説明

視野角制御が可能なタッチパネル、タッチパネル式ディスプレイ装置、及びその製造方法

【課題】構成部品点数や、接着層の数や、製造工程を減らして、低い製造コストで製造可能な、光の透過性に優れた薄型の視野角制御が可能なタッチパネル及びこのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置を提供し、更に、この視野角制御可能なタッチパネル及びそのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】片側の面に電極14a、bが設けられた2枚の板状部材10、12が、電極14a、bどうしが所定の間隔で互いに対向するように配置されたタッチパネル層4と、2枚の板状部材12(10)、18の間に、複数のルーバー部材20が所定の角度で取り付けられた視野角制御層6と、を備え、タッチパネル層4を構成する2枚の板状部材10、12のうちの一方の板状部材12(10)が、視野角制御層6を構成する2枚の板状部材のうちの一方の板状部材として用いられるタッチパネル2及びそのタッチパネル2を備えたタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置の表示面側に配置して用いる入力装置であって、人の指や専用のペン等で接触することによって入力可能なタッチパネル、特に、ディスプレイ装置に表示された画像の視野角制御が可能なタッチパネルに関し、更に、この視野角制御が可能なタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置に関する。また、これらの視野角制御が可能なタッチパネル及びタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の表示面側に配置して用いる入力装置であって、人の指や専用のペン等を接触することによって入力するタッチパネルが広く用いられている。また、このようなタッチパネルを備えたディスプレイ装置では、例えば、銀行のATMで用いる場合のように、表示された機密情報が、タッチパネルの操作者以外の者に見られるのを防ぐため、表示された画像の視野角を制御する機能を要する場合がある。
【0003】
これに対処するため、複数のルーバーが備えられた市販の視野角制御フィルムを、ディスプレイ装置とタッチパネルとの間、またはタッチパネルの表示面側に配置することが考えられる。この場合、ディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルムどうしを事後的に接合しようとすると、各部材の表示面が接合面となるので、表示面に歪や汚れが生じ、鮮明な画像を得ることが困難となる。よって、通常、ディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルムを、それぞれ一定の間隔をあけて配置する必要がある。
従って、ディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルムの間に空気層が存在するので、多数の光学界面(例えば、図2に示す従来例では矢印A〜Eで示す5つの界面が存在する)が生じるので、光の透過率が低下して、表示する画像のコントラストが低下する問題が生じる。
そこで、これに対処するため、ディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルムの間に空気層が存在しないように、各部材を互いに接着した視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−196027号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置では、タッチパネルの背面側の面(表示側と反対の面)と視野角制御フィルムの表示側の面とが接着剤で接着され、この視野角フィルムの背面側の面とディスプレイ装置の表示面とが接着剤で接着されて、視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置が構成されている。
よって、特許文献1に記載された視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置を製造する場合には、まず、各々独立した製品であるディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルムを製造し、その後、接触面に空気層(気泡)が生じないように注意しながら、これらの製品どうしを接着する作業が必要である。
【0005】
従って、特許文献1に記載のタッチパネル式ディスプレイ装置では、構成部品の点数が増加し、接着作業を始めとする製造における作業工程も増加するので、装置の製造コストが増加する恐れがある。また、個別の製品であるディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルムを重ね合わせることになるので、装置全体の厚みが増すことになる。特に、タッチパネルは、その剛性を高めるために、比較的厚みのある支持層を要するので、装置全体の厚みが増加する。更に、ディスプレイ装置、タッチパネル、及び視野角制御フィルム等を接着するため接着層が増えるので、空気層程ではないが、光の透過率が低下して、表示する画像の明るさやコントラストが低下する傾向を示す。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決して、構成部品点数や、接着層の数や、製造工程を減らして、低い製造コストで製造可能な、光の透過性に優れた薄型の視野角制御が可能なタッチパネル、及びこのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置を提供し、更に、この視野角制御可能なタッチパネル及びそのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に係るタッチパネルの実施態様は、片側の面に電極が設けられた2枚の板状部材が、前記電極どうしが所定の間隔で互いに対向するように配置されたタッチパネル層と、2枚の板状部材の間に、複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられた視野角制御層と、を備え、前記タッチパネル層を構成する前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材が、前記視野角制御層を構成する前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材として用いられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係るタッチパネルの実施態様は、片側の面に電極が設けられた2枚の板状部材を含み、前記電極どうしが所定の間隔で互いに対向するように配置されたタッチパネル層と、前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材と、前記2枚の板状部材と異なる他の板状部材と、複数のルーバー部材とを含み、該一方の板状部材の前記電極が設けられていない面と、該他の板状部材の片側の面との間に、該複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられた視野角制御層と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記の請求項1及び請求項2に係るタッチパネルの実施態様では、片側の面に電極が設けられた2枚の板状部材が、電極どうしが所定の間隔で互いに対向するように配置されたタッチパネル層を有する。