェルを構成するシェル金属とが異なる金属であることが好ましい。なお、コアナノロッド又はシェルが複数種の金属を含有していても構わない。
前記コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい。このことは、前記シェル金属の還元電位が前記コア金属の還元電位よりも高いことを意味する。前記金属の還元電位は、「化学便覧改訂3版 基礎編II」に記載されている。
コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい理由としては、シェル金属よりコア金属の方が卑である場合、シェル金属を析出させる際にコア金属が溶出してしまうことがあるためである。
前記コア金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられる。これらの中でも、金が特に好ましい。
前記シェル金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、などが挙げられる。これらの中でも、銀が特に好ましい。
したがって本発明の複合金属ナノロッドとしては、コア金属が金、シェル金属が銀からなる金コア銀シェルナノロッドが特に好適である。
【0015】
前記コアナノロッドと前記シェルの体積比(シェル/コアナノロッド)は、0.1〜130が好ましく、耐酸化性の観点からは1〜40がより好ましい。前記体積比が、0.1未満であると、シェル金属によるコアナノロッドの被覆が不十分となり、シェル金属の光学特性が十分に発現されなくなることがあり、130を超えると、酸化されてしまうことがある。
ここで、前記コアナノロッドの体積Vコアと前記シェルの体積Vシェルとの体積比(シェル/コアナノロッド)は、複合金属ナノロッド及びコアナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
略直方体状の場合には、Vシェル=(A×B×B)−Vコア
Vコア=(a×b×b)
略円柱形状の場合には、Vシェル=(π×A×B×B/4)−Vコア
Vコア=(π×a×b×b/4)
ただし、A及びBは上記と同じ意味を表す。aはコアナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。bはコアナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
なお、複合金属ナノロッド又はコアナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、上記球相当半径の場合と同様にして判別することができる。
【0016】
ここで、図2は、コアナノロッドを示し、そのアスペクト比は、コアナノロッドの長軸長さaを、コアナノロッドの短軸長さbで割った値(a/b)から求められる。本発明において、前記コアナノロッドのアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記コアナノロッドのアスペクト比は、1.5〜24が好ましく、可視光領域に吸収を付与する観点から1.5〜10がより好ましい。前記アスペクト比が、1.5未満であると、複合金属ナノロッド吸収特性の可視光域での調整範囲が狭くなることがあり、24を超えると、可視光域に吸収を付与するためにシェル金属の厚みが厚くなり、その結果、粒子体積が大きくなってしまい透過性が低下することがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)は10nm以下が好ましく、複合金属ナノロッドの散乱を小さくし、かつ吸収特性を制御するためには8nm以下がより好ましい。前記コアナノロッドの球相当半径(r)が10nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物などの透過性が低くなることがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)とは、コアナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、上記複合金属ナノロッドの球相当半径と同様にして求めることができる。
【0017】
本発明の複合金属ナノロッドの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、種晶形成工程、コアナノロッド形成工程、及びシェル形成工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0018】
−種晶形成工程−
前記種晶形成工程は、第1の金属化合物を含む溶媒中で還元反応させて種晶を形成する工程である。
【0019】
−コアナノロッド形成工程−
前記コアナノロッド形成工程は、溶媒中に前記種晶、界面活性剤、及び第1の金属化合物を添加し、還元反応させて、コアナノロッドを形成する工程である。
【0020】
前記第1の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第1の金属化合物における金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられ、これらの中でも、金が特に好ましい。
前記金属塩を形成する酸としては、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硝酸;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば酢酸、酪酸、シュウ酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、安息香酸、などが挙げられる。
前記スルホン酸としては、例えばメチルスルホン酸などが挙げられる。
前記金属塩としては、例えば硝酸銀、塩化金酸、塩化白金酸などが挙げられる。
【0021】
前記金属錯体を形成するキレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアセチルアセトナート、EDTAなどが挙げられる。また、上記の金属塩と配位子とで錯体を形成してもよく、該配位子としては、例えばイミダゾール、ピリジン、フェニルメチルスルフィドなどが挙げられる。
