説明

複数の容器を有する反応装置のための温度制御

【課題】複数の容器を有する反応装置を正確に温度制御する装置を提供する。
【解決手段】 たとえばPCR(ポリメラーゼ鎖反応)法に用いられる熱サイクラーのような反応容器の長方形配列において、温度制御は温度ブロック11の使用により達成される。ブロックは、ペルチェ効果熱電モジュール14とブロックの端に沿って埋め込まれたワイヤ加熱部分との組合わせに接触される。加熱部分は配列にわたって一定の温度または温度勾配が得られるような態様で電圧をかけられる。さらに、個別の反応容器における温度の制御および凝縮の防止が、容器の上方に配置され、抵抗加熱を与えるためにその上面に導電性被覆を有するガラス(または他の透明材料)プレートの使用により達成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
ある化学合成は連続的反応、周期的反応、もしくは同時に起こる複合反応の使用を含む。そのような合成の著名な例はポリメラーゼ鎖反応およびリガーゼ鎖反応である。たとえば、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)はポリヌクレオチドの変性、プライマーオリゴヌクレオチドの変性ポリヌクレオチドへのアニ−ル、および変性ストランドに沿って新たなポリヌクレオチドストランドを合成するためのプライマーの伸長を含む一連の段階を伴う。方法の成功は各段階での高収率、高選択率、および制御された反応速度に頼る。収率、選択率、および反応速度は温度により変動することが多く、そして各場合において、最適温度はポリヌクレオチドの長さおよびヌクレオチド組成、ならびに反応系の酵素および他の成分の選択により変動することが多い。最適温度の決定および最適レベルでの温度の正確な制御はこれらの方法で成功を得るのに重要である。他のプロトコールおよび手順はすべて同一の温度で個別の反応容器中で同時に実施される複合反応を含む。正確さと制御がこれらの手順においてなお重要である。
【0002】
この種の制御が達成される実験装置は数多くの供給者により提示されている。典型的な装置は1つ以上の温度制御されたブロックを含み、それぞれは2次元配列で反応ウェルを含み、ブロック内のウェルの間、または異なるブロック間で試料を移動させるロボットを有しており、さらに温度を制御し、ロボットを駆動するための自動化プロセシングを有する。例は、StratageneのRoboCycler96、MJ ResearchのPTC−100 Thermal Cycler,Perkin−Elmer DNA Thermal Cycler、およびMicroPROBEのDNA Engine Thermal Cyclerである。
【0003】
2次元配列における反応ウェルの全配列にわたる温度制御は十分ではないことが多く、周辺効果(edge effects)が起ることが多い。すなわち、大気もしくは他の機器部分に比較的多くさらされたことによる外側ウェルでの温度の差異である。さらに、ウェル配列に沿う温度勾配は、反応を異なる温度もしくは異なるプロトコールで同時に実施させうるが、達成が困難である。
【0004】
さらに、上述のユニットおよび類似のユニットを欠くことは、使用者に、反応の過程においてウェル内容物を視覚的にもしくは光学的に観察させ得、それにより反応の進行のリアルタイムの検出を達成させ、そしてウェルをふたで囲って、ふたの下側に凝縮を経験することなく、反応混合物の蒸発を防止させる。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明は、反応ウェルの配列にわたって温度勾配を、または配列全体を均一温度に、設定しうる温度ブロックに部分的にある。この温度ブロックは、熱サイクラー(cycler)または他の類似の自動化実験装置(他の構成部分を含み、そして試料取扱い、ならびに複数および/またはは逐次化学反応の実施および制御、に関与する特徴を含む)の構成部分として有用である。本発明ブロックの特徴の1つは、配列のすべてのウェルの温度加熱、そうでなければ制御する独特の能力であり、同時に周辺効果、すなわち、配列の中央に、もしくは配列の外端に沿って配置されたウェルの温度の偏り(これらの領域での熱消散の差による)を消去する。
