説明

親水性薬剤の経皮投与の促進

塩基性浸透促進組成物を使用して、経皮投与される親水性薬剤のフラックスを増大させるための方法、製剤、及びドラッグ・デリバリー・システムが提供される。促進組成物は、無機水酸化物及び弱窒素含有塩基を含み、ここで当該塩基は、窒素含有塩基の0.1M水溶液が、無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.0〜約6.5低いpHを有するように選ばれる。さらに、促進組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比は、約0.5n:1〜約20n:1(ここで、nは無機水酸化物の分子あたりの水酸化物イオンの数である)の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、薬理学的に活性な薬剤の局所及び経皮投与に一般的に関し、そして特に、塩基性浸透促進組成物を使用して、体表面を通して親水性薬剤のフラックスを増大させる方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 皮膚を通した薬剤のデリバリーは、多くの利点を提供する。第一に、こうしたデリバリー方法は、快適であり、便利であり、そして非侵襲性の薬剤投与方法である。経口処方において見られる変化しやすい吸収及び代謝の割合を避けることができ、そして他の固有の不便さ、例えば胃腸管の炎症など、を同様に除くことができる。経皮的ドラッグ・デリバリーはまた、個々の薬剤のいずれかについての血中濃度を高度に制御することを可能にする。
【0003】
[0003] 皮膚は、構造的に複雑であり、比較的厚い膜である。傷のない皮膚の中に及び皮膚を通して周囲から移動する分子は、第一に角質層及びその表面上の任意の物質を浸透しなければならない。当該薬剤は次に、生きている表皮、真皮乳頭層、及び毛細血管壁を浸透して、血流又はリンパ管に入らなければならない。このように吸収されるためには、分子は組織の各タイプにおいて浸透に対する種々の抵抗性に打ち勝たなければならない。皮膚膜を通した輸送は、このように複雑な現象である。しかしながら、角質層細胞こそが、局所用組成物又は経皮的に投与される薬剤の吸収に対する第一バリアを提示する。角質細胞は、幾層に連なった薄層の、高度に角質化された細胞であり、体の大部分にわたり約10〜15ミクロンの厚さで存在する。これらの細胞の高度の角質化並びにそれらの密集配備が、多くの場合、薬剤浸透に対する実質的に不浸透性のバリアを作りあげると信じられている。多くの薬剤では、皮膚を通した浸透割合は、皮膚の浸透を促進するある種の手段を使用しなければ、極端に低い。
【0004】
[0004] 多くの化学薬剤は、薬剤が皮膚を通して浸透する割合を促進する手段として研究されてきた。当業者により評価されるように、化学浸透剤は、角質層の浸透性を増大させるために、薬剤と共に投与される化合物であり(又は幾つかの場合、皮膚は、化学浸透剤で前処理されてもよい)、そしてそれにより皮膚を通した薬剤の増大された浸透を提供する。理想的には、かかる化学浸透促進剤、つまり化合物が本明細書中で記載される場合「浸透促進剤」は、無害でありかつ角質層を通した薬剤の拡散を単に促進するために役に立つ化合物である。多様な物理化学的特性を備える多くの治療薬の浸透能力は、これらの化学的促進手段を使用して、促進されうる。しかしながら、ある促進剤の高レベルと関連する皮膚の炎症と感作の問題が存在する。
【発明の開示】
【0005】
[0005] Luoに対する米国特許第6,586,000号、Luoに対する米国特許第6,558,695号、Luoに対する米国特許第6,565,879号、国際特許公開第WO01/43775、Dermatrends, Inc.(San Diego, CA)に対する共有譲渡の全てにおいて、塩基性浸透促進剤、例えば無機水酸化物は、高分子量の薬剤が、皮膚の損傷又は全身毒性をもたらすことなく、皮膚中に及び皮膚を通して浸透する割合を増大させるのに驚くほど効果的であるとして開示された。本発明は、経皮的に投与された親水性薬剤の浸透割合が、無機水酸化物のみ、特に水溶性、酸性薬剤の使用により与えられる割合の増強に比較して増大される改良された方法に関する。本発明は、薬剤含有経皮製剤、つまり「パッチ」中に無機水酸化物の高い濃度を必要としないが、無機水酸化物が弱塩基と混合される塩基性浸透促進組成物の使用に関する。
【0006】
[0006] 従って、本発明の第一態様では、体表面を通した親水性薬剤のフラックス、つまり、薬剤が個体の皮膚又は粘膜組織を通して浸透する割合を増大させる方法が提供される。当該方法は、ヒト患者体表面の局在領域に薬剤の治療有効量を投与し;そして(b)局在領域にフラックスを増大させるのに有効な量の塩基性浸透促進組成物を適用することに関与し、ここで当該促進剤組成物が、(i)無機水酸化物及び(ii)窒素含有弱塩基から構成される。窒素含有塩基は、塩基の0.1M水溶液が、無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.0〜約6.5低いpHを有するように選択される。さらに、組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比は、約0.5n:1〜約20n:1(式中、nは、無機水酸化物の分子あたりの水酸基イオンの数である)の範囲内である。当該組成物のフラックスを増大させるのに有効な量は、経皮薬剤投与の間における体表面の局在領域において約8.0〜約13.0の範囲内のpHを与えるために十分な量である。
【0007】
[0007] 本発明の別の態様は、親水性薬剤を経皮的に投与するデリバリー・システムに関し、当該システムは、以下の:
(a) (i)治療有効量の親水性薬剤及び(ii)無機水酸化物及び窒素含有弱塩基を含むフラックスを増大させるのに有効な量の塩基性浸透促進剤、ここで2個の塩基の相対強度及び当該塩基性浸透促進組成物中のモル比は上に記載されるとおりであり、
(b) 体表面システム接触面を形成するように、体表面に対して薬剤及び促進剤を移送するシステムを維持するための手段
(c) 使用中に、当該デバイスの外側表面としての役割を果たす支持層
を含む。
【0008】
[0011] 本発明のさらなる態様は、体表面に適用される医薬製剤に関し、そして親水性薬剤の経皮投与に関する。当該製剤は以下の:
(a) 治療有効量の薬剤;
(b) 無機水酸化物及び窒素含有塩基を含む塩基性透過促進組成物であってフラックスを増大させるのに有効な量の組成物、ここで塩基性透過促進剤中の2個の塩基の相対強度とモル比は、上で記載されるとおりであり;そして
(c) 経皮的薬剤投与に適した医薬として許容される担体
を含む。当該製剤は、ゲル、クリーム、ローション、ペーストなどであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
命名法、定義、及び要旨
[0018] 他に記載がない限り、本発明は、特定薬剤、製剤成分、デリバリー・システム、キャリアなどに限られず、そのようなものとして変わりうるということが理解されるべきである。本明細書中に使用される専門用語は、特定の実施態様のみを記載する目的のためであり、そして制限することを意図しないということも理解される。加えて、当該明細書、及び添付の特許請求の範囲に使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈があきらかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。こうして、例えば、「親水性薬剤」という記載は、単一の親水性薬剤のみをふくむのではなく、混ざっているか又は混ざっていない2以上の親水性薬剤を含み、「無機水酸化物」という記載は、単一の無機水酸化物、並びに2以上の無機水酸化物などを含む。
【0010】
[0019] 本発明を記載及び特許請求する際に、以下の専門用語が以下に記載される定義に従って使用されるであろう。
[0020] 「薬剤」、「活性剤」、及び「薬理学的に活性な薬剤」は、本明細書中で互換性をもって使用されて、有利な生物学的効果、好ましくは薬理学的応答をもたらすことができる薬剤のいずれかを指す。当該薬理学的応答は、事実上、治療的、診断的、又は予防的であってもよい。当該用語はまた、本明細書中に明確に記載される薬剤の医薬として許容される薬理学的に活性な誘導体、例えば非限定的に塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、異性体、断片、アナログなどを含む。「薬剤」、「活性剤」、及び「薬理学的に活性な薬剤」という用語が使用される場合、又は具体的な薬剤が明確に同定される場合、活性剤の医薬として許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、異性体、断片、アナログなどは、活性剤自身と同様に意図されるということが理解されるべきである。本発明に従って、単一薬剤が投与されてもよいし、又は2以上の薬剤が組合せで投与されてもよいということが注意されるべきである。
【0011】
[0021] 薬剤の「治療有効量」により、毒性はないが、所望の有利な効果を与えるために十分な量が意味される。例えば、障害、疾患、又は他の悪い生理学的条件を患う個体を治療するように意図される薬剤の治療有効量は、重篤度及び/又は症状の頻度の軽減に影響し、症状及び/又はその元となる原因を排除し、及び/又は損傷の改善又は改良を促進する量である。他の実施例と同様に具体的な障害、疾患、又は他の有害な生理学的条件に影響する臨床症候を示さない個体に与えられる薬剤の治療有効量は、症状及び/又はその元となる原因の頻度を妨げるであろう量である。