なお、前記金属化合物には、金属イオンのハロゲン化錯体の酸(例えば塩化金酸、塩化白金酸など)、アルカリ金属塩(例えば塩化金酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウムなど)も含まれる。
【0022】
−シェル形成工程−
前記シェル形成工程は、溶媒中に前記コアナノロッド、第2の金属化合物、界面活性剤、及びビニルピロリドン化合物を添加し、還元反応によりコアナノロッドの表面にシェルを形成する工程である。
【0023】
前記第2の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第2の金属化合物における金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、などが挙げられ、これらの中でも、銀が特に好ましい。
前記金属塩、金属錯体、及び有機金属化合物としては、前記第1の金属化合物と同様である。
【0024】
前記還元は、溶媒を加熱、光還元、還元剤添加、化学還元法などが挙げられるが、還元剤添加が特に好ましい。
前記還元剤としては、例えば水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジン、アスコルビン酸、アミン類、チオール類などが挙げられる。なお、化学還元法としては、電気分解法を用いて行うこともできる。
【0025】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ビニルピロリドン化合物としては、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、ピロリドンユニットの繰り返し単位数が85以上であることが好ましく、300〜12,000がより好ましい。前記繰り返し単位数が85未満であると、PVPが金属粒子の特定の結晶面に吸着できずに、球状粒子となってしまうとなることがある。
【0027】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(CTAH)に代表されるセチルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、オクチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)に代表される4級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤は殺菌性を示し、水性生物への毒性など環境への影響が懸念される。そのため、工程中でCTABを粉体の形で回収することにより、環境影響を減少させることが必要である。例えば、金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別する操作を行うことにより、約75%のCTABを固体状態で回収することが可能である。途中工程でCTABを回収することにより、CTABを再利用することができるため、また限外濾過膜による精製時間の短縮されるため、コストダウンや環境影響の減少につながる。
【0028】
本発明の複合金属ナノロッドは、分散剤の他、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン等の高分子からなる誘電体で被覆されていてもよい。これらの誘電体で被覆されることにより、吸収特性の調整、熱安定性、耐酸化性等の機能を付与することが可能になる。
【0029】
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子表面に吸着し、電荷による反発や立体障害による凝集防止を付与したり、更には水溶性や油溶性を付与できる物質であればよい。
電荷による反発を付与する物質としては、例えば4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系、カルボン酸塩系等の低分子系イオン性物質、又は高分子系イオン性物質が挙げられ、分散したい粒子の表面電位や酸・塩基性により選択することができる。
立体障害を付与する物質としては、少なくとも粒子表面への吸着基と立体障害を付与する部位を有していればよく、粒子表面への吸着基としては、例えばチオール、ジスルフィド、スルフォキシド等のS元素含有官能基;リン酸やホスフィン等のP元素含有官能基;カルボニル、カルボキシル、エーテル、ヒドロキシル等のO元素含有官能基;アミン、アミノ、アンモニウム塩、ニトロ、ヒドロキシアミン、アゾ、イミン等のN元素を含む官能基などが好ましい。例えば、DISPERBIK-180、DISPERBIK-184、DISPERBIK-190、DISPERBIK-2000、DISPERBIK-2001(ビックケミー社製)、ポリエチレンイミン系のルパゾール、スルホン酸系のタモール(BASF社製)、末端チオールポリエチレングリコールや末端チオールポリスチレン等の末端チオールポリマー系(Polymer Source Inc.社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(複合金属ナノロッド含有組成物)
本発明の複合金属ナノロッド含有組成物は、本発明の前記複合金属ナノロッドと、バインダーとを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0031】
前記バインダーとしては、光透過性が高く、また熱可塑性のある樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記その他の成分としては、例えば溶媒、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、耐湿性向上剤、熱安定化剤、顔料、金属酸化物、金属窒化物、導電性粒子などが挙げられる。
【0033】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子表面に吸着し、電荷による反発や立体障害による凝集防止を付与したり、更には水溶性や油溶性を付与できる物質であればよい。
