説明

複数のポリシロキサンを含有し且つ異なる疎水性領域を有するティッシュシート

親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンは、吸収性と柔らかさの最適な組合わせをもった、化粧紙やトイレットペーパーのようなティッシュを得るために組合わせて用いられる。ティッシュの吸収率が表面全体に変わるように疎水性ポリシロキサンと親水性ポリシロキサンの少なくとも一方がティッシュ製品の外表面に帯状模様で加えられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
種々のティッシュ製品、特に化粧紙やトイレットペーパーの製造において、ティッシュの表面にポリシロキサンを添加して、製品の局所的な表面感触を改善することは周知である。ポリシロキサン、特にポリジアルキルシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサンが本質的に疎水性であるので、ポリジメチルシロキサンの使用は、疎水性をティッシュシートに与えることができる。親水性である変性ポリシロキサンは、当該技術において既知であり、ティッシュ基質にも適用されてきた。親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンをブレンドすることによってシートの浸み通し特性を制御することも知られている。一般に、疎水性ポリシロキサンは、柔らかさを改善するのに親水性ポリシロキサンより有効である。また、ティッシュにおける疎水性は、“乾いた手を保つ”援助をするバリヤ性を与えるのに有利であり得る。しかしなから、柔らかさと吸収性の要求とバリヤ防御の要求とを釣り合わせることは意欲がそそられることである。最近の試みとしては、疎水性ポリシロキサンのオフセットゾーン形成適用が検討されている。他のパターン形成適用も当該技術において記載されている。しかしながら、シリコーンを肉眼で見える程度に不連続に適用するのに対して、表面全域にシリコーンを連続的に分布することにより良好な柔軟性が得られることからわかるように、このようなパターン形成は柔らかさの代価で行われる。
従って、柔軟特性については肉眼で見える程度に連続するポリシロキサンを含むが、その一方で“乾いた手を保つ”特性を維持するようにティッシュ内に疎水性の領域を有するようなティッシュ製品を製造することが求められている。更に、これらのティッシュ製品が急速な水分の吸い込みを有することが好ましい。
【0002】
発明の概要
ここで、ティッシュ製品のための柔らかさと吸収性のバランスの改善が、親水性と疎水性を有する別々の2つ以上のポリシロキサンを製品に組み込むことによって達成され得ることが発見された。得られたティッシュ製品は、その表面全体に充分であるが一様でない吸収性を示すが、高程度の柔らかさを示す。
従って、一態様において、本発明は、親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンを含むティッシュ製品であって、少なくとも一方が帯状模様で製品内に位置し、吸収率が製品の少なくとも一方の外表面全体で変化する、前記製品に関する。
他の態様においては、本発明は、ティッシュ製品を製造する方法であって、親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンを製品に組み込み、親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンが製品内で異なって分布されることを含む、前記方法に関する。
本明細書において用いられる“帯状模様(zoned pattern)”という用語は、ティッシュ製品の層(ply)又は外表面内でのポリシロキサンの分布が肉眼で識別可能に異なっていることを意味する。差異は、規則的でも不規則的であり得るし、ポリシロキサンの配置又は濃度変化によることがあり得る。典型的な帯状模様としては、複数の肉眼的要素、例えば、直線又は曲線の縞及び/又は完全に明確に相隔たる模様、例えば、肉眼で見える大きさの点、正方形、六角形又は他の形状が含まれる。基準点として、このような明確に相隔たる模様の大きさは、一般的には約1平方ミリメートル以上、より適切には約2平方ミリメートル以上、より詳しくは約4平方ミリメートル以上である。それらの種類によって、あらゆる縞の領域は、典型的には非常に大きくなる。有利には、これらの帯状模様要素の全てがグラビア印刷によって作ることができ、各々の帯状模様要素は、一般に6.5平方センチメートル(1平方インチ)当たり数百のセル濃度を有する、グラビア印刷セルによって作られる多くの小さな(顕微鏡的)付着物の集合体である。従って、例えば、ポリシロキサン“A”とポリシロキサン“B”を有する本発明のティッシュ製品の場合、多くの異なる組合わせが可能である。例えば、“A”は製品又は層の全面にわたって一様に存在することができ、“B”は、帯状模様の形で存在することができる。或はまた、“A”と“B”は共に、帯状模様で存在することができ、同じでも異なっていてもよい。一例として、“A”は、縞の形で存在することができ、“B”は、明確に相隔たる模様の形状で存在することができる。或はまた、“A”は、明確に相隔たる模様の形状で存在することができ、“B”は、また、明確に相隔たる模様であるが、大きさ及び/又は間隔が異なって存在することができる。後述するように、本発明の帯状模様の有無は、10水滴試験(Ten Water Drop Test)によって検出することができる。