【0012】
[0022] 「治療有効」である薬剤の量は、個人の年齢及び一般条件、具体的な薬剤(単数又は複数)などに左右されて対象間で変化するであろう。このように、正確な「有効量」をいつも特定できるわけではない。しかしながら、どの個人に対してであっても適切な「有効」量は、決まりきった実験を使用することにより当業者により決定されるであろう。「治療有効量」という用語が、限定された投与形態、例えば、ゲル、クリーム、ローション、ペーストなどではない製剤の量を指すために使用される場合、当該用語は、製剤の単位用量における薬剤の治療有効量に対応する製剤中の薬剤濃度を指す。
【0013】
[0023] 「医薬として許容される担体」又は「医薬として許容される添加物」などの記載における「医薬として許容される」という用語により、生物学的に又はその他の点で不所望ではない物質が意味される。つまり、当該物質は、感知できるほどの生物学的効果を引き起こすことなく、又は、それが含まれる製剤又はシステムの他の構成要素のいずれかと有害な方式で相互作用することなく、本発明の医薬製剤又はデリバリー・システム中に取り込まれてもよい。「薬理学的に活性」な誘導体における「薬理学的に活性」という用語は、親化合物と同じタイプの薬理活性及びおよそ同程度の薬理活性を有する誘導体に関する。「薬理学的に許容できる」という用語は、活性剤の誘導体(例えば塩)を指し、当該化合物が同様に薬理学的に活性であるということを注意されるべきである。「医薬として許容される」という用語が、担体又は賦形剤を指すために使用されるとき、当該用語により、賦形剤が米国食品医薬品局により要求される不活性成分についての毒性及び製造試験の基準に適合するということが意味される。
【0014】
[0024] 本発明の製剤に用いられる「水性」という用語は、当該製剤が水を含むか、又は皮膚又は粘膜組織に適用した後に水を含有するようになるということを指すために使用される。
【0015】
[0025] 本明細書中に使用される「透過の促進」又は「浸透の促進」という用語は、選択された薬理学的活性剤に対する皮膚又は粘膜組織の浸透性の増加を指し、その結果、当該薬剤が浸透する割合、つまり体表面を通した薬剤の「フラックス」は、浸透促進剤が存在しない状態で得られる割合に対して増大する。かかる浸透剤の使用をとおして影響される増大された浸透は、例えば、当該技術分野で知られておりかつ本明細書の実施例において使用されるFranz拡散装置を使用して動物又はヒトの皮膚を通して薬剤を拡散する割合を計測することにより獲得することができる。
【0016】
[0026] 本発明の浸透促進組成物の「浸透を促進する有効量」は、非毒性であり、損傷を与えないが、ヒト皮膚又は粘膜組織を通した薬剤のフラックスの所望の増加、同様に、所望される透過の深さ、投与割合、及びデリバリーされる薬剤量を与えるための促進組成物の十分な量を指す。
【0017】
[0027] 皮膚又は粘膜組織の「局在領域」は、薬剤促進製剤がデリバリーされる個体の体表面の領域を指し、そして無傷の破壊されていない生きた皮膚又は粘膜組織の規定の領域である。当該領域は、通常約5〜200cm2の範囲である、より一般的に約5〜100cm2であり、好ましくは約20〜60cm2の範囲である。しかしながら、薬剤デリバリーの技術における当業者により評価されることであるが、薬剤が投与される皮膚又は粘膜組織の領域は、製剤の性質、投与される具体的な薬剤、企図された用量、パッチ形態などに左右される。
【0018】
[0028] 「経皮」薬剤デリバリーは、ヒトの皮膚表面に対する薬剤の投与を意味し、その結果、当該薬剤は、皮膚組織を通過して個体の血流にたどり着き、それにより全身性の効果を与える。「経皮」という用語は、「経粘膜」薬剤投与、つまり当該薬剤が粘膜組織を通過して血流中にたどり着くように個体の体内の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸)表面へ薬剤を投与することを含むことが意図される。
【0019】
[0029] 個体表面を通した薬剤のフラックスが、無機水酸化物のみを浸透促進剤として使用して得られる薬剤のフラックスに対して増大されるように、本発明は無機水酸化物及び第二弱塩基を含む塩基性促進組成物を使用する親水性薬剤の経皮投与を提供する。本発明は、多くの患者について炎症又は他の問題をもたらす高濃度の無機水酸化物の使用を必要とすることなく、フラックスの顕著な増大を提供した。驚くべきことに、促進性の増加は、単一の製剤又はデリバリー・システムにおいて2つのタイプの塩基を混合する際に予期されるよりずっと高い。加えて、当該システムのpHは、透過促進剤として無機水酸化物のみを含有する従来のシステムで可能であるよりも高いレベルで長時間維持される。これは次に、pHを下げると水溶性が下がる親水性の薬剤(典型的には酸性薬剤)に関して、当該薬剤は、沈殿することなく延長された期間にわたりデリバリーされるであろう。
【0020】
[0030] 従って、本発明は、延長された期間の間、増大された浸透率で親水性薬剤を経皮的に投与するための方法、デリバリー・システム、及び製剤を提供する。当該方法は、治療有効量の当該薬剤を、体表面の局在領域に投与することに関し、そしてフラックスを増大させる量の塩基性浸透促進組成物を当該局在領域に適用することに関する。当該塩基性浸透促進組成物、親水性薬剤、適切なデリバリー・システム、及び医薬製剤は、以下に記載される。
【0021】
浸透促進組成物
[0031] 塩基性浸透促進組成物は、無機水酸化物及び窒素含有塩基の混合物を含み、ここで窒素含有塩基の0.1M水溶液は、無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.0〜約6.5低いpHを有し、そして好ましくは無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.5〜6.5低いpHを有する。加えて、当該促進組成物における窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比は、約0.5n:1〜約20n:1(式中、nは、無機水酸化物の分子あたりの水酸基イオンの数である)の範囲内である。こうして、水酸化アンモニウム又はアルカリ金属水酸化物では、nは1であり、そして窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比は、約0.5:1〜約20:1の範囲内である。水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物ではnは2であり、そして窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比は、約1:1〜約40:1の範囲内である。好ましくは、促進組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比は、約0.5n:1〜約10n:1の範囲内である。より強力な及び/又は高分子量の窒素含有塩基がより少ない量で使用され、一方比較的弱い及び/又は低分子量の窒素含有塩基は、さらに多い量で使用されるということが認められるであろう。
【0022】
[0032] 無機水酸化物は、一般的にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、及びそれらの組合せから一般的に選ばれる。アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含み、一方、アルカリ土類金属水酸化物は、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを含む。好ましい無機水酸化物は、アルカリ金属水酸化物であり、特に水酸化ナトリウムである。以下の表に記載されるように、アルカリ金属水酸化物の0.1M水溶液は、25℃で計測した際に約13.0のpHを有する。
【0023】
[0033] 塩基性透過促進組成物の他の構成要素、つまり、窒素含有塩基は、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アミド、オキシム、ニトリル、窒素含有複素環、又は尿素でありうる。窒素含有塩基の混合物を使用する事ができる。
【0024】
[0034] 本明細書中の好ましい窒素含有塩基は、アミノ・アルコール及び尿素である。例示のアミノ・アルコールは、式NR123のアミノ・アルコールであり、ここでRは水酸基置換C-C18ヒドロカルビルであり、そしてR2及びR3は、H、C-C18ヒドロカルビル(場合により水酸基以外の置換基で置換される)、及び水酸基置換C-C18ヒドロカルビルから選ばれる。もちろん、好ましいアミノ・アルコールは、Rが1〜12個の水酸基で置換されるC-C12アルキルであり、そしてR及びRは、H、C−C12アルキル(場合により水酸基以外の置換基で置換される)、及び1〜12個の水酸基で置換されるC-C12アルキルから選ばれるアミノ・アルコールであり、そしてより好ましいアミノ・アルコールは、1〜5個の水酸基で置換されるC-Cアルキルであり、そしてR及びRは、H、C-Cアルキル、及び1〜5個の水酸基で置換されるC-Cアルキルから選ばれる。より好ましいアミノ・アルコールの具体的な例は、トリハロメタン(R、R、及びRは、-CHCHOHである)、ジエタノールアミン(R及びRは、-CHCHOHであり、そしてRはHである)、N-メチル・グルカミン(Rは-CH-[CH(OH)]-CHOHであり、RはCHであり、そしてRはHである)(「メルグミン」とも呼ばれる)、2-アミノ-2-メチル-1,3プロパンジオール(Rは-C(CH)(CHOH)であり、R及びRはHである)、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(Rが-C(CH)(CHOH)であり、そしてR及びRがHである)である。
