説明

親水性界面活性剤を含有する経口医薬組成物

【課題】吸収性に優れる(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩を含有する経口医薬組成物の提供。
【解決手段】(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩又はその溶媒和物と、親水性界面活性剤を含有する経口医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性鼻炎の治療及び/又は予防効果を有する(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩に親水性界面活性剤を配合した経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオアベイラビリティー(以下、BAという。)は、全身循環血中に到達する薬物の投与薬物に対する相対的な量とその速度を表す指標であり、薬効や毒性と密接に関連する臨床的に重要なパラメーターである。一般に、経口投与時のBAが低い薬物は、期待される薬効が得られなかったり、個体内および個体間変動が大きくなるため、薬効や毒性の予測、制御が困難になる。特に、用量−効果曲線がシャープであったり、安全域が狭い薬物では、血中薬物濃度の制御が困難となるため、開発にあたって、BAを向上させる努力が必要となる。BAは初回通過効果や消化管内における代謝安定性等の諸要因によってその大きさが決まるが、消化管からの薬物の吸収性を改善することにより、BAが向上することが知られている。
【0003】
薬物の吸収性改善のための方法として、界面活性剤を配合する方法が知られており、例えば、非晶質の難溶性薬物(ベンゾジアゼピン誘導体)に非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)及び高分子基剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を組み合わせた技術(特許文献1)、難溶性薬物(タクロリムス)に2種以上の界面活性(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びモノカプリル酸プロピレングリコール)を組み合わせた技術(特許文献2)、難溶性のプロピオン酸系NSAIDs(イブプロフェン)に水溶性高分子基剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)及び非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)を組み合わせた技術(特許文献3)等が開示されている。
しかし、本発明記載のようなテトラヒドロイソキノリン骨格を有する化合物における吸収性の改善については、これまでに報告がない。
【特許文献1】国際公開第96/19239号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/46268号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/04896号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アレルギー性鼻炎治療薬として有用な(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩を有効成分とする、吸収性の優れた経口医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、新たなアレルギー性鼻炎治療薬の創製を目指して鋭意検討を行った結果、下式(1)に示す(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩(1)が、アレルギー性鼻炎における鼻づまり症状を改善する作用を有することを見出した。
【0006】
【化1】