【0003】
ティッシュシート及び/又はティッシュ製品のx-y方向におけるポリシロキサンの均一性は、マイクロXRF画像法を用いて求めることができる。x-yポリシロキサン分布を求めるための1つの適切な器具は、ウィスコンシン州マディソンにあるThermoNoranから入手できるOmnicron EDXRF系である。この方法は、ティッシュシート面の全部についてポリシロキサン含量を調べることが可能である。
本発明の製品は、単一層、2層、3層、4層以上であり得る。層の数にかかわらず、製品は2つの外の(使用の間、外側に向いている)面だけを有する。層の各々は、層化(2層、3層、4層以上)することができ、均一であることもできる。親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンが、簡単なブレンドとしてしか又は同一の付着パターンでしか適用することができない以外は、層又はプライの1以上のあらゆる組合わせ又はパターンで位置することができる。さもなければ、吸収率は、製品の2つの外表面全体のどちらも変わらない。製品の2つの外表面によって示される吸収率が内側のプライ又は層におけるポリシロキサンの存在によって影響され得ることに留意しなければならない。
本明細書に用いられる“疎水性”ポリシロキサンは、1平方メートル当たり20グラムの基本質量を有するティッシュシートの表面に乾燥繊維質量に基づき0.8質量パーセントのシリコーン固形物の量で一様に局所的に噴霧される場合、得られたシートを54℃(130oF)で2週間老化させた後に単一水滴試験(以下に定義される)によって求められた、30秒以上の浸水時間を有するシートを与えるポリシロキサンである。
本明細書に用いられる“親水性”ポリシロキサンは、1平方メートル当たり20グラムの基本質量を有するティッシュシートの表面に乾燥繊維質量に基づき0.8質量パーセントのシリコーン固形物の量で一様に局所的に噴霧される場合、得られたシートを54℃(130oF)で2週間老化させた後に単一水滴試験(以下に定義される)によって求められた、30秒未満の浸水時間を有するシートを与えるポリシロキサンである。
【0004】
本明細書に用いられる“異なって位置する”又は“異なって分布された”という用語は、シートのある領域と別の領域とを比較した場合、異なるポリシロキサンが存在したり、濃度に差があったり、或いはこのいずれの場合でもあることを意味する。この差により、ティッシュシートの表面をポリシロキサンでほとんど被覆することが可能となるが、親水性ポリシロキサンが存在するか又は一部の領域においてより一般的であることから、疎水性ポリシロキサンだけが存在する領域と比較してそれらの領域で吸収性が増強する。場所によるこの差は、多くの異なる方法で達成することができる。一例として、限定されるものではないが、
(a) 疎水性ポリシロキサンをティッシュシートの一方又は双方の外表面に1つのパターンで印刷又は噴霧することができ、親水性ポリシロキサンをティッシュシートの一方又は双方の外表面に異なるパターンで印刷又は噴霧することができる;
(b) 疎水性ポリシロキサンをシートを形成する前に繊維に加えることができ、親水性ポリシロキサンをシートの一方又は双方の外表面にパターンで噴霧又は印刷することができる;
(c) 親水性ポリシロキサンをシートを形成する前に繊維に加えることができ、疎水性ポリシロキサンをシートの一方又は双方の外表面にパターンで噴霧又は印刷することができる; 又は
(d) 疎水性ポリシロキサンをシートの片面に加えることができ、親水性ポリシロキサンをシートの反対側に加えることができ、いずれか又はどちらもパターンで又は一様に全体に適用することができる。
本発明の個々の一実施態様においては、ティッシュの一方の表面を親水性ポリシロキサンで一様に又は一様でなく全体に又は部分的にパターンで処理し、続いて、次に疎水性ポリシロキサンを縞模様の帯状模様で適用する。得られた製品は、ティッシュの表面全域にわたって親水性ポリシロキサンで完全に被覆されているのが肉眼で確認できる。該製品には、製品を通過する液体の流れを妨げる疎水性領域が存在するものの、製品への液体の流れ全体はほとんど妨げられない。
