複層ガラス、障子及びサッシ
【課題】 ガラス間の空気層に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる複層ガラスの提供。
【解決手段】 複数のガラス1a,1bと、ガラス1a,1bの周囲に設けた縁部材2とを備え、縁部材2は、ガラス1a,1bの小口5に面する基部3と、ガラス1a,1b間に延出する延出部4とを有し、ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6とを連続するシール材7により縁部材2の基部3及び延出部4と接着した。
【解決手段】 複数のガラス1a,1bと、ガラス1a,1bの周囲に設けた縁部材2とを備え、縁部材2は、ガラス1a,1bの小口5に面する基部3と、ガラス1a,1b間に延出する延出部4とを有し、ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6とを連続するシール材7により縁部材2の基部3及び延出部4と接着した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスと、当該複層ガラスを備える障子及びサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複層ガラスは、図17に示すように、乾燥剤を入れたスペーサー90をガラス91a,91bの内側面に一次シール92,92で接着し、スペーサー90の外周側のガラス91a,91b間の隙間に二次シール93を充填して接着し、ガラス間に密閉した空気層94を形成している。このような従来の複層ガラスは、ガラス91a,91bの内側面が一次・二次シールで接着してあるだけなので、ガラス間に層間変位が生じやすく、それに伴ってシール92,93が切れ、ガラス間の空気層94に水蒸気が浸入することがあった。またガラスが網95入りガラスの場合、ガラスの小口96に網95が露出するため、ガラスの小口96に錆止めの処理をする必要があった。さらに、二次シール93の量が多く、複層ガラスの外周面に二次シール93が露出しているため、火災時に二次シール93が溶けて可燃ガスが発生し、可燃ガスに火が引火して延焼を起こしたり、ガラス91a,91bが脱落したりする問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、ガラス間の空気層に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる複層ガラス、障子及びサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による複層ガラスは、複数のガラスと、ガラスの周囲に設けた縁部材とを備え、縁部材は、ガラスの小口に面する基部と、ガラス間に延出する延出部とを有し、ガラスの小口と内側面とを連続するシール材により縁部材の基部及び延出部と接着したことを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による複層ガラスは、請求項1記載の発明の構成に加え、ガラス間に乾燥剤が設けてあることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明による複層ガラスは、請求項1又は2記載の発明の構成に加え、延出部の内周側にスペーサーを設けてあり、スペーサーをガラスの内側面にシール材で接着してあることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明による複層ガラスは、請求項2記載の発明の構成に加え、縁部材の延出部に乾燥剤を保持していることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3又は4記載の発明の構成に加え、縁部材は、ガラス間のガスを逃がすためのガス抜き部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項6記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4又は5記載の発明の構成に加え、ガラスと縁部材とが単一のシール材で接着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項7記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5又は6記載の発明の構成に加え、縁部材がグレチャンと一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項8記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5又は6記載の発明の構成に加え、縁部材は、ガラスの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片を有することを特徴とする。
【0012】
請求項9記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の発明の構成に加え、縁部材は、框のガラス保持溝の底面に当接する当接部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項10記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の発明の構成に加え、縁部材は、框にネジで固定するためのネジ固定部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項11記載の発明による障子は、框と、框に組み込んだ請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスとを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項12記載の発明によるサッシは、請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明による複層ガラスは、ガラスの小口と内側面とを連続するシール材により縁部材の基部及び延出部と接着したことで、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる。また、ガラスの接着強度が向上し、ガラス間の層間変位を防止できる。ガラスが網入りガラスの場合でも、ガラスの小口がシール材と縁部材の基部により被覆されるため、錆止め処理をする必要がない。さらに、縁部材の延出部がガラス間の隙間に挿入されることでシール材の量を少なくできるので、コストを削減できると共に防火性能を向上できる。
【0017】
請求項2記載の発明による複層ガラスは、ガラス間に乾燥剤が設けてあるので、ガラス間の湿気を乾燥剤で吸収し、ガラスの内側面の結露を防止できる。
【0018】
請求項3記載の発明による複層ガラスは、延出部の内周側にスペーサーを設け、スペーサーをガラスの内側面にシール材で接着したことで、スペーサーによりガラス間の隙間を正確に保持できると共に、スペーサーとガラス間のシール材により水蒸気の浸入を防止できる。
【0019】
請求項4記載の発明による複層ガラスは、縁部材の延出部に乾燥剤を保持したので、ガラス間の湿気を乾燥剤で吸収し、ガラスの内側面の結露を防止できる。スペーサーを縁部材と別個に設ける必要がないため、コストを削減できると共に製造工程を簡略化できる。
