説明

複数のプロセスストリームのクロマトグラフィ用試料希釈

液体クロマトグラフィの方法は、注入弁を提供するステップと、試料および希釈剤を混合しながら引き出すステップと、試料および希釈剤の混合物を注入弁の試料ループ上に押し出すステップと、試料および希釈剤の混合物を注入するステップとを含む。分析装置は、分配装置と、試料ループを有する注入弁と、試料ポンプとを含む。注入弁は抽出状態および装填状態を有し、分配装置の排出ポートと流体連通しているポートを有する。試料ポンプは、注入弁が抽出状態にあるときには、分配装置および注入弁を通じて試料および希釈剤の両方を引き出すために、分配装置の排出ポートと流体連通し、注入弁が装填状態にあるときには、引き出された試料および希釈剤を試料ループ上に押し出すために、試料ループと流体連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる、2008年2月29日出願の米国仮出願番号61/032,687の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、クロマトグラフ装置および方法に関し、より具体的には、クロマトグラフ試料の希釈および混合のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体クロマトグラフィ(LC)は、分離プロセスを含み、これはたとえば、化学分析または調製のために利用される。典型的なLCシステムは、移動相ポンプ、試料注入器、カラム、および検出器を含む。カラムは、通常は固定不活性多孔物質を含み、これは粒子でできている場合が多い。ポンプは、注入器、カラム、および検出器を通る流体路に沿って移動相流体を推進する。注入器は、流体のカラムへの進入に先立って、試料を移動相流体の中へ導入する。
【0004】
通常、移動相溶媒は、リザーバに貯蔵され、往復シリンダによるポンプを通じて、必要に応じて送達される。試料物質は、しばしばシリンジ型ポンプを通じて注入される。たとえば、いくつかのLCシステムは、流体ベースの試料を針または毛細管を通じて管の中に吸引し(引き込み)、その後試料を試料ループの中に押し込むことによって、試料を注入する。試料はその後、分離カラムに行く途中で、試料ループから移動相ストリームの中へ注入される。
【0005】
流体中に含まれる異なる化合物は、カラム内に保持される固定物質に対して異なる親和性を有する場合が多い。そのため、流体がクロマトグラフィカラムの中を移動する際に、カラム中の固定多孔物質との相互反応に応える時間が異なることで、様々な化合物は、カラム中の移動に遅れが生じる。その結果、化合物が媒体流を運ばれる際に、化合物は分離して、異なった時間をかけてカラムから溶出する。
【0006】
試料溶液中の異なる化合物は、通常は、カラムから溶出する流体中の個別の濃度ピークとして分離する。様々な分離された化学物質は、たとえば、屈折計、吸光光度計(absorbtometer)、または、質量分析計などの、クロマトグラフィカラムを離れると同時に流体が流入するその他の検出装置によって、検出することができる。
【0007】
LCには、プロセス分析技術(PAT)を支援する道具としての可能性がある。PATは、医薬品製造の支援において採用される装置および方法を伴う。典型的なPATシステムは、最終生成物品質を保証する目的で、未処理および処理中の材料ならびにプロセスの重要な品質および性能属性のタイムリーな測定(すなわち、処理中など)を通じて、製造の分析および制御を支援する。PATツールに関して、「分析」という用語は、統合的に使用される、化学的、物理的、微生物学的、数学的およびリスク分析に広く関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PATの文脈において、LCは、たとえば、プロセスストリームの採取を開始してもよいように、たとえば薬品などの、所望の反応生成物がプロセスストリームの中に出現し始めるときを判断するために、使用される。LCはまた、採取を中止すべきときを判断するためにも使用される。しかしながら、LC分析の有効性は、試料の採取と、試料の分析の完了との間の時間的遅延によって、制限されている。この遅延は、試料を採取するために必要とされる時間の長さ、および試料を分析するために必要とされる時間の長さに、関連している。通常、LC機器は、それ自体を部分的にはLC機器の化合物製造プロセスラインへの接続の難しさのため、容易にPAT支援に利用することはできない。
【0009】
場合によっては、医薬品製造プロセスの出力流は、分析データによって示される時間差を調整する配管に向けられる。プロセスストリーム中で所望の化合物の存在が検出された後、配管の適切な場所から採取を開始することができる。試料採取頻度ならびに試料の採取および分析の速度における制限は、プロセスストリームの所望の部分の最適な採取を実行する試みの精度を制限する。最適な採取からのかい離は、費用がかさむ。
