説明

複層ガラスの耐久性算出方法

【課題】2辺支持や、点支持などのガラス壁面構法においては、板ガラスは受風圧時に大きな面外変位を生じる。乾燥剤を内蔵したスペーサ、透湿抵抗が高い1次シール、形状保持と2枚のガラスを接着する2次シールからなる複層ガラスが面外へ変形すると、1次シールが空気層側へ移動する現象が生じ、その結果、複層ガラスの耐久性が低下することがわかった。実大実験とシミュレーションにより、風圧による変形の程度とペアガラスとしての耐久性の関係を明らかにした。これをベースとして、必要とされる耐久性を確保するための、各ガラス壁面構法毎に、ガラス板厚及びガラス割付に関する設計法を構築する。
【解決手段】実大実験とシミュレーションにより、横軸を風圧による変形率、縦軸をペアガラスとしての推定寿命比としたグラフを用い、両者の関係を明らかにした。これをベースとして、必要とされる耐久性を確保するための、変形率を求め、その変形率に応じたガラス板厚及びガラス割付を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複層ガラスの耐久性算出方法及び耐久性演算装置に係り、特に複数の複層ガラスによって建築物の外壁を構築する際において、その内部結露耐久性を確保するための複層ガラスの耐久性算出方法及び耐久性演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーテンウォール構法等の外壁構法を用いて、ガラス板を建築物の躯体側に支持させることにより、建築物の外壁をガラス板で構築する例が増えている。
【0003】
このような外壁構法には、図5の如く水平方向に配設されたサッシ1、1…によってガラス板2、2…の上下2辺を支持する2辺支持構法、図6の如く突き合わされた4枚のガラス板2、2…の各々のコーナ部をジョイント部材3、3…によって点支持する点支持構法(以下、「DPG構法」と称する)、及び図7の如く突き合わされる4枚のガラス板2、2…の各々のコーナ部をガラス支持部材4、4…によって挟み込んで支持する孔明きガラス点支持構法(以下「メタルポイント構法」と称する)等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法が知られている。なお、図6に示したジョイント部材3、3…は、水平方向に所定の張力で張られたケーブルトラス5によって支持され、また、図7に示したガラス支持部材4は、鉛直方向に立設された柱6によって支持されている。
【0004】
ところで、今世紀は環境の時代と呼ばれているように、省エネルギー化が重要である今日、複層ガラスを採用する傾向がますます増加してきている。当然のこととして、前述したガラス壁面構法においても、図8に示すような複層ガラス7が取り入れられるようになってきている。
【0005】
この複層ガラス7は、デュアルタイプと称されるもので、2枚のガラス板2、2が、内部に乾燥剤8が充填されたスペーサ9と透湿抵抗を有する1次シール10とを介して重ね合わされるとともに、2次シール11によって接着保持されて構成されている。
【0006】
複層ガラスは、通常4辺をサッシフレームに支持させて施工されていたが、DPG構法やメタルポイント構法等の点支持構法の特徴はサッシレスであるため、複層ガラスは周辺部も含めて、全て露出状態となる。したがって、サッシフレームを使用したサッシ構法に対して、点支持構法の最大の相違点は、ガラス周辺部が露出することによる材料的な劣化と、構造方式の違いに起因するガラス板2の変位である。また、二辺支持構法においても、サッシフレームに支持されない自由辺は露出状態となるため、同様の問題が生ずる。
【0007】
そこで、ガラス板2の変位に注目し、孔明き強化ガラスを用いたDPG構法での実大のパネルを用い、風圧力の繰り返し載荷による複層ガラスの変化を観察した。風圧力を受けることで、ガラス板2は厚さ方向に変位し、変位を繰り返すことで、1次シール10、10の変化が観察された。1次シール10は複層ガラス7の中空層の乾燥状態を保つ上で不可欠な材料であり、透湿抵抗が高いポリイソブチレン系のシール材が使用されることが多い。しかし、ポリイソブチレン系のシールは、硬化することがなく、粘着力を有し、塑性流れの性質が相当大きな材料である。このため、荷重や変位が生じると、それだけ1次シール10自体が変位し、元に戻ることができない。風圧による変形を繰り返した複層ガラスでは、図9に示すように1次シール10、10が空気層側に変位してしまい、小さく波打つという現象が確認された。
【0008】
空気層側に1次シール10、10がこのように移動してしまうと、結果として、透湿抵抗の低下につながり、中空空気層への水分の侵入を許し、その結果、内部結露が生じる温度が上昇することとなり、複層ガラス7としての耐久性の低下を引き起こす。
【0009】
