説明

親水性多孔質基材

親水性多孔質基材、疎水性ポリマーから親水性多孔質基材を製造する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、親水性多孔質基材及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においては、親水性が改善された多孔質ポリマー基材が必要である。更に、当該技術分野においては、親水性が改善されたポリマー基材を疎水性ポリマーから作製する方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、親水性基材、及び、親水性基材を作製する方法に関するものである。更に具体的には、親水性基材は、必要な親水性をもたらすよう改質された疎水性多孔質ベース基材を含む。
【0004】
親水性基材を作製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、
1)間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材を提供する工程と、
2)かかる多孔質ベース基材に第1溶液を吸収させ、吸収した多孔質ベース基材を形成する工程であって、この第1溶液が(a)アクリレート基及び光開始剤基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーと、(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、任意に(c)少なくとも1つのフリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーと、を含み、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つが親水性である工程と、
3)多孔質ベース基材の表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第1官能化基材を形成するために、吸収した多孔質ベース基材を調整された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、
4)残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を重合又は架橋するために、グラフト化光開始剤基を含む多孔質ベース基材を調整された量の紫外線に曝露する工程と、を含む。
【0005】
(a)アクリレート基及び光開始剤基を有するモノマーの反応生成物を含む第1グラフト化種と、(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有するモノマーの反応生成物を含む第2種と、任意に(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基及び親水性基を有するモノマーの反応生成物を含む第3種と、を含み、多孔質ベース基材の表面が電子ビーム及び紫外線照射に曝露される物品が提供される。(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つは親水性である。多孔質ベース基材にグラフトされずに残存する任意の遊離エチレン性不飽和基は、続いて紫外線に曝露すると架橋できる。
【0006】
方法及び物品に関して、光開始剤モノマー(a)のアクリレート基の全て又は一部は、e−ビーム照射により多孔質ベース基材の表面にグラフトされる。未反応の光開始剤モノマーは、紫外線に曝露されると後に、成長するポリマー鎖に組み込まれることができる。残存する(b)及び(c)モノマーは、直接的に表面にグラフトされ(例えばアクリレート基のグラフト化により)、又は、紫外線に曝露され、成長するポリマー鎖に組み込まれることにより間接的にグラフトされることができる。
【0007】
本発明の、これら及びその他の機能と利点は、以下に示す開示された実施形態の詳細な説明と添付の請求項を検討することにより明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の親水性基材を作製する代表的な方法の工程。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の物品及び方法では、親水性多孔質物品は、モノマーのe−ビームグラフト化、及びその後の、遊離したグラフト化していないエチレン性不飽和重合性基の紫外線架橋からなる2工程プロセスにより提供される。
【0010】
表面改質前の多孔質ベース基材に比べて、官能化基材は典型的には親水性を有する。親水性多孔質基材は、(1)間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材、及び(2)(a)多孔質ベース基材の表面から延在するグラフト化光開始剤基、(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のフリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマー、及び任意に(c)少なくとも1つのフリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーの紫外線開始型反応生成物、を非限定的に含む多くの構成要素を含み、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つは親水性である。
【0011】
適切な多孔質ベース基材としては、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ及び多孔質繊維が挙げられるが、これらに限定されない。多孔質ベース基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー物質から形成されてもよい。適切なポリマー物質としては、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
適切なポリオレフィンとしては、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとエチレン又はプロピレンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
適切なフッ素化ポリマーとしては、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
適切なポリアミドとしては、ポリ(イミノ(1−オキソヘキサメチレン))、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリイミドとしては、ポリ(ピロメリットイミド)が挙げられるが、これに限定されない。
【0015】
適切なポリ(エーテルスルホン)としては、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
適切なビニルアセテートのコポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解されていて、種々のポリ(ビニルアルコール)を与えるコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
好ましくは、多孔質ベース基材は、プロピレンホモポリマー又はコポリマーから、最も好ましくはプロピレンホモポリマーから形成されている。非毒性、不活性、低コスト、及び、物品に押し出し、成形、形成できる容易性といった特性から、ポリプロピレンポリマーは、多孔質物品、例えば不織布及び微小多孔性フィルムの選択材料となることが多い。しかしながら、ポリプロピレンは疎水性である。ポリプロピレンなどの疎水性ポリマーを親水性にするのが望ましいが、電離放射線で処理されたポリプロピレンは、照射中又は照射後に劣化、例えば脆化、変色、及び熱感受性化しやすく、したがって、e−ビームグラフト化によりこのような熱可塑性ポリマーに親水性を付与する能力が制限される。
【0018】
ポリプロピレンなどの放射線感受性基材に対して、本発明は、低照射線量の電子ビーム照射を用いて光開始剤基をグラフト化し、かつ表面の一部の他の親水性モノマーを任意にグラフト化し、次いで、任意のグラフト化していない未反応エチレン性不飽和基を紫外線で重合又は架橋することにより、このようなポリマー劣化を克服する。
【0019】
ある1つの代表的な実施形態では、多孔質ベース基材には、平均孔径が典型的に約1.0マイクロメートル未満である微小多孔性ベース基材が含まれる。適切な微小多孔性ベース基材としては、微小多孔性膜、微小多孔性不織布ウェブ、及び微小多孔性繊維が挙げられるが、これらに限定されない。微小多孔性ベース基材は、多くの場合最初は疎水性であり、本明細書に記載される方法により親水性になる。
【0020】
いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、熱誘起相分離(TIPS)膜などの微小多孔性膜である。TIPS膜は、熱可塑性物質とその熱可塑性物質の融点を超える第2の物質との均質溶液を形成することによって、調製される場合が多い。冷却すると、熱可塑性物質は結晶化し、第2の物質から相分離する。結晶化した熱可塑性物質は、伸張されている場合が多い。第2の物質は、所望に応じて、伸張前又は伸張後に取り除く。微小多孔性膜は、全て3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St.Paul))に譲渡された、米国特許第4,539,256号(シップマン(Shipman))、同第4,726,989号(ムロジンスキ(Mrozinski))、同第4,867,881号(キンツァー(Kinzer))、同第5,120,594(ムロジンスキ(Mrozinski))、同第5,260,360(ムロジンスキ(Mrozinski)ら)、及び同第5,962,544号(ウォラー(Waller))に更に開示される。更に、微小多孔性フィルムは、米国特許第5,962,544号(ウォラー(Waller))に記載されるように、エチレン−ビニルアルコールコポリマーから調製できる。
【0021】
いくつかの代表的なTIPS膜は、ポリ(フッ化ビニリデン)(すなわち、PVDF)、ポリエチレンホモポリマー若しくはコポリマー、又は、ポリプロピレンホモポリマー若しくはコポリマーなどのポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、及びブタジエン含有ポリマー若しくはコポリマーなどのビニル含有ポリマー若しくはコポリマー、並びにアクリレート含有ポリマー若しくはコポリマーを含む。一部の用途では、PVDFが含まれるTIPS膜が特に望ましい。PVDFが含まれるTIPS膜は、米国特許公開第2005/0058821号(3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))に譲渡)に更に記載されている。
【0022】
別の実施形態では、多孔質ベース基材は不織布ウェブであり、不織布ウェブの製造のための周知のプロセスのいずれかにより製造される不織布ウェブを含んでよい。本明細書で使用するとき、用語「不織布ウェブ」は、マット状の層間に、不規則に及び/又は一定方向に入れられた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を意味する。
【0023】
例えば、繊維状不織布ウェブを、毛羽立て、エアレイド、スパンレース、スパンボンド、又はメルトブロー技術、又はこれらの組み合わせにより製造できる。スパンボンド繊維は、典型的には、押し出される繊維の直径を持つ微細で通常は円形をした複数個の紡糸口金の毛管から、溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメントとして押し出し、急激に縮小させることにより形成された小径繊維である。メルトブロー繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性物質を、融解した糸又はフィラメントとして、微細で通常は円形をした複数個の金型(die)毛管を通して、溶融した熱可塑性物質のフィラメントを弱めてその直径を縮小させる高速の、通常は加熱されたガス(例えば空気)の流れの中に押し出すことによって形成されている。その後、高速ガス流によって、メルトブロー繊維は移動され収集面上に堆積し、無作為に分散されたメルトブロー繊維のウェブを形成する。任意の不織布ウェブは、熱可塑性ポリマーの種類及び/又は厚さが異なる単一の繊維又は2つ以上の繊維から製造されてよい。
【0024】
本発明の不織布ウェブの製造方法に関する詳細は、ウェンテ(Wente)著、「超微細熱可塑性線維(Superfine Thermoplastic Fibers)」、工業及び工学化学(INDUS.ENG.CHEM.)、48巻、1342(1956年)、又は、ウェンテ(Wente)ら著、「超微細有機線維の製造(Manufacture Of Superfine Organic Fibers)」(米国海軍研究試験所報告書(Naval Research Laboratories Report)No.4364、1954年)に記載されている。
【0025】
官能化基材は、(a)少なくとも1つの光開始剤基(又はその反応生成物)、(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和基(又はその反応生成物)、及び(c)任意のその他親水性基、を含む多孔質ベース基材の表面に結合したグラフト化種を有し、(b)又は(c)のうち少なくとも1つは親水性である。多孔質ベース基材の表面にモノマーがグラフトされると、元々は疎水性のベース基材に、親水性表面が付与されることになる。親水性モノマー、つまり「(b)」又は「(c)」のいずれかを十分量で用いて、多孔質基材に本明細書に記載される湿潤性を付与する。
【0026】
