説明

複数種類の組成物を含む混合物を分離する混合物分離回収装置、プラスチック組成物の再資源化方法、このプラスチック再資源化方法により回収されたプラスチック組成物原料、このプラスチック組成物により製造されたプラスチック部材、およびプラスチック部材の製造方法

【課題】 気泡による影響を小さく抑えることができ、コンパクトに構成された分離回収装置、プラスチック組成物の再資源化方法、このプラスチック再資源化方法により回収されたプラスチック組成物原料、このプラスチック組成物により製造されたプラスチック部材、およびプラスチック部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 比重の異なる複数種類の組成物を含む混合物を液体雰囲気に曝した後に気体雰囲気に曝す湿潤手段30と、混合物を液体中で各組成物の比重に基づいて分離する比重分離手段とを備える混合物分離回収装置20において、湿潤手段30は、液が貯留された貯留部2と、複数種類の組成物を含む混合物Wを貯留部2内に供給する供給部8と、貯留部2内の組成物を液S中に押し込むことが可能な撹拌板10と、撹拌板10にて貯留部2内の液Sと撹拌された後の組成物を搬送する搬送部3と、貯留部2の液中を通して搬送部3に組成物を送り込む連絡口5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の材料を含む混合物を分離する混合物分離回収装置、プラスチック組成物の再資源化方法、このプラスチック再資源化方法により回収されたプラスチック組成物原料、このプラスチック組成物により製造されたプラスチック部材、およびプラスチック部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、埋め立て地の減少や資源の有効活用を行うことを背景に、特に一般の粗大ゴミ処理施設では破砕することが困難で、有用な資源を多く含む家電製品を対象に、2001年4月に家電リサイクル法が施行された。この家電リサイクル法においては、2004年12月現在において、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0003】
しかし、これらの家電製品をはじめとするプラスチック製品は、一般に複数のプラスチック部材を備えており、それらのプラスチック部材はプラスチック組成物の材質が異なることも多く、異なる材質のプラスチック組成物からなる複合部材であることも多い。なお、本明細書においては、材質が異なる複数のプラスチック組成物の集合体を「混合プラスチック組成物」と呼称する。また、本明細書においては、混合プラスチック組成物からなる部材または異なる材質のプラスチック組成物からなる複合部材を「混合プラスチック部材」とも呼称する。また本明細書においては、混合プラスチック部材を備えた製品を「混合プラスチック製品」とも呼称する。さらに本明細書においては、混合プラスチック製品の廃棄物を「混合プラスチック廃材」とも呼称する。
【0004】
ここで、これらの混合プラスチック廃材に含まれる混合プラスチック部材を再度加工して、家電製品をはじめとする各種の混合プラスチック製品の部材またはその原料として使用するには、これらの混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離した上で、再度加工する必要がある。従来から提案されているプラスチック廃材の再資源化方法には、単独の材質のプラスチック組成物だけを含むプラスチック廃材を、手解体で分離して再資源化する方法が多い。しかし、このように手解体で分離して再資源化する方法には、多大の手間と経費がかかるという問題がある。さらに、このような方法では混合プラスチック廃材には対応できないという問題がある。
【0005】
そこで、混合プラスチック廃材から混合プラスチック部材を分離して、さらにその混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離することのできる方法について、各方面で多くの開発努力がなされている。例えば、特許第2961293号公報または特許第3457619号公報には、混合プラスチック組成物の比重差を利用し、液体中でプラスチック組成物の系統ごとに分離するプラスチックの分離回収方法が記載されている。このプラスチックの分離回収方法は、液体中に混合プラスチック部材または混合プラスチック部材の破砕物を投入した際、液体比重より小さな混合プラスチック組成物は浮遊し、液体比重より大きな混合プラスチック組成物は沈降することを用いて分離するものである。
【特許文献1】特許第2961293号公報
【特許文献2】特許第3457619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このプラスチックの分離回収方法では、液中にて混合プラスチック組成物を分離する際に、プラスチック組成物の表面に付着する気泡の影響が大きく、特に混合プラスチック組成物を分別するのに十分な選別能力を有するとはいえないものとなっていた。
【0007】
そこで、プラスチック組成物の表面に付着する気泡の影響を低減するために、プラスチック組成物を液体雰囲気に曝した後に気体雰囲気に曝す湿潤手段と、前記混合物を液体中で各組成物の比重に基づいて分離する比重分離手段とを備える混合物分離回収装置が提案されている。この混合物分離回収装置においては、まず、プラスチック組成物を液体中に沈降させ、沈降させたプラスチック組成物を水中で振動させて、プラスチック組成物を液体雰囲気中に曝す。そして、この液体雰囲気中のプラスチック組成物を、ザル、メッシュ、布地、紙等の液体に対して透過性を有するもので液体中から取り出し、プラスチック組成物の表面に濡れ性を付与することとしている。
【0008】
