説明

観察用器具ホルダ

【課題】温度調節を行う場合であっても、熱変形が起こりにくく、温度むらが生じにくい、観察用器具ホルダを提供する。
【解決手段】試料を観察するための試料観察域を構成する観察用器具を支持する観察用器具ホルダである。観察用器具を支持するホルダベースと、ホルダベース上に、観察用器具について位置決めおよび固定を行う位置決め固定機構と、を備える。ホルダベースは、支持する観察用器具の試料観察域において試料を観察するための観察窓部を有する構成となる。また、観察窓部は、支持する観察用器具に接する熱伝導ブロックにより構成される。熱伝導ブロックには、支持される観察用器具の試料観察域を臨む複数の観察孔が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物、細胞等の試料の観察に用いられる観察用器具を支持するホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物、細胞等(以下、単に細胞と称する)の培養を行う際に、ヒータなどを用いて温度調節することが行われている。ヒータ温度の設定値は、雰囲気温度、ヒータの配置箇所等の条件により異なる。細胞は、温度に敏感であるため、温度のムラを生じさせず、温度調節を行うことが重要である。細胞培養についての温度調節を行う技術には、以下の特許文献1がある。
【0003】
特許文献1では、予め、ヒータ温度の設定値に対する、細胞が入れられたセル内の温度を雰囲気温度ごとに測定して校正データとし、セル内の温度の目標値および雰囲気温度が与えられると、校正データからヒータ温度の設定値を得ている。また、特許文献1では、セル間にヒータ線を配置し、ヒータ線を設けた位置によって、ヒータ線の温度の設定値を変えている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−198539公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、ヒータ線をセル間に配置している。この技術では、セル自体について、または、複数のセルを有するケースについて、熱変形が生じる場合がある。しかし、細胞を培養する際の温度調節を行うことを目的としている場合には、この熱変形はそれほど問題にならない。
【0006】
ところが、例えば、細胞を、顕微鏡を用いて観察する場合には、事情が異なる。すなわち、熱変形が生じると、焦点位置がずれてしまうという問題が生じる。
【0007】
一方、熱変形を避けるためにセル自体または複数のセルから離れた位置にヒータを設けることが考えられる。しかし、この場合には、観察対象に温度むらが生じやすい。そのため、温度に敏感な細胞の場合、運動状態が変化することになり、観察の精度が低下する。
【0008】
本発明は、温度調節を行う場合であっても、熱変形が起こりにくく、温度むらが生じにくい、観察用器具ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、試料を観察するための試料観察域を構成する観察用器具を支持する観察用器具ホルダに関するものである。本願発明の一態様によれば、観察用器具を支持するホルダベースと、ホルダベース上に、観察用器具について位置決めおよび固定を行う位置決め固定機構と、を備える観察用器具ホルダが提供される。
【0010】
ここで、ホルダベースは、支持する観察用器具の試料観察域において試料を観察するための観察窓部を有する構成となる。また、観察窓部は、支持する観察用器具に接する熱伝導ブロックにより構成される。熱伝導ブロックには、支持される観察用器具の試料観察域を臨む複数の観察孔が設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、温度調節を行う場合であっても、熱変形が起こりにくくすることができる。また、温度むらも生じにくい、観察用器具ホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは本実施形態の観察用器具ホルダの構成部材のそれぞれを分解した状態を示す斜視図、図1Bは各構成部材に対応する截断端面図。
【図2】図2は観察支援具の平面図。
【図3】図3Aは図2のA―A矢視断面図、図3Bは図2のB―B矢視断面図。
【図4】図4Aはホルダベースの側面図、図4Bは図4CにおけるホルダベースのA−A矢視截断端面図、図4Cはホルダベースの平面図。
【図5】図5Aはハウジングの側面図、図5Bは図5CにおけるハウジングのA−A矢視截断端面図、図5Cはハウジングの平面図。
【図6】図6Aはハウジング固定部材の側面図、図6Bは図6Cにおけるハウジング固定部材のA−A矢視截断端面図、図6Cはハウジング固定部材の平面図。
【図7】図7Aはスペーサを示す平面図、図7Bはスペーサに観察支援具を装着した状態を示す説明図、図7Cは緩衝材の一例を示す平面図。
【図8】図8Aは観察支援具押さえの側面図、図8Bは図8Cにおける観察支援具押さえのA−A矢視截断端面図、図8Cは観察支援具押さえの平面図。
