説明

親水性膜及び方法

【課題】
膜の濡れ性、湿/乾サイクル性、極性液体または溶液の濾過性、低PH条件下での流れ及び/または耐久性、室温及び高温条件下での流れ及び/または耐久性、所定波長のエネルギーに対する透明性などに優れたミクロポーラスなベース膜及び該膜の表面に設けられた架橋性コーティングを含む膜を提供すること。
【解決手段】
ミクロポーラスなベース膜に、ポリビニル求核性ポリマーとブロックイソシアナートもしくはウレタン又はブロックイソシアナート及びウレタンの両方を含むコーティングを施す。このコーティングは、ポリビニル求核性ポリマーとウレタン又はブロックイソシアネートとを含み、架橋させることができる。また、かかる膜の形成方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性膜に関する実施形態を包含する。本発明は、親水性膜の製造方法に関する実施形態を包含する。
【背景技術】
【0002】
高い気孔率、濡れ性及び耐薬品性を有する膜は、例えばサイズ排除式液体濾過用途に有用となる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はその耐薬品性の点から望ましく、耐薬品性及び気孔率の点からは延伸PTFE(ePTFE)が望ましいであろう。しかし、PTFEの疎水性のため、液体の水の濾過には問題があり、処理が必要とされることがある。
【0003】
例えば、テトラフルオロエチレン/ビニルアルコールコポリマーを用いた含浸によって、ePTFE膜に親水性を付与することができる。かかるアプローチでは、ePTFEのペルフルオロポリマーへのコーティング材料中のペルフルオロポリマーの化学的親和性を利用する。しかし、その親和性はかなり低く、親水性は一時的なものとなりかねない。一方の面から反対側の面まで連続した細孔を有する多孔質フルオロポリマー膜は、親水性ではあるが水に不溶性のポリウレタンとフルオロ脂肪族界面活性剤との混合物で膜内部を被覆することによって親水性にすることができる。かかるアプローチでは、二相系を形成するためペルフルオロポリマー間の化学的親和性を利用し得る。
【0004】
別のアプローチでは、PTFE粉末樹脂の照射線処理によってPTFE膜の親水性を生じさせることができる。樹脂をポロゲン及び未処理PTFE粉末と共に加工すればミクロポーラスPTFE膜に親水性を付与できる。
【0005】
市販の親水性ePTFE膜を液体水の濾過に使用できる。問題の多い製造面での考慮事項に加えて、これらの膜は、膜製造業者によって予め湿らせてから湿潤状態でエンドユーザーに出荷されることがある。かかる膜は脱湿又は乾燥しかねない。膜の乾燥は膜が役立たなくすることがあり、例えば望ましくない出荷上の考慮事項(例えば、湿潤出荷)を要することがある。他の望ましくない側面として、特殊な取扱い及び密封可能な容器の必要性、出荷重量の増加などの経済的な考慮事項がある。
【特許文献1】米国特許第4113912号明細書
【特許文献2】米国特許第4189369号明細書
【特許文献3】米国特許第4193138号明細書
【特許文献4】米国特許第4194041号明細書
【特許文献5】米国特許第4247401号明細書
【特許文献6】米国特許第4318714号明細書
【特許文献7】米国特許第4419187号明細書
【特許文献8】米国特許第4466931号明細書
【特許文献9】米国特許第4477634号明細書
【特許文献10】米国特許第4525374号明細書
【特許文献11】米国特許第4584103号明細書
【特許文献12】米国特許第4604204号明細書
【特許文献13】米国特許第4659474号明細書
【特許文献14】米国特許第4690765号明細書
【特許文献15】米国特許第4690766号明細書
【特許文献16】米国特許第4720345号明細書
【特許文献17】米国特許第4753725号明細書
【特許文献18】米国特許第4767645号明細書
【特許文献19】米国特許第4776959号明細書
【特許文献20】米国特許第4778596号明細書
【特許文献21】米国特許第4833014号明細書
【特許文献22】米国特許第4889636号明細書
【特許文献23】米国特許第4911844号明細書
【特許文献24】米国特許第5024765号明細書
【特許文献25】米国特許第5028337号明細書
【特許文献26】米国特許第5032282号明細書
【特許文献27】米国特許第5039421号明細書
【特許文献28】米国特許第5041225号明細書
【特許文献29】米国特許第5049275号明細書
【特許文献30】米国特許第5049282号明細書
【特許文献31】米国特許第5087338号明細書
【特許文献32】米国特許第5090422号明細書
【特許文献33】米国特許第5130024号明細書
【特許文献34】米国特許第5151182号明細書
【特許文献35】米国特許第5156780号明細書
【特許文献36】米国特許第5209850号明細書
【特許文献37】米国特許第5302127号明細書
【特許文献38】米国特許第5304307号明細書
【特許文献39】米国特許第5354587号明細書
【特許文献40】米国特許第5430099号明細書
【特許文献41】米国特許第5539072号明細書
【特許文献42】米国特許第5597863号明細書
【特許文献43】米国特許第5599506号明細書
【特許文献44】米国特許第5716660号明細書
【特許文献45】米国特許第5755762号明細書
【特許文献46】米国特許第5897955号明細書
【特許文献47】米国特許第5902745号明細書
【特許文献48】米国特許第6018819号明細書
【特許文献49】米国特許第6179132号明細書
【特許文献50】米国特許第6228477号明細書
【特許文献51】米国特許第6261678号明細書
【特許文献52】米国特許第6273271号明細書
【特許文献53】米国特許第6331351号明細書
【特許文献54】米国特許第6354443号明細書
【特許文献55】米国特許第6395383号明細書
【特許文献56】米国特許第6403726号明細書
【特許文献57】米国特許第6410084号明細書
【特許文献58】米国特許第6676993号明細書
【特許文献59】米国特許第6752847号明細書
【特許文献60】米国特許第6854603号明細書
【特許文献61】米国特許出願公開第2003/0091750号明細書
【特許文献62】国際公開第03/101505号パンフレット
【特許文献63】国際公開第95/13859号パンフレット
【特許文献64】国際公開第96/03202号パンフレット
【特許文献65】国際公開第96/08149号パンフレット
【特許文献66】国際公開第96/20040号パンフレット
【特許文献67】欧州特許第0456939号明細書
【特許文献68】欧州特許第0498348号明細書
