説明

複素二環スピロ化合物

複素二環スピロ化合物;それら化合物を含む医薬組成物;並びにアルツハイマー病、インスリン抵抗性症候群、及び2型糖尿病を含む、M1ムスカリン受容体の調節に感受性である疾患及び症状の哺乳類を治療するための方法が開示されている。他の実施形態も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年1月26日に出願された米国特許仮出願第61/147143号の優先権を主張するものである。この仮出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のリガンドであり、特にムスカリン受容体アゴニストとして機能する複素二環スピロ化合物、これら化合物を含む医薬組成物、並びに哺乳類のアルツハイマー病、及びインスリン抵抗性症候群、及び2型糖尿病を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医学的必要性が満たされていない広範囲の疾患は、それぞれプロテインキナーゼC(PKC)活性化因子及びグリコゲン合成酵素キナーゼ−3β(GSK−3β)阻害剤により原理的に治療可能であり得る幾つかの共通した病因を共有している。3つのそのような疾患状態、アルツハイマー病(AD)(神経学的な中枢神経(CNS)疾患)、並びにインスリン抵抗性症候群(IRS)及び2型糖尿病(T2D)(互いに関連する2つの代謝疾患)が、下記で簡潔に記述されている。IRS/T2DとADとの間には密接な関連性が存在する(Sima及びLi、Rev.Diabetic Stud.2006年、3巻:161〜168頁)。
【0004】
ADは、進行性の記憶喪失により、シナプスの喪失により、β−アミロイド(Aβ)で構成される老人斑の存在により、神経原線維のもつれ(NFT)の存在により、及び前脳基底部のコリン作動性ニューロンの喪失により臨床的に特徴付けられる変性脳障害である。Aβは、神経毒性ペプチドである。タウ(τ)は、神経突起伸長に必要な微小管結合タンパク質である。過剰リン酸化型タウタンパク質は実際に毒性であり、対らせん状細線維(PHF)及びNFTの主成分である。インスリン抵抗性は、慢性の末梢インスリン上昇を誘導し、インスリン活性を低減し、脳インスリンレベルを低減する。IRS並びにT2D及び高血圧などの関連症状は、加齢性記憶障害及びADと関連している(Sima及びLi、Rev Diabetic Stud 2006年、3巻:161〜168頁、)に関係している。
【0005】
多数のキナーゼが、AD病理及びIRS/T2Dに関与している。したがって、プロテインキナーゼC(PKC)の量は、ADを罹患している人々の脳で減少しており、この減少は、神経病理学的な病期と相関することが示されている。これにより、このキナーゼがADの主要な治療標的として重要であることが強調される(Kurumataniら、Brain Res 1998年;796巻:209〜21頁)。
【0006】
別のキナーゼ、GSK−3βは、細胞膜から核へのシグナル伝達、遺伝子転写、翻訳、細胞骨格形成から、細胞周期進行及び生存に及ぶ数多くの細胞プロセスにおいて重要な調節的役割を果たす(Eldar−Finkelman、Trends Molec Med.2002年、8巻:126〜32頁;Bhatら、Neurosignals 2002年、11巻:251〜61頁;Balaramら、Cell Mol Life Sci 2006年、63巻:1226〜35頁)。GSK−3βは、ADタウ過剰リン酸化、Aβ誘導性神経毒性、及びプレセニリン−1(PS−1)突然変異病原性効果などのADに関連する主要な異常のほとんどに関連している。活性GSK−3βは、細胞死に関与するシグナル伝達事象を開始させ、一部のAD病理が、異常なGSK−3β発現及び活性に起因している可能性を示している。さらに、GSK−3βの不活化は、Aβ分泌の減少と相関している(Sunら、Neurosci.Lett.2002年、321巻:61〜4頁)。現在、GSK−3βは、β−アミロイドとタウ病理とを結び付けるために欠けている部分であることが仮定されており、GSK−3βは、ADの病因に顕著に関与するものとして位置付けられている[Takashima、J Alzheimers Dis 2006年、9巻(付録3)、309〜17頁]。
【0007】
GSK−3βは、グリコゲン合成酵素をリン酸化し、グルコース代謝経路を制御する。したがって、GSK−3βは、インスリンシグナル伝達経路における中心的な負の制御因子であり、インスリン抵抗性に役割を有している可能性がある(Gaspariniら、Trends Pharmacol Sci 2002年:23巻:288〜92頁;Janssensら、Investig New Drugs 2006年;24巻:263〜80頁)。
【0008】
したがって、GSK−3βの阻害は、GSK−3β経路を使用する、インスリンなどの特定のホルモン及び増殖因子の作用を模倣することができる。この戦略より、シグナル伝達機構の欠損受容体(例えば、インスリン受容体)又は別の欠陥部分を迂回することが可能になる場合があり、その結果、インスリン非依存性2型糖尿病などのように、シグナル伝達カスケードの幾つかの上流関与体に欠陥がある場合でさえ、生物学的なシグナルは効果を現すことになる[Tanabeら、PLoS Biol. 2008年(2):e37;Wagmanら、Curr Pharm Design、2004年 10巻:1105〜1137頁]。
【0009】
上記で言及されている疾患の治療戦略には、PKC活性化因子及びGSK−3β阻害剤が含まれていてもよい。これは、原理的に、これらキナーゼの間接的(GPCR媒介性)又は直接的調節のいずれかにより達成することができる。直接的なPKC活性化因子又はGSK−3β阻害剤の場合には、非常に強力で選択的なリガンドが探究される。しかしながら、それらの標的キナーゼが多数のプロセス及び下流カスケードに関与するため、そのような治療戦略では、有害効果はなくならないだろう。したがって、ある経路(および関連疾患)におけるそれらの機能について、これらキナーゼを直接的に標的とすることにより、別の経路におけるそれらの機能が変更され、重大な副作用(非特異的副作用)を起こす可能性があるだろう。
【0010】
したがって、これらキナーゼを直接的に標的とする化合物を用いた理想的な療法は、疾患状態に関与する別々の経路(複数可)を選択的に調節するべきである。そのようなキナーゼは、GPCRを介して細胞膜の外部から調節することができる。GPCRは、細胞の外部から受け取ったシグナルを、シグナル伝達経路を介して細胞内部の生物学的プロセスへと変換する。GPCRにより調節されるそのようなシグナル伝達経路は、細胞及び生物が微弱なシグナルを増幅してロバストな応答を生成することができる洗練された系である。この下流増幅プロセスにより、適度な結合能力を有し、AD、IRS、及びT2Dなどの慢性疾患状態の長期治療後にGPCR媒介性シグナル伝達の除感作を引き起こさない部分的アゴニストの臨床開発が可能になる。
【0011】
GPCR調節の薬物候補は、他のGPCRサブタイプの活性化を防止するために、標的GPCRサブタイプに対して選択性を有することが望ましい。ムスカリン受容体(mAChR)は、GPCRのサブクラスである。M1〜M5と呼ばれる5つの遺伝子的に異なるヒトムスカリン受容体がクローニングされている(Buckleyら、Mo1 Pharmacol.1989年;35巻:469〜76頁;Hulmeら、Ann Rev Pharmacol Toxicol 1990年;30巻:633〜73頁)。皮質、海馬、及び線条体に広く分布しているM1 mAChRは、認知処理、特にADにおいて損なわれる短期記憶に重要な役割を有する。M1選択的ムスカリンアゴニストは、抗認知症薬物治療として機能する場合がある。そのような化合物の治療能力は、原理的に、コリンエステラーゼ阻害剤(AChE−Is)ほどシナプス前コリン作動性端末の変性の程度により影響を受けないはずであり、したがってFDA承認のAChE−Isより合理的なAD治療であり得る(総説:Fisher、Neurotherapeutics、5巻:433〜42頁、2008年)。多くの二環式スピロ化合物が開示されており、幾つかはM1選択的アゴニストであることが報告されている(米国特許第4,855,290号、第4,981,858号、第4,900,830号、第4,876,260号、第5,053,412号、第5,407,938号、第5,534,520号、第5,852,029号、第7,049,321号、第5,221,675号、第7,349,251号)。
【0012】
ADの主な顕著な特徴のうちの3つ:CNSコリン作動性機能低下、Aβペプチドアミロイド斑の形成、及び過剰リン酸化型タウタンパク質を含有するもつれの間に関連性があることが報告されている。この状況では、ADにおけるコリン作動性機能低下とAβペプチド及びタウリン酸化とが、悪循環で結び付けられる。M1 mAChRの刺激は、そのβ−アミロイド領域の中央でのアミロイド前駆タンパク質(APP)の切断を増加させる場合がある。この切断により、分泌性で神経組織栄養性の神経保護性APP(α−APP)が産生され、Aβペプチドの形成が防止される。M1アゴニストは、ADのα−セクレターゼプロセシング経路を選択的に亢進することにより、Aβ形成を防止するという点で価値がある場合がある。さらに、M1 mAChRの刺激は、タウ過剰リン酸化を減少させることができる(総説:Fisher、Neurotherapeutics 5巻:433〜42頁、2008年)。したがって、GPCRサブタイプの幾つか及び特にM1 mAChRは、健康時及び疾患時の両方において数多くの機能の調節に関与する。PKCは、M1 mAChR、代謝調節型受容体、及びWntシグナル伝達を含むがそれらに限定されない幾つかのGPCRにより活性化することができる(Fariasら、Neurobiol.Dis.2004年、47巻:337〜48頁;Mudherら、J Neurosci.2001年、21巻:4987〜95頁;Ballouら、J.Biol.Chem.2001年、44巻:40910〜916頁)。
【0013】
一般的に、GPCRは、複数の部位を含有することができる。この状況では、mAChRサブタイプは、オルソステリック部位(天然神経伝達物質であるアセチルコリンの主要な結合部位)及びアロステリック部位(オルソステリック部位及びアセチコリン(acetycholine)の効果を変更してもよく、変更しなくてもよい)を両方とも含有する。
【0014】
それぞれAD及びIRS/T2Dを含むCNS及びPNS疾患の病理学的特徴の多くは、酸化ストレス関連の特徴を伴っている。Aβにより引き起こされるADの酸化ストレスは、一連の事象及び悪循環を増幅させる場合があり、幾つかのGPCR誘導性シグナル伝達の遮断(最も良く記述されているのはM1 mAChRについてである)及び神経毒性Aβのさらなる蓄積に結び付く。酸化防止剤は、原理的にそのような悪循環を防止することができる(Fisher、Jap.J.Pharmacol.2000年、84巻:101〜12頁;Kellyら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 1996年 93巻:6753〜58頁)。
【0015】
酸化ストレスは、最終的に、T2Dの発症及びその後の合併症の両方に結び付く場合がある。酸化防止剤治療は糖尿病の動物モデルで有益性を示す場合があるが、新しいより強力な酸化防止剤は、酸化防止剤が合併症の治療に有効であり得るかどうかが実証されることが必要である。さらに、酸化ストレスは、糖尿病合併症に寄与する1つの因子に過ぎないと考えられるため、酸化防止剤治療は、糖尿病合併症の他の治療と併用された方が、より有効である可能性が高いだろう。特に、代謝調節型受容体シグナル伝達(例えば、GPCR媒介性シグナル伝達)及びGSK−3βが関与する新規経路は、糖尿病に関与する可能性があり、包括的な治療戦略で取り組まれる必要があるだろう(Maieseら、Curr Med Chem.2007年 14巻:1729〜38頁。総説)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,855,290号
【特許文献2】米国特許第4,981,858号
【特許文献3】米国特許第4,900,830号
【特許文献4】米国特許第4,876,260号
【特許文献5】米国特許第5,053,412号
【特許文献6】米国特許第5,407,938号
【特許文献7】米国特許第5,534,520号
【特許文献8】米国特許第5,852,029号
【特許文献9】米国特許第7,049,321号
【特許文献10】米国特許第5,221,675号
【特許文献11】米国特許第7,349,251号
【特許文献12】国際公開第97/11682号
【特許文献13】欧州特許第736299号
【特許文献14】国際公開第99/59550号
【特許文献15】国際公開第97/13500号
【特許文献16】国際公開第03/094886号
【特許文献17】米国特許出願公開第20020061336号
【特許文献18】国際公開第00/45792号
【特許文献19】国際公開第00/53160号
【特許文献20】国際公開第02/19989号
【特許文献21】国際公開第89/04179号
【特許文献22】国際公開第96/11705号
【特許文献23】国際公開第90/07923号
【特許文献24】米国特許第6,485,706号
【特許文献25】国際公開第02/49621号
【特許文献26】米国特許第5,179,079号
【特許文献27】国際公開第00/62759号
【特許文献28】米国特許出願公開第20030206939号
【特許文献29】国際公開第00/06108号
【特許文献30】米国特許出願公開第20020034536号
【特許文献31】米国特許第6,524,557号
【特許文献32】米国特許第6,632,456号
【特許文献33】国際公開第02/080884号
【特許文献34】米国特許第5,230,884号
【特許文献35】米国特許第5,292,499号
【特許文献36】国際公開第017/8694号
【特許文献37】国際公開第01/78696号
【特許文献38】米国特許出願第2003019437号
【特許文献39】米国特許出願公開第20030165436号
【特許文献40】国際公開第96/40089号
【特許文献41】米国特許出願公開第20010036481号A1
【特許文献42】米国特許出願公開第20030232019号A1
【特許文献43】米国特許出願公開第20040018243号A1
【特許文献44】国際公開第01/13891号
【特許文献45】国際公開第02/067902号
【特許文献46】国際公開第03/072080号
【特許文献47】国際公開第03/079885号
【特許文献48】国際公開第03/015750号
【特許文献49】米国特許出願公開第20030008013号
【特許文献50】国際公開第00/00176号
【特許文献51】米国特許出願公開第20020141945号
【特許文献52】米国特許第6,309,671号
【特許文献53】欧州特許出願公開第1338272号A1
【特許文献54】国際公開第90/09781号
【特許文献55】米国特許第5,348,730号
【特許文献56】米国特許第6,436,367号
【特許文献57】国際公開第91/04011号
【特許文献58】米国特許第6,294,153号
【特許文献59】米国特許第6,290,987号
【特許文献60】米国特許出願公開第20030053960号
【特許文献61】国際公開第01/60341号
【特許文献62】米国特許出願公開第20010038824号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Sima及びLi、Rev.Diabetic Stud.2006年、3巻:161〜168頁
【非特許文献2】Kurumataniら、Brain Res 1998年;796巻:209〜21頁
【非特許文献3】Eldar−Finkelman、Trends Molec Med.2002年、8巻:126〜32頁
【非特許文献4】Bhatら、Neurosignals 2002年、11巻:251〜61頁
【非特許文献5】Balaramら、Cell Mol Life Sci 2006年、63巻:1226〜35頁
【非特許文献6】Sunら、Neurosci.Lett.2002年、321巻:61〜4頁
【非特許文献7】Takashima、J Alzheimers Dis 2006年、9巻(付録3)、309〜17頁
【非特許文献8】Gaspariniら、Trends Pharmacol Sci 2002年:23巻:288〜92頁
【非特許文献9】Janssensら、Investig New Drugs 2006年;24巻:263〜80頁
【非特許文献10】Tanabeら、PLoS Biol.2008年(2):e37
【非特許文献11】Wagmanら、Curr Pharm Design、2004年 10巻:1105〜1137頁
【非特許文献12】Buckleyら、Mo1 Pharmacol.1989年;35巻:469〜76頁
【非特許文献13】Hulmeら、Ann Rev Pharmacol Toxicol 1990年;30巻:633〜73頁
【非特許文献14】Fisher、Neurotherapeutics、5巻:433〜42頁、2008年
【非特許文献15】Fariasら、Neurobiol.Dis.2004年、47巻:337〜48頁
【非特許文献16】Mudherら、J Neurosci.2001年、21巻:4987〜95頁
【非特許文献17】Ballouら、J.Biol.Chem.2001年、44巻:40910〜916頁
【非特許文献18】Fisher、Jap.J.Pharmacol.2000年、84巻:101〜12頁
【非特許文献19】Kellyら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 1996年 93巻:6753〜58頁
【非特許文献20】Maieseら、Curr Med Chem.2007年 14巻:1729〜38頁
【非特許文献21】Naming and Indexing of Chemical Substances for Chemical Abstracts、米国化学会
【非特許文献22】Maehr J.Chem.Ed.62巻、114〜120頁(1985年)
【非特許文献23】Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年
【非特許文献24】Prausnitzら、2004年 Nature Reviews Drug Discovery 3巻:115頁
【非特許文献25】Sprowls’ American Pharmacy
【非特許文献26】Remington’s The Science and Practice of Pharmacy
【非特許文献27】Tsukamotoら、Chem.Pharm.Bull.1995年、43巻、842〜852頁
【非特許文献28】Srinivasanら、Mol.Diversity 9(2005年)4、291〜293頁
【非特許文献29】Surら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 2003年、100巻:13674〜13679頁
【非特許文献30】Fagarasanら、Mol.Psychiat.1996年、1巻:398〜403頁
【非特許文献31】Shearmanら、PNAS USA 1994年、91巻:1470〜74頁
【非特許文献32】Haringら、J.Neurochem.、1998年、71巻:2094〜103頁
【非特許文献33】Fangら、Mol.Cell.Biol.2002年、22巻:2099〜110頁
【非特許文献34】Dobleら、J.Cell.Sci.2003年、116巻:1175〜86頁
【非特許文献35】Fisherら、J.Pharmacol.Exptl.Therap.1991年、257巻:392〜403頁
【非特許文献36】Bymasterら、J Pharmacol Exp.Ther.267巻:16〜24頁、1993年
【非特許文献37】Roldanら、Neurosci.Lett.230巻:93〜96頁、1997年
【非特許文献38】Kimuraら、Brain Res.834巻:6〜12頁、1999年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の実施形態によると、式Iのスピロ化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される:
【0019】
【化1】

【0020】
式中、Aは、
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
及び
【0025】
【化5】

