角材回転装置
【課題】 角材を中心軸まわりの同一回転軸にて連続回転させる。
【解決手段】 回転体3は、回転支持部である回転羽根31、回転軸であるシャフト32からなる。回転羽根31の輪郭形状は、回転対象となる角材2の形状に合わせて作成され、複数の山部および谷部を備える。シャフト32には、その両端のやや中央よりに二つずつ、回転羽根31が嵌挿される。シャフト32は、回転羽根31を取り付けたさらに先端両側にて軸受63によって回転自在に軸支されている。軸受63はホルダー6に設ける。回転体3は同様の構成にて三組設け、これら三組の回転体3のシャフト32は、それぞれ平行であって、回転する角材2の中心軸から等距離となるように配置する。角材2は回転体3に載置され回転する。
【解決手段】 回転体3は、回転支持部である回転羽根31、回転軸であるシャフト32からなる。回転羽根31の輪郭形状は、回転対象となる角材2の形状に合わせて作成され、複数の山部および谷部を備える。シャフト32には、その両端のやや中央よりに二つずつ、回転羽根31が嵌挿される。シャフト32は、回転羽根31を取り付けたさらに先端両側にて軸受63によって回転自在に軸支されている。軸受63はホルダー6に設ける。回転体3は同様の構成にて三組設け、これら三組の回転体3のシャフト32は、それぞれ平行であって、回転する角材2の中心軸から等距離となるように配置する。角材2は回転体3に載置され回転する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角材に回転力を付与し、あるいは角材に加わる回転力を受容するための角材回転方法及び角材回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角形鋼管柱や木製角材等(これらを併せて以下、角材と称する)を中心軸まわりに回転させるには、外周が円形のアタッチメントを角材に設け、これを介して丸材の回転装置にて角材を回転させる方法が挙げられる。丸材ならば慣用技術により中心軸まわりに回転させることは容易だからである。この技術思想に属するものとして特許文献1がある。その他、角材の回転あるいは反転に関連するものとして以下の特許文献が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−137982号公報
【特許文献2】実開平07−042764号公報
【特許文献3】特開平10−17130号公報
【特許文献4】特開2003−320408号公報
【特許文献5】実公63−4562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角材を、その中心軸の位置を一定にして回転させることは丸材と同等には扱えない。角材は中心軸と外周面との距離が一定でなく、中心軸の位置を一定にして回転させようとすると、角材外周面の回転外径が変化するためである。この問題を解決すべく特許文献1に見られるような、角材に円形のアタッチメントを設け、これを介して丸材の回転装置を使って角材を回転させる方法は、角材にアタッチメントを設けるという別途の段取りが必要となり、作業効率の低下を招くものである。この点、特許文献1においても同様の問題点を有するものである。
【0005】
なお、上記に挙げた特許文献2〜特許文献4は、これらによって得られる結果が角材を90°ずつ回転させることであり、角材の連続的な回転が必要な場合には適さないものである。
【0006】
特許文献5にて開示される技術および例示される従来技術では、角材の連続的な回転が得られるものであるが、角材の回転位置が安定しないものである。
【0007】
以上を踏まえ、本発明は、角材にアタッチメントを設ける等の段取りを経ずとも、角材の中心軸の位置を一定なままに、連続的に、角材を回転させることを可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み本発明は、複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体の回転軸が互いに平行であって回転自在に軸支された第一回転体と第二回転体に、前記回転軸と角材の中心軸を平行にして、前記山部または前記谷部に前記角材の側面を当接して、前記角材を載置する第一ステップと、
前記第一回転体と前記第二回転体とが同一方向に同一速度で回転する一方、前記角材は、前記第一回転体および前記第二回転体との当接部分が各々の前記山部または前記谷部から各々の前記谷部または前記山部に順次遷移することの連続によって、前記第一回転体および前記第二回転体と同期して逆回転する第二ステップとからなることを特徴とする角材回転方法である。
【0009】
上記課題に鑑み本発明は、複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体と、
前記回転軸を回転自在に軸支する軸受けとを備え、
該回転体は、互いに前記回転軸が平行かつ水平な二つ以上が設けられ、
角材は前記回転支持部に載置され、前記回転体の回転と同期して逆回転することを特徴とする角材回転装置である。
【0010】
前記輪郭形状とは、前記回転体を前記回転軸方向から見た際の輪郭の形状である。前記回転軸方向と直交する主面は平らな面としてよく、この主面と直交する側面に前記山部と前記谷部が現れるものである。
【0011】
前記輪郭形状は、前記角材の外部領域にある定点を通り前記角材の中心軸と直交する直線と、前記定点から直近の前記角材の側面との交点を、前記角材の回転角に対応して回転させた変位の軌跡である。ここで前記定点は、前記輪郭形状の外周長が前記角材の外周長と等しくなるように設定されるものである。
【0012】
前記回転支持部の前記輪郭形状を図示して説明する。前記輪郭形状は、回転対象となる角材の側面形状に合わせて作成されるものである。図1は角材を軸方向から見た模式図である。図1の上段の点o(英小文字オー)が上記定点であり、点pが角材の中心軸である。(a)において直線opと角材の一つの側面とが直交している状態から、(b)〜(d)はそれぞれ角材の回転角を15°ずつ足していったものである。点a、b、c、dはそれぞれ直線opと角材の側面との交点であって定点oに近い方の点である。このようにして、定点と角材の側面との距離oa、ob、oc、odを得る。
【0013】
