説明

複数色成形体

【課題】個々の層の間で色の境界が裸眼で観察されることができない、異なる色の層をもつ歯科修復物を生成するための複数色の成形体を提供する。
【解決手段】歯科修復物を製造するために互いの上部上に配列された層を有する複数色の成形体であって、(a)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層、および(b)該少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間の、少なくとも2つ異なる色の中間層を備え、ここで、これらの中間層の間の色における変化が、該主要層の間の色における変化の方向とは反対である方向で生じる、複数色の成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科修復物を製造するために特に適切であり、そしてその中の個々の層の間の色の変化が、技術的支援なくしては感知されることができない互いの上に配列された層を有する複数色成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科修復部分は、例えば、セラミックまたはプラスチック成形体である成形体から製造され得る。この手順は、通常、機械的、例えば、CAD/CAM法に従ってコンピューターで支援される。この歯科修復部分の最終使用については、この成形体は、すでに特定の審美的性質を有するべきである。
【0003】
自然の歯は一色ではなく、複雑な呈色を有する。同じ歯の異なる領域が、色および透明度において互いに異なり得る。一般に、歯は、咬合領域における透明から頸部領域における黄色−不透明までの色および透明度の勾配を示す。
【0004】
所望の呈色を達成するために、単一の色を有する歯科修復物は、引き続き化粧張りされ得る。しかし、このような化粧張りは、通常、手細工で実施されなければならず、これは時間を浪費する。従って、化粧張りなくして審美的要求を満足し、そして色および透明度ならびに色勾配について自然の歯に可能な限り近い呈色を有する歯科修復部分が製造され得る複数色の成形体が所望される。
【0005】
いくつかの異なる色の層から構築される複数色成形体は、当該技術分野では公知である。
【0006】
それ故、VITA、Zahnfabrik GmbHは、VITABLOCS(登録商標)Triluxeを提供し、これは、長石セラミックの3つの異なる色の層からなり、そして光学的に魅力的な歯科修復部分の製造を単純化することが意図される。しかし、これらの修復部分は、なお化粧張りされる。
【0007】
特許文献1は、人工歯または義歯部分の製造のために用いられ得るプラスチック材料から作製される複数層のブロックを記載している。これらのブロックは、自然の歯の色の勾配を促進するために、好ましくは、3つまでの異なった色の層を含む。
【0008】
さらに、特許文献2から、CAD/CAM法による義歯部分の製造のために標準化された光学的性質を備えるいくつかの異なる色の層を含むブロックを用いることが知られている。このようにする際に、ブロック内の修復部分の仮想の位置決めは、後に修飾部分になるところの色勾配が患者の対応する自然の歯に可能な限り近くなるように最適化される。このようにして生成される修復部分の化粧張りは無くても困らないといわれる。
【0009】
しかし、異なる色の層から構築される複数色の成形体の場合、個々の層の間の色の境界は明らかに認知し得る。それ故、当該技術分野の状態に従って生成される修復部分は、高度に審美的な要求を満足する修復を達成するために、先に述べたように化粧張りされなければならない。
【0010】
特許文献3は、個々の層の間の色の境界が認知されることはないといわれる複数色の成形体を製造するためのプロセスを記載する。これによれば、個々の層の接触表面は圧力を受け、そして異なる色の出発材料が境界領域で緊密に接触するようにされ、この出発材料の混合を可能にする。
【0011】
しかし、実施は、このプロセスは適切な混合に至らず、そしてそれ故、このように生成された成形体中の色の層間の境界および修復部分は、裸眼に認知され得るままであることを示した。
【特許文献1】米国特許第5,151,044号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第199 44 130A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第197 14 178A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、個々の層の間で色の境界が裸眼で観察されることができない、異なる色の層をもつ歯科修復物を生成するための複数色の成形体に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の項目に関し得る。
【0014】
(項目1)歯科修復物を製造するために互いの上部上に配列された層を有する複数色の成形体であって、
(a)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層、および
(b)上記少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間の、少なくとも2つ異なる色の中間層を備え、
ここで、これらの中間層の間の色における変化が、上記主要層の間の色における変化の方向とは反対である方向で生じる、複数色の成形体。
【0015】
(項目2)上記色における変化が、本質的にそれらの個々の明度における変化である、項目1に記載の複数色の成形体。
