説明

観察体の観察台及び観察方法

【課題】 観察試料液に含まれた観察体を多面的に観察することができる観察方法を提供すること
【解決手段】 観察体を含む観察試料液を所定方向に流して観察体を観察するための観察方法。内周面の少なくとも一部に多数の微小突部12が設けられた管部材6を用い、管部材の一端側に観察試料液を供給するための試料液供給手段16を接続し、管部材6の他端側に観察試料液を回収するための試料液回収手段18を接続する。試料液供給手段16から管部材6を通して試料液回収手段18に観察試料液を流すと、管部材6を流れる際に観察試料液に含まれる観察体が多数の微小突部12に衝突し、かかる衝突によって観察体が観察試料液の所定方向の流れを利用して回動し、その結果、顕微鏡を用いて観察体を多面的に観察することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体細胞、植物細胞、細菌、ウイルスなどの観察体を観察するための観察台及び観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体細胞などの観察体を観察するためにスライドグラスを利用したプレパラートが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このプレパラートは、例えば、スライドグラスに観察体を含む観察試料液を一滴落とし、次いでグラスカバーでもって気泡が入らないように観察試料液をゆっくり被い、その後、グラスカバーからあふれた観察試料を吸収し、このような手順によって形成される。
【0003】
【特許文献1】特公平7−69253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したプレパラートを用いた観察では、観察すべき観察体がスライドグラスとカバーグラスとの間で静止状態に保持され、このように静止状態に保持された観察体を顕微鏡で観察するようになる。一般的に、観察体は三次元的な立体構造であるが、上述したプレパラートによる観察では、観察体を平面的にしか見ることができず、それ故に、観察体の特定の一面しか観察することができず、観察体を多面的に見ることができる観察台及び観察方法の実現が強く望まれている。
【0005】
本発明の目的は、観察試料液に含まれた観察体を多面的に観察することができる観察台及び観察方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の観察体の観察方法は、観察体を含む観察試料液を所定方向に流して前記観察体を観察するための観察方法であって、内周面の少なくとも一部に多数の微小突部が設けられた観察流路を有する流路部材を用い、前記観察流路の一端側に前記観察試料液を供給するための試料液供給手段を接続し、前記観察流路の他端側に前記観察試料液を回収するための試料液回収手段を接続し、前記試料液供給手段から前記観察流路を通して前記試料液回収手段に前記所定方向に前記観察試料液を流し、前記観察流路を流れる際に前記観察試料液に含まれる前記観察体を前記多数の微小突部に衝突させ、かかる衝突によって前記観察試料液の前記所定方向の流れを利用して前記観察体を回動させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の観察体の観察方法では、前記流路部材は前記観察流路を有する管部材から構成され、前記管部材をスライドグラスに橋渡しするように載置し、前記管部材を覆うようにカバーグラスを載置し、前記スライドグラスと前記カバーグラスとの間に封入剤を充填して前記管部材を固定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の観察体の観察方法では、前記管部材の内径は50〜1000μmであり、前記管部材の前記多数の突起の高さは0.5〜10μmであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の観察体の観察方法では、前記観察試料液は、前記試料液供給手段と前記試料液回収手段との間の圧力差、又は前記試料液供給手段に収容された前記観察試料液と前記試料回収手段に収容された回収液との濃度差を利用して、前記試料液供給手段から前記管部材を通して前記試料液回収手段に流れることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の観察体の観察台は、観察体を含む観察試料液を所定方向に流して前記観察体を観察するための観察台であって、スライドグラスと、前記スライドグラスの上側に配設された流路部材と、を備え、前記流路部材の観察流路の内周面の少なくとも一部に多数の微小突部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の観察体の観察台では、前記流路部材と前記スライドグラスとの間に封入剤が充填されていることを特徴とする。
