説明

角度検出用エンコーダ、及びその着磁方法

【課題】磁場配向やその配向方向と磁場方向との整合作業等の管理や手間、コストなどを低減可能とするとともに、回転時における磁束密度の変動波形の振幅ピークを拡大可能なエンコーダの着磁技術を提供する。
【解決手段】環状に成形された磁性体(等方性の磁性材)を着磁してなるリング磁石4を備え、軸心周りに回転する回転体の回転状態(回転角度)を計測する磁気センサの被検出体となるエンコーダ2において、リング磁石4の中心軸Cと直交し、かつその径方向に沿うように着磁用のヨーク部材(バックヨーク)6を当該リング磁石4に装着した状態で、前記径方向と平行をなす磁場Mfを与え、かかるリング磁石4の着磁を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械装置の回転軸の回転角度を計測するための磁気センサ機構(例えば、電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)のアングルセンサ機構)における被検出体として用いられるエンコーダの着磁技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種機械装置の回転軸を適正な状態で回転させるべく、その回転状態(一例として、回転角度)を計測するため、当該装置に対して所定のセンサ機構を設けた構成が知られている。このようなセンサ機構としては、例えば、回転軸を回転自在に支持する軸受の回転輪に、所定の磁性材を着磁してなるエンコーダを取り付け、当該エンコーダが回転する際に生じる磁束密度の変化を、回転輪に対して静止する部材(ハウジングや静止輪など)に固定された磁気センサで検出することで、かかる回転軸の回転状態(回転角度)を計測する磁気センサ機構がある。
【0003】
磁気センサ機構においては、エンコーダの着磁状態が回転軸の回転状態(回転角度)の計測精度に影響を及ぼすため、かかるエンコーダの着磁技術に対して各種の改良がなされてきた。例えば、特許文献1には、エンコーダ(2極磁気エンコーダ)としてリング磁石(円環状磁性体)を用いた磁気センサ機構(回転側部材の絶対位置検出装置)の一構成が開示されている。かかるリング磁石は、径方向に二分した一方側の半円部分(第1半円部分)の外周面部をS極の着磁域、他方側の半円部分(第2半円部分)の外周面部をN極の着磁域とした2極磁石であり、未加硫のゴム材に異方性磁性粉末を混練した磁性体原料を円環状の金型に充填することで、金属製の補強環とともに一体的に加硫成形されている。
その際、各異方性磁性粉末の磁化容易方向(磁化容易化軸)をリング磁石の径方向(第1半円部分及び第2半円部分の中央部を結ぶ中央線)に平行な状態で配向するとともに、当該磁化容易方向に平行な磁場(すなわち、リング磁石の径方向に平行な磁場)を与えることで前記異方性磁性粉末を着磁させている。つまり、磁性体原料と金属補強環との一体成形、異方性磁性粉末の配向及び着磁を同時に行うことによって、リング磁石(異方性磁石)が構成されている。そして、このような構成をなすリング磁石をエンコーダとして軸受に組み付け、回転側部材(例えば、内輪に内嵌された回転軸)の絶対位置(絶対角度)の検出(計測)を行っている。
【0004】
異方性磁石は、特定の方向にしか着磁されず、磁場の方向と異方性磁石の配向方向を合わせて着磁させれば、整合させた方向に強く磁化する(つまり、特定方向に大きな磁力が得られる)という特性を持っているため、特許文献1に開示されたエンコーダの着磁方法のように平行着磁される場合(具体的には、リング磁石の径方向と平行に磁性粉末を磁場配向した状態で着磁される場合)の磁性体として用いられることが少なくない。すなわち、磁気センサで磁束密度の変化を検出する場合、エンコーダから得られる磁束が大きい方が安定して検出可能となるため、異方性磁石はエンコーダとして非常に適した磁性体であると考えられる。
