説明

角速度センサ装置およびその製造方法

【課題】別部品を用意することなく、検出精度が低下することを抑制することができる角速度センサ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】隣接するリード30がケース21から突出している部分において固定タイバー31によって連結されているものを備えるケース21を用意し、ケース21に接合部材40を介してセンサ部10を搭載する。その後、固定タイバー31の一部をリード30に残しつつカットしてリード30を分離することにより、センサ部10をリード30のうちケース21から突出する部分および固定タイバー31の残部にて構成されるリード部32の共振周波数に対する振動を吸収する動吸振器として作用させるカット工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度の検出を行うセンサ部を複数のリードを備えるケースに弾性を有する接合部材を介して搭載してなる角速度センサ装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、角速度を検出するセンサ部をケースに接合部材を介して搭載してなる角速度センサ装置が開示されている。
【0003】
具体的には、このような角速度センサ装置では、ケースは、中空部および底部を有する有底筒状部材を用いて構成され、複数のリードが一体成型されて備えられている。各リードは、細長板状とされており、一端部が中空部内に露出していると共に他端部がケースの外部に突出している。また、ケースの底部にはセンサ部が接合部材を介して搭載されており、リードのうち中空部内に露出している一端部とボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。なお、接合部材は、弾性を有するエラストマ等で構成され、防振部材として機能させることによって外部からの衝撃に対して検出精度が低下することを抑制できるものが用いられる。
【0004】
このような角速度センサ装置は、次のように製造される。すなわち、まず、リードを備えるケースを用意する。具体的には、成形時や搬送時等にリードが変形することを抑制できるように、隣接するリードのうちケースから突出している部分が固定タイバーによって連結されているものを用意する。そして、センサ部をケースの底部に接合部材を介して搭載した後、リードとセンサ部とをワイヤボンディング等して電気的に接続する。その後、固定タイバーをカットして各リードを分離等することにより、上記角速度センサ装置が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−181392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような角速度センサ装置は、リードのうちケースの外部に突出している部分が共振周波数を有するため、外部からこの共振周波数と同じ周波数のノイズ等が印加されるとリードが振動する。そして、この振動に伴ってケースが振動してセンサ部も振動するため、検出精度が低下する。
【0007】
この問題を解決するため、角速度センサ装置に別部品を搭載し、別部品の質量等を調整することによってリードのうちケースの外部に突出している部分の振動を小さくすることが考えられるが、この方法では別部品を用意する工程等が必要となり、製造工程が増加してしまう。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、別部品を用意することなく、検出精度が低下することを抑制することができる角速度センサ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、角速度に応じた電気信号を出力するセンサ部(10)と、中空部(21a)にセンサ部(10)を搭載するケース(21)と、ケース(21)とセンサ部(10)との間に配置される弾性を有する接合部材(40)と、ケース(21)の中空部(21a)内に露出すると共にケース(21)の外部に突出する状態でケース(21)に備えられ、センサ部(10)と電気的に接続される複数のリード(30)と、を備える角速度センサ装置の製造方法において、以下の点を特徴としている。
【0010】
すなわち、隣接するリード(30)がケース(21)から突出している部分において固定タイバー(31)によって連結されているものを備えるケース(21)を用意する工程と、ケース(21)に接合部材(40)を介してセンサ部(10)を搭載する工程と、固定タイバー(31)の一部をリード(30)に残しつつカットしてリード(30)を分離することにより、センサ部(10)をリード(30)のうちケース(21)から突出する部分および固定タイバー(31)の残部にて構成されるリード部(32)の共振周波数に対する振動を吸収する動吸振器として作用させるカット工程と、を行うことを特徴としている。
