説明

複数取扱器による調理物の取扱方法と装置

【課題】 複数取扱器をシリーズに接続して同時使用するのに過電流が生じないことを保証できるようにする。
【解決手段】 複数の取扱器1の接続をシリーズに行ってそれぞれの熱源11に通電し、各熱源11により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供するのに、その時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるように各熱源11をオン、オフ制御して、各取扱器1での調理物の取扱いに必要な消費電力量を通算して満足することにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理物に対し装備している熱源によって調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行う複数取扱器による調理物の取扱方法と装置に関し、種類ごとに取扱器に盛り付けた調理物を複数の人の飲食などの要に共通に提供するいわゆる立食、バイキング料理、宴会、レストラン、惣菜売り場などにおける調理物の取り扱いに好適である。
【背景技術】
【0002】
多様な料理に対応する加熱源、および調理具を組み合わせて備えたパーティ、宴会などの目的に合わせた料理を同時に提供できるようにした調理器が知られているし(例えば、特許文献1参照。)、多様な料理を調理する調理部が並ぶ料理コーナーを設けて、ユーザーによる取り分け購入に供し、料金支払いコーナーでの料金の支払い後、それを別途設置されたテーブルにて食せるようにする量り売りのバイキングレストランシステムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、ワゴンの長手方向に惣菜の種類に応じた保温領域、保冷領域を含む複数の領域に区画された惣菜収容部を有し、各領域は惣菜を収容する1つまたは複数の着脱自在な惣菜容器ないし惣菜トレイを備えたものも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平10−272065号公報
【特許文献2】特開2003−042831号公報
【特許文献3】特開2002−186524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示のものは、ガス式で網焼き用、シーズヒータ加熱式で鉄板用、電磁加熱式で天ぷら用、の各種加熱器を連結して用いるようにしているが、それら連結して使用する加熱器の加熱源どうしは個別にしか使用されないものである。このため、加熱器は連結しても、商用電源への接続はそれぞれ個別となって加熱器の数に比例した数のパラレルな配線が必要である。このため、多数の加熱器によって多様な調理物を取り扱って提供するには配線の引き回しに不便である上スペースも要し、引っ掛かりなどの危険を伴いやすく、不体裁でもある。また、多数取扱器の同時使用で過剰な電力消費があると過電流が流れて電気ブレーカが動作し停電するといったことがあるが、このような事態に予め対応しにくく停電に遭遇してしまいやすい。
【0004】
特許文献3に開示のものは、ワゴン本体に、赤外線ランプなどの加熱ランプを持った第1の保温領域、電熱器を持った第2の保温領域、周壁および底面を断材で断熱した保冷槽を有し、加熱ランプ、電熱器は商用電源と接続するアース付きコンセントを個別に設けている。従って、このものにあっても、加熱減を持った保温領域を1つのワゴンに複数設けているが、商用電源への接続はそれぞれ個別となって保温領域の数に比例した数のパラレルな配線が必要であり、特許文献1に記載のものと同様な問題がある。
【0005】
なお、特許文献2は料理コーナーにつき調理物がバイキング式に並べられていることしか開示していない。つまり、加熱源などの有無や給電方式についての提案はなく、従来方式、例えば特許文献1、3に記載のような方式の問題を解決するものではない。
【0006】
そこで、出願人は、複数取扱器をシリーズに接続してそれらの熱源への給電配線を簡略化し、複数種の調理物を複数の取扱器で所定の取り扱いを行いながら、複数の人の要に共通に提供できるようにすることを別途提案している。
【0007】
しかし、この提案につき本発明者がさらに実験し検討を重ねているなか、このような給電方式では、各熱源に必要な消費電力を保証するために、それら熱源を電源に対し並列に接続することになるが、取扱器の接続数や接続し合う取扱器の種類によって、給電回路に過電流が流れて故障の原因になったり、電気ブレーカが働いて停電する原因になったりすることを知見した。
【0008】