【非特許文献1】Beatrice Haimovich et al.,“A New Method for Membrane Construction on ePTFE Vascular Grafts:Effect on Surface Morphology and Platelet Adhesion”,Correspondence to:B.Haimovich,Contact Grant Sponso:Cardiovascular Institute at Robert Wood Johnson Medical School,pp.1393−1400,1997.
【非特許文献2】Mikhail Kozlov et al.,“Adsorption of Poly(vinyl alcohol) Onto Hydrophobic Substrates.A General Approach for Hydrophilizing and Chemically Activating Surfaces”,Macromolecules,Volume 36,pp.6054−6059,July 2003.
【非特許文献3】T.Tokiwa et al.,“Restoration of Differentiated Functions in Multicellular Aggregates of a Human Liver Epithelial Cell Line”,Materials Science and Engineering,Volume C6,pp.249−252,1998.
【非特許文献4】Roki Techno Co.Ltd,Certainpore PTFE CT,2 pages,Data Sheet made January 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在入手可能な膜の性質と異なる性質をもつ膜が得られれば望ましい。現在利用可能な方法と異なる方法で製造された膜が得られれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は膜を提供する。この膜は、ミクロポーラスなベース膜と該膜の表面に設けられた架橋性コーティングを備える。コーティングは、ポリビニル求核性ポリマーとウレタン又はブロックイソシアネートとを含む。
【0008】
一実施形態では、処理膜は、ミクロポーラスなベース膜及び該膜の表面に設けられた架橋コーティングを含む。コーティングは、ポリビニル求核性ポリマーとウレタン又はブロックイソシアネートとを含む。
【0009】
一実施形態では、膜の形成方法を提供する。本方法は、多孔質ベース膜の表面にコーティングを施工することを含む。コーティングは、ポリビニル求核性ポリマーとウレタン又はブロックイソシアネートとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、親水性膜に関する実施形態を包含する。本発明は、親水性膜の製造方法に関する実施形態を包含する。
【0011】
明細書及び特許請求の範囲を通して用いる近似表現は、関係する基本機能を変化させずに変動し得る数量の修飾に適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は明記された厳密な値に限定されない。幾つかの例では、近似表現は値の測定のための計器の精度に対応することがある。
【0012】
一実施形態では、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜のような元々疎水性のベース膜を重合性前駆体で被覆し得る。前駆体は、ウレタン又はブロックイソシアネートを用いて架橋させることができる。
【0013】
好適なePTFE膜は、GE Energy社(米国ミズーリ州カンザスシティー)から市販されている。他の材料及び方法を用いて、開気孔構造を有する膜を形成してもよい。例えば、膜の形成に使用できる他の好適な材料としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロース系ポリマー、ポリフェニレンオキシド及びこれらの2種以上の組合せの1種以上が挙げられる。本明細書で用いる「ベース膜」という用語は未被覆の膜を意味するが、さらに一般的な「膜」という用語は、特記しない限り、本発明の一実施形態をなす膜を意味する。
【0014】
ベース膜は、例えば、ベース膜の多孔化、ストレッチング、延伸、バブリング又は抽出の1以上によって透過性にできる。膜の好適な形成方法としては、適当な材料の発泡、スカイビング又はキャスティングも挙げられる。別の実施形態では、繊維織物又は不織布から膜を形成できる。
【0015】
一実施形態では、連続気孔を生じさせることができる。適当な気孔率は約10体積%を超える範囲である。一実施形態では、気孔率は約10〜約20体積%、約20〜約30体積%、約30〜約40体積%、約40〜約50体積%、約50〜約60体積%、約60〜約70体積%、約70〜約80体積%、約80〜約90体積%、又は約9体積%を超える範囲である。ここで、また明細書及び特許請求の範囲を通して、範囲の上下限は相互に結合及び/又は交換可能である。かかる範囲はその上下限で確定され、特記しない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を包含する。
【0016】
孔径は細孔間で一定であってもよく、細孔は所定のパターンを画成し得る。或いは、細孔間で孔径が異なっていてもよく、細孔は不規則なパターンを画成し得る。適当な孔径は約50μm未満である。一実施形態では、平均孔径は約50〜約40μm、約40〜約30μm、約30〜約20μm、約20〜約10μm、又は約10〜約1μmの範囲である。一実施形態では、平均孔径は約1μm未満であり、約1〜約0.5μm、約0.5〜約0.25μm、約0.25〜約0.1μm、又は約0.1μm未満である。一実施形態では、平均孔径は約0.1〜約0.01μmである。
【0017】
一実施形態では、ベース膜は三次元マトリックスでもよいし、或いは複数のフィブリルで相互に連結した複数のノードを含む格子型構造を有するものでもよい。ノード及びフィブリルの表面は、膜の中で複数の細孔を画成し得る。少なくとも部分的に焼結したフィブリルの大きさは、フィブリルの長さ方向に垂直な方向に測った直径が約0.05〜約0.5μmである。多孔質膜の比表面積は、膜材料1g当たり約9〜約110mである。
【0018】
ノード及びフィブリルの表面は、膜の両面の間を曲がりくねった経路で貫通する多数の連続気孔を画成し得る。一実施形態では、膜内の細孔の平均有効孔径はマイクロメートル単位のものである。膜内の細孔の好適な平均有効孔径は、約0.01〜約0.1μm、約0.1〜約5μm、約5〜約10μm、又は約10μm超である。
【0019】
一実施形態では、ベース膜は微粉末粒子と滑剤の混合物の押出によって製造し得る。押出物は、次いでカレンダリングに付す。カレンダリングした押出物を1以上の方向に「延伸」つまりストレッチングすることによって、ノードを連結するフィブリルを形成して三次元マトリックス又は格子型の構造を画成することができる。「延伸」とは、材料の弾性限界を超えて延伸することによってフィブリルに永久歪み又は伸びを導入することをいう。膜を加熱つまり「焼結」することによって、材料の一部を結晶質から非晶質に変え、膜材料の残留応力を低減又は最小化することができる。一実施形態では、想定される膜の最終用途に応じて膜を焼結しなくてもよいし、或いは部分的に焼結してもよい。