しかし、この混合物分離回収装置においては、ザル、メッシュ、布地、紙等により、液体中のプラスチック組成物を回収する回収手段を設ける必要があり、装置全体が大型化し、高コストなるという問題があった。また、上記湿潤手段においては、液体よりも比重の軽いプラスチック組成物の破砕片が液面上に浮き、全てのプラスチック組成物を液体中に沈降させることが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、気泡による影響を小さく抑えることができ、コンパクトに構成された複数種類の組成物を含む混合物を分離する混合物分離回収装置、プラスチック組成物の再資源化方法、このプラスチック再資源化方法により回収されたプラスチック組成物原料、このプラスチック組成物により製造されたプラスチック部材、およびプラスチック部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る混合物分離回収装置は、1つの局面では、比重の異なる複数種類の組成物を含む混合物を液体雰囲気に曝した後に気体雰囲気に曝す湿潤手段と、混合物を液体中で各組成物の比重に基づいて分離する比重分離手段とを備える混合物分離回収装置において、湿潤手段は、液が貯留された貯留部と、混合物を貯留部内に供給する供給部と、複数種類の組成物を含む混合物を貯留部内に供給する供給部と、貯留部内の組成物を液中に押し込むことが可能な撹拌板と、撹拌板にて貯留部内の液と撹拌された後の組成物を搬送する搬送部と、貯留部の液中を通して搬送部に組成物を送り込む連絡口とを備える。好ましくは、撹拌板は、貯留部に達するように配置された回転軸の一端側に取付けられ、撹拌板の少なくとも一部が周期的に貯留部内の液の液面よりも上方に露出するように、回転軸を中心に回動する。好ましくは、撹拌板は、回転軸の軸方向と交差する方向に延在するように回転軸に取付けられる。好ましくは、回転軸の軸線は、連絡口から離れるに従って、下方に向けて傾斜しており、水平方向となす角度が0°以上45°以下である。好ましくは、撹拌板は、回転軸の軸線となす角度が5°以上30°以下とされる。好ましくは、搬送部は、ケーシングと、ケーシング内に配置された搬送手段を有し、ケーシングは、貯留部から離れるに従って、上方に傾斜し、その端部側が液の液面より上方に位置する。好ましくは、ケーシング内に液を供給する液供給部を備える。搬送手段は、スクリューコンベアであり、スクリューコンベアは、回転軸の他端部側の外周上に取付けられたスクリュー羽根を有する。好ましくは、スクリュー羽根と、回転軸の軸線とのなす角度が60°以上90°以下とされる。好ましくは、撹拌板は、スクリュー羽根の連絡口側の端部あるいはその近傍から回転軸の一端部側に延在している。好ましくは、液が水とされる。本発明に係るプラスチック組成物の再資源化方法は、1つの局面では、複数種類のプラスチック組成物を湿潤させる工程と、湿潤後に気体雰囲気中で搬送する工程と、プラスチック組成物を比重分離装置に投入して、比重差によりプラスチック組成物を分離する工程とを備える。好ましくは、プラスチック組成物は、エアコン、テレビ、冷蔵庫、および洗濯機のうち、少なくとも1つの一部である。本発明に係るプラスチック組成物は、1つの局面では、上記プラスチック組成物の再資源化方法により回収される。好ましくは、ペレット状とされた上記プラスチック組成物原料。本発明に係るプラスチック部材は、1つの局面では、上記プラスチック組成物原料から製造される。本発明に係るプラスチック部材は、他の局面では、上記プラスチック組成物の再資源化方法により回収されたプラスチック組成物原料から製造される。本発明に係るプラスチック部材製造方法は、1つの局面では、複数種類のプラスチック組成物を湿潤させる工程と、湿潤後に気体雰囲気中で搬送する工程と、プラスチック組成物を比重分離装置に投入して、比重差によりプラスチック組成物を分離する工程と分離されたプラスチック組成物を用いて、プラスチック部材を作成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る混合物分離回収装置によれば、破砕された混合物の表面に付着する気泡の影響を小さく低減することができると共に、混合物分離回収装置をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1から図3を用いて、本発明に係る実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る混合物分離回収装置20の概略構成を示す断面図である。この図1の例では、混合物分離回収装置20は、混合プラスチック組成物(組成物)Wに濡れ性を付与すると共に、洗浄を施す湿潤洗浄装置(湿潤手段)30と、この湿潤洗浄装置30に連設された比重分離装置(比重分離手段)12とを備えている。
【0013】
湿潤洗浄装置30は、筒状に形成されたケーシング1と、このケーシング1の内部に配置された仕切り板4によりケーシング1内に形成された貯留部2と、液除去搬送部(搬送部)3とを備えている。この仕切り板4には、貯留部2と、液除去搬送部3との間を連通する連絡口5が形成されている。そして、このケーシング1は、貯留部2側から液除去搬送部3に向かうに従って、上方に向けて傾斜するように配置されている。このケーシング1内には、ケーシング1の一方の端部から他方の端部に亘って延在し、回転可能に支持された回転軸9が配置されている。すなわち、回転軸9の一端側が貯留部2内に達しており、他端側が液除去搬送部3内に達している。この回転軸9は、液除去搬送部3側の端部側に配置された駆動部6により回転させられる。
【0014】
貯留部2内には、水または水を主成分とする液Sが貯留されている。ケーシング1の貯留部2側の上面には、外方に開口し、複数種類の混合プラスチック組成物Wの破砕片が投入される投入口(供給部)8が形成されている。また、貯留部2内には、貯留部2内の液Sの液面が一定の位置に維持されるように、オーバフロー部が配置されている。このオーバフロー部は、貯留部2の内壁面に形成された開口部14を含む構成とされている。この開口部14は、貯留部2の底部から所定の高さの位置に形成されており、液Sがこの開口部14から外方に排出されることにより、液Sの液面が所定の位置に維持される。また、この開口部14は、連絡口5より上方に形成されており、連絡口5は、液Sの液面より下方に位置している。
