説明

視角制御システムならびに画像表示装置

【課題】覗き込み防止や視角制御を必要とする表示装置に使用可能であり、ディスプレイの視角を制御できる視角制御システム、ならびに画像表示装置を提供する。
【解決手段】吸収二色性物質を含有するフィルム状の、第1偏光子1及び第2偏光子2を有し、第1偏光子1は、吸収軸1aをフィルム面内に有し、第2偏光子2は、吸収軸2aがフィルム面の法線方向から傾いており、当該吸収軸2aとフィルム面の法線とのなす角が0°〜45°であり、かつ、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸2aとを包含する面と、前記第1偏光子の吸収軸1aのなす角が略垂直である視角制御システム100により、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視角制御システム、ならびにそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)やEL表示装置(ELD)等の画像表示装置は、薄型・軽量・低消費電力・大画面化が可能である等の特長を有することから、さまざまな用途や場面で用いられている。特にLCDやELDは、ノートパソコンや携帯電話のように、個人的に用いられる情報機器の表示装置として広く用いられている。このような情報機器を用いて、個人情報や営業秘密等を含むデータが扱われる場合があるが、駅のホーム、喫茶店や電車の中等の公共の場においては、他者からの覗き込み等によって、プライバシーを侵害されたり、機密情報が漏洩する等の危険性を含んでいる。また、現金自動預払機(ATM)等においても同様で、暗証番号等の操作時の覗き込み等によって情報が漏洩するという危険がある。一方、カーナビゲーションシステム等の車載用ディスプレイの場合、ディスプレイから上方向に出射される光がフロントウインドウに映りこみ、特に夜間での運転の際にその映りこみによって、外部の視界が妨げられるといった問題がある。
【0003】
前記の画像表示装置の中でも、LCDは、CRTやELD、PDP等の自発光型表示装置と比較して、「視野角が狭い」といわれており、視野角を拡大するために、光学補償フィルムが用いられている。かかる場合の「視野角が狭い」という表現は、正確には「良好な表示特性を示す視野角が狭い」ことを意味している。すなわち、一般に「視野角が狭い」といわれるような表示装置であっても、あらゆる方向に表示情報が出射されており、他者からの覗き込み等によって情報が読み取られる可能性や、映りこみ等の問題は解決されない。かかる観点からは、出射光の光量を角度により制御して、不必要な方向、あるいは制限したい方向への光出射を読み取りができない程度まで小さくする必要がある。
【0004】
このような問題に対し、PETフィルム等の保護層の間に、物理的にすだれ状のルーバーが形成されたフィルム等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルムはライトコントロールフィルム等とも呼ばれ、既に市販されている。このルーバーが形成されたフィルムは、図2に示すように、保護層203に垂直もしくは所定の角度で、多数の吸光性のルーバー202が設けられており、ルーバー202の高さや、ルーバー202と透光層201の配置間隔、ルーバー202と保護層203の配置角度を調整したり、あるいは、これらの構造単位200を複数積層することによって種々の視角制御を可能としている。
【0005】
このようなルーバーフィルムは、特許文献1にも示されているように、透光部分となる透明層と、ルーバー部分となる着色層を幾層も必要なサイズとなるまで積層し、それをスライスした後に保護層をその両面に積層するといった方法で製造されている。そのため、製造には非常に煩雑な工程を必要とし、コストがかかることや、視角制御設計の柔軟性に欠けるという問題があった。また、透明層と着色層の積層数には限界があり、積層厚みがルーバーフィルムのサイズの決定要因となることから、大面積化が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−305312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、覗き込み防止や視角制御を必要とする表示装置に使用可能であり、ディスプレイの視角を制御できる視角制御システム、ならびに画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。すなわち、本発明は、配向が固定された吸収二色性物質を含有するフィルム状の、第1偏光子及び第2偏光子を有し、第1偏光子は、吸収軸をフィルム面内に有し、第2偏光子は、第2偏光子の吸収軸がフィルム面の法線方向から傾いており、当該吸収軸とフィルム面の法線とのなす角が0°〜45°であり、かつ、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する面と、前記第1偏光子の吸収軸のなす角が略垂直である、視角制御システムに関する。偏光子の見かけ上の吸収軸は、視認方向によって変化するが、本発明の視角制御システムにおいては、吸収軸方向の異なる2枚の偏光子を用い、これらの見かけ上の吸収軸の角度関係や光線透過率が視認方向によって変化することを利用して、視角制御を可能としている。
【0009】
本発明の視角制御システムにおいては、前記第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する平面と、前記第1偏光子の吸収軸とのなす角が、90°±5°であることが好ましい。このような角度で2枚の偏光子を配置することで、視角制御特性をより顕著とすることができる。
【0010】
また、本発明の視角制御システムにおいて、前記第1偏光子と、前記第2偏光子との間に媒体を有する場合は、該媒体が前記第2偏光子のフィルム面の法線方向の光の偏光状態を実質的に変換しないものであることが好ましい。前記第1偏光子と、前記第2偏光子との間の媒体によって偏光状態が変換されると、所望の視角制御特性を得られない場合があるためである。
【0011】
前記第2偏光子のフィルム面の法線方向の光の偏光状態を実質的に変換しないものの一態様として、前記媒体の面内位相差が40nm以下であることが挙げられる。また、前記媒体の遅相軸が、前記第1偏光子の吸収軸と平行または垂直であることも好ましい態様である。
【0012】
さらに、本発明の視角制御システムにおいては、所望の視角制御特性を得るために、前記媒体の厚み方向位相差が60nm以下であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の視角制御システムにおいては、前記第1偏光子と、前記第2偏光子とが粘着層及び/または接着層を介して貼合一体化されていることが好ましい。貼合一体化することによって、フィルムの収縮に伴うムラの発生を抑制したり、反射による光の失損を減少したりすることができる。
【0014】
さらに、本発明の視角制御システムの一態様として、第1偏光子側主面または第2偏光子側主面の少なくとも一方に粘着層を有することができる。
【0015】
さらに、本発明は、表示パネルの少なくとも一方の主面に、前記視角制御システムが配置されている画像表示装置に関する。
【0016】
本発明の画像表示装置においては、前記視角制御システムの前記第1偏光子側主面が、前記表示パネル側となるように配置されていることが好ましい。このような構成とすることで、1枚の偏光子で表示装置の偏光子と視角制御システムの偏光子の機能を兼ね備えることができる。
【0017】
さらに、本発明の画像表示装置においては、前記表示パネルと前記視角制御システムが、粘着層及び/または接着層を介して貼合一体化されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の画像表示装置の一態様として、前記表示パネルの少なくとも一方の主面に透明板を有し、該透明板と、前記視角制御システムとが、前記第2偏光子主面側が前記表示パネル側となるように接着層及び/または粘着層を介して貼合一体化されて配置されたものも好ましい構成である。
【0019】
さらに、本発明の画像表示装置においては、表示装置の視角制限方向が、第1偏光子の吸収軸方向と垂直であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の画像表示装置の好ましい一態様として、前記表示パネルが液晶セルの少なくとも一方主面に偏光子を有する液晶表示装置である場合においては、該偏光子が前記視角制御システムの第1偏光子を兼ねることが好ましい。かかる態様とすることで、部材数を減少させ、液晶表示装置の薄型化や軽量化、低コスト化に貢献し得る。
【0021】
また、本発明の画像表示装置の別の好ましい一態様として、前記表示パネルが自発光型の表示装置であり、表示パネルの視認側に前記視角制御システムが配置されているものが挙げられる。かかる態様においては、前記視角制御システムの第1偏光子と表示パネルとの間に、直線偏光を略円偏光に変換する円偏光化手段を有することが好ましい。表示パネルの視認側に前記視角制御システムが配置されることによって視角制御が可能となる。また、円偏光化手段を有することによって、反射防止機能を付与することができ、自発光型の表示装置の界面での反射に起因する明所コントラストの低下を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の視角制御システムの基本構成の断面を示すものである。
【図2】ルーバー202が形成された従来技術の視角制御システムの構成断面の一例を示すものである。
【図3】第2偏光子の吸収軸方向がフィルム面の法線方向と平行である場合の視認方向を表す説明図である。図中の実線両矢印は第1偏光子の吸収軸方向を表し、破線両矢印は第2偏光子の吸収軸方向を表す。