【0020】
一実施形態では、ベース膜は、膜の両面に面した環境と流体連通状態にある多数の連続気孔を画成し得る。膜の材料が、液体物質(例えば、水性の極性液体)で濡れ、その液体物質が細孔を通過するのを許す傾向は、1以上の性質の関数として表すことができる。かかる性質には、膜の表面エネルギー、液体物質の表面張力、膜の材料と液体物質との間の相対接触角、細孔のサイズ又は有効流れ面積、及び膜の材料と液体物質との相容性がある。
【0021】
本発明の実施形態に係る膜は様々な寸法のものにすることができ、あるものは用途に特有の基準に基づいて選択される。一実施形態では、膜は流体の流れる方向に約10μm未満の厚さを有する。別の実施形態では、膜は流体の流れる方向に約10μm超、例えば、約10〜約100μm、約100μm〜約1mm、約1〜約5mm、又は約5mm超の厚さを有する。一実施形態では、膜は複数の異なる層から形成できる。
【0022】
流体の流れる方向に垂直方向では、膜は約10mm超の幅を有する。一実施形態では、膜の幅は約10〜約45mm、約45〜約50mm、約50mm〜約10cm、約10〜約100cm、約100〜約500cm、約500cm〜約1m、又は約1m超とし得る。かかる幅は円形領域の直径であることもあるし、或いは多角形領域の最も近い縁端までの距離であることもある。一実施形態では、膜はメートル単位の幅と不確定な長さの長方形であってもよい。即ち、膜はロール状に成形でき、長さは連続成形作業において所定の距離で膜をカットすることによって決定される。
【0023】
好適なコーティングは、ポリビニル求核性ポリマー又は重合性物質と、架橋剤又は架橋手段とを含む。コーティングは、ベース膜の細孔と連結してコーティングをベース膜に機械的に結合する相互侵入型網目構造又は架橋ポリマー構造を形成し得る。一実施形態では、コーティングはベース膜との化学的親和性をもつか、或いはベース膜と相互作用し得る官能基を有する。一実施形態では、コーティングは不可逆的な架橋又は重合プロセスによってベース膜に機械的に固定し得る。
【0024】
好適なポリビニル求核性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミン又はこれらの組合せが挙げられる。ポリビニルアルコールが存在する実施形態について説明すると、ポリビニルアルコールは架橋剤と反応して、可逆的な複合体ではなく不可逆的に架橋した相互侵入型網目構造を形成し得る。一実施形態では、架橋剤はポリマーマトリックスの一部となる。一実施形態では、架橋剤は反応性基又は官能基の架橋を促進するための触媒として機能するが、架橋剤がマトリックスに化学的に結合しなくてもよい。
【0025】
好適なポリビニルアミンは、BASF社(米国ニュージャージー州マウントオリーブ)から市販されている。ポリビニルアミンには、ポリビニルアミン誘導体も包含される。好適な誘導体としては、第一アミンよりも、1種以上の第二アミン基が挙げられる。一実施形態では、第一アミン又は第二アミンの1種以上に加えて、第三アミンがポリマー主鎖に存在していてもよい。好適な第二アミンは1以上の短鎖炭化水素を含む。短鎖炭化水素は脂肪族でも、脂環式でも芳香族でもよい。一実施形態では、短鎖炭化水素はメチルである。
【0026】
好適なポリビニル求核性ポリマーには、モノマー単位の数が所定範囲内の分子量をもつポリビニル求核性ポリマーが包含される。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーの分子量は2500未満である。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーの分子量は2500を超える。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーの分子量は約2500〜約31000、約31000〜約50000、約50000〜約100000、又は約100000超である。
【0027】
好適な架橋剤は、1種以上のブロックイソシアネート又はウレタンを含む。好適なブロックイソシアネートは、ブロック剤と、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートの1種以上とを含む。一実施形態では、ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート又はジメチルm−イソプロペニルベンジルイソシアネートの1種以上が挙げられる。なお、−NCO基が芳香環と共役していない架橋剤については、架橋剤に芳香族基が存在したとしても、芳香族とはみなさない。例えば、m−テトラメチルキシレンジイソシアネートは脂肪族とみなされる。一実施形態では、架橋剤はジメチル側基などの存在、数又は量に基づいて選択でき、側基は、ヒドロキシル反応性、水素結合傾向及びカルボキシル反応性を低下させるため立体障害をもたらすものでもよい。
【0028】
一実施形態では、架橋剤はヘキサメチレンジイソシアネート又はメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)を含む。一実施形態では、架橋剤はブロック剤とヘキサメチレンジイソシアネートから実質的になる。一実施形態では、架橋剤はブロック剤とメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)から実質的になる。
【0029】
トルエンジイソシアネート(TDI)は室温で液体であり、2,4−及び2,6−異性体混合物として市販されている。TDIは、温度約20〜約22℃に融点を有する。ある商用グレードでは、TDIは80%2,4−TDI/20%2,6−TDI並びに65%2,4−TDI/35%2,6−TDIとして入手でき、融点は約12℃の温度である。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は室温で固体である。イソシアネート基の一部をカルボジイミド基に変換することによって修飾MDIとすることができ、これは過剰のイソシアネートと反応し得る。該ジイソシアネートを少量のグリコールと反応させると液状MDIが得られる。
【0030】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(1,6−ジイソシアナトヘキサン)は、室温で液体である。HDIから少なくとも2種のポリイソシアネート(即ち、HDI−ビューレット型及びイソシアヌレート型HDI)を製造できる。HDI−ビューレット型はHDIのホモポリマー(又はポリマーHDI)であり、HDIを水で処理することによって得られる。HDI−ビューレットに含まれるHDIは約0.7%未満である。生成したてのHDI−イソシアヌレートに含まれるHDIは0.3%未満である。HDI及びそのポリマーは、キシレンやトルエンのような非極性溶媒に可溶性である。HDIは、次の式(I)に示す構造で表される。
【0031】
【化1】

メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)及びそのポリマーは、キシレンやトルエンのような非極性溶媒に可溶性である。HMDIは、次の式(II)に示す構造で表される。
【0032】
【化2】

ナフタレンジイソシアネート(NDI)は室温で固体である。ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMPPI)は室温で液体であり、約40〜約60重量%の4,4’−MDIを含む。残部は他のMDI異性体(例えば、2,4’−及び2’−)、三量体並びに高分子量オリゴマーである。
【0033】
別の好適なイソシアネートとしては、次の式(III)の物質が挙げられる。
【0034】
【化3】

式(III)のイソシアネート物質を脱ブロック後に用いた多官能性アルコールの重合又は架橋は以下の式で表される。
【0035】
【化4】

好適なブロックイソシアネートは市販品として入手し得るし、及び/又は例えばイソシアネートをブロック剤(例えば、マロン酸エステル)と反応させて生成させてもよい。他の好適なブロック剤としては、ジイソプロピルアミン(DIPA)又はt−ブチルベンジルアミン(BEBA)のようなアミンの1種以上が挙げられる。さらに他の好適なブロック剤としては、3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトオキシム、カプロラクタム又はアルキル化フェノールの1種以上が挙げられる。
【0036】
ある種のブロック剤は、加熱に応答して脱ブロックできる。例えば、3,5−ジメチルピラゾールは110℃で脱ブロックでき、メチルエチルケトオキシムは150℃で脱ブロックでき、マロン酸エステルは90℃で脱ブロックでき、カプロラクタムは160℃で脱ブロックでき、アルキル化フェノールは110℃で脱ブロックできる。任意成分としてのの促進剤が存在していれば、脱ブロック温度をほぼ室温まで下げることができる。
【0037】
好適な架橋剤は、ウレタン物質又はブロックイソシアネートの一方又は両方を含む。好適なウレタンの例としては、Cytec Engineered Materials社(米国カリフォルニア州アナハイム)から市販のCYMEL 1158又はCYLINK 2000が挙げられる。好適なpHは、約3〜約6である。好適な当量は約250である。低分子量のイソシアネートに比べ、毒性は比較的低い。約23℃での粘度は、約10MPa/秒である。
【0038】
一実施形態では、ウレタンは以下の式(IV)の物質を含む。
【0039】
【化5】

式中、Rは各々独立に60/40の比率のC1〜C4アルキル(例えばメチル又はブチル)である。
【0040】
式(IV)のウレタン物質を用いた多官能性アルコールの重合又は架橋は次の式で表される。
【0041】
【化6】