電荷による反発を付与する物質としては、例えば4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系、カルボン酸塩系等の低分子系イオン性物質、又は高分子系イオン性物質が挙げられ、分散したい粒子の表面電位や酸・塩基性により選択することができる。
立体障害を付与する物質としては、少なくとも粒子表面への吸着基と立体障害を付与する部位を有していればよく、粒子表面への吸着基としては、例えばチオール、ジスルフィド、スルフォキシド等のS元素含有官能基;リン酸やホスフィン等のP元素含有官能基;カルボニル、カルボキシル、エーテル、ヒドロキシル等のO元素含有官能基;アミン、アミノ、アンモニウム塩、ニトロ、ヒドロキシアミン、アゾ、イミン等のN元素を含む官能基などが好ましい。例えば、DISPERBIK-180、DISPERBIK-184、DISPERBIK-190、DISPERBIK-2000、DISPERBIK-2001(ビックケミー社製)、ポリエチレンイミン系のルパゾール、スルホン酸系のタモール(BASF社製)、末端チオールポリエチレングリコールや末端チオールポリスチレン等の末端チオールポリマー系(Polymer Source Inc.社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系、アルキルグルコシド系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、ショ糖脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩系、ジアルキルジメチルアンモニウム塩系、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩系、アミン塩系などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えばセッケン(脂肪酸ナトリウム、カリウム塩)、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、高級アルコール硫酸エステル塩系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系、α−スルホ脂肪酸エステル系、α−オレフィンスルホン酸塩系、モノアルキルリン酸エステル塩系、アルカンスルホン酸塩系などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばアルキルアミノ脂肪酸塩系、アルキルベタイン系、アルキルアミンオキシド系などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、クエン酸、ポリビニルアルコール樹脂、トリアゾール化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
なお、膜質を改良するために、架橋剤や可塑剤を含んでもよい。例えば、膜質を強くするためにはホウ酸等の架橋剤を添加し、逆にしなやかにするためにはグリセリン等の可塑剤を添加する。前記架橋剤及び可塑剤は、塗布膜作製時に添加してもよいし、塗布膜乾燥後や塗布膜延伸後にウエットコーティングにより付与してもよい。
なお、複合金属ナノロッド表面に吸着した分散剤は、溶媒やバインダーへの相溶性を考慮し、適宜置換してもよい。
前記複合金属ナノロッド以外の粒子を混合し、紫外線吸収や熱線吸収等の機能を付与したり、ガラスとの屈折率を合わせてもよい。例えば、金属酸化物半導体粒子を添加することにより、紫外線吸収や熱線遮蔽の機能を付与することが可能である。
【0038】
本発明の複合金属ナノロッド含有組成物は、本発明の前記複合金属ナノロッドを含有してなり、種々の用途に用いることができるが、以下の本発明の偏光材料として特に好適に用いられる。
【0039】
(偏光材料)
本発明の偏光材料は、本発明の前記記載の複合金属ナノロッド含有組成物からなる。
この場合、前記複合金属ナノロッド含有組成物からなるフィルムを延伸することにより、複合金属ナノロッドの長軸を延伸方向に配向させることが好ましい。
また前記複合金属ナノロッドの配向方法としては、延伸配向の他、ウェブコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ディップコート、ラングミュアブロジェット法等の塗布による流動配向や剪断応力による配向、塗布乾燥時のベナール対流を利用した自己組織化による配向、高粘度流体による配向、マイクロ流路からの吐出やエレクトロスピニング法による配向、ウェブラビングやナノインプリントにより表面に微細溝を設けた支持体への塗布配向などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して配向性を向上させてもよい。
【0040】
本発明の偏光材料は、例えばプロジェクター、液晶モニター、液晶テレビ等に応用できるが、更に、光アイソレータ、光ファイバ、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。これらの中でも、特開2007−334150号公報に開示されているような自動車の前窓等の乗り物用ガラスが特に好ましい。
【0041】
前記自動車の前窓等の乗り物用ガラスとしては、合わせガラスが好適である。
前記合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に中間層を介在させて一体化したものである。このような合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することがなく安全であるため、自動車等の乗り物のフロントガラス、建築物等の窓ガラスとして広く用いられている。前記中間層が本発明の前記偏光材料を含むことが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
−金ナノ粒子(種晶)の合成工程−
100mMのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、和光純薬株式会社製)水溶液100mlに、10mMの塩化金酸水溶液(関東化学株式会社製)5mlを添加し、更に直前に溶解した10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mlを添加し、強攪拌することにより、金ナノ粒子(種晶)を形成した。