【0020】
請求項5記載の発明による複層ガラスは、縁部材にガラス間のガスを逃がすためのガス抜き部を有することで、火災時にガラス間のガスが膨張したときにガス抜き部からガスが逃げるので、複層ガラスが膨らむように変形するのを防止できる。
【0021】
請求項6記載の発明による複層ガラスは、ガラスと縁部材とを単一のシール材で接着することで、従来行っていた一次シールを省くことができ、コストを削減できると共に製造工程を簡略化できる。
【0022】
請求項7記載の発明による複層ガラスは、縁部材がグレチャンと一体に形成されているので、後からグレチャンを取付けることなく、そのまま框に組み込むことができ、障子の組立が簡略化される。
【0023】
請求項8記載の発明による複層ガラスは、縁部材にガラスの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片を有することで、ガラスの脱落を折り返し片により防止できる。
【0024】
請求項9記載の発明による複層ガラスは、縁部材に框のガラス保持溝の底面に当接する当接部を有することで、複層ガラスを框に位置決めすることができ、障子の組立が容易になると共に複層ガラスを框に安定して保持できる。
【0025】
請求項10記載の発明による複層ガラスは、縁部材に框にネジで固定するためのネジ固定部を有するので、縁部材を框にネジで固定することができ、これにより複層ガラスが框から外れるのを防止できる。
【0026】
請求項11記載の障子は、請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを框に組み込んだので、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる、ガラス間の層間変位を防止できる、複層ガラスを框に安定して保持できるといった効果が得られる。
【0027】
請求項12記載の発明によるサッシは、請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを備えるため、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる、ガラス間の層間変位を防止できる、複層ガラスを框に安定して保持できるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の複層ガラスの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図3】本発明の複層ガラスの第2実施形態を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図5】本発明の複層ガラスの第3実施形態を示す断面図である。
【図6】第3実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図7】本発明の複層ガラスの第4実施形態を示す断面図である。
【図8】第4実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図9】本発明の複層ガラスの第5実施形態を示す断面図である。
【図10】第5実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図11】本発明の複層ガラスの第6実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図12】本発明の複層ガラスの第7実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図13】本発明の複層ガラスの第8実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図14】本発明の複層ガラスの第9実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図15】ガラスが3枚の場合の複層ガラスの例を示す断面図である。
【図16】本発明のサッシの一例を示す室外側正面図である。
【図17】従来の複層ガラスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の複層ガラス20の第1実施形態を示している。本複層ガラス20は、2枚のガラス1a,1bと、ガラス1a,1bの四周の縁部のガラス1a,1b間に配置したスペーサー9と、ガラス1a,1bの四周の縁部のスペーサー9の外周側に配置した縁部材2とを備え、ガラス1a,1b間に密閉された空気層21を形成してある。一方のガラス1aは、網22入りのガラスとなっている。
スペーサー9は、薄いアルミの板をロールフォーミングにより筒状に形成したものであり、内部に乾燥剤8が入れてあり、内周側の壁に通気孔39が設けてあり、外周側に継ぎ目23を有している。スペーサー9は、各ガラス1a,1bの内側面6,6に一次シール材10,10により接着してある。なおスペーサー9は、従来の複層ガラスに用いられているものをそのまま利用することができる。
縁部材2は、ステンレスの板をロールフォーミングで成形したものであり、各ガラス1a,1bの小口5,5に面する基部3,3と、ガラス1a,1b間の隙間に延出する台形状の延出部4とを有している。延出部4の頂部には、長手方向の少なくとも一箇所にガス抜き孔24が設けてあり、ガス抜き孔24は火災時には熱で溶ける性質の樹脂やロウ等で形成した蓋25で塞いである。ガラス1a,1bの小口5,5と基部3,3との隙間と、ガラス1a,1bの内側面6,6と延出部4との隙間には、二次シール材7が充填されている。
【0030】
本複層ガラス20の製作手順は、スペーサー9の両側面に一次シール材10,10を付着させ、スペーサー9の両側からガラス1a,1bを押付け、スペーサー9を一次シール材10,10によりガラス1a,1bの内側面6,6に接着させる。その後、スペーサー9の外周側のガラス1a,1b間の隙間に二次シール材7を充填し、縁部材2を外周側から押付ける。二次シール材7は、縁部材2の延出部4がガラス1a,1b間に差し込まれることでガラス1a,1bの小口5,5側にはみ出し、縁部材2の延出部4と基部3,3がガラス1a,1bの内側面6,6と小口5,5とに二次シール材7により連続して接着される。
【0031】
このように本複層ガラス20は、ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6とを連続する二次シール材7により縁部材2の基部3,3及び延出部4と接着したことで、シール材7,10が切れてガラス1a,1b間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる。また、ガラス1a,1bの接着強度が向上し、ガラス1a,1b間の層間変位を防止できる。ガラス1aが網22入りガラスの場合でも、ガラス1aの小口5が二次シール材7と縁部材2の基部3により被覆されるため、錆止め処理をする必要がない。さらに、縁部材2の延出部4がガラス1a,1b間の隙間に挿入されることで二次シール材7の量を少なくできるので、コストを削減できると共に、火災時に二次シール材7が溶融して生ずる可燃ガスも少なくなるため、防火性能を向上できる。さらに、二次シール材7がステンレス製の縁部材2により被覆されているため、二次シール材7の溶融や発火を防止できる。また、火災時にはガラス1a,1b間の空気層21のガスが膨張するが、蓋25が火災の熱で溶けて縁部材2のガス抜き孔24が開放し、膨張したガスがガス抜き孔24から抜けるので、ガラス1a,1bが膨らむように変形しようとするのを抑えられる。二次シール材7が縁部材2により被覆されているので、二次シール材7の経年劣化を防止できる。また、スペーサー9内に設けた乾燥剤8により、ガラス1a,1b間の湿気を乾燥剤8で吸収し、ガラス1a,1bの内側面6,6の結露を防止できる。