【0005】
本発明の他の一実施態様においては、シートの親水性領域と疎水性領域が、縞模様のオフセット模様で配置され、それによって、縞模様の親水性領域が、最も近い隣接層の縞模様の疎水性部分と直接対向している。特に浸み通し防止の利点が要求されるオフセット適用の場合、疎水性部分によって占められるシート表面積のパーセントが約50パーセント以上、より詳しくは60パーセント以上、より詳しくは約70パーセント以上、より詳しくは約50〜約95パーセントであることが有利である。
本発明の他の一実施態様においては、処理されたティッシュは、疎水性ポリシロキサンで処理された領域における疎水性を高めるのに充分な時間、高温で熟成されるが、親水性ポリシロキサンが存在する領域は熱熟成にほとんど影響を受けない。疎水性ポリシロキサンは時間/温度感受性を示し、それによって、シートの疎水性が時間と増加温度によって著しく増大する。一方では、親水性ポリシロキサン、特にアミノ官能性コポリエーテルポリシロキサン、例えば、Wetsoft(登録商標)CTWは、時間/温度が増加するにつれて疎水性が著しく増加しないことがわかる。興味深いことに、親水性Wetsoft(登録商標)CTWが疎水性ポリシロキサンと共に適用される場合、Wetsoft(登録商標)CTWで処理された領域は、Wetsoft(登録商標)CTWの親水性を獲得するが、疎水性ポリシロキサンの疎水性を獲得しない。
本発明の他の個々の実施態様においては、疎水性ポリシロキサンはパルプミルでパルプ繊維に適用され、親水性ポリシロキサンはティッシュ製造プロセス後にティッシュ製品の一方又は双方の外表面に局所的に適用される。代替的実施態様においては、親水性ポリシロキサンはパルプミルでパルプ繊維に適用され、疎水性ポリシロキサンはティッシュ製造プロセス後にティッシュ製品の一方又は双方の外表面に局所的に適用される。パルプミルにおいて疎水性ポリシロキサンをパルプ繊維に適用することは、2003年6月24日発行のRunge, et. al.の米国特許第6,582,560号に記載されており、この明細書の記載はこれと矛盾しない程度まで本願明細書に含まれるものとする。
【0006】
理論に縛られることを望まないが、親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンがセルロース繊維含有ティッシュシート又はティッシュ製品に送達する柔らかさの利点は、部分的には、ポリシロキサンの分子量に関連があると考えられる。ポリシロキサンの正確な数又は質量平均分子量の決定がしばしば難しいので、ポリシロキサンの分子量の指標として粘度がしばしば用いられる。本発明に有用な疎水性ポリシロキサンと親水性ポリシロキサン双方の粘度は、約25センチポアズ以上、より詳しくは50センチポアズ以上、より詳しくは約100センチポアズ以上であり得る。本明細書で使用される“粘度”という用語は、ニートポリシロキサンそれ自体の粘度を意味し、そのように供給される場合のエマルジョンの粘度を意味しない。本発明のポリシロキサンは、希釈剤を含有する溶液として供給することができる。このような希釈剤は、上で設定した限界よりポリシロキサン溶液の粘度を低下させてしまうが、ポリシロキサンの有効な部分は、上で示した粘度範囲に合致しなければならない。このような希釈剤の例としては、オリゴマーのポリシロキサンやシクロオリゴマーのポリシロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等、これらの化合物の混合物を含むがこれらに限定されない。
製品中の全乾燥繊維質量と相対する製品中の親水性ポリシロキサン又は疎水性ポリシロキサンの固形物の量は、約0.1〜約5質量パーセント以上、より詳しくは約0.5〜約4質量パーセント、より詳しくは約0.5〜約3質量パーセントであり得る。ポリシロキサンをシートに加えるための手段は、グラビア印刷、ブレードコーティング、噴霧を含むがこれらに限定されない、物質を紙シートに加えるために当該技術において既知であるあらゆる方法によって達成することができる。
本発明のために有用な親水性ポリシロキサンは、シートに充分な親水性を与えるあらゆるポリシロキサンであり得る。官能化されたポリシロキサンの1つの例示的な種類は、ポリエーテルポリシロキサンである。このようなポリシロキサンは既知であり、通常は、シリコーン処理したティッシュシート又はティッシュ製品の親水性を改善する手段として他の官能性ポリシロキサンとともに全体に又は部分的に組み込まれる。親水性ポリシロキサンは、一般的には、以下の構造を有するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、“x”、“z”は>0の整数であり、yは≧0の整数である。xと(x + y + z)とのモル比は、約0.001〜約0.95であり得る。