【0016】
(項目3)上記中間層の間の明度における増加が、上記主要層の間の明度における増加の方向とは反対である方向で生じる、項目1または2のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0017】
(項目4)上記2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間に横たわる中間層が、交互に、これら主要層の色を有する、項目1〜3のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0018】
(項目5)2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間に、2つの中間層が配列され、そしてこれら中間層の各々が個々の他の中間層に隣接している主要層の色を有する、項目1〜4のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0019】
(項目6)互いの上部上に配列された4つの層の少なくとも1つの要素を有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の複数色の成形体であって、ここで、
(a)第1の層は第1の主要層であり;
(b)第2の層は第2の主要層の色を有する中間層であり;
(c)第3の層は第1の主要層の色を有する中間層であり;
(d)第4の層は第2の主要層である、複数色の成形体。
【0020】
(項目7)4〜20、好ましくは4〜10、より好ましくは4〜8の主要および中間層を有する、項目1〜6のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0021】
(項目8)互いの上部上に配列された8つの層を有する、項目1〜7のいずれか1項に1項に記載の複数色の成形体であって、ここで、
(a)第1の層は第1の主要層であり;
(b)第2の層は第2の主要層であり;
(c)第3の層は第3の主要層の色を有する中間層であり;
(d)第4の層は第2の主要層の色を有する中間層であり;
(e)第5の層は第3の主要層であり;
(f)第6の層は第4の主要層の色を有する中間層であり;
(g)第7の層は第3の主要層の色を有する中間層であり;そして
(h)第8の層は第4の主要層である、複数色の成形体。
【0022】
(項目9)上記主要層が、0.5mmを超え、特に0.5mmを超え、そして15mmまで、好ましくは0.5mmを超え、そして10mmまで、そしてより好ましくは0.7mm〜8mmの厚みを有する、項目1〜8のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0023】
(項目10)上記中間層が、0.5mmまで、特に0.01mm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.5mm、そしてより好ましくは0.2mm〜0.4mmの厚みを有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0024】
(項目11)セラミック、ガラスセラミック、無機−有機コンポジットまたはそれらの混合物に基づく、項目1〜10のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0025】
(項目12)(a)SiO;(b)Al;および(c)KOおよび/またはNaOを含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0026】
(項目13)Alおよび/またはZrOセラミック材料から形成される、項目1〜12のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0027】
(項目14)歯科修復物を製造するための互いの上部上に配列された層を有する複数色の成形体であって、
(a)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層、および
(b)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間の中間層を備え、ここで、上記中間層が、上記2つの連続する主要層の材料の混合物を備える、複数色の成形体。
【0028】
(項目15)上記主要層が、0.5mmを超え、特に0.5mmを超え、そして15mmまで、好ましくは0.5mmを超え、そして10mmまで、そしてより好ましくは0.7mm〜8mmの厚みを有する、項目14に記載の複数色の成形体。
【0029】
(項目16)上記中間層が、0.5mmまで、特に0.01mm〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.5mm、そしてより好ましくは0.2mm〜0.4mmの厚みを有する、項目14および15のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【0030】
(項目17)上記主要層および上記中間層が、互いの上部上に、項目1〜16のいずれか1項に記載の成形体が得られるように配列される、項目1〜16のいずれか1項による複数色の成形体を製造するためのプロセス。
【0031】
(項目18)歯科修復物の製造のための項目1〜16のいずれか1項による複数色の成形体の使用。
【0032】
(項目19)上記歯科修復物が、人工歯、インレー、アンレー、ブリッジおよびクラウンである、項目18に記載の使用。
【0033】