【0032】
図2は、第1実施形態の複層ガラス20を障子18の框13に組み込んだ状態を示している。この例では、複層ガラス20の周囲にグレチャン28を嵌め込み、グレチャン28を介して框13の内周側に形成されたガラス保持溝14に複層ガラス20を保持している。
【0033】
図16は、本発明の複層ガラス20を用いたサッシの一例を示している。本サッシは、上枠25と下枠26と左右の縦枠27,27とを四周枠組みしてなるサッシ枠19と、サッシ枠19内に引違い開閉自在に納めた外障子18aと内障子18bとを備える。外障子18aと内障子18bは、上框13aと下框13bと戸先框13cと召し合せ框13dとを四周框組みし、その内側に複層ガラス20を組み込んでいる。本サッシは、上述の第1実施形態の複層ガラス20を備えていることで、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる、ガラス間の層間変位を防止できる、防火性能を向上できるといった効果が得られる。
【0034】
図3は、本発明の複層ガラス20の第2実施形態を示している。本実施形態は、縁部材2をグレチャン28と一体に形成したものである。縁部材2は、硬質樹脂で基部3がコ字型に形成され、その両側の縁部にガラス保持部29,29が軟質樹脂で形成してある。また縁部材2は、ガラス1a,1b間の隙間に入り込む台形状の延出部4を有し、ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6とを連続する二次シール材7により縁部材2の基部3及び延出部4と接着している。縁部材2の内周側には、乾燥剤8入りのスペーサー9が配置され、スペーサー9は一次シール材10,10によりガラス1a,1bの内側面6,6に接着されている。
【0035】
図4は、第2実施形態の複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。このように、第2実施形態の複層ガラス20は、縁部材2をグレチャン28と一体に形成したので、そのまま框13のガラス保持溝14に組み込むことができ、障子18の組立てを簡略化できる。
【0036】
図5は本発明の複層ガラス20の第3実施形態を示しており、図6はこの複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。第1実施形態のものとは、縁部材2にガラス1a,1bの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片12,12を設けている点が異なる。このように縁部材2に折り返し片12,12を設けたことで、火災時に二次シール材7が溶融したときなどでも、ガラス1a,1bの脱落を防止することができる。本実施形態の複層ガラス20も、図6に示すように、グレチャン28を介して框13のガラス保持溝14に組み込むことができる。
【0037】
図7は本発明の複層ガラス20の第4実施形態を示しており、図8はこの複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。縁部材2は、アルミや樹脂の押出形材により、ガラス1a,1bの小口に面した基部3とガラス1a,1b間の隙間に延出する延出部4とが一体に形成され、延出部4は基部3から内周側に延出する脚部4a,4aと、脚部4a,4aの先端に形成された乾燥剤保持部4bとを有する。乾燥剤保持部4bは、内周側が開放したコ字状の溝形に形成され、その中に乾燥剤8を入れた上で通気性を有するテープ30で塞いでいる。縁部材2は、乾燥剤保持部4bが一次シール材10,10によりガラス1a,1bの内側面6,6に接着され、脚部4a,4aと基部3がガラス1a,1bの小口5,5及び内側面6,6と二次シール材7により接着されている。この複層ガラス20は、縁部材2に一次シール材10と二次シール材7とを付着させた上で、ガラス1a,1bを縁部材2の両側から挟み付けるようにして一次シール材10と二次シール材7を同時に接着させる。
【0038】
第4実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の延出部4に乾燥剤保持部4bを一体に設けたので、スペーサーを別個に設ける必要がなく、これにより複層ガラス20のコストを削減できると共に製造工程を簡略化できる。
【0039】
図9は本発明の複層ガラス20の第5実施形態を示しており、図10はこの複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。縁部材2は、基部3が2枚のガラス1a,1bの小口5,5に跨るように板状に形成され、延出部4は内周側が開放した溝状に形成され、延出部4内に乾燥剤8を入れて通気性を有するテープ30で塞いである。ガラス1a,1bの小口5,5と基部3との隙間と、ガラス1a,1bの内側面6,6と延出部4との隙間には、単一のシール材11が充填されている。延出部4の先端部には、外側に直角に曲がった突片38を有し、この突片38によりテープ30を貼り易くすると共に、シール材11が内周側にはみ出すのを防いでいる。本複層ガラス20は、縁部材2の延出部4の両側にシール材11を付着させた上で、ガラス1a,1bを縁部材2の両側から挟み付けて接着することで、簡単に製作できる。
【0040】
第5実施形態の複層ガラス20は、縁部材2とガラス1a,1bとを単一のシール材11により接着し、一次シールを省略したことで、複層ガラス20のコストをより一層削減でき、製造工程もさらに簡略化できる。ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6を縁部材2とシール材11で連続して接着しているため、一次シールを省略しても、十分な水密性と接着強度を確保することができる。
【0041】
図11は、本発明の複層ガラス20の第6実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、延出部4の底部に雌ネジ孔16を形成し、框13に挿入したネジ31をこの雌ネジ孔16に捩じ込むことで、縁部材2を框13に固定している。これにより、框13のガラス保持溝14から複層ガラス20が抜けるのを防止することができ、障子18の剛性も向上できる。
【0042】
図12は、本発明の複層ガラス20の第7実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の延出部4に外周側に開口した溝17を有し、框13に挿入したネジ31をその溝17に捩じ込むことで、縁部材2を框13に固定している。これにより、框13のガラス保持溝14から複層ガラス20が抜けるのを防止することができ、障子18の剛性も向上できる。また、縁部材2にネジ孔の加工が不要で、且つ長手方向の任意の位置でネジ31で固定できるので、框13との固定がしやすい。
【0043】