からなる群から選択され
式中、
全ての構造において、「C」と示されている炭素はスピロ炭素を示し、 Rは、H及び随意に置換されたCアルキルからなる群から選択され、 n及びpは、各々独立して0、1、2、及び3から選択され、ただしn+p=l、2、又は3であり、
Yは、−O−又は−S−であり、
、R、R、R、及びRは、各々独立して、H、随意に置換されたC1〜6アルキル、随意に置換されたC1〜6アルコキシ、随意に置換されたC1〜6ヒドロキシアルキル、随意に置換されたC2〜6アルケニル、及び随意に置換されたフェニルから選択され、
は、随意に置換されたC1〜7アルキル、随意に置換されたC1〜6ヒドロキシアルキル、随意に置換されたC2〜6アルケニル、随意に置換されたC2〜6アルキニル、随意に置換されたフェニル、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインドール、随意に置換されたへテロアリール、随意に置換されたC1〜6アルキルへテロアリール、随意に置換されたC3〜7シクロアルキル、−C(=O)−R、−SO−Rから選択され、Aが、
【0026】
【化6】

−O−C(=O)−Rである場合、
は、随意に置換されたC1〜7アルキル、随意に置換されたC1〜7アルコキシ、随意に置換されたC2〜7ヒドロキシアルキル、随意に置換されたC2〜7アルケニル、随意に置換されたC2〜7アルキニル、随意に置換されたC3〜7シクロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインドール、随意に置換された〜C2〜3アルケニルインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインドリジン、随意に置換された−C2〜3アルケニルインドリジン、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシインドリジン、随意に置換された−(C1〜6)アルキルイソインドール、随意に置換された−C2〜3アルケニルイソインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシイソインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインダジオール(alkylindaziole)、随意に置換された−C2〜3アルケニルインダゾール、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシインダゾール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルベンズイミダゾール、随意に置換された−C2〜3アルケニルベンズイミダゾール、及び随意に置換された−(C1〜6)アルコキシベンズイミダゾールから選択され、
は、アルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、及びCFからなる群の1つ又は複数のメンバーにより置換されたアリールである。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では、Rはメチルである。本発明の幾つかの実施形態では、p及びnは、各々1である。
【0028】
幾つかの実施形態では、Aは、
【0029】
【化7】

である。幾つかの実施形態では、Aは、
【0030】
【化8】

である。幾つかの実施形態では、Aは、
【0031】
【化9】

である。幾つかの実施形態では、Aは、
【0032】
【化10】

幾つかの実施形態では、Aは、
【0033】
【化11】

である。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態では、Rはメチルである。幾つかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。幾つかの実施形態では、Rはメチルであり、R、R、及びRは、各々Hである。
【0035】
幾つかの実施形態では、RはHである。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態では、YはSである。幾つかの実施形態では、YはOである。
【0037】
幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−(C1〜3)−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−CH−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−CHCH−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−CHCH−((1−メチル)−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−CHCHCH−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Rは、trans−C(O)−CH=CH−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Rは、−SO−4−フルオロフェニルである。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)CH(n−プロピル)である。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tertブチルフェニル)である。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−CHCHである。幾つかの実施形態では、Rは、−C(O)−CH(NH)−CH−インドール−3−イルである。幾つかの実施形態では、Aは、
【0038】
【化12】

であり、Rは、−O−C(=O)−CHCH−インドール−3−イルである。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態では、化合物は、以下のうちの1つから選択される:
【0040】
【化13】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【0041】
【化14】

((R))−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【0042】
【化15】

((S))−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【0043】
【化16】

(3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]−デカン)、
【0044】
【化17】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−プロピルペンタン−1−オン)、
【0045】
【化18】

(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−メタノン)、
【0046】
【化19】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−(1H−インドール3−イル)ブタン−1−オン)、
【0047】
【化20】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−(1H−インドール3−イル)エタン−1−オン)、
【0048】
【化21】

【0049】
【化22】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール3−イル)プロパ−2−エン−1−オン)、
【0050】
【化23】

1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1−メチル−インドール−3−イル)プロパン−1−オン、
【0051】
【化24】

1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【0052】
【化25】

((R)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【0053】
【化26】

((S)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【0054】
【化27】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−プロピル−ペンタン−1−オン)、
【0055】
【化28】

(3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]−デカン)、
【0056】
【化29】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−4−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【0057】
【化30】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−4−イル)−2−プロピル−ペンタン−1−オン)、
【0058】
【化31】

(4−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]−デカン)、
【0059】
【化32】

(1’,4−ジメチル−6−(3−インドールプロピオニル)−スピロ−(3−オキサ−6−アザ−ビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−2,4’−ピペリジン))、及び
【0060】
【化33】

(1’,4−ジメチル−6−[3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)]−スピロ−(3−オキサ−6−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン))、
【0061】
【化34】

N−(2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオンアミド、
【0062】
【化35】

N−(2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオンアミド、
【0063】
【化36】

(3E)−2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン−O−[3−(1H−インドール−3−イル)プロパノイル]オキシム、
【0064】
【化37】

(D)−2−アミノ−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【0065】
本発明の幾つかの実施形態によると、以下のものからなる群から選択される化合物も提供される:(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン、(+)−(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、(−)−(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン、(+)−1−(2、8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン、及び(−)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン。
【0066】
本発明の実施形態によると、本明細書に記載されている化合物、及びその薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物も提供される。
【0067】
本発明の実施形態によると、アルツハイマー病を治療するための方法であって、そのような治療を必要性とする患者に、本明細書に記載されている有効量の化合物を投与することを含む方法も提供される。
【0068】
本発明の実施形態によると、インスリン抵抗性症候群を治療するための方法であって、そのような治療を必要性とする患者に、本明細書に記載されている有効量の化合物を投与することを含む方法も提供される。
【0069】
本発明の実施形態によると、2型糖尿病を治療するための方法であって、そのような治療を必要性とする患者に、本明細書に記載されている有効量の化合物を投与することを含む方法も提供される。
【0070】
本発明の実施形態によると、M1ムスカリン受容体調節因子による治療に感受性である疾患又は症状を治療するための方法であって、その必要がある患者に、本明細書に記載されている治療上有効量の化合物を投与することを含む方法も提供される。幾つかの実施形態では、疾患又は症状は、以下のものからなる群から選択される:脳アミロイド媒介性障害;GSK3β媒介性障害;Wnt−シグナル伝達の異常;タウタンパク質過剰リン酸化媒介性損傷、機能不全、又は疾患;内因性成長因子媒介性疾患;AD及び/又は前述の疾患のリスク因子の組合せ、例えば頭部損傷、酸化ストレス、フリーラジカル、アポトーシス、炎症、外来性又は内因性毒素、興奮毒、遺伝的素因、免疫又は自己免疫性機能不全又は疾患(例えば、狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛);及びコリン作動性機能不全の関与が示唆されている障害を伴う疾患状態。幾つかの実施形態では、疾患又は症状は、以下のものからなる群から選択される:AD、レビー小体認知症、脳アミロイド血管症(CAA)、大脳アミロイドーシス、前頭側頭型認知症、血管性認知症、高脂血症、高コレステロール血症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、多発梗塞性認知症(MID)、脳卒中虚血(stroke ischemia)、脳卒中/虚血/頭部損傷を伴うMID、MID及びADの併発、AD及びPDの併発、ヒト頭部損傷、加齢性記憶障害、軽度認知障害(MCI)、ADに至るMCI、双極性障害、躁病、急性錯乱障害、注意欠陥障害、幻覚−妄想性状態、情緒及び注意障害、術後せん妄(全身麻酔後の抗コリン作動性症候群)、三環系抗うつ薬又は統合失調症及びPDの治療に使用される特定の薬物(例えば、トリヘキシフェニジル)の有害効果(口内乾燥、失名辞、記憶喪失、及び/又は錯乱、精神病)のアンタゴニズム、統合失調症、双極性障害、躁病、遅発性ジスキネジー、先天性オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、オリーブ橋小脳萎縮症、アルコール離脱症状、ハンチントン舞踏病、ピック病、フリードライヒ運動失調症(Friedrick’s ataxia)、ジルドラツレット病、及びダウン症候群。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】AF710及びAF710Bが、M1 mAChRのオルソステリック部位と相互作用せず、したがってアロステリックなアゴニストであることを示す。
【図1B】AF710及びAF710Bが、M1 mAChRのオルソステリック部位と相互作用せず、したがってアロステリックなアゴニストであることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
定義 用語及び置換基は、本明細書の全体にわたって、それらの定義を保持する。
【0073】
アルキルは、直鎖、分岐、又は環式炭化水素構造及びそれらの組合せを含むことが意図されている。別様に制限されていない場合、この用語は、20個以下の炭素のアルキルを指す。低級アルキルは、1、2、3、4、5、及び6個の炭素原子のアルキル基を指す。低級アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、並びにs−ブチル及びt−ブチルなどが含まれる。シクロアルキルは、アルキルのサブセットであり、それには、3、4、5、6、7、及び8個の炭素原子の環式炭化水素基が含まれる。シクロアルキル基の例には、c−プロピル、c−ブチル、c−ペンチル、ノルボルニル、及びアダマンチルなどが含まれる。
【0074】
〜C20炭化水素(例えば、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20)には、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、及びそれらの組合せが含まれる。例には、ベンジル、フェネチル、シクロヘキシルメチル、カンホリル(camphoryl)、及びナフチルエチルが含まれる。用語「フェニレン」は、下記式のオルト、メタ、又はパラ残基を指す:
【0075】
【化38】

【0076】
【化39】

及び
【0077】
【化40】

【0078】
アルコキシ又はアルコキシルは、酸素を介して親構造に結合した直鎖状、分岐状、環状配置、及びそれらの組合せの1、2、3、4、5、6、7、又は8個の炭素原子の基を指す。例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、及びシクロヘキシルオキシなどが含まれる。低級アルコキシは、1〜4個の炭素を含有する基を指す。本特許出願の目的では、アルコキシには、環を形成するようにメチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基がそこから垂下している原子、鎖、又は環に各酸素原子が結合しているメチレンジオキシ及びエチレンジオキシが含まれる。したがって、例えば、アルコキシにより置換されたフェニルは、例えば、
【0079】
【化41】

又は
【0080】
【化42】

であってもよい。
【0081】
オキサアルキルは、1つ又は複数の炭素(及びそれらに結合している水素)が、酸素により置換されたアルキル残基を指す。例には、メトキシプロポキシ、3,6,9−トリオキサデシルなどが含まれる。オキサアルキルという用語は、それが当技術分野で理解されているように意図されており[米国化学会が出版したNaming and Indexing of Chemical Substances for Chemical Abstracts、第196項を参照されたい。しかし第127(a)項の制限は適用されない。]、つまり、その隣接した原子に対する単結合を介して酸素が結合されている(エーテル結合を形成する)化合物を指す。同様に、チアアルキル及びアザアルキルは、1つ又は複数の炭素が、それぞれ硫黄又は窒素により置換されたアルキル残基を指す。例には、エチルアミノエチル及びメチルチオプロピルが含まれる。
【0082】
アシルは、カルボニル官能基を介して親構造に結合した直鎖状、分岐状、環状配置、飽和、不飽和、及び芳香族、並びにそれらの組合せの1、2、3、4、5、6、7、及び8個の炭素原子の基を指す。アシル残基の1つ又は複数の炭素は、親構造との結合点がカルボニルである限り、窒素、酸素、又は硫黄により置換されていてもよい。例には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル、ベンゾイル、及びベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。低級アシルは、1〜4個の炭素を含有する基を指す。
【0083】
アリール及びへテロアリールは、置換基として、それぞれ芳香族環又は芳香族複素環を指す。へテロアリールは、O、N、又はSから選択される1、2、又は3個のヘテロ原子を含有する。両方とも、単環式5員又は6員芳香族環又は芳香族複素環、二環式9員又は10員芳香族環又は芳香族複素環、及び三環式13員又は14員芳香族環又は芳香族複素環を指す。芳香族6、7、8、9、10、11、12、13、及び14員炭素環には、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、及びフルオレンが含まれ、5、6、7、8、9、及び10員芳香族複素環には、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール、及びピラゾールが含まれる。
【0084】
アリールアルキルは、アリール環に結合したアルキル残基を意味する。例には、ベンジル及びフェネチルなどである。
【0085】
置換アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリルなどは、各残基中の最大3個のH原子が、ハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アシル、アルコキシアルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、へテロアリール、ベンゼンスルホニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボキシ、カルボアルコキシ(アルコキシカルボニルとも呼ばれる)、アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド(アルキルアミノカルボニルとも呼ばれる)、シアノ、カルボニル、アセトキシ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、スルホニルアミノ、アシルアミノ、アミジノ、アリール、ベンジル、ヘテロシクリル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ、オキサアルキル、アミノスルホニル、トリチル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、及びベンジルオキシにより置換されているアルキル、アリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリルを指す。
【0086】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0087】
置換基の幾つかの特徴付けでは、ある置換基は結合して環を形成することができることが記されている。別様の記載がない限り、そのような環は、種々の不飽和度(完全飽和から完全不飽和まで)を示していてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよく、低級アルキル又はアルコキシで置換されていてもよいことが意図されている。
【0088】
用語「治療又は予防するための方法」は、列挙されている疾患、状態、又は症状に関連した徴候及び/又は効果の寛解、予防、又は軽減を意味する。本明細書で使用される場合、用語「予防する」は、急性発症を未然に防ぐか又は鈍化させるために、又は慢性症状の場合には、症状の発生可能性又は重症度を減少させるために、薬剤を投与することを指す。当医学技術(本方法の特許請求の範囲が関する)における当業者は、用語「予防」が絶対用語ではないことを認識している。当医学技術では、この用語は、症状の発生可能性又は重症度を実質的に減少させるための予防的な薬物投与を指すと理解されており、出願人らの特許請求の範囲で意図されている意味はこれである。本明細書で使用される場合、患者の「治療」に関しては、予防を含むことが意図されている。
【0089】
本出願の全体にわたって、種々の出版物が引用されている。本明細書で言及されている特許、特許出願、特許広報、及び他の出版物の各々は、これによりその全体が参照により組み込まれる。
【0090】
用語「哺乳類」は、その辞書的な意味で使用される。用語「哺乳類」には、例えば、マウス、ハムスター、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、及びヒトを含む霊長類が含まれる。
【0091】
本明細書に記載の化合物は、1つ又は複数の不斉中心を含有してもよく、したがってエナンチオマー、ジアステレオマー、及び他の立体異性体が生じる場合ある。各キラル中心は、絶対立体化学の点で(R)−又は(S)−として定義することができる。本発明は、ラセミ形態及び光学的に純粋な形態を含むそのような考え得る全ての異性体並びにそれらの混合物を含むことが意図されている。光学的に活性な(R)−及び(S)−、(−)−及び(+)−、又は(D)−及び(L)−異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製してもよく、又は従来技術を使用して分離してもよい。
【0092】
本明細書で使用される場合、当業者であれば理解するように、「化合物」という記述は、その化合物の塩、溶媒和物、及び挿入錯体(inclusion complex)、並びにあらゆる立体異性体又はその化合物のそのようなあらゆる形態の任意の比率の混合物を含むことが意図される。したがって、本発明の幾つかの実施形態によると、医薬組成物、治療法、及び化合物それ自体での状況を含む本明細書に記載の化合物は、塩の形態で提供される。代表的な好適な塩には、以下の酸と形成される塩が含まれる:塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、ギ酸、パルミチン酸、安息香酸、グルタル酸、コール酸、パモ酸、ムチン酸、D−グルタミン酸、d−ショウノウ酸、グリコール酸、フタル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、及びケイ皮酸など。
【0093】
本明細書で使用されるラセミ化合物、アンビスケールミック(ambiscalemic)化合物、スケールミック(scalemic)化合物、又はエナンチオ的に純粋な化合物の図的表現は、Maehr J.Chem.Ed.62巻、114〜120頁(1985年)か引用されている:くさび型の実線及び破線は、キラル要素の絶対配置を示すために使用され、波線は、それが表す結合が生成し得るあらゆる立体化学的関係の否定を示し、実線又は破線の太線は、示されている相対配置を示すがラセミ特徴を示す幾何学的な記述子であり、くさび型の輪郭及び点線又は破線は、絶対配置が未定のエナンチオ的に純粋な化合物を示す。したがって、例えば、式Wは、その対の純粋なエナンチオマーを両方とも包含することが意図されており、
【0094】
【化43】

Wは、
【0095】
【化44】

及び
【0096】
【化45】

を意味し、
その一方で、式Xは、4つのジアステレオマーを表すことが意図されており、
【0097】
【化46】

Xは、
【0098】
【化47】

【0099】
【化48】

【0100】
【化49】

及び
【0101】
【化50】

を意味する。
【0102】
用語「エナンチオマー過剰率」は、当技術分野で周知であり、abのa+bへの分離に関しては以下のように定義される:
【0103】
【数1】