【0015】
回転軸9は、ケーシング1に沿って配置されており、貯留部2内においては、連絡口5から離れるにしたがって、下方に向けて傾斜している。回転軸9の回転軸線(軸線)Oは、水平方向となす角度θ1が0°以上45°以下となるように配置されている。なお、回転軸9の回転軸線Oと、水平方向とのなす角度とは、回転軸線Oと水平方向とが交差する角度のうち、小さい方の角度を意味する。ここで、回転軸9と、水平方向とのなす角度θ1が45°より大きくなると、貯留部2内の混合プラスチック組成物Wを液除去搬送部3に向けて搬送する角度も大きくなり、混合プラスチック組成物Wの搬送が困難なものとなるためである。
【0016】
貯留部2内に位置する回転軸9の外周面上には、連絡口5側の端部側から他方の端部側に亘って、撹拌板10が取付けられている。このため、撹拌板10は、回転軸9が回転することにより回転軸9を中心に回動する。ここで、連絡口5の近傍では、回転軸9が液面の近傍に位置している。このため、撹拌板10の回動過程において、少なくとも、撹拌板10のうち連絡口5側の部分は、液面より上方に露出して、外気に曝され、その後、再度液S中に入り込むことを周期的に繰り返す。撹拌板10の一部が液面上から露出して、再度液S中に入り込む際には、混合プラスチック組成物Wのうち、液Sより比重が小さく液面上に浮遊するものは液S中に押し込まれる。
【0017】
図2は、図1のII−II線における断面図である。この図2に示されるように、ケーシング1は、断面形状が略半円状に形成された底部1aと、この底部1aに連設され上方に延在する側壁部1bとを備えている。図1に示す撹拌板10の径方向の長さは、図2に示す底部1aの径に近似しており、撹拌板10の外周縁部は、図2に示す底部1aの内壁面の近傍を通過する。具体的には、ケーシング1の内壁面と、撹拌板10の外周端部との距離は、例えば、5mm程度とされている。なお、ケーシング1と撹拌板10の外周端部とが干渉しない範囲で、より近接しているのが好ましく、上記寸法に限られない。
【0018】
また、図2において、回転軸9は、半円状に形成された底部1aの中心軸またはその近傍に沿って配置されている。そして、回転軸9が、回転方向Tに向けて回転すると、図1に示す撹拌板10も回転方向Tに沿って回動する。ここで、撹拌板10が液S中から気体雰囲気中に露出する際には、液S面上に浮遊する混合プラスチック組成物Wを気体雰囲気中に取り出す。そして、液面上に浮遊していた混合プラスチック組成物Wは、撹拌板10の表面に付着する。そして、撹拌板10が気体雰囲気中から液S中に入り込む際には、撹拌板10は、液面上に浮遊する混合プラスチック組成物Wや、撹拌板10の表面に付着した混合プラスチック組成物Wを液S中に押し込む。
【0019】
また、混合プラスチック組成物Wのうち、液Sより比重が大きいものは、液S中に沈み込むため、供給された略全ての混合プラスチック組成物Wが、液S内に浸かることになる。これにより、供給された略全ての混合プラスチック組成物の表面に液Sが付与される。
【0020】
図1において、撹拌板10は、回転軸9の回動軸線O方向(軸方向)と交差する方向に延在するように回転軸9に取付けられている。より具体的には、撹拌板10は、連絡口5側から離間するに従って、回転軸9の回転方向Tに向けて傾斜するように配置されており、撹拌板10と回転軸9の回動軸線Oとなす角度θ2が5°以上30°以下とされている。すなわち、撹拌板10には、スクリュウ羽根が用いられている。このように撹拌板10が傾斜するように配置されているので、撹拌板10が回動すると、液S中の混合プラスチック組成物Wおよび液Sが連絡口5に向けて搬送される。
【0021】
そして、撹拌板10の外周縁部とケーシング1の内壁面とが近接しており、回転軸9に対して傾斜するように取付けられているので、貯留部2の底部に溜まった混合プラスチック組成物Wは、撹拌板10により撹拌されると共に、連絡口5側に押し出される。さらに、混合プラスチック組成物Wのうち、液面上に浮遊するものは、撹拌板10により液S中に押し込まれると共に、連絡口5側に押し出される。このため、供給された略全ての混合プラスチック組成物Wが、液S中にて、連絡口5に向けて押し出される。
【0022】
また、撹拌板10が、回転軸9を中心に回動すると、貯留部2内の混合プラスチック組成物Wおよび液Sが撹拌され、液Sが付着した状態で混合プラスチック組成物W同士が擦れ合うことになる。このため、混合プラスチック組成物Wの表面に付着した汚れが落とされ、混合プラスチック組成物Wが洗浄される。なお、撹拌板10は、1枚、好ましくは、複数枚設けられている。撹拌板10が複数枚設けられた場合は、混合プラスチック組成物Wが頻繁に撹拌されることになり、混合プラスチック組成物Wの搬送運動および回転運動が向上し、混合プラスチック組成物Wが良好に洗浄されると共に、搬送速度が確保される。
【0023】
なお、撹拌板10と回転軸9の回動軸線Oとのなす角度θ2が、5°より小さい場合には、混合プラスチック組成物Wを連絡口5に向けて搬送する速度が小さくなり、混合プラスチック組成物Wの分離の処理速度が遅くなる。また、撹拌板10と回転軸9の回転軸線Oとのなす角度θ2が、30°より大きくなると、混合プラスチック組成物Wの搬送速度が大きくなり、洗浄が十分なされないまま、混合プラスチック組成物Wが液除去搬送部3に搬送される。
【0024】
