説明

複数の通信層の動作を制御する装置及び方法

階層化された通信システムにおいて複数の通信層の動作を制御する装置は、通信チャネルの特性を提供するための手段と、第1の通信層の種々の動作モードを定義している第1の複数のセットのパラメータを記憶し、複数の通信層の中の第2の通信層の種々の動作モードを定義している第2の複数のセットのパラメータを提供するための記憶素子と、チャネルの特性及び最適化の目標に基づいて第1のセットのパラメータを第1の複数のセットのパラメータから選択し、第2のセットのパラメータを第2の複数のセットのパラメータから選択するセレクタと、第1のセットのパラメータを第1の通信層に、かつ第2のセットのパラメータを第2の通信層に送るための手段とを備えている。このため、通信リソースを効率的に利用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気通信の分野に属し、送信される情報及び/又は受信される情報を処理するためにプロトコル層を用いるような通信システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の無線通信環境において、通信リンク例えば無線リンクの動的な動作に基づいて、信頼できる高品質のサービスを提供することは、難しい課題である。このため、システム設計者は、経時変化しているリソースの有用性、フェージングエラー、停電又は引渡しから結果として生ずる伝送品質の予測できない変動に対処する必要がある。第三世代のシステム以降の(Beyond the 3rd Generation:B3G)無線ネットワークに関しては、B3Gのシステムが、伝送特性が異なるとともに異機種が混成している環境の無線アクセスネットワーク技術に及ぶことが予想されているため、この動的な動作は悪影響を与えるであろう。しかしながら、次世代の無線ネットワークは、ネットワークの多様性をシームレスに利用することができるように、顧客に対して信頼性が高く、さらに処理を意識させることがないようなサービスを提供することが期待されている。
【0003】
B3Gでのサービス及びアプリケーションの提供(プロビジョニング)は、ネットワークの密度だけでなくアプリケーションのダイバーシチも新しいビジネスモデルとみなす必要がある。この新しいビジネスモデルは、高度なオープンインタフェースを利用しているオペレータのサービス・プラットフォームの上に、第三者プロバイダが自身のアプリケーションを提供できるようにすることが期待されている。例えば、変化するユーザの好み又は変化するユーザの状況(コンテクスト)から生ずる動的に変化するアプリケーションに対する要件を考慮に入れるため、オペレータは、前記変化する要件に対応するように、システムのパラメータを動的に変化させる能力を必要とする。
【0004】
通常、従来の通信システムは、情報処理を行うためのプロトコルスタックに配置された複数の通信層を利用している。図9は、階層状に配置された複数の通信層を備えているプロトコルスタックを示している。図9に示している従来技術のプロトコルスタックは、Francis Hall社から2003年に出版されたAndrew Tanenbaum著の「Computer Networks」(第4版)に開示されている。
【0005】
プロトコルスタックは、物理層90と1、物理層901の上に配置されたデータリンク層903と、データリンク層903の上に配置されたネットワーク層905と、ネットワーク層905の上に配置されたトランスポート層907と、及びトランスポート層907の上に配置されたアプリケーション層911とを備えている。
【0006】
一般的に言うと、アプリケーション層は、伝送される情報を管理するように構成されている。例えば、情報は、通信チャネルを経由して伝送される情報として、例えばビデオのデータストリームなどのメディアデータストリームを含んでいる。あるいはまた、伝送される情報は、通信チャネルを経由して送信される、ビデオ及びオーディオ情報から構成されているマルチメディアデータストリームを含んでいる場合がある。さらに、アプリケーションは、電子メールなどを含むことができる。言い換えると、アプリケーション層は、伝送されるアプリケーションを伝送可能な情報ストリームに変換するように動作している。
【0007】
アプリケーション層911は、移送サービスを提供するトランスポート層907と直接通信するため、通信に使用されている物理ネットワークに基づいて宛先シンク(destination sink)に情報を伝送することができるようになっている。例えば、トランスポート層は、あらゆる通信ネットワークで一般的なピアツーピア通信(peer to peer:P2P)を維持するために、トランスポートプロトコルデータ単位(TPDU)を情報データストリームに付加するようになっている。ピアツーピアの通信は、例えば、トランスポート層907が宛先ネットワークの中にある別のトランスポート層と直接通信することを意味している。
【0008】
トランスポート層907は、トランスポート層907によって提供された情報フレームを処理するように動作するネットワーク層905と直接通信するため、エンドツーエンド通信、すなわち2つのコンピュータエンティティ間の通信が可能となる。
【0009】
ネットワーク層905は、ネットワーク層のフレームを、データリンク層903及び物理層901から構成されているリンク層に提供している。データリンク層903及び物理層901は、例えば、メディアアクセス制御用の副層のような複数の副層を備えている。
【0010】
リンク層は、ビットで表された情報の通信チャネルを経由した伝送を管理するように動作している。例えば、データリンク層903は、誤りのあったデータフレーム(パケット)を再送するために、また例えば送達確認フレームを送ることによって各フレームが正しく受信されたことを確認するために、前方誤り訂正符号化(FEC)または前方誤り検出符号化を適用するようになっている。さらに、データリンク層903は、例えば複数のユーザのシナリオにおいて、伝送されるフレームをスケジュールするように動作している。スケジュールする(スケジューリング)とは、フレームが所定のタイムスロット(送信時間フレーム)で伝送されることを意味している。
【0011】
データリンク層903は、物理層901と直接通信するようになっている。この物理層901は、データリンク層903によって提供されたストリームを、例えば、伝送される情報に基づいて搬送波を変調する変調スキームを用いて変調を行うことによって、さらに符号化するように動作している。
【0012】
図9に示しているプロトコルスタックの実施形態は、上記参考文献に記述されたTCP/IP参照モデル(TCP=伝送制御プロトコル、IP=インターネットプロトコル)に対応している。便宜上、図9に示されているプロトコルスタックは、2つの層、すなわちアプリケーション層911とトランスポート層907との間に配置されたセッション層及びプレゼンテーション層を除いて、OSI参照モデル(OSI=開放型システム間相互接続)にも対応していることに注意されたい。
【0013】
図9に示しているインターネットプロトコルのスタックは、B3Gのシステム及びアプリケーションに対する基本プラットフォームとして使用されることが期待されている。しかしながら、送信環境が変化する中で良好な伝送品質を実現するには、利用可能なネットワークリソースを効率的に使用することは、問題に直面している通信システム又はアプリケーションを、例えば変化する送信特性及びアプリケーションについての要件に適応させるために必要である。例えば、周波数選択性の通信チャネルの場合は、所定のビット誤り率すなわち10-6という値が増大しないように、伝送されるデータのビットストリームについて適切な符号化が必要となってくる。そうするために、物理層は、例えば変調スキームを現在のチャネル特性に適合させるようになっている。このため、システムを適合することは、プロトコルスタックの全てのプロトコル層に対して、各々の通信層の動作モードを決定する各々のパラメータを適合させることによって、実現することが可能である。
【0014】
従来は、例えばビデオのストリームといった特定のアプリケーションに対するシステムの最適化は、例えばPOTSシステム(POTS=一般電話サービス)のケースのように、階層化されていないシステムにおいて唯一のサービスしか行わないシステムでは、垂直方式で実行される。
【0015】
従来の無線インターネットなどの階層化通信システムでは、予想される最悪な場合のシナリオ(最悪の状態)に対して、幾つかの層が独立して最適化されるようになっている。この最悪な場合のシナリオは、利用可能な通信リソース、例えば利用可能な帯域幅や一定のビット誤り率などに関連した達成可能なデータ転送速度などを非効率的に使用することから生じる。
【0016】
しかしながら、現行のシステムでは、層内適合(intra−layer adaptation)は、層間(inter−layer)の依存性を考慮せずに実現されるようになっている。P.A.ChouおよびZ.Miao共著の「Rate−Distortion Optimization Streaming of Packetized Media」、(米国)、Microsoft Research、テクニカルレポートMSR−TR−2001−35、マイクロソフト社、2001年2月、によれば、メディアフレームのスケジューリングがアプリケーション層によって実行される通信システムが開示されているが、このシステムでは、ビデオおよびオーディオの情報を搬送しているメディアフレームの相互依存関係のみが考慮に入れられている。M.Kalman、E.SteinbachおよびB.Girod共著の「R−D Optimized Media Streaming Enhanced with Adaptive Media Playout」、スイス国ローザンヌ、International Conference on Multimedia and Expo、 ICME2002、2002年8月、では、適応メディア再生スキーム(adaptive media playout scheme)が記述されているが、そこではオーディオデータ(例えば音声)およびビデオデータの再生速度はチャネル状態に応じて変えられるようになっている。S.Saha、M.JamtgaardおよびJ. Villasenor共著の「Bringing the wireless Internet to mobile devices」、(米国)、Computer、2001年6月、第34巻、第6号、p.54−58、では、現在使われている符号化スキームを、変動するチャネル状態に適応させるためにメディアデータのコード変換を適用する適応型中間層が記述されている。H.Imura等共著の「TCP over Second (2.5G) and Third (3G) Generation Wireless Networks」、RFC3481、IETF、2003年2月、には、ネットワーク混雑によるパケット損失と無線リンク上での通信路の消失による損失とを区別する無線TCPスタックが記述されている。F.H.FitzekおよびM.Reisslein共著の「A prefetching protocol for continuous media streaming in wireless environments」、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、2001年10月、第19巻、第10号、p.2015−2028、には、データリンク層の再送が記述されており、そこでは遅延制約が考慮に入れられている。既に知られているDIFFSERVアプローチは、メディアパケットの間で設定された優先順位に基づいており、より重要なメディアパケットがスケジュールされるようになっている。加えて、例えばIEEE802.11a標準に記述されているように、物理層における適応性のある変調および符号化が知られている。
【0017】
しかしながら、上述した従来技術による方法は、最適化の目標を達成することに関して1つの層しか最適化されないという事実に悩まされている。例えば、伝送品質を向上させるために、物理層は、伝送電力を、現在のチャネル状態、例えば現在のチャネル減衰に応じて、適応的に調整するように動作している。言い換えると、上述した従来技術による方法は、各々の通信層の動作モードを決定する1つのセットのパラメータの最適化に依存している。
【0018】
リソースを一層効率的に利用するために、2つの層を適合させることができる。K.Stuhlmuller、N.FarberおよびB.Girod共著の「Analysis of video transmission over lossy channels」、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、2000年6月、第18巻、第6号、p.1012−1032およびT.Fingscheidt、T.Hindelang、R.V.Cox、N.Seshadri共著の「Joint Source−Channel (De)Coding for Mobile Communications」、IEEE Transactions on Communications、2002年2月、第50巻、第2号、p.200−212、には、ソース及びチャネルの符号化スキームが記述されている。適合スキームは伝送クオリティに関してチャネル状態に応じたソースレートおよびコードレートの適合に基づいている。より具体的に言えば、ソースレートとチャネルレートの計算を可能にする解析公式が開示されている。
【0019】
W.Yuan、K.Nahrstedt、S.Adve、D.Jones、R.Kravets共著の「Design and Evaluation of a Cross−Layer Adaptation Framework for Mobile Multimedia Systems」、Multimedia Computing and Networking Conference(MMCN)2003に公表予定、には、電力制御および伝送データレートの最適化が開示されている。S.Toumpis、A.Goldsmith共著の「Performance、optimization、and Cross−Layer Design of Media Access Protocols for Wireless Ad Hoc Networks」、IEEE International Conference on Communications(ICC)2003には、アドホックネットワークのためのメディアアクセス制御(MAC)層および物理層の最適化が開示されている。
【0020】
