説明

複層塗膜形成方法及び塗膜構造

【課題】耐候性に優れ、黄味の少ない光輝感に優れた外観を有する複層塗膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、基材上に着色ベース塗膜(A)、光輝性ベース塗膜(B)及びクリヤー塗膜(C)を順次形成してなる複層塗膜の形成方法において、光輝性ベース塗膜(B)が、光輝性顔料(a)及び蛍光性白色顔料(b)を含有するものであることを特徴とする複層塗膜の形成方法及び塗膜構造に関するものであって、該蛍光性白色顔料(b)がアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を母体結晶とし、ユ−ロピウム、デスプロシウム又はネオジウムを賦活性剤とする蛍光体の中から選ばれる1種もしくは2種以上であることを特徴とする複層塗膜の形成方法及び塗膜構造に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性及び意匠性に優れた複層塗膜形成方法、塗膜構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する目的は、素材の保護及び美観の付与である。近年、特に自動車外板、家電製品等の分野においては、消費者の要求が多様化してきており、従前のソリッド塗色に加えて、アルミニウム顔料、マイカ顔料等の光輝性顔料を用いたメタリック調塗色やパール調塗色が多く用いられるようになってきた。
【0003】
これらのメタリック調塗色やパール調塗色の中でも白色度が高い所謂ホワイトパール塗色が、高級車用として特に人気が高い。ホワイトパール塗色は、通常、二酸化チタン顔料を含むベース塗膜、鱗片状基材をニ酸化チタンで被覆した光輝性顔料を含むメタリックベース塗膜、トップクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜によって構成される。ここで、二酸化チタン顔料のごく僅かな黄味、光輝性顔料からの干渉色の補色の黄色、ビヒクルである樹脂等にも黄味等があり、この黄味が塗膜の高級感を損なうとして嫌われている。
【0004】
この黄味対策として蛍光増白剤を使用することが開示されている(例えば、特許文献1等参照。)。蛍光増白剤とは、染料の一種であって、紫外線(波長380nm付近)を吸収し、それを目に見える青色の可視光(波長440nm付近;蛍光という)に変えて放出する。このため、黄味を帯びた塗膜に使用すると、青い光が加わって、輝くように白く見える効果を奏する。しかしながら、蛍光増白剤は一般に耐候性が劣り、屋外では経時で増白剤の効果が急速に減退するという問題があり、また濃度消光があるため、使用量が制限され、十分な効果を発揮することが困難である。
【0005】
一方、高度の白色度を有する白顔料として隠蔽性の優れた蛍光性有機白色顔料組成物が開示されている(例えば、特許文献2等参照。)。しかしながら、白色ベース塗膜に用いる二酸化チタン顔料の代替として用いるにはコストがかかりすぎるという問題があり、また、従来の白色ベースを超えた白色度になるまで多量に添加すると耐候性が低下してくるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平1−313575号公報
【特許文献2】特開平11−130975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐候性に優れ、黄味の少ない光輝感に優れた外観を有する複層塗膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
1.基材上にカラーベース塗膜(A)、光輝性顔料(a)及び蛍光性白色顔料(b)を含有してなる光輝性ベース塗膜(B)及びクリヤー塗膜(C)を順次形成してなる複層塗膜形成方法であって、該蛍光性白色顔料(b)がアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を母体結晶とし、ユ−ロピウム、デスプロシウム又はネオジウムを賦活性剤とする蛍光体の中から選ばれる1種もしくは2種以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法、
2.光輝性ベース塗膜(B)が、光輝性顔料(a)を含有する塗膜(B1)と蛍光性白色顔料(b)を含有する塗膜(B2)の2層よりなるものである1項記載の複層塗膜形成方法、
3.光輝性顔料(a)が、鱗片状基材をニ酸化チタンで被覆したものであって且つ鱗片状基材が、マイカ、ガラスフレーク、人工マイカ、シリカフレーク及びアルミナフレークの何れか1種である1項又は2項記載の複層塗膜形成方法、
4.光輝性顔料(a)を、光輝性ベース塗膜(B)中の樹脂成分100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲内で含有するものである1項〜3項のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法、
5.蛍光性白色顔料(b)を、光輝性ベース塗膜(B)中の樹脂成分100重量部に対して0.1〜200重量部の範囲内で含有するものである1項〜4項のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法