【0025】
[0035] 他の好ましい窒素含有塩基は、非限定的に:アルキルアミン類(モノ−、ジ−、及びトリ−アルキルアミンを含む)、例えばメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、2−アミノヘプタン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、及び1,4−ブタンジアミンを含み;アリールアミン類及びアラルキルアミン類、例えばアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ベンジルアミン、α-メチルベンジルアミン、及びフェネチルアミン;芳香族窒素含有複素環、例えば2−アミノ−ピリジン、ベンズイミダゾール、2,5−ジアミノピリジン、2,4−ジメチルイミダゾール、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、イミダゾール、メトキシピリジン、γ-ピコリン、及び2,4,6−トリメチルピリジン;及び非芳香族窒素含有複素環、例えば1,2−ジメチルピペリジン、2,5−ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルピロリジン、1-エチルピペリジン、n-メチルピロリジン、モルフォリン、及びピペラジンを含む。
【0026】
[0036] 本発明との組合せにおいて有用である代表的な塩基の強度は以下のとおりである:
【0027】
【表1】

【0028】
好ましくは、親水性薬剤と組み合わせて体表面の局在領域に適用される塩基性浸透促進組成物の量は、薬剤の投与の間において、体表面の局在領域において約8.0〜約13.0、好ましくは約8.5〜約11.5、より好ましくは約9.5〜11.5、及び最も好ましくは約10.0〜約11.5の範囲内のpHを与えるために十分な量である。
【0029】
体表面の局在領域でのpHは、体表面とデリバリー・システム又は本発明の医薬製剤との接触面におけるpHである。無水デリバリー・システム及び製剤は、計測できるpHを有さないかもしれず、そして当該システム又は製剤は、塩基性浸透促進組成物を溶解し、そうして塩基性組成物を溶液に放出し、これは次に接触面において所望の標的pHを与えるであろう。様々なタイプのデリバリー・システム及び製剤において、体表面からの湿気は、システム又は製剤中に移動することができ、塩基性の浸透促進組成物を溶解し、そうして塩基性組成物を溶液中に放出し、これは接触面において所望の標的pHを与えるであろう。幾つかの場合において、体表面の局在領域において所望のpHは、親水性薬剤及び塩基性浸透促進組成物を含む製剤を適用することにより与えられ、ここで当該製剤自身は、約8.0〜約13.0、好ましくは約8.5〜約11.5、より好ましくは約9.5〜約11.5、そして最も好ましくは約10.0〜約11.5の範囲内のpHを有する。他の場合において、体表面は、体表面において高pHを与えるために十分な時間の間、塩基性浸透促進組成物にさらされ、そうして皮膚又は粘膜に薬剤が通り抜けることができるチャネルを作り出す。薬剤フラックスが、溶液の強度及び暴露の期間に正比例することが予期される。しかしながら、薬剤のフラックスの最大化と皮膚損傷の最小化とのバランスをとることが望ましい。これは、多くの方法で行うことができる。例えば、皮膚の損傷は、8.0〜13.0の範囲内の低pHを選択することによって、製剤又はシステムを皮膚への暴露の時間を短くすることによって、又は少なくとも1の炎症軽減添加剤を含めることによって、最小化することができる。或いは、患者に、次の投与のたびに適用の位置を変えるようにアドバイスすることができる。
【0030】
[0039] 選択された親水性薬剤及び塩基性促進組成物の成分に依存して、当該促進組成物は、典型的に、局所的に適用される製剤又はドラッグ・デリバリー・システムの薬剤リザーバーの約0.3重量%〜約7.0重量%、好ましくは約0.5重量%〜約4.0重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約3.0重量%、最も好ましくは約0.75重量%〜約2.0重量%を表す。好ましくは、薬剤デリバリー期間において、これを超える量が、塩基性浸透促進組成物の放出割合及び/又は放出量を制御することにより使用されてもよい。
【0031】
親水性薬剤
[0040] 当該方法、本発明の方法、デリバリー・システム、及び製剤を使用して投与される薬剤は親水性である。「親水性」及び「疎水性」という用語は、一般的に分配係数Pの点で定義される。分配係数Pは、有機相中における化合物の平衡濃度と、水相における平衡濃度との比である。本明細書中の親水性化合物は、必ずではないが一般的に、3.5未満、通常1.0未満、及び最も典型的に約0.5未満のlogP値を有し、ここでPは、オクタノールと水とのあいだにおける化合物の分配係数である(それに対して、疎水性化合物は、一般的に少なくとも3.5のlogP値を有し、典型的には約5.0を超える)。本明細書中の好ましい親水性薬剤は、水溶性であり、特に塩基性水溶液中に溶解性である。本発明に記載される経皮投与用の親水性薬剤は、25℃で計測した場合pH8.0で2.5mg/mlを超える明白な水溶性を有し、そして本明細書中の好ましい親水性薬剤は、25℃で計測された場合にpH8.0で10mg/mlを超える明白な水溶性を有する。
【0032】
[0041] 本発明の目的のために、親水性薬剤はまた、3.5未満のlogPを有さないが、pHを上げると増える明白な水溶性を有する。好ましいこのような薬剤は、上記の明白な水溶性プロファイルを示す。つまり25℃で計測した時にpH8.0で2.5mg/mlを超える明白な水溶性を有し、そしてより好ましくは25℃で計測した時、pH8.0で10mg/mlを超える明白な水溶性を有する。
【0033】
[0042] 非イオン化形態のときには疎水性であると一般的にみなされるが、イオン化された際にlogP及び/又は明白な水溶性の点で親水性であるイオン化活性剤が、本文脈における「親水性」薬剤の範囲に含まれる。電気的に中性、つまり非イオン化形態である場合、疎水性である非イオン性であるがイオン化可能な薬剤D−COOH(式中、Dは薬剤の分子中心であり、そしてHは水素原子である)は、それにもかかわらず、カチオン性の対イオンを伴ってアニオンDCOO-へと、つまり塩基性添加塩へと変換される場合、親水性薬剤としての役割を果たしうる。
【0034】
[0043] 前述のパラメーター内において、投与される親水性薬剤は、経皮デリバリーに適しており、そして局所的又は全身の有利な効果を誘導する化合物のいずれかであってもよい。かかる化合物は、皮膚を含む体表面及び膜を通して通常デリバリーされる化合物の広いクラスを含む。薬剤が1を超えるカテゴリーに分類されうるという事実を認めるものの、関心の例示カテゴリーが、非限定的に、鎮痛薬、麻酔薬、抗狭心症薬、抗関節炎薬、抗不整脈薬、抗喘息薬、抗生物質薬剤、抗癌薬、抗コリン作用薬、抗凝血薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗緑内障薬、抗痛風薬、抗寄生虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、降圧薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン性作用薬、制吐薬、抗肥満薬、抗骨粗鬆症薬、抗パニック薬;抗パーキンソン病薬、抗原虫性薬剤、かゆみ止め薬、抗精神病薬、解熱性、抗結核薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬剤、抗ウイルス薬、抗不安薬、食欲抑制薬、カルシウムチャネル拮抗薬、心臓の変力薬、β遮断薬、骨密度制御薬、中枢神経系刺激薬、認知亢進薬、副腎皮質ステロイド、鬱血除去薬、利尿薬、胃腸薬、遺伝物質、ホルモン薬(Hormonolytics)、睡眠薬、血糖降下薬、免疫抑制剤、角質溶解薬、ロイコトリエン阻害薬、マクロライド類、有糸分裂阻害薬、筋弛緩剤、麻薬性拮抗薬、神経遮断薬、ニコチン、副交感神経遮断薬、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖類、鎮静薬、性ホルモン、交感神経刺激薬、子宮収縮抑制薬、精神安定薬、血管拡張薬、ビタミン類、及びそれらの組合せを含む。
【0035】
[0044] 1の好ましい実施態様では、親水性薬剤は、抗炎症薬であり、一般的に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又はCOX-2阻害剤である。かかる薬剤の具体的な例は、非限定的に、アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブチブフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、セレコキシブ、クリデナック(clidenac)、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フェンティアジック(fentiazic)、フルフェナミン酸(flufenamic acid)、フルフェナソール(flufenasol)、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、オキシピナック(oxpinac)、パレコキシブ、フェニルブタゾン、ピクラミラスト、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、ロフェコキシブ、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、テンクロフェナック(tenclofenac)、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチン、トラマドール、バルデコキシブ、ゾメピラク、及び薬理学的に活性なその塩基性添加塩を含む。