yと(x + y + z)との比は、0〜約0.25であり得る。R0-R9部分は、独立してC1又は高級アルキル基を含むあらゆる有機官能基、エーテル、ポリエーテル、ポリエステル、アミン、イミン、アミド、又はこのような基のアルキルやアルケニルの類似体を含む他の官能基であり得る。R10部分は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、無置換アミド、それらの混合物を含むがそれらに限定されないアミノ官能性部分である。例示的なR10部分は、C1以上の直鎖又は分枝鎖アルキル鎖によって分けられた1成分当たり1つのアミン基又は1置換基当たり2つ以上のアミン基を含有する。R11は、下記一般式: -R12-(R13-O)a-(R14-O)b-R15 (式中、R12、R13、Rl4は独立して直鎖又は分枝鎖C1-4アルキル基であり; R15は、H又はC1-30アルキル基であってもよく;“a”、“b”は、約1〜約100、より詳しくは約5〜約30の整数である。)を有するポリエーテル官能基である。)例示的なアミノ官能性親水性ポリシロキサンは、Wacker, Inc.から製造販売されたWetsoft(登録商標)CTWファミリである。他の例示的な親水性ポリシロキサンは、2002年8月13日発行のLiu et al.の米国特許第6,432,270号に開示されており、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。親水性ポリシロキサンは、有利にはアミノ官能性コポリエーテルポリシロキサンである。
本発明のために有用な疎水性ポリシロキサンは、必要とされた柔らかさや疎水性をそれらが配置されるシートの領域に送達するあらゆる疎水性ポリシロキサンである。適切な疎水性ポリシロキサンの個々の種類は、下記一般式を有するいわゆるポリジアルキルシロキサンである。




【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1-R8部分は、独立してC1又は高級アルキル基を含むあらゆる疎水性有機官能基、エーテル、ポリエーテル、ポリエステル、アミン、イミン、アミド、又はこのような基のアルキルやアルケニルの類似体を含む他の官能基であるものであり、“y”は、>1の整数である。特に、R1-R8部分は、独立してアルキル基の混合物を含むあらゆるC1又は高級アルキル基である。) 例示的な液体は、Dow Corning, Inc.から製造販売されているDC-200(登録商標)液体系列、HMW 2200(登録商標)である。
疎水性ポリシロキサンの特に適切な種類は、下記一般構造を有するいわゆるアミノ官能性ポリシロキサンである。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、“x”、yは、整数>0である。xと(x + y)とのモル比は、約0.001〜約0.25であり得る。R1-R9部分は、独立してあらゆるC1又は高級アルキル基、置換アルキル基、このような基のアルケニル類似体であり得る。R10部分は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、無置換アミド、それらの混合物を含むがこれらに限定されないアミノ官能性部分である。例示的なR10部分は、C1以上の直鎖又は分枝鎖アルキル鎖によって分けられた、1成分当たり1つのアミン基又は1置換基当たり2つ以上のアミン基を含有する。このような物質は、広く当該技術において既知であり、容易に市販で入手できる。適切な疎水性ポリシロキサンの例としては、GE/OSi Silicones、ウォーターフォード、ニューヨークから入手できるY-14344、DC 2-8175、DC 3-822A、Dow Corningから入手できるDC-8129、ミッドランド、ミシガンが挙げられる。
ポリシロキサンのいずれもが、エマルジョンミセルに電荷を与えることができる適切な界面活性剤系によって安定化された、マイクロエマルジョンを含む水性分散液又はエマルジョンとして送達され得る。非イオン性ポリシロキサン物質、カチオンポリシロキサン物質、アニオンポリシロキサン物質ポリシロキサン物質が使用し得る。ポリシロキサンは、また、ニート液体として送達され得る。
本発明の完成したティッシュ製品は、当業者に既知のいかなる数の添加剤も含有することができる。このリストには、乾湿強度添加剤、保持助剤、デボンダ、スキンウェルネス添加剤、例えば、アロエベラエキス、トコフェノール、例えば、ビタミンE、充填剤、例えば、カオリンクレー、デオドライザー、例えば、シクロデキストリン、抗ウイルス剤、抗菌剤等が含まれる。これらの添加剤は、ポリシロキサンのいずれかと同時に含むプロセスのあらゆる点で加えることができる。
【0013】