本発明の目的は、このような新たな知見に基づき複数取扱器をシリーズに接続して同時使用するのに、過電流が生じないことを保証できる複数取扱器による調理物の取扱方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の複数取扱器による調理物の取扱方法は、複数の取扱器の接続をシリーズに行ってそれぞれの熱源に通電し、各熱源により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供するのに、その時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるように各熱源をオン、オフ制御して、各取扱器での調理物の取扱いに必要な消費電力量を通算して満足することを1つの特徴としている。
【0010】
このような構成では、複数の取扱器の接続をシリーズに行ってそれらの熱源に通電することにより、個々の取扱器の取扱機能を立ち上がらせて調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時進行させながら、各熱源をその時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるようにオン、オフ制御することにより、消費電力量が所定の範囲を超えて過電流が流れるようなことを防止することができる。
【0011】
このような方法を達成する複数取扱器による調理物の取扱装置としては、通電により働く熱源を有して調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取扱機能を持った複数の取扱器と、各取扱器をシリーズに接続してそれらの熱源を通電する給電回路と、その時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるように各熱源をオン、オフ制御して、各取扱器での調理物の取扱いに必要な消費電力量を通算して満足するようにする制御手段と、を備えた1つの特徴とするもので足りる。
【0012】
ここで、各熱源への通電は重複しない異時タイミングで行う、さらなる構成では、
通電時間の分配だけの簡単な制御で過剰な消費電力によって過電流が流れるのを回避することができ、分配時間に差を持たせることで個々の熱源に必要な消費電力の違いにも対応することができる。
【0013】
本発明の複数取扱器による調理物の取り扱い方法は、また、複数の取扱器の接続をシリーズに行ってそれぞれの熱源に通電し、各熱源により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供するのに、複数の取扱器の1つを親器とし、この親器にシリーズに接続された他の取扱器である子器を含む親器での通電量に応じて子器への通電を制御することを別の特徴としている。
【0014】
このような構成では、複数の取扱器のうちの親器を基点に1つ以上の子器をシリーズに接続してそれらの熱源に通電し、個々の取扱器の取扱機能を立ち上がらせて調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時進行させるが、接続した複数の取扱器の熱源を立ち上がらせるための総消費電力が基点となる親器での通電量に反映していて、これをモニタした通電量に応じて子器への通電を制御するので、親器に接続した子器の種類や数によって過剰な消費電力となって過電流が流れるのを回避することができる。
【0015】
このような方法を達成する複数取扱器による調理物の取扱装置としては、通電により働く熱源を有して調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取扱機能を持った複数の取扱器と、1つの取扱器を親器としてこの親器に他の取扱器を子器として1つまたはそれ以上シリーズに接続してそれらの熱源を親器を基点として通電し、それぞれに所定の取り扱いを行わせる給電回路と、親器での子器を含む通電量に応じて子器への通電を制御する制御手段と、を備えたことを別の特徴とするもので足りる。
【0016】
ここで、制御は、親器とそれに接続される子器との通信情報に基づき行う、さらなる構成では、
親器への子器の接続状態が、接続された子器からの通信によって親器において知ることができ、親器への子器の接続状態、つまり接続する子器の種類や数が未定であっても、子器が接続される都度その接続と種類とをモニタして接続が所定の消費電力量範囲を超えて過電流が流れる使用条件かどうかを即時に判断でき、所定の消費電力範囲を超えないように通電を制御することができる。
【0017】
この場合、子器への通電制御は、親器での通電量が所定の範囲を超えるとき、子器の全部または過剰接続の子器への通電を断つ、さらなる構成では、
子器の接続が過剰となっても、子器全ての通電を断つことで親器を使用しながら子器の接続のやり直しを促すことができるし、過剰接続の子器への通電を断つことで、親器およびそれに接続した過剰接続でない範囲の子器を有効使用しながら、それ以上の子器の接続を断念するか、過剰な消費電力とならない範囲の容量の子器を選択して継続するかといった対応を促すことができる。
【0018】