図1の下段では、得られた距離oa、ob、oc、odを、新たに距離o’a’、o’b’、o’c’、o’d’とおく。各(a)〜(d)は、これらが得られたときの回転角と同じ角度だけ定点o’を中心に傾けたものである。傾ける方向は角材を傾けた方向と同じである。角材と回転支持部が当接して回転する際には互いに逆回転することを考慮して、後の到達角度に遡ったものである。
【0014】
図2の(a)は、上記の距離o’a’、o’b’、o’c’、o’d’と同様にして回転角2.5°おきに360°分得たものである。各回転角の距離が示す線分は放射状になり、この中心は上記定点o’に当たる。放射状に延びた外側の点を滑らかに結んだものが、前記回転支持部の前記輪郭形状となる。
【0015】
上記のように前記輪郭形状は決定されるが、この形状そのものをとらなくとも近似的な形状で足りる場合にまで厳密に要求されるものではない。特に谷部においては、上記のようにして得られた輪郭形状を変更する余地が比較的あり、その点については後述する。
【0016】
ここまで角材の角部には丸みがないものとしていたが、角材の角部にコーナーRを設けても本発明の利用に支障はない。このコーナーRは一般に角材として要求される範囲をすべて含む。図2の(b)は、角材にコーナーRを設けた状態にて上記手順によって作成した前記輪郭形状である。説明の便宜のために、設けたコーナーRは一辺の12%として示した。
【0017】
図2の(c)は、(a)と(b)において得られた輪郭形状を重ねたものである。実線部が(b)による輪郭形状であり、破線部が(a)による輪郭形状である。コーナーRの有無による輪郭形状の差異は谷部においてのみ見られるため、コーナーRなしとして作成した(a)による輪郭形状の回転支持部を用いたとしても、コーナーRを有する角材を回転させるには問題がない。一方、コーナーRがない角材を回転させる場合は、上記図2の(a)において得られた輪郭形状を用いることとなるが、これをそのまま用いると回転支持部と角材の回転外径がごくわずかに干渉するため、角材の回転に支障を来たさない程度に谷部をえぐり取ることが望ましい。
【0018】
既述のように前記輪郭形状の外周長が前記角材の外周長と等しくあることを要するが、これは前記回転体と前記角材との回転を同期させる必要があるためであり、前記輪郭形状の谷部を深めに設けた場合はこれに伴い前記輪郭形状の外周長は前記角材の外周長より若干長くなるものである。その他、前記角材の前記回転体上での空転を許容する範囲内でのこれら外周長の誤差は許容されるものである。
【0019】
前記回転体を回転軸方向から見た際の配置について述べる。二組の前記回転体は、前記角材を載置した際に、二組の前記回転体の回転軸と前記角材の中心軸からの距離がそれぞれ実質的に等しくなければならない。言い換えると、二組の前記回転体の回転軸は、前記角材の中心軸を円の中心とする同一円上にあるということである。
【0020】
ところで、回転中の角材の安定のために前記回転体は三つ設けることが望ましい。この際、三つの前記回転体は互いに平行に設けられ、前記回転体の各々の回転軸が、前記角材の中心軸から略等しい距離となるように配置されることが必要である。さらに角材の多角形状や角材と回転体との配置に応じて前記回転体の山部および谷部の位相を調節することが必要である。ここで、山部および谷部の位相とは、回転体の回転に伴って周期的に現れる山部および谷部の特定の局面である。正方形断面の角材を例にすると、角材および回転体が一周する間に、山部および谷部の位相は四度の同じ位相が現れる。
【0021】
より精密な角材の回転を必要とする場合は、前記回転体を前記角材の下方に設けるのみならず、前記角材の上部に設けてもよい。これにより角材の回転位置をより安定させることができる。さらに言えば、角材の中心軸から等しい距離に配置さえすれば、前記回転体は角材の周囲にいくつでも設けることが可能である。
【0022】
角材と回転体との配置の例を図3に示す。図3(a)は、本発明における回転体の最小構成数である二組の回転体と角材との配置を表す。二つの回転体の回転軸は、角材の中心軸との距離が相等しいことを要し、二点鎖線で示す同心円上にある。これらの幾何学的関係から、二つの回転体の回転軸と角材の中心軸がなす角は90°である。図3(b)は、上記二組の回転体に加え角材の真下に回転体をもう一組設け、これらと角材との配置を表すものである。加えた回転体の回転軸も、他の二組と同じく角材の中心軸を中心とする同心円上にある。図3(c)は、回転体を三組として、二つの回転体の回転軸と角材の中心軸がなす角を120°にしたものである。このように回転体は、角材の中心軸からの距離が等しい限りにおいて自由に配置することができる。ただし、それぞれの配置角度に応じて山部と谷部の位相を調節する必要がある。
【0023】
図4に正方形断面の角材を回転する際の模式図を示す。回転支持部の輪郭形状については、図1および図2に示して上述した通りである。ここでは、角部にコーナーRを設けない角材を用いて作成した輪郭形状(図2(a)参照)の回転支持部を三組用いて、これらと角部に12%のコーナーRを持つ角材との回転の関係を例にして表す。各図は、(a)を回転角0°として(b)〜(j)において回転角5°ずつを与えたものである。(a)では二組の回転支持部の谷部が角材の角部を、一組の回転支持部の山部が角材の側面中央部をそれぞれ支持している。ここから、回転支持部は右回り、角材は左回りに同一角速度で回転し、回転角45°まで同期回転する。
【0024】
輪郭形状の外周長と角材の外周長を等しく設けているので、回転中の角材と回転支持部は空回りしないものとして、これらは同一の角速度で同期回転するものである。角材は、その角部が回転する谷部に当接し、その谷部から回転力を付与されて回転するものである。同時に角材の重量は山部および谷部に順次当接して支持されるため、角材は回転支持部に載置するのみで、他の支持は不要である。谷部から山部あるいは山部から谷部への順次当接の遷移は滑らかであり、谷部における当接を一箇所とすると、常に三箇所の回転支持部と角材との当接があり、回転支持部の間に載置された角材が安定することがわかる。(a)〜(j)と角材の対称性から、360°の回転が可能であることとなる。参考として図3(c)にて示した、二つの回転体の回転軸と角材の中心軸がなす角を120°に配置した場合の角材の回転の様子を図5に示す。
【0025】
