説明

親油性コアを含む複合コアセルベートカプセル

親油性コアと親水性壁とを含み、前記壁が実質的にコアを被覆する複合コアセルベートカプセルであって、前記壁が実質的にβラクトグロブリンと、βラクトグロブリンより低い等電点を有する一以上のポリマーとから構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性コアと親水性壁を含む複合コアセルベートカプセルであって、前記壁が実質的にコアをカバーするものに関する。前記複合コアセルベートカプセルは、必須ではないが、完全にゼラチンを含まないものとすることができる。本発明はさらに、前記複合コアセルベートカプセルを調製する方法、並びに、前記複合コアセルベートカプセルを含む食品組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
悪味または酸素敏感性脂肪または油、ビタミン、またはβカロテンのような脂溶性物質のカプセル内包が周知である。いくつかの技術が、脂溶性物質のカプセル内包に必要な、親油性コアを有するカプセルを調製するために提案されてきた。
【0003】
例えば、EP982038は、架橋可能タンパクの水溶液、トランスグルタミナーゼ、およびβカロテンのような疎水性物質の混合物をスプレーすることによりカプセルを調製することを記載している。この架橋可能タンパクは、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク、およびコラーゲンである。実施例では、ゼラチンがタンパクとして用いられている。
【0004】
輸送手段としてゼラチン含有カプセルを使用することは、ペイントボール、薬用ゼラチンカプセル、カプセルを用いたビタミン/健康製剤、香水/化粧品/入浴剤、およびゲルカプセル化製品等の、多くの技術分野で周知である。係るカプセルは柔軟であり、容易に溶解する。これらは複合コアセルベーションによって調製できる。
【0005】
複合コアセルベーションは、コロイド化学において周知の現象であり、カプセル化のコアセルベーション技術に関する大要は、例えば、P.L.Madan c.s.によるDrug Development and Industrial Pharmacy,4(1),95-116(1978)や、P.B.Dearyによる“Microencapsulation and drug processes”,1988 chapter 3に示されている。一般に、コアセルベーションとは、固形凝集物と言うよりはむしろ液滴状態への、親油性コロイドの塩析または相分離の現象である。重合成分のコアセルベーションは、様々な方法、例えば、温度の変化、pHの変化、低分子量物質の添加、または第二の高分子物質の添加により実施することができる。二種類のコアセルベーション、すなわち単純コアセルベーションと複合コアセルベーションが存在する。一般に、単純コアセルベーションは、通常、唯一の重合成分を含む系を用いるが、複合コアセルベーションは一種より多くの重合成分を含む系を用いる。
【0006】
大抵の商業的に入手可能なカプセルは、溶解挙動、柔軟性、および強度に関する複合的要求を満たすために、動物由来のゼラチンを用いる。しかしながら、動物由来のゼラチンの使用は、ヨーロッパにおける“狂牛病”のような疾患の伝染という観点から、一部のケースでは望ましくない。
【0007】
ゼラチンの主な起源はウシやブタであるが、魚や鳥についても、ゼラチンの代替的な少量の起源として文献に記載されている。ゼラチンの起源は、使用可能性のある領域や特定の消費者にとって問題となりうる。世界の多くのグループが、ブタのあらゆる製品(例えば、ベジタリアン、ヘブライ人、およびイスラム教徒)や牛製品(ヒンドゥー教徒およびベジタリアン)の摂取を望まない。薬品および/または食品サプリメントは、ゼラチンの起源表示無しに、ゼラチンカプセルに供給されているので、カプセルの使用は、宗教上の信念がゼラチンの起源を問題にする必要のある領域では制限される。さらに、動物由来の制御不能な副産物の使用により、ある程度の商業的な容認を失っている。動物に由来しない、ゼラチン置換組成物が望まれていることは明らかである。
【0008】
ウシまたはブタに由来するゼラチンを使用しない幾つかのカプセル内包技術が提案されている。
【0009】
WO96/20612は、魚のゼラチンをベースとするカプセルについて記載する。魚のゼラチンは、ブタやウシ起源のゼラチンの使用を回避するが、その起源としては未だ動物由来である。魚ゼラチンは、魚ゼラチンを食べた一部のヒトにアレルギー反応を引き起こすことがあり、食品への一般的な応用を面倒にする。
【0010】
C.Schmitt, C.Sanchez, F.ThaomaおよびJ.Hardy, Food Hydrocolloids 13(1999),483-496頁は、水性媒体におけるβラクトグロブリンとアカシアガムとの間の複合コアセルベーションについて記載する。この刊行物はこれらの成分のコアセルベートの調製を記載するが、親油性コアを有するカプセルの調製については教示していない。
【0011】
WO96/38055は、乳清タンパク単離物を含む母材に香料または活性成分を含む、乾燥母材カプセル組成物について記載する。乳清タンパク単離物は、一般的に、大量のラクトースおよび塩を含む。
【0012】
WO97/48288は、単離した大豆タンパク、乳清タンパク単離物、カゼイン塩およびこれらの混合物からなる群から選択された疎水性および親水性特性の混合を有するタンパクを含む被覆層とコアとを含むカプセルについて記載する。このカプセルは、タンパク変性を含む方法で製造される。
【特許文献1】EP982038
【特許文献2】WO96/20612
【特許文献3】WO96/38055
【特許文献4】WO97/48288
【非特許文献1】Drug Development and Industrial Pharmacy,4(1),95-116(1978)
【非特許文献2】“Microencapsulation and drug processes”,1988 chapter 3
【非特許文献3】Food Hydrocolloids 13(1999),483-496頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は親油性化合物の安定なカプセルを提供することである。本発明の別の課題は、周知のカプセルと比較して、カプセル内包される化合物の生物学的利用能が増大したカプセルを提供することである。さらなる課題は、成分としてのゼラチンの使用を避けたカプセルを提供することである。さらなる課題は、小さい直径を有するカプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一以上のこれらの課題が、親油性コアと親水性壁とを含み、前記壁が実質的にコアを被覆する複合コアセルベートカプセルであって、前記壁が実質的にβラクトグロブリンと、βラクトグロブリンより低い等電点を有する一以上のポリマーとから構成されることを特徴とするカプセルを提供する本発明に従って達成される。
【0015】
本発明に係るカプセルは、好ましくはβラクトグロブリン、カゼイン塩のようなコアセルベート化パートナー、および好ましくはトランスグルタミナーゼのような架橋剤の使用を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
コアセルベーションを介して本発明に係る複合コアセルベートカプセルを調製するために、βラクトグロブリンおよびβラクトグロブリンより低い等電点を有する一以上のポリマーとを用いる。
【0017】
本発明において用いられるβラクトグロブリンは、商業的に入手可能なβラクトグロブリン、例えばオランダのSigma社製のものを用いることができる。あるいは、βラクトグロブリンは、乳製品、例えば、乳清タンパク単離物のような乳清タンパク材料から得られる。
【0018】
βラクトグロブリンよりも低い等電点(IEP)を有するポリマーは、必要とされるIEPを有するのであれば、いかなるポリマーであってもよい。係るポリマーを、ここではアニオン性ポリマーと称する。βラクトグロブリンおよびアニオン性ポリマーは、ここでは、集合的に壁ポリマーと称する。
【0019】
好ましくは、アニオン性ポリマーはヒトが消化できる。適切な消化可能なアニオン性ポリマーとそのIEPの例は、カゼインおよびカゼイン塩(4.1−4.5)、αラクトグロブリン(4.2−4.5)、血清アルブミン(4.7)、大豆グリセニン(4.9)、大豆βコングリセニン(4.6)、アラビアゴム、カラゲナン、およびペクチン(3−4)である。
【0020】
βラクトグロブリンのIEPは5.1−5.2である。
【0021】
バイオポリマーの比率および全濃度は、十分に均質で厚みのある親水性壁を形成できるコアセルベートを得るように選択される。
【0022】
好ましくは、アニオン性ポリマー全体に対するβラクトグロブリンの比率(w/w)は、1.5−5、好ましくは1.5−3、最も好ましくは2−2.4である。
【0023】
好ましくは、親油性コア物質の全体量に対する壁物質(βラクトグロブリンおよびアニオン性ポリマー)の比率(w/w)は0.15以上とすべきであり、好ましくは0.2より高く、最も好ましくは0.25−0.5である。
【0024】
好ましくは、βラクトグロブリンとアニオン性ポリマーは、本質的に塩を含まない(乾燥壁ポリマーの全体に対して<0.1(w/w))。
【0025】
好ましくは、アニオン性ポリマーは、カゼイン塩またはカゼイン誘導体を含む。βラクトグロブリンとカゼイン塩を含む本発明に係るカプセルは、ヒトの胃に観察されるタンパク質分解活性に対して高度に敏感である。それゆえ、その崩壊およびその内容物の放出が、変性ゼラチン(架橋化)をベースとするカプセルよりも早く起こる。ゼラチンは、ペプシンによる胃のタンパク質分解活性に対してより耐性であるが、十二指腸のプロテアーゼに対してはそうでないことがわかっている。ゼラチンと非ゼラチンカプセルとの間の係る放出の時差が、胃における非ゼラチン製品からのカプセル内包化試薬のより早い分解をもたらし、分解が生物学的利用能における速度制限ステップである化合物のよりよい生物学的利用能をもたらす。
