説明

複数の部分より成るパッキンリング

【課題】リングセグメントとシールセグメントとが気密に接して1つのリングを形成し、周面を有し、周方向両端部が、半径方向端面によって制限され、半径方向外側に突き出すショルダが設けられ、該ショルダが、接線方向のシール面によって制限されている、複数部分より成るパッキンリングを改良して、従来技術における欠点を取り除いて、特にパッキンリングの摩耗及び漏れを減少し、このようなパッキンリングの耐用年数を高める。
【解決手段】シールセグメント14に軸方向の突起が設けられており、該突起によって、前記シールセグメント14の半径方向内方に位置する湾曲された周面21が広げられており、前記軸方向の突起が、周方向で見て前記リングセグメント12の両端部間に配置され、かつ第1の摩耗ギャップ31を形成するために前記リングセグメント12の両端部から間隔を保って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリングセグメントと複数のシールセグメントとを備えた、複数の部分より成るパッキンリングであって、前記複数のリングセグメントと複数のシールセグメントとが互いに気密に接しながら1つのリングを形成するように配置されていて、半径方向で内方に湾曲された周面を有しており、前記リングセグメントは周方向の両端部が、第1の半径方向の端面によって仕切られていて、前記リングセグメントの半径方向外側の領域に軸方向に突き出すショルダが設けられており、該ショルダが、接線方向のシール面によって仕切られている形式のもの関する。また本発明は、このような形式のパッキンリングを有する圧力パッキン及びシールに関する。
【背景技術】
【0002】
特に二重作用を有する構造形式のピストン圧縮機は、シリンダ内のクランク側の圧縮室をシールする必要がある。この圧縮室内に、振動運動するピストンロッド5に沿って時間的に変化する(高い)シリンダ圧Pzylが形成されている。このようなシールは、典型的な形式で、クランク室内に形成される(低い)雰囲気圧Puに対抗して行う必要がある。このようなシール4内において使用されるシールエレメントは、パッキンリング6、7と称呼されていて、例えば図1の従来技術の構成において例として示されているように、一般的に複数のパッキンリング6,7より成っている、いわゆる圧力パッキン2内に配置されている。この場合、シールエレメントは、シール作用を損なうことなしに、ピストンロッド5の避けられない横方向運動に追従することができる。圧力パッキン2の耐用年数及び信頼性を高めるために、圧力パッキン2内に複数のこのようなパッキンリング6,7が直列接続されている。シール4内に、一般的に複数の圧力パッキンが相前後して並べられている。このような圧力パッキン2若しくはシール4は、従来術において、例えば英国特許第928749号明細書又は米国特許第1008655号明細書により、種々異なる構成のものが公知である。
【0003】
パッキンリング6,7は、十分なシール作用のために、つまり漏れを十分に小さくするために、一般的にシールしようとする所定の圧力差P−Pを必要とする、自動作動式のシールである。パッキン室3内のガス圧は、パッキンリング6,7のシールしようとするギャップ内における高いレベルPから次のパッキン室3内の低いレベルPに低下する。このシールギャップは、パッキンリング6,7の効率を考慮した重要な働きを有している。何故ならば、ピストンロッド5とリング6,7との間の接触面の相対運動が、パッキンリング6,7の摩耗を引き起こすからである。このようなリングの摩耗に基づいて、一般的に、このようなリングとピストンロッドとの間のシールギャップにおける材料摩耗時に自動的な連続後調整を可能にする、分割されたリング形状が必要となる。この場合、業界基準は、半径方向及び接線方向で分割されたリング6,7である。このようなリング6,7は、図1bに概略的に示したように、発生した衝突ギャップを摩耗補償のために互いにシールするために、1対形式で圧力パッキンのパッキン室内に嵌め込まれる。このような半径方向/接線方向で分割された組み合わせリングは、クロスヘッドの方向でのみシールを行う、簡単に作用するシールであり、これに対してピストン圧縮機1のクランク側の再膨張段階中においては半径方向の分割部によって、パッキン内に高い圧力が閉じこめられないことが保証される。分割されたリング形状において、一般的に外周面に巻き付けられた公知形式のゴムばね(周方向ばね)9が使用される。このゴムばね9は、パッキンリング6,7を無圧状態でもピストンロッド5に押し付ける。
【0004】