ここで、過剰接続の子器は、その熱源の消費電力量の小さなものから順に選択する、さらなる構成では、
通電停止による総消費電力量が徒に低減してしまうのを回避することができる。
【0019】
また、調理物の残量を検出する残量検出手段を備え、過剰接続の子器は、残量の少ない順に選択する、さらなる構成では、
通電停止による総消費電力量低減の調理物への影響が軽減する
制御は、親器と子器との間の無線通信によって行う、さらなる構成では、
親器、子器の電気的な接続において、通信ラインの接続が不要となる。
【0020】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴はそれ単独で、あるいは可能な限り種々な組み合わせで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の複数取扱器による調理物の取扱方法と装置の1つの特徴によれば、複数の取扱器の各熱源への通電にて個々の取扱器の取扱機能を立ち上がらせ調理物の調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時に進行させることが、簡単で場所を採らず、従って邪魔にならず、安全かつ安価なシリーズ接続にて実現でき、しかも、取扱器の接続数や種類によって消費電力量が所定の範囲を超えて過電流が流れるようなことを防止して、器具の安全や電気ブレーカが作動する原因となるようなことを防止することができる。
【0022】
各熱源への通電は重複しない異時タイミングで行う、さらなる構成によれば、簡単な制御で過電流が流れるのを回避し、通電の時間分配にて個々の取扱器の消費電力量の違いに応じた使用を保証できる。
【0023】
本発明の複数取扱器による調理物の取り扱い方法、装置の別の特徴によれば、複数の取扱器である親器と子器の各熱源への通電にて個々の取扱器の取扱機能を立ち上がらせ調理物の調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時に進行させることが、簡単で場所を採らず、従って邪魔にならず、安全かつ安価なシリーズ接続にて実現でき、しかも、接続の基点となる親器での通電量に応じた簡単な通電制御で、接続した子器の種類や数によって過電流が流れるのを回避し、通電の時間分配にて個々の取扱器の消費電力量の違いに応じた使用を保証できる。
【0024】
制御は、親器とそれに接続される子器との通信情報に基づき行う、さらなる構成によれば、接続する子器の種類や数が未定であっても、接続した子器からの通信による情報を基にした制御で、接続した子器の種類や数による過剰な使用に対応することができる。
【0025】
この場合、子器への通電制御は、親器での通電量が所定の範囲を超えるとき、子器の全部または過剰接続の子器への通電を断つ、さらなる構成によれば、子器の接続が過剰となっても、親器を使用しながら子器の接続のやり直しを促したり、親器およびそれに接続した過剰接続でない範囲の子器を有効使用しながら過剰への対応を促すことができる。
【0026】
過剰接続の子器は、その熱源の消費電力量の小さなものから順に選択する、さらなる構成によれば、通電停止制御で総消費電力量が徒に低減して定格消費電力量の有効度を高められる。
【0027】
また、過剰接続の子器は、調理物の残量の少ない順に選択する、さらなる構成によれば、過剰接続のための通電停止の調理物への影響が軽減する。
【0028】
制御は、親器と子器との間の無線通信によって行う、さらなる構成によれば、親器、子器の電気的な接続がハード回路だけでよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図18を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0030】
本実施の形態は、図1、図2に1つの例を示していて、このものは図1(a)(b)に示すように、複数の取扱器1の接続を配線10でシリーズに行ってそれぞれの熱源11に通電し、各熱源11により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供する。その際に、複数の取扱器1の1つを親器2とし、この親器2にシリーズに接続された他の1つ以上の取扱器1である子器3・・を含む親器2での通電量に応じて子器3・・への通電を制御する。図示する例では配線10を利用した給電によって、熱源11として温熱源となるヒータを用いて通電し、そのときの発熱により調理物を加熱し、調理またはおよび保温を行うようにしている。しかし、ペルチェ素子、冷凍機構を利用するなどした冷熱源を採用して冷却、冷凍機能を発揮させることもできる。つまり保冷するものとすることもできる。親器2、子器3は図1(a)に示すように共に浅型容器41、深型容器42を着脱できるように設け、これらを個別の熱源11にて加熱するようにしているが、図1(b)では熱源11は1つにまとめて図示している。しかし、親器2、子器3での容器の数や種類、熱源11との関係は自由に設定できる。