【0007】
そして、さらに本発明者らは、上記化合物(1)を有効成分とする医薬組成物について種々検討を行ったところ、化合物(1)に親水性界面活性剤を配合することにより、消化管からの吸収性に優れた経口医薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1](+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩又はその溶媒和物と、親水性界面活性剤を含有する経口医薬組成物、
[2]親水性界面活性剤がHLB値10以上の非イオン性界面活性剤である前記[1]に記載の経口医薬組成物、
[3]親水性界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である前記[1]に記載の経口医薬組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩を含有する、消化管からの吸収性に優れ、高いBAを発揮する経口医薬組成物を提供することができる。また、当該化合物のBAが向上すれば、投与量を少なくすることができ、さらに安全性を確保することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン(1’)及びそのフマル酸塩(1)は、例えば、後記実施例に示すように下記工程に従い製造することができる。なお、反応工程図中の*印は不斉炭素を示す。
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
すなわち、反応工程Aにより得られる化合物(2)と、反応工程Bにより得られる化合物(3)とを反応させて化合物(4)を得、これを還元し、次いでイソプロピル化した後、還元することにより、(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン(1’)が得られ、さらに、後記実施例のごとく化合物(1’)にフマル酸を作用させることでフマル酸塩(1)が得られる。
【0015】
また、本発明の化合物(1)は、水和物に代表される溶媒和物としても使用することができる。
【0016】
本発明で使用する親水性界面活性剤としては、例えば、ジPOE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ジPOE(8)オレイルエーテルリン酸ナトリウム、ジPOE(4)(C12−15)アルキルエーテルリン酸、ジPOE(6)(C12−15)アルキルエーテルリン酸、ジPOE(8)(C12−15)アルキルエーテルリン酸、ジPOE(10)(C12−15)アルキルエーテルリン酸、トリPOE(4)ラウリルエーテルリン酸、トリPOE(5)セチルエーテルリン酸、トリPOE(8)(C12−15)アルキルエーテルリン酸、トリPOE(10)(C12−15)アルキルエーテルリン酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩;POE(5)ステアリルアミン、POE(10)ステアリルアミン、POE(15)ステアリルアミン、POE(5)オレイルアミン、POE(15)オレイルアミン、POE(4)ステアリン酸アミド、POE(15)ステアリン酸アミド、POE(5)オレイン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド;モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸POE(5)グリセリル、モノステアリン酸POE(15)グリセリル、モノオレイン酸POE(5)グリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POE(6)ソルビット、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット、テトラオレイン酸POE(30)ソルビット、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;PEG−10ラノリン、PEG−20ラノリン、PEG−30ラノリン、POE(5)ラノリンアルコール、POE(10)ラノリンアルコール、POE(20)ラノリンアルコール、POE(40)ラノリンアルコール、POE(20)ソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体;POE(20)ヒマシ油、POE(40)ヒマシ油、POE(50)ヒマシ油、POE(60)ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(30)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(80)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油;POE(5)フィトステロール、POE(10)フィトステロール、POE(20)フィトステロール、POE(30)フィトステロール、POE(25)フィトスタノール、POE(30)コレスタノール等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール;POE(2)ラウリルエーテル、POE(4.2)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、POE(25)ラウリルエーテル、POE(2)セチルエーテル、POE(5.5)セチルエーテル、POE(7)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(23)セチルエーテル、POE(25)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(4)ステアリルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(7)オレイルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(15)オレイルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテル、POE(10)ベヘニルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル、POE(2)(C12−15)アルキルエーテル、POE(4)(C12−15)アルキルエーテル、POE(10)(C12−15)アルキルエーテル、POE(5)2級アルキルエーテル、POE(7)2級アルキルエーテル、POE(9)2級アルキルエーテル、POE(12)2級アルキルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;POE(1)POP(4)セチルエーテル、POE(1)POP(8)セチルエーテル、POE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;モノラウリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、ジステアリン酸PEG−8、ジステアリン酸PEG−150等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記の親水性界面活性剤の中でも、化合物(1)のBA向上の点から、親水性の非イオン性界面活性剤が好ましく、HLB値10以上の非イオン性界面活性剤がより好ましい。ここで、HLBとは親水親油バランス(hydrophile−lipophile balance)の略称であり、界面活性剤が果たす効果を表す指標の一つとして知られ、HLB値が大きいほど親水性が高くなる。本発明において、非イオン性界面活性剤のHLB値は10〜20が好ましく、さらに11〜18が好ましく、特に12〜16が好ましい。なお、HLB値は以下の方法で求めることができる。
(HLB値の測定法)
1.乳化剤の標準物質として、モノステアリン酸ソルビタン(ニッコールSS−10,H LB値:4.7)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ニッコールT S−10、HLB値:14.9)を用いて、流動パラフィンを乳化する。なお、乳化 の処方は流動パラフィンを40質量%、水を56質量%、乳化剤の全量を4質量%と する。乳化剤の全量を一定とし、2種の乳化剤の配合割合を0.1質量%ずつ変えて 乳化する。
2.1で調製した乳化物を水で1質量%に希釈したものを共栓付き試験管に入れ、約30 分静置する。
3.外観評価から最も安定性の良い配合割合を見出し、以下の式より流動パラフィンの所 要HLB値を求める。

流動パラフィンの所要HLB値=((TS−10のHLB値×TS−10の配合率)+(SS−10のHLB値×SS−10の配合率))/100
※)配合率:乳化剤全量を100質量%とした場合の質量百分率

4.未知の乳化剤が親水性であればSS−10と、親油性であればTS−10と組み合わ せて、乳化剤の全量を一定とし、2種の乳化剤の配合割合を0.1質量%ずつ変えて 流動パラフィンを乳化する。処方は1と同様とする。
5.4で調製した乳化物を水で1質量%に希釈したものを共栓付き試験管に入れ、約30 分静置する。
6.外観評価から最も安定性の良い配合割合を見出し、以下の式より未知の乳化剤のHL B値を求める。