また、本発明の請求項7に記載の観察体の観察台では、前記流路部材は管部材から構成され、前記管部材の上側にカバーグラスが配設され、前記スライドグラスと前記カバーグラスとの間の空間に前記管部材を被うように前記封入剤が充填されることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項8に記載の観察体の観察台では、前記管部材の内径は50〜1000μmであり、前記管部材の前記多数の突起の高さは0.5〜10μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の観察体の観察方法によれば、内周面の少なくとも一部に多数の微小突部が設けられた観察流路を有する流路部材が用いられ、この観察流路の一端側に試料液供給手段が接続され、その他端側に試料液回収手段が接続される。そして、観察体(例えば、人体細胞などの体細胞、植物細胞、細菌、ウイルスなど)を含む観察試料液は、試料液供給手段から観察流路を通して試料液回収手段に流れ、この観察流路を通して流れる際に、観察試料液に含まれる観察体は観察流路の多数の微小突部に衝突し、かかる衝突によって観察試料液の流れを利用して観察体がゆっくりと回動され、その結果、観察試料液に含まれた観察体を多面的に観察することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の観察体の観察方法によれば、観察部材としての管部材がスライドグラスに橋渡しするように載置され、この管部材を覆うようにカバーグラスが載置され、スライドグラスとカバーグラスとの間に封入剤が充填されるので、スライドグラス上に管部材を固定してその取扱いを容易にすることができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の観察体の観察方法によれば、管部材の内径が50〜1000μmであり、管部材の多数の突起の高さが0.5〜10μmであるので、観察体としての体細胞、細菌、ウイルスなどを観察するのに好都合に適用することができ、微小突部に衝突した際に観察試料液の流れを利用して観察体をゆっくり回動させて観察することが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の観察体の観察方法によれば、試料液供給手段と試料液回収手段との間の圧力差(又は試料液供給手段に収容された観察試料液と試料回収手段に収容された回収液との濃度差)を利用して観察試料液を流すので、観察試料液をゆっくりと少しずつ流すことができ、このように流すことによって、観察体が管部材内の微小突部に衝突した際に観察試料液の流れを利用してゆっくりと回動させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項5に記載の観察体の観察台によれば、スライドグラスの上側に観察流路を有する流路を配設したので、観察流路を通して観察試料液を流すことによって、観察試料液に含まれた観察体を顕微鏡で観察することができる。また、観察流路の内周面の少なくとも一部に多数の微小突部が設けられているので、観察試料液を観察流路を通して流して観察する際に、観察試料液に含まれる観察体は観察流路の多数の微小突部に衝突し、かかる衝突によって観察試料液の流れを利用して観察体がゆっくりと回動されるようになり、従って、観察試料液に含まれた観察体を多面的に観察することが可能となる。
【0018】
また、本発明の請求項6に記載の観察台によれば、流路部材としての管部材とスライドガラスとの間に封入剤が充填されているので、管部材をスライドグラスに固定して観察することができる。
【0019】
また、本発明の請求項7に記載の観察台によれば、管部材の上側にカバーグラスを配設し、このカバーグラスとスライドグラスとの間の空間に封入剤を充填したので、管部材を確実に固定して観察体を所望の通りに観察することができる。
【0020】
更に、本発明の請求項8に記載の観察体の観察台によれば、管部材の内径は50〜1000μmであり、管部材の前記多数の突起の高さは0.5〜10μmであるので、観察体としての人体細胞、細菌、ウイルスなどを多面的に観察するのに好都合に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う観察体の観察台及び観察方法について説明する。図1は、本発明に従う観察台の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1におけるII−II線による断面図であり、図3は、図1におけるIII−III線による断面図であり、図4は、観察体の回動のメカニズムを説明するための拡大説明図であり、図5は、管部材の製作における吹付け工程を説明するための図であり、図6は、管部材の製作における加熱溶着工程を説明するための図であり、図7は、管部材の製作におけるプレパラート載置工程を説明するための図であり、図8は、管部材の製作における封入剤充填工程を説明するための図である。
【0022】