【図9】図9Aは固定部材の側面図、図9Bは図9Cにおける固定部材のA−A矢視截断端面図、図9Cは固定部材の平面図。
【図10】図10Aはヒータの側面図、図10Bは図10CにおけるヒータのA−A矢視截断端面図、図10Cはヒータの平面図。
【図11】図11は本実施形態の観察用器具ホルダの構成部材を組み立てられ、ヒータが装着された状態の断面図。
【図12】図12Aは図4に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具のB−B矢視拡大端面図、図12Bは図4に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具のC−C矢視拡大端面図。
【図13】図13は観察窓部に大きな貫通孔を設けたホルダベースを用いた比較例を示す平面図。
【図14】図14Aは図13に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具のB−B矢視拡大端面図、図14Bは図13に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具のC−C矢視拡大端面図。
【図15】図15は観察窓部にスリット状の観察孔を設けたホルダベースを用いた変形態様を示す平面図。
【図16】図16は観察窓部に4個の正方形状の観察孔を設けたホルダベースを用いた変形態様を示す平面図。
【図17】図17は観察孔の開口部にテーパーを設けた変形態様を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の観察用器具ホルダは、顕微鏡を用いて、試料として細胞を観察するために用いる観察用器具100を保持するためのものである。また、本実施形態の観察用器具ホルダには、使用時に、ヒータ800が装着される(図11参照)。
【0014】
図1Aに本実施形態の観察用器具ホルダの構成部材のそれぞれを分解した状態により示す。図1Bに各構成部材に対応する截断端面を示す。なお、図1Aおよび図1Bには、観察用器具100(図12A、図12B参照)を構成する観察支援具10とカバーガラス20とを含めて図示してある。
【0015】
観察用器具ホルダは、観察用器具100を支持するホルダベース200と、ホルダベース200上において観察用器具100の位置決めと固定とを行う位置決め固定機構Mと、を有する。これらの部材は、例えば、ステンレススチール等の金属により形成される。もちろん、材質はこれに限定されない。
【0016】
位置決め固定機構Mは、観察支援具を収容するハウジング300と、ハウジング固定部材400と、スペーサ500と、観察支援具押さえ600と、固定部材700と、を構成要素として含む。
【0017】
ホルダベース200には、カバーガラス20がシール材30と共に収容される。この状態のホルダベース200に、ハウジング300が装着される。ハウジング300は、ハウジング固定部材400によりホルダベース200に固定される。また、ハウジング300に、スペーサ500と、観察支援具10と、緩衝材40と、観察支援具押さえ600とが、この順に収容される。この状態のハウジング300に固定部材700が固定される。これにより、固定部材700により押圧された観察支援具押さえ600が、観察支援具10を押圧して、観察支援具10とカバーガラス20とを密着させた状態で、ホルダベース200に固定する。
【0018】
図1Aおよび図1Bでは、カバーガラス20とハウジング300との間にシール材30が配置される。シール材30は、カバーガラス20の縁部分から細胞培養液が漏れるのを防ぐ機能を有している。なお、本実施形態では、シール材30を用いている。しかし、これに限られず、シール材30と同様の機能を有する部材であれば、他の部材であってもよい。省略できる場合には、シール材30を省略してもよい。
【0019】
また、図1Aおよび図1Bでは、観察支援具10と観察支援具押さえ600との間に緩衝材40が配置される。緩衝材40は、観察支援具押さえ600の押し込みすぎによる観察支援具10の破損を防ぐ機能を有している。なお、本実施形態では、図1Aおよび図1Bに示す緩衝材40に限られず、緩衝材40と同様の機能を有する部材であればよい。省略できる場合には、緩衝材40を省略してもよい。
【0020】
(観察支援具10およびカバーガラス20)
本実施形態では、例えば、図2に示す観察支援具10を用いる。図2のA―A矢視断面図を図3Aに示し、図2のB―B矢視断面図における断面図を図3Bに示す。
【0021】
観察支援具10は、複数の試料収容域Fがスペース13を挟んで配列されている。各試料収容域Fにおいては、試料収容域Fの配列の方向と直交する方向に並ぶ、一対の観察支援具貫通孔12(第1観察支援具貫通孔12a、第2観察支援具貫通孔12b)が設けられる。また、各対の第1観察支援具貫通孔12aと第2観察支援具貫通孔12bとの間に、その方向に向いたチャネル状に形成される試料観察域11が配置される。
【0022】