図3(b)や図4から明らかなように、回転支持部を三組用いる場合、軸方向から見たこれらの図では回転支持部が重なり実際には干渉してしまうことがわかる。そこで、図6(a)に示すように、回転支持部の軸方向の厚みが軸方向に直交する主面の幅と比較して薄板状のものとして、一つの回転軸に一つないし複数設けて回転体を構成し、回転軸を異にして隣り合う回転支持部同士をずらして配置することにより互いの干渉を防いで好適である。あるいは図6(b)のように、軸方向に直交する主面の幅と比較して軸方向に相当な厚みを有する一つの回転支持部によって一組の回転体を構成し、回転軸を異にして隣り合う回転支持部の回転範囲を切欠いて互いの干渉を防ぐことも好適である。
【0026】
本発明では、対象とする角材が正多角形断面であることを要し、例えば正方形以外の矩形断面を有する角材の回転を行いたい場合は、複数組の回転体の間の距離を角材の回転に伴い調節する機構など、別段の技術を加えることを要する。
【0027】
一方、角材は正方形のみならず、正多角形の断面を有する角材には、本発明を利用することができる。図7に正五角形の断面形状の角材を回転する場合を例にして模式図を示す。このときの回転支持部の輪郭形状は正五角形の角材に合わせて作成したもので、山部と谷部が五つずつある。(a)〜(j)は、4°ずつ、36°まで回転角を与えたものである。これと角材の対称性から360°の回転が可能であることとなる。ただし、図7における角材と回転体の配置では、回転軸が隣り合う回転支持部と干渉するおそれがある。その場合は図8のように、初期の回転角度にて角材の三面の中央を回転支持部の山部が当接するように配置して好適である。
【0028】
前記回転支持部の各々を機械的に連結しない場合は、山部および谷部の初期位相が適正であることを前提として、回転する前記角材との当接により各々の回転支持部が連動して適当な位相を保って回転する。前記回転支持部の各々を機械的に連結する場合は、前記角材と前記回転支持部との当接を経ずして前記回転体を同期させることができる。この連結には、前記回転軸の各々に歯車を設け、該歯車の間に伝達歯車を設け、前記回転体の各々の位相を維持しつつ、同一方向に同一速度で回転させることが望ましい。前記伝達歯車に代え、前記歯車をスプロケットによる構造としてもよい。
【0029】
上記の伝達機構に加えて、前記回転軸の一つに回転動力を与えると、本発明による角材回転装置のみによって、角材に回転を与えることができる。あるいは、前記回転体の各々を伝達機構により連動させずに、独立性を維持して各々に同一方向かつ同一速度の回転力を与えてもよい。
【0030】
上記に関わらず前記回転軸の全てに回転動力を与えないとすると、本発明による角材回転装置は、回転する角材の支持装置となる。例えば、特許出願2009−195674に示される管材移動装置により角材に回転を与え、角材の他端を該角材の支持装置によって支持することが考えられる。また、長尺の角材を回転させるときにも適宜間隔にて角材支持装置として使用するとよい。
【発明の効果】
【0031】
上記のような回転支持部の輪郭形状をとることによって、角材の中心軸の位置を一定にして回転させても角材と回転体とが干渉することがなく、角材と回転体は同期して逆回転することができる。また、回転体は異軸にして二つ以上設けることとするため、これらに載置された角材は複数の回転支持部の谷部または山部に支持され、回転中も中心軸を同一に保つことが可能となる。
【0032】
よって本発明によれば、中心軸の位置を一定なままに角材の回転を連続的に行うことができる。ここにおいて、角材に特別なアタッチメント等を設ける必要もなく、本発明による角材回転装置に角材を載置するのみにおいて、容易に角材に回転を与え、あるいは回転する角材を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における輪郭形状作成に関わる概念図である。
【図2】輪郭形状作成の一例を示す図である。
【図3】正方形断面の角材と回転支持部の配置を表す概念図である。
【図4】同角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を90°に配置した場合のものである。
【図5】同角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を120°に配置した場合のものである。
【図6】本発明における回転支持部の配置あるいは形状に関わる概念図である。
【図7】正五角形断面の角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を72°に配置した場合のものである。
【図8】正五角形断面の角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を144°に配置した場合のものである。
【図9】本実施例の角材回転装置1の斜視図である。
【図10】同角材回転装置1の平面図である。
【図11】同角材回転装置1の底面図である。
【図12】同角材回転装置1の右側面図である。
【図13】同角材回転装置1の左側面図である。
【図14】同角材回転装置1の正面図である。
【図15】同角材回転装置1の背面図である。
【図16】同角材回転装置1を他の装置と同時に使用する参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例の角材回転装置1について図9〜図16を参照して説明する。
【0035】
本実施例において対象とする角材2は、125×125ミリの正方形断面を有し、角部のコーナーRは一辺の12%程度の角形鋼管柱を例とする。また、回転体は最小構成である二組でなく、図3(b)に示した三組用いる構成とする。
【0036】
角材回転装置1は、角材2を中心軸回りに回転させるためのものであって、回転体3、伝達機構4、モーター5、ホルダー6を備える。三組の回転体3は各々が伝達機構4にて連結され、そのうち一組の回転体3はモーター5により回転力を与えられる。また各々の回転体3は、ホルダー6の内部に回転自在に軸支されるものである。以下、個々の構成について詳述する。
【0037】
回転体3は、回転支持部である回転羽根31、回転軸であるシャフト32からなる。回転羽根31の輪郭形状は、図2(b)に示して上述した通りである。ここでは回転羽根31を鋼材にて作成したが、硬質プラスチックや合成ゴムなどの合成樹脂でもよい。角材回転装置1の使用により角材2に傷がつく場合に有効である。また、回転羽根の周縁に合成ゴム等を着設してもよい。
【0038】
シャフト32には、その両端のやや中央よりに二つずつ、回転羽根31が嵌挿される。同一のシャフト32に嵌挿される二つの回転羽根31は、山部および谷部の位相が等しくなるようにする。シャフト32は、回転羽根31を取り付けたさらに先端両側にて軸受63によって回転自在に軸支されている。軸受け63については後述する。
