説明

複数のコネクタを有するエレクトロクロミック視覚パネル

エレクトロクロミック窓は、第1の導電性塗膜を有する第1の透明基材および第2の導電性塗膜を有する第2の透明プラスチック基材を含む。エレクトロクロミック媒体は、第1の導電性塗膜と第2の導電性塗膜との間に位置する。少なくとも1つの第1の導電性塗膜および第2の導電性塗膜は、第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層との間に位置する金属層を備える。複数の第1の空間設備は第1の導電性塗膜と接し、また複数の第2の空間設備は第2の導電性塗膜と接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、「Multi−layer Coating/Primer Basecoats for Plasma Vapor Deposited Hard Coatings」の題で2005年7月1日に出願された米国出願第60/696,066号の利益を請求する。本出願は、双方とも本出願に添えられ同時に出願された、「A Vision Panel Having a Multi−layer Primer」の題の米国出願番号第11/472,331号、および「Transparent Electrode for an Electrochromic Switchable Cell」の題の米国出願番号第11/472,334に関連する。これらの出願は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、全構造を通して一括切り替えができる切替可能エレクトロクロミックデバイスに関する。より具体的には、本発明は切替可能エレクトロクロミックデバイス、とりわけ、作動状態と不作動状態との間で一括して切り替え可能な航空機用窓の透明性に関する。
【背景技術】
【0003】
技術的問題点
自動車用窓、自動車用鏡、航空機用窓アセンブリ、サンルーフ、天窓および建築物の窓などの透明性として用いる業務用エレクトロクロミックデバイスは当技術分野で知られている。かかるエレクトロクロミックデバイスは通常、エレクトロクロミック媒体を含む間隙または空間によって分離される2枚のガラスによって規定される密閉チャンバを含む。エレクトロクロミック媒体は通常、溶液中にアノード化合物およびカソード化合物をともに含む。ガラス基材は通常、ガラスの接面を覆い、エレクトロクロミック媒体と接している透明な導電層を含む。両方のガラス基材上の導電層は、電子回路に接続されている。導電層に電圧を印加すると、印加電圧はデバイスのチャンバへ導入され、エレクトロクロミック媒体に電圧を印加し、それにより媒体の色を変化させる。例えば、エレクトロクロミック媒体に電圧を印加すると、それは暗状態となり光を吸収し始めることができる。
【0004】
他方では、自動車用窓、建築物の窓、およびいくつかの航空機用窓は、比較的規模が大きい。その結果、比較的大きな規模のこれらのエレクトロクロミックデバイスでは、明状態と暗状態との切り替えは遅くなり、均一性がなくなる可能性がある。逐次的で、均一性のない着色または切り替えは、比較的大きな規模のエレクトロクロミック窓アセンブリに関連するよくある問題であり、通常「光彩効果」と称される。この効果は通常、基材の表面上に存在する透明な導電性塗膜の表面全体の電圧降下によるものであり、表面塗膜の端に沿って母線に隣接した印加電圧が最高値であり、また電流がエレクトロクロミック溶液を通過するので、セルの中央の印加電圧が最低値という結果となる。従って、エレクトロクロミック媒体は通常、母線が位置する、すなわち、印加電圧がエレクトロクロミック媒体と接する点に最も近接している、セルの周辺を最初に着色することによって、またその後セルの中央に向かって着色することによって均一性のない着色を示すことになる。さらに、従来のエレクトロクロミックデバイスでは、電位を印加すると、アセンブリ全体に陰影が付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、軽量で、比較的費用がかからず、耐久性のあるエレクトロクロミックデバイスの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
少なくともその一部を覆っている第1の導電性塗膜を有する第1の透明基材と、少なくともその一部を覆っている第2の導電性塗膜を有する第2の透明プラスチック基材である。エレクトロクロミック媒体は、前記第1の導電性塗膜と第2の導電性塗膜との間に位置する。前記第2の導電性塗膜は、第1金属酸化物層と第2の金属酸化物層との間に位置する金属層を備える。多層下塗は、前記第2の基材と前記第2の導電性塗膜との間に位置する。複数の第1の空間設備は、前記第1の導電性塗膜と接して、前記第1の導電性塗膜へ電流を流すことができる。複数の第2の空間設備は、前記第2の導電性塗膜と接して、前記第2の導電性塗膜へ電流を流すことができ、前記エレクトロクロミック媒体を通して電位を確定する。第1の複数のコネクタはそれぞれ、前記複数の第1の空間設備の対応するコネクタに接続されて、前記複数の第1の空間設備の前記対応するコネクタへ電流を流す。第2の複数のコネクタはそれぞれ、前記複数の第2の空間設備の対応するコネクタに接続されて、前記複数の第2の空間設備の前記対応するコネクタへ電流を流す。
【0007】
その他のエレクトロクロミック窓アセンブリは、その少なくとも一部を覆っている第1の下塗層および前記第1の下塗層の少なくとも一部を覆っている第1の導電性塗膜を有する第1の透明プラスチック基材を備える。前記第1の下塗層は、前記第1の基材に最も近接している第1の膜層、および前記第1の膜層を覆っている第2の膜層を備える。前記第1の膜層は前記第1の基材より小さい膨張係数を有し、また前記第2の膜は前記第1の膜層より小さい膨張係数を有する。前記第1の導電性塗膜は2つの金属酸化物層間に挟まれる少なくとも1つの銀層を備える。第2の透明プラスチック基材は、その少なくとも一部を覆っている第2の下塗層および前記第2の下塗層の少なくとも一部で覆っている第2の導電性塗膜を有する。前記第2の下塗層は、前記第1の基材に最も近接している第1の膜層、および前記第1の膜層を覆っている第2の膜層を備える。前記第1の膜層は、前記第2の基材より小さい膨張係数を有し、また前記第2の膜は前記第1の膜層より小さい膨張係数を有する。前記第2の導電性塗膜は、2つの金属酸化物層間に挟まれる少なくとも1つの銀層を備える。エレクトロクロミック媒体は、前記第1の導電性塗膜と第2の導電性塗膜との間に位置し、またビオロゲン染料およびジメチルフェナジン染料を有する。複数の第1の空間設備は前記第1の導電性塗膜と接して、前記第1の導電性塗膜へ電流を流すことができる。複数の第2の空間設備は前記第2の導電性塗膜と接して、前記第2の導電性塗膜へ電流を流すことができ、前記エレクトロクロミック媒体を通して前記電位を確定する。第1の複数のコネクタは、前記複数の第1の空間設備の対応するコネクタに接続されて、前記複数の第1の空間設備の前記対応するコネクタへ電流を流す。第2の複数のコネクタは、前記複数の第2の空間設備の対応するコネクタに接続されて、前記複数の第2の空間設備の前記対応するコネクタへ電流を流す。
【0008】