多孔質ベース基材の表面にグラフトされるモノマーは、通常(a)e−ビームによるグラフト化のためのアクリレート基、及び(b)その上の少なくとも1つの追加の官能基、の両方を有し、(a)紫外線への曝露により架橋を開始するための光開始剤基、(b)続く架橋のためのアクリレート又は非アクリレートフリーラジカル重合性エチレン性不飽和基、及び任意に(c)親水性基を含む。
【0027】
e−ビーム照射に曝露されるとアクリレートはより高い反応性を示すため、多孔質基材表面へモノマーを直接グラフトするにはこのようなアクリレート基が好ましい。しかしながら、このようなアクリレート基の全てが直接グラフト(すなわち、多孔質表面と共有結合を形成)されない場合もあり、一部は遊離状態で残存し、引き続いて紫外線に曝露するとポリマー鎖に組み込まれることにより「間接グラフト」される。他のエチレン性不飽和基、例えば(メタ)アクリルアミド、メタクリレート、ビニル及びビニルオキシ基、アリル及びアリルオキシ基、並びにアセチレン基は、e−ビーム中の反応性は比較的低く、多孔質ベース基材に直接グラフトされる可能性は比較的低い。したがって、このような非アクリレート基の一部は直接グラフトされる場合があるが、その大部分は未反応のまま残存し、紫外線開始型重合中にポリマー鎖に組み込まれることにより、基材に間接的にグラフトされる。
【0028】
光開始剤モノマーを多孔質ベース基材の間隙表面及び外側表面上に直接グラフトし、アクリレート基を介して必要なグラフト化光開始剤基を提供してよい。「(b)」モノマーについては、アクリレート基に加えてモノマー(b)のフリーラジカル重合性基は、典型的には(メタ)アクリルアミド、メタクリレート、ビニル基、及びアセチレン基などの、グラフト化中に低い反応性を有するその他エチレン性不飽和基であり、したがって、続く紫外線開始型重合及び架橋のために遊離し、かつ未反応である。「(b)」モノマーのアクリレート基は、電子ビームに曝露されるとき、典型的には多孔質ベース基材の表面に直接グラフト化(すなわち、共有結合形成)することができる。つまり、電子ビームの存在下における(b)モノマーのアクリレート基の多孔質ベース基材の表面との反応は、アクリレート基を介して多孔質ベース基材に直接グラフトされるエチレン性不飽和基を形成する結果となる。
【0029】
第3のグラフトモノマー「(c)」もまた、アクリレート基を介してグラフトされてよく、多孔質ベース基材の表面に親水性基を提供することができる。別の実施形態では、第3モノマーはグラフト化工程中に反応性が低いエチレン性不飽和基を有してよいが、その後、紫外線硬化工程においてフリーラジカル重合により組み込まれる(間接グラフト)。モノマー(b)及び(c)のうち少なくとも1つは親水性である。
【0030】
グラフト化光開始剤モノマーは、アクリレート基及び光開始剤基を含み、以下の一般式で表すことができる。
【0031】
【化1】

【0032】
式中、
はアクリレート基をPI基と結合している二価結合基であり、
PIは以下の式で表される光開始剤である。
【0033】
【化2】

【0034】
式中、R
【0035】
【表1】

【0036】
式中、RはH又はC〜Cアルキル基であり、
各Rは、独立してヒドロキシル基、フェニル基、C〜Cアルキル基、又はC〜Cアルコキシ基である。このような光開始剤モノマーは、例えば、米国特許第5,902,836号(バブー(Babu)ら)及び同第5,506,279号(バブー(Babu)ら)に記載されている。結合R基に関する更なる詳細は、本明細書の光開始剤グラフトモノマーの調製方法、及び引用文献を参照すると記載されている。
【0037】
ある好ましい実施形態では、光開始剤モノマーは、以下の一般式で表される水素引き抜き型としてよい。
【0038】
【化3】

【0039】
は、O又はNHであり、
pは0又は1であり、
oは0又は1〜5の整数であり、
a、b、及びcは独立して0又は1であり、
はCH又はSi(Rであり、
はC(R又はSi(Rであり、
は、−O−、−NH−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)NH−、又は−OC(O)NH−であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
Gは共有結合、−(CH−、又は−(CHO−であり、ここでdは1〜4、好ましくは1〜2の整数であり、
PIは、以下の一般式を有する放射線感受性水素引き抜き基であり、
【0040】
【化4】

【0041】
式中、Arは6〜12個の炭素原子を有する置換アレーン、好ましくはベンゼントリイル基であり、
12は、水素、C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシ基、又はフェニル基であり、
13は、C〜Cアルキル基、3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は
【0042】
【化5】

【0043】
であり、
ここでR14及びR15は、独立して、水素、C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシ基、及びフェニル基から選択される。
【0044】
式IXに包含される水素引き抜き光開始剤モノマーに含まれるものに、PIが、ベンゾフェノン、アントラキノン、5,12−ナフタセンキノン、アセアントラセンキノン(aceanthracenequinone)、ベンゾ(A)アントラセン−7,12−ジオン、1,4−クリセンキノン、6,13−ペンタセンキノン、5,7,12,14−ペンタセンテトロン、9−フルオレノン、アントロン、キサントン、チオキサントン、アクリドン、ジベンゾスベロに由来する部分であるものがあり、Gへの結合は、架橋カルボニル基に対して好ましくはパラに位置する。式XIIIのモノマーの合成は、米国特許第5,773,485号(ベネット(Bennett)ら)に記載されている。
【0045】
吸収溶液中の光開始剤モノマーの重量パーセントは、他のモノマー(すなわち、「(b)」及び「(c)」のモノマー)の総重量に対し、少なくとも約0.01%、及び好ましくは少なくとも約0.15%、かつ約2.5%を超えず、好ましくは約1%を超えなくてよい。光開始剤モノマーの全部又は一部は、e−ビーム照射に曝露されるとベース基材の表面に直接グラフトされる得ることが理解される。未反応のグラフト化していない光開始剤モノマーは、紫外線に曝露されると成長するポリマー鎖中に組み込まれ、これにより、多孔質ベース基材に対しモノマーが間接的にグラフトされる。
【0046】
さまざまな光開始剤グラフトモノマーは、1)第1反応性官能基を含むアクリレートモノマーと、2)放射線感受性基(光開始剤基)及び第2反応性官能基を含む化合物を反応させることにより製造でき、2つの官能基が互いに共反応性である。好ましい共反応性化合物は、最大36個の炭素原子、任意の1つ以上の酸素原子及び/又は窒素原子、及び少なくとも1つの反応性官能基を有する、エチレン性不飽和脂肪族、脂環式、及び芳香族化合物である。第1及び第2官能基が反応するとき、共有結合を形成し、共反応性化合物を結合する。
【0047】
有用な反応性官能基の例として、ヒドロキシル、アミノ、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アセチル、アセトニル、カルボキシル、イソシアナート、エポキシ、アジリジニル、ハロゲン化アシル、及び環式無水物基が挙げられる。ペンダント反応性官能基がイソシアナート官能基の場合、共反応性官能基は、好ましくはアミノ、カルボキシル、又はヒドロキシル基を含む。ペンダント反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくはカルボキシル、イソシアナート、エポキシ、無水物、ハロゲン化アシル、又はオキサゾリニル基を含む。ペンダント反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくはヒドロキシル、アミノ、エポキシ、ビニルオキシ、又はオキサゾリニル基を含む。
【0048】
反応性官能基を有するアクリレート化合物の代表例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート;3−アミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート;2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン及び2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オンなどのオキサゾリニル化合物;アクリル酸及び4−カルボキシベンジルアクリレートなどのカルボキシ置換化合物;イソシアナートエチルアクリレート及び4−イソシアナートシクロヘキシルアクリレートなどのイソシアナート置換化合物;グリシジルアクリレートなどのエポキシ置換化合物;N−アクリロイルアジリジンなどのアジリジニル置換化合物;及び、ハロゲン化アクリロイルが挙げられる。
【0049】
共反応性化合物の代表例として、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジメトキシエタノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、(4−イソシアナートフェニル)−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタノン、1−{4−[2−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]}−2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエタノン、1−[4−(2−アミノエトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、及び1−[4−(カルボメトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノンなどの官能基置換化合物が挙げられる。
【0050】
光開始剤モノマーのアクリレート基の全部又は一部は、e−ビーム照射に曝露されると多孔質基材の表面に直接グラフトされることができると理解される。グラフト化していない遊離アクリレート基は、紫外線開始型重合でポリマー鎖に組み込まれることにより、この後基材に間接的にグラフトされてよい。
【0051】
第2グラフトモノマーは、(a)グラフト化のための1つ以上のアクリレート基と、(b)続く架橋のための1つ以上の第2エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基と、を含む。第2エチレン性不飽和基はアクリレート又は非アクリレートであってよく、すなわち、e−ビームグラフト化工程中、アクリレート基と比較して低い反応性を有する他のエチレン性不飽和基であってよい。好ましくは第2エチレン性不飽和基は非アクリレート基であり、この後の紫外線架橋のために、グラフト化工程中は大部分が遊離かつ未反応の状態のままである。有用な第2非アクリレートエチレン性不飽和基として、メタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル基、ビニルオキシ、アセチレン基、アリル及びアリルオキシ基が挙げられる。
【0052】
有用な第2グラフトモノマーは、以下の一般構造を持つことができる。
【0053】
[CH=CH−C(O)−O]−R−Q−Z、III
式中、Zはアクリレート又は非アクリレートのエチレン性不飽和重合性基であり、
Qは、共有結合「−」、−O−、−NR−、−CO−、及び−CONR−から選択される二価結合基であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルであり、
は、価数a+bのアルキレン基であり、任意に1つ以上のカテナリー酸素原子及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を含有し、a及びbはそれぞれ少なくとも1である。好ましくは、Z基は、紫外線開始型重合中、ポリマー鎖に間接的にグラフトされる反応性が低い非アクリレートである。
【0054】
ある実施形態では、Rは、所望の親水性をもたらすポリ(アルキレンオキシド基)であり、以下の式を有する。
【0055】
Z−Q−(CH(R)−CH−O)−C(O)−CH=CH、IV
式中、Zはアクリレート又は非アクリレートの重合性エチレン性不飽和基であり、
は、H又はC〜Cアルキル基であり、nは2〜100、好ましくは5〜20であり、Qは、共有結合「−」、−O−、−NR−、−CO−、及び−CONR−から選択される二価結合基であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルである。好ましくは、Z基は、紫外線開始型重合中、ポリマー鎖に間接的にグラフトされる反応性が低い非アクリレートである。
【0056】
一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基((CH(R)−CH−Q)−で表される)は、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである。別の実施形態では、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである。かかるコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、又はグラジエントコポリマーであってよい。
【0057】
グラフト化のための第1アクリレート基、及び、続く紫外線架橋のための第2エチレン性不飽和基を有する好適なモノマーとして、ポリエチレングリコールから由来するものを含むポリアルキレングリコールアクリレートメタクリレート、及びポリプロピレングリコールアクリレート化モノマーが挙げられるが、これらには限定されない。
