説明

複雑な表面輪郭を有する部材の超音波検査のための方法及び装置

本発明は、複数の軸に複数の軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)を有するマニピュレータ(MM)により、少なくとも1個の超音波検査ヘッド(UPK)を所定の間隔(A)で被検部材(BT)の表面輪郭(OK)に沿って導く、複雑な表面輪郭を有する部材の超音波検査のための方法及び装置に関する。複雑に湾曲した表面輪郭を有する部材でも高い測定精度を保証するために、マニピュレータ(MM)の軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)を所定の支点に沿って同期移動し、トリガ駆動装置(MRT)を軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)と同期して制御し、すべての関与する軸駆動装置とともに、表面輪郭(OK)を表す表面ライン(OL)に従って移動し、トリガ駆動装置(MRT)が複雑な表面輪郭の表面ラインに関して等距離トリガパルスを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の軸に複数の軸駆動装置を有するマニピュレータにより、少なくとも1個の超音波検査ヘッドを所定の間隔で部材の表面輪郭に沿って導き、受信する超音波測定値を部材の表面輪郭に対して幾何学的に正しく対応させるために、少なくとも1個の駆動装置の運動に従って等距離パルスをトリガ信号として発生する、複雑な表面輪郭を有する部材の超音波検査のための方法並びに軸駆動装置によって単数又は複数の軸で移動可能なマニピュレータを具備し、マニピュレータによって少なくとも1個の超音波検査ヘッドを所定の間隔で部材の表面輪郭に沿って移動することができ、その際軸駆動装置が制御装置によって制御され、受信される超音波測定値を部材の表面輪郭に対して幾何学的に正しく対応させるためにトリガパルスを発生するエンコーダが設けられている、複雑な表面輪郭を有する部材の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な表面輪郭を有する部材の超音波検査のための方法は先行技術により周知である。ここにおいては、在来の多軸検査マニピュレータに単数又は複数の超音波発振器が配置され、部材の検査のためにその真直な又は僅かに湾曲した表面輪郭に沿って移動される。超音波制御装置のためのトリガパルスの発生のために、マニピュレータの少なくとも1個の軸駆動装置がとりわけ光学エンコーダを装備する。このエンコーダにそれぞれ1つの主軸、例えばX軸が配属される。部材の自動化検査でエンコーダは当該の軸駆動装置の運動に対応して、接続された軸の運動ベクトルに対して等距離パルスを発生する。等距離パルスは、超音波測定値と検査品を幾何学的に正しく対応させるためのトリガとして必要である。
【0003】
先行技術による一軸トリガシステムを有する装置10を図1に示す。装置10は多軸マニピュレータ12を具備し、各軸例えばX軸、Y軸、Z軸と場合によっては回転軸例えばA軸又はB軸にそれぞれ軸駆動装置MX、MY、MZ、MA、MBが配属されている。これらの軸駆動装置はNC制御装置NCSにより適当な制御カードSX、SY、SZ、SA、SBを介して制御される。軸駆動装置の1つ、図示の例ではX軸の駆動装置MXはエンコーダEと連結され、エンコーダEは当該の軸駆動装置の運動に対応して等距離パルスを超音波システムUSSに送出する。その場合トリガパルスは線形X軸の前進に比例して発生される。超音波システムUSSは制御コンピュータSRと連結され、一方、制御コンピュータSRは多軸マニピュレータのNC制御と結合されている。
【0004】
被検部材の表面輪郭の幾何学的形状が主検査方向に複雑に湾曲している場合は、一軸トリガの発生によって表面に忠実なデータ記録の十分な精度を保証することはできない。この意味で表面に忠実なデータ記録とは、測定結果をその後固定されたコンピュータ画像(Cイメージ)として表示するために、部材表面の等距離測定点格子が利用されることを意味する。
【0005】
三次元形状検出システムの校正方法及びこの方法の実施のためのシステムがドイツ特許DE−T−69003090で記述される。上記の校正方法は、センサ装置の構造に関係なく、従って幾何学的パラメータの事前の物理的測定を必要としない新規な校正方法を提供することを目標とする。この方法では、センサ装置の幾何学的パラメータを知ることが、簡単に寸法指定される校正対象物を知ることに置き換えられる。中間伝達関数の作成は、物体の各点のその後の測定と同じ条件のもとで、直接に原情報の検出によって行われるから、エラーの蓄積を回避することができる。