【0006】
さらに、本発明は熱サイクラーもしくは加熱された透明ふたを含む類似の複合反応装置にある。ふたはいくつかの機能を有する。1つはウェルの内容物を蒸発もしくは他の損失から保護するためにウェルの上部にわたって置かれる囲いに力を付加することである。もう1つは、良好な熱的接触を得るためにウェルの下方に位置された加熱もしくは冷却ブロックに対してウェルを下方に押圧することである。これはこの目的のために従来使用されてきたオイルの使用なしに達成されうる。加熱された透明ふたの第3の機能は十分な光を通過させることであり、それによりウェル内で生じる反応の進行を直接に検知することを使用者に可能にさせる。第4の機能はウェルの囲いの下側に蒸気が凝縮するのを防止することであり、そうでないと凝縮は反応混合物の組成に変動をもたらしやすい。蒸気は、特にウェルが下方から加熱されるときに、反応混合物の成分によりウェル内に発生する。加熱された透明ふたのこれらの特徴は、熱サイクラーもしくは複合反応装置がポリメラーゼ鎖反応に用いられるときに特に有用である。さらにふたは一般的な複合反応系で有用であり、それは、反応が同時に実施される系および逐次的に実施される系の両方である。
【0007】
具体的態様の説明
本発明は種々の構造および態様で実施されうるが、ある具体的な態様が全体として本発明の理解を提供するためにここで詳細に説明される。
【0008】
図1において、本発明による温度ブロック11が示される。図は垂直に分離された部分による下方からの斜視図であり、それにより各層の前および右側端とともにブロック構成の各層の下側を明らかにする。反応ウェル12は上層もしくは試料プレート13の上面に長方形配列を形成する。熱サイクラーのウェルの一般的ウェルは96ウェル(12×8)を含むものであるが、もっと多いか少ない他の配列も使用され得、一列のウェルを含む。試料プレートは薄いが、硬く、熱伝導性材料で構成されるのが好適である。
【0009】
ブロックの中央層14はペルチェモジュールの配列であり、上に位置された試料プレート13のための加熱および/または冷却部分として作用するように電気的に接続されている。これらの装置は、その構成および作動が当業者に周知であるが、ペルチェ効果を利用し、そこでは電流は2つの異なる導電体の接合部を通過して、接合部を通る電流の方向に依存して熱の産生もしくは吸収をもたらす。ペルチェモジュールにおいて、n型およびp型材料を創出するために適切にドープされたテルル化ビスマスのような半導体は異なる導体として作用する。半導体は導線によりDC電源に接続される。ペルチェモジュールは多くの源から商業的に入手可能であり、その1つは米国ニュージャージー州Trenton のMelcor Thermal Solutionsである。
【0010】
ペルチェモジュールは配列に通常用いられており、それらは端から端に配置され、平らな、もしくはなめらかな表面に付着するための平面配列を形成する。図に示される特定の態様において、そして図2の平面図にもっと明らかにみられるように、6つのペルチェモジュール21,22,23,24,25および26が示され、3モジュール毎に2列に配置されている。均一な温度もしくは温度勾配を課することは、電流がペルチェモジュールおよび後述するワイヤ加熱部分を流れる態様で制御される。温度勾配が所望であるときには、勾配は2つの軸、すなわち左から右、もしくは前から後ろのいずれかに沿うことができる。6つのモジュールおよびワイヤ加熱部分の間の電気的接続は所望の方向に勾配を得るように選定される。
【0011】
図1にもどると、ブロックの下部層15は従来の構成のヒートシンク(heat sink)であり、ペルチェモジュールにより発生する熱を消散するためにフィン16の配列を利用する。熱の除去はフィンの下にファン17を配置することによっても向上され得、矢印18で示されるように、空気をフィンに上方に流動させる。
【0012】