図13は、本発明の複層ガラス20の第8実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2に外周側に突出した係止片32を有し、この係止片32を框13のガラス保持溝14の底部に形成した係止片33と係合させている。本実施形態の複層ガラス20は、グレチャンではなくガラス保持溝14の先端部に設けたガスケット37a,37bにより保持されている。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の係止片32が框13の係止片33と係合していることで、地震や火災のときなどに複層ガラス20が框13から脱落するのを防止できる。
【0044】
図14は、本発明の複層ガラス20の第9実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の室外側端部に外周側に突出した突片15を有し、突片15の先端を框13のガラス保持溝14の底面に当接させている。縁部材2の延出部4は、内周側が開口した溝形に形成され、延出部4内に乾燥剤8が通気性のある紙袋等に詰めた状態で保持してある。框13は、アルミ製の本体部13aと、本体部13aの室内側に係合取付けした樹脂製の押縁13bとからなり、複層ガラス20は室外側が本体部13aのガラス保持片34とガラス1aの隙間及び縁部材2の突片15間に充填したシール材35a,35bで接着され、室内側は押縁13bの先端部に設けたビード36で保持されている。本実施形態は、縁部材2の突片15を框13のガラス保持溝14の底面に当接することで、複層ガラス20を框13に対して位置決めできるので、框13への複層ガラス20の組込みや固定が容易になる。また、地震のときなどに複層ガラス20ががたつくのを防ぐことができる。
【0045】
これまでガラスが2枚のものについて説明したが、ガラスが3枚以上のものにも対応することができる。図15(a)は、第1実施形態の複層ガラス20をガラス3枚のタイプに変形した例を示している。縁部材2は、ステンレスの板を曲げ加工し、各ガラス1a,1b,1cの小口に面する基部3,3,3と、ガラス1a,1b,1c間の隙間に差し入れられる2つの延出部4,4が一体に形成され、各ガラス1a,1b,1cの小口5と内側面6とを連続する二次シール材7により縁部材2の基部3及び延出部4と接着している。延出部4の内周側のガラス1a,1b,1c間には、乾燥剤8を入れたスペーサー9が配置され、スペーサー9はガラス1a,1b,1cの内側面6と一次シール材10で接着してある。
図15(b)は、スペーサーを用いない第5実施形態の複層ガラス20をガラス3枚のタイプに変形した例を示している。縁部材2は、アルミや樹脂等の押出形材により、各ガラス1a,1b,1cの小口5に面する板状の基部3と、基部3より内周側に突出してガラス1a,1b,1c間の隙間に配置される溝形の延出部4,4とが一体に形成され、各ガラス1a,1b,1cの小口5と内側面6とを連続する単一のシール材11により縁部材2の基部3及び延出部4と接着している。延出部4には乾燥剤8を入れ、通気性を有するテープ30で塞いである。
このように、ガラスが3枚の複層ガラス20も、ガラスが2枚のものと同じように製作できる。第1,第5実施形態以外の実施形態のものも、3枚以上のガラスに対応することができる。
【0046】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。縁部材2の材質、断面形状は、適宜変更することができる。縁部材2を、ステンレスや耐火性樹脂材等の耐火性の材料で形成したときには、耐火性をさらに向上することができる。縁部材2のガス抜き部は、スリット状に形成したものでもよい。乾燥剤8は、ガラス1a,1b,1cの四辺のうち少なくとも何れか一辺に設けてあればよい。ガラス1a,1b,1cは、矩形に限らず円形や台形であってもよい。複層ガラス20を框13に保持させる形態は任意である。シール材7,10,11は、一般的に複層ガラスに使用されているものを適宜使用することができる。本発明の複層ガラス20は、第1〜9実施形態の特徴を適宜組合わせて実施することができ、例えば図7に示す第4実施形態の複層ガラスの縁部材2にガス抜き孔24を設けたり、図9に示す第5実施形態の複層ガラスの縁部材2をグレチャン28と一体に形成したりすることができる。本発明の障子18は、スライド開閉する障子に限らず、回動ないしすべり出して開く障子や、サッシ枠に固定した嵌め殺し障子等、あらゆる障子に適用することができる。本発明のサッシは、引違いサッシに限らず、回転窓やすべり出し窓、嵌め殺し窓等、あらゆる窓種に適用することができる。また本発明の複層ガラスは、ドアやカーテンウォール等に組み込むこともできる。
【符号の説明】
【0047】
1a,1b,1c ガラス
2 縁部材
3 基部
4 延出部
5 ガラスの小口
6 ガラスの内側面
7 二次シール材(シール材)
8 乾燥剤
9 スペーサー
10 一次シール材(シール材)
11 シール材(単一のシール材)
12 折り返し片
13 框
14 ガラス保持溝
15 突片(当接部)
16 雌ネジ孔(ネジ固定部)
17 溝(ネジ固定部)
18 障子
19 サッシ枠
20 複層ガラス
21 空気層
24 ガス抜き孔(ガス抜き部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスと、当該複層ガラスを備える障子及びサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複層ガラスは、図17に示すように、乾燥剤を入れたスペーサー90をガラス91a,91bの内側面に一次シール92,92で接着し、スペーサー90の外周側のガラス91a,91b間の隙間に二次シール93を充填して接着し、ガラス間に密閉した空気層94を形成している。このような従来の複層ガラスは、ガラス91a,91bの内側面が一次・二次シールで接着してあるだけなので、ガラス間に層間変位が生じやすく、それに伴ってシール92,93が切れ、ガラス間の空気層94に水蒸気が浸入することがあった。またガラスが網95入りガラスの場合、ガラスの小口96に網95が露出するため、ガラスの小口96に錆止めの処理をする必要があった。さらに、二次シール93の量が多く、複層ガラスの外周面に二次シール93が露出しているため、火災時に二次シール93が溶けて可燃ガスが発生し、可燃ガスに火が引火して延焼を起こしたり、ガラス91a,91bが脱落したりする問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、ガラス間の空気層に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる複層ガラス、障子及びサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による複層ガラスは、複数のガラスと、ガラスの周囲に設けた縁部材とを備え、縁部材は、ガラスの小口に面する基部と、ガラス間に延出する延出部とを有し、ガラスの小口と内側面とを連続するシール材により縁部材の基部及び延出部と接着したことを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による複層ガラスは、請求項1記載の発明の構成に加え、ガラス間に乾燥剤が設けてあることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明による複層ガラスは、請求項1又は2記載の発明の構成に加え、延出部の内周側にスペーサーを設けてあり、スペーサーをガラスの内側面にシール材で接着してあることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明による複層ガラスは、請求項2記載の発明の構成に加え、縁部材の延出部に乾燥剤を保持していることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3又は4記載の発明の構成に加え、縁部材は、ガラス間のガスを逃がすためのガス抜き部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項6記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4又は5記載の発明の構成に加え、ガラスと縁部材とが単一のシール材で接着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項7記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5又は6記載の発明の構成に加え、縁部材がグレチャンと一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項8記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5又は6記載の発明の構成に加え、縁部材は、ガラスの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片を有することを特徴とする。
【0012】
請求項9記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の発明の構成に加え、縁部材は、框のガラス保持溝の底面に当接する当接部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項10記載の発明による複層ガラスは、請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の発明の構成に加え、縁部材は、框にネジで固定するためのネジ固定部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項11記載の発明による障子は、框と、框に組み込んだ請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスとを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項12記載の発明によるサッシは、請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明による複層ガラスは、ガラスの小口と内側面とを連続するシール材により縁部材の基部及び延出部と接着したことで、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる。また、ガラスの接着強度が向上し、ガラス間の層間変位を防止できる。ガラスが網入りガラスの場合でも、ガラスの小口がシール材と縁部材の基部により被覆されるため、錆止め処理をする必要がない。さらに、縁部材の延出部がガラス間の隙間に挿入されることでシール材の量を少なくできるので、コストを削減できると共に防火性能を向上できる。
【0017】
請求項2記載の発明による複層ガラスは、ガラス間に乾燥剤が設けてあるので、ガラス間の湿気を乾燥剤で吸収し、ガラスの内側面の結露を防止できる。
【0018】
請求項3記載の発明による複層ガラスは、延出部の内周側にスペーサーを設け、スペーサーをガラスの内側面にシール材で接着したことで、スペーサーによりガラス間の隙間を正確に保持できると共に、スペーサーとガラス間のシール材により水蒸気の浸入を防止できる。
【0019】
請求項4記載の発明による複層ガラスは、縁部材の延出部に乾燥剤を保持したので、ガラス間の湿気を乾燥剤で吸収し、ガラスの内側面の結露を防止できる。スペーサーを縁部材と別個に設ける必要がないため、コストを削減できると共に製造工程を簡略化できる。
【0020】
請求項5記載の発明による複層ガラスは、縁部材にガラス間のガスを逃がすためのガス抜き部を有することで、火災時にガラス間のガスが膨張したときにガス抜き部からガスが逃げるので、複層ガラスが膨らむように変形するのを防止できる。
【0021】
請求項6記載の発明による複層ガラスは、ガラスと縁部材とを単一のシール材で接着することで、従来行っていた一次シールを省くことができ、コストを削減できると共に製造工程を簡略化できる。
【0022】
請求項7記載の発明による複層ガラスは、縁部材がグレチャンと一体に形成されているので、後からグレチャンを取付けることなく、そのまま框に組み込むことができ、障子の組立が簡略化される。
【0023】
請求項8記載の発明による複層ガラスは、縁部材にガラスの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片を有することで、ガラスの脱落を折り返し片により防止できる。
【0024】
請求項9記載の発明による複層ガラスは、縁部材に框のガラス保持溝の底面に当接する当接部を有することで、複層ガラスを框に位置決めすることができ、障子の組立が容易になると共に複層ガラスを框に安定して保持できる。
【0025】
請求項10記載の発明による複層ガラスは、縁部材に框にネジで固定するためのネジ固定部を有するので、縁部材を框にネジで固定することができ、これにより複層ガラスが框から外れるのを防止できる。
【0026】
請求項11記載の障子は、請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを框に組み込んだので、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる、ガラス間の層間変位を防止できる、複層ガラスを框に安定して保持できるといった効果が得られる。
【0027】
請求項12記載の発明によるサッシは、請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを備えるため、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる、ガラス間の層間変位を防止できる、複層ガラスを框に安定して保持できるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の複層ガラスの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図3】本発明の複層ガラスの第2実施形態を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図5】本発明の複層ガラスの第3実施形態を示す断面図である。
【図6】第3実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図7】本発明の複層ガラスの第4実施形態を示す断面図である。
【図8】第4実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図9】本発明の複層ガラスの第5実施形態を示す断面図である。