【図4】第2偏光子の吸収軸方向がフィルム面の法線方向と平行である場合に、視認方向によって第1偏光子と第2偏光子の見かけ上の吸収軸の関係が変化する様子を模式的に表したものである。図中の実線両矢印は第1偏光子の吸収軸方向を表し、破線両矢印は第2偏光子の吸収軸方向を表す。
【図5】第2偏光子の吸収軸方向がフィルム面の法線方向に対して傾いている場合の視認方向を表す説明図である。図中の実線両矢印は第1偏光子の吸収軸方向を表し、破線両矢印は第2偏光子の吸収軸方向を表す。
【図6】第2偏光子の吸収軸方向がフィルム面の法線方向に対して傾いている場合に、視認方向によって第1偏光子と第2偏光子の見かけ上の吸収軸の関係が変化する様子を模式的に表したものである。図中の実線両矢印は第1偏光子の吸収軸方向を表し、破線両矢印は第2偏光子の吸収軸方向を表す。
【図7】第2偏光子の界面で光が反射、屈折する様子を模式的に表した概念図である。図中の破線両矢印は第2偏光子の吸収軸方向を表す。
【図8】本発明の視角制御システムの構成概略断面の一例を示すものである。
【図9】本発明の視角制御システムの構成概略断面の一例を示すものである。
【図10】本発明の視角制御システムの構成概略断面の一例を示すものである。
【図11】本発明の画像表示装置の一実施態様である液晶表示装置の構成概略断面の一例を示す構成図である。
【図12】本発明の画像表示装置の一実施態様である液晶表示装置の構成概略断面の一例を示す構成図である。
【図13】本発明の画像表示装置の一実施態様である液晶表示装置の構成概略断面の一例を示す構成図である。
【図14】本発明の画像表示装置の一実施態様であるEL表示装置の構成概略断面の一例を示す構成図である。
【図15】本発明の実施例及び比較例の評価結果を表す図である。(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は比較例1の画像表示装置の白輝度の角度依存を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の視角制御システムは、図1に示すように、第1偏光子1と第2偏光子2を有する。また、任意構成として、第1偏光子と第2偏光子の間に粘着層や接着層、保護フィルム等の媒体30を有していてもよい。偏光子は、結晶光学で言うところの、常光線(O)軸方向に透過軸を有し、異常光線(E)軸方向に吸収軸を有する「O型偏光子」と、異常光線(E)軸方向に透過軸を有し、常光線(O)軸方向に吸収軸を有する「E型偏光子」に分類されるが、本発明の視角制御システムにおいては、前記第1偏光子、第2偏光子の両者に、O型偏光子を用いる。
【0024】
本発明の視角制御システムに用いる第1偏光子は、フィルム状に形成されたものである。第1偏光子としては、吸収二色性物質を含有し、吸収軸1aをフィルムの面内に有する一般的なO型偏光子を適宜用いることができる。このような偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム、液晶性の二色性染料を塗布、配向させたもの等公知のものを用いることができる。
【0025】
前記第1偏光子は、通常の液晶表示装置に用いられる偏光子を兼ねて用いられることが多く、一般に液晶表示装置の偏光子として用い得るものであれば特に制限されないが、透過率や、偏光度等の偏光性能の観点ではヨウ素系の直線偏光子を好適に用いることができる。また、耐久性の観点では染料系やポリエン系の偏光子を好適に用いることができる。
【0026】
本発明の視角制御システムに用いる第2偏光子は、フィルム状に形成されたものである。第2偏光子としては、吸収二色性物質を含有し、吸収軸2aとフィルム面の法線のなす角が0°〜45°であるものが用いられる。本発明の視角制御システムによる視角制御原理の詳細については後述するが、視角特性や、透過率等の視認性は、第2偏光子の光学特性に影響されやすい。そのため、第2偏光子の偏光特性は高いほど好ましい。
【0027】
このような偏光子の材料や、製造方法は特に限定されないが、液晶ポリマーマトリックス中に二色性化合物を配向させたもの等を好適に用いることができる。特に、垂直配向性を高め、高い二色比を達成する観点からは、液晶化合物を垂直配向性の基材により配向させることが好ましい。
【0028】
液晶化合物を垂直配向させ得る基材としては、ガラス基材、アルミニウムやステンレス等の金属板、無機酸化物等の無機系のものや有機系の材料等が挙げられる。ガラス基材としては、一般の板ガラスのほか、0.1mm以下の厚みに成膜されてロール状に巻き取れるような薄板ガラスフィルム(例えば、松浪ガラス工業社製の#100、AF35等)や、これを貼り合わせた樹脂フィルム等が挙げられる。金属板としては、アルミニウムやステンレスの板、これらの薄板、あるいはこれらを樹脂フィルムにメッキ/蒸着したもの等が挙げられる。具体的には、例えば、東洋メタライジング社製や尾池工業社製のアルミニウム蒸着PETフィルムやステンレス蒸着フィルム、東洋アルミニウム社製の圧延アルミニウム箔やPET基材付き圧延アルミニウム箔等が挙げられる。無機酸化物としては、例えば、尾池工業社製のSiO蒸着PETフィルムやITO蒸着PETフィルム等が挙げられる。有機系材料としては、疎水性の樹脂からなるフィルムを好適に用いることができ、例えばノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。ノルボルネン系樹脂としては、例えば、オプテス社製のゼオノアの未延伸フィルム等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、デュポン社製のテフロン(登録商標)樹脂フィルムや、旭硝子社製のETFEやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなるフィルム類が挙げられる。液晶化合物を配向させる基材として、金属板や、無機酸化物の蒸着物等の不透明な基材を用いる場合においては、基材上に液晶化合物の配向層を形成した後に、該配向層を、透明フィルム等の光線透過性の高い基材に転写したものを偏光子として用いることが好ましい。
【0029】
前記液晶ポリマーマトリックスとしては、サーモトロピック液晶性ポリマーや架橋性液晶性ポリマー等が挙げられる。このような液晶ポリマーマトリックス中に二色性色素を配向させたものとしては、特開平11−101964号公報、特開平11−160538号公報、特開2001―330726号公報、特開2001―133630号公報、特開2005−99065号公報、日東技報Vo135,No.1,p79,(1997年)等に記載されているものが挙げられる。
【0030】
特に、配向性を高めるにあたっては、重合性官能基を有する液晶モノマーと二色性色素の混合物を基材上に塗布し、紫外線等の放射線照射により液晶ポリマーを重合して、配向を固定する方法を好適に用いることができる。このように配向基材上で重合することによって、配向性が高くなることに加えて、配向が固定されるために、耐久性が向上する点においても好ましい。さらに、かかる放射線照射の際に、液晶分子を配向させたい方向、例えばフィルム面の法線方向あるいは斜め方向に電場や磁場を印加することでさらに配向性を高めたり、配向方向を制御することができる。
【0031】
また、垂直配向性を高める目的で添加剤を用いることもできる。垂直配向性を高めるための添加剤としては、例えば、正の屈折率異方性を有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットとを含有する側鎖型液晶ポリマーが挙げられる。このような液晶化合物としては、例えば特開2003−149441号公報に記載のものを用いることができる。
【0032】
二色性色素は、入射光に対して分子の長軸と短軸とで異なる吸光度を呈するものであり、液晶ポリマー等の一軸配向に合わせて分子の長軸が該所定の方向に整列しており、入射光に含まれる振動成分を選択的に吸収、透過して偏光に変換する。高二色比を有する色素としては、染料系偏光子に好ましく用いられているアゾ系、ペリレン系、ペンタセン系、アントラキノン系の色素、あるいはこれらの混合色素が好ましく、例えば、特開昭54−76171号公報等に詳しい。また、液晶ポリマーマトリックス中に二色性色素を配合する代わりに、例えば特開2005−140986号公報等に記載されているような液晶性二色性色素を含有する材料を用いることもできる。二色性色素は、偏光特性の波長域等に応じて1種又は2種以上を用いることができ、その使用量は液晶ポリマー又は液晶モノマーに対して1〜20重量%が一般的である。
【0033】
第2偏光子の二色比が高いことが好ましいのは前述の通りであるが、サーモトロピック液晶性ポリマーや架橋性液晶ポリマーのマトリックス中に二色性色素を用いる場合、その二色比は25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。
【0034】
フィルム面内以外に吸収軸を有する偏光子の二色比を直接測定することはできないが、本願明細書においては、その値を以下のように定義する。まず、第2偏光子の法線方向、すなわち吸収軸方向の透過率をKとする。ここで、本来は入射光として直線偏光を用いるが、第2偏光子は垂直配向していることから、自然光の透過率と直線偏光の透過率を同等とみなし、自然光の透過率をKとする。
【0035】
次に、透過軸方向の透過率Kを測定するために、同一の組成を有する水平配向の偏光子を作成する。かかる水平配向の偏光子は、第2偏光子を作成するのと同一組成の液晶化合物を含む溶液を、水平配向膜上に展開、配向、固定することによって得られる。この際、水平配向膜としては、ポリイミドをガラス板上に形成しラビングを行った配向膜を用いる。また、配向の固定に際しては、配向膜のラビング方向に2kVの水平電界を印加し、かかる電界存在下で加熱後に徐冷して液晶モノマーを配向させた後UV照射を行い、配向を固定する。このようにして作成した水平配向偏光子の吸収軸、すなわち、配向方向に平行な直線偏光を入射して、その透過率Kを求める。
【0036】
このようにして得られるK及びKを用いて、二色比Dは、
D=logK/logK