第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bの、試料観察域11が設けられている側の面の開口端は、図3Aに示すように、試料収容域Fに設けられる方形状の穴14の底面において開口する。
【0023】
試料観察域11は、細胞群を収容して観察を行うための主たる領域である。本実施形態では、図2および図3Bに示すように、直方体形状に形成される。本実施形態では、試料観察域11は、幅が広く、長さが短いという特徴を有する。試料観察域11の、幅、長さおよび深さは、観察用器具100の目的に基づいて、それぞれが決められる。例えば、幅が1.2mm、長さが0.13〜0.26mm、および、深さが観察支援具表面から4〜8μm、となっている。なお、観察支援具10は、幅が14mm、長さが6mm、厚さが0.4mmである。第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bは、断面形状が円形である。その直径は、例えば、φ=1mmである。
【0024】
観察支援具貫通孔12は、細胞培養液、細胞、刺激物質等の注入および排出に用いられる。例えば、第1観察支援具貫通孔12aが細胞培養液のソースとして機能し、第2観察支援具貫通孔12bは細胞培養液のドレインとして機能する。第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bのソースおよびドレインの機能は交換することができる。
【0025】
図2に示す第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bは、断面形状が円形となっている。しかし、断面形状は、円形に限られない。例えば、長方形、正方形としてもよい。また、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bの大きさは、観察する細胞に応じて定められる。
【0026】
観察支援具10は、例えば、シリコンウエハを、フォリソグラフィー技術を用いて加工することにより形成される。
【0027】
カバーガラス20は、顕微鏡による観察の際に用いられるカバーガラスと同等機能を持つガラスである。本実施形態では、図11、図12Aおよび図12Bに示すように、観察支援具10の試料観察域11が設けられている面に接して、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11とから細胞液等が漏れないように封止する。
【0028】
(ホルダベース200)
ホルダベース200の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図4A、図4B、図4Cに示す。ホルダベース200は、有底円筒体として形成される。ホルダベース200は、ハウジングケース210と、カバーガラス支持部220と、シール材支持部230と、観察窓部240と、第1ピン250と、外向きフランジ260と、により構成される。
【0029】
ホルダベース200の内部空間であるハウジングケース210には、ハウジング300が収容される。ハウジングケース210の底211の中央部には、カバーガラスを支持するためのカバーガラス支持部220が設けられる。また、カバーガラス支持部220の外周側には、シール材30を支持するための段部としてシール材支持部230が設けられる。カバーガラス支持部220と、シール材支持部230とは、底211に階段状に設けられる。また、カバーガラス支持部220と、シール材支持部230とは、上方から見ると、それらの外周形状が方形状となっている。
【0030】
カバーガラス支持部220は、底211に穴形状として設けられる。また、その形状を、カバーガラスの外形と対応させた形状とすることによって、穴形状の内周壁によって、カバーガラスの横方向のずれが規制される。さらに、カバーガラス支持部220の四隅には、切り込み221が設けられている。この切り込み221は、カバーガラス20のカバ0ガラス支持部220への着脱を容易にするために設けられている。具体的には、ピンセットの先などが、挿入できる形状としてある。
【0031】
シール材支持部230は、シール材30を収容する。シール材支持部230に配置されるシール材30は、例えば、図1Aに示すように、内側の観察窓240を臨む位置に貫通孔31を設けた、方形環状に形成される。このシール材30は、図11に示すように、カバーガラス20とホルダベース200とに渡って密接される。この状態で、シール材30は、カバーガラス支持部220と、それに収容されるカバーガラス20との間からの液漏れを防ぐ。また、シール材支持部230の四隅にも、シール材30の着脱を容易にするために切り込み231が設けられている。
【0032】