しかしながら、最適化するためにクロスレイヤ設計(cross−layer design)を適用している従来技術の概念は、通信システム内において、ある特定の最適化の方法のみしか層内適合に対して考慮されていないという不都合がある。さらに、従来技術の方式は層間の依存関係を考慮していないため、結果として利用可能なリソースを効果的に利用できていない。
【0021】
従来技術の方式のさらに別の不都合な点は、開示されている最適化の方式に柔軟性がないことである。前述した従来技術の方式は、最適化するために、例えば電力制御及び送信データレートなど1つ又は2つのパラメータしか考慮しないため、利用可能な通信リソースを十分に活用するような別の最適化のシナリオは考えられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、階層化された通信システムに対して効率的なクロスレイヤの最適化のための概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は下記によって達成される、すなわち、請求項1に基づいて複数の通信層の動作を制御する装置によって、又は請求項16に基づいて送信される情報を処理するための通信装置によって、又は請求項17に基づいて受信された信号を処理するための通信装置によって、又は請求項19に基づいて複数の通信層の動作を制御する方法によって、又は請求項20に基づいて送信される情報を処理するための方法によって、又は請求項21に基づいて受信された信号を処理するための方法によって、又は請求項22に基づいたコンピュータプログラムによって達成される。
【0024】
本発明は、チャネルの特性及び最適化の目標に応じて、それぞれが特定の通信層の動作モードを決定する複数のセットのパラメータが同時に決定される場合に、効率的なクロスレイヤ適合を実行することができるという研究の成果に基づいている。このため、例えば効率的に通信リソースを使用しながら、ユーザが認めた品質を最大にすることを含んでいる最適化の目標を達成するために、複数の層を同時に適合することができる。
【0025】
本発明の方式がプロトコルスタックの中に組み込まれている通信層の動作を最適にすることに関するため、層内の依存性を考慮に入れることができる。
【0026】
本発明によれば、複数の通信層の中の第1の通信層の様々な動作モードを定義している第1の複数のセットのパラメータを記憶する(又は提供する)ため、及び第2の通信層の種々の動作モードを定義している第2の複数のセットのパラメータを提供するために、記憶素子が提供されている。クロスレイヤの最適化を実行するために、本発明の概念により、第1の複数のセットのパラメータから第1のセットのパラメータを選択し、また第2の複数のセットのパラメータから第2のセットのパラメータを選択するためのセレクタが提供されている。最適化の目標、例えば現在のチャネルの状態における伝送品質(すなわち、現在のビット誤り率)を実現するように、第1の通信層及び第2の通信層を自由に選択することができるため、層内の依存性を考慮に入れることができる柔軟性に富んだ最適化方式を実行することができる。
【0027】
本発明のセレクタが、最適化の目標に基づいてそれぞれの通信層のそれぞれの動作モードを定義している第1及び第2のセットのパラメータを選択するように動作するため、考えられる最適化のシナリオに関してかなりの自由度を実現できる。例えば、最適化の目標及び現在のチャネルの状態から始めて、セレクタは、最適化の目標を実現するために、どの通信層を同時に最適化するかを決定するように動作することができる。
【0028】
例えば、図9に示しているように、第1の通信層は、アプリケーション層を備え、第2の通信層は、データリンク層及び物理層を備えている。例えば、画像情報を送信する場合、第1の通信層は、その画像情報を符号化して、送信された情報と受信された情報との間の差を示す許容歪みに関連付けられる一定のデータ圧縮を行うように動作している。このため、圧縮された画像情報の情報速度は、所定の歪み値を超えない画像情報の送信に関連している最小限の達成可能な情報速度となっている。この場合、最適化の目標は、情報を所定の歪み値を超えない情報データ転送速度で送信するための伝送品質の最適化である。この最適化の目標を達成するために、本発明のセレクタは、アプリケーション層と、データリンク層と物理層とから構成されているリンク層とを同時に最適化するようになっている。
【0029】
圧縮された画像情報を送信するために、情報を表すビットを符号化して、理想的には歪みに関連している最小限の情報転送速度に対応しており、一定のビット誤り率に関連している一定のチャネルのデータ転送速度を達成する必要がある。これを行うために、本発明のセレクタは、符号化すなわちソースの符号化を行うためにアプリケーション層が使用する第1のセットのパラメータを選択し、また通信チャネルを経由して情報の物理的な送信を管理するために第2のセットのパラメータを選択するようになっている。第2のセットのパラメータは、例えば、前方誤り訂正エンコーディングスキーム、例えばリード−ソロモン(Reed−Solomon)の符号化又は畳込み符号化(convolutional encoding)を実行するために使用する符号化パラメータのサブセットを含んでいる。さらに、第2のセットのパラメータは、変調方式、例えば直交振幅変調(QAM)又は位相偏移変調(PSK)を決定する物理層のパラメータのサブセットを含んでいる。
【0030】
しかしながら、送信するために物理層が提供しているデータフレームは、情報を含んでいるだけでなく、前述したピアツーピア通信を確立するために全ての通信層が取り入れている情報ヘッダも含んでいる。言い換えると、アプリケーション層によって送信される情報だけでなく、それに続く情報の符号化によりチャネルのデータ転送速度も決定される。しかしながら、一定量の情報ビットしか送信可能な情報フレームの中で送信することができない。さらに、各通信層は、上に配置された通信層から処理された情報を受信し、さらに処理を行い、そしてさらに処理された情報を次の通信層に渡している。情報をプロトコルスタックに基づいて処理するために、例えば転送されるデータフレームの最大許容長さに対して幾つかの取決めが通信層の間に作られる。本発明のセレクタは、通信層上で動作するため、前述した層内の依存性を考慮することができるため、利用可能な通信リソース(例えば、利用可能な帯域幅)を効果的に使用することができる。
【0031】
本発明のさらなる利点は、パラメータが通信層の動作モードを決定するため、本発明の最適化の方式を複数の最適化の目標を達成することに適用できることである。特に、本発明の概念を、複数のユーザが送信するシナリオの中で、クロスレイヤの最適化に適用することができる。この場合、最適化の目標は、ユーザごとに伝送品質を最適にすることである。最適化の目標を達成するために、各ユーザストリーム(user stream)を考慮できるようになっている。例えば、第1の通信層(例えば、アプリケーション層)の動作モードを決定する第1のセットのパラメータは、第1のユーザ情報が第2のユーザ情報とは無関係に圧縮されるように選択することができる。さらに、第2の通信層の動作モードを決定する第2のセットのパラメータを選択することによって、得られたユーザストリームを効率的にスケジューリングすることができる。この第2の通信層は、図9に示しているようにリンク層とすることができる。このため、アプリケーション層のソース速度の選択及び適応性のあるデータリンクの本発明による同時最適化、並びにマルチユーザ通信システムにおけるチャネル特性による物理層の送信のスケジューリングを実現することができる。
【0032】
さらに、第1のユーザに関連している情報ストリームのスケジューリングさえも、アプリケーション層の中で実現できる。例えば、送信される情報は、メディアデータによって表されたビデオ又はオーディオのストリームである。アプリケーション層のメディアデータのスケジューリングは、1つのセッションの中のどのデータセグメントをいつ送信すべきかを決定する処理であり、一方でデータリンク層及び物理層の送信スケジューリングは、どのユーザが所定の時間、周波数又はコードでチャネルを使用することを許可されるか、またどの変調及びチャネル符号化方式がユーザに対して使用されるかを決定している。本発明の最適化方式は、歪み及びソース速度の情報、すなわちアプリケーション層からのメディアデータに関する情報と一緒に、データリンク層及び物理層上の種々の通信状態の組(すなわち、変調方式、チャネルのコード速度、再送信の対応、など)を考慮している。最適化の目標、すなわち各ユーザ及び各メディアのデータセグメントに対する最適な送信計画を実現するために、本発明のセレクタは、第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータを選択して、最適な送信計画を決定している。
【0033】
本発明の装置(最適化装置)は、例えば複数のユーザの間でチャネルリソースの区切りを考慮するようになっている。このことは結果として、各ユーザに対するデータ転送速度が異なることがある。さらに、種々の変調方式又はチャネル符号化方式の選択を利用することができ、このことは、各ユーザに関連しているパケットの損失率及びデータ転送速度が異なる結果となる場合がある。送信処理を効率的に管理するために、選択的なリンク層の肯定応答と一緒に、損失の多いフレームの選択的な再送信を行うことができる。送信される情報を管理するために、情報のソース速度(例えば、メディアのソース速度)を選択することができる。個々のユーザに対して、信号対ノイズ比(SNR)に関する情報が提供されている。さらに、情報パケット(メディアパケット)の相対的な重要度さえもが考慮に入れられている。これは、現代のビデオ圧縮方式(MPEG,H.26x)などのパケット間の依存性から生じている。相対的な重要度は、解凍するときにデコーディング方式を使用するときに、受信機における全体的な再構成の品質に対する失われた媒体フレームの影響によって決定される。
【0034】
本発明の装置は、選択された情報のデータ単位(すなわち、メディアのデータ単位)に対するパケットのサイズに関してデータ転送速度の情報を考慮している。さらに、重要なメディアデータの再送信さえも、アプリケーションの動作モードを適切に処理し、これにより第1のセットのパラメータを選択することによって得ることができる。
【0035】
本発明によれば、目的の機能を最適化することによって、最適な送信計画を実現できる。これは、費用関数とすることができる。この目的の機能は、例えば、同じ通信リソース、例えば同じ通信チャネルを共有しているユーザの中で最悪のチャネル状態を経験したユーザの最も大きいユーザが認めた品質を表すことができる。
【0036】
本発明の概念のさらに別の利点は、他の従来技術の方式と比較する場合、通信リソース例えば無線ネットワークのリソースをより良く利用することである。さらに、本発明の方式により、利用可能な通信リソースが効率的に利用されているため、同じシステムの中でより多くのユーザに同時に対応することができる。ユーザの数が同じ場合は、ユーザ当たりの伝送品質を向上させることができる。さらに、ユーザが認めた品質を、複数のユーザにより等しく配送することができる。その上、変動する送信特性及びアプリケーションに対応している要件を同時に考慮するために、通信層の動作モードを最適にすることによって、本発明は通信システムを動的に適合するための概念を提供している。
【0037】
通信層(プロトコル層)を使用している通信システム、すなわちB3Gのシステムを最適にするために使用している最適化方式は、クロスレイヤ設計である。ここで、アプリケーションのパラメータから物理的な送信まで補っているプロトコルスタックの幾つかの層を考慮している。図10は、通信システムの実施形態を示している。この図では、1つの特定のアプリケーションに対する縦方向のクロスレイヤの最適化に基づいた通信システムの最適化が例示されている。
【0038】
図10に示したシステムは、送信機1001(基地局)及び受信機1003を備えている。送信機1001は、送信されるアプリケーション(情報)を処理するためにプロトコルスタック1005を利用している。このプロトコルスタック1005は、アプリケーション層と、トランスポート層と、ネットワーク層と、例えば媒体アクセス制御層(MAC)及び物理層(PHY)を備えているリンク層とから構成されている。これに対して、受信機1003は、送信機1001が送信した送信信号版である受信信号を処理するためにプロトコルスタック1007を利用している。このプロトコルスタック1007(受信用プロトコルスタック)は、リンク層と、IP層(ネットワーク層に対応している)と、TCP/UDP層(トランスポート層に対応している)と、アプリケーション層とを備えている。
【0039】
図10は、ピアツーピアの通信原理も例示している。ここで、対応する層、例えばトランスポート層及びTCP/UDP層は互いに通信するようになっている。
【0040】
特定のアプリケーションに対してシステムを最適化するために、ボトムアップ式の情報配送が行われる。例えば、リンク層は、チャネル特性を物理的な制約パラメータ、例えば信号対ノイズ比(SNR)又は最大可能な送信電力として抽出するようになっている。次に、これらの物理的な制約パラメータは、アプリケーション層に送られて、リアルタイムの符号化方式(コーデック)を使用するビデオストリーミングが実行される。言い換えると、アプリケーション層は、物理的な制約パラメータに対するリアルタイムのコーデックに適合するため、ビデオストリーミングに対して要求されている伝送品質を得ることができる。
【0041】
これにより、アプリケーション層は、リンク層にサービスの質(QOS)についての要件(例えば、あるサービスに関連している信頼できるビット誤り率)を知らせることができる。この場合、リンク層は、より包括的な符号化方式を利用するため、サービスの質についての要件は満たされるようになっている。
【0042】
クロスレイヤの適合技術は、システムの部分を動的に変化する環境に適合させるために、プロトコルスタックの従来の層を横断するような層内での情報交換に基づいている。前述したように、情報は、プロトコルスタックの両方向に、つまり上下に移動している。クロスレイヤ情報交換とは、アプリケーション層が下位の層(例えば、リンク層)から、現在のネットワークの状態及び伝送品質すなわち引渡しに影響する予測可能な事象についての情報を受け取ることを意味している。それに応じて、前述したように、下位の層は、アプリケーションの現在の送信に関している要件についての情報を受信することができる。
【0043】