【0031】
上記のような通電方式では、複数の取扱器1のうちの親器2を基点に1つ以上の子器3を配線10によりシリーズに接続してそれらの熱源11に通電し、個々の取扱器1の取扱機能を立ち上がらせて調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時進行させられる。このとき、接続した複数の取扱器1の熱源11を立ち上がらせるための総消費電力が通電の基点となる親器2での通電量に反映していて、これをモニタした通電量に応じて子器3への通電を制御するので、親器2に接続した子器3の種類や数によって過剰な消費電力となって過電流が流れるのを回避することができる。この結果、複数の取扱器1の各熱源11への通電にて個々の取扱器1の取扱機能を立ち上がらせ調理物の調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時に進行させることが、簡単で場所を採らず、従って邪魔にならず、安全かつ安価なシリーズ接続にて実現できる。しかも、取扱器1の接続数や種類によって消費電力量が所定の範囲を超えて過電流が流れるようなことを防止して、器具の安全や電気ブレーカが作動する原因となるようなことを防止することができる。
【0032】
このような方法を達成するのに複数の取扱器1をシリーズに接続して調理物を取り扱う取扱装置としては、図1(b)に示すように通電により働く熱源11を有して調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取扱機能を持った複数の取扱器1と、1つの取扱器1を親器2としてこの親器2に他の取扱器1を子器3として1つまたはそれ以上配線10によりシリーズに接続してそれらの熱源11を親器2を基点として並列に通電し、それぞれに所定の取り扱いを行わせる給電回路12と、親器2での子器3を含む通電量に応じて子器3への通電を制御する制御手段13とを備えている。制御手段13は親器2に設けられて、前記通電制御のために給電回路12における自身での通電量をカレントトランス14によってモニタし、検出される通電量によって子器3の熱源11への通電
を制御する。
【0033】
この通電の制御は図1(b)に示す例では、親器2での通電量が所定の消費電力量の範囲を超えて、過電流がながれたとき、給電回路12における親器2側での熱源11の接続部以降に設けたスイッチ要素15を開いて、全ての子器3への通電を断つようにしている。このように子器3全ての通電を断つことで親器2を使用しながら子器3の接続のやり直しを促すことができる。これに気付かせやすくするために、制御手段13はブザー16を働かせて警告するようにしている。また、親器2にメインスイッチや温度調節、動作モード設定などのための操作パネル17が設けられるような場合、この操作パネル17などを利用して視覚的な警告を行うこともできる。図5はそのような具体的な制御例をフローチャートで示している。
【0034】
ここで、上記のような制御は、親器2とそれに1つ以上接続される子器3、3・・との間の図3に示す例のような通信手段21と通信手段22とによる通信情報に基づき各子器3のスイッチング部材などよりなる切換え手段22aを働かせて行うようにすることができる。これにより、親器2への子器3の接続状態が、接続された子器3からの通信によって親器2において知ることができ、親器2への子器3の接続状態、つまり接続する子器3の種類や数が未定であっても、子器3が接続される都度その接続の事実と種類とを接続した子器3からモニタして接続が所定の消費電力量範囲を超えて過電流が流れる使用条件かどうかを即時に判断でき、前記のように親器2での通電量をモニタしなくても、所定の消費電力範囲を超えないように通電を制御することができる。この場合、子器3への通電制御は、親器2での通電量が所定の範囲を超えるとき、子器2の全部の通電を断つのは勿論、過剰接続の子器3への通電を断つだけにすることができる。これにより、親器2およびそれに接続した過剰接続でない範囲の子器3を有効使用しながら、それ以上の子器3の接続を断念するか、過剰な消費電力とならない容量範囲内となる子器3を選択して継続するかといった対応を促すことができる。そのために、制御手段13は前記のような聴覚的な、またはおよび視覚的な警告を行うのが好適である。
【0035】
しかも、制御手段13に子器3の許容する定格接続数を記憶しておけば、図6に示すように、通電量の制御に併せ、あるいは単独で接続数が定格数を超えると直ちにそれへの通電停止や警告処理が行える。また、制御手段13を備える親器2での図1(a)に示す商用電源18との接続を行う配線10の定格容量に見合う最大通電量、つまり最大消費電力量を記憶させておけば、次々接続される子器3の種類や数が不特定なことに対応して、次々接続される子器3の種類や数によって最大消費電力量を超えて過電流が流れる使用条件となることに自動的に対応することができる。