高い圧力においては特に、従来の装置では、ピストンロッド5とパッキンハウジング若しくは室隔壁10との間に形成されたギャプ内で、パッキンリング6,7の膨張も発生する。このような押出を避けるために、低圧側のリングと室隔壁10との間に、ピストンロッド5に面状に接触しない、付加的な金属性の支持リング8が使用される(米国特許第3305241号明細書参照)。
【0005】
このような半径方向接線方向で分割されたパッキンリングの組み合わせにおいては、ほぼ接線方向に分割されたパッキンリングだけによってピストンロッドに向かってシールする必要があり、このパッキンリングのリングセグメントは、接線方向における分割部によって摩耗時に互いに接近する方向にずれて、それによってシール作用を維持できるようになっている。半径方向の分割されたパッキンリングは、主として、接線方向のパッキンリングの摩耗ギャプを軸方向及び半径方向でシールするためにのみ用いられる。半径方向のパッキンリングは、リングセグメントが周方向で互いに当接するまでしか摩耗(若しくは摩滅)しない。それによって、半径方向及び接線方向で分割されたパッキンリングは、それぞれ異なって摩耗(摩滅)することになる。半径方向及び接線方向で分割されたパッキンリングが互いに相対的に回動する(これによって、接線方向で分割されたパッキンリングの摩耗ギャップがもはや覆われることがなくなり、従ってシール作用が損なわれる)のを避けるために、リングの間に回動防止手段を設ける必要がある。このような回動防止手段は、一般的にピンとして構成されていて、このピンが、半径方向及び接線方向で分割されたパッキンリングに形成された、ピンに対応配置された切欠内に嵌め込まれている。半径方向及び接線方向で分割されたパッキンリングの種々異なる摩耗によって、このようなピンは、摩耗若しくは摩滅が進むにつれて、次第に大きくなるせん断応力にさらされることになる。これによって、ピン及びひいては回動防止手段が破壊され、さらにシールのシール作用が失われることになる。
【0006】
従って、従来技術によれば、半径方向及び接線方向で分割されたパッキンリングより成るパッキンリングの組み合わせを設けるのではなく、1つだけのパッキンリングが使用されている。一方では、ピストンロッドに対する必要なシール作用が、必然的な摩耗時に失われることがなく、また軸方向でも半径方向でも十分なシールを確実に得ることができるようにするために、特別に分割されたパッキンリングが必要とされている。米国特許第2208976号明細書及び米国特許第4350349号明細書によれば、このようなパッキンリングが公知である。この公知のパッキンリングによれば、半径方向で分割された複数のリングセグメントを有する6分割されたパッキンリングが設けられていて、前記リングセグメントが、周方向ばねによって結束されている。リングセグメント間の周方向に、半径方向の摩耗ギャプが発生する。この半径方向の摩耗ギャップをシールするために、各リングセグメントに、軸方向に突き出すそれぞれ1つのショルダが設けられており、このショルダは接線方向のシール面によって制限されている。これによって、このショルダ間に軸方向の切欠が形成される。軸方向でも半径方向でも摩耗ギャップをシールするために、前記切欠内に複数のシールセグメントが挿入され、これらのシールセグメントは、接線方向の端面で接線方向のシール面に当接して、摩耗ギャプを覆っている。この場合、リングセグメントもシールセグメントも、ピストンロッドに対してシールするためにピストンロッドのほぼ全周面に亘って当接している。しかしながら、このようなパッキンリングの問題点は、リングセグメントとシールセグメントとが種々異なる摩耗にさらされている、という点にある。リングセグメントは、その外径が高圧側の高いガス圧で負荷され、その内径がシールセグメントによって低減された、低いガス圧が作用するようになっている。これによって、半径方向/接線方向で分割されたリング対と同様に、リングセグメントは、シールセグメントよりも早期に摩滅し、ひいては完全に提供されたリング材料が比較的最適とはいえない程度に摩滅されることになる。このような不均一な摩耗率はさらに、短時間後に十分なシール作用が得られなくなるまで、及び漏れがパッキンリングによって容認できない程度に大きくなるまで、接線方向のシール面間の面圧が常に減少されるように作用する。
【特許文献1】英国特許第928749号明細書
【特許文献2】米国特許第1008655号明細書