本発明の実施態様の、前述の開示と同様に以下の詳細な説明では、同様の参照番号は全体を通して同様の部品を同定する、添付の図面とともに読むと、より深く理解されるであろう。図面は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本明細書のために、他に表示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される寸法、電圧、視感透過率、性能測定、その他などの量を表すすべての数字は、用語「約」によってすべての場合で修正されるものとして理解されるものとする。従って、それとは逆に表示のない場合は、以下の明細書および添付の特許請求に記載の数値パラメータは、本発明によって得るよう追求した所望の特性に応じてばらつきのある近似値である。最低限でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、数値パラメータのそれぞれは少なくとも、報告された有効桁数を考慮して、また通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用する際は、用語「膜」とは、所望の、および選択された塗膜組成の塗膜領域を指す。塗膜組成は、実質的に均一または不均一となり得る。「層」は、1つ以上の「膜」を備えることができ、また「塗膜」または「塗膜の積層」は1つ以上の「層」を備えることができる。さらに、本明細書に開示しているすべての範囲は、本明細書に含めた任意の、およびすべての部分的な範囲を含むものと理解されるものとする。例えば、規定された範囲「1から10」は、最小値1と最大値10との間(を含めて)の任意の、およびすべての部分的な範囲を含み、すなわち、最小値1以上から始まり、最大値10以下で終わるすべての部分的な範囲、例えば、1から6.1、3.5から7.8、5.5から10などと見なされるべきである。
【0010】
限定されない一実施態様では、本発明は、全構造にわたり、実質的に一括切り替えまたは着色することができ、段階的な陰影(すなわち、グラデーション)または選択領域に選択的に陰影を付けることができる切替可能なエレクトロクロミック窓アセンブリに向けられる。本発明の限定されない一実施態様では、エレクトロクロミック窓アセンブリは、第1の導電性塗膜で覆われている第1の透明基材、および第2の導電性塗膜で覆われている第2の透明基材を含む。第1および第2の透明基材は、第1および第2の導電性塗膜が互い対向する状態で間隔があけられている。媒体を通して電位を印加すると光線透過率を低下させることができるエレクトロクロミック媒体は、媒体の中間にあり、媒体と電気接触する。本発明の限定されない一実施態様では、第1および第2の透明基材は間隔をあけられ、媒体を含むチャンバを備える。本発明の限定されないその他の実施態様では、複数の第1の電気的に接続される空間設備は、そこへ電流を供給するために、例えば、第1の基材の反対端に沿って第1の導電性塗膜と接し、また複数の第2の電気的に接続される空間設備は、例えば、第2の基材の反対端に沿って、そこへ電流を供給するために第2の導電性塗膜と接する。直流電源から電流が第1の複数の設備および第2の複数の設備に印加されると、エレクトロクロミック媒体は、設備の配置により、状態間、例えば、作動状態から不作動状態に急速にまた一様に変化し、例えば、所望ではない色から所望の色に変化するように、塗膜間およびエレクトロクロミック媒体を通して電位は印加される。さらに、電流は第1および第2の複数の設備のうちの選択したものに印加し、第1および第2の複数の設備の選択した他のものに短絡させることによって、アセンブリの選択部分の陰影領域を含む窓アセンブリを作り出すことができる。
【0011】
本発明の特長を取り入れるエレクトロクロミック窓アセンブリ10を図1〜図7に示す。必須ではないが、本発明の限定されない特定の一実施態様では、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は略対称的配置を有する。例えば、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は、正方形または長方形の窓アセンブリであり得る。かかる対称形状の窓アセンブリはとりわけ、客室窓または航空機の操縦室の窓などの航空機用窓として有用であるが、必須ではない。エレクトロクロミック窓アセンブリ10の大きさおよび形状は、アセンブリの特定の所望の用途に応じて選択することができる。
【0012】
特に図1および図2に示すように、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は、第1の透明基材20および第2の透明基材30を含む。かかる基材は、限定されないがポリマー材料、ガラス、および同等物、ならびにかかる材料の組み合わせなど、エレクトロクロミックデバイスに用いられる、当技術分野で知られているどんな材料からでも造作することができる。本発明の限定されない実施態様では、基材20および30のうちの少なくとも1つ、または両方は、プラスチック、例えば、ポリカーボネートアクリル、ウレタンプラスチックおよび同等物、ならびにかかる材料の組み合わせから造作される。第1の基材20および第2の基材30は両方とも透明である。さらに、必須ではないが、基材20および30の1つまたは両方は、着色または彩色されていてもよい。本発明の限定されない一実施態様では、より詳細に後述するように、無着色または「漂白」状態にある場合は、窓アセンブリ10は、少なくとも70%の視感透過率を有する。本明細書で使用する際は、用語「視感透過率」および「光線透過率」とは、透明性を通して伝達される可視光の総量の割合を指す。本明細書で使用する際は、「可視光」とは、380nmから800nmまでの範囲の波長を有する電磁放射を指す。本明細書に提供される視感透過率データは、CIE標準の光Aのために測定され、LTAと表示される。
【0013】
図3に示すように、第1の基材20および第2の基材30は間隔をあけて離れていて、互いに対して実質的に平行対向関係にあり、それらの間にチャンバ41を規定する。かかる関係は、間隔要素45により得ることができる。間隔要素45は、第1の基材20と第2の基材30との間に所望の間隔を維持することができる任意の方法で位置付けることができる。図5に示すように、第1の基材20および第2の基材30は、対向主表面21および対向主表面31それぞれに下塗層22、22’を含んでもよい。本発明の限定されない一実施態様では、間隔要素45は、当技術分野で知られているように、密封方式で第1の基材20および第2の基材30の外端に隣接するエレクトロクロミック窓アセンブリ10の周辺まで及ぶ。必須ではないが、間隔要素45は、第1の基材20および第2の基材30の外端からわずかに内側に向けて位置付けることができる。かかる位置付けは、第1および第2の基材の非常に小さな突出部を提供し、以下に論じる、電気接触を改善するために、第1の塗膜29および第2の塗膜39の一部を露出することができる。間隔要素45は、どんな非導電性材料からも構成することができる。本発明の限定されない一実施態様では、要素45は、ポリマー材料、例えば、硬化性有機ポリマー材料、限定されないが熱可塑性プラスチック材料、熱硬化性材料、紫外線硬化樹脂材料、およびそれらの組み合わせなどである。エポキシベースの有機密封材料は、密封要素45として有用である。