【0044】
−金ナノロッド(コアナノロッド)の合成工程−
100mMのCTAB水溶液1000mlに、10mMの硝酸銀水溶液100ml、10mMの塩化金酸水溶液200ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液50mlを添加し、攪拌することにより、無色透明の液を得た。更に前記金ナノ粒子(種晶)水溶液100mlを添加し、2時間攪拌することにより、金ナノロッド水溶液を得た。
<金ナノロッドの評価>
得られた金ナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、金ナノロッドの短軸の吸収に帰属する510nmと、長軸に帰属する800nmのピークを示した。
得られた金ナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図3のTEM写真に示すように、短径が6nm、長径が21nm、アスペクト比が3.5、球相当半径が5.7nmのロッド状粒子であることが分かった。結果を表1に示す。
【0045】
−銀シェル形成工程−
1質量%のPVP(ポリビニルピロリドンK30、和光純薬株式会社製)水溶液8kgに、前記金ナノロッド分散液を2kg、10mMの硝酸銀水溶液100ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液100mlを添加し、攪拌した。更に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液280mlを5分間かけて添加し、溶液のpHを7〜8に調整することにより、銀を金ナノロッド表面に析出させて、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮し、更に分散液の電気伝導度が70mS/m以下になるまで精製を行い、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
【0046】
次に、得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、以下のようにして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面形状を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
<光学特性>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、紫外可視近赤外分光度計(日本分光株式会社製、V−670)で吸収スペクトルを測定したところ、図4に示すように、短軸の吸収に帰属する410nmと、長軸に帰属する650nmのピークを示した。
【0048】
<粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面形状の測定>
各粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM)((日本電子株式会社製、EX1200))観察により、短径、長径、アスペクト比、端面形状を測定した。またアスペクト比の平均値は、TEMにより観察された写真から任意に抽出した200個の粒子について、画像処理装置(Mountech社製、Macview(Ver.3))を用いて求めた。
図5に、実施例1の金コア銀シェルナノロッドのTEM写真を示す。
【0049】
−球相当半径の測定−
前記球相当半径とは、ナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、ナノロッドの形状に応じて以下の式により求めた。
【数3】
ただし、Aはナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。Bはナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測した。
【数4】
ただし、Aはナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。Bはナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測した。
ここで、前記ナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、透過型電子顕微鏡(TEM)でナノロッドを観察した際の形状から判別した。ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.2Bである場合(例えば球面状(図12のC及びE)、楕円面状(図12のD)、楕円体状(図12のF)など)には略円柱形状とした。
一方、複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、0.2B<L≦0.9Bである場合(例えば多面体状(図12のA及びB)など)には略直方体状とした。
また複合金属ナノロッドの端面(キャップ)形状を判別するには、TEMにより観察された写真から任意に抽出した200個の粒子について、デジタルノギスを用いて求めた。
【0050】
−コアナノロッドとシェルの体積比−
前記コアナノロッドの体積Vコアと前記シェルの体積Vシェルとの体積比(シェル/コアナノロッド)は、複合金属ナノロッドの形状及びコアナノロッドの形状に応じて以下の式で算出した。
略直方体状の場合には、Vシェル=(A×B×B)−Vコア
Vコア=(a×b×b)
略円柱形状の場合には、Vシェル=(π×A×B×B/4)−Vコア
Vコア=(π×a×b×b/4)
ただし、A及びBは上記と同じ意味を表す。aはコアナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。bはコアナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測した。
【0051】