【0036】
別の好ましい実施態様では、親水性薬剤は、骨再吸収、カルシウム代謝、及びリン酸代謝に関わる疾患及び症状の診断及び治療に有用であるビスホスホン酸誘導体である。これらのビスホスホン酸の例は、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)、1,1-ジクロロメチレン-1,1-ビスホスホン酸(クロドロン酸)、3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(パミドロン酸)、4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ビスホスホン酸(アレドロン酸)、6-アミノ-1-ヒドロキシへキシリデン-1,1-ビスホスホン酸(ネリドロン酸)、(4-クロロフェニル)チオメタン-1,1-ジホスホン酸(チルドロン酸)、1-ヒドロキシ-2-(3-ピリジニル)-エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(リセドロン酸)、シクロヘプチルアミノメチレン-1,1-ビスホスホン酸(シマドロン酸)、1-ヒドロキシ-3-(N-メチル-N-ペンチルアミノ)プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(イバンドロン酸)、3-(ジメチルアミノ)-1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(オルパドロン酸)、[2-(2-ピリジニル)エチリデン]-1,1-ビスホスホン酸(ピリドロン酸)、及び1-ヒドロキシ-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(ゾレドロン酸)を含む。
【0037】
[0046] 酸性の薬剤は、必ずしもそうではないが一般的に、塩基性添加塩の形態における本発明のドラッグ・デリバリー・システム及び製剤に含まれる。酸性薬剤の塩基添加塩は、医薬として許容される塩基と反応させることを含む、慣用の方法論を使用して、遊離酸から製造される。係る塩基は、例として、エチルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、ジ−イソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、リジン、及びコリンなどの有機塩基、並びに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、及び水酸化カルシウムなどの無機塩基を含む。
【0038】
[0047] 親水性薬剤の代表的な塩基添加塩は、非限定的に、ジクロフェナク・ナトリウム、クロモリン・ナトリウム、ケトロラク・トロメタミン、トルメチン・ナトリウム、メクロフェナム酸ナトリウム、及びエチドロン酸ナトリウムを含む。塩基添加塩は、水分子と付随し、そうして水和物の形態で存在しうる;そうした例の1つは、4-アミノ-1-ヒドロキシ-ブチリデン-1,1-ビスホスホン酸一ナトリウム塩三水和物であり、「アレンドロネート(alendronate)」として知られている。
【0039】
[0048] 本発明の方法、組成物、及びシステムを使用して有利に投与することができる他の好ましい薬剤は、「生体分子」、つまり生きている生物体の一部であるか、一部であったか、又は一部となることができる「有機分子」(ここで、全部又は一部において天然であるか、組換え産生されるか、又は化学的に合成される)である。生体分子は、例えばヌクレオチド、アミノ酸、単糖類、並びにオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドなどのオリゴマー及びポリマー分子種、オリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質などのペプチド性分子、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、ムコ多糖類、又はペプチドグリカン(ペプチド-多糖)などの糖類を含む。
【0040】
[0049] 事実上キラルであり、そして鏡像異性的に純粋な形態を取るか又はラセミ混合体である活性剤について、当該薬剤は、ラセミ体として又は鏡像異性的に純粋な形態としてドラッグ・デリバリー・システム若しくは製剤中に取り込まれてもよい。
【0041】
[0050] 投与される薬剤の量は、多くの因子に左右され、そして対象間で変化し、そして投与される具体的な薬剤、治療される特定の疾病又は症状、症候の重篤度、対象の年齢、体重、及び一般条件、並びに処方する医師の判断に左右される。経皮薬剤デリバリーに特異的な他の因子は、ドラッグ・デリバリー・システムが使用される場合、ドラッグ・デリバリー・システムの担体及び接着層の可溶性及び浸透性、並びにかかるシステムが皮膚又は体表面に固定される時間を含む。適用期間にわたり所望の放出割合を維持するために十分な量の薬剤が、デバイス又は組成物中に存在しなければならないという要求により、薬剤の最小量が決定される。存在する薬剤の量が、毒性レベルに達する放出割合を超過できないという要求により、安全目的のために最大量が決定される。炎症などの有害な組織学的影響、薬剤の体への許容できないほど高い最初のパルス、或いは粘着性、粘性の喪失、又は他の性質の劣化などのデリバリー・デバイスの特徴に有害な影響を及ぼす薬剤の量によって、最大濃度が測定される。
【0042】
医薬製剤及びドラッグ・デリバリー・システム
[0051] 親水性薬剤及び上記の塩基性浸透促進組成物を含む製剤又はドラッグ・デリバリー・システムを、所望の局在化又は全身性の有利な効果を与えるために十分な時間の間、皮膚又は他の組織の規定の領域に適用することに典型的に関する。当該方法は、ゲル、クリーム、ローション、ペーストなどとしての製剤を直接適用することに関し、またドラッグ・デリバリー・デバイスの使用にも関する。どちらの場合においても、塩基により水酸基イオンが与えられるために好ましくは水が存在し、そうして患者の体表面を通した親水性薬剤のフラックスを高める。こうして、かかる製剤又は薬剤リザーバーは、水性、つまり水を含んでもよいし、又は非水性であってもよく、そして密封支持層と組み合わせて使用されてもよく、その結果、投与の間、体表面から蒸発する湿気が製剤内または経皮システム内に維持される。しかしながら幾つかの場合、例えば密封ゲルを用いると、非水性製剤が、密封支持層を伴うか又は伴わずに使用されてもよい。
【0043】
[0052] 適切な製剤は、ゲル、クリーム、ローション、ペーストなどを含む。
[0053] 医薬製剤の分野の当業者に認められることであるが、ゲルは半固体、懸濁型のシステムである。一層のゲルは、液体担体を通して実質的に均一に分散される有機高分子を含む。当該液体担体は典型的には水性であるが、好ましくは、アルコール及び場合によりオイルを含む。好ましい有機高分子、つまりゲル化剤は、ポリマーの「カルボマー」ファミリー、例えばCarbopol(商標)という商標名で市販されているカルボキシポリアルキレンなどの架橋アクリル酸ポリマーである。ポリエチレン酸化物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・コポリマー、及びポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシプロピル・セルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース・フタレート、及びメチルセルロースなどのセルロース性ポリマー;トラガカント・ゴム及びキサンタン・ガムなどのガム;アルギン酸ナトリウム;及びゼラチンなどである。均一のゲルを製造するために、アルコール又はグリセリンなどの分散剤を添加することができ、又はゲル化剤は、倍散、機械的混合又は攪拌、又はそれらの組合せにより分散できる。
【0044】
[0054] 当該技術分野において周知のことであるが、クリームは、粘性液体であるか、又は油中水型若しくは水中油型の半固体乳濁液である。クリームの基剤は、水洗可能であり、そして油層、乳化剤、及び水層を含む。油層はまた、「内部層」と呼ばれ、一般的にワセリン及び脂肪アルコール、例えばセチル又はステアリル・アルコールなどから構成される。必ずしもそうではないが、水層は、体積で油層より多く、そして一般的に保湿剤を含む。クリームの基剤中の乳濁化剤は、一般的に非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性界面活性剤である。
【0045】
[0055] 化粧品の薬剤をデリバリーするのに好ましいローションは、こすることなく皮膚表面に適用される調製液であり、そして典型的には活性剤を含む固体粒子が水又はアルコール基剤中に存在する、液体又は半固体の製剤である。ローションは通常、固体の懸濁液であり、そして好ましくは本目的のために油中水型の液体の油状乳濁液を含む。ローションは、本明細書中で、より流動性の高い組成物を適用することが容易であるために、広い体の領域を治療するための好ましい製剤である。ローション中の不溶性の物質が微粉化されていることが一般的に必要である。ローションは、典型的に、良好に分散させる懸濁剤、並びに皮膚と接触させる活性剤を局在化し、そして保つために有用な化合物、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムなどを含むであろう。