未知の乳化剤のHLB値=((流動パラフィンの所要HLB値×100)−(TS−10またはSS−10のHLB値×TS−10またはSS−10の配合率))/未知の乳化剤の配合率
※)配合率:乳化剤全量を100質量%とした場合の質量百分率
【0018】
HLB値10以上の非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸POE(15)グリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POE(6)ソルビット、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット、テトラオレイン酸POE(30)ソルビット、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;PEG−10ラノリン、PEG−20ラノリン、PEG−30ラノリン、POE(5)ラノリンアルコール、POE(10)ラノリンアルコール、POE(20)ラノリンアルコール、POE(40)ラノリンアルコール等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール;POE(20)ヒマシ油、POE(40)ヒマシ油、POE(50)ヒマシ油、POE(60)ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(30)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(80)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油;POE(10)フィトステロール、POE(20)フィトステロール、POE(30)フィトステロール、POE(25)フィトスタノール、POE(30)コレスタノール等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール;POE(4.2)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、POE(25)ラウリルエーテル、POE(5.5)セチルエーテル、POE(7)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(23)セチルエーテル、POE(25)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(7)オレイルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(15)オレイルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテル、POE(10)ベヘニルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル、POE(4)(C12−15)アルキルエーテル、POE(10)(C12−15)アルキルエーテル、POE(5)2級アルキルエーテル、POE(7)2級アルキルエーテル、POE(9)2級アルキルエーテル、POE(12)2級アルキルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;POE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;モノラウリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、ジステアリン酸PEG−150等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらのなかで、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が特に好ましい。
【0019】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ニッコールHCO−20、ニッコールHCO−30、ニッコールHCO−40、ニッコールHCO−50、ニッコールHCO−60、ニッコールHCO−80、ニッコールHCO−100(日光ケミカルズ製)、ユニオックス、ユニオックスHC−20、ユニオックスHC−40、ユニオックスHC−50、ユニオックスHC−60、ユニオックスHC−100(日本油脂製)等が市販品として入手することができる。
【0020】
本発明の経口医薬組成物において、上記化合物(1)と親水性界面活性剤の質量比は、化合物(1)のBA向上の点から1:100〜100:1が好ましく、1:50〜50:1がより好ましく、1:20〜20:1が特に好ましい。
【0021】
本発明の経口医薬組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、医薬組成物に使用される他の任意成分を加えることができる。このような任意成分としては、結晶セルロース、白糖、乳糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム等の賦形剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、プルラン等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、タール色素、三二酸化鉄等の着色剤、アスパルテーム、ステビア等の矯味剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の医薬組成物の形態は、経口医薬組成物であれば特に限定されるものではないが、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤等の経口固形医薬組成物が好ましい。
【0023】
上記化合物(1)の投与量は、ヒトの場合、成人1日当り通常0.1〜1000mg、好ましくは、1〜300mgの範囲内で、1日量を1日1回又は数回に分けて経口投与するのが好ましい。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらによって限定されるものではない。
【0025】
[製造例](+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩の製造
a)4−メチルフェニル[1−(メチルチオ)−2−(3−フルオロフェニル)エチル]スルホンの製造
【0026】
【化5】

【0027】
メチルチオメチル p−トリルスルホン350gをトルエン500mLに溶解し、室温下攪拌した。これに3−フルオロベンジルブロマイド352g、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド26gを順次加えた。次いで50%水酸化ナトリウム水溶液500gを加え、室温下二日攪拌を続けた。
反応終了後、反応液に水500mLを加え、有機層を分離した。更に酢酸エチルで抽出し、有機層を併せ、1N塩酸水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去し、黄白色固体の粗生成物732gを得た。
得られた粗生成物をジエチルエーテル:ヘキサン=1:4混合溶液500mLで攪拌し縣濁液を濾取、ヘキサンで洗浄し表題化合物429g(収率82%)を淡黄色固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ:2.14 (3H, s), 2.48 (3H, s), 2.63 (1H, dd, J = 11.7, 14.4 Hz), 3.59 (1H, dd, J = 2.8, 14.4 Hz), 3.84 (1H, dd, J = 2.8, 11.7 Hz), 6.88-6.99 (3H, m), 7.23-7.30 (1H, m), 7.39 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.88 (2H, d, J = 8.1 Hz).
元素分析(C16H17O2S2F)
理論値 C, 59.23; H, 5.28; F, 5.86
実測値 C, 59.42; H, 5.31; F, 5.69
【0028】
b)4−メチルフェニル[1−(4−フルオロベンジル)−1−(メチルチオ)−2−(3−フルオロフェニル)エチル]スルホンの製造
【0029】
【化6】