【0014】
図1および図2を参照すると、第1の基材20の周辺は、互い対向している反対端20aおよび20c、同様に互い対向している反対端20bおよび20dを規定する。同様に、第2の基材30は、反対端30aおよび30c、同様に反対端30bおよび30dを含む。
【0015】
図3を参照すると、第1の基材20および第2の基材30はそれぞれ、電極28および38がそれぞれ備わっていて、より詳細に後述するように、エレクトロクロミックセルに電力を供給する。図2および図3に示す本発明の限定されない実施態様では、電極28は、基材20の対向主表面21の第1の導電性塗膜29の形で透明な導電性材料の層を含み、また電極38は、基材30の対向主表面31の第2の導電性塗膜39の形で透明な導電性材料の層を含む。第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39は、可視光に対して実質的に透明であり、雰囲気と同様にエレクトロクロミックデバイス内の任意の材料による腐食に耐性を示し、優れた電気伝導度を有するどんな材料であってもよい。必須ではないが、塗膜29および39は通常、当技術分野で知られている他のどんな材料と同様に、限定されないが、銀、金、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ、ITO/金属/ITO(IMI)などの1つ以上の金属または金属酸化物塗膜を含む。限定されない一実施態様では、導電性塗膜29および39は、ITO/銀/ITO配置を備える多層塗膜である。導電性塗膜29および39は、熱分解、化学気相蒸着およびマグネトロンスパッタリングを含み、よく知られているいくつかの方法のいずれかにより塗布することができる。第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39は、同じまたは異なる材料から構成することができる。
【0016】
本発明の限定されない一実施態様では、第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39は、平方当たり1から10オームに及ぶ、例えば、平方当たり2から5オームに及ぶシート抵抗を有する。さらに、第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39の厚さは、互いに対して同じまたは異なってもよく、塗膜の厚さは、均一、すなわち、全体にわたり略同様の厚さ、または不均一、すなわち、塗膜の厚さにばらつきがあってもよい。本発明の限定されない一実施態様では、塗膜は、5,000Åから50,000Åにおよぶ、例えば、13,000Åから26,000Åに及ぶ、略均一の同じ厚さを有する。
【0017】
図3に示すように、エレクトロクロミック媒体40は、第1の基材20と第2の基材30との間に形成されるチャンバ41内に含まれる。限定されない一実施態様では、チャンバ41は、厚さ15から20mmである。エレクトロクロミック媒体40は、当技術分野で知られているどんな種類の材料でもあってもよく、限定されないが、エレクトロクロミック溶液、ゲル、半固体材料、および同等物など、知られているどんな形でもあり得る。エレクトロクロミック媒体40は、色を定義する少なくとも1つのエレクトロクロミック化合物または染料を含む。より大きな電位が印加されるにつれて、かかる材料は、続けざまに暗色または陰影に着色すると当技術分野ではよく知られている。電位が解除される、または逆転されると、着色が取れる、または漂白され、エレクトロクロミック媒体40を通る光の伝達が電位を印加する前と同じ程度になる。限定されない一実施態様では、エレクトロクロミック媒体はビオロゲン染料およびジメチルフェナジン染料を含む。
【0018】
本発明の限定されない一実施態様では、エレクトロクロミック媒体40は、溶液相タイプのエレクトロクロミック媒体であり、ここでイオン伝導性電解質の溶液中に含まれる材料は、電気化学的に還元または酸化する場合(ゲルを含む)、電解質の溶液中に残存する。本発明の限定されないその他の実施態様では、エレクトロクロミック媒体40は、表面拘束エレクトロクロミック媒体であり、電子的伝導性電極に直接取り付けられている、またはそこへ近接して拘束される材料は、電気化学的に還元または酸化する場合、依然として取り付けられる、または拘束される。本発明の限定されないさらにその他の実施態様では、エレクトロクロミック媒体40は、電着タイプのエレクトロクロミック媒体40であり、イオン伝導性電解質の溶液中に含まれる材料は、電気化学的に還元または酸化する場合、電子的伝導性電極に層を形成する。
【0019】
必須ではないが、限定されない一実施態様では、エレクトロクロミック媒体40は、アノード化合物が酸化材料を意味し、カソード化合物が還元材料を意味する場合は、少なくとも1つのアノードエレクトロクロミック化合物および少なくとも1つのカソードエレクトロクロミック化合物を含む。エレクトロクロミック媒体40に電位を印加すると、アノードエレクトロクロミック化合物は酸化し、同時にカソードエレクトロクロミック化合物は還元する。かかる同時酸化および還元は、可視スペクトルの少なくとも1つの波長の吸収係数を変化させる。エレクトロクロミック媒体40でのかかるアノードおよびカソードエレクトロクロミック化合物の組み合わせは、電位を印加すると、それらに関連した色を定義する。かかるカソードエレクトロクロミック化合物は一般にビオロゲン染料と称され、かかるアノードエレクトロクロミック化合物は一般にフェナジン染料と称される。
【0020】
エレクトロクロミック媒体40はまた、溶媒、光吸収体(例えば、紫外線吸収体)、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、増粘剤、粘度調整剤および同種材料などその他の材料を含むことができる。
【0021】
図5を参照すると、本発明の限定されない特定の一実施態様を示している。第1の基材20には対向主表面21上に下塗層22が備わっており、第2の基材30には主表面31上に下塗層22’が備わっている(以降「第1の下塗層22」および「第2の下塗層22’」とも称される)。第1の基材20および第2の基材30はプラスチックで、0.08から1インチ(0.2032から2.54cm)など、0.02から2インチ(0.0508から5.08cm)に及ぶ厚さを有することが好ましい。限定されない一実施態様では、第1の下塗層22および第2の下塗層22’は、エポキシベースのシランから造作され、またそれぞれ対応する第1の基材20および第2の基材30より低い膨張係数を有する。本発明では限定的ではないが、エポキシベースの樹脂は、エポキシシランまたはエポキシ樹脂であり得る。限定されない一実施態様では、エポキシベースのシランはビスフェノールAエポキシである。窓アセンブリは、動作中には、圧力および/または温度の変化によって継続的に膨張および/または収縮するので、第1の下塗層22および第2の下塗層22’は、基材20、30と塗膜29、39との間の応力を低下させるのを助け、塗膜の層間剥離を防ぐのに役立つ。第1の下塗層22および第2の下塗層22’はまた、窓アセンブリの紫外線進入による損傷を軽減するために、光吸収体、例えば、紫外線吸収体を含むことができる。必須ではないが、下塗層22、22’のそれぞれは、当業者に知られている流し塗り法によって対向主表面21および31に塗布することができる。塗布されると、第1の下塗層22および第2の下塗層22’は、真空チャンバ内で約1から5時間加熱養生される。限定されない一実施態様では、1つ以上の膜を有することができる下塗層22、22’のそれぞれは、厚さ25ミクロン以下である。