(実施例2)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を25mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を55mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例4)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を150mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例5)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程で添加する10mMの硝酸銀水溶液の量を200mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
図6に、実施例5の金コア銀シェルナノロッドのTEM写真を示す。
【0055】
(実施例6)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程で添加する金ナノ粒子(種晶)水溶液量を300mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例7)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程で添加する金ナノ粒子(種晶)水溶液量を20mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
J.Phys.Chem.B,108(2004)5882−5888(非特許文献2)に従って、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェル複合ナノロッド分散液を得た。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
図7に、比較例1の金コア銀シェルナノロッドのTEM写真を示す。
【0058】
(比較例2)
−銀ナノロッドの合成−
Chem.Comm.,7(2001)617−618(非特許文献1)に従って、銀ナノロッドを合成した。
得られた銀ナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状などを測定した。結果を表1に示す。
図8に、比較例2の銀ナノロッドのTEM写真を示す。
【0059】
(比較例3)
−金コア銀シェルナノ粒子の合成−
特開2004−256915号公報(特許文献1)の実施例2に従って、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例4)
−金ナノロッドの合成−
実施例1において、銀シェル付与工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッドを合成した。
得られた金ナノロッドについて、実施例1と同様にして、光学特性、球相当半径、粒子サイズ、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例5)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程にて添加する10mMの塩化金酸水溶液量を1400mlに、100mMのアスコルビン酸量を350mlに変更し、また銀シェル形成工程にて添加した10mMの硝酸銀水溶液量を700mlに、100mMのアスコルビン酸水溶液量を500mlに、また0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液量を800mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られ金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例6)
−金コア銀シェルナノロッドの合成−
実施例1において、金ナノロッド合成工程にて添加した金ナノ粒子(種晶)水溶液量を20mlに変更し、また銀シェル形成工程にて添加した100mMアスコルビン酸水溶液量を200mlに変更した以外は、実施例1と同様にして、金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
得られた金ナノロッド水溶液及び金コア銀シェルナノロッド分散液について、実施例1と同様にして、光学特性、粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端面の形状を測定した。結果を表1に示す。
図9に、比較例6の銀ナノロッドのTEM写真を示す。
【0063】
次に、得られたナノロッド及びナノ粒子について、以下のようにして、散乱強度、及び短軸副吸収の有無、及び耐酸化性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
<散乱強度>
下地及び背景を黒紙にした上に、光路長10mmの石英セルに入れた金属ナノ粒子分散液を設置し、手前斜め45°から懐中電灯の光をあてた時の分散液の濁り具合で散乱強度を評価した。
【0065】
<短軸副吸収の有無>
複合金属ナノロッドの吸収スペクトルから、短軸副吸収の有無を評価した。
【0066】
<耐酸化性の評価>
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液0.1mlと、純水4.0mlを混合し、更に1質量%の過酸化水素水0.1mlを添加した後の吸光度変化により耐酸化性を下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:室温で10日間経時後、極大吸収波長及び吸光度に変化は認められなかった
×:室温で10日間経時後、極大吸収波長及び吸光度に変化が認められた
【0067】
【表1−1】
【0068】
【表1−2】
【0069】
(実施例8)
<金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムの作製>
−CTABの除去−
実施例1で作製した金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別し、CTABを粗除去した金ナノロッド分散液を得た。この時のCTABの回収率は、約75%であった。