そこで、1次シール10、10が移動しても、空気層側にはみ出すことなく、ガラス板2、2とスペーサ側面の間にとどまることで、複層ガラス7の耐久性の低下を起し難い、図10に示す背の高いスペーサ9´を考案し、これを特許文献1により開示している。このような背の高いスペーサ9´を使用することで、風圧載荷による複層ガラスの耐久性の低下を防ぎ、寿命を確保することができる。
【特許文献1】特開平9−203274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図10に示した背の高いスペーサ9´を適用した場合でも、風圧荷重レベルが増加し、複層ガラスの厚さ方向への変位が増加すると、図8に示した通常のスペーサ9を有する複層ガラス7と同様に、1次シール10、10が空気層側に移動し、最終的に複層ガラスの耐久性の低下が起きることが判明した。
【0011】
本発明は、従来技術が有していた前述の課題を解消し、長期間に渡って、耐久性を保持する複層ガラスの耐久性算出方法及び耐久性演算装置を提供するものである。
【0012】
1 次シール10の空気層側への移動は、風圧により引き起こされるガラスの変形に主に起因しているため、その変形を制限することで、複層ガラスの耐久性を低下させないことが可能となる。実大パネルに対する風圧載荷試験、及びシミュレーションにより、変形と内部結露耐久性の関係を明らかにし、その結果に基づく、複層ガラスの内部結露耐久性を確保できる耐久性算出方法及び耐久性演算装置を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性算出方法であって、入力手段、風圧変形率算出手段、板厚/割付寸法算出手段、及び出力手段を備えた耐久性演算装置における耐久性算出方法において、前記入力手段が、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とを入力する工程と、前記風圧変形率算出手段が、前記入力した複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する工程と、前記板厚/割付寸法算出手段が、前記算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の板厚又は複層ガラスの割付寸法を算出を算出する工程と、前記出力手段が、前記算出した板厚又は割付寸法を表示手段に出力する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記課題を解決するために、複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性演算装置において、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とが入力される入力手段と、前記入力された複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する風圧変形率算出手段と、前記算出されたガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の板厚又は複層ガラスの割付寸法を算出する板厚/割付寸法算出手段と、前記算出された板厚又は割付寸法を表示手段に出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明は、前記課題を解決するために、複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性算出方法であって、入力手段、風圧変形率算出手段、寿命算出手段、及び出力手段を備えた耐久性演算装置における耐久性算出方法において、前記入力手段が、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とを入力する工程と、前記風圧変形率算出手段が、前記入力した複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する工程と、前記寿命算出手段が、前記算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の寿命を算出を算出する工程と、前記出力手段が、前記算出した寿命を表示手段に出力する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記課題を解決するために、複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性演算装置において、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とが入力される入力手段と、前記入力された複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する風圧変形率算出手段と、前記算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の寿命を算出を算出する寿命算出手段と、前記算出した寿命を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