【0022】
図6を参照して、本発明の限定されない特定の一実施態様を示し、ここでは第1の下塗層22および第2の下塗層22’は、第1の膜層22a、第1の膜層22aに隣接している第2の膜層22b、第2の膜層22bに隣接している第3の膜層22cによって規定される熱膨張勾配積層を含む。第1の下塗層22および第2の下塗層22’の第3の膜層22cはエレクトロクロミック媒体40に最も近接している。限定されない一実施態様では、第1の膜層22aの膨張係数はプラスチック基材20、30より小さい。第2の膜層22bの膨張係数は第1の膜層22aより小さく、第3の膜層22cの膨張係数は第2の膜層22bより小さい。限定されない一実施態様では、膜層22a、22bおよび22cのそれぞれは、エポキシベースのシランから造作され、ここでは膨張係数は、エポキシベースのシラン膜のシラン含有量を増加することにより低下することができる。限定されない一実施態様では、エポキシベースのシランはビスフェノールAエポキシである。第1の膜層22a、第2の膜層22bおよび第3の膜層22cは、個別に、または一様に厚さにばらつきがあってもよい。限定されない一実施態様では、第1の下塗層22および第2の下塗層22’のそれぞれの厚さの合計は、厚さ25ミクロン以下である。理解されるであろうが、本発明は3つの膜の下塗層に限定されない。代わりに下塗層は、2つの下塗膜または4つ以上の下塗膜を含めることも可能である。本発明の広範の側面では、複数の下塗膜が存在する場合は、下塗膜の少なくとも1つは、それが位置する基材より小さい膨張係数を有する。限定されないその他の実施態様では、ただ1つの下塗膜が存在する場合は、下塗膜は、それが位置する基材より小さい膨張係数を有する。
【0023】
第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39は、それぞれ下塗層22、22’の上に塗布される。限定されない一実施態様では、図5および図6に示すように、第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39は、平方当たり2オームの抵抗力を有するITO/銀/ITO積層から成る。第1の導電性塗膜29は、ITO膜29aおよび29cに挟まれた、150Å以下の銀膜29bを有する。第2の導電性塗膜39は、ITO膜39aおよび39cに挟まれた、150Å未満の銀膜39bを有する。第1の塗膜29および第2の塗膜39のITO/銀/ITO積層は、例えば、要望に応じて、1回から6回を一つの単位として繰リ返すことができる。限定されない一実施態様では、3つの銀層が存在する。さらに、ITO膜29a、29c、39a、39cは、酸化亜鉛膜、ドープまたは非ドープ導電スズ酸亜鉛膜、または両方と交換可能である。図5および図6に示すように、酸素障壁層24は、エレクトロクロミック媒体チャンバ41と第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39との間に設置することができる。しかしながら、当業者によって理解されるように、酸素障壁層24は、下塗層22、22’とそれぞれ各第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39との間に塗布することができる。酸素障壁層24は、エレクトロクロミック媒体40内に含まれる染料の酸化を防止する。限定されない一実施態様では、エレクトロクロミック媒体40はチャンバ41に含まれ、それは限定されない実施態様では、幅約0.02インチ(0.0508cm)である。エレクトロクロミック媒体40は、併せて1/10重量%のビオロゲン染料およびジメチルフェナジン染料用の溶媒として95%から98%のプロピレンカーボネートを含む。テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラートは食塩水としてエレクトロクロミック媒体40中に存在し、伝導性を促進する。さらに、2.0重量%から5.0重量%のポリウレタンまたはポリウレタンアクリレートポリマーはエレクトロクロミック媒体40中に存在しゲルを作る。本発明の限定されないこの実施態様では、ビオロゲン染料はカソードエレクトロクロミック化合物であり、ジメチルフェナジン染料はアノードエレクトロクロミック化合物である。エレクトロクロミック媒体40に電位を印加すると、ジメチルフェナジン染料は酸化し、同時にビオロゲン染料は還元する。本明細書で上述したように、同時酸化および還元は、可視スペクトルの少なくとも1つの波長の吸収係数を変化させる。エレクトロクロミック媒体40でのこれらのアノードおよびカソードエレクトロクロミック化合物の組み合わせは、電位を印加すると、それらに関連した色を定義する。この特定の実施態様では、ビオロゲン染料は紺青色に変化し、ジメチルフェナジン染料は淡黄色に変化する。このようにして、電位を印加すると、エレクトロクロミック媒体40はアクアマリン色のように見える。さらに、ゲル形成ポリウレタンまたはポリウレタンアクリレートポリマーが存在すると、染料の移染および分離の防止となる。染料は他の染料と交換または追加し、異なる単色または複数色をエレクトロクロミック媒体40に吸収させることができることが当業者によって容易理解されるであろう。さらに、電圧の増加など電位の増加は、エレクトロクロミック媒体の色を濃くする。このようにして、例えば、エレクトロクロミック窓アセンブリ10が航空機に設置される場合は、備えられる陰影は「個別化」することができ、すなわち、電圧または電位を増減して、0.1%から70%またはそれ以上の光透過率を提供することができる。70%以上の光透過率は、エレクトロクロミック媒体40の透明または漂白状態に変わる。エレクトロクロミック媒体40が濃くなるにつれて、光透過率のパーセントはより低下する。さらに、本発明の特定のこの実施態様では、停電などにより電位が停止する場合、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は透明状態に自己漂白する。電位の量は、アセンブリ10に流れる電流の量を制御する押しボタンまたはダイヤルアセンブリによって、アセンブリ10のエンドユーザーによって調節することができる。
【0024】
本発明の限定されない一実施態様では、電極28および38は、誘電体層によって分離される導電性多層を含むことができることが理解されるべきである。多層は、エレクトロクロミック窓に付加的な機能性を提供するよう構成することができる。例えば、誘電体層、例えば、スズ酸亜鉛によって分離される2つの導電層、例えば、銀層を含む電極構造では、基材に最も近接している銀層は、外面基材を加熱するのに使用できるが、エレクトロクロミック媒体に最も近接している銀層は、窓のエレクトロクロミックセルを駆動させるのに使用することができる。上述の型の多層電極は、「Transparent Electrode for an Electrochromic Switchable Cell」の題で米国出願番号第___________で開示されており、参照することによりその全体が組み込まれる。