ウレタン架橋を促進するためアンモニウム塩又はアミン(例えば、4−ジメチルアミノピリジン)を使用してもよく、さもなければ、ウレタン架橋は例えば約100〜約110℃の温度で実施できる。一実施形態では、加水分解安定性及び/又は硬さを向上させるため約0.5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸を添加してもよい。
【0042】
架橋剤の適量は、ポリマーを基準にして約1重量%超である。一実施形態では、架橋剤の存在量は、ポリビニル求核性ポリマー前駆体の総重量を基準にして約1〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約15重量%、約15〜約20重量%、約20〜約25重量%、約25〜約30重量%、約30〜約40重量%、約40〜約50重量%、約50〜約60重量%、約60〜約75重量%、又は約75重量%超である。
【0043】
架橋剤には少なくとも幾つかの多官能性が存在すべきであるが、単官能性架橋剤が存在していてもよい。単官能性架橋剤の使用は、ミクロポーラス膜の親水性コーティングに関連した性質の制御に役立つことがある。
【0044】
好適な架橋相互侵入型網目構造は、柔軟で非剛性主鎖を有し得る。一実施形態では、柔軟な相互侵入型網目構造は、(硬化状態又はモノマー状態で)エポキシ官能基又はグリシジルエーテル官能基を全く又は実質的に含んでなくてよい。
【0045】
一実施形態では、コーティングは膜の細孔を閉塞せずに膜上に付着させればよい。コーティングは膜材料との相容性を有し、膜表面に親水性を付与し得る。「相容性」とは、コーティング材料が膜の表面を「濡ら」し得ることを意味する。一実施形態では、コーティングはボイド及び/又は「ピンホール」を含まず、連続したコーティングを形成し得る。別の実施形態では、コーティングは不連続部分を有していてもよい。
【0046】
一実施形態では、コーティングは、約1〜約500nm、約500nm〜約1μm、約1〜約5μm、又は約5μm超の平均厚さの層を形成する。コーティングは一様な厚さを有していてもよいし、或いは領域間で異なる厚さを有していてもよい。
【0047】
本発明の実施形態に従って製造される膜は、1以上の所定の性質を有する。かかる性質としては、乾燥出荷された膜の濡れ性、湿/乾サイクル性能、極性液体又は溶液の濾過、低pH条件下での流れ及び/又は耐久性、室温条件下での流れ及び/又は耐久性、高温条件下での流れ及び/又は耐久性、高圧下での流れ及び/又は耐久性、所定波長のエネルギーに対する透明性、音響エネルギーに対する透明性、又は触媒物質に対する支持の1以上が挙げられる。「耐久性」とは、コーティング材料が持続的に(例えば、2日以上或いは2サイクル以上(湿/乾サイクル、高温/低温サイクル、高pH/低pHサイクルなど))機能を維持する能力をいう。
【0048】
1以上の実施形態の性質は、例えばオートクレーブ処理作業時に、約100℃を超える温度変動抵抗性を含む。一実施形態では、温度変動は約100〜約125℃、約125〜約135℃、又は約135〜約150℃の範囲である。任意には、周囲圧力によりも高い圧力下で温度変動が起こってもよい。温度変動は、約15分を超える時間にわたって起こり得る。
【0049】
耐紫外線(UV線)性は、一実施形態では、性質を劣化させずに膜の滅菌を可能にする。なお、別の実施形態では、UV開始剤がUV吸収組成物(存在する場合)と競合し得る場合、紫外線源のような照射源への露光でコーティング組成物の架橋を開始又は促進できる。
【0050】
膜を通しての流体の流量は、1以上の因子に依存し得る。かかる因子としては、膜の物理的及び/又は化学的性質、流体の性質(例えば、粘度、pH、溶質など)、環境特性(例えば、温度、圧力など)などの1以上が挙げられる。一実施形態では、膜は流体や液体ではなく蒸気に対して、或いは流体や液体に加えて蒸気に対して透過性を有し得る。好適な蒸気透過速度(存在する場合)は、約1000g/m/日未満、約1000〜約1500g/m/日、約1500〜約2000g/m/日、又は約2000g/m/日超である。一実施形態では、膜は蒸気に対して透過性を有しつつ、液体や流体に対して選択的に不透過性を示す。
【0051】
膜は水の濾過に使用できる。一実施形態では、水は10湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で室温で約1mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は10湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で約100℃で約1mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は10湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で室温で約10mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は10湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で100℃で約10mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は10湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で室温で約20mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は10湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で約100℃で約20mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は20湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で室温で約1mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は20湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で100℃で約1mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は20湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で室温で約10mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は20湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で100℃で約10mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。一実施形態では、水は50湿/乾サイクル後に27インチHgの差圧の下で室温で約20mL/min−cmを超える流量で膜を通して流れる。
【0052】
本発明の実施形態に係る膜の安定性は、1回以上の湿/乾サイクル後に膜の両側における圧力降下に基づいて測定できる。即ち、膜は複数の湿/乾サイクル後にほぼ同じ圧力降下に繰返し戻ることができる。一実施形態では、膜は直前の圧力降下に比べて約10%以内に戻ることができる。一実施形態では、膜からの抽出物は、室温の水又は約100℃の水を用いる約10〜約20回の湿/乾サイクルの各回後において約0.5重量%未満である。
【0053】
一実施形態では、膜は水吸収性又は体液吸収性のような吸収性を有し得る。吸収性は、流体環境との平衡を維持した場合、わずかな量の流体流入及び流出を含むことがある。しかし、吸収性は流通性とは区別でき、実際に区別される。流通性は、液体又は流体が第一の表面から膜に流入して第二の表面から流出し得ることを含む。かくして、一実施形態では、膜は所定の方向に沿って膜の少なくとも一部を通して液体又は流体を流すために機能し得る。駆動力は浸透作用又は灯心作用であるか、或いは濃度勾配、圧力勾配、温度勾配などの1以上による。
【0054】
膜は複数の二次層を有していてもよい。二次層は互いに同一でも異なるものでもよい。一態様では、1以上の二次層が本発明の実施形態を含み、別の二次層で例えば補強、選択濾過、たわみ性、支持、流れ調整などの性質を与えるようにしてもよい。
【0055】
本発明の実施形態に係る膜は、例えば、燃料電池での陽子交換膜(PEM)として使用できる。他の好適な用途には、液体濾過、極性に基づく化学的分離、電気分解、電池、パーベーパリゼーション、気体分離、透析分離、工業電気化学(例えば、クロロアルカリ製造及び電気化学用途)、超酸触媒、又は酵素固定化での媒質としての使用がある。さらに他の好適な用途には、組織成長の足場のような医療装置がある。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は単に本発明に係る方法及び実施形態を例示するものであり、したがって特許請求の範囲に制限を加えるものと解すべきでない。特記しない限り、すべての成分は、Alpha Aesar社(米国マサチューセッツ州ウォードヒル)、Spectrum Chemical Mfg.社(米国カリフォルニア州ガーデナ)、Cytec Engineered Materials社(米国カリフォルニア州アナハイム)などの一般化学薬品供給業者から市販されている。
【0057】
実施例1−コーティング溶液の調製
250ミリリットル三角フラスコに、1gのポリビニルアルコール(PVA)(Mw=31000〜50000)、磁気攪拌棒及び49gの水を室温で入れる。懸濁液を約90℃で激しく攪拌することで溶液を得る。PVA−水溶液を室温に冷却する。必要ならば、過剰の水を添加してフラスコ内の総重量を約50gとする。この溶液は、イソプロピルアルコール(IPA)/水で予め湿らせたePTFE膜の処理に使用できる。なお、溶液にIPAを添加すれば、予め湿らせた膜の必要性を低減又は排除し得る。添加し得るIPAの量は、使用するPVAの加水分解度に比例する。
【0058】
実施例2−膜の処理
8枚の未処理の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜をIPA/水で予め湿らせ、次いで実施例1からの溶液及びブロックト1,6−ジイソシアナトヘキサンの溶液で処理する。被覆済みの膜を加熱してイソシアネートのブロックを解除し、PVA及び架橋剤を架橋させる。架橋は処理膜上に機械的かみ合いの網目構造を形成する。
【0059】
液体の水に接触させた場合、処理膜試料は容易に濡れる。初期水流量を評価する。4つの試料を、22℃の水を用いる5回の湿/乾サイクルに暴露する。これらの試料はすべて、サイクル暴露後も膜を通して水を流し続けた。
【0060】
別の4つの試料を、100℃の水を用いる湿/乾サイクルに暴露する。これらの試料は、各サイクル当たり1リットルで3回以上の高温水湿潤/乾燥試験サイクルに暴露した後にも、膜を通して水を流し続ける。様々な以後の流量を観察する。流量は27mmHgの圧力降下の下で1〜35mL/min−cmの範囲内にある。
【0061】
実施例3−各種コーティング溶液の調製及び試験
15の250ミリリットル三角フラスコの各々に、1gずつのポリビニルアルコール(PVA)、磁気攪拌棒及び49gの室温水を入れる。これらのフラスコを試料1〜15として識別する。約90℃で攪拌した後、各試料中のPVAは水に溶解する。溶液を冷却し、総重量が50gになるように調整し、次いで激しく攪拌しながらIPA(水の重量に対して約70〜200wt%)及び対応する量のウレタン(IV)(表参照)を添加する。
【0062】
各試料に関するウレタン(IV)の重量パーセント及びPVAの分子量(Mw)を表1に示す。試料1〜5はポリビニル求核性ポリマー材料の重量を基準にして2重量%の架橋剤を使用し、試料6〜10は5重量%の架橋剤を使用し、試料11〜15は10重量%の架橋剤を使用する。
【0063】
【表1】