このタッチパネル層において、一方の電極に所定の電圧を印加しておくことにより、タッチパネル層を、所謂抵抗膜方式のタッチパネルとして機能させることができる。つまり、人の指や専用のペン等を板状部材に接触させない状態では、電極と電極との間の間隔が保たれるので、電極間で電流は流れない。一方、人の指や専用のペン等により、一方の板状部材を押圧する場合には、この板状部材が撓んで、電極どうしが接触して電流が流れる。このときの電極の抵抗による分圧比を測定することによって、押圧された位置を検出することができる。
【0010】
また、複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられた視野角制御層は、タッチパネル層に対して、背面側(表示面側の反対側)に配置される場合も、表示面側に配置される場合も含まれる。更に、ルーバー部材の取り付け角度は、板状部材の面に対して垂直となる場合を含め、任意の角度で取り付けることができる。
上記の実施態様では、タッチパネル層と視野角制御層とが一体的に構成されており、タッチパネル層と視野角制御層との間に空気層が存在しないので、光学界面の増加による光の透過率の低下及び表示する画像のコントラストの低下を防ぐことができる。
【0011】
また、タッチパネル層を構成する板状部材が、視野角制御層を構成する板状部材としても用いられているので、従来のタッチパネルと視野角制御フィルムとを接着して構成する場合に比べて、構成部品点数を減らすことができ、タッチパネルと視野角制御フィルムとの接着作業も不要になる。
また、タッチパネルを押圧する力に対する十分な強度を与え、電極が設けられた2つの板状部材を貼り合わせる作業をスムーズに実施するために、従来、2つの板状部材の少なくとも一方に厚みのある支持層を接着する必要があったが、本実施態様においては、板状部材と複数のルーバー部材から構成される視野角制御層が所定の厚みを有するので、代わりにこの支持層の機能を果たすことができる。よって、本実施態様においては、厚みのある支持層を設ける必要がない。
【0012】
以上のように、請求項1及び請求項2に係るタッチパネルの実施態様では、タッチパネル層を構成する板状部材を視野角制御層を構成する板状部材として用いることができ、また、視野角制御層を、従来のタッチパネルに備えられていた支持層の代わりに用いることができるので、従来に比べて構成部品点数を減らすことができ、また、それに関連する接着作業も不要になるので、低い製造コストで一体的な視野角制御が可能なタッチパネルを提供することができる。また、従来に比べて、タッチパネル部分や視野角制御部分を構成する部材を減らすことができ、特に厚みのある支持層を無くすことができるので、視野角制御が可能なタッチパネル全体の厚みを薄くすることができる。更に、光が透過する部材の数及び接着層の数が減るので、光の透過率の低下を防いで、高いコントラストの画像表示を実現できる。
【0013】
本発明の請求項3に係るタッチパネルの実施態様は、前記視野角制御層が前記タッチパネル層に対して表示面側に配置される場合において、前記視野角制御層の表示面側の外面に保護コーティング層を有することを特徴とする。
【0014】
本実施態様では、保護コーティング層により、視野角制御層の表示面側の外面を保護して、長期間に渡り鮮明な画像表示を実現することができる。
【0015】
本発明の請求項4に係るタッチパネル式ディスプレイ装置の実施態様は、請求項1から3の何れかに記載のタッチパネルと、ディスプレイ装置とを備え、前記タッチパネルの背面側の外面と前記ディスプレイ装置の表示面とが密着していることを特徴とする。
【0016】
ここで、本実施態様に適用可能なディスプレイ装置としては、電子ペーパー式ディスプレイ装置、液晶式ディスプレイ装置、プラズマ式ディスプレイ装置、フィールドエミッションディスプレイ装置を始めとする任意のディスプレイ装置を用いることができる。
本実施態様では、上記のように、視野角制御が可能なタッチパネルの構成部品点数や、接着層の数や、製造工程を減らすことができるので、光の透過性に優れた薄型の視野角制御が可能なタッチタッチパネル式ディスプレイ装置を実現できる。
【0017】
本発明の請求項5に係るタッチパネル式ディスプレイ装置の実施態様は、前記ディスプレイ装置が、反射型または透過型の装置であることを特徴とする。
【0018】
本実施態様では、反射型及び透過型を含む任意のタイプのディスプレイ装置を用いることができる。なお、本実施態様の反射型には、半透過型も含まれる。
【0019】
本発明の請求項6に係るタッチパネルの製造方法の実施態様は、2枚の板状部材を準備して、各々の前記板状部材の片側の面に電極を形成する電極形成工程と、前記電極形成工程の後、前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材の前記電極が形成されていない面と、前記2枚の板状部材と異なる他の板状部材の片側の面との間に、複数のルーバー部材を所定の角度で取り付けて視野角制御層を形成する視野角制御層形成工程と、前記視野角制御層形成工程の後、前記視野角制御層が形成された前記板状部材の前記電極が形成された面と、前記視野角制御層が形成されていない前記板状部材の前記電極が形成された面との間に、所定の厚みのスペーサを挿入し、該2つの面に接着してタッチパネル層を形成するタッチパネル層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
ここで、視野角制御層形成工程において、視野角制御層を形成することにより、タッチパネル層を構成する板状部材の剛性を高めることができる。これによって、タッチパネル層形成工程において、電極どうしが所定の間隔で対向するように、スペーサを介して2枚の板状部材を貼り合わせる作業をスムーズに行なうことができる。
また、視野角制御層形成工程において、始めに、ルーバー部材を電極が形成された板状部材に取り付け、その後、この板状部材に取り付けられたルーバー部材に他の板状部材を取り付けることもできるし、始めに、ルーバー部材を、他の板状部材に取り付け、その後、この他の板状部材に取り付けられたルーバー部材に電極が形成された板状部材を取り付けることもできる。
【0021】