【0010】
さらに、試料は、移動相への注入の前に希釈しなくてはならない場合が多い。たとえば、特定のクロマトグラフィカラムの質量過剰装填状態を回避するために、注入試料装填量(たとえば、ピコリットル)を減少させるために、試料を希釈してもよい。あるいは、試料溶液は、溶媒の物理的特性(たとえば、pHレベル)のため、カラムの固定相と相溶性のない溶媒を含んでもよい。同様に、試料溶液は、溶液中に溶解した試料物質よりもカラムの固定相とより効率的に相互反応する強い溶媒を含んでもよく、これによって、カラム中を通過するときに試料物質の分離に歪みが生じる。
【0011】
熟練した技術者は、手作業で試料溶液を希釈することができるが、手作業による希釈は非実用的および/または費用がかさむ。多くの場合、希釈を実行する技術者と機器とはLCシステムから不便なほど離れている。希釈のために試料が離れた位置まで運ばれる場合、深刻な遅延が発生する可能性があり、その結果、製造または処理が中断する場合がある。さらに、運ばれた試料を追跡するという付加的な不便さも必要になる場合が多い。特に、このようなLCに基づくシステムの構成および操作は、それ自体はPAT関連製造支援にとって望ましい速度および自動化の役には立たない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、部分的には、たとえば、試料と希釈液の両方を引き出して同時に混合するために単一のポンプを使用して、試料源から試料を引き出している間にLC試料が希釈されることが可能であるという認識から生じている。たとえば、試料および希釈剤が引き出される、分配弁などの分配要素の使用を通じて、特定の希釈率を選択することができる。
【0013】
したがって、一態様において、本発明は、液体クロマトグラフィの方法を特徴とする。方法は、注入弁を提供するステップと、試料源から試料を引き出すステップと、希釈剤源から希釈剤を引き出すステップと、試料および希釈剤を、実質的に引き出しながら混合するステップと、試料および希釈剤の混合物を注入弁の試料ループ上に押し出すステップと、試料および希釈剤の混合物を注入するステップとを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、分析装置を特徴とする。装置は、分配装置と、試料ループを有する注入弁と、試料ポンプとを備える。分配装置は、試料源と流体連通している第一注入ポートと、希釈剤源と流体連通している第二注入ポートと、排出ポートとを有する。注入弁は、抽出状態および装填状態を有し、分配装置の排出ポートと流体連通している注入ポートを有する。試料ポンプは、分配装置および注入弁を通じて、試料源から試料を、ならびに希釈剤源から希釈剤を、両方引き出すために、注入弁が抽出状態にある場合には、分配装置の排出ポートと流体連通しており、引き出された試料および希釈剤を試料ループ上に押し出すために、注入弁が装填状態にある場合には、試料ループと流体連通している。
【0015】
装置および方法は、自動試料希釈、またはその他の自動化された混合関連処理を通じて、薬剤製造プロセスの監視および/または制御を支援する。
【0016】
図中、類似の参照記号は、異なる図面を通じておおむね同じ部品を示す。また、図面は必ずしも縮尺通りとは限らず、むしろ本発明の原理を図解する上で全体的に強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による、PATツールおよびPATツールによって支援される関連プロセスラインのブロック図である。
【図2A】本発明の一実施形態による、分析装置の模式図である。
【図2B】図2Aに示される注入弁の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中の「インライン」という用語は、プロセスストリームの分流がほとんどまたは全く発生しない、プロセスストリームの試料分析を指す。たとえば、インライン分析は随意的に、プロセスストリームの流路に検出器および/または関連構成要素を設けることによって達成される。
【0019】
本明細書中の「オンライン」という用語は、プロセスストリームの一部分の、化学分析装置へのほぼ直接的な分流を伴う、プロセスストリームの試料分析を指す。
【0020】
本明細書中の「アットライン」という用語は、採取された部分の分析に先立ってプロセスストリームの一部分の分流および採取を伴う、プロセスストリームの試料分析を指す。採取は、特殊な分析ツールの外側か、またはツールの内側で、行われる。採取された部分は、たとえば、試料バイアルに集められる。インライン、オンライン、およびアットラインという用語は、便宜上の用語であって、厳格でなくてもよい。したがって、これらの定義においていくつかの重複が存在してもよいことは、理解される。
【0021】
