説明

複数の固体酸化物燃料電池の間に用いる燃料電池用ガスセパレータ

2つの固体酸化物燃料電池(110)の間に用いる燃料電池用ガスセパレータ(112)であって、ガスセパレータは、アノード面と、カソード面と、セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路(134)とを有し、導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体(146)と、アノード面用集電体層(158)を含み電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、カソード面用集電体層(152)を含み電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、を有するものであって、銀用障壁パッチ(156)が、アノード面において導電性材料からなる各上記経路の上にそれぞれ直接的又は間接的に重ねられ、各銀用障壁パッチは、上記経路を通って銀が拡散するのを防ぐに足る十分な密度を有する。別の態様では、各銀用障壁パッチは、導電性材料からなる経路に対して位置がずれているが、銀がその経路から漏れてアノードの触媒活性を低下させるのを防ぐ機能を有する。さらに別の態様では、導電性材料からなる経路を通ってカソードからアノードへ酸素が到達するのをガスセパレータが防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の固体酸化物燃料電池に関し、さらに詳しくはそれらとともに用いるガスセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池アセンブリーに用いるガスセパレータの目的は、一の燃料電池のカソード面に供給される酸素含有ガスを、隣接する燃料電池のアノード面に供給する燃料ガスから分離し、そして燃料電池から発生する熱を燃料電池群から放熱させることである。
また、ガスセパレータは、燃料電池群から発生する電気を、燃料電池群間に流し又は燃料電池群から外に流す。セパレータの代わりに、各燃料電池とガスセパレータの間のセパレート部材によりこの働きを行わせることが提案され、導電性ガスセパレータについての多くの研究がなされている。
【0003】
その研究の一部については、出願人の国際特許出願WO03/007403とWO03/073533の背景の議論において簡単に説明されており、文献名を引用することにより、それら及びそれらの対応米国特許出願10/482,837と10/501,153の内容は本明細書の一部となる。それらの特許出願は、それぞれ、2つの固体酸化物燃料電池の間に使用されるガスセパレータに関するものであり、そのガスセパレータは、アノード面とカソード面と、そしてそのセパレータと電極との接触領域においてアノード面からカソード面へと通じる導電性材料からなる複数の経路(paths)とを有するセパレータ本体と、電極との接触領域の上の集電層からなるアノード面コーティング層と、電極との接触領域の上の集電層からなるカソード面コーティング層と、を有している。ここでその導電性材料は銀又は銀系材料である。また、本発明は、特にそのようなガスセパレータに関する。
【0004】
WO 03/007403とWO 03/073533に記載されているように、セパレータ本体よりも導電性の高い導電性材料からなる複数の経路を有する燃料電池用ガスセパレータの他の開示例としては、EP−A−0993059、US−A−20020068677、そして、ケンダールら(Kendall et al.)、「ソリッドオキサイドフューエルセル IV」、1995年、p.229−235がある。米国特許第5,827,620号は、少なくともその一部には、ケンダールらの論文と同様の内容が開示されている特許開示文献である。
【0005】
銀は、単独として用いても又は複合物の中の一つとして用いたとしても、セパレータを貫通する導電性材料からなる経路に用いる材料としては非常に有効な材料である。その理由は、非常に高い導電性と、温度範囲、特に固体酸化物燃料電池集合体の高温の運転条件(700℃〜1000℃)の温度範囲に対する許容性があることである。
【0006】
一般に、燃料電池の燃料としては、水蒸気で加湿した水素を用いている。しかしながら、燃料電池は、燃料電池発電の経済性を向上させるためには、燃料はできるだけ安価なほうが良い。比較的安価な水素源としては、メタンを主成分とし微量の重炭化水素を含む天然ガスがある。天然ガスは、通常、水蒸気改質反応により水素に転化されるが、メタンが安定であるため、その反応は吸熱反応であり、実質的な転化には少なくとも650℃、そして完全転化にはより高温の温度が必要である。固体酸化物燃料電池システムは高温で運転され、除去すべき熱を生成させるが、少なくとも約650℃の必要レベルの熱エネルギーを燃料電池から水蒸気改質器へと移動させるのに用いる熱交換器は高価なものである。そのため、外部で水蒸気改質された天然ガスのみから製造された水素は、燃料電池用の燃料源としては必ずしも安価のものではない。
【0007】
燃料電池用の水素をより経済的に提供するために、ニッケル等の触媒活性なアノード材料を用いて、固体酸化物燃料電池のアノード上で天然ガスの部分改質を行うことが提案されている。そのプロセスの一実施例は、出願人の国際特許出願WO 02/067351と、その対応米国特許第US−A−6,841,279号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO 03/007403号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO 03/073533号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第EP0993059号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第US20020068677号明細書
【特許文献5】米国特許第5827620号明細書
【特許文献6】国際公開第WO 02/067351号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6841279号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ケンダールら(Kendall et al.)、「ソリッドオキサイドフューエルセル IV」、1995年、p.229−235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
固体酸化物燃料電池用ガスセパレータのアノード面に銀を用いること、例えば、WO 03/007403とWO 03/073533に記載されているように、導電性材料の経路の中に用いたり、あるいは導電性材料を用いたアノード面のコーティング層の少なくとも一部として用いたりすることにより発生する問題の一つは、燃料電池システムの高温の運転温度では銀が非常に流動し易くなるという点である。そのため、銀が燃料ガスとともに、隣の燃料電池のアノードにまで移動し、そこで、アノードの触媒活性を低下させ、アノード上での燃料ガスの内部改質反応を抑制する。
【0011】
2つの固体酸化物燃料電池の間に用いるガスセパレータを貫通する導電性材料からなる経路に銀を用いることにより発生する別の問題は、固体酸化物燃料電池集合体の高温の運転温度では、銀に対し、酸素が高い拡散速度を有することである。このことは、導電性材料からなる経路の中に銀を用いた場合、酸化剤からの酸素がその経路を通ってガスセパレータのカソード面からアノード面に到達し、そこで、その酸素が燃料ガスからの水素と反応することを意味する。その反応により水蒸気と熱が発生するので、その水蒸気と熱は、導電性材料からなる経路において、銀の粒界の間に隙間を生成させる。その隙間は拡散速度を増大させ、最終的にはガスセパレータの不良を引き起こす。
【0012】
隣接する固体酸化物燃料電池の間に用いるガスセパレータに銀を用いることにより発生する1以上の問題点を軽減することは、非常に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、2つの固体酸化物燃料電池の間に用いる燃料電池用ガスセパレータが提供され、そのガスセパレータは、アノード面と、カソード面と、セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路とを有し、該導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体と、アノード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、カソード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、を有するものであって、銀用障壁パッチ(silver-barrier patch)が、アノード面において導電性材料からなる各上記経路の上にそれぞれ重ねられ、各銀用障壁パッチは、上記経路を通って銀が拡散するのを防ぐに足る十分な密度を有している。
【0014】
本発明のこの態様によれば、固体酸化物燃料電池のアノードを銀が汚染する問題は、アノード面の導電性材料からなる各経路に直接的に又は間接的に、銀用障壁パッチをそれぞれ重ねることにより、軽減することができる。銀用障壁パッチは、ガスセパレータと隣接する燃料電池のアノードの間を流れる燃料ガス流の中に、導電性材料からなる経路のそれぞれからアノード面コーティング層を貫通して銀が漏れるのを少なくとも防止する。各銀用障壁パッチが、十分に高い密度を有することが好ましい。ガスセパレータを用いる固体酸化物燃料電池の運転時には、銀が各銀用障壁パッチを貫通して拡散しないようにする必要がある。
【0015】
本明細書で用いる「電極接触領域」とは、隣接する燃料電池の各電極に対向し、かつその電極に対して位置合わせがされた、ガスセパレータの部分を意味する。隣接する電極と電極接触領域とのあらゆる接触は、間接的であり、挿入された集電体、及び/又は流量制御装置が介在する。したがって、「電極接触領域」の用語を使用したとしても、ガスセパレータのその領域は隣接する電極に直接接触する必要がないことが、理解されるであろう。
【0016】
導電性材料からなる複数の経路の1以上、好ましくはすべてが、セパレータ本体のアノード面において、拡大された頂部(an enlarged head)を有することが好ましく、その大きさは、セパレータ本体を貫通する経路部分の断面積の最大で50倍が好ましく、より好ましくは20〜40倍であり、実施例えば約30倍である。頂部は経路の導電性材料と一体的に形成することもできるが、別体として形成することが好ましい。セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路について以後言及する場合、アノード面上の好ましい拡大された頂部についての言及も含むものと概ね理解されたい。拡大された頂部の目的は、セパレータ本体内の導電性材料からなる経路部分と、隣接するアノード構造体との間の電気抵抗を低減することにある。拡大された頂部の材料は、セパレータ本体内の導電性材料からなる経路を構成する材料と少なくとも同等の導電性を有する必要があり、経路を構成する材料よりも導電性が高いことが好ましく、好ましくは市販の純銀である。拡大された頂部の厚さは、例えば、20〜100μmであり、好ましくは30〜50μmである。
【0017】