で表される。なお、二色比の測定においては、厳密にはフィルムの表面反射損失の影響を考慮する必要があるが、その影響は無視し得るため、本願明細書においては上記の式を用いる。
【0037】
上記の測定方法、並びに上記の式より、垂直配向している第2偏光子の垂直配向性が低い場合は、二色性物質によって、フィルム法線方向の光が吸収されるため、上記の透過率Kの値が小さくなり、結果として二色性が低くなることが分かる。
【0038】
本発明の視角制御システムにより表示装置の視角が制御される原理について説明する。本発明の視角制御システムは、偏光子の見かけ上の吸収軸方向や、光線透過率が視認角度によって変化することを利用して、視認角度に応じて出射光の光量を制御して、不必要な方向、あるいは制限したい方向への光出射を抑制するものである。
【0039】
図3は、様々な視認方向の態様について示すものである。図3を用いて、見かけ上の吸収軸方向の変化について説明する。視認方向(a)のように、フィルム面の法線方向、すなわち、極角θ=0°の正面方向から見た場合や、視認方向(b)のように極角θ≠0の斜め方向であっても、方位角が吸収軸と同一の方向、すなわち、方位角ψ=0°または180°の方向(ただし、第1偏光子の吸収軸方向を方位角ψ=0°の基準とする)、あるいは、視認方向(c1)または(c2)のように方位角が吸収軸と垂直の方向、すなわち、方位角ψ=90°または270°の方向から見た場合は、見かけの吸収軸の方向は変化しない。それに対して、前記以外の斜め方向から見た場合、見かけ上の吸収軸の方位角は、視認方向の方位角とのなす角が大きくなるように変化する。
【0040】
本発明の視角制御システムにおいて、第2偏光子の吸収軸方向がフィルム面の法線方向と略平行である場合に、視認角度によって出射光量が制御されることについて、第1偏光子及び第2偏光子の見かけ上の吸収軸方向の変化に基づいて説明する。
【0041】
図4の(a)、(b)、(c1)、(c2)はそれぞれ、図3の視認方向(a)、(b)、(c1)、(c2)における、見かけ上の吸収軸方向を表している。なお、実線の両矢印は、第1偏光子の見かけ上の吸収軸方向、破線の両矢印は、第2偏光子の吸収軸方向を表している。図3の視認方向(a)のように、正面方向、すなわち極角θ=0°の方向から見た場合、第2偏光子の吸収軸と平行な方向から視角制御システムを見ることとなる。この場合、図4の(a)に示すように、第2偏光子の二色性物質よる吸収が発現しないため、第1偏光子を出射した光がそのまま第2偏光子を透過することとなる。実際には二色性物質の透過軸方向、すなわち、常光線(O)軸方向も完全に透明というわけではなく、また、二色性物質の配向も完全に一方向を向いているわけではないため、若干の吸収は発生するが、フィルム面内の異方性は無視小であるため、偏光は生じない。そのため、正面視の場合は、わずかな吸収があることを除いて、第1偏光子を出射した光の偏光状態は第2偏光子によって変換されない。
【0042】
図3の視認方向(b)のように、第1偏光子の吸収軸と方位角が同一の斜め方向、すなわち、極角θ≠0°で、方位角ψ=0°または180°(ただし、第1偏光子の吸収軸方向を方位角ψ=0°の基準とする)の方向から見た場合には、図4の(b)に示すように、第2偏光子の吸収軸は第1偏光子の吸収軸と見かけ上平行、すなわち、平行ニコルの状態となるため、第1偏光子を出射した光は、第2偏光子によってほとんど吸収されない。また、視角が大きくなる、すなわち、極角θが大きくなっても、本発明の視角制御システムを透過する光量は大きいままである。
【0043】
これに対し、図3の視認方向(c1)、(c2)のように方位角が吸収軸と垂直の方向、すなわち、極角θ≠0°で、方位角ψ=90°または270°の方向から見た場合には、第2偏光子の吸収軸は、見かけ上、視認方向と平行な方向に発現する。第1偏光子の吸収軸は見かけ上変化しないため、図4の(c1)、(c2)に示すように、第2偏光子の吸収軸は、第1偏光子の吸収軸と垂直、すなわち、直交ニコルの関係となり、第1偏光子を出射した光は、第2偏光子によって吸収されることとなる。また、視角が大きくなる、すなわち、極角θが大きくなるとともに、異常光(E)軸方向の吸収ベクトル成分が大きくなることによって吸光度が増大すると同時に、光路長が増大するために、第2の偏光子によって光吸収は多くなる。したがって、第1偏光子の吸収軸と垂直な方向から見た場合、視角が大きくなるにしたがって本発明の視角制御システムを透過する光量は減少し、この方向から見た場合の表示装置の表示情報は著しく見えにくくなり、視角制御が達成される。
【0044】
ここで、図3の視認方向(c1)と(c2)は、極角θが同じで、方位角が180°異なる視認方向を表しているが、図4の(c1)と(c2)に示すように、第2偏光子の見かけ上の吸収軸2aの配置は同様となるため、第2の偏光子による光吸収も同様である。すなわち、フィルム面の法線に対して対象な視角制御特性を示すことがわかる。
【0045】
また、本発明の視角制御システムを上記以外の視認方向、すなわち、極角θ≠0°であり、かつ、方位角ψが、0°,90°,180°,270°のいずれでもない方向から見た場合、第1偏光子と第2偏光子の吸収軸のなす角に基づいて透過率が低下する。第1偏光子の見かけ上の吸収軸は、視認方向の極角θ及び方位角ψに応じて変化するが、この変化の大きさは、方位角ψ=45°、135°、225°、315°の方向の場合に極大となり、また、極角θの増加とともに大きくなる。第2偏光子の見かけ上の吸収軸の方位角は、視認方向の方位角に等しい。また第2偏光子の光吸収量は、光路長の関係から、極角θの増大とともに大きくなる。
【0046】
このように、第1偏光子と第2偏光子の見かけ上の吸収軸のなす角度、及び光吸収量が視認方向によって変化することに基づいて、本発明の視角制御システムの透過率が決定され、表示装置の視角制限が可能となる。すなわち、視認方向の方位角が第1偏光子の吸収軸方向から離れるほど、本発明の視角制御システムの透過率は減少し、また、極角θが大きくなるほど、本発明の視角制御システムの透過率は減少する。これにより本発明の視角制御システムと表示装置を組み合わせた際に視角の制御が達成される。
【0047】
次に、本発明の視角制御システムにおいて、第2偏光子の吸収軸がフィルム面の法線方向から傾いている場合について説明する。このような場合、第2偏光子の吸収軸とフィルム面の法線のなす角が45°以下であることは、前述の通りであるが、さらに、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する面と、前記第1偏光子の吸収軸のなす角が略垂直であることが好ましい。ここで、略垂直とは、90°±5°の範囲を指すが、好ましくは、90°±3°、より好ましくは90°±2°である。このような角度範囲とすることによって、視角制御範囲に指向性をもたせた視角制御システムを得ることができる。以下、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する面と、前記第1偏光子の吸収軸のなす角が垂直である場合に、視認方向によって出射光量が制御されることについて、第1偏光子及び第2偏光子の見かけ上の吸収軸方向の変化に基づいて説明する。
【0048】
図5は、様々な視認方向の態様について示すものである。図6の(a)、(b)、(c1)、(c2)、(d)はそれぞれ、図5の視認方向(a)、(b)、(c1)、(c2)、(d)における、見かけ上の吸収軸方向を表している。なお、実線の両矢印は、第1偏光子の吸収軸方向、破線の両矢印は、第2偏光子の吸収軸方向を表している。図5の視認方向(a)のように、正面方向、すなわち極角θ=0°の方向から見た場合、図6の(a)に示すように、第2偏光子の吸収軸成分が生じる。そのため、前述の図4の(a)のように、第2偏光子の吸収軸がフィルム面の法線方向と平行な場合と比較すると、透過率は低下する。しかしながら、第2偏光子の吸収軸とフィルム法線のなす角は45°以下であることから、第2偏光子による光吸収量は小さく、正面視での透過率の損失は小さい。
【0049】
図5の視認方向(b)のように、第1偏光子の吸収軸と方位角が同一の斜め方向、すなわち、極角θ≠0で、方位角ψ=0°または180°の方向から見た場合には、図6の(b)に示すように、第2偏光子の見かけ上の吸収軸は第1偏光子の吸収軸と平行に近い角度となるために、透過率の減少は小さい。ただし、第1偏光子と第2偏光子の見かけ上の吸収軸が平行である図4の(b)の場合と比較すると、わずかではあるが、第2偏光子により光が吸収されるため、その透過率は小さくなる。
【0050】
それに対して、図5の視認方向(c1)、(c2)のように、第1偏光子の吸収軸方向と方位角が垂直となる方向、すなわち、極角θ≠0で、方位角ψ=90°または270°の方向から見た場合、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する面と、前記第1偏光子の吸収軸のなす角が垂直であるとの仮定の下では、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する面内の方向から観察することとなる。この場合、第2偏光子の見かけ上の吸収軸は第1偏光子の吸収軸と直交する方向に発現する、すなわち、両者の見かけ上の吸収軸が直交ニコルの配置関係となるため、透過光は大きく減衰される。
【0051】
ここで、図5の視認方向(c1)と(c2)は、前述の図3の視認方向(c1)、(c2)の場合と同様、極角θが同じで、方位角が180°異なる視認方向を表している。図6の(c1)、(c2)に示すように、第2偏光子の吸収軸2aとのなす角が大きい図5の視認方向(c1)場合、図4の(c1)の場合と比較して、第2の偏光子によって光吸収が多くなるのに対して、第2偏光子の吸収軸2aとのなす角が小さいきい図5の視認方向(c2)の場合、図4の(c2)の場合と比較して、第2の偏光子によって光吸収が小さくなり、フィルム面の法線に対して非対象な視角制御特性を示すことがわかる。
【0052】