明によれば、前記入力手段は、複層ガラス内部の露点が所定値以上となった時点を複層ガラスの寿命として設定するとともに、4辺が支持された複層ガラスの前記寿命に対する、所望の寿命比を示す情報を入力し、前記風圧変形率算出手段は、実験又はシミュレーションにて得られた前記寿命比に対する複層ガラスのガラス板の風圧変形率に基づいて、前記所望の寿命比に対する風圧変形率を算出することを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、前記課題を解決するために、前記入力手段は、複層ガラス内部の露点が所定値以上となった時点を複層ガラスの寿命として設定するとともに4辺が支持された複層ガラスの前記寿命を示す情報を入力し、前記寿命算出手段は、前記風圧変形率算出手段が算出した風圧変形率に基づいて、前記寿命に対する寿命比を算出することを特徴とする。
【0019】
本発明は、風圧力などによる複層ガラスの変形量を、ガラス板厚を変更すること、または、ガラス割付寸法を小さくすることにより制限して複層ガラス内部結露が生じる露点温度の上昇を抑える。これにより、本発明によれば、従来技術が有していた課題を解消し、長期間に渡って、内部結露耐久性を保持する複層ガラスの耐久性算出方法及び耐久性演算装置を提供できる。
【0020】
また、強化ガラスや、倍強度ガラスを用いれば、より大きな変形に耐えることができるため、本発明によるガラス板厚又はガラス割付に関する耐久性算出方法及び耐久性演算装置は、有効なものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る複層ガラスの耐久性算出方法及び耐久性演算装置によれば、2辺支持や点支持という特殊構造においても、耐久性の低下することの無い複層ガラスの設計、すなわち、風圧変形率に基づいて寿命比を算出すること等により、適切な板厚構成及びガラス割付寸法の決定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る複層ガラスの耐久性算出方法及び耐久性演算装置の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示す実施の形態の複層ガラスの耐久性演算装置20は、演算用パソコン本体22、キーボード(入力手段)24、及びディスプレイ(表示手段)26から構成されるとともに、推定寿命比に対する風圧変形率及び風圧変形率に対する板厚又はガラス板割付寸法に関するアルゴリズムが組み込まれたCD−ROM等の記録媒体28から構成される。
【0024】
図2は、演算用パソコン本体22の信号処理系のブロック図であり、パソコン本体22の情報送受信部には、通信回線30又は通信ネットワーク等の通信網を介して他の通信機器と情報の送受信を行うための通信回線用の送受信手段32が設けられている。
【0025】
また、パソコン本体22には、画像や文字等の情報を表示して利用者に通知するディスプレイ26が接続される。また、パソコン本体22には、後述する情報処理手段(CPU:風圧変形率算出手段、板厚/割付寸法算出手段、寿命算出手段)36の指令に基づいてディスプレイ26に対して表示用の画像信号を出力する表示制御手段34と、利用者がキーボード24を介して入力した各種情報を読み取って情報処理手段36に伝達したり、情報処理手段36からの指示に基づいてキーボード24のLED群に表示指令を出力するI/O38とが設けられている。
【0026】
更に、パソコン本体22には、記録媒体28を着脱可能に装着する記録媒体装着部40と、記録媒体28に対して画像データ等の情報を記録したり読み出したりする記録媒体インターフェース42とが設けられている。
【0027】
また、パソコン本体22には、パソコン本体22を統括制御する情報処理手段36を動作させるプログラムが記録されるとともに情報処理手段36が処理を実行する際の作業領域となるメモリ44と、パソコン本体22の処理に関する各種定数やネットワーク上の通信機器に通信接続する際のダイヤルアップ電話番号、アドレス、サイトアドレス等の接続情報、計算式、演算テーブル(表)等の各種の情報を記録するハードディスク等の記録手段46が設けられている。この記録手段46に、記録媒体28に記録された情報を記録することもできる。
【0028】
パソコン本体22内において情報処理手段36、表示制御手段34、I/O38、メモリ44、記録手段46等を含む各周辺回路はバス48で接続されており、情報処理手段36は各々の周辺回路を制御することが可能であるとともに、情報処理手段36が実行する処理プログラムに基づいて周辺の各回路を制御することが可能となっている。
【0029】