【0006】
欧州特許公開第0489161号は超音波割れ検出装置に関するものである。距離センサと超音波走査ヘッドが一体構造として互いに結合されているから、距離センサは超音波走査ヘッドとともに走査線上に導かれる。距離センサによる物体Wの表面走査が超音波検査ヘッドによる割れ検出と平行して行われる。割れ検出区域は多数の小区域に細分され、多数の記憶領域が記憶装置に網目状に保存される。位置記憶領域の1つの平面値だけが割れ検出領域を含み、各記憶領域に記憶される。この記憶された形状データに基づいて、割れ検出点ごとに超音波検査ヘッドの位置及び角又は状態が制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に基づき、本発明の課題は、複雑に湾曲した表面輪郭とを有する部材でも高い測定精度が保証されるように、上記の種類の方法及び装置を改良することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の課題は、とりわけ方法については、表面輪郭を表す表面ラインの長さを計算し、超音波検査ヘッドを導くための支点を計算し、マニピュレータの軸駆動装置をあらかじめ計算した支点に沿って同期移動し、トリガ駆動装置を軸駆動装置と同期して制御し、すべての関与する軸駆動装置とともに、あらかじめ計算した表面ラインに従って移動し、その際トリガ駆動装置を表面ラインに見掛け上追従させ、表面ラインに関して等距離トリガパルスを発生することによって解決される。
【0009】
本発明に係る方法は、基本的にいって経路に関し同期移動される補助モータ又は駆動装置にトリガパルスの発生のためのエンコーダを接続することよって、複雑に湾曲した表面輪郭を有する部材でも表面に忠実な測定値の対応関係を保証することである。
【0010】
この場合、表面ライン、特にその長さの事前計算は、手動的に入力され又はCADデータから受け取った被検部材の幾何学的形状に対応して算出する。計算は超音波システムの制御コンピュータで行うことが好ましい。また所定の間隔で部材の表面輪郭に沿って超音波検査ヘッド装置を導くための多軸マニピュレータの支点が、超音波システムの制御コンピュータで計算される。その場合部材の表面輪郭上で例えば雷文状に曲折した測定運動が行なわれる。
【0011】
続いて、事前に計算され、NC制御に転送された支点に沿った空間で多軸マニピュレータの複数の駆動軸を同期移動する際に、いわゆるトリガ駆動装置又は立体トリガ(仮想軸)としての補助モータが、NC制御により同期化されて他のすべての関与する軸駆動装置とともに、あらかじめ計算した表面ラインに従って移動される。所定の間隔で部材の表面輪郭及び立体トリガ軸に沿って超音波検査ヘッド装置を正確に導くために本来の運動軸を同期移動することによって、立体トリガ軸が表面ラインを見掛け上追従して、等距離パルスを接続されたエンコーダから超音波システムに送出することが保証される。
【0012】
本発明の上記課題は、装置においては、軸駆動装置に加えてトリガパルスの発生のためのトリガ駆動装置を設け、トリガ駆動装置をマニピュレータの軸駆動装置と同期して制御し、軸駆動装置をあらかじめ計算された支点に沿って同期移動し、トリガ駆動装置を制御装置により同期化して軸駆動装置とともに、表面輪郭を表す表面ラインのあらかじめ計算した長さに対応して同期移動し、複雑な表面輪郭の表面ラインに関して等距離のトリガパルスをトリガ駆動装置のエンコーダ(E)に印加することによって解決される。
【0013】
多軸マニピュレータの現存する軸駆動装置のほかに、別の軸又はトリガ駆動装置、即ちNC制御に接続されたモータが確定される。すなわち、モータはあらかじめ計算した支点に沿った空間で多軸マニピュレータの軸駆動装置を同期移動する際に同期化され、NC制御によって他のすべての関与する軸とともに、あらかじめ計算した表面ラインに従って移動されるるから、トリガ駆動装置が表面ラインを見掛け上追従して、接続されたエンコーダから超音波システムへ等距離パルスを送出することが保証される。
【0014】
本発明のその他の細部、利点及び特徴は特許請求の範囲及び特許請求の範囲に見られる特徴−単独で及び/又は組み合わせとして−だけでなく、図面に見られる好ましい実施例の下記の説明からも明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は明細書の冒頭ですでに詳しく説明した一軸トリガシステムによる、表面輪郭OKを有する被検部材としての部材BTの検査のための装置10を示す。