本明細書中の「クロマトグラフィ」および類似の用語は、化合物の分離を実行するために使用される機器および/または方法を指す。クロマトグラフ機器は通常、圧力および/または電気的な力の下で、流体を移動させる。主におよそ1,000から2,000psi以上の圧力で実行される液体クロマトグラフィを指すために、本明細書中では「HPLC」(高圧または高性能LC)の略語が使用される。主におよそ15,000から20,000psi以上の圧力で実行される液体クロマトグラフィを指すためには、本明細書中では「UHPLC」(超高圧または超高性能LC)が使用される。
【0022】
本明細書中で、「試料ループ」という用語は、たとえば、HPLCおよびUHPLCの当業者には知られている試料ループを含む、注入および分離に先立って試料部分を一時的に保持する、いずれの適切な容器、器、導管、または管をも広く指すために使用される。
【0023】
本明細書中で、「ライン」という用語は、クロマトグラフシステム中で流体を運ぶ、いかなる適切な導管をも指すために使用される。用途に応じて、適切な導管は、ステンレス鋼管類および溶融シリカ毛細管類から形成されるものを含む。
【0024】
本明細書中の「カラム」という用語は、たとえば、その中で化合物の分離が起こる、1つ以上の管を含む、器を指す。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、UHPLC構成要素を複数の試料源に接続させる方法および装置を伴う。方法および装置は、たとえば、薬剤製造プロセスの監視および/または制御のためのPAT推進を支援するのに適している。以下に記載される実施形態は、オンラインおよび/またはアットライン分析を支援する。
【0026】
図1は、医薬品製造において1つ以上のプロセスストリームを監視する分析装置100のブロック図である(2つのプロセスストリームを支援するように示される)。同図はまた、2つのプロセスライン10、20の一部(たとえば、ステンレス鋼管からなる)も示す。プロセスライン10、20は、関連するプロセスストリームの部分の分流を支援するための関連ポート12、22を有する。各ポート12、22は、それぞれの弁11、21に配管接続されている。そして弁11、21は、付加的配管を経由して装置100との接続を支援している。
【0027】
本発明の様々な実施形態において、ポートと弁の配管接続は、LC技術の当業者にとって知られている構成要素を含む、いずれかの適切な構成要素である。当業者は、分流される材料の量およびプロセスラインから装置の分析器部分までの流路距離を最小にするのが一般的に望ましいことを、理解する。
【0028】
装置100は随意的に、オンラインおよび/またはアットライン分析向けに構成されている。アットライン支援向けに、装置100は、試料を採取する構成要素と、採取された試料を装置100の分析器部分に運ぶ構成要素とを含む。分析器部分は、好ましくは、典型的な医薬品製造設定において望ましい迅速な応答を支援する上で、比較的高速な分析を提供する。装置100は随意的に、ACQUITY UPLC(R)クロマトグラフ装置(Waters Corporation,Milford,Massachusettsより入手可能)の改造版であってもよい。
【0029】
次に、装置およびその動作の一例が、より詳細に記載される。図2Aは、本発明の一実施形態による、分析装置200の模式図である。装置200は、試料ループ212および6つのポートP1〜P6を有する注入弁210、2つの選択弁235、245、ポンプ230、分配弁220、試料採取針242、針洗浄要素265、希釈剤供給ライン250、試薬供給ライン260、洗浄液供給ライン262、廃棄ライン263、および装置200の様々な構成要素を流体的に接続するための配管接続を支援する様々な管ライン241、242、231、211、261、291、292を、含む。図2Bは、6つのポートP1〜P6を示すために拡大された、注入弁210の図である。
【0030】
選択弁235は、ポンプ230を、ライン231を経由して注入弁210のポートP3へ、または試料採取針244の洗浄を支援するライン261へ、選択的に接続する。ライン261は、洗浄溶液供給ライン262および針洗浄要素265に接続され、そして構成要素265は廃棄ライン263に接続される。
【0031】
針洗浄のために、試料採取針242は針洗浄要素265に挿入され、これは針洗浄シールを含む。選択弁235は、ポンプ230をライン261に接続する。ポンプ230は、洗浄溶液供給ライン262から洗浄溶液を引き出し、その後ライン261および針洗浄要素265を経由して、洗浄溶液を針244の中に押し込む。
【0032】
試料供給ライン242は第二選択弁245に接続され、接続され、これは試料を引き出す所望の供給源(すなわち、ライン243を経由して試料採取針244から、またはライン241を経由してプロセスラインから)の選択を可能にする。試料選択弁を含まない代替実施形態もある。たとえば、装置は随意的に、オンラインまたはアットライン分析に特化されていてもよい。