また、キーボード24は、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、ガラス壁面構法に関する情報とを入力することが可能であり、また、情報処理手段36は、キーボード24が入力した複層ガラスの構成に関する情報と、複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出することが可能となっている。また、情報処理手段36は、算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の板厚又は複層ガラスの割付寸法を算出を算出することが可能となっている。
【0030】
更に、記録媒体インターフェース42は、算出した板厚又は割付寸法を記録媒体に出力することが可能であり、また、ディスプレイ26は、算出した板厚又は割付寸法を表示して算出結果を利用者に通知することが可能となっている。
【0031】
ところで、複層ガラスの内部結露耐久性(以下、単に「耐久性」と称する)は、使用するシール材の種類によって異なるが、複層ガラスを図5、6、7に示したガラス壁面構法によって支持する場合には、その耐久性に関し以下の点を考慮する必要がある。
【0032】
・ガラスエッジの露出
・強化ガラスの表面性状
・風圧による2枚のガラスのせん断ずれ
・風圧によるガラスエッジの面外への変形
ここで、エッジ露出については、天然曝露試験および加速耐久性試験から、シリコーン系の2次シールを用いた方が耐久性が高く、実用可能であることが解明されている。
【0033】
DPG構法などでは、ガラスの強度上の問題から、強化ガラスまたは倍強度ガラスを用いることが多いが、熱処理ガラスでは通常のフロートガラスと比較して、反り・うねりなどにより表面平滑性が悪いため、複層ガラスの耐久性上の欠点となり易い。表面性状に対応するためには、1次シールの厚さを増す必要があるが、厚さを増すと、それだけ水分が進入する隙間も増加することになる。
【0034】
また、複層ガラスの受風圧時の挙動を考えると、2枚のガラスが同様の曲率半径で変形することから、2枚のガラス間の辺端部にせん断変形が加わる。通常使用される1次シール(ポリイソブチレン系)は透湿抵抗が高く、水分の進入を防止する上で非常に有効な材料であるが、塑性流れの性質が相当大きい材料であるため、フレームレス構法などの面外拘束のない自由辺が風圧による大きな面外変形を受ける場合は、1次シールには変形が生じる。この変形が繰り返されると、1次シールが中空層側へ移動する現象が発生する。
【0035】
このような現象が発生すると、1次シールはガラスとスペーサとの間の透湿抵抗材としての本来の機能が損なわれることとなり、その結果、水分の進入が加速されて耐久性低下につながる。
【0036】
そこで、これらの欠点を解決するために、図10に示した特殊なスペーサ9´を適用する。この特殊スペーサ9´は、図8に示した通常スペーサ9と比較して高さが高いため、1次シール10はスペーサ9´とガラス板2との隙間に留まり、水分の進入を継続的に阻止する機能を果たす。強化ガラスに対応するためには、1次シール10の厚みを大きくする必要があるが、高さ方向もその打設量が増加するため、塑性流れによる透湿抵抗の低下は発生し難い。さらに、スペーサ9´の断面形状が大きくなるので、挿入できる乾燥剤量を通常よりも増量することができ、一層の耐久性向上が期待できる。
【0037】
[耐久試験]
・天然曝露試験では、通常、試験体サイズが小さいため、風圧による変形の影響を考察するには十分でない。そこで、実大サイズの試験体を製作し、風圧載荷試験を行うことにより風圧によるダメージを再現して複層ガラスの耐久性に及ぼす影響を調査することとした。
【0038】
・風圧載荷試験における試験(モデル)風圧の設定
設計風圧は、再現期間が100年などの極めて長いものである。実施の形態では、複層ガラスの耐久性に影響を与えるのは、そのような100年に1度の大風ではなく、日常レベルの風圧の繰り返しであると考え、代表都市のHASP風速データ(統計処理された1年間分の10分間平均風速データ)を用いて、以下の手順でモデル風圧(請求項1、3、5、7の複層ガラスにかかる風圧に相当)を設定した。
【0039】
・引用した都市の風速観測地点の高さ(標高)を補正して標準高さの風速データに統一する。
【0040】
・高さ補正した1年間分の10分間平均風速データを5m/s毎の風速レベルの頻度に分解する。
【0041】
・さらに、風速レベル毎に1〜2秒瞬間風速の発生頻度を求め、10年分に相当する頻度を算出する。
【0042】
・上記1〜2秒瞬間風速に対応した風圧を上限とする正負脈動風圧(脈動比1:3、周期約1. 5秒)を各レベルで設定し、10年間分相当の発生頻度と周期から、各々の脈動風圧載荷時間を求める。
【0043】
・実験を現実的かつ簡便にするために、脈動回数が10万回程度(風圧載荷時間で延べ42時間程度)に相当する風速レベル、すなわちモデル風圧(正負それぞれ一水準ずつ)を設定する。前記5m/s毎の風速レベルから、ここで設定した風速レベルへの読替えは、エネルギー換算に基づき載荷時間で調整する。
【0044】
上記で求めたモデル風圧と載荷時間を基準として、載荷時間は固定して実験時の風圧を変化させて、風圧による変形量が複層ガラスの耐久性に与える影響を実験的に求めた。
