説明

複層建物の構築方法およびこれに用いる連層足場用の揚重装置

【課題】早期にタワークレーンを解体して仮設工事費の圧縮を図り、建物の建築費を低減するとともに、外装工事の終了後における連層足場の吊り下ろし作業を容易にする。
【解決手段】タワークレーン35を用いて躯体2を構築する建物1の構築方法であって、水平方向に分割可能な複数の足場ユニット31からなる連層足場30を建物1の低層部の外周に沿って組立て、外装工事の進捗に合わせて連層足場30を上方へ移動させる際には、タワークレーン35を用いる。躯体2の構築後、建物1の屋上1aに分割可能な移動式の揚重装置10を設置し、建物1の最上層部にて外装工事を終了した後に足場ユニット31を下方へ移動させる際には揚重装置10を用いることで、タワークレーン35の解体時期を早める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンを用いて躯体の構築および連層足場の迫り上げを行う複層建物の構築方法およびこれに用いる連層足場用の揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物を構築する際には、建物の外周を取り囲むように足場を組立て、この足場を利用して建物外周の躯体工事や外装工事などを行う。足場としては、地盤上や基礎構造物上、或いは既に構築した下層階部分の躯体上に設置して躯体に控えをとるものが一般的であるが、建物が高層になる場合には、所定階(例えば5階)層分だけ環状に足場を設け、構築済みの躯体に支持させることで、外装工事の進捗に合わせて迫り上げながら使用できるようにした連層足場(例えば、特許文献1、2参照)が用いられることがある。
【0003】
ところで、高層建物の構築ではタワークレーンが用いられることが多く、特許文献2の発明では、連層足場の迫り上げ(スライド上昇)をタワークレーンにより行うことができるように、複数の足場ユニットを水平方向に連結して連層足場を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−137603号公報
【特許文献2】特開平11−343729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されたようなタワークレーンによりスライド上昇される連層足場は、建物最上層部の外装工事を終えて不要になると、解体・撤去のためにスライド上昇時と同様にタワークレーンにより足場ユニットごとに地上へ吊り下ろす必要がある。そのため、タワークレーンの解体時期は、連層足場の解体時期がクリティカルになることが殆どである。また、足場ユニットの重さは通常2t前後であり、大型のタワークレーンを用いる必要性は低い。つまり、現状では、連層足場の吊り下ろしのためにコストが高く不経済な大型タワークレーンを設置し続けていることになり、仮設工事費のコストアップの要因となっている。
【0006】
ここで、連層足場の盛り替え(迫り上げ)時にタワークレーンを用いることによる工期の長期化やコストの増大を回避するために、ウィンチやガイド部材を一体に設けて自昇式とした連層足場なども提案されているが(特開2003−27740号公報参照)、外装工事が終了して連層足場を地上へ下ろす際には、上層部にある連層足場を足場ユニットごとにタワークレーンを用いて地上まで下ろす。また、ガイド部材を躯体に設けることで連層足場のスライド上昇および支持を可能にしているため、各足場ユニットの下降に合わせてこれを撤去することも可能であるが、作業に手間がかかる。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みなされたものであり、早期にタワークレーンを解体して仮設工事費の圧縮を図り、もって建物の建築費を低減するとともに、外装工事の終了後における連層足場の吊り下ろし作業を容易にすることをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、タワークレーン(35)を用いて躯体(2)を構築する複層建物(1)の構築方法であって、水平方向に分割可能な複数の足場ユニット(31)からなる連層足場(30)を前記複層建物の低層部の外周に沿って組立てるステップと、外装工事の進捗に合わせて前記タワークレーンにより前記連層足場を上方へ移動させるステップと、前記躯体の構築後、前記タワークレーンを解体するとともに、前記複層建物の屋上(1a)に分割可能な移動式の揚重装置(10)を設置するステップと、前記複層建物の最上層部にて外装工事を終了した後、前記揚重装置により前記足場ユニットを下方へ移動させるステップとを含むものとする。