【0026】
一方、本発明に係るコアセルベートは、親油性コアまたはその成分の分解を、食品に自由に分散させた場合の前記成分の分解と比較して遅らせるために有利に用いることができる。
【0027】
親油性コアは、好ましくは油、または油溶性または油分散性成分を含む油である。
【0028】
好ましくは、コアセルベートの組成物は、食用のまたは食品に適用可能な材料からなる。好ましくは、複合コアセルベートカプセルは、食品の調製、処理、および貯蔵において安定である。有利には、コアセルベートの壁は架橋しており、好ましくは壁はトランスグルタミナーゼで架橋している。
【0029】
好ましくは、カプセルの平均粒子サイズは50μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0030】
本発明はさらに複合コアセルベートカプセルを調製する方法に関し、この方法では、βラクトグロブリンとβラクトグロブリンよりも低い等電点を有する一以上のポリマーとの水溶液または分散物中における油相のエマルションを、pH変化処理して、βラクトグロブリンとポリマーとの複合コアセルベートを形成する。
【0031】
また本発明は、上記複合コアセルベートカプセルを含む食品組成物にも関する。係る食品においては、コアセルベートは好ましくは凝集物として存在する。好ましくは、係る凝集物の平均粒子サイズは10から100μmの間である。
【0032】
本発明の好ましい実施態様によれば、親油性コアは、処理および/または貯蔵の際に親水性の壁の内側に保持されるが、哺乳動物の胃腸管における分解の際に放出される。
【0033】
安定とは、ここでは、コアの親油性化合物の漏出安定性と定義される。この漏出安定性または“保持”により、これらのカプセルを含有する食品等の処理および貯蔵の際に、品質について幾つかの利点を有する。利点とは、コアが酸化のような化学反応に対してあまり敏感でなく、食べた際にコアの味がせず、製品の特性が貯蔵の際に一定であるということである。
【0034】
(所定のpHにおいて)複合コアセルベーションを得るために、一種の(バイオ)ポリマータイプは、陽性チャージする必要があり、それ以外は陰性にチャージする必要がある。複合コアセルベーションの際には、pHはバイオポリマーの各IEPの間である。これは、IEPが好ましくは十分に離れていることを意味する。複合コアセルベーションの適切なpHはバイオポリマーの濃度に依存する。
【0035】
殆どのバイオポリマーが低いIEPを有するが、高いIEPを有する少数のバイオポリマーが存在する。βラクトグロブリンは高いIEPを有し、5.1−5.2である。
【0036】
βラクトグロブリンは、好ましくはできるだけ純粋なものである。商業的な乳清タンパク単離物のサンプルは、αラクトアルブミン、塩、およびラクトースに富む傾向があり、係るバイオポリマーはそれゆえ複合コアセルベーションにはあまり適していない。
【0037】
βラクトグロブリンの別の利点は、ゼラチンのように、それが動物由来(皮膚または骨)ではないということである。βラクトグロブリンの他の利点も挙げることができる。それは、複合コアセルベートカプセルの製造方法が水中油型エマルションの形成を含み、βラクトグロブリンは、ゼラチンと比べて係る乳化を容易にする。
【0038】
実施例1−4
A.複合コアセルベートカプセルの調製
βラクトグロブリン(Sigma,オランダ)およびアラビアゴム(Merck)またはカゼインナトリウム塩(DMV,オランダ)を用い、かつ、合成βカロテンを機能成分として含む複合コアセルベートカプセルを以下のようにして調製した。
【0039】
10.5gのβラクトグロブリンと4.9gのカゼインナトリウムとを、705gの脱塩水に添加した。この混合物を撹拌しながら55℃まで加熱した。
【0040】
1.5gのβカロテン(ヒマワリ油中に30%分散物(Roche,スイス))を3Lのガラスカップに入れ、43.5gのヒマワリ油を加え、この混合物を撹拌しながら60℃で2時間加熱した。
【0041】
この油/カロテン混合物を上記βラクトグロブリン溶液に加えた。この混合物を、良好なエマルションが得られるまで、55℃でultraturraxを用いて(起泡させずに)撹拌した。
【0042】
pH5.1に達するまで0.1N HClを加え(55℃でオープングルーブスターラー(open groove stirrer)を用いて混合しながら)、油滴の周りにコアセルベートを形成した。低いpHでは、事実上のコアセルベーションが起こり、顕微鏡で視覚的に観察できる。このpHでは、収率は最大である(エマルジョンにより変化する)。酸添加に要する時間は、小さいコアセルベートカプセルを得るために、約60分の添加時間まで、最適化された。
【0043】
B.カプセルの架橋
B1.グルタルジアルデヒド架橋
工程Aで調製されたコアセルベートカプセル混合物を、2時間で20℃まで冷却し、1.3gのグルタルジアルデヒド(50%溶液)を混合し、得られた混合物を20℃で18時間撹拌した。折り畳んだ濾紙で濾過して水を除いた。