用語「エナンチオマー過剰率」は、両方が同じ現象の尺度であるという点で、より古い用語「光学純度」と関連している。eeの値は、0〜100の数値となるはずであり、ゼロはラセミであり、100は純粋な単一エナンチオマーである。過去には98%の光学純度と呼ばれていた場合がある化合物は、現在ではより正確に96%のeeと記述されており、言い換えれば、90%のeeは、目的の物質中に一方のエナンチオマーが95%存在し、他方が5%存在することを反映する。
【0104】
別様の指示がない限り、環の一部ではない本明細書に見られるあらゆる炭素間二重結合の配置は、便宜的に選択されているに過ぎず、特定の配置を指定することは意図されておらず、したがって、別様の指示がない限り、適宜的にEとして本明細書に示されている非環式炭素間二重結合は、Z、E、又は任意の割合の2つの混合物であり得る。同様に、全ての互変異性体が含まれることが意図されている。
【0105】
Me、Et、Ph、Tf、Ts、及びMsという略語は、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、トルエンスルホニル、及びメタンスルホニルを表す。以下の略語及び用語は、全体にわたって、指示されている意味を有する:
abs=絶対
Ac=アセチル ACN=アセトニトリル Boc=t−ブチルオキシカルボニル Bu=ブチル
c−=シクロ CDI=カルボジイミド conc.=濃縮
DCM=ジクロロメタン=塩化メチレン=CHCl DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド DMAP=4−N,N−ジメチルアミノピリジン Et=エチル FCC=フラッシュカラムクロマトグラフィー GC=ガスクロマトグラフィー HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール HPLC=高速(又は高圧)液体クロマトグラフィー i−=イソ−
IPA=イソプロピルアルコール Me=メチル Ph又はκ=フェニル
ppt.=沈殿物
Pr=プロピル
rt=室温 sat’d=飽和
s−=二級
t−=三級
TEA=トリエチルアミン THF=テトラヒドロフラン TLC=薄層クロマトグラフィー TMS=トリメチルシリル tosyl=p−トルエンスルホニル
【0106】
有機化学者(つまり、当業者)により使用される略語の総覧は、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に示されている。典型的には「略語の標準一覧表」と題する表に示されている一覧表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
式Iの化合物は、M1 mAChR調節因子であり、つまり、それらはM1 mAChRに結合し、この受容体のアゴニスト又はアンタゴニストのいずれかとして作用する。幾つかの場合では、調節はアロステリックであり、幾つかの場合ではオルソステリックであり、幾つかの場合では、その両方である。
【0108】
式Iの化合物は、化学薬品としてそのまま投与することが可能である場合があるが、医薬組成物(本明細書では製剤とも呼ばれる)の一部として提供することが望ましいことが多いだろう。本発明の実施形態によると、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、その1つ又は複数の薬学的担体及び随意に1つ又は複数の他の治療成分を一緒に含む医薬組成物が提供される。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に有害でないという意味において「許容」されなければならない。
【0109】
さらに、上述のように、用語「化合物」は、その塩も同様に含み、したがって「化合物」を記述する独立請求項は、その塩も同様に参照すると理解されるだろう。にもかかわらず、独立請求項において「化合物又はその薬学的に許容される塩」が参照されている場合、そのような化合物を参照するその独立請求項に依存する請求項は、たとえ従属請求項においてその塩が明示的に参照されていなくとも、その化合物の薬学的に許容される塩も含むと理解されるだろう。
【0110】
製剤には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、及び関節内を含む)、直腸内、及び局所的(皮膚、頬側、舌下、及び眼内)投与に好適なものが含まれる。最も好適な経路は、受容者の症状及び障害に依存する場合がある。製剤は、単位剤形で便利に提供することができ、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。そのような方法は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物(「活性成分」)を、1つ又は複数の副次的成分を構成する担体と接触させるステップを含む。一般的には、製剤は、液体担体又は微粉化された固体担体又はその両方を活性成分と均一に及び密接に接触させ、その後必要に応じて生成物を成形して所望の製剤にすることにより調製される。
【0111】
経口投与に好適な製剤は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤、又は錠剤などの個別単位として、散剤又は果粒剤として、水性の液体又は非水性の液体中の液剤又は懸濁剤として、又は水中油型液体乳剤又は油中水型液体乳剤として提供することができる。活性成分は、ボーラス、舐剤、又は軟膏として提供することもできる。
【0112】
錠剤は、随意に1つ又は複数の副次的成分と共に圧縮又は成型することにより製作することができる。圧縮錠剤は、散剤又は果粒剤などの易流動性形態の活性成分を、随意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、又は分散剤と混合して、好適な機械で圧縮することにより調製することができる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で加湿された粉末状化合物の混合物を好適な機械で成型することにより製作することができる。錠剤は、随意に被膜又は刻溝することができ、その中の活性成分の徐放、遅延放出、又は放出制御を提供するように製剤することができる。医薬組成物は、「薬学的に許容される不活性担体」を含んでいてもよく、この表現は、1つ又は複数の不活性賦形剤を含むことが意図されており、それらには、デンプン、ポリオール、造粒剤、微結晶性セルロース、希釈剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤などが含まれる。所望の場合、開示されている組成物の錠剤用量は、標準的な水性又は非水性技術により被膜することができる。「薬学的に許容される担体」は、放出抑制手段も包含する。
【0113】
非経口投与用の製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を対象受容者の血液と等張性にする溶質を含有していてもよい水性及び非水性の無菌注射溶液が含まれる。非経口投与用の製剤には、懸濁化剤及び増粘剤を含んでいてもよい水性及び非水性の無菌懸濁剤も含まれる。製剤は、複数用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルの単位用量で提供してもよく、使用の直前に無菌の液体担体、例えば生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などを添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。即時調合注射溶液及び懸濁剤は、以前に記述されている種類の無菌散剤、果粒剤、及び錠剤から調製することができる。
【0114】
直腸内投与用の製剤は、カカオ脂又はポリエチレングリコールなどの通常の担体と共に坐剤として提供することができる。
【0115】
口内、例えば頬側又は舌下の局所投与用の製剤には、スクロース及びアカシア又はトラガントなどの香味料の基礎原料中に活性成分を含む舐剤、並びにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの基礎原料中に活性成分を含む香錠が含まれる。
【0116】
医薬組成物は、随意に他の治療成分、凝固阻止剤、保存剤、甘味料、着色剤、香味料、乾燥剤、可塑剤、及び染料なども含むことができる。任意のそのような随意成分は、式Iの化合物との適合性をもち、製剤の安定性を保証しなければならない。組成物は、必要に応じて、例えば、ラクトース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、ラフィノース、マルチトール、メレチトース、スタキオース、ラクチトール、パラチニット、デンプン、キシリトール、マンニトール、及びミオイノシトールなど、並びにそれらの水和物、並びにアミノ酸、例えばアラニン、グリシン、及びベタイン、並びにペプチド及びタンパク質、例えば卵白を含む他の添加物を含有していてもよい。
【0117】
薬学的に許容される担体及び薬学的に許容される不活性担体及び前述の追加的成分として使用するための賦形剤の例には、これらに限定されないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、抗菌剤剤、及び被膜剤が含まれる。
【0118】
本発明の製剤は、目的とする製剤のタイプを考慮して、特に上記で言及した成分に加えて当技術分野で従来使用されている他の作用剤を含んでいてもよく、例えば、経口投与に好適な製剤は、香味料を含んでいてもよいことが理解されるべきである。
【0119】
成人の用量範囲は、一般的に経口で0.005mg〜10g/日である。錠剤又は個別単位で提供される他の提供形態は、そのような用量で又は複数のそのような用量で有効である量の式Iの化合物を便利に含有していてもよく、例えば単位は、5mg〜500mg、通常は約10mg〜200mgを含有する。患者に投与する化合物の正確な量は、担当医師の責任となるだろう。しかしながら、使用される用量は、患者の年齢及び性別、治療する障害の詳細及びその重症度を含む多数の因子に依存するだろう。
【0120】
1用量単位(例えば、経口用量単位)は、例えば、1〜30mg、1〜40mg、1〜100mg、1〜300mg、1〜500mg、2〜500mg、3〜100mg、5〜20mg、5〜100mg(例えば、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg)の本明細書に記載の化合物を含んでいてもよい。
【0121】
医薬組成物及びそれらの製剤に関する追加情報については、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年を参照されたい。
【0122】
作用剤は、例えば、静脈注射、筋肉内注射、皮下注射、腹膜腔内注射により、局所的、舌下、関節内(関節に)、皮内、バッカル、眼部的に(眼内を含む)、鼻腔内(カニューレの使用を含む)、又は他の経路より投与することができる。作用剤は、経口で、例えば、所定量の活性成分を含有する錠剤又はカシェ剤、ゲル剤、小丸剤、軟膏、シロップ剤、ボーラス剤、舐剤、スラリー剤、カプセル剤、散剤、果粒剤として、水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として、水中油型乳剤又は油中水型乳剤として、ミセル製剤(例えば、国際公開第97/11682号を参照)により、リポソーム製剤(例えば、欧州特許第736299号、国際公開第99/59550号、及び国際公開第97/13500号を参照)により、国際公開第03/094886号に記載の製剤、又は幾つかの他の形態で投与することができる。作用剤は、経皮的に(つまり、レザバー型(reservoir−type)又はマトリクス型パッチ、極微針、熱穿孔法、皮下針、イオン導入法、電気穿孔法、超音波又は他の形態の超音波導入法、ジェット式注射、又は上記方法の任意の組合せで)投与することもできる(Prausnitzら、2004年 Nature Reviews Drug Discovery 3巻:115頁)。作用剤は、局所的に投与することができる。作用剤は、ステントに被膜することができる。作用剤は、米国特許出願公開第20020061336号に記載のヒドロゲル粒子製剤を使用し、高速経皮粒子注射技術を使用して投与することができる。さらなる粒子製剤は、国際公開第00/45792号、国際公開第00/53160号、及び国際公開第02/19989号に記載されている。硬膏及び吸収促進剤ジメチルイソソルビドを含有する経皮製剤の一例は、国際公開第89/04179号に見出すことができる。国際公開第96/11705号には、経皮投与に好適な製剤が提供されている。作用剤は、坐剤の形態で、又は他の膣的若しくは直腸的手段により投与することができる。作用剤は、国際公開第90/07923号に記載の膜貫通型製剤で投与することができる。作用剤は、米国特許第6,485,706号に記載の脱水粒子により、非侵襲的に投与することができる。作用剤は、国際公開第02/49621号に記載の腸溶薬物製剤で投与することができる。作用剤は、米国特許第5,179,079号に記載の製剤を使用して、鼻腔内投与することができる。非経口注射に好適な製剤は、国際公開第00/62759号に記載されている。作用剤は、米国特許出願公開第20030206939号及び国際公開第00/06108号に記載のカゼイン製剤を使用して投与することができる。作用剤は、米国特許出願公開第20020034536号に記載の粒子性製剤を使用して投与することができる。
【0123】
作用剤は、単独で又は他の好適な成分と組み合わせて、気管内注入(注射器により溶液を肺に送達すること)、リポソームの気管内送達、通気法(注射器又は任意の他の類似デバイスにより粉末製剤を肺に投与すること)、及びエアゾール吸入を含むが、これらに限定されない幾つかの技術を使用して、肺経路により投与することができる。エアゾール剤(例えば、ジェット噴霧器又は超音波噴霧器、計量式吸入器(MDI)、及び乾燥粉吸入器(DPI))も、鼻腔内適用に使用することができる。エアロゾル製剤は、ガス媒体中の固形物質及び液体液滴の安定的分散剤又は懸濁剤であり、ヒドロフルオロアルカン(HFA、つまりHFA−134a及びHFA−227、又はそれらの混合物)、ジクロロジフルオロメタン(又は噴射剤11、12、及び/又は114の混合物などの他のクロロフルオロカーボン噴射剤)、プロパン、及び窒素などの加圧された許容される噴射剤
に入れることができる。肺用製剤は、脂肪酸及びサッカリドなどの透過促進剤、キレート剤、酵素阻害剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤)、アジュバント(例えば、グリココラート、サーファクチン、スパン85、及びナファモスタット)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム又はクロロブタノール)、及びエタノール(通常は最大5重量%だが、20重量%まで可能)を含んでいてもよい。エタノールは、調量弁の機能を向上させることができ、幾つかの場合には分散の安定性を向上させることもできるため、エアゾール組成物に一般的に含まれている。肺用製剤は、胆汁酸塩、及び米国特許第6,524,557号及びその中の参考文献に記載されているものを含むがそれらに限定されない界面活性剤を含む場合もある。米国特許第6,524,557号に記載の界面活性剤、例えば、C〜C16脂肪酸塩、胆汁酸塩、リン脂質、又はアルキルサッカリドは、それらの幾つかも製剤中の化合物の吸収を増強することが報告されているという点で有利である。適切な担体と混合された治療上有効量の活性化合物を含み、乾燥粉末吸入器で使用するのに適した乾燥粉末製剤も、本発明に好適である。本発明の乾燥粉末製剤に添加することができる吸収促進剤には、米国特許第6,632,456号に記載されているものが含まれる。国際公開第02/080884号には、散剤の表面を改質するための新しい方法が記載されている。エアロゾル製剤には、米国特許第5,230,884号、米国特許第5,292,499号、国際公開第017/8694号、国際公開第01/78696号、米国特許出願第2003019437号、米国特許出願公開第20030165436号、及び国際公開第96/40089号(これは植物油を含んでいる)が含まれていてもよい。吸入に好適な徐放性製剤は、米国特許出願公開第20010036481号A1、第20030232019号A1、及び米国特許出願公開第20040018243号A1、並びに国際公開第01/13891号、国際公開第02/067902号、国際公開第03/072080号、及び国際公開第03/079885号にも記載されている。微粒子を含有する肺用製剤は、国際公開第03/015750号、米国特許出願公開第20030008013号、及び国際公開第00/00176号に記載されている。安定したガラス状態粉末を含有する肺用製剤は、米国特許出願公開第20020141945号及び米国特許第6,309,671号に記載されている。他のエアロゾル製剤は、欧州特許出願公開第1338272号A1、国際公開第90/09781号、米国特許第5,348,730号、米国特許第6,436,367号、国際公開第91/04011号、及び米国特許第6,294,153号に記載されており、米国特許第6,290,987号には、エアロゾルまたは他の手段により投与することができるリポソームの基づく製剤が記載されている。吸入用の粉末製剤は、米国特許出願公開第20030053960号及び国際公開第01/60341号に記載されている。作用剤は、米国特許出願公開第20010038824号に記載されているように、鼻腔内投与することができる。
【0124】
緩衝食塩水及び類似媒体中の薬剤溶液は、噴霧器中でエアロゾルを生成するために一般的に使用されている。単純な噴霧器は、ベルヌーイの原理で作動し、空気又は酸素の流動を使用して噴霧粒子を生成する。より複雑な噴霧器は、超音波を使用して噴霧粒子を生成する。両タイプは、当技術分野で周知であり、Sprowls’ American Pharmacy及びRemington’s The Science and Practice of Pharmacyなどの薬学の標準的教科書に記載されている。エアゾール生成用の他のデバイスは、圧縮ガス、通常はハイドロフルオロカーボン及びクロロフルオロカーボンを使用し、これらは加圧容器中で薬剤及び任意の必要とされる賦形剤と混合されており、これらデバイスは、同様にSprowls及びRemingtonなどの標準的教科書に記載されている。
【0125】
本発明の幾つかの実施形態によると、式Iの化合物は、他の活性作用剤と組合せて使用することができることも認識されるだろう。併用療法は、それらの各々が別々に製剤及び投与される2つ以上の作用剤を投与することにより、又は単一製剤中の2つ以上の作用剤を投与することにより達成することができる。他の組合せも併用療法により包含される。例えば、2つの作用剤を一緒に製剤し、それを、第3の作用剤を含有する別々の製剤と共に投与してもよい。併用療法における2つ以上の作用剤は、同時に投与してもよいが、そうである必要はない。例えば、第1の作用剤(又は作用剤の組合せ)の投与は、第2の作用剤(又は作用剤の組合せ)を投与する数分、数時間、数日、又は数週間前であってもよい。したがって、2つ以上の作用剤は、互いに数分以内に、又は互いに1、2、3、6、9、12、15、18、若しくは24時間以内に、又は互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14日間以内に、又は互いに2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10週間以内に投与してもよい。幾つか場合では、さらにより長い間隔が可能である。多くの場合、併用療法で使用される2つ以上の作用剤は、患者の体内に同時に存在することが望ましいが、そうである必要はない。併用療法は、組合せて使用される1つ又は複数の作用剤を2回以上投与することを含んでいてもよい。例えば、作用剤X及び作用剤Yが組合せて使用される場合、それらは、任意の組合せで順次、例えばX−Y−X、X−X−Y、Y−X−Y、Y−Y−X、X−X−Y−Yなど順序で、1回又は複数回投与することができる。
【0126】
表1には、本発明の実施形態の代表的化合物が列挙されている。
【0127】
本発明の実施形態による化合物をM1ムスカリン受容体調節因子として使用して、コリン作動性機能の障害に関連する哺乳類疾患又はコリン作動性機能に不均衡がある疾患、又は以下のものからなる群からのアセチルコリン受容体の活性障害を有する疾患を治療することができることが理解されるだろう:アルツハイマー病型の老人性認知症;アルツハイマー病(AD);レビー小体認知症;アルツハイマー病及びパーキンソン病の併発;多発梗塞性認知症(MID);前頭側頭型認知症;血管性認知症;脳卒中/虚血;脳卒中/虚血/頭部損傷に伴うMID;MID及びADの併発;ヒト頭部損傷;加齢性記憶障害;軽度認知障害(MCI);ADに至るMCI;認知機能障害(失念、急性錯乱障害、注意欠陥障害、注意力及び集中力障害を含む);幻覚−妄想性状態;情緒及び注意障害;睡眠障害;術後せん妄;三環系抗うつ薬の有害効果;統合失調症及びパーキンソン病の治療に使用される特定の薬物の有害効果;口内乾燥、失名辞、記憶喪失、及び/又は錯乱;精神病;統合失調症、ADとの統合失調症並存症、遅発性統合失調症、パラフレニー、統合失調症様障害;不安症;双極性障害;躁病;気分安定化(mood stabilization);特定の神経膠腫除去後の認知障害;遅発性ジスキネジー;酸素療法中の酸化ストレス;失語症;脳炎後の記憶喪失症候群;AIDS認知症;狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、慢性疲労症候群、及び線維筋痛を含む自己免疫疾患における記憶障害;非定型うつ病又は統合失調症における記憶障害;疼痛、リウマチ、関節炎、及び末期疾患;眼球乾燥症、腟乾燥症、皮膚乾燥症;免疫機能障害;過食症及び食欲不振を含む、ニューロクリン障害(neurocrine disorder)及び食物摂取の調節異常;肥満;先天性オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症;オリーブ橋小脳萎縮;アルコール離脱症状;離脱症状及び補充療法を含む物質乱用;ハンチントン舞踏病;進行性核上性麻痺;ピック病;フリードライヒ運動失調症;ジルドラツレット病;ダウン症候群;緑内障;老視;炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、下痢、便秘、胃酸分泌、及び潰瘍などの胃腸運動及び機能の機能不全を含む自律神経障害;切迫尿失禁、喘息、COPD。本発明の実施形態による化合物は、そのような治療のための薬剤の調製に使用することもできる。
【0128】
同様に、本発明の実施形態による化合物M1ムスカリン受容体調節因子として使用して、脳、神経系、心臓血管系、免疫系、ニューロクリン系、消化器系、又は内分泌腺及び外分泌腺、眼、角膜、肺、前立腺、又はコリン作動性機能がムスカリン受容体サブタイプにより媒介される他の器官のうちの1つ又は複数の機能不全による中枢神経系又は末梢神経系の疾患状態を予防又は治療することができ、前記機能不全は、以下のものを含むことが認識されるだろう:脳アミロイド媒介性障害;グリコゲン合成酵素キナーゼ(GSK3p)媒介性障害;タウタンパク質過剰リン酸化媒介性損傷、機能不全、又は疾患;CNS及びPNS高コレステロール血症及び/又は高脂血症媒介性損傷、機能不全、又は疾患;Wnt媒介性シグナル伝達異常;神経可塑性の障害;高血糖症;糖尿病;内因性成長因子媒介性疾患、又はさらなるリスク因子の組合せ;又はアポリポタンパク質Eが関与する疾患状態;又はアルツハイマー病型の老人性認知症、アルツハイマー病(AD)、ADを発症するリスクにある患者におけるAD症状発症の遅延、レビー小体認知症、大脳アミロイド血管症(CAA)、大脳アミロイドーシス、前頭側頭型認知症、血管性認知症、高脂血症、高コレステロール血症、多発梗塞性認知症(MID)、脳卒中虚血、脳卒中/虚血/頭部損傷に伴うMID、MID及びアルツハイマー病の併発、ヒト頭部損傷、加齢性記憶障害、軽度認知障害(MCI)、ADに至るMCI、双極性障害、躁病、統合失調症、非情動性統合失調症(nonaffective sychozophrenia)、パラフレニー、免疫機能障害、ニューロクリン障害、並びに過食症及び食欲不振、体重管理、肥満、炎症を含む食物摂取の調節異常を含むコリン作動性機能不全の関与が示唆されている障害。本発明の実施形態による化合物は、そのような治療のための薬剤の調製に使用することもできる。
【0129】
合成方法 一般的に、式Iの化合物は、容易に入手可能な出発物質、試薬、及び従来の合成手順を使用して、例えば下記に記述されているような一般反応スキームに例示されている方法により、又はその改変方法により調製することができる。それら反応には、それら自体が公知であるが、本明細書では言及されていない変法を使用することも可能である。
【0130】
式Iの化合物を得るためのプロセスは下記に示されている。式Iの他の化合物は、その合成が本明細書で例示されている化合物と相似した様式で調製することができる。下記の手順には、そのような方法が例示されている。さらに、本明細書に示されている合成により、特定の立体化学を有するエナンチオマーの調製がもたらされる場合があるが、あらゆる立体異性形態の式Iの化合物が本発明の範囲内に含まれ、本明細書に示されているもの以外のあらゆる立体異性形態の式Iの化合物の調製は、化学分野の当業者であれば、本明細書に示されている手順に基づき明白だろう。
【0131】
式Iの化合物は、Rの代りにHが存在する対応するスピロ化合物から、下記のスキーム1に例示されているように合成することができる:
スキーム1
【0132】
【化51】