【0009】
この発明によれば、連層足場を上方へ移動させる際にはタワークレーンを用いるが、外装工事を終了した後に足場ユニットを下方へ移動させる際にはタワークレーンを用いることなく揚重装置を用いれば済むため、外装工事の終了および連層足場の下方への移動を待つことなくタワークレーンの解体作業を開始することができる。また、外装工事終了後に足場ユニットを下方へ移動させる作業も揚重装置により容易に行うことができる。なお、揚重装置は分割可能な移動式であるため、足場ユニット間の移動が容易であるとともに、分割した部材を本設のエレベータなどで運搬できるため、設置・撤去作業も容易である。
【0010】
また、本発明の一側面によれば、前記揚重装置により下方へ移動させた前記足場ユニットを、地上に設置した移動式クレーン(38)によって移動させた後に解体するステップを更に含むようにすることができる。
【0011】
このようにすれば、足場ユニットの解体作業期間にわたって建物の外周を作業エリアとする必要がないため、建物の入口が閉鎖されて内装作業など他の作業が行えないような状態が継続することを防止できる。また、建物周辺の外溝工事も早期に開始できるため、工程の短縮を図ることがでできる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、前記揚重装置は、前記躯体に着脱自在に固定される複数のブラケット(11)と、各ブラケットの躯体内側部分に脱着可能に連結される本体部(17)とからなり、前記足場ユニットを下方へ移動させるステップでは、前記本体部を前記複数のブラケットのうちの1つに連結して足場ユニットを下方へ移動させる間に、他の足場ユニットを下方へ移動させる準備として、前記複数のブラケットのうち少なくとも他の1つを前記躯体に固定するようにすることができる。
【0013】
このようにすれば、連層足場の吊り下ろし作業中に、後に下ろす連層足場に対するブラケットの躯体への固定作業を行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明は、複層建物(1)の最上層部における外装工事を終了した後に、水平方向に分割可能な連層足場(30)を構成する複数の足場ユニット(31)を下方へ移動させるべく、前記複層建物の屋上(1a)に設置される揚重装置(10)であって、躯体(2)の外周面からさらに外方へ突出し且つ前記躯体の上面および内面に少なくとも一部が当接する様態で前記躯体に取り付けられ、先端近傍に滑車(12)を有するブラケット(11)と、前記ブラケットの躯体内側部分に脱着可能に連結される本体部(17)とを備え、前記本体部は、移動用車輪(19)を有する本体架台(18)と、複数に分割されて前記本体架台に載置されるウェイト(20)と、前記外方へ移動不能に前記本体架台に取り付けられ、前記滑車から垂下させたワイヤ(27)を上げ下げするウィンチ(21)とを備えるように構成する。
【0015】
この発明によれば、ブラケットと本体部とが脱着可能であり、且つウェイトも分割可能であるため、複層建物に設置した本設のエレベータによる運搬が可能であり、容易に建物屋上に揚重装置を設置・撤去することができる。そのため、連層足場の吊り下ろしを待つことなくタワークレーンの解体作業を開始することができる。また、本体架台が移動用車輪を備えるため、ウェイトを載置した状態でも本体架台の移動が容易であり、複数の足場ユニットを吊り下ろすために複層建物の屋上で揚重装置を盛り替える作業も容易になる。さらに、躯体の形状や複層建物の屋上に設定される配管設備等の位置を考慮して形状の異なる複数のブラケットを用意すれば、揚重装置の設置可能領域が制限されることがなく、様々な建物への適用(転用)も可能である。
【0016】
また、本発明の一側面によれば、前記ブラケットを前記躯体に着脱自在に固定する固定手段(L字形部材13)を更に備えるようにすることができる。
【0017】
この構成によれば、取り扱いの容易なブラケットを予め躯体に固定し、ウェイトを積んだ本体架台は、ブラケットに連結することで容易に位置決めを行うことができる。また、ブラケットを複数用意すれば、1つの足場ユニットの吊り下ろし作業中に、後に吊り下ろす足場ユニットに対するブラケットの固定作業を行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。一方、ブラケットの形状を異なるものとすれば、複層建物の屋上に設置される機器類の基礎や配管などとの干渉を避けて揚重装置を設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、外装工事の終了後に容易に連層足場を吊り下ろせるようにし、かつ早期にタワークレーンを解体して仮設工事費の圧縮を図り、もって建物の建築費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る方法により構築中の建物の要部断面図