本実施態様では、板状部材にルーバー部材を取り付ける前に、従来のタッチパネルを製造する場合と同様に、2枚の板状部材に電極を形成する電極形成工程を行なうので、従来の電極形成装置及び治具をそのまま用いることができる。従って、新たな製造設備、治具を要せず、低い製造コストで、視野角制御が可能なタッチパネルを製造することができる。
【0022】
本発明の請求項7に係るタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法の実施態様は、ディスプレイ装置の表示面と、請求項7に記載の製造方法で製造された前記タッチパネルの背面側の外面とを接着する工程を含むことを特徴とする。
【0023】
本実施態様では、ディスプレイ装置の表示面と、上記の製造方法で製造されたタッチパネルの背面側の面(表示面側と反対側の面)とを接着することによって、低い製造コストで、視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、従来に比べて構成部品点数や、接着層の数や、製造工程を減らして、低い製造コストで製造可能な、光の透過性に優れた薄型の視野角制御が可能なタッチパネル及びこのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置を提供することができる。更に、本発明に係る製造方法よれば、この視野角制御可能なタッチパネル及びそのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置を、従来の電極形成設備及び治具を用いて、低い製造コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る視野角制御が可能なタッチパネル及びこのタッチパネルを備えたタッチパネル式ディスプレイ装置の実施形態、及び本発明に係るタッチパネル及びタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法の実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0026】
(本発明に係るタッチパネル及びタッチパネル式ディスプレイ装置の実施形態の説明)
始めに、図1を用いて、本発明に係るタッチパネル及びタッチパネル式ディスプレイ装置の1つ実施形態の構造を説明する。ここで、図1は、本発明に係るタッチパネル及びタッチパネル式ディスプレイ装置の構造を模式的に示す断面図であり、図面の上側を表示面側とし、図面の下側を背面側とする。
【0027】
図1では、視野角制御が可能なタッチパネル2の背面側に、ディスプレイ装置30が配置された視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置1が示されている。このタッチパネル2は、スイッチ機能を果たすタッチパネル層4と、視野角制御機能を果たす視野角制御層6とから構成される。タッチパネル層4及び視野角制御層6は、ディスプレイ装置30の表示面に対応する面の構成部材が透光性を有する材料からなり、ディスプレイ装置に表示された画像を、表示面側から視認できるようになっている。なお、本実施形態では、透光性を有する材料の1つとして、透明な材料(例えば、透明フィルム、透明電極)を用いているが、これに限られるものではなく、任意の色の透光性を有する材料を用いることができる。
【0028】
また、タッチパネル2の平面形状は、ディスプレイ装置30の表示面に対応した形状を有しており、本実施形態では矩形の平面形状を有している。ディスプレイ装置30としては、電子ペーパー式ディスプレイ装置、液晶式ディスプレイ装置、プラズマ式ディスプレイ装置、フィールドエミッションディスプレイ装置を始めとする任意のディスプレイ装置を用いることができる。
【0029】
ここで、図1(a)には、視野角制御層6が、タッチパネル層4の背面側に配置されたタッチパネル2を有する第1の実施形態を示し、図1(b)には、視野角制御層6が、タッチパネル層4の表示面側に配置されたタッチパネル2を有する第2の実施形態を示す。
【0030】
(図1(a)に示す第1の実施形態の構造の説明)
始めに、図1(a)に示す視野角制御層6がタッチパネル層4の背面側に配置された第1の実施形態の説明を行なう。
【0031】
<タッチパネル層4の説明>
タッチパネル層4の構造を説明すると、タッチパネル層4は、透明電極14aが設けられた透明フィルム(板状部材)10と、透明電極14bが設けられた透明フィルム(板状部材)12と、スペーサ16とによって主に構成される。
更に詳細に述べれば、樹脂材料からなる透明フィルム10の片側の面に、透明電極14aが設けられ、樹脂材料からなる透明フィルム12の片側の面にも、透明電極14bが設けられている。そして、透明フィルム10に設けられた透明電極14aと、透明フィルム12に設けられた透明電極14bとが互いに対向するように、透明フィルム10及び透明フィルム12が配置されている。また、透明フィルム10及び透明フィルム12の外周部分には、透明フィルム10と透明フィルム12との間に挿入される形でスペーサ16が取り付けられている。このスペーサ16によって、透明電極14aと透明電極14bとが、所定の間隔をあけて対向するように配置されている。なお、スペーサ16は、透光性を有する材料で構成することできるし、ディスプレイ装置30の表示領域から外れている場合には、透光性を有さない材料で構成することもできる。
【0032】
ここで、透明フィルム10、透明フィルム12、及びスペーサ16の材料としては、ポリエチレンテフタレート(PET)系樹脂、ポリカーボネイト(PC)系樹脂、ポリブチレンテフタレート(PBT)系樹脂、ナイロン系樹脂、プロポリプレン(PP)系樹脂、フッ素(PFA/FEP)系樹脂、ポリオリフィン系樹脂を始めとするあらゆる樹脂を用いることができ、これらの樹脂の混合物を用いることもできる。なお、スペーサ16としては、予め両面に接着層が設けられた両面テープを用いることもできる。
また、透明電極の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)を例示することができるが、これに限られるものではない。
【0033】
以上のような構成のタッチパネル層4は、所謂抵抗膜方式のタッチパネルとして機能することができる。更に詳細に述べれば、透明電極14a及び透明電極14bのどちらか一方に所定の電圧をかけておく。そして、表示面側の透明フィルム10に触れない状態では、スペーサ16によって透明電極14aと透明電極14bとは所定の間隔があいているので、電極間で電流は流れない。また、人の指や専用のペン等により表示面側から透明フィルム10を押圧すると、透明フィルム10が背面側に撓んで、透明電極14aと透明電極14bとが接触して電流が流れる。このときの、透明電極14a及び透明電極14bの抵抗による分圧比を測定することによって、押圧された位置を検出することができる。
【0034】
<視野角制御層6の説明>