【0033】
アットライン分析向けには、LC技術の当業者によって理解されるように、装置は随意的に、プロセス試料をバイアルに採取するように構成され、試料はその後、分析のため、試料採取針244を経由して、バイアルから抽出される。
【0034】
分配弁220は3つの注入ポートを有し、そのそれぞれが関連する切替弁を有し、各々希釈剤供給ライン250、試薬供給ライン260、および試料供給ライン242に接続されている。分配弁220の排出ポートは、ライン211を経由して、注入弁210のポートP2に接続されている。代替実施形態は、3つより多いかもしくは少ないポートを有する分配弁か、または2つ以上の供給ラインに沿った流体の流れを混合および/もしくは仲介する代替分配要素を、含む。
【0035】
出力ライン211に送達される流体の組成は、分配弁220の切替弁のタイミングシーケンスによって決定される。このため、たとえば、希釈剤供給ライン250および試料供給ライン242に接続された注入ポートに関連する切替弁を適切に開放および閉鎖しながら、ポンプ230によって、排出ライン211上で引き出すことによって、所望の比率の試料/希釈剤混合物が得られる。混合物中の試料および希釈剤の比率は、ポンプ230によって提供される流体速度プロファイルに関連するスイッチの相対的作動時間に依存する。開放および閉鎖の割合は、混合を促進するために、随意的に増加する。
【0036】
図2Aは、抽出状態の注入弁210を描写する。この状態で、その後の試料ループ212上への装填のため、分配弁220によって仲介される場合、所望の試料混合物を引き出すために、ポンプ230が使用される。抽出中、混合物は、それぞれ注入弁210を通る引き込みがある、またはない、注入弁210のポートP2、P3のうちの1つに隣接して設けられる。
【0037】
たとえば、混合物は、完全にまたは部分的に、ポートP3に隣接して、ライン231内に入るまで、注入弁210を通じて引き出される。混合物はその後、クロマトグラフ技術の当業者によって理解されるように、注入弁210を装填状態に切り替えた後、ポンプ230によって試料ループ212上に押し出される。そして注入弁210はその後、分離カラムへの送達のため、装填された混合物をライン291、292によって運搬される溶媒ストリーム内に注入するために、注入状態に切り替えられる。
【0038】
装置200はこのように、試料が引き出されるときに試料混合を提供するように構成されている。注入弁210および分配弁220は協働して、試料ポンプ230が、2つ以上の流体を実質的に同時に注入弁210に引き込み、流体を混合することができるようにする。
【0039】
試料ポンプ230は、クロマトグラフ用計量シリンジなど、知られている装置を含む、いずれかの適切なポンプ装置の中から選択される。
【0040】
好ましくは、たとえば、管材の長さおよび径の最適な選択によって、試料の引き出しへの依存は最小限に抑えられる。試料を引き出すとき、空気圧および管径は、流速の制限と関連があり、実際のところ、真空は、たとえば14.7psiの周囲圧力によって制限されながら、試料を引き出す。試料を押すときは、ポンプ230は、はるかに早い流速を発生させながら、はるかに高い圧力をかけることができる。
【0041】
LCの当業者によって理解されるように、試料ループ212は、分離カラム(図示せず)への送達のために、分析ストリームに注入するための混合試料を受け取る。管291、292は、2つのポートP5、P6を経由して、プロセスストリームを注入弁210に接続する。1つの管292は、溶媒などの移動相を、注入弁210に運搬する。ループ212から移動相の中に試料を注入した後、移動相および試料は、別の管291を経由して分離カラムに送達される。注入弁210は、たとえば、クロマトグラフシステム内の導管を切替可能に接続するのに適した、いずれかの多ポート弁を備える。
【0042】
装置200は随意的に、HPLCまたはUHPLCシステムとして実行される。これらの場合、注入弁210は、HPLCまたはUHPLCシステムにおける試料装填および/または注入を支援する、いずれかの適切な市販の注入弁を備える、いずれかの適切な弁である。たとえば、注入弁210は随意的に、6または10ポートのループ注入弁(たとえば、Bio−Chem Valve/Omnifit,Boonton,New Jerseyより入手可能)である。図示された例では、注入弁210は6ポート注入弁である。
【0043】
試料ループ212は、クロマトグラフィの当業者にとって知られている試料ループなど、いずれかの適切な試料保持要素である。たとえば、試料ループ212は、2、5、10、または20μl、あるいはそれ以上、250μlなど、固定量の、いずれかの所望の量を保持する。
【0044】