ペルチェモジュール層14と試料プレート13の間に位置されるのは熱伝導性材料の固体層19であり、そしてもう1つのそのような層20がペルチェモジュール層とヒートシンク15の間に配置される。これらの層は横方向の熱の消散を向上するのに役立つ。いかなる平らな熱伝導性材料も使用されうる。1つの例はGRAFOIL可とう性黒鉛シートであり、米国コネチカット州Danbury のUCAR Carbon Co., Inc. から入手しうる。熱伝導性グリースも熱伝導性層に代えて使用されうる。
【0013】
試料プレート13に沿う、均一温度もしくは制御させた温度勾配からの偏りは2つの側(左側31および右側32)、もしくは前端33および後端(図示せず)のいずれか、またはすべての端で生じる。なぜならこれらの端に沿った領域はブロックの中央に向う領域よりも大気に比較的多くさらされるからである。左および右側端31,32について、溝34,35がこれらの2つの端のそれぞれの長さに沿って形成され、そしてこれらの溝に電気的ワイヤ加熱部分36,37が挿入される。2つの部分はみやすくするために溝から横方向に移動して示される。本発明のある態様において、付加的な電気的ワイヤ加熱部分は前端33および後端に沿って溝にある。前の溝についての加熱部分38のみが示される。これらのワイヤ加熱部分について、使用されうる多くの適切な部分の一例はニッケル−クロムである。ワイヤは従来の絶縁材料、たとえばKAPTONテープもしくは管(米国ジョージア州Trenton のPhelps Dodge Industries から入手しうるポリイミド製品)、で電気的に絶縁されうる。試料プレートの左および右端、もしくは前および後端、または4つのすべての端、における熱損失は、これらの熱部分の使用により低減もしくは消去される。加熱ブロックが均一な温度に維持されるべきとき、左および右端のワイヤ加熱部分、または4つのすべてのワイヤ加熱部分は端での熱損失を補償するように制御される。温度勾配が加熱ブロックの幅にわたって(左端から右端)課されるべきときには、2つの側のワイヤ加熱部分36,37は異なる温度を維持するように設定される。温度勾配が反応ウェルの前列から後列の方向に(またはその逆に)課されるべきときには、前38および後ワイヤ加熱部分が異なる温度を維持するように設定される。いずれの場合も、2つの残る加熱部分は列の均一性、すなわち、勾配に垂直な方向の単列内で均一な温度、を維持するのに役立ちうる。
【0014】
さらに装置は前および後の加熱部分を用いないで温度の偏りを低減もしくは防止するための代替的もしくは付加的な手段を含む。これらの手段はアルミニウムもしくは銅のような高熱膨張係数を有する材料のブロックもしくはインサートを使用することを含む。4つのそのようなブロック41,42,43,44が図1および2に示され、2列のペルチェモジュールの間の列に配置される。これらの熱伝導性ブロックはペルチェ配列の中央で蓄積する熱を消散するのを助け、ペルチェモジュールの内端を直接接触させない。
【0015】
図1は、温度勾配が左から右方向にブロックにわたって課されるときに有用である、本発明の付加的な特徴を例示する。この特徴は、試料プレート13の下側に切り開かれた付加的な溝45,46からなり、それは右および左端の溝31,32に平行になっている。これらの付加的な溝45,46は、端の溝に挿入される加熱部分36,37と類似するワイヤ加熱部分(図示せず)を収容するように設計される。これらの付加的加熱部分は左から右方向における温度勾配を安定化し、制御するのに有用であり、そして所望の勾配に応じて異なるレベルで電圧をかけられる。溝および加熱手段の数は本発明に重要ではない。比較的大きい、もしくは小さい数が使用され得、達成しようとされる勾配の正確さに依存する。前から後の方向の温度勾配について、溝は前および後端の溝に平行になることにより示されるのと同様に使用されうる。
【0016】