各銀用障壁パッチは、導電性材料からなる各経路の外形(これにはアノード面の拡大されたすべての頂部も含み)、を超えて延在する必要があり、これにより各経路の周囲への銀の拡散のリスクを軽減することができる。銀用障壁パッチは、すべての拡大された頂部を含む、導電性材料からなる各経路の断面積の1.5〜5倍又はそれ以上の断面積を有することが好ましく、より好ましくは2〜4倍である。
【0018】
少なくとも1個の銀用障壁パッチを、接触するように導電性材料からなる経路に直接重ねることが好ましく、この場合、導電性材料からなる経路の周囲においてセパレータ本体と結合させることができる。この場合、銀用障壁パッチは、導電性材料からなる材料からの電流を通すに足る、あるいはアノード面用集電体層からの電流を通すに足る十分な導電性を有することが必要である。固体酸化物燃料電池システムの運転条件において、導電性材料からなる経路からの銀の拡散を防ぎ、かつ導電性を有する、という必要な機能を発揮できる材料はほとんどない。好ましい例としては、銀に対する障壁特性と導電性とが適度にバランスされた比率に配合されたニッケル/ガラス複合体がある。その比率はニッケルが5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%、そして残部がガラスである。この実施例では、複合体は、純度99.9%以上のニッケル粉末と、粉末状の高粘度タイプのガラスとを混合して作製することが好ましい。ニッケル粉末とガラス粉末の好ましい粒径は、最大で約100μm、好ましくは5〜75μmである。配合物は適切な温度で焼結する。一例として、セパレータを取り付けた燃料電池スタックの初期運転において、配合物を、例えば800〜850℃の温度範囲で焼結する。ガラスは、高粘性のシリカガラスが好ましく、例えば、後述の表1のガラスタイプ1,4,5のいずれかから選択される重量%組成を有するものである。
【0019】
この例において、2つの好ましい特性を提供できる、銀用障壁パッチとして好ましい他の材料には、自身が高活性で球状のニッケルであって、例えば上記の方法で800〜850℃の温度範囲で所望の密度に焼結でき、箔として使用できる高純度(99.9%以上)のニッケルである。これらの導電性の銀用障壁パッチのいずれにも含まれるニッケルを、1以上の銀以外の貴金属と置換又は合金化することができる。しかし、銀以外の貴金属が高価であるので、この方法は好ましいものではない。
【0020】
この態様の別の例としては、各銀用障壁パッチは、導電性材料からなる各経路(アノード面のすべての拡大された頂部を含む)の上に重ねられ(すなわち、位置合わせされ、部分的に重なる。)、そして前述の大きさを有しており、アノード面コーティング層を介して導電性材料からなる経路とは隔てられている。これにより、銀用障壁パッチを、例えば、セパレータ本体から離れたアノード面用集電体層の表面に位置決めできる。銀用障壁パッチは、導電性材料からなる経路とは離れて配置されているが、その導電性材料からの銀の拡散を抑制するのに効果を有することが見出されている。しかしながら、この例では、銀用障壁パッチが導電性を有することは重要ではなく、例えば、表1のガラスタイプ1〜5のいずれかから選択された粘稠又は結晶性のガラスを用いてパッチを製造することもできる。ガラスの製造方法は、導電性の銀用障壁パッチである上記の好ましいニッケル/ガラス複合体について記載したものと同様である。
【0021】
本態様のいずれの例においても、銀用障壁パッチの厚さは、約50〜150μm、好ましくは約75〜125μmである。銀用障壁パッチは、有効な障壁となるに十分な厚さを有する必要があるが、ガスセパレータや燃料電池集合体の特性に悪影響を与える程、厚くすべきではない。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、複数の固体酸化物燃料電池の間に用いる燃料電池用ガスセパレータが提供され、そのガスセパレータは、アノード面と、カソード面と、セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路とを有し、該導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体と、集電体層を含み上記電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、集電体層を含み上記電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、を有するものであって、アノード面コーティング層が、さらに、アノード面用集電体層の下のガス障壁層と、そのガス障壁層とセパレータ本体との間の導電性基層(electrically conductive underlayer)とを有し、そのガス障壁層が、アノード面用集電体層と導電性基層よりも導電性の低い材料から形成される一方、アノード面用集電体を貫通して、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路に対して位置をずらして(offset)形成され導電性基層へと至る複数の高導電性通路(relatively electrically passages)を有するものであって、導電性基層は、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなるすべての経路と、ガス障壁層を貫通するすべての高導電性通路とを電気的に接続する一方、各銀用障壁パッチは、ガス障壁層を貫通する該高導電性通路とそれぞれ結合し、各銀用障壁パッチは、上記経路を通って銀が拡散するのを防ぐに足る十分な密度を有する。
【0023】
本発明のこの態様によれば、各銀用障壁パッチとガス障壁層を貫通する各通路とを結合させることにより、固体酸化物燃料電池における銀によるアノードの汚染の問題を軽減することができる。さらに、酸素に対する障壁としても作用するので、酸素が導電性材料からなる経路を通過して、ガスセパレータのアノード面の水素と反応するリスクを軽減することができる。各銀用障壁パッチは、十分に高密度であり、そして導電性が必要ではないという点以外は本発明の第1の態様に記載された特性を有することが好ましい。
【0024】
固体酸化物燃料電池の環境においてガス障壁層に適した材料は制限されるが、現在の好ましい材料としてはガラスを挙げることができる。ガラスには、例えば、表1のガラスタイプ1から5の中から選択された1以上の粘稠ガラス(viscous glass)、結晶性ガラス、又は粘稠ガラスと結晶性ガラスとの混合物を用いることができる。特に、表1のガラスタイプ1又は4のような粘稠ガラスを一の層とし、表1のガラスタイプ2又は3のような結晶性ガラスを他の層とする、2層のガラスを用いることができる。粘稠ガラス層がガスセパレータ本体に近い状態でガス障壁性を主に発揮する一方、結晶層が、上記粘稠層に対して硬い「スキン」を形成し、粘稠層と、隣接する、アノード面コーティング層の集電体層との間の相互作用を軽減することが好ましい。ガラス層又はガラス層群の製造パラメータは、ガスセパレータの他の好ましいガラス成分に対してここに記載されているものと同様である。好ましい2層のガラス層は、上述の方法により粉末状ガラスから製造することができ、さらに燃料電池集合体の運転とは独立して、実施例えば、約900℃で焼結することができる。
【0025】
ガス障壁層は、セパレータ本体の電極接触領域の全領域に延在することができ、ガス障壁層の材料は、酸素や水素の通過を防止又は抑制できるような十分な密度又は厚さを有する必要がある。十分な又は100%の密度を有し、厚さが40〜120μm、より好ましくは60〜100μmであることが好ましい。ガス障壁層が2層のガラス層からなる場合。それぞれが30〜50μmの厚さを有することが好ましい。
【0026】
本発明の第2の態様において、ガスセパレータのガス障壁層を貫通する高導電性通路を設けた理由は、ガス障壁層の材料の導電性が十分ではないからである。ガス障壁層を貫通する高導電性通路の材料には、例えば、導電性基層の材料、又はアノード面コーティング層の集電体層の材料、又はその両方を用いることができる。あるいは、他の使用可能な材料を用いることもでき、例えば、導電性であれば銀用障壁パッチの材料を用いることもできる。
【0027】
酸素が導電性材料からなる経路を拡散してアノード面で水素と反応するリスクを、ガス障壁層が確実に軽減できるようにするため、セパレータを貫通する導電性材料からなる経路に対し高導電性通路をすべて位置をずらして形成して、酸素の拡散経路を長くする。ガス障壁層を貫通する高導電性通路は、その数を多くし、ガス障壁層を所望の電流が流れるように十分な断面積を有することが必要である。一例として、ガス障壁層を貫通する高導電性層の断面積は、ガスセパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路の全断面積(その流路の拡大された頂部は含まない。)と実質的に同じ、すなわち、約10%以下の違いしかない。しかし、これは、少なくとも一部は、ガス障壁層を貫通する高導電性通路の材料の導電性に依存する。
【0028】
セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路に対して位置をずらして形成された、ガス障壁層を貫通する高導電性通路を設けるためには、本発明の第2の態様におけるガスセパレータのアノード面コーティング層が、セパレータ本体とガス障壁層との間の導電性基層を含むことが必要である。導電性基層は、セパレータを貫通する導電性材料からなるすべての経路の上に積層され、それらのすべての経路と接触し、そしてガス障壁層を貫通する高導電性通路の材料とも接触する。導電性基層は、セパレータの全電極接触領域に延在しており、セパレータ本体の表面の面方向に熱を移動させることにより、温度変化によりセパレータ本体に加わる応力を軽減することができる。
【0029】
導電性基層は、ガスセパレータ本体を貫通する導電性材料からなる各経路と、ガス障壁層を貫通する斜めの高導電性通路との間に所望の導電性を付与できる程度の厚さを有する必要があるが、特に制限されない。好ましい厚さは、20〜100μm、より好ましくは30〜70μmである。
【0030】
導電性基層の材料は銀が好ましい。銀を単独で使用する場合、焼結粉又は箔の形状が好ましい。粉末の粒径の大きさは、最大で約100μm、好ましくは5〜75μmである。一般に、好ましい材料としては、純度が99.9%より大きい焼結銀粉で、粒径が5〜75μmの粉末から製造されたものを挙げることができる。あるいは、適切な銀複合体を用いることもでき、その複合体はガラスを含むものが好ましく、その理由は導電性基層に用いることによりガス障壁性を向上させることができるからである。その銀/ガラス複合体は、ガスセパレータを貫通する導電性材料からなる経路に好適に使用される材料と同様のものであり、以下に記載する。銀は、1以上の他の貴金属と、合金化するか、置換することができる。ニッケルは導電性基層の材料としては望ましいものではなく、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路を通って拡散する酸素により酸化されて、導電性が低下するリスクがあり、そしてニッケルをその還元状態に維持するために基層に十分に燃料を供給することは困難である。
【0031】
ガス障壁層を貫通する各高導電性通路と結合する各銀用障壁パッチは、ガスセパレータのアノード面から銀が漏れないようにするため、本発明の第2の態様におけるガスセパレータ内に設ける。ガス障壁層を貫通する各高導電性通路と「結合する」とは、銀用障壁パッチを高導電性通路に直接的に又は間接的に積層すること、あるいは、銀用障壁パッチが高導電性である場合には、銀用障壁パッチの材料の少なくとも一部が高導電性通路の材料であること、を意味する。各銀用障壁パッチは、本発明の第1の態様の別の例において記載され、ガスセパレータ本体を貫通する導電性材料からなる各経路とは分離するように積層された銀用障壁パッチについて記載された材料で作製され、かつその記載された大きさ(各高導電性通路に対しての)を有することが好ましい。