【0039】
上記回転体3は同様の構成にて三組設け、正面から見た際に(図9および図14参照)、左上から時計回りに回転体3a、回転体3b、回転体3cとする。以下、これらに対応する回転羽根31、シャフト32、軸歯車41の符号の語尾にそれぞれa、b、cを付して呼ぶ。これら三組の回転体3a〜3cのシャフト32a〜32cは、それぞれ平行であって、回転する角材2の中心軸から等距離となるように配置する。さらに回転体3a、回転体3c、角材2の回転軸が形成する三角形は、角材2の回転軸を頂点として、頂角が直角となるようにする(図3(b)参照)。また、回転羽根31a〜31cの山部および谷部の位相は全て同じである。また、相異なるシャフト32に嵌挿される回転羽根31は、図6(a)を用いて既述したように、干渉を避けるべく互い違いとなるように配置される。
【0040】
シャフト32bには、第一保持板61の外側からモーター5を連結し、これを回転動力とする。モーター5は、第一保持板61に固設したモーターブラケット51に設けられる。作業空間の制約などによっては、シャフト32bでなく、シャフト32aあるいはシャフト32cにモーター5を連結してもよい。
【0041】
伝達機構4は、軸歯車41a〜41cと二つの伝達歯車(図示なし)から構成される。具体的には、軸歯車41aと軸歯車41bとの間に伝達歯車を噛合させて設け、シャフト32bに与えられた回転力をシャフト32aに伝えている。軸歯車41cと軸歯車41bとの間にも伝達歯車を同様に設け、回転力をシャフト32cに伝えている。伝達歯車を介することで、シャフト32a、シャフト32b、シャフト32cの回転方向は同一となる。またこれらの回転速度もすべて同一となるように、軸歯車41と伝達歯車のギヤ比を設定する。
【0042】
ホルダー6は、第一保持板61および第二保持板62の間に、棒状部材のフレーム64が挟装されて形成される(図9〜13)。フレーム64は左右の側面および底面に二本ずつ固定され、ホルダー6の上部は開放している。第一保持板61および第二保持板62には、シャフト32を回転自在に保持するための軸受63が設けられている。ここで軸受63としてボールベアリングを用いているが、転がり軸受に限らず、すべり軸受けでもよい。さらにシャフト32には、第一保持板61と回転羽根31との間において軸歯車41が嵌挿される。また、ホルダー6には固定具65を適宜設け、作業台等に固設できるようにする(図16参照)。
【0043】
以下、角材回転装置1の回転方法について説明する。
【0044】
まず角材2を角材回転装置1に載置する。具体的には、回転羽根31aおよび回転羽根31cの谷部と、回転羽根31bの山部の三点(一つのシャフト32に二つの回転羽根31が設けられることを考慮すれば六点)において角材2は支持される。
【0045】
次にモーター5を稼働させ回転体3bを回転させる。回転体3bの回転は、伝達機構4によって回転体3bおよび回転体3cに伝えられ、それぞれ同一方向かつ同一速度によって回転する。
【0046】
角材2は、同一速度で同一方向に回転する三組の回転羽根31a〜31cの山部または谷部から谷部または山部へと順次当接し、これらと同期して逆回転する。角材回転装置1は角材2に回転力を付与するものであり、この回転は、回転羽根31a〜31cの谷部が、これに当接する角材2の角部を押動することの連続によって行われる。この際、回転羽根31a〜31cの輪郭形状は、角材2の回転外径の変化を所定の定点から観測し、角材2の側面と定点との距離を角材2の回転角に対応した回転変位として表したものであるから、回転中の角材2は回転羽根31a〜31cのいずれとも常に接し、これらに支持されることとなる。
【0047】
参考使用例として図16を示す。角材回転装置1は固定具65を用いて作業台300に据え付けられ、角材2はこれに載置される。角材2の一端にて管材移動装置100(特許出願2009−195674を参照)により支持され、他端にて加工装置200を用いて角材2を回転させつつ、作業することができる。
【0048】
以下、角材回転装置1による効果について説明する。
【0049】
角材回転装置1によって、従来のように円外形のアタッチメントを使用せずとも、角材を中心軸まわりに回転させることができる。この回転は連続的に可能であり、回転軸は一定である。
【0050】
回転体3a、回転体3cに加え、回転体3bを設けることによって、常に角材2を三点で支持しつつ回転させることとなる。また、上記のような回転体3の配置により、回転羽根31aおよび回転羽根31cと、回転羽根31bは、その山部または谷部が交互に角材2に当接してより安定した回転を得ることができる。
【0051】
なお、図9〜図16はすべて本発明の一実施例のものであり、上記に説明した詳細は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、上記構成には本発明の必須要件ではないものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、角材の中心軸まわりの回転が必要な作業において利用可能である。特に連続的な回転を要する場合に有効である。扱う角材としては、角形鋼管柱や木製角材などが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…角材回転装置 2…角材 3…回転体
31…回転羽根 32…シャフト 4…伝達機構
41…軸歯車 5…モーター 6…ホルダー
61…第一保持板 62…第二保持板 63…軸受
64…フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、角材に回転力を付与し、あるいは角材に加わる回転力を受容するための角材回転方法及び角材回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角形鋼管柱や木製角材等(これらを併せて以下、角材と称する)を中心軸まわりに回転させるには、外周が円形のアタッチメントを角材に設け、これを介して丸材の回転装置にて角材を回転させる方法が挙げられる。丸材ならば慣用技術により中心軸まわりに回転させることは容易だからである。この技術思想に属するものとして特許文献1がある。その他、角材の回転あるいは反転に関連するものとして以下の特許文献が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−137982号公報