【0030】
4−メチルフェニル[1−(メチルチオ)−2−(3−フルオロフェニル)エチル]スルホン400gを無水テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称す)1.2Lに溶解し、アルゴン雰囲気下、室温下攪拌した。反応液を−10〜−12℃まで冷却し、これにn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液404mL(2.62mol/L)を50分かけてゆっくり加えた。次いで無水THF400mLに溶解した4−フルオロベンジルブロマイド279gを20分かけてゆっくり加え、2時間攪拌を続けた。反応液を氷冷冷却に変更し2時間攪拌し、次いで室温下一晩攪拌を続けた。
【0031】
反応終了後、反応液に水500mLを追加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和重曹水、1N塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去し、黄色固化物532gを得た。
1H-NMR (CDCl3)δ:2.31 (3H, s), 2.46 (3H, s), 3.33 (1H, d, J = 15.1 Hz), 3.35 (1H, d, J = 15.1 Hz), 3.39 (1H, d, J = 15.1 Hz), 3.40 (1H, d, J = 15.1 Hz), 6.78-6.91 (5H, m), 7.02-7.08 (2H, m), 7.11 (1H, ddd, J = 6.1, 8.1, 8.3 Hz), 7.30 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.77 (2H, d, J = 8.2 Hz).
【0032】
c)1−(3−フルオロフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−プロパン−2−オンの製造
【0033】
【化7】

【0034】
4−メチルフェニル[1−(4−フルオロベンジル)−1−(メチルチオ)−2−(3−フルオロフェニル)エチル]スルホン532gをメタノール550mLに溶解し攪拌した。反応液に9N塩酸275mLを加え、還流下、3時間攪拌を続けた。
反応終了後、反応液を減圧濃縮し、水500mLを追加し、クロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去し、黄色油状物495gを得た。
1H-NMR (CDCl3)δ:3.71 (2H, s), 3.72 (2H, s), 6.84-6.88 (1H, m), 6.91 (1H, d, J = 7.6 Hz), 6.95 (1H, dd, J = 2.4, 8.6 Hz), 7.01 (2H, ddd, J = 2.2, 6.4, 8.6 Hz), 7.09-7.13 (2H, m), 7.26-7.31 (1H, m).
【0035】
d)1−(3−フルオロフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−プロパン−2−アミ ンの製造
【0036】
【化8】

【0037】
1−(3−フルオロフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−プロパン−2−オン490gと酢酸アンモニウム764gにメタノール2.6Lを加え溶解した。次いで反応液にシアノトリヒドロホウ酸ナトリウム85gを加え、還流下30分攪拌した。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し飽和重曹水200mLをゆっくり加えた。その後、減圧濃縮し、残渣に水酸化ナトリウム水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を水酸化ナトリウム水、飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去し、484gの橙色油状物を得た。
この粗生成物をメタノールに溶解し、フマル酸143gを加え加熱溶解した。その後、室温下、ジエチルエーテルを加え室温下攪拌しながら結晶を析出させた。得られた結晶を濾取し、ヘキサンで洗浄し1フマル酸塩の粗結晶320gを得た。
粗結晶を再度メタノールに加温して溶解し、室温下ジエチルエーテルを加え一晩攪拌して結晶を析出させた。得られた結晶を濾取し、ヘキサンで洗浄し1フマル酸塩を微黄色固体として得た。この固体をクロロホルムに溶解し、水酸化ナトリウム水で洗浄した。水層を再度クロロホルムで抽出し、有機層を水酸化ナトリウム水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去し、目的物226g(3工程、収率74%)を黄色油状物として得た。
1フマル酸塩
1H-NMR (DMSO-d6)δ:3.10-3.70 (4H, m), 3.64 (1H, m), 6.57 (2H, s), 7.03-7.18 (6H, m), 7.24-7.36 (2H, m).
元素分析(C19H19 N1O4F2
理論値 C, 62.80; H, 5.27; N, 3.85; F, 10.46
実測値 C, 62.84; H, 5.31; N, 3.83; F, 10.73
遊離塩基
1H-NMR (CDCl3)δ:2.64 (1H, dd, J = 4.2, 8.1 Hz), 2.67(1H, dd, J = 3.9, 8.1 Hz), 2.76-2.85 (2H, m), 3.24-3.32 (1H, m), 3.38-3.52 (2H, br), 6.87-7.01 (4H, m), 7.12-7.16 (2H, m), 7.23-7.28 (2H, m).
【0038】
e)6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの製造
【0039】
【化9】

