説明

複層ガラス用二次シーリング材組成物及びそれを用いた複層ガラス

【課題】外的環境に対するモジュラスの低下を小さくし、複層ガラス用のシーリング材として用いた場合に高い耐久性を有する複層ガラス用二次シーリング材組成物及びそれを用いた複層ガラスを提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、安息香酸エステル系可塑剤と、を含むことを特徴とする複層ガラス用二次シーリング材組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラス用二次シーリング材組成物及びそれを用いた複層ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱、遮音効果に優れた複層ガラスには、ガラス板同士の間をスペーサを介して所定距離隔てて接着されている。また、ガラス板同士の間に外部の空気や水が侵入するのを防ぐ目的から、ガラス板同士の間の内側にはポリイソブチレンなどを主成分とする一次シーリング材が設けられている。また、ガラス板同士の間とスペーサとの間には2枚のガラス板の接合部分を封止すると共に2枚のガラス板の動きを抑制するための二次シーリング材が設けられている。この二次シーリング材の主骨格を形成するポリマーとしては、例えばポリサルファイド系、ポリウレタン系、アクリル系等が挙げられる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、二次シーリング材のシーリング材組成物に含まれる可塑剤として、ポリサルファイド系シーリング材組成物では、例えば、ブチルベンジルフタレートが用いられ、ポリウレタン系シーリング材組成物、アクリル系シーリング材組成物では、例えば、フタル酸ジイソノニルなどのフタル酸系可塑剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−285582号公報
【特許文献2】特開2008−297743号公報
【特許文献3】特開2010−59006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、複層ガラス用に用いられる一次シーリング材および二次シーリング材の劣化を促進する外的環境として、熱、水、湿気などが挙げられる。具体的には窓枠に形成されているレールの溝に溜まった水が太陽光によって温められ、温められた水分が二次シーリング材に付着して吸収されることで、二次シーリング材を劣化し、二次シーリング材の引張強度の低下や膨張等が生じる、という問題があった。
【0006】
そして、一次シーリング材は複層ガラスの動きにより破壊されやすいため、劣化した二次シーリング材は、温度変化により複層ガラス内の空気が膨張、収縮して生じるガラス板の動きを十分拘束できなくなり、一次シーリング材の破壊が生じる場合があった。一次シーリング材が破壊されることで、破壊された一次シーリング材の隙間から外部の空気や水が侵入し、複層ガラス同士の間に結露が発生する。
【0007】
そのため、複層ガラスの動きにより破壊されやすい一次シーリング材が破壊されるのを低減できるように、熱、水、湿気などの外的環境に対するモジュラスの低下を小さくし、ガラス板を安定して拘束できるように高い耐久性を有する二次シーリング材が求められている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、外的環境に対するモジュラスの低下を小さくし、複層ガラス用のシーリング材として用いた場合に高い耐久性を有する複層ガラス用二次シーリング材組成物及びそれを用いた複層ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次に示す(1)〜(3)である。
(1) 主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、
安息香酸エステル系可塑剤と、
を含むことを特徴とする複層ガラス用二次シーリング材組成物。
(2) 前記安息香酸エステル系可塑剤を、組成物中に5質量%以上30質量%以下含むことを特徴とする上記(1)に記載の複層ガラス用二次シーリング材組成物。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の複層ガラス用二次シーリング材組成物を二次シーリング材として用いた複層ガラス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外的環境に対するモジュラスの低下を小さくし、複層ガラス用のシーリング材として用いた場合に高い耐久性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態に係る複層ガラスの構成の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0013】
本実施形態に係る複層ガラス用二次シーリング材組成物(以下、「本実施形態のシーリング材組成物」という。)は、主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、安息香酸エステル系可塑剤と、を含むことを特徴とする複層ガラス用二次シーリング材組成物である。
【0014】
<変成シリコーン系ポリマー>
変成シリコーン系ポリマーは、加水分解性シリル基を含有する重合体である。変成シリコーン系ポリマーは、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基および/または加水分解性基により、シロキサン結合を形成し架橋して硬化物となる性質を有する。変成シリコーン系ポリマーは、その主鎖としては、例えば、ポリエーテル重合体、ポリエステル重合体、エーテル/エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物重合体、ジエン系化合物重合体が挙げられる。加水分解性シリル基はこのような主鎖の末端または側鎖に結合していればよい。