【特許文献2】実開平07−042764号公報
【特許文献3】特開平10−17130号公報
【特許文献4】特開2003−320408号公報
【特許文献5】実公63−4562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角材を、その中心軸の位置を一定にして回転させることは丸材と同等には扱えない。角材は中心軸と外周面との距離が一定でなく、中心軸の位置を一定にして回転させようとすると、角材外周面の回転外径が変化するためである。この問題を解決すべく特許文献1に見られるような、角材に円形のアタッチメントを設け、これを介して丸材の回転装置を使って角材を回転させる方法は、角材にアタッチメントを設けるという別途の段取りが必要となり、作業効率の低下を招くものである。この点、特許文献1においても同様の問題点を有するものである。
【0005】
なお、上記に挙げた特許文献2〜特許文献4は、これらによって得られる結果が角材を90°ずつ回転させることであり、角材の連続的な回転が必要な場合には適さないものである。
【0006】
特許文献5にて開示される技術および例示される従来技術では、角材の連続的な回転が得られるものであるが、角材の回転位置が安定しないものである。
【0007】
以上を踏まえ、本発明は、角材にアタッチメントを設ける等の段取りを経ずとも、角材の中心軸の位置を一定なままに、連続的に、角材を回転させることを可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み本発明は、複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体の回転軸が互いに平行であって回転自在に軸支された第一回転体と第二回転体に、前記回転軸と角材の中心軸を平行にして、前記山部または前記谷部に前記角材の側面を当接して、前記角材を載置する第一ステップと、
前記第一回転体と前記第二回転体とが同一方向に同一速度で回転する一方、前記角材は、前記第一回転体および前記第二回転体との当接部分が各々の前記山部または前記谷部から各々の前記谷部または前記山部に順次遷移することの連続によって、前記第一回転体および前記第二回転体と同期して逆回転する第二ステップとからなることを特徴とする角材回転方法である。
【0009】
上記課題に鑑み本発明は、複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体と、
前記回転軸を回転自在に軸支する軸受けとを備え、
該回転体は、互いに前記回転軸が平行かつ水平な二つ以上が設けられ、
角材は前記回転支持部に載置され、前記回転体の回転と同期して逆回転することを特徴とする角材回転装置である。
【0010】
前記輪郭形状とは、前記回転体を前記回転軸方向から見た際の輪郭の形状である。前記回転軸方向と直交する主面は平らな面としてよく、この主面と直交する側面に前記山部と前記谷部が現れるものである。
【0011】
前記輪郭形状は、前記角材の外部領域にある定点を通り前記角材の中心軸と直交する直線と、前記定点から直近の前記角材の側面との交点を、前記角材の回転角に対応して回転させた変位の軌跡である。ここで前記定点は、前記輪郭形状の外周長が前記角材の外周長と等しくなるように設定されるものである。
【0012】
前記回転支持部の前記輪郭形状を図示して説明する。前記輪郭形状は、回転対象となる角材の側面形状に合わせて作成されるものである。図1は角材を軸方向から見た模式図である。図1の上段の点o(英小文字オー)が上記定点であり、点pが角材の中心軸である。(a)において直線opと角材の一つの側面とが直交している状態から、(b)〜(d)はそれぞれ角材の回転角を15°ずつ足していったものである。点a、b、c、dはそれぞれ直線opと角材の側面との交点であって定点oに近い方の点である。このようにして、定点と角材の側面との距離oa、ob、oc、odを得る。
【0013】
図1の下段では、得られた距離oa、ob、oc、odを、新たに距離o’a’、o’b’、o’c’、o’d’とおく。各(a)〜(d)は、これらが得られたときの回転角と同じ角度だけ定点o’を中心に傾けたものである。傾ける方向は角材を傾けた方向と同じである。角材と回転支持部が当接して回転する際には互いに逆回転することを考慮して、後の到達角度に遡ったものである。
【0014】
図2の(a)は、上記の距離o’a’、o’b’、o’c’、o’d’と同様にして回転角2.5°おきに360°分得たものである。各回転角の距離が示す線分は放射状になり、この中心は上記定点o’に当たる。放射状に延びた外側の点を滑らかに結んだものが、前記回転支持部の前記輪郭形状となる。
【0015】
上記のように前記輪郭形状は決定されるが、この形状そのものをとらなくとも近似的な形状で足りる場合にまで厳密に要求されるものではない。特に谷部においては、上記のようにして得られた輪郭形状を変更する余地が比較的あり、その点については後述する。
【0016】
ここまで角材の角部には丸みがないものとしていたが、角材の角部にコーナーRを設けても本発明の利用に支障はない。このコーナーRは一般に角材として要求される範囲をすべて含む。図2の(b)は、角材にコーナーRを設けた状態にて上記手順によって作成した前記輪郭形状である。説明の便宜のために、設けたコーナーRは一辺の12%として示した。
【0017】
図2の(c)は、(a)と(b)において得られた輪郭形状を重ねたものである。実線部が(b)による輪郭形状であり、破線部が(a)による輪郭形状である。コーナーRの有無による輪郭形状の差異は谷部においてのみ見られるため、コーナーRなしとして作成した(a)による輪郭形状の回転支持部を用いたとしても、コーナーRを有する角材を回転させるには問題がない。一方、コーナーRがない角材を回転させる場合は、上記図2の(a)において得られた輪郭形状を用いることとなるが、これをそのまま用いると回転支持部と角材の回転外径がごくわずかに干渉するため、角材の回転に支障を来たさない程度に谷部をえぐり取ることが望ましい。
【0018】
既述のように前記輪郭形状の外周長が前記角材の外周長と等しくあることを要するが、これは前記回転体と前記角材との回転を同期させる必要があるためであり、前記輪郭形状の谷部を深めに設けた場合はこれに伴い前記輪郭形状の外周長は前記角材の外周長より若干長くなるものである。その他、前記角材の前記回転体上での空転を許容する範囲内でのこれら外周長の誤差は許容されるものである。