【図2】本発明に係る方法により構築中の建物の要部平面図
【図3】本発明に係る建物の構築方法の手順を示す説明図
【図4】本発明に係る建物の構築方法の手順を示す説明図
【図5】本発明に係る建物の構築方法の手順を示す説明図
【図6】本発明に係る建物の構築方法の手順を示す説明図
【図7】本発明に係る建物の構築方法の手順を示す説明図
【図8】本発明に係る建物の構築方法の手順を示す説明図
【図9】図7に示す揚重装置の設置状態を示す側面図
【図10】図7に示す揚重装置の設置状態を示す平面図
【図11】図9に示すブラケットと異なるブラケットを装着した揚重装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る複層建物(以下、単に建物1と記す。)の構築方法およびこれに用いる揚重装置10の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
まず、図1および図2を参照して建物1の構築する際に用いる連層足場30について説明する。本実施形態では、例えば地上30階以上の高層建物を構築する際に、建物1の外周を囲む外部足場として、地盤Gではなく建物1の躯体2に支持される連層足場30を用いる。なお、躯体2とは、建具・造作・仕上・設備などを除いた主として強度を受け持つ部分であって、柱や梁、壁(パラペットを含む)、床(庇を含む)などを指す。
【0022】
連層足場30は、建物1の3階層分程度の高さとなるように上下方向に並べた複数段の足場(足場板30a)を有し、その荷重を躯体2に伝える(躯体2から反力をとる)ことで建物外部にて宙に浮いた状態で設置される外部吊り足場である。連層足場30は、4〜5m程度の長さ(躯体2に沿う水平方向長さ)大きさに形成された複数の足場ユニット31を水平方向に並べて連結することで環状とされる。
【0023】
各足場ユニット31は、躯体2に係止するための係止具32を複数有しており、この係止具32を躯体2に係止することで固定され、躯体2に荷重伝達することができる。連層足場30は、躯体工事および外装工事の進捗に合わせて迫り上げながら使用される。建設現場には躯体工事などのためにタワークレーン35が設置されており、このタワークレーン35を用いて連層足場30は足場ユニット31ごとに順次上方へスライド移動される。連層足場30を上方へ移動する際には、タワークレーン35により足場ユニット31を懸吊した状態で係止具32による躯体2への係止を解除し、足場ユニット31を建物1の1階層分上方へ吊り上げた後に再度係止具32を躯体2に係止して固定する。そして、全ての足場ユニット31について上記手順を繰り返して足場ユニット31を互いに連結することで、建物1の外周を取り囲む一体の連層足場30の迫り上げが完了する。
【0024】
次に、図3〜図8を参照して建物1の構築手順について概要を説明する。まず、図3に示すように、杭4やフーチング5、基礎梁6などからなる基礎3を構築した後、タワークレーン35を設置する。タワークレーン35は、建物1の内部にスラブを貫通して設置される内部建てであってもよく、建物1の外部に設置する外部建てであってもよい。また、タワークレーン35は、躯体工事の進捗に合わせてクレーン本体36がクレーンマスト37(ポスト)に沿って上昇してゆくものであってもよく、躯体工事の進捗に合わせてクレーンベースも盛り替えて上昇させるものであってもよい。
【0025】
次に、図4に示すように、建物1の外周を取り囲むように連層足場30を組立てる。この段階では躯体2が構築されていないため、連層足場30は躯体2ではなく地盤Gに支持されて自立した状態である。連層足場30の組立は、先に設置したタワークレーン35を用いて行ってもよく、タワークレーン35を用いずに行ってもよい。
【0026】
躯体2が下層階から順に構築されると、図5に示すように連層足場30は、タワークレーン35により1階層ずつ迫り上げられる。この際、上記したように連層足場30は足場ユニット31ごとに係止具32による躯体2への係止解除、上昇(タワークレーン35による吊り上げ)、係止具32による躯体2への係止が行われる。連層足場30では、上層部で躯体工事が行われ、下層部で外装工事が行われる。この手順を繰り返すことで、連層足場30は図6に示すように建物1の最上層部にまで移動する。