本発明のさらに多くの実施形態は、下記の図面に関連して詳細に説明されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は、本発明の第1の実施形態に基づいて、複数の通信層の動作を制御する装置を示している。
【0045】
図1に示した装置は、通信用のプロトコルスタック101の複数の通信層を備えており、このプロトコルスタック101には第1の通信層103及び第2の通信層105が示されている。この装置は、入力部109及び出力部111を有し、通信チャネルの特性を与えるための手段107をさらに備えている。特性を与えるための手段107は、入力部109を介して第2の通信層105に接続されている。特性を与えるための手段107の出力部111は、入力部115及び出力部117をさらに有しているセレクタ113に接続されている。セレクタ113の出力部117は、記憶素子119に接続されている。この記憶素子119は、第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータを第1及び第2の通信層に送るための手段123に接続されている出力部121を有している。第1及び第2のセットのパラメータを送るための手段123は、第1の通信層103に接続された第1の出力部125、及び第2の通信層105に接続されている第2の出力部127を有している。
【0046】
図1に示している装置は、階層化された通信システムの中で、プロトコルスタック101が備えている複数の通信層の動作を制御するように機能している。この階層化された通信システムは、情報を、通信チャネルを経由して遠隔の通信システムに送信するように動作している。前述したように、複数の通信層の中の第1の通信層103の動作は第1のセットのパラメータによって決定され、複数の通信層の中の第2の通信層105の動作は第2のセットのパラメータによって決定される。この第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータは、チャネルの特性及び最適化の目標に依存している通信用のプロトコルスタックの動作を制御するために、第1及び第2のセットのパラメータを与えるための手段123によって提供されている。
【0047】
最適化を実行するために、記憶素子119は、第1の通信層の種々の動作モードを定義している第1の複数のセットのパラメータ及び第2の通信層の種々の動作モードを定義している第2の複数のセットのパラメータを備えている。本発明のセレクタ113は、第1のセットのパラメータを第1の複数のセットのパラメータから選択し、また第2のセットのパラメータを第2の複数のセットのパラメータから選択するために、記憶素子119に接続されている。特に、セレクタ113は、特性を提供するための手段107が与えるチャネルの特性及び入力部115を介してセレクタ113に送られる最適化の目標に基づいて、第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータを選択するように動作している。
【0048】
複数の通信層の動作を制御するために、第1及び第2のセットのパラメータを与えるための手段123は、記憶素子119から第1及び第2のセットのパラメータを受け取っている。ここで、これらの第1及び第2のセットのパラメータは、最適化の目標を達成するためにセレクタ113によって選択されている。
【0049】
第2の通信層105は、通信チャネルを通る情報の送信を管理するように動作している。これを行うために、第2の通信層105は、通信チャネルの特性を取り出す動作をさらに行う物理層を備えている。通信チャネルの特性には、ビット誤り率、信号対ノイズ比(SNR)、一定のビット誤り率に関連している利用可能なチャネルデータ転送速度、送信遅延、ビット誤り率に関連している送信電力、チャネルコヒーレンス時間(channel coherence time)又はチャネルコヒーレンス帯域幅又はその組合せが含まれている。チャネルの特性をセレクタに送るために、特性を提供するための手段107は、通信チャネルの特性を得るために第2の通信層105に接続されている。前述したように、第2の通信層105は物理層を備えており、この物理層に特性を提供する手段107が接続されている。チャネルの特性を物理層から受け取るために、特性を提供する手段107は、物理層と整合するためのプロトコルインターフェースをさらに備えている。
【0050】
前述したように、セレクタ113は、第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータを選択するように動作している。好ましいことに、このセレクタ113は、第1及び第2の通信層の動作モードを同時に制御するために、第1及び第2のセットのパラメータを一対のパラメータとして同時に選択するように動作している。言い換えると、このセレクタ113は、入力部115経由で提供されている最適化の目標を実現できるように第1及び第2のセットのパラメータを同時に選択するようになっている。この場合、層内の依存性は考慮されている。
【0051】
例えば、記憶素子119は、第1及び第2の複数のセットのパラメータを記憶するように、又は一般的にそれらを提供するように動作しており、それらのセットのパラメータから、層内の依存性を考慮に入れるように、第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータを同時に選択できるようになっている。
【0052】
一般的に、第1のセットのパラメータは、第1の通信層103の動作モード全体を制御するために、複数のセットのパラメータを備えている。それに応じて、セレクタ113が選択できる第2のセットのパラメータは、複数のパラメータのサブセットを備えている。ここで、第2のセットのパラメータの各パラメータのサブセットは、第2の通信層の一定の下位動作モード(sub−operation mode)を決定している。実施例では、図9に示しているように、第2の通信層105は、データリンク層及び物理層を備えている。この場合、第2のセットのパラメータは、データリンク層の動作モードを制御するデータリンク層のパラメータのサブセットと、物理層の動作モード(下位動作モード)を制御する物理層のパラメータのサブセットとを備えている。この方法では、スケジューリング(符号化の特定の形式)及び前方誤り訂正エンコーディングスキームを利用することによるさらなる符号化を決定することができる。
【0053】
同時に、物理層の下位動作モードは、物理層のパラメータのサブセットが制御することができる。例えば、この物理層のパラメータのサブセットは、送信する前のデータフレームの変調に適用される変調方式を決定している。同時に、第1のセットのパラメータは、第1の通信層103の動作モードを決定している。この第1の通信層103は、例えば前述したアプリケーション層とすることができる。この場合、第1のセットのパラメータは、ある比率の歪み特性に関連しているデータ圧縮符号化方式を制御している。第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータが、第1及び第2の通信層の動作モードを制御するために同時に選択されているため、最適化の目標及び現在のチャネルの状態に対して全体的な最適化を実現することができ、全ての利用可能な、制御できる通信リソースを同時に最適にすることが可能となっている。
【0054】
前述したように、記憶素子119は、第1及び第2の通信層の種々の動作モードを定義している第1及び第2の複数のセットのパラメータを記憶するように動作している。例えば、第1の複数のセットのパラメータ及び第2の複数のセットのパラメータは、例えば複数のシナリオに対する最適化によって事前計算されている。ここで、最適化は、外部のコンピュータエンティティによって実行されている。言い換えると、記憶素子119は、様々なシナリオで使用されている同時に最適化されたセットのパラメータを備えている。この方式の利点は、プロトコルスタックの適合を動的に、すなわち送信動作の間に行うことができることである。この方式のさらに別の利点は、チャネルの特性及び最適化の目標に基づいて、セレクタ113は第1及び第2のセットのパラメータから構成されている実際に最適にされる対を直接選択するため、適合処理が迅速に行われることである。
【0055】
図2は、本発明の別の実施形態に基づいて、複数の通信層の動作を制御する装置のブロック図を示している。
【0056】
図1に示した装置とは異なり、図2の装置は、付加的に第1の入力部203及び第2の入力部205を有しているセレクタ201を備えている。第1の通信層103は、第1の入力部203を介してセレクタ201に接続されている。それに応じて、第2の通信層105は、第2の入力部205を介してセレクタ201に接続されている。
【0057】
さらに、図2に示した装置は、最適化の目標を提供するための手段207を備えている。この最適化の目標を提供する手段207は、図2に示しているように、複数の通信層に接続されている入力部209を有している。さらに、最適化の目標を提供する手段207は、セレクタ201の別の入力部209に接続されている出力部211を備えている。
【0058】
セレクタ201は、プロトコルスタック101の現在の状態をモニタするために、第1及び第2の通信層に接続されている。特に、セレクタ201は、第1の通信層の現在の状態をモニタするための決定要素を備えている。ここで、第1の通信層の現在の状態は、現在の第1のセットのパラメータ、すなわち第1の通信層の動作モードを現在決定するセットのパラメータによって決定されるようになっている。このため、セレクタ201の決定要素は、現在の第2のセットのパラメータによって決定された第2の通信層の現在の状態をモニタするように動作している。現在の状態、最適化の目標及びチャネルの特性に基づいて、決定要素は、現在の第1及び第2のセットのパラメータを用いて最適化の目標を実現できるかどうか、又は現在の第1のセットのパラメータ及び現在の第2のセットのパラメータを取り替えるべきかを示す制御情報を生成するようになっている。特に、決定要素が提供する制御情報は、第1のセットのパラメータ及び/又は第2のセットのパラメータが、最適化の目標を現在の第1及び第2のセットのパラメータが実現できない場合は、最適化の目標を実現するためにセレクタ201によって選択されることを示すことがある。
【0059】
図2に示しているように、最適化の目標を提供する手段207は、最適化の目標を受け取るために複数の通信層に接続されている。最適化の目標は、第1の通信層がアプリケーション層の場合は、例えば最適化の目標に向けられたアプリケーション、例えば第1の通信層が提供する一定の品質のサービスとすることができる。この場合、最適化の目標を提供する手段207は、最適化の目標に向けられたアプリケーションを受け取るためにアプリケーション層に接続されている。
【0060】
このため、最適化の目標には、通信チャネルを経由する物理的な送信の最適化が含まれている。この場合、最適化の目標を提供する手段209は、第2の通信層に接続され、例えばデータリンク層と物理層とを使用している通信チャネルに対する物理層の送信を管理するように動作している。この場合、最適化の目標は、例えば利用可能な帯域幅をチャネルの符号化(例えば、畳込み符号化)などによって最適に利用することである。この場合、最適化の目標を提供する手段207は、送信指向の最適化の目標を受け取り、同じものをセレクタ201に送る。このため、最適化の目標は、アプリケーション指向及び送信指向になる。この場合、最適化の目標を提供する手段207は、最適化の目標のアプリケーション指向の部分及び送信指向の部分を得るために、第1の通信層103及び第2の通信層105に接続されている。
【0061】
物理層と通信するために、最適化の目標を提供する手段207は、第1の通信層及び第2の通信層と整合するためにプロトコル層用のインターフェースを備えている。
【0062】
前述したように、本発明の方式は、複数ユーザのシナリオの中で、プロトコルスタックの動作を最適にすることに適用することができる。ここでは、複数のユーザは同じ通信リソースを共有している。より具体的に説明すると、送信される情報は、複数ユーザのシナリオの中で、第1のユーザに関連している第1の情報及び第2のユーザに関連している第2の情報を含んでいる。前述したように、この場合の最適化の目標は、特定のユーザの例えば第1の情報及び第2の情報に対する伝送品質を最適にすることである。例えば、最適化の目標は、通信チャネルを通って第1の歪みに関連している第1の情報転送速度で第1の情報を送信し、第2の歪みに関連している第2の情報転送速度を有している第2の情報を送信し、第1のユーザストリーム及び第1のビット誤り率に関連している第1のチャネルのデータ転送速度を決定して、第1の歪みに関連している第1の情報転送速度が対応されていることである。それに応じて、目標は、第2のユーザストリームを通信チャネルを経由して第2のチャネルのデータ転送速度でビット誤り率を超えずに送信して、第2の歪みに関連している第2の情報転送速度が対応されていることである。一般に、第1の通信層は、第1のユーザに関連している第1の情報信号及び第2のユーザに関連している第2の情報信号を得るために、第1の情報を符号化するように動作している。ここで、第1の情報信号は第1の情報転送速度を有し、また第2の情報信号は第2の情報転送速度を有している。情報を通信チャネルを通って送信するために、第2の通信層は第1の情報信号及び第2の情報信号を符号化するように動作して、通信チャネルを通って送信される複合信号を得る。
【0063】
この場合、本発明のセレクタは、第1の情報及び第2の情報を符号化して第1の情報信号及び第2の情報信号を得るために、第1の通信層が使用している第1のセットのパラメータと、第1の情報信号及び第2の情報信号を符号化して通信チャネルを通って送信される複合信号を提供するために、第2の通信層が使用している第2のセットのパラメータとを同時に選択するように動作している。ここで、第1の通信層及び第2の通信層は同時に選択された第1のセットのパラメータ及び第2のセットのパラメータを使用して、第1の情報及び第2の情報の伝送品質を最適にするようになっている。
【0064】
例えば、第2の通信層は、第1の情報信号及び第2の情報信号をスケジューリングして、第1の情報信号が第1の時間内に送信され第2の情報信号が第2の時間内に送信されるように動作している。このスケジューリングには、対応しているスケジュールされた情報信号、又は一般的には情報ストリームの結果として生じたチャネルのデータ転送速度に対する効果がある。第1のセレクタはこの時、第1のセットのパラメータを選択して、第1の歪みに関連している第1の情報転送速度を有している第1の情報信号、及び第2の歪みに関連している第2の情報転送速度を有している第2の情報信号を得るように動作し、また第2のセットのパラメータを選択して、第1の情報転送速度及び第2の情報転送速度に対応しているデータ転送速度を有している複合信号を得るように動作している。情報転送速度は、例えば時間ユニット当たりの情報パケットの数、例えば秒当たりの情報ビットの数とすることができる。