ここで、連絡口5は、液面より下方に位置しているため、混合プラスチック組成物Wが液S中を通過することなく、連絡口5から液除去搬送部3内に搬送されることが抑制されている。すなわち、混合プラスチック組成物Wのうち、液面に浮くものが、仕切り板4の近傍にまで漂ったとしても、この混合プラスチック組成物Wが連絡口5を通過するには、少なくとも1度は、撹拌板10により液S中に沈められる必要がある。このように、連絡口5には、貯留部2の液S中に通された混合プラスチック組成物Wが送り込まれる。なお、液面は、揺動するため、連絡口5は、液面の平均的な位置より1cm以上2cm以下離間した位置に配置されるのが好ましい。
【0025】
液除去搬送部3は、貯留部2から離間するに従って、上方に傾斜するケーシング1と、ケーシング1内に配置されたスクリュウコンベア(搬送部)21と、ケーシング1内に液Sを供給する液供給部15と、混合プラスチック組成物Wを排出する排出口7とを備えている。ケーシング1のうち、液除去搬送部3の部分は、貯留部2から離間するに従って、上方に傾斜している。また、ケーシング1のうち、液除去搬送部3の部分は、貯留部2側の一部が液Sにより浸されており、貯留部2側の端部より、搬送方向前方側では、液面より上方に位置している。そして、液供給部15は、液除去搬送部3のケーシング1のうち、貯留部2の近傍の上面側に配置されている。排出口7は、液除去搬送部3の搬送方向前方側の端部に形成されている。
【0026】
スクリュウコンベア21は、液除去搬送部3のケーシング1内に配置された回転軸9と、この回転軸9の外周面上に取付けられたスクリュウ羽根11とを備えている。このスクリュウ羽根11は、液除去搬送部3の貯留部2側の端部側から、他方の端部側に亘って取付けられている。そして、スクリュウ羽根11の貯留部2側の端部側では、スクリュウ羽根11の一部が液S中に入り込んでおり、搬送方向に向かうに従って液S中から露出し、気体雰囲気中に曝される。そして、少なくとも、排出口7の近傍では、スクリュウ羽根11は、液面より上方に位置している。
【0027】
また、スクリュウ羽根11の連絡口5側の端部は、撹拌板10の連絡口5側の端部と近接している。このため、撹拌板10は、スクリュウ羽根11の連絡口5側の端部あるいわその近傍から回転軸9の一端部側に延在している。そして、撹拌板10の端部と、スクリュウ羽根11の端部とが略同一直線上に配置されているのが好ましい。なお、スクリュウ羽根11は、回転軸9に対して螺旋状に取付けられている。このスクリュウ羽根11と、回転軸9の回動軸線Oとのなす角度θ3は、60°以上90°以下とされている。また、スクリュウ羽根11の枚数は、撹拌板10の枚数より多数設けられているのが好ましい。これにより、貯留部2内に混合プラスチック組成物Wが滞留することが抑制され、液除去搬送部3への搬送を良好に行なうことができるためである。
【0028】
そして、スクリュウ羽根11の外周端部は、ケーシング1の内壁面の近傍に位置している。このため、連絡口5から貯留部2から排出された混合プラスチック組成物Wは、連絡口5の近傍に配置されたスクリュウ羽根11により液除去搬送部3内に搬入される。なお、撹拌板10の端部と、スクリュウ羽根11の端部との間を10mm程度とし、撹拌板10の端部とスクリュウ羽根11の端部とを略同一直線上に配置した場合には、貯留部2から液除去搬送部3への搬送ロスが35%となった。ここで、搬送ロスとは、下記式(1)により示される。
【0029】
搬送ロス=(計算上の搬送量−実際の搬送量)/計算上の搬送量・・・(1)
そして、搬入された混合プラスチック組成物Wは、スクリュウ羽根11により撹拌されつつ搬送される。ここで、スクリュウ羽根11と、回動軸線Oとのなす角度θ3を上記の範囲としたのは、60°より小さくなると、スクリュウ羽根11と同期して回転し、搬送方向に搬送されない混合プラスチック組成物Wが生じやすいためである。また、スクリュウ羽根11と回動軸線Oとのなす角度θ3が、90°より大きくなると、混合プラスチック組成物Wが、搬送方向と逆方向に搬送され易くなるためである。
【0030】
また、スクリュウ羽根11が液面の上方となる位置から排出口7までの間の搬送時間が20秒程度(液除去が十分される時間:液分量重量比10%)になるようにスクリュウ羽根11のピッチ、長さ、回転数が設定されている。なお、本実施の形態においては、搬送手段として、回転軸9に螺旋状に形成されたスクリュウ羽根11を備えたスクリュウコンベアが用いられているが、これに限られず、リボン状のスクリュウ羽根を備えたスクリュウコンベアが用いられてもよい。
【0031】
下記表1は、上記のように構成された湿潤洗浄装置30を用いて、混合プラスチック組成物を2.5t処理したときの貯留部2内に残った混合プラスチック組成物Wの残量を示したものである。
【0032】
【表1】

【0033】
上記表1に示されるように、上記のように構成された湿潤洗浄装置30によれば、液面に浮遊するようなプラスチック組成物が含まれた混合プラスチック組成物Wの搬送を安定的に行なうことができることが分かる。このように搬送効率が高いため、再商品化率を向上させることができる。
【0034】
液供給部15は、上方から気体雰囲気中に曝された混合プラスチック組成物Wに向けて、シャワー状または気体状の液Sを出射する。このため、混合プラスチック組成物Wは、撹拌されつつ、液Sにより洗浄される。
【0035】
その一方で、ケーシング1は、搬送方向に向かうに従って、上方に向けて傾斜しているため、搬送される過程において、混合プラスチック組成物Wに付着した余分な液Sが貯留部2に向けて流れ落ちる。そして、混合プラスチック組成物Wの表面には、液Sの薄膜が形成される程度の濡れ性、湿潤が付与される。さらに、混合プラスチック組成物Wが、排出口7の近傍に達する際には、余分な液Sが除去されており、排出口7から大量の液Sが吐出されることが抑制されている。
【0036】
このように、湿潤洗浄装置30は、比重の異なる複数種類の組成物を含む混合プラスチック組成物Wを液体雰囲気に曝らす貯留部2と、液体雰囲気中に曝された混合プラスチック組成物Wを気体雰囲気に曝す液除去搬送部3とを備えており、湿潤が付され、洗浄された混合プラスチック組成物Wを、排出口7から比重分離装置に排出する。