次に、視野角制御層6の説明を行なうと、視野角制御層6は、透明フィルム12と、透明フィルム10、12と異なる他の透明フィルム18と、複数のルーバー部材が取り付けられたルーバー層20とから主に構成される。
更に詳細に述べれば、透明フィルム12の透明電極14bが設けられていない背面側の面と、透明フィルム18の表示側の面との間に、複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられたルーバー層20が挿入された構造を有する。つまり、タッチパネル層4を構成する透明フィルム12は、視野角制御層6を構成する透明フィルムとしても用いられている。
【0035】
<タッチパネル2の説明>
従って、第1の実施形態のタッチパネル2は、透明フィルム12を共有する形で、タッチパネル層4と視野角制御層6が一体的に構成されている。また、後述するように、従来のタッチパネルでは、タッチパネルを押圧する力に対する十分な強度を与え、スペーサを介して電極が設けられた2枚の透明フィルムを貼り合わせる作業をスムーズに実施するため、2枚の透明フィルムの少なくとも一方を支持するための支持層を備える必要があるが、本実施形態では、所定の厚みを有する視野角制御層6が、この支持層の機能を果たすことができるので、従来のタッチパネルが要する支持層を備える必要がない。
【0036】
なお、図1においては、ルーバー部材が、表示面に対して垂直の方向に配向した視野角制御層6を示しているが、これに限られるものではなく、表示面に対して斜めの方向に配向した視野角制御層6も本発明に含まれる。
また、この第1の実施形態のタッチパネル2では、タッチパネル層4が表示面側に配置されているので、タッチパネル層4の表示面側の外面に保護コーティング層を施すことによって(図1(a)の矢印X参照)、指や専用のペン等により表面を押圧した場合においても、表面が傷つくのを防いで、長期間に渡り鮮明な画像表示を実現することができる。
【0037】
<タッチパネル式ディスプレイ装置1の説明>
以上のようにタッチパネル層4と視野角制御層6とが一体的に構成された第1の実施形態のタッチパネル2の背面側に、所定の間隔をあけてディスプレイ装置30が配置され、これによって、視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置1が構成されている。
なお、第1の実施形態では、タッチパネル2とディスプレイ装置30との間に空気層が存在するようになっているが、タッチパネル2の背面側の面(図1(a)の透明フィルム18参照)と、ディスプレイ装置30の表示面とを接着して、タッチパネル2とディスプレイ装置30とが一体的に構成されたタッチパネル式ディスプレイ装置1を得ることもできる(例えば、図3(d)参照)。
【0038】
(従来例と比較した第1の実施形態の説明)
次に、図2(a)に示す従来の視野角制御が可能なディスプレイ装置と比較しながら、図1(a)に示す第1の実施形態の特徴を説明する。
【0039】
<従来例の説明>
図2は、従来のタッチパネル及びタッチパネル式ディスプレイ装置の1つの実施例の構造を模式的に示す断面図であり、図面の上側を表示面側とし、図面の下側を背面側とする。
図2には、タッチパネル104と、視野角制御フィルム106と、ディスプレイ装置130とから構成されるタッチパネル式ディスプレイ装置101が示されている。そして、図2(a)には、タッチパネル104の背面側に、視野角制御フィルム106が所定の間隔をあけて配置され、この視野角制御フィルム106の背面側に、ディスプレイ装置130が所定の間隔をあけて配置された従来例を示す。つまり、図1(a)に示す第1の実施形態に対応する機器配置になっている。なお、後述するように、図2(b)には、図1(b)に示す第2の実施形態に対応する機器配置の従来例が示されている。
【0040】
図2(a)に示すタッチパネル104の構造を説明すると、タッチパネル104は、透明電極114aが設けられた透明フィルム110と、透明電極114bが設けられた透明フィルム112と、スペーサ116と、支持層122とによって主に構成される。
更に詳細に述べれば、樹脂材料からなる透明フィルム110の片側の面に、透明電極114aが設けられ、樹脂材料からなる透明フィルム112の片側の面にも、透明電極114bが設けられている。そして、スペーサ116によって、透明フィルム110に設けられた透明電極114aと、透明フィルム112に設けられた透明電極114bとが、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置されている。更に、タッチパネル104を押圧する力に対する十分な強度を与え、スペーサ116を介して電極114a、bが設けられた2枚の透明フィルム110、112を貼り合わせる作業をスムーズに実施するため、2枚の透明フィルム110、112の他に所定の厚みを有する支持層122が、透明フィルム112の背面側の面に接着されている。
【0041】
次に、図2(a)に示す視野角制御フィルム106の説明を行なうと、視野角制御フィルム6は、透明フィルム124と、透明フィルム118と、複数のルーバー部材が取り付けられたルーバー層120とから主に構成される。
更に詳細に述べれば、透明フィルム124の背面側の面と、透明フィルム118の表示側の面との間に、複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられたルーバー層120が挿入された構造を有する。
【0042】
以上のように、タッチパネル104と視野角制御フィルム106とは個別の部材であって、タッチパネル104と視野角制御フィルム106との間には、空気層が存在する。また、同様に、視野角制御フィルム106とディスプレイ装置130との間にも空気層が存在する。
【0043】
<第1の実施形態と従来例との比較>
次に、図1(a)に示す本第1の実施形態と、図2(a)に示す従来例を比較すると、図1(a)に示す第1の実施形態では、以下のような特徴がある。
上記のように、第1の実施形態では、透明フィルム12を共有する形で、タッチパネル層4と視野角制御層6とが一体的に構成されている。更に、第1の実施形態では、所定の厚みを有する視野角制御層6が、従来のタッチパネルに存在する支持層(図2(a)の支持層122参照)の機能を果たすので、この厚みのある支持層を備える必要がない。
従って、図1(a)に示す第1の実施形態では、図2(a)に示す従来例の透明フィルム112及び透明フィルム124の一方の透明フィルム、及び支持層122を有さない構成になっており、構成部品点数が減り、またそれに関連した接着作業も減るので、製造コストを低減することができる。また、第1の実施形態では、従来例に比べて、構成部材が減るので、視野角制御層を備えたタッチパネル2の厚みを減じることができ、特に、厚みのある支持層122を削減できるので、全体の厚みを大幅に削減することができる。
【0044】