【0011】
このような角速度センサ装置の製造方法では、従来の製造方法と同様のケースを用意し、
固定タイバー(31)の一部をリード(30)に残しつつカットすることにより、センサ部(10)をリード部(32)の動吸振器として作用するようにしている。つまり、新たな別部品を用意することなく、検出精度が低下すること抑制することができる角速度センサ装置を得ることができる。
【0012】
ここで、リード部(32)の動吸振器としてセンサ部(10)を作用させ、リード部(32)の振動を小さくしつつセンサ部(10)の振動も小さくするためには、定点理論の最適条件より、{センサ部(10)の質量/ケース(21)の質量}をμ、接合部材(40)のバネ定数をkとしたとき、リード部(32)のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づければよい。
【0013】
このため、請求項2に記載の発明では、カット工程の前に、センサ部(10)および接合部材(40)で構成されるユニット(50)の共振周波数を測定し、当該共振周波数から接合部材(40)のバネ定数を演算する工程を行い、カット工程では、{センサ部(10)の質量/ケース(21)の質量}をμ、接合部材(40)のバネ定数をkとしたとき、リード(30)に残す固定タイバー(31)を調整することにより、リード部(32)のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけることを特徴としている。
【0014】
これによれば、動吸振器の定点理論により、リード部(32)の振動を小さくしつつ、センサ部(10)の振動も小さくすることができる角速度センサ装置が得られる。また、カット工程では、リード(30)に残す固定タイバー(31)を調整すればよいため、新たな工程を追加する必要もない。なお、接合部材(40)のバネ定数は、ユニット(50)の共振周波数をf、センサ部(10)の質量をMとすると、f=1/2π(k/M)1/2であるため、ユニット(50)の共振周波数から容易に演算される。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、ケース(21)を用意する工程では、固定タイバー(31)として、少なくとも一部がリード(30)に残される調整用タイバー(31a)と、隣接する調整用タイバー(31a)の間に配置されて当該隣接する調整用タイバー(31a)を連結する連結用タイバー(31b)とを有するものを用意し、カット工程では、連結用タイバー(31b)をカットして隣接するリード(30)を分離する工程と、調整用タイバー(31a)の一部を残しつつカットしてリード部(32)のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づける工程と、を行うことができる。
【0016】
この場合、請求項4に記載の発明のように、カット工程では、調整用タイバー(31a)をカットする工程と、連結用タイバー(31b)をカットする工程とを同時に行うことができる。このように、調整用タイバー(31a)と連結用タイバー(31b)とを同時にカットすることにより、製造工程を簡略化することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、カット工程では、リード部(32)のうちケース(21)の外部に突出しているリード(30)におけるケース(21)側と反対側の部分に構成される被実装部材に実装される領域となる実装部(33)を除いた部分のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけることが好ましい。
【0018】
このように、角速度センサ装置が被実装部材に実装された際に実装部(33)はリード部(32)のバネ定数に影響しないため、リード部(32)のうち実装部(33)を除いた部分のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけることにより、さらにセンサ部(10)の振動を小さくすることが可能な角速度センサ装置が得られる。
【0019】
そして、請求項6に記載の発明のように、ユニット(50)の共振周波数を測定する工程では、ケース(21)を固定した状態でユニット(50)を加振して測定することができる。これによれば、ケース(21)を固定した状態でユニット(50)を加振するため、ユニット(50)のみの共振周波数を測定することができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、角速度に応じた電気信号を出力するセンサ部(10)と、中空部(21a)にセンサ部(10)を搭載するケース(21)と、ケース(21)とセンサ部(10)との間に配置される弾性を有する接合部材(40)と、ケース(21)の中空部(21a)内に露出すると共にケース(21)の外部に突出する状態でケース(21)に備えられ、センサ部(10)と電気的に接続される複数のリード(30)と、を備える角速度センサ装置において、以下の点を特徴としている。