6.1項〜5項いずれか1項記載の複層塗膜形成方法で得られた塗膜構造
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複層塗膜形成方法を用いて得られる複層塗膜は、蛍光性白色顔料を含んでなるものであって、同様に白色度を上げる効果のある一般の蛍光増白剤に比較して耐候性に優れ、黄味の少ない光輝感に優れた外観を得られるものであり、特に自動車外板、家電製品等の高級外観を求められている分野に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明方法において基材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して基材とすることができる。さらに、上記基材に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させて基材とすることもでき、これらのものが特に好ましい。
【0011】
上記下塗り塗膜とは、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0012】
また、上記中塗り塗膜とは、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料種は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0013】
また、基材として、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を形成させる場合においては、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に後述する次工程の塗料を塗装することができる。あるいは、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で、次工程の塗料を塗装することもできる。
【0014】
本発明の複層塗膜形成方法は、上記の如き基材上に着色ベース塗膜(A)、光輝性ベース塗膜(B)及びクリヤー塗膜(C)を順次形成してなるものである。
【0015】
本発明方法の着色ベース塗膜(A)は、通常、基体樹脂、架橋剤及び着色顔料を含有してなる熱硬化型塗料より形成される。該熱硬化型塗料は、有機溶剤タイプ、水性タイプ、粉体タイプ等特に制限無く用いることができる。
【0016】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等を挙げることができる。
【0017】
架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂やポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸等を挙げることができる。上記ポリエポキシドやポリカルボン酸は、共重合体等のポリマーであっても良い。
【0018】
これら基体樹脂及び架橋剤は、有機溶剤及び/又は水などの溶剤に溶解または分散して使用される。
【0019】
また、着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等を挙げることができる。特に、白色の金属酸化物顔料であるニ酸化チタンと、少量のフタロシアニン系顔料若しくはカーボンブラック顔料を組み合わせて使用することが好ましい。着色顔料は、平均粒径1μm以下の微粒子状のものが好ましい。着色顔料の配合量は、特に制限されないが、塗膜の色相、仕上がりの点から、通常、合計として、架橋剤を含む樹脂成分100重量部あたり1〜200重量部程度が好ましく、特に好ましくは、10〜150重量部である。
【0020】
上記熱硬化型塗料には、さらに必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料などを含有することができる。
【0021】
本発明において、後述する蛍光性白色顔料の効果を十分に発揮させるためには、着色ベース塗膜(A)の色は淡彩色であることが好ましく、特に白色度の高いものが適している。
【0022】
本発明方法においては着色ベース塗膜(A)の上に光輝性ベース塗膜(B)が形成される。該光輝性ベース塗膜は、光輝性顔料(a)と蛍光性白色顔料(b)とを含有する塗膜であるが、光輝性顔料(a)を含有する塗膜(B1)と蛍光性白色顔料(b)を含有する塗膜(B2)の2層よりなるものであってもよい。また、2層の場合、塗膜(B1)の上に塗膜(B2)が形成されたものであっても、塗膜(B2)の上に塗膜(B1)が形成されたものであってもよい。
【0023】
光輝性ベース塗膜(B)の形成に用いられる塗料は、基体樹脂、架橋剤を含有してなる熱硬化型塗料であることが好ましい。該熱硬化型塗料は、特に制限されるものではないが、上記着色ベース塗膜(A)を形成するものと同様のものを使用することができる。
【0024】