図1〜図3において、図示の観察台2は、ベースとなるスライドグラス4と、スライドグラス4の上側に配設された管部材6と、この管部材6の上側に配設されたカバーグラス8とから構成され、スライドグラス4とカバーグラス8との間の空間に封入剤10が充填される。(尚、図1においては充填剤を省略して示している)。スライドグラス4、カバーグラス4及び管部材6は、例えば透明なガラス材料から形成され、スライドグラス4及びカバーグラス6は例えば市販されているものを用いることができる。
【0023】
この観察台2を用いて観察体P(図4参照)を観察するときには、観察体Pを含む観察試料液がこの管部材6を通して流れ、このことに関連して、管部材6は次のように構成される。管部材6の内周面の少なくとも一部に多数の微小突部12(図4も参照)が設けられる。このような微小突部12は、例えば管部材6と同じ材料(例えば、透明なガラス材料)から形成され、後述するように、ガラス粉末を加熱溶着することによって管部材6の内周面に一体的に設けることができる。
【0024】
この実施形態では、流路部材としての管部材6の内周面、即ち観察流路14を規定する周面の全域に多数の微小突部12がほぼ均一に設けられている。管部材6の内側の断面形状(即ち、流路14を規定する周面の断面形状)は、円形状に形成されており、このような断面形状にすることによって、観察試料液を流しながら観察体Pを後述するように多面的に観察することができる。尚、管部材6の内側断面形状(即ち、観察流路14)を楕円形状にしてもよく、このような楕円形状にすることによって、スライドグラス4に固体した状態での管部材6の厚みを薄くすることができ、顕微鏡を用いて観察するときの観察が容易となる。
【0025】
管部材6内径は、50〜1000μmにするのが好ましく、このような大きさに形成することによって、観察体Pとしての体細胞(細胞集塊)、細菌、ウイルスなどを多面的に観察するのに好都合に適用することができる。この管部材6の内径(即ち、観察流路14の直径)は、観察すべき観察体Pの大きさによって適宜に選定され、観察体Pの最大のものを基準にして2〜3倍の大きさにするのが望ましい。一般的に、顕微鏡を用いて観察する細胞集塊の最大の大きさは約300μm程度であり、このような細胞集塊を観察する場合、その内径が1000μm程度に形成され、このような大きさにすることによって、管部材6に詰まることなく観察体Pをその内周面の微小突部12に所望の通りに衝突させることができる。
【0026】
多数の微小突部12の大きさ、即ち内側に突出する突出高さは、0.5〜10μmにするのが望ましく、このような高さに設定することによって、観察体を後述する如く衝突させて回動させることができる。微小突部の突出高さが0.5μmより低くなると、観察体が衝突し難く、また衝突したとしてもほとんど回動することなく下流側に流れるようになり、またその突出高さが10μmを超えると、これらの突起が観察試料液の流れに対する大きな抵抗となる。
【0027】
このような管部材6は、スライドグラス4の上側に横方向(スライドグラスの長手方向に対して垂直な方向であって、図1において左上から右下の方向)に橋渡しするように配設され、その片側(図1及び図2において左側)に試料液供給手段16が接続され、その他側(図1及び図2において右側)に試料液回収手段18が接続される。この実施形態では試料液供給手段16及び試料液回収手段18がスポイト20,22から構成され、供給側のスポイト20の先端部24が管部材6の一端部内に(観察流路14の片側に)挿入接続され、回収側のスポイト22の先端部26が管部材6の他端部内に(観察流路14の他側に)挿入接続され、この場合、図2に矢印30で示すように、観察試料液は、供給側のスポイト20から管部材6(観察流路14)を通して回収側のスポイト22へと所定方向(図2において右方)に流れる。尚、上述したと反対に、管部材6の上記片側に試料液回収手段18(回収側のスポイト22)を接続し、その上記他側に試料液供給手段16(供給側のスポイト20)を接続するようにしてもよく、かかる場合、観察試料液は矢印30で示す方向とは反対方向に流れる。
【0028】
試料液供給手段16として観察試料液が収容される供給側容器から構成し、試料液回収手段18として観察試料液が回収される回収側容器から構成し、供給側容器を例えば供給チューブを介して管部材6の一端側に接続し、回収側容器を例えば回収チューブを介して管部材6の他端側に接続し、例えば送給ポンプ(又は重力など)を利用して、供給側容器から供給チューブ、管部材及び回収チューブを介して回収側容器に観察試料液を流すようにしてもよい。
【0029】
観察試料液としては、例えば有機溶剤を用いることができ、封入剤を適度にキシレンで薄めたものを好都合に用いることができる。観察試験液としては、観察体P(例えば、細胞集塊)を色素により染色し、染色後有機溶剤で透徹した場合、有機溶剤を選択する必要がある。生体染色などを行い、水溶性溶液中で観察する場合、水やアルコール等の適宜な液体を用いることができる。