【0025】
必須ではないが、本発明の限定されない一実施態様では、塗膜29および/または39の少なくとも1つの端は、それぞれ基材20および/または30の端に少なくとも近接して、すなわち、アセンブリ10の周辺端11に、例えば、周辺端11の2インチ、または1インチもしくは0.5インチ(5.08cm、または2.54cmもしくは1.27cm)内まで及ぶ。図1〜図6に示す本発明の限定されない特定の実施態様では、塗膜29および39のすべての端は、アセンブリ10の周辺端11まで少なくとも近接して及び、限定されない一実施態様では、塗膜29および39のすべての端は、それらの対応する基材の端、ひいてはアセンブリ10の周辺端11にまで及ぶ。
【0026】
図1〜図6に示すように、限定されない一実施態様では、複数の第1の設備は第1の導電性塗膜29と接し、複数の第2の設備は第2の導電性塗膜39と接する。本発明の限定されない一実施態様では、複数の第1の設備は複数の母線60を備え、複数の第2の設備は複数の母線80を備える。本発明を限定することなく、特定の一実施態様では、母線60はアノード母線であるが、母線80はカソード母線である。かかる母線60および80は、直流電源(図1〜図7に図示せず)と第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39それぞれとの間で電気的接続を提供する。かかる電気的接続は、知られているどんな方法でも構築することができる。例えば、図3および図4に示すように、アノード母線60のそれぞれは、はんだ接合64によってアノード導線65に接続することができるが、カソード母線80のそれぞれは、はんだ接合84によってカソード導線85に接続することができる。このように、正の電流はアノード母線60および塗膜29に印加され、負の電流はカソード母線80および塗膜39に印加され、エレクトロクロミックセル内の塗膜間で電位を生成する。さらに、外ぶたまたは絶縁体(図示せず)は、エレクトロクロミック窓アセンブリ10の周辺端11の周りに備えられ、間隔アセンブリ45、線65および85ならびに/または接合64および84を保護することができる。限定されないその他の実施態様では、単一の母線は第1の導電性塗膜29に接続し、別の単一の母線は第2の導電性塗膜39に接続することもあり得る。
【0027】
図1〜図6に示す、本発明の限定されない特定の一実施態様では、塗膜29の端はアセンブリ10の周辺端11まで及び、第1の導電性塗膜29と接するアノード母線60は、第1の基材20の反対端20bおよび20dに沿って備えられる。このように、電源からの電流は、第1の基材20の反対端20bおよび20dに沿って第1の導電性塗膜29の反対端に備えられる。同様に、塗膜39の端はアセンブリ10の周辺端11まで及び、第2の導電性塗膜39と接するカソード母線80は、第2の基材30の反対端30bおよび30dに沿って備えられる。このようにして、電源からの電流は、第2の基材30の反対端30bおよび30dに沿って第2の導電性塗膜39の反対端に備えられる。母線60は、もう一つの方法として、または同時に、第1の基材20の反対端20aおよび20cに沿って備えられ、また母線80は、もう一つの方法として、または同時に、第2の基材30の反対端30aおよび30cに沿って備えられることが可能である
図1〜図6に示したものと同様な、本発明の限定されない実施態様では、塗膜29の端は、アセンブリ10の周辺端11まで及び、第1の導電性塗膜29と接するアノード母線60は、第1の基材20の反対端20aおよび20cに沿って備えられる。このようにして、電源からの電流は、第1の基材20の反対端20aおよび20cに沿って、第1の導電性塗膜29の反対端に供給される。同様に、塗膜39の端は、アセンブリ10の周辺端11まで及び、第2の導電性塗膜39のと接するカソード母線80は、第2の基材30の反対端30bおよび30dに沿って備えられる。このようにして、電源からの電流は、第2の基材30の反対端30bおよび30dに沿って、第2の導電性塗膜39の反対端に供給される。さらに、電流が印加される第1の塗膜29および第2の塗膜39のこれらの反対端は、互いから間隔があいている。特定のどんな理論にも縛られないことを望むが、塗膜の反対端へ電流を印加することによって、また正の電流により電圧を印加した第1の塗膜の端部を、負の電流により電圧を印加した第2の塗膜の端部から間隔をあけることによって、エレクトロクロミックセル全体にわたり電位を均一に印加することができ、結果、エレクトロクロミック媒体を均一に着色し、虹彩効果(セルの端部から中央に向かう段階的着色)を低減することができると考える。本明細書で使用する際は、用語「均一な着色」とは、印加電圧により変色するエレクトロクロミック媒体のそのような部分はすべて、ほぼ同じ方法で、例えば、ほぼ同時および/またはほぼ同率に変化する。
【0028】
本発明の限定されないその他の実施態様では、母線60は反対端20aおよび20cに沿って、同様に反対端20bおよび20dに沿って配置され、また母線80は反対端30bおよび30dに沿って、同様に反対端30aおよび30cに沿って配置される。このようにして、アノード母線60は、第1の基材20全体の周辺に備えられ、またカソード母線80は、第2の基材30全体の周辺に備えられ、すなわち、母線60および80は、アセンブリ10の周辺端11全体の周りに位置付けられる。図4に示す、限定されない特定の一実施態様では、母線60および母線80は、交互に配置される、すなわち、それぞれの母線60は、窓アセンブリ10の周辺端11の周りのそれぞれの母線80との間配置される。かかる配置は、エレクトロクロミック窓アセンブリ10全体を通して電位を均一に印加する。必須ではないが、本発明の限定されない一実施態様では、それぞれのアノード母線60は、それぞれのカソード母線80から窓アセンブリ10の周辺端11に沿って、少なくとも0.5インチ(1.27cm)の距離に間隔をあけられる。このように間隔をあけると、母線間の電流が短絡せず、エレクトロクロミックデバイス全体を通して均一な電位を供給することが確実となる。さらに、この母線構成は、たとえ電位を長期間印加しても、染料分離を最小限に抑えることを提供する。染料は染料分離をする傾向にあり、通常母線に沿って電力が最も高いアセンブリの一部に向かって移動し、一点に集中する。
【0029】
母線60および80は、通常母線に用いられ、当技術でよく知られているどんな高伝導性材料からも造作することができる。典型的な母線材料の限定されない例は、金属箔、例えば、銅箔、金属塗膜、例えば、金塗膜、および高導電性金属を含むセラミック塗料、例えば、銀セラミック塗料を含む。
【0030】
母線60および80の大きさおよび形状は、エレクトロクロミック窓アセンブリの特定の形状に合わせることができる。本発明の限定されない一実施態様では、母線60および80のそれぞれは、少なくとも長さ0.5インチ(1.27cm)である。さらに、母線60および80は、基材20および30の端全体の長さであってもよい。
【0031】