その一方で、異方性の特性を持たせるために、磁石成形時に磁場配向(磁化容易方向を同一方向に整列)させる必要や、着磁の際に配向方向に合わせて磁場を与える必要があるなど、単純に着磁する場合と比較して管理や手間、コストが掛かるという、異方性磁石に特有の問題もあり、異方性磁石をエンコーダとして用いる場合には、これらの問題が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−145284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような問題を回避するための一方策として、等方性磁石を活用することが考えられる。等方性磁石であればどの方向にも着磁させられるため、平行磁場(例えば、円環状の等方性磁石の径方向と平行する磁場)を与えれば、平行着磁させることも可能ではあるが、異方性磁石と比較すると着磁強度(磁力)は減少してしまう。そのため、等方性磁石でなるエンコーダを回転させた際、磁気センサで検出される磁束密度の変動波形の振幅が小さくなり(つまり、センサ出力が小さくなり)、回転軸などの回転状態(例えば、絶対角度)の計測精度の低下を招く虞がある。また、着磁強度(磁力)の程度によっては、磁気センサで磁束密度の変化を検出できない可能性もある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、磁場配向(磁化容易方向の同一方向への整列)やその配向方向と磁場方向との整合作業等の管理や手間、コストなどを低減可能とするとともに、回転時における磁束密度の変動波形の振幅を縮小させることなく、そのピークを拡大可能なエンコーダの着磁技術(角度検出用エンコーダ、及びその着磁方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明に係るエンコーダは、環状に成形された磁性体を着磁してなるリング磁石を備え、軸心周りに回転する回転体の回転状態を計測する磁気センサの被検出体となっており、前記リング磁石は、その中心軸と直交し、かつその径方向に沿うように着磁用のヨーク部材を装着した状態で、前記径方向と平行をなす磁場を与えることにより着磁されている。
【0009】
この場合、前記リング磁石を構成する磁性体としては、その材料中に等方性の磁性材を含むものを用いればよい。
なお、かかるエンコーダは、例えば、前記回転体の回転時における当該回転体の回転角度を計測する磁気センサの被検出体として構成することが可能である。
【0010】
また、上記のような目的を達成するために、本発明に係るリング磁石着磁方法は、軸心周りに回転する回転体の回転状態を計測する磁気センサの被検出体となるエンコーダ用のリング磁石を着磁するための方法であり、前記リング磁石に対し、その中心軸と直交し、かつその径方向に沿うように着磁用のヨーク部材を装着した状態で、前記径方向と平行をなす磁場を与えることで着磁を行う。
【0011】
この場合、前記リング磁石を構成する磁性体としては、その材料中に等方性の磁性材を含むものを用いればよい。
なお、かかるリング磁石着磁方法は、例えば、前記回転体の回転時における当該回転体の回転角度を計測する磁気センサの被検出体として構成されたリング磁石を着磁するための方法として適用することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の角度検出用エンコーダ、及びその着磁方法によれば、等方性磁石(一例として、等方性リング磁石)を用いるとともに、当該等方性磁石を着磁する際に意図的に磁束を集中させるバックヨークを装着させた状態で平行磁場を与えることで、磁場配向(磁化容易方向の同一方向への整列)やその配向方向と磁場方向との整合作業等の管理や手間、コストなどを低減することができるとともに、回転時における磁束密度の変動波形の振幅を縮小させることなく、そのピークを拡大させることができる。したがって、本発明に係るエンコーダの着磁技術(角度検出用エンコーダ、及びその着磁方法)を用いることで、磁気センサ機構による回転軸などの回転角度(具体的には、エンコーダの一周の絶対角度)の計測精度を従来と比べて向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエンコーダを示す図であって、(a)は、エンコーダとなるリング磁石の着磁方法を説明するための図、(b)は、同図(a)により着磁された後のリング磁石(エンコーダ)の状態を示す図である。
【図2】本発明のエンコーダを被検出体とする磁気センサ機構の構成を示す概略図である。
【図3】リング磁石を着磁させる際、空心コイルにより平行磁場を発生させた状態を示す図である。
【図4】回転軸(一例として、ステアリング軸)の絶対角度の算出原理を説明するための図であって、(a)は、エンコーダと2つの磁気センサの位置関係、及び磁気センサによる磁束密度の検出成分を示す図、(b)は、各磁気センサによる出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のエンコーダ(磁気センサの被検出体)、及びその着磁方法について、添付図面を参照して説明する。