【0040】
1−(3−フルオロフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−プロパン−2−アミン84gをトリフルオロ酢酸672mLに溶解し、ホルムアルデヒド水溶液53.9gを加え、70℃で12時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去し、84gの粗生成物を黄色油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ:2.80 (1H, dd, J = 4.2, 16.8 Hz), 2.92 (1H, dd, J = 10.0, 16.8 Hz), 2.95 (1H, dd, J = 9.2, 13.2 Hz), 3.33 (1H, dd, J = 5.1, 13.2 Hz), 3.34-3.44 (1H, m), 4.19 (1H, m), 4.31 (1H, m), 6.76 (1H, dd, J = 2.4, 9.3 Hz), 6.88 (1H, ddd, J = 2.4, 8.5, 8.5 Hz), 6.98-7.07 (3H, m), 7.18-7.24 (2H, m).
【0041】
f)(−)−6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの製造
【0042】
【化10】

【0043】
6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの粗生成物12gとL−ジベンゾイル酒石酸18.3gをエタノール:水=9:1の混合溶液240mLに溶解し、70℃で20時間攪拌した。更に55℃で2時間、40℃で2時間攪拌し、次いで室温で1時間30分攪拌した。析出物を濾取し、エタノール:水=9:1の混合溶液50mLで洗浄し(−)−6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンのL−ジベンゾイル酒石酸塩8.9g(収率30%)を得た。得られた塩をHPLC分析(カラム:Chiralpak AD ダイセル化学工業株式会社製, 10μm, 4.6×250mm, カラム温度40℃, 移動相;メタノール:ジエチルアミン=1000:1,0.9mL/分, 検出:UV268nm)した結果、光学純度は98.8%eeであった[保持時間:(−)体4.6分, (+)体5.3分]。
L−ジベンゾイル酒石酸塩
1H-NMR (DMSO-d6)δ:2.70-2.84 (3H, m), 3.06 (1H, dd, J = 4.2, 12.0 Hz), 3.55-3.66 (1H, m), 4.16 (1H, d, J = 16.1 Hz), 4.23 (1H, d, J = 16.1 Hz), 5.67 (2H, brs), 6.98-7.04 (2H, m), 7.12-7.24 (3H, m), 7.306.76 (1H, dd, J = 2.4, 9.3 Hz), 6.88 (1H, ddd, J = 2.4, 8.5, 8.5 Hz), 6.98-7.07 (3H, m), 7.18-7.24 (2H, m).
元素分析(C34H29 N1O8F2
理論値 C, 66.12; H, 4.73; N, 2.27; F, 6.15.
実測値 C, 66.20; H, 4.78; N, 2.32; F, 6.13.
【0044】
上記得られた(−)−6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンのL−ジベンゾイル酒石酸塩は水酸化ナトリウム水で中和後、酢酸エチル抽出し、更に飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、(−)−6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを無色固化物として定量的に回収した。
遊離塩基
1H-NMR (CDCl3)δ:2.80 (1H, dd, J = 4.2, 16.8 Hz), 2.92 (1H, dd, J = 10.0, 16.8 Hz), 2.95 (1H, dd, J = 9.2, 13.2 Hz), 3.33 (1H, dd, J = 5.1, 13.2 Hz),3.34-3.44 (1H, m), 4.19 (1H, m), 4.31 (1H, m), 6.76 (1H, dd, J = 2.4, 9.3 Hz), 6.88 (1H, ddd, J = 2.4, 8.5, 8.5 Hz), 6.98-7.07 (3H, m), 7.18-7.24 (2H, m).
[α]27D-70°(c 1.0, MeOH)
【0045】
g)N−(4−ニトロベンジル)−2−ブロモアセトアミドの製造
【0046】
【化11】

【0047】
4−ニトロベンジルアミン・1塩酸塩10gをアセトニトリル50mL中で攪拌した。反応液を氷冷冷却し、ジメチルアニリン13.1gをゆっくり加えた。反応液にブロモアセチルブロマイド12gをゆっくり加え、そのまま15分攪拌を続けた。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。粗生成物を酢酸エチル−トルエン混合液より析出し濾取することで目的物14.4g(99%)を微黄色固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ:3.98 (2H, s), 4.59 (2H, d, J = 6.1 Hz), 6.94 (1H, brs), 7.46 (2H, d, J = 8.1 Hz), 8.21 (2H, d, J = 8.1 Hz).
【0048】
h)N−(4−ニトロベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミドの製造
【0049】
【化12】