【0058】
別の実施形態では、第2モノマーは、少なくとも1つのアクリレート基、及び少なくとも1つの他のエチレン性不飽和重合性基(好ましくはアクリレート基ではなく、メタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル基、ビニルオキシ、アセチレン基、アリル、及びアリルオキシ基から選択できる)を有する部分的にアクリレート化したポリオールである。かかる部分的にアクリレート化したポリオールは、1つ以上の遊離ヒドロキシル基を有してよい。
【0059】
本発明で有用なポリオールとしては、約2〜18個の炭素原子、及び2〜5個好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を有する、脂肪族、脂環式、又はアルカノール置換アレーンポリオール又はこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
有用なポリオールの例としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、及びポリアルコキシ化ビスフェノールA誘導体類が挙げられる。最も好ましくは、「(b)」モノマーは、遊離ヒドロキシル基、及び3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのメタクリレート基を有するグリセロールのモノアクリレートである。
【0061】
いくつかの好ましい実施形態では、「(b)」及び「(c)」モノマーのエチレン性不飽和基は、互いに効率良く共重合するよう選択される。つまり、「(b)」及び「(c)」の各モノマーが同一のエチレン性不飽和基を有することが好ましい。
【0062】
1つの代表的な実施形態では、グラフト化種は、電子ビームの照射により、式III又はIVのポリエチレングリコールアクリレートモノマーと多孔質ベース基材の反応の結果生じる。これらのグラフトモノマー類は、ポリ(アルキレンオキシド)基の存在により疎水性多孔質ベース基材を親水性官能化基材に変化させるために使用することができる。生成した親水性基材は、以下により詳細を記載するように1N NaOHに20時間曝露後の瞬間湿潤性などの多くの所望の特性を有することができる。
【0063】
任意の第3モノマー(「(c)」、親水性モノマー)は、少なくとも1つのアクリレート、又は他の反応性が低い非アクリレート性エチレン性不飽和基と、基材に親水性を提供するイオン基などの親水性基と、を含む。任意の第3モノマーがアクリレート基を含有する場合、多孔質ベース基材の表面に直接グラフトされる場合がある。非アクリレート性エチレン性不飽和基を含有する場合、グラフト化工程中に大部分が未反応のまま残存し、紫外線重合工程中に組み込まれる。アクリレート基の全部又は一部は、多孔質基材に直接グラフトされることができ、一部は未反応であるが、紫外線開始型照射によりポリマー内に間接的にグラフトされると理解される。逆に、反応性が低い他のエチレン性不飽和基の一部は直接グラフトされることができるが、一般にこのような基は、グラフト化工程中大部分が未反応のまま残存し、紫外線開始型照射によりポリマーに間接的にグラフトされる。
【0064】
イオン基は中性であってよく、正電荷、負電荷、又はこれらの組み合わせを有することができる。一部の適切なイオン性モノマーの場合、イオン基は、pH条件に応じて、中性、又は帯電状態であることができる。第2モノマーに加えて、典型的にこの種のモノマーを用い、多孔質ベース基材に所望の親水性を付与する。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態では、第3モノマーは、アクリレート基又は反応性が低い他のエチレン性不飽和基と、ポリ(アルキレンオキシド)基と、を有してよく、例えば、末端がヒドロキシ基、又はアルキルエーテル基であるモノアクリレート化ポリ(アルキレンオキシド)化合物である。
【0066】
いくつかの実施形態では、負電荷を有するイオン性モノマーとしては、式IIの(メタ)アクリルアミドスルホン酸又はその塩が挙げられる。
【0067】
【化6】

【0068】
式中、Yは直鎖状又は分枝状アルキレン(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン)であり、Lはオキシ又は−NR−であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルである。代表的な式Iによるイオン性モノマーとして、N−アクリルアミドメタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、及び2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸が挙げられるが、これらには限定されない。これらの酸性モノマーの塩も使用することができる。塩に対する対イオンは、例えば、アンモニウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、又はナトリウムイオンであることができる。式Vについて、続く紫外線開始型重合中の組み込み(間接グラフト化)のために、グラフト化アクリレート基を反応性が低い別のエチレン性不飽和基に置き換えられると理解される。
【0069】
負電荷を有する他の好適なイオン性グラフトモノマーとしては、ビニルスルホン酸及び4−スチレンスルホン酸などのスルホン酸;(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸(例えば、2−(メタ)アクリルアミドエチルホスホン酸及び3−(メタ)アクリルアミドプロピルホスホン酸)などの(メタ)アクリルアミドホスホン酸;アクリル酸及びメタクリル酸;並びに、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート及び3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。更に他の適切な酸性モノマーとしては、米国特許第4,157,418号(ヘイルマン(Heilmann))に記載されているような(メタ)アクリロイルアミノ酸が挙げられる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸には、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアスパラギン酸、N−アクリロイル−β−アラニン、及び2−アクリルアミドグリコール酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性モノマーのうちのいずれかの塩を用いることもできる。
【0070】
正電荷を与えることのできるいくつかの代表的なイオン性グラフトモノマーは、式IIのアミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミド、又はそれらの四級アンモニウム塩である。四級アンモニウム塩の対イオンは、ハロゲン化物、硫酸、リン酸、硝酸などである場合が多い。
【0071】
【化7】

【0072】
式中、Lはオキシ又は−NR−であり、ここでRは、H又はC〜Cのアルキル−であり、Yはアルキレン(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。各Rは独立して、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル(すなわち、ヒドロキシで置換されているアルキル)、又はアミノアルキル(すなわち、アミノで置換されているアルキル)である。あるいは、2個のR基は、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族であって、部分的に不飽和(すなわち、不飽和ではあるが芳香族ではない)、又は飽和である複素環式基を形成でき、この場合、複素環式基は任意に応じて、芳香族(例えばベンゼン)、部分的に不飽和(例えばシクロヘキセン)、又は飽和(例えばシクロヘキサン)である第2の環と融合することができる。
【0073】
式VIについて、続く紫外線開始型重合中の組み込み(間接グラフト化)のために、グラフト化アクリレート基を反応性が低い別のエチレン性不飽和基、例えばメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル、ビニルオキシ、アリル(ally)、アリルオキシ(alloxy)、及びアセチレニルに置き換えられると理解される。
【0074】
式VIのいくつかの実施形態において、R基は両方とも水素である。他の実施形態では、1個のR基は水素であり、他方は、1個〜10個、1個〜6個又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態では、R基の少なくとも1個は、アルキル基の炭素原子のいずれかの上に配置されているヒドロキシ基又はアミノ基とともに1個〜10個、1個〜6個、又は1個〜4個の炭素原子を有しているヒドロキシアルキル又はアミノアルキルである。更に他の実施形態では、R基は、この基が結合している窒素原子と結びついて複素環式基を形成する。この複素環式基は、少なくとも1つの窒素原子が含み、酸素又は硫黄のような他のヘテロ原子を含むことができる。代表的な複素環式基としては、イミダゾリルが挙げられるが、これに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン、又はシクロヘキサンのような追加の環と融合することができる。追加の環と融合した代表的な複素環式基としては、ベンゾイミダゾリルが挙げられるが、これに限定されない。
【0075】
代表的なアミノアクリレート(すなわち、式VIのLがオキシ)としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート(acylate)、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−第三−ブチルアミノプロピルメタクリレート、N−第三−ブチルアミノプロピルアクリレート、及びその他同種のものなどのN,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレートが挙げられる。
【0076】
紫外線重合中に組み込まれるであろう代表的なアミノ(メタ)アクリルアミド(すなわち、式VIのLが−NR−)としては、例えば、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾイルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾイルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド、及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが挙げられる。
【0077】
式VIのイオン性モノマーの代表的な四級塩類としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩類(例えば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩類(例えば、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
イオン交換樹脂に正に帯電した基を付与することができる他のモノマー類としては、アルケニルアズラクトン類のジアルキルアミノアルキルアミン付加物類(例えば、2−(ジエチルアミノ)エチルアミン、(2−アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロライド及びビニルジメチルアズラクトンの3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン付加物類)並びにジアリルアミンモノマー類(例えば、ジアリルアンモニウムクロライド及びジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。
【0079】
グラフト化により、又はその後の紫外線重合により組み込まれ得る第3モノマーは、少なくとも1つのアクリレート又は非アクリレート性エチレン性不飽和基、及び非重合性末端を有するポリ(アルキレンオキシド)モノマーである。かかるモノマーは、以下の一般式である。
【0080】
−O−(CH(R)−CH−O)−C(O)−C(R)=CH、VII
式中、各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルである。
【0081】
更に詳細を以下に記載するように、本発明の官能化基材は上記モノマーを用いて調製され、多孔質ベース基材の表面に親水性を提供することができる。多孔質ベース基材の表面特性を改質するため、上記モノマーの2つ又はそれ以上が使用されるとき、モノマー類は、単一反応工程(すなわち、2つ又はそれ以上のグラフトモノマーは全て、電子ビームに曝露時存在する)又は逐次反応工程(すなわち、第1グラフト化光開始剤モノマー「(a)」は、電子ビームに第1曝露時存在し、第2グラフトモノマー「(b)及び/又は(c)」は、電子ビームに第2曝露時存在する)で多孔質ベース基材にグラフトされてもよい。同様に、これらモノマー(a)、(b)、及び(c)の全てを第1グラフト化工程中に存在させて直接的にグラフトしてもよく、又は続く紫外線開始型重合中に組み込むことにより間接的にグラフトしてもよい。別の方法としては、かかるモノマー類の全部又は一部を第1工程で、又はその後の吸収工程で吸収させてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、グラフト化種は、表面改質する前に疎水性特性を有する多孔質ベース基材が含まれる官能化基材に親水性特性を付与する。官能化基材の親水性特性は、電子ビームへの曝露及び紫外線開始型重合により、多孔質ベース基材と、親水性基を含有する「(b)及び/又は(c)」モノマーの反応によって得られる。