観察窓部240には、図4Cに示すように、複数の観察孔241を有する。図4Cでは、観察孔241は観察支援具10の試料観察域11に対応した位置に形成されている。すなわち、この観察孔241は、顕微鏡の対物レンズが近接して、当該観察孔241が臨む試料観察域11内の細胞を観察できるようにするための窓として機能する。一方、観察窓部240の観察孔241を除く熱伝導ブロック部分242は、受熱熱伝導ブロックとして機能する。すなわち、加熱時には、いち早く全体の温度が上昇して、均一熱源となる。一方、冷却時にはヒートシンクとして機能し、同様に、全体的温度を下降させる。
【0033】
第1ピン250は、後述するハウジング300の第1ピンホール350に挿入される(図11参照)。これにより、ハウジング300が、ホルダベース200のハウジングケース210内で回転するのを防いでいる。
【0034】
外向きフランジ260は、図4Aおよび図4Bに示すように、雄ねじ261を有する。この雄ねじ261は、後述する図6Aおよび図6Bに示すハウジング固定部材400の雌ねじ401と螺合する。
【0035】
(ハウジング300)
ハウジング300の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図5A、図5B、図5Cに示す。ハウジング300は、カバーガラス押さえ310と、観察支援具押さえ600を収容する観察支援具押さえケース320と、観察支援具押さえ600を支持する支持部330と、外向きフランジ340と、を有する。
【0036】
カバーガラス押さえ310は、円環状の形状を有し、ハウジング300の軸方向に厚みが設けられている。本実施形態では、図11に示すように、カバーガラス押さえ310は、シール材30を介してカバーガラス20と、シール材支持部230とを押圧する。
【0037】
カバーガラス押さえ310の内周は、図5Cに示すように、スペーサ500の外周形状、および、観察支援具押さえ600の押し込み部620の外周形状にそれぞれ合わせた貫通孔311が設けられている。観察支援具10は、カバーガラス20上の貫通孔311に区切られた領域に、スペーサ500と共に置かれる。カバーガラス押さえ310の軸方向の長さは、観察支援具押さえ600の厚みと、使用する緩衝材40の厚さとの関係で決まる。
【0038】
支持部330には、第2ピン360が設けられる。第2ピン360は、後述する観察支援具押さえ600の第2ピンホール630に挿入される(図11参照)。これにより、観察支援具押さえ600が、観察支援具押さえケース320内において回転することを防ぐ。また、支持部330は、観察支援具押さえ600のフランジ610を受けて、観察支援具押さえ600を支持する(図11参照)。これにより、観察支援具押さえ600による緩衝材40への押圧変位のストッパーとして機能する。
【0039】
外向きフランジ340に、第1ピンホール350が設けられる。また、外向きフランジ340は、図5Aおよび図5Bに示すように、内周側に雌ねじ341を有する。第1ピンホール350には、ホルダベース200の第1ピン250が挿入される(図11参照)。雌ねじ341には、固定部材700の雄ねじ701がねじ込まれる(図11参照)。
【0040】
(ハウジング固定部材400)
ハウジング固定部材400の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図6A、図6B、図6Cに示す。
【0041】
ハウジング固定部材400は、円環状の形態を有する。その円環の一端側に、内向きフランジ410を有する。また、ハウジング固定部材400の円環の他端側の内周側に、雌ねじ401が形成されている。
【0042】
雌ねじ401には、ホルダベース200の雄ねじ261がねじ込まれる(図11参照)。これにより、ハウジング300が、内向きフランジ410により押圧されて、ハウジングケース210内に固定される。また、内向きフランジ410により押圧されて、ハウジング300がシール材30を押圧する。
【0043】
(スペーサ500)
スペーサ500の一例を図7Aおよび図7Bに示す。図7Aおよび図7Bに示すスペーサ500は、枠510と、枠510に設けられた仕切り520と、を有する。
【0044】
図7Aおよび図7Bに示すスペーサ500は、2枚の観察支援具10を、カバーガラス20上の貫通孔311で区切られた領域内に配置するためのものである。図7Aには観察支援具10が嵌め込まれていない状態のスペーサ500を示す。図7Bには2枚の観察支援具10が嵌め込まれている状態のスペーサ500を示す。
【0045】
枠510および仕切り520は、カバーガラス20上の貫通孔311で区切られた領域内での観察支援具10の平面方向の位置ずれを防ぐ。
【0046】
図7Aおよび図7Bに示すスペーサ500は、2枚の観察支援具10をカバーガラス20上の貫通孔311で区切られた領域内に置く場合の形状である。しかし、これに限られず、観察支援具10の枚数および形状によって、仕切り520の数を増減させた形状のものでもよい。また、観察支援具10がカバーガラス20上の貫通孔311で区切られた領域内で位置ずれをしない場合(例えば、観察支援具10の形状および寸法が貫通孔311にほぼ同様な場合)には、スペーサ500を省略してもよい。