【0015】
ポリエーテル重合体としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリフェニレンオキシドの繰返し単位を有するものが例示される。ポリエステル重合体としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、ピルビン酸、乳酸等のカルボン酸、カルボン酸無水物、それらの分子内および/または分子間エステルおよびそれらの置換体を繰返し単位として有するものが例示される。エーテル/エステルブロック共重合体としては、例えば、上述したポリエーテル重合体に用いられる繰返し単位および上述したポリエステル重合体に用いられる繰返し単位の両方を繰返し単位として有するものが例示される。
【0016】
エチレン性不飽和化合物重合体およびジエン系化合物重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の単独重合体およびこれらの2種以上の共重合体等が挙げられる。より具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0017】
本実施形態においては、主鎖として、アクリル酸エステル系の単独重合体、又はアクリル酸エステル系とアクリル酸エステル系以外の2種以上の共重合体等が用いられる。変成シリコーン系ポリマーは、アクリル酸エステル系の単独重合体、又はアクリル酸エステル系とアクリル酸エステル系以外の2種以上の共重合体をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
変成シリコーン系ポリマーに含まれる加水分解性シリル基は、ケイ素原子と直接結合した加水分解性基を有するケイ素原子含有基またはシラノール基であれば特に制限されない。加水分解性シリル基は、湿気、架橋剤等の存在する条件下で縮合触媒を使用することにより脱水反応等の縮合反応を起こすことができる。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が挙げられる。中でも、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0019】
変成シリコーン系ポリマーの製造方法は、特に制限されない。例えば、特公昭61−18569号公報に記載されているような従来公知の方法によって製造することができる。また、市販品としては、例えば、カネカ社製のMSポリマーS−203、MSポリマーS−303、MSポリマーS−903、MSポリマーS−911、サイリルポリマーSAT200、サイリルポリマーMA430、サイリルポリマーMAX447;旭硝子社製のエクセスターESS−3620、エクセスターESS−3430、エクセスターESS−2420、エクセスターESS−2410等が挙げられる。
【0020】
変成シリコーン系ポリマーの分子量は、特に限定されず、粘度、作業性の観点から、数平均分子量(Mn)が、1,000〜30,000であるのが好ましく、3,000〜15,000であるのがより好ましい。このような範囲の場合、複層ガラス用二次シーリング材組成物の粘度が適度となり、取り扱いが容易となる。尚、本実施形態においては、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定されたものである。
【0021】
<安息香酸エステル系可塑剤>
安息香酸エステル系可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールの安息香酸エステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオールのジ安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルまたはそれらの混合物が挙げられる。具体的には、EB−400(三洋化成工業社製)などが挙げられる。
【0022】
本実施形態においては、安息香酸エステル系可塑剤は、下記一般式(1)で示される安息香酸エステルが好適に用いられる。本実施形態のシーリング材組成物は、安息香酸エステル系可塑剤を含むことで、本実施形態のシーリング材組成物をシーリング材として用いた場合に、高温水がシーリング材の内部に含浸するのを抑制することができるため、シーリング材の弾性率が低下することを抑制する効果が得られる。
【0023】
【化1】

【0024】
上記式(1)中、Rは、有機基であり、好ましくは、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。
【0025】
安息香酸エステル系可塑剤の好ましい含有量は、シーリング材の作業性、最大引張応力などシーリング材の物性を向上させる観点から、組成物中に5質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上25質量%以下、さらにより好ましくは19質量%以上22質量%である。安息香酸エステル系可塑剤の含有量が15質量%以上の場合には、シーリング材としての作業性及び伸び率を十分得ることができ、30質量%以下の場合には、シーリング材の初期養生後の最大引張応力を適正な値だけ得ることができるからである。
【0026】
本実施形態においては、上記安息香酸エステル系可塑剤以外に、フタル酸エステル、フマル酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤などの他の可塑剤を配合してもよい。
【0027】