【0083】
上述のように、光開始剤a)のモノマーの全部又は一部が、基材に直接グラフトされるであろう。その後、追加のb)及び/又はc)モノマーが間接的にグラフトされ得る。追加のモノマーは、光開始剤(photoinitator)の残留物とベース基材を介してグラフト化され得る。これを式VIIIを参照して例示するが、ここで式VIIの親水性c)モノマーは、光開始剤の残留物を介して間接的にグラフトされる。
【0084】
【化8】

【0085】
式中、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
nは2〜100であり、かつ、
PIは、基材表面にグラフト化された光開始剤の残留物である。
【0086】
例えば、2−プロペノイルアミノエタン酸、2−(4−(2−ヒドロキシ−2メチルプロパノイル)フェノキシ)エチルエステルなどのグラフト化光開始剤(photoinitator)モノマーを、e−ビームエネルギーなどの電離放射線を用いて基材表面にグラフトさせてよい。紫外線の存在下では、光開始剤はα開裂を経て2つのラジカルになる。式Iに示され、かつ以下のスキームIに図示されるように、リガンドモノマー、又はその他モノマーの存在下では、ラジカルはエチレン性不飽和基(例えば、記載するアクリロイル基)を付加し、光開始剤の残留物を介して基材表面にリガンドモノマーを間接的にグラフトできる。更に、a)、b)及び/又はc)のモノマーのラジカル付加生成物は、追加のa)、b)及び/又はc)のモノマーと更に共重合し、グラフト化ポリマーを形成できると理解される。
【0087】
【化9】

【0088】
更に、グラフト化プロセスは、式VIIの親水性モノマーのカルボニルに結合するα炭素上にラジカルを有するラジカル種が生じ、1つ以上の追加の「b)」モノマー、1つ以上の光開始剤「a)」モノマー、1つ以上の「c)」モノマーと更に重合させることができ、以下に簡潔に示すような、ポリマー鎖から懸垂されるこれらの基を有するグラフト化ポリマーをもたらすと理解される。グラフト化ポリマー鎖の形成により、所望のリガンド基の密度、及び結合効率が著しく上昇する。
【0089】
基材−(MPI)−(M−(M
この式において、−(MPI)−は、グラフト化光開始剤モノマーの残留物(スキームIに示される)を表し、−(Mは、「x」個の重合モノマー単位を有する重合したb)モノマー(例えば式III又はIV)を表し、ここでxは少なくとも1、好ましくは少なくとも2であり、−(Mは、y個の重合モノマー単位を有する重合したモノマー「c)」(例えば式V〜VII)を表し、ここでyは0でよく、好ましくは少なくとも1である。ポリマーはランダム型又はブロック型であってよく、2つの重合性基を有する「b)」モノマーはポリマー鎖間に架橋をもたらすことができる。ポリマーは、スキームIに示すように、光開始剤の残留物を介して直接グラフト化されてよく、又は、本明細書に記載される「b)」モノマー又は「c)」モノマーを介して直接グラフト化されてもよい。ポリマーは、未反応のグラフト化していない光開始剤モノマー由来の重合した光開始剤モノマー単位を更に含むことができる。
【0090】
上記親水性基材は、プロセス工程の組み合わせを使用して調製されてもよい。本方法は、
1)間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材を提供する工程と、
2)この多孔質ベース基材に溶液を吸収させ、吸収した多孔質ベース基材を形成する工程であって、第1溶液が(a)アクリレート基及び光開始剤基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーと、任意に(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、任意に(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーと、を含み、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つが親水性である工程と、吸収工程は、単一の溶液又は複数の溶液を含んでよく、
3)多孔質ベース基材の表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第1官能化基材を形成するために、吸収した多孔質ベース基材を調整された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、
4)残存するフリーラジカル重合性基を架橋するために、グラフト化光開始剤基を含む多孔質ベース基材を調整された量の紫外線に曝露する工程と、を含む。
【0091】
上記方法に関して、かかる基材に、光開始剤「a)」モノマーと、「b)」モノマーと、任意に「c)」モノマーと、を含む第1溶液を吸収させてよく、この後e−ビーム放射に曝露され、次いで紫外線により架橋される。別の方法としては、方法は、最初に多孔質ベース基材に光開始剤「a)」モノマーを吸収させ、吸収した基材をe−ビーム放射に曝露して光開始剤「a)」モノマーを基材の表面にグラフトする工程と、続いてグラフト化多孔質ベース基材に、「b)」及び任意に「c)」モノマーを含む第2吸収溶液を吸収させ、次いで吸収した基材に紫外線を曝露して、「b)」及び「c)」モノマーを基材に間接的にグラフトする工程と、を含んでよい。
【0092】
この実施形態に使用される多孔質ベース基材のいくつかは、多孔質、微小多孔性の不織布、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0093】
官能化基材を作製する1つの代表的方法を図1に示す。図1に示すように、代表的方法10は、吸収工程100、挟み込み工程200、照射工程300、紫外線開始型重合工程400、剥離工程500、洗浄/すすぎ工程600、乾燥工程700、及び巻き取り工程800からなる工程を含む。これらの代表的な各工程について、以下に詳細に記載する。
【0094】
本発明の官能化基材を作製する方法は、以下の工程のうちの1つ以上を含んでよい。
【0095】
吸収工程
図1に示すように、多孔質ベース基材12を備えるロール11を、多孔質ベース基材12が吸収工程100に入るように巻き出してよい。吸収工程100では、多孔質ベース基材12を、1つ以上のグラフトモノマーを含有する溶液13のリザーバに接続されているアプリケータ14に接触させる、又は接近させるようにする。多孔質ベース基材12が所望の時間溶液13に曝露されるように、ローラー15及び16がベース多孔質ベース基材12を導き、アプリケータ14を通過させる。典型的には、多孔質ベース基材12が溶液13に曝露される時間は、最大で約1.0分、より典型的には約15秒未満である。多孔質ベース基材12は、通常吸収工程100を通り、1分未満で照射工程300に進む。吸収工程の一部では、多孔質ベース基材12を溶液13で飽和する。
【0096】
上述したように、溶液13は、多孔質ベース基材12の間隙表面及び外側表面上にグラフトするのに好適な1つ以上のグラフトモノマーを含んでよい。上述の代表的なグラフトモノマーのうち任意のものを溶液13に含めることができる。グラフトモノマーに加え、溶液13は、例えば、紫外線硬化へ向けた1つ以上の他の非グラフトモノマー及び溶媒などのその他物質を含有することができる。溶液13中の各グラフトモノマーの濃度は、多くの要因(溶液13中のグラフトモノマー又はモノマー、望ましいグラフト度、グラフトモノマーの反応性及び使用溶媒が挙げられるが、これらに限定されない)に応じて変化してよい。典型的には、溶液13中の各モノマーの濃度は、溶液13の総重量に対して約1重量%〜約100重量%、望ましくは約5重量%〜約30重量%、及びより望ましくは約10重量%〜約20重量%の範囲である。
【0097】
一度多孔質ベース基材12に所望の時間溶液13を吸収させると、多孔質ベース基材12は、ガイドローラー17を通って挟み込み工程200へと誘導される。ガイドローラー17を用い、必要に応じて吸収した多孔質ベース基材12から過剰の溶液13を計量することができる。交互にローラー(図示せず)を用い、吸収した多孔質ベース基材12から気泡と過剰の溶液13を押し出す場合もある。典型的には、多孔質ベース基材12は、挟み込み工程200に実質的に飽和状態(すなわち、多孔質ベース基材12が最大量又は最大量に近い量の溶液13を含む)で入り、ここでは、多孔質ベース基材12の実質的に全ての間隙表面及び外側表面が溶液13でコーティングされている。
【0098】
吸収工程100は、多孔質ベース基材12に溶液13を導入する1つの可能な方法にすぎないことに留意されたい。その他好適な方法として、スプレーコーティング法、フラッドコーティング法、ナイフコーティングなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0099】
挟み込み工程
挟み込み工程200では、吸収した多孔質ベース基材12を取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19との間に挟み(すなわち配置し)多層挟み込み構造24を形成する。代表的方法10に示すように、取り外し可能なカバー層19をロール18から巻き出し、ローラー20を通って、吸収した多孔質ベース基材12の外側表面と接触させてよく、その一方で、取り外し可能なキャリア層22をロール21から巻き出し、ローラー23を通って、吸収した多孔質ベース基材12の反対側の外側表面と接触させてもよい。ローラー20及び23でギャップを形成し、多孔質基材に付与される吸収した溶液13の量を調整するのに用いてもよい。
【0100】
取り外し可能なカバー層19及び取り外し可能なキャリア層22は、チャンバ25から出る際に官能化基材30(すなわち、グラフト化多孔質ベース基材12)が酸素に直接さらされてしまうことを一時的に防ぐことができる任意の不活性シート材を含んでよい。取り外し可能なカバー層19及び取り外し可能なキャリア層22を形成するのに好適な不活性シート材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム材、その他芳香族ポリマーフィルム材、及びその他任意の非反応性ポリマーフィルム材が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、取り外し可能なキャリア層22は、紫外線透過性の材料から選択してよい。一旦組み立てられると、多層挟み込み構造24を照射工程300に進める。
【0101】
照射工程300では、多層挟み込み構造24を、多孔質ベース基材12の間隙表面及び外側表面上に溶液13内の1つ以上のモノマーをグラフトするのに十分な量の放射線に曝露して、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19との間に挟まれている官能化基材30を備えている多層挟み込み構造27を形成するようにする。代表的方法10に示すように、多層挟み込み構造24は、十分な照射線量の放射線を提供可能な少なくとも1つのデバイス26を備えるチャンバ25を進む。単一のデバイス26は、十分な照射線量の放射線を提供可能であるが、特に比較的厚い多孔質ベース基材12の場合には、2つ以上のデバイス26を使用してもよい。典型的には、チャンバ25は、フリーラジカル重合を阻害することが知られている少量の酸素とともに、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気を含む。取り外し可能なカバー層19がない状態で、多孔質ベース基材12を照射する実施形態では、チャンバ25内部の酸素量がより関心事となり得る。取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19が多孔質ベース基材12を覆っているとき、チャンバ25内部の酸素への曝露は最小限になる。
【0102】
照射工程300は、続く紫外線開始型重合を干渉するであろうあらゆる溶存酸素を、ペルオキシ化合物に変換するという更なる利点を提供する。したがって、e−ビーム照射工程300は、酸素を除去することにより続く紫外線開始400を促進する。
【0103】
他の照射源を使用してもよいが、望ましいデバイス26は、電子ビーム源を備える。電子ビーム(e−ビーム)は、一般に約10−6トールに維持された真空チャンバ内のリペラープレートとエキストラクターグリッドとの間に保たれたタングステンワイヤフィラメントに高電圧を印加することにより生成される。フィラメントを高電流で加熱し電子を発生させる。金属箔の薄い窓の方に向いた反射板及び抽出グリッドによって電子を導き、加速させる。10メートル/秒(m/sec)を超える速度で進行し、約1.6〜4.8J(100〜300キロ電子ボルト(keV)を所有する加速電子は、真空チャンバからフォイルウィンドウを通過し、いかなる物質がフォイルウィンドウの真上に置かれていても透過する。
【0104】
発生する電子の量は、抽出グリッドの電圧と直接関係がある。抽出グリッドの電圧が高くなると、タングステンワイヤフィラメントから飛び出す電子の量が多くなる。eビームによる加工は、コンピュータ調整する場合にはきわめて正確であることができ、正確な照射線量及び照射線量率の電子を多層挟み込み構造24に向けることができる。
【0105】
電子ビーム発生器は、エネルギーサイエンシーズ社(Energy Sciences, Inc.)(マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington))からのESI「エレクトロキュア(ELECTROCURE)」EBシステム及びPCTエンジニアードシステムズ社(PCT Engineered Systems, LLC)(アイオワ州ダベンポート(Davenport))からのブロードビームEBプロセッサ(BROADBEAM EB PROCESSOR)を含む種々の供給源から市販されている。いかなる特定種類機器及び照射試料位置であろうとも、放出される照射線量は、「放射線フィルム照射線量測定装置の使用に関する基準(Practice for Use of a Radiochromic Film Dosimetry System)」と題するASTM E−1275により測定することができる。エキストラクターグリッド電圧を変更することにより、供給源に対するビーム直径及び/又は距離、各種照射線量率を得ることができる。