【0030】
この観察台2は、例えば図5〜図8に示すようにして製作することができる。観察台2の管部材6を製作するには、例えば透明ガラス材料から形成されたガラス毛細管32(例えば、ヘマトクリット管)を用いるとともに、透明ガラス材料から形成されたグラス粉末34(例えば、カバーグラス8を微小に磨り潰したもの)を用意する。ガラス粉末34としては大きさが0.5〜10μm程度のものを用いる。そして、例えばスポイト36にガラス粉末34を吸い込ませた後、図5に示すようにスポイト36を押してスポイト36内のガラス粉末34をガラス毛細管32内に吹き付け、このように吹き付けることによって、ガラス粉末34をガラス毛細管32の内周面に実質上均一に付着させることができる。例えば、ガラス粉末34に静電気を付与し、この静電気を利用してガラス毛細管32の内周面に付着させるようにしてもよい。
【0031】
次いで、図6に示すように、ガラス毛細管32を加熱してガラス粉末34をその内周面に溶着させる。加熱には例えばガスバーナ38を用い、このガスバーナ38の火炎によって均一に加熱されるように、矢印40で示す軸方向に移動させるとともに、矢印42で示す周方向に回動させる。このように加熱すると、ガラス粉末34が溶融し、溶融したガラス粉末34がガラス毛細管32の内周面に溶着し、このようにして多数の微小突部12を有する管部材6を製作することができる。
【0032】
次に、図7に示すように、スライドグラス4の上側に管部材6を配設し、その上側にカバーグラス8を配設する。このとき、管部材6はスライドグラス4の長手方向略中央部に横方向に橋渡しするように(即ち、横切るように)載置され、またカバーグラス8はこの管部材6を覆うように載置される。
【0033】
その後、図8に示すように、スライドグラス4とカバーグラス8との間の空間に封入剤10を充填し、この充填剤10によって管部材8の周囲を包むようにする。このような封入剤10としては例えば カナダバルサムなどを用いることができ、このような封入剤10が乾燥して管部材6が固定され、このようにして図1〜図3に示す観察台2を製作することができる。
【0034】
次に、図1〜図4を参照して、上述したようにして製作された観察台2を用いた観察体Pの観察について説明する。観察に際して、観察台2を顕微鏡(図示せず)の観察領域に取り付ける。そして、図2に示すように、観察体Pを含む観察試料液の入った供給側スポイト20を管部材6の片側に接続し、何も入っていない回収側スポイト22を管部材6の他側に接続する。
【0035】
供給側及び回収側スポイト20,22をこのように接続した状態において、供給側スポイト20をゆっくり押しながら供給側スポイト20内の観察試料液を矢印30(図2参照)で示すように管部材6を通して流して回収側スポイト22に回収する(このとき、観察試料液の流れをスムースにするために、回収側スポイト22を押した状態からゆっくり解放する)。
【0036】
このように観察試料液を管部材6を通してゆっくり流すと、図4に示すように、観察試料液に含まれた観察体Pの一部(具体的には、管部材6の内周面近傍を矢印40で示す方向に流れる観察体)が管部材6内周面の微小突部12に衝突し、かかる衝突によって観察体Pにおける衝突部位では矢印40で示す方向の移動が停止する一方、この衝突部位と反対側の部位では観察試料液の矢印40で示す方向の流れが作用する。その結果、微小突部12に衝突した観察体Pは観察試料液の流れを利用して回動し、管部材6の内周面の図4において上側近傍を流れる観察体Pは、矢印42で示すように図4において反時計方向に回動するようになり、またその内周面の図4において下側近傍を流れる観察体Pは、矢印44で示すように図4において時計方向に回動するようになる。
【0037】
このように観察体Pが回動しながら下流側に動くので、顕微鏡でもって所定の観察領域を見ているのみでもって観察体Pを多面的に見ることができ、簡単な方法でもって観察体Pをより詳細に観察することが可能となる。
【0038】
この観察方法では、観察試料液としてある程度の粘性を有する液体を用いるのが望ましく、このような液体を用いることによって、観察試料液の流れをゆっくりとすることができるとともに、観察体Pの回動速度もその粘性でもって遅くすることができ、観察体Pの詳細な観察がより容易となる。尚、観察体Pの衝突による回動の速度は、観察試料液の流速及び粘性、管部材6の内径、観察体Pの大きさなどの影響を受け、その観察が容易となるように観察試料液の流速及び粘性、管部材の内径などが適宜に設定される。
【0039】
上述した観察方法では、供給側スポイト20内の観察試料液を管部材6を通して回収側スポイト22に回収しており、このように2つのスポイトを用いて観察する場合、供給側スポイト20内の観察試料液を回収側スポイト22に流した後においては、回収側スポイト22に観察試料液が充填され、供給側スポイト20が空となるので、次は回収側スポイト22を供給側スポイトと、また供給側スポイト20を回収側スポイトとして利用することによって、観察試料液に含まれた観察体Pを繰り返し観察することができる。