また、第1の実施形態においては、透過型のディスプレイ装置30に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、ディスプレイ装置30から出射し、タッチパネル2を透過した後、人の目に入る。よって、図1(a)の矢印A〜Cに示すように、A:透明フィルム10と空気層の間、B:透明フィルム18と空気層の間、C:ディスプレイ装置30の表示面と空気層の間の、3つの光学界面を有する。
一方、従来例においては、透過型のディスプレイ装置130に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、ディスプレイ装置130から出射し、視野角制御フィルム106及びタッチパネル104を透過した後、人の目に入る。よって、図2(a)の矢印A〜Eに示すように、A:透明フィルム110と空気層の間、B:支持層122と空気層の間、C:透明フィルム124と空気層の間、D:透明フィルム118と空気層の間、E:ディスプレイ装置130の表示面と空気層の間の、5つの光学界面を有する。
【0045】
従って、従来例では、より多くの光学界面を有するので、ディスプレイ装置130から出射された光が人の目に入るのまでの間の光の透過率が低下し、表示される画像のコントラストが低下する問題が生じる。それに比べて、第1の実施形態では、光学界面を5から3に減少できるので、ディスプレイ装置30から出射された光が人の面に入るまでの間の光の透過率を上げ、表示される画像のコントラストを改善することができる。
【0046】
また、反射型のディスプレイ装置を用いる場合を考えると、第1の実施形態では、反射型のディスプレイ装置30に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、タッチパネル2を透過した後、ディスプレイ装置30に入射し、ディスプレイ装置30内の画像表示領域で反射して、ディスプレイ装置30から出射し、再びタッチパネル2を透過した後、人の目に入る。従って、基本的に、光学界面の数は透過型に比べて2倍になり、6つの光学界面を有する。
一方、従来例においては、反射型のディスプレイ装置130に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、タッチパネル104及び視野角制御フィルム106を透過した後、ディスプレイ装置130に入射し、ディスプレイ装置130内の画像表示領域で反射して、ディスプレイ装置130から出射し、再び視野角制御フィルム106及びタッチパネル104を透過した後、人の目に入る。従って、基本的に、光学界面の数は透過型に比べて2倍になり、10個の光学界面を有する。
【0047】
つまり、反射型のディスプレイ装置を用いる場合には、透過型のディスプレイ装置の場合に比べて、第1の実施形態と従来例との間の光学界面の数の差が大きくなる。従って、透過型のディスプレイ装置を用いた場合に比べ、従来例に対して、更に大きな光の透過率の向上、及びコントラストの改善を実現できる。
【0048】
なお、上記の特許文献1に示すように、従来例であっても、タッチパネル104と視野角制御フィルム106とを接着して一体化すること(例えば、図4(d)参照)は可能である。しかし、図1(a)に示す第1の実施形態において透明フィルム12だけが存在する部分に、従来例では、透明フィルム112、支持層122、及び透明フィルム124が存在し、更に、増加した部材を接着するための接着層も存在する。従って、従来例では、第1の実施形態に比べて、光の透過率が低くなり、表示する画像のコントラストも低下する。また、タッチパネル102と視野角制御フィルム106とを接着する作業が必要になるので、第1の実施形態に比べて、製造コストも上昇する。また、上記のように、装置全体の厚みも増す。
従って、本発明に係る第1の実施形態は、従来のタッチパネル104、視野角制御フィルム106、及びディスプレイ装置130を接着して一体化した場合に比べて、光の透過率が高く、高いコントラストで画像表示が可能であり、全体の厚みも薄く、製造コストも低減できる
【0049】
(図1(b)に示す第2の実施形態の説明)
次に、図1(b)に示す視野角制御層6がタッチパネル層4の表示面側に配置された第2の実施形態の説明を行なう。図1(a)に示す実施形態と比較すると、タッチパネル層4と視野角制御層6との配置が異なっているが、構成部材等については、基本的に同一である。
【0050】
<タッチパネル層4の説明>
タッチパネル層4の構造を説明すると、図1(a)に示す実施形態と同様に、タッチパネル層4は、透明電極14aが設けられた透明フィルム10と、透明電極14bが設けられた透明フィルム12と、スペーサ16とによって主に構成される。
更に詳細に述べれば、透明フィルム10の片側の面に、透明電極14aが設けられ、透明フィルム12の片側の面にも、透明電極14bが設けられている。そして、透明フィルム10に設けられた透明電極14aと、透明フィルム12に設けられた透明電極14bとが互いに対向するように、透明フィルム10及び透明フィルム12が配置されている。また、透明フィルム10及び透明フィルム12の外周部分には、透明フィルム10と透明フィルム12との間に挿入される形でスペーサ16が取り付けられている。このスペーサ16によって、透明電極14aと透明電極14bとが、所定の間隔をあけて対向するように配置されている。
【0051】
<視野角制御層6の説明>
次に、視野角制御層6の説明を行なうと、視野角制御層6は、表示面側の透明フィルム10と、透明フィルム10、12と異なる他の透明フィルム18と、複数のルーバー部材が取り付けられたルーバー層20とから主に構成される。
更に詳細に述べれば、透明フィルム10の透明電極14aが設けられていない表示面側の面と、透明フィルム18の背面側の面との間に、複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられたルーバー層が挿入された構造を有する。従って、タッチパネル層4を構成する透明フィルム10は、視野角制御層6を構成する透明フィルムとしても用いられている。
【0052】
<タッチパネル2の説明>
従って、第2の実施形態のタッチパネル2は、透明フィルム10を共有する形で、タッチパネル層4と視野角制御層6が一体的に構成されている。また、第2の実施形態では、図1(a)に示す第1の実施形態と同様に、所定の厚みを有する視野角制御層6が、支持層の機能を果たすことができるので、従来のタッチパネルが必要とする支持層を備える必要がない。
【0053】
第2の実施形態では、タッチパネルを操作する場合に、指や専用のペン等で、視野角制御層6及び透明フィルム10を押圧して撓ませる必要があるので、視野角制御層6は、タッチパネル2の剛性を高めると同時に、スムーズな押動操作が可能な弾性を有する必要がある。
なお、図1(b)においては、ルーバー部材が、表示面に対して垂直の方向に配向した視野角制御層6を示しているが、これに限られるものではなく、表示面に対して斜めの方向に配向した視野角制御層6も本発明に含まれる。