【0106】
チャンバ25内部の温度は、従来の手段によって周囲温度に維持させることが望ましい。あらゆる特定の機構に限定することを意図することなく、吸収した多孔質ベース基材に電子ビームを照射すると、基材表面でフリーラジカルが発生し、エチレン系不飽和基を有するモノマーのような二重結合を有するモノマーと反応することができると考えられる。
【0107】
多層挟み込み構造24が受けた全照射線量は、主に、グラフトモノマーが多孔質ベース基材にグラフトされる程度に影響を与える。一般的には、吸収工程中に添加したグラフトモノマーのうち、少なくとも10重量%、望ましくは20重量%、更に望ましくは50重量%を超えるグラフトモノマーがグラフト化種に変換されることが望ましく典型的である。更に、吸収工程中に多孔質ベース基材12上に添加した1つ以上のグラフトモノマーのうち、多孔質ベース基材12の総重量に基づき、約5重量%の量、望ましくは約10重量%の量、より望ましくは約20重量%の量(又は約100重量%の量)をグラフトすることが望ましく典型的である。照射線量は、電圧、速度及びビームの電流を含む多くの加工パラメータに左右される。ライン速度(すなわち、多層挟み込み構造24がデバイス26の下を通る速度)及び抽出グリッドに供給される電流を調整することによって、利便的に照射線量を調節することができる。実験的に測定された係数(機械定数)をビームの電流に乗し、ウェブ速度で除すことによって目標の照射線量(例えば、<10kGy)を利便的に算出し、照射量を決定することができる。機械定数は、ビームの電圧の関数として変動する。
【0108】
電子ビーム照射曝露の調整量は、滞留時間によって決まるが、一般的に、多層挟み込み構造24の一部である多孔質ベース基材12に吸収されるモノマー類は、一般に約1キログレイ(kGy)の最小照射線量〜約50キログレイ(kGy)未満の最大照射線量の範囲の調整された照射線量を受容すると、特定のポリマーによって、著しくグラフトされる。プロピレンポリマーに対して、その量は、典型的には約1キログレイ(kGy)の最小照射線量〜約10kGy未満の最大照射線量の範囲である。典型的には、プロピレンポリマーの劣化を防ぐ合計調整照射線量は、約9kGy未満〜約7kGyの範囲である。ナイロン又はPVDFなどの放射線感受性が低いポリマーは、より高い照射線量、典型的には10〜70kGyにさらしてもよい。
【0109】
照射によってグラフトさせるためには照射線量率が小さく、滞留時間が長いことが好ましいが、実際的な操作では、強制的に高い照射線量率及び短い滞留時間を与える速度を必要とする場合もある。多層挟み込み体中の酸素の除去が、eビームを照射した後もグラフト収率が高くなるのに十分な時間、フリーラジカル化学物質が存在し続けることを可能にする。
【0110】
紫外線硬化工程
紫外線照射工程400では、多層挟み込み構造24を、グラフト化光開始剤モノマー、並びに任意の遊離未反応アクリレート基及び/又はエチレン性不飽和基からフリーラジカル重合を開始するのに十分な量の紫外線に曝露する。多孔質ベース基材12のグラフト化間隙表面及び外側表面上の未反応のエチレン性不飽和基の重合により、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19との間に挟まれる官能化基材30を含む多層挟み込み構造27が形成する。代表的方法10に示すように、多層挟み込み構造24は、十分な照射線量の紫外線を提供可能な少なくとも1つのデバイス41を備えるチャンバ40を進む。単一のデバイス41は、十分な照射線量の放射線を提供可能であるが、特に比較的厚い多孔質ベース基材12の場合には、2つ以上のデバイス41を使用してもよく、又はランプの出力を2倍にしてもよい。紫外線照射により、本質的に全ての残留アクリレート及び非アクリレート基がベース基材12の表面上のポリマーコーティング内に組み込まれ、ベース基材を親水性にする。
【0111】
典型的には、チャンバ40は、フリーラジカル重合を阻害することが知られている少量の酸素とともに、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気を含む。取り外し可能なカバー層19がない状態で、多孔質ベース基材12を照射する実施形態では、チャンバ25内部の酸素量がより関心事となり得る。取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19が多孔質ベース基材12を覆っているとき、チャンバ25内部の酸素への曝露は最小限になる。
【0112】
紫外線光源は、1)280〜400ナノメートルの波長範囲にわたって一般に10mW/cm以下(米国標準技術局(United States National Institute of Standards and Technology)に承認されている手順に沿って、例えば、バージニア州スターリング(Sterling)のエレクトロニックインスツルメンテーション&テクノロジー社(Electronic Instrumentation & Technology, Inc.)製のUVIMAP(商標)UM 365 L−Sラジオメーターを用いて測定される)の強度を提供するブラックライトなどの比較的低い強度の光源、及び2)10mW/cmを超え、好ましくは15〜450mW/cmの強度を提供する中圧水銀ランプなどの比較的高い強度の光源の、2つのタイプが挙げられる。化学線をオリゴマー組成物を完全に又は部分的に架橋するために用いる場合、高い強度と短い曝露時間が好ましい。例えば、600mW/cmの強度と約1秒の曝露時間をうまく用いることができる。強度は、約0.1〜約150mW/cm、好ましくは約0.5〜約100mW/cm、及びより好ましくは約0.5〜約50mW/cmの範囲であることができる。
【0113】
剥離工程
チャンバ25から出ると、多層挟み込み構造27は剥離工程500に進む。剥離工程500では、多層挟み込み構造27は、取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19を官能化基材30から分離することによって分解される。代表的方法10に示すように、取り外し可能なカバー層19は、官能化基材30の外側表面から分離してロール28として取り出され、取り外し可能なキャリア層22は、官能化基材30の反対側の外側表面から分離してロール29として取り出される。
【0114】
1つの望ましい実施形態では、電子ビームへの曝露、紫外線硬化、及びチャンバ40からの退出後、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19は、官能化基材30の酸素曝露からの長期保護を備えるよう、剥離工程400に先立ちしばらくの時間官能化基材30にとどまることができる。望ましくは、取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19は、チャンバ25を出た後、官能化基材30上に少なくとも15秒間、より望ましくは約30〜約60秒間とどまる。しかし、グラフトの質を下げるような時間の上限はなく、多層挟み込み構造27は、多層挟み込み構造27のバッチ加工用ロールが調製される場合のように、長期間にわたってそのままの状態であってもよい。一旦多層挟み込み構造27を分解すると、官能化基材30は任意の洗浄/すすぎ工程600に進むことができる。
【0115】
任意の洗浄/すすぎ工程600では、官能化基材30は、すすぎチャンバ31で1回以上洗浄するか又はすすいで、いずれもの未反応モノマー、溶媒又はその他反応副生成物を官能化基材30から除去する。典型的には、官能化基材30を、すすぎ水、すすぎ用アルコール、すすぎ水及びすすぎ用アルコールの混合物、並びに/又はすすぎ用溶媒(例えば、アセトン、MEKなど)を用いて最大で3回洗浄するか又はすすぐ。すすぎ用アルコールを使用する場合、すすぎ液は、1つ以上のアルコール(イソプロパノール、メタノール、エタノール、又は実用的に用いられ、またいずれかの残留モノマーの有効な溶媒であるいずれかの他のアルコールが挙げられるが、これらに限定されない)を含んでよい。それぞれのすすぎ工程では、官能化基材30は、すすぎ浴を通すか、又はすすぎ液を噴霧してもよい。
【0116】
任意の乾燥工程700では、官能化基材30を乾燥させ、官能化基材30から全てのすすぎ溶液を除去する。典型的には、官能化基材30を比較的低いオーブン温度のオーブン32で所望の時間(本明細書では「オーブン滞留時間」と称する)乾燥する。オーブン温度は、典型的に約60℃〜約120℃の範囲であるが、一方、オーブン滞留時間は、典型的に約120〜約600秒の範囲である。いずれかの従来のオーブンを、本発明の任意の乾燥工程700で使用してもよい。適切なオーブンとしては、対流式オーブンが挙げられるが、これに限定されない。
【0117】
他の実施形態では、乾燥工程700を、洗浄/すすぎ工程600の前に行なうことができ、グラフトされていない残渣の抽出の前に揮発性成分を除去する点にも留意するべきある。
【0118】
任意の乾燥工程700の後に、工程800において、乾燥した親水性基材30をロール33としてロール形態で巻き取ることができる。親水性基材30は、将来使用するためにロールの形状で貯蔵されてもよく、そのままで直ちに使用されてもよく、又は親水性基材30の表面特性を更に変えるために更に加工されてもよい。
【0119】
1つの代表的な実施形態では、親水性基材30を更に加工して、親水性基材30の表面特性を変える。この実施形態では、官能化基材30を、(i)官能化基材30の間隙表面及び外側表面上に追加のグラフトモノマーをグラフトする、(ii)官能化基材30の間隙表面及び外側表面から延在するグラフト化種上に追加のモノマーをグラフトする、又は、(iii)(i)及び(ii)の両方を行なうために、第2の時間(又はそれ以上の時間)、代表的方法10のようなグラフトプロセスで加工する。
【0120】
例えば、1つの代表的な実施形態において、官能化基材30は、多孔質ベース基材に溶媒中に1つ以上のグラフトモノマーを含む第1溶液を吸収させ、ここで1つ以上のグラフトモノマーは、アクリレート基及びその上に光開始剤基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーを含み、並びに次いで、光開始剤モノマーを多孔質ベース基材の間隙表面及び外側表面にグラフトするように、第1溶液を吸収した多孔質ベース基材を調整された量の電子ビーム照射に曝露することにより調製される。
【0121】
得られた第1官能化基材をすすいで、あらゆる未反応のグラフトモノマーを除去し、続いて溶媒中に1つ以上のグラフトモノマーを含む第2溶液を吸収させてよく、ここで1つ以上のグラフトモノマーは、グラフト化のためにアクリレート基を、かつ、続く紫外線架橋のために少なくとも1つの更なるエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーを含み、並びに次いで、第2溶液を吸収した第1官能化基材を調整された量の電子ビーム照射に曝露して、光開始剤基及びエチレン性不飽和重合性基の両方を有する第2官能化基材を形成する。
【0122】
更に改質した官能化基材30を、任意の洗浄/すすぎ工程(例えば、代表的方法10の代表的な洗浄/すすぎ工程500)及び任意の乾燥工程(例えば、代表的方法10の代表的な乾燥工程600)に進めることができる。2工程のグラフト化プロセスに続き、吸収した基材を紫外線照射工程により更に加工することができる。
【0123】
任意の加熱工程(図示せず)では、親水性基材30は加熱される。典型的には、任意の加熱工程中に、多くの要因(反応物質、多孔質ベース基材、グラフト化種に存在している官能基、及びオーブン36内での滞留時間が挙げられるが、これらに限定されない)に応じて、親水性基材30を最大で約120℃のオーブン温度を有するオーブンに入れる。典型的には、任意の加熱工程で用いるオーブン温度は、30℃以上(望ましくは40℃以上、50℃以上、又は60℃以上)である。オーブン温度は、通常、約60℃〜約120℃の範囲である。典型的には、任意の加熱工程中のオーブンでの滞留時間は、約60秒〜約1時間の範囲である。
【0124】
任意の加熱工程などの本発明の任意の加熱工程では、従来の任意のオーブンを使用してもよい。好適なオーブンとしては、代表的方法10の任意の乾燥工程600で用いられる上述のオーブンが挙げられるが、これに限定されない。望ましくは、代表的方法50の任意の加熱工程800で用いるオーブンは、空気循環式オーブンを含む。
【0125】
親水性基材33は、将来使用するためにロールの形状で貯蔵され、そのままで直ちに使用され、又は1つ以上の追加のプロセス工程(図示せず)で更に加工されてもよい。好適な追加のプロセス工程としては、コーティング組成物を更なる親水性基材35に適用する反応工程又はコーティング工程、1つ以上の追加層を更なる親水性基材33に一時的又は永久的に結合する挟み込み工程、更なる親水性基材33を1つ以上の追加の構成要素と組み合わせて最終製品(例えばフィルタアセンブリ)を作製する組み立て工程、更なる親水性基材33又は更なる親水性基材33を含む最終製品を所望の梱包材料(例えばポリエチレンフィルム又は袋)で包装する包装工程、又はこれら任意の組み合わせを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0126】
本発明の官能化基材を作製する方法は、1つ以上のプロセスパラメータ(以下に記載されているプロセスパラメータが挙げられるが、それらに限定されない)によって表してよい。