【0040】
この観察方法では、観察試料液としては、例えば有機溶剤を用いることができ、封入剤をキシレンで薄めたものを好都合に用いることができる。
以上、本発明に従う観察体を観察するための観察台及び観察方法の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0041】
例えば、上述した実施形態の観察台では、スライドグラスの上側に管部材を配設し、この管部材の上側にカバーグラスを配設し、スライドグラスとカバーグラスとの間の空間に封入剤を充填したが、このような形態に限定されず、スライドグラスの上側に管部材を配設し、スライドグラスと管部材との間に封入剤を充填するようにしてもよく(カバーグラスを省略したもの)、或いは、スライドグラスの上側に管部材を設けるようにしてもよい(カバーグラス及び封入剤を省略したもの)。
【0042】
また、上述した実施形態では、流路部材として管部材を用いているが、このような管部材に限定されず、板状又はブロック状の部材に観察流路を形成し、このような板状部材又はブロック状部材を流路部材として用いることができる。
【0043】
また、上述した実施形態の観察台では、管部材の内周面の全域に多数の微小突部を設けているが、その全域に設ける必要はなく、その内周面の少なくとも一部に設けることによって上述した所望の効果を達成することができる。例えば、管部材の上流側部(試料液供給手段側の部分)にあっては上部内周面(又は下部内周面)に多数の微小突部を設け、その下流側部(試料液回収手段側の部分)にあっては下部内周面(又は上部内周面)に多数の微小突部を設けるようにしてもよい。
【0044】
また、例えば観察体が4方向に回転するように、図9及び図10に示すように構成することができる。尚、図9及び図10において、図1〜図8に示す部材と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図9及び図10において、この他の形態の観察台2Aでは、流路部材としての管部材6Aに修正が施されており、管部材6Aの内周面に周方向に実質上等間隔をおいて4つの突部領域52a,52b,52c,52dが設けられている。各突部領域52a,52b,52c,52dには多数の微小突部12が設けられ、これら微小突部には、上述した実施形態と同様に、グラス粉末から後述するように形成することができる。
【0046】
この形態では、管部材6Aがその軸方向(図9において左下から右上の方向、図10において左右方向)に連続して設けられた4つの部分54a,54b,54c,54dから構成され、これらの部分54a,54b,54c.54dに対応する突部領域52a,52b,52c,52dが設けられ、図9において左下から右上に向けて(図10において左から右に向けて)見て、管部材6Aの部分54aにはその左横内面に突部領域52aがその部分54bにはその上内面に突部領域52bが、その部分52cにはその右横内面に突部領域52cが、またその部分54dにはその下内面に突部領域52dが周方向に実質上90度の間隔をおいて設けられている。
【0047】
この形態では、周方向に間隔をおいて4つの突部領域52a,52b,52c,52dを設けているが、これに限定されず、この突部領域を周方向に2つ又は3つ、或いは5つ以上設けるようにしてもよい。また、この形態では、管部材6Aの部分54a,54b,54c,54dに対応して突部領域52a,52b,52c,52dを設けているが、このような構成に限定されず、これらの領域52a,52b,52c,52dを管部材6Aの一端から他端まで設けるようにしてもよい。
【0048】
図9に示す観察台2Aに用いる管部材6Aは、例えば図10に示すようにして製作することができる。まず図10(a)に示すように、ガラス毛細管321に極微細な線62(例えば、極微細なピアノ線)を通し、この線62にグラス粉末64を付け、グラス粉末64が付いた部位をガラス毛細管32内に位置付ける。そして、線62をガラス毛細管32の内面に押し付け、その内周面の特定部位に一端から他端にわたってグラス粉末64を付着させる。尚、これとは逆に、線62にグラス粉末64を付け、グラス粉末64が付いた線62をガラス毛細管32に通すようにしてもよい。
【0049】
その後、図10(b)で示すように、上述したと同様に、例えばガスバーナ(図示せず)を用いて加熱し、付着したグラス粉末をガラス毛細管32の内面に溶着させる。このようにしてガラス毛細管32の内周面の一部に突部領域66を形成する。
【0050】
次に、図10(c)で示すように、このガラス毛細管32を一点鎖線68a,68b,68cで示す個所で切断し、部分54a,54b,54c,54dの4つに分析する。
【0051】