(項目20)上記歯科修復物の製造が、特にCAD/CAM技法によってコンピューター支援される、項目18または19のいずか1項に記載の使用。
【発明の効果】
【0034】
本発明による成形体は、特別に開発された中間層の挿入によりこれらの効果を補償または過剰補償さえする。それによって、異なる色の層の境界が裸眼にもはや認知可能でない色勾配が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
上記目的は、驚くべきことに、請求項1〜15による複数色の成形体によって達成される。本発明はまた、請求項16による上記複数色の成形体を製造するためのプロセス、および請求項17〜19による上記複数色の成形体の使用に関する。
【0036】
本発明の意味内の用語「色」および「着色」は、材料、物体または層の色、明度および半透明度に関する。本発明によれば、用語「色」および「着色」は、特に、明度に関する。色における変化は、従って、特に明度における変化を含むことが理解される。
【0037】
「半透明度」は、材料、物体または層の光透過能力、すなわち、入射光強度に対する透過光強度の比である。
【0038】
色はまた、例えば、歯科産業で一般的なそれらのLab値により、または色コードにより特徴付けられ得る。このような色コードの例は、Vitapan classical(登録商標)およびVita 3D Master(登録商標)、両者それぞれ、VITA Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG、およびIvoclar Vivadent AG’s Chromascop(登録商標)である。
【0039】
層厚みの測定は、例えば、重ねた層または磨いた層に対して垂直にとられた成形体からの断面に対して、立体写真でこれらの断面の縮尺顕微鏡画像を記録すること、およびこれら写真に対する長さ測定を、例えばanalySIS Five画像処理ソフトウェアで実施することによってなされ得る。特に、層厚みは、1つの層について決定されたいくつかの厚みの平均を意味する。
【0040】
互いの上部に配列された層を有する本発明による複数色成形体は:
(a)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層、および
(b)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間の、少なくとも2つ異なる色の中間層であって、ここで、これらの中間層の間の色における変化が、これら主要層の間の色における変化の方向とは反対である方向で生じる中間層を備える。
【0041】
特に、上記色における変化は、本質的にそれらの個々の明度における変化であり得る。好ましい実施形態では、本発明による成形体は、それ故、上記中間層の間の明度における増加が、上記主要層の間の明度における増加の方向とは反対である方向で生じることで特徴付けられる。
【0042】
驚くべきことに,本発明による成形体にともなって、異なる色の主要層の間の色の境界が、実際に裸眼に認知不能であることが示された。
【0043】
従前に公知の成形体における個々の層の間の色境界の明らかな認知可能性が、目の錯覚によって増大されることがまた認識された。
【0044】
色または明度が異なる隣接表面を観察するとき、網膜中の隣接するレセプターのいわゆる側方阻害がヒトの眼で起こる。従って、2つの異なる色の表面の境界領域では、暗い表面は、この境界領域からより遠い領域におけるより、より暗く見えるが、明るい領域は、この境界領域からより遠く離れた領域におけるより明るく見える。このヒトの眼によって認知されるより高いコントラスト変化は、Machバンドと呼ばれる。この効果により、色境界におけるこのコントラストは増加し、そしてこの色境界の認知は増加される。この効果により、それ自体は1つの色である各々の異なる色の一連の各層において、個々の層内では、個々の複数の層の色の勾配とは反対である色の勾配が認知される。これらの効果は、より暗い色でより、より明るい色でより強く認知される。
【0045】
この説明される光学的効果は、可能な限り自然に近い色勾配を達成する歯科修復物の所望の目的とは反対である。従って、公知の複数色成形体の色勾配は、明らかに認知され得る層の間の色の境界を有する。本発明による成形体は、特別に開発された中間層の挿入によりこれらの効果を補償または過剰補償さえする。それによって、異なる色の層の境界が裸眼にもはや認知可能でない色勾配が達成される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態の主題は、2つの連続し、そして異なる色の主要層の間に横たわる中間層が、交互に、これら主要層の色を有する複数色の成形体である。色の境界が実際に認知不能である所望の色勾配が、比較的少ない色を用いて達成され得る。
【0047】
特に好ましい実施形態は、2つの連続し、そして異なる色の主要層の間で、正確に2つの中間層が配列され、そしてこれら中間層の各々が個々の他の中間層に隣接している主要層の色を有する、複数色の成形体を含む。
【0048】
従って、互いの上部上に配列された4つの層の少なくとも1つの要素を有するような成形体がまた好ましく、ここで、
(a)第1の層は第1の主要層であり;
(b)第2の層は第2の主要層の色を有する中間層であり;
(c)第3の層は第1の主要層の色を有する中間層であり;
(d)第4の層は第2の主要層である。
【0049】
本発明による成形体では、主要層および中間層の総数は少なくとも4であり、すなわち、少なくとも2つの主要層と少なくとも2つの中間層がある。本発明による成形体は、好ましくは4〜20、特に4〜10、そしてより好ましくは4〜8の主要層および中間層を有する。