【特許文献3】米国特許第3305241号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、前記のようなパッキンリングの欠点を取り除いて、特にパッキンリングの摩耗及びパッキンリングによる漏れを減少し、このようなパッキンリングの耐用年数を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決した本発明によれば、前記シールセグメントに軸方向の突起が設けられており、該突起によって、前記シールセグメントの半径方向内方に位置する湾曲された周面が広げられており、前記軸方向の突起が、周方向で見て前記リングセグメントの両端部間に配置され、かつ第1の摩耗ギャップを形成するために前記リングセグメントの両端部から間隔を保って配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成によれば、シールセグメントは、軸方向で、摩耗のためにより多くの材料を提供することができる。面圧が同じであれば(外側の周面に作用する圧力による)、それによってシールセグメントの摩耗が効果的に低減される。このような構成において、リングセグメントは小さい領域だけが、シールしようとする構成部分に当接し、従って主にシールセグメント間の摩耗ギャップをシールするためだけに用いられる。
【0010】
有利な形式で、シールセグメントは、その周方向で見た両端部にそれぞれ1つの接線方向の端面と、第2の半径方向の端面とが設けられており、この場合、前記接線方向の端面が、隣接し合うリングセグメントの接線方向のシール面に当接していて、前記第2の半径方向の端面が、第2の摩耗ギャップを形成するために互いに向き合って間隔を保って配置されている。このような配置によれば、シールセグメントは、発生した摩耗ギャップまで、全周面がシールしようとする構成部分に当接し、それによってシールセグメントは主に、シールしようとする構成部分に対するシールを行う。
【0011】
特に有利には、複数の部分より成るパッキンリングが、2つのリングセグメントと2つのシールセグメントとを有する4つの部分より構成されており、前記リングセグメントとシールセグメントとがそれぞれ互いに向き合って配置されていて、シールエレメントの半径方向内方に位置する周面が、第2の摩耗ギャップまで閉じた周面を形成している。このような左右対称の、2分割された断面構造は、次のような摩耗を形成する。つまり、2つのシールセグメントが半径方向で内方に移動し、それによってセグメント中央部、つまり最大の材料厚さの領域において最大の摩耗が発生し、これに対して、周方向で見てシールセグメント両端部における摩耗は、シールセグメントの剛性に基づいて小さい。これによって、さらにこれによって、接線方向のシール面間のシールは、摩耗が大きくなっても悪くはならない。何故ならば、互いに当接し合う接線方向のシール面が耐用年数全体に亘って、一平面に位置し、それによって接線方向のシール面は常に互いに一様に接し合うからである。他方では、シールセグメントは、周方向で見てそのセグメント両端部において、その(ほぼ)一様な剛性に基づいて強く摩耗することがないので、シールセグメントのわずかな摩耗と相俟って、接線方向のシール面の開放を阻止する。
【0012】
シールセグメントがシールしようとする構成部分に押し付けられる、摩耗の原因となる押圧力を減少し、及びひいては摩耗を減少するために、シールセグメントの半径方向内方に位置する周面において圧力補償するために、有利には周方向溝が設けられている。この周方向溝は、第2の摩耗ギャップの領域に設けられた切欠を介してシールセグメントの第2の半径方向のシール面に接続されている。
【0013】
シールセグメントの傾き傾向を減少させるために、シールセグメントの半径方向内方に位置する前記周面に、有利には1つの高圧溝が設けられており、該高圧溝が切欠を介してパッキンリングの外側の周面に接続されているか、又は第2の摩耗ギャップの領域の切欠を介してシールセグメントの第2の半径方向のシール面に接続されていて、高圧溝と軸方向の突起との間に低圧溝が設けられており、該低圧溝が、切欠を介して、パッキンリングの、軸方向の突起とは反対側の端面側に接続されている。
【0014】
リングセグメント及びシールセグメントの、軸方向の突起を備えた端面側で半径方向外側の領域内に、半径方向の段部が設けられていれば、リングセグメント及びシールセグメントの所定の半径方向の曲げこわさを得ることによって、セグメントが、シールしようとする構成部分にも、また接線方向のシール面にも十分な面圧で当接するようにするために、その他の構造的な特徴を提供することができる。このような半径方向の段部によって、周方向に存在するリングセグメントの両端部は、完全にリングセグメントに接続されておらず、それによって、リングセグメントは、シールセグメントの切断部を良好にシールすることができる。また他方ではこれによって、シールセグメントの両端部が同様にフレキシブルになり、これによって、パッキンリングはシール状況に応じて、場合によっては生じる形状変形に対して柔軟に対応することができる。これによって、シールセグメントをセグメント中央で支持することに不都合な影響が及ぼされることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明が、限定されていない概略的な有利な実施例を用いて、図1〜10に説明されている。