【0050】
6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン60.0gをアセトニトリル360mLに溶解した。反応液に室温下、N−(4−ニトロベンジル)−2−ブロモアセトアミド69.6g、炭酸カリウム95.7gを順次加え、60℃にて一晩攪拌した。反応液を吸引ろ過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮液を酢酸エチルに溶解し、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、氷冷下、4N塩酸/酢酸エチルを加え、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えて加熱溶解し、室温下攪拌しながらヘキサンを加えた。析出物を濾取し、ヘキサン洗浄し目的物の塩酸塩を微黄色固体として105.8g(収率95%)得た。
得られた塩酸塩をクロロホルムに溶解し、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣にメタノールを加え溶解させ、ヘキサンを加え室温下2時間攪拌した。析出物を濾取、ヘキサン洗浄し目的物を微黄色固体として100.9g(収率85%)得た。
【0051】
遊離塩基
1H-NMR (CDCl3)δ:2.55 (1H, dd, J = 3.9, 16.4 Hz), 2.62 (1H, dd, J = 7.6, 13.2 Hz), 2.70-2.90 (2H, m), 3.20 (1H, d, J = 16.8 Hz), 3.22-3.28 (1H, m), 3.38 (1H, d, J = 16.8 Hz), 3.78 (1H, d, J = 16.4 Hz), 3.90 (1H, d, J = 16.4 Hz), 4.42 (1H, d, J = 7.2 Hz), 4.45 (1H, d, J = 7.2 Hz), 6.80 (1H, dd, J = 2.4, 9.5 Hz), 6.92 (1H, ddd, J = 2.4, 8.5, 8.5 Hz), 6.95-7.11 (4H, m), 7.35 (2H, dd, J = 1.9, 7.0 Hz), 7.40-7.46 (1H, m), 8.18 (2H, dd, J = 1.9, 7.0 Hz).
【0052】
i)N−(4−アミノベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミドの製造
【0053】
【化13】

【0054】
N−(4−ニトロベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミド87.5gをメタノールに縣濁し、10%Pd−C(wet.)4.5gを加えた。反応系内を水素置換し、室温下2時間反応を続けた。反応終了後、反応液をセライトろ過し、濾液を濃縮し目的物を白色泡沫状固体として定量的に得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 2.52-2.54 (2H, m), 2.72-2.86 (2H, m), 3.13 (1H, d, J = 16.4 Hz), 3.13-3.22 (1H, m), 3.33 (1H, d, J = 16.4 Hz), 3.74 (1H, d, J = 16.2 Hz), 3.80 (1H, d, J = 16.2 Hz), 4.20-4.32 (2H, m), 6.63 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.81 (1H, dd, J = 2.4, 9.2 Hz), 6.88 (1H, ddd, J = 2.4, 8.5, 8.5 Hz), 6.90 (2H, dd, J = 8.5, 8.5 Hz), 6.98 (1H, dd, J = 5.9, 8.5 Hz), 6.98-7.20 (5H, m).
【0055】
j)N−(4−イソプロピルアミノベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミドの製造
【0056】
【化14】

【0057】
N−(4−アミノベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミド67.0gをトルエン670mLに溶解した。これに無水アセトン10.2gを加え、氷冷下、トリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム47.3g、酢酸13mLを順次加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液に飽和重曹水、酢酸エチルを加えた。有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣にメタノールを加え加熱溶解し、マレイン酸18.5gのメタノール溶液を加え室温下攪拌した。更に酢酸エチル及びヘキサンを加え攪拌した。析出物を濾取し、目的物81.8g(収率88.8%)を微黄色固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ:1.20 (6H, d, J = 6.1 Hz), 2.54 (1H, dd, J = 8.3, 13.9 Hz), 2.55 (1H, dd, J = 5.4, 14.5 Hz), 2.74-2.86 (2H, m), 3.15 (1H, d, J = 16.6 Hz), 3.14-3.22 (1H, m), 3.35 (1H, d, J = 16.6 Hz), 3.47 (1H, brs), 3.56-3.66 (1H, m), 3.76 (1H, d, J = 16.4 Hz), 3.82 (1H, d, J = 16.4 Hz), 4.22 (1H, dd, J = 5.6, 14.4 Hz), 4.31 (1H, dd, J = 5.6, 14.4 Hz), 6.53 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.80 (1H, dd, J = 2.2, 9.3 Hz), 6.86 (1H, ddd, J = 2.7, 8.5, 8.5 Hz), 6.92 (2H, dd, J = 8.6, 8.6 Hz), 6.97 (1H, dd, J = 5.9, 8.5 Hz), 7.00-7.06 (4H, m), 7.20-7.30 (1H, m).
【0058】
k)(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリンの製造
【0059】
【化15】