【0045】
すなわち、風圧載荷試験では、与える変形量を数水準の異なる変形率(長辺の最大面外変位量/長辺長さ)に設定し、図3に示す各構法の試験体を用いて、気密試験装置により実施した。試験体の2次シールは、すべてシリコーン系シールを用いた。その後さらに、各風圧ダメージを与えた試験体(実大の複層ガラス)を恒温恒湿槽(60℃×95%RH)に曝露して促進耐湿性試験を行い、モデル風圧による変形と複層ガラス耐久性の関係を把握することにした。
【0046】
ここで、図3に示した各構法の試験体について説明する。2辺支持構法では、サイズが1588mm×500mmで板厚が8mmの2枚のフロートガラスを、エア層12mmを介して構成された複層ガラスで試験を実施した。また、DPG構法では、サイズが1588mm×1588mmで板厚が12mm、6mmの倍強度ガラスを、エア層12mmを介して構成された複層ガラスで試験を実施した。更に、メタルポイント構法では、サイズが1588mm×1588mmで板厚が10mm、8mmの強化ガラスを、エア層12mmを介して構成された複層ガラスで試験を実施した。
【0047】
これらの試験体を用いてさらに促進耐湿性試験を行った結果から推定した構法別の複層ガラスの推定寿命比較を図4に示す。図4のグラフAが2辺支持構法(図8のスペーサ9、2次シール深打ち)に相当し、グラフBが2辺支持構法(図10のスペーサ9´)に相当し、グラフCがDPG構法(図10のスペーサ9´)に相当し、グラフDがMPG構法(図10のスペーサ9´)に相当する。
【0048】
図4は、風圧変形率と推定寿命の関係を示したグラフであり、横軸は風圧変形率を示している。風圧変形率は、風圧載荷時の長辺の最大面外変位量/長辺長さに設定し、各種構造方式別に示している。
【0049】
また、縦軸は推定寿命比である。実施の形態において複層ガラスの寿命は、内部結露耐久性と定義している。すなわち、通常の複層ガラスは、内部が乾燥状態に保たれており、一般的条件下では、中空層内部に結露が生じることは無い。しかし、長い間に、複層ガラス周辺のシール材を通じて水分が透過し、乾燥剤の能力限界を超えて、中空層の湿度が上昇すると、露点温度が上昇し、その結果、通常の冬期の温度条件下でも、中空層に結露が生じることとなる。
【0050】
通常の状態での露点温度は、−60℃以下(JIS規格では、−35℃以下)であるが、この露点温度が上昇し、通常の冬期の温度条件下でも結露するようになるまでの時間を寿命(耐久性)とする。また、風圧を受けない4辺支持での複層ガラスの推定寿命100%と位置付けられるものを基準として、それぞれのガラス壁面構法の場合を比率で表現したものが推定寿命比である。
【0051】
推定寿命の算出は以下の手順で行う。実大のガラスパネルの試験体は、各ガラス壁面構法別に、風圧により与える変形量を数水準の異なる変形率に設定し、一定期間風圧載荷することで、相当年数分の風圧ダメージを風圧載荷試験により与える。風圧によりダメージを与えた試験体は、恒温恒湿槽(60℃×95%RH)に促進曝露し、促進耐湿試験を加える。
【0052】
複層ガラスの耐久性の低下は、中空層内外の水蒸気圧の差によって、周辺シール材を通じて非常に僅かな水分が透過し(透湿過程)、侵入した水分を乾燥剤が吸着する(水分吸着過程)というメカニズムで発生する。このメカニズムを基本として、複層ガラス内部への透湿状態をシミュレーション計算することができる。すなわち、透湿過程においては、複層ガラスの製造条件、曝露環境、ガラスサイズ・構成、2次シールの特性から、1次シールと2次シールの変形量などを求めて、シール材を通して外部から進入する水分量を算出する。次に、水分吸収過程においては、製造時に封入された乾燥剤が飽和状態になる時期を算出する。この飽和状態になる時期が複層ガラスの寿命(露点温度上昇)に相当すると考えられる。
【0053】
一方、このシミュレーション計算では、風圧によるガラスの変形を考慮することはできない。そこで、3種類程度のたわみ率をパラメータとして、同じ仕様の試験体を用いて、それぞれの風圧載荷後の耐久性試験を実施した。各試験体に対して、上記シミュレーション計算を行い、実際のガラスサンプルとの対応を調べることで、種々のパラメータを設定し、適切な寿命を推定する。この技術を用いて、ガラス壁面構法別、変形率別の推定寿命を算出する。
【0054】
また、利用者(設計者)キーボード24から所望の推定寿命比を示す情報が入力されると、情報処理手段36は、図4のグラフに基づいて、前記所望の推定寿命比に対する風圧変形率を算出する。そして、情報処理装置36は、その風圧変形率に相当する板厚又は割付寸法を既知の強度計算式により算出し、その結果をディスプレイに表示する。設計者は、表示された板厚以上の板厚で複層ガラスを設計、又は表示された割付寸法以下の寸法で複層ガラスを設計する。
【実施例】
【0055】
・DPG構法の場合
設計風圧力 :1.18kPa
ガラスサイズ :2000mm×2950mm
ガラス構成 :HS12+空気層12mm(A12)+HS12