また、この第2の実施形態においては、視野角制御層6が表示面側に配置されているので、視野角制御層6の表示面側の外面に保護コーティング層を施すことによって(図1(b)の矢印X参照)、指や専用のペン等により表面を押圧した場合においても、表面が傷つくのを防いで、長期間に渡り鮮明な画像表示を実現することができる
【0054】
<タッチパネル式ディスプレイ装置1の説明>
図1(a)に示す第1の実施形態と同様に、図1(b)に示す第2の実施形態においても、タッチパネル層4と視野角制御層6とが一体的に構成された第2の実施形態のタッチパネル2の背面側に、所定の間隔をあけてディスプレイ装置30が配置され、これによって、視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置1が構成されている。
なお、第2の実施形態では、タッチパネル2とディスプレイ装置30との間に空気層が存在するようになっているが、タッチパネル2の背面側の面(図1(b)の透明フィルム12参照)と、ディスプレイ装置30の表示面とを接着して、タッチパネル2とディスプレイ装置30とが一体的に構成されたタッチパネル式ディスプレイ装置1を得ることもできる。
【0055】
(従来例と比較した第2の実施形態の説明)
次に、図2(b)に示す従来の視野角制御が可能なディスプレイ装置と比較しながら、図1(b)に示す第2の実施形態の特徴を説明する。
【0056】
<従来例の説明>
図2(b)には、視野角制御フィルム106の背面側に、タッチパネル104が所定の間隔をあけて配置され、このタッチパネル104の背面側に、ディスプレイ装置130が所定の間隔をあけて配置された従来例を示す。つまり、図1(b)に示す第2の実施形態に対応する機器配置になっている。また、図2(a)に示す従来例と比較すると、タッチパネル104と視野角制御フィルム106との配置が異なる以外は、同一の構成を有している。
【0057】
図2(b)に示すタッチパネル104の構造は、図2(a)に示すタッチパネル104の構造と同一であり、図2(b)に示す視野角制御フィルム106の構造は、図2(a)に示す視野角制御フィルム106の構造と同一であり、図2(b)に示すディスプレイ装置130の構造は、図2(a)に示すディスプレイ装置130の構造と同一である。また、タッチパネル104と視野角制御フィルム106とは個別の部材であって、タッチパネル104と視野角制御フィルム106との間には、空気層が存在する。また、同様に、視野角制御フィルム106とディスプレイ装置130との間にも空気層が存在する。
【0058】
<第2の実施形態と従来例との比較>
次に、図1(b)に示す第2の実施形態と、図2(b)に示す従来例を比較すると、図1(b)に示す第2の実施形態では、以下のような特徴がある。
上記のように、第2の実施形態では、透明フィルム10を共有する形で、タッチパネル層4と視野角制御層6とが一体的に構成されている。更に、第2の実施形態では、所定の厚みを有する視野角制御層6が、従来のタッチパネルの支持層(図2(b)の支持層122参照)の機能を果たすので、別途、支持層を備える必要がない。
従って、図1(b)に示す第2の実施形態では、図2(b)に示す従来例の透明フィルム110及び透明フィルム118の一方の透明フィルム、及び支持層122を有さない構成になっており、構成部品点数が減り、またそれに関連した接着作業も減るので、製造コストを低減することができる。また、構成部材が減るので、視野角制御層を備えたタッチパネル2の厚みを減じることができ、特に、厚みのある支持層122を削減できるので、厚みを大幅に削減することができる。
【0059】
また、第2の実施形態においては、透過型のディスプレイ装置30に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、ディスプレイ装置30から出射し、タッチパネル2を透過した後、人の目に入る。よって、図1(b)の矢印A〜Cに示すように、A:透明フィルム18と空気層の間、B:透明フィルム12と空気層の間、C:ディスプレイ装置30の表示面と空気層の間の、3つの光学界面を有する。
一方、従来例においては、透過型のディスプレイ装置130に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、ディスプレイ装置130から出射し、タッチパネル104及び視野角制御フィルム106を透過した後、人の目に入る。よって、図2(b)の矢印A〜Eに示すように、A:透明フィルム124と空気層の間、B:透明フィルム118と空気層の間、C:透明フィルム110と空気層の間、D:支持層122と空気層の間、E:ディスプレイ装置130の表示面と空気層の間の、5つの光学界面を有する。
【0060】
従って、従来例では、より多くの光学界面を有するので、ディスプレイ装置130から出射された光が人の目に入るのまでの間の光の透過率が低下し、表示される画像のコントラストが低下する問題が生じる。それに比べて、第2の実施形態では、光学界面を5から3に減少できるので、ディスプレイ装置30から出射された光が人の面に入るまでの間の光の透過率を上げ、表示される画像のコントラストを改善することができる。
【0061】
また、反射型のディスプレイ装置を用いる場合を考えると、第2の実施形態では、反射型のディスプレイ装置30に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、タッチパネル2を透過した後、ディスプレイ装置30に入射し、ディスプレイ装置30内の画像表示領域で反射して、ディスプレイ装置30から出射し、再びタッチパネル2を透過した後、人の目に入る。従って、基本的に、光学界面の数は透過型に比べて2倍になり、6つの光学界面を有する。
一方、従来例においては、反射型のディスプレイ装置130に表示された画像を表示面側から見る場合に、光は、視野角制御フィルム106及びタッチパネル104を透過した後、ディスプレイ装置130に入射し、ディスプレイ装置130内の画像表示領域で反射して、ディスプレイ装置130から出射し、再びタッチパネル104及び視野角制御フィルム106を透過した後、人の目に入る。従って、基本的に、光学界面の数は透過型に比べて2倍になり、10個の光学界面を有する。
【0062】
つまり、反射型のディスプレイ装置を用いる場合には、透過型のディスプレイ装置の場合に比べて、第2の実施形態と従来例との間の光学界面の数の差が大きくなる。従って、透過型のディスプレイ装置を用いた場合に比べ、従来例に対して、更に大きな光の透過率の向上、及びコントラストの改善を実現できる。
【0063】
なお、上記の特許文献1に示すように、従来例であっても、タッチパネル104と視野角制御フィルム106とを接着して一体化することは可能である。しかし、従来例では、図1(b)に示す第2の実施形態において透明フィルム10だけが存在する部分に、透明フィルム110及び透明フィルム118が存在し、更に別途、支持層122が存在し、また、これらの増加した部材を接着するための接着層も存在する。従って、従来例では、第2の実施形態に比べて、光の透過率が低くなり、表示する画像のコントラストも低下する。また、タッチパネル102と視野角制御フィルム106とを接着する作業が必要になるので、第2の実施形態に比べて、製造コストも上昇する。また、上記のように、装置全体の厚みも増す。