【0046】
[0056] ペーストは、活性剤が適切な基剤中に懸濁される半固体の投与形態である。基剤の性質に左右されて、ペーストは脂肪性のペーストと、単一層水性ゲルから作られるペーストとに分けられる。脂肪性ペーストの基剤は、一般的にワセリン又は親水性のワセリンなどである。単一層水性ゲルから作られるペーストは、一般的にカルボキシメチルセルロースなどを基剤として取り込む。
【0047】
製剤は、リポソーム、ミセル、及びマイクロスフィアで製造されてもよい。リポソームは、脂質二重層を含む脂質壁を有する微小小胞であり、そして本明細書中のドラッグ・デリバリー・システムとして同様に使用することができる。一般的に、リポソーム製剤は、難溶性又は不溶性の医薬製剤に適している。本発明において使用するためのリポソーム製剤は、カチオン性(正荷電)、アニオン性(負荷電)、及び中性調製品を含む。カチオン性リポソームは、容易に利用できる。例えば、N-[1-2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウム・リポソームは、Lipofectin(商標)(GIBCO BRL, Grand Island, NY)の商標名で市販されている。アニオン性及び中性リポソームは、同様にAvanti Polar Lipids(Birmingham, AL)から容易に利用できるか、又は容易に利用できる物質を使用して簡単に調製できる。かかる物質は、数ある中でホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジル・エタノールアミン、ジオレイルホスファチジル・コリン、ジオレオイルホスファチジル・グリセロール、ジオレオイルホスファチジル・エタノールアミンを含む。これらの物質は、適切な比率でN-[1−2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)と混合することができる。これらの物質を使用してリポソームを製造する方法は当該技術分野に周知である。
【0048】
[0058] ミセルは当該技術分野に知られており、そしてその極性の頭部が球殻の外側を形成し、一方疎水性の炭化水素鎖が急の中心方向に配向されてコアを形成するように配置された界面活性剤分子から構成される。自然にミセルが生じるように十分高い濃度で界面活性剤を含む水溶液中でミセルは形成する。ミセルを形成するために有用な界面活性剤は、非限定的にラウリン酸カリウム、オクタン・スルホン酸ナトリウム、デカン・スルホン酸ナトリウム、ドデカン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセート・ナトリウム、デシルトリメチルアンモニウム・ブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド、テトラデシルトリメチル-アンモニウム・クロリド、ドデシルアンモニウム・クロリド、ポリオキシル8ドデシル・エーテル、ポリオキシル12ドデシル・エーテル、ノノキシノール10及びノノキシノール30を含む。ミセル製剤は、局所的又は経皮的デリバリー・システムのリザーバー中に取り込むことにより、又は体表面に適用される製剤中に取り込むことにより、本発明と併用することができる。
【0049】
[0059] 同様にマイクロスフィアを本製剤及びドラッグ・デリバリー・システム中に取り込んでもよい。リポソーム及びミセルと同様に、マイクロスフィアは薬剤又は薬剤含有製剤を実質的に含む。それらは、必ずしもそうではないが一般的に、脂質、好ましくはリン脂質などの荷電脂質から形成される。脂質性マイクロスフィアの製造は、当該技術分野に周知であり、そして付属のテキスト及び文献において記載されている。
【0050】
[0060] 当業者に知られる種々の添加物は、局所製剤中に含まれてもよい。例えば、比較的少量のアルコールを含む溶媒が、ある薬剤の溶解を促進するために使用されてもよい。他の任意の添加剤は、乳白剤、抗酸化剤、香料、着色剤、ゲル化剤、増粘剤、安定剤などを含む。他の薬剤、例えば貯蔵の際に腐敗を妨げるための、つまり酵母及びカビなどの微生物の生育を阻害するための抗菌剤が加えられてもよい。適切な抗菌剤は、典型的にp-ヒドロキシ安息香酸のメチル及びプロピルエステル(つまり、メチル及びプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0051】
[0061] 当該製剤は、薬剤、塩基性促進剤、又は他の製剤の成分が原因として生じる皮膚の炎症又は皮膚の損傷の可能性を最小にし、又は排除するために、炎症軽減添加物を含んでもよい。適切な炎症軽減添加物は、例えば:α-トコフェロール;モノアミン・オキシダーゼ阻害剤、特に2-フェニル-1-エタノールなどのフェニル・アルコール;グリセリン;サリチル酸及びサリチレート;アスコルビン酸及びアスコルベート;モネンシンなどのイオノフォア;両親媒性アミン;塩化アンモニウム;N-アセチルシステイン;シス-ウロカニン酸;カプサイシン;及びクロロキンを含む。存在するならば、炎症軽減添加物は、炎症又は皮膚損傷を軽減するために有効な濃度で製剤中に取り込まれ、典型的には、製剤の約20重量%、より典型的には約5重量%を表す。
【0052】
[0062] 代わりの及び好ましい方法は、薬剤デリバリー・システム、例えば局所的又は経皮的「パッチ」の使用に関し、ここで当該活性剤は、皮膚に固定される積層構造の中に含まれる。かかる構造の中で、使用の間におけるデバイスの外側表面としての役割を果たす上部支持層の下に存在する層、つまり「リザーバー」中に当該薬剤組成物が含まれる。当該積層構造は、単一のリザーバーを含んでもよく、また複数のリザーバーを含んでもよい。
【0053】
[0063] 従って、本発明の別の実施態様は、親水性薬剤を経皮的に投与するためのデリバリー・システムであり、当該システムは以下の:
(a) (i)治療有効量の親水性薬剤及び(ii)フラックスを増大させるために有効な量の無機水酸化物及び窒素含有塩基を含む塩基性浸透促進組成物
を含む少なくとも1の薬剤リザーバー、ここで当該2個の塩基の相対強度及び塩基性浸透促進組成物中のモル比が上記のとおりであり;
(b) 体表面-システム接触面を形成するために、体表面に対して薬剤及び促進剤を移送するシステムを維持する手段;並びに
(c) 使用中、当該デバイスの外側表面としての役割を果たす支持層
を含む。
【0054】
[0067] 当該システムの薬剤リザーバーは、薬剤デリバリーの間、皮膚に対してシステムを固定する役割を果たす医薬として許容される粘着性物質のポリマー・マトリックスを含んでもよく;典型的に、当該粘着物質は、皮膚に長期間接触させるのに適した感圧接着剤(PSA)であり、そしてそれは、物理的及び化学的活性剤、無機又は有機塩基、及びいずれかの担体、溶媒、又は存在する他の添加物と適合性を有するべきである。適切な粘着物質の例は、非限定的に以下:ポリエチレン;ポリシロキサン;ポリイソブチレン、ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ポリウレタン;可塑化エチレン-ビニル・アセテート・コポリマー;及び粘着性のゴム、例えばポリソブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン-イソプレン・コポリマー、ポリスチレン-ブタジエン・コポリマー、及びネオプレン(ポリクロロプレン)を含む。好ましい粘着物質は、ポリイソブチレン、及び特に好ましい粘着物質は、ポリイソブチレン及び架橋ポリ(N-ビニル・ラクタム)、例えば架橋ポリ(ビニル・ピロリドン)(「クロスポビドン」)から構成される。単一のマトリックス層が薬剤リザーバーと皮膚接触粘着物質の両方として役に立つ経皮デリバリー・システムは、一般的に「モノリシック」デリバリー・システムと呼ばれる。
【0055】
[0068] 支持層は、経皮デリバリー・デバイスの第一構造要素として機能し、そして柔軟性及び好ましくは密封性を与える。支持層に使用される物質は、不活性であるべきであり、そして薬剤を吸収することができないものであるべきであり、当該塩基性浸透促進組成物又は製剤の他の成分が当該デバイス中に含まれる。当該支持層は、好ましくは柔軟なエラストマー材料から構成される。当該エラストマー材料は、パッチの上層を通した移動を介して薬剤及び/又は溶媒が失われることを妨げるために保護カバーとしての役割を果たし、そして当該システムに密封性を与え、その結果パッチによりカバーされる体表面の領域が、使用の間、水和状態になる。支持層に用いられる物質は、当該デバイスが皮膚の外形に沿うことを許容し、そして関節又は他の湾曲部などの皮膚の領域で、快適に装着される。当該材料は、皮膚とデバイスの柔軟性又は弾力性の違いのため、皮膚からデバイスが全く又はほとんど剥がれることなく機械的ひずみに晒される。支持層として使用される物質は、上で記載するように密封性又は透過性のいずれかであるが、密封張り付きが好ましく、そして一般的に合成ポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニリデン・クロリド、及びポリエーテル・アミド)、天然ポリマー(例えば、セルロース性材料)、又は多孔性の織布及び不織布から製造される。
【0056】