また、図5の視認方向(d)のように、第2偏光子の吸収軸方向と平行方向、すなわち、視認方向と吸収軸方向のなす角がゼロの場合においては、図6の(d)に示すように、第2偏光子の二色性物質よる吸収が発現しないため、第1偏光子を出射した光がそのまま第2偏光子を透過することとなる。これは、前述の図4の(a)の場合と同様であり、わずかな吸収があることを除いて、第2偏光子によっては、第1偏光子を出射した光の偏光状態は変換されない。それに対して、視認方向と吸収軸方向のなす角が大きくなるほど、第2偏光子による光吸収が大きくなる。
【0053】
このように、本発明の視角制御システムは、第2偏光子による光の吸収量が視認方向によって異なるという原理を利用するものであるが、特に、図3の視認方向(c1)、(c2)や、図5の視認方向(c1)、(c2)の場合のように、第1偏光子の吸収軸と視認方向の方位角が90°の角度をなす方向において、視認方向の極角を変化させた場合に、その光吸収量の変化が大きい、すなわち、その方向における視角制御特性が最も顕著となる。また、図3の視認方向(a)や、図5の視認方向(d)のように、第2偏光子の吸収軸方向と平行な方向から見たときは、第2偏光子によって光はほとんど吸収されず、透過率は最大となる(この方向を「主透過方向」と定義する)。
【0054】
このような原理を利用して、例えば、画像表示装置の上下方向の視角制御をした場合は、第1偏光子の吸収軸方向が画面の左右方向と等しくなるように配置することによって、本発明の目的とする視角制御を達成することができる。
【0055】
ところで、前記の視角制御システムの原理説明においては、原理をより簡潔に説明するために、物質界面における屈折現象を無視したが、実際には、第2偏光子内を伝播する光が視認側に出射される際に、第2偏光子と視認側(通常は空気である)の屈折率差が視角制御効果に影響を及ぼす。すなわち、第2偏光子の屈折率が低いほど視角制御方向での透過角度が狭く、屈折率が高いほど透過角度は広くなる。これは、屈折現象を説明するスネルの法則に基づき、光が第2偏光子から視認側に出射される際にその伝播方向が変化するためである。
【0056】
図7(a)は、第2偏光子の吸収軸方向がフィルム面の法線方向からθ傾いている場合について、第2偏光子の吸収軸方向と、フィルム法線を含む平面内での光の伝播の様子を模式的に表している。図5の視認方向(d)の場合のように、第2偏光子中を吸収軸2aと平行な方向に伝播する光51は、第2偏光子の界面で一部が反射光52として反射され、残りの光は透過光53として視認側に出射される。この際、第2偏光子と視認側の屈折率が異なるため、以下の(式1)で表されるスネルの法則に従って光は極角θの方向に屈折されて出射される。
【0057】
×sinθ=n×sinθ (式1)
ただし、nは視認側の屈折率であり、通常は空気の屈折率n≒1である。またnは、第2偏光子の屈折率である。
【0058】
前記(式1)は以下の(式2)のように書き換えることができる。
sinθ=(n/n)×sinθ (式2)
【0059】
一般にn>nであるため、図7の(b)の場合のように、第2偏光子の吸収軸のフィルム面の法線方向からの傾きθが大きくなると、sinθ>1となり、上記(式1)を満たすθが存在しないこととなる。すなわち、吸収軸2aと平行な方向に伝播する光51は、第2偏光子の界面で全てが反射光52として反射され、視認側には出射されないという、所謂全反射が生じる。全反射が生じる場合、透過率が最大となる「主透過方向」の光が視認側に出射されないため、表示装置の光の利用効率が低下する傾向がある。
【0060】
全反射を生じないためには、第2偏光子の吸収軸傾斜角度θが、全反射の臨界角θより小さいことが必要である。臨界角は、下記の(式3)または(式4)で表すことができる。
sinθ=(n/n) (式3)
θ=sin−1(n/n) (式4)
【0061】
例えば、視認側が空気(n=1)であり、第2偏光子の屈折率n=1.5の場合、主透過方向の光が全反射を生じないためには、第2偏光子の吸収軸傾斜角度θが、臨界角θであるsin−1(1/1.5)≒42°よりも小さいことが必要である。すなわち、第2偏光子の屈折率が1.5の場合、第2偏光子から出射する光のうち、屈折によって±約42の範囲の光のみが視認側に出射されることになるため、θがこれより大きいと、図7の(d)に相当する主透過方向θが存在しないこととなる。
【0062】
第2偏光子を形成する材料の屈折率が1.5より大きい場合、臨界角θは42°より小さな値となり、逆に、第2偏光子を形成する材料の屈折率が1.5より小さい場合は、臨界角θは42°より大きな値となる。
【0063】
上記のように第2偏光子の屈折率によって、臨界角θが異なることに加えて、第2偏光子が複屈折を有し、さらに光吸収を伴うために、屈折率の定義はより複雑となる。そのため、第2偏光子の吸収軸のフィルム面の法線方向からの傾きθの好ましい範囲を一概に規定することは困難であるが、実用上は、θが0〜45°の範囲であればよい。
【0064】
ただし、視認方向の極角θが大きくなると、下記の(式5)及び(式6)で表されるように、表面反射が増大する。特に、P偏光の反射率Rと比較して、透過光となるS偏光の反射率Rの増大が顕著である。
=(sin(θ−θ)/sin(θ+θ)) (式5)
=(tan(θ−θ)/tan(θ+θ)) (式6)
【0065】
さらに、視認方向の極角が極度に大きくなると、前述のように表面反射が増大することに加えて、偏光子を伝播する光の光路長が長くなり吸収が大きくなる。かかる観点から、θは0〜40°であることが好ましく、0〜30°であることがより好ましい。
【0066】
本発明の視角制御システムに用いる第1偏光子1と第2偏光子2の間には、図1に示すように、媒体30を有していてもよく、媒体30としては、図8に例示するように、偏光子の保護フィルム11、12、21、22や、それらを偏光子貼合するための接着層3、あるいは粘着層4等を含んでいてもよい。
【0067】
ところで、本発明の視角制御システムにおいては、前述のように、第1偏光子と第2偏光子の見かけ上の吸収軸の角度関係が変化することにより、視角制御を可能としている。そのため、第1偏光子と第2偏光子との間の媒体によって、その偏光状態が変化すると、所望の視角制御効果が得られない場合がある。かかる観点からは、前記第1偏光子と、前記第2偏光子との間の媒体が、前記第2偏光子のフィルム法線方向に入射する光の偏光状態を実質的に変換しないものであることが好ましい。
【0068】
フィルム法線方向、すなわち正面視の場合の偏光状態が実質的に変換されないためには、前記第1偏光子と前記第2偏光子との間の媒体が実質的に面内位相差を有さないことが好ましい。ここで、実質的に面内位相差を有さないとは、面内位相差Reが40nm以下であることをいうが、面内位相差Reは、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。
【0069】
また、前記第1偏光子と前記第2偏光子との間の媒体が面内位相差を有する場合であっても、その屈折率が最大となる方向、すなわち遅相軸方向が、第1偏光子の吸収軸と平行または垂直であることが好ましい。ここで、平行または垂直とは、厳密に平行または垂直であることを必要とせず、0°±5°、あるいは90°±5°の範囲も含まれる。角度範囲は、好ましくは0±3°、あるいは90°±3°であり、より好ましくは、0°±1°、あるいは、90°±1°である。前記第1偏光子と前記第2偏光子との間の媒体が面内位相差を実質的に有さない場合でも、正面視での偏光状態の変化を最小限とする観点から、媒体の遅相軸方向と、第1偏光子の吸収軸のなす角は前記範囲であることが好ましい。
【0070】
さらに、斜め方向においても、所望の視角制御効果を得るという観点からは、第1偏光子と第2偏光子の間の媒体の厚み方向位相差Rthは小さいことが好ましい。具体的には、厚み方向位相差Rthは60nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。
【0071】
ここで、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth、及び後述するNZは、前記媒体の面内の遅相軸方向の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、フィルムの厚みをdとした場合に、以下の式で定義される。
Re=(nx−ny)d
Rth=(nx−nz)d
NZ=Rth/Re
=(nx−nz)/(nx−ny)
【0072】
第1偏光子と第2偏光子との間の媒体の遅相軸方向が、第1偏光子の吸収軸と平行または垂直であることが好ましいことは前述の通りであるが、特に斜め視野角での位相差の影響を考慮すると、視認方向の変化に伴う第1偏光子と第2偏光子との間の媒体の見かけ上の遅相軸の変化方向が、第1偏光子の見かけ上の吸収軸の変化方向と一致していることが好ましい。両者の変化方向が一致していることによって、媒体の位相差による視角制御への影響が小さくなるためである。第1偏光子と第2偏光子との間の媒体の遅相軸の変化方向は、媒体のNZによって決定される。通常のO型偏光子の場合、視認方向の変化に伴う見かけ上の吸収軸の変化はNZ=1の位相差フィルムの見かけ上の遅相軸の変化と同様である。かかる観点から、第1偏光子と第2偏光子との間の媒体のNZは1に近いことが好ましい。
【0073】
また、第1偏光子と第2偏光子との間の媒体のNZが0.5である場合は、視認方向によらず見かけ上の遅相軸方向は変化しない。そして、媒体のNZが0.5より小さい場合は、斜め視角での見かけ上の遅相軸の変化方向は、NZ=1の場合と反対となる。従って、第1偏光子と第2偏光子との間の媒体のNZが0.5より大きい場合は、媒体の遅相軸方向は第1偏光子の吸収軸方向と平行であることが好ましく、NZが0.5より小さい場合は垂直であることが好ましい。また、NZ=0.5の場合は遅相軸の変化はほとんど生じないので平行、垂直のいずれでもよい。
【0074】