従って、本発明に係る第2の実施形態は、従来のタッチパネル104、視野角制御フィルム106、及びディスプレイ装置130を接着して一体化した場合に比べて、光の透過率が高く、高いコントラストで画像表示が可能であり、全体の厚みも薄く、製造コストも低減できる
【0064】
(本発明の視野角制御が可能なタッチパネルの製造方法の実施形態の説明)
次に、図3を用いて、本発明に係る視野角制御が可能なタッチパネルの製造方法の1つの実施形態の説明を行なう。ここで、図3は、タッチパネルの製造方法の各製造工程を模式的に示す断面図である。本実施形態では、視野角制御層6が、タッチパネル層4の背面側に配置された図1(a)に示す第1の実施形態を製造する場合を示している。
【0065】
<電極形成工程>
始めに、図3(a)に示すように、スパッタリングにより、透明フィルム10の片方の面に透明電極14aを設け(図3(a1)参照)、透明フィルム12の片方の面に透明電極14bを設ける(図3(a2)参照)電極形成工程を行なう。後述するように、従来のタッチパネルの製造方法においても、始めに透明フィルムの片側の面に透明電極を形成する工程を実施するので(図4(a)参照)、この電極形成工程において、従来のタッチパネルの電極の形成に用いる装置及び治具を、そのまま用いることができる。
なお、本実施形態では、スパタリングにより透明電極を形成しているが、これに限られるものではなく、蒸着を始めとするその他のあらゆる電極形成方法を用いることができる。
【0066】
<視野角制御層形成工程>
次に、図3(b)に示すように、透明フィルム12の透明電極14bが形成されていない面と、2枚の透明フィルム10、12と異なる他の透明フィルム18の片側の面との間に、複数のルーバー部材が取り付けられたルーバー層20を形成する視野角制御層形成工程を行なう。
本実施形態では2つの製造方法が示されており、1つの方法では、図3(b1)に示すように、新たな透明フィルム18の片側の面にルーバー層20を形成し、その後、図3(b3)に示すように、ルーバー層20の透明フィルム18と接していない面と、透明フィルム12の透明電極14bが形成されていない面とを接着して、視野角制御層6を形成する。
【0067】
もう1つの方法では、図3(b2)に示すように、まず、透明フィルム12の透明電極14bが形成されていない面に、ルーバー層20を形成し、その後、図3(b3)に示すように、ルーバー層20の透明フィルム12と接していない面と、新たな透明フィルム18の片側の面とを接着して、視野角制御層6を形成する。
【0068】
<タッチパネル層形成工程>
次に、図3(c)に示すように、視野角制御層6にタッチパネル層4を設けるタッチパネル層形成工程を行なう。本実施形態では、両面テープをスペーサ16として用いて、視野角制御層6を構成する透明フィルム12に形成された透明電極14bと、透明フィルム10に形成された透明電極14aとが対向するようにして、透明フィルム10と透明フィルム12を貼り合わせる。
更に詳細に述べれば、所定の剛性を有する視野角制御層6を構成する透明フィルム12の透明電極14bが設けられた面の外周部に、所定の厚みの両面テープ(スペーサ)16を貼りつけ、その上に透明フィルム10を載せて、両面テープ(スペーサ)16のもう一方の面(透明フィルム12と接着されていない面)と貼り合わせる。これにより、透明電極14aと透明電極14bが所定の間隔で対向配置されたタッチパネル層4が形成され、図3(c)に示すように、タッチパネル層4と視野角制御層6とが一体的に形成された視野角制御が可能なタッチパネル2を製造することができる。
また、タッチパネル2の表示面側の外面となる透明フィルム10の表示面側の面に、コーティング層を設ける処理を行なうこともできる。
【0069】
以上にようにして、本実施形態では、従来の設備及び治具を用いて、容易に確実に、図1(a)に示すような視野角制御が可能なタッチパネル2を製造することができる。
なお、図3(c)において、図面下側の透明フィルム18を表示面とすれば、図1(b)に示す視野角制御層6がタッチパネル層4の表示面側に配置された第2の実施形態に一致し、図3(a)から(c)に示す製造方法によって、図1(b)に示す視野角制御層6がタッチパネル層4の表示面側に配置された第2の実施形態も製造することができる。
【0070】
<ディスプレイ装置接着工程>
本実施形態では、図3(d)に示すように、視野角制御が可能なタッチパネル2とディスプレイ装置30とを接着して、視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置1を製造する。
更に詳細に述べれば、ディプレイ装置30の表示面と、図3(a)から(c)の各製造工程で製造されたタッチパネル2を構成する透明フィルム18の背面側の面とを、接着剤を用いて接着する。接着に際しては、ディプレイ装置30の表示面と、透明フィルム18の面との間に空気層(気泡)が生じないように貼りつける必要がある。
以上のようにして、本実施形態では、従来の設備及び治具を用いて、容易に確実に、視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置1を製造することができる。
【0071】
(従来の製造方法との比較)
次に、図4に示す従来のタッチパネル及び視野角制御フィルムを備えたディスプレイ装置の製造方法と比較しながら、本実施形態の特徴を説明する。
【0072】
<従来例の説明>
従来の製造方法においては、始めに、図4(a)に示すように、スパッタリングや蒸着により、透明フィルム110の片方の面に透明電極14aを設ける(図4(a1)参照)。また、透明フィルム112の片方の面に透明電極14bを設け、更に、透明フィルム112の透明電極14bが形成されていない面に、所定の厚みのある透明フィルムである支持層114を接着する(図4(a2)参照)。
【0073】
次に、図4(b)に示すように、両面テープをスペーサ116として用いて、透明フィルム110の透明電極114aと、透明フィルム112の透明電極114bとが所定に間隔を有して対向するように、透明フィルム110と透明フィルム112とを貼り合わせて、タッチパネル104を製造する。
【0074】
次に、図4(c)に示すように、透明フィルム118の片側の面にルーバー層120を形成し(図4(c1)参照)、その後、ルーバー層20の透明フィルム118と接していない面と、透明フィルム124の片側の面とを接着して、視野角制御フィルム106を形成する(図4(c2)参照)。
【0075】
そして、図4(d)に示すように、各々個別に製造されたタッチパネル104と、視野角制御フィルム106とを、接着剤で接着して、図4(d)に示すような、視野角制御フィルム106を備えたタッチパネル102を製造する。