【0021】
すなわち、リード(30)は、ケース(21)から突出している部分に隣接するリード(30)を連結していた固定タイバー(31)がカットされた際に残された当該固定タイバー(31)の残部を備えていると共に、ケース(21)から突出している部分におけるケース(21)側と反対側の部分に構成される被実装部材に実装される領域となる実装部(33)を有し、リード(30)のうちケース(21)から突出する部分および当該リード(30)に備えられる固定タイバー(31)の残部で構成されるリード部(32)のうち実装部(33)を除く部分のバネ定数が{k×(1+μ)}/μで得られる値と一致していることを特徴としている。
【0022】
このような角速度センサ装置によれば、動吸振器としての定点理論により、リード部(32)の振動を小さくしつつ、センサ部(10)の振動も小さくすることができ、検出精度が低下することを抑制することができる。
【0023】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態における角速度センサ装置の部分断面図である。
【図2】図1に示す角速度センサ装置の平面図である。
【図3】図1に示すセンサ部の断面図である。
【図4】図1に示すケースの平面図である。
【図5】図2中の領域Bの拡大図である。
【図6】図1に示す角速度センサ装置の製造工程を示す平面図である。
【図7】図6(a)中の領域Cの拡大図である。
【図8】図6(c)中の領域Dの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態における角速度センサ装置の部分断面図、図2は図1に示す角速度センサ装置の平面図である。なお、図1では、パッケージ等を断面図として示しており、図2では上蓋を省略して示してある。
【0026】
図1および図2に示されるように、本実施形態の角速度センサ装置は、センサ部10と、センサ部10を収容するパッケージ20と、センサ部10と電気的に接続されるリード30とを備えて構成されている。
【0027】
まず、センサ部10の構成について説明する。図3はセンサ部10の断面図である。図3に示されるように、センサ部10は、センサチップ11および信号処理チップ12と、これらセンサチップ11および信号処理チップ12を収容するケーシング13と、ケーシング13を閉塞するリッド14とを有する構成とされている。
【0028】
センサチップ11は、例えば、シリコン基板等に櫛歯構造を有する梁構造体が形成され、印加された角速度に応じて可動電極と固定電極との間の静電容量が変化する一般的な半導体チップが用いられる。
【0029】
信号処理チップ12は、センサチップ11で検出された静電容量の変化を電気信号として処理したり、センサチップ11に印加する電圧を調整したりするものであり、例えば、シリコン基板やセラミックス基板を用いて構成されている。
【0030】
そして、これらセンサチップ11および信号処理チップ12は、ケーシング13内に収容されている。具体的には、ケーシング13は、底面および開口部を有する箱形状とされており、信号処理チップ12がケーシング13の底面に接着剤15を介して接合され、センサチップ11が信号処理チップ12に接着剤16を介して接合されている。すなわち、ケーシング13には信号処理チップ12とセンサチップ11とが順に積層されて搭載されている。そして、ケーシング13の開口部はリッド14により閉塞されている。
【0031】
なお、ケーシング13と信号処理チップ12、信号処理チップ12とセンサチップ11とを接合する接着剤15、16としては、例えば、熱応力を緩和することができる弾性を有するシリコーン系接着剤等が用いられる。また、ケーシング13は、例えば、セラミックスや樹脂等で構成され、リッド14は、例えば、磁性材料であるコバール等で構成されている。
【0032】
そして、センサチップ11と信号処理チップ12とは、図示しないボンディングワイヤ等を介して電気的に接続されている。なお、本実施形態では、センサチップ11および信号処理チップ12が別々の基板にそれぞれ形成されている例について説明するが、センサチップ11および信号処理チップ12は同一基板上に一体に形成されていてもよい。
【0033】