【0036】
このような過剰接続となって通電を停止する子器3は、グループごとに対応して行ってもよいし、1つの例として、熱源11の消費電力量の小さなものから順に選択することができる。これにより、通電停止による総消費電力量が徒に低減してしまうのを回避することができる。また、通電する容器は汁物の調理物を取り扱う取扱器1を優先して通電すると、高温保温に適したものの取扱条件を確保しやすい。以上のような通信による制御は、親器2と子器3との間の通信手段21、22間の無線通信によって行うことができ、これにより、親器2、子器3の電気的な接続において、通信ラインの接続が不要となり、既述の給電回路12の配線10だけでよくなる。また、親器2の通信手段21はマイクロコンピュータなどとする制御手段13に通信機能を搭載すればよいが、子器3では無線通信機能付きのICタグを搭載して簡単に実現することができる。また、重量センサや光センサなどの調理物の残量を検出する残量検出手段を備え、過剰接続の子器3は、残量の少ない順に選択するようにもでき、この結果、通電停止による総消費電力量低減の調理物への影響が軽減する。また、子器3にメインスイッチや温度調節のための操作パネル23などを装備していると、そこでの操作による使用、不使用の別や設定温度の違いなども通信情報として通電制御に反映させることができる。
【0037】
また、図3に示す例、図4に示す例のように、親器2や子器3の操作パネル17、23において予め設定され、またユーザによって設定される制御手段13からの選択、制御情報、親器2や子器3に設けた温度センサ24からの取扱温度や熱源11の温度などについての検出温度情報によって、親器2や子器3の熱源11を親器2の切換え手段13a、子器3の切換え手段22aによってその時々に必要な状態に通電制御できる。
【0038】
これらの無線通信制御には、子器3の熱源11のオン、オフ、制御状態の変化にかかわらず、ICタグなどによる通信手段22への給電は確保される必要があるが、バックアップ電源を採用すれば特別な配線は不要になる。また、なお、必要なら、子器3にも通信手段22と協働する簡単な制御回路を設けることもできる。
【0039】
ところで、前記給電回路12における親器2と子器3との間の配線10、子器3と子器3との配線10は、親器2に対し必要数の子器3を接続していき、またそれを解除できるようにするため、図1、図3、図4に示すように先位の接続具をマグネットプラグ31とし、後位の接続具をマグネットプラグ受32として、磁気吸着を利用して簡単に接続し、また接続を解除できるようにしている。このような磁気吸着はマグネットプラグ31とマグネットプラグ受32との図2(a)に示す磁性体34および図2(b)に示すマグネット35および磁性体36を利用して行われ、上位側の接続具がマグネットプラグ31であることによって、それが図2(b)に示す接続端子31aが電源側に接続された状態になって後位側のマグネットプラグ受32との接続が行われなくても、前記接続端子31aはプラグ端面31bに開口した小さな接続穴31c内に後退していることによって、誤って、あるいはいたずらで触れられるような危険を回避することができる。接続されずに遊んでいる子器3にあるマグネットプラグ31はもとより、マグネットプラグ受32はその図2(a)に示す接続端子32aが外部に突出していても電源に接続されていないことにより危険となることはない。このように、上位側の接続具が非接続状態での電気的に安全なマグネットプラグ31としているので、後位の子器3の接続がなく露出された使用状態となっても安全上問題がないし、接続されない遊んでいる子器3のマグネットプラグ受32が電源側に接続された状態で露出することはなく同様に危険はない。なお、親器2は商用電源18に接続する配線10はその接続のための差込プラグ33を有している。また、この配線10も親器2との間でマグネットプラグ31とマグネットプラグ受32とによって着脱できるように接続するものとしてもよい。
【0040】
なお、マグネットプラグ31の接続端子31aは図2(b)に示す位置に常時突出するようにバネ付勢されており、マグネット35の磁気によって磁性体34、36どうしが吸着し合う接続状態では、マグネットプラグ31側の接続端子31aがマグネットプラグ受32側の接続端子32aによってバネ付勢に抗して押し込まれ、バネ付勢による突出位置への復帰習性によって互いが圧接し合うことで十分な電気接続状態を確保するようになっている。
【0041】