発生応力の確認:長辺エッジ=2.69kPa、孔まわり=3.49kPa
HSガラスのエッジ許容応力は、3.53kPaであり、この板厚構成でOKとなる。
【0056】
ここで、実施の形態の耐久性算出方法を適用し、モデル風圧時のたわみを計算する。
【0057】
すなわち、キーボード24から前記DPG構法、ガラスサイズ、ガラス構成を示す情報を入力し、パソコン本体22の情報処理手段36によってたわみ率(風圧変形率)を算出すると、0.56%となる。判断基準は、地域、ガラス寸法、ガラス構成などにより異なるが、仮に0.5%とすると、判断基準を超えてしまう。たわみ率は、図4を根拠にしている。この条件では、DPG構法は、たわみ率約0.6%で推定寿命比100となる。この推定寿命比100であることが、情報処理手段36によって算出され、ディスプレイに表示される。
【0058】
次に、板厚構成を変更し、HS12+A12+HS15とすると、当然発生応力、たわみとも減少する。
【0059】
発生応力の確認:長辺エッジ=2.27kPa、孔まわり=2.65kPa
たわみ率は、0.36%となりOKとなる。
【0060】
許容応力設計であれば、HS12+A12+HS12でOKであるが、本発明の耐久性算出方法を適用すると、HS12+A12+HS15が必要となり、室内側板厚が1ランクアップするが、耐久性を確保した製品の供給が可能となる。
【0061】
・2辺支持の場合
設計風圧力 :1.18kPa
ガラスサイズ:500mm×1500mm(自由辺長さが、1500mm)
ガラス構成 :HS6+A12+HS6、2辺支持特殊スペーサとする。
【0062】
最大発生応力:284kgf/m2
HSガラスのエッジ許容応力は、3.53kPaであるためOKとなる。
【0063】
ここで耐久性算出方法で設定している風圧時のたわみを考えると、たわみ率は0.68%となる。この場合、寿命比100%をほぼ満足しているので、一応OKと言える。
【0064】
しかし、最近は、更に長寿命が求められている。ここで、150%を要求した場合には、板厚を変更し、HS8+A12+HS8とすれば、たわみ率は0.29%となり、要求条件を満足した耐久性設計法を適用した設計が可能となる。
【0065】
[試験結果および耐久性予測結果]
風圧載荷試験後は、どの試験体においても幾分1次シールが中空層側へ移動する現象が確認された。
【0066】
また、図4に示した試験体である、面外拘束のない自由辺を持つ特殊なガラス壁面構法の複層ガラスでは、変形率が大きくなると耐久性が低下する傾向にあるが、図10に示したスペーサ9´を使用した場合は、大きな変形率に対しても高耐久性を維持できることが判明した。
【0067】
さらに、ガラス変形量計算式を用いれば前述のモデル風圧を受けた時の変形率が、ガラス構成やサイズを問わず容易に計算できるため、図4とシール材別の寿命も基づいた耐久性面からのガラス割付設計が可能となる。また、変形量を小さくするようなガラス構成とすることにより、複層ガラスのより高い耐久性を確保することができる。
【0068】
また、面外拘束のない自由辺では、繰り返し風圧により1次シールの中空層側への移動が発生する。この場合に十分な耐久性を有する複層ガラスとするためには、図10に示した特殊なスペーサが有効である。特殊支持構法において、耐久性(寿命)の面から複層ガラスの割付設計を可能とする手法を見出した。
【0069】
変形量を小さくするガラス構成は、複層ガラスの耐久性を確保する上で有効であることが判明した。
【0070】
以上の如く、実施の形態の耐久性算出方法及び耐久性演算装置によれば、2辺支持や点支持という特殊構造においても、耐久性の低下することの無い複層ガラスの設計、すなわち、適切な板厚構成及びガラス割付寸法の決定が可能となる。
【0071】
従来、車両用の複層ガラスでは、トンネルに出入りする際に極端な風圧の増減を受けるため、1次シールが空気層側に移動する現象が起こることが確認され、その対応のために、数万回の繰り返し載荷試験を繰り返すことで、寿命の確認を行ってきた。1次シールの空気層側への移動という現象は類似しているが、車両用では、4辺支持の構造方式であるのに対し、本願発明は、2辺支持、点支持を対象としたもので、更に、建築用の場合は、ガラスのサイズが様々であることが大きな相違点である。車両用のようにサイズが統一されていれば、前述のように繰り返し載荷試験を行い、その後のガラスの露点温度上昇を確認することで、寿命を推定することが可能である。しかし、様々なサイズや支持方法が考えられる建築用途では、同様の方法での確認は、時間的及び経済的側面から不可能である。
【0072】
本発明によって、2辺支持や点支持の場合においても、必要な耐久性を保持するためには、どのようなガラス構成・ガラスサイズとすれば良いかが明確になり、その指針に基づいて設計することが可能となった。
【0073】