また、センサ部10は、図2に示されるように、ケーシング13の外側であって、リッド14が配置される開口部側と反対側に複数のパッド17を有している。言い換えると、センサ部10は、ケーシング13のうち信号処理チップ12等を搭載する一面(底面)と反対側の一面に複数のパッド17を有している。これら複数のパッド17は、それぞれケーシング13内に埋め込まれた導体等を介して信号処理チップ12と電気的に接続されている。なお、ケーシング13内の導体と信号処理チップ12とは、図3に示されるように、ボンディングワイヤ18を介して電気的に接続されている。
【0034】
以上説明したセンサ部10は、図1および図2に示されるように、パッケージ20に収容されている。パッケージ20は、中空部21aおよび底部22を有する有底筒状のケース21と、ケース21のうち底部22と反対側の開口部に備えられる上蓋23と、ケース21のうち開口部と反対側に備えられる下蓋24とを有する構成とされている。図4はケース21の平面図である。なお、図1に示すケース21は図4中のA−A断面に相当している。
【0035】
図1および図4に示されるように、ケース21は、本実施形態では、中空部21aおよび底部22を有する有底筒状とされている。底部22は、外形が矩形状とされた一面22aおよび他面22bを有しており、略十字形状の貫通孔22cが厚み方向に貫通するように形成されている。このようなケース21は、例えば、液晶ポリマー等の樹脂を一体成型することにより製造される。
【0036】
そして、底部22の一面22aのうち貫通孔22cと対応する位置にセンサ部10が搭載されている。具体的には、底部22の一面22aには、厚み方向にわずかに窪んだ凹部22dが四箇所離間して形成されており、この凹部22dにそれぞれ弾性を有するエラストマ等で構成される接合部材40が塗布されている。そして、センサ部10は、図1および図2に示されるように、リッド14が一面22aと対向する状態で接合部材40を介して一面22aに搭載されている。
【0037】
なお、凹部22dは底部22の平面方向に接合部材40が流出することを抑制する機能を果すものである。また、貫通孔22cは、後述するが、センサ部10を底部22に搭載する際等に治具が挿入される部分である。
【0038】
また、ケース21には、図1および図2に示されるように、複数のリード30が備えられている。具体的には、各リード30は、細長板状とされており、一端部が中空部21a内に露出すると共に他端部がケース21の外部に突出するように備えられている。そして、リード30のうちケース21の外部に突出している部分には、製造工程時に隣接するリード30を連結する固定タイバーの残部が備えられている。図5は、図2中の領域Bの拡大図である。
【0039】
図5に示されるように、各リード30には、ケース21の外部に突出している部分の側面に固定タイバーを構成する調整用タイバー31aが備えられている。このため、リード30のうちケース21の外部に突出している部分および調整用タイバー31aで構成されるリード部32は、リード30に調整用タイバー31aが備えられている部分では、リード30の延びる方向(図5中紙面左右方向)と垂直であり、リード30の板面と平行な方向(図5中紙面上下方向)の長さ(以下、単に幅という)がリード30より長くされている。
【0040】
この調整用タイバー31aは、具体的には後述するが、製造工程時に後述の連結用タイバーと共に固定タイバーを構成するものであり、固定タイバーの一部である。そして、リード30の長手方向と平行な方向の長さ(図5中の紙面左右方向の長さ)が適宜変更可能とされ、製造工程時にこの長さが調整されるようになっている。言い換えると、リード部32は、幅が長くなる部分がリード30の長手方向に適宜変更可能とされている。そして、リード部32は、リード30の長手方向と平行な方向の長さが適宜変更された調整用タイバー31aによって、バネ定数が所定の値とされている。
【0041】
また、リード部32は、図1、図2、図5に示されるように、ケース21の外部に突出している部分のうちケース21側と反対側の先端部にプリント基板等の被実装部材に実装される領域となる実装部33を有している。この実装部33は、はんだ等を介して被実装部材に実装される領域であり、被実装部材に実装された後はリード部32のバネ定数に影響しなくなる。
【0042】
このため、本実施形態では、リード部32のうち実装部33を除く部分のバネ定数が以下のように調整されている。すなわち、動吸振器の定点理論により、{センサ部10の質量/ケース21の質量}をμ、接合部材40のバネ定数をkとしたとき、リード部32のうち実装部33を除く部分のバネ定数が{k×(1+μ)}/μで得られる値と一致するように調整されている。このように、リード部32のうち実装部33を除く部分のバネ定数を調整することにより、外部からリード部32の共振周波数と同じ周波数のノイズ等が印加されたとしてもリード部32の振動を小さくしつつ、センサ部10の振動も小さくすることができる。
【0043】