【0065】
さらに、本発明の方式は、情報のスケジューリング、例えば前述したメディアデータのスケジューリングにも適用されている。
【0066】
セレクタが、適切なセットのパラメータを選択することによって、プロトコルスタックの全体の動作を制御するように動作しているため、本発明の方式は両方向に、すなわち情報データ又はメディアデータのスケジューリング及びユーザのスケジューリングに適用することもできる。例えば、第1のユーザに関連している第1の情報には、第1の副情報及び第2の副情報、例えばオーディオ及びビデオ信号が含まれている。本発明のセレクタはこの時、第1の副情報及び第2の副情報を選択的に符号化して符号化された第1及び第2の副情報を含んでいる第1の情報信号を得るために、第1の通信層が使用している第1のセットのパラメータを選択するように動作している。この符号化された第1及び第2の副情報は、例えば種々の歪みプロファイル(distortion profile)に関連している様々な情報転送速度を有している。さらに、セレクタは、第1のセットのパラメータを選択するように動作して、第1の副情報を第1の情報信号の中でスケジューリングし、また第2の副情報を第1の情報信号の中でスケジューリングして、第1の副情報及び第2の副情報が第1の情報信号の中の異なる位置に配置されるように動作している。言い換えると、どのデータセグメントを1つのセッションの中で送信すべきかに関する決定がされるようになっている。
【0067】
本発明によれば、複数の通信層の動作を制御する本発明による装置は、最適化の目標を実現するために、第1の通信層及び第2の通信層を複数の通信層から決定するための手段をさらに備えている。この第1の通信層及び第2の通信層を複数の通信層から決定するための手段は、最適化の目標を達成するために、複数の通信層の中のどの通信層を最適にすべきかを決定するように動作している。この決定するための手段は、最適化の目標を達成するために、第1のセットのパラメータを選択する第1の通信層及び第2のセットのパラメータを選択する第2の通信層を決定するようになっている。
【0068】
本発明の別の実施形態によれば、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置は、前述したように、ユーザをスケジューリングするように及び各ユーザに関連している情報をスケジューリングするように動作している。例えば、最適化の目標には、複数ユーザのシナリオの中で伝送品質の最適化が含まれている。情報は、第1のユーザに関連している第1の情報、第1のユーザに関連している第2の情報、第2のユーザに関連している第3の情報及び第2のユーザに関連している第4の情報を含んでいるものとする。一般的に、本発明の方式は、複数の情報の場合及び/又は複数のユーザの場合に使用することができる。第1の通信層は、第1の情報及び第2の情報をスケジューリングするように動作して、第1のユーザに関連してスケジュールされた第1及び第2の情報を含んでいる第1の情報信号を得る。これにより、第1の通信層は、第3の情報及び第4の情報をスケジューリングするように動作しており、第2のユーザに関連している第2の情報信号を得る。それに応じて、第2の通信層は、第1の情報信号及び第2の情報信号をスケジューリングするように動作して、スケジュールされたマルチユーザシステムを得る。前述した最適化の目標を達成するために、本発明のセレクタは、第1の情報信号及び第2の情報信号を提供するために第1の通信層が使用する第1のセットのパラメータ、及び通信チャネルを経由して送信されるスケジュールされたマルチユーザのストリームを提供するために第2の通信層が使用する第2のセットのパラメータを同時に選択するように動作している。
【0069】
図3は、マルチユーザ及びマルチメディアをスケジューリングする場合に、複数の通信層の動作を制御する装置を示している。
【0070】
図3に示した装置は、クロスレイヤオプティマイザ301を備えており、これはアプリケーション指向のオプティマイザである。このクロスレイヤオプティマイザは、第1の入力部303、第2の入力部305及び出力部307を有している。さらに、図3に示した装置は第1のインターフェース309を備えており、この第1のインターフェース309は、入力部311及びクロスレイヤオプティマイザの入力部303に接続された出力部を有している。その上、この装置は、入力部315及びクロスレイヤオプティマイザの第2の入力部305に接続された出力部を有している第2のインターフェース313を備えている。第1のインターフェース309は、前述したプロトコルスタック1005のアプリケーション層に入力部311を介して接続されている。それに応じて、第2のインターフェース313は、プロトコルスタック1005のリンク層に入力部315を介して接続されている。
【0071】
図3に示した装置は、入力部、第1の出力部及び第2の出力部を有している決定要素317をさらに備えている。クロスレイヤオプティマイザ301の出力部307は、決定要素317の入力部に接続されている。決定要素317の第1の出力部は、プロトコルスタック1005のアプリケーション層に接続され、決定要素317の第2の出力部は、プロトコルスタック1005のリンク層に接続されている。
【0072】
本発明によれば、無線媒体送信に対するクロスレイヤ最適化方式が提供されている。特に、アプリケーション層とリンク層とが同時に最適化されるため、メディアデータのスケジューリング及び複数ユーザのスケジューリングを同時に最適化することを実現することができる。本発明のクロスレイヤ設計に対する動機付けは、例えば(予測できない)品質の変動及び接続性の多様性によって特徴付けられている、通信システムの動的な挙動などが起きる移動体通信への課題である。さらに、送信されたサービス及びアプリケーションに対する幾つかの動的な要件は、要件における著しい相違(例えば、サービスの品質)、ユーザの好みに対して変化する要件、及びシステムの柔軟性に必要な短い技術展開サイクルに対して行う必要がある。
【0073】
従来の階層化システムは、プロトコルの相互通信が厳密に定義されており、各プロトコルは悪い状態に対して別々に最適化されているためリソースを効率的に使用することはできないが、この従来の階層化システムとは逆に、本発明の方式は、図3に例示されているように、複数のプロトコル層を同時に最適化することによって、プロトコルスタックの動作を全体的に最適化する可能性を提供している。
【0074】
図3に示しているように、マルチメディアのスケジューリングに関する情報(例えば、ソースの転送速度のスケジューリング)は、第1のインターフェース309を介してクロスレイヤオプティマイザ301に提供されている。それに応じて、第2のインターフェース303は、複数ユーザのスケジューリング情報、例えば送信速度のスケジューリングをクロスレイヤオプティマイザ301に提供するため、(新しい)第1のセットのパラメータをアプリケーション層に送り、また(新しい)第2のセットのパラメータをリンク層に送ることができ、これにより最適なマルチメディアのスケジューリング及び複数ユーザのスケジューリングを行うことができ、通信リソースを効率的に活用することができる。
【0075】
クロスレイヤオプティマイザ301は、第1及び第2のセットのパラメータを選択するように動作している本発明のセレクタに対応している。決定要素307は、どのセットのパラメータをどのプロトコル層に送るかを決定している。
【0076】
下記において実施形態による単なる実施例として、ストリーミングクライアントのホスト装置として動作している基地局及び携帯装置の中にあるビデオストリーミング用サーバをそれぞれ考慮している。最適化の目標は、有線のリソースを効果的に使用しながら、ユーザが認めるエンドツーエンドの品質を最適にすることである。ビデオデータのスケジューリングは、1つのストリーミングセッションの中のどのデータセグメントを、いつ送信すべきかを決定する工程であり、データリンク層のスケジューリングに属している複数ユーザのスケジューリングは、例えばどのユーザが所定の時間、周波数又はコードでチャネルを使用することを許可されているかを決定している。
【0077】
下記において、検討されたシナリオの中で関連しているストリーミングビデオの主な特徴を説明している。ビデオは標準的なビデオ圧縮方式を用いて複数のビットレートで事前符号化されて、対応しているビデオストリームがストリーミングサーバに記憶されるようになっている。クライアントがビデオストリームを要求すると、このビデオストリームは、パケット化されて受信機に送られるようになっている。受信機が幾つかのデータを再生が始まる前に事前バッファすることにより、伝送品質の変動を平滑化することができる。アプリケーションのエンドツーエンドの待ち時間は、再生の前に記憶されているデータ量に直接関係している。各ビデオフレームに対して送られるビット数は、選択された符号化モードの種類に依存している。
【0078】
図4を参照すると、前のフレームを参照せずに符号化されるIフレーム(I−frame)と、前のフレームから予測することによって符号化されるPフレーム(P−frame)とを区別することができる。Iフレームは、前のフレームを受け取らずにデコードすることができるが、Pフレームは、一般にこの副次情報がないとデコードすることはできない。その結果、Iフレームは、図4に示しているように、Pフレームよりも大きい。早送り及び対話式場面選択を可能にするために、Iフレームは一般に約500から1000msecごとに取り入れられている。Iフレーム及び次のIフレームを除く末端までの全ての後続するPフレームは、下記においては画像グループ(GOP)と呼ばれる。Iフレーム及びPフレームを提供するために、フレームのスケジューリングの制御が実行されて、フレームの優先順位を決定している。ソースパラメータは、ソースの転送速度、秒当たりのフレーム数、遅延の制約、及び画像グループの歪みプロファイルとすることができる。
【0079】
下記においては、受信機における再構成の品質は、画像グループの中でデコードが成功したフレーム数に依存すると仮定されている。Pフレームのデコーディングが成功することは、同じ画像グループの全ての前のフレームがエラーなしで受信されることに依存するため、画像グループの第1のフレームを失うことは最悪の結果をもたらすことになる。この場合、最新のデコードされたフレームが、次のIフレームがうまく受信されるまで静止画像として表示されている。GOPの最後のフレームを失っても、GOPの最後から2番目のフレームを単に再度表示するだけのため、ほとんど歪みは発生しない。
【0080】
図5aは、平均二乗誤差(MSE)によるシミュレーション結果であり、この場合は、15のフレームから構成されている画像グループについて、3つの異なるビデオに対して異なったフレームを失った場合の平均二乗再構成誤差(mean squared reconstruction error)である。さらに、3つの異なるシナリオ、すなわちCarphone、Foreman及びMother−Daughterのシナリオが考慮されている。図5aから分かるように、GOPの第1のフレームを失ったときに、MSEが最大になる。GOPの中で処理されるにつれて歪みは減少し、ビデオストリームのビットレートの関数である単なる符号化歪みになる。全てのフレームが適時にまたエラーなしで受信される場合、この歪みは、図5aの中でインデックス16の値で参照することができる。実際のエラーは状況の内容に依存する。配列の中にほとんど動きがない場合は、フレームの損失は構成された配列の品質にほとんど影響を与えない。しかしながら、かなりの動きがある場合は、失われたフレームの影響は著しく大きくなる可能性がある。
【0081】
ビデオデータのスケジューリングでは、アプリケーションはいつフレームを送るかを決定する必要がある。このことは、P.A.Chou及びZ.Miao著の「Rate−Distortion Optimization Streaming of Packetized Media」、Technical Report MSR−TR−2001−35、Microsoft Research、Microsoft Corporation、2001年2月、の中で説明されている。GOPの第1のフレームは、最も重要なフレームであるため、アプリケーションはスケジューリングの中でこのフレームに最も大きい優先順位を割り当てることによって、エラーなしで受信する可能性を増加させるようになっている。このことは、例えばGOPのIフレームは2回送信されるが、他の全てのフレームは1回しか送信されないことを意味している。その結果、利用可能な送信速度に基づいて、アプリケーションは種々のセットのパラメータを選択することによって、異なるフレームのスケジューリングのパターンの間を選択することができる。
【0082】
無線ネットワークでは、各基地局は時間分割、周波数分割又はコード分割によって複数のユーザ(クライアント)又は移動局に対してサービスを提供している。複数ユーザのスケジューリングは、データリンク層のスケジューリングの一部であるが、どのユーザが所定の時間、周波数又はコードでチャネルを使用することを許可されているかを決定している。ユーザの要求及びチャネルの段階に基づいて複数ユーザの送信をスケジューリングすることによって、リソースを利用する効率を著しく向上させることができる。特に、送信に関する異なるスケジューリング又は割付が行われると、各ユーザは種々の送信データの転送速度を得ることができる。
【0083】
図5bは、本発明のクロスレイヤ情報交換の性能を例示する選択された実験結果を示している。図5bに示した実験では、3つの別個のビデオを有している3人のユーザが、図6に示した7つの異なるスケジューリングのシナリオのケースに対して最適化されている。特に、図6は、7つの異なる送信時間のケースで配列された3人のユーザの実施例を示している。これらのケースの1つは、ユーザが認めたエンドツーエンドの品質を最大にすることによって、データリンク層に対する実験結果を提供するために選択されている。このことは、本発明のクロスレイヤオプティマイザのタスクの一部である。各ケースは、結果として生じた送信データの転送速度に対して最適化されたフレームのスケジューリングパターンを利用している。
【0084】