【0032】
本発明の第2の態様におけるガスセパレータの、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路は、それぞれ、本発明の第1の態様に記載されたセパレータ本体のアノード面上に拡大された頂部を有することが好ましい。しかし、その拡大された頂部は、導電性基層が銀である場合には、必ずしも必要ではない。
【0033】
特に断らない限り、以下の記載は、本発明の既述の両方の態様のガスセパレータにも適用できるものである。
【0034】
アノード面用集電体層は、セパレータ本体の表面の面方向に電流を流すとともに、温度変化によりセパレータに加わる応力を軽減させるために、面方向に熱を移動させる作用を有する。集電体層は、セパレータの全電極接触領域に延在する必要があり、20〜100μm、より好ましくは30〜70μmの厚さを有する。面方向に電流を流し、かつ熱を移動させるための最小限の厚さが必要であるが、層が厚過ぎると、破断し易くなる。
【0035】
固体酸化物燃料電池の運転条件において、面方向に電流を流し、かつ面方向に熱を移動させるという2つの機能を持った材料は少なく、一般には、純度99.9%以上で粒径が5〜75μmであるニッケル粉を焼結したニッケルが好ましい材料である。あるいは、高純度のニッケルを箔の形で用いることもできる。
【0036】
セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路の一つに直接積層されていない銀用障壁パッチを、アノード面用集電体層の少なくとも一部に設けることができる。
【0037】
アノード面コーティング層は、さらに、最外層に変形可能層(compliant layer)を有してもよく、その層は、少なくとも実質的に全電極接触領域にまで延在し、アノード面用集電体層に直接積層されることが好ましい。
【0038】
変形可能層は、隣接する燃料電池装置の高さの変化を吸収するのに適しており、その理由は、隣接装置のすべての突出部がのこぎり状であり、変形可能層と噛み合わせることができるからである。一実施例として、ガスセパレータとアノードの主面、すなわち、柱又は他の突出物の間のアノードの表面、との間の燃料ガス流の移動を促進させるために、固体酸化物燃料電池のアノードの上に柱又は他の個々の突出物を設けることができる。変形可能層は、ガスセパレータに過度の機械的応力を与えることなく、突出物の若干の高さの変動を許容することができる。変形可能層の噛み合わせる特徴は、独立した層を用いてアノード面用集電体層に対して実行されなくてはならないことがわかった。その理由は、この機能と、さらに面方向への電流の流れと面方向への熱の移動の機能を発現させるように後者の集電体層を形成することが困難であるからである。変形可能層の厚さは、100〜200μm、より好ましくは125〜175μmである。
【0039】
変形可能層は、アノード面用集電体層と隣接するアノードとの間に導電性を提供する必要があり、一般的に、好ましい材料はニッケルである。一つの形状として、変形可能層は、純度が99.9%より大きく、粒径が5〜75μmであるニッケル粉を焼結したものを用いることができる。空孔形成剤をニッケル粉に混合し、集電体上でニッケルを焼結させる際に燃焼させると、所望の多孔質のニッケル構造体を得ることができる。空孔形成剤は、ニッケルに対し、10〜30重量%、好ましくは15〜20重量%を用いることができる。適切な空孔形成剤は、ポリブチルメタクリレート(PBMA)であるが、他の公知の空孔形成剤を用いることもできる。変形可能層の空孔度は、10〜50体積%が好ましい。
【0040】
導電性セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路の一つの上に直接積層されないあらゆる個々の銀用障壁パッチを、変形可能層の開口部の少なくとも一部に設けることができ、これは、変形可能層が少なくとも実質的に全集電体層の上に延在することを意味する。その場合、個々の銀用障壁パッチを、変形可能層の開口部の集電体層の上に設けることができる。パッチは、変形可能層の開口部の端部から面方向に離して配置することができる。
【0041】
セパレータ本体の材料は、他の燃料電池の部材の熱膨張係数(CTE)と実質的に一致する熱膨張係数を有するものから選択することが好ましいが、金属や合金等の導電性材料を含む適切な材料から選択することが好ましい。燃料電池の電解質材料がジルコニアであり、かつその電解質が電極層を支持する主たる層である、固体酸化物燃料電池アセンブリーにおいては、セパレータ本体に適した材料はジルコニアである。ガスセパレータのジルコニアには、例えば、3〜10重量%のイットリアを含むイットリア安定化ジルコニアを用いることができる。あるいは又はさらに、ジルコニアの基本構造を保持した状態で他の材料を含んでもよい。例えば、アルミナを最大15重量%又は最大20重量%含むジルコニア・アルミナを用いることもできる。一般的に好ましい材料は、10重量%のイットリアを含む、2〜15重量%のアルミナで強化した安定化ジルコニアである。便宜上、そのジルコニア系材料を、以降ではジルコニアと呼ぶ。
【0042】
セパレータ本体の厚さは500μmを超えないことが好ましく、多数のガスセパレータを用いる燃料電池スタックの総厚み又は総高さと重量とを最小限にするために、この値よりも小さいことがより好ましく、実施例えば、50〜250μmである。厚みをさらに薄くすることもできるが、ガスセパレータ本体の製造が困難となる。また、セパレータ本体の密度を高くする、すなわち、燃料電池アセンブリー内のガスに対する材料のガス不透過性を確保する、ことが困難となる。より厚くすることもできるが、その必要はなく、厚さは200μmより薄いことが好ましい。
【0043】
セパレータ本体は、セパレータの材料と形状に応じてあらゆる適切な方法を用いて製造することができる。セパレータは、円形状又は実質的に円形であることが好ましい。平板状の燃料電池に用いるガスセパレータは、一般に板状で、ジルコニア板であり、例えば、生材料(green material)をテープキャストし、焼結して製造することができる。適切な製造方法は容易に理解できるものであり、本発明の範囲には含まれない。セパレータ本体を、例えばジルコニアからなる2層以上とすることもでき、その場合、セパレータ本体の層群を貫通する導電性材料からなる経路と接触するように導電性材料の層を介在させるが、そのことは前述のWO 03/007403に記載されている。
【0044】
既に説明したように、セパレータ本体は、燃料電池アセンブリーに使用されるガスに対して不透過性である必要があるので、セパレータ本体の最も好ましい材料は高密度なものである。しかし、導電性材料からなる経路を用いて、その材料の厚さ方向を貫通する孔を塞げば、その材料には多孔質のものを用いることができる。導電性材料からなる経路は、セパレータ本体を貫通する貫通部として定義することができ、便宜上、以降、このように記載する。
【0045】
貫通部は、少なくとも実質的にセパレータ本体の厚さ方向を貫通して垂直に延在している。しかし、このことは必須ではなく、導電性材料からなる経路が垂直方向に傾斜していればよい。セパレータ本体のアノード面における各経路を、導電性材料からなる経路を通って酸素が拡散するリスクを軽減するために、カソード面における結合した経路に対して位置をずらして形成することもできる。
【0046】
各貫通部、及び/又はセパレータ本体を貫通する導電性材料からなる各経路の直径又は平均断面積(導電性材料の頂部を除く。)は、50〜1000μmである。貫通部は、セパレータ本体の製造時において、あるいは製造後に、例えば、レーザ加工を用いて作製することができる。貫通部の大きさの下限は、それらの製造の難度とそれらを導電性材料で塞ぐことの難度に依存する。平均断面積は、200〜500μm、より好ましくは約350μmである。
【0047】
貫通部の数の下限は、それらの大きさ、それらの中に入る材料の導電性、そしてガスセパレータにより伝達される電流に依存する。貫通部の断面積が好ましい範囲の上限値に近い場合には、貫通部の数を少なくして、貫通部間の距離を大きくすることが好ましい。セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路の全面積(導電性材料の頂部を除く。)は、セパレータ本体の電極接触領域の面積(片面のみ)1000mm当たり、0.1mm〜20mm、より好ましくは1000mm当たり、0.2mm〜5mmである。一般的に好ましい例として、電極接触領域又は機能性ガス分離面積が約5400mmであるセパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路の平均直径(導電性材料の頂部を除く。)が約350μmであり、その経路の数が19である。セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路は、少なくとも実質的に互いに等間隔(10%以内の誤差内で)に配置されていることが好ましい。
【0048】
導電性材料からなる経路は、ガスセパレータの反対面からの熱伝導の経路でもあることが好ましい。
【0049】
セパレータ本体を貫通する経路に用いる導電性材料には、金属銀(市販純度)、銀を主成分とする金属混合物、又は銀合金を用いることができる。これらは、焼結した高密度の充填物の形で用いることが好ましい。
【0050】
特に、燃料電池の運転温度が、約900℃より高温で、銀の融点以上である場合、例えば最大1100℃である場合、銀は、十分高い融点を有する他の適切な延性のある金属又は金属群を合金化することが好ましい。その金属として、例えば、金、パラジウム、そして白金等の1以上の貴金属を挙げることができる。合金中の銀の含有量が50重量%より少ないものが好ましい。銀と結合させる安価な材料としては、ステンレス鋼を挙げることができる。他の例としては、アルミニウムと錫がある。銀と、合金用金属又は配合用金属とを粉末の状態で混合し、セパレータ本体の貫通部内で焼結させる。粉末には、市販純度(純度99.9%以上)で、粒径が5〜75μmのものを用いることが好ましい。
【0051】
金属銀、銀混合物又は導電性の銀合金は、いくつかの適切な方法を用いて貫通部に導入することができ、例えば、有機バインダーを含む金属、混合物又は合金のスラリーを貫通部にスクリーン印刷又はステンシル印刷により導入する方法や、セパレータ本体の少なくとも一方の表面を、例えば、印刷、蒸着又はメッキによりコートし、コートした金属、混合物又は合金を貫通部の中に導入する方法が含まれる。
【0052】
最も好ましくは、セパレータを貫通する導電性材料は、銀−ガラス複合体である。この材料は、貫通部に銀を用いることにより、セパレータ本体の材料とは独立してガスセパレータに所望の導電性を付与できることと、貫通部にガラスを用いることにより、セパレータ本体を通ってガスが漏れるリスクを軽減できるという利点を有している。ガラスは、燃料電池の運転温度では軟化し、必要により、セパレータが熱サイクルを受けている時、セパレータ本体の膨張と伸縮とともに流動することができる。この特性は銀の延性により促進される。銀−ガラス複合体は、実際には、ガラスをマトリックスとする純銀又は銀系材料を用いることができる。
【0053】