【0060】
N−(4−イソプロピルアミノベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミドのマレイン酸塩を酢酸エチルに溶解し、2N水酸化ナトリウム水100mLで2回、飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去した。残渣をトルエン共沸しN−(4−イソプロピルアミノベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミドを定量的に回収した。
【0061】
回収したN−(4−イソプロピルアミノベンジル)−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]アセトアミド10.4gを無水THF83mLに溶解した。アルゴンガス雰囲気下、氷冷下、反応液にトリフルオロボレート−ジエチルエーテルコンプレックス9.5gを加え、60℃にて1時間攪拌した。その後、ボラン−ジメチルスルフィドコンプレックス8.5g,112mMを加え、そのまま6時間攪拌した。反応終了後、氷冷下にて反応液に5N塩酸水44mLを少しずつ加え、60℃にて10時間攪拌した。その後、氷冷下にて2N水酸化ナトリウム水溶液を加え弱塩基性として、酢酸エチルで有機層を分離した。有機層を2N水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。
1H-NMR( CDCl3 )δ: 1.20 (6H, d, J = 6.1 Hz), 2.40 (1H, dd, J = 10.0, 13.4 Hz), 2.48 (1H, dd, J = 3.7, 16.6 Hz), 2.73-2.88 (6H, m), 3.13 (1H, m), 3.56-3.68 (1H, m), 3.67 (2H, s), 3.73 (2H, s), 6.53 (2H, d, J = 8.3 Hz), 6.74 (1H, dd, J = 2.4, 9.5 Hz), 6.85 (1H, ddd, J = 2.4, 8.5, 8.5 Hz), 6.94 (2H, dd, J = 8.6, 8.6 Hz), 6.98 (1H, dd, J = 5.6, 8.5 Hz), 7.03 (2H, dd, J = 5.6, 8.6 Hz), 7.07 (2H, d, J = 8.3 Hz).
[α]27D+8.9°(c 1.1, MeOH)
【0062】
l)(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩の製造
【0063】
【化16】