図5bを再度参照する。7つのケースの中の1つが、3人のユーザの中の最も小さい性能を最大にするために選択されている。特に、図5bは、選択されたケースの最悪のユーザのピークの信号対ノイズ比(PSNR)が、図6のケース1のものと比較する場合に改善されていることを示している。これは、クロスレイヤオプティマイザがない場合の性能と考えることができる。図から分かるように、1dBを超える改善の可能性は、40%以上となっている。
【0085】
本発明によれば、送信パラメータは、リンク層に対するデータ転送速度及び誤り率、信号対ノイズ比(SNR)に対する距離、物理層におけるチャネルのコヒーレンス時間及び変調方式に対する速度とすることができる。リンク層は、図7に示しているように、複数のユーザに対してスケジューリングするように動作している。
【0086】
図8は、性能が最悪のユーザの伝送品質を最大にすることに関する別の実験結果を示している。
【0087】
図8では、累積密度確率関数(CDPF)対ケース番号1と比較した△PSNRが示されており、本発明の方式の性能を実証している。図8の右上に示した図は、選択されたケース1〜7の送信周波数に関するシステムの性能を実証している。
【0088】
本発明の別の態様によれば、送信プロトコルに基づいて送信される情報を処理するための通信装置が提供されている。送信プロトコルは、前述したように、複数のプロトコル層を備えている。本発明の通信装置は、前に説明したように情報を提供するための情報源及び複数のプロトコル層を制御する装置を備えている。送信プロトコルに基づいて情報を処理するために、本発明の通信装置は、プロトコル層に基づいて情報を処理するためのプロセッサをさらに備えている。このプロセッサは、例えばネットワークプロセッサとすることができる。
【0089】
これにより、本発明は、受信プロトコルに基づいて受信された信号を処理するための通信装置をさらに備えている。ここで受信プロトコルは、受信機の中に実装されたプロトコルである。受信された信号とは、通信チャネルを通って送信された送信信号が受信された信号である。ここで送信信号には、送信機の中の送信プロトコルに基づいて処理された情報が含まれている。送信プロトコルは、前述したように、第1の通信プロトコル層及び第2の送信プロトコル層を備えている。ここで、第1の送信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの送信パラメータによって決定され、第2の送信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの送信パラメータによって決定されるようになっている。前述したように、第1のセットの送信パラメータ及び第2のセットの送信パラメータは、前述したように、通信チャネルの特性及び随意的に最適化の目標に基づいて、複数の送信パラメータから対で選択されている。受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層及び第2の受信プロトコル層を備えている。ここで、第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決定され、第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決定されるようになっている。本発明の装置は、それぞれのセットの送信パラメータに対応する、複数のセットの受信パラメータを記憶するための記憶素子を備えている。この記憶素子は、前述した本発明の記憶素子に相当する。さらに、この装置は前述した機能に基づいて、第1のセットの受信パラメータ及び第2のセットの受信パラメータを第1の受信プロトコル層及び第2の受信プロトコル層から引き出すための手段を備えている。
【0090】
本発明の装置は、情報を送信する前に情報を処理するために使用している、第1及び第2のセットの送信パラメータの対を示している送信プロトコル情報を提供するための手段さらに備えている。言い換えると、送信プロトコル情報を提供するための本発明の手段は、どのプロトコル層のどの動作モードを検討すべきかを示している。それに応じて、本発明の装置は、送信プロトコル情報に基づいて、第1及び第2のセットの送信パラメータの対に対応している第1のセットの受信パラメータ及び第2のセットの受信パラメータから構成されている対を選択するためのセレクタを備えている。さらに、本発明の装置は、第1のセットの受信パラメータ及び第2のセットの受信パラメータの対を第1の受信プロトコル層及び第2の受信プロトコル層に提供するための手段を備えている。第1のセットの受信パラメータ及び第2のセットの受信パラメータの対を提供するための手段の機能は、第1及び第2のセットのパラメータを第1及び第2の通信層に送るための手段に関連して前に説明した手段と同一である。
【0091】
さらに、受信された信号を処理するための本発明の装置は、情報を得るために受信されたプロトコルに基づいて受信された信号を処理するためのプロセッサを備えている。
【0092】
それに加えて、本発明の装置は、信号情報をセレクタに送るためのコントローラを備えている。この信号情報は、第1及び第2のセットのパラメータから構成されている対を選択すべきかどうかを示している。さらに、本発明のコントローラは、送信プロトコル情報及び受信プロトコルが現在使用している、第1及び第2の受信されたセットのパラメータの対を示している受信されたプロトコル情報から信号情報を発生するように動作している。
【0093】
受信プロトコル情報を提供するために、本発明の装置は、第1の受信されたセットのパラメータを第1の受信されたプロトコル層から、また第2の受信されたセットのパラメータを第2の受信されたプロトコル層から引き出すための手段をさらに備えて、プロトコル層の現在の状態をモニタしている。
【0094】
この提供された装置及び方法を用いて、層内での情報の交換によってメディアデータを無線通信で送信することを最適化することができる。アプリケーション層におけるメディアデータのスケジューリング及びリンク層における複数ユーザのスケジューリングを同時に最適化することにより、本発明の最適化が可能となる。このため、ユーザが認めたエンドツーエンドの品質は、無線のリソースを効率的に使用することによって向上している。さらに、本発明の方式は、送信能力に対する高い動的な特性及びアプリケーションについての要件を克服する、無線ネットワーク用のサービス提供システムに有用である。
【0095】
本発明の方式は一般に、複数のユーザ及び/又は各ユーザに関連している複数の情報の場合に使用できることに注意されたい。
【0096】
前述したように、セットのパラメータは同時に事前に計算されているため、本発明のセレクタは実際に最適化されたセットのパラメータを選択することができる。
【0097】
下記において、複数ユーザでマルチメディアの無線通信に対するアプリケーション層及び無線のリンク層のクロスレイヤの最適化について説明する。その目的は、無線の媒体アプリケーションのエンドツーエンドの品質を最適にすること及び無線のリソースを効率的に利用することである。その目標を達成するための新しいアーキテクチャが提供され、また明確に説明される。このアーキテクチャは、パラメータ抽出の処理、クロスレイヤオプティマイザ、及び決定配送の処理から構成されている。さらに、サンプルの数値結果が提供されて、本発明による同時最適化の将来性が明らかにされる。移動体通信におけるクロスレイヤ設計が、マルチメディアのサービス提供(例えば、音声、ビデオ、オーディオ、データ)との関連で最近大いに注目を集めている。クロスレイヤ設計の構想はプロトコルスタックを横断するような層内の構想を取り入れており、2つ以上の通信を同時に最適化することを可能にしている。この構想は全ての通信ネットワークで採用することができるが、無線ネットワークにおいてということが、無線環境(すなわち、無線チャネルの経時変化及びフェージング性)という独特で困難な問題があるために特に重要である。この無線の性質及びユーザが移動することにより、ネットワークの性能及び接続性に無作為な変動がもたらされている。さらに、マルチメディアを支援するために要求されている、サービスの質(QoS)に関する要件(例えば、データ転送速度、待ち時間、連続性及び誤り率)により、移動体マルチメディア通信は、システム設計が一層困難な課題となっている。この困難な課題は、システム設計を本質的に独立した層の中に分ける、従来の階層化設計の方式に対処することが難しい。エンドツーエンドのQoSを提供するために、パラメータの適応は、全てのOSI(開放型システム相互接続)層に向ける必要がある。このために、本発明のクロスレイヤ設計の構想が提供されている。この構想では、情報を種々の層の間で交換する必要がある。下記において、無線のマルチメディア通信に対して共同のアプリケーション及び無線リンク層の最適化を提案することによって、クロスレイヤ設計構想の層内の結合を利用している。無線リンク層をプロトコルスタックの中の物理層及びデータリンク層と呼んでいる。我々の目的は、無線マルチメディア通信のアプリケーションのエンドツーエンドの品質を最適化すること及び無線のリソースを効率的に使用することである。この目的を達成するために、同時に層を最適化するためのアーキテクチャが開発されて、層間を最適にする構想を実現するための解決策が提供されている。このアーキテクチャは、パラメータ抽出の処理、層全体のオプティマイザ、及び決定配送の処理から構成されている。このアーキテクチャの全ての部分が形式化されている。さらに、サンプルの数値結果が提供されて、本発明の同時最適化の可能性が明らかにされている。従来の仕事は主に、アプリケーション層のトランスポート層、ネットワーク層、データリンク層及び物理層の特性への適合(ボトムアップ方式)、及び物理層、データリンク層又はネットワーク層のアプリケーション層の要件への適合(トップダウン方式)のように、1つの層の性能を最適化することに集中している。進行中のクロスレイヤ設計の研究は、物理層及びデータリンク(又はMAC)層の同時最適化に集中している。幾つかの研究には、特別な無線ネットワークに対する層間の最適化の中で、ネットワーク層における経路指定の最適化が含まれ、他の研究には、物理層における送信電力及び前方誤り訂正コーディングの同時最適化を行う場合のソース速度が含まれている。
【0098】
本発明の方式は、目標がマルチメディアのアプリケーションのエンドツーエンドの品質を最適化することであるという点で、従来の方式とは異なっている。このために、プロトコルスタックの3つの層、すなわちアプリケーション層(層7)、データリンク層(層2)、及び物理層(層1)の同時最適化を考慮している。ユーザが注意しているエンドツーエンドの品質は、直接アプリケーションに依存し、またアプリケーション層は、認められた品質の各デコードされたメディアデータの部分の影響に対して直接情報を有しているため、アプリケーション層を同時最適化の中に含めている。物理層及びデータリンク層をも考慮に入れる中に含めている。それは、移動体無線通信の独特で困難な課題は、これら2つの層が対処する必要がある無線チャネルの性質から結果として生ずるためである。目標を達成するための新しいアーキテクチャが提供され、また明確に説明されている。この構成は下記のようになる。
【0099】
ストリーミングビデオをマルチメディアサービス用の実施例のアプリケーションと仮定し、基地局に配置されているビデオストリーミング用サーバ及び携帯装置の中に配置されている複数のストリーミングクライアントを考慮に入れている。図12に示しているように、K個のストリーミングクライアントすなわちユーザは、同じ電波インターフェース及びネットワークのリソースを共有しているが、異なるビデオの内容を要求すると仮定している。我々のシナリオでは、ビデオストリーミング用サーバは基地局に直接配置されているため、検討する必要があるのは無線接続に必要なプロトコルスタックのみであることに注意されたい。このため、プロトコルスタックの中のトランスポート層及びネットワーク層は、この最適化の課題から除くことができる。また、アプリケーション層と無線のリンク層との間の相互関係に焦点を当てている。この無線リンク層は、物理(PHY)層及びデータリンク層の両方を組み込んでいる。基地局では、図13に示しているアーキテクチャは、サービスの最適化についてエンドツーエンドの品質を提供するのに好適である。この図は、同時最適化に関連しているタスク及び情報のフローを例示している。必要な状態情報は、アプリケーション層及び無線のリンク層からクロスレイヤオプティマイザに対するパラメータの抽出処理を通して最初に集められている。パラメータの抽出処理により、層固有のパラメータからクロスレイヤオプティマイザが理解できるパラメータ、すなわちクロスレイヤパラメータへの変換が行われる。次に、特定の目的関数に対して最適化がクロスレイヤオプティマイザによって実行されている。選択候補クロスレイヤパラメータのタプルのセットから、目的関数を最適化するタプルが選択されるようになっている。特定のクロスレイヤパラメータのタプルに対する決定がなされた後で、オプティマイザは、決定情報を対応する層に送り戻している。選択候補のクロスレイヤパラメータのタプルのセットは、一般的に無限集合になることがあることに注意されたい。決定を迅速に行うために、適切な有限集合のタプルのみを事前選択しておくことが必要である。このように、最適なクロスレイヤパラメータのタプルに関する最終的な決定により、局地的な最適化のみを結果としてもたらす場合がある。
【0100】
同時最適化を実行するために、状態情報又は1セットの主要なパラメータは、選択した層から抽出され、クロスレイヤオプティマイザに送る必要がある。層固有のパラメータは、他の層およびオプティマイザにおいて理解されないか又は利用が制限されている場合があるためである。
【0101】
無線ネットワークでは、物理層及びデータリンク層は、特定なサービスを提供する間の無線チャネルの動的な変動に対して専用に設計されている。このことは、動的な変化がかなり少ない有線のネットワークとは対照的である。物理層は、送信電力(送信電力制御を通して)、チャネル評価、同期、信号形成、変調及び信号検出(信号処理を通して)を含んでいる問題を取り扱い、一方、データリンク層は、無線リソースの割り当て(複数ユーザのスケジューリング又は行列作り(queuing))及び誤り制御(チャネルコーディングによる、通常は前方誤り訂正符号化(FEC)と自動再送要求(ARQ)の組み合わせによる)の役割を担っている。これら2つの層は、両方とも無線の性質の特有の特性に密接に関係しているため、それらを一緒に検討することが有用である。下記において、それらの組合せを無線リンク層と呼ぶことにする。無線リンク層には多くの問題があり、またこれらの問題は互いに関連しているため、パラメータの抽出が必要である。より具体的に言うと、無線リンク層固有のパラメータ
【数1】