各溶液を、予め湿らせることなしに対応する番号のミクロポーラスePTFE膜に適用する(全部で15の被覆膜試料を得る)。15の未処理膜に溶液を吹付け、次いで膜細孔への完全な液体浸透を助けるため同じ溶液中に浸漬する。各膜を、架橋剤によるPVAの架橋を開始させるための温度(十分な温度は約110℃である)に約2時間加熱する。硬化温度は膜を乾燥させる。
【0064】
複数回の湿/乾サイクルに暴露した後、各膜の再濡れ性、pH抵抗性及び流量を試験する。湿/乾サイクル中及び流量試験中の水温は室温である。流量試験のために膜を通過させる水量は、各サイクル当たり1リットルである。結果を表2に示す。再濡れ性及び流量の試験後、膜を10サイクルにわたり約1のpHから約14のpHまでのpHサイクル試験に供する。pHサイクル試験後に追加の湿/乾サイクルに付した後にも、流量の目立った低下は存在しない。
【0065】
【表2】


実施例4−各種コーティング溶液の調製及び試験
以下の述べる点を除き、実施例3に記載の通り15の新しい膜を製造して試験した。湿/乾サイクル中及び流量試験中の水温は沸騰温度(即ち、100℃)である。実施例4の膜には個別の試料番号が付けられていない。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】


再濡れ性及び流量の試験後、15の膜を10サイクルにわたり約1のpHから約14のpHまでのpHサイクル試験に供する。pHサイクル試験後に追加の湿/乾サイクルに付した後にも、流量の目立った低下は存在しない。
【0067】
実施例5−ポリビニルアミンポリマーの製造
ポリアクリルアミドのホフマン分解でポリビニルアミンを得ることによって、ポリビニルアミンポリマーを製造する。
【0068】
実施例6−コーティング溶液の調製
250ミリリットル三角フラスコに、1gのポリビニルアミン(Mw=30000〜50000)、磁気攪拌棒及び49gの水を室温で入れる。懸濁液を約90℃で激しく攪拌することで溶液を得る。必要ならば、過剰の水を添加してフラスコ内の総重量を約50gとする。ポリビニルアミン−水溶液を室温に冷却する。この溶液は、イソプロピルアルコール(IPA)/水で予め湿らせたePTFE膜の処理に使用できる。溶液にIPAを添加すれば、予め湿らせた膜の必要性を低減又は排除し得ることに注意されたい。
【0069】
実施例7−膜の処理
8枚の未処理の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜をIPA/水で予め湿らせ、次いで実施例6からの溶液及びブロックト1,6−ジイソシアネート架橋剤を含む溶液で処理する。被覆済みの膜を加熱してイソシアネートのブロックを解除し、ポリビニルアミンを架橋剤で架橋させて処理膜上に機械的かみ合いの網目構造を形成する。
【0070】
液体の水に接触させた場合、処理膜試料は容易に濡れる。初期水流量を評価する。4つの試料を、25℃の水を用いる5回の湿/乾サイクルに暴露する。これらの試料はすべて、サイクル暴露後も膜を通して水を流し続けた。
【0071】
別の4つの試料を、100℃の水を用いる湿/乾サイクルに暴露する。これらの試料は、各サイクル当たり1リットルで3回以上の高温水湿潤/乾燥試験サイクルに暴露した後にも、膜を通して水を流し続ける。様々な以後の流量を観察する。流量は27mmHgの圧力降下の下で1mL/min−cm以上である。流量は細孔のサイズ及びコーティング溶液中のポリマー濃度の関数であることに注意されたい。
【0072】
実施例8−各種コーティング溶液の調製及び試験
15の250ミリリットル三角フラスコの各々に、1gずつのポリビニルアミン、磁気攪拌棒及び49gの室温水を入れる。これらのフラスコを試料16〜30として識別する。(必要ならば)約90℃で攪拌した後、各試料中のポリビニルアミンは水に溶解する。溶液を冷却し、総重量が50gになるように調整し、次いで激しく攪拌しながらIPA(水の重量に対して約70〜200wt%)及び対応する量のウレタン(IV)(表参照)を添加する。
【0073】
各試料に関するウレタン(IV)の重量パーセント及びポリビニルアミンの分子量(Mw)を表4に示す。試料16〜20はポリビニル求核性ポリマー材料の重量を基準にして2重量%の架橋剤を使用し、試料21〜25は5重量%の架橋剤を使用し、試料26〜30は10重量%の架橋剤を使用する。
【0074】
【表4】