本発明のティッシュ製品は、更に、自動質量吸収性試験(AGAT)(以下に定義される)とハーキュレスサイズ試験(HST)(以下に定義される)によって測定される、それぞれ吸収率と浸み通し特性を特徴とすることができる。更に特に、本発明のティッシュ製品はAGAT値が約0.6g/g/s1/2以上、より詳しくは0.8g/g/s1/2以上、更により詳しくは約1.0g/g/s1/2以上であり得る。本発明のティッシュ製品は、また、HST値が約4秒以上、より詳しくは約6秒以上、更により詳しくは約8秒以上であり得る。
“ハーキュレスサイズ試験”(HST)は、一般的には、方法を測定する試験は、液体がティッシュ製品を通って進む(浸み通し)にどのくらいかかるかを測定する試験である。ハーキュレスサイズ試験は、一般に、TAPPI法T 530 PM-89、製造業者によって提供される白色と緑色の検定タイル及びブラックディスクによるモデルHSTテスターを用いた耐インキ性による紙のサイズ試験に従って行われる。1%に蒸留水で希釈された2%ナフトールグリーンN染料を色素として用いる。全ての物質は、Hercules, Inc.、ウィルミントン、デラウェアから入手できる。
全ての試料を54℃(130oF)で2週間老化させ、試験前に23 +/- 1℃、50 +/- 2%相対湿度で少なくとも4時間調節される。試験は色素溶液温度に感受性があるので、色素溶液もまた、試験の前に最低4時間の制御条件温度に平衡にしなければならない。代表的な6枚のティッシュ製品を、試験用に選び、共に積み重ねて、試験試料を形成する。試料を、約6.35×6.35センチメートル(2.5×2.5インチ)の寸法に切断する。計測器を、製造業者の指示につき白色と緑色の検定タイルで標準化する。試料を、層の外表面を外向きにして試料ホルダに配置する。次に、試料を試料ホルダに固定する。次に、試料ホルダを、光学ハウジングの上の保持リングに配置する。黒色ディスクを用いて計測器ゼロを調整する。ブラックディスクを取り出し、10 +/- 0.5ミリリットルの色素溶液を保持リングに分布し、試料の上に戻して黒色ディスクを配置しつつタイマーをスタートさせる。試験時間、秒は、製品のHST値である。
【0014】
“自動質量吸収性試験”(AGAT)は、一般的には、54℃(130oF)で2週間老化させたティッシュシートの初期吸収性を測定する試験である。装置と試験は、当該技術において周知であり、質量吸収性テスタと称する1982年11月9日発行のMcConnellの米国特許第4,357,827号に記載されており、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。一般に、AGAT値は、ティッシュ製品の多くの代表的な6つの試料の積み重ねを試験することによって求められる。試験の間、試料積み重ねはレザバー容器と連通しているテストセルに載置される。次に、容器からテストセルに液体が自由に流れるようにバルブを開ける。試験されるティッシュの積み重ねは、レザバー容器からの液体を吸収する。積み重ねによって吸収された液体の量は、一定の期間にわたって求められる。特に、AGAT装置は、2.25秒から所望される長さまで吸収曲線を作成する。2.25〜6.25秒の平均勾配を測定することによってAGATの結果が得られる。各々の製品について10回実験を繰り返し、10回の実験の繰り返しの平均がその製品のAGAT値である。
物質が疎水性か又は親水性かを求めるために“単一水滴試験”が用いられる。(或はまた、親水性領域と疎水性領域が目視によって又は他の方法によって確認され得る場合、ティッシュ製品の具体的な領域の疎水性又は親水性を測定するために単一水滴試験が使用し得る。物質の親水性又は疎水性を求める単一水滴試験を行うために、前述したように54℃(130oF)で2週間試料を老化させることによって老化した試験シートが調製される。次に、試験の直前の少なくとも4時間前に、老化した試験シートを23.0℃±1.0℃、50.0%±2.0%の相対湿度で調整する。次に、調整された測定試料を乾いたガラスプレートに載置する。単一滴(100マイクロリットル、0.1±0.01 ml)の蒸留水(23.0℃±1.0℃)が試験試料の表面より幾分上に位置するエッペンドルフ型ピペットから分布される。水滴は、試験試料の中央近くに位置しなければならない。水滴は、試験試料の表面に水平な平面上に肉眼によって見られる。水滴が試験試料上へ分布された直後に、ストップウォッチをスタートさせる。秒で測定される、試料が水滴を完全に吸収する所要時間が、その試験試料に対する単一水滴試験値(浸み通し時間)である。水滴は、それが完全に消えたときに、即ち、残っている水滴の目に見える垂直要素がないときに完全に吸収される。与えられたあらゆる物質の単一水滴試験値を求めるために、3つの老化した代表的シートについて上述の手順を行い、3回の試験からの平均値がその物質の単一水滴試験値である。3分後、水滴が完全に吸収されない場合には、試験を停止し、単一水滴試験値に180秒値を割り当てる。上記のように、疎水性物質の単一水滴試験値は30秒以上であり、親水性物質の単一水滴試験値は30秒未満である。