第1偏光子と第2偏光子の間の媒体としては、例えば図8に示しているように、複数のフィルムや粘着層、接着層等を含んでいてもよい。このような場合、個別のフィルム等が上記の光学特性を満たしていなくとも、これらの複数の層を合わせたものを媒体30とみなし、これが前記の光学特性を満足していればよい。典型的な例を挙げて説明すると、図8において、第1偏光子1の保護フィルム11として、Re=0nm、Rth=+100nmの特性を有するフィルム(所謂ネガティブCプレート)を用い、第2偏光子2の保護フィルム22として、Re=0nm、Rth=−100nmの特性を有するフィルム(所謂ポジティブCプレート)を用い、これらが、複屈折を有さない粘着層4及び/または接着層3で貼合されている場合が挙げられる。この場合、個々の媒体はRthの絶対値が60nmより大きく、光学等方性を有するとは言い難いが、これらを積層したものとしては、Re=0nm、Rth=0nmの光学等方媒体となるため、好適に用いることができる。
【0075】
(保護フィルム)
本発明の視角制御システムに用いる第1偏光子及び第2偏光子は、その片面または両面に適宜保護フィルムを貼合して偏光板として用いることができる。特に、ヨウ素系の偏光子や液晶材料を用いた偏光子は、二色性物質の昇華を防止したり、フィルム強度を確保する観点から、両面に保護フィルムを有していることが好ましい。
【0076】
保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。また、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることもできる。保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0077】
前述のように、第1偏光子と第2偏光子の間の媒体となる保護フィルムは、光学等方性を有するものを好適に用い得るが、かかる観点からは、セルロース系樹脂が一般に用いられる。セルロース系樹脂としては、セルロースと脂肪酸のエステルが好ましい。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカミノルタ社製の「KCシリーズ」等が挙げられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差はほぼゼロであるが、厚み方向位相差は、60nm程度を有している。
【0078】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース系フィルムは、例えば、上記セルロース系樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレス等の基材を、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材を剥離する方法;環状ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等をシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース系フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法等が挙げられる。
【0079】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース系フィルムとしては、脂肪酸による置換度を制御した脂肪酸セルロース系フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0080】
また、光学等方性を有する保護フィルムとして、特開2001−343529号公報(WO01/37007)等に記載の側鎖に置換及び/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換及び/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を含有するポリマーフィルムや、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報、特開2006−171464号公報等に記載のラクトン環構造を有するアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルム、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−131898号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報等に記載の不飽和カルボン酸アルキルエステルの構造単位及びグルタル酸無水物の構造単位を有するアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルム、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報等に記載のグルタルイミド構造を有する熱可塑性樹脂含有するフィルム等を用いることもできる。これらのフィルムは位相差が小さく、かつ、光弾性係数が小さいため、偏光板の歪みによるムラ等の不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、高湿環境下での耐久性に優れる点においても好ましい。
【0081】
また、光学等方性を有する保護フィルムとして、環状ポリオレフィン系樹脂を用いることも好ましい。環状ポリオレフィン系樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及び、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物等が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0082】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「アペル」が挙げられる。
【0083】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。保護フィルムの厚みが過度に小さいと、偏光子が高温高湿環境での耐久性に劣ったり、局所的な凹凸欠陥(クニック欠陥)が発生しやすい等の問題を生じる場合がある。
【0084】
保護フィルムは、偏光子の両面で同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。また、一方の面に2層以上の積層物を用いることもできる。
【0085】
第1偏光子や第2偏光子と保護フィルムの積層方法や、偏光子と保護フィルムを積層した偏光板同士の積層方法は特に限定されないが、作業性や、光の利用効率の観点からは、接着剤や粘着剤を用いて各層を空気間隙なく積層することが望ましい。接着剤や粘着剤を用いる場合、その種類は特に制限されず、種々のものを用い得る。その場合、接着剤または粘着剤は透明で、可視光領域に吸収を有さず、屈折率は、各層の屈折率と可及的に近いことが表面反射の抑制の観点より望ましい。かかる観点より、例えば、アクリル系粘着剤や水系接着剤等を好ましく用いうる。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。また、粘着剤に異なる屈折率の粒子を混合した、拡散粘着層を用いることもできる。
【0086】
なお本発明において、上記偏光子、保護フィルム、接着層、粘着層等の各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式等の方式により紫外線吸収能をもたせたもの等であってもよい。
【0087】
フィルムへの粘着層や接着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式でフィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを移着する方式等が挙げられる。
【0088】
粘着層や接着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層としてフィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。
【0089】
また、保護フィルムは、接着剤や粘着剤を付設する前に、接着性の向上等を目的として、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等が挙げられる。
【0090】
さらに、保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理層を設けてもよい。
【0091】
ハードコート層は偏光板表面の傷付き防止等を目的に設けられるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系等の適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式等にて形成することができる。反射防止層は偏光板表面での外光の反射防止を目的に設けられるものであり、従来に準じた反射防止膜等の形成により達成することができる。また、スティッキング防止層は隣接層(例えば拡散板等)との密着防止を目的に設けられる。
【0092】
またアンチグレア層は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に設けられるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式等の適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子等の透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。