【0050】
中間層の不在下の主要層の境界で生じるコントラストにおける増加は、含まれる層の半透明度および明度に依存して、より多いかまたはより少ない程度まで表明される。2つ以上の主要層をもつ成形体では、それ故、2つの主要層の間の境界毎に中間層を挿入することは全く必要であるわけではない。従って、高い審美性要求を満たす歯科修復物は、経済的に生成され得る成形体から製造され得る。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明による成形体は、互いの上部上に配列された8つの層を有し、ここで
(a)第1の層は第1の主要層であり;
(b)第2の層は第2の主要層であり;
(c)第3の層は第3の主要層の色を有する中間層であり;
(d)第4の層は第2の主要層の色を有する中間層であり;
(e)第5の層は第3の主要層であり;
(f)第6の層は第4の主要層の色を有する中間層であり;
(g)第7の層は第3の主要層の色を有する中間層であり;そして
(h)第8の層は第4の主要層である。
【0052】
本発明による成形体は、好ましくは、10mm〜20mm、より好ましくは14mm〜16mmの高さを有する。
【0053】
本発明による成形体の主要層は、好ましくは、0.5mmを超え、特に0.5mmを超え、そして15mmまで、好ましくは0.5mmを超え、そして10mmまで、そしてより好ましくは0.7mm〜8mmの厚みを有する。
【0054】
本発明による成形体の中間層は、好ましくは、0.5mmまで、特に0.01mm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.5mm、そしてより好ましくは0.2mm〜0.4mmの厚みを有する。
【0055】
本発明による成形体は、歯科修復物のために成形体を生成するために適切な任意の材料からなり得る。好ましい材料はセラミック、ガラスセラミック、プラスチック、無機−有機コンポジットまたはそれらの混合物である。
【0056】
(a)SiO、(b)Alおよび(c)KOおよび/またはNaOを含む成形体が特に好ましい。別の実施形態による成形体は、Alおよび/またはZrOセラミック材料から作製される。
【0057】
異なる色の層は、各場合で異なって着色される同じ材料から、または異なる材料からあり得る。
【0058】
成形体を層にすることは、好ましくは、歯科産業で一般的な色コード(例えば、Vitapan classical(登録商標)またはVita 3D Master(登録商標)、両者は、VITA Zahnfabrik H.Rauter GmbH & Co.KG、またはIvoclar Vivadent AG’s Chromascop(登録商標)からである)の層化に基づく。各場合におけるこれら色コードの歯モデルは、1つの色のみを規定するが、歯が異なる材料混合物および/または色および/または不透明度の層から構築されるのと類似し、そしてヒトの歯の異なる色に基づく。この基礎的な色の割り当ては、好ましくはまた、本発明による成形体で用いられ得、それらから生成された歯科修復物は、自然の歯に非常に緊密して対応する結果をもたらす。
【0059】
本発明はまた、歯科修復物を生成するための別の複数色の成形体に関し、これは、
(a)少なくとも2つの連続し、そして異なる色の主要層、および
(b)この少なくとも2つの連続し、そして異なる色の主要層の間の中間層を有し、ここで、この中間層は、上記2つの連続する主要層の材料の混合物を含み、そして好ましくはそれからなる。
【0060】
本発明によるこのその他の成形体の主要層は、好ましくは、0.5mmを超え、特に0.5mmを超え、そして15mmまで、好ましくは0.5mmを超え、そして10mmまで、そしてより好ましくは0.7mm〜8mmの厚みを有する。
【0061】
本発明によるこのその他の成形体の中間層は、好ましくは、0.5mmまで、特に0.01mm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.5mm、そしてより好ましくは0.2mm〜0.4mmの厚みを有する。
【0062】
本発明によるこのその他の成形体のさらなる好ましい実施形態は、このその他の実施形態について、層の好ましい数、この成形体の好ましい高さ、および上記に記載のような好ましい材料に関する性質を有している。
【0063】
本発明はまた、互いの上部上に配列された層を有する本発明による複数色の成形体を製造するプロセスに関し、そこでは、上記主要層および上記中間層は、互いの上部上に、本発明による成形体が得られるように配列される。
【0064】
最後に、本発明はまた、歯科修復物の製造のための本発明による複数色の成形体の使用に関する。歯科修復物の製造は、特にCAD/CAM方法によって、コンピューターで支援され得る。好ましい歯科修復物は、人工歯、インレー(象嵌)、アンレー、ブリッジおよびクラウンである。
【実施例】
【0065】
本発明を、実施例を参照して以下により詳細に説明する。
【0066】
(実施例1−2つの中間層)
異なる色の層を有する複数色の成形体の製造のために、以下の材料(ガラスセラミック粉末)が用いられる:
SiO: 60.0〜65.0%
Al: 16.0〜20.0%
O: 10.0〜14.0%
NaO: 3.5〜6.5%
: 0〜1.0%
BaO: 0〜1.5%
CaO: 0.5〜2.5%
CeO: 0〜1.0%
TiO: 0〜0.5%
F: 0〜0.5%
色素: 0.2〜1.0%