【0016】
図2のa)及びb)は所定の間隔Aで被検部材としての部材BKの表面輪郭OKに沿って超音波検査ヘッドシステムUPSを導くための多軸マニピュレータMMの2つの構成例I,IIの実施形態を示す。構成例Iの実施形態によれば、多軸マニピュレータMM1はおおむねU字形のフレーム12を具備する。フレーム12の底面側(下側)は駆動装置MXによりガイドレール14、16に沿って、第1の軸、例えばX軸沿いに移動することができる。その場合U字形フレームはX方向の移動の際におおむね被検部材を取り囲む。フレーム12の垂直に延びる脚部18、20に、別の軸、例えばY軸に沿って移動可能な保持部材22、24が取り付けられ、これに超音波検査ヘッド装置UPSが固定されている。また保持部材22、24はさらに別の軸、例えばZ軸に沿って、被検部材BTの方向へ及びこれから遠のき側へ移動することができる。また保持部材22、24の縦軸、例えばA軸の周りに、超音波検査ヘッド装置UPSを回転することが可能である。
【0017】
図2b)に示した構成例IIの多軸マニピュレータMM2は、保持部材22、24がフレーム12の垂直に延びる脚部18、20に配置されないで、上側の水平横ばり26のY軸に沿って移動可能である点が、図2a)に示したマニピュレータMM1と相違する。また保持部材22、24は垂直に延びるZ軸に沿って移動することができる。超音波検査ヘッド装置UPSはさらにA軸の周りに旋回し得るように配置されている。選択によっては、保持部材22、24がその縦軸、この場合は、B軸の周りに回転可能である。
【0018】
図3は複雑な表面輪郭OKを有する部材BTの超音波検査装置28を示す。装置は所定の間隔Aで部材BTの表面輪郭OKに沿って超音波検査ヘッド装置UPSを導くための多軸マニピュレータMMを具備する。多軸マニピュレータMMは個別軸、例えばX軸、Y軸、Z軸、A軸及びB軸の駆動のための軸駆動装置MX、MY、MZ、MA、MBを具備する。これらの軸駆動装置は制御カードSX、SY、SZ、SA、SBを介して制御装置NCSと連結されている。本発明に基づき制御カードSRTにより制御装置NCSと結合された別のトリガ駆動装置をなすモータMRTが設けられている。モータMRTはエンコーダEと連結され、エンコーダEはトリガ信号を超音波システムUSSに送る。超音波システムUSSは制御コンピュータSRと結合され、一方、制御コンピュータSRは多軸マニピュレータの制御装置NCSと結合されている。
【0019】
図4は本発明に係る方法のフローチャートを示す。超音波システムSRのための制御コンピュータで表面ラインOL、特にその長さが、手動的に入力され、あるいはCADデータから受け取った被検部材BTの幾何学的形状に従って計算される(セクションS2)。続いて所定の間隔Aで超音波検査ヘッドシステムUPSを導くための多軸マニピュレータMMの支点の事前計算が行われる(セクションS1)。この計算も超音波システムの制御コンピュータSRで行なわれる。
【0020】
部材BTの表面輪郭OK上で雷文状に曲折した測定運動を行うことが好ましい。あらかじめ計算し、制御装置NCSに転送した支点に沿った空間での軸の同期移動の際に、仮想の軸とみなすことができるトリガ駆動装置をなす立体トリガモータMRTは、NC制御装置NCSにより同期化されて他の関与する軸とともに、あらかじめ計算した表面ラインOLに従って移動される(セクションS3)。所定の間隔Aで表面OKに沿って超音波検査ヘッド装置UPSを正確に導くために本来の運動軸即ちX、Y、Z、A及びB軸を同期移動し、かつ立体トリガモータMRTの立体トリガ軸を移動することによって、立体トリガ軸が見掛け上表面ラインOLに追従し(セクションS4)、等距離パルスを接続されたエンコーダEから超音波システムUSSに送出する(セクションS5)ことが保証される。
【0021】
こうして表面に忠実なデータ記録の十分な精度、即ちその後に測定結果を、ピクセル化したコンピュータ画像として表示するための部材表面の等距離測定点格子が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】先行技術による一軸トリガシステムを有する、部材の超音波検査装置を示す。
【図2】マニピュレータシステムの構成例I及びIIの概要図をa)及びb)でそれぞれ示す。
【図3】立体格子形トリガシステムを有する、本発明に係る被検部材の超音波検査装置を示す。