示すように、電位が媒体を通して印加されると、エレクトロクロミック媒体40は、その色ひいては光線透過率を変化することができる。電位の印加は選択的であってもよく、すなわち、エレクトロクロミック窓アセンブリは、電位を印加しない1段階の伝達と、電位を印加する第2段階の伝達間で切替可能であり、染料の色を変化させてエレクトロクロミック媒体40の視感透過率を低下させる。この特長は、窓アセンブリに電流を選択的に印加するためのスイッチを備えることによって最も容易に得られる。
【0032】
本発明の限定されない一実施態様では、電圧を印加した、および電圧を印加しない電気状態間のエレクトロクロミック媒体の着色は自己消去可能である、すなわち、電位を印加して電気化学的に作動状態になったエレクトロクロミック媒体の着色は、電位を除去すると、常態(元の常態)、例えば、無色状態に自動的に戻るか、または消去される。常態は無色であってもよく、または着色もしくは彩色してあってもよいことが理解されるべきである。
【0033】
限定されないさらなる実施態様では、エレクトロクロミック窓アセンブリは切替可能であり自己非消去である、すなわち、電位を印加するとエレクトロクロミック媒体は着色され、エレクトロクロミック媒体は、電位を逆転する、または短絡させるまで、有色状態を維持する。
【0034】
さらに、電位を印加すると染料の色は恒暗または陰影付きであってもよく、またはエレクトロクロミック媒体を通して確定される電位の桁に応じて暗さまたは陰影の程度にばらつきがあってもよい。例えば、本発明を限定することなく、特定の着色または着色の陰影付けは、電圧および電力密度の範囲にわたってばらつきがあってもよい。エレクトロクロミック媒体に低密度の電力を印加すると、染料は変色し始める。電圧を増加すると、染料の色は陰影が濃くなり、色の強さを増すことになる。このようにして、電位を変えると、窓アセンブリは様々な程度の光線透過率を含めることができる。従って、窓アセンブリは、そこへ印加される電位の量に基づいて、所望の度合いの暗さまたは陰影に調節することができる。前述およびより詳細に後述するように、例えば、電源と窓アセンブリとの間にスイッチまたはその他のいつくかの制御機器を組み込むことによって、これは容易に得ることができる。必須ではないが、本発明の限定されない一実施態様では、エレクトロクロミック窓アセンブリは、1から20パーセントに及ぶLTA最小値と60から70パーセントに及ぶLTA最大値との間で切替可能である。したがって、エレクトロクロミック窓アセンブリは、所望する場合には、例えば、自動車用または航空機用透明性など、窓のための不透明な陰影の役割を効果的に果たすことができる。
【0035】
エレクトロクロミック窓アセンブリに印加される電流の量は、使用する特定のアセンブリおよび特定のエレクトロクロミック媒体に基づき選択することができる。本発明の限定されない一実施態様では、印加される電流の量は、0.4ボルトから1.2ボルト、例えば、0.5ボルトから1.0ボルトに及ぶ。
【0036】
図7に示すように、本発明の限定されないその他の実施態様を示す。エレクトロクロミック窓アセンブリ10は、航空機用窓アセンブリ88に組み込まれ、それはダストカバー90、エレクトロクロミック窓アセンブリ10および客室窓92を備える。ダストカバー90は、航空機用窓アセンブリ88の内側に備えられ、また空間94によってエレクトロクロミック窓アセンブリ10から分離している。ダストカバー90は、塵埃および他の空気中微粒子による物理的接触から、同様に人がエレクトロクロミック窓アセンブリ10に触れることから、エレクトロクロミック窓アセンブリ10を保護するためにある。ダストカバー90は、プラスチックまたはガラス材料から造作される。限定されない一実施態様では、ダストカバー90はLexan(登録商標)プラスチックから造作される。客室窓92は、航空機用窓アセンブリ88の外部に備えられ、空間96によってエレクトロクロミック窓アセンブリ10から分離している。客室窓92は、航空機内の窓の開口部を密閉する。
【0037】
本発明の例示的な図3を具体的に参照して、次にエレクトロクロミック窓アセンブリの使用法を説明する。上述のように、備えられたエレクトロクロミック窓アセンブリは、そこへ電位されない場合は略透明なアセンブリである。したがって、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は明状態となり、高光線透過率が可能となる。窓アセンブリを暗状態にしたい場合は、エレクトロクロミック窓アセンブリは、例えば、ユーザーによって作動可能なスイッチによって作動される。スイッチを作動させると、任意の便利な方法によって、例えば、そこへおよび第1の導電性塗膜29および第2の導電性塗膜39へ取り付けられるリード線を通して、電源が母線60および80に電流を流す。かかる電流はエレクトロクロミック媒体全体に電位の印加をもたらし、エレクトロクロミック媒体は酸化するための少なくとも1つのアノードエレクトロクロミック化合物、および還元するための少なくとも1つのカソード電気化学化合物をもたらす。この反応は、エレクトロクロミック媒体が光を吸収し暗状態になり始めるように、エレクトロクロミック媒体の変色をもたらす。上述のように、塗膜29と39との間の電位は母線配置を通して印加されるので、エレクトロクロミック媒体の着色は急速となり、エレクトロクロミック窓アセンブリ全体にわたり均一となる。
【0038】
アセンブリ10が不作動になると、母線60および80への電力の供給が中断される。したがって、エレクトロクロミック媒体40全体に印加される電位は除去される。上述のアセンブリ10と同じスイッチ配置を使用して、かかる不作動を起こしてもよい。先に論じたように、自己消去エレクトロクロミック媒体の場合は、窓アセンブリ10は常態に戻ることになる。自己非消去エレクトロクロミック媒体の場合は、媒体を通した電位が逆転するまで、その色が維持される。
【0039】
本発明のさらなる実施態様では、ほんの一部のエレクトロクロミック窓アセンブリが有色となることができ、部分的に陰影を付けられた窓を確定する。かかる部分陰影付けは、選択した数のアノード母線60およびカソード母線80へ選択的に電流を印加し、それによって、エレクトロクロミック窓アセンブリの一部のみを通して電位を引き起こすことによって得ることができる。かかる選択的領域の陰影付けは、例えば、ある所定のアノード母線60およびカソード母線80へ電流を選択的に印加することによって得ることができる。このように電流を選択的に印加すると、エレクトロクロミック窓アセンブリ10の選択部分にだけ電位を確定する。したがって、電流が印加されるこれらの領域間のエレクトロクロミック媒体の一部のみが変色し、部分的な陰影付きアセンブリが得られる、すなわち、塗膜の電圧を印加した部分間には存在せず、また電位を受けないエレクトロクロミック媒体のそのような部分と比較すると、電位が塗膜の電圧を印加した部分によって確定される(母線に選択的に電力供給することにより)エレクトロクロミック媒体の一部を通る視感透過率は変化することになる。
【0040】