なお、リード部32のうち実装部33を除く部分のバネ定数が一致するとは、完全に一致する場合を含めて±20%程度の誤差を含むものであり、例えば、20%程度の誤差がある場合にはセンサ部10の振幅が5%程度大きくなる。また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、センサ部10およびケース21は、μ=1/3程度となるようにされている。
【0044】
そして、図1および図2に示されるように、リード30のうちケース21の中空部21a内に露出している一端部は、ボンディングワイヤ60を介してセンサ部10のパッド17とそれぞれ電気的に接続されている。リード30とボンディングワイヤ60との接続部位およびパッド17とボンディングワイヤ60との接続部位はゲル61、62により被覆されている。
【0045】
また、図1に示されるように、ケース21には、底部22側と反対側の開口部に上蓋23が備えられており、当該開口部と反対側には貫通孔22cを覆う下蓋24が備えられている。
【0046】
具体的には、ケース21には、底部22側と反対側の開口部側の端部に環状の溝部25が設けられていると共に開口部と反対側の端部に溝部25と同様の環状の溝部26が設けられている。そして、溝部25に接着剤27が充填されると共に上蓋23の端部が湾曲された状態で溝部25に挿し込まれてケース21と上蓋23とが接合され、溝部26に接着剤27が充填されると共に下蓋24の端部が湾曲された状態で差し込まれてケース21と下蓋24とが接合されている。これにより、ケース21、上蓋23、下蓋24が一体化されてパッケージ20が構成されている。なお、上蓋23および下蓋24は、本実施形態ではステンレス等の金属を用いて構成されているが、例えば、樹脂等を用いて構成されていてもよい。以上が本実施形態における角速度センサ装置の構造である。
【0047】
次に、上記角速度センサ装置の製造方法について説明する。図6は、図1に示す角速度センサ装置の製造工程を示す平面図である。
【0048】
図6(a)に示されるように、まず、隣接するリード30のうちケース21から突出している部分が固定タイバー31によって連結されているものを備える上記構成のケース21を用意する。つまり、従来の角速度センサ装置の製造方法と同様のケースを用意する。図7は、図6(a)中の領域Cの拡大図である。図7に示されるように、隣接するリード30は、固定タイバー31によって連結されており、この固定タイバー31はリード30の側面に備えられている調整用タイバー31aと、隣接するリード30に備えられた各調整用タイバー31aの間に配置されてこれら調整用タイバー31aを連結する連結用タイバー31bとを有している。
【0049】
続いて、図6(b)に示されるように、上記構造のセンサ部10を用意し、ケース21の底部22における一面22aのうち各凹部22dに接合部材40を塗布する。このとき、接合部材40は凹部22dにより底部22の平面方向に流出することが抑制される。その後、センサ部10を搭載する側と反対側から搭載する側に、つまり底部22の他面22b側から一面22a側に貫通孔22cを介して治具を挿入し、センサ部10を治具に固定した状態で底部22の一面22aに接合部材40を介してセンサ部10を搭載する。例えば、センサ部10を治具に固定する方法としては、本実施形態では、上記のようにリッド14を磁性材料で構成しているため、治具を磁性材料にて構成し、リッド14と治具との間に磁力を発生させて固定する方法が挙げられる。
【0050】
続いて、治具によりセンサ部10を固定した状態でセンサ部10とリード30とをワイヤボンディングして電気的に接続する。センサ部10を治具に固定した状態でワイヤボンディングを行わないと、センサ部10が弾性を有する接合部材40を介して底部22の一面22aに搭載されているためにセンサ部10がぐらついてしまい、センサ部10とリード30とのワイヤボンディングが困難になるためである。次に、ボンディングワイヤ60とリード30との接続部位およびボンディングワイヤ60とパッド17との接続部位をゲル61、62で被覆する。
【0051】
次に、ケース21を固定した状態でユニット50を加振し、レーザドップラー等の手法によってユニット50の共振周波数を測定する。このように、ケース21を固定した状態でユニット50を加振することにより、ユニット50のみの共振周波数を測定することができる。そして、測定したユニット50の共振周波数より、接合部材40のバネ定数kを演算する。例えば、ユニット50の共振周波数をf、センサ部10の質量をMとすると、f=1/2π(k/M)1/2であるため、ユニット50の共振周波数から接合部材40のバネ定数kを演算することができる。
【0052】
続いて、図6(c)に示されるように、固定タイバー31をカットダイによってカットする。図8は、図6(c)中の領域Dの拡大図である。
【0053】