本発明のエンコーダは、軸心周りに回転する回転体の回転状態(回転速度、回転方向、回転角度など)を計測する磁気センサ(例えば、ホールIC(Integrated Circuit)、ホール素子、MR素子、及びGMR素子など)の被検出体として、当該磁気センサ(磁気検出体)とともに磁気センサ機構の構成部材となる。磁気センサ機構の用途は特に限定されないが、本実施形態では、各種機械装置の回転軸の回転角度を計測するための磁気センサ機構、一例として、自動車等の電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)のアングルセンサ機構を想定し、エンコーダが当該アングルセンサ機構の被検出体として用いられる場合を想定する。
【0015】
図1及び図2には、本実施形態に係るエンコーダ2が示されており、当該エンコーダ2は、環状に成形された磁性体を着磁してなるリング磁石4を備えた構成となっている。すなわち、エンコーダ2は、少なくともリング磁石4を備えていればよく、前記リング磁石4のみの単体構成であってもよいし、例えば、当該リング磁石4とこれを補強するためのリング状の部材(芯金等)や、検出対象の内部を外部から封止するためのシール部材(リップシール等)とを一体的に成形してなる構造体などであっても構わない。また、リング磁石4は、環状に成形された磁性体を着磁することにより構成されているが、本実施形態では、かかる磁性体として、その材料中に等方性の磁性材を含むものを用いている。例えば、リング磁石4としては、等方性のフェライト磁石やボンド磁石などを想定することができる。ボンド磁石の場合には、等方性の磁性粉(フェライト粉など)を各種の樹脂と混合し、射出成形や圧縮成形(加圧・加硫成形)などの各種の樹脂成形法により環状に成形した磁性体を着磁させ、リング磁石4を構成すればよい。その際、等方性磁性粉の比率(樹脂との混合比率)は、リング磁石4(換言すれば、エンコーダ2)に要求される磁力の大きさなどに応じて任意に設定することが可能であるため、ここでは特に限定しない。また、磁性粉と混合させる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ、フェノール、ポリエステルなどの熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0016】
このように、本実施形態においては、リング磁石4を等方性磁石として構成するため、当該リング磁石4となる磁性体の成形時における磁性材の磁場配向(磁性粉などの磁化容易方向を同一方向に整列させるための工程)を特段必要としない。したがって、リング磁石を異方性磁石として構成した場合に必要となる磁場配向(磁化容易方向の整列工程)を省略することが可能となる。なお、リング磁石4(磁性体)の外内径寸法や肉厚は、エンコーダの大きさやセンサ機構の形態などに応じて任意に設定すればよいため、ここでは特に限定しない。
【0017】
等方性磁石として構成されたリング磁石4は、その中心軸(径方向中心を径方向に対して垂直に通る軸)Cと直交し、かつその径方向に沿うように着磁用のヨーク部材6を装着した状態で、前記径方向と平行をなす磁場Mfを与えることにより着磁される。一例として、図1(a)には、中心軸Cと直交し、同図面上における上下方向(径方向のうちの一つ)に沿うようにヨーク部材(金属などの磁性体(以下、バックヨークという))6をリング磁石4に装着するとともに、上下方向と平行をなす磁場Mfを与え、リング磁石4の着磁を行う状態を示している。この場合、バックヨーク6は、当該リング磁石4の径方向(図1(a)においては、上下方向)に沿って直線状に延設された平面部6aを有する構造体となっており、当該平面部6aの延出方向の長さ(同図においては、上下方向の寸法)がリング磁石4の外径寸法よりも大寸に設定され、延出方向に対する幅(同図においては、左右方向の寸法)が当該リング磁石4の内径寸法よりも小寸に設定されている。そして、平面部6aがリング磁石4の側面(外内周によって挟まれた周面域)4aと対向するように、バックヨーク6をリング磁石4に対して装着している。
【0018】
このようにバックヨーク6をリング磁石4に装着させることで、バックヨーク6が装着されたリング磁石4に対してその径方向と平行をなす磁場Mfを与えた場合、磁場Mfによる磁力線を中心軸Cと直交させるとともに、その磁束をバックヨーク6の装着部位(平面部6aとの対向部位)の近傍へ集中させることができる。この結果、リング磁石4を等方性磁石として構成した場合であっても、バックヨーク6を装着しない状態で着磁させた時と比較して、リング磁石4の着磁強度(磁力)を増大させることができる。したがって、このようなリング磁石4でなるエンコーダ2を回転させた際、磁気センサで検出される磁束密度の変動波形の振幅を大きくする(すなわち、センサ出力を大きくする)ことができる。