また、本実施形態の組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、接着性付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、粘着性付与樹脂、安定剤、分散剤が挙げられる。各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0028】
充填剤としては、各種形状の有機または無機のものが挙げられる。例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ケイ砂、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;珪藻土;炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0029】
可塑剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール(B)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;アルキルスルホン酸フェニルエステル(例えば、Bayer社製のメザモール)等が挙げられる。また、連鎖移動剤を用いず、150℃以上350℃以下の重合温度で重合され、数平均分子量が500以上5000以下のアクリル重合体を用いることができる。
【0030】
接着性付与剤としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が、特に湿潤面への接着性を向上させる効果に優れ、更に汎用化合物であることから好適に挙げられる。
【0031】
顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも両方でもよい。例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を用いることができる。
【0032】
染料は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料が挙げられる。
【0033】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0035】
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0036】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
【0037】
粘着性付与樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
【0039】
分散剤は、固体を微細な粒子にして液中に分散させる物質をいい、ヘキサメタリン酸ナトリウム、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、界面活性剤等が挙げられる。
【0040】
本実施形態の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記各成分を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて十分に混練し、均一に分散させる等により混合する方法などが挙げられる。
【0041】
得られた本実施形態の組成物は、密閉容器中で貯蔵され、使用時に空気中の湿気により常温で硬化物を得ることができる。
【0042】
このように、本実施形態の組成物は、主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、安息香酸エステル系可塑剤と、を含む複層ガラス用二次シーリング材組成物である。本実施形態の組成物は、変成シリコーン系ポリマーと安息香酸エステル系可塑剤との混合の均一性を高めることができるため、本実施形態の組成物を硬化して得られる硬化物は湿気に対するモジュラスの低下を小さくできる。すなわち、従来より用いられているウレタン系プレポリマーを含む組成物の硬化物を複層ガラスの二次シーリング材として用いた場合、熱、水、湿気などの外的環境によりモジュラスが低下して、ガラスの膨張、収縮などが生じるとガラス板を安定して拘束できなかった。そのため、ガラス板の動きにより破壊されやすい一次シーリング材が破壊されて一次シーリング材の隙間から外部の空気や水が侵入し、複層ガラスの内部に結露が発生する虞があった。これに対し、本実施形態の組成物は、主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、安息香酸エステル系可塑剤とを含むことで、熱、水、湿気などの外的環境に対するモジュラスの低下を小さくできるため、高い耐久性を有することができる。このため、本実施形態の組成物の硬化物を複層ガラス用の二次シーリング材として用いた場合、ガラスの膨張、収縮などが生じてもガラス板を安定して拘束できる。そのため、ガラス板の動きにより一次シーリング材が破壊されるのを抑制できるため、一次シーリング材の隙間から外部の空気や水が侵入し、複層ガラスの内部に結露が発生するのを抑制することができる。
【0043】
<複層ガラス>
次に、本実施形態に係る複層ガラスについて以下に説明する。本実施形態に係る複層ガラスは、本実施形態の組成物を二次シーリング材として用いたものである。図1は、本実施形態に係る複層ガラスの構成の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る複層ガラス(本実施形態の複層ガラス)10は、2枚のガラス板11と、スペーサ12と、一次シーリング材13と、二次シーリング材14とを含むものである。2枚のガラス板11はスペーサ12を介して互いに対向して配置されている。一次シーリング材13は2枚のガラス板11とスペーサ12との間の一部または全部を封止する。2枚のガラス板11とスペーサ12との間を一次シーリング材13で封止することにより、2枚のガラス板11の間には中空層15が形成される。二次シーリング材14は、一次シーリング材13およびスペーサ12の中空層15とは反対側の外周面と、2枚のガラス板11の内面とにより形成される空隙の一部または全部を封止する。二次シーリング材14は、本実施形態の組成物を充填し硬化させて得られるものである。スペーサ12はその内部に乾燥剤(吸湿材)を有してもよい。
【0044】
本実施形態の複層ガラス10は、窓サッシ(窓枠)16のガラス嵌めブロック17により機械的に窓枠16に嵌め込まれる。また、窓枠16とガラス板11との間には、弾性封止剤18が設けられている。弾性封止剤18は、摩擦固定様式で窓枠16を複層ガラス10に結合するように働くと同時に、窓枠16に対して複層ガラス10の個々のガラス板11とを良好に支持している。この弾性封止剤18により、外部から浸透する水の浸入を防止している。
【0045】
本実施形態の複層ガラス10においては、二次シーリング材14として本実施形態の組成物を用いるものであれば、それ以外の構成、構造等について特に限定されない。例えば、スペーサ12と一次シーリング材13を一体化した組成物により構成されるスペーサ兼シーリング材を用いてもよい。また、ガラス板11と一次シーリング材13との間に接着剤層を設けてもよい。
【0046】
本実施形態の複層ガラス10においては、ガラス板11を2つ設けているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、ガラス板11は3枚以上設けてもよく、必要に応じて適宜決定することができる。
【0047】
本実施形態の複層ガラス10においては、スペーサ12は一般的な複層ガラス用として用いられるスペーサを使用でき、例えば、中空構造の金属スペーサの中空部分に乾燥剤(吸湿剤)を充填したもの、樹脂製スペーサ等を使用することができる。
【0048】
本実施形態の複層ガラス10においては、ガラス板11は特に限定されるものではなく、例えば、建材、車両に用いられるガラス板を使用することができる。具体的には、ガラス、フロート板ガラス、型板ガラス、熱線反射ガラス、網入板ガラス、熱線吸収板ガラス、低放射ガラス(Low−Eガラス)、強化ガラス、有機ガラス等が挙げられる。また、ガラス板11の厚さは特に限定されるものではなく、適宜所定の厚さとしてもよい。
【0049】
本実施形態の複層ガラス10においては、一次シーリング材13の材料は特に限定されるものではなく、例えば、ブチルゴム系ホットメルト、低透湿率材料等を使用することができる。ガス透過性が低い点から、一次シーリング材13の材料はブチルゴム系であることが好ましい。
【0050】
本実施形態の複層ガラス10の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、機械に固定された2枚の平行なガラス板11の間に、スペーサ12を設置し、押出機に連結したノズル等で一次シーリング材13を押出して接着を行った後、押出機により本実施形態の組成物を押出して二次シーリング材14を設けることで、本実施形態の複層ガラス10を製造することができる。また、ガラス板11およびスペーサ12には、必要に応じてプライマーや接着剤を塗布してもよい。
【0051】
プライマーおよび接着剤の塗布方法は、アプリケータ等により手作業で塗布してもよく、自動でプライマーや接着剤を押し出す押出機によって塗布してもよい。また、ガラス板11、スペーサ12および一次シーリング材13と二次シーリング材14との間に接着剤が設けられるように、押出機を使用して本実施形態の組成物と接着剤とを直接ガラス板11の周縁部内に押出しすることができる。
【0052】
このように、本実施形態の複層ガラス10は、二次シーリング材14として本実施形態の組成物を用いているため、二次シーリング材14は高い耐久性を有することができる。そのため、ガラス板11と二次シーリング材14との良好な接着性を維持することができ、ガラス板11を安定して拘束することが可能となる。これにより、ガラス板11の動きにより一次シーリング材13が破壊されるのを抑制できるため、一次シーリング材13が破壊されて一次シーリング材13の隙間から外部の空気や水が侵入し、複層ガラス10の内部に結露が発生するのを抑制することが可能となる。
【0053】
本実施形態の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、上記のように複層ガラス用のシーリング材として好適に用いられるが、本実施形態の組成物の用途は特に限定されるものではなく、例えば、土木建築用、コンクリート用、自動車用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用などのシーリング材、各種シール剤、弾性接着剤、各種封止剤、ポッティング剤、コーティング材、ライニング材として使用されるのが好ましい。また、本実施形態の組成物の用途は金属系・窯業系サイディング材の目地、コンクリート壁の目地、タイルの目地等コンクリートやモルタル中の構造用接着剤、ひび割れ注入材等としても使用されるのが好ましい。
【0054】
以上、本実施形態の組成物が一液型のシーリング材組成物の場合について説明したが、本実施形態の組成物が用いられる用途、作業性等を考慮して、本実施形態の組成物を二液型のシーリング材組成物としてもよい。すなわち、シーリング材組成物は、主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、安息香酸エステル系可塑剤とを含む主剤と、安息香酸エステル系可塑剤を含む可塑剤とを有する複層ガラス用二次シーリング材組成物としてもよい。
【0055】