[0069] 貯蔵の間及び使用前まで、積層構造は、好ましくは剥離地を含む。使用直前に、当該剥離地がデバイスから取り除かれ、その結果、当該システムは皮膚に固定することができるようになる。剥離地は、薬剤/促進剤/溶媒不浸透性の物質から作られるべきであり、そして使い捨ての要素であり、当該要素は、適用の前に当該装置を保護するためのみの役割を果たす。典型的に、当該剥離地は、薬理学的に活性な薬剤と塩基性促進剤を透過しない物質から形成され、そして使用前に経皮パッチから容易に剥がされる。
【0057】
[0070] 薬剤含有リザーバー及び皮膚接触粘着物質は、本発明の経皮デリバリー・システム中に、分離層及び明確な層として存在してもよく、当該接着物質が、リザーバーの下に横たわっている。かかる場合、当該リザーバーは、上で記載されるようにポリマー製のマトリックスであってもよい。代わりに、当該リザーバーは、密閉されたコンパートメント又はパンチ中に含まれる液体又は半固体製剤として構成されてもよいし、又はヒドロゲルリザーバーであってもよく、又は他の形態をとってもよい。ヒドロゲルは水を吸収し、そして膨潤するが、水に溶けない高分子ネットワークであるということが当業者により認められるであろう。つまり、ヒドロゲルは水を吸着させる親水性の官能基を含むが、ヒドロゲルは水に不溶性となる架橋ポリマーから構成される。一般的に、ヒドロゲルは、架橋親水性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ヒドロキシエチル・メタクリレート)(ポリ(HEMA))、又はコポリマー、或いはそれらの混合物から構成される。特に好ましくは親水性ポリマーが、HEMAとポリビニルピロリドンのコポリマーである。
【0058】
[0071] さらなる層、例えば中間織布層及び/又は割合制御膜は、これらの薬剤デリバリー・システムのいずれに存在してもよい。織布層は、デバイスの製造を促進するために使用されてもよいし、割合制御膜は、デバイスから浸透して放出される成分の割合を制御するために使用されてもよい。当該成分は、薬剤、塩基性促進剤、さらなる促進剤、又はドラッグ・デリバリー・システムに含まれる他の成分であってもよい。
【0059】
[0072] 割合-制御膜は、存在する場合、1以上の薬剤リザーバーの皮膚側のシステムに含まれるであろう。かかる膜を形成するために使用される物質は、薬剤製剤中に含まれる1以上の成分のフラックスを制限するように選ばれる。割合制御膜を形成するために有用である代表的な物質は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン-エタクリレート・コポリマー、エチレン-ビニル・アセテート・コポリマー、エチレン-ビニル・メチルアセテート・コポリマー、エチレン-ビニル・エチルアセテート・コポリマー、エチレン-ビニル・プロピルアセテート・コポリマー、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、エチレン-プロピレン・コポリマーなどを含む。
【0060】
[0073] 一般的に、経皮デバイスの下表面、つまり、皮膚と接触する領域は、約5〜200cm2、好ましくは約5〜100cm2、より好ましくは約20〜60cm2の範囲の領域を有する。当該領域は、デリバリーされる薬剤量及び体表面を通した薬剤のフラックスに伴って変化するであろう。大きいパッチは、多量の薬剤を収容するために使用することができ、一方小さいパッチは、比較的高い浸透率を示す少量の薬剤(単数及び/又は複数)に使用することができる。
【0061】
[0074] こうしたドラッグ・デリバリー・システムは、慣用の被膜及び当該技術分野に周知の積層技術を使用して加工することができる。例えば、粘着質のマトリックス・システムは、粘着物質、薬剤、浸透組成物、及びキャリアを支持層上に成形し、続いて剥離地を積層することにより製造することができる。同様に、粘着性混合物は、剥離地上に成形し、続いて支持層の積層されてもよい。代わりに、薬剤リザーバーは、薬剤又は賦形剤が存在しない状態で製造され、次に薬剤/浸透組成物/担体混合物中に浸すことにより充填されてもよい。一般的に、本発明の経皮システムは、溶媒蒸発、フィルム成形、溶融押し出し、薄層積層、打抜きなどにより成形される。塩基性浸透促進組成物は、一般的に、当該デバイスの製造の後にデバイス中に取り込まれるよりは、むしろパッチの製造の間に取り込まれるであろう。従って、塩基性浸透促進組成物は、非イオン化酸性薬剤を、塩形態のイオン化薬剤へと変換するであろう。
【0062】
好ましいデリバリー・システムでは、デリバリー・システムの支持としての役割を果たす粘着性のオーバーレイヤーが、パッチを体表面へとよりよく固定するために使用される。当該オーバーレイヤーは、オーバーレイヤーの粘着物質が体表面と接触するように薬剤リザーバーを覆う大きさである。当該粘着性/薬剤リザーバー層が、水和のために適用後数時間で接着性を失うことがあるので、当該オーバーレイヤーは有用である。粘着性のオーバーレイヤーを取り込むことにより、当該デリバリー・システムは、必要とされる時間の間定位置に留まるであろう。
【0063】
[0076] 経皮ドラッグ・デリバリーの当業者により認められることであるが、経皮ドラッグ・デリバリー・システムの他のタイプ及び形状が、本発明の方法と併用されてもよい。例えばGhosh, Transdermal and Topical Drug Delivery Systems (Interpharm Press, 1997)、特に第二章及び第八章を参照のこと。
【0064】
[0077] 本発明の経皮に適用される製剤と同様に、当該積層システムの薬剤リザーバー(単数又は複数)内に含まれる薬剤及び塩基性浸透促進組成物が、多くの追加の構成要素を含んでもよい。幾つかの場合、薬剤及び浸透剤は、生のまま、つまり添加の液体を含まないでデリバリーされてもよい。しかしながら、多くの場合当該薬剤は、適切な医薬として許容されるビヒクル、典型的には溶媒又はゲル中に溶解、分散、又は懸濁されるであろう。存在しうる他の成分は、保存剤、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、更なる促進剤などを含む。
【0065】
[0078] 本発明が、その好ましい具体的実施態様と合わせて記載されているが、前述の記載は、本発明の範囲を例示することを意図し、そして本発明の範囲を制限することを意図されない。他の態様、利点、及び改変は、本発明に関連する技術分野の当業者に明らかであろう。さらに本発明の実施は、ほかに記載がない限り、当該技術分野の技術の範囲内である慣用の薬剤製剤化技術、特に局所及び経皮薬剤製剤化技術を使用するであろう。こうした技術は文献に十分に説明されている。上で引用されるRemington: The Science and Practice of Pharmacyid.、並びにGoodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 第10版(2001)を参照のこと。
【0066】
[0079] 以下の実施例は、当該方法の実施の仕方、並びに本発明の組成物の作製及び使用の仕方の完全な開示及び記載を当業者に提供するために記載されており、本発明者が発明とみなす範囲を制限することを意図するものではない。数字(例えば量、温度など)に関しては正確性を保証するように努力を払ったが、いくらかの誤差及び偏差を計上すべきであろう。ほかに記載がない限り、パーセントは、重量パーセントであり、温度は摂氏(℃)であり、そして圧力は大気圧又はその付近である。
【実施例】
【0067】
[0080] in vitro皮膚浸透研究は、各々が水酸化ナトリウム及び窒素含有塩基を含むメロキシカムの四種の溶液を使用して行われる。各製剤を製造するために使用される成分は、各成分の実際の重量及び各製剤中の重量パーセントと共に表1に掲載される。各成分を表1に記載される順番で加えた。以下に記載されるように、当該溶液をヒトの死体皮膚に直接取り付けた。
【0068】
[0081] 製剤A、B、C、及びDからのメロキシカムのin vitro浸透を、1cm2の拡散領域で、Franz型の拡散を使用して評価した。リザーバー溶液の体積は8mlであった。ヒトの死体皮膚を適切な大きさに切り、そして角質層が上を向くように拡散細胞をレシーバー・チャンバー上に配置した。ドナー・チャンバーを、角質層上に配置し、そして細胞を固定した。50μlの各メロキシカム製剤を、細胞のドナーとレシーバー・チャンバーとの間に固定された角質層に加えた。3の拡散細胞を各製剤について使用した。レシーバー・チャンバーを、0.5M・KHPO4溶液(pH6.5に調節済)で満たした。レシーバー溶液と拡散細胞を32℃で維持した。各時間点において、レシーバー溶液を完全に回収し、そして新たなリン酸緩衝レシーバー溶液で置換した。ヒトの死体皮膚を通して浸透するメロキシカムの累積量を、リザーバー溶液中の計測されたメロキシカム濃度を使用して計算し、次に時間に対してプロットした。この結果を図1に示す。
【0069】
[0082] 窒素含有塩基を加えない場合、皮膚を通して浸透するメロキシカムの累積量は、0.46mg/cm2であった。N-メチル・グルカミンを加えた場合、皮膚を通して浸透したメロキシカムの累積量は、0.65mg/cm2であった。トリエタノールアミンを加えた場合、皮膚を通して浸透するメロキシカムの累積量は、0.57mg/cm2であった。窒素含有塩基尿素が加えられる場合、皮膚を通して浸透するメロキシカムの累積量は、0.79mg/cm2であった。尿素を含むシステムからヒトの死体皮膚を通して浸透されるメロキシカムの24時間内の累積量は、0.79mg/cm2であった。これは窒素含有塩基が製剤内に存在しない場合より1.7倍高かった。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例2