更に、この視野角制御フィルム106を備えたタッチパネル102の透明フィルム118と、ディスプレイ装置130とを、接着剤で接着して、図4(e)に示すような、視野角制御フィルム106及びタッチパネル102を備えたディスプレイ装置101を製造する。
【0076】
<本実施形態と従来例との比較>
次に、図3に示す本発明に係る製造方法の実施形態と、図4に示す従来例とを比較すると、図3に示す実施形態では、以下のような特徴がある。
まず、図3(a)と図4(a)との比較で明らかなように、図3に示す実施形態においても、始めに透明フィルム10、12に、透明電極14a、14bを形成するので、透明電極の形成作業において、取り扱うフィルムの厚みを従来と同じにすることができ、従来と同じ設備及び治具を用いることができるので、製造コストの低減に寄与することができる。
また、上記のように、本実施形態では、図4(d)に示す従来例の透明フィルム110及び透明フィルム124の一方の透明フィルム、及び支持層122を有さない構成になっており、構成部品点数が減り、製造コストを低減することができる。また、図4(d)に示すように、従来例では、支持層122の接着作業(図4(a2)参照)、及び個別に製造したタッチパネル102と視野角制御フィルム106との接着作業(図4(d)参照)が必要であるが、図3に示す実施形態では、そのような接着作業を行なう必要がないので、製造工程を減らして、製造コストを減らすことができる。
【0077】
(本発明に係るその他の実施形態の説明)
本発明の視野角制御が可能なタッチパネル、このタッチパネルを備えたディスプレイ装置、及びこれらのタッチパネル及びディスプレイ装置の製造方法の実施形態は、上記の実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の視野角制御が可能なタッチパネル及びディスプレイ装置の実施形態の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】従来の視野角制御フィルムを備えたタッチパネル及びディスプレイ装置の一例の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の視野角制御が可能なタッチパネル及びディスプレイ装置の製造方法の実施形態の各製造工程を模式的に示す断面図である。
【図4】従来の視野角制御フィルムを備えたタッチパネル及びディスプレイ装置の製造方法の一例の各製造工程を模式的に示す断面図である。面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 視野角制御が可能なタッチパネル式ディスプレイ装置
2 視野角制御が可能なタッチパネル
4 タッチパネル層
6 視野角制御層
10 透明フィルム
12 透明フィルム
14a、b 透明電極
16 スペーサ
18 透明フィルム
20 ルーバー層
30 ディスプレイ装置
101 ディスプレイ装置
104 タッチパネル
106 視野角制御フィルム
110 透明フィルム
112 透明フィルム
114a、b 透明電極
116 スペーサ
118 透明フィルム
120 ルーバー層
122 支持層
124 透明フィルム
130 ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側の面に電極が設けられた2枚の板状部材が、前記電極どうしが所定の間隔で互いに対向するように配置されたタッチパネル層と、
2枚の板状部材の間に、複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられた視野角制御層と、
を備え、
前記タッチパネル層を構成する前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材が、前記視野角制御層を構成する前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材として用いられることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
片側の面に電極が設けられた2枚の板状部材を含み、前記電極どうしが所定の間隔で互いに対向するように配置されたタッチパネル層と、
前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材と、前記2枚の板状部材と異なる他の板状部材と、複数のルーバー部材とを含み、該一方の板状部材の前記電極が設けられていない面と、該他の板状部材の片側の面との間に、該複数のルーバー部材が所定の角度で取り付けられた視野角制御層と、
を備えたことを特徴とするタッチパネル。
【請求項3】
前記視野角制御層が前記タッチパネル層に対して表示面側に配置される場合において、前記視野角制御層の表示面側の外面に保護コーティング層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の前記タッチパネルと、ディスプレイ装置とを備え、
前記タッチパネルの背面側の外面と前記ディスプレイ装置の表示面とが密着していることを特徴とするタッチパネル式ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記ディスプレイ装置が、反射型または透過型の装置であることを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル式ディスプレイ装置。
【請求項6】
2枚の板状部材を準備して、各々の前記板状部材の片側の面に電極を形成する電極形成工程と、
前記電極形成工程の後、前記2枚の板状部材のうちの一方の前記板状部材の前記電極が形成されていない面と、前記2枚の板状部材と異なる他の板状部材の片側の面との間に、複数のルーバー部材を所定の角度で取り付けて視野角制御層を形成する視野角制御層形成工程と、
前記視野角制御層形成工程の後、前記視野角制御層が形成された前記板状部材の前記電極が形成された面と、前記視野角制御層が形成されていない前記板状部材の前記電極が形成された面との間に、所定の厚みのスペーサを挿入し、該2つの面に接着してタッチパネル層を形成するタッチパネル層形成工程と、
を含むことを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項7】
ディスプレイ装置の表示面と、請求項7に記載の製造方法で製造された前記タッチパネルの背面側の外面とを接着する工程を含むことを特徴とするタッチパネル式ディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−86875(P2009−86875A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253959(P2007−253959)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】