銀−ガラス複合体は、ガラスを、約10〜約40重量%、より好ましくは15〜30重量%含むことが好ましい。ガラス10重量%は、セパレータに適切なシール特性を付与するために必要な下限値であり、40重量%を超えると、複合体に所望の導電性を付与するための銀の量が十分ではなくなるからである。複合体中の銀とガラスの比率を、セパレータ本体のCTEと最も一致するように調整することは可能であるが、複合体の最大の利点は、セパレータの膨張と伸縮とともに変形しかつ導電性を有することにある。
【0054】
銀−ガラス複合体中の銀とガラスの混合物は、種々の適切な方法を用いて作製することができ、例えば、ガラス粉と銀粉とを混合する方法、ガラス粉を銀塩と混合する方法、ゾル・ゲルガラス前駆体と銀粉又は銀塩とを混合する方法等を挙げることができる。又は、例えば、以下で説明するように、ガスセパレータ本体にガラス粒子を充填した後、銀又は銀塩をガラスマトリックスに導入する方法がある。複合体材料をその後焼成する。銀塩の好ましい例は、硝酸銀である。好ましい例では、粒径が5〜75μmである銀粉とガラス粉を用いる。好ましいバインダーは、例えば、有機スクリーン印刷媒体又はインクである。材料を混合し塗布した後、焼成する。
【0055】
以上説明したように、複合体の銀には市販純度(純度が99.9%より大きい)で、実施例えば銀合金等の銀を主成分とする材料混合物を用いることができる。
【0056】
燃料電池の運転温度が約900℃を超えない場合、例えば800〜900℃である場合、ガラスマトリックスには銀を単独で用いることが好ましい。ガラスの表面で銀のイオン交換がいくらか起こり、銀とガラスとの結合を促進し、界面の応力を拡げることができる。また、ガラスマトリックスと混合するに先立って、前述の1以上の合金金属を銀と結合させることができる。もし、高融点の金属又は金属群が、銀合金の界面におけるガラスとのイオン交換による結合を過度に減少させる場合には、銅等の低融点金属を用いることができる。
【0057】
種々の組成のガラス組成物を、銀−ガラス複合体に用いることができる。ガラス組成物は、燃料電池用ガスセパレータが使用される温度及びクールダウン速度では、結晶化に対しては安定である必要がある(例えば、40%より少ない体積結晶化率)。ガラス組成物は、予定される燃料電池の運転温度、例えば70〜1100℃、好ましくは800〜900℃においては、粘度変化が小さいことが好ましい。予定される最大温度においては、ガラスの粘度が、自重によりセパレータから流れ出す程度まで低下しないようにすべきである。
【0058】
ガラスは、発煙成分を含まないことあるいは少ないこと(例えば、10重量%未満)が好ましく、例えば、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化亜鉛は含まないことが好ましく、酸化ナトリウムと酸化硼素は含まないことあるいは少ないことが好ましい。好ましい燃料電池運転温度である800℃〜900℃における少なくとも100℃の温度範囲において、粘度変化が小さいガラスの種類としては、一般に、SiOを55〜80重量%含む高シリカガラスを挙げることができる。そのガラスは、比較的小さいCTEを有する。
【0059】
特にジルコニア製のガスセパレータ本体に適した、その高シリカガラスの組成の好ましい例、さらにはより好ましい例は、表1にガラスタイプ1として記載されている。
【0060】
【表1】

【0061】
導電性材料の複合体を、いくつかの適切な方法を用いて貫通部に導入することができる。例えば、ガラスの粉末又は粒子を貫通部に導入した後、銀塩溶液又は銀材料の非常に微細なサスペンションを、セパレータ本体の片面又は両面に液体塗布することにより、毛細管力等によりガラス粒子を通って貫通部に吸い込まれる。また、溶液又はサスペンションを貫通部に注入することもできる。より好ましくは、バインダーを含むガラス粉末と銀材料粉末との混合物を、少なくとも貫通部の一部を充填するために、例えばスクリーン印刷又はステンシル印刷により、セパレータ本体の片面又は両面の上に印刷する。その後、混合物を、ガラスを溶融させるために加熱し、最終的には銀を焼結する。溶融したガラス−銀複合体は、貫通部を流動して、貫通部をシールする。好ましい加熱/焼成温度は、ガラスの組成と銀材料に依るが、銀が蒸発し過ぎないようにガラスを最適溶融するためには、純銀を含む高シリカガラスマトリックスの場合、650〜950℃が好ましい。
【0062】
セパレータ本体の材料に、ジルコニア等のイオン伝導体を用いる場合の問題点は、酸素イオンがカソード(酸化剤)面からアノード(燃料)面へと、セパレータ本体を通って移動することである。セパレータのアノード面に酸素イオンが存在すると、燃料電池の電圧とは逆の極性を持った電圧が発生し、燃料電池アセンブリーで発生する出力電圧を低下させる。この問題を抑制するため、アノード面コーティング層が、導電性材料からなる各経路における開口部を除く、全電極接触領域に延在し、イオン伝導性のセパレータ本体と接触するイオン障壁層を含むことが好ましい。各銀用障壁パッチが、導電性材料からなる各経路に直接積層される場合、本発明の第1の態様によれば、イオン障壁層は銀用障壁パッチに部分的に積層されることが好ましい。これにより、各銀用障壁パッチの端部が押さえられる結果、導電性材料からなる経路から銀用障壁パッチを通って、セパレータ本体のアノード面へとガスが漏れるリスクを軽減することができる。
【0063】
イオン障壁層の第1の目的は、セパレータ本体の材料を通って酸素イオンがセパレータのアノード面に漏れることを防止することであるので、イオン障壁層をあまり厚くする必要はない。厚さは、5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。
【0064】
イオン障壁層に好ましい材料には、チタニア、アルミナそしてガラスが含まれる。ガラスは結晶性である必要があり、イオン障壁層とセパレータ本体のCTEが実質的に同じになるように、2つの結晶性ガラスを適切な比率で含む化合物を用いることが好ましい。適切な結晶性ガラスの組成物は、表1にガラスタイプ2として説明されている。
【0065】
本発明の第2の態様に従いガスセパレータ本体のアノード面上に前述の導電性基層を設け、そしてその材料の燃料に対する触媒活性が低い場合、セパレータ本体がイオン伝導体で作製されている場合であっても、セパレータ本体を通って酸素イオンは伝導しないので、イオン障壁層は必ずしも必要ではない。これには、例えば、導電性基層が銀又は銀化合物が作製されている場合が相当する。
【0066】
カソード面には、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路が1以上あり、好ましくはこれらすべてが、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路部分と隣接するカソード面構造体との間の電気抵抗を低減させるための拡大された頂部を有することが好ましい。拡大された頂部は、隣接する、セパレータ本体を貫通する経路部分の断面積の最大で100倍の断面積を有することが好ましく、厚さは50〜200μm、より好ましくは100〜150μmである。一例として、セパレータ本体の貫通部の直径は0.35mmで、導電性材料からなる各経路のカソード面上の頂部は直径が約2.5〜3mmである。最も好ましくは、カソード面の頂部が、隣接する、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路部分と同じ材料で作製され、それと一体化されていることである。
【0067】
アノード面の導電性材料からなる各経路に必要に応じて設けた拡大された頂部の場合とともに、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路についての言及は、カソード面における好ましい拡大された頂部についての言及も含むものと理解されるべきである。
【0068】
カソード面用集電体層は、セパレータ板の表面の面方向に電流を流すことにより、導電性材料からなる経路を隣接するカソード面構造体と接続するとともに、ガスセパレータの表面の面方向に熱を移動させることが必要であり、それにより、熱変動によりもたらされたガスセパレータの応力を最小限に抑制する。また、種々の機械的応力が加わらないようにカソードを集電体層に接触させるために、隣接する燃料電池カソード構造体に高さを変化可能な部分を設け集電体層の中に埋め込むようにすることが好ましい。カソード面用集電体層の厚さは50〜180μm、より好ましくは80〜150μmである。
【0069】
固体酸化物燃料電池の運転条件で、カソード面集電体層が上記の機能を果たすには、材料として、銀、金、白金、そしてパラジウムを、単独又は2種以上の合金として用いることが好ましい。好ましい材料としては、純度が99.9%より大きく、粒径が5〜75μmの銀粉を焼結した銀である。焼結後に得られる構造体は、所望のコンプライアンスを確保するために、密度を非常に大きくする必要はなく、そして空孔形成剤、好ましくはPBMAを銀粉と混合し、銀を焼結することにより、所望の空孔を有する銀構造体を得ることができる。空孔形成剤は、銀に対し、10〜30重量%、好ましくは15〜20重量%を用いる。また、隣接するカソード部材に対しあまりコンプライアンスが必要でない場合には、選択した材料の箔を用いてカソード面用集電体層を作製することができる。カソード面集電体層の空孔度は10〜50体積%が好ましい。
【0070】
カソード面用集電体層は、セパレータ本体のカソード面上の全電極接触領域にわたり延在することが好ましい。また、カソード面用集電体層は、セパレータを貫通する導電性材料からなる各経路にそれぞれ開口部を有することが好ましく、集電体層は、延在して経路部分に隣接し、その隣接する経路部分に接触するか、あるいは隣接する経路部分に部分的に積層される。導電性材料からなる経路の少なくとも一つを通って酸素が拡散するのを抑制するために、カソード面の導電性材料からなる少なくとも1つの経路に、より好ましくはそれぞれの経路に、密に接触して封止するようにその上に各シール用パッチを、設けることが好ましい。以下の変形実施例では、シール用パッチ材料が導電性である場合、カソード面用集電体層を、導電性材料からなる少なくとも1つの経路に接触させたり、あるいは積層する必要はない。
【0071】
各シール用パッチの厚さは最大150μmであり、厚さは、作製に用いる材料と、カソード面でセパレータ本体の導電性材料からなる経路へ酸素が接近するのを阻止することができる能力による。
【0072】
シール用材料の一つはガラスであり、好ましくは、表1のガラスタイプ1,4又は5の粘稠ガラスである。ガラス製のシール用パッチの厚さは、例えば75〜150μm、好ましくは100〜140μmである。そのシール用パッチ材料は、非導電性であり、そのため、カソード面用集電体層は、例えば、シール用パッチの端部の周囲で導電性材料の経路と接触する必要がある。この配置では、各シール用パッチは、前述のカソード面用集電体層の中の開口部の一つの中に設けることができ、あるいは集電体層は連続層としてシール用パッチを超えて延在することもできる。
【0073】
別の例として、シール用パッチが導電性である場合には、カソード面用集電体層が導電性材料からなる経路に直接接触する必要はなく、各シール用パッチは、導電性材料からなる各経路を越えて、経路の周囲のセパレータ本体と結合することができる。導電性材料からなる経路との部分的な重なりは、例えば、0.3〜1mmの範囲である。この例に用いるシール用パッチの材料を、カソード面用集電体層の中の前述の開口部の一つの中に設けることもでき、あるいは集電体層を連続層としてシール用パッチの上まで延在させることもできる。