【0016】
図1は、半径方向及び接線方向で断面されたパッキンリングを備えた、従来公知のシール、
図2は、本発明によるパッキンリングの斜視図、
図3は、本発明によるパッキンリングを、異なる方向で見た分解図、
図4は、圧力補償手段を備えたパッキンリングの種々異なる方向で見た分解図、
図5は、この場合に発生する圧力分布、
図6は、選択的な圧力補償手段を備えたパッキンリング、
図7は、この場合に発生する圧力分布、
図8及び図9は、本発明によるパッキンリングの連続的な摩耗を示す概略図、
図10は、本発明によるパッキンリングの別の実施態様を示す。
【0017】
4分割されたリングとして構成された、複数部分より成るパッキンリング11の有利な実施例が図2に示されている。本発明のパッキンリングを分かり易くするために、図3a及び図3bに、種々異なる分解図が示されている。以下に図2及び図3について説明する。
【0018】
パッキンリング11は、4つの部分つまり2つのリングセグメント12と2つのシールセグメント14とから成っている。これら2つのリングセグメント12と2つのシールセグメント14とは、1つのリングを形成していて、互いに気密に当接し合っている。リング及びシールセグメント12,14の外周面に、周方向溝15が形成されており、この周方向溝15に、セグメントを保持するための周方向ばねが配置されている。2つのリングセグメント12若しくはシールセグメント14は、それぞれ互いに向き合って配置されている。
【0019】
リングセグメント12は、半径方向で内方に湾曲された(一般的に円形の)周面16を有しており、この周面16は、パッキンリング11の使用時に、シールしようとする構成部分(この場合、圧縮機のピストンロッド)に気密に当接する。リングセグメント12にはさらに、リングセグメント12の半径方向外側の領域に、軸方向に突き出すショルダ18が設けられており、このショルダ18は、半径方向内方で接線方向のシール面19によって仕切られている。これによって、接線方向のシール面19と周面16との間で、端面に第1の半径方向のシール面13が形成されている。周方向で見て、リングセグメント12の両端部は、第1の半径方向の端面17によって仕切られている。
【0020】
シールセグメント14は、同様に半径方向で内方に湾曲された(一般的に円形の)周面21を有しており、この周面21は、パッキンリング11の使用時に、シールしようとする構成部分(この場合、圧縮機のピストンロッド)に当接する。シールセグメント14は、周方向で見てその両端部が、第2の半径方向の端面22と接線方向の端面23とによって制限されている。さらに、シールセグメント14に軸方向の突起24が設けられており、この軸方向の突起24は、半径方向内方で、シール面21を軸方向で延長している。この軸方向の突起24は、リングセグメント12の軸方向のショルダ18に向き合う側に配置されている。周方向で見て、突起24はシールセグメント14の一部だけに亘って延在していて、両タブが第3の半径方向の端面25によって閉鎖されている。これによって周方向に1つの段部が形成される。またこれによって、第3の半径方向の端面25とシールセグメント14の両端部との間に、第2の半径方向のシール面26が形成される。
【0021】
組み立てた状態で、リングセグメント12の接線方向のシール面19に隣接するシールセグメント14の接線方向の端面23が気密に当接する。また、リングセグメント12の第1の半径方向のシール面13に、隣接するシールセグメント14の第2の半径方向のシール面26が気密に当接している。この場合、シールセグメント14の第2の半径方向の端面22は互いに向き合って配置されていて、摩耗ギャップ30を形成する。これによって、2つのシールセグメント14の内側の周面21は、摩耗ギャップ30に至るまでほぼ閉鎖されている。シールセグメント14の軸方向の突起24は、リングセグメント12の両端部間に配置されている。この場合、互いに隣合った第1の半径方向の端面17と第3の半径方向の端面25とは、第1の半径方向の摩耗ギャプp31を形成するために互いに間隔を保って向き合って配置されている。これによって、2つの摩耗ギャップ30,31は、パッキンリング11の種々異なる端面側に配置されている。リングセグメント12及びシールセグメント14のこのような配置によって、複数の部分より成るパッキンリング11は、半径方向でもまた軸方向でも、また内方の周面においても、シールしようとする構成部分例えばピストンロッドに対してシールする。