本来、2辺支持や点支持を採用する動機は、サッシ材を極力無くすことにあるため、同じ理由で、ガラスの割り付けは出来るだけ大きくすることが望まれる。しかし、従来の設計法では、設計最大風圧時のガラス許容応力のみを設計上の指標として、ガラスの必要板厚や、ガラス割付寸法を決定していたため、特に、強化ガラスや倍強度ガラスを使用する点支持構法では、ガラスの厚さ方向への変形は大きなものとなってしまっていた。
【0074】
本発明で明らかなように、ガラスの厚さ方向への変位は、複層ガラスの寿命の低下を引き起こす。したがって、従来の応力だけを指標とした設計法では、適切な複層ガラスの寿命を確保することができない。
【0075】
本発明で得られた風圧変形率―推定寿命比の関係直線を用いることで、複層ガラスの耐久性を確保することが可能となる。具体的に述べると、一方法は、複層ガラスのそれぞれのガラス板厚を増加させることである。ガラスの板厚構成を増加させることで、複層ガラスの厚さ方向への変位を低減させることが可能となる。もう一つの方法は、ガラスの割り付け寸法を小さくすることである。割り付け寸法を小さくすることで、ガラスの板厚方向の変位を低減させることが可能となる。本発明で示される図表を用いることで、必要な寿命に応じて、変形率を決定することが可能となる。より長い寿命を要求する場合は、それだけ風圧変形率を小さく設定する必要があり、その程度を適切に設計することが可能となる。
【0076】
本発明の過程で、風圧載荷における1次シールの挙動も明らかとしたため、1次シールの空気層側への移動が、耐久性の低下とならないように背の高い特殊なスペーサも考案することが出来た。背の高いスペーサは、結果的に乾燥剤の内蔵可能体積を増加することとなり、周辺シール材を通じて非常に僅かな水分が透過し、侵入した水分を乾燥剤が吸着するというメカニズムでの、乾燥剤能力を増加することとなるため、結果的に耐久性を向上させることが可能となる。
【0077】
複層ガラスの寿命が尽きて、中空空気層内に内部結露が生じると、この内部結露はなかなか消去しない。これは、既に乾燥剤が水分を吸収し飽和状態にあるためである。この内部結露は、 使用者の大きな不満となる。寿命となった複層ガラスを現場で、新たに乾燥剤を入れ替えて再生することは不可能であるため、結果的に複層ガラスの全面的な交換が必要となり、所有者に大きな負担を強いることになる。本発明による設計法を採用することで、点支持などの自由辺を持つ複層ガラスにおいても、十分に耐久性が高く、長期間満足して使用可能な複層ガラスを供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施の形態に係る複層ガラスの耐久性演算装置の構成図
【図2】図1に示した耐久性演算装置のパソコン本体の制御系を示すブロック図
【図3】試験体の仕様とガラス支持構法との関係を示す図
【図4】推定寿命比に対する風圧変形率の関係を示す図
【図5】2辺支持構法の例を示す図
【図6】DPG構法の例を示す図
【図7】メタルポイント構法の例を示す図
【図8】通常スペーサを有する複層ガラスの要部断面図
【図9】風圧によって1次シールが空気層に入り込んでいる状態を示す説明図
【図10】背の高いスペーサを有する複層ガラスの要部断面図
【符号の説明】
【0079】
1…サッシ、2…ガラス板、3…ジョイント部材、4…ガラス支持部材、5…ケーブルトラス、6…柱、7…複層ガラス、8…乾燥剤、9、9´…スペーサ、10…1次シール、11…2次シール、20…耐久性演算装置、22…パソコン本体、24…キーボード、26…ディスプレイ、30…記録媒体通信回線、32…送受信手段、34…表示制御手段、36…情報処理手段、38…I/O、40…記録媒体装着部、42…記録媒体インターフェース、44…メモリ、46…記録手段、48…バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性算出方法であって、入力手段、風圧変形率算出手段、板厚/割付寸法算出手段、及び出力手段を備えた耐久性演算装置における耐久性算出方法において、
前記入力手段が、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とを入力する工程と、
前記風圧変形率算出手段が、前記入力した複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する工程と、
前記板厚/割付寸法算出手段が、前記算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の板厚又は複層ガラスの割付寸法を算出を算出する工程と、
前記出力手段が、前記算出した板厚又は割付寸法を表示手段に出力する工程と、
を備えたことを特徴とする複層ガラスの耐久性算出方法。
【請求項2】
前記入力手段は、複層ガラス内部の露点が所定値以上となった時点を複層ガラスの寿命として設定するとともに4辺が支持された複層ガラスの前記寿命に対する、所望の寿命比を示す情報を入力し、
前記風圧変形率算出手段は、実験又はシミュレーションにて得られた前記寿命比に対する複層ガラスのガラス板の風圧変形率に基づいて、前記所望の寿命比に対する風圧変形率を算出することを特徴とする請求項1に記載の複層ガラスの耐久性算出方法。