図3は、図1に示されたものと同一の4つの溝におけるワイヤ加熱部分の使用により左から右への方向で勾配を設ける代替手段を例示する。この図は下方よりもむしろ上方からの試料プレート13の斜視図である。最も右の加熱部分51は最も低い電流を運び、それにより最も低い温度に加熱する。第2の加熱部分52(右から左方向に第2の溝を占める)は第1の加熱手段よりも高い温度を設けるのに十分な熱を与える中程度の電流を運ぶ。第3の加熱部分53(第3の溝45を占める)は第2の加熱部分52における第1の中程度の電流よりも大きい第2の中程度の電流を運び、それにより第1および第2の加熱部分の両方よりも高い温度を設けるのに十分な熱を与える。第2および第3の加熱部分の両方は、2つの中間溝に供給された熱の付加的組合わせである熱を供給する左側端に沿って溝34で一緒にされる。試料プレートに沿った温度は右端での最底値から左端での最高値まで、このように変動する。対応する配置は左から右よりもむしろ前から後である勾配についてなされうる。
【0017】
前から後ろ方向に勾配を設ける代替的手段は1つの回路として直列にペルチェモジュール21,22,23に、そしてもう1つの回路として直列にペルチェモジュール24,25,26に電力を供給することによる。ペルチェモジュールの2つの群について異なる温度に設定されたセンサで制御される。各列内での温度の均一性は残る左加熱部分36および右加熱部分37により維持されうる。
【0018】
温度制御は、均一もしくは勾配のいずれであっても、従来技術の熱サイクラーにおけると同様な電気的手段、通常マイクロプロセサーにより、達成されうる。従来技術におけるように、試料はウェル(もしくはウェル内の試料ホルダーに)に注入され、ステッパモータもしくは他の適切な機構により駆動されるロボットにより1つのウェルから他のウェルに移送されうる。ロボットは同様にマイクロプロセサーにより制御されうる。さらに、ブロック内の温度ならびに温度分布の制御は、種々の位置に試料プレート中に埋め込まれた温度センサーを入れることにより達成されうる。
【0019】
図4は本発明の付加的な態様および特徴を例示する。この図に示される装置は、なお分解され、反応ウェルの上方にある付加的部分を含むが、垂直断面を除いて図1と同様のアセンブリーである。この場合、アセンブリーにおける最底部分は、熱消散のために下側に沿ってフィン62の配列を有し、上述のような態様で加熱部分およびマイクロプロセサーで温度制御もしくは温度プログラムされる温度ブロック61である。ペルチェモジュール、他の加熱部分および回路素子は中間層63を占めるが、ブロックの上面は熱伝導材料からなる円筒状ウェル64の配列を含む。温度ブロックの上方に位置する部分は上部開放反応容器65のトレイである。上部開放反応容器の外形は円筒状ウェル64の内側の輪郭の形状に適合するので、トレイは温度ブロックと反応容器の内側の間の熱伝達のために十分に接触して密に適合してブロックのウェル内にある反応容器とともに温度ブロックの上方に位置される。その外形は、効率的な液体の移送および洗浄を達成するために各反応容器のすべての液体に接近するように円錐形である。あるいはトレイは個別の容器(receptacle)により、または容器の列を含むウェル小片(strips)で置換されてもよい。いずれの場合も、円筒状ウェルは反応容器を固定位置に保持することにより安定化し、同時に熱を反応容器に移送、もしくは熱を反応容器から除去することにより反応容器の温度を制御する熱移動媒媒体としても役立つ。図では1列のみの反応容器がみえるが、長方形配列は8×12試料管(計96管)、6×10(計60)、16×24(計384)、または試料操作および検出のための自動化システムに適合するものであればいかなる他の数および配置であってもよい。
【0020】
反応容器トレイの上方に位置されて、反応容器の上部を囲むための透明材料である密封シート71がある。密封シートの上方に位置されて、反応容器の上方に密封シートを押え込む圧力プレートアセンブリー72がある。圧力プレートアセンブリー72は下部端に開口プレート73を含み、各開口74は反応ウェルの1つに位置を合わされ、各反応容器の上部で高くなったヘリ75のすぐ上方に各開口の円形端を有する。密封シート71は反応容器の高くなったヘリ75と接触させるために透明接着剤で被覆されていてもよい。このように、開口プレート73は反応容器に下向きの圧力を伝達するための手段として役立つ。さらに開口プレートは2つの付加的な機能を有する。第1は上方から(後述のように、開口プレートのすぐ上方でガラスプレート上への導電性被覆により)発生する熱を分散し、それにより熱分布を均一にするのを助けることである。第2は反応容器の周囲の領域からの光の通路を遮断するために光学的マスクとして役立つことである。試料管からの蛍光放出を測定するような自動検出法を含むシステムにおいて、光学的マスクは検出信号の雑音および妨害を減少する。