【0027】
図6に示した状態では、躯体工事が完了しており、建物1の屋上1aに設置する機器類や配管材などの屋上1aへの搬入も順次行い、連層足場30の撤去作業以外のタワークレーン35による揚重作業を完了させる。その後、タワークレーン35の解体作業を開始する。
【0028】
一方、連層足場30を用いた外装工事の終了に合わせ、図7に示すように、建物1の屋上1aに本発明に係る揚重装置10を設置する。なお、揚重装置の屋上1aへの搬入は、タワークレーン35が残存している場合にはタワークレーン35を用いて行ってもよく、後述する搬出作業と同様に、建物1に本設として設けられたエレベータを用いて行ってもよい。外装工事の完了後、この揚重装置10を用いて連層足場30を下方へ移動させて解体する。
【0029】
具体的には、下降させる足場ユニット31の正面に揚重装置10を位置させ、必要に応じて下降時のガイド手段として単管パイプなどを足場ユニット31に設置する。次に、揚重装置10により足場ユニット31を懸吊した状態で躯体2に対する係止具32を解除し、足場ユニット31の下降に合わせて所定の階層に作業員を配置し、建物1に干渉しないように作業員が足場ユニット31を介錯しつつ下層階へ吊り下ろす。この際、ガイドパイプなどを足場ユニット31から下方へ突出する態様で設置していた場合には、ガイドパイプが地盤Gに当たる前に取り外す。
【0030】
そして、図8に示すように、地上(地盤G上)に配置しておいた移動式クレーン38に足場ユニット31を吊り替えて解体ヤードへと移動し、解体ヤードにて足場ユニット31を解体する。
【0031】
1つの足場ユニット31の吊り下ろしが終了した後、屋上1aにて揚重装置10を移動し、各足場ユニット31についてこの作業を繰り返し行うことで、建物1の最上層部に設置された連層足場30の下降をタワークレーン35を用いることなく行うことができる。なお、足場ユニット31を下方へ移動させる際には、躯体2に着脱自在に固定される揚重装置10のブラケット11を複数用意しておき、そのうちの1つに揚重装置10の本体部17を連結して足場ユニット31を下方へ移動させる間に、他の足場ユニット31を下方へ移動させる準備として、他のブラケット11を躯体2に固定するようにするとよい。
【0032】
ここで、揚重装置10の本体部17は後述するように車輪19を備えた移動式となっているため、建物1の屋上1aにおける足場ユニット31間の本体部17の移動はクレーンなどを用いなくとも人力で容易に行うことができる。また、揚重装置10は後述するように分割(解体)可能な構成とされているため、連層足場30の吊り下ろし作業後、分割した揚重装置10を本設のエレベータにより地上階に下ろして建物1の外部へ搬出可能である。
【0033】
このように、連層足場30を上方へ移動させる際にはタワークレーン35を用いるが、外装工事を終了した後に足場ユニット31を下方へ移動させる際にはタワークレーン35を用いることなく揚重装置10を用いれば済むため、外装工事の終了および連層足場30の下方への移動を待つことなくタワークレーン35の解体作業を開始することができる。また、外装工事終了後に足場ユニット31を下方へ移動させる作業も揚重装置10により容易に行うことができる。
【0034】
また、揚重装置10により下方へ移動させた足場ユニット31を、地上に設置した移動式クレーン38によって揚重して解体ヤードへ移動させた後に解体することにより、連層足場30の解体作業期間にわたって建物1の外周を作業エリアとする必要がないため、建物1の入口が閉鎖されて内装作業など他の作業が行えないような状態が継続することを防止できる。また、建物1周辺の外溝工事も早期に開始できるため、工程の短縮を図ることがでできる。
【0035】
さらに、揚重装置10のブラケット11を複数用意しておくことにより、1つの足場ユニット31の吊り下ろし作業中に、後に下ろす足場ユニット31に対するブラケット11の躯体2への固定作業を行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0036】
次に、揚重装置10について図9および図10を参照しながら詳細に説明する。揚重装置10は、先端近傍に滑車12を有するブラケット11と、ブラケット11の基端側に脱着可能に連結される本体部17とを備えており、建物1の屋上階のスラブS上に設置される。本体部17は、車輪19を有する移動式の本体架台18と、本体架台18に載置されるウェイト20と、本体架台18に取り付けられる電動エンドレスウィンチ21とを備える。
【0037】