光輝性ベース塗膜(B)に含有する光輝性顔料(a)としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料、アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料、ガラスフレーク顔料、表面を金属又は金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、干渉マイカ顔料を還元した還元マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料、表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料、表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレークやアルミナフレーク顔料、盤状酸化鉄顔料、ホログラム顔料、合成マイカ顔料、らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料、オキシ塩化ビスマス顔料などが挙げられる。これらのうち、マイカ、ガラスフレーク、人工マイカ、シリカフレーク及びアルミナフレーク等の鱗片状基材を二酸化チタンで被覆したものが後述する蛍光性白色顔料(b)の効果を発揮する上で好ましい。
【0025】
また、本発明で用いる蛍光性白色顔料(b)は、紫外線(波長380nm付近)を吸収し、それを目に見える青色の可視光(波長440nm付近;蛍光という)に変えて放出する蛍光増白効果を奏する顔料であって、具体的には、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を母体結晶とし、ユ−ロピウム、デスプロシウム又はネオジウムを賦活性剤とする蛍光体が好適に使用できる。上記アルカリ土類金属としては特に制限されるものではないが、ストロンチウム、バリウム等を挙げることができる。
【0026】
上記蛍光性白色顔料としては、水溶分が1.0重量%以下のものが好ましい。また、平均一次粒子径が、50%メジアン径で5μm以下、90%メジアン径で10μm以下のものが好ましい。
【0027】
光輝性顔料(a)及び蛍光性白色顔料(b)の含有量は、光輝性ベース塗膜(B)中の樹脂成分100重量部に対して光輝性顔料(a)が0.1〜30重量部、特に1〜15重量部、蛍光性白色顔料(b)が0.1〜10重量部、特に2〜8重量部の範囲内であることが、光輝感や耐候性と白色度とのバランスから適している。
【0028】
なお、光輝性ベース塗膜(B)が光輝性顔料(a)を含有する塗膜(B1)と蛍光性白色顔料(b)を含有する塗膜(B2)の2層よりなる場合は、塗膜(B1)の樹脂固形分100重量部に対して光輝性顔料(a)が0.1〜30重量部、特に1〜15重量部の範囲内が好ましく、塗膜(B2)の樹脂固形分100重量部に対して蛍光性白色顔料(b)が0.1〜200重量部の範囲内が好ましく、特に好ましくは1〜150重量部、より好ましくは3〜120重量部の範囲内である。
【0029】
特に蛍光性白色顔料(b)を含有する塗膜(B2)を、光輝性顔料(a)を含有する塗膜(B1)よりも下層に形成せしめる場合においては、塗膜(B2)の樹脂固形分100重量部に対して蛍光性白色顔料(b)が50〜150重量部の範囲内が好ましい。
【0030】
本発明方法において、クリヤー塗膜(C)の形成に用いられる塗料は、樹脂成分及び溶剤を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状もしくは粉体状の塗料である。
【0031】
上記クリヤー塗料としては、従来公知のクリヤー塗料を制限なく使用できる。例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノ−ル基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0032】
本発明の複層塗膜形成方法においては、基材上に着色ベース塗膜(A)、光輝性ベース塗膜(B)及びクリヤー塗膜(C)を順次形成する。
【0033】
基材上に着色ベース塗膜(A)用塗料を塗装した後、必要に応じて焼付け、該着色ベース塗膜上に光輝性ベース塗膜(B)用塗料を塗装し、必要に応じて焼付け、該光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗膜(C)を塗装して焼付けることにより複層塗膜を得ることができる。各段階の間での焼付けは、混層やワキなどの塗面異常が起きない範囲で省略することが可能であり、塗料系や膜厚などに応じて適宜選択される。また、光輝性ベース塗膜(B)が2層よりなる場合には、1層目を塗装した後、必要に応じて焼付けた後2層目を塗装し、必要に応じて焼付けることができる。
【0034】
また、塗装は通常、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等を用いて行うことができ、焼付条件は、塗膜が硬化する条件であればよく特に限定されるものではないが、一般に100〜180℃程度、好ましくは120〜160℃程度の範囲内の温度で、10〜40分間程度の時間焼き付ける。
【0035】
各層の膜厚は、着色ベース塗膜(A)が10〜50μm、光輝性ベース塗膜(B)が10〜50μm及びクリヤー塗膜(C)が10〜50μm程度が適当であり、光輝性ベース塗膜(B)が1層の場合は特に10〜30μm程度が好ましく、光輝性ベース塗膜(B)が2層の場合は2層の合計で特に15〜40μm程度が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