【図10】第5実施形態の複層ガラスを框に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図11】本発明の複層ガラスの第6実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図12】本発明の複層ガラスの第7実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図13】本発明の複層ガラスの第8実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図14】本発明の複層ガラスの第9実施形態を示す断面図であって、框に組み込んだ状態を示す。
【図15】ガラスが3枚の場合の複層ガラスの例を示す断面図である。
【図16】本発明のサッシの一例を示す室外側正面図である。
【図17】従来の複層ガラスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の複層ガラス20の第1実施形態を示している。本複層ガラス20は、2枚のガラス1a,1bと、ガラス1a,1bの四周の縁部のガラス1a,1b間に配置したスペーサー9と、ガラス1a,1bの四周の縁部のスペーサー9の外周側に配置した縁部材2とを備え、ガラス1a,1b間に密閉された空気層21を形成してある。一方のガラス1aは、網22入りのガラスとなっている。
スペーサー9は、薄いアルミの板をロールフォーミングにより筒状に形成したものであり、内部に乾燥剤8が入れてあり、内周側の壁に通気孔39が設けてあり、外周側に継ぎ目23を有している。スペーサー9は、各ガラス1a,1bの内側面6,6に一次シール材10,10により接着してある。なおスペーサー9は、従来の複層ガラスに用いられているものをそのまま利用することができる。
縁部材2は、ステンレスの板をロールフォーミングで成形したものであり、各ガラス1a,1bの小口5,5に面する基部3,3と、ガラス1a,1b間の隙間に延出する台形状の延出部4とを有している。延出部4の頂部には、長手方向の少なくとも一箇所にガス抜き孔24が設けてあり、ガス抜き孔24は火災時には熱で溶ける性質の樹脂やロウ等で形成した蓋25で塞いである。ガラス1a,1bの小口5,5と基部3,3との隙間と、ガラス1a,1bの内側面6,6と延出部4との隙間には、二次シール材7が充填されている。
【0030】
本複層ガラス20の製作手順は、スペーサー9の両側面に一次シール材10,10を付着させ、スペーサー9の両側からガラス1a,1bを押付け、スペーサー9を一次シール材10,10によりガラス1a,1bの内側面6,6に接着させる。その後、スペーサー9の外周側のガラス1a,1b間の隙間に二次シール材7を充填し、縁部材2を外周側から押付ける。二次シール材7は、縁部材2の延出部4がガラス1a,1b間に差し込まれることでガラス1a,1bの小口5,5側にはみ出し、縁部材2の延出部4と基部3,3がガラス1a,1bの内側面6,6と小口5,5とに二次シール材7により連続して接着される。
【0031】
このように本複層ガラス20は、ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6とを連続する二次シール材7により縁部材2の基部3,3及び延出部4と接着したことで、シール材7,10が切れてガラス1a,1b間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる。また、ガラス1a,1bの接着強度が向上し、ガラス1a,1b間の層間変位を防止できる。ガラス1aが網22入りガラスの場合でも、ガラス1aの小口5が二次シール材7と縁部材2の基部3により被覆されるため、錆止め処理をする必要がない。さらに、縁部材2の延出部4がガラス1a,1b間の隙間に挿入されることで二次シール材7の量を少なくできるので、コストを削減できると共に、火災時に二次シール材7が溶融して生ずる可燃ガスも少なくなるため、防火性能を向上できる。さらに、二次シール材7がステンレス製の縁部材2により被覆されているため、二次シール材7の溶融や発火を防止できる。また、火災時にはガラス1a,1b間の空気層21のガスが膨張するが、蓋25が火災の熱で溶けて縁部材2のガス抜き孔24が開放し、膨張したガスがガス抜き孔24から抜けるので、ガラス1a,1bが膨らむように変形しようとするのを抑えられる。二次シール材7が縁部材2により被覆されているので、二次シール材7の経年劣化を防止できる。また、スペーサー9内に設けた乾燥剤8により、ガラス1a,1b間の湿気を乾燥剤8で吸収し、ガラス1a,1bの内側面6,6の結露を防止できる。
【0032】
図2は、第1実施形態の複層ガラス20を障子18の框13に組み込んだ状態を示している。この例では、複層ガラス20の周囲にグレチャン28を嵌め込み、グレチャン28を介して框13の内周側に形成されたガラス保持溝14に複層ガラス20を保持している。
【0033】
図16は、本発明の複層ガラス20を用いたサッシの一例を示している。本サッシは、上枠25と下枠26と左右の縦枠27,27とを四周枠組みしてなるサッシ枠19と、サッシ枠19内に引違い開閉自在に納めた外障子18aと内障子18bとを備える。外障子18aと内障子18bは、上框13aと下框13bと戸先框13cと召し合せ框13dとを四周框組みし、その内側に複層ガラス20を組み込んでいる。本サッシは、上述の第1実施形態の複層ガラス20を備えていることで、シール材が切れてガラス間に水蒸気が浸入するのを確実に防止できる、ガラス間の層間変位を防止できる、防火性能を向上できるといった効果が得られる。
【0034】
図3は、本発明の複層ガラス20の第2実施形態を示している。本実施形態は、縁部材2をグレチャン28と一体に形成したものである。縁部材2は、硬質樹脂で基部3がコ字型に形成され、その両側の縁部にガラス保持部29,29が軟質樹脂で形成してある。また縁部材2は、ガラス1a,1b間の隙間に入り込む台形状の延出部4を有し、ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6とを連続する二次シール材7により縁部材2の基部3及び延出部4と接着している。縁部材2の内周側には、乾燥剤8入りのスペーサー9が配置され、スペーサー9は一次シール材10,10によりガラス1a,1bの内側面6,6に接着されている。
【0035】
図4は、第2実施形態の複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。このように、第2実施形態の複層ガラス20は、縁部材2をグレチャン28と一体に形成したので、そのまま框13のガラス保持溝14に組み込むことができ、障子18の組立てを簡略化できる。
【0036】
図5は本発明の複層ガラス20の第3実施形態を示しており、図6はこの複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。第1実施形態のものとは、縁部材2にガラス1a,1bの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片12,12を設けている点が異なる。このように縁部材2に折り返し片12,12を設けたことで、火災時に二次シール材7が溶融したときなどでも、ガラス1a,1bの脱落を防止することができる。本実施形態の複層ガラス20も、図6に示すように、グレチャン28を介して框13のガラス保持溝14に組み込むことができる。