なお、建物1の屋上階のスラブS上面には、建物1の周縁に沿って梁7が上方へ突出しており、この梁7に対して揚重装置10が固定される。梁7には、その内面の上端部に建物1内側へ向けて突出する内側突部7aが形成されている。
【0038】
ブラケット11は、それぞれ鋼材からなる上弦部材11aと下弦部材11bとを連結部材11cで連結した枠状を呈している。上弦部材11aの先端部には滑車12が取り付けられている。下弦部材11bには、下方へ突出する矩形状の突出部11dが先端部に設けられるとともに、下方へ突出するL字形部材13が基端部側にスライド可能に設けられている。L字形部材13には、スライド筒部分に固定用のボルト14が設けられるとともに、梁7の内側突部7aの内面および下面に対峙する位置にそれぞれねじ式ジャッキ15・16が設けられている。
【0039】
ブラケット11は、突出部11dを躯体2の外周面2oからさらに外方へ突出させ且つ下弦部材11bを梁7の上面に当接させた状態で、L字形部材13を先端側へスライドさせてボルト14で固定し、突出部11dとL字形部材13とにより梁7の外面および内面を挟持することで、梁7に着脱自在に固定できるようになっている。また、L字形部材13を固定した後、両ねじ式ジャッキ15・16を突っ張ることで、より確実にブラケット11を梁7に固定することができる。なお、本実施形態では、ブラケット11を梁7に固定しているが、パラペットや手摺壁、庇などの躯体2部分に固定してもよい。
【0040】
本体架台18は、直方体枠状を呈し、ワイヤ巻き取り器22をその内部先端側に、ウェイト載置部23をその内部後端側にそれぞれ有している。ワイヤ巻き取り器22は、建物1の高さと程同じ長さのワイヤ27を巻き取れるようになっている。ウェイト載置部23には、複数に分割された所定重量のウェイト20が載置される。
【0041】
電動エンドレスウィンチ21は本体架台18の上面に設置され、ボルト・ナット26により本体架台18に固定されるとともに、その後端部が本体架台18の後端上部に控えワイヤ41により連結されている。
【0042】
本体架台18は、前後左右に4つの車輪19を有しており、ワイヤ巻き取り器22、ウェイト20および電動エンドレスウィンチ21を載置した状態で建物1の屋上1aを移動することができ、躯体2に固定されたブラケット11の基端にボルト・ナット25により連結される。また、本体架台18の車輪19近傍には、4つのアジャスターボルト24が設けられており、アジャスターボルト24を回転させて下方へ突出させることで、車輪19を浮かせて本体架台18を安定的に屋上階のスラブS上に設置することができる。アジャスターボルト24の設置は、ウェイト20が載置された本体架台18の屋上面に対する摩擦抵抗(水平力に対するすべり耐力)を高める意義もある。なお、揚重装置10の落下防止のために、本体架台18の後端部を控えワイヤ42により躯体2の一部に連結するとよい。
【0043】
ワイヤ巻き取り器22に巻かれたワイヤ27は、電動エンドレスウィンチ21を通した後に滑車12を通して垂下され、先端に連結されたリング28に掛止された荷役を懸吊するとともに、電動エンドレスウィンチ21により巻き上げ・送り出しがなされ、荷役(足場ユニット31)を上げ下げする。なお、ワイヤ27とその先端のリング28との間にはスイベル29が介設されており、ワイヤ27に加わる荷重の変動によってリング28(足場ユニット31)が回転しないようになっている。
【0044】
このように、ブラケット11と本体部17とが脱着可能であり、且つウェイト20も分割可能であるため、建物1に設置した本設のエレベータによる運搬が可能であり、容易に建物1の屋上1aに揚重装置10を設置・撤去することができる。そのため、連層足場30の吊り下ろしを待つことなくタワークレーン35の解体作業を開始することができる。また、本体架台18が移動用の車輪19を備えるため、ウェイト20を載置した状態でも本体架台18の移動が容易であり、複数の足場ユニット31を吊り下ろすために建物1の屋上1aで揚重装置10を盛り替える作業も容易である。さらに、図11に示すように、躯体2の形状や建物1の屋上1aに設定される配管設備8等の位置を考慮して形状の異なる複数のブラケット11を用意すれば、揚重装置10の設置可能領域が制限されることがなく、建物1の全周への適用や様々な建物への転用も可能である。
【0045】