基材の調製
脱脂およびりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネ−ト化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0037】
得られた電着塗面に、中塗塗料「ル−ガベ−ク中塗りグレ−」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成した塗板を基材とした。
塗料の調整
着色ベース用塗料の製造
(製造例1)
水酸基含有アクリル樹脂70部およびブチル化メラミン樹脂30部からなる樹脂組成物に「CR−95」(商品名、石原産業社製、二酸化チタン顔料)100部を有機溶剤とともに混合、分散し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約30%の着色ベース塗料を得た。
【0038】
光輝性ベース用塗料の製造
(製造例2)
水酸基含有アクリル樹脂70部およびブチル化メラミン樹脂30部からなる樹脂組成物に「Iriodin 103W2」(商品名、メルク社製、二酸化チタン被覆マイカ顔料)8部を有機溶剤とともに混合、分散し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB1を得た。
(製造例3)
水酸基含有アクリル樹脂70部およびブチル化メラミン樹脂30部からなる樹脂組成物に「Iriodin 225W2」(商品名、メルク社製、二酸化チタン被覆マイカ顔料)8部を有機溶剤とともに混合、分散し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB2を得た。
(製造例4)
水酸基含有アクリル樹脂70部およびブチル化メラミン樹脂30部からなる樹脂組成物に「Iriodin 103W2」8部と蛍光性白色顔料(根本特殊化学社製、ユウロピウム賦活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、波長365nm付近の紫外線で励起し、波長452nm付近の可視光;青色に変えて放出)5部とを有機溶剤とともに混合、分散し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB3を得た。
(製造例5)
水酸基含有アクリル樹脂70部およびブチル化メラミン樹脂30部からなる樹脂組成物に「Iriodin 225W2」8部と蛍光性白色顔料(根本特殊化学社製、ユウロピウム賦活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、波長365nm付近の紫外線で励起し、波長452nm付近の可視光;青色に変えて放出)5部とを有機溶剤とともに混合、分散し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB4を得た。
(製造例6)
水酸基含有アクリル樹脂70部およびブチル化メラミン樹脂30部からなる樹脂組成物に蛍光性白色顔料(根本特殊化学社製、ユウロピウム賦活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、波長365nm付近の紫外線で励起し、波長452nm付近の可視光;青色に変えて放出)100部を有機溶剤とともに混合、分散し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB5を得た。
(製造例7)
製造例4において、蛍光性白色顔料の替わりに「UvitexOB」(商品名、チバスペシャルティーケミカルズ社製、蛍光増白剤)を0.5部用いる以外は製造例4と同様にして製造し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB6を得た。
(製造例8)
製造例4において、蛍光性白色顔料の替わりに「HostaluxKS」(クラリアント社製、蛍光増白剤)を0.5部用いる以外は製造例4と同様にして製造し、塗装時粘度15秒/フォードカップ#4に調整して固形分濃度約25%の光輝性ベース用塗料TB7を得た。
(3)複層塗膜の作成
実施例1
(1)で調製した基材に製造例1で製造した着色ベース塗料を乾燥膜厚が15μmとなるようにエアスプレーにて塗装して室温に10分間放置後、雰囲気温度140℃で30分間焼き付け乾燥を行った。得られた着色ベース塗膜の上に製造例4で得た光輝性ベース用塗料TB3を乾燥膜厚が15μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、室温に10分間放置後、「マジクロンクリヤー」(関西ペイント社製、アクリル/メラミン樹脂系クリヤー塗料)を乾燥膜厚が35μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、室温に10分間放置後、雰囲気温度140℃で30分間焼き付け乾燥を行い、複層塗膜を得た。
【0039】
実施例2
実施例1において、光輝性ベース用塗料TB3の替わりに製造例5で製造した光輝性ベース用塗料TB4を用いる以外は実施例1と同様にして複層塗膜を得た。
【0040】
実施例3