【0133】
アミンと3−インドールカルボキシル酸との結合は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、又はDCC及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の組合せのいずれかによる酸部分の活性化により進行させることができる。アミンと3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸との結合は、DCC及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の組合せによる酸部分の活性化により進行させることができる。対応する置換アミンを産出するためのアミンとバルプロイルクロリド又はp−フルオロベンゼンスルホニルクロリドとの結合は、塩基(トリエチルアミン又は水素化ナトリウム)の存在下で達成することができる。
【0134】
次いで、前駆物質アミン化合物は、下記でより詳しく説明されているように調製することができる。したがって、例えば、2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカンは、乾燥ジクロロメタン中で4−アミノメチル−1−メチル−ピペリジン−4−オールをアセトアルデヒドと反応させることにより得ることができる。2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカンは、還流下で1−アミノ−2−プロパノールを1−メチル−4−ピペリドンと反応させることにより得ることができる。1’,4−ジメチルスピロ[3−オキサ−6−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン]は、最初にTsukamotoら、Chem.Pharm.Bull.1995年、43巻、842〜852頁の手順により、1−メチル−4−ピペリドンから2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンを経て、2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンオキシムを調製し、その後、このオキシムをRed−Al(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)で還元し、その後塩基処理して、1’,4−ジメチルスピロ[3−オキサ−6−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン]を産出することにより得ることができる。2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミンは、最初にTsukamotoら、Chem.Pharm.Bull.1995年、43巻、842〜852頁の手順により、1−メチル−4−ピペリドンから2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンを経て、2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンオキシムを調製し、その後このオキシムを水素化アルミニウムリチウム/塩化アルミニウムで還元することにより得ることができる。その後、式Iの化合物は、適切な結合反応によりこれらアミンから調製することができる。
【0135】
式Iの化合物を調製する際には、5員環の形成、環置換、環飽和/不飽和度の変更、並びに塩及び塩基の相互変換などのための方法など、有機化学者に知られている方法を使用することができる。これら合成方法では、出発物質は、キラル中心を含有していてもよく、ラセミ出発物質が使用される場合、その結果生じる生成物は、一般的にR及びSエナンチオマーの混合物である。或いは、出発物質のキラル異性体を使用してもよく、使用する反応プロトコールがこの出発物質をラセミ化しない場合、キラル生成物が得られる。そのような反応プロトコールでは、合成中にキラル中心の反転を伴う場合がある。ラセミ体又はジアステレオマー混合物が得られる場合、異なる立体異性体は、当技術分野で公知である方法により互いに分離することができる。或いは、所与の異性体は、立体特異性合成又は不斉合成により得ることができる。したがって、本発明のある化合物を調製するための例示的な方法が記述されることになるが、当業者であれば理解するように、他の方法を応用して本化合物を調製することもできることが認識されるだろう。
【0136】
実施例
本発明の実施形態による新化合物の調製を容易にするために、幾つかのリジッドな二環スピロ構造を合成した:
【0137】
2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカンは、2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−2−エンを、メタノール中のシアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより得た。
【0138】
2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカンは、4−アミノメチル−1−メチル−ピペリジン−4−オールを、乾燥ジクロロメタン中のアセトアルデヒドと反応させることにより得た。
【0139】
2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカンは、還流下で1−アミノ−2−プロパノールを1−メチル−4−ピペリドンと反応させることにより得た。
【0140】
1’,4−ジメチルスピロ[3−オキサ−6−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン]を、数ステップで得た。最初に、2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンオキシムを、Tsukamotoら、Chem.Pharm.Bull.1995年、43巻、842〜852頁の手順に従って、1−メチル−4−ピペリドンから、2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンを経て調製した。このオキシムをRed−Alで還元し、その後塩基処理することにより、表題化合物を得た。
【0141】
2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミンを、数ステップで得た。最初に、2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンオキシムを、Tsukamotoら、Chem.Pharm.Bull.1995年、43巻、842〜852頁の手順に従って、1−メチル−4−ピペリドンから、2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンを経て調製した。このオキシムをLiAlH/AlClで還元することにより、表題化合物を得た。
【0142】
2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミンを、数ステップで得た。最初に、2,8−ジメチル−1−チア−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンオキシムを、1−メチル−4−ピペリドンから、2,8−ジメチル−1−チア−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンを経て調製した。このオキシムをRed−Alで還元し、その後塩基処理することにより、表題化合物を得た。
【0143】
別様の記載がない限り、試薬及び溶媒は、商業的供給業者から受領したままで使用した。プロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、それぞれ300又は500MHzのBruker社製Avance−300型及びBruker社製500型分光計で得た。スペクトルは、ppm(δ)で報告されており、及び結合定数Jはヘルツで報告されている。テトラメチルシラン(TMS)を、内部標準物質として使用した。以下の略語をNMRデータの報告に使用する:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=ブロード。13C−NMRスペクトルは、Bruker社製Avance−300型及びBruker社製500型分光計で記録した。質量スペクトルは、UG70 USEQ質量分析計を使用して収集した。GC−MSスペクトルは、Varian社製Saturan 2000型GCMS/MS分光計で記録した。赤外(IR)スペクトルは、Smart Multi−Bounce ZnSe HATRを備えたNicolet社製380型FT−IR分光光度計で記録した。溶媒及び試薬は全て分析用等級だった。本発明者らのNCEの化学的純度の解析は、HPLC FINNIGAN Surveyorで記録した。
【0144】
実施例1:2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカンの合成:
【0145】
【化52】

室温のメタノール(150ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−2−エンの撹拌溶液(10.4ml、60mmol)に、ブロモクレゾールグリーン(5mg)を添加し、溶液は青色になった。色が黄色に変わるまで、4NのHCl/MeOHを撹拌溶液に添加した。その後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(3.9gr、62mmol)を、一度に添加し、その結果生じた混合物を2時間室温で撹拌した。この期間中、反応色が緑に変化するたびに、4NのHCl/MeOHをさらに添加して溶液色を黄色に維持した。この期間の終わりに、溶媒を減圧下で蒸発させて青緑色油状物を得た。ジクロロメタン(100ml)を残留物に添加し、混合物を2NのNaOH(50ml)で洗浄した。2つの相を分離し、水相をジクロロメタン(100ml)で抽出した。有機相を混合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、ほとんど無色の油状物として表題化合物を得た(2.18g)。H NMR(CDCl、500MHz)δ 4.61(q、J=6.18Hz、1H、CHCH)、3.10(d、J=12.6Hz、1H、CHHNH)、2.74(d、J=12.6Hz、1H、CHHNH)、2.27〜2.19(m、1H)、2.23(s、3H、NCH)、2.10(m、2H)、1.85〜1.70(m、5H)、1.46(d、J=6.18Hz、3H、CHCH)ppm。
【0146】
実施例2:2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカンの合成
【0147】
【化53】

ジクロロメタン(15ml)中4−アミノメチル−1−メチル−ピペリジン−4−オール(2.127g、14.77mmol)の溶液に、無水硫酸マグネシウム(2.9g)を添加した。その結果生じた混合物を0℃に冷却し、新しく蒸留したアセトアルデヒド(835μl、14.78mmol)を添加した。室温で6時間撹拌した後、混合物をろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、ほとんど無色の液体として表題化合物を得た(2.16g)。H NMR(CDCl、500MHz)δ 4.60(q、J=5.40Hz、1H、CHCH)、3.01(d、J=12Hz、1H、CHHNH)、2.76(d、J=12Hz、1H、CHHNH)、2.55〜2.31(m、4H、CHN)、2.28(s、3H、NCH)、1.77〜1.58(m、4H、CHCO)、1.36(d、J=5.40Hz、3H、CHCH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 87.57(CH)、57.19(CH)、53.14(C)、52.96(CH)、46.15(CH)、37.28(CH)、35.73(CH)、20.32(CH)ppm。
【0148】
実施例3:2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカンの合成
【0149】
【化54】

1−アミノ−2−プロパノール(9.2ml、1.2mmol)及び1−メチル−4−ピペリドン(11.5ml、1.0mmol)の混合物を、還流下で2時間加熱し、室温で一晩そのままにしておいた。反応混合物を、減圧下で蒸留した(約15mmHg)。表題化合物を82〜95℃で収集した。H NMR(CDCl、300MHz)δ 4.02(m、1H、OCH)、3.25(dd、J=11.9、6.3Hz、1H、CHH)、2.68(dd、J=11.9、6.6Hz、1H、CHH)、2.4〜2.6(m、4H−ピペリジン)、2.1(s、3H、NCH)、1.65〜1.81(m、4H−ピペリジン)、1.21(d、J=6.1Hz、3H、CHCH)ppm。
【0150】
実施例4:1’,4−ジメチル−スピロ−(3−オキサ−6−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン)の合成:
【0151】
【化55】

Red−Al(トルエン中65%の溶液、5.4ml)を、乾燥THF(39ml)中2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカン−3−オンオキシム(1.5gr、7.6mmol)の溶液に滴加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を冷却し(氷−水)、水(1.6ml)、15%NaOH水溶液(1.6ml)、及び水(4.6ml)を連続して添加することにより分解した。テトラヒドロフラン(THF)(40ml)を添加し、固形物をセライトでろ過した。THFろ過液を減圧下で濃縮した。残留油状物をジクロロメタンに溶解し、乾燥し、蒸発させた。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 60/40/1)により、表題アミンを得た(明らかに2つの異性体として)。H−NMR(DO/CDCl、300MHz)δ 4.13及び4.06(2つのq、J=6.7及びJ=6.2Hz、1H、2つのOCH)、2.54〜2.33(m、6H)、2.27(s、3H、NCH)、1.77〜1.65(m、4H)、1.24及び1.20(2つのd、J=6.7及びJ=6.2Hz、3H、CH)ppm;C1018OのGC−MS(CI)6.95分−183(M+1)及び6.64分−183(M+1)。
【0152】
実施例5:1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン(AF710)の合成
【0153】
【化56】

室温のジクロロメタン(230ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(2.18g、11.7mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(3.24g、15.7mmol)を添加し、その後3−インドールプロピオン酸(2.87g、15.2mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 90/10/1)で精製して、AF710を白色固形物として得た(2.5g、100%の化学的純度)。H NMR(CDC1、300MHz)δ 8.17(br s、1H、NH−インドール)、7.60(d、J=7.81Hz、1H、CHC arom)、7.35(d、J=8.08Hz、1H、CHC arom)、7.19(app t、J=7.53Hz、1H、CHCH arom)、7.12(app t、J=7.45Hz、1H、CHCH arom)、7.02(d、J=1.86Hz、1H、CHNH arom)、5.52、5.09(2q、J=6.15及びJ=6.22Hz、1H、CHCH)、4.62、3.66(2d、J=11.76及びJ=11.5Hz、1H、CHHNCO)、3.29、3.08(2d、J=11.48及びJ=12.0Hz、1H、CHHNCO)、3.18〜3.11(m、2H)、2.72〜2.66(m、2H)、2.64〜2.46(m、2H)、2.26、2.25(2s、3H、NCH)、2.32〜2.19、2.12〜2.02(2m、2H)、1.87〜1.80、1.68〜1.51(2m、4H)、1.48、1.43(2d、J=6.21及びJ=6.19Hz、3H、CH−CH)ppm;13C NMR(CDCl、500MHz)δ 170.58(C)、136.39(C)、127.25(C)、122.19(CH)、121.80(CH)、119.52(CH)、118.73(CH)、115.17(C)、111.31(CH)、57.48、57.19(CH)、55.46(C)、54.55、54.12(CH)、53.11、52.86(CH)、46.21、46.15(CH)、38.05、37.32(CH)、36.82、36.31(CH)、34.41(CH)、25.44、23.47(CH)、21.04、20.96(CH)ppm。
【0154】
実施例6:AF710A及びAF710Bのキラル分離 AF710をそのエナンチオマーに分離することは、セミ分取カラムを用いてHPLCにより実施した。メタノール(50mg/ml)中AF710の200μl溶液を、カラムに注入し、カラムを通過させて溶出した。溶出した後、溶出液を蒸発させて乾燥した。
HPLC:Merck−Hitachi社製L−62000A型
検出器:Merck−Hitachi社製L−4250型
カラム:Chiralcel OJ−H、250x10mm
流速:4ml/分
カラム温度:室温
移動相:ヘキサン/エタノール 85:15
濃度:50mg/ml
UV検出:255nm
最初に溶出したエナンチオマー(AF710A):99%ee;比旋光度[α]=+60°(C=0.415、メタノール)
次に溶出したエナンチオマー(AF710B):99%ee;比旋光度[α]=−56°(C=0.303、メタノール)
【0155】
実施例7:3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]−デカン(AF716)の合成
【0156】
【化57】

2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(573mg、3.08mmol)を、アルゴン雰囲気下で乾燥ジクロロメタン(2ml)に溶解した。蒸留トリエチルアミン(644μl、4.62mmol)を添加し、その結果生じた溶液を0℃に冷却した。乾燥ジクロロメタン(2ml)中p−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(600mg、3.08mmol)の溶液を、注射器で滴加した。反応フラスコを撹拌しながら加温して室温にし、白色固形物が沈殿し始めた。1時間撹拌した後、ジクロロメタン(50ml)を添加し、その結果生じた溶液を、水(2x10ml)で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させて、粗混合物を油状物として得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 93/7/1)で精製して、AF716を白色に近い粉末として得た(496mg、98.8%の化学的純度)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 7.89〜7.85(m、2H、2つのCHCSO)、7.27〜7.19(m、2H、CHCF)、5.02(q、J=6.12Hz、1H、CH−CH)、3.66(d、J=11.37Hz、1H、CHHNS)、3.48(d、J=11.37Hz、1H、CHHNS)、2.72〜2.50(m、2H、CHNCH)、2.25(s、3H、NCH)、2.16〜2.07(m、2H、CHNCH)、1.95〜1.88(m、2H、CHCS)、1.55(d、J=6.12Hz、3H、CHCH)、1.48(m、2H、CHCS)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 166.92及び163.54(C)、130.05(CH)、129.93(CH)、129.58(C)、116.60(CH)、116.30(CH)、60.76(C)、60.24(CH)、54.05(CH)、53.22(CH)、46.03(CH)、37.16(CH)、37.05(CH)、25.56(CH)ppm。
【0157】
実施例8:1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−プロピルペンタン−1−オン(AF717)の合成
【0158】
【化58】

2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(982mg、5.28mmol)を、アルゴン雰囲気下で乾燥ジクロロメタン(5ml)に溶解した。蒸留トリエチルアミン(1.10ml、7.92mmol)を添加し、その結果生じた溶液を0℃に冷却した。バルプロイルクロリド(910mg、5.60mmol)を注射器で滴加した。反応フラスコを撹拌しながら加温して室温にし、白色固形物が沈殿し始めた。4時間撹拌した後、ジクロロメタン(100ml)を添加し、その結果生じた溶液を、水(10ml)で洗浄した。2つの相を分離し、水相をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。混合した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EeOH/NHOH 150/10/1)で精製して、AF717を白色に近い粉末として得た(521mg、99.2%の化学的純度)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 5.53、5.26(2q、J=6.12及びJ=6.3Hz、1H、CHCH)、4.67、3.90(2d、J=12.0及びJ=11.35Hz、1H、CHHNCO)、3.48、3.09(2d、J=11.35及びJ=12.0Hz、1H、CHHNCO)、2.78〜2.59(m、2H、CHN)、2.53〜2.47(m、1H、CHCO)、2.30、2.19(2s、3H、NCH)、2.15〜2.05(m、2H、CHN)、2.02〜1.84(m、2H、CHCS)、1.74〜1.61(m、4H、CHCHCO)、1.55、1.50(2d、J=6.3及びJ=6.12Hz、3H、CHCH)、1.44〜1.36(m、2H、CHCS)、1.34〜1.21(m、4H、CHCH)、0.93〜0.87(m、6H、CHCH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 174.35、174.04(C)、59.13(C)、57.35、57.19(CH)、54.52、54.06(CH)、53.13、52.77(CH)、46.09(CH)、43.77、42.55(CH)、38.37、37.58(CH)、37.04、36.20(CH)、35.76、35.35(CH)、35.08、34.77(CH)、26.01、23.01(CH)、21.08、20.98(CH)、20.73、20.56(CH)、14.27、14.22(CH)ppm。
【0159】
実施例9:(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−メタノン(AF723)の合成
【0160】
【化59】