【0064】
(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン1.59gとフマル酸0.41gを60℃にてエタノール15.0mLに溶解する。40℃にて攪拌しながらヘプタン5mLをゆっくり加え、そのまま2時間攪拌し、室温にて更に18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧下80℃にて6時間乾燥し、(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩1.25g(62.6%)を無色結晶性粉末として得た。
1H-NMR (CD3OD)δ:1.18 (6H, dd, J = 1.3, 6.2 Hz), 2.47 (1H, dd, J = 10.0, 13.4 Hz), 2.53 (1H, dd, J = 3.4, 16.8 Hz), 2.78-2.86 (1H, m), 2.87 (2H, dd, J = 4.9, 14.9 Hz), 2.94-3.02 (1H, m), 3.08-3.20 (3H, m), 3.56-3.64 (1H, m), 3.79 (2H, s), 4.03 (2H, s), 6.62 (2H, dd, J = 2.0, 6.6 Hz), 6.68 (2H, s), 6.80 (1H, dd, J = 2.6, 9.6 Hz), 6.89 (1H, ddd, J = 2.6, 8.5, 8.5 Hz), 7.00 (2H, dd, J = 8.6, 8.6 Hz), 7.07 (1H, dd, J = 5.9, 8.5 Hz), 7.10 (2H, dd, J = 5.5, 8.6 Hz), 7.15 (2H, dd, J = 2.0, 6.6 Hz).
元素分析(C32H37N3O4F2
理論値 C, 67.95; H, 6.59; N, 7.43; F, 6.72
実測値 C, 67.87; H, 6.63; N, 7.42; F, 6.50.
【0065】
[参考例]鼻閉症状の改善試験
実験には、6週齡の雄性std/Hartreyモルモット(日本エスエルシー)を用い、被験薬物には、(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩(以下化合物(1)と称す)を使用した。
モルモットに卵白アルブミン(OVA、Sigma)1mg/mLおよび水酸化アルミニウム水和物(和光純薬)10mg/mL生理食塩溶液の1.0mLを背部皮下に投与することで初回感作を行った。初回感作7日後にOVAの10mg/mL生理食塩液を20μLずつ両側の鼻腔内に投与することで追加感作を行った。初回感作14日後にOVAの20mg/mL生理食塩液を10μLずつ両側の鼻腔内に投与することによってアレルギー性鼻炎による鼻閉状態を惹起した。惹起後10分および2時間から6時間まで1時間ごとに、Oscillation法(CHEST. 1991 MAY;99(5):1274−9に記載の方法)により鼻腔抵抗(respiratory resistance、以下「Rrs」と称す)を測定し、惹起前の初期抵抗値を100%としたパーセント変化量で示した。
化合物(1)は溶媒として用いた0.5%メチルセルロース(MC)水溶液に懸濁し、最終惹起の18時間前および1時間前の2回、1mg/kg経口投与した。対照群として、溶媒投与群(Control群)および抗原惹起処置を行わない無処置群(Normal群)の測定を行った。
【0066】
[結果および統計処理]
結果は、Rrsの経時変化で示した(図1)。各ポイントは8例の平均±標準誤差である。統計処理にはStudent’s t−testを用い、Control群との比較を行った。
化合物(1)の投与により鼻閉状態の初期反応相(10分後)では改善傾向が、また、遅発相(2時間〜6時間)では測定ポイントにより有意な改善が見られた(*:p<0.05)。これらの結果から、化合物(1)はアレルギー性鼻炎における鼻閉症状を改善させることが判明した。
【0067】
[実施例1](カプセル剤;親水性界面活性剤)
化合物(1)1.0質量部に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(日光ケミカルズ製:ニッコールHCO−60、HLB値:14.0)を9.0質量部添加後、よく攪拌し、投与量が10mg/kgとなるようゼラチンカプセル(TORPAC社製:1/4OZ)に封入し、カプセル剤を得た。
【0068】
[比較例1](カプセル剤;界面活性剤なし)
化合物(1)1.0質量部をよく攪拌し、投与量が10mg/kgとなるようゼラチンカプセル(TORPAC社製:1/4OZ)に封入し、カプセル剤を得た。
【0069】
[比較例2](カプセル剤;親油性界面活性剤)
化合物(1)1.0質量部に、モノステアリン酸グリセリン(日光ケミカルズ製:ニッコールMGS-F20、HLB値:7.0)を9.0質量部添加後、よく攪拌し、投与量が10mg/kgとなるようゼラチンカプセル(TORPAC社製:1/4OZ)に封入し、カプセル剤を得た。
【0070】
[試験例]
調製したカプセル剤を、18時間絶食させたビーグル犬((株)日本医科学動物資材研究所より購入、体重約10kg)に、水50mLとともに経口投与し、投与後0.5、1、2、3、4、6、8及び24時間で採血した。投与は10mg/kg、例数は2とした。採血後は直ちに遠心分離し、血漿を採取後、逆相カラム(Inertsil ODS−3(50mm×3mm I.D.、5μm、GLサイエンス社製)を用いたLC/MS/MS(API4000LCMSシステム:Applied Biosystems社製)にて血漿中薬物濃度を測定した。24時間までのAUC(血漿中濃度時間曲線下面積)及びBAを算出し、平均値を表1に示した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかなように、親水性界面活性剤を配合した本発明のカプセル剤(実施例)は、親水性界面活性剤を配合しなかったカプセル剤(比較例1)又は親油性界面活性剤を配合したカプセル剤(比較例2)に比べて高いBAを示し、経口吸収性が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】モルモットアレルギー性鼻炎モデルに(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩を投与した時の鼻閉症状の改善を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)−4−[[2−[6−フルオロ−3−(4−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル]エチルアミノ]メチル]−N−イソプロピルアニリン・1フマル酸塩又はその溶媒和物と、親水性界面活性剤を含有する経口医薬組成物。
【請求項2】
親水性界面活性剤がHLB値10以上の非イオン性界面活性剤である請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
親水性界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1に記載の経口医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−292771(P2009−292771A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148009(P2008−148009)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】