しかる後に、図10(d)で示すように、部分54aに対して部分54bを図10(d)の左から右に見て時計方向に90度回動した位置関係に位置付け、部分54aと部分54bとを加熱などによって溶融接合する。また、部分54bに対して部分54cを図10(d)の左から右に見て時計方向に90度回動した位置関係に位置付けて部分54bに部分54cを溶融接合し、更に部分54cに対して部分54dを同様に時計方向に90度回動した位置関係に位置付けて部分54dを部分54cに溶融接合し、このようにして管部材6Aを製作することができる。
【0052】
このように製作した管部材6Aは、上述したと同様にしてスライドグラス4に載置し、カバーグラス8を載せ、スライドグラス4とカバーグラス8との間に封入剤10を充填して図9に示す通りの観察台2Aを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に従う観察台の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1におけるII−II線による断面図。
【図3】図1におけるIII−III線による断面図。
【図4】観察体の回動のメカニズムを説明するための拡大説明図。
【図5】管部材の製作における吹付け工程を説明するための図。
【図6】管部材の製作における加熱溶着工程を説明するための図。
【図7】管部材の製作におけるプレパラート載置工程を説明するための図。
【図8】管部材の製作における封入剤充填工程を説明するための図。
【図9】他の形態の観察台を示す断面図。
【図10】図9の観察台を製作するための工程を説明するための図。
【符号の説明】
【0054】
2,2A 観察台
4 スライドグラス
6,6A 管部材
8 カバーグラス
10 封入剤
12 微小突部
16 試料液供給手段
18 試料液回収手段
32 ガラス毛細管
34 ガラス粉末
52a,52b,52c,52d 突部領域
P 観察体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察体を含む観察試料液を所定方向に流して前記観察体を観察するための観察方法であって、内周面の少なくとも一部に多数の微小突部が設けられた観察流路を有する流路部材を用い、前記観察流路の一端側に前記観察試料液を供給するための試料液供給手段を接続し、前記観察流路の他端側に前記観察試料液を回収するための試料液回収手段を接続し、前記試料液供給手段から前記観察流路を通して前記試料液回収手段に前記所定方向に前記観察試料液を流し、前記観察流路を流れる際に前記観察試料液に含まれる前記観察体を前記多数の微小突部に衝突させ、かかる衝突によって前記観察試料液の前記所定方向の流れを利用して前記観察体を回動させることを特徴とする観察体の観察方法。
【請求項2】
前記流路部材は前記観察流路を有する管部材から構成され、前記管部材をスライドグラスに橋渡しするように載置し、前記管部材を覆うようにカバーグラスを載置し、前記スライドグラスと前記カバーグラスとの間に封入剤を充填して前記管部材を固定することを特徴とする請求項1に記載の観察体の観察方法。
【請求項3】
前記管部材の内径は50〜1000μmであり、前記管部材の前記多数の突起の高さは0.5〜10μmであることを特徴とする請求項2に記載の観察体の観察方法。
【請求項4】
前記観察試料液は、前記試料液供給手段と前記試料液回収手段との間の圧力差、又は前記試料液供給手段に収容された前記観察試料液と前記試料回収手段に収容された回収液との濃度差を利用して、前記試料液供給手段から前記管部材を通して前記試料液回収手段に流れることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の観察体の観察方法。
【請求項5】
観察体を含む観察試料液を所定方向に流して前記観察体を観察するための観察台であって、スライドグラスと、前記スライドグラスの上側に配設された流路部材と、を備え、前記流路部材の観察流路の内周面の少なくとも一部に多数の微小突部が設けられていることを特徴とする観察体の観察台。
【請求項6】
前記流路部材と前記スライドグラスとの間に封入剤が充填されていることを特徴とする請求項5に記載の観察台。
【請求項7】
前記流路部材は管部材から構成され、前記管部材の上側にカバーグラスが配設され、前記スライドグラスと前記カバーグラスとの間の空間に前記管部材を被うように前記封入剤が充填されることを特徴とする請求項6に記載の観察体の観察台。
【請求項8】
前記管部材の内径は50〜1000μmであり、前記管部材の前記多数の突起の高さは0.5〜10μmであることを特徴とする請求項7に記載の観察体の観察台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−151472(P2010−151472A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327315(P2008−327315)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】