【0015】
“10水滴試験”は、吸収率がティッシュ製品の表面全体で変わるかを求めるために用いられる。試験を行うために、試験製品を、まず54℃(130oF)で2週間老化させ、次に、試験の直前の少なくとも4時間前に23.0℃±1.O℃、50.0%±2.0%の相対湿度で調整する。次に、調整された試験試料を、乾いたガラスプレートに載置する。蒸留水(23.0℃±1.O℃)の単一滴(100マイクロリットル、0.1±0.01ml)を試験試料の表面より幾分上に位置するエッペンドルフ型ピペットから製品の露出面上の十(10)のランダムな位置に分布する。10の水滴を観察し、上記の単一水滴試験の通りに時間を計る。完全に吸収されるいずれかの水滴にかかった時間が完全に吸収される他のいずれかの水滴にかかった時間と20秒以上異なる場合には、本明細書のためには試験される製品の表面全体の吸収率の変動がある。十(10)の滴が重なり合わずに配置されることができない程度まで水滴がシート上に水平に広がる場合には、代表的な製品の試料が更に試験されなければならず、合計10滴の必要とされる数を配置することができ、時間を計ることができる。
本発明のために、10水滴試験を行う場合、10水滴試験の最小値が約30秒以下、より詳しくは約20秒以下、更により詳しくは約10秒以下であり、製品のその領域が高度な親水性を示す場合には有利である。同時に、10水滴試験の最大値が約40秒以上、より詳しくは約60秒以上、更により詳しくは約90秒以上であり、製品のその領域が高度な疎水性を示す場合には有利である。
【実施例】
【0016】
実施例1(比較例)
本実施例は、製品の双方の外表面に帯状模様で加えられた疎水性ポリシロキサンを含むティッシュ製品の調製を示すものである。ティッシュ製品は、3つの層を含有し、各層は約13.1gsmの絶乾基本質量を有した。各層は、20質量パーセントの損紙を含有した。各層を、2つの外層と中間層を含む層化された繊維の完成紙料から製造した。第一外層は、40質量パーセントの層を含み、100パーセントのユーカリ繊維を含有した。中間層は、30質量パーセントの層を含み、針葉樹繊維、ユーカリ繊維、損紙の混合物を含有した。第二外層もまた、30質量パーセントの層を含み、そしてまた、針葉樹繊維、ユーカリ繊維、損紙)の混合物を含有した。ユーカリ繊維と針葉樹繊維との全体の比は、70:30であった。
次に、3層ティッシュ製品を、疎水性ポリシロキサン水性エマルジョン(ウォーターフォード、ニューヨークにあるGE/OSi Siliconesによって製造されたY-14,344)で帯状模様において同時グラビア印刷プロセスによって両側に印刷した。グラビアロールは、電子的に食刻され、クロム過剰銅はルイビル、ケンタッキーにあるSouthern Graphics Systemsから供給された。ロールは、線状のインチにつき360セルのラインスクリーン、ロール面の6.5平方センチメートル(1平方インチ)につき15億立方マイクロメートル(ミクロン)(BCM)の容積を有した。このロールに典型的なセル寸法は、長さ65マイクロメートル(ミクロン)、幅110マイクロメートル(ミクロン)、深さ13マイクロメートル(ミクロン)であった。ゴムバッキングオフセットアプリケーターロールは、ユニオングローブ、ウィスコンシンにあるAmerican Roller Companyから供給された75ショアAジュロメータポリウレタンキャストであった。プロセスを、グラビアロールとゴムバッキングロール間のインターフェレンス0.953センチメートル(0.375インチ)、対向するゴムバッキングロール間のクリアランス0.008センチメートル(0.003インチ)を有する条件に設定した。同時オフセット/オフセットグラビアプリンタは毎分2000フィートの速度で処理した。このプロセスによって、3層ティッシュ製品の質量に基づいて、アドオンレベルの1.0質量パーセントの疎水性ポリシロキサン全アドオンが得られた。得られた製品は、54℃(130oF)で2週間老化させた後、シート上の全ての位置で50秒以上の単一水滴試験値、88秒のHST値、0.1g/g/s1/2のAGAT値を有した。
【0017】
実施例2(本発明)
本実施例は、本発明に従って製造されたティッシュ製品を示すものであり、疎水性ポリシロキサンをティッシュ製品の双方の外表面に小さな点の細かい帯状模様で加えた。その後、親水性ポリシロキサンを双方の外表面に縞模様のパターンで加え、それによって許容しうる吸収性に対して製品の表面全体に可変的な吸収率が得られつつ表面の柔らかさのために全体の肉眼的適用範囲が得られた。