【0022】
本発明によるパッキンリング11は4分割されたリングに限定されるものではなく、4つ以上の部分、例えば6つ又は8つの部分より成っていてもよい。この場合、各リングセグメント12及びシールセグメント14の構成、並びに各セグメントの協働作用は、上記実施例のものと同じである。
【0023】
本発明によるパッキンリング11に、非常に簡単に圧力補償手段を実現することができる。その1例として図4に、4分割されたパッキンリング11が示されている。この場合、シールエレメント14の内側の周面21に周方向溝40が形成されており、この周方向溝40は、図示の実施例では、周方向でシールセグメント14の2つの第3の半径方向の端面25間に延在していて、第2の摩耗ギャップ31の領域内で、切欠41を介して、シールセグメント14の第2の半径方向のシール面26に接続されている。それによって、摩耗ギャップ31内に作用する圧力は周方向溝40内でも作用する。この場合に生じる圧力分布について、以下に図5を用いて説明する。
【0024】
複数部分より成るパッキンリング11は、パッキン室3内、例えば軸方向で隣合って配置された2つの室隔壁10間に配置されている。この場合、シールセグメント14の軸方向の突起24は、高い圧力Pを有する側に向いている。パッキンリング11も、高い圧力Pによって、パッキン室3の低い圧力側の壁部に対して気密に押し付けられている。半径方向で外側の周面において、高い圧力Pがパッキンリング1に作用し、このパッキンリング1をピストンロッド5に気密に押し付ける。周方向溝40を第1の摩耗ギャップ31に、及びひいては高い圧力Pを有するスペースに接続することによって、周方向溝40内に同様に高い圧力Pが作用する。周方向溝40と低圧側との間の圧力は、低い圧力Pに低下される。これによって、パッキンリング11とピストンロッド5との間の面圧は減少され、ひいては摩耗は減少される。このような構成において、周面21に、第3の半径方向の端面25と第2の半径方向の端面22との間に周方向溝64が設けられている。この周方向溝64は、第2の摩耗ギャップ31の領域内で、切欠65を介してシールセグメント14の第2の半径方向のシール面26に接続されているので、周方向溝64内に、摩耗ギャップ31内の圧力が作用する。この場合、この周方向溝64は、周方向で見て、シールセグメント14の両端部に設けることができる。この場合、周方向溝64の作用は、図4及び図5に基づいて説明したのと同じである。内側の周面21における圧力分布に基づいて、パッキンリング11は、このような圧力補償によって傾く傾向があり、ひいては不均一な摩耗が発生する傾向がある。このような傾きを避けるために、軸方向の突起24の領域内でシールセグメント14の内側の周面21に高圧溝60が設けられており、この高圧溝60は、半径方向の切欠61(簡単な孔)を介してパッキンリング11の外側の周面に接続されており、それによって、外側の周面に作用する圧力は、高圧溝60内にも生じる。選択的に、高圧溝60は、半径方向の切欠61の代わりに、第2の摩耗ギャップ31の領域内で、別の軸方向の切欠を介して、シールセグメント14の第2の半径方向のシール面26に接続されていてもよい。高圧溝60と軸方向の突起24(軸方向の突起24の本来の端面側)との間に、さらに低圧溝62が設けられており、この低圧溝62は、軸方向の切欠63(図示の実施例では軸方向で高圧溝60の隣に配置された第2の溝)を介して、パッキンリング11の、軸方向の突起24とは反対側の端面側に接続されており、それによって、低圧溝62内には、軸方向の突起24とは反対側の前記端面側に作用する圧力が形成される。高圧溝60及び低圧溝62の作用は、図7に示されている通りである。パッキンリング11の外側の周面には、やはり高い圧力Pが作用し、従って切欠61を介して高圧溝60内にも高い圧力Pが作用する。高圧溝と、高い圧力Pを有する側との間に配置された低圧溝62は、切欠63を介して、低い圧力Pの側に接続されているので、低圧溝62内には同様に低い圧力Pが形成される。これによって、内側の周面21に作用する圧力は低圧溝62の領域内で低下し、次いで再び高い圧力Pに上昇する。このような圧力分布は、圧力補償用の周方向溝64によってシールセグメント14の傾きに対抗するように作用する。
【0025】
しかしながら、シールセグメント14の内側の周面21内の高圧溝60及び低圧溝62の配置は、圧力補償のための周方向溝40,64の配置とは無関係である。しかしながら高圧溝60及び低圧溝62は、周方向溝40,64無しでも設けることができる。