乾燥蒸留ジクロロメタン(10ml)中ジシクロヘキシルカルボジイミド(985mg、4.77mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下で、室温のジクロロメタン(15ml)中3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸(1.14g、4.55mmol)の撹拌溶液に添加した。ジシクロヘキシル尿素が、白色固形物として沈殿し始めた。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(645mg、4.77mmol)を添加し、その結果生じた溶液を5分間室温で撹拌した。その後、ジクロロメタン(5ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(846mg、4.55mmol)を添加し、その結果生じた混合物を室温で一晩維持した。翌日、混合物を30℃(水浴の温度)で5時間加熱し、その後室温でさらに4日間維持した。その結果生じた懸濁液をろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EeOH/NHOH 140/10/1)で精製して、2つの画分:AF723(224mg、99.16%の化学的純度)及びAF723と副生成物との混合物(943mg)を得た。AF723と副生成物との混合物を、COMBI−フラッシュシステムで線形濃度勾配を使用してフラッシュクロマトグラフィーにより精製した(シリカ(CHCl/EtOH/NHOH 220/10/1〜140/10/1)。減圧下で蒸発及び乾燥した後、AF723(516mg、100%の化学的純度)を白色固形物として得た。H NMR(CDCl、500MHz)δ 7.27(s、2H、arom CH)、5.55(m、1H、CH−S)、5.44(s、1H、OH)、4.10(m、1H、CHH−N−CO)、3.40(m、1H、CHH−N−CO)、2.60(m、2H、CH−NCH)、2.28(m、1H、CHH−NCH)、2.25(s、3H、NCH)、2.11(m、1H、CHH−NCH)、1.95〜1.66(m、4H、2つのCH−CS)、1.60(d、J=6.15Hz、3H、CH−CH)、1.44(s、18H、t−ブチル)ppm;13C NMR(CDCl、500MHz)δ 170.78(C=O)、155.52(C)、135.93(2つのC)、127.39(C)、124.30(2つのCH)、59.56(C)、58.00(CH)、56.40(CH)、54.23(CH)、52.82(CH)、45.88(CH)、37.68(CH)、36.50(CH)、34.28(C)、30.21(CH)、23.99(CH)ppm;FTIR(HATR)2943.89、1619.92、1388.67cm−1;GC−MS(EI)7.31分 m/z:419(M+1)。
【0161】
実施例10:1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−プロパン−1−オン(AF724)の合成
【0162】
【化60】

室温のジクロロメタン(90ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(実施例1)(0.86g、4.62mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.28g、6.2mmol)を添加し、その後プロピオン酸(0.41ml、5.5mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、無色油状物として表題化合物を得た(0.5g)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 5.51、5.19(2q、J=6.15及びJ=6.22Hz、1H、CHCH)、4.63、3.74(2d、J=11.88及びJ=11.57Hz、1H、CHHNCO)、3.44、3.08(2d、J=11.55及びJ=12.09Hz、1H、CHHNCO)、2.8〜2.6(m、2H)、2.5〜2.2(m、7H、CH、CHCH、NCH)、2.2〜2.0(m、1H),2.0〜1.8(m、3H)1.52、1.48(2d、J=6,30及びJ=6.18Hz、3H、CH−CH)、1.19〜1.12(m、3H、CH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 171.6(C)、57.5、57.2(CH)、55.5(C)、54.7、54.3(CH)、53.2、53.0(CH)、46.3(CH)、38.4、37.7(CH)、37.0、36.4(CH)、28.8、26.8(CH)、25.6、23.6(CH)、9.6、9.4(CH)ppm。
【0163】
実施例11:1−(2,8)−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)−ブタン−1−オン(AF725)の合成
【0164】
【化61】

室温のジクロロメタン(100ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(実施例1)(0.97g、52mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.44g、6.98mmol)を添加し、その後3−インドール酪酸(1.26g、6.22mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、固形物として表題化合物を得た(400mg)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.21(br s、1H、NH−インドール)、7.60(d、J=7.75Hz、1H、CHC arom)、7.35(d、J=8.09Hz、1H、CHC arom)、7.19(app t、J=7.45Hz、1H、CHCH arom)、7.10(app t、J=7.43Hz、1H、CHCH arom)、6.99(br s、1H、CHNH arom)、5.53、5.08(2q、J=6.15及びJ=6.17Hz、1H、CHCH)、4.65、3.58(2d、J=11.96及びJ=11.55Hz、1H、CHHNCO)、3.32、3.08(2d、J=11.59及びJ=12.09Hz、1H、CHHNCO)、2.87〜2.80(m、2H)、2.8〜2.5(m、2H)、2.5〜2.18(m、3H)、2.27(s、3H、NCH)、2.18〜2.0(m、3H)、2.0〜1.58(m、4H)、1.48、1.43(2d、J=6.17及びJ=6.24Hz、3H、CH−CH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 170.99(C)、136.54(C)、127.65(C)、122.13(CH)、121.69(CH)、119.38(CH)、119.09(CH)、115.77(C)、111.33(CH)、57.57、57.17(CH)、55.30(C)、54.67、54.23(CH)、53.21、52.92(CH)、46.23(CH)、38.42、37.56(CH)、37.04、36.31(CH)、34.93、32.97(CH)、25.68、25.52(CH)、24.72、24.63(CH)、23.56(CH)ppm。
【0165】
実施例12:1−(2,8)−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)−エタン−1−オン(AF726)の合成
【0166】
【化62】

室温のジクロロメタン(100ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(実施例1)(0.97g、52mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.44g、6.98mmol)を添加し、その後3−インドール酢酸(1.09g、6.22mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、固形物として表題化合物を得た(600mg)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.71、8.66(2br s、1H、NH−インドール)、7.62、7.59(2d、J=7.90及びJ=8.39Hz、1H、CHC arom)、7.35(m、1H、CHC arom)、7.22〜7.08(m、1H、2CH arom)、7.03(br s、1H、CHNH arom)、5.53、5.33(2q、J=6.12及びJ=6.22Hz、1H、CHCH)、4.69、3.88(2d、J=12.15及びJ=11.20Hz、1H、CHHNCO)、3.49及び3.81(2s、2H、C(O)CH)、3.36、3.13(2d、J=11.41及びJ=12.19Hz、1H、CHHNCO)、2.8〜2.5(m、1H)、2.5〜2.05(m、2H)、2.25及び2.19(2s、3H、NCH)、2.05〜1.85(m、2H)、1.85〜1.6(m、1H)、1.52、1.48(2d、J=6.15及びJ=6.30Hz、3H、CH−CH)、1.45〜1.35(m、1H)、1.35〜1.15(m、1H)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 169.6(C)、136.43(C)、127.19(C)、122.98、122.82(CH)、122.43(CH)、119.88、119.81(CH)、118.79、118.67(CH)、111.52(CH)、108.55(C)、58.06、57.58(CH)、55.66(C)、54.66、54.15(CH)、53.20、52.76(CH)、46.27、46.11(CH)、38.45、37.13(CH)、36.95、36.13(CH)、33.96(CH)、31.37(CH)、25.75、23.33(CH)ppm。
【0167】
実施例13:(E)−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロペノン(AF727)の合成
【0168】
【化63】

室温のジクロロメタン(85ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(実施例1)(0.83g、44mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.23g、5.9mmol)を添加し、その後trans−3−インドールアセチクリル酸(trans−3−indoleaceticrylic acid)(1.0g、5.3mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、固形物として表題化合物を得た(600mg)。HNMR(1,1,2,2−ジクロロエタン−d、300MHz、100℃)δ 8.56(br s、1H、NH−インドール)、7.94(d、J=15.3Hz、1H、HC=C)、7.83(m、1H、CHC arom)、7.46(br s、1H、CHC arom)、7.42(m、1H、CH)、7.26(m、2H、2CH arom)、6.71(d、J=15.3Hz、1H、C=CH)、5.65(q、J=6.12Hz、1H、CHCH)、4.38(d、J=11.75Hz、1H、CHHNCO)、3.50(d、J=11.84Hz、1H、CHHNCO)、3.1〜2.8(m、2H)、2.8〜2.6(m、1H)、2.6〜2.3(m、2H)、2.46(s、3H、NCH)、2.2〜1.9(m、2H)、1.9〜1.8(m、1H)、1.64(d、J=6.21Hz、3H、CH〜CH)ppm;MS(EI+)m/z 355(M+)、322、185、170。
【0169】
実施例14:1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン(AF711)の合成
【0170】
【化64】

室温のジクロロメタン(110ml)中2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(991.2mg、5.8mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.61g、7.8mmol)及び3−インドールプロピオン酸(1.43g、7.6mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 90/10/1)で精製した。減圧下で蒸発及び乾燥した後、AF711(716mg、99.6%の化学的純度)を白色固形物として得た。H NMR(CDCl、500MHz)δ 8.50、8.46(2br s、1H、NHインドール)、7.61(d、J=7.55Hz、1H、CHC arom)、7.33(d、J=7.85Hz、1H、CHCNH arom)、7.18(app t、J=7.24、7.85Hz、1H、CHCHC arom)、7.11(app t、J=7.55、7.24Hz、1H、CHCHC arom)、7.02(d、J=1.86Hz、1H、CHNHインドール)、5.32、5.15(2q、J=5.09及びJ=5.16Hz、1H、CHCH)、3.99、3.22(2d、J=11及びJ=9.5Hz、1H、CHHNCO)、3.19(m、1H)、3.13〜3.08(m、1H)、3.03、2.97(2d、J=9.5及びJ=11Hz、1H、CHHNCO)、2.72〜2.60(m、2H)、2.51〜2.20(m、4H)、2.25、2.23(2s、3H、NCH)、1.78〜1.64(m、2H)、1.43、1.31(2d、J=5.15及びJ=5.15Hz、3H、CHCH)、1.39、1.28(2m、1H)、1.14(m、1H)ppm;13C NMR(CDCl、500MHz)δ 170.50、169.85(C)、136.30、136.25(C)、127.07、126.99(C)、121.93(CH)、121.85(CH)、119.24(CH)、118.55、118.52(CH)、114.73(C)、111.20、111.12(CH)、84.69、84.06(CH)、77.98(C)、54.18(CH)、52.18(CH)、51.86(CH)、45.89、45.83(CH)、36.38(CH)、34.98(CH)、32.99、32.41(CH)、22.70、20.50(CH)、20.96、20.73(CH)ppm。
【0171】
実施例15:AF711A及びAF711Bのキラル分離 AF711をそのエナンチオマーに分離することは、セミ分取カラムを用いてHPLCにより実施した。メタノール(50mg/ml)中AF711の200μl溶液を、カラムに注入し、溶出した。溶出した後、溶出液を蒸発させて乾燥した。
HPLC:Merck−Hitachi社製L−62000A型
検出器:Merck−Hitachi社製L−4250型
カラム:Chiralcel OJ−H、250x10mm
流速:4ml/分
カラム温度:室温
移動相:ヘキサン/エタノール/メタノール 95:1:4
濃度:50mg/ml
UV検出:300nm
最初に溶出したエナンチオマー(AF711A):99%ee((−)エナンチオマーであると考えられる) 次に溶出したエナンチオマー(AF711B):99%ee;比旋光度[α]=+73.5°(C=0.365、メタノール)
【0172】
実施例16:1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−プロピル−ペンタン−1−オン(AF712)の合成
【0173】
【化65】

2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(1.52g、8.95mmol)を、アルゴン雰囲気下で乾燥ジクロロメタン(5ml)に溶解した。蒸留トリエチルアミン(1.87ml、13.42mmol)を添加し、その結果生じた溶液を0℃に冷却した。バルプロイルクロリド(1.46g、8.95mmol)を注射器で滴加した。反応フラスコを撹拌しながら加温して室温にし、白色固形物が沈殿し始めた。4時間撹拌した後、ジクロロメタン(100ml)を添加し、その結果生じた溶液を、水(10ml)で洗浄した。2つの相を分離し、水相をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。混合した有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 130/10/1)で精製して、AF712を黄色粉末として得た(389mg、98.7%の化学的純度)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 5.43(q、J=5.2Hz、1H、CHCH)、4.13、3.63(2d、J=11.35及びJ=9.6Hz、1H、CHHNCO)、3.22、3.00(2d、J=9.6及びJ=11.35Hz、1H、CHHNCO)、2.56〜2.38(m、5H)、2.30、2.29(2s、3H、NCH)、1.84〜1.53(3m、6H)、1.44、1.43(2d、J=5.2Hz、3H、CHCH)、1.4〜1.19(m、6H)、0.90(app t、J=7.11Hz、6H、CHCH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 173.92、173.68(C)、84.75、84.20(CH)、78.32、78.09(C)、54.24(CH)、52.34(CH)、52.02(CH)、46.03(CH)、44.34、43.64(CH)、35.63(CH)、35.05(CH)、34.92(CH)、32.83(CH)、23.52、20.91(CH)、20.59(CH)、20.43(CH)、14.30(CH)、14.16(CH)ppm。
【0174】
実施例17:3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]−デカン(AF715)の合成
【0175】
【化66】

2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(1.42g、8.38mmol)を、アルゴン雰囲気下で乾燥ジクロロメタン(5ml)に溶解した。蒸留トリエチルアミン(1.75ml、12.57mmol)を添加し、その結果生じた溶液を0℃に冷却した。p−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(1.63gr、8.37mmol)を添加し、反応フラスコを撹拌しながら加温して室温にし、白色固形物が沈殿し始めた。30分間撹拌した後、ジクロロメタン(90ml)を添加し、その結果生じた溶液を、水(2×10ml)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 140/10/1)で精製して、AF715を白色に近い粉末として得た(1.23g、98.7%の化学的純度)。H NMR(CDCl、500MHz)δ 7.89〜7.87(m、2H、CHCSO)、7.27〜7.22(m、2H、CHCF)、5.05(q、J=5.23、1H、CHCH)、3.33(d、J=10.26Hz、1H、CHHNS)、3.19(d、J=10.26Hz、1H、CHHNS)、2.52〜2.42(m、1H)、2.34〜2.25(m、2H)、2.23(s、3H、NCH)、2.18〜2.09(m、1H)、1.77〜1.72(m、2H)、1.52(d、J=5.23Hz、3H、CHCH)、1.25〜1.18(m、1H)、1.10〜1.03(m、1H)ppm;13C NMR(CDCl、500MHz)δ 166.45及び164.42(C)、134.0(C)、130.37(CH)、130.29(CH)、116.68(CH)、116.50(CH)、86.95(CH)、66.30(C)、55.48(CH)、52.57(CH)、52.11(CH)、46.04(CH)、35.64(CH)、32.84(CH)、22.95(CH)ppm。
【0176】
実施例18:1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−4−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン(AF706)の合成
【0177】
【化67】

ジクロロメタン(100ml)中2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカン(1.09g、6.41mmol)、3−インドールプロピオン酸(1.57g、8.3mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.78g、8.65mmol)、及びジメチルアミノピリジン(DMAP、0.78g、6.41mol)の溶液を、室温で4日間撹拌した。沈殿物をろ過により除去し、溶媒を蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/i−PrOH/NHOH 85/15/1)により、エーテル中で粉末化された表題化合物を得た。得られた白色固形物(AF706)、1.1gr(99.4%の化学的純度)をろ過及び乾燥した。H−NMR(CDCl、300MHz)δ 8.15(br NH)、7.63(d、J=7.76Hz、1H、ArH)、7.38(d、J=7.98Hz、1H、ArH)、7.23(dt、J=1.12、7.56Hz、1H、ArH)、7.13(dt、J=1.07、7.44Hz、1H、ArH)、7.08(d、J=2.15Hz、1H、NCHC)、4.05(m、1H、OCH)、3.53(dd、J=9.0、5.5Hz、1H、NCHH)、3.13(m、3H)、2.96(t、J=9.2Hz、1H)、2.80〜2.70(m、3H)、2.61〜2.70((m、2H)、2.23〜2.34(m、2H、CH−ピペリジン)、2.31(s、3H、NCH)、1.37(m、1H、CH−ピペリジン)、1.33(m、1H、CH−ピペリジン)、1.25(d、J=6.0Hz、3H、CH)ppm;13C−NMR(CDCl、300MHz)δ 169.66(C)、136.52(C)、122.49(CH)、121.90(CH)、119.24(CH)、118.78(CH)、115.18(C)、111.41(CH)、94.16(C)、69.92(CH)、53.25(CH)、52.84(CH)、52.70(CH)、45.99(CH)、37.52(CH)、33.66(CH)、30.90(CH)、20.73(CH)、18.26(CH)ppm。
【0178】
実施例19:1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−4−イル)−2−プロピル−ペンタン−1−オン(AF713)の合成
【0179】
【化68】

THF(60ml)中水素化ナトリウム(60%、0.6g、15mmol)の冷却(0℃、氷−水浴)溶液に、アルゴン雰囲気下で2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカン(2.44g、14.3mmol)を添加した。冷却浴を取り外し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。バルプロイルクロリド(2.36g、14.5mmol)を添加し、反応混合物を、室温、アルゴン雰囲気下で2.5時間撹拌したままにしておいた。反応混合物を、シリカ短床でろ過した。シリカをTHF(3x150ml)で洗浄し、ろ過液を混合し蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 100/10/1)により、黄褐色固形物として表題化合物を得た。固形物をジクロロメタン(150ml)に溶解し、チャコールを撹拌溶液に添加した。ろ過し蒸発させることにより、白色に近いAF713を得た(1.4g、97.2%の化学的純度)。H−NMR(CDCl、300MHz)δ 4.1〜4.2(m、1H、OCH)、3.7〜3.8(m、1H)、3.0〜3.2(m、2H)、2.7〜2.8(m、3H)、2.3〜2.5(m、3H)、2.3(s、3H、NCH)、1.55〜1.67(m、2H)、1.4〜1.52(m、1H)、1.26(d、J=6Hz、3H、CH)、1.2〜1.4(m、6H)、0.89(br t、J=7.03Hz、6H、2CH)ppm;13C−NMR(CDCl、300MHz)δ 173.14(C)、94.22(C)、69.65(CH)、53.41(CH)、52.46(CH)、52.30(CH)、45.35(CH)、45.06(CH)、35.35(CH)、35.21(CH)、32.93(CH)、30.27(CH)、20.79(CH)、20.73(CH)、18.14(CH)、14.33(CH)、14.27(CH)ppm;FTIR(HATR)1627cm−1
【0180】
実施例20:4−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]−デカン(AF714)の合成
【0181】
【化69】