【0019】
なお、リング磁石4の径方向と平行をなす磁場Mfは、図3に示すような空心コイル8に所定電流を流すことで発生させればよく、同図においては、かかる空心コイル8内にリング磁石4を配置させることで、当該リング磁石4にその径方向と平行をなす磁場Mf(下から上へ向かう方向の磁場)を与えている。具体的には、磁場Mfの方向(同図においては、下から上へ向かう方向)と径方向が平行をなすように、空心コイル8内にリング磁石4を配置している。本実施形態においては、バックヨーク6を装着したリング磁石4に対してこのような磁場Mfを与えることで(図1(a))、径方向に二分した一方側の半円部分(同図(b)においては、下側半円部分)の外周面部4sをS極、他方側の半円部分(同図(b)においては、上側半円部分)の外周面部4nをN極にそれぞれ着磁している。すなわち、リング磁石4(換言すれば、エンコーダ2)は、外周面部4sをS極の着磁域、外周面部4nをN極の着磁域とする2極の等方性磁石(2極エンコーダ)として構成される(図2)。なお、リング磁石4に対する着磁は、当該リング磁石4の成形と同時に行ってもよいし、その成形とは完全に別工程として実施しても構わない。
【0020】
このように着磁されたリング磁石4でなるエンコーダ2を磁気センサの被検出体として、各種機械装置の回転軸の回転角度、一例として、EPSのステアリング軸の絶対角度(操舵角度)を算出する際は、以下のような原理に従って行えばよい。
この場合、図2及び図4(a)に示すように、2つの磁気センサS1,S2を配し、これらをその検出部位がエンコーダ2(径方向に沿って平行着磁されたリング磁石4)の着磁域(外周面部4s,4n)と所定間隔(センサギャップ)を空けて対向可能となるように、前記エンコーダ2の周方向へ90°ずらして(90°の位相差で)位置付けている。なお、エンコーダ2は、EPSのステアリング軸の回転に伴って回転する回転体、例えば、ステアリング軸を回転自在に支持する軸受の回転輪(図示しない)などに取り付けられており、前記ステアリング軸と同一の回転状態(回転角度)で回転可能な状態となっている。一方、2つの磁気センサS1,S2は、ステアリング軸(端的には、回転輪など)に対して静止する部材(ハウジングや前記軸受の静止輪など)へ互いに上述のような位置関係をなして固定され、エンコーダ2が回転する際に生じる磁束密度の変化を検出する。なお、磁気センサS1,S2としては、例えば、所定の回路が配線された基板(図示しない)を有し、当該基板によって所定の電源装置(図示しない)から電源が供給されるとともに、これら磁気センサS1,S2から出力された信号(エンコーダ2の回転角度を示す電気信号)を所定の信号処理部(図示しない)に送信するような構造をなすものなどが想定可能である。この場合、センサS1,S2や前記信号処理部は、前記基板に直接接続させてもよいし、信号ケーブル(図示しない)などを介して接続させてもよい。
【0021】
このような構成(センサ機構)によれば、ステアリング軸が回転すると、これとともにエンコーダ2も回転し、2つの磁気センサS1,S2に対する磁極(S極もしくはN極)の位置が交互に連続して変化する。このとき、各磁気センサS1,S2を通過する磁束密度(換言すれば、磁力線数)M2が連続的に変化し、その変化を磁気センサS1,S2によって検出するが、各磁気センサS1,S2が検出する磁束密度M2は、図2及び図4(a)に示す太線方向成分(同図に示す太線矢印10)の大きさとなるため、正弦波のような波形として出力される。なお、図2及び図4(a)には、磁気センサS1がエンコーダ2の外周面部4n(N極の着磁域)と正対した状態において検出する磁束密度M2の成分状態を一例として示すが、磁気センサS2の場合も同様の成分状態として磁束密度M2を検出している。