【0021】
開口プレート73のすぐ上方に透明ガラスプレート76があり、その上面77は導電性材料の薄膜で被覆されている。電流がこの薄膜を通過するときに発生する熱は、反応容器の開放上部を密封して密封シートに反応混合物からの蒸気の凝縮を防止する密封シートを暖める。被覆77として用いられる材料およびその被覆の厚さは所望の抵抗を達成することに加えて被覆を実質的に透明にするために選ばれる。プレートをわたり、被覆を通る電流の通過は、被覆に抵抗加熱を生じさせるが、同時にプレートおよび被覆の透明性はガラスプレートから試料管の内容物について、使用者の直接観察もしくは光学的検出の他の形態を可能にする。この目的のために適切な種々の導電性被覆材料が当業者に公知であり、このような材料で被覆されたガラスプレートは商業的にガラス供給者から入手しうる。適切な被覆材料の例は酸化スズおよびインジウム/酸化スズである。これらの材料で被覆されたガラスは、米国カルフォルニア州Anaheim のThin Film Devices Inc.および米国カルフォルニアVentura のAbrisa Industrial Glass から入手しうる。上述の事情はさておいて、ガラスおよび被覆の厚さは本発明に重要ではなく、変動しうる。たいていの場合、ガラスの厚さは約0.06インチ(0.15cm)〜約0.2インチ(0.51cm)の範囲であり、被覆厚さは所望の抵抗率を得るように選定される。インジウム/酸化スズ被覆については、典型的な厚さは約750〜約1400オングストロームであり、そして典型的な抵抗率は約10〜約50オーム/スクエアである。好適な態様において、ガラスは厚さが0.09インチ(0.23cm)であり、そして被覆抵抗率が30オーム/スクエアである。
【0022】
圧力プレートアセンブリー72のさらなる部分は一対のレンズ81,82であり、反応容器65から出て、密封シート71、開口プレート73および導電性被覆77を有する平らなガラスプレート76、を通過する画像もしくは光を送る。本発明のこの態様において、レンズは再反射もしくはまぶしさを避けるために角度を形成される。
【0023】
温度ブロック、反応容器トレイ、密封シート、および圧力プレートアセンブリーが組合わされる態様が、図5の拡大図に示される。この図において、密封シート71は全反応容器トレイ65をおおう平らなシートである。代替の形状が図6に示され、そこでは周囲にフランジ88を有する個別のドーム状キャップ87が用いられる。いずれの場合においても、開口プレートは反応容器の内部の可視性を増大させるために各開口まわりの角をそがれるが、反応容器の高くなったヘリ75に対して密封シート71もしくはフランジ88をなお押圧する。
【0024】
上面が抵抗加熱フィルム77で被覆されるガラスプレート76は開口プレートの上方にあり、そして電流は、導線として作用する接触小片(contact strips)84(1つのみが示される;第2の小片はガラスプレートの反対端に沿って配置される)によりフィルムにより供給される。小片は銀充填エポキシ(米国Rhode Island, GreenvilleのEpoxies Etc.)のような導電性接着剤で反対端に沿って被覆ガラスに結合されるのが好都合である。あるいは、導電性金属母線棒(bus bars)が導電性ガラス上に被覆されうる。小片もしくは母線棒は適切な回路素子および電源に接続され、その結果電力は自由に供給もしくは除去され、そして変動しうるレベルで制御されうる。
【0025】