【0044】
B2.トランスグルタミナーゼ架橋
工程Aで調製したコアセルベート混合物を50℃まで冷却し、6.00gのトランスグルタミナーゼ(キャリアー中に1%)を加え、得られた混合物を50℃で17時間撹拌した。この混合物を65℃で30分間加熱して、酵素を不活性化した。次に、混合物を2時間で20℃まで冷却し、折り畳んだ濾紙で濾過して水を除いた。
【0045】
C.カプセルの洗浄
Bで調製したカプセルを水で洗浄し、グルタルジアルデヒドまたはトランスグルタミナーゼの残余物を取り除いた。洗浄工程を数回繰り返して、洗浄水中に実質的に架橋剤が検出されなくなるまで架橋剤の量を低減させた。
【0046】
カプセルを水に懸濁させ、混合物を30分間撹拌した。折り畳んだ濾紙で濾過して水を除いた。0.1%ソルビン酸カリウムを洗浄水に加えた。
【0047】
D.カプセルを含む食品(スプレッド)の製造
スプレッドの製造を、マイクロボテーター(microvotator)において実験室スケールで実施した。スプレッドのパラメーターは以下の通りである。
・スプレッド中のβカロテン濃度は100mg/kg。
・湿ったコアセルベートをスプレッドの水相に加え、その後、プレミックス調製物の2相を混ぜた。
・スプレッドの脂肪レベルは40%(w/w)。
【0048】
脂肪混合物を、脂肪混合物の量に基づく以下の量の以下の成分から調製した。
73% 豆油
17% 硬化パーム核油のエステル交換脂肪組成物
10% パーム油
【0049】
この脂肪混合物を以下のように脂肪相の調製に用いた(最終製品全体に対する量)。
39.78% 上記脂肪混合物
0.05% レシチン
0.16% 乳化剤(硬化パーム油のジグリセリド)
0.012% 植物油中の15重量%βカロテン分散物
【0050】
水相の成分
1.1% ゼラチン
0.48% NaCl
0.27% 酸性乳清
0.12% ソルビン酸カリウム
水(バランス量)
pHをクエン酸を用いて約5.0に調節した。
【0051】
前記脂肪相と水相を混ぜて予備混合し、以下の条件下でA−A−A−C処理ラインで処理した。
前記予備混合物を約60℃まで加熱し、以下の条件を適用した以下の処理ラインを行った。
Aユニット:1000rpm、20℃
Aユニット:1000rpm、14℃
Aユニット:1000rpm、9℃
Cユニット:900rpm
処理量は150kg/hrであった。
【0052】
E.漏出テスト
スプレッドにおける自由に分散したβカロテン濃度およびカプセル内包されたβカロテン濃度の測定
ヘキサン(または石油エーテル)をフラスコ中の1.3−1.9gのスプレッドに加える(10−100mlのヘキサン、βカロテン量に依存)。脂肪相が溶解するまで慎重にこの混合物を振る。カプセルが完全なままであれば、ヘキサンはβカロテンを抽出しない。次に、ヘキサンを、デカンテーションによりカプセルから取り出し、別のフラスコに移す。このフラスコを、次いでヘキサンで満たす。このヘキサン中のβカロテンの測定は、スプレッドの「自由に分散した」βカロテン含量を与える。残りのカプセルにアセトンを加える。この混合物を、全てのβカロテンがアセトンによりカプセルから抽出されるまで強く撹拌する。これはカプセルが無色になることから視覚的に観察される。このアセトンにおけるβカロテンの測定は、スプレッドの「カプセル内包された」βカロテン含量を与える。
【0053】
UV測定
カプセル内包されたβカロテン含量の測定では、サンプルを0.22μmフィルターで濾過して、細かい粒子を取り除いた。自由なβカロテン含量の測定では、サンプルを濾過せずに直接測定した。サンプルは1cmのガラスキュベットにおいて測定した。βカロテン含量の算出には約460nmの波長における吸収最大を用いた。以下の経験式を用いた。
【0054】
【数1】

【0055】
上記式において、
β−car βカロテン濃度[mg/kg]
max 460nmにおける最大吸収[−]
V サンプルの体積[mL]
m サンプルの重量[g]
【0056】
カプセルからスプレッド母材へのβカロテンの漏出を、スプレッドのカプセル中のβカロテンおよびスプレッドに自由に分散したβカロテンから測定する。これは以下のように算出する。
【0057】
【数2】

【0058】
上記式において、
β−car,disp スプレッドに自由に分散したβカロテン濃度[mg/kg]
β−car,encaps スプレッド中のカプセル内包されたβカロテン濃度[mg/kg]
β−car,init バックグラウンドのカラーとして加えられた、スプレッドに自由に分散したβカロテン濃度[mg/kg]
【0059】
実施例5−6
実施例1−4の方法を、以下の変更を加えて再び実施した。すなわち、工程Aにおいて、今度は10.3gのβラクトグロブリンと4.6gのアラビアゴムを678gの脱塩水に加えた。混合物を撹拌しながら55℃まで加熱した。
【0060】
比較実験A−B
実施例1−4の方法を、以下の変更を加えて再び実施した。すなわち、工程ABにおいて、今度は20.5gのHyprol 8100(乳清タンパク質単離物、〜9.8gのβラクトグロブリンを含有)と4.9gのアラビアゴムを720gの脱塩水に加えた。混合物を撹拌しながら55℃まで加熱した。