適切な色素添加により、ガラスセラミック材料の着色物M1およびM2が生成され、ここで、M1は、例えば、Vitapan classical(登録商標)による象牙質色A2に対応し、そして高い不透明性を有し、そしてM2は、門歯色に対応し、そしてより低い不透明性を有する。材料M1とM2とを異なって混合することにより、4つの異なる色の材料組成物A〜Dが得られ、これらは以下のような組成である:
材料A: 100%M1
材料B: 2/3M1、1/3M2
材料C: 1/3M1、2/3M2
材料D: 100%M2
個々の材料は、慣習形状の圧縮鋳型に段階的に導入され、その結果、以下の一連の層が得られる:
第1層: 主要層、材料A
第2層: 中間層、材料B
第3層: 中間層、材料A
第4層: 主要層、材料B
第5層: 中間層、材料C
第6層: 中間層、材料B
第7層: 主要層、材料C
第8層: 中間層、材料D
第9層: 中間層、材料C
第10層: 主要層、材料D

圧縮鋳型を個々の層で充填した後、乾燥圧縮によって公知の様式で、できたての本体(green body)が産生され、そして次に、バインダーを除き、そして焼成することにより、約10〜15mmの全体高さをもつ処理可能な成形体が産生される。
【0067】
このようにして得られた成形体では、中間層は、約0.2〜約0.4mmの層厚みを有する。この成形体およびそれから生成された歯科修復物では、個々の層間の変化は驚くべきことに裸眼に認知不能である。
【0068】
(実施例2−2つの中間層)
異なる色の層を有する複数色の成形体の製造のために、以下の材料(ガラスセラミック粉末)が用いられる:
SiO: 60.0〜65.0%
Al: 16.0〜20.0%
O: 10.0〜14.0%
NaO: 3.5〜6.5%
: 0〜1.0%
BaO: 0〜1.5%
CaO: 0.5〜2.5%
CeO: 0〜1.0%
TiO: 0〜0.5%
F: 0〜0.5%
色素: 0.2〜1.0%