【0093】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の表面処理層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0094】
特に、本発明の視角制御システムにおいては、図8に例示するように、第2偏光子2の第1偏光子と反対側の主面の保護フィルム21上に前記表面処理層23を設けることが好ましい。
【0095】
また、本発明の視角制御システムには、画像表示装置との貼合等を目的として、図8に示すように、第1偏光子側主面に粘着層4を設けることができる。
【0096】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等の、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0097】
さらに、図8の保護フィルム12に代えて、図9に例示するように、保護フィルムとして、位相差フィルムや、視角補償フィルム等の光学補償フィルム15を設けることもできる。また、図10に例示するように、保護フィルム12に、光学補償フィルム15を、別途粘着層4等を用いて貼り合せてもよい。特に、薄型、軽量が強く求められるモバイル用途の液晶表示装置に用いる視角制御システムにおいては、図9のように、保護フィルムとして、位相差フィルムや、視角補償フィルム等の光学補償フィルム15を設けることが好ましい。
【0098】
前記位相差フィルムとしては、高分子材料を一軸または二軸延伸処理したものや、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0099】
前記高分子材料としては、例えば、前記保護フィルムを構成する材料と同様のものを好適に用いることができる。これらの高分子材料は成型、延伸等により配向物(延伸フィルム)とすることができる。また、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等を用いることもできる。
【0100】
前記液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のもの等を挙げられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティック液晶性ポリマーやコレステリック液晶性ポリマー等が挙げられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するもの等が挙げられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したもの等の配向処理面上に液晶ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0101】
位相差フィルムは、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたもの等の使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差フィルムを積層して位相差等の光学特性を制御したもの等であっても良い。
【0102】
位相差フィルムは、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが等しい場合も含む。
【0103】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差フィルムでは、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、NZは1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差フィルム(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差フィルム(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差フィルムでは、正面位相差は150〜300nm、NZは0を超え、0.7以下を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足する用いることができる。位相差フィルムは、適用される画像表示装置の種類に応じて適宜に選択できる。液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。
【0104】
前記視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償フィルムとしては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したもの等からなる。通常の位相差フィルムは、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差フィルムには、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルム等が用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理及び/又は収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたもの等が挙げられる。
【0105】
また良視認の広い視野角を達成する点等より、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶性ポリマーの傾斜配向層からなる光学異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償フィルムが好ましく用いうる。
【0106】
なお、ここで言う「視角補償フィルム」とは、視認方向の変化に伴う画質の変化を抑制するものであり、主として複屈折現象を用いるものであり、光量を抑制する本発明の視角制御システムとは、その視角制御原理が異なる。そのため、視角補償フィルムによって本発明の視角制御システムの機能が阻害されるものではない。
【0107】
本発明の視角制御システムを表示パネルの少なくとも一方の主面に配置することで、視角が制御された画像表示装置とすることができる。表示パネルとしては特に限定されず、液晶表示装置(LCD)のような外部光源を用いた表示パネルや、EL表示装置(ELD)プラズマ表示装置(PDP)あるいは、ブラウン管(CRT)等の自発光型表示装置のいずれにも用いることができる。視角制御の観点から、LCDの場合は、液晶セルの視認側、光源側の少なくともいずれか一方の主面に本発明の視角制御システムを配置することが好ましく、自発光型表示装置の場合は、表示パネルの視認側主面に本発明の視角制御システムを配置することが好ましい。
【0108】
本発明の画像表示装置においては、前述のごとく、視角制御システムの第1偏光子の吸収軸と垂直な方向の視角が制御される。たとえば、本発明の視角制御システムの第1偏光子の吸収軸を画面の左右方向に配置することで、上下方向の視角が制御され、画面の上下方向に配置することで左右方向の視野角を制御することができる。これらの視角制御方向の選択は表示装置の用途に基づき選択される。例えば、カーナビゲーションシステム等のように、自動車のダッシュボードに配される画像表示装置の場合は、フロントウインドウへの映り込みを抑止する観点から、上下方向の視角の制限が望まれるため、第1偏光子の吸収軸が、画面の横方向(左右方向)と等しくなるように配置することが好ましい。
【0109】
また、ATMの場合は、他者からの覗き込み防止のため左右方向の視角の制限が望まれるため、第1偏光子の吸収軸が、画面の縦方向(上下方向)と等しくなるように配置することが好ましい。さらには、ATMの場合は、左右からの覗き込みだけでなく、上方に設置された隠しカメラによって情報が読み込まれる等の可能性等を想定して、上方向の視角の制限も望まれる場合がある。一方で、車椅子に乗った人のように下方向から画面を観ることとなる利用者にも利用可能とするためには、下方向からは、画像情報が読取り可能であることが望まれる。このような場合は、第2偏光子として、吸収軸がフィルム面の法線方向から傾いた視角制御システムを用いることによって、下方向の視認性は良好で、上方向の視角を制限する画像表示装置を得ることができる。
【0110】
本発明の画像表示装置においては、視角制御システムの第1偏光子が、表示パネルの表示用あるいは反射防止機能を付与するために設けられる偏光子の機能を兼ね備えるものであってもよい。このような構成とすることで、両者を別々に設けた場合と比較して、部材数が削減し、画像表示装置の厚みや重量を低減できることに加えて、コストの点でも有利である。さらには、光吸収による損失を抑制できるため、画面の明るさの点で有利であることから、重量や厚みを可及的に小さくし、かつ、消費電力の低減が求められる、モバイル用途や車載用途に好適である。
【0111】
また、本発明の画像表示装置においては、視角制御システムと表示パネルとが貼合一体化されていてもよいし、別置きで配置されてもよい。また、視角制御システムの第1偏光子のみが表示パネルに貼合一体化され、第2偏光子が別置きで配置されていてもよい。視角制御システムと表示パネルとが別置きで用いられる場合においては、視角制御システムを他の透明なフィルムや基板と貼合して用いることもできる。
【0112】
フィルムの収縮に伴うムラ等によって画像が不均一となることを抑制する観点においては、視角制御システムの第1偏光子と第2偏光子が貼合一体化されており、さらに、視角制御システムと表示パネルが貼合一体化されていることが好ましい。一方で、別置きで配置することによって、視角制御システムを着脱可能とし、必要な場合にのみ視角制御システムを用いて視角を制御するといった使用が可能となる。
【0113】
本発明の画像表示装置は、表示パネルの少なくとも一方の主面に透明板を有し、該透明板と、前記視角制御システムとが、接着層や粘着層を介して貼合一体化されたものであってもよい。また、透明板と貼合一体化された視角制御システムを、さらに表示パネルと貼合一体化したものであってもよい。