また、別の通電制御として、複数の取扱器1の接続を配線10にてシリーズに行ってそれぞれの熱源11に通電し、各熱源11により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供するのに、その時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるように、給電回路12の上で制御手段13によって各熱源11をオン、オフ制御して、各取扱器1での調理物の取扱いに必要な消費電力量を通算して満足するようにしても、個々の取扱器1の取扱機能を立ち上がらせて調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを同時進行させながら、各熱源11をその時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるようにオン、オフ制御するので、消費電力量が所定の範囲を超えて過電流が流れるようなことを防止することができる。
【0042】
図7にそのような制御例を示しており、一例として、接続される子器3の数や種類が未定なことに対応したものとしている。子器3の接続があると、接続数xが予め設定された定格数以下かどうかを判定し、以下でなければ接続過多で子器3の全部または過剰接続となる子器3の通電をオフして警告を行ってリターンしながら対応を待つ。以下であると適正数で接続子器3の熱源容量w1・・wxを取り込む。次いで、各子器3の熱源容量w1・・wxの違いに応じて通電時間を重ならないように分配し、それぞれの消費電力量W1・・Wxを演算する。演算した総消費電力Wが予め設定された定格消費電力量W0より大きい場合、子器3の全部または過剰分の通電をオフして警告し、リターンして親器2の使用、または親器2および所定容量範囲内での子器3の使用を継続する。総消費電力量Wが定格消費電力量W0以下であると親器2、子器3につき配分した時間ごとの通電を行う。
【0043】
ここで、各熱源11への通電時間配分は図8のタイムチャートで示す例のように重複しない異時タイミングで設定すると、通電時間の分配だけの簡単な制御で過剰な消費電力によって親器2側などで過電流が流れるのを回避することができ、図8に示すように分配時間に差を持たせることで個々の熱源に必要な消費電力の違いにも対応することができる。
【0044】
また、図9に示す別の制御例は、子器3の接続がなければ親器2の通常通電を行って通常使用状態とする。子器3の接続があると、接続数xが予め設定された定格数以下かどうかを判定し、以下でなければ接続過多で子器3の全部または過剰接続となる子器3の通電をオフして警告を行ってリターンしながら対応を待つ。以下であると適正数で接続子器3の設定温度T1・・Txの取り込みとそれに見合う必要熱源容量w1・・wxを設定する。次いで、設定した必要熱源容量w1・・wxの総消費電力量Wが定格消費電力量W0以下となる一定通電時間tを判定する。次いで、判定した一定通電時間の間、各熱源11をそれぞれの必要熱源容量にて通電した後、親器2、子器3の温度センサ24の検出温度を取り込み、各設定温度T1・・Txに対する差ΔT1・・ΔTxを演算する。演算した差の大きな取扱器1から順に差の大きさに応じた時間ずつ通電する。その後、前記一定時間の通電と、その後の設定温度に対する差の大きなものから順にその差の大きさに応じた時間ずつ通電することを繰り返し、親器2、子器3で設定された温度での調理物の取り扱いを行うようにしている。これによると、親器2、子器3での設定温度での調理物の取り扱いを可能にしながら総消費電力量Wが定格消費電力量W0を上まわって親器2において過電流が流れるのを防止できる。
【0045】
図10に示す例では、2つまたはそれ以上の取扱器1を配線10によりシリーズに接続して使用するのに、それぞれの熱源11をタイマスイッチ51によって自動的に一定時間ずつ、あるいは各取扱器1の熱源容量の大きさに比例した時間ずつ、自動的に切換え通電するようにし、各取扱器1の熱源11に対してはサーマルリードスイッチ52を接続して一定温度に保つようにしている。これによると、各取扱器1において設定熱源容量による設定温度を保った調理物の取り扱いを行いながら総消費電力量Wが定格消費電力量W0を上まわって親器2において過電流が流れるのを防止できる。
【0046】
図11に示す例は各取扱器1において、図11(a)に示すように浅型容器41が装着されたのか、図11(b)に示すように深型容器42が装着されたのか、いずれも装着されないかを近接スイッチ61、62などによって検出し、それらの違いによって通電を変えるようにしている。具体的には、熱源11は容器41、42の深さの違いに応動できるように支持しておき、図12に示すように容器の装着がなければ、通電をオフして警告をしリターンするが、容器の装着があって浅型容器41でなければ深型容器42でスープ類、汁物が収容されていると見なして高め保温を行うように熱源11に通電し、スープ類を冷めていると実感されない高めの温度で食されるようにし、浅型容器41であると固形物類が収容されていると見なして、低目の保温を行うように熱源11に通電し、固形物類が乾燥したり焦げたりせずに食されるようにしている。
【0047】