【0019】
前記回転体を回転軸方向から見た際の配置について述べる。二組の前記回転体は、前記角材を載置した際に、二組の前記回転体の回転軸と前記角材の中心軸からの距離がそれぞれ実質的に等しくなければならない。言い換えると、二組の前記回転体の回転軸は、前記角材の中心軸を円の中心とする同一円上にあるということである。
【0020】
ところで、回転中の角材の安定のために前記回転体は三つ設けることが望ましい。この際、三つの前記回転体は互いに平行に設けられ、前記回転体の各々の回転軸が、前記角材の中心軸から略等しい距離となるように配置されることが必要である。さらに角材の多角形状や角材と回転体との配置に応じて前記回転体の山部および谷部の位相を調節することが必要である。ここで、山部および谷部の位相とは、回転体の回転に伴って周期的に現れる山部および谷部の特定の局面である。正方形断面の角材を例にすると、角材および回転体が一周する間に、山部および谷部の位相は四度の同じ位相が現れる。
【0021】
より精密な角材の回転を必要とする場合は、前記回転体を前記角材の下方に設けるのみならず、前記角材の上部に設けてもよい。これにより角材の回転位置をより安定させることができる。さらに言えば、角材の中心軸から等しい距離に配置さえすれば、前記回転体は角材の周囲にいくつでも設けることが可能である。
【0022】
角材と回転体との配置の例を図3に示す。図3(a)は、本発明における回転体の最小構成数である二組の回転体と角材との配置を表す。二つの回転体の回転軸は、角材の中心軸との距離が相等しいことを要し、二点鎖線で示す同心円上にある。これらの幾何学的関係から、二つの回転体の回転軸と角材の中心軸がなす角は90°である。図3(b)は、上記二組の回転体に加え角材の真下に回転体をもう一組設け、これらと角材との配置を表すものである。加えた回転体の回転軸も、他の二組と同じく角材の中心軸を中心とする同心円上にある。図3(c)は、回転体を三組として、二つの回転体の回転軸と角材の中心軸がなす角を120°にしたものである。このように回転体は、角材の中心軸からの距離が等しい限りにおいて自由に配置することができる。ただし、それぞれの配置角度に応じて山部と谷部の位相を調節する必要がある。
【0023】
図4に正方形断面の角材を回転する際の模式図を示す。回転支持部の輪郭形状については、図1および図2に示して上述した通りである。ここでは、角部にコーナーRを設けない角材を用いて作成した輪郭形状(図2(a)参照)の回転支持部を三組用いて、これらと角部に12%のコーナーRを持つ角材との回転の関係を例にして表す。各図は、(a)を回転角0°として(b)〜(j)において回転角5°ずつを与えたものである。(a)では二組の回転支持部の谷部が角材の角部を、一組の回転支持部の山部が角材の側面中央部をそれぞれ支持している。ここから、回転支持部は右回り、角材は左回りに同一角速度で回転し、回転角45°まで同期回転する。
【0024】
輪郭形状の外周長と角材の外周長を等しく設けているので、回転中の角材と回転支持部は空回りしないものとして、これらは同一の角速度で同期回転するものである。角材は、その角部が回転する谷部に当接し、その谷部から回転力を付与されて回転するものである。同時に角材の重量は山部および谷部に順次当接して支持されるため、角材は回転支持部に載置するのみで、他の支持は不要である。谷部から山部あるいは山部から谷部への順次当接の遷移は滑らかであり、谷部における当接を一箇所とすると、常に三箇所の回転支持部と角材との当接があり、回転支持部の間に載置された角材が安定することがわかる。(a)〜(j)と角材の対称性から、360°の回転が可能であることとなる。参考として図3(c)にて示した、二つの回転体の回転軸と角材の中心軸がなす角を120°に配置した場合の角材の回転の様子を図5に示す。
【0025】
図3(b)や図4から明らかなように、回転支持部を三組用いる場合、軸方向から見たこれらの図では回転支持部が重なり実際には干渉してしまうことがわかる。そこで、図6(a)に示すように、回転支持部の軸方向の厚みが軸方向に直交する主面の幅と比較して薄板状のものとして、一つの回転軸に一つないし複数設けて回転体を構成し、回転軸を異にして隣り合う回転支持部同士をずらして配置することにより互いの干渉を防いで好適である。あるいは図6(b)のように、軸方向に直交する主面の幅と比較して軸方向に相当な厚みを有する一つの回転支持部によって一組の回転体を構成し、回転軸を異にして隣り合う回転支持部の回転範囲を切欠いて互いの干渉を防ぐことも好適である。
【0026】
本発明では、対象とする角材が正多角形断面であることを要し、例えば正方形以外の矩形断面を有する角材の回転を行いたい場合は、複数組の回転体の間の距離を角材の回転に伴い調節する機構など、別段の技術を加えることを要する。
【0027】
一方、角材は正方形のみならず、正多角形の断面を有する角材には、本発明を利用することができる。図7に正五角形の断面形状の角材を回転する場合を例にして模式図を示す。このときの回転支持部の輪郭形状は正五角形の角材に合わせて作成したもので、山部と谷部が五つずつある。(a)〜(j)は、4°ずつ、36°まで回転角を与えたものである。これと角材の対称性から360°の回転が可能であることとなる。ただし、図7における角材と回転体の配置では、回転軸が隣り合う回転支持部と干渉するおそれがある。その場合は図8のように、初期の回転角度にて角材の三面の中央を回転支持部の山部が当接するように配置して好適である。
【0028】
前記回転支持部の各々を機械的に連結しない場合は、山部および谷部の初期位相が適正であることを前提として、回転する前記角材との当接により各々の回転支持部が連動して適当な位相を保って回転する。前記回転支持部の各々を機械的に連結する場合は、前記角材と前記回転支持部との当接を経ずして前記回転体を同期させることができる。この連結には、前記回転軸の各々に歯車を設け、該歯車の間に伝達歯車を設け、前記回転体の各々の位相を維持しつつ、同一方向に同一速度で回転させることが望ましい。前記伝達歯車に代え、前記歯車をスプロケットによる構造としてもよい。
【0029】
上記の伝達機構に加えて、前記回転軸の一つに回転動力を与えると、本発明による角材回転装置のみによって、角材に回転を与えることができる。あるいは、前記回転体の各々を伝達機構により連動させずに、独立性を維持して各々に同一方向かつ同一速度の回転力を与えてもよい。