【0114】
前記透明板としては、透明なフィルムやシート等を用いることができるが、例えば、画像表示装置の前面板として、ディスプレイの保護板やタッチスクリーンを兼ねたものであってもよい。また、このような構成において、視角制御システムは前面板のどちら側の主面に貼合されていてもよいが、傷付防止等の観点からは、視角制御システムが前面板と表示パネルの間に配置されることが好ましい。
【0115】
本発明の画像表示装置のうち、自発光型でないものの一例として、液晶表示装置(LCD)の場合の実施形態について説明する。LCDの場合は、液晶セルの視認側、光源側の少なくともいずれか一方の主面に本発明の視角制御システムを配置することが好ましいことは前述の通りである。ところで液晶パネルには、TFT材料やカラーフィルター、アンチグレア層等のさまざまな異形の材料を有しており、その材料の界面で光が屈折、反射、回折、散乱されることによって表示パネル中で光の伝播方向が変化しやすい。そのため、光源側(視認側と反対側)主面に視角制御システムを配置した場合は、視認側主面に配置した場合と比較して、視角制御効果が小さくなる傾向がある。かかる観点から、より効率的に視角制御を行うためには、図11に示すように、表示パネル(液晶セル)300の視認側主面に視角制御システム100が配置されていることが好ましい。
【0116】
また、図13に示すように、表示パネル(液晶セル)300の両主面に視角制御システム100a及び100bを設けることもできる。なお、図13においては、視角制御システム100aと100bのそれぞれの第1偏光子の吸収軸方向が平行となるように図示しているが、このように両者を平行に配置することで、視角制御方向、すなわち、第1偏光子の吸収軸方向と垂直方向の視角制御特性の変化が急峻となるように制御することができる。一方で、視角制御システム100aと100bのそれぞれの第1偏光子の吸収軸方向が垂直となるように配置することで、上下左右の視野角を同時に制御することができる。
【0117】
前述の如く、視角制御システムの第1偏光子が、液晶パネルの偏光子の機能を兼ね備えるためには、視角制御システムは、図11〜13に示すように、第1偏光子側主面が液晶セル300側となるように配置されることが好ましい。
【0118】
液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じて光源等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むこと等により形成される。
【0119】
液晶セルの種類は特に限定されず、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モードや、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフイールドスイッチング(FFS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、ハイブリッド配向(HAN)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モードの液晶セル等、種々の液晶セルを用いることができる。特に、本発明の画像表示装置においては、通常縦または横方向の視角制御を目的とするため、表示用偏光子の吸収軸を画面の横方向と平行または垂直に配置することが一般的なVAモードやIPSモードの液晶セルを好適に用いることができる。
【0120】
光源としては、例えば図11に示すような、側面に配置された光源401及び導光板404を用いたサイドライト型バックライトや、図12に示すような、液晶セル300の直下に配置された光源401を備えた直下型バックライト、あるいは面状光源等を用いることができる。また、プリズムシート402や、拡散板403、反射板405等を設けたものであってもよい。プリズムシートは、その形状に基づいて上下若しくは左右のいずれかの方向に出射する光を集光することで、所定方向の輝度を向上させるものである。所定方向に光が集光されるため、他の方向の輝度は逆に低下し、結果としてその方向の視野角が狭くなるが、本発明の画像表示装置においては、プリズムシートによって輝度が減少する方向と、視角制御システムによって視角を制御する方向を略一致させることによって、主透過方向の輝度を向上させつつ、より効果的に視角制御をおこなうことができる。
【0121】
また、液晶表示装置の形成に際しては、上記の他に、反射防止膜、保護板、レンズシート、光散乱板等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0122】
さらに、本発明の液晶表示装置においては、光学補償フィルム等の部材を設けることもできる。光学補償フィルムとしては、視角制御システムに用いられるものとして前記したもの等を好適に用いることができる。
【0123】
次に、表示パネルがELDやPDPあるいはCRTのような自発光型である場合について説明する。自発光型の表示装置においては、視角制御のためには、視角制御システムが表示パネルの視認側に配置されていることが好ましい。また、視角制御システムの第1偏光子側、第2偏光子側いずれの主面が表示パネル側となるように配置されていてもよい。
【0124】
特に、電極による外光の反射が視認性を低下させるELDや、発光体が乱反射を生じるPDPの場合、円偏光板によって反射防止を行うことができるが、図14に示すように、第1偏光子側主面が自発光型表示パネル500側となるように配置し、第1偏光子1と自発光型表示パネル500の間に、直線偏光を略円偏光に変換する円偏光化手段5を設けることで、視角制御システムの第1偏光子が液晶パネルの反射防止用の偏光子の機能を兼ね備えることができる。
【0125】
ここで、略円偏光とは、完全な円偏光状態のみならず、楕円偏光も含み得るが、その楕円率は好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上である。また、円偏光化手段は、可視光のいずれかの波長で直線偏光を上記の略円偏光に変換するものであればとくに制限されないが、好ましくは、波長550nmにおいて、直線偏光を上記の略円偏光に変換するものであることが好ましい。
【0126】
前記円偏光化手段の代表的なものとしては、可視光の約1/4波長の範囲の位相差を有する位相差フィルムを、フィルム面の法線方向から見たときに、位相差フィルムの遅相軸と、第1偏光子の吸収軸とのなす角が約45°となるように配置したものが挙げられる。なお、約1/4波長、約45°とは、前述の略円偏光に変換できるものであれば特に制限されないが、位相差は1/4波長の±30nmの範囲であることが好ましく、±20nmの範囲であることがより好ましく、±10nmの範囲であることがさらに好ましい。また、角度は、45°±10°の範囲であることが好ましく、±5°の範囲であることがより好ましく、±3°の範囲であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0127】
以下に、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0128】
なお、正面位相差(Re)及び厚み方向位相差(Rth)は、以下のようにして求めた。
【0129】
自動複屈折計(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA−21ADH)を用い、測定波550nmにおける正面方向及びフィルムを遅相軸中心で40°傾けた際の位相差を測定し、これらの値から、面内屈折率が最大となる方向、それと垂直な方向、フィルムの厚さ方向それぞれの屈折率nx、ny、nzを算出した。これらの値及び厚み(d)から、正面位相差:(nx−ny)×d、厚み方向位相差:(nx−nz)×d、を求めた。
【0130】
(製造例1)
末端に重合性基を有する一官能のサーモトロピックのシアノビフェニル系ネマチック液晶モノマー100重量部に対し、垂直配向性を向上させるための添加剤として、下記の化学式で表される高分子液晶(黒金化成製、共重合比:n=35)を25重量部、溶剤として4−メチル−2−ペンタノン(MIBK)を400重量部、重合開始剤(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 イルガキュア907)を5重量部加えて、混合・溶解し、液晶組成物溶液を調製した。また、100重量部のシクロペンタノンに、波長458nmに吸収ピークを有するボリアゾ系染料を1.5重量部、波長542nmに吸収ピークを有するボリアゾ系染料を0.8重量部、波長621nmに吸収ピークを有するポリアゾ系染料を1重量部溶解させ、染料溶液を調製した。前記液晶組成物溶液と、染料溶液を、重量比4対1で混合したものを、無延伸の非晶質ポリオレフィンフイルム(オプテス社製 ゼオノアフイルム、厚み100μm)に塗布し、50℃で加熱して溶媒を蒸発させ、液晶・BR>cMマー層を形成した。これをさらに80℃で加熱して液晶モノマー層を等方状態にした後、徐冷しながら、フィルム面の法線方向に1kVの直流電界を印加した状態で300mJ/mの紫外線を照射することで液晶モノマーを重合し、完全に硬化させて、フィルム面の法線方向に吸収軸を有する偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは3μmであった。この偏光子の両面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製 Z−TAC、厚み80μm)をポリビニルアルコール系の接着剤を用いて貼合して偏光板Aを作製した。なお、このとき用いたTACフィルムの正面位相差は1nm、厚み方向位相差は3nmであった。
【0131】
【化1】

【0132】
(製造例2)
紫外線照射時に印加する直流電界の方向を、フィルム面の法線方向に対し20°傾けた以外は前記製造例1と同様にして、フィルム面の法線と垂直でも平行でもない角度に吸収軸を有する偏光子を作製し、製造例1と同様に偏光子の両面にTACフィルムを貼合して偏光板Bを作製した。