図4にもどると、圧力プレートアセンブリー72がプレート部分を一緒に保持するフレーム85に搭載される。フレームに含まれるのは保護透明窓86である。窓は下にある部分の上方の空気の移動を防止し、そして加熱空気がにげるのを防止し、それによりシステムの温度制御に寄与する。フレームはさらに内部バネ(図示せず)を含み、フレームに、反応容器を密封するために圧力をかけさせる。フレームの上方に位置して、各反応容器内の反応の進行を監視するための従来の光学的部分がある。
【0026】
フレーム85は必要に応じ圧力プレートアセンブリーの圧力を上下するために、そして外部空気の妨害にさらされるのを防止するための囲いを形成するために圧力プレートアセンブリーを温度ブロック61と接触させるために、垂直方向への動きを備える。
【0027】
本装置に使用されるすべての材料および電気的部分は商業的に供給者から容易に入手しうる。
【0028】
態様
(1)長方形に配置された複数の反応容器を、各容器の温度を制御しながら、支持する温度制御ブロックであり、該ブロックは:
該ブロックの1つの側に長方形に配列されて配置された複数のウェルであり、各ウェルは一つのそのような反応容器を受けるように寸法を合わされ;
該ウェルの側の反対側で該ブロックに付着された少なくとも一つのペルチェ効果熱電モジュール;
該長方形配列の一端に沿って該ブロックに付着された第1のワイヤ加熱部分;ならびに
該第1の端に反対の該長方形配列の第2端に沿って該ブロックに付着された第2のワイヤ加熱部分、
を含む温度制御ブロック。
(2)該第1および第2のワイヤ加熱部分は、独立して制御し得るので、該部分が異なる温度に設定され得、それにより該少なくとも1つのペルチェ効果熱電モジュールとともに、ウェルの該長方形配列にわたる温度勾配を形成し、または同一温度に設定され得、それにより該少なくとも1つのペルチェ効果熱電モジュールとともに、ウェルの該長方形配列にわたって均一な温度を形成する態様(1)記載の温度制御ブロック。
(3)異なる温度に設定されるように得独立して制御し得る少なくとも2つのペルチェ効果熱電モジュールを含み、それにより第1および第2のワイヤ加熱部分とともに、ウェルの該長方形配列にわたる温度勾配を形成する態様(1)記載の温度制御ブロック。
(4)該ウェルが先細の外形を有する反応容器に適合するように先細の側面を持つ態様(1)記載の温度制御ブロック。
(5)該少なくとも1つのペルチェ効果熱電モジュールにより放出された熱を消散するために該ブロックに付着された冷却フィンをさらに含む態様(1)記載の温度制御ブロック。
(6)該第1および第2のワイヤ加熱部分が付着されたブロックに直交する端に沿って該ブロックに付着された第3および第4のワイヤ加熱部分をさらに含む態様(1)記載の温度制御ブロック。
(7)個別に囲まれた反応容器において各容器内の反応を監視しながら複数の化学反応を同時に実施するための装置であり、該装置は:
複数の上部開放反応容器;
該上部開放反応容器を受けるように形づけられた複数のウェルを形成された支持ブロック;
該反応容器のそれぞれの開放された上部を囲むための透明なふた手段;
該反応容器の該開放された上部に対して該透明なふた手段を押圧するように配置された透明なプレートであり、該透明なプレートは透明な抵抗加熱フィルムで被覆されている;ならびに
該透明な抵抗加熱フィルムに電流を供給する手段、
を含む装置。
(8)該透明なプレートから該透明なふた手段に圧力を伝達するために該透明なふた手段と該透明なプレートの間に配置された開口されたプレートをさらに含み、該開口されたプレートは該支持ブロックのウェルと位置を合わされている態様(7)記載の装置。
(9)該透明なプレートがガラスであり、そして該透明な抵抗加熱フィルムは酸化スズならびにインジウムと酸化スズとの混合物からなる群より選ばれる材料である態様(7)記載の装置。
(10)個別に囲まれた反応容器において各容器内の反応を監視しながら複数の化学反応を同時に実施するための装置であり、該装置は:
多数の上部開放反応容器;
長方形配列に配置された複数のウェルを形成された1つの表面における温度制御ブロックであり、各ウェルは1つのそのような反応容器を受けるように寸法を合わされている;
該ウェルの側と反対側で該ブロックに付着された少なくとも一つのペルチェ効果熱電モジュール;