各溶液を対応する番号のミクロポーラスePTFE膜に適用する(全部で15の被覆膜試料を得る)。15の未処理膜に溶液を吹付け、次いで膜細孔への完全な液体浸透を助けるため同じ溶液中に浸漬する。各膜を、架橋剤によるポリビニルアミンの架橋を開始させるための温度(十分な温度は約110℃である)に約2時間加熱する。硬化温度は膜を乾燥させる。
【0075】
複数回の湿/乾サイクルに暴露した後、各膜の再濡れ性、pH抵抗性及び流量を試験する。湿/乾サイクル中及び流量試験中の水温は室温である。流量試験のために膜を通過させる水量は1リットルである。結果を表5に示す。再濡れ性及び流量の試験後、膜を10サイクルにわたり約3のpHから約12のpHまでのpHサイクル試験に供する。pHサイクル試験後に追加の湿/乾サイクルに付した後にも、流量の目立った低下は存在しない。
【0076】
【表5】


実施例9−各種コーティング溶液の調製及び試験
以下の述べる点を除き、実施例8に記載の通り15の新しい膜を製造して試験した。湿/乾サイクル中及び流量試験中の水温は沸騰温度(即ち、100℃)である。実施例9の膜は個別の試料番号で区別されていない。結果を表6に示す。
【0077】
【表6】


再濡れ性及び流量の試験後、15の膜を10サイクルにわたり約3のpHから約12のpHまでのpHサイクル試験に供する。pHサイクル試験後に追加の湿/乾サイクルに付した後でも、流量の目立った低下は存在しない。
【0078】
本明細書中に説明した実施形態は、特許請求の範囲に記載した本発明の構成要素に相当する構成要素を有する組成物、構造物、装置及び方法の例である。この説明によれば、当業者はやはり特許請求の範囲に記載した本発明の構成要素に相当する別の構成要素を有する実施形態を製造し使用することができよう。したがって、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の字義通りの表現と違わない組成物、構造物、装置及び方法を包含するばかりでなく、特許請求の範囲の字義通りの表現との軽微な相違を有する組成物、構造物、装置及び方法をさらに包含する。本明細書中には若干の特徴及び実施形態のみを例示し説明したが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。特許請求の範囲はかかる修正及び変更のすべてを包括する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロポーラスなベース膜、及び
上記膜の表面に設けられた架橋性コーティング
を含んでなる膜であって、上記コーティングがポリビニル求核性ポリマーとブロックイソシアネートもしくはウレタン又はブロックイソシアネート及びウレタンの両方とを含む膜。
【請求項2】
前記ポリビニル求核性ポリマーがポリビニルアルコール又はポリビニルアミンの一方或いは両方からなる、請求項1記載の膜。
【請求項3】
前記ポリビニルアミンが200000未満の平均分子量を有する、請求項2記載の膜。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールが2500を超える平均分子量を有する、請求項2記載の膜。
【請求項5】
前記架橋性コーティングがさらに、ブロック剤と、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、メチルイソシアネート又はポリメチレンポリフェニルイソシアネートの1種以上とを含む、請求項1記載の膜。
【請求項6】
前記架橋性コーティングがブロック剤と以下の式(III)の物質とを含む、請求項1記載の膜。
【化1】

【請求項7】
前記ウレタンが以下の式(IV)の物質を含む、請求項1記載の膜。
【化2】

【請求項8】
請求項1記載の膜から形成される処理膜であって、膜を乾燥出荷状態から濡らすことができるようにコーティングを架橋させた処理膜。
【請求項9】
当該処理膜が室温で10回の湿/乾サイクル後に水銀柱27インチの差圧で1mL/min−cmを超える水流量を有する、請求項8記載の処理膜。
【請求項10】
当該処理膜が100℃で10回の湿/乾サイクル後に水銀柱27インチの差圧で1mL/min−cmを超える水流量を有する、請求項8記載の処理膜。
【請求項11】
多孔性ベース膜の表面にコーティングを施工することを含んでなる膜の形成方法であって、上記コーティングがポリビニル求核性ポリマーとブロックイソシアネート又はウレタンとを含む方法。

【公開番号】特開2007−100088(P2007−100088A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267678(P2006−267678)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】