【0133】
(実施例1)
(視角制御システムの作成)
製造例1で作製した偏光板Aの一方主面に、フィルム面内に吸収軸を有するヨウ素系の偏光板(日東電工社製SIG1463DU、以下、「偏光板C」とする)を、アクリル系の粘着剤を用いて貼合し、視角制御システムDを作製した。
【0134】
(画像表示装置の作製)
視認側偏光板と光源側偏光板がクロスニコルに配置されており、光源側偏光板が二軸性(nx>ny>nz)の位相差フィルムを備え、視認側の偏光板が光学補償フィルムを備えていないVAモードの液晶表示装置(シャープ製AQUOS)の視認側偏光板を剥離し、かかる視認側の偏光板に代えて、上記視角制御システムDを、偏光板Cが液晶セル側となるように、アクリル系粘着剤を介して貼り合わせて、画像表示装置を得た。なお、視角制御システムDの貼り合わせに際しては、偏光板Cの吸収軸の方向を、剥離前の偏光板の吸収軸方向と一致させた。
【0135】
(実施例2)
(視角制御システムの作成)
製造例2で作製した偏光板Bの一方主面に、偏光板Cを、偏光板Bの主面の法線と吸収軸を包含する面と偏光板Cの吸収軸のなす角が90°となるように、アクリル系の粘着剤を用いて貼合し、視角制御システムEを作成した。
【0136】
(画像表示装置の作製)
視角制御システムDに代えて視角制御システムEを用いた以外は、実施例1と同様にして、画像表示装置を得た。なお、視角制御システムEの貼り合わせに際しては、上記製造例2における電界方向(すなわち、偏光板Bの吸収軸方向)が、視認側の画面下方向となるように配置した。
【0137】
(比較例1)
(画像表示装置の作製)
視角制御システムDに代えて偏光板Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、画像表示装置を得た。
【0138】
(評価試験)
実施例及び比較例で得られた画像表示装置を白表示状態にしたときの、視角特性(輝度の視角依存性)を、コノスコープを用いて評価した。結果を図15に示す。図15の(a)〜(c)それぞれにおいては、太線で表されている一番外側の曲線が、輝度50cd/mの等輝度曲線を表している。
【0139】
この輝度50cd/mの等輝度曲線で実施例及び比較例の視角制御を評価すると、図15の(c)の比較例1では、輝度50cd/mとなる範囲は、上下(90°−270°)方向、左右(0°−180°)方向のいずれにおいても75°であった。換言すると、比較例1のように視角制御を行っていない偏光板を用いた場合、あらゆる方向で画面の情報を目視することができ、他者からの覗き込まれる危険性が高い。
【0140】
これに対して、図15の(a)の実施例1においては、輝度50cd/mとなる範囲は、左右方向では前記比較例1と同様に75°であるのに対し、上下方向では45°であった。すなわち、左右方向の光は制限されないのに対し、上下方向の光は出射角度が制限され、視角制御がなされていることがわかる。また、図15の(b)の実施例2においては、輝度50cd/mとなる範囲は左右方向では比較例1及び実施例1と略同様の70°であるのに対し、上方向25°、下方で65°と、上下方向に非対称な出射特性が実現されていた。このように、吸収軸を傾斜させた偏光子を用いることによって、上方向への光の出射を制限できることがわかる。
【0141】
また、最大輝度は、比較例1では正面方向で515cd/m、実施例1では正面方向で450cd/m、実施例2では下側25°方向で385cd/mであり、本発明の視角制御システムによって視角制御をおこなった場合でも、視角を保つべき方向の白輝度の減少は小さく、画面の視認性を保持することが可能である。
【0142】
以上のように、本発明の視角制御システムによって、輝度が小さい不可視の領域に指向性を持たせることができ、視角制御が達成されることがわかる。なお、実施例に用いたVA液晶パネルは、視角制御を行わない状態では、比較例1に示すように上下方向及び左右の視野角はほぼ等しく90°ごとの回転対称である。従って、表示装置の方向を90°回転させることによって、上記実施例と同様に左右方向の視角制御も達成可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 第1偏光子
1a 吸収軸
2 第2偏光子
2a 吸収軸
3 接着層
4 粘着層
5 円偏光化手段
11 保護フィルム
12 保護フィルム
14 粘着層
15 光学補償フィルム
21 保護フィルム
22 保護フィルム
23 表面処理層
30 媒体
100 視角制御システム
100a 視角制御システム
100b 視角制御システム
200 ライトコントロールフィルムの構造単位
201 透光層
202 ルーバー
203 保護層
300 液晶セル
301 偏光板
400 バックライトシステム
401 光源
402 プリズムシート
403 拡散板
404 導光板
405 反射板
500 自発光型表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向が固定された吸収二色性物質を含有するフィルム状の、第1偏光子及び第2偏光子を有し、
第1偏光子は、吸収軸をフィルム面内に有し、
第2偏光子は、吸収軸がフィルム面の法線方向から傾いており、当該吸収軸とフィルム面の法線とのなす角が0°〜45°であり、かつ、第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する面と、前記第1偏光子の吸収軸のなす角が略垂直である視角制御システム。
【請求項2】
前記第2偏光子のフィルム面の法線と吸収軸とを包含する平面と、前記第1偏光子の吸収軸とのなす角が、90°±5°である請求項1記載の視角制御システム。
【請求項3】
前記第1偏光子と、前記第2偏光子との間に媒体を有し、該媒体が前記第2偏光子のフィルム面の法線方向の光の偏光状態を実質的に変換しないものである請求項1または2記載の視角制御システム。
【請求項4】
前記第1偏光子と前記第2偏光子との間の媒体の面内位相差が40nm以下である請求項3記載の視角制御システム。
【請求項5】
前記第1偏光子と前記第2偏光子との間の媒体の遅相軸が、前記第1偏光子の吸収軸と平行または垂直である請求項3または4記載の視角制御システム。
【請求項6】
前記第1偏光子と前記第2偏光子との間の媒体の厚み方向位相差が60nm以下である請求項1〜5のいずれか記載の視角制御システム。
【請求項7】
前記第1偏光子と、前記第2偏光子とが、粘着層及び/または接着層を介して貼合一体化されている請求項1〜6のいずれか記載の視角制御システム。
【請求項8】
前記第1偏光子側主面または前記第2偏光子側主面の少なくとも一方に粘着層を有する請求項1〜7のいずれか記載の視角制御システム。
【請求項9】
表示パネルの少なくとも一方の主面に、請求項1〜8のいずれか記載の視角制御システムが配置されている画像表示装置。
【請求項10】
前記視角制御システムの第1偏光子側主面が、前記表示パネル側となるように配置されている請求項9記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記表示パネルと前記視角制御システムが、粘着層及び/または接着層を介して貼合一体化されている請求項9または10記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記表示パネルの少なくとも一方の主面に透明板を有し、該透明板と、前記視角制御システムとが、前記第2偏光子主面側が前記表示パネル側となるように接着層及び/または粘着層を介して貼合一体化されて配置されている請求項9〜11のいずれか記載の画像表示装置。
【請求項13】
表示装置の視角制限方向が、第1偏光子の吸収軸方向と垂直である請求項9〜12のいずれか記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記表示パネルが液晶セルの少なくとも一方主面に偏光子を有する液晶パネルであり、該偏光子が前記視角制御システムの第1偏光子を兼ねる請求項9〜13のいずれか記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記表示パネルが液晶セルの少なくとも一方主面に偏光子を有する液晶パネルであり、該液晶パネルの一方の側に光源を有し、かつ光源と液晶パネルとの間に、出射する光をいずれか一方向に集光するプリズムシートを有し、第1偏光子の吸収軸方向と垂直である視角制限方向と、プリズムシートの集光によって輝度が減少する方向とが略平行である、請求項13または14に記載の表示装置。
【請求項16】
表示パネルの両主面に、請求項1〜8のいずれか記載の視角制御システムが配置されており、表示パネルの一方主面側の視覚制御システムの第1の偏光子の吸収軸方向と、表示パネルの他方の主面側の視覚制御システムの第1の偏光子の吸収軸方向とが略平行または略垂直である、請求項9〜15のいずれか記載の画像表示装置。
【請求項17】
前記表示パネルが自発光型の表示装置であり、表示パネルの視認側に前記視角制御システムが配置されている請求項9〜13のいずれか記載の画像表示装置。
【請求項18】
前記視角制御システムの第1偏光子と表示パネルとの間に、直線偏光を略円偏光に変換する円偏光化手段を有する請求項17記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−103719(P2012−103719A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289632(P2011−289632)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2007−325050(P2007−325050)の分割
【原出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】