このように、選択した数の設備に電流を長期間印加すると、エレクトロクロミック媒体の「色泣き」を引き起こし、電流が印加されないエレクトロクロミック窓アセンブリの領域でのエレクトロクロミック媒体は、徐々に暗状態に着色されることが留意される。これは、電流が導電層の一部にだけ印加されたとしても、電流は導電層全体を通って流れ、従って電位が印加されるエレクトロクロミック媒体の領域を拡大することによるものと考えられる。色泣きの量は導電性塗膜の具体的なシート抵抗に基づく。例えば、比較的高いシート抵抗を有する導電性塗膜を組み込むことは、この色泣き効果をやや低減させる。しかしながら、シート抵抗を増加させると、デバイスの色を切り替えるのに電力をより多く消費し、また全体を着色する、およびデバイスの切り替えをするのに比較的長時間を要する。
【0041】
特に低いシート抵抗の導電性塗膜を有するこの色泣き効果を避けるために、陰影領域を生成するよう印加される電流として選択されない設備で電流を接地または短絡させることが可能である。例えば、部分的に陰影を付けられた窓アセンブリは、選択されたアノード母線60および選択されたカソード母線80へ電流を選択的に印加することによって得ることができる。残った母線で電流を接地または短絡させることによって、窓アセンブリ10のその部分に電位は印加されない。このようにして、アセンブリ10の残った部分でのエレクトロクロミック媒体40の色は一般に、明状態に維持され、電位の印加により有色となる上端部からのどんな着色の色泣き効果も低減する。
【0042】
さらに、エレクトロクロミック窓アセンブリは、エレクトロクロミック窓アセンブリが明状態から、引き続きより暗い陰影付き部分を通って、暗状態へ徐々に変化するように、その表面全体に勾配陰影を含むことができる。選択的な陰影領域について上述した同様の方法で、様々な程度のエレクトロクロミック媒体の暗さを得るために、様々な電圧を異なる設備に印加することによってこれを達成することができる。したがって、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は、上端部での暗状態から、中央部でのやや暗状態を通って、下端部での明状態へと徐々に陰影を付けられる
本発明の限定されないその他の実施態様では、エレクトロクロミック窓アセンブリの一部が完全に有色であるが、エレクトロクロミック窓アセンブリの別個の部分が一部のみ有色であるような、エレクトロクロミック窓アセンブリ全体の勾配陰影を得ることが可能である。したがって、エレクトロクロミック窓アセンブリ10は、上端部での完全な暗状態から、下端部でのやや暗状態を通る勾配陰影を含むことになる。
【0043】
図4に示し、詳細に上述したように、窓アセンブリ10の周辺端11の周りに位置付けられている複数のアノードおよびカソード母線により、この実施態様はまた、アセンブリ10の1つ以上の選択された部分を暗状態にする、および/またはアセンブリ10の1つ以上の選択された部分に勾配陰影を生成する方法で動作することができることが理解されるべきである。
【0044】
本明細書に開示している型のエレクトロクロミック窓アセンブリの暗状態にする型を制御するために、制御器(図示せず)は、導電性塗膜への配電を制御するのに使用することができる。制御器は、直流電源によってアセンブリ10内のそれぞれの母線に供給される電力を制御するのに使用することができる。より具体的には、制御器は特定の母線に電圧を印加する(すなわち、母線に電流を流す)、電圧を印加しない、または短絡させるかどうか制御することができる。さらに、制御器はどのくらいの量の電流を特定の母線に流すかを制御することができる。塗膜のどこに、どれほどの電流を流すべきかを制御することによって、選択された部分を通る視感透過率が、他の部分を通る視感透過率と異なるように、制御器はエレクトロクロミック媒体の選択された部分のみ通る電位を確定することができる。その結果、制御器は、限定はされないが、アセンブリの選択された部分を暗状態にする、または先に論じた勾配陰影を提供するなど、アセンブリの視感透過率の所望の変化を生成するのに使用することができる。制御器はまた、非対称的なアセンブリの特徴、例えば、形状、母線の長さ、塗膜の厚さなどを補うために、必要に応じて電流を制御することができる。
【0045】
今では本発明の複数の実施態様が説明されてきた。これらの実施態様は、本発明の単なる具体例であることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される、本発明の多くの変形および修正は、当業者にとって明白となることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の特性を組む込むエレクトロクロミック窓アセンブリの実施態様の直交図である。
【図2】図2は、明快にするために部品を除去した、図1に示すエレクトロクロミック窓アセンブリの前面図である。
【図3】図3は、図2の線3−3に沿って切り取ったエレクトロクロミック窓アセンブリの断面図である。
【図4】図4は、図3に類似した、分割母線を有するエレクトロクロミック窓アセンブリの代替の実施態様の断面図である。
【図5】図5は、図3の線5−5に沿って切り取ったエレクトロクロミック窓アセンブリの断面図である。
【図6】図6は、図5と類似した、エレクトロクロミック窓アセンブリの代替の実施態様の断面図であり、ここでは下塗層は複数の膜層を備える。
【図7】図7は、ダストカバーを有するエレクトロクロミック窓アセンブリの、さらなる代替の実施態様の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその一部を覆っている第1の導電性塗膜を有する第1の透明基材と、
少なくともその一部を覆っている第2の導電性塗膜を有する第2の透明プラスチック基材と、
該第1の導電性塗膜と第2の導電性塗膜との間に位置するエレクトロクロミック媒体であって、少なくとも該第2の導電性塗膜は、第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層との間に位置する金属層を備える、エレクトロクロミック媒体と、
該第2の基材と該第2の導電性塗膜との間に位置する下塗と、
該第1の導電性塗膜と接して、該第1の導電性塗膜へ電流を流すことができる複数の第1の空間設備と、
該第2の導電性塗膜と接して、該第2の導電性塗膜へ電流を流すことができ、該エレクトロクロミック媒体を通して電位を確定する複数の第2の空間設備と、
第1の複数のコネクタであって、該第1の複数のコネクタのそれぞれは、該複数の第1の空間設備の対応するコネクタに接続されて、該複数の第1の空間設備の該対応するコネクタへ電流を流す第1の複数のコネクタと、
第2の複数のコネクタであって、該第2の複数のコネクタのそれぞれは、該複数の第2の空間設備の対応するコネクタに接続されて、該複数の第2の空間設備の該対応するコネクタへ電流を流す第2の複数のコネクタと、
を備える、エレクトロクロミック窓。
【請求項2】
前記金属層は銀を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項3】
前記第1の金属酸化物層および第2の金属酸化物層の少なくとも1つは、インジウムスズ酸化物、酸化亜鉛、スズ酸亜鉛、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項4】
前記第2の透明プラスチック基材は、ポリカーボネート、アクリルおよびウレタンプラスチックから選択される、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項5】