【0074】
この例では、シール用パッチ材料に、適切な金属として、好ましくは、白金、金、パラジウム、そしてロジウムからなる貴金属を1種以上含むガラス組成物を用いることができる。表1のガラスタイプ1,4,5のいずれもこのガラス組成物に用いることができる。ニッケルを、白金、金、パラジウム、そしてロジウムの1種以上で置換した以外は、本明細書で導電性のニッケル/ガラスの銀用障壁パッチについて記載したと同様の方法を用いてその組成物を製造することができる。
【0075】
また、この例では、シール用パッチは、カソード面の導電性材料からなる各経路の拡大された頂部に形成された非常に薄いコーティング膜であり、好ましくは厚さは約1μmである。そのコーティング膜に適した材料としては、錫とロジウムである。
【0076】
別の例では、導電性材料からなる経路を通って、ガスセパレータのカソード面から拡散する酸素のリスクは、セパレータ本体とカソード面用集電体層との間の酸素障壁層からなるカソード面コーティング膜により軽減することができる。カソード面酸素障壁層の特徴は、本発明の第2の態様におけるガスセパレータのアノード面ガス障壁層について説明したものから選択することができる。特に、カソード面酸素障壁層がガラスから形成されていることが好ましく、最も好ましくは2層のガラスから形成され、それぞれが粘稠ガラスと結晶性ガラスであり、かつ自身を貫通する比較的導電性の材料からなる通路を有しており、その通路はすべてセパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路に対して位置をずらして形成されている。セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路に対し、酸素障壁層を貫通する比較的導電性の材料からなる通路を位置をずらして形成することにより、酸素の潜在的な拡散経路を長くすることができる。
【0077】
セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路と、カソード面酸素障壁層を貫通する導電性材料からなる通路との間の導電性を高くするために、カソード面コーティング膜は、セパレータ本体と酸素障壁層との間に設けた導電性基層からなる。カソード面の導電性基層は、カソード面上のセパレータ本体の電極接触領域の全域にわたり延在する必要があり、セパレータ本体の表面の面方向への熱移動を可能にして、温度変化によりセパレータ本体に加わる応力を軽減する。カソード面の導電性基層の厚さは、20〜100μm、より好ましくは40〜80μmである。
【0078】
カソード面の導電性基層の材料は、金、白金、パラジウム、そして銀のいずれか単独、又はそれらの2種以上の合金、又は適切な適合材料を含むそれらの1種以上の合金から選択することができる。一般に好ましい材料は、純度が99.9%より大きく、粒径が5〜75μmである粉末を焼結した銀である。また、銀/ガラスを用いることもでき、それは、セパレータ本体を貫通する経路を構成する導電製材料について前述したものと同様のものである。ガラスは、粘稠で、表1のガラスタイプ1,4,5から選択することができる。その銀/ガラス複合体からなるカソード面の基層は、カソード面において、導電性材料からなる経路の拡大されたすべての頂部の少なくとも一部を置換することができる。
【0079】
カソード面の酸素障壁層を貫通する通路に用いる比較的導電性の材料は、好ましくは、カソード面の導電性基層又はカソード面用集電体層、又はその両方である。
【0080】
セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路中の銀を通って、酸素がカソード面からアノード面に拡散し、アノード面で水素と反応する、という問題を軽減するための3つの方法をここで説明する。すなわち、1)セパレータ本体とアノード面用集電体層との間のアノード面上にガス障壁層を設け、その障壁層は、ガス障壁層を貫通する開口部であって、酸素の拡散経路を長くするために、導電性材料からなる経路に対して位置をずらして形成された比較的導電性の材料を含んでいる、2)セパレータ本体とカソード面用集電体層との間のカソード面上に酸素障壁層を設け、その障壁層は、ガス障壁層を貫通する開口部であって、酸素の拡散経路を長くするために、導電性材料からなる経路に対して位置をずらして形成された比較的導電性の材料を含んでいる、3)カソード面の導電性材料からなる経路の少なくとも一つの上にかつ密に接触して封止するように、各シール用パッチを設ける。
【0081】
これらの3つの方法を、別々にあるいはそれらの2つ以上を組み合わせて用いることもできる。しかしながら、本発明の第1と第2の態様の一方又は両方において、その3つの方法をそれぞれガスセパレータに使用していることを既に記載しているが、それは、ガスセパレータのアノード面に銀が拡散するのを防止するためにそれぞれ銀用障壁パッチを取り付けたガスセパレータに関するものである。本発明の第1及び第2の態様に依らずとも、上記の3つの方法の1以上の方法を2つの固体酸化物燃料電池用のガスセパレータに用いることができ、それにより、導電性材料からなる経路中の銀を通って酸素が拡散する問題を軽減できることが理解できるであろう。
【0082】
よって、本発明の第3の態様では、2つの固体酸化物燃料電池の間に使用する燃料電池用ガスセパレータが提供され、そのガスセパレータは、アノード面と、カソード面と、該セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路とを有し、該導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体と、アノード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、カソード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、を有するものであって、1)セパレータ本体と各集電体層との間のアノード面とカソード面の一方又はそれぞれの上に形成された酸素ガス障壁層と、2)カソード面の、導電性材料からなる材料からなる各経路の上に形成され、各経路と密に接して封止する各シール用パッチの一方又は両方を有している。
【0083】
本発明の第3の態様においては、ガスセパレータのガス障壁層及び/又はシール用パッチは、本発明の第1及び/又は第2の態様に関して記載されたそれら部材の特徴のいずれを含むこともできる。また、本発明の第3の態様におけるガスセパレータは、本発明の第1及び/又は第2の態様に関して記載されたガスセパレータについての1以上のいずれの付加的な特徴を含んでもよく、本発明の第1と第2の態様の記載はその通りに解釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、一般的な固体酸化物燃料電池のガスセパレータ用プレートと、結合した固体酸化物燃料電池用プレートを示す分解斜視図の一例である。
【図2】図2は、図1のガスセパレータ用プレートの上からの平面図の一例である。
【図3】図3は、図1と図2の本発明のガスセパレータ用プレートの一例を示す部分断面図の一例であり、図2のA−A線での断面であり、部分断面図に示すように2つの燃料電池用プレートにより挟まれている。
【図4】図3のガスセパレータ用プレートの模式的なスケール無しの部分拡大図の一例である。
【図5】図1と図2のガスセパレータ用プレートの第2の例についての部分断面図の一例であり、図2のA−A線断面におけるものである。
【図6】図5のガスセパレータ用プレートの模式的なスケール無しの部分拡大図の一例であり、その変形例を示している。
【図7】図6のガスセパレータ用プレートの変形例を示すものであり、模式的なスケール無しの部分断面図の一例である。
【図8】図3のガスセパレータ用プレートの部分断面図と同様の図であり、カソード面の変形例を示している。
【図9】図8のガスセパレータ用プレートの模式的なスケール無しの部分拡大図の一例であり、カソード面の変形例を示している。
【図10】図4と同様の図であり、ガスセパレータ用プレートのアノード面の変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明の固体酸化物燃料電池用ガスセパレータの種々の例について、添付の図面の実施例を用いて説明する。
【0086】
図1は、ガスセパレータ用プレート12の上に積層された固体酸化物燃料電池用プレート10を示している(分解状態で)。使用時には、プレート10と12は、対向状態で接触し、燃料電池用プレート10とガスセパレータ用プレート12とが交互に積層されて、固体酸化物燃料電池アセンブリーを形成する。
【0087】
プレート10と12は、上からの斜視図で示しており、燃料電池用プレート10の上の電解質層16の上に視認できるカソード層14を有している。電解質層16は、燃料電池用プレート10の全直径の領域に延在しているのに対し、カソード層14はプレートの中央部分のみの領域に延在している。カソード層14に対応するアノード層(不可視)は、燃料電池用プレートの裏面(図面の)に設けられている。ガスセパレータ用プレート12は、図2の平面図にも示されている。
【0088】
燃料電池用とガスセパレータ用のプレート10と12は、一般に円形状であり、燃料導入用開口部18、対向する燃料排出用開口部20、最終の導入用開口部の反対面上の空気導入用開口部22とそれにそれぞれ対向する空気排出用開口部24とが内部にマニホールド用の孔として形成されており、プレートを積層する際にはそれぞれが位置決めされてマニホールドを形成する。燃料電池用プレート10では、これらの開口部は、電解質層16を貫通させて形成するが、カソード層14とアノード層16を配置する中央部分から外側の電解質層16に形成する。ガスケット型のシール26と28は、それぞれ、各燃料電池の上面(図面の)とガスセパレータ用プレート10と12の上に設ける。ガスケット型のシール26と28は、ガラス組成物又はガラス複合体を用いて容易に作製することができる。
【0089】
シール26は、空気導入用開口部22と結合した空気導入用ポート30と、空気排出用開口部24と結合した空気排出用ポート32を有しており、カソードと隣接するガスセパレータ用プレート(不図示)との間のカソード層14を横切って空気が流れるのを可能にしている。シール26は、燃料導入用開口部18と排出用開口部20の周囲をすべて囲むように延在しており、燃料電池用プレート10に燃料が流れ出すのを防いでいる。
【0090】
それに対応して、ガスセパレータ用プレート12上のシール28は、空気導入用開口部22と空気排出用開口部24の周囲をすべて囲むように延在しているが、燃料導入用開口部18と燃料排出用開口部20についてはその外側のみに延在しており、その理由は、燃料ガスが燃料導入用開口部18から流入し、燃料排出用開口部20を通って排出される前に、燃料電池用プレート10と隣接するガスセパレータ用プレート12との間のアノードを横切るようにポートを位置決めする必要があるからである。
【0091】
各電極を横切るように反応ガスを供給し、そして燃料電池スタックのすべてのプレート10と12を少なくとも支持できる手段(図1と2には不図示)を設けることができる。その手段として、ガスセパレータ用プレート12又は燃料電池用プレートの上に導電性表面を形成する方法がある。また、プレート10と12の間の別部材(不図示)、例えばメッシュ又は波形構造体を用いてガスを供給することもでき、それらは集電体としても機能する。供給手段としては、図3に記載されているように、アノード層とカソード層の上の短柱の形状が好ましい。