【0127】
1.バッチプロセス対連続プロセス
本発明の官能化基材を作製する方法は、連続プロセス(例えば、図1に示されている代表的方法10)を用いて行なってもよく、又は上述の1つ以上のプロセス工程をそれぞれ別個に行なうバッチプロセスを用いて行なってもよいことに留意するべきである。望ましくは、官能化基材を作製する方法は、図1に示されている代表的方法10のような連続プロセスを用いて行なう。
【0128】
2.線張力
代表的方法10などの連続プロセスを使用するとき、1つ以上の駆動ロール(図示せず)を使用し、多孔質ベース基材12又は官能化基材30を連続プロセスを通して移動してもよい。1つ以上の駆動ロールは、多孔質ベース基材12及び官能化基材30に十分な張力を付与し、多孔質ベース基材12及び官能化基材30を所定の装置を通って移動させる。加工中の多孔質ベース基材12又は官能化基材30の収縮及び/又は引裂きを防止するため、適用する張力量を決定する際には注意をしなければならない。多孔質ベース基材12又は官能化基材30を運ぶために用いるキャリアウェブ(例えば、取り外し可能なキャリア層22)が強固な場合、基材自体に張力の負荷をかけることなく、張力の負荷を調整しやすくなる。
【0129】
本発明の代表的な連続グラフトプロセスでは、1つ以上の駆動ロールを、典型的には、多孔質ベース基材12又は官能化基材30を特定の装置を介して動かすために、多孔質ベース基材12又は官能化基材30の30cm(12インチ)幅のウェブに対して張力が5〜40ポンド(22〜178ニュートン)の範囲で操作し、多孔質ベース基材12又は官能化基材30の直線cmあたりの線張力は0.7〜5.9ニュートンである。1つの望ましい実施形態では、1つ以上の駆動ロールを、多孔質ベース基材12又は官能化基材30の直線cmあたりの線張力が1.4〜3.0ニュートンの範囲で操作する。
【0130】
3.ライン速度
本発明の代表的な連続グラフトプロセスでは、1つ以上の駆動ロールは、特定の装置を介して望ましいライン速度ももたらす。望ましくは、多孔質ベース基材12及び官能化基材30は、少なくとも約1.52メートル/分(mpm)(5fpm)のライン速度で所定の装置を通って移動する。1つの望ましい実施形態では、多孔質ベース基材12及び官能化基材30は、特定の装置を通って約3.05mpm(10fpm)〜約30.5mpm(100fpm)の範囲のライン速度で移動する。
【0131】
さまざまな親水性基材を調製するために、官能化基材を作製する開示される方法を用いてもよい。親水性基材は、グラフト化と、それに続く、グラフト化光開始剤(a)、エチレン性不飽和基を有するモノマー(b)、及び(c)グラフトされている又はされていない任意のその他親水性モノマーによる紫外線開始型重合由来の重合コーティングを有する。
【0132】
上述の官能化基材の作製法のいずれかでは、特定の官能化基材を形成するために、上述の多孔質ベース基材、グラフトモノマー、及び反応物質のうちのいずれかを用いてもよい。多孔質ベース基材は、微小多孔性膜などの多孔質膜、不織布ウェブ、又は多孔質繊維の形態である場合が多い。いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、熱誘起相分離(TIPS)法により形成された疎水性微小多孔性膜を含む。
【0133】
1つの実施形態では、この方法はその表面に親水性ポリマーコーティングを有する多孔質物品を提供し、ポリマーコーティングは、グラフト化光開始剤基と、グラフト化していないアクリレート基又はその他非アクリレートエチレン性不飽和重合性基であってよい1つ以上のエチレン性不飽和重合性モノマーとの紫外線重合反応生成物を含む。別の実施形態では、この方法は上面に親水性ポリマーコーティングを有する多孔質物品を提供し、ポリマーコーティングは、グラフト化光開始剤基と、1つ以上の非アクリレートエチレン性不飽和重合性基を有するグラフトモノマーと、1つ以上のエチレン性不飽和重合性モノマーとの紫外線重合反応生成物を含む。
【0134】
親水性基材の作製法は、グラフトされかつ紫外線重合された種が親水性基を包含するため、多孔質ベース基材の従来の疎水性特性を改質する。1つの実施形態では、第1グラフト化アクリレート基及び第2非グラフト化エチレン性不飽和基を有するグラフトモノマーは、式IV(上記)に示すように親水性基を含むことができる。
【0135】
例えば、式IVのポリ(アルキレンオキシド)化合物を用い、疎水性多孔質ベース基材に親水性特性を付与することができる。これらグラフトモノマーは、アクリレート基、非アクリレートエチレン性不飽和基、及び親水性ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリアルキレンオキシド)基を有する。別の方法としては、親水性ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリ(アルキレンオキシド))基を含まない式IIのグラフトモノマーを用いてもよい。これらの場合、グラフト化アクリレート基又は非アクリレートエチレン性不飽和基を含んでよい第3モノマー、並びに四級アンモニウム基などの親水性基を用いて親水性が付与される。
【0136】
本発明は、疎水性多孔質ベース基材(例えば、疎水性微小多孔性膜)の利点の多くを有するが、官能化基材の表面上の永久的な親水性を有する官能化基材の形成を可能にする。本発明は、親水性ポリマーから形成された多孔質ベース基材に関連する多くの既知の問題(湿度により膨張するという問題、加湿のない場合の脆弱性、機械的強度の低さ、並びに耐溶剤性、耐苛性及び/又は耐酸性の低さが挙げられるが、これらに限定されない)を軽減又は解消する。本発明は、特定の官能化基材を形成するために用いられる材料及び工程に応じてさまざまな親水性度を有する官能化基材の形成を可能にする。
【0137】
親水性多孔質膜は、濾材、例えば水濾過用デバイスにおける濾材として特に適している。ポリマーがグラフト(直接的又は間接的のいずれか)され親水性になるとき、濾材は耐久性を持つ。フィルターカートリッジなどの多くの水用濾材では、水性NaOHに接触させる、又は水性NaOHで洗い流すことにより、濾材を洗浄又は消毒する。本明細書に記載する親水性多孔質基材は、NaOHに接触する、又はNaOHで洗い流すことができ、表面エネルギー及び湿潤性で明らかなように親水性特性を保持することができる。
【0138】
本発明は上述され、更に以下の実施例によって例示されているが、これらは決して、本開示の範囲を限定することを強制すると解釈すべきではない。一方、多種多様な他の実施形態、修正、及びその同等品に対する対策をとることができ、その対策は、当業者自らが、本明細書の記述内容を読んだ後で本発明の趣旨及び/又は添付の特許請求の範囲の範疇を逸脱することなく提案できるものであることを、明確に理解すべきである。
【実施例】
【0139】
材料
「VAZPIA」は、米国特許第5,506,279号(バブー(Babu)ら)の実施例1にしたがって調製される、2−プロペノイルアミノエタン酸、2−(4−(2−ヒドロキシ−2メチルプロパノイル)フェノキシ)エチルエステルを指す。
【0140】
「PEG 400」、ポリエチレングリコール、分子量400、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)
「ルシリン(LUCIRIN)TPO」は、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte)のBASF社から入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイル(trimethylbenzoy)ジフェニルホスフィンオキシドである。
【0141】
マサチューセッツ州ウィルミントンのエネルギーサイエンス社(Energy Sciences,Inc.)から得たモデルCB−300電子ビームシステムを用いて電子ビームを照射した。照射のために、2枚のポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの間にサンプルフィルムを定置した。特に定めのない限り、以下の手順にしたがった。フィルム試料を、0.10mm(4ミル)厚さのPETの2つのより大きい面積寸法片の間に定置し、一方の末端部でテープ留めした。次に、この挟み込み体を開き、試料フィルムをモノマー溶液で湿らせ、挟み込み体を再度閉じた。挟み込み構造体の表面にラバーローラーを静かにかけることによって、入り込んだ気泡を取り除き、余分な液体を搾り出した。この挟み込み体をPETの移動ウェブにテープ留めし、速度6.09mpm(20fpm)、電圧4.8J(300keV)で電子ビームプロセッサ通って移動させ、目標とする照射線量をもたらすようにカソードに十分なビーム電流をかけた。国際標準研究所(national standards laboratory)(RISO、デンマーク)で較正し、トレース可能な薄膜線量計を用いてビームを較正した。場合によっては、ビーム照射下での全体の照射線量率を低下させ、一方、滞留時間を長くするために、ウェブ方向に延びるカソードを用いて、電子ビームをより特徴的にするように、ビームを複数回通して、より長い曝露時間を模擬することによって、照射線量をフラクション化した(すなわち、ブロードビーム(BroadBeam)等)。
【0142】
水分流動性試験
水分流動性は、約47ミリメートル(1.85インチ)の直径を有する試験フィルムのディスクを、型式4238ポールゲルマン(Pall Gelman)磁気フィルターホルダー(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills)、ポール社(Pall Corp.)から入手可能)内に定置することにより測定した。真空ポンプを取り付けたフィルターフラスコ上に、このフィルターホルダーを定置した。減圧ゲージを使用して減圧を監視した。約150ミリリットルの水をフィルターホルダーに入れ、減圧した。約50ミリリットルの水がフィルムを通過した後(減圧ゲージはこの時点で約0.83mm Hg(約21インチHg)を指していた)、ストップウォッチを用いてタイミング測定を開始した。残りの水が全部フィルムを通過したとき、タイミング測定をやめた。水分流動性は、減圧0.83mm Hgで100ミリリットルの水が膜を通過するのにかかった時間(秒で測定)であった。
【0143】
平均孔径
平均孔径決定の原理は、湿潤性液体でサンプル膜の孔を自然に満たし、非反応性気体を用いて、膜の孔から液体を置換することによるものであり、ここでは気体圧力及び流速が正確に測定される。自動化キャピラリーフローポロメーター(Automated Capillary Flow Porometer)モデル番号APP−1200−AEXとニューヨーク州イサカ(Ithaca)のポーラスマテリアル社(Porous Materials Inc.)(PMI)から供給されているソフトウェアのカプウィン(Capwin)バージョン6.71.54を用いてこれらの値を得た。フロリナートFC−43(Fluorinert FC-43)(3Mから入手可能)を湿潤性液体として使用し、圧縮窒素ガスを、最大圧力の設定が689kPa(100psi)で、置換のために使用した。
【0144】
液滴浸透法:
サンプルの表面エネルギーは、ジェムコ社(Jemmco LLC.)(ウィスコンシン州メクォン(Mequon)53092)から入手可能なダインテスト溶液(Dyne Test Solutions)(商標)を用いて測定した(膜科学雑誌(Journal of Membrane Science)33(1987年)、315〜328ページに開示される一般試験法、膜蒸留の適用性における濡れ基準(Wetting Criteria For The Applicability of Membrane Distillation))。表面張力が増加している一連の試験溶液を、サンプル表面上で溶液が玉を形成するまでサンプルに適用する。次いで表面張力を記録する。
【0145】
本発明の親水性基材は、種々の溶液又は溶媒に曝露すると様々な程度の湿潤性を示すことができる。湿潤性は、親水性基材の親水性特性と相関関係にある場合が多い。本明細書で使用するとき、「瞬時湿潤」又は「瞬時湿潤性」という用語は、水が基材表面に接触するとすぐに(典型的には1秒未満以内で)、水滴の特定の基材への浸透を指す。例えば、表面湿潤エネルギーが約72ダイン以上だと、通常、瞬時湿潤したことになる。本明細書で使用するとき、「瞬時湿潤しない」という用語は、水滴が特定の基材に浸透するが、水滴が基材の表面に接触してすぐには湿潤しないことを指す。本明細書で使用するとき、「湿潤しない」という用語は、水滴が特定の基材に浸透しないことを指す。例えば、表面湿潤エネルギーが約60ダイン以下だと、通常、湿潤しないことになる。
【0146】
親水性基材は、熱に複数回曝露することに対する耐性も示す。
【0147】
(実施例1)
熱誘起相分離(TIPS)微小多孔性ポリプロピレンフィルムのサンプルを、米国特許第4,726,989号(ムロジンスキ(Mrozinski))に開示される方法を用いて調製した。TIPSフィルムは、厚さ約3.13mm(4.5ミル)、ガーレー(空気流)約6秒/空気50cc、孔径の範囲約0.44〜0.8マイクロメートル、表面湿潤エネルギー約35ダイン(ジェムコ社(JEMMCO LLC)の液滴浸透法用溶液を使用)、及び水分流動性25秒(47mmホルダー、77.9kPa(23インチHg)真空引き、IPA予備湿潤)といった特性を有した。サンプルに10% PEG400ジアクリレート、メタノール中0.5% VAZPIA(固体に添加)溶液を吸収させた。このサンプルを、ウェブキャリア上でビームを通じて運び、ビームチャンバを出たとき、酸素の膜内への再拡散を遅らせるように、0.10mm(4ミル)のPET層間に「濡れた状態」で挟み込んだ。
【0148】
挟んだサンプルに、電圧を4.8J(300keV)に設定したESI CB−300電子ビームで10kGyの照射線量のe−ビームを照射した。次に、サンプル(まだ挟まれている状態)を、スペクトロライン(Spectroline)型SP−100Pを用いて、365nmの光で20分間紫外線照射した。