実施例1の複層塗膜の製造途中で得られる着色ベース塗膜の上に製造例6で得た光輝性ベース用塗料TB5を乾燥膜厚が15μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、室温に10分間放置後、製造例2で得た光輝性ベース用塗料TB1を乾燥膜厚が15μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、室温に10分間放置後、「マジクロンクリヤー」(関西ペイント社製、アクリル/メラミン樹脂系クリヤー塗料)を乾燥膜厚が35μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、室温に10分間放置後、雰囲気温度140℃で30分間焼き付け乾燥を行い、複層塗膜を得た。
【0041】
実施例4
実施例3において、光輝性ベース塗料TB1の替わりに製造例3で製造した光輝性ベース用塗料TB2を用いる以外は実施例3と同様にして、複層塗膜を得た。
【0042】
比較例1
実施例1において、光輝性ベース用塗料TB3の替わりに製造例2で製造した光輝性ベース用塗料TB1を用いる以外は実施例1と同様にして複層塗膜を得た。
【0043】
比較例2
実施例1において、光輝性ベース用塗料TB3の替わりに製造例3で製造した光輝性ベース用塗料TB2を用いる以外は実施例1と同様にして複層塗膜を得た。
【0044】
比較例3
実施例1において、光輝性ベース用塗料TB3の替わりに製造例7で製造した光輝性ベース用塗料TB6を用いる以外は実施例1と同様にして複層塗膜を得た。
【0045】
比較例4
実施例1において、光輝性ベース用塗料TB3の替わりに製造例8で製造した光輝性ベース用塗料TB7を用いる以外は実施例1と同様にして複層塗膜を得た。
評価試験
上記実施例及び比較例で得られた複層塗膜について下記試験方法に従って、塗膜性能を評価した。得られた結果を表1に示した。
【0046】
試験方法
シェードの白さ:試験板を、晴れた日の午後に屋外の日陰にて塗膜を観察して評価した。
シェードが青白い場合を0、シェードに黄みが生じている場合を5として、シェードが白い順に0〜5までの6段階の点数をつけた。
【0047】
b*値:変角分光光度計MA−68II(商品名、X−rite社製)を用いて、−45度入射45度受光時のb*値を測定した。b値は、数値が小さいほどパール系塗色特有の黄味着色が少なく、白さがあることを示す。
【0048】
耐水性:40℃の恒温水槽に試験片を10日間浸漬し取り出した後、塗膜の変色、フクレ等を目視評価した。
○:塗膜に変色、フクレ等の異常が認められない。
×:塗膜に変色、フクレ等の異常が認められる。
【0049】
促進耐候性:スーパーキセノンウェザオメーター(スガ試験機株式会社製)で1000時間の促進耐候性試験を行った後、塗膜の変色、フクレ等を目視評価した。
○:塗膜に変色、フクレ等の異常が認められない。
×:塗膜に変色、フクレ等の異常が認められる。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車車体の外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にカラーベース塗膜(A)、光輝性顔料(a)及び蛍光性白色顔料(b)を含有してなる光輝性ベース塗膜(B)及びクリヤー塗膜(C)を順次形成してなる複層塗膜形成方法であって、該蛍光性白色顔料(b)がアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体を母体結晶とし、ユ−ロピウム、デスプロシウム又はネオジウムを賦活性剤とする蛍光体の中から選ばれる1種もしくは2種以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
光輝性ベース塗膜(B)が、光輝性顔料(a)を含有する塗膜(B1)と蛍光性白色顔料(b)を含有する塗膜(B2)の2層よりなるものである請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
光輝性顔料(a)が、鱗片状基材をニ酸化チタンで被覆したものであって且つ鱗片状基材が、マイカ、ガラスフレーク、人工マイカ、シリカフレーク及びアルミナフレークの何れか1種である請求項1又は2記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
光輝性顔料(a)を、光輝性ベース塗膜(B)中の樹脂成分100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲内で含有するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の複層塗膜の形成方法。
【請求項5】
蛍光性白色顔料(b)を、光輝性ベース塗膜(B)中の樹脂成分100重量部に対して0.1〜200重量部の範囲内で含有するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載の複層塗膜形成方法で得られた塗膜構造。

【公開番号】特開2006−192384(P2006−192384A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7623(P2005−7623)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】