特には、疎水性ポリシロキサンがアドオンの1.5質量パーセントで加えられたOSi Y-14344であった以外は、実施例1に記載されたように疎水性3層化粧紙を製造した。その後、5グラムの親水性ポリシロキサン( Kelmar Industries、ダンカン、サウスカロライナから入手でき25℃において約5000cpsの粘度を有するWetsoft(登録商標)CTW液体(100%活性))を100ccの蒸留水とよく混合して水中ポリシロキサンの安定な分散液を形成した。Wetsofl(登録商標)CTWは、水に自己乳化可能であり、添加された界面活性剤を含有しない。次に、ポリシロキサン/水エマルジョンをティッシュの双方の外表面に縞模様のパターンで加えた。親水性ポリシロキサンをシート全体に置かれた縞づけテンプレートを用いてスプレーとしてシートに加えて処理領域と未処理領域を形成した。縞は、シートの縦方向に流れる0.64センチメートル(0.25インチ)幅であった。親水性ポリシロキサン固形物のアドオン量は、処理された領域(0.06g/m2全シート)において約0.19g/m2であった。親水性ポリシロキサン処理領域は、端から端まで1.3センチメートル(0.5インチ)離れて隔置されて、製品は、0.64センチメートル(0.25インチ)の親水性縞模様領域と1.3センチメートル(0.5インチ)の疎水性縞模様領域が交互であった。次に、ティッシュ製品を炉に入れて、85℃で2時間乾燥した。全体ベースの疎水性ポリシロキサン処理の上のWetsoft(登録商標)CTWで処理された領域は、約7秒の単一水滴試験値を有することがわかった。また、水の急速な吸収が可能であった。一方、疎水性縞模様領域は3分間を超える単一水滴試験値を有した。
【0018】
実施例3(本発明)
本実施例は、縞模様の“オフセット”帯状模様で親水性ポリシロキサンを加えることを示すものである。縞模様のオフセットゾーンパターンにおいて、シートの片面の親水性パターンの中心は、ティッシュシートの反対側に直接対向する疎水性パターンの中心点にあり、製品のz-方向に見え、製品の一方の外表面上の親水性縞が製品の反対側の疎水性縞と整列する。この配置は、製品の片面から反対側への液体の“浸み通し”を阻止する。結果として、本実施例のティッシュ製品はソフト感触を生じるために3層ティッシュ製品の両方の外部面についてx-y面に肉眼的に完全なポリシロキサンの表面適用範囲を有する。しかしながら、製品はまた、ティッシュシートの横方向に肉眼的に不連続な疎水性部分を有する。
より詳しくは、実施例1の疎水性3層ティッシュ製品は第2印刷ステーションに供給される。親水性ポリシロキサンエマルジョン(Kelmar Induslries、ダンカン、サウスカロライナから入手できるWetsoft 1967E、ベースポリシロキサンWetsoft CTW)を、シートの対向側にオフセット縞パターンにおけるパターン形成グラビアプリントロールを用いてティッシュ製品に加える。シートの各側の親水性ポリシロキサンの全肉眼的表面積適用範囲は、10パーセントであった。肉眼的に不連続な疎水性部分の幅は、2cmであった。肉眼的に不連続な親水性領域の幅は、0.22cmであった。オフセットの量は、0.89cmであった(オフセットの量は疎水性カラムの幅と親水性カラムの幅間の差の1/2である)。親水性ポリシロキサン適用率は、適用領域において乾燥繊維の1.0質量%(0.391g/m2)又はシートにおいて全繊維の0.1質量%(0.0391g/m2)であった。
54℃(130oF)で2週間老化させた後に、ティッシュ製品は55秒の疎水性部分における単一水滴試験値と6秒の親水性領域における単一水滴試験値を有した。ティッシュシートは、8秒のHST値と0.8g/g/s1/2のAGAT値を有した。ティッシュ製品は、全繊維の1.1質量%の全ポリシロキサン含量と全乾燥繊維の0.9質量%のポリジアルキルシロキサン含量を有した。
上述の実施例と説明は、説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでなく、本発明は以下の特許請求の範囲及びそれに対する全ての等価物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロール製紙繊維の1以上の層を含み且つ2つの外表面を有するティッシュ製品であって、前記製品が更に親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンを含み、その少なくとも一方が製品の範囲内に帯状模様で配置されており、吸収率が製品の少なくとも一方の外表面全域で変化する、前記ティッシュ製品。
【請求項2】
親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンが、製品の少なくとも一方の外表面上に異なる帯状模様で分布している、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項3】