下記表2は、湿潤洗浄装置30を用いて、比重分離装置12に2.5tの混合プラスチック組成物Wを搬送し、混合プラスチック組成物Wを分離した場合と、水切りを行なわずに、混合プラスチック組成物Wの分離を行った場合とにおいて、比重分離装置12内の選別液内に含まれる懸濁物質(SSmg/l)を比較したものである。
【0037】
【表2】

【0038】
上記表2に示されるように、湿潤洗浄装置30を用いた場合には、比重分離装置12内に含まれる懸濁物質は、水切りがなされなかった場合よりもはるかに懸濁物質の混入が抑制されていることが分かる。このため、比重分離装置12内の選別液がきれいに保たれることが分かる。すなわち、この湿潤洗浄装置30によれば、混合プラスチック組成物Wの表面に付着していた異物を良好に落とすことができる。これに伴い、比重分離装置12内に供給された混合プラスチック組成物Wの表面に付着した異物により、比重分離装置12内の選別液が汚染されることを抑制することができる。また、比重分離装置12内に入り込む液Sの量が少なくなるように抑制されているため、比重分離装置12内の選別液が汚染されることを抑制することができる。
【0039】
また、本実施の形態に係る湿潤洗浄装置30は、上記のように、混合プラスチック組成物Wに湿潤を付与する工程と、洗浄工程と、搬送工程とを行なうことができる。特に、湿潤工程においては、混合プラスチック組成物Wの表面に濡れ性が付与される程度の液Sを付与することができ、脱水装置を設ける必要がない。このため、混合物分離回収装置20をコンパクトに構成することができる。また、比重分離装置12内の選別液が汚染されることが抑制されているため、選別液の洗浄および交換等を行う必要性が抑制されており、このため、ランニングコストを低廉にすることができる。
【0040】
比重分離装置12は、湿潤洗浄装置30から供給された混合プラスチック組成物を比重分別するのに適した比重を有する選別液を収容した槽と、選別液より比重の大きい高比重のプラスチック組成物を選別する高比重プラスチック組成物選別手段と、選別液より比重の小さい低比重のプラスチック組成物を選別する低比重プラスチック組成物選別手段とを備えている。
【0041】
高比重プラスチック選別手段は、貯留槽の底部に沈むプラスチック組成物を貯留槽の外部に排出する排出手段と、排出手段により排出されたプラスチック組成物と選別液との混濁液からプラスチック組成物と選別液とを分離する液除去手段と、液除去手段により分離されたプラスチック組成物に付着した選別液を除去する脱水手段と、脱水されたプラスチック組成物を回収する回収手段とを備えている。なお、貯留槽内に沈んだプラスチック組成物を貯留槽外に排出する排出手段としては、エアリフト、ポンプ、スクリュウ羽根などが用いられる。
【0042】
そして、低比重プラスチック組成物選別手段は、貯留槽に配置された堰と、この堰から流れ出すプラスチック組成物および選別液から選別液を除去する選別液除去手段と、プラスチック組成物を回収する回収手段とを備えている。
【0043】
なお、比重分離装置12からの液除去時および脱水時に出る選別液は、貯水部に貯められ、たとえばポンプを用いて貯留槽に戻されるように構成されるのが好ましい。なお、比重分離装置12内の選別液は、湿潤洗浄装置30内の液Sと同質のものが用いられているのが好ましい。
【0044】
図3は、図1に示す湿潤洗浄装置30を用いて、プラスチック組成物の再資源化方法およびプラスチック部材の製造方法を模式的に示すフローである。プラスチック組成物の再資源化方法とは、廃材から混合プラスチック組成物を取り出し、各略単一素材のプラスチック組成物ごとに分離回収することである。ここで、「略単一素材のプラスチック」とは、全体の90%以上が単一の樹脂成分で構成されたものを指す。なお、略単一素材のプラスチックであるか否かは、たとえば、ポリプロピレンであれば他のプラスチックを溶解する溶剤(THF(テトラヒドロフラン)等)に一定量の生成物をいれ、不溶分の重さを測定することにより、単一樹脂の比率を解析することで、判断する。
【0045】
本実施の形態に係るプラスチック組成物の再資源化方法によって回収される略単一素材プラスチックは、特に制限されるものではなく、たとえば、ポリプロピレン、ポリプロピレン、ABS(アクリロニト リル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ポリスチレンなどが包含される。なお、図3には、本発明の方法によってポリプロピレンを回収する場合の一例をして示している。
【0046】
図3に示されるように、まず、製品回収工程S101では、プラスチック部材を備えた廃棄製品等を回収する。なお、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機からなる群から選ばれる家電製品であることが好ましい。
【0047】
製品回収工程S101後の解体工程S102では、回収された廃棄製品等を解体する。廃棄製品の解体手段は、従来から公知の手段が用いられ、手解体により行なわれてもよい。この廃棄製品の解体により、コンプレッサ、熱交換器などの大型の金属部材等を部品ごとに回収される。
【0048】
解体工程S102後の粗破砕工程S103では、大型金属部材などが回収された後の廃棄製品を粗破砕する。なお、粗破砕する際には、衝撃式破砕装置やせん断式破砕装置などの大型破砕機が用いられる。この粗破砕工程S103においては、破砕物の粒径は、特に制限されるものではないが、20mm以上であるのが好ましく、40mm以上であることがより好ましい。また、破砕物の粒径は80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましい。粗破砕機には、たとえば30〜50mmの目の大きさのものを用いる。
【0049】