該長方形配列の一端に沿って該ブロックに付着された第1のワイヤ加熱部分;ならびに
該第1の端に反対の該長方形配列の第2端に沿って該ブロックに付着された第2のワイヤ加熱部分、
該反応容器のそれぞれの開放された上部を囲むための透明なふた手段;
該反応容器の該開放された上部に対して該透明なふた手段を押圧するように配置された透明なプレートであり、該透明なプレートは透明な抵抗加熱フィルムで被覆されている;ならびに
該透明な抵抗加熱フィルムに電流を供給する手段、
を含む装置。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による温度ブロックの下方からの分解斜視図。
【図2】図1のブロック構成の1部を形成するペルチェモジュールの配列の平面図。
【図3】特に温度勾配を設け維持するために設計された、本発明による第2の温度ブロックの1部の上方からの斜視図。
【図4】本発明による加熱された透明ふたを組み込んだ熱サイクラーの分解垂直断面図。
【図5】図4の熱サイクラー内部の一端の拡大断面図。
【図6】図5に示される構造の1部についての1つの代替的設計の拡大断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に囲まれた反応容器において各容器内の反応を監視しながら複数の化学反応を同時に実施するための装置であり、該装置は:
複数の上部開放反応容器;
該上部開放反応容器を受けるように形づけられた複数のウェルを形成された支持ブロック;
該反応容器のそれぞれの開放された上部を囲むための透明なふた手段;
該反応容器の該開放された上部に対して該透明なふた手段を押圧するように配置された透明なプレートであり、該透明なプレートは透明な抵抗加熱フィルムで被覆されている;ならびに
該透明な抵抗加熱フィルムに電流を供給する手段、
を含む装置。
【請求項2】
該透明なプレートから該透明なふた手段に圧力を伝達するために該透明なふた手段と該透明なプレートの間に配置された開口されたプレートをさらに含み、該開口されたプレートの開口部は該支持ブロックのウェルと位置を合わされている請求項1記載の装置。
【請求項3】
該透明なプレートはガラスであり、そして該透明な抵抗加熱フィルムは酸化スズならびにインジウムと酸化スズとの混合物からなる群より選ばれる材料である請求項1記載の装置。
【請求項4】
個別に囲まれた反応容器において各容器内の反応を監視しながら複数の化学反応を同時に実施するための装置であり、該装置は:
複数の上部開放反応容器;
長方形配列に配置された複数のウェルを形成された1つの表面における温度制御ブロックであり、各ウェルは1つのそのような反応容器を受けるように寸法を合わされている;
該ウェルの側の反対側で該ブロックに付着された少なくとも一つのペルチェ効果熱電モジュール;
該長方形配列の一端に沿って該ブロックに付着された第1のワイヤ加熱部分;ならびに
該第1の端の反対側の該長方形配列の第2端に沿って該ブロックに付着された第2のワイヤ加熱部分、
該反応容器のそれぞれの開放された上部を囲むための透明なふた手段;
該反応容器の該開放された上部に対して該透明なふた手段を押圧するように配置された透明なプレートであり、該透明なプレートは透明な抵抗加熱フィルムで被覆されている;ならびに
該透明な抵抗加熱フィルムに電流を供給する手段、
を含む装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−14953(P2007−14953A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−196101(P2006−196101)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【分割の表示】特願2001−513518(P2001−513518)の分割
【原出願日】平成12年7月11日(2000.7.11)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】