図13、図14に示す例は、図13に示すように取扱器1に浅型容器41や深型容器42を収容する開口161のまわりに装着される容器をそのフランジ部で受ける肩ヒータタイプの熱源11を設け、図13に示すように取扱器1内に設けた光センサ63が容器を検出して暗信号を出している間、その容器に対応する熱源11の通電を継続するが、調理物がなくなって取り外すなどして容器を検出せず明信号を出すに至ると、対応する熱源11の通電をオフし、警告を発声するようにしている。これによって、容器がない状態での無駄で、危険な熱源11への通電を防止することができる。しかし、容器の検出は容器を透明としないで図11に示すような近接スイッチ61、62によることもできる。
【0048】
ここで、装着する容器を透明にして光センサ63で調理物の有無を検出することができ、調理物のない熱源11は通電をオフし警告するような制御ができる。
【0049】
図15、図16に示す例では、図15に示すように、取扱器1に浅型容器41や深型容器42を収容する開口161まわりの相対向する2箇所に、装着される容器をそのフランジ部で受け止める重量センサ71、72を設け、図16に示すように2つの重量センサ71、72が容器を検出して始めて正規の装着と判定し、始めて通電を行い、その後2つの重量センサ71、72が所定の軽量を検出することによって、調理物の偏りなどによる影響なく空になったと精度よく判定して、通電をオフし、警告を行ってリターンするようにしている。
【0050】
図17、図18に示す例は、図17に示すように熱源11および重量センサ81を高さ調節具82、83によって装着される容器の深さに適正な高さ調節して、加熱および重量検出ができるようにし、図18に示すように容器があると重量計測をし、前回計測時より増量していないと調理物が補給されていないので、タイマカウントを行った後、経過時間に対する減量の関係から残量判定し、所定の残量以下でなければそのままリターンし、所定の残量以下であるとき厨房へ補給を無線通信して補給を促し残量なしを招き難くするが、万一補給が遅れることを考えて次に残量なしかどうかを判定し、残量なしでは通電をオフし警告を発してから、残量なしでなければそのまま、リターンする。前記重量計測のあと増量が判定されると調理物の補給が行われたことになるので、タイマカウントをリセットしてリターンする。これによると、不透明な容器を用いても調理物の残量、有無を判定して対応することができる。
【0051】
なお、保温を行うウオーマーは通常150〜200Wの消費電力に設定されるが、このような通常設定値で、上記のような時間分担による通電にて所定の設定温度などを維持しようとすると、通電を分担する分昇温しにくく設定温度にするための総通電時間が長くなり、結果、分担通電時間を採り得る取扱器1の接続数が制限されやすくなる。そこで、通常設定値よりも高く設定すると必要通電時間が短くなって分担通電時間を取りやすく、取扱器1の接続数を増加させやすくなる。具体的には熱源11の消費電力量を500W程度と倍以上に設定して好適である。しかし、これに限られることはない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は複数種の調理物を個々の取り扱い器にて調理、保温、保冷などの取り扱いをしながら複数の人を対象に供給するのに実用でき、複数の取扱器をシリーズに接続し簡易使用することが適正に行える。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る複数取扱器による調理物の取扱装置の1つの例を示す外観図および回路図である。
【図2】図1の装置に用いるマグネットプラグ受けとマグネットプラグとを個別に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る複数取扱器による調理物の取扱装置の別の例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る複数取扱器による調理物の取扱装置の他の例を示す回路図である。
【図5】過電流による1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図6】接続数による1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図7】接続数、接続総消費電力量による1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図8】図7の通電制御での1つの通電具体例を示すタイムチャートである。
【図9】接続数による通電制御と、接続取扱器の総消費電力量の違いによらない一定時間の通電後設定温度との差の大きなものから順じに通電することを繰り返す通電制御とを組み合わせた1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図10】接続取扱器のタイマによる交互通電制御の例を示す断面図および回路図である。
【図11】装着される容器が浅型か深型かを検出する検出手段を持った取扱器の容器判別状態の説明図である。