【0037】
図7は本発明の複層ガラス20の第4実施形態を示しており、図8はこの複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。縁部材2は、アルミや樹脂の押出形材により、ガラス1a,1bの小口に面した基部3とガラス1a,1b間の隙間に延出する延出部4とが一体に形成され、延出部4は基部3から内周側に延出する脚部4a,4aと、脚部4a,4aの先端に形成された乾燥剤保持部4bとを有する。乾燥剤保持部4bは、内周側が開放したコ字状の溝形に形成され、その中に乾燥剤8を入れた上で通気性を有するテープ30で塞いでいる。縁部材2は、乾燥剤保持部4bが一次シール材10,10によりガラス1a,1bの内側面6,6に接着され、脚部4a,4aと基部3がガラス1a,1bの小口5,5及び内側面6,6と二次シール材7により接着されている。この複層ガラス20は、縁部材2に一次シール材10と二次シール材7とを付着させた上で、ガラス1a,1bを縁部材2の両側から挟み付けるようにして一次シール材10と二次シール材7を同時に接着させる。
【0038】
第4実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の延出部4に乾燥剤保持部4bを一体に設けたので、スペーサーを別個に設ける必要がなく、これにより複層ガラス20のコストを削減できると共に製造工程を簡略化できる。
【0039】
図9は本発明の複層ガラス20の第5実施形態を示しており、図10はこの複層ガラス20を框13に組み込んだ状態を示している。縁部材2は、基部3が2枚のガラス1a,1bの小口5,5に跨るように板状に形成され、延出部4は内周側が開放した溝状に形成され、延出部4内に乾燥剤8を入れて通気性を有するテープ30で塞いである。ガラス1a,1bの小口5,5と基部3との隙間と、ガラス1a,1bの内側面6,6と延出部4との隙間には、単一のシール材11が充填されている。延出部4の先端部には、外側に直角に曲がった突片38を有し、この突片38によりテープ30を貼り易くすると共に、シール材11が内周側にはみ出すのを防いでいる。本複層ガラス20は、縁部材2の延出部4の両側にシール材11を付着させた上で、ガラス1a,1bを縁部材2の両側から挟み付けて接着することで、簡単に製作できる。
【0040】
第5実施形態の複層ガラス20は、縁部材2とガラス1a,1bとを単一のシール材11により接着し、一次シールを省略したことで、複層ガラス20のコストをより一層削減でき、製造工程もさらに簡略化できる。ガラス1a,1bの小口5,5と内側面6,6を縁部材2とシール材11で連続して接着しているため、一次シールを省略しても、十分な水密性と接着強度を確保することができる。
【0041】
図11は、本発明の複層ガラス20の第6実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、延出部4の底部に雌ネジ孔16を形成し、框13に挿入したネジ31をこの雌ネジ孔16に捩じ込むことで、縁部材2を框13に固定している。これにより、框13のガラス保持溝14から複層ガラス20が抜けるのを防止することができ、障子18の剛性も向上できる。
【0042】
図12は、本発明の複層ガラス20の第7実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の延出部4に外周側に開口した溝17を有し、框13に挿入したネジ31をその溝17に捩じ込むことで、縁部材2を框13に固定している。これにより、框13のガラス保持溝14から複層ガラス20が抜けるのを防止することができ、障子18の剛性も向上できる。また、縁部材2にネジ孔の加工が不要で、且つ長手方向の任意の位置でネジ31で固定できるので、框13との固定がしやすい。
【0043】
図13は、本発明の複層ガラス20の第8実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2に外周側に突出した係止片32を有し、この係止片32を框13のガラス保持溝14の底部に形成した係止片33と係合させている。本実施形態の複層ガラス20は、グレチャンではなくガラス保持溝14の先端部に設けたガスケット37a,37bにより保持されている。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の係止片32が框13の係止片33と係合していることで、地震や火災のときなどに複層ガラス20が框13から脱落するのを防止できる。
【0044】
図14は、本発明の複層ガラス20の第9実施形態であって、框13に組み込んだ状態を示している。本実施形態の複層ガラス20は、縁部材2の室外側端部に外周側に突出した突片15を有し、突片15の先端を框13のガラス保持溝14の底面に当接させている。縁部材2の延出部4は、内周側が開口した溝形に形成され、延出部4内に乾燥剤8が通気性のある紙袋等に詰めた状態で保持してある。框13は、アルミ製の本体部13aと、本体部13aの室内側に係合取付けした樹脂製の押縁13bとからなり、複層ガラス20は室外側が本体部13aのガラス保持片34とガラス1aの隙間及び縁部材2の突片15間に充填したシール材35a,35bで接着され、室内側は押縁13bの先端部に設けたビード36で保持されている。本実施形態は、縁部材2の突片15を框13のガラス保持溝14の底面に当接することで、複層ガラス20を框13に対して位置決めできるので、框13への複層ガラス20の組込みや固定が容易になる。また、地震のときなどに複層ガラス20ががたつくのを防ぐことができる。
【0045】
これまでガラスが2枚のものについて説明したが、ガラスが3枚以上のものにも対応することができる。図15(a)は、第1実施形態の複層ガラス20をガラス3枚のタイプに変形した例を示している。縁部材2は、ステンレスの板を曲げ加工し、各ガラス1a,1b,1cの小口に面する基部3,3,3と、ガラス1a,1b,1c間の隙間に差し入れられる2つの延出部4,4が一体に形成され、各ガラス1a,1b,1cの小口5と内側面6とを連続する二次シール材7により縁部材2の基部3及び延出部4と接着している。延出部4の内周側のガラス1a,1b,1c間には、乾燥剤8を入れたスペーサー9が配置され、スペーサー9はガラス1a,1b,1cの内側面6と一次シール材10で接着してある。
図15(b)は、スペーサーを用いない第5実施形態の複層ガラス20をガラス3枚のタイプに変形した例を示している。縁部材2は、アルミや樹脂等の押出形材により、各ガラス1a,1b,1cの小口5に面する板状の基部3と、基部3より内周側に突出してガラス1a,1b,1c間の隙間に配置される溝形の延出部4,4とが一体に形成され、各ガラス1a,1b,1cの小口5と内側面6とを連続する単一のシール材11により縁部材2の基部3及び延出部4と接着している。延出部4には乾燥剤8を入れ、通気性を有するテープ30で塞いである。
このように、ガラスが3枚の複層ガラス20も、ガラスが2枚のものと同じように製作できる。第1,第5実施形態以外の実施形態のものも、3枚以上のガラスに対応することができる。