のタプル
【数2】

から成る集合
【数3】

を定義する(例えば、変調文字、コード速度、放送時間、送信電力、コヒーレンス時間)。これらの無線リンク固有のパラメータは変数であるため、集合Rはそれらの値の全ての可能な組合せを含み、各タプル
【数4】

は1つの可能な組合せを表している。
【0102】
パラメータ抽出の処理を定式化するために、抽出されたパラメータ
【数5】

のタプル
【数6】

から成る集合
【数7】

を定義する。集合Rと集合
【数8】

との間の関係は、ドメインR及びコドメイン
【数9】

を有し、Rと
【数10】

との間の写像を表す下記の関係式によって設定されている。
【数11】

ここで、記号xはデカルト積と呼ばれる。Gは、Rと
【数12】

との間の写像を定義している部分集合である。この写像プロセスを、無線リンク層のパラメータ抽出と呼ぶ。例えばユーザが1人の場合、4つの主要なパラメータを抽出することができる。それらのパラメータは、送信データ転送速度d、送信パケット誤り率e、データパケットサイズs、及びチャネルのコヒーレンス時間tである。このことは、取り出されたパラメータのタプル
【数13】

をもたらす。ユーザがK人の場合は、パラメータの抽出を各ユーザに対して拡大することができる。この時、パラメータのタプル
【数14】

は4Kのパラメータ
【数15】

を含んでいる。ここで、4つのパラメータのグループが1人のユーザに属している。
【0103】
送信データ転送速度dは、変調方式、チャネルのコーディング、及びスケジューリングするユーザの数によって影響される。送信パケット誤り率eは、送信電力、チャネルの評価、信号検出、変調方式、チャネルのコーディング、現在のユーザの位置などにより影響される。ユーザのチャネルコヒーレンス時間tは、ユーザの速度及びその周辺の環境に関係付けられ、一方でデータパケットサイズsは通常、無線システムの規格によって規定されている。これらの相互関係により、関係Gが規定される。別の方法では、送信パケット誤り率e及びチャネルコヒーレンス時間tを2状態のギルバート−エリオット・モデル(two−state Gilbert−Elliott model)の2つのパラメータに変換することが可能である。これは1つの状態から他の状態への推移確率(p及びq)である。この変換は、下記の式によって与えられる。
【数16】

及び
【数17】

ここで、pは良好状態から不良状態への推移確率であり、qは不良状態から良好状態への推移確率である。
【0104】
この方法では、抽出されたパラメータのタプルは
【数18】

になる。この変換の1つの利点は、結果として生ずるパラメータのタプル
【数19】

は、プロトコルスタックの中のより高い層にとってより包括的であるという点にある。
【0105】
アプリケーション層は、メディアデータを送信するために圧縮、パケット化、及びスケジュールする層である。クロスレイヤの最適化のために抽出される主要なパラメータは、圧縮されたソースデータの特性に関係している。圧縮されたソースデータの特性は、アプリケーション又はサービスに依存していることがあるため、このことは、これらの主要なパラメータがアプリケーション又はサービスの種類によって決まることを意味している。形式に乗っ取って記述するために、アプリケーション層固有のパラメータ
【数20】

のタプル
【数21】

から成る集合
【数22】

を定義する。これらのアプリケーション層固有のパラメータは変数であるため、集合Aはそれらの値の全ての可能な組合せを含み、各タプルは1つの可能な組合せを表している。抽出されたパラメータ
【数23】

のタプル
【数24】

から成る集合
【数25】

をさらに定義する。集合Aと集合
【数26】

との間の関係は、ドメインA及びコドメイン
【数27】

を有し、Aと
【数28】

との間の写像を表す次の関係式によって設定されている。
【数29】

この写像プロセスを、アプリケーション層のパラメータ抽出と呼ぶ。下記の中では、我々はストリーミングビデオのサービスを想定している。このサービスの抽出されたパラメータには、ソースデータの転送速度、秒当たりのフレーム(又は画像)数、各フレーム(又は画像)の大きさ(バイト単位)及び最大遅延時間が含まれている。オプティマイザにとって他の重要な情報は、歪み率関数(符号化歪み)及び特定の損失フレーム(又は画像)の歪みプロファイルである(図14を参照)。図14は、3つの異なるビデオに対する損失フレームの歪みプロファイル及び符号化歪みの一例を示している。ここでは各ビデオは、15フレームの画像グループ(GOP)から構成され、これは秒当たり30フレームのフレーム率において0.5秒に相当する。ビデオシーケンスは、平均データ転送速度100kbpsで符号化されている。各GOPは、独立して復号可能なイントラフレームで開始するようになっている。次ぎに続く14のフレームはインターフレームであり、それは同一のGOPの全ての前のフレームが誤りなく復号された場合のみ、成功裏に復号することができる。歪みは、平均二乗再構成誤差(MSE)によって定量化される。この歪みは、ビデオシーケンスの表示された画面と本来の画面との間で測定される。図14のインデックスは、特定のフレームの損失を示している。誤り補正方針の一部として、GOPの全ての後続フレームが復号可能ではなく、直前に正確に復号されたフレームが、復号されないフレームの代わりに表示されることが想定される。また、インデックス16は、全てのフレームが正しく受信されたときにMSEを与えることに注意されたい。インデックス16を、量子化誤りによる符号化歪みと呼んでいる。
【0106】
アプリケーション層及び無線リンク層の両方から抽出されたパラメータの集合
【数30】

及び
【数31】

は、クロスレイヤオプティマイザへの入力となる。2つの入力の集合から抽出されたパラメータのタプルの、タプルの任意の組み合わせが有効であるため、下記のクロスレイヤパラメータの集合を定義することは都合が良い。
【数32】

この式は、2つの入力の集合をオプティマイザに対する1つの入力の集合に組み合わせるものである。集合
【数33】

はタプル
【数34】

及び
【数35】

から構成されている。
【0107】
前述した形式を用いると、クロスレイヤオプティマイザΩの動作は、ここで下記のように記述することができる。
【数36】

【0108】
オプティマイザは入力の集合
【数37】

から、オプティマイザの出力である真の空でない部分集合
【数38】

を選択するようになっている。
【0109】
下記において、オプティマイザの出力である
【数39】

が1つのタプル及び
【数40】

から成ると仮定している。決定すなわちクロスレイヤオプティマイザの出力
【数41】

は、下記に示している特定の目的関数に関して作られる。
【数42】

ここで、Rは実数の集合である。このため、オプティマイザの出力は下記のように表すことができる。
【数43】

【0110】
特定の目的関数
【数44】

の選択はシステム設計の目標に依存しており、オプティマイザの出力(又は決定)は、種々の目的関数に対して異なっている。ストリーミングビデオの実施例のアプリケーションでは、ユーザが1人の場合の1つの可能な目的関数は、表示されたビデオシーケンスと本来のビデオシーケンスとの間のMSEである。複数ユーザの状態の場合は、MSEを別個に拡張することができる。例えば、目的関数は、下記に示すように、全てのユーザのMSEの総和とすることができる。
【数45】

ここで、
【数46】

は、クロスレイヤパラメータのタプル
【数47】

に対するユーザkのMSEである。この目的関数は、全てのユーザの間の平均性能を最適化している。性能が最悪のユーザ性能を最適にする目的関数の他の共通の定義には、下記が含まれる。
【数48】