THF(60ml)中水素化ナトリウム(60%、0.6g、15mmol)の冷却(0℃、氷−水浴)溶液に、アルゴン雰囲気下で2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカン(2.49g、14.6mmol)を添加した。冷却浴を取り外し、反応混合物を室温で40分間撹拌した。4−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(2.84gr、14.6mmol)を添加し、反応混合物を、室温、アルゴン雰囲気下で一晩撹拌したままにしておいた。反応混合物をシリカ短床でろ過し、それをテトラヒドロフラン(THF、2x150ml)で洗浄した。ろ過液を混合し蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 100/10/1)により、黄褐色固形物として表題化合物を得た。固形物を、加熱したi−PrOHから再結晶させた。AF714を、白色固形物として得た(1.3g、99.8%の化学的純度)。H−NMR(CDCl、300MHz)δ 7.88(m、2H、2H−Ar)、7.20(m、2H、2H−Ar)、4.21(m、1H、OCH)、3.69(dd、J=5.4、8.4Hz、1H、NCHH)、2.91(t、J=8.8Hz、1H、NCHH)、2.72(m、2H、CH−ピペリジン)、2.63(m、1H、CH−ピペリジン)、2.43(m、1H、CH−ピペリジン)、2.28(s、3H、NCH)、2.25(m、2H、CH−ピペリジン)、1.72(m、1H、CH−ピペリジン)、1.43(m、1H、CH−ピペリジン)、1.28(d、J=6Hz、3H、CH);13C−NMR(CDCl、300MHz)δ 166.58及び163.20(C)、137.02(C)、129.95(C)、129.83(C)、116.34(C)、116.04(C)、96.29(C)、70.42(CH)、53.49(CH)、52.96(CH)、52.79(CH)、45.85(CH)、35.88(CH)、34.89(CH)、18.08(CH)ppm。
【0182】
実施例21:1’,4−ジメチル−6−(3−インドールプロピオニル)−スピロ−(3−オキサ−6−アザ−ビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−2,4’−ピペリジン(AF718C)の合成
【0183】
【化70】

ジクロロメタン(50ml)中3−インドールプロピオン酸(1.63g、8.6mmol)及びジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC、1.86g、9.06mmol)の溶液を、室温で15分間撹拌した。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、1.22gr 9.06mmol)を添加し、撹拌をさらに30分間継続した。1’,4−ジメチルスピロ−3−オキサ−6−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン(1.57g、8.6mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。ジクロロメタン(100ml)を添加し、反応混合物を水(2×20ml)で洗浄した。有機画分を混合し、乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 100/20/1)で精製して、AF718Cを白色固形物として得た(200mg、99.3%の化学的純度)。H−NMR(CDCl、300MHz)δ 8.08(br NH)、59(d、J=7.72Hz、1H、ArH)、7.36(d、J=7.91Hz、1H、ArH)、7.21(dt、J=1.19、7.45Hz、1H、ArH)、7.13(dt、J=1.13、7.40Hz、1H、ArH)、6.98(d、J=2.24Hz、1H、NCHC)、4.15(q、J=6.77Hz、1H、OCH)、3.12(t、J=7.25Hz、2H、CH)、2.92(d、J=4.7Hz、1H、NCH)、2.85(d、J=4.7Hz、1H、NCH)、2.85〜2.74(m、2H、CH)、2.4〜2.2(m、4H、2CH−ピペリジン)、2.25(s、3H、NCH)、1.76〜1.67(m、2H、CH−ピペリジン)、1.66〜1.56(m、2H、CH−ピペリジン)、1.12(d、J=6.8Hz、3H、CH)ppm;13C−NMR(CDCl、300MHz)δ 184.40(C)、136.26(C)、122.16(CH)、121.67(CH)、119.53(CH)、118.65(CH)、114.93(C)、111.23(CH)、78.69(C)、74.50(CH)、53.08(CH)、52.08(CH)、47.14(CH)、46.25(CH)、45.95(CH)、37.90(CH)、36.02(CH)、33.39(CH)、20.93(CH)、20.77(CH)ppm;FT−IR(HATR)1676cm−1;C2127のMS(CI)354(M+1)。
【0184】
実施例22:1’,4−ジメチル−6−[3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)]−スピロ−(3−オキサ−6−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン(AF721)の合成
【0185】
【化71】

乾燥ジクロロメタン(5ml)中4−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(1.04g、5.3mmol)の溶液を、乾燥ジクロロメタン(12ml)中のアミン[AF718C合成のパート(a)を参照、0.97g、5.3mmol]及び乾燥トリエチルアミン(1.1ml、8mmol)の溶液に添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。ジクロロメタン(50ml)を添加し、反応混合物を水(10ml)で洗浄した。有機相を乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーすることにより、AF721を得た(油状物、0.8g)。H−NMR(CDCl、300MHz)δ 8.01〜7.95(m、2H、2CH)、7.28〜7.16(m、2H、2CH)、4.24(q、J=6.83Hz、1H、OCH)、3.54〜3.48(2つのd、J=5.38及びJ=5.38Hz、2H、2CH)、2.53〜2.3(m、4H)、2.23(s、3H、NCH)、2.16〜1.73(m、4H)、1.25 d、J=6.84Hz、3H、CH)ppm;13C−NMR(CDCl、300MHz)δ 167.5及び164.1(CF)、134.2(C)、130.7(CH)、130.6(CH)、116.6(CH)、116.3(CH)、79.6(C)、75.0(CH)、52.8(CH)、52.2(CH)、50.9(CH)、49.9(CH)、46.0(CH)、36.3(CH)、33.1(CH)、20.9(CH)ppm。
【0186】
実施例23:1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1−メチル−インドール−3−イル)プロパン−1−オン(AF732)の合成
【0187】
【化72】

室温のジクロロメタン(50ml)中ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.3g、6.3mmol)の溶液に、3−(1−メチル−インドール−3−イル)プロパン酸(1.18g、5.8mmol)、及びジクロロメタン(50ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(1.2g、6.4mmol)の溶液を添加した。その結果生じた溶液を、室温で48時間撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/EtOH/NHOH 100/10/1)で精製して、無色油状物として表題化合物を得た(0.7g)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 7.60(d、J=7.82Hz、1H、CHC arom)、7.35〜7.2(m、2H、2CHC arom)、7.23(dt、J=1.06、7.45Hz、1H、CHCH arom)、6.90(s、1H、CHNH arom)、5.54、5.07(2q、J=6.16及びJ=6.25Hz、1H、CHCH)、4.63、3.68(2d、J=12.0及びJ=11.5Hz、1H、CHHNCO)、3.75、3.74(2s、3H、NCH)、3.32(d、J=11.5Hz、0.6H、CHHNCO)、3.17〜3.05(m、2.4H)、2.8〜2.4(m)、2.68[t、J=7.6Hz、C(O)CH]、2.28、2.26(2s、3H、NCH)、2.3〜2.2(m)、2.1〜2.0(m)、2.0〜1.8(m)、1.7〜1.4(m)、1.48、1.43(2d、J=6.18及びJ=6.26Hz、3H、CH−CH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 170.6(C)、137.1(C)、126.8(C)、126.7(CH)、121.8(CH)、119.0(CH)、118.9(CH)、113.7(C)、109.4(CH)、59.0(C)、57.5、57.2(CH)、54.6、54.2(CH)、53.2、52.9(CH)、46.3、46.2(CH)、38.1、37.4(CH)、36.9、36.6(CH)、36.4、34.7(CH)、32.7(CH)、25.5、23.5(CH)、21.0、20.9(CH)ppm。
【0188】
実施例24:N−(2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオンアミド(AF730)の合成
【0189】
【化73】

2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミンの合成:乾燥THF(30ml)中2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカン−3−オンオキシム(1.24g、6.3mmol、Tsukamotoら、Chem.Pharma.Bull.1995年、43巻、842〜852頁の手順に従って調製した)の溶液を、乾燥THF(50ml)中水素化アルミニウムリチウム(1.13g、30mmol)及び塩化アルミニウム(0.2g、1.5mmol)の懸濁液に滴加した。反応混合物を、室温で10時間撹拌した。反応混合物を冷却し(氷で)、水(3ml)、15%NaOH水溶液(3ml)、及び水(7ml)を添加することにより反応を停止させた。固形物をセライトでろ過し、THFろ過液を減圧下で濃縮した。残留油状物をジクロロメタン(200ml)に溶解し、溶液を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、粗アミンを次のステップに移行させた。
【0190】
室温のジクロロメタン(100ml)中ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.49g、7mmol)の撹拌溶液に、ジクロロメタン(20ml)中2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミンの溶液を添加し(化合物は全て上記のステップで得られた)、その後3−インドールプロピオン酸(1.3g、6.9mmol)を添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 140/10/1〜CHCl/MeOH/NHOH 100/10/1の勾配)で精製して、白色固形物のAF730を、2つの幾何異性体の混合物(異性体I/異性体II 1:2)として得た。H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.07(br s、1H、NH−インドール)、7.61(d、J=7.81Hz、1H、CHC arom)、7.36(d、J=8.0Hz、1H、CHC arom、異性体II)、7.35(d、J=7.9Hz、1H、CHC arom、異性体I)、7.20(m、1H、CHCH arom)、7.15(m、1H、CHCH arom)、7.02(m、1H、CHNH arom)、5.36(d、J=8.85Hz、1H、NH 異性体I)、5.18(d、J=8.0Hz、1H、NH 異性体II)、4.35(m、1H、CH 異性体I)、4.04(m、1H、CH 異性体II)、3.93(m、1H、CHCH 異性体I)、3.48(m、1H、CHCH 異性体H)、3.13(t、J=7.0Hz、2H、COCHCH)、2.58(m、2H、COCH)、2.4(m、2H、CH)、2.29(m、2H、CH)、2.25(s、3H、NCH 異性体II)、2.23(s、3H、NCH 異性体I)、2.10(dd、J=12.9、8.2Hz、1H、CHHCH 異性体II)、1.96(dd、J=13.6、7.1Hz、1H、CHHCH 異性体I)、1.7〜1.4(2m)、1.4〜1.2(2m)、1.15(d、J=6.1Hz、3H、CH−CH 異性体II)、0.97(d、J=6.3Hz、3H、CH−CH 異性体I)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 172.9、172.5(C)、136.6、136.5(C)、127.2、127.1(C)、122.2、122.1(CH)、119.6、119.5(CH)、118.8(CH)、114.6、114.5(C)、111.6、111.5(CH)、78.2、74.5(CH)、55.5(CH)、53.0(C)、52.9、52.7(CH)、46.6、46.2(CH)、38.7、38.5(CH)、37.7、37.6(CH)、21.8、21.7(CH)、19.7,15.0(CH)ppm。
【0191】
幾何異性体(200mg)を、Combi−Flash Companionシステム(Isco,Inc社)でフラッシュクロマトグラフィーにより分離した(HP40−goldシリカカラム、線形勾配CHCl/MeOH/NHOH 120/10/1〜CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)。 AF730 I(より極性が低い異性体):H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.09(br s、1H、NH−インドール)、7.61(d、J=7.80Hz、1H、CHC arom)、7.35(d、J=8.0Hz、1H、CHC arom)、7.19(dt、J=1.1、7.4Hz、1H、CHCH arom)、7.12(dt、J=1.01、7.4Hz、1H、CHCH arom)、7.03(d、J=2.2Hz、1H、CHNH arom)、5.36(d、J=8.6Hz、1H、NH)、4.35(m、1H、CH)、3.93(dq、J=6.3、6.3Hz、1H、CHCH)、3.13(t、J=7.1Hz、2H、COCHCH)、2.58(m、2H、COCH)、2.5〜2.1(m、4H、2CH)、2.24(s、3H、NCH)、1.96(dd、J=13.6、7.1Hz、1H、CHHCH)、1.7〜1.4(2m、2H)、1.4〜1.3(m、2H),1.31(dd、J=13.6、2.7Hz、1H、CHHCH)、0.97(d、J=6.3Hz、3H、CH−CH)ppm。AF730 II(より極性の高い異性体):H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.1(br s、1H、NH−インドール)、7.60(d、J=7.82Hz、1H、CHC arom)、7.36(d、J=8.0Hz、1H、CHC arom)、7.20(dt、J=1.1、7.5Hz、1H、CHCH arom)、7.12(dt、J=1.1、7.4Hz、1H、CHCH arom)、7.01(d、J=2.2Hz、1H、CHNH arom)、5.19(d、J=8.30Hz、1H、NH)、4.03(m、1H、CH)、3.46(m、1H、CHCH)、3.13(t、J=7.1Hz、2H、COCHCH)、2.57(t、J=7.1Hz、2H、COCH)、2.5〜2.3(m、2H、CH)、2.3〜2.1(m、2H、CH)、2.24(s、3H、NCH)、2.10(dd、J=12.9、8.2Hz、1H、CHHCH)、1.7〜1.4(2m、4H)、1.26(dd、、J=12.7、7.6Hz、1H、CHHCH)、1.15(d、J=6.1Hz、3H、CH−CH)ppm。
【0192】
実施例25:N−(2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオンアミド(AF731)
【0193】
【化74】

(a)2,8−ジメチル−1−チア−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンの合成。温度計、滴下漏斗、及び塩化カルシウム乾燥管が取付けられている三つ口丸底部フラスコに、鉱油中60%の水素化ナトリウム(8.74g、0.218mol)及び乾燥エーテル(300ml)を入れた。この撹拌冷却懸濁液に、乾燥エーテル(100ml)中エチルチオラクタート(28.4g、95%、0.200mol)の溶液を5〜10℃で添加し、同じ温度でメタノール(100ml)をゆっくりと添加した。その後、反応混合物を、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物に乾燥ジメチルスルホキシド(170ml)を添加した。得られた溶液を15℃に冷却し、エチル(1−メチル−4−ピペリジニリデン)アセタート(40g、0.22mol)を添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、その後、氷冷水(600ml)に注いだ。その後、反応混合物を濃塩酸で酸性化し、その後重炭酸ナトリウムで塩基化した(pH8)。その後、反応混合物をジクロロメタン(4×450ml)で抽出し、混合した抽出液をブライン(2×400ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、溶媒を除去して、多少のジメチルスルホキシドを含有する油状物を得た(59.40g)。上記の生成物(27.6g)の一部に塩酸(1.3N、200ml)を添加し、得られた溶液を11時間還流し、その後それをヘキサン(3×75ml)で抽出し、ヘキサンを破棄した。水相を35%水酸化ナトリウム水溶液で塩基化し(pH13)、その後ジクロロメタン(3×120ml)で抽出し、混合した抽出物をブライン(2×80ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、溶媒を蒸発させて油状物(9.2g)を得、それを、シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーにより精製した。メタノール/ジクロロメタン/アンモニア 4/96/1で溶出することにより、ケトンを得た(7.0g、2段階での収率は37.9%)。H−NMR CDCl)δ 1.40(d、J=7.0Hz、CHC)、1.75〜2.15(m、4H)、2.20〜2.80(m、4H)、2.32(s、CHN)、2.57及び2.65(2d、J=17.2Hz、CHC=O)、3.59(q、J=7.0Hz、CHS)。
【0194】
(b)2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカン−3−オンオキシムの合成。メタノール(9ml)中2,8−ジメチル−1−チア−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン(0.669g、3.36mmol)の溶液を、水(1.5ml)中の塩酸ヒドロキシルアミン(0.270g、3.88mmol)及び酢酸ナトリウム(0.320g、3.90mmol)の溶液に添加した。混合物を80℃で2時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィー分離した。メタノール/ジクロロメタン/アンモニア[5/94/1]で溶出することにより、最初にanti配置のオキシム(0.267g)、次にこのオキシムの2つの異性体(syn−及びanti−)の混合物(0.316g)(収率81%)を得た。anti異性体を酢酸エチルから結晶化した。mp.148〜149℃。H−NMR(CDCl、anti異性体)δ 1.46(d、J=6.6、CHC)、1.73〜1.96(m、3H)、2.05(m、1H)、2.15〜2.40(m、1H)、2.32(s、CHN)、2.47(m、1H)、2.70(m、2H)、2.78及び2.86(2d、J=17.4Hz、CHC=N)、3.99(q、J=6.6Hz、CHS)、10.1(bs、−NOH)。13C−NMR(CDCl、anti異性体)δ 19.7(CH)、38.2(CH)、38.9(CH)、42.5(CH)、42.8(bs、CH)、45.9(CH)、52.3(C)、53.1(CH)、53.4(CH)、163.7(C)。Gc−Ms m/z 215(M+1)、197(M−OH)、96。H−NMR(CDCl、syn異性体、syn及びanti異性体の混合物のNMRスペクトルからanti異性体のNMRスペクトルを減算することにより算出した)δ 1.48(d、J=6.8、CHC)、1.60〜1.73(m、1H)、1.74〜1.95(m、2H)、1.95〜2.25(m、2H)、2.31(s、CHN)、2.44(m、1H)、2.54及び2.77(2d、J=14.5Hz、CHC=N)、2.60〜2.90(m、2H)、4.37(q、J=6.7Hz、CHS)、10.2(bs、NOH)。13C−NMR(CDCl、syn異性体)δ 21.0(CH)、37.9(CH)、38.2(CH)、38.4(CH)、46.0(CH)、46.6(bs、(CH)、)、51.7(C)、52.6(CH)、53.8(CH)、163.8(C).
【0195】
(c)2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミンの合成:室温で窒素下の乾燥テトラヒドロフラン(45ml)中水素化アルミニウムリチウム(1.00g、26.35mmol)及び塩化アルミニウム(0.110g、0.825mmol)の撹拌懸濁液に、2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカン−3−オンオキシム(1.24g、5.79mmol)の溶液をゆっくりと添加した。室温での撹拌を3日間継続した。その後、反応混合物を冷却し(水−氷浴)、水(3.0ml)、次いで水酸化ナトリウム水溶液(15%、4.0ml)、その後水(4.0ml)をゆっくりと添加した。沈殿物をろ過し、少量のジクロロメタンで洗浄した。混合したろ過液及び洗浄液を蒸発させて油状物を得、それをシリカゲルカラムを用いて10%メタノール−89%ジクロロメタン−1%アンモニアで溶出したクロマトグラフィーで精製し、油状物としてアミンを得た(0.430g、収率37%)。H NMRデータは、生成物が2対のジアステレオ異性体からなり、一方の対が他方より豊富に存在していることを示す。以下のデータでは、は、より豊富に存在する異性体を示し、は、それほど豊富に存在していない異性体を示す。H−NMR(CDCl)δ 1.25(d、J=6.9Hz、CHC)、1.31(d、J=6.4Hz、CHC)、1.60〜2.08(m、4H)、1.72(m、CHCNHの1つ)、2.08〜2.45(m、2H)、2.18(dd、CHCNHの1つ)、2.29(s、CHN)、2.67(m、2H)、3.00(m、CHS)、3.10(m、CHNH)、3.37(m、CHS);GC−ms m/z 201(M+1)、184(M−NH
【0196】
(d)N−(2,8−ジメチル−1−チア−8−アザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオノアミド(AF731)の合成。室温のジクロロメタン(20ml)中2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イルアミン(0.375g、1.872mmol)の撹拌溶液に、ジクロロメタン(8ml)中1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.520g、2.52mmol)の溶液を、その後ジクロロメタン(15ml)中3−インドールプロピオン酸(0.458g、2.42mmol)を添加した。反応混合物を、室温で3日間撹拌した。形成された固形物をろ過し、少量のジクロロメタンで洗浄し、混合したろ過液及び洗浄液を蒸発させて発泡物を得、それをシリカゲルカラムのクロマトグラフィーで精製した。1%アンモニアを含有するジクロロメタン中5〜7%メタノールの混合溶媒で溶出することにより、最初に生成物を異性体の混合物として得(325mg、収率46.7%)、次に未反応のアミン(90mg)を得た。H−NMRデータは、生成物が2対のジアステレオ異性体からなり、一方の対が他方より豊富に存在していることを示す。以下のデータでは、は、より豊富に存在する異性体を示し、は、それほど豊富に存在していない異性体を示す。H−NMR(CDCl)δ 0.99(d、J=6.9、CHC)、1.19(d、J=6.6、CHC)、1.53及び2.05(2m、CHCHNH)、1.60〜2.18(m、4H)、2.18〜2.85(m、2H)、2.28(s、CHN)、2.30(s、CHN)、2.59(m、2H)、2.95(m、CHS)、3.13(t、2H)、3.50(m、CHS)、4.24(m、CHN)、4.51(m、CHN)、5.28(d、J=8.7Hz、NHCO)、5.55(d、J=8.4Hz、NHCO)、7.03(d、J=2.3Hz、1H Ar)、7.04(d、J=2.4Hz、1H Ar)、7.11(t、1H Ar)、7.20(m、1H Ar)、7.38(d、J=8.0Hz、1H Ar)、7.60(d、J=7.8Hz、1H Ar)、8.22(bs、NH インドール)。
【0197】
実施例26:(3E)−2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン−O−[3−(1H−インドール−3−イル)プロパノイル]オキシム(AF733)
【0198】
【化75】