【0149】
紫外線照射の後、グラフト済みの架橋されたTIPSサンプルをトレイに入れた水に浸し、きれいな水に3回交換してサンプルを洗浄した。サンプルを、低温の空気噴霧器を用い、続いてオーブン内に60℃で1/2時間入れて乾燥した。得られた多孔質フィルムサンプルは、水で瞬時湿潤した。本明細書で使用するとき、「瞬時湿潤」又は「瞬時湿潤性」という用語は、水が基材表面に接触するとすぐに(典型的には1秒未満以内で)、水滴の特定の基材への浸透を指す。
【0150】
比較例2
この比較例は、VAZPIAを吸収させず、続けてサンプルを紫外線照射しなかったこと以外は、実施例1のとおりに調製した。乾燥及び加熱後のサンプルは、自然に湿潤しなかったことから、TIPSサンプルが、フィルムを親水性にするのに十分にグラフトされなかったことが示される。表面湿潤エネルギーを測定するため、液滴浸透法を用いたところ、ここでは表面湿潤エネルギーは約56ダインであることがわかった。(最初のTIPSサンプルと比較して)表面湿潤エネルギーの増加は、膜への一定のグラフト化が開始されたことを示す。
【0151】
(実施例3)
このサンプルは、e−ビームを5kGyにしたこと以外は実施例1のとおりに調製した。乾燥及び加熱後のサンプルは、自然に湿潤したことから、(紫外線硬化及びe−ビームグラフト化により)PEG 400ジアクリレートが十分に重合し、フィルムを親水性にしたことが示される。表面湿潤エネルギー(所望の親水性)を測定するため、液滴浸透法で水を用いたところ、表面湿潤エネルギーは72ダイン以上であることがわかった。
【0152】
比較例4
この比較例は、VAZPIAを吸収させず、続けてサンプルを紫外線照射しなかったこと以外は、実施例3のとおりに調製した。乾燥及び加熱後のサンプルは、自然に、又は真空(圧力)で補助しても湿潤しなかったことから、フィルムを親水性にするのに十分にグラフトされなかったことが示される。表面湿潤エネルギーを測定するため、液滴浸透法を用いたところ、表面湿潤エネルギーは約42ダインであることがわかった。(最初のTIPSサンプルと比較して)表面湿潤エネルギーの増加は、膜への一定のグラフト化が開始されたことを示す。
【0153】
比較例5
この比較例は、VAZPIAを吸収させず、続けてサンプルを紫外線照射せず、かつサンプルを11kGyではなく20kGyで照射したこと以外は、実施例3のとおりに調製した。乾燥及び加熱後のサンプルは、自然に湿潤したことから、追加のe−ビーム放射により十分にグラフトし、フィルムを親水性にしたことが示される。しかしながら、PP膜の物理的性質は低下し、すなわち、強度が低く、熱への曝露後砕ける可能性があることから、このe−ビーム照射線量ではポリマー鎖が劣化することが示される。
【0154】
(実施例6)
この実施例は、5%PEG400ジアクリレートのみを吸収溶液中で使用したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。乾燥及び加熱後のサンプルは、自然に水で湿潤しなかったが、真空(圧力)で補助すると湿潤したことから、フィルムを瞬時湿潤性にするのに十分なグラフト化が起こらなかったことが示される。
【0155】
比較例7
この比較例は、VAZPIAを吸収させず、続けてサンプルを紫外線照射しなかったこと以外は、実施例6のとおりに調製した。乾燥及び加熱後のサンプルは、自然に、又は真空(圧力)で補助しても湿潤しなかったことから、フィルムを親水性にするのに十分なグラフト化が起こらなかったことが示される。
【0156】
(実施例8)
この実施例は、サンプルを約0.75mradでe−ビーム加工し、吸収溶液が10%PEG 400ジメタクリレート、2% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びVAZPIA(モノマー重量の0.42%)を含有すること以外は、実施例1のとおりに調製した。洗浄後のサンプルを、オーブン中60℃のフレーム内で1/2時間加熱乾燥すると、自然に湿潤することが確認された。これは、十分なe−ビームグラフト化とその後の(紫外線硬化による)重合が、フィルムを親水性にしたことを示す。
【0157】
表面湿潤エネルギー(所望の親水性)を測定するため、液滴浸透法で水を用いたところ、表面湿潤エネルギーは72ダイン以上であることがわかった。コーティングされ、かつ照射されるとき、緊密孔側を上にしたバブルポイントによる孔径は約0.38マイクロメートルに若干縮小し、水分流動性は約30秒であった(緊密孔側を下にした場合はバブルポイント0.36マイクロメートル、及び水分流動性43秒(IPA予備湿潤は不要))。別々の2枚のサンプル片を、それぞれ1N HCl及び1N NaOHに室温で75時間浸したところ、フィルム特性の変化は見られなかった。
【0158】
比較例9
この比較例は、VAZPIA又は3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを吸収溶液に加えず、続けてサンプルを紫外線照射しなかったこと以外は、実施例8のとおりに調製した。このサンプルを、エマソンスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer)(トゥイング・アルバート(Thwing Albert))型130にて55℃で1時間乾燥させた。乾燥後、多孔質フィルムは自然に湿潤しなかった。表面湿潤エネルギーは39ダインであることがわかった。用いた親水性化モノマー(PEG 400ジメタクリレート)の量にかかわらず、e−ビームグラフト化工程でメタクリレート基の反応性が低下したため、フィルムを親水性にするためのグラフト化が不十分であった。
【0159】
比較例10
この比較例は、サンプルを7.5kGyではなく20kGyで照射し、VAZPIA又は3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートをコーティング溶液に加えず、続けてサンプルを紫外線照射せず、更に実施例9のようにスピードドライヤー(Speed Dryer)で乾燥させたこと以外は、実施例8のとおりに調製した。乾燥後、サンプルは自然に湿潤しなかったことから、追加のe−ビーム放射にもかかわらず、グラフト化工程でアクリレート基よりメタクリレート基の反応性が低いため(実施例5と比較)、フィルムを親水性にするためのグラフト化が不十分であったことが示される。しかし追加放射により、表面湿潤エネルギーは45ダインと計測され、実施例9より若干良いことがわかった。
【0160】
(実施例11)
この実施例は、VAZPIAをモノマー重量に1.0%添加したこと以外は、実施例8(e−ビーム照射線量7.5kGy)のとおりに調製した。洗浄後、このサンプルをオーブン中60℃のフレーム内で1/2時間加熱することにより乾燥すると、自然に湿潤することが確認されたことから、e−ビームグラフト化後、フィルムを親水性にするのに十分な重合(紫外線硬化による)があったことを示す。
【0161】
表面湿潤エネルギー(所望の親水性)を測定するため、液滴浸透法で水を用いたところ、表面湿潤エネルギーは72ダイン以上であることがわかった。バブルポイントによる孔径は縮小せずに約0.44マイクロメートルのままであり、水分流動性は約25秒であった(緊密孔側を下にしてコーティング及び照射)。
【0162】
紫外線硬化中、より多い量のグラフト化VAZPIAが、膜基材上により多くのフリーラジカル型開始部位を生じさせたと推測される。溶液からのモノマー供給がなくなるため、グラフト鎖長を事実上制限し、これにより、親水性が高いままであってもコーティング由来の孔の目詰まりは低減又は消失される。
【0163】
(実施例12)
この実施例は、VAZPIAをモノマー重量に0.25%添加したこと以外は、実施例11のとおりに調製した。洗浄後のサンプルを、オーブン中60℃のフレーム内で1/2時間加熱することにより乾燥した。このサンプルは自然に湿潤しなかったことから、e−ビームグラフト化後、フィルムを親水性にするための、継続して重合(紫外線硬化による)するのに十分高濃度の開始部位がなかったことが示される。液滴浸透法用のジェムコ社(JEMMCO LLC)の溶液を用いると、表面湿潤エネルギーが約64ダインであることがわかった。
【0164】
(実施例13)
この実施例は、サンプルをe−ビーム放射しなかったこと以外は、実施例1のとおりに調製した。吸収溶液は、10% PEG400ジメタクリレート及び2% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタノール中1.0% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有した。20分間の紫外線硬化後、洗浄及び乾燥後のサンプルは自然に湿潤しなかったことから、紫外線硬化のみによる重合は、フィルムを親水性にするには不十分であることが示される。
【0165】
(実施例14)
この実施例は、サンプルをe−ビーム放射しなかったこと以外は、実施例1のとおりに調製した。吸収溶液は、11.5% PEG400ジメタクリレート及び4% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタノール中2.0% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有した。クアンタムテクノロジーズ(Quantum Technologies)(クアント(Quant)48)のUVAランプを用いた4分間の紫外線硬化後、洗浄及び乾燥後のサンプルは自然に湿潤しなかったことから、より高強度の紫外線硬化による重合は、フィルムを親水性にするには不十分であることが示される。
【0166】
比較例15
この比較例は、サンプルをe−ビーム放射しなかったこと以外は、実施例1のとおりに調製した。吸収溶液は、11.5% PEG400ジメタクリレート及び4% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、モノマー重量に対して1.0%のメタノール中ルセリン(Lucerin)TPO(非グラフト化光開始剤)を含有した。クアンタムテクノロジーズ(Quantum Technologies)(クアント(Quant)48)のUVAランプを用いた4分間の紫外線硬化の後、洗浄及び乾燥後のサンプルは自然に湿潤しなかった。このことは、この系におけるより高強度の紫外線硬化による重合とより効率的な光開始剤は、フィルムを親水性にするのに十分でなかったことを示している。
【0167】
(実施例16)
この実施例は、吸収溶液が、10% PEG400ジメタクリレート、メタノール中1.0% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有し、3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを含まなかったこと以外は、実施例1のとおりに調製した。e−ビーム及び紫外線加工、洗浄及び乾燥後、サンプルは自然に湿潤しなかったことから、フィルムを親水性にするために十分なe−ビームグラフト化又は重合(紫外線硬化による)が起こらなかったことが示される。
【0168】
(実施例17)
この実施例は、吸収溶液が11.5% PEG400ジメタクリレート、4% PEG400ジアクリレート、メタノール中2.0% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。e−ビーム及び紫外線加工、洗浄及び乾燥後、サンプルは自然に湿潤したことから、e−ビームグラフト化が、紫外線硬化による重合のために表面を十分に修飾し、フィルムを親水性にしたことが示される。コーティング処方中のアクリレート又はジアクリレートをより早くグラフトすることの重要性が実証される。
【0169】
比較例18
この比較例は、吸収溶液が11.5% PEG400ジメタクリレートと、メタノール中1.4%ルセリン(Lucerin)TPO(モノマー重量に対し)を含有したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。e−ビーム及び紫外線加工、洗浄及び乾燥後、サンプルは自然に湿潤しなかったことから、グラフト化光開始剤の不在下では、低照射線量によるe−ビームグラフト化は、フィルムを親水性にするための続く紫外線硬化による重合に十分なほど表面を修飾しなかったことが示される。
【0170】
(実施例19)
この実施例は、吸収溶液が、12%アクリル酸、4% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタノール中2% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。e−ビーム及び紫外線加工、洗浄及び乾燥後、サンプルは自然に湿潤したことから、e−ビームグラフト化が、紫外線硬化による重合のために表面を十分に修飾し、フィルムを親水性にしたことが示される。
【0171】
(実施例20)
この実施例は、吸収溶液が、12%アクリル酸、4% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2.0% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。e−ビーム、及びクアンタムテクノロジーズ(Quantum Technologies)(クアント(Quant)48)のUVAランプを用いた4分間の紫外線硬化後、洗浄及び乾燥後のサンプルは自然に湿潤した。
【0172】
(実施例21)
この実施例は、吸収溶液が、12%N−ビニルピロリドン、4% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタノール中2% VAZPIA(固体に添加)を含有したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。e−ビーム及び紫外線加工、洗浄及び乾燥後、サンプルは湿潤性であったが、他のサンプルほど完全ではなかった。