【0092】
燃料電池用プレート10のカソード層14の材料は、多孔質であるランタンストロンチウムマンガネート等の導電性ペロブスカイトが好ましく、アノード層は、多孔質のニッケル−ジルコニアサーメットで作製することが好ましい。
【0093】
燃料電池用プレート10の電解質層16は、密度が十分に高いイットリア安定化ジルコニアであり、例えば、2〜15重量%のアルミナで強化された3Y、8Y又は10Yを用いることができるものであり、電極層を超えて延在し、自身を貫通するマニホールド用の孔である燃料と空気の導入用及び排出用の開口部を形成する一方、シール26を支持し、さらにガスセパレータ用プレート12上にシール28のための接触用表面を提供する。
【0094】
ガスセパレータ用プレート12は、燃料電池用プレート10と同様の側面を有し、燃料電池の電解質層16のCTEと少なくとも実質的に一致するように、十分に密度が高いジルコニアを用いて作製する。好ましい例として、プレート12のジルコニア本体の厚さは150μmである。ガスセパレータ用プレート12のジルコニアも、イットリア安定化ジルコニアであり、最大20重量%のアルミナで強化されたものである。一般的に、ガスセパレータ用プレート12と電解質層16の両方に好ましい材料は、10%イットリアで安定化され、2〜15重量%のアルミナで強化されたジルコニアである。
【0095】
ジルコニアは導電性ではなく、ガスセパレータ用プレート12の役割の一つが、スタックを通して一の燃料電池から隣の燃料電池へ電流を流すことであるので、ガスセパレータの中央平面部分又は電極接触領域36の厚さ方向を貫通して、複数の導電性のフィードスルー(feedthroughs)34(図1と図2に模式的に示している。)を設けており、ここで、ガスセパレータの中央平面部分又は電極接触領域は、その形状と大きさが、燃料電池用プレート10の電解質層16の中央部分に設けた隣接する電極に対応しており、直径は約80mmである。フィードスルー34は、プレート12を貫通する実質的に垂直な貫通部の中に充填された銀又は銀含有材料からなる。各フィードスルー34は、図2に模式的に示しているように、カソード面とアノード面にそれぞれ、拡大された頂部を有している。ガスセパレータ用プレート12を貫通するフィードスルー34は、視認できるように記載されているが、本発明では、それらは、以下の例で記載するように、各面上の電極接触領域36を横切る1以上の層により覆われている。そのため、図1と図2は、ガスセパレータ用プレート12を一般的に示している。
【0096】
図に示したように、ガスセパレータ用プレート12の電極接触領域36には19個のフィードスルー34があり、電極接触領域の中心に1個が配置され、6個と12個の列が、互いに等間隔に離間して、中心の周りにそれぞれ同心円状に配置されている。好ましい例では、フィードスルー34を設けたプレート12を貫通する貫通部は、直径が0.35mmであり、フィードスルーの材料は、ガラス中に80重量%の銀を含む複合体であり、導電性とガス不透過製とのバランスを確保している。銀は、市販純度であり、ガラスは、表1のガラスタイプ1のより好ましい範囲にもとづく組成を有する。
【0097】
フィードスルーは、粒径が100μmより小さく、平均粒径が13〜16μmである粉末状のガラスと、粒径が450μmより小さい市販純度の銀金属粉をバインダーとともに機械的に混合して調製される前駆体混合物から作製する。好ましいバインダー系は、ブランド名がセルデック(Cerdec)とデュラマックス(Duramax)として入手できる、スクリーン印刷用インクを用いることができる。前駆体混合物をセパレータ本体の片面又は両面にスクリーン印刷し、貫通部を少なくとも部分的に充填するようにする。次に、混合物を加熱してガラスを軟化させ、最終的に銀を焼結する。溶融したガラス−銀複合体は、貫通部に流入してそれらをシールする。高シリカガラスマトリックス中の純銀に対して適切な加熱/焼成温度は、銀が過度に蒸発するのを抑制してガラスを最適に軟化させるためには、最大で950℃である。前述のように、フィードスルー34は、アノード面とカソード面に拡大された頂部を有しており、これらについては図3と図4を参照して詳細に説明する。
【0098】
図3は、フィードスルー134を有する本発明のガスセパレータ用プレート112の一部が、上側と下側の燃料電池用プレート110との間に挟まれている状態を示している。燃料電池スタックでは、このパターンが多数繰り返されている。
【0099】
各燃料電池用プレートは、電解質層116,カソード層114,そしてアノード層115を含み、それぞれ図1に記載されている。各燃料電池用プレート110は、カソード面には規則的に離間配置された導電性の低い柱138と、アノード面には対応するように向かい合って配置された導電性の低い柱140を有している。カソード面の柱138は、カソード材料と同様にぺロブスカイト材料で形成され、アノード面の柱140はアノード材料と同様にニッケル/ジルコニアサーメットで形成されている。柱はステンシル印刷を用いて各電極材料の上に配置されている。通常、柱の高さは、約200〜500μmであり、ガスセパレータ用プレート112に接することにより、下側の燃料電池用プレート110とガスセパレータ用プレート112との間に柱138を囲むように酸化剤ガス流路142を形成し、ガスセパレータ用プレートと上側の燃料電池用プレート110との間には柱140を囲むように燃料ガス流路144をそれぞれ形成している。図に示すように、低い柱の直径は約3mmであるが、柱自身は本発明のいかなる部分を構成するものでもないことが理解されるであろう。
【0100】
図3と4に示すように、ガスセパレータ用プレート112のジルコニアからなるセパレータ本体146は、自身を貫通し、フィードスルー134が設けられている各貫通部148を有している。各フィードスルー134は、各貫通部148を完全に充填して封止する一方、カソード面には同じ材料からなり一体化されている、拡大された頂部150を有している。一例として、一体化された頂部150の厚さは約120μm、直径は約3mmである。拡大された頂部150は貫通部148の周囲でガスセパレータ本体146に付着し、ガス流から貫通部148をシールし、かつフィードスルー134とカソード面用集電体層152との間の接合の電気抵抗を低減させることに寄与している。
【0101】
カソード面用集電体層152は、カソード面の電極接触領域36の全面に延在し、かつ多孔質の銀で形成されており、カソード面のセパレータ用プレートの表面の面方向に電流を流して、隣接する燃料電池用プレート110の上の柱138にフィードスルー134を接続する一方、温度変化によりセパレータに発生する応力を最小化するためにセパレータ用プレートの表面の面方向に熱が伝導できるようにしている。
【0102】
一例として、カソード面用集電体層152は、通常厚さが約120μmであり、集電体層自身の多孔性と相まって、ある程度のコンプライアンスを付与しており、それにより柱138が集電体層の中に埋め込まれる結果、それら柱の高さが若干異なっている場合であっても、セパレータ本体146に機械的応力を加えることなく、柱は集電体層に接触することができる。しかしながら、カソード面用集電体層152は、その厚さは薄くなると拡大された頂部150の上に突き出る。
【0103】
集電体層152は、粒径5〜75μmの市販純度の銀粉と、バインダーとして15〜20重量%のPBMAと、粉体の焼結時に燃焼する空孔形成剤とから製造することができ、これにより、空孔度が10〜50体積%の層が得られる。
【0104】
アノード面では、拡大された頂部154は貫通部148の周囲でセパレータ本体146のアノード面に付着し、フィードスルー134と、その下の、ガスセパレータ112のアノード面コーティング層112との間の電気抵抗を低減する。しかしながら、頂部は市販純度の銀で形成されているので、貫通部148のフィードスルー134の部分とは一体化することができない。好ましい例では、拡大された頂部154の厚さは約40μm、直径は約2mmである。その大きさを、カソード面の拡大された頂部150よりも小さくすることができる。その理由は、頂部150に比べ、その導電性が高いからである。
【0105】
フィードスルー134のアノード面の拡大された頂部154に銀を用いることの問題は、固体酸化物燃料電池の運転温度では銀は蒸発しやすく、そして移動しやすいため、銀と接触することにより、隣接する燃料電池110のアノード115の改質機能が低下することである。これを低減するため、個々の銀用障壁パッチ156をフィードスルーのアノード面の拡大された頂部154に直接積層し、拡大された頂部の周囲でセパレータ本体146のアノード面を封止し、これにより、フィードスルー(拡大された頂部を含む。)からセパレータ用プレート112のアノード面に銀が漏れるのを抑制することができる。高温の燃料電池運転温度で酸素がフィードスルー134を通って拡散しても、銀用障壁パッチ156がアノード面への酸素の漏れを抑制することができる。
【0106】
銀用障壁パッチ156は、フィードスルー134からアノード面用集電体層158に電流を流すために、導電性である必要がある。銀用障壁パッチ156のすべての機能を果たすための材料は、導電性と銀をブロックすることとのバランスをとるために、10〜30重量%のニッケルを含む焼結粉から作製したニッケル/ガラス複合体が好ましい。ニッケル粉は市販純度で、粒径が5〜75μmのものである。ガラス粉は、粘稠タイプで、表1のガラスタイプ1,4,5のいずれかから選択された組成のものである。各銀用障壁パッチの厚さは、約100μmで直径は約3mmである。
【0107】
イオン障壁層160は、アノード面のガスセパレータ本体146と集電体層158との間に配置されている。イオン障壁層は、集電体層158の下の電極接触領域36全体に延在するが、拡大された頂部154と概ね同じ直径を有する開口部164をフィードスルー134のアノード面上に形成するために、イオン障壁層が銀用障壁パッチ156と162で重なっているフィードスルー134の部分は除く。
【0108】
イオン障壁層160は、セパレータ用プレートの熱膨張係数と同じ熱膨張係数を与えるように比率を調整した2種の結晶性ガラスの化合物から製造する。好ましい結晶性ガラス組成物は、表1のガラスタイプ2と3に記載されているものである。結晶性ガラスは、粘稠ガラスに比べ、隣接するガスセパレータ層との反応性が非常に低く安定である。
【0109】
イオン障壁層の機能は、セパレータ本体のジルコニアがイオン伝導性の場合、セパレータ本体146からアノード面への酸素イオンの拡散を防止することである。各フィードスルーに設けられたイオン障壁層の重なり部162は、セパレータ本体とパッチ156との間のフィードスルーの拡大された頂部154からの材料の漏れを最小限に抑制するために、銀用障壁層の端部を封止する役割も有する。
【0110】
アノード面用集電体層158は、電極接触領域36の全面に延在しており、セパレータ用プレート112の表面の面方向に電流を流し、フィードスルー134と積層された銀用障壁パッチ156を、隣接する燃料電池110上の導電性の、アノード面の柱140に接続する。集電体層158は、温度変化によりセパレータ用プレートに発生する応力を最小限に抑制するために、セパレータ本体の表面の面方向に熱を伝導させる機能も有する。
【0111】
アノード面用集電体層158は、市販純度の粒径が5〜75μmである焼結ニッケル粉を用いて作製する。その厚さは通常約50μmで、各フィードスルー134ではそれより薄くする。
【0112】