カルボニルジイミダゾール(CDI)(0.19g、1.2mmol)を、アルゴン雰囲気下で乾燥THF(10ml)中3−インドールプロピオン酸(0.22g、1.2mmol)の溶液に添加した。反応混合物を室温で0.5時間撹拌し、その後ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オンオキシム(0.23g、1.2mmol、Tsukamotoら、Chem.Pharma.Bull.1995年、43巻、842〜852頁の手順により調製した)を添加した。反応混合物を、室温で4時間、その後45℃で8時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(80ml)を添加し、混合物を水(10ml)で洗浄した。2つの相を分離し、水相をジクロロメタン(30ml)で抽出した。有機相を混合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ過液を減圧下で濃縮した。残留物を、Combi−Flash Companionシステム(Isco,Inc社)を用いてフラッシュクロマトグラフィーで精製し(HP12−goldシリカカラム、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)、その後Combi−Flash Companionシステム(Isco,Inc社)を用いてフラッシュクロマトグラフィーでさらに精製した(HP12−goldシリカカラム、CHCl/MeOH/NHOH 120/10/1)。残留物をエーテル中で粉末化して、AF733(104mg)を白色固形物として得た。H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.17(br s、1H、NH−インドール)、7.60(d、J=7.73Hz、1H、CHC arom)、7.35(d、J=7.98Hz、1H、CHC arom)、7.19(app t、J=7.76Hz、1H、CHCH arom)、7.12(app t、J=7.43Hz、1H、CHCH arom)、7.04(d、J=2.11Hz、1H、CHNH arom)、5.56(q、J=6.3Hz、1H、CHCH)、3.18(t、J=7.37Hz、2H、CH)、2.83(t、J=7.41Hz、2H、COCH)、2.40(ABq、J=18.6Hz、2H、CH)、2.5〜2.3(m、4H)、2.28(s、3H、NCH)、1.74(2m、3H)、1.5(m、1H)、1.43(d、J=6.36Hz、3H、CH−CH)ppm;13C NMR(CDCl、300MHz)δ 173.4(C)、171.0(C)、136.5(C)、127.3(C)、122.2(CH)、122.1(CH)、119.5(CH)、118.8(CH)、114.5(C)、111.4(CH)、78.7(C)、72.5(CH)、52.5(CH)、52.2(CH)、46.1(CH)、40.0(CH)、37.4(CH)、34.4(CH)、33.7(CH)、20.9(CH)、19.5(CH)ppm。
【0199】
実施例27:(D)−2−アミノ−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン(AF728)の合成
【0200】
【化76】

1)室温のジクロロメタン(100ml)中2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカン(0.97g、5.2mmol)の撹拌溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.44g、6.98mmol)を添加し、その後N−Boc−D−トリプトファン(1.88g、6.2mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、室温で48時間撹拌した。反応中に、白色固形物が沈殿した。ろ過した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、(R)−3−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−(1H−インドール−3−イルメチル)−3−オキソ−プロピオン酸tert−ブチルエステル(1.1g)を固形物として得た。
【0201】
2)室温のジクロロメタン(20ml)中(R)−3−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−(1H−インドール−3−イルメチル)−3−オキソ−プロピオン酸tertブチルエステル(0.9g、2.1mmol)の撹拌溶液に、トリフルオロ酢酸(TFA、1.2ml、16.2mmol)を添加した。その結果生じた溶液を、Boc保護基が完全に離脱するまで室温で撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(20ml)で希釈し、Amberlyst A−21レジン(20g;Srinivasanら、Mol.Diversity 9(2005年)4、291〜293頁)で1時間処理し、ろ過し、ジクロロメタン(20ml)で洗浄した。混合したろ過液を蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、CHCl/MeOH/NHOH 90/10/1)で精製して、固形物として表題化合物を得た(0.1g)。H NMR(CDCl、300MHz)δ 8.14(br s、1H、NH−インドール)、7.62(d、J=7.65Hz、1H、CHC arom)、7.38及び7.37(2d、J=7.96Hz及びJ=7.88Hz、1H、CHC arom)、7.22(app t、J=7.0Hz、1H、CHCH arom)、7.10(app dt、J=1.0、7.4Hz、1H、CHCH arom)、7.09及び7.06(2つのd、J=2.28Hz及びJ=2.25Hz 1H、CHNH arom)、5.48、4.98(2q、J=6.2及びJ=6.3Hz、1H、CHCH)、4.42、3.69(2d、J=12.0及びJ=11.6Hz、1H、CHHNCO)、3.98及び3.92(2t、J=7.3及びJ=7.05Hz、1H、CHCH)、3.12(m、2H、CHCH)、2.80(d、J=11.4Hz、0.72H、CHHNCO)、2.6(m、2H)、2.3〜2.2(m、1H)、2.26及び2.25(2s、3H、NCH)、2.15〜2.0(m、1H)、1.52、1.38(2d、J=6.3及びJ=6.2Hz、3H、CH−CH)ppm。
【0202】
生物学的アッセイ 式Iの化合物の生物活性を、様々なアッセイを使用して試験した。
【0203】
GPCR(例えば、mAChRサブタイプ)で安定的に形質移入された細胞培養中での細胞内カルシウムイオン(Ca2+)動員アッセイは、試験化合物の活性(アゴニスト的又はアンタゴニスト的)並びに特定の受容体サブタイプに対するその選択性に関する情報を両方とも提供することができる。生細胞中の遊離細胞内Ca2+のレベルを、蛍光Ca2+指示薬、Fluo−4 NW(Molecular Probes社製、カタログ番号36206)の蛍光をモニターすることにより決定した。この方法は、GPCR薬理学及び機能を特徴付けるのに有用である。Ca2+測定は、インジェクタ及びピペッタ装置を備えたNOVOstar(登録商標)プレートリーダ(BMG Labtechnologies社製、オッフェンブルク、ドイツ)を使用して実施した。実験の1日前に、ムスカリン受容体サブタイプM1〜M5のうちの1つで安定的形質移入された細胞を回収し、10%ウシ胎仔血清、MEME非必須アミノ酸(GIBCO社製、英国)、グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、及びG418(Biological Industries社製、イスラエル)で補完された培養培地(ダルベッコ変法イーグル培地、GIBCO社製、英国)ですすぎ、40,000細胞/ウエルの濃度で、黒色壁透明光学底96穴プレート(Nunc社製、ロチェスター、ニューヨーク州、米国)に均等に入れた。実験の当日には、細胞は十分にコンフルエントである。増殖培地を取り除き、2.5mMプロベネシド(4−ジプロピルスルファモイル)安息香酸)を含有する80μlのローディング緩衝液を注意深く添加した(ローディング緩衝液は、FLUO−4NWカルシウムアッセイキットの手引書に従って調製した)。細胞プレートを、37℃で30分間インキュベートし、その後室温でさらに30分間インキュベートした。試験化合物が細胞内Ca2+(Ca−i)に与える効果を評価するために、幾つかの実験では、EGTA[エチレングリコール四酢酸]を使用して細胞外カルシウム源を排除した。EGTA(HBSS(ハンクス緩衝食塩水)に溶解された、10μlの50mM溶液)を、NOVOstarインジェクタ装置を使用して各ウエルに自動添加し、その後0.5分間振盪し(1mm幅、600rpm)、その後さらに10分間インキュベートした。その後、HBSS単独又はHBSSに溶解した試験化合物を、NOVOstarロボットピペッタ装置を使用して、別々のウエルに順次添加した(10μl)。蛍光強度を、485nm(帯域幅10nm)の励起波長及び520nm(帯域幅10nm)の発光、カットオフ515nmを使用して、各ウエルにつき25秒間、0.5秒間隔で測定した。
【0204】
mAChRのサブタイプ、特にM3及びM5 mAChRと比べたM1 mAChRの選択性を評価するために、混合活性、例えばそれぞれM1アゴニスト的及びM3アンタゴニスト的又はM1アゴニスト的及びM5アンタゴニスト的特性を有するリガンドを使用して、アッセイを較正した。これにより、細胞に基づくアッセイにおいて、様々な予備受容体による影響を排除することができる。
【0205】
化合物AF710、AF710B、AF711、AF711A、AF718C、AF721、AF730、AF730I、AF730II、及びAF733は、M1 mAChRに対して部分的アゴニストであることが観察され、100μMにおける対カルバコール(完全なムスカリンアゴニスト、100%)の相対的アゴニスト活性は、以下の順序である:AF733(90%)>AF730I(745)>AF710B>(66%)AF711A(45%)>AF718C>(43%)>AF710(40%)≧AF730(40%)>AF730II(36%)>AF711(19%)>AF721(13%)(表を参照)。これらアゴニストのアゴニスト効果は、M1選択的なアンタゴニストであるピレンゼピンにより遮断された。AF710Bは、M1 mAChRに対して高度に選択的であることが見出され、それぞれM2〜M5 mAChRサブタイプに対する検出可能なアゴニスト活性を示さなかった。
【0206】
化合物AF706、AF712〜AF716、AF726、及びAF727(100μM)は、カルバコールの濃度曲線の右方移行により明らかなように、M1 mAChRに対するアンタゴニスト活性を示した(表)。
【0207】
オルソステリック又はアロステリックなM1ムスカリンアゴニスト活性は、アロステリックなM1調節因子ブルシンの存在下又は非存在下で試験することができる(Surら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 2003年、100巻:13674〜13679頁)。M1 mAChRで安定的に形質移入された細胞培養又はM1 mAChR及びヒトアミロイド前駆タンパク質695の両方で安定的に形質移入されたチャイニーズハムスター卵巣細胞をブルシン(100μM)で事前インキュベーションすることにより、それらの濃度反応曲線がそれぞれ左方移行したことにより示されるように、カルバコールなどのオルソステリックなアゴニストにより誘導される細胞内カルシウムイオンの上昇に対して強力な増強効果が引き起こされた。ブルシンは、AF710又はAF710Bのいずれに対してもそのような効果を示さず、AF710B効果のわずかな阻害を誘導した。まとめると、これらの結果は、AF710及びAF710Bが、M1 mAChRのオルソステリック部位と相互作用せず、したがってアロステリックなアゴニストであることを示す。図1を参照されたい。
【0208】
3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイでは、最終的に細胞死に結び付くプロセスを表すミトコンドリア活性化を含む、細胞内で起こる変化が測定される(Fagarasanら、Mol.Psychiat.1996年、1巻:398〜403頁)。このアッセイは、β−アミロイド媒介性細胞死の機序の特異的な初期指標である(Shearmanら、PNAS USA 1994年、91巻:1470〜74頁)。このアッセイを使用して、化学式I及びIIの化合物を評価した。ラット褐色細胞腫(PC12)細胞を10,000細胞/ウエルの濃度で96穴プレートに播種し、5%ウシ胎仔血清(Biological Industries社製、カタログ番号04−121−1A)、10%加熱不活化ウマ血清(Gibco社製、カタログ番号26050)、L−グルタミン200mM(Biological Industries社製、カタログ番号03−020−1C)、ペニシリン10000U/ml(Biological Industries社製、カタログ番号03−031−1C)、及びアムホテリシンB 50mg/ml(Biological Industries社製、カタログ番号01−029−1C)で補完されたダルベッコ変法イーグル培地(Gibco社製、カタログ番号21969)中で維持した。翌日、培地を無血清培地に交換し、試験化合物の存在下又は非存在下で5μMのβ−アミロイド25〜35(H−1192.0001、Bachem社製)で、細胞を処理した。化合物は、それぞれ0.1nM〜100μMの範囲の終濃度で6時間試験した。3−インドール−プロピオン酸(3−DPA、カタログ番号220027、Sigma Aldrich社製)は、基準酸化防止剤としての役割を果たした。3−IPA、AF710、及びAF711は、一連の濃度(10μM〜1nM)で、Aβ25〜35(40又は42個のアミノ酸を有するベータアミロイドに由来するアミノ酸(AA)25〜35の配列を有するペプチド)により誘導される毒性から細胞を保護した。これらの結果は、AF710及びAF711が、酸化防止特性を有することを示す。
【0209】
試験化合物と共にインキュベーションした後のα−APP分泌研究を、Haringら、J.Neurochem.、1998年、71巻:2094〜103頁に記述されているように実施した。ヒトAPP695及びヒトM1 mAChRで同時形質移入されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はラットM1 mAChRで安定的に形質移入されたラット褐色細胞腫細胞(PC12)を、2×10細胞/ウエルの密度で6穴プレートに接種した。1日後に、細胞を無血清培地で2回洗浄し、0.1nM〜100μMの範囲の種々の濃度の試験化合物で処理した。各プレートにおいて、1つのウエルは、対照(未処理)としての役割を果たし、1つのウエルは、細胞が1又は100μMカルバコール(
CCh)(最大応答)のいずれかで処理された陽性基準としての役割を果たした。1時間後、馴化培地を冷却エッペンドルフチューブに収集し、このチューブには、αAPP放出量の定量用プロテアーゼ阻害剤カクテル(0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF);5μg/mlロイペプチン;5μg/mlペプスタチン、及び5単位/mlアプロチニン)が含まれていた。各試料のタンパク質内容物を、Centriconチューブ(Amicon社製、ベバリー、マサチューセッツ州)を使用して濃縮した。タンパク質定量後(Bio−Rad社製タンパク質アッセイ)、同量のタンパク質(30μgタンパク質/レーン)を、4〜12%のNuPage Novex Bis−Trisゲル(Invitrogen社製、カリフォルニア州)に負荷し、その後電気泳動にかけた。電気泳動の完了時に、ゲルを、Hoefer社製半乾燥移動ユニット(Semi−Phor、Hoefer Scientific Inst.社製 サンフランシスコ、カリフォルニア州)を使用して、イムノ−ブロットPVDF膜(0.2μm、Bio−Rad Lab社製、カリフォルニア州)にブロッティングした。その後、膜を、0.1% Tween−20(Sigma社、カタログ番号P5927)を有し、カルシウム及びマグネシウムを有していないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS;Gibco社製、カタログ番号14200)に溶解された5%脂肪粉乳でブロッキングした。ヒトAPP695及びM1 mAChR APPバンドで同時形質移入されたCHO細胞を、抗アミロイドベータタンパク質(1:1000、モノクローナル6E10抗体、MAB1560、Chemicon社製)及びペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG(1:5,000;Jackson Immuno Research社製、ペンシルベニア州)を使用して探索した。M1 mAChR APPバンドで安定的に形質移入されたPC12細胞を、抗アルツハイマー前駆タンパク質A4(1:4,000;モノクローナル22C11抗体、Boehringer Mannheim社製)及びペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG(1:20,000;Jackson Immuno Research社製、ペンシルベニア州)を使用して探索した。よく洗い流した後、膜を、Western Lightning Chemiluminescence Reagent Plus(PerkinElmer Life Sciences社製、マサチューセッツ州)で処理し、その後SuperRXフィルム(Fuji Medical社製X線フィルム、東京、日本)に露光した。総APPバンドの定量的決定は、Scion Imageプログラム(NIH、ベテスダ、米国)により実施した。対照及びCChの試料を並行してアッセイし、したがって別々の実験からデータを蓄積することが可能であった。
【0210】
AF710は、0.1nM〜1μMの範囲の濃度にわたって、形質移入されたCHO及びPC12細胞中のαAPP放出を増強した。形質移入されたPC12細胞で観察された高レベルのαAPPは、形質移入されなかったPC12細胞では観察されなかった。
【0211】
未処置対照細胞との比較では、同時形質移入されたCHO細胞中の最大αAPP分泌量は、以下の順序で増強された:AF710B(0.01μM 225%)>AF710(0.1μM 175%)>AF710A(1μM 125%)。
【0212】
GSK−3βレベルの検出は、Fangら、Mol.Cell.Biol.2002年、22巻:2099〜110頁)らに記述されているものと類似したプロトコールを使用するが、Cell Signaling Technology社、米国から購入したホスホ−GSK3β(Ser9)、つまりGSK3βの不活性形態(Dobleら、J.Cell.Sci.2003年、116巻:1175〜86頁)に対して選択的な抗体を使用して、試験化合物(+/−Aβ25〜35、20μM)で処理されたM1 mAChR細胞培養で安定的に形質移入されたラット褐色細胞腫細胞(PC12)で、ウエスタンブロッティングを使用して評価した。この抗体は、非リン酸化GSK−3β(最大1μg)を検出せず、GSK−3αと交差反応しない。抗GSK−3(Santa Cruz Biotechnology社製)は、GSK−3α及びGSK3βの両方に反応的なリン酸化依存性モノクローナル抗体である。同じ実験で、タウタンパク質のリン酸化状態を、タウの非リン酸化エピトープを認識するマウス抗タウ−1モノクローナル抗体(Chemicon社製、カタログ番号MAB3420)を使用して研究した。Aβ25〜35(20μM)が存在することにより、GSK3βの不活性形態を標識するホスホ−GSK3β(Ser9)による染色の40〜50%減少がもたらされた。これは、活性形態の存在量が上昇したことを示す。AF710B(100μM〜10nM)は、Aβ25〜35(20μM)により誘導されたGSK−3βの過剰活性化を阻害した。同じ実験で、Aβ25〜35(20μM)は、タウ−1及びAF710B(100μM〜10nM)の染色を40〜60%減少させ、これら効果を対照レベルに回復させた。まとめると、これらの結果は、AF710Bが、GSK3βの過剰活性化及びタウタンパク質の過剰リン酸化を減少させたことを示す。
【0213】
結合研究を、Fisherら、J.Pharmacol.Exptl.Therap.1991年、257巻:392〜403頁に記述されているように、ラット脳ホモジネート(M1 mAChRが豊富な皮質)を使用して実施した。大脳皮質を解剖し、氷上に置き、清浄し、計量し、20mMのTris−HCl緩衝液、2mM EDTA、pH7.4に移した。組織を、ポリトロンホモジナイザーを使用して、緩衝液(1:10重量/容積)中でホモジナイズし、−70℃の凍結/解凍サイクルの後、ホモジネートを4℃で10分間35,000gで遠心分離した。上清を取り除き、ペレットをTris緩衝液に1:6(重量/容積)の比率で再懸濁した。ホモジネートを各々1mlの等量に分割し、その後使用するまで−70℃で保管した。試験化合物がmAChRに結合する結合特性は、M1選択的アンタゴニストである[H]ピレンゼピン([H]PZ);比活性86Ci/mmol、Perkin Elmer社、MA、マサチューセッツ州、米国から購入)を使用してラット皮質膜で研究した種々の濃度の試験化合物(例えば、10−9〜10−4Mの終濃度)を、[H]PZ(各個別の実験での終濃度は、4〜6nMの範囲である)、1mM EDTA及び2mM MnCl、並びに皮質膜(上記で指定されているように希釈した)を全て一緒に0.2mlの最終容積で含有する20mM Tris/Mn緩衝液、pH7.4を含有する13×100mmガラス管にピペットで移した。全体の結合及び非特異的結合を、それぞれ競合リガンドの非存在下又は10μMアトロピンの存在下で決定した。アッセイは全て、25℃で1時間、三重反復で実施した。インキュベーション期間の終了時に、管を氷浴に浸漬し、それらの内容物をろ過した。結合した物質を、Brandel社製システム(M−24R、ゲーサーズバーグ、メリーランド州、米国)を使用して、事前に浸漬された(0.5%ポリエチレンイミンに1時間)GF/Bフィルター、317×57mm(Whatman社製、タマル、エルサレム、イスラエル)で捕捉した。その後、フィルターを乾燥し、バイアルの中に押し出した。シンチレーション液体(生分解性計数用シンチレーション物質、Amersham社製、イリノイ州、米国)を添加し、放射能を、PerkinElmer社製TriCarb 2800型液体シンチレーション計数器を使用して測定した。競合曲線、K、K値を、GraphPad Prismソフトウェアプログラム、バージョン3.0を使用して導出した。この研究では、AF710Bは、ラット皮質膜中でM1 mAChRに対して2部位結合曲線を示し、2つの結合部位間で強度が5桁異なっており、より高親和性の結合部位ではK=0.23nM(37%)であり、より低親和性の結合部位ではK=34.5μM(63%)である。
【0214】
80種の膜貫通及び可溶性受容体、イオンチャネル、及びモノアミン輸送体の幅広いコレクションで構成されるハイスループットプロファイリングを、AF710Bに対して実施した。それは、薬物候補を潜在的に限定するためだけでなく、非特異的活性を特定するための情報を提供することを特に目的としている。得られた結果は、AF710Bが、以下のM1及びM2 mAChR、並びに他の受容体に結合することを示す。この研究のさらなる延長では、これら受容体のほとんどに関する機能的研究を実施した。下流の神経化学的測定値(例えば、αAPP、GSK3β、タウ)に対するAF710BのM1 mAChR媒介性効果が、他のGPCRとの相互作用と比べて3〜5桁低い濃度で検出されたことが判明した。
【0215】
ラットにおける急性毒性研究:AF710B(1、10、及び50mg/kg)及び対照として不活性媒体を、3匹の雄+3匹の雌ラット/用量の群に経管栄養により経口投与し、考え得る毒性又は他の明白な効果について評価した。投与の当日に、投与後の最初の4時間は定期的に、及びそれぞれの作業日の終了時に臨床検査を注意深く実施及び記録した。その後、動物を検査し、臨床的兆候を14日間の観察期間全体にわたって少なくとも1日1回記録した。観察には、皮膚、柔皮、目、粘膜、分泌及び排出(例えば下痢)の発生、並びに自律神経活性(例えば、涙液分泌、流涎、立毛、瞳孔サイズ、異常な呼吸パターン)の変化が含まれていた。歩行、姿勢、及び取り扱いに対する反応における変化、並びに奇異な行動、身震い、痙攣、睡眠、及び昏睡の存在も検査した。試験物又は試験物媒体対照で処理された動物のいずれにおいても、急性経口(PO)経管栄養投与の14日後に実施された計画的安楽死の前に、死亡は発生しなかった。処理に関連した明白な有害反応は、50mg/kgの用量レベルの試験物に曝露され、投与後100分間十分に回復させた1匹の雄ラットに運動活性のわずかな減少及びわずかな呼吸困難が投与5分後に認められたことを除いて、それぞれの投与日又は14日間の全観察期間中、いかなる試験物又は試験物媒体対照処理動物にも観察されなかった。現行の研究に適用された経時的な方法を考慮し、可能な限りの標準化を行うために、全ての体重及び体重増加の値、投与日と比較したそれぞれの体重変化のパーセントを各動物及び群毎に計算した。全ての試験物処理群対媒体対照群には、雌ラット(10mg/kgの用量レベル)の1つの群の群平均体重変化パーセントに統計的に有意な減少(p<0.05)が投与7日後に認められたことを除いて、統計的な有意差は認められなかった。計画的屠殺後に、全て動物を十分に詳細な剖検及び総体的病理学検査にかけた。剖検では、全ての動物を、身体の外部表面、全ての開口部、頭蓋、胸腔及び腹腔、並びにそれらの内容物を含む徹底的な検査にかけた。急性経口(PO)経管栄養投与の14日後に実施された計画的剖検時には、全ての試験物又は試験物媒体処理動物中に、肉眼的に明白な総体的病理所見はなかった。ラットに対する急性経口(PO)経管栄養投与後の試験物AF710Bの最大耐用量(MTD)を計算した。
【0216】
トリヘキシフェニジルは、血液脳関門と交差し、記憶及び学習障害を誘導する選択的M1ムスカリンアンタゴニストである(Bymasterら、J Pharmacol Exp.Ther.267巻:16〜24頁、1993年;Roldanら、Neurosci.Lett.230巻:93〜96頁、1997年;Kimuraら、Brain Res.834巻:6〜12頁、1999年)。したがって、この化合物の全身投与は、学習及び記憶プ
ロセスにおける脳Mムスカリン受容体の役割を研究する薬学的ツールとして有用である。下記の実験では、未感作ウィスターラットを使用した。受動的回避(PA)課題は、訓練(獲得)局面及び保持局面で構成される。訓練手順では、各ラットを照明付小区画に個別に収納し、60秒間の馴化/順応後に大区画へのドアを開け、進入までの待ち時間を測定した(初期待ち時間)。暗所区画への進入直後にドアを閉じ、グリッド床を介して回避不能なフットショックを与えた(0.6mAで3秒間)。初期待ち時間には、180秒のカットオフを使用した。180秒以内に進入(通過)しなかった動物を、実験から除外した。獲得試行の後、ラットをホームケージに返した。受動的回避課題の保持は、ラットを再び明所区画に収納し、60秒間の順応期間後にドアを開け、暗色区画に再び進入するまでの待ち時間を測定することにより、24時間後に測定した。保持待ち時間には、300秒のカットオフを使用した。300秒以内に通過しなかった動物を装置から取り除き、それらについては、300秒の待ち時間を記録した。ラットを2群に分割した。ショックを与える30分前に、第1の群(N=40)を、トリヘキシフェニジル(5mg/kg、s.c)で処理し、第2の群(N=30)を、再蒸留水(DDW 1ml/kg、s.c)で処理した。各群では、ラットを4つの処理サブグループに分割し(トリヘキシフェニジル処理群はN=9〜11、及びDDW処理群はN=7〜8)、ショックを与える60分前に、1つのサブグループをDDW(10ml/kg、p.o.)で処理し、3つのサブグループをAF710B(0.01、0.03、及び0.1mg/kg、p.o.)で処理した。トリヘキシフェニジルと処理との間に有意な相互作用が見出された(F(2/63)=4.0、p<0.023)。DDWで処理されたトリヘキシフェニジルラットの保持待ち時間(54.22±14.60秒)は、DDWで処理された対照ラットの保持待ち時間より有意に短かった(242.00±30.60秒)(p<0.001)。しかしながら、AF710B 0.01mg/kg(252.50±32.30秒)及び0.03mg/kg(178.82±32.70秒)で処理されたトリヘキシフェニジルラットの保持待ち時間は、DDWで処理されたトリヘキシフェニジルラットの保持待ち時間より有意に長かった(p<0.01〜0.001)。AF710B 0.1mg/kgで処理されたトリヘキシフェニジルラットの保持待ち時間(122.00±34.60秒)は、DDWで処理されたトリヘキシフェニジルラットの保持待ち時間と変わらなかった。したがって、AF710Bは、0.01mg/kg、po(0.028μmole/kg、po)の用量でさえ有効であることが見出された。
【0217】
式Iの化合物がCNSに輸送されることになる可能性が高いかどうかを評価するために、表1に示されている化合物の分配係数を計算した。分配係数は親油性の尺度であり、「log P」値として数値的に表現することができ、log Pは、オクタノール−水又は緩衝液間の分配係数のlogである。log P値は、HPLC法を含む実験的な方法によるか、又は予測計算法によるかのいずれでも決定することができる。log Pの値が高いほど、目的化学物質の親油性、したがって脂溶性はより大きくなる。log Pが高い物質は、水より油脂により良好に溶解する。これにより、受動拡散により体内の脂質(脂肪に基づく)膜に進入するそれらの能力が増強され、これによりそれらの吸収能力が増強される。多くの薬物は1〜4のlog P値を有しており、経口送達法に好適となっている。したがって、log P値は、薬物が迅速にCNSに接近することができるかどうかに関する一般的な指針を提供する。表1に示されている化合物のlog Pは、分子特性の計算用パッケージソフトである「Molinspiration」によりインターネット上で利用可能なプログラムを使用して計算し(www.molinspiration.com/cgi−bin/properties、Molinspiration Calculation Services社)、全ての場合で1〜4の間であった。
【0218】
【表1】