【0030】
上記に関わらず前記回転軸の全てに回転動力を与えないとすると、本発明による角材回転装置は、回転する角材の支持装置となる。例えば、特許出願2009−195674に示される管材移動装置により角材に回転を与え、角材の他端を該角材の支持装置によって支持することが考えられる。また、長尺の角材を回転させるときにも適宜間隔にて角材支持装置として使用するとよい。
【発明の効果】
【0031】
上記のような回転支持部の輪郭形状をとることによって、角材の中心軸の位置を一定にして回転させても角材と回転体とが干渉することがなく、角材と回転体は同期して逆回転することができる。また、回転体は異軸にして二つ以上設けることとするため、これらに載置された角材は複数の回転支持部の谷部または山部に支持され、回転中も中心軸を同一に保つことが可能となる。
【0032】
よって本発明によれば、中心軸の位置を一定なままに角材の回転を連続的に行うことができる。ここにおいて、角材に特別なアタッチメント等を設ける必要もなく、本発明による角材回転装置に角材を載置するのみにおいて、容易に角材に回転を与え、あるいは回転する角材を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における輪郭形状作成に関わる概念図である。
【図2】輪郭形状作成の一例を示す図である。
【図3】正方形断面の角材と回転支持部の配置を表す概念図である。
【図4】同角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を90°に配置した場合のものである。
【図5】同角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を120°に配置した場合のものである。
【図6】本発明における回転支持部の配置あるいは形状に関わる概念図である。
【図7】正五角形断面の角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を72°に配置した場合のものである。
【図8】正五角形断面の角材と回転支持部との回転中の関係を表す概念図である。二つの回転体の回転軸と同角材の中心軸がなす角を144°に配置した場合のものである。
【図9】本実施例の角材回転装置1の斜視図である。
【図10】同角材回転装置1の平面図である。
【図11】同角材回転装置1の底面図である。
【図12】同角材回転装置1の右側面図である。
【図13】同角材回転装置1の左側面図である。
【図14】同角材回転装置1の正面図である。
【図15】同角材回転装置1の背面図である。
【図16】同角材回転装置1を他の装置と同時に使用する参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例の角材回転装置1について図9〜図16を参照して説明する。
【0035】
本実施例において対象とする角材2は、125×125ミリの正方形断面を有し、角部のコーナーRは一辺の12%程度の角形鋼管柱を例とする。また、回転体は最小構成である二組でなく、図3(b)に示した三組用いる構成とする。
【0036】
角材回転装置1は、角材2を中心軸回りに回転させるためのものであって、回転体3、伝達機構4、モーター5、ホルダー6を備える。三組の回転体3は各々が伝達機構4にて連結され、そのうち一組の回転体3はモーター5により回転力を与えられる。また各々の回転体3は、ホルダー6の内部に回転自在に軸支されるものである。以下、個々の構成について詳述する。
【0037】
回転体3は、回転支持部である回転羽根31、回転軸であるシャフト32からなる。回転羽根31の輪郭形状は、図2(b)に示して上述した通りである。ここでは回転羽根31を鋼材にて作成したが、硬質プラスチックや合成ゴムなどの合成樹脂でもよい。角材回転装置1の使用により角材2に傷がつく場合に有効である。また、回転羽根の周縁に合成ゴム等を着設してもよい。
【0038】
シャフト32には、その両端のやや中央よりに二つずつ、回転羽根31が嵌挿される。同一のシャフト32に嵌挿される二つの回転羽根31は、山部および谷部の位相が等しくなるようにする。シャフト32は、回転羽根31を取り付けたさらに先端両側にて軸受63によって回転自在に軸支されている。軸受け63については後述する。
【0039】
上記回転体3は同様の構成にて三組設け、正面から見た際に(図9および図14参照)、左上から時計回りに回転体3a、回転体3b、回転体3cとする。以下、これらに対応する回転羽根31、シャフト32、軸歯車41の符号の語尾にそれぞれa、b、cを付して呼ぶ。これら三組の回転体3a〜3cのシャフト32a〜32cは、それぞれ平行であって、回転する角材2の中心軸から等距離となるように配置する。さらに回転体3a、回転体3c、角材2の回転軸が形成する三角形は、角材2の回転軸を頂点として、頂角が直角となるようにする(図3(b)参照)。また、回転羽根31a〜31cの山部および谷部の位相は全て同じである。また、相異なるシャフト32に嵌挿される回転羽根31は、図6(a)を用いて既述したように、干渉を避けるべく互い違いとなるように配置される。
【0040】
シャフト32bには、第一保持板61の外側からモーター5を連結し、これを回転動力とする。モーター5は、第一保持板61に固設したモーターブラケット51に設けられる。作業空間の制約などによっては、シャフト32bでなく、シャフト32aあるいはシャフト32cにモーター5を連結してもよい。
【0041】
伝達機構4は、軸歯車41a〜41cと二つの伝達歯車(図示なし)から構成される。具体的には、軸歯車41aと軸歯車41bとの間に伝達歯車を噛合させて設け、シャフト32bに与えられた回転力をシャフト32aに伝えている。軸歯車41cと軸歯車41bとの間にも伝達歯車を同様に設け、回転力をシャフト32cに伝えている。伝達歯車を介することで、シャフト32a、シャフト32b、シャフト32cの回転方向は同一となる。またこれらの回転速度もすべて同一となるように、軸歯車41と伝達歯車のギヤ比を設定する。
【0042】
ホルダー6は、第一保持板61および第二保持板62の間に、棒状部材のフレーム64が挟装されて形成される(図9〜13)。フレーム64は左右の側面および底面に二本ずつ固定され、ホルダー6の上部は開放している。第一保持板61および第二保持板62には、シャフト32を回転自在に保持するための軸受63が設けられている。ここで軸受63としてボールベアリングを用いているが、転がり軸受に限らず、すべり軸受けでもよい。さらにシャフト32には、第一保持板61と回転羽根31との間において軸歯車41が嵌挿される。また、ホルダー6には固定具65を適宜設け、作業台等に固設できるようにする(図16参照)。