上述のように、質量装填を減少するためまたは相溶性の試料混合物組成を提供するために、試料は随意的に希釈される。希釈はまた、より広い範囲の濃度にわたって分析を可能にするためにも使用される。
【0045】
試薬は、様々な目的のうちの1つ以上にとって望ましいように、希釈剤を伴ってまたは伴わずに、随意的に添加される。試薬は、たとえば、較正用の外部標準を作成するためにブランク試料に添加されるか、または内部標準もしくは標準追加による定量化のために未知の試料に添加される。あるいは、たとえば、反応を中止もしくは開始するために、またはカラム分離剤に対する適切な親和性を呈するように酵素を変性させるために、分離または検出を可能にするため試料を修正するために、試薬が添加される。
【0046】
このように、希釈剤ライン250および試薬ライン260はそれぞれ、望ましければ、製造プロセスの分析および装置監視を支援するために、いずれかの溶液を含む、1つ以上の希釈剤および試薬源へのアクセスを提供する。たとえば、試薬標準は随意的に、様々な濃度および/または様々な組成の所望の物質を有する。物質は随意的に、製造中の特定の物質に関連づけられる。
【0047】
本発明の様々な実施形態は、医薬品製造における効率の上昇を提供するように、構成および操作される。これらの実施形態は、好ましくは、以下の特徴の全てまたはいくつかを含む:複数の製造プロセスストリームの迅速な試料採取、複数の標準供給源の試料採取、迅速なLC分析、および採取されたプロセスストリームおよび標準の頻繁な繰り返し分析。望ましくは、そのような実施形態のLC分析部分は、UHPLCを利用する。そのような分析部分は、たとえば、いくつかの従来システムによって必要とされる、たとえば30分から1時間ではなく、むしろたとえば数分のうちに、試料分析を実行する。
【0048】
上記の特徴により、装置はリアルタイムに近い方法で製造プロセスを監視することができ、30分から1時間またはそれ以上ではなく、たとえばむしろ数分または数十分の間隔を空けて、時間的に接近したデータ点を収集することができる。いったん所望の薬剤生成物がプロセスストリームに出現し始めると、ストリーム中の薬剤の位置の比較的正確な特定をもって、薬剤の採取が開始する。同様に、製造工程の最後は、採取の正確な終了を可能にすることによって特定される。これらの特徴は、プロセスストリームを配管接続の中に維持して、データ分析が遅れて行われている間に進行する場合にプロセスストリームの位置を追跡する負荷を、削減する。
【0049】
装置200は随意的に、その動作を仲介し、試料分析の自動化を支援する、制御装置を備える。制御装置は、たとえば、注入弁210、選択弁220、および/またはポンプ230との有線および/または無線連絡によって、データおよび/または制御信号を交換する。
【0050】
制御装置は、様々な代替実施形態において、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェア(たとえば、特定用途向け集積回路など)を含み、望ましければ、ユーザインターフェースを備える。制御装置は随意的に、上述の試料採取、および上述の監視プロセスを、実行するように構成されている。
【0051】
本発明のプログラムコード(またはソフトウェア)は随意的に、1つ以上の製造物または1つ以上のコンピュータ読み取り可能な媒体における、またはそれらに対する、コンピュータで実行可能な命令として実現される。したがって、コンピュータ、コンピューティングシステム、またはコンピュータシステムなどの、本明細書で使用される制御装置は、命令およびデータを入力し、命令、またはデータを処理および出力する、いずれかのプログラム可能な機械または装置である。一般的に、コンピュータで実行可能な命令を作成するために、いかなる標準的もしくは独占的な、プログラミングまたは解釈言語も使用することができる。このような言語の例は、C、C++、Pascal、LAVA、BASIC、Visual Basic、およびVisual C++を含む。
【0052】
コンピュータで実行可能な命令が実現される製造品およびコンピュータ読み取り可能な媒体の例は、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ、CD−ROM、DVD−ROM、フラッシュメモリカード、USBフラッシュドライブ、不揮発性RAM(NVRAMまたはNOVRAM)、フラッシュPROM、EEPROM、EPROM、PROM、RAM、ROM、磁気テープ、またはそれらのいかなる組合せも含むが、これらに限定されない。コンピュータで実行可能な命令は、たとえばソースコード、オブジェクトコード、解釈コード、実行コード、またはそれらの組合せとしての、ソフトウェアであってもよい。さらに、本発明の少なくともいくつかの実施形態による方法は、ハードウェア(デジタルまたはアナログ)、ソフトウェア、またはそれらの組合せにおいて実行されてもよい。