また、ブラケット11を躯体2に着脱自在に固定するL字形部材13を更に備えることにより、取り扱いの容易なブラケット11を予め躯体2に固定し、ウェイト20を積んだ本体部17は、ブラケット11に連結することで容易に位置決めを行うことができる。また、ブラケット11を複数用意すれば、1つの足場ユニット31の吊り下ろし作業中に、後に下ろす足場ユニット31に対するブラケット11の固定作業を行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。一方、ブラケット11の形状を異なるものとすれば、建物1の屋上1aに設置される機器類の基礎や配管設備8などとの干渉を避けて揚重装置10を設置することができる。
【0046】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、揚重装置10を1基だけ用意して足場ユニット31を吊り下ろしているが、揚重装置10を2基用意し、2基の揚重装置10で足場ユニット31を共吊りしてもよい。このような場合、または足場ユニット31が比較的軽量な場合には、複数の足場ユニット31を連結した状態で吊り下ろしてもよい。また、上記実施形態に示した本発明に係る建物1の構築方法および揚重装置10の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 建物(複層建物)
1a 屋上
2 躯体
7 梁(躯体)
10 揚重装置
11 ブラケット
12 滑車
13 L字形部材(固定手段)
17 本体部
18 本体架台
19 車輪
20 ウェイト
21 電動エンドレスウィンチ
27 ワイヤ
30 連層足場
31 足場ユニット
35 タワークレーン
38 移動式クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワークレーンを用いて躯体を構築する複層建物の構築方法であって、
水平方向に分割可能な複数の足場ユニットからなる連層足場を前記複層建物の低層部の外周に沿って組立てるステップと、
外装工事の進捗に合わせて前記タワークレーンにより前記連層足場を上方へ移動させるステップと、
前記躯体の構築後、前記タワークレーンを解体するとともに、前記複層建物の屋上に分割可能な移動式の揚重装置を設置するステップと、
前記複層建物の最上層部にて外装工事を終了した後、前記揚重装置により前記足場ユニットを下方へ移動させるステップと
を含むことを特徴とする複層建物の構築方法。
【請求項2】
前記揚重装置により下方へ移動させた前記足場ユニットを、地上に設置した移動式クレーンによって移動させた後に解体するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の複層建物の構築方法。
【請求項3】
前記揚重装置は、前記躯体に着脱自在に固定される複数のブラケットと、各ブラケットの躯体内側部分に脱着可能に連結される本体部とからなり、
前記足場ユニットを下方へ移動させるステップでは、前記本体部を前記複数のブラケットのうちの1つに連結して足場ユニットを下方へ移動させる間に、他の足場ユニットを下方へ移動させる準備として、前記複数のブラケットのうち少なくとも他の1つを前記躯体に固定することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の複層建物の構築方法。
【請求項4】
複層建物の最上層部における外装工事を終了した後に、水平方向に分割可能な連層足場を構成する複数の足場ユニットを下方へ移動させるべく、前記複層建物の屋上に設置される揚重装置であって、
躯体の外周面からさらに外方へ突出し且つ前記躯体の上面および内面に少なくとも一部が当接する様態で前記躯体に取り付けられ、先端近傍に滑車を有するブラケットと、
前記ブラケットの躯体内側部分に脱着可能に連結される本体部とを備え、
前記本体部は、移動用車輪を有する本体架台と、複数に分割されて前記本体架台に載置されるウェイトと、前記外方へ移動不能に前記本体架台に取り付けられ、前記滑車から垂下させたワイヤを上げ下げするウィンチとを備えたことを特徴とする揚重装置。
【請求項5】
前記ブラケットを前記躯体に着脱自在に固定する固定手段を更に備えたことを特徴とする、請求項4に記載の揚重装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−11119(P2013−11119A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145260(P2011−145260)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(391062377)綜建産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】