【0026】
摩耗が進むと、図8に6分割されたパッキンリング11を用いて矢印で示されているように、シールセグメント14は、互いに接近する方向に移動する。この場合、破線によって、次第に大きくなる摩耗が示されている。このようなパッキンリング11では、摩耗によってシールセグメント14の両端部が次第に弱くなり、それによって剛性が失われる。4分割されたパッキンリングにおいては、シールセグメント14は摩耗の際に同様に、図9に示されているように半径方向で互いに接近する方向に移動し、この場合、両端部の剛性は殆ど変化することがない。これによって、セグメント中央部つまり軸方向の突起24の領域の摩耗が最大となる。しかしながらこの場合、全材料厚が提供されているので、摩耗は減少される。
【0027】
パッキンリング11の別の有利な実施態様によれば、軸方向の突起24の端面側でパッキンリング11の半径方向で外側の領域に、図10に示された半径方向の段部70が設けられている。他方ではこれによって、シールセグメント14は、軸方向の突起24の領域が、半径方向の段部によって曲がりやすく構成されている。このような半径方向の段部を構成することによって、セグメント12,14の所定の半径方向の曲げこわさを得ることによってシール作用を改善するためのその他の構造的な特徴が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】aは半径方向で断面したパッキンリングを備えた、従来公知のシールの部分図、bはパッキンリングの斜視図、cはaの一部の拡大図である。
【図2】本発明の1実施例によるパッキンリングの斜視図である。
【図3】a及びbは、本発明によるパッキンリングの、異なる方向で見た分解図である。
【図4】a及びbは、圧力補償手段を備えたパッキンリングの異なる方向で見た分解図である。
【図5】本発明によるパッキンリングにおいて発生する圧力分布を示す、部分断面図である。
【図6】選択的な圧力補償手段を備えたパッキンリングの斜視図である。
【図7】図6の実施例において発生する圧力分布を示す、部分断面図である。
【図8】本発明によるパッキンリングの連続的な摩耗を示す概略的な平面図である。
【図9】本発明によるパッキンリングの連続的な摩耗を示す概略的な平面図である。
【図10】本発明の別の実施態様によるパッキンリングの斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ピストン圧縮機、 2 圧力パッキン、 3 パッキン室、 4 シール、 5 ピストンロッド、 6,7 パッキンリング、 9 ゴムばね(周方向ばね)、 10 パッキングハウジング若しくは室隔壁、 11 パッキンリング、 12,14 リングセグメント(シールセグメント)、 13 第1の半径方向のシール面、 15 周方向溝、 16 周面、 17 第1の半径方向の端面、 18 軸方向に突き出すショルダ、 19 接線方向のシール面、 21 円形の周面、 22 第2の半径方向の端面、 23 接線方向の端面、 24 軸方向の突起、 25 第3の半径方向の端面、 26 第2の半径方向のシール面、 30,31 摩耗ギャップ、 40 周方向溝、 41 切欠、 60 高圧溝、 62 低圧溝、 64 周方向溝、 70 段部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリングセグメント(12)と複数のシールセグメント(14)とを備えた、複数の部分より成るパッキンリングであって、前記複数のリングセグメントと複数のシールセグメントとが互いに気密に接しながら1つのリングを形成するように配置されていて、半径方向で内方に湾曲された周面(21)を有しており、前記リングセグメント(12)は周方向の両端部が、それぞれ第1の半径方向の端面(17)によって仕切られていて、前記リングセグメント(12)の半径方向外側の領域に軸方向に突き出すショルダ(18)が設けられており、該ショルダ(18)が、接線方向のシール面(19)によって仕切られている形式のものにおいて、
前記シールセグメント(14)に軸方向の突起(24)が設けられており、該突起(24)によって、前記シールセグメント(14)の半径方向内方に位置する湾曲された周面(21)が広げられており、前記軸方向の突起(24)が、周方向で見て前記リングセグメント(12)の両端部間に配置され、かつ第1の摩耗ギャップ(31)を形成するために前記リングセグメント(12)の両端部から間隔を保って配置されていることを特徴とする、複数の部分より成るパッキンリング。
【請求項2】