【請求項3】
複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性算出方法であって、入力手段、風圧変形率算出手段、寿命算出手段、及び出力手段を備えた耐久性演算装置における耐久性算出方法において、
前記入力手段が、利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とを入力する工程と、
前記風圧変形率算出手段が、前記入力した複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する工程と、
前記寿命算出手段が、前記算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の寿命を算出を算出する工程と、
前記出力手段が、前記算出した寿命を表示手段に出力する工程と、
を備えたことを特徴とする複層ガラスの耐久性算出方法。
【請求項4】
前記入力手段は、複層ガラス内部の露点が所定値以上となった時点を複層ガラスの寿命として設定するとともに4辺が支持された複層ガラスの前記寿命を示す情報を入力し、
前記寿命算出手段は、前記風圧変形率算出手段が算出した風圧変形率に基づいて、前記寿命に対する寿命比を算出することを特徴とする請求項3に記載の複層ガラスの耐久性算出方法。
【請求項5】
複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性演算装置において、
利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とが入力される入力手段と、
前記入力された複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する風圧変形率算出手段と、
前記算出されたガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の板厚又は複層ガラスの割付寸法を算出する板厚/割付寸法算出手段と、
前記算出された板厚又は割付寸法を表示手段に出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする複層ガラスの耐久性演算装置。
【請求項6】
前記入力手段は、複層ガラス内部の露点が所定値以上となった時点を複層ガラスの寿命として設定するとともに4辺が支持された複層ガラスの前記寿命に対する、所望の寿命比を示す情報を入力可能であり、
前記風圧変形率算出手段は、実験又はシミュレーションにて得られた前記寿命比に対する複層ガラスのガラス板の風圧変形率に基づいて、前記所望の寿命比に対する風圧変形率を算出可能であることを特徴とする請求項5に記載の複層ガラスの耐久性演算装置。
【請求項7】
複数の複層ガラス同士を、二辺支持構法又は点支持構法等の面外拘束のない自由辺を有するガラス壁面構法によって各々の縁部を突き合わせることによりガラス壁面が構成される構造により支持される複層ガラスの耐久性演算装置において、
利用者から複層ガラスの構成に関する情報と、複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とが入力される入力手段と、
前記入力された複層ガラスの構成に関する情報と、前記複層ガラスにかかる風圧に関する情報と、前記ガラス壁面構法に関する情報とに基づいて複層ガラスのガラス板の風圧変形率を算出する風圧変形率算出手段と、
前記算出したガラス板の風圧変形率に基づいて、複数のガラス壁面構法のうち選択したガラス壁面構法におけるガラス板の寿命を算出を算出する寿命算出手段と、
前記算出した寿命を表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする複層ガラスの耐久性演算装置。
【請求項8】
前記入力手段は、複層ガラス内部の露点が所定値以上となった時点を複層ガラスの寿命として設定するとともに4辺が支持された複層ガラスの前記寿命を示す情報を入力可能であり、
前記寿命算出手段は、前記風圧変形率算出手段が算出した風圧変形率に基づいて、前記寿命に対する寿命比を算出可能であることを特徴とする請求項7に記載の複層ガラスの耐久性演算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−32733(P2008−32733A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211806(P2007−211806)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【分割の表示】特願2002−189698(P2002−189698)の分割
【原出願日】平成14年6月28日(2002.6.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】