粗破砕工程S103後の金属選別工程S104では、粗破砕された破砕物から、金属系破砕物とプラスチック系破砕物と低嵩比重破砕物とに選別する。ここで、金属系破砕物のうち鉄系金属は、特に限定するものではないが、たとえば磁力を用いて選別することが好ましい。さらに、金属系破砕物のうちアルミニウム系金属や銅系金属は、特に限定するものではないが、たとえば渦電流を用いて選別することが好ましい。
【0050】
金属選別工程S104後の風力選別工程S105では、風力を用いて、低嵩比重破砕物を選別する。なお、低嵩比重破砕物とは、嵩比重が0.3以下の破砕物を意味するものとする。低嵩比重破砕物の具体例としては、特に限定するものではないが、ポリウレタン系断熱材の破砕物や、発泡スチロール系の破砕物などが挙げられる。この風力選別工程S105により、低嵩比重破砕物と、混合プラスチック組成物との選別を行なうことができる。
【0051】
なお、粗破砕された廃棄物を金属系破砕物とプラスチック系破砕物と低嵩比重破砕物に選別する際に、風力による選別、磁力による選別、渦電流による選別を行う場合には、その順序は特に限定するものではないが、選別の効率の観点からは、まず磁力により鉄系金属を分離し、次いで渦電流によりアルミニウム系金属や銅系金属を選別し、続いて風力により低嵩比重破砕物を選別し、残ったプラスチック混合物の破砕物を、下記の微破砕工程に移すことが好ましい。
【0052】
風力選別工程S105後の微破砕工程S106では、混合プラスチック組成物をさらに微細化する。ここで、混合プラスチック組成物の破砕物は、特に限定するものではないが、たとえば破砕機または細断機などにより破砕されることが好ましい。そして、微破砕された混合プラスチック組成物の粒径は5mm以上であることが好ましく、特に8mm以上であることがより好ましい。また、この粒径は30mm以下であることが好ましく、また20mm以下であることが特に好ましい。この粒径が5mm未満の場合は、破砕に長時間要する為プラスチックが溶融あるいは熱酸化劣化を起こすという傾向があり、この粒径が30mmを超えると、加熱成形工程での作業性に悪影響を及ぼす傾向がある。また、この粒径が5mm未満でも30mm以上でも、次以降のステップである湿式比重選別の選別能力に悪影響を及ぼす傾向がある。ここで、微破砕に供する対象物は、上記解体工程で選択的に回収されたプラスチック部材であってもよい。
【0053】
微破砕工程S106後の湿潤・洗浄工程S202では、図1に示された湿潤洗浄装置30内にて、混合プラスチック組成物を湿潤させる工程と、プラスチック組成物を湿潤工程後に気体雰囲気中で搬送する工程とが施される。具体的には、混合プラスチック組成物は、貯留部2にて洗浄されると共に、液Sに浸される。そして、液除去搬送部3内にて、気体雰囲気中で搬送されることにより、余分な液Sが除去され、プラスチック組成物の表面上に濡れ性、湿潤が付与される。その後、洗浄および湿潤が施された混合プラスチック組成物は、排出口7から排出される。
【0054】
この湿潤・洗浄工程S202後の比重選別工程S203では、図1に示された比重分離装置12により、各プラスチック組成物に選別される。
【0055】
そして、比重分離装置12内に供給された混合プラスチック組成物は、貯留槽内の選別液中で、選別液に浮くものと沈むものとに分かれる。ここで、湿潤・洗浄工程S202において、比重分離装置12内に供給される各プラスチック組成物の表面には、湿潤が施されているため、比重分離装置12の選別液中にプラスチック組成物が供給された際に、プラスチック組成物の表面に気泡が付着し難くなっている。このため、選別液よりも比重の大きなプラスチック組成物の表面に気泡が形成され、選別液の液面上に浮遊すること等が抑制される。すなわち、選別液に対する比重の大小により、各プラスチック組成物を良好に分離することができる。
【0056】
たとえば選別液として水(比重:1.0)を用いた場合、ポリプロピレン(比重:0.9)およびポリエチレン(比重:0.9)以外に、発泡ウレタンが付着しているポリスチレン(比重:0.7〜1.0)やABS樹脂(比重:0.7〜1.0)、丸まって空気や発泡剤を巻き込んでいるアルミ箔(比重:0.9〜1.5)、発泡ウレタン(比重:0.04〜0.32)、発泡スチレン(比重:0.01〜0.20)、ホットメルトも、水に浮かぶ。一方、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.08)、ポリウレタン樹脂(比重:1.2)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などは、水に沈む。
【0057】
供給されたプラスチック組成物のうち選別液中に沈んだものは、比重分離装置の槽外に排出される。その後、液除去手段により選別液が除去され、脱水部を経て脱水され、重量系の略単一素材プラスチック群として回収される。また細破砕物のうち液体媒体に浮いたものは、液体媒体とともに堰より流れ出し、選別液除去手段を通過後、脱水されて、軽量系の略単一素材プラスチック群としてとして回収される。このとき軽量系の略単一素材プラスチック群は、例えば、ポリプロピレンが99%、その他が1%程度である。なお、選別を複数回おこなうことにより、各略単一素材プラスチックごとに選別することができる。このように、不純物の混入が低減された成形用樹脂原料(プラスチック組成物原料)を得ることができる。
【0058】
上記各工程を経ることにより、各プラスチック組成物、プラスチック組成物原料に分離され、プラスチック組成物の再資源化方法の工程が終了する。なお、プラスチック組成物の再資源化方法は、上記工程のすべてを含む必要はない。複数種類のプラスチック組成物を湿潤させる工程と、湿潤後に気体雰囲気中で搬送する工程と、プラスチック組成物を比重分離装置に投入して、比重差によりプラスチック組成物を分離する工程とを含めばよい。
【0059】