親水性ポリシロキサンが、製品の少なくとも一方の外表面上に一様に分布しており、疎水性ポリシロキサンが、同じ表面上に帯状模様で分布している、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項4】
疎水性ポリシロキサンが、製品の少なくとも一方の外表面上に一様に分布しており、親水性ポリシロキサンが、同じ表面上に帯状模様で分布している、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項5】
疎水性ポリシロキサンと親水性ポリシロキサンの双方が、一方又は双方の外表面に縞模様のパターンで配置されている、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項6】
親水性ポリシロキサン縞が、疎水性ポリシロキサン縞によってオフセットされている、請求項5記載のティッシュ製品。
【請求項7】
親水性ポリシロキサンが点状に分布しており、親水性ポリシロキサンが縞状に分布している、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項8】
親水性ポリシロキサンが縞状に分布しており、疎水性ポリシロキサンが明確に相隔たる模様の状態で分布している、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項9】
親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンが明確に相隔たる模様の状態で分布している、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項10】
10水滴試験の最小値が30秒以下である、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項11】
10水滴試験の最大値が40秒以上である、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項12】
自動質量吸収性試験値が約0.6g/g/sl/2以上である、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項13】
ハーキュレスサイズ試験値が約4秒以上である、請求項1記載のティッシュ製品。
【請求項14】
セルロール製紙繊維の1つ以上の層を有し且つ2つの外表面を有するティッシュ製品の製造方法であって、親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンを製品に組み込むことを含み、親水性ポリシロキサンと疎水性ポリシロキサンが製品内に異なって分布している、前記方法。
【請求項15】
疎水性ポリシロキサンが、製品の一方又は双方の外表面上にパターンで印刷又は噴霧され、親水性ポリシロキサンが、製品の一方又は双方の外表面上に別のパターンで印刷又は噴霧される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
疎水性ポリシロキサンが製品の双方の外表面上に点状に印刷され、親水性ポリシロキサンが製品の双方の外表面上に縞状に印刷される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
製品の一方の外表面上の縞が製品のもう一方の外表面上の縞によってオフセットされる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
疎水性ポリシロキサンが、繊維が層を形成する前に製品の外表面の繊維に適用され、親水性ポリシロキサンが、製品の一方または双方の外表面上に噴霧又は印刷される、請求項14記載の方法。
【請求項19】
親水性ポリシロキサンが、繊維が層を形成する前に製品の外表面の繊維に適用され、疎水性ポリシロキサンが、製品の一方または双方の外表面上に噴霧又は印刷される、請求項14記載の方法。
【請求項20】
疎水性ポリシロキサンが製品の一方の外表面に適用され、親水性ポリシロキサンが製品のもう一方の外表面に適用される、請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2007−519438(P2007−519438A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545310(P2006−545310)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013638
【国際公開番号】WO2005/068717
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】