[0083] 4のジクロフェナク・ナトリウムの経皮デリバリー・システムを使用して、in vitro皮膚浸透研究が行われた。各システムを製造するために使用される成分が、各成分の実際の重量と重量パーセント(総溶液重量に基づく)と共に表2に挙げられる。剥離地の上に各製剤をコーティングし、水及び他の溶媒を取り除くために65℃にて2時間オーブンで乾燥した。乾燥された薬剤含有粘着物質/剥離層フィルムを、支持フィルムに積層し、そして支持フィルム/薬剤含有粘着物質/剥離地の積層物を、1.9cm(9/16インチ)の直径の円盤に切り出した。乾燥後の当該システムの各成分の理論上の重量パーセントを表3に挙げた。
【0072】
[0084] これらの円盤からのヒトの死体皮膚を通したジクロフェナク・ナトリウムのin vitro浸透を、1cm2の拡散領域、8mlのレシーバー溶液キャパシティでFranz拡散細胞を使用して評価した。ヒトの死体皮膚を、適当なサイズに切り、そして角質層側が上を向くように平面上に配置した。剥離地を、円盤状積層物から剥がしとった。支持層/薬剤含有粘着物フィルムを、次に粘着面を角質層に向けて押し付けた。皮膚/粘着物質/支持層の積層物を、皮膚面をレシーバー溶液に向けて拡散細胞のドナーとレシーバー・チャンバーとの間で挟み込んだ。各製剤について3の拡散細胞を使用した。レシーバー溶液は、pH6.5に調節された0.05M・KHPO4溶液であった。全ての細胞及びレシーバー溶液を24時間の研究の間32℃で維持した。各時間点で全レシーバー溶液を回収し、そして新たなリン酸緩衝溶液で置換した。回収されたレシーバー溶液をHPLCにより分析して、ジクロフェナク・ナトリウムの濃度を測定した。ヒトの死体皮膚を通して浸透されるジクロフェナク・ナトリウムの蓄積量を、レシーバー溶液中の計測されたジクロフェナク濃度を使用して計算し、それを時間に対しプロットして、図2に示した。
【0073】
[0085] 皮膚をとおして浸透するジクロフェナクの蓄積量は、窒素含有塩基が加えられない場合、0.90mg/cm2であった。窒素含有塩基)利エタノールアミンを加えた場合、皮膚を通したジクロフェナクの蓄積量は1.08mg/cm2であった。N-メチル・グルカミンが加えられた場合、皮膚を通したジクロフェナクの蓄積量は、1.54mg/cm2であった。モノエタノールアミンが加えられた場合、皮膚を通して浸透するジクロフェナクの蓄積量は、1.57mg/cm2であった。モノエタノールアミンを含むシステムからヒトの死体皮膚を通して浸透したジクロフェナクの蓄積量は、 1.57mg/cm2であり、これは、製剤中に窒素含有塩基が存在しない場合より約1.7倍高かった。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
実施例3
[0086] 各々が水酸化ナトリウム及び窒素含有塩基を含む3のアレンドロン酸ナトリウム溶液を使用して、in vitro皮膚浸透研究が、実施例1で行われた。各製剤を製造するために使用される成分は、各製剤中の各成分の実際の重量と重量パーセントと共に表4に記載される。各成分は、表4に記載の順番で加えられた。溶液を以下に記載されるようにヒトの死体皮膚に直接取り付けた。
【0077】
[0087] 製剤I、J、及びKからのアレンドロネートのin vitro浸透を、1cm2の拡散領域でFranz型の拡散細胞を使用して評価した。レシーバー溶液の体積は8mlであった。ヒトの死体皮膚を適切なサイズに切り、そして角質層が上を向くように拡散細胞をレシーバー・チャンバー上に配置した。ドナー・チャンバーを角質細胞の上に配置し、そして細胞をまとめてはさんだ。50μlの各アレンドロン酸ナトリウム溶液を、ドナーと細胞のレシーバー・チャンバーとの間にはさまれた角質細胞に加えた。3種の拡散細胞を各製剤について使用した。レシーバー・チャンバーを0.5M・KHPO4、0.9%NaCl溶液(pH6.5に調節済み)で満たした。レシーバー溶液及び拡散細胞を32℃で維持した。レシーバー溶液を、各時点で完全に回収し、そして新たなリン酸緩衝生理食塩水で置換した。ヒトの死体皮膚を通して浸透するアレンドロン酸ナトリウムの蓄積量を、レシーバー溶液中のアレンドロン酸ナトリウムの計測された濃度を使用して計算し、これを時間に対しプロットし、そして図3に示した。
【0078】
[0088] 皮膚を通して浸透するアレンドロン酸ナトリウムの蓄積量は、窒素含有塩基が加えられる場合、1.24mg/cm2であった。尿素を加える場合、皮膚をとおして浸透するアレンドロン酸ナトリウムの蓄積量は、1.25mg/cm2であった。N-メチル・グルカミン及びトリエタノールアミンが加えられる場合、皮膚を通して浸透するアレンドロン酸ナトリウムの蓄積量は、1.50mg/cm2であった。N-メチル・グルカミン及びトリエタノールアミンの両方を含むシステムから23.5時間の間ヒトの死体皮膚を浸透するアレンドロン酸ナトリウムの蓄積量は、1.50mg/cm2であり、これは窒素含有塩基が製剤内に存在する場合に約1.2倍高かった。
【0079】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、実施例1に記載されるように、in vitroにおいて本発明の塩基性透過促進組成物を含むメロキシカム溶液から、皮膚を通して浸透するメロキシカムの蓄積量を図示する。
【図2】図2は、実施例2に記載されるように、in vitroにおいて本発明の塩基性透過促進剤と剤形された経皮デリバリー・システムから、皮膚を通して浸透されるジクロフェナク・ナトリウムの蓄積量を図示する。
【図3】図3は、実施例3に記載されるように、in vitroにおいて、本発明の塩基性浸透促進組成物を含むアレンドロン酸ナトリウム溶液から、皮膚を通して浸透されるアレンドロン酸ナトリウムの蓄積量を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(a) ヒト患者体表面の局在領域に親水性薬剤の治療有効量を投与し;そして
(b) フラックスを増大させるのに有効な量の塩基性浸透促進組成物を当該局在領域に適用する
を含む、体表面を通した当該親水性薬剤のフラックスを増大する方法であって、ここで当該促進組成物が、(i)無機水酸化物と(ii)窒素含有塩基の混合物を含み、ここで、当該窒素含有塩基の0.1M水溶液が、当該無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.0〜約6.5低いpHを有し、そして当該促進組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比が、約0.5n:1〜約20n:1(ここでnは、当該無機水酸化物の分子あたりの水酸基イオンの数である) の範囲内である、前記方法。
【請求項2】
前記窒素含有塩基の0.1M水溶液が、前記無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより少なくとも約1.5低いpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比が、約0.5n:1〜約10n:1の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラックスを増大させるのに有効な量の組成物が、当該薬剤の投与の間、体表面の局在領域で約8.0〜約13.0の範囲内のpHを与える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記pHが、約8.5〜約11.5の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記pHが、約9.5〜約11.5の範囲内である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記無機水酸化物が、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及びそれらの組合せから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記無機水酸化物が、アルカリ金属水酸化物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記窒素含有塩基が尿素である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記窒素含有塩基が、アミノ・アルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アミノ・アルコールが、構造式:NR(式中、Rは、水酸基置換ヒドロカルビルであり、そしてR及びRは、H、ヒドロカルビル、及び水酸基置換ヒドロカルビルから選ばれる)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
が、1〜12個の水酸基で置換されるC-C12アルキルであり、そしてR及びRが、H、C-C12アルキル、及び1〜12個の水酸基で置換されたC-C12アルキルから選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
が、1〜5個の水酸基で置換されるC-Cアルキルであり、そしてR及びRが、H、C-Cアルキル、及び1〜5個の水酸基で置換されたC-Cアルキルから選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
、R、及びRが、-CHCHOHであり、その結果前記アミノ・アルコールが、トリエタノールアミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