得られたCTABを粗除去した金ナノロッド分散液を用いて実施例1と同様にして、金コア銀シェルナノロッドを形成した。得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮した。また、分散液の電気伝導度が70mS/m以下になるまで精製を行い、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
【0070】
−金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムの作製−
次に、10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)10.0g、純水10.0g、及び得られた前記金コア銀シェルナノロッド分散液1.0gを混合し、清浄なPETベース(東洋紡績株式会社製、200μm厚み)に1mm厚みのアプリケーターを設置し、塗布バー(#0)を用いてバーコート塗布し、12時間室温で乾燥させた後、PETベースよりPVAフィルムを剥離し、厚み40μmの金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムを作製した。
【0071】
<分光スペクトルの測定>
得られたPVAフィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、含有する金銀複合ナノロッドに由来する吸収を示した。
【0072】
<ヘイズ値の測定>
得られたPVAフィルムのヘイズ値をヘイズメーター(日本電色株式会社製、NDH2000)により測定したところ、1.8%であった。
【0073】
<合わせガラス作製適応性>
得られた金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムを、ポリビニルブチラールフィルム2枚(厚み300μm)とクリアガラス2枚(厚み1mm)で挟んだ状態で、クリーンオーブン中で150℃にて1時間加熱し、合わせガラスを作製した。
得られた合わせガラスの吸収スペクトルを測定し、加熱前後で金コア銀シェルナノロッドの吸収特性に変化は認められなかった場合を○、変化があった場合を×で評価した。結果を表2に示す。
【0074】
−偏光板の作製−
得られた厚み40μmのPVAフィルムを、90℃で加熱しながら、4倍まで自動二軸延伸機で一軸延伸し、偏光性を示すフィルム(偏光板)を作製した。
【0075】
<配向度>
得られた偏光板の偏光性を評価した。分光スペクトルは、紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)の試料側の光路に偏光子を1枚設置し、偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を0°、90°に変えて、偏光スペクトルを測定した。結果を図10に示す。そして、0°と90°のスペクトルから金銀複合ナノロッドの長軸由来の極大吸収波長の吸光度の比率を配向度Sとした。この配向度Sは下記数式1で表される。作製した実施例8の偏光板の配向度は0.94であった。
<数式1>
S=(A0deg.−A90deg.)/(A0deg.+2A90deg.)
【0076】
<合わせガラス作製適応性>
得られた偏光板をポリビニルブチラールフィルム2枚(厚み300μm)と、クリアガラス2枚(厚み1mm)で挟んだ状態で、クリーンオーブン中で150℃にて1時間加熱し、合わせガラスを作製した。
作製した合わせガラスの吸収スペクトルを測定し、加熱前後で金コア銀シェルナノロッドの吸収特性に変化は認められなかった場合を○、変化があった場合を×で評価した。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例9〜14及び比較例7〜12)
実施例8において、金コア銀シェルナノロッド分散液を、表2に示す粒子分散液に変えた以外は、実施例8と同様にして、実施例9〜14及び比較例7〜12のPVAフィルム及び偏光板を作製した。
得られた各フィルム及び各偏光板について、実施例8と同様にして、ヘイズ値、合わせガラス作製適応性、及び配向度を評価した。それぞれの結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の複合金属ナノロッドは、単一かつ光学的散乱が小さく、耐熱性及び耐酸化性に優れ、二色性を有するので、偏光材料などに好適に用いられる。
本発明の偏光材料は、例えばプロジェクター、液晶モニター、液晶テレビ等に応用できるが、更に、光アイソレータ、光ファイバ、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の複合金属ナノロッドの一例を示す模式図である。
【図2】図2は、複合金属ナノロッドにおけるコアナノロッドの一例を示す模式図である。
【図3】図3は、実施例1で合成した金ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図4】図4は、実施例1で合成した複合金属ナノロッドの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図6】図6は、実施例5で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図7】図7は、比較例1で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図8】図8は、比較例2で合成した銀ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図9】図9は、比較例6で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図10】図10は、実施例8の偏光板の偏光性を示すグラフである。
【図11】図11は、ナノロッドの端面が角のない曲面状であるが否かの判定方法を説明するための図である。
【図12】図12は、本発明のナノロッドの両端面が角のない曲面状であるものの具体例を示した図である。