そして、プラスチック部材の製造工程は、比重選別工程S203後にペレット成形工程S205を含む。このペレット成形工程S205は、細破砕された略単一素材のプラスチック、成形用樹脂原料に加熱成形を施す。選別された略単一素材プラスチック、成形用樹脂原料を、ペレット状、シート状、フィルム状、パイプ状などの様々な形状に成形することができるが、成形性の良さから、ペレット状に成形されるのが好ましい。
【0060】
なお、略単一素材のプラスチック、成形用樹脂原料に加熱成形を施す際に、略単一素材プラスチックの融点をT℃とすると、この加熱成形時の加熱温度はT℃以上であることが好ましく、特に(T+10)℃以上であることがより好ましい。また、このときの加熱温度は(T+120)℃以下であることが好ましく、特に(T+80)℃以下であることがより好ましい。加熱成形時の加熱温度がT℃未満の場合には、成形用樹脂原料が十分に溶融しないために成形し難いという傾向にあるためであり、また、加熱成形時の加熱温度が(T+120)℃を越えると、成形用樹脂原料が熱劣化してしまう傾向にあるためである。加熱成形を用いる装置としては、特に制限されるものではないが、たとえば、単軸押出成形機あるいは多軸式押出成形機が挙げられる。なお、加熱成形の際に、成形機に金網(40〜200メッシュ)を入れておき、アルミ片や銅線を取り除くことが望ましい。
【0061】
なお、ペレット状の成形用樹脂原料に成形してマテリアルリサイクルする場合には、ペレット状の成形用樹脂原料を、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどのいずれかの方法により造粒してもよい。これらの造粒方法の中でも、後に射出成形により特定の形状に成形する場合には、成形用樹脂原料の供給が円滑に行え、大量処理にも対応できるアンダーウォーターカットが特に好ましい。
【0062】
また、成形用樹脂原料をペレット状とする場合、その粒径は特に制限されるものではないが、1mm以上が好ましく、特に2mm以上がより好ましい。ペレットの粒径が1mm未満の場合には、浮遊するため作業性が低下するという傾向があるためである。またペレットの粒径は、8mm以下が好ましく、特に5mm以下がより好ましい。ペレットの粒径が8mmを越えると、成形機のシリンダー内で充分に溶融しないため均一混練されないという傾向があるためである。
【0063】
さらに、成形用樹脂原料には、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加してもよい。
【0064】
上記ペレット成形工程S205後のプラスチック部材成形工程S206では、ペレット状とされた成形用樹脂原料を用いて、プラスチック部材を形成する。例えば、ペレット状の成形用樹脂原料を射出成形機に投入し成形体を作成することもできる(本明細書において、この成形体を「プラスチック部材」と呼ぶ。)。プラスチック部材は、特に制限されるものではないが、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる家電製品であることが好ましい。本発明のプラスチック部材の成形に用いる射出成形機としては、特に限定するものではないが、たとえばスクリュウ羽根インライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機などが挙げられる。
【0065】
また、プラスチック部材の成形の工程をより簡略化するために、ペレット状などの形状を有する上記プラスチック組成物原料を作製することなく、細破砕したプラスチック組成物を射出成形機にそのまま投入し、プラスチック部材を直接作製しても構わない。さらに、本発明のプラスチック部材は、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加した上で成形して作成してもよい。
【0066】
本実施の形態に係る混合物分離回収装置20によれば、湿潤洗浄装置30により、混合プラスチック組成物Wの表面に湿潤を施すことができる。このため、比重分離装置12内の選別液中に混合プラスチック組成物Wを投入する際に、混合プラスチック組成物Wの表面に気泡が付着し難く、各プラスチック組成物の比重に従って、良好に分離することができる。特に、比重の小さいプラスチック組成物にも湿潤を良好に付与することができるので、比重の小さいプラスチック組成物の選別も良好に行なうことができる。
【0067】
また、湿潤洗浄装置30によれば、洗浄工程、湿潤工程、搬送工程とを行なうことができ、混合物分離回収装置20をコンパクトに構成することができる。さらに、湿潤洗浄装置30によれば、洗浄工程と、湿潤工程と、搬送工程とを同時に行なうことができ、プラスチック組成物の分離回収作業の作業時間を短縮することができる。また、湿潤洗浄装置30により、混合プラスチック組成物の表面を良好に洗浄することができ、比重分離装置12内に湿潤洗浄装置30内の液Sが入り込むことが抑制されているため、比重分離装置12内の選別液が汚染されることを抑制することができる。
【0068】
さらに、本実施の形態に係るプラスチック組成物の再資源化方法によれば、湿潤・洗浄工程S202にて、湿潤洗浄装置30を用いるため、比重の軽いプラスチック組成物が混入された混合プラスチック組成物についても、各プラスチック組成物に分離することができ、不純物の含有量が抑えられたプラスチック組成物原料を得ることができる。これに伴い、本実施の形態に係るプラスチック部材の製造方法によれば、正確に分離されたプラスチック組成物を用いて、プラスチック組成物を成形するため、成形されたプラスチック部材の性能を確保することができる。