【0043】
以下、角材回転装置1の回転方法について説明する。
【0044】
まず角材2を角材回転装置1に載置する。具体的には、回転羽根31aおよび回転羽根31cの谷部と、回転羽根31bの山部の三点(一つのシャフト32に二つの回転羽根31が設けられることを考慮すれば六点)において角材2は支持される。
【0045】
次にモーター5を稼働させ回転体3bを回転させる。回転体3bの回転は、伝達機構4によって回転体3bおよび回転体3cに伝えられ、それぞれ同一方向かつ同一速度によって回転する。
【0046】
角材2は、同一速度で同一方向に回転する三組の回転羽根31a〜31cの山部または谷部から谷部または山部へと順次当接し、これらと同期して逆回転する。角材回転装置1は角材2に回転力を付与するものであり、この回転は、回転羽根31a〜31cの谷部が、これに当接する角材2の角部を押動することの連続によって行われる。この際、回転羽根31a〜31cの輪郭形状は、角材2の回転外径の変化を所定の定点から観測し、角材2の側面と定点との距離を角材2の回転角に対応した回転変位として表したものであるから、回転中の角材2は回転羽根31a〜31cのいずれとも常に接し、これらに支持されることとなる。
【0047】
参考使用例として図16を示す。角材回転装置1は固定具65を用いて作業台300に据え付けられ、角材2はこれに載置される。角材2の一端にて管材移動装置100(特許出願2009−195674を参照)により支持され、他端にて加工装置200を用いて角材2を回転させつつ、作業することができる。
【0048】
以下、角材回転装置1による効果について説明する。
【0049】
角材回転装置1によって、従来のように円外形のアタッチメントを使用せずとも、角材を中心軸まわりに回転させることができる。この回転は連続的に可能であり、回転軸は一定である。
【0050】
回転体3a、回転体3cに加え、回転体3bを設けることによって、常に角材2を三点で支持しつつ回転させることとなる。また、上記のような回転体3の配置により、回転羽根31aおよび回転羽根31cと、回転羽根31bは、その山部または谷部が交互に角材2に当接してより安定した回転を得ることができる。
【0051】
なお、図9〜図16はすべて本発明の一実施例のものであり、上記に説明した詳細は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、上記構成には本発明の必須要件ではないものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、角材の中心軸まわりの回転が必要な作業において利用可能である。特に連続的な回転を要する場合に有効である。扱う角材としては、角形鋼管柱や木製角材などが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…角材回転装置 2…角材 3…回転体
31…回転羽根 32…シャフト 4…伝達機構
41…軸歯車 5…モーター 6…ホルダー
61…第一保持板 62…第二保持板 63…軸受
64…フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体の回転軸が互いに平行であって回転自在に軸支された第一回転体と第二回転体に、前記回転軸と角材の中心軸を平行にして、前記山部または前記谷部に前記角材の側面を当接して、前記角材を載置する第一ステップと、
前記第一回転体と前記第二回転体とが同一方向に同一速度で回転する一方、前記角材は、前記第一回転体および前記第二回転体との当接部分が各々の前記山部または前記谷部から各々の前記谷部または前記山部に順次遷移することの連続によって、前記第一回転体および前記第二回転体と同期して逆回転する第二ステップとからなることを特徴とする角材回転方法。
【請求項2】
複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体と、
前記回転軸を回転自在に軸支する軸受けとを備え、
該回転体は、互いに前記回転軸が平行かつ水平な二つ以上が設けられ、
角材は前記回転支持部に載置され、前記回転体の回転と同期して逆回転することを特徴とする角材回転装置。
【請求項1】
複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体の回転軸が互いに平行であって回転自在に軸支された第一回転体と第二回転体に、前記回転軸と角材の中心軸を平行にして、前記山部または前記谷部に前記角材の側面を当接して、前記角材を載置する第一ステップと、
前記第一回転体と前記第二回転体とが同一方向に同一速度で回転する一方、前記角材は、前記第一回転体および前記第二回転体との当接部分が各々の前記山部または前記谷部から各々の前記谷部または前記山部に順次遷移することの連続によって、前記第一回転体および前記第二回転体と同期して逆回転する第二ステップとからなることを特徴とする角材回転方法。
【請求項2】
複数の山部と谷部とが交互する輪郭形状を有する回転支持部および前記輪郭形状の中心を貫く回転軸からなる回転体と、
前記回転軸を回転自在に軸支する軸受けとを備え、
該回転体は、互いに前記回転軸が平行かつ水平な二つ以上が設けられ、
角材は前記回転支持部に載置され、前記回転体の回転と同期して逆回転することを特徴とする角材回転装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−93620(P2011−93620A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246335(P2009−246335)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(396011521)大都技研株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(396011521)大都技研株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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