前記シールセグメント(14)の、周方向で見て両端部にそれぞれ1つの接線方向の端面(23)と第2の半径方向の端面(22)とが設けられており、前記接線方向の端面(23)が、隣接し合うリングセグメント(12)の接線方向のシール面(19)に当接していて、前記第2の半径方向の端面(22)が、第2の摩耗ギャップ(30)を形成するために互いに向き合って間隔を保って配置されている、請求項1記載の複数の部分より成るパッキンリング。
【請求項3】
軸方向の突起(24)が周方向で第3の半径方向の端面(25)によって仕切られていて、隣接し合うリングセグメント(12)及びシールセグメント(14)の第1の半径方向の端面(17)と第3の半径方向の端面(25)とが、第1の摩耗ギャップ(31)を形成するために互いに向き合い、かつ互いに間隔を保って配置されている、請求項1又は2記載の複数の部分より成るパッキンリング。
【請求項4】
複数の部分より成るパッキンリング(11)が、2つのリングセグメント(12)と2つのシールセグメント(14)とを有する4つの部分より構成されており、前記リングセグメント(12)とシールセグメント(14)とがそれぞれ互いに向き合って配置されていて、シールエレメント(14)の半径方向内方に位置する周面(21)が、第2の摩耗ギャップ(30)まで閉じた周面を形成している、請求項1から3までのいずれか1項記載の複数の部分より成るパッキンリング。
【請求項5】
前記シールセグメント(14)の、半径方向内方に位置する前記周面(21)に周方向溝(40,64)が設けられており、これらの周方向溝(40,64)が、前記第1の摩耗ギャップ(31)の領域の切欠(41,65)を介して、前記シールセグメント(14)の第2の半径方向のシール面(26)に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の複数の部分より成るパッキンリング。
【請求項6】
前記シールセグメント(14)の半径方向内方に位置する前記周面(21)に高圧溝(60)が設けられており、該高圧溝(60)が切欠(61)を介してパッキンリング(11)の外側の周面に接続されているか、又は第2の摩耗ギャップ(30)の領域の切欠を介してシールセグメント(14)の第2の半径方向のシール面(26)に接続されていて、高圧溝(60)と軸方向の突起(24)との間に低圧溝(62)が設けられており、該低圧溝(62)が、切欠(63)を介して、パッキンリング(11)の、軸方向の突起(24)とは反対側の端面側に接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の複数の部分より成るパッキンリング。
【請求項7】
前記リングセグメント(12)及びシールセグメント(14)の、軸方向の突起(24)を備えた端面側で半径方向外側の領域内に、半径方向の段部(70)が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のパッキンリング。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の、複数の部分を有するパッキンリングより成るシールパッキンにおいて、前記パッキンリングがパッキン室(3)内に配置されていて、前記シールセグメント(14)の軸方向の突起(24)が、高い圧力(P)を有する側に向けられていることを特徴とする、圧力パッキン。
【請求項9】
それぞれ請求項1から7までのいずれか1項記載の複数の部分を有するパッキンリング(11)より成る、軸方向で並んで配置された複数の圧力パッキン(2)を有する、圧縮機のピストンロッド(5)と圧縮機ハウジングとの間のシールにおいて、前記パッキンリングがパッキン室(3)内に配置されていて、前記シールセグメント(14)の軸方向の突起(24)が、高い圧力(P)を有する側に向けられていることを特徴とする、シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−109016(P2009−109016A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279938(P2008−279938)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(304033177)ヘルビガー コンプレッソーアテヒニーク ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (10)
【氏名又は名称原語表記】Hoerbiger Kompressortechnik Holding GmbH
【住所又は居所原語表記】Donau−City−Strasse 1, A−1220 Wien, Austria
【Fターム(参考)】