主剤および硬化剤の製造方法は、特に限定されず、上述した変成シリコーン系ポリマー、安息香酸エステル系可塑剤および必要により添加される各種添加剤等を、上述した方法でそれぞれ混合すればよい。二液型のシーリング材組成物は、使用前に、主剤と硬化剤とを常法にしたがって混合して用いる。なお、二液型のシーリング材組成物においても、湿気硬化性としてもよく反応硬化性としてもよく、更には加熱硬化性としてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本実施形態の組成物を実施例により具体的に説明する。ただし、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0057】
<実施例1〜4、比較例1〜5>
下記表1の各成分を、表1に示す組成(質量部)の主剤および硬化剤をそれぞれ調製し、表1に示される各主剤および硬化剤をかくはん機を用いて混合し、二液型の複層ガラス用二次シーリング材組成物を得て、シーリング材を作製した。各々の実施例、比較例における各成分の添加量(質量部)を表1に示す。
【0058】
上記で得られた各シーリング材について、以下に示す方法により破断強度を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(破断強度)
上記で得られた各シーリング材を、JIS A 1439に準拠して試験を行い、初期養生後(20℃×7日+50℃×7日)の最大引張応力(N/mm)と、更に温水浸漬後(90℃×14日)の最大引張応力(N/mm)とを測定した。2枚のガラス板の間にシーリング材を充填した2形(H形)の試験体(H形試験体)を用いて引張接着性試験により評価した。そして、温水に浸漬した後の最大引張応力の保持率を下記式(1)により算出した。なお、初期養生とは、H型試験体を25℃で7日間放置した後、50℃で7日間放置した後である。また、別のH型試験体を、初期養生後、90℃の温水に14日間浸漬した後、上述と同様に、最大引張応力を測定した。温水に浸漬した後の最大引張応力の保持率の測定結果を表1に示す。保持率が70%以上の場合には、破断強度が良好であると判断した。
保持率(%)=(温水に浸漬した後の試験体の最大引張応力)/(初期養生後の試験体の最大引張応力)×100・・・(1)
判定基準
「○」:破断強度が良好
「×」:破断強度が不十分
【0060】
【表1】

【0061】
上記表1に示される各成分は、以下のとおりである。
・ポリマーA:アクリル酸エステル系の変成シリコーン系ポリマー、カネカ社製
・ポリマーB:PPG系の変成シリコーン系ポリマー、カネカ社製
・ポリマーC:ポリサルファイド系ポリマーを含むポリマー、東レ・ファインケミカル社製
・可塑剤1:安息香酸エステル系、Benzoflex9-88 CBC社製
・可塑剤2:フタル酸エステル系(DINP、新日本理化社製)
・可塑剤3:アジピン酸系ポリエステル、DINA、ジェイ・プラス社製
・炭酸カルシウム1:白艶華CCR、白石工業社製
・炭酸カルシウム2:スーパーS、丸尾カルシウム社製
・硬化触媒:オクチル酸スズ
・カーボンブラック:商品名「MA600」、三菱化学社製
【0062】
表1に示すように、実施例1〜4のシーリング材はいずれも温水浸漬後の保磁率が70%以上であったことが確認された。よって、実施例1〜4のシーリング材は、主剤と硬化剤とが均一に混合され、湿気に対するモジュラスの低下は小さいといえる。これは、安息香酸エステル系可塑剤は高温水がシーリング材の内部に含浸し、それによる弾性率が低下する影響を阻止する効果があるためと考えられる。一方、比較例1〜5のシーリング材はいずれも温水浸漬後の保磁率が70%以下であったことが確認された。よって、比較例1〜5のシーリング材は、温水に対するモジュラスの低下を十分抑えられないといえる。温水に浸漬後の破断強度が低下することは、それだけシーリング材の弾性率が低下してシーリング材が柔らかくなっており、その分ガラス板を拘束する力が弱くなっていることになる。
【0063】
よって、アクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーに、安息香酸エステル系可塑剤を含めることで、湿気に対するモジュラスの低下を小さくすることができる。温水に浸漬後の破断強度の低下を抑制することで、シーリング材の弾性率の低下が抑制され、シーリング材が柔らかくのなるのを抑制できるため、ガラス板を拘束する力が弱くなるのを抑制できる。そのため、本実施形態の組成物の硬化物は温水に対して優れた耐久性を有することから複層ガラス用のシーリング材として好適に用いることができることが判明した。
【符号の説明】
【0064】
10 複層ガラス
11 ガラス板
12 スペーサ
13 一次シーリング材
14 二次シーリング材
15 中空層
16 窓サッシ(窓枠)
17 ガラス嵌めブロック
18 弾性封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖がアクリル酸エステル系の重合体である変成シリコーン系ポリマーと、
安息香酸エステル系可塑剤と、
を含むことを特徴とする複層ガラス用二次シーリング材組成物。
【請求項2】
前記安息香酸エステル系可塑剤を、組成物中に5質量%以上30質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス用二次シーリング材組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複層ガラス用二次シーリング材組成物を二次シーリング材として用いた複層ガラス。

【図1】
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【公開番号】特開2013−28472(P2013−28472A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163876(P2011−163876)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】