【0069】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、複数種類の材料を含む混合物を分離する混合物分離回収装置、プラスチック組成物の再資源化方法、このプラスチック再資源化方法により成形されたプラスチック組成物原料、プラスチック部材、およびプラスチック部材の製造方法に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態に係る混合物分離回収装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】図1に示す湿潤洗浄装置を用いて、プラスチック組成物の再資源化方法およびプラスチック部材の製造方法を模式的に示すフローである。
【符号の説明】
【0072】
1 ケーシング、2 貯留部、3 液除去搬送部、4 仕切り板、5 連絡口、6 駆動部、7 排出口、9 回転軸、10 撹拌板、11 スクリュウ羽根、12 比重分離装置、15 液供給部、20 混合物分離回収装置、21 スクリュウコンベア、30 湿潤洗浄装置、O 回動軸線、S 液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の異なる複数種類の組成物を含む混合物を液体雰囲気に曝した後に気体雰囲気に曝す湿潤手段と、
前記混合物を液体中で各組成物の比重に基づいて分離する比重分離手段とを備える混合物分離回収装置において、
前記湿潤手段は、液が貯留された貯留部と、
前記混合物を前記貯留部内に供給する供給部と、
前記貯留部内の前記組成物を前記液中に押し込むことが可能な撹拌板と、
前記撹拌板にて前記貯留部内の前記液と撹拌された後の前記組成物を搬送する搬送部と、
前記貯留部の前記液中を通して前記搬送部に前記組成物を送り込む連絡口と、
を備えたことを特徴とする混合物分離回収装置。
【請求項2】
前記撹拌板は、前記貯留部に達するように配置された回転軸の一端側に取付けられ、前記撹拌板の少なくとも一部が周期的に前記貯留部内の前記液の液面よりも上方に露出するように、前記回転軸を中心に回動することを特徴とする請求項1に記載の混合物分離回収装置。
【請求項3】
前記撹拌板は、前記回転軸の軸方向と交差する方向に延在するように前記回転軸に取付けられたことを特徴とする請求項2に記載の混合物分離回収装置。
【請求項4】
前記回転軸の軸線は、前記連絡口から離れるに従って、下方に向けて傾斜しており、水平方向となす角度が0°以上45°以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の混合物分離回収装置。
【請求項5】
前記撹拌板は、前記回転軸の軸線となす角度が5°以上30°以下とされたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の混合物分離回収装置。
【請求項6】
前記搬送部は、ケーシングと、
前記ケーシング内に配置された搬送手段とを有し、
前記ケーシングは、前記貯留部から離れるに従って、上方に傾斜し、その端部側が前記液の液面より上方に位置することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合物分離回収装置。
【請求項7】
前記ケーシング内に前記液を供給する液供給部を備えることを特徴とする請求項6に記載の混合物分離回収装置。
【請求項8】
前記搬送手段は、スクリューコンベアであり、
前記スクリューコンベアは、前記回転軸の他端部側の外周上に取付けられたスクリュー羽根を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の混合物分離回収装置。
【請求項9】
前記スクリュー羽根と、前記回転軸の軸線とのなす角度が60°以上90°以下とされたことを特徴とする請求項8に記載の混合物分離回収装置。
【請求項10】
前記撹拌板は、前記スクリュー羽根の前記連絡口側の端部あるいはその近傍から前記回転軸の一端部側に延在していることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の混合物分離回収装置。
【請求項11】
前記液が水とされたことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の混合物分離回収装置。
【請求項12】
複数種類のプラスチック組成物を湿潤させる工程と、
前記湿潤後に気体雰囲気中で搬送する工程と、
前記プラスチック組成物を比重分離装置に投入して、比重差により前記プラスチック組成物を分離する工程と、
を備えたことを特徴とするプラスチック組成物の再資源化方法。
【請求項13】
前記プラスチック組成物は、エアコン、テレビ、冷蔵庫、および洗濯機のうち、少なくとも1つの一部であることを特徴とする請求項12に記載のプラスチック組成物の再資源化方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載されたプラスチック組成物の再資源化方法により回収されたことを特徴とするプラスチック組成物原料。
【請求項15】
ペレット状とされたことを特徴とする請求項14に記載のプラスチック組成物原料。
【請求項16】
請求項12または請求項13に記載されたプラスチック組成物の再資源化方法により回収されたプラスチック組成物原料から製造されたことを特徴とするプラスチック部材。
【請求項17】
複数種類のプラスチック組成物を湿潤させる工程と、
前記湿潤後に気体雰囲気中で搬送する工程と、
前記プラスチック組成物を比重分離装置に投入して、比重差により前記プラスチック組成物を分離する工程と、
分離された前記プラスチック組成物を用いて、プラスチック部材を作成する工程と、
を備えたことを特徴とするプラスチック部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−326461(P2006−326461A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152449(P2005−152449)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】