適切な色素添加により、ガラスセラミック材料の着色物M1およびM2が生成され、ここで、M1は、例えば、Vitapan classical(登録商標)による象牙質色A2に対応し、そして高い不透明性を有し、その一方、M2は、前歯色に対応し、そしてより低い不透明性を有する。材料M1とM2とを異なって混合することにより、4つの異なる色の材料組成物A〜Dが得られ、そしてこれらから、次に、6つの異なる色の材料の中間層AB1、AB2、BC1、BC2、CD1、CD2が得られる:
材料A: 100%M1
材料B: 2/3M1、1/3M2
材料C: 1/3M1、2/3M2
材料D: 100%M2

材料AB1: 1/3A、2/3B
材料AB2: 2/3A、1/3B
材料BC1: 1/3B、2/3C
材料BC2: 2/3B、1/3C
材料CD1: 1/3C、2/3D
材料CD2: 2/3C、1/3D

個々の材料は、慣習形状の圧縮鋳型に段階的に導入され、その結果、以下の一連の層が得られる:
第1層: 主要層、材料A
第2層: 中間層、材料AB1
第3層: 中間層、材料AB2
第4層: 主要層、材料B
第5層: 中間層、材料BC1
第6層: 中間層、材料BC2
第7層: 主要層、材料C
第8層: 中間層、材料CD1
第9層: 中間層、材料CD2
第10層: 主要層、材料D

圧縮鋳型を個々の層で充填した後、乾燥圧縮によって公知の様式で、できたての本体(green body)が産生され、そして次に、バインダーを除き、そして焼成することにより、約10〜15mmの全体高さをもつ処理可能な成形体が産生される。
【0069】
このようにして得られた成形体では、中間層は、約0.2〜約0.4mmの層厚みを有する。この成形体およびそれから生成された歯科修復物では、個々の層間の変化は驚くべきことに裸眼に認知不能である。
【0070】

(実施例3−1つの中間層)
異なる色の層を有する複数色の成形体の製造のために、以下の材料(ガラスセラミック粉末)が用いられる:
SiO: 60.0〜65.0%
Al: 16.0〜20.0%
O: 10.0〜14.0%
NaO: 3.5〜6.5%
: 0〜1.0%
BaO: 0〜1.5%
CaO: 0.5〜2.5%
CeO: 0〜1.0%
TiO: 0〜0.5%
F: 0〜0.5%
色素: 0.2〜1.0%

適切な色素添加により、ガラスセラミック材料の着色物M1およびM2が生成され、ここで、M1は、例えば、Vitapan classical(登録商標)による象牙質色A2に対応し、そして高い不透明性を有し、その一方、M2は、前歯色に対応し、そしてより低い不透明性を有する。材料M1とM2とを異なって混合することにより、4つの異なる色の材料組成物A〜Dが得られ、そしてこれらから次に3つの異なる色の材料の中間層AB、BC、CDが得られる:
材料A: 100%M1
材料B: 2/3M1、1/3M2
材料C: 1/3M1、2/3M2
材料D: 100%M2

材料AB: 50%A、50%B
材料BC: 50%B、50%C
材料CD: 50%C、50%D

個々の材料は、慣習形状の圧縮鋳型に段階的に導入され、その結果、以下の一連の層が得られる:
第1層: 主要層、材料A
第2層: 中間層、材料AB
第3層: 主要層、材料B
第4層: 中間層、材料BC
第5層: 主要層、材料C
第6層: 中間層、材料CD
第7層: 主要層、材料D