【0047】
(緩衝材40)
緩衝材40の一例を図7Cに示す。図7Cに示すように、緩衝材40は、例えば、ゴムシートなどの弾性材料により形成される。その外形は、カバーガラス20上の貫通孔311で区切られた領域内に置くことができる形状とされる。本実施形態では、正方形状である。また、緩衝材40は、複数の貫通孔41を有する。各貫通孔41は、図2に示す観察支援具10の観察支援具貫通孔12a、12bに対応した位置に設けられる(図12B参照)。
【0048】
緩衝材40に設けられる貫通孔41の位置および数は、図7Cに示す例に限られない。観察支援具10の観察支援具貫通孔12a、12bの配置に応じて、貫通孔41を設ける位置を決めることができる。
【0049】
(観察支援具押さえ600)
観察支援具押さえ600の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図8A、図8B、図8Cに示す。観察支援具押さえ600は、フランジ610と、押し込み部620とを有する。フランジ610の中央部下面側に突出した状態として、押し込み部620が位置する。
【0050】
フランジ610には、第2ピンホール630と、つまみ640と、が設けられる。また、フランジ610は、ハウジング300の支持部330上に置かれる(図11参照)。
【0051】
押し込み部620には、観察支援具押さえ貫通孔621が設けられる。観察支援具押さえ貫通孔621は、図8Cに示すように、観察支援具10の観察支援具貫通孔12a,12bと対応した位置に設けられる。
【0052】
押し込み部620はハウジング300の観察支援具押さえケース320に嵌め込まれ、上側から押し込まれることで、スペーサ500と緩衝材40とを押し込む。
【0053】
第2ピンホール630は、ハウジング300の第2ピン360が挿入される(図11参照)。
【0054】
つまみ640は、観察支援具押さえ600を、ハウジング300に取り付けたり、取り外したりする際のつまみである。
【0055】
(固定部材700)
固定部材700の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図9A、図9B、図9Cに示す。固定部材700は、円環状に形成される。その一端側に、外向きフランジ710を有する。
【0056】
また、固定部材700は、円環の外周側に雄ねじ701を有する。この雄ねじ701は、ハウジング300の雌ねじ341にねじ込まれる。これにより、観察支援具押さえ600の押し込み状態を維持することができ、観察支援具10が観察支援具押さえケース320内で変位することを防ぐことができる。
【0057】
(ヒータ800)
本実施形態では、細胞培養液を一定の温度に保つためのヒータ800が用いられる。ヒータ800の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図10A、図10B、図10Cに示す。また、図11にヒータ800上に配置した状態の観察用器具ホルダを示す。ヒータ800は、円環状の形態に形成され、段部状に形成されるホルダ支持部801と、給電のための端子部(図示しない)と、を有する。
【0058】
ヒータ800のホルダ支持部801は、本実施形態の観察用器具ホルダを固定する。ヒータ800は、端子部を介して温度制御装置(図示せず)と接続される。ヒータ800は、観察用器具ホルダの外周から熱を伝える。なお、温度制御装置は、温度センサと接続され、設定された温度を維持するようヒータの発熱量を制御する。
【0059】
(使用態様)
次に、本実施形態の観察用器具ホルダの使用態様について説明する。本実施形態では、観察に用いられる観察支援具10と、カバーガラス20により構成される観察用器具100により、観察空間を形成する。この観察用器具100を観察器具ホルダが保持する。
【0060】
図12Aおよび図12Bに本実施形態の観察用器具ホルダの観察支援具10付近の拡大図を示す。すなわち、図12Aは図4に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具10のB−B矢視拡大端面図、図12Bは図4に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具10のC−C矢視拡大端面図をそれぞれ示す。
【0061】
図12Aに示すように、観察支援具10の試料観察域11が設けられている面に、カバーガラス20が接して、試料観察域11の開口面を覆っている。これにより、試料観察域11が細胞等の観察対象収容空間として機能できることとなる。一方、図12Bに示すように、観察支援具10の試料観察域11が設けられている面に、カバーガラス20が接して、第2観察支援具貫通孔12b(12aについても同じ)の開口面を覆っている。これにより、図3Aに示す構造に基づいて観察対象収容空間に、これと連通する第2観察支援具貫通孔12a(12bでもよい)を介して、観察対象となりうる液体を注入し、第2観察支援具貫通孔12b(12aでもよい)を介して排出することができる。