【0173】
比較例22
この比較例は、サンプルをe−ビーム放射せず、吸収溶液が、12%N−ビニルピロリドン、4% 3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタノール中2.0% VAZPIA(モノマー重量に対し)を含有したこと以外は、実施例1のとおりに調製した。クアンタムテクノロジーズ(Quantum Technologies)(クアント(Quant)48)のUVAランプを用いた4分間の紫外線硬化、洗浄及び乾燥後、サンプルは自然に湿潤しなかった。
【0174】
(実施例23)
TIPS多孔質ポリプロピレン(PP)フィルムのサンプルを、米国特許第4,726,989号(ムロジンスキ(Mrozinski))に開示される方法を用いて製造し、ここでは伸張前に希釈油を抽出した。多孔質膜は、ジェムコ社(JEMMCO LLC)の液滴浸透法用溶液を用いて測定した表面湿潤エネルギーが約35ダイン、水分流動性時間は46秒であった(100mL、47mmのゲルマン(Gelman)磁気フィルター漏斗(4238)、71.1kPa(21インチHg)真空、IPA予備湿潤)。
【0175】
この多孔質ポリプロピレンTIPSサンプルに、9% PEG400ジメタクリレート、2%3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタノール中1.0% VAZPIA光開始剤(モノマー重量に対し)の溶液を吸収させた。PP膜サンプルを、手持ち式ゴム製ローラーを用いて過剰の溶液を全て押し出し、0.10mm(4ミル)のPETフィルム層間に「濡れた状態」で挟み込んだ。この組立品を、キャリアウェブ上でビームを通じて運んだ(PETカバーがビームチャンバを出たとき、酸素の膜内への再拡散を遅らせる)。挟み込み状の組立品に、電圧を4.8J(300keV)に設定したESI CB−300電子ビームで7.5kGyの照射線量のe−ビームを照射した。次に、サンプル(まだ挟まれている状態)を、スペクトロライン(Spectroline)型SP−100Pを用いて、365nmの光でそれぞれの側を10分間紫外線照射した。
【0176】
紫外線照射の後、PETカバーからグラフト済みの架橋されたPPサンプルを外し、トレイに入れた水に浸し、きれいな水に3回交換してサンプルを洗浄した。サンプルをフレーム上に取り付け、オーブン中60℃で1/2時間加熱することにより乾燥した。得られた親水性多孔質フィルムサンプルは水滴で瞬時湿潤した。最終製品の平均孔径0.56マイクロメートルと比較して、最初のフィルムの平均孔径は0.51マイクロメートルであったことから、グラフト化プロセスによる孔の目詰まりが起こらなかったことが示される。(ごくわずかに孔径が拡張したが、十分に実験誤差及びフィルムのばらつきの範囲内である。)
フレームに付けたPPサンプルを121℃、3時間半のサイクルで蒸気オートクレーブ処理し、曝露後も更に瞬時水湿潤であることがわかった。47mmのディスクを切り出し、流動性時間は本質的に変わらず48秒と測定された。次いで、グラフト化親水性PPディスクを0.625N NaOHで満たした40mLのバイアル瓶に入れ、60℃で300分間加熱した。サンプルをバイアル瓶から取り出し、水で十分に洗浄して乾燥した。サンプルは、まだ水滴に対する瞬時湿潤性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化基材の製造法であって、
1)間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材を提供する工程と、
2)前記多孔質ベース基材に第1溶液を吸収させて、吸収した多孔質ベース基材を形成する工程であって、前記第1溶液が(a)アクリレート基及び光開始剤基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーと、(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、任意に(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーと、を含み、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つが親水性である工程と、
3)前記多孔質ベース基材の前記表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第1官能化基材を形成するために、前記吸収した多孔質ベース基材を調整された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、
4)残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を架橋するために、グラフト化光開始剤基を含む前記多孔質ベース基材を調整された量の紫外線に曝露する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記多孔質ベース基材が微小多孔性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質ベース基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ又は多孔質繊維から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モノマー(b)がポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上のフリーラジカル重合性基を有する前記モノマー(b)が、前記多孔質ベース基材にグラフトするための第1アクリレート基と、続く紫外線架橋のための第2メタクリレート基と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1溶液が、(c)フリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記微小多孔性ベース基材が、熱誘起相分離(TIPS)法により形成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記微小多孔性ベース基材が、熱誘起相分離(TIPS)法により形成されたプロピレンポリマー膜を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調整された量の電子ビーム照射曝露が、照射線量を10kGy未満とすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
官能化基材の製造法であって、
1)間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材を提供する工程と、
2)前記多孔質ベース基材に第1溶液を吸収させて、吸収した多孔質ベース基材を形成する工程であって、前記第1溶液が(a)アクリレート基及び光開始剤基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーと、(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、任意に(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーと、を含み、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つが親水性である工程と、
3)前記吸収した多孔質ベース基材を取り外し可能なキャリア層と取り外し可能なカバー層の間に配置して、多層構造体を形成する工程と、
4)前記取り外し可能なキャリア層と前記取り外し可能なカバー層との間に位置する官能化基材を形成するために、前記多層構造体を調整された量の電子ビーム照射に曝露する工程であって、前記官能化基材が前記多孔質ベース基材の前記表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む工程と、
5)前記多層構造体を紫外線に暴露して、グラフト化していないエチレン性不飽和基の重合を開始する工程と、
6)前記多層構造体から前記キャリア層及び前記カバー層を除去する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材と、前記多孔質ベース基材の前記表面から延在するグラフト化光開始剤基と、を含む、物品。
【請求項12】
前記多孔質ベース基材の前記表面から延在するグラフト化エチレン性不飽和基を更に含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記多孔質ベース基材の前記表面から延在するグラフト化親水性基を更に含む、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、任意に(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーとの重合反応生成物を更に含み、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つが親水性である、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記グラフト化エチレン性不飽和基が、少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーに由来する、請求項12に記載の物品。
【請求項16】
ポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレートから得られる、請求項14に記載の物品。
【請求項17】
前記多孔質ベース基材が微小多孔性である、請求項11に記載の物品。
【請求項18】
前記多孔質ベース基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、又は多孔質繊維を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項19】
前記多孔質ベース基材が、微小多孔性の熱誘起相分離膜を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項20】
前記熱誘起相分離膜が、プロピレンポリマーを含む、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記グラフト化光開始剤が、電子ビーム照射への曝露による、アクリレート基及び光開始剤基を有するモノマーの反応生成物を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項22】
前記グラフト化エチレン性不飽和基が、電子ビームへの曝露による、ジ(メタ)アクリレートポリ(アルキレンオキシド)と前記多孔質ベース基材の前記表面との反応生成物を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項23】
前記物品が、電子ビーム照射への曝露による、(a)フリーラジカル重合性基及び光開始剤基を有するモノマーの反応生成物を含む第1グラフト化種と、(b)部分的にアクリレート化したポリオールの反応生成物を含む第2グラフト化種と、を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項24】
紫外線への曝露による、未反応のエチレン性不飽和基の架橋反応生成物を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項25】
官能化基材の製造法であって、
1)間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材を提供する工程と、
2)前記多孔質ベース基材に第1溶液を吸収させて、吸収した多孔質ベース基材を形成する工程であって、前記第1溶液が(a)アクリレート基及び光開始剤基を有する少なくとも1つのグラフトモノマーを含む工程と、
3)前記多孔質ベース基材の前記表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第1官能化基材を形成するために、吸収した多孔質ベース基材を調整された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、
4)グラフト化光開始剤基を含む前記第1官能化基材に、(b)少なくとも1つのアクリレート基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、任意に(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基及び親水性基を有する1つ以上の追加のモノマーと、を含む第2吸収溶液を吸収させる工程であって、(b)又は(c)のモノマーのうち少なくとも1つが親水性である工程と、
5)残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を架橋するために、グラフト化光開始剤基を含む前記吸収した多孔質ベース基材を調整された量の紫外線に曝露する工程と、を含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−500894(P2011−500894A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528994(P2010−528994)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079176
【国際公開番号】WO2009/048933
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】