【図4】複雑な表面輪郭を有する部材の超音波検査方法の実施のための手順を含むフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸に複数の軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)を有するマニピュレータ(MM)により、少なくとも1個の超音波検査ヘッド(UPK)を所定の間隔(A)で被検部材(BT)の表面輪郭(OK)に沿って導き、受信する超音波測定値を部材の表面輪郭(OK)に対して幾何学的に正しく対応させるために、少なくとも1個の駆動装置の運動に従って等距離パルスをトリガ信号として発生する、複雑な表面輪郭(OK)を有する部材(BT)の超音波検査のための方法において、
表面輪郭(OK)を表す表面ライン(OL)の長さを計算し、超音波検査ヘッド(UPK)を導くための支点を計算し、マニピュレータ(MM)の軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)をあらかじめ計算した支点に沿って同期移動し、トリガ駆動装置(MRT)を軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)と同期して制御し、すべての関与する軸駆動装置とともに、あらかじめ計算した表面ライン(OL)に従って移動し、その際トリガ駆動装置(MRT)を表面ライン(OL)に見掛け上追従させ、表面ライン(OL)に関して等距離トリガパルスを発生することを特徴とする方法。
【請求項2】
被検部材の表面輪郭に沿った超音波検査ヘッド(UPK)の個別線形測定運動ごとに表面ライン(OL)の長さを計算することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検部材の表面輪郭(OK)に沿った雷文状に曲折した測定運動を実現するための支点を計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
すべての軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)及びトリガ駆動装置(MRT)の制御をNC制御によって行うことを特徴とする上記請求項の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項5】
検査ヘッドを制御する超音波装置のためのトリガパルスを、表面ライン(OL)に沿って等距離に発生することを特徴とする上記請求項の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項6】
軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)によって単数又は複数の軸で移動され、少なくとも1個の超音波検査ヘッド(UPK)を所定の間隔で被検部材(BT)の表面輪郭(OK)に沿って移動することができるマニピュレータ(MM)を具備し、軸駆動装置が制御装置(NCS)によって制御され、受信される超音波測定値を部材の表面輪郭に対して幾何学的に正しく対応させるためにトリガパルスを発生するエンコーダ(E)が設けられている、複雑な表面輪郭(OK)を有する部材(BT)の検査のための装置において、
軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)に加えてトリガパルスの発生のためのトリガ駆動装置(MRT)が設けられ、トリガ駆動装置(MRT)がマニピュレータ(MM)の軸駆動装置(MX、MY、MZ、MA、MB)と同期して制御され、軸駆動装置があらかじめ計算された支点に沿って同期移動され、トリガ駆動装置(MRT)が制御装置(NCS)により同期されて軸駆動装置とともに、表面輪郭(OK)を表す表面ライン(OL)のあらかじめ計算した長さに従って移動され、複雑な表面輪郭(OK)の表面ライン(OL)に関して等距離のトリガパルスがトリガ駆動装置(MRT)のエンコーダ(E)に印加されることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−509332(P2007−509332A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535990(P2006−535990)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011331
【国際公開番号】WO2005/043151
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(505379478)ゲーイー・インスペクチオン・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】