【0046】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。縁部材2の材質、断面形状は、適宜変更することができる。縁部材2を、ステンレスや耐火性樹脂材等の耐火性の材料で形成したときには、耐火性をさらに向上することができる。縁部材2のガス抜き部は、スリット状に形成したものでもよい。乾燥剤8は、ガラス1a,1b,1cの四辺のうち少なくとも何れか一辺に設けてあればよい。ガラス1a,1b,1cは、矩形に限らず円形や台形であってもよい。複層ガラス20を框13に保持させる形態は任意である。シール材7,10,11は、一般的に複層ガラスに使用されているものを適宜使用することができる。本発明の複層ガラス20は、第1〜9実施形態の特徴を適宜組合わせて実施することができ、例えば図7に示す第4実施形態の複層ガラスの縁部材2にガス抜き孔24を設けたり、図9に示す第5実施形態の複層ガラスの縁部材2をグレチャン28と一体に形成したりすることができる。本発明の障子18は、スライド開閉する障子に限らず、回動ないしすべり出して開く障子や、サッシ枠に固定した嵌め殺し障子等、あらゆる障子に適用することができる。本発明のサッシは、引違いサッシに限らず、回転窓やすべり出し窓、嵌め殺し窓等、あらゆる窓種に適用することができる。また本発明の複層ガラスは、ドアやカーテンウォール等に組み込むこともできる。
【符号の説明】
【0047】
1a,1b,1c ガラス
2 縁部材
3 基部
4 延出部
5 ガラスの小口
6 ガラスの内側面
7 二次シール材(シール材)
8 乾燥剤
9 スペーサー
10 一次シール材(シール材)
11 シール材(単一のシール材)
12 折り返し片
13 框
14 ガラス保持溝
15 突片(当接部)
16 雌ネジ孔(ネジ固定部)
17 溝(ネジ固定部)
18 障子
19 サッシ枠
20 複層ガラス
21 空気層
24 ガス抜き孔(ガス抜き部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラスと、ガラスの周囲に設けた縁部材とを備え、縁部材は、ガラスの小口に面する基部と、ガラス間に延出する延出部とを有し、ガラスの小口と内側面とを連続するシール材により縁部材の基部及び延出部と接着したことを特徴とする複層ガラス。
【請求項2】
ガラス間に乾燥剤が設けてあることを特徴とする請求項1記載の複層ガラス。
【請求項3】
延出部の内周側にスペーサーを設けてあり、スペーサーをガラスの内側面にシール材で接着してあることを特徴とする請求項1又は2記載の複層ガラス。
【請求項4】
縁部材の延出部に乾燥剤を保持していることを特徴とする請求項2記載の複層ガラス。
【請求項5】
縁部材は、ガラス間のガスを逃がすためのガス抜き部を有することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の複層ガラス。
【請求項6】
ガラスと縁部材とが単一のシール材で接着されていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の複層ガラス。
【請求項7】
縁部材がグレチャンと一体に形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の複層ガラス。
【請求項8】
縁部材は、ガラスの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片を有することを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の複層ガラス。
【請求項9】
縁部材は、框のガラス保持溝の底面に当接する当接部を有することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の複層ガラス。
【請求項10】
縁部材は、框にネジで固定するためのネジ固定部を有することを特徴とする1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の複層ガラス。
【請求項11】
框と、框に組み込んだ請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスとを備えることを特徴とする障子。
【請求項12】
請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを備えることを特徴とするサッシ。
【請求項1】
複数のガラスと、ガラスの周囲に設けた縁部材とを備え、縁部材は、ガラスの小口に面する基部と、ガラス間に延出する延出部とを有し、ガラスの小口と内側面とを連続するシール材により縁部材の基部及び延出部と接着したことを特徴とする複層ガラス。
【請求項2】
ガラス間に乾燥剤が設けてあることを特徴とする請求項1記載の複層ガラス。
【請求項3】
延出部の内周側にスペーサーを設けてあり、スペーサーをガラスの内側面にシール材で接着してあることを特徴とする請求項1又は2記載の複層ガラス。
【請求項4】
縁部材の延出部に乾燥剤を保持していることを特徴とする請求項2記載の複層ガラス。
【請求項5】
縁部材は、ガラス間のガスを逃がすためのガス抜き部を有することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の複層ガラス。
【請求項6】
ガラスと縁部材とが単一のシール材で接着されていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の複層ガラス。
【請求項7】
縁部材がグレチャンと一体に形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の複層ガラス。
【請求項8】
縁部材は、ガラスの外側面に沿って内周側に折り返した折り返し片を有することを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の複層ガラス。
【請求項9】
縁部材は、框のガラス保持溝の底面に当接する当接部を有することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の複層ガラス。
【請求項10】
縁部材は、框にネジで固定するためのネジ固定部を有することを特徴とする1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の複層ガラス。
【請求項11】
框と、框に組み込んだ請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスとを備えることを特徴とする障子。
【請求項12】
請求項1〜10の何れかに記載の複層ガラスを備えることを特徴とするサッシ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−207458(P2012−207458A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74139(P2011−74139)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【出願人】(391015786)三芝硝材株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【出願人】(391015786)三芝硝材株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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