圧縮鋳型を個々の層で充填した後、乾燥圧縮によって公知の様式で、できたての本体(green body)が産生され、そして次に、バインダーを除き、そして焼成することにより、約10〜15mmの全体高さをもつ処理可能な成形体が産生される。
【0071】
このようにして得られた成形体では、中間層は、約0.2〜約0.4mmの層厚みを有する。この成形体およびそれから生成された歯科修復物では、個々の層間の変化は驚くべきことに裸眼に認知不能である。
【0072】
(要約)
本発明は、歯科修復物を生成するための互いに上部上に配列された層を有する複数色の成形体、その生産のためのプロセスおよび歯科修復物の製造のためのその使用に関する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
歯科修復物を製造するために特に適切であり、そしてその中の個々の層の間の色の変化が、技術的支援なくしては感知されることができない互いの上に配列された層を有する複数色成形体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科修復物を製造するために互いの上部上に配列された層を有する複数色の成形体であって、
(a)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層、および
(b)該少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間の、少なくとも2つ異なる色の中間層を備え、
ここで、これらの中間層の間の色における変化が、該主要層の間の色における変化の方向とは反対である方向で生じる、複数色の成形体。
【請求項2】
前記色における変化が、本質的にそれらの個々の明度における変化である、請求項1に記載の複数色の成形体。
【請求項3】
前記中間層の間の明度における増加が、前記主要層の間の明度における増加の方向とは反対である方向で生じる、請求項1または2のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項4】
前記2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間に横たわる中間層が、交互に、これら主要層の色を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項5】
2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間に、2つの中間層が配列され、そしてこれら中間層の各々が個々の他の中間層に隣接している主要層の色を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項6】
互いの上部上に配列された4つの層の少なくとも1つの要素を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複数色の成形体であって、ここで、
(a)第1の層は第1の主要層であり;
(b)第2の層は第2の主要層の色を有する中間層であり;
(c)第3の層は第1の主要層の色を有する中間層であり;
(d)第4の層は第2の主要層である、複数色の成形体。
【請求項7】
4〜20、好ましくは4〜10、より好ましくは4〜8の主要および中間層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項8】
互いの上部上に配列された8つの層を有する、請求項1〜7のいずれか1項に1項に記載の複数色の成形体であって、ここで、
(a)第1の層は第1の主要層であり;
(b)第2の層は第2の主要層であり;
(c)第3の層は第3の主要層の色を有する中間層であり;
(d)第4の層は第2の主要層の色を有する中間層であり;
(e)第5の層は第3の主要層であり;
(f)第6の層は第4の主要層の色を有する中間層であり;
(g)第7の層は第3の主要層の色を有する中間層であり;そして
(h)第8の層は第4の主要層である、複数色の成形体。
【請求項9】
前記主要層が、0.5mmを超え、特に0.5mmを超え、そして15mmまで、好ましくは0.5mmを超え、そして10mmまで、そしてより好ましくは0.7mm〜8mmの厚みを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項10】
前記中間層が、0.5mmまで、特に0.01mm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.5mm、そしてより好ましくは0.2mm〜0.4mmの厚みを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項11】
セラミック、ガラスセラミック、無機−有機コンポジットまたはそれらの混合物に基づく、請求項1〜10のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項12】
(a)SiO;(b)Al;および(c)KOおよび/またはNaOを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項13】
Alおよび/またはZrOセラミック材料から形成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項14】
歯科修復物を製造するための互いの上部上に配列された層を有する複数色の成形体であって、
(a)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層、および
(b)少なくとも2つの連続し、かつ異なる色の主要層の間の中間層を備え、ここで、該中間層が、該2つの連続する主要層の材料の混合物を備える、複数色の成形体。
【請求項15】
前記主要層が、0.5mmを超え、特に0.5mmを超え、そして15mmまで、好ましくは0.5mmを超え、そして10mmまで、そしてより好ましくは0.7mm〜8mmの厚みを有する、請求項14に記載の複数色の成形体。
【請求項16】
前記中間層が、0.5mmまで、特に0.01mm〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.5mm、そしてより好ましくは0.2mm〜0.4mmの厚みを有する、請求項14および15のいずれか1項に記載の複数色の成形体。
【請求項17】
前記主要層および前記中間層が、互いの上部上に、請求項1〜16のいずれか1項に記載の成形体が得られるように配列される、請求項1〜16のいずれか1項による複数色の成形体を製造するためのプロセス。
【請求項18】
歯科修復物の製造のための請求項1〜16のいずれか1項による複数色の成形体の使用。
【請求項19】
前記歯科修復物が、人工歯、インレー、アンレー、ブリッジおよびクラウンである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記歯科修復物の製造が、特にCAD/CAM技法によってコンピューター支援される、請求項18または19のいずか1項に記載の使用。

【公開番号】特開2008−68079(P2008−68079A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223714(P2007−223714)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【Fターム(参考)】