【0061】
実施例1−6では、約10μmの平均直径を有するコアセルベートが形成された。
【0062】
実施例1−6および比較実験AおよびBの結果を表1に記載する。
【0063】
表1にまとめた結果から、βラクトグロブリンおよびアラビアゴムまたはカゼイン塩から調製したカプセルをグルタルジアルデヒドまたはトランスグルタミナーゼを用いて架橋すると、βカロテンの漏出が、非架橋のカプセルと比較して顕著に低減されることが明らかである。さらに、アラビアゴムをカゼイン塩で置換することは、架橋カプセルからのβカロテンの漏出に何の影響も与えない。
【0064】
Hyprolから調製したカプセル(比較例AおよびB)は、グルタルジアルデヒドで架橋した後でさえもβカロテンを高レベルで漏出した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性コアと親水性壁とを含み、前記壁が実質的にコアを被覆する複合コアセルベートカプセルであって、前記壁が実質的にβラクトグロブリンと、βラクトグロブリンより低い等電点を有する一以上のポリマーとから構成されることを特徴とする複合コアセルベートカプセル。
【請求項2】
βラクトグロブリンより低い等電点を有する一以上のポリマーの全体量に対するβラクトグロブリンの比率(w/w)が1−5である、請求項1に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項3】
βラクトグロブリンより低い等電点を有するポリマーがカゼイン塩またはカゼイン誘導体を含む、請求項1または2に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項4】
親油性コアが油または油溶性化合物を含む油である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項5】
コアセルベートの組成物が食用のおよび食品に適用可能な材料からなる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項6】
複合コアセルベートカプセルが、食品の調製、処理、および貯蔵において安定である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項7】
前記壁が架橋している、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項8】
前記壁がトランスグルタミナーゼで架橋している、請求項7に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項9】
カプセルの平均粒子サイズが50μm以下である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項10】
カプセルの平均粒子サイズが25μm以下である、請求項9に記載の複合コアセルベートカプセル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の複合コアセルベートカプセルを含む食品組成物。
【請求項12】
複合コアセルベートカプセルが凝集物として存在する、請求項11記載の食品組成物。
【請求項13】
前記凝集物の好ましい平均粒子サイズが10から100μmの間である、請求項12記載の食品組成物。
【請求項14】
親油性コアが、処理および/または貯蔵の際に親水性の壁の内側に保持されるが、哺乳動物の胃腸管における分解の際に放出される、請求項11記載の食品組成物。
【請求項15】
βラクトグロブリンとβラクトグロブリンよりも低い等電点を有する一以上のポリマーとの水溶液または分散物中における油相のエマルションを、pH変化処理して、βラクトグロブリンとポリマーとの複合コアセルベートカプセルを形成する、複合コアセルベートカプセルの調製方法。
【請求項16】
前記ポリマーがカゼイン塩またはカゼイン誘導体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複合コアセルベートが架橋剤を用いて架橋されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋剤がトランスグルタミナーゼである、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2006−510359(P2006−510359A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559697(P2004−559697)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012886
【国際公開番号】WO2004/054702
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】