【図12】図11の検出手段を用いた1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図13】容器の有無検出手段を持った取扱器の断面図である。
【図14】図13の検出手段を用いた1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図15】容器の有無および調理物の有無の検出手段を持った取扱器の断面図である。
【図16】図15の検出手段を用いた1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【図17】調理物の残量、残量の有無を検出する手段を持った取扱器の断面図である。
【図18】図17の検出手段を用いた1つの通電制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 取扱器
2 親器
3 子器
10 配線
11 熱源
12 給電回路
13 制御手段
15 スイッチ要素
16 ブザー
17、23 操作パネル
21、22 通信手段
13a、22a 切換え手段
24 温度センサ
41 浅型容器
42 深型容器
51 タイマスイッチ
61、62 近接スイッチ
63 光センサ
71、72、81 重量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の取扱器の接続をシリーズに行ってそれぞれの熱源に通電し、各熱源により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供するのに、その時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるように各熱源をオン、オフ制御して、各取扱器での調理物の取扱いに必要な消費電力量を通算して満足することを特徴とする複数取扱器による調理物の取扱方法。
【請求項2】
各熱源への通電は重複しない異時タイミングで行う請求項1に記載の複数取扱器による調理物の取扱方法。
【請求項3】
複数の取扱器の接続をシリーズに行ってそれぞれの熱源に通電し、各熱源により調理物に対し調理、保温、保冷の少なくとも1つの取り扱いを行いながら提供するのに、複数の取扱器の1つを親器とし、この親器にシリーズに接続された他の取扱器である子器を含む親器での通電量に応じて子器への通電を制御することを特徴とする複数取扱器による調理物の取扱方法。
【請求項4】
制御は、親器とそれに接続される子器との通信情報に基づき行う請求項3に記載の複数取扱器による調理物の取扱方法。
【請求項5】
通電により働く熱源を有して調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取扱機能を持った複数の取扱器と、各取扱器をシリーズに接続してそれらの熱源を通電する給電回路と、その時々の総消費電力量が所定の消費電力量範囲内となるように各熱源をオン、オフ制御して、各取扱器での調理物の取扱いに必要な消費電力量を通算して満足するようにする制御手段と、を備えたことを特徴とする複数取扱器による調理物の取扱装置。
【請求項6】
制御手段は、各加熱源への通電を重複しない異時タイミングで行う請求項5に記載の複数取扱器による調理物の取扱装置。
【請求項7】
通電により働く熱源を有して調理物に対する調理、保温、保冷の少なくとも1つの取扱機能を持った複数の取扱器と、1つの取扱器を親器としてこの親器に他の取扱器を子器として1つまたはそれ以上シリーズに接続してそれらの熱源を親器を基点として通電し、それぞれに所定の取り扱いを行わせる給電回路と、親器での子器を含む通電量に応じて子器への通電を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする複数取扱器による調理物の取扱装置。
【請求項8】
子器への通電制御は、親器での通電量が所定の範囲を超えるとき、子器の全部または過剰接続の子器への通電を断つ請求項7に記載の複数取扱器による調理物の取扱装置。
【請求項9】
過剰接続の子器は、その熱源の消費電力量の小さなものから順に選択する請求項8に記載の複数取扱器による調理物の取扱装置。
【請求項10】
調理物の残量を検出する残量検出手段を備え、過剰接続の子器は、残量の少ない順に選択する請求項8に記載の複数取扱器による調理物の取扱装置。
【請求項11】
制御は、親器と子器との間の無線通信によって行う請求項5〜10のいずれか1項に記載の複数取扱器による調理物の取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−130142(P2006−130142A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323897(P2004−323897)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】