この式は、全てのユーザのピークSNR(信号対ノイズ比)の総和を最大化にすることに等しい。
【0111】
クロスレイヤオプティマイザの出力(又は決定)
【数49】

が得られると、決定値
【数50】

及び
【数51】

は、それぞれ無線リンク層及びアプリケーション層に送り戻す必要がある。この間に、パラメータを抽出する処理を逆方向に行う必要があり、抽出されたパラメータ
【数52】

及び
【数53】

は、層固有のパラメータ
【数54】

及び
【数55】

に逆変換される。この逆変換は、下記によって行われる。
【数56】

及び
【数57】

【0112】
集合
【数58】

又は集合
【数59】

が2つ以上の要素を有している場合、特定の要素を選択することは、個別に対応する層で行うことができる。
【0113】
下記において、本発明による同時最適化の性能を評価するために、サンプルのシミュレーション結果を提供している。この節の全体を通して、それぞれが異なるビデオを要求する3人のユーザ(ユーザ1、2及び3)を想定している。ユーザ1、2及び3はそれぞれ、自動車電話(CP)、現場監督(FM)、及び母と娘(MD)のビデオを要求している。性能の尺度として信号対雑音比(PSNR)を選択する。PSNRは、PSNR=10log10(2552/MSE)として定義される。PSNRが大きくなるほど、クライアントまたはユーザにおけるオリジナルのビデオシーケンスと表示されたビデオシーケンスとの間で計算されるMSEは小さくなる。このため、PSNRが大きければそれだけ、性能が良好になる。一例として、最悪の場合のユーザの性能を最大化する上記の目的関数を使用している。
【0114】
このため、クロスレイヤオプティマイザは、ユーザの間でMSEの最大値を最小化する(あるいは同じことだがPSNRの最小値を最大化する)パラメータのタプルを選択するようになっている。シミュレーションにおいて、無線リンク層におけるデータパケットサイズは、IEEE802.11a規格又はHiperLAN2規格で指定されたパケットサイズに等しい54バイトであると仮定している。チャネルコヒーレンス時間は、全ての3人のユーザに対して50msと仮定している。これは、(5GHzの搬送周波数に対して)ほぼ歩行者速度に相当する。送信データの転送速度は、変調方式、チャネルのコーディング、及び複数ユーザのスケジューリングに影響されるため、2つの異なる変調(BPSK及びQPSK)が仮定されている。また、図11aに示しているように、時分割多重化ベースの複数ユーザのスケジューリングには7つのケースの時間配列があるとさらに仮定している。ユーザの送信データの転送速度は、BPSKが使用されている場合は100kbpsに等しいと仮定され、全送信時間の2/9がそれに割り当てられる。それ故に、QPSKが使用されて、全送信時間の4/9が割り当てられる場合は、ユーザは400kbpsもの高い送信データの転送速度を有することができる。他方においては、送信誤り率は、送信データの転送速度、平均SNR、及びチャネルコードの誤り訂正能力に依存している。通常は、チャネルコードの性能は、所定の受信SNRに対する(チャネルの復号後の)残差誤り率によって評価される。シミュレーションでは、符号速度が1/2の畳込み符号及び54バイトのデータパケットサイズを仮定している。残差パケット誤り率が、SNRの関数として図15に示されている。しかしながら、無線リンクでは、受信SNRは一定ではなく、平均値の周りを変動している(長期のSNR)。これは、ユーザが移動することによって引き起こされる高速フェージングが原因である。この方法では、受信SNRを確率分布が一定の確率変数としてモデル化することができる。この確率分布は、物理チャネルの伝搬特性(例えば、レイリー分布、ライス分布)によって決定される。フェージングする無線リンクにおける残差パケット誤り率は、このパケット誤り率(例えば、図15から)をフェージングの統計値を用いて平均化することによって計算されている。レイリーフェージングを前提にすると、結果として生ずる平均パケット誤り率は、平均SNRの関数として図16で与えられている。この結果として生ずる平均パケット誤り率は、シミュレーションの中でパラメータeとして使用されている。1から100の範囲(0dBから20dB)の中で均一に各ユーザに対して長期の平均SNRを無作為に独立して選択することによって、無線リンクの中で共通して見られるユーザ位置に依存した経路損失及びシャドーイングを考慮に入れる。アプリケーション層では、ビデオはGOP当たり(0.5秒当たり)15フレームの新たなH.264ビデオ圧縮規格を用いて符号化されている。2つの異なる値のソース速度(100kbps及び200kbps)についても考慮に入れられている。これは、ビデオが2つの異なる目標速度で事前に符号化され、両方の速度がストリーミングサーバに記憶されることを意味している。GOPの最初に、1つのソースストリームから別のストリームに切り換えることができる。各GOPにおいて、最初のフレームはIフレームであり、次ぎに続く14のフレームはPフレームである。3つの要求されたビデオに対して、特定の損失フレームの測定された歪みプロファイル及び符号化歪みを使用している。図14は、ソース転送速度が100kbpsのGOPに対するMSEによる歪みプロファイルの一例を示している。MSEは、表示されたビデオシーケンスと本来のビデオシーケンスとの間で測定されて、GOP全体で平均される。図14では、インデックスは特定フレームの損失を示している。GOPの全ての後続するフレームは、復号可能ではなく、直前の正確に復号されたフレームが、復号されていないフレームの代わりに表示されると仮定されている。インデックス16は、全てのフレームが正しく受信されたときにMSEを与えることに注意されたい。それは符号化歪みである。さらに、Pフレームの復号が成功することは、同じGOPの前の全てのフレームが誤りなしで受信されることによって決まるため、GOPの第1のフレームの損失は最大の歪みをもたらすが、一方でGOPの最後のフレームを損失しても、ほとんど歪みが発生しないことに注意されたい。その上、各ビデオフレーム(又は画像)は最大54バイトの大きさでパケット化され、各パケットは、1つのフレームからのデータのみを含んでいるものと仮定する。すなわち、各フレームは、整数個のパケットにパケット化されている。各フレームのサイズは、符号化ステップの間に決定されている。これらの値は、ビットストリーム及び歪みプロファイルと共に記憶されるようになっている。図11bは、ソース速度が100kbpsで測定された3つのビデオの中のGOPのサイズ(パケット単位)を提供している。ここで、I及びPn (n=1,2...14)は、それぞれIフレーム及びn番目のPフレームをそれぞれ表している。Iフレームのサイズは、Pフレームのサイズよりも遙かに大きく、Pフレームのサイズは、フレームごとに異なることが分かる。これは、ビデオの内容に関係している。ARQなしの動作モード(フォワードモード)及びARQ付きの動作モード(ARQモード)の両方が詳細に調べられている。ここで全てのGOPをユニットと考え、そして各GOPを0.5秒の持続時間内に送信する必要があると仮定している。フォワードモードでは、クライアントからの肯定応答は利用できず、また特定のクライアントに対する全てのGOPのビデオフレームは、送信データの転送速度がソースデータの転送速度よりも大きい場合は繰り返し送信されると仮定している。例えば、送信データの転送速度がソースデータの転送速度の2倍である場合は、全てのGOPは2回送信されるようになっている。送信データの転送速度がソースデータの転送速度の1.5倍の場合は、GOPは1回送信され、続いて第1のIフレーム、第1のPフレーム、第2のPフレーム、などが、GOPの0.5秒の間隔が終わるまで再度送信されるようになっている。他方において、ARQモードでは、伝送されたパケットのクライアントからの肯定応答が即座に利用可能であり、特定のクライアントに対する全てのGOPのデータパケットは、GOPの中のデータパケットが時間順序に受信されるように再送信されるものと仮定している。すなわち、パケットが再び送信される前に、GOPのその前のパケットが正しく受信されることが保証されている。図17から図19は、3つのシナリオ(シナリオ1,2,及び3)のシミュレーション結果を示している。シナリオ1では、BPSK変調のみが無線リンク層で使用され、また100kbpsのソースの転送速度のみがアプリケーション層で利用できるように制限している。このため、このシナリオでは、1つの一定の抽出されたパラメータのタプル(全ての3人のユーザに対して100kbps)のみが、アプリケーション層によって提供され、一方無線リンク層は7つの抽出されたパラメータのタプルを提供している。これは、図11aに示している時間配列の7つのケースから生じたものである。クロスレイヤオプティマイザは、目的関数が最適化されるように、入力されたパラメータのタプルの7つの組合せから1つを選択するようになっている。MSEは、前述した2つの要素、すなわち高速フェージングと、ユーザの位置に依存している経路の損失及びシャドーインとによって制御されている確率変数である。一般に、高速フェージングは、経路の損失やシャドーイングよりも極めて小さい時間スケールで発生する。本明細書では、特定のユーザの位置に対して、又は言い換えると特定の長期のSNRに対して高速フェージングに関するMSEの予想値を取ることによって、高速フェージングに対して平均化されたMSEを評価している。この値に基づいて、クロスレイヤオプティマイザはその決定を行うようになっている。ユーザ位置の集団に対する統計的な特性も考察する。これにより、両方のモード(フォワードモード及びARQモード)の性能を示すように、この平均MSEの累積密度確率関数(CDF)が選択されている。本発明の同時最適化の機能が付いたシステム(w/JO)において性能が最悪のユーザの性能が、同時最適化の機能がないシステム(w/oJO)の中の性能と比較される。同時最適化の機能のないシステムは、同じ量の送信時間を全てのユーザに割り当てて(すなわち、図11aのケース1)、BPSK変調を使用し、同時にソースデータの転送速度を100kbpsに固定するものと仮定している。図17から、性能が最悪のユーザのPSNRが同時最適化の機能付きのシステム(w/JO)では著しく向上していることが分かる。例えば、性能が最悪のユーザのPSNRがフォワードモードの同時最適化の機能付きのシステム(w/JO)で30dB以上大きくなる見込みは約1−40%=60%あり、これは同時最適化の機能なしのシステム(w/oJO)と比較すると2dB向上している。同様の改善傾向を、シナリオ2及び3に対する図18及び図19の中で見ることができる。シナリオ2では、シナリオ1と同じ抽出されたパラメータのタプルがアプリケーション層において想定されているが、無線リンク層は、14個の抽出されたパラメータのタプルを提供している。これはBPSKによる時間配列の7つのケース及びQPSKによる時間配列の別の7つのケースから結果として生ずる。図17の中で説明したような、同時最適化機能なしの同じシステム(w/oJO)が、比較するために提供されている。シナリオ3では、3人のユーザのそれぞれに対して100kbps及び200kbpsの2つの異なるソース転送速度がアプリケーション層によって提供されると想定されている(23=8のパラメータのタプルが生じる)。シナリオ2の場合と同じ抽出されたパラメータのタプルが、無線リンク層によって提供されている。より多くの抽出されたパラメータのタプルが提供されるとより大きな自由度を得ることができるため、性能が向上する。このことは、図14でより鮮明に観察できる。この図には、調査された3つのシナリオで性能が向上したことが示されている。ここで、PSNRは、同時最適化機能付きのシステム(w/JO)の中の性能が最悪なユーザのPSNRと同時最適化機能なしのシステム(w/oJO)の中のそれとの間の差として定義されている。図14の左側を詳しく観察すると、シナリオ2の性能向上の大きさはフォワードモードのシナリオ1のそれよりも遙かに大きく、一方シナリオ3の性能向上の大きさはシナリオ2のそれよりも僅かに大きいに過ぎない。このことは、無線リンク層が提供するより高い送信データ転送速度を選択すること(QPSKを使用することにより)がこのアプリケーションモードでは有利であり、オプティマイザがそれを選択することが多いことを示している。対照的に、アプリケーション層が提供するより高いソース速度(200kbps)を選択することは、このモードではそれほど有利ではなく、オプティマイザはほとんどそれを選択しない。他方においては、このより高いソース速度を選択することはARQモードでは有利である。これは右側のグラフから理解することができる。このグラフでは、シナリオ3の性能向上の大きさはシナリオ2のそれよりもかなり大きい。このため、抽出されたパラメータのタプルの適当な組を選択することは、複雑性を低くして最適化しながらより高い性能向上を得るために重要である。さらに、実験により、個々の層で利用できる全ての自由度を識別すること、及びクロスレイヤの設計の中で重要な自由度を検討することは重要であることが示されている。
【0115】
本発明は、ビデオストリーミングのサービスがある無線システムにおいて、アプリケーション層及び無線リンク層の同時最適化を行うためのアーキテクチャを提供している。このアーキテクチャは、3つの原理的な構想、すなわちパラメータ抽出、クロスレイヤの最適化、及び決定の配送に基づいている。予備的な研究では、本発明のアーキテクチャは性能を向上させる可能性のある方法を提供することができ、このため、無線のマルチメディア通信における将来の課題への対応を支援することができることが明らかとなっている。アプリケーション層及び無線リンク層の少数の自由度を考慮する場合でさえ、同時最適化によってストリーミングビデオのアプリケーションに対してユーザが認めた品質を著しく向上させることができる。
【0116】
本発明による方法の幾つかの実施要件にもよるが、本発明による方法はハードウェア又はソフトウェアの中で実現することができる。この実現は、本発明の方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと共に動作するようになっているディジタル記憶媒体、特に中に記憶された電気的に読取り可能な制御信号を有しているディスク又はCDを用いて行うことができる。従って、本発明は一般的に、コンピュータが読取り可能な媒体にプログラムコードが記憶されたコンピュータプログラム製品である。このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行される場合に本発明による方法を実行する。言い換えると、本発明の方法はこのように、コンピュータ上で実行される場合に本発明の方法を実行するためのプログラムコードを有しているコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施形態に基づいて、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置のブロック図である。
【図2】本発明の別の実施形態に基づいて、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置のブロック図である。
【図3】本発明のさらに別の実施形態に基づいて、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置のブロック図である。
【図4】制御フレームのスケジューリングを例示している図である。
【図5a】送信されたフレームのインポータンスを例示している図である。
【図5b】複数の通信層の動作を制御する本発明の装置の性能を例示している図である。
【図6】マルチユーザ用スケジューリング方式における送信時間の配列を例示している図である。
【図7】本発明による複数ユーザに対するスケジューリング方式を例示している図である。
【図8】性能が最悪のユーザの伝送品質を最大にすることに関して、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置の性能を実証する図である。
【図9】プロトコルスタックを示している図である。
【図10】クロスレイヤ設計の原理を示している図である。
【図11a】時間配列が異なるマルチユーザのスケジューリングを示している図である。
【図11b】3つの測定されたビデオの画像グループ用の大きさ(パケットの観点から)を示している図である。
【図12】検討された通信システムのブロック図である。
【図13】同時に層を最適にするための、本発明のシステム構成を示している図である。