【図13】図13は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれる端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例を示す図である。
【図14】図14は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれない端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例を示す図である。
【図15】図15は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれない端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図16】図16は、本発明の複合金属ナノロッドに含まれない端面形状を有する複合金属ナノロッドの具体例の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【符号の説明】
【0081】
1 コアナノロッド
2 シェル
A 複合金属ナノロッドの長軸長さ
B 複合金属ナノロッドの短軸長さ
a コアナノロッドの長軸長さ
b コアナノロッドの短軸長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなる複合金属ナノロッドであって、
前記複合金属ナノロッドの球相当半径が15nm以下であり、かつ該複合金属ナノロッドのアスペクト比が1.1〜10であることを特徴とする複合金属ナノロッド。
【請求項2】
複合金属ナノロッドの両端面が、角のない曲面状である請求項1に記載の複合金属ナノロッド。
【請求項3】
複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たす請求項2に記載の複合金属ナノロッド。
【請求項4】
コアを構成するコア金属に対してシェルを構成するシェル金属の方が卑である請求項1から3のいずれかに記載の複合金属ナノロッド。
【請求項5】
コア金属が金、白金、及びパラジウムのいずれかであり、シェル金属が銀、銅、及びアルミニウムのいずれかである請求項4に記載の複合金属ナノロッド。
【請求項6】
コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)が、0.1〜130である請求項1から5のいずれかに記載の複合金属ナノロッド。
【請求項7】
コアナノロッドの球相当半径が10nm以下であり、かつコアナノロッドのアスペクト比が1.5〜24である請求項1から6のいずれかに記載の複合金属ナノロッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の複合金属ナノロッドを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有分散物。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の複合金属ナノロッドと、バインダーを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の複合金属ナノロッド含有組成物からなることを特徴とする偏光材料。
【請求項11】
複合金属ナノロッド含有組成物からなるフィルムを延伸することにより、複合金属ナノロッドの長軸を延伸方向に配向させた請求項10に記載の偏光材料。
【請求項1】
少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなる複合金属ナノロッドであって、
前記複合金属ナノロッドの球相当半径が15nm以下であり、かつ該複合金属ナノロッドのアスペクト比が1.1〜10であることを特徴とする複合金属ナノロッド。
【請求項2】
複合金属ナノロッドの両端面が、角のない曲面状である請求項1に記載の複合金属ナノロッド。
【請求項3】
複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たす請求項2に記載の複合金属ナノロッド。
【請求項4】
コアを構成するコア金属に対してシェルを構成するシェル金属の方が卑である請求項1から3のいずれかに記載の複合金属ナノロッド。
【請求項5】
コア金属が金、白金、及びパラジウムのいずれかであり、シェル金属が銀、銅、及びアルミニウムのいずれかである請求項4に記載の複合金属ナノロッド。
【請求項6】
コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)が、0.1〜130である請求項1から5のいずれかに記載の複合金属ナノロッド。
【請求項7】
コアナノロッドの球相当半径が10nm以下であり、かつコアナノロッドのアスペクト比が1.5〜24である請求項1から6のいずれかに記載の複合金属ナノロッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の複合金属ナノロッドを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有分散物。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の複合金属ナノロッドと、バインダーを含むことを特徴とする複合金属ナノロッド含有組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の複合金属ナノロッド含有組成物からなることを特徴とする偏光材料。
【請求項11】
複合金属ナノロッド含有組成物からなるフィルムを延伸することにより、複合金属ナノロッドの長軸を延伸方向に配向させた請求項10に記載の偏光材料。
【図4】
【図10】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−70841(P2010−70841A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298215(P2008−298215)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]