その際、2つの磁気センサS1,S2は、90°の位相差で配置されているため、図4(b)に示すように、正弦波(一例として、磁気センサS1)と余弦波(同、磁気センサS2)をそれぞれ出力することとなる。したがって、磁気センサS1の出力(BA)は、BA=B0・sinθ(B0は、波形のピーク値)、磁気センサS2の出力(BB)は、BB=B0・cosθ(B0は、波形のピーク値)となり、これに基づけば、θ(エンコーダ2の一周の絶対角度)は、θ=atan(BA/BB)により、算出することができる。この結果、ステアリング軸の絶対角度(操舵角度)を、当該ステアリング軸と同一の回転状態で回転するエンコーダ2の一周の絶対角度θとして計測することが可能となる。その際には、磁気センサS1,S2によって検出された磁束密度M2の変化を前記基板で電気信号に変換するとともに、当該電気信号を前記信号処理部に送信し、当該信号処理部において、単位時間当たりのエンコーダ2の角度の変動量を演算処理することで、ステアリング軸の絶対角度を計測すればよい。
【0022】
なお、上述したように、本実施形態においては、リング磁石4にバックヨーク6を装着した状態で当該リング磁石4を着磁させることで、リング磁石4でなるエンコーダ2の磁束密度M2の変動波形の振幅(すなわち、センサ出力)を大きくしている。これは、図2及び図4(a)に示すように、2つの磁気センサS1,S2でエンコーダ2の磁束密度M2の変動波形を検出する場合、一般的にはA/Dコンバータ(アナログデジタル変換器)を用いるが、同一のビット分解能であれば、波形振幅が大きい方がより精度の高い角度計測(演算)をすることができるためである。
【0023】
以上、本実施形態に係るエンコーダ2、及びその着磁方法によれば、等方性磁石(一例として、等方性のリング磁石4)を用いるとともに、当該リング磁石4を着磁する際に意図的に磁束を集中させるバックヨーク6を装着させた状態で平行磁場Mfを与えることで、磁場配向(磁化容易方向の同一方向への整列)やその配向方向と磁場方向との整合作業などの管理や手間、コストなどを低減することができるとともに、回転時における磁束密度M2の変動波形の振幅を縮小させることなく、そのピークを拡大させることができる。したがって、本実施形態に係るエンコーダ2の着磁技術(エンコーダ2、及びその着磁方法)を用いることで、磁気センサS1,S2によるステアリング軸の回転角度(具体的には、エンコーダ2の一周の絶対角度)の計測精度を従来と比べて確実に向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
2 エンコーダ
4 リング磁石
6 ヨーク部材(バックヨーク)
C リング磁石中心軸
Mf 磁場(径方向平行磁場)
S1,S2 磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に成形された磁性体を着磁してなるリング磁石を備え、軸心周りに回転する回転体の回転状態を計測する磁気センサの被検出体となるエンコーダであって、
前記リング磁石は、その中心軸と直交し、かつその径方向に沿うように着磁用のヨーク部材を装着した状態で、前記径方向と平行をなす磁場を与えることにより着磁されていることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記リング磁石を構成する磁性体は、その材料中に等方性の磁性材を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記回転体の回転時における当該回転体の回転角度を計測する磁気センサの被検出体として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
軸心周りに回転する回転体の回転状態を計測する磁気センサの被検出体となるエンコーダ用のリング磁石を着磁するための方法であって、
前記リング磁石に対し、その中心軸と直交し、かつその径方向に沿うように着磁用のヨーク部材を装着した状態で、前記径方向と平行をなす磁場を与えることで着磁を行うことを特徴とするリング磁石着磁方法。
【請求項5】
前記リング磁石を構成する磁性体は、その材料中に等方性の磁性材を含むことを特徴とする請求項4に記載のリング磁石着磁方法。
【請求項6】
前記リング磁石は、前記回転体の回転時における当該回転体の回転角度を計測する磁気センサの被検出体として構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のリング磁石着磁方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242205(P2012−242205A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111255(P2011−111255)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】