【0062】
また、図12Aに示すように、ホルダベース200の観察窓部240には、試料観察域11に対応した位置に観察孔241が設けられているため、観察孔241を通して、試料観察域11内の細胞等を顕微鏡により観察することができる。
【0063】
本実施形態では、観察する際、図11に示すように、ヒータ800がホルダベース200の外周に装着される。本実施形態の観察用器具ホルダにおける、温度調整される場合を以下に説明する。
【0064】
観察対象の液体を温める場合、ヒータ800からの熱は、まず、ホルダベース200のヒータ800と接する部分から熱伝導ブロック部分242に伝わっていく(図12A、図12B参照)。そして、熱伝導ブロック部分242は、ヒータ800からの熱によって一様に温められる。温められた熱伝導ブロック部分242はカバーガラス20を介して観察対象の液体を温めていく。つまり、本実施形態では、熱伝導ブロック部分242は、接触するカバーガラス20に対して、接触面全体において温度差の少ない均一な面状の熱源として機能する。
【0065】
ここで、ヒータ800からの熱によって、カバーガラス20よりも先に熱伝導ブロック部分242が一様に温められる状態にするため、ホルダベース200をカバーガラス20の材質よりも熱伝導率が大きい材料を用いている。本実施形態の場合、ステンレススチールによりホルダベースを形成して、実現している。
【0066】
また、観察対象の液体を冷却する場合、熱伝導ブロック部242が、カバーガラス20と面状に接触している部分が広いため、観察対象の液体がもつ熱を熱伝導ブロック部242に容易に逃がすことができる。つまり、本実施形態では、熱伝導ブロック部分242は、ヒートシンクとして機能し、カバーガラス20からの熱を面状で受けとめ、大気に放熱する。
【0067】
以上のことから、本実施形態では、観察対象の液体を温める場合、および、観察対象の液体を冷却する場合のいずれにおいても、観察対象について面状接触して、加熱及び冷却を行うように機能する。したがって、観察対象について、温度むらが生じにくい状態で温度管理を行うことを可能としている。
【0068】
また、本実施形態によれば、観察対象の加熱および冷却が、カバーガラスの面全体について行われるため、熱変形が生じにくい。したがって、顕微鏡による観察に際して、観察位置によって焦点が異なるという問題が生じにくい。
【0069】
(比較例)
図13に、観察窓部240に大きな貫通孔243を設けたホルダベースを用いた比較例を示す。また、図14Aに図13に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具10のB−B矢視拡大端面図を示す。さらに、図14Bは図13に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察支援具10のC−C矢視拡大端面図を示す。
【0070】
この比較例の場合、図14Aおよび図14Bに示すように、カバーガラス20の観察面(観察支援具10と接触していない面)側が開放状態となっている。すなわち、比較例には、図12Bにおいて示す熱伝導ブロック部分242に相当する部分が存在しない。そのため、ヒータ800からの熱は、カバーガラス20と観察支援具10とに外周側から伝わることとなる。しかし、カバーガラス20と観察支援具10とは、それぞれ熱伝導率が低い。また、熱が伝導する方向の断面積が小さい。さらに、カバーガラス20の一方の面は開放されて、熱放射による損失がある。その結果、熱伝導に時間を要するという問題が生じる。また、カバーガラス20および観察支援具10に中心から外周に向かって温度勾配が生じるという、問題が生じる。この問題は冷却する場合にも生じる。すなわち、カバーガラス20からの放射と、カバーガラス20及び観察支援具10を介した熱伝導とにより冷却が行われるため、冷却に時間がかかるという問題と、温度分布が生じるという問題が起こる。したがって、観察対象に温度むらが生じやすい。
【0071】
以上のように、観察対象について、加熱または冷却を行う際に、比較例の場合には、温度むらが生じやすい。これに対して、本実施形態の場合には、温度むらが生じにくい。したがって、本実施形態では、図13に示す比較例において生じる熱的な問題を回避することができる。
【0072】
(変形態様)
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されない。他の形態にも適用可能である。以下に、その一例を示す。
【0073】
図15に、観察窓部240にスリット状の観察孔241aを設けたホルダベース200aを用いた変形態様を示す。スリット状観察孔241aは、試料観察域11と対応する位置にスリット状に形成される。この例では、1つのスリット状の観察孔241aが、図4Cに示す観察孔241の列が対応する試料観察域11の観察に用いられる。すなわち、各スリット状の観察孔241aが複数の観察孔241を臨む大きさに形成される。