分子特性の計算用パッケージソフトである「Molinspiration」によりインターネット上で利用可能なプログラムを使用して計算した(Molinspiration Calculation Services社、www.molinspiration.com/cgi−bin/properties)。
M1 mAChRに対する効果は、上述のように細胞内Caイオンの動員により評価した。M1 mAChRは、特定のGPCRを表す。
【0219】
本発明は、上記の例に見出される化合物に限定されるものではなく、上記の合成スキームに示されている手順を使用して、本発明の範囲以内にある他の多くの化合物を調製することもできる。これら方法を使用する式Iのさらなる化合物の調製は、化学分野の当業者であれば明白であろう。
【0220】
本発明は、その幾つかの実施形態に具体的に言及して詳述されているが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲内で変異及び改変を達成することができることを理解するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのスピロ化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】

(式中、Aは、
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

及び
【化6】

からなる群から選択され、
式中、全ての構造において、「C」と示されている炭素はスピロ炭素を示し、 Rは、H及び随意に置換されたCアルキルからなる群から選択され、 n及びpは、各々独立して0、1、2、及び3から選択され、ただしn+p=l、2、又は3であり、
Yは、−O−又は−S−であり、
、R、R、R、及びRは、各出現において各々独立して、H、随意に置換されたC1〜6アルキル、随意に置換されたC1〜6アルコキシ、随意に置換されたC1〜6ヒドロキシアルキル、随意に置換されたC2〜6アルケニル、及び随意に置換されたフェニルから選択され、
は、随意に置換されたC1〜7アルキル、随意に置換されたC1〜6ヒドロキシアルキル、随意に置換されたC2〜6アルケニル、随意に置換されたC2〜6アルキニル、随意に置換された置換フェニル、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインドール、随意に置換されたへテロアリール、随意に置換されたC1〜6アルキルへテロアリール、随意に置換されたC3〜7シクロアルキル、−C(=O)−R、−SO−Rから選択され、Aが、
【化7】

−O−C(=O)−Rである場合、
は、随意に置換されたC1〜7アルキル、随意に置換されたC1〜7アルコキシ、随意に置換されたC2〜7ヒドロキシアルキル、随意に置換されたC2〜7アルケニル、随意に置換されたC2〜7アルキニル、随意に置換されたC3〜7シクロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインドール、随意に置換されたC2〜3アルケニルインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインドリジン、随意に置換された−C2〜3アルケニルインドリジン、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシインドリジン、随意に置換された−(C1〜6)アルキルイソインドール、随意に置換された−C2〜3アルケニルイソインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルコキシイソインドール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルインダジオール、随意に置換された−C2〜3アルケニルインダゾール、随意に置換された−C1〜6アルコキシインダゾール、随意に置換された−(C1〜6)アルキルベンズイミダゾール、随意に置換された−C2〜3アルケニルベンズイミダゾール、及び随意に置換された−C1〜6アルコキシベンズイミダゾールから選択され、
は、アルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、及びCFからなる群の1つ又は複数のメンバーにより置換されたアリールである。)
【請求項2】
Rがメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
p及びnが各々1である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、
【化8】

である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Aが、
【化9】

である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
Aが、
【化10】

である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
Aが、
【化11】

である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Aが、
【化12】

である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
がメチルである、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
がHである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
及びRが各々Hである、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
がHである、請求項1〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
YがSである、請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
YがOである、請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
が、随意に置換された−C(O)−(C1〜3)−インドール−3−イルである、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
が、−C(O)−CH−インドール−3−イルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、−C(O)−CHCH−インドール−3−イルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
が、−C(O)−CHCHCH−インドール−3−イルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
が、trans−C(O)−CH=CH−インドール−3−イルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
が、−C(O)−CH(NH)−CH−インドール−3−イルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
Aが、
【化13】

であり、Rが、−O−C(=O)−CHCH−インドール−3−イルである、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項22】
が、−SO−4−フルオロフェニルである、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項23】
が、−C(O)CH(n−プロピル)である、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項24】
が、−C(O)−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tertブチルフェニル)である、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項25】
が、−C(O)−CHCHである、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項26】
【化14】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【化15】

((R)−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【化16】

((S)−1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【化17】

1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1−メチル−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【化18】

(3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]−デカン)、
【化19】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−プロピルペンタン−1−オン)、
【化20】

((3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−メタノン)、
【化21】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ブタン−1−オン)、
【化22】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−(1H−インドール−3−イル)エタン−1−オン)、
【化23】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【化24】

(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパ−2−エン−1−オン)、
【化25】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、
【化26】

((R)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【化27】

((S)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【化28】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−2−プロピル−ペンタン−1−オン)、
【化29】

(3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]−デカン)、
【化30】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−4−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン)、
【化31】

(1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−4−イル)−2−プロピル−ペンタン−1−オン)、
【化32】

(4−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,8−ジメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]−デカン)、
【化33】

(1’,4−ジメチル−6−(3−インドールプロピオニル)−スピロ−(3−オキサ−6−アザ−ビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−2,4’−ピペリジン))、及び
【化34】

(1’,4−ジメチル−6−[3−(4−フルオロベンゼンスルホニル)]−スピロ−(3−オキサ−6−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4’−ピペリジン))、
【化35】

N−(2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオンアミド、
【化36】

N−(2,8−ジメチル−1−チア−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロピオンアミド、
【化37】

(3E)−2,8−ジメチル−1−オキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン−O−[3−(1H−インドール−3−イル)プロパノイル]オキシムのうちの1つから選択される請求項1に記載の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項27】
(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、(+)−(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、(−)−(1−(2,8−ジメチル−1−チア−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロパン−1−オン)、1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン、(+)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オン、及び(−)−1−(2,8−ジメチル−1−オキサ−3,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)−プロパン−1−オンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれかに記載の化合物、及びその薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項29】
アルツハイマー病を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1〜27のいずれかに記載の有効量の化合物を投与することを含む方法。
【請求項30】
インスリン抵抗性症候群を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1〜27のいずれかに記載の有効量の化合物を投与することを含む方法。
【請求項31】
2型糖尿病を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1〜27のいずれかに記載の有効量の化合物を投与することを含む方法。
【請求項32】
M1ムスカリン受容体調節因子による治療に感受性である疾患又は症状を治療するための方法であって、その必要がある患者に、請求項1〜27のいずれかに記載の治療上有効量のaを投与することを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2012−515763(P2012−515763A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547054(P2011−547054)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000064
【国際公開番号】WO2010/084499
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511180570)
【Fターム(参考)】