前記複数の第1の空間設備の少なくとも1つおよび前記複数の第2の空間設備の少なくとも1つは、前記窓アセンブリの周辺に位置付けられる、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項6】
前記複数の第1の空間設備および前記複数の第2の空間設備は前記周辺に配置される、請求項5に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項7】
前記複数の第1の空間設備は、前記周辺の前記複数の第2の空間設備間に配置される、請求項5に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項8】
前記複数の第1の空間設備は、その反対端に沿って前記第1の導電性塗膜と接し、また前記複数の第2の空間設備は、少なくともその反対端に沿って前記第2の導電性塗膜と接し、該第1の導電性塗膜の反対端および該第2の導電性塗膜の反対端は互いから間隔があいている、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項9】
前記第1の導電性塗膜の前記反対端の少なくとも1つは、前記窓アセンブリの前記周辺に少なくとも近接している、請求項8に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項10】
前記第1の導電性塗膜の前記反対端および前記第2の導電性塗膜の前記反対端は、前記窓アセンブリの前記周辺に少なくとも近接している、請求項8に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項11】
前記複数の第1の空間設備のそれぞれは大きさの点で等しく、また前記複数の第2の空間設備のそれぞれは大きさの点で等しい、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項12】
前記エレクトロクロミック媒体は、ビオロゲン染料またはジメチルフェナジン染料を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項13】
前記エレクトロクロミック媒体は、ポリウレタンまたはポリウレタンアクリレートポリマーの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項14】
前記エレクトロクロミック媒体は、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項15】
前記エレクトロクロミック媒体は、前記エレクトロクロミック媒体を通して電位を印加すると変化する視感透過率を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項16】
前記第1の導電性塗膜および第2の導電性塗膜の内面または外面の少なくとも1つに置かれる酸素障壁層をさらに備える、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項17】
前記エレクトロクロミック媒体は、少なくとも1つのアノードエレクトロクロミック化合物および少なくとも1つのカソードエレクトロクロミック化合物を備え、前記エレクトロクロミック媒体に電位を印加すると、前記アノードエレクトロクロミック化合物の酸化および前記カソードエレクトロクロミック化合物の還元が同時に生じることによって、視感透過率の低下を引き起こす、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項18】
前記窓は、航空機の客室窓および航空機の操縦室の窓から選択される、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項19】
前記下塗層は、少なくとも2つの膜層を備える多層下塗層であり、それぞれの膜層は前記関連基材より小さい膨張係数を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項20】
前記多層下塗層は、前記第2の基材の少なくとも一部を覆い、該第2の基材より小さい膨張係数を有する少なくとも第1の下塗膜、および前記第1の下塗膜の少なくとも一部を覆い、該第1の下塗膜より小さい膨張係数を有する第2の下塗膜を備える、請求項19に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項21】
ダストカバーがさらに備えられ、それは航空機の内部位置の前記窓から間隔をあけて離れている、請求項1に記載のエレクトロクロミック窓。
【請求項22】
その少なくとも一部を覆っている第1の下塗層および該第1の下塗層の少なくとも一部を覆っている第1の導電性塗膜を有する第1の透明プラスチック基材であって、該第1の下塗層は該第1の基材に最も近接している第1の膜層および該第1の膜層を覆っている第2の膜層を備え、該第1の膜層は該第1の基材より小さい膨張係数を有し、また該第2の膜は該第1の膜層より小さい膨張係数を有し、該第1の導電性塗膜は2つの金属酸化物層間に挟まれる少なくとも1つの銀層を備える第1の透明プラスチック基材と、
その少なくとも一部を覆っている第2の下塗層および該第2の下塗層の少なくとも一部で覆っている第2の導電性塗膜を有する第2の透明プラスチック基材であって、該第2の下塗層は該第1の基材に最も近接している第1の膜層および該第1の膜層を覆っている第2の膜層を備え、該第1の膜層は該第2の基材より小さい膨張係数を有し、また該第2の膜は該第1の膜層より小さい膨張係数を有し、該第2の導電性塗膜は2つの金属酸化物層間に挟まれる少なくとも1つの銀層を備える第2の透明プラスチック基材と、
該第1の導電性塗膜と該第2の導電性塗膜との間に位置するエレクトロクロミック媒体と、
該第1の導電性塗膜と接して、該第1の導電性塗膜へ電流を流すことができる複数の第1の空間設備と、
該第2の導電性塗膜と接して、該第2の導電性塗膜へ電流を流すことができ、該エレクトロクロミック媒体を通して該電位を確定する複数の第2の空間設備と、
第1の複数のコネクタであって、該第1の複数のコネクタのそれぞれは、該複数の第1の空間設備の対応するコネクタに接続されて、該複数の第1の空間設備の該対応するコネクタへ電流を流す第1の複数のコネクタと、
第2の複数のコネクタであって、該第2の複数のコネクタのそれぞれは、該複数の第2の空間設備の対応するコネクタに接続されて、該複数の第2の空間設備の該対応するコネクタへ電流を流す第2の複数のコネクタと、
を備える、エレクトロクロミック窓アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−545167(P2008−545167A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519455(P2008−519455)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/024799
【国際公開番号】WO2007/005369
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】