【0074】
図16に、観察窓部240に4個の正方形状の観察孔241bを設けたホルダベース200bを用いた変形態様を示す。この例では、観察する試料観察域群をマトリクス状に配置される。すなわち、この例では、試料観察域群を4つの小マトリクス領域に分けて観察することができる。
【0075】
図17に、観察孔241についての変形態様を示す。すなわち、この例では、観察孔241の開口部にテーパーTを設けている。これにより、顕微鏡の対物レンズの先端をより近接させることを可能としている。これにより、焦点距離の短い対物レンズの使用を可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、顕微鏡等の拡大光学系を用いて、微小物体を観察する場合に利用可能である。特に、観察対象について加熱または冷却を行う温度調節を必要とすると場合、観察対象に温度むらを生じさせずに観察することができる。具体的には、微生物、細胞等の顕微鏡観察が挙げられる。もちろん、観察対象に近接してヒータを配置しないので、熱変形を嫌う観察にも利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
100:観察用器具、10:観察支援具、F:試料収容域、11:試料観察域、12:観察支援具貫通孔、12a:第1観察支援具貫通孔、12b:第2観察支援具貫通孔、13:スペース、14:穴、20:カバーガラス、30:シール材、31:貫通孔、40:緩衝材、41:貫通孔、200:ホルダーベース、210:ハウジングケース、211:底、220:カバーガラス支持部、221:切り込み、230:シール材支持部、231:切り込み、240:観察窓部、241:観察孔、242:熱伝導ブロック部分、250:第1ピン、260:外向きフランジ、261:雄ねじ、M:位置決め固定機構、
300:ハウジング、310:カバーガラス押さえ、311:貫通孔、320:観察支援具押さえケース、330:支持部、340:外向きフランジ、341:雌ねじ、350:第1ピンホール、360:第2ピン、400:ハウジング固定部材、401:雌ねじ、410:内向きフランジ、500:スペーサ、510:枠、520:仕切り、600:観察支援具押さえ、610:フランジ、620:押し込み部、621:観察支援具押さえ貫通孔、630:第2ピンホール、640:つまみ、700:固定部材、701:雄ねじ、
710:外向きフランジ、800:ヒータ、801:ホルダ支持部、T:テーパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を観察するための試料観察域を構成する観察用器具を支持する観察用器具ホルダであって、
観察用器具を支持するホルダベースと、
前記ホルダベース上に、前記観察用器具について位置決めおよび固定を行う位置決め固定機構と、を備え、
前記ホルダベースは、支持する観察用器具の前記試料観察域において試料を観察するための観察窓部を有し、
前記観察窓部は、支持する観察用器具に接する熱伝導ブロックにより構成され、前記熱伝導ブロックには、前記支持される観察用器具の試料観察域を臨む複数の観察孔が設けられていること
を特徴とする観察用器具ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の観察用器具ホルダにおいて、
前記支持される観察用器具は、前記試料観察域を有する観察支援具と、前記観察支援具の前記試料観察域が形成されている側を覆うカバーガラスと、を有することを特徴とする観察用器具ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の観察用器具ホルダにおいて、
前記熱伝導ブロックは、前記ホルダベースに一体に設けられることを特徴とする観察用器具ホルダ。
【請求項4】
請求項1、2および3のいずれか一項に記載の観察用器具ホルダにおいて、
前記熱伝導ブロックは、前記観察用器具を構成する材料より熱伝導率の大きな材料で形成されることを特徴とする観察用器具ホルダ。
【請求項5】
請求項1、2、3および4のいずれか一項に記載の観察用器具ホルダにおいて、
前記各観察孔は、前記試料観察域と対応する位置に設けられることを特徴とする観察用器具ホルダ。
【請求項6】
請求項1、2、3および4のいずれか一項に記載の観察用器具ホルダにおいて、
前記各観察孔は、前記試料観察域と対応する位置に前記スリット状に形成され、
各スリットが複数の観察孔を臨む大きさであることを特徴とする観察用器具ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−186034(P2010−186034A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29908(P2009−29908)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(500201406)株式会社ECI (12)
【Fターム(参考)】