及びRが、-CHCHOHであり、そしてRがHであり、その結果前記アミノ・アルコールが、ジエタノールアミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
が、-CH-[CH(OH)]-CHOHであり、RがCHであり、そしてRがHであり、その結果前記アミノ・アルコールが、N-メチル・グルカミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記親水性薬剤の明白な水溶性が、pHを増大するにつれて増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記親水性薬剤の明白な水溶性が、25℃で2.5mg/mlを超える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記親水性薬剤の明白な水溶性が、25℃で10mg/mlを超える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記親水性薬剤が、イオン性薬剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記親水性薬剤が、塩基添加塩形態の酸性薬剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記体表面が皮膚である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記体表面が粘膜組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記親水性薬剤及び前記塩基性浸透促進組成物が、単一の医薬製剤中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記親水性薬剤及び前記塩基性浸透促進組成物が、分離された医薬製剤中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
(a)及び(b)が、同時に行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(a)が、(b)の前に行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
(b)が、(a)の前に行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
(a)及び(b)が、患者体表面の局在領域に薬剤デリバリー・デバイスを固定し、それにより体表面-デリバリー・デバイス接触面を形成することにより行われ、ここで当該デバイスが、親水性薬剤及び塩基性浸透促進組成物を含み、そして使用中にデバイスの外側表面としての役割を果たす外側支持層を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記製剤が、ゲル、クリーム、ローション、又はペーストである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記親水性薬剤が、鎮痛薬、麻酔薬、抗狭心症薬、抗関節炎薬、抗不整脈薬、抗喘息薬、抗生物質薬剤、抗癌薬、抗コリン作用薬、抗凝血薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗緑内障薬;抗痛風薬、抗寄生虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、降圧薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン性作用薬、制吐薬、抗肥満薬、抗骨粗鬆症薬、抗パニック薬;抗パーキンソン病薬、抗原虫性薬剤、かゆみ止め薬、抗精神病薬、解熱性、抗結核薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬剤、抗ウイルス薬、抗不安薬、食欲抑制薬、カルシウムチャネル拮抗薬、心臓の変力薬、β遮断薬、骨密度制御薬、中枢神経系刺激薬、認知亢進薬、副腎皮質ステロイド、鬱血除去薬、利尿薬、胃腸薬、遺伝物質、ホルモン薬、睡眠薬、血糖降下薬、免疫抑制剤、角質溶解薬、ロイコトリエン阻害薬、マクロライド類、有糸分裂阻害薬、筋弛緩剤、麻薬性拮抗薬、神経遮断薬、ニコチン、副交感神経遮断薬、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖類、鎮静薬、性ホルモン、交感神経刺激薬、子宮収縮抑制薬、精神安定薬、血管拡張薬、ビタミン類、及びそれらの組合せから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記親水性薬剤が、抗炎症薬である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗炎症薬が、アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブチブフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、セレコキシブ、クリデナック、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フェンティアジック、フルフェナミン酸、フルフェナソール、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、オキシピナック、パレコキシブ、フェニルブタゾン、ピクラミラスト、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、ロフェコキシブ、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、テンクロフェナック、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチン、トラマドール、バルデコキシブ、ゾメピラク、及び薬理学的に活性なその塩基性添加塩から選ばれる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記親水性薬剤が、ビスホスホン酸誘導体である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ビスホスホン酸誘導体が、エチドロン酸、クロドロン酸、パミドロン酸、アレドロン酸、ネリドロン酸、チルドロン酸、リセドロン酸、シマドロン酸、イバンドロン酸、オルパドロン酸、ピリドロン酸、ゾレドロン酸、及びそれらの薬理学的に活性な塩基添加塩から選ばれる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記親水性薬剤が、生体分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記生体分子が、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、ムコ多糖類、ペプチドグリカン、及びそれらの組合せから選ばれる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
以下の:
(a) (i)治療有効量の親水性薬剤及び(ii)フラックスを増大させるのに有効な量であり、無機水酸化物及び窒素含有塩基を含む塩基性浸透促進組成物を含む少なくとも1の薬剤リザーバー、ここで窒素含有塩基の0.1M水溶液が、無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.0〜約6.5低いpHを有し、そして当該促進組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比が、約0.5n:1〜約20n:1(ここでnは、無機水酸化物の分子あたりの水酸化物イオンの数である)の範囲内に存在し;
(b) 体表面システム接触面を形成するように体表面に対して薬剤及び促進剤を移送するシステムを維持するための手段;並びに
(c) 使用中に、デバイスの外側表面としての役割を果たす支持層
を含む、親水性薬剤の経皮投与のためのデリバリー・システム。
【請求項40】
以下の:
(a) 治療有効量の親水性薬剤
(b) フラックスを増大させるのに有効な量であり、無機水酸化物及び窒素含有塩基を含む塩基性浸透促進組成物、ここで窒素含有塩基の0.1M水溶液が、無機水酸化物の0.1M水溶液のpHより約1.0〜約6.5低いpHを有し、そして当該促進組成物中の窒素含有塩基:無機水酸化物のモル比が、約0.5n:1〜約20n:1(ここでnは、無機水酸化物の分子あたりの水酸化物イオンの数である)の範囲内に存在し;そして
(c) 経皮薬剤投与に適した医薬として許容される水性担体
を含む、親水性薬剤の経皮投与用製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−510628(P2007−510628A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535647(P2006−535647)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/033884
【国際公開番号】WO2005/037157
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506128385)ダーマトレンズ,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】