アノード面用集電体層158に積層するアノード面用変形可能層166は、ガスセパレータ用プレート112に機械的応力を加えることなく、アノード面用柱140を変形可能層の中に埋め込むことを可能にしている。一般に、柱140は、集電体層に接触する程度まで深くは変形可能層の中に埋め込まれることはないので、変形可能層は、集電体層158と、隣接する燃料電池110の柱140との間にも電流を流す必要がある。
【0113】
変形可能層166の厚さは約150μmで、焼結ニッケル粉を用いて作製する。ニッケル粉は市販純度で、粒径が5〜75μmのものである。それを15〜20重量%のPBMAと混合するが、PBMAは空孔形成剤であり、その混合物を焼成すると多孔質のニッケル構造体が得られ、それは速やかにのこぎり状(indented)にされる。
【0114】
以下の記載は、図3と4に記載されたガスセパレータの変形実施例に関するものであり、同様の部材については、100番台以外の対応する符号を用いるか、又はいくつかのケースではプライム””を用いて区別している。これらの部材は、同様の機能と構造を有しているので、簡単のため、図3と4の実施例の対応する部材と異なる点についてのみ記載する。
【0115】
図5は、ジルコニアのセパレータ本体246を有するガスセパレータ用プレート212を示しており、セパレータ本体は自身を貫通する貫通部248を有し、その貫通部はそれぞれフィードスルー234で封止されている。各フィードスルーは、カソード面には一体の拡大された頂部250を有し、アノード面には別体の銀からなる拡大された頂部254を有している。
【0116】
カソード面において、集電体層252とカソード面用集電体層152との違いは、集電体層252が、フィードスルー234の拡大された頂部250の上に積層されず、その代わり、拡大された頂部にまで延在し、接する点にある。カソード面では、ガラスのシール用パッチ268が積層され、拡大された頂部250が封止される。そのパッチの厚さは約120μm、直径は約3mmであり、カソード面用集電体層252の上にも一部が重なっている。シール用パッチ268は、カソード面の酸素がフィードスルーの銀に近づくのを防止することにより、フィードスルー234のガス不透過性を向上させる。シール用パッチのガラスは、粘稠であり、表1のガラスタイプ1と4のような組成を有することが好ましい。
【0117】
アノード面において、銀用障壁パッチ256は、フィードスルー234の拡大された頂部254の上に直接積層されない。そのため、パッチは拡大された頂部254と直接には接触していない。その代わり、イオン障壁層260が拡大された頂部254にまで延在し、接しており(図6にはより明確に示されている。)、アノード面用集電体層258は、フィードスルーでは拡大された頂部254に直接積層され、フィードスルー以外ではイオン障壁層260に直接積層されている。
【0118】
銀用障壁パッチ256は、フィードスルーの拡大された頂部254に積層されるが、パッチは、拡大された頂部に対して位置決めされており、アノード面用変形可能層266を貫通する穴270の中の集電体層258の上に支持されている。銀用障壁パッチの直径は3mmであるが、穴270の直径は4mmである。そのため、銀用障壁パッチの周囲すべてに、銀用障壁パッチ256と変形可能層266との間に空隙がある。
銀用障壁パッチ256の厚さは、銀用障壁パッチ156と同様に約100μmにしてもよく、あるいは、使用時に隣接する燃料電池と接触しないのであれば、それよりも大きくすることができる。図では、銀用障壁パッチ256の厚さは約200μmである。
【0119】
わずかに薄い銀用障壁パッチ256’を図6に示すが、それ以外は、ガスセパレータ212’のアノード面は、図5のガスセパレータ212のアノード面と同じである。また、図6のガスセパレータ用プレート212’のカソード面は、カソード面用集電体層252’が272において拡大された頂部の上に一部積層され、カソード面の封止を向上させるために、シール用パッチ268’が、集電体層252’の隣接部分と拡大された頂部250だけでなく、環状の重なり部272の上にも積層された以外は、ガスセパレータ用プレート212のカソード面と同じである。シール用パッチ268’は、断面T型であり(図6では上下逆である。)、Tの足の部分は、環状の重なり部272の内部にあり、直径は約2mmである。
【0120】
図7は、図5の別の変形例を示しており、アノード面における唯一の違いは、フィードスルー234の拡大された頂部254’’が球状であることである。しかし、カソード面では、フィードスルーの一体化された、拡大された頂部250’’も球状であり、シール用パッチ268’’はその上に直接積層され、拡大された頂部の周縁の回りで、セパレータ本体246のカソード面を封止する。これにより、カソード面用集電体層252’’がフィードスルー234に直接接触することがないので、シール用パッチ268’’の材料には導電性が必要である。好ましい材料は、白金/ガラス複合体であり、白金を50〜90重量%含むものである。ガラスは粘稠タイプであり、前述のフィードスルーの銀/ガラス複合体と同様の組成を有するものである。導電性のシール用パッチ268’’は、前述の金属/ガラス複合体と同様の方法を用いて作製することができる。白金/ガラスシール用パッチ268’’は、フィードスルー234の銀を通ってカソード面から酸素が拡散してくるのを確実に抑制するために、厚さは60〜120μmが好ましい。カソード用集電体層252’’は、フィードスルーの拡大された頂部250’’とシール用パッチ268’’の全面に延在している。
【0121】
図8では、ガスセパレータ本体346、フィードスルー334、そしてガスセパレータ用プレート312のアノード面は、図3と4に記載した、ガスセパレータ本体146、フィードスルー134、そしてガスセパレータ用プレート112のアノード面とそれぞれ同じである。そのため、アノード面では、拡大された頂部354、銀用障壁パッチ356、集電体層258、重なり部362を有するイオン障壁層360、そして変形可能層366は、図3と4の対応する部材154、156、158、160、162、そして166と同じであるので、さらなる説明は省略する。
【0122】
ガスセパレータ用プレート312のカソード面では、フィードスルー334の一体化された、拡大された頂部350は、図3と4のガスセパレータ用プレート112の対応する部分150と同じである。しかし、カソード面用集電体層352は、ガスセパレータ本体346及び拡大された頂部350とは離れて配置されており、間には集電体基層374と、2つのガラス層376と378からなるガス障壁層とが存在する。
【0123】
ガス障壁層は、カソード面の酸素がフィードスルー334に到達し、フィードスルーの銀を通ってアノード面に拡散する可能性を最小限に抑制するように構成されている。
【0124】
集電体基層374に最も近いガラス層376は、厚さが40μmであり、主要なガス障壁特性を発揮させるために、表1のガラスタイプ1又は4に記載された組成を有する粘稠ガラスで作製することができる。ガス障壁層の隣接するガラス層378は、厚さが約60μmで、表1のガラスタイプ2又は3に記載された組成を有する結晶性ガラスを用いて作製することが好ましい。結晶性ガラス層は、粘稠層376と集電体層352との間の相互作用を軽減するための、ガス障壁層の皮膜を提供する。
【0125】
ガス障壁層のガラスは、電気絶縁性であり、ガス障壁層は、自身を貫通し、フィードスルー334に対して位置をずらして形成された多数の通路380を有している。一例として、18個の通路380があり、それぞれの直径は約3.5mmであり(図8では寸法を示していない。)、図1と2に記載した同心円状の複数のフィードスルーの各フィードスルーからはそれぞれ約8mmだけ位置がずれている。各通路380は、各同心円の2つのフィードスルー334の間に概ね等間隔に離間して配置することができる。すべてのフィードスルー334とカソード面用集電体層352との間に十分な導電性経路を確保しながら、それら通路にそって酸素が移動するのを最小限に抑制できるのであれば、他の配置ももちろん可能である。
【0126】
フィードスルー334と通路380との間に面方向に電気と熱を流すように集電体基層374が延在しているので、ガス障壁層は、通路380を除いて電極接触領域36の全面に延在している。基層374の厚さは、ガス障壁層と同様に約70μmであり、フィードスルー334の拡大された頂部350の突出部分では薄くしている。好ましい材料は、フィードスルー334と拡大された頂部350に用いたと同様の銀/ガラス組成物を用いることができ、同様の方法を用いてフィードスルーに形成することができる。基層374とフィードスルー334の両方が銀/ガラス複合体で形成されている場合であっても、基層とフィードスルーとの間に良好な導電性を確保するためには、フィードスルーの拡大された頂部350が必要であることがわかった。フィードスルーと基層とを同時に焼成する場合には、拡大された頂部350を省略することができる。
【0127】
基層374とカソード面用集電体層352との間に伝導経路を確保するために、通路380をカソード面用集電体層352の材料で充填する。カソード面用集電体層352の通常の厚さは約120μmであり、集電体層は電極接触領域36の全面に延在する。集電体層は銀で作製することができ、その構造と作製方法は、図3と4のガスセパレータ用プレート112のカソード面用集電体層152について記載されたものと同様である。
【0128】
図9の燃料電池用プレート312’の、図8の燃料電池用プレート312との唯一の違いは、カソード面の集電体基層374’の材料である。これは、市販純度の銀のみを用いており、粒径5〜75μmの粉末を焼結したものである。基層374’の構造と作製方法は、カソード面用集電体層352よりも多孔性でないという点以外は、カソード面用集電体層352の場合と同様である。この例のカソード面のガス障壁性は、ガスセパレータ用プレート312ほど良好ではないが、銀用障壁パッチ356を設けるとともに、フィードスルー334に対してガス障壁層を貫通する通路380の位置をずらすことにより、良好なものとすることができる。
【0129】
図10のガスセパレータ用プレート412では、セパレータ本体446と、拡大された頂部450を有するフィードスルー434は、図3と4のセパレータ本体146とガスセパレータ用プレート112のフィードスルー134と同じである。また、カソード面用集電体層452と、アノード面の拡大された頂部454は、図3と4のガスセパレータ用プレート112の対応する部材152と154と同じである。
【0130】
ガスセパレータ用プレート412は、アノード面にガス障壁層484を設けた点が、これまでの例とは基本的に異なる。ガス障壁層484は、電極接触領域36の全面に延在し、フィードスルー434とアノード面用集電体層458との間に実質的にガス不透過層を形成する。ガス障壁層484は、ガラスで形成され、図示していないが、図8と9のガスセパレータ用プレート312と312’のカソード面用ガス障壁層を構成するガラス層376と378と同じ2つの層で形成することが好ましい。また、粘稠ガラス層をセパレータ本体446に近付けるという意味で、ガス障壁層484の結晶性ガラス層をガス障壁層484の粘稠ガラス層の上に積層することもできる。ガス障壁層484の構造と作製方法は、図8と9のカソード面用集電体層の構造と作製方法と同じであるので、さらに記載はしない。
【0131】
ガラスで形成されているので、ガス障壁層484は導電性ではない。したがって、ガス障壁層を貫通し、位置をずらして形成した通路486が、集電体基層784とアノード面用集電体層458との間の導電経路となる。通路486は、フィードスルー434に対して位置がずれており、大きさ、数そして配置は、図8と9のガスセパレータ用プレート312と312’に関して記載した通路380のそれと同じである。そのため、さらに説明はしない。