【0053】
本明細書において提供された記載を考慮して、クロマトグラフィ技術の当業者は、本発明の様々な実施形態が、先に述べられた特定の特徴に限定されないことを、認識する。本明細書に記載された内容の変形、改造、およびその他の実行は、主張された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって導かれる。したがって、本発明は、先述の例示的説明によってではなく、以下の請求項によって、定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィの方法であって、
試料ループを含む注入弁を提供するステップと、
試料源から試料を引き出すステップと、
希釈剤源から希釈剤を引き出すステップと、
実質的に引き出し中に、試料および希釈剤を混合するステップと、
試料および希釈剤の混合物を試料ループ上に押し出すステップと、
分離カラムへの送達のために、試料および希釈剤の混合物を試料ループから溶媒ストリーム中へ注入するステップとを含む、方法。
【請求項2】
試料および希釈剤の混合物を試料ループ上に押し出すステップに先立って、注入弁を通じて試料および希釈剤の混合物を引き出すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料を引き出すステップが、シリンジで試料を引き出すステップを含み、希釈剤を引き出すステップが、シリンジで希釈剤を引き出すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
押し出すステップが、シリンジで押し出すステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
試料および希釈剤を引き出すステップが、試料の一部分と希釈剤の一部分とを交互に引き出すステップを含み、混合するステップが、交互に引き出された部分を、注入弁と流体連通している管に送達するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
選択された希釈率を提供するために、試料を引き出すステップが、所定量の試料を引き出すステップを含み、希釈剤を引き出すステップが、所定量の希釈剤を引き出すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
試薬源から試薬を引き出すステップをさらに含み、混合するステップが、実質的に引き出し中に、試料、希釈剤、および試薬を混合するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
希釈剤が標準を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試料源と流体連通している第一注入ポートと、希釈剤源と流体連通している第二注入ポートと、排出ポートとを有する分配装置と、
試料ループを含み、抽出状態および装填状態を有し、分配装置の排出ポートと流体連通している注入ポートを有する、注入弁と、
注入弁が抽出状態にあるときには、分配装置および注入弁を通じて試料源から試料を、ならびに希釈剤源から希釈剤を引き出すために、分配装置の排出ポートと流体連通し、注入弁が装填状態にあるときには、引き出された試料および希釈剤を試料ループ上に押し出すために、試料ループと流体連通する、試料ポンプとを備える、分析装置。
【請求項10】
分配装置が分配弁を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
試料ポンプが1つのシリンジからなる、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
分配装置が、試薬源または標準供給源と流体連通している第三注入ポートをさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
試料源が、オンライン試料またはアットライン試料を選択する手段を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
注入弁、選択弁、および試料ポンプを制御する手段をさらに備える、請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2011−514966(P2011−514966A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548829(P2010−548829)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/035049
【国際公開番号】WO2009/111229
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】