【図14】3つの測定されたビデオの画像グループ用のMSEを示している図である。
【図15】信号対ノイズ比に関するフレームエラー率を示している図である。
【図16】シナリオ1用の性能比較を示している図である。
【図17】シナリオ2用の性能比較を示している図である。
【図18】シナリオ3用の性能比較を示している図である。
【図19】3つの調査されたシナリオの改善された性能比較を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層化通信システムにおいて、複数の通信層の中の第1の通信層の動作が第1のセットのパラメータによって決定され、かつ前記複数の通信層の中の第2の通信層の動作が第2のセットのパラメータによって決定されるように、前記複数の通信層の動作を制御する装置であって、
前記通信チャネルの特性を提供するための手段(107)と、
前記第1の通信層の種々の動作モードを定義している第1の複数のセットのパラメータを記憶し、前記第2の通信層の種々の動作モードを定義している第2の複数のセットのパラメータを提供するための記憶素子(119)と、
第1のセットのパラメータを前記第1の複数のセットのパラメータから選択し、第2のセットのパラメータを前記第2の複数のセットのパラメータから選択し、チャネルの特性及び最適化の目標に基づいて、前記第1のセットのパラメータ及び前記第2のセットのパラメータを選択するように動作しているセレクタ(113;201)と、
前記第1のセットのパラメータを前記第1の通信層に、かつ前記第2のセットのパラメータを前記第2の通信層に送るための手段(123)と
を備えている装置。
【請求項2】
前記情報が複数ユーザのシナリオでは第1のユーザに関連している第1の情報及び第2のユーザに関連している第2の情報を含んでおり、前記最適化の目標が前記第1の情報及び前記第2の情報に対して伝送品質を最適にすることであり、前記第1の通信層が第1の情報信号を得るために前記第1の情報を符号化し、かつ第2の情報信号を得るために前記第2の情報を符号化するように動作し、前記第2の通信層が前記通信チャネルを通って送信するための複合信号を得るために、前記第1の情報信号及び前記第2の情報信号を符号化するように動作しており、
前記セレクタ(113;201)が、前記第1の情報及び前記第2の情報を符号化するために前記第1の通信層が使用している第1のセットのパラメータと、前記第1の情報及び前記第2の情報の伝送品質を最適にするために前記第1の情報信号及び前記第2の情報信号を符号化する前記第2の通信層が使用している前記第2のセットのパラメータとを同時に選択するように動作している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の情報信号が第1の時間内に送信され、かつ前記第2の情報信号が第2の時間内に送信されるように、前記第2の通信層が前記第1の情報信号及び前記第2の情報信号をスケジューリングするように動作し、
前記セレクタ(113;201)が、第1の歪みに関連している第1の情報転送速度を有している前記第1の情報信号を得るように、かつ第2の歪みに関連している第2の情報転送速度を有している前記第2の情報信号を得るように前記第1のセットのパラメータを選択し、さらに前記第1の情報転送速度及び前記第2の情報転送速度に対応するデータ転送速度を有している前記複合信号を得るために第2のセットのパラメータを選択するように動作している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のユーザに関連している前記第1の情報が、第1の副情報及び第2の副情報を含んでおり、前記セレクタ(113;201)が、前記符号化された第1及び第2の副情報を含んでいる前記第1の情報信号を得るために、前記第1の副情報及び前記第2の副情報を選択的に符号化するための前記第1の通信層が使用する前記第1のセットのパラメータを選択するようにさらに動作している、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記セレクタ(113;201)が、前記第1の副情報及び前記第2の副情報を前記第1の情報信号の範囲内でスケジューリングするために、前記第1のセットのパラメータを選択するように動作して、前記第1の副情報及び前記第2の副情報が前記第1の情報信号の異なる位置に配置されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
最適化の目標を達成するために前記複数の通信層から、前記第1のセットのパラメータが選択されるように動作している前記第1の通信層及び前記第2のセットのパラメータが選択されるように動作している前記第2の通信層を決定するための手段をさらに備えている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記階層化通信システムの複数の層がプロトコル層であり、前記第2の通信層が前記通信チャネルを通る情報の送信を管理し、かつ前記通信チャネルの特性を抽出するように動作し、前記通信チャネルの特性を提供するための手段が前記通信チャネルの特性を受信するために前記第2の通信層に接続されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の通信層が物理層を備えており、前記通信チャネルの特性を提供するための手段(107)が前記物理層と整合するためのプロトコルインターフェースを備えている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記通信チャネルの特性を提供するための手段(107)が、チャネルの特性として、ビット誤り率及び/又は伝送遅延及び/又は該ビット誤り率に関連した送信電力及び/又はチャネルコヒーレンス時間及び/又はチャネルコヒーレンス帯域幅を提供するように動作している、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記セレクタ(113;201)が、現在の第1のセットのパラメータによって決定される前記第1の通信層の現在の状態と現在の第2のセットのパラメータによって決定される前記第2の通信層の現在の状態とをモニタするための決定要素を備えており、前記決定要素が、現在の状態、最適化の目標、及びチャネルの特性から制御情報を生成するようにさらに動作し、前記最適化の目標が、現在の第1及び第2のセットのパラメータを用いて達成できない場合、前記制御情報は、前記第1のセットのパラメータ及び/又は前記第2のセットのパラメータが最適化の目標を達成するために選択されることを指示するようになっている、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記最適化の目標は、複数ユーザのシナリオの場合では伝送品質の最適化が含まれており、前記情報には第1のユーザに関連している第1の情報、前記第1のユーザに関連している第2の情報、第2のユーザに関連している第3の情報及び前記第2のユーザに関連している第4の情報が含まれ、前記第1の通信層が前記第1の情報及び前記第2の情報をスケジューリングするように動作して、前記第1のユーザに関連している第1の情報信号を取得し、前記第1の通信層が前記第3の情報及び前記第4の情報をスケジューリングするように動作して、前記第2のユーザに関連している第2の情報信号を取得し、前記第2の通信層が前記第1の情報信号及び前記第2の情報信号をスケジューリングするように動作して、スケジュールされた複数ユーザのストリームを取得し、前記セレクタ(113;201)が前記第1の情報信号及び前記第2の情報信号を提供するために前記第1の通信層が使用する前記第1のセットのパラメータと、前記スケジュールされた複数ユーザのストリームを提供するために前記第2の通信層が使用する前記第2のセットのパラメータとを同時に選択するように動作するようになっている、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記最適化の目標を提供する手段(207)をさらに備えている、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の通信層が物理層を備え、前記記憶素子(119)の中に記憶されている前記第1の複数のセットのパラメータが複数の変調方式を含んでいる、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1又は第2の通信層がデータリンク層を備えており、前記記憶素子(119)の中に記憶されている第1又は第2の複数のパラメータが複数の前方誤り訂正エンコーディングスキームを含んでいる、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記通信層がアプリケーション層を備えており、前記記憶素子(119)の中に記憶されている前記第1の複数のセットのパラメータがデータを圧縮するための複数の符号化方式を含んでいる、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
送信プロトコルが複数のプロトコル層を備えており、
前記情報を提供するための情報源と、
前記複数のプロトコル層を制御する請求項1から14のいずれか一項に記載の装置と、
前記プロトコル層に基づいて前記情報を処理するためのプロセッサと
を備えている、送信プロトコルに基づいて伝送される情報を処理するための通信装置。
【請求項17】
受信プロトコルに基づいて受信された信号は、通信チャネルを通じて送信された送信信号の受信版であり、前記送信信号は、送信プロトコルに基づいて処理される情報を含んでおり、前記送信プロトコルは、第1の送信プロトコル層及び第2の送信プロトコル層を備えており、前記第1の送信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの送信パラメータによって決定され、前記第2の送信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの送信パラメータによって決定され、前記第1のセットの送信パラメータ及び前記第2のセットの送信パラメータは、通信チャネルの特性に基づいて複数の送信パラメータの中から対で選択され、前記受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層及び第2の受信プロトコル層を備えており、前記第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決定され、前記第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決定され、
各々のセットの送信パラメータに対応している複数のセットの受信パラメータを記憶するための記憶素子と、
情報を送信する前に処理するために使用される、一対の第1及び第2のセットの送信パラメータを示している送信プロトコル情報を提供するための手段と、
前記送信プロトコル情報に基づいて、前記第1及び第2のセットの送信パラメータの対に対応している前記第1のセットの受信パラメータ及び前記第2のセットの受信パラメータから構成されている対を選択するためのセレクタと、
前記第1のセットの受信パラメータ及び前記第2のセットの受信パラメータの対を前記第1の受信プロトコル層及び前記第2の受信プロトコル層に提供するための手段と、
前記情報を得るために前記受信プロトコルに基づいて受信信号を処理するためのプロセッサと
を備えている、受信プロトコルに基づいて受信された信号を処理するための通信装置。
【請求項18】
前記第1のセットの受信パラメータを前記第1の受信プロトコル層から、また前記第2のセットの受信パラメータを前記第2の受信プロトコル層から抽出するための手段を備えおり、前記抽出するための手段は、前記受信プロトコルによって現在使用されている第1及び第2のセットの受信パラメータの対を示す受信プロトコル情報を提供するように動作し、
前記第1及び第2のセットのパラメータから構成されている対を選択すべきかどうかを指示する信号情報を前記セレクタに提供するためのコントローラをさらに備えており、 前記コントローラが、前記送信プロトコル情報及び前記受信プロトコル情報から前記信号情報を生成するようになっている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層化通信システムにおいて、複数の通信層の中の第1の通信層の動作が第1のセットのパラメータによって決定され、かつ前記複数の通信層の中の第2の通信層の動作が第2のセットのパラメータによって決定されるように、前記複数の通信層の動作を制御する方法であって、
前記通信チャネルの特性を提供するステップと、
前記第1の通信層の種々の動作モードを定義している第1の複数のセットのパラメータを記憶するステップと、
前記第2の通信層の種々の動作モードを定義している第2の複数のセットのパラメータを提供するステップと、
前記第1のセットのパラメータを前記第1の複数のセットのパラメータから、かつ前記第2のセットのパラメータを前記第2の複数のセットのパラメータから選択するステップと、
前記第1のセットのパラメータを前記第1の通信層に、かつ前記第2のセットのパラメータを前記第2の通信層に提供するステップと
を含んでおり、
前記第1のセットのパラメータ及び前記第2のセットのパラメータが、前記チャネルの特性及び最適化の目標に基づいて選択されている
方法。
【請求項20】
送信プロトコルが複数のプロトコル層を備えており、
情報を提供するステップと、
請求項19の方法に基づいて前記複数のプロトコル層を制御するステップと、
前記プロトコル層に基づいて前記情報を処理するステップと
を含んでいる、送信プロトコルに基づいて送信される情報を処理するための方法。
【請求項21】
受信プロトコルに基づいて受信された信号は、通信チャネルを通って送信される送信信号の受信版であり、前記送信信号は、送信プロトコルに基づいて処理される情報を含んでおり、前記送信プロトコルは、第1の送信プロトコル層及び第2の送信プロトコル層を備えており、前記第1の送信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの送信パラメータによって決定され、前記第2の送信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの送信パラメータによって決定され、前記第1のセットの送信パラメータ及び前記第2のセットの送信パラメータは、前記通信チャネルの特性に基づいて複数の送信パラメータから対で選択され、前記受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層及び第2の受信プロトコル層を備えており、前記第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決定され、前記第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決定され、
各々の前記セットの送信パラメータに対応している前記複数のセットの受信パラメータを記憶するステップと、
情報を送信する前に処理するために使用される、前記一対の第1及び第2のセットの送信パラメータを示している送信プロトコル情報を提供するステップと、
前記送信プロトコル情報に基づいて、前記第1及び第2のセットの送信パラメータの対に対応している前記第1のセットの受信パラメータ及び前記第2のセットの受信パラメータから構成されている対を選択するステップと、
前記第1のセットの受信パラメータ及び前記第2のセットの受信パラメータの対を前記第1の受信プロトコル層及び前記第2の受信プロトコル層に提供するステップと、
前記情報を得るために前記受信プロトコルに基づいて受信信号を処理するステップと
を備えている、受信プロトコルに基づいて受信された信号を処理するための方法。
【請求項22】
請求項19又は20又は21に記載されている方法を実行するためのプログラムコードを有している、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−515833(P2007−515833A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509810(P2005−509810)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011446
【国際公開番号】WO2005/041533
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】