【0132】
集電体基層482は、電極接触領域36の全面に延在し、積層され、拡大されたフィードスルーの頂部454とガスセパレータ用プレート446を封止する。その厚さは約50μmであり、その目的は、温度変化によりセパレータ本体に発生する応力を最小限に抑制するとともに、セパレータ本体446の表面の面方向に電流を流し、フィードスルー434とガス障壁層484を貫通する電流経路486とを接続することにある。基層482には、粒径が5〜75μmの市販純度の純銀粉を焼結して作製した銀を用いる。また、基層には、前述のように、銀/ガラス複合体を用いることもできる。
【0133】
アノード面用集電体層458が、通路486の中に突出して、基層482と集電体層458との間の電流流路を提供しているという事実以外は、集電体層488は、図3,4,5,6に記載された対応する層158、258、そして258’と実質的に同じであるので、さらに説明はしない。
【0134】
当業者であれば、本明細書に記載した発明が、説明した以外の変形例や変更例が可能なことを理解するであろう。本発明が、本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲において、そのようなすべての変形例や変更例を含むということは理解されるべきである。また、本発明は、明細書において個別的にあるいは総合的に示唆又は指摘されているすべての工程と特徴、そしてそれらの2以上からなるすべての組み合わせをも含むものである。特に、図面に記載されているガスセパレータ用プレートの一例のすべての特徴は、特に記載がなくても他のすべての例についても適用可能であることは理解されるであろう。
【0135】
本明細書における先行技術(又はそれから得られる情報)あるいは公知のすべての事項についての言及は、それらの刊行物(又はそれから得られる情報)あるいは公知の事項が、本明細書の関係する分野の公知技術の一部を構成するものであることの自認又は承認又はいかなる示唆を示すものでもなく、またそのように見なすべきではない。
【0136】
本明細書及び以下のクレームにおいては、文脈において必要がなければ、「有する」という用語や、「含む」や「備える」等の変形は、示された要素又は工程あるいは示された要素群又は工程群を含むことを意味するものであり、他の要素又は工程あるいは他の要素群又は工程群を排除するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの固体酸化物燃料電池の間に用いる燃料電池用ガスセパレータであって、
該ガスセパレータは、
アノード面と、カソード面と、該セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路とを有し、該導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体と、
アノード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、
カソード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、を有するものであって、
銀用障壁パッチが、アノード面において導電性材料からなる各上記経路の上にそれぞれ重ねられ、各銀用障壁パッチは、上記経路を通って銀が拡散するのを防ぐに足る十分な密度を有する、燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項2】
少なくとも1つの上記銀用障壁パッチが、導電性材料からなる各上記経路の上にそれぞれ直接重ねられ、上記経路と接触している請求項1記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項3】
上記の少なくとも1つの銀用障壁パッチは、導電性材料からなる各上記経路の周囲においてセパレータ本体と結合し、そして導電性を有する、請求項2記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項4】
少なくとも1つの銀用障壁パッチは、導電性材料からなる各上記経路に対して位置決めされ、かつ上記経路の上に一部が重なっているが、導電性材料からなる上記経路とはアノード面コーティング層により分離されている、請求項1記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項5】
複数の固体酸化物燃料電池の間に用いる燃料電池用ガスセパレータであって、
該ガスセパレータは、アノード面と、カソード面と、該セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路とを有し、該導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体と、
集電体層を含み上記電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、
集電体層を含み上記電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、を有するものであって、
アノード面コーティング層が、さらに、アノード面用集電体層の下のガス障壁層と、該ガス障壁層とセパレータ本体との間の導電性基層とを有し、該ガス障壁層が、アノード面用集電体層と該導電性基層よりも導電性の低い材料から形成される一方、アノード面用集電体を貫通して、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる経路に対して位置をずらして形成され該導電性基層へと至る複数の高導電性通路を有するものであって、
該導電性基層は、セパレータ本体を貫通する導電性材料からなるすべての経路と、該ガス障壁層を貫通するすべての該高導電性通路とを電気的に接続する一方、
各銀用障壁パッチは、該ガス障壁層を貫通する該高導電性通路とそれぞれ結合し、各銀用障壁パッチは、上記経路を通って銀が拡散するのを防ぐに足る十分な密度を有する、燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項6】
上記ガス障壁層の材料がガラスである請求項5記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項7】
上記ガス障壁層を貫通する該高導電性通路の材料が、上記導電性基層の材料及び上記アノード面コーティング層の集電体層の材料の1種以上から選択される、請求項5記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項8】
上記導電性基層の材料が銀を含む請求項5記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項9】
上記アノード面コーティング層の材料がニッケルである請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項10】
上記アノード面コーティング層が、さらに、上記アノード面用集電体層に直接積層される最外層の変形可能層を有する、請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項11】
上記変形可能層が、空孔度が10〜50体積%であるニッケルを含む請求項10記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項12】
上記セパレータ本体の材料がイオン伝導体であり、上記アノード面コーティング層が、上記セパレータ本体と接触し、導電性材料からなる上記各経路に設けた開口部を除いて、上記電極接触領域の上に延在する、請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項13】
上記イオン障壁層の材料が、チタニア、アルミナ及びガラスから選択される、請求項12記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項14】
導電性材料からなる少なくとも1つの上記経路が、アノード面とカソード面の一方又は両方に、拡大された頂部を有する請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項15】
上記カソード面用集電体層が、変形可能であり、空孔度が10〜50体積%である、請求項請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項16】
カソード面において導電性材料からなる少なくとも1つの上記経路の上に密着して封止するようにそれぞれシール用パッチを設け、導電性材料からなる少なくとも1つの上記経路を通って酸素が拡散するのを抑制する、請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項17】
上記シール用パッチの材料が、ガラス、導電性のガラス/金属複合体、錫及びロジウムから選択される、請求項16記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項18】
上記カソード面コーティング層が、上記セパレータ本体と上記カソード面用集電体層との間に酸素障壁層を有し、
該酸素障壁層は、比較的低電導性の材料を用いて形成され、該酸素障壁層を貫通し比較的高導電性の材料から形成された通路を有しており、
該酸素障壁層を貫通する上記通路は、上記セパレータ本体を貫通する導電性材料からなる上記経路に対して位置をずらして形成されている、請求項1又は5に記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項19】
上記カソード面コーティング層が、さらに、上記セパレータ本体と上記酸素障壁層との間に導電性基層を有する、請求項18記載の燃料電池用ガスセパレータ。
【請求項20】
2つの固体酸化物燃料電池の間に用いる燃料電池用ガスセパレータであって、
該ガスセパレータは、アノード面と、カソード面と、該セパレータ本体の電極接触領域においてアノード面からカソード面へ貫通する導電性材料からなる複数の経路とを有し、該導電性材料が銀又は銀含有材料である、セパレータ本体と、
アノード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うアノード面コーティング層と、
カソード面用集電体層を含み上記電極接触領域を覆うカソード面コーティング層と、
1)上記セパレータ本体と各上記集電体層との間のアノード面とカソード面の一方又はそれぞれの上の酸素障壁層と、2)カソード面において、導電性材料からなる各上記経路の上に密着して封止するように設けた各シール用パッチの一方又は両方を有する、燃料電池用ガスセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−503157(P2010−503157A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526986(P2009−526986)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001318
【国際公開番号】WO2008/028242
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(500101988)セラミック・フューエル・セルズ・リミテッド (12)
【Fターム(参考)】