図8に示されるように、具体的には、連結用タイバー31bをカットダイによってカットし隣接するリード30を分離する。また、リード30のうちケース21の外部に突出している部分および調整用タイバー31aで構成されるリード部32のバネ定数が{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づくように、調整用タイバー31aのうちケース21側と反対側の部分から不要な部分をカットダイによってカットする。この場合、リード部32のうち実装部33となる領域を除く部分のバネ定数が{k×(1+μ)}/μで得られる値と一致するように、調整用タイバー31aにおけるリード部32の長手方向と平行な方向の長さを調整することが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態では、調整用タイバー31aおよび連結用タイバー31bをカットする工程を同時に行っている。また、リード部32は、調整用タイバー31aにおけるリード30の長手方向と平行な方向の長さが長くなるにつれて、つまり、幅が長くなる部分がリード30の長手方向と平行な方向に長くなるにつれてバネ定数が大きくなる。言い換えると、リード部32は、調整用タイバー31aにおけるリード30の長手方向と平行な方向の長さが短くなるにつれて、つまり、幅が長くなる部分がリード30の長手方向と平行な方向に短くなるにつれてバネ定数が小さくなる。
【0055】
次に、図6(d)に示されるように、各リード30のフォーミングを行ってケース21の外部に突出している部分のうちケース21側と反対側に実装部33を構成する。その後、特に図示しないが、ケース21の溝部25に接着剤27を充填すると共に上蓋23の端部を溝部25に差し込んでケース21と上蓋23を接合し、ケース21の溝部26に接着剤27を充填すると共に下蓋24の端部を溝部26に差し込んでケース21と下蓋24とを接合することにより、上記角速度センサ装置が接合される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、隣接するリード30が固定タイバー31によって連結されている従来と同様のケースを用意し、固定タイバー31の一部をリード30に残しつつカットしてリード30を分離することにより、センサ部10がリード部32の動吸振器として作用するようにしている。このため、新たな別部品を用意することなく、検出精度が低下すること抑制することができる角速度センサ装置を得ることができる。
【0057】
なお、センサ部10を動吸振器として作用させることにより、センサ部10自体が振動することになるが、従来の角速度センサ装置のようにリード部が振動してケースおよびセンサ部が振動する場合と比較して、センサ部10の振動は小さくなる。
【0058】
また、本実施形態では、リード部32のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけるように固定タイバー31(調整用タイバー31a)の一部をリード30に残しつつカットしている。このため、動吸振器の定点理論により、リード部32の振動を小さくしつつ、動吸振器としてのセンサ部10の振動も小さくすることができ、検出精度が低下することを抑制することができる。
【0059】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、調整用タイバー31aと連結用タイバー31bとを同時にカットする工程について説明したが、調整用タイバー31aと連結用タイバー31bのカットを別工程で行ってもよい。例えば、連結用タイバー31bを先にカットし、続いて調整用タイバー31aをカットしてリード部32のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけるようにしてもよい。
【0060】
また、上記第1実施形態では、調整用タイバー31aのうちケース21側と反対側の部分から不要な部分をカットダイによってカットすることによってリード部32のバネ定数を調整する例について説明したが、調整用タイバー31aのうちケース21側から不要な部分をカットダイによってカットすることによってリード部32のバネ定数を調整するようにしてもよい。
【0061】
さらに、上記第1実施形態における図6(c)のカット工程の後、センサ部10の振動の仕方に応じて調整用タイバー31aをさらにカットするようにしてもよい。すなわち、上記のように、センサ部10はケース21の底部22に形成された凹部22dに配置された接合部材40を介して搭載されるが、各凹部22dに配置される接合部材40の塗布量がばらついたり、接合部材40が凹部22d外にはみ出してしまうことがある。この場合、センサ部10の振動状態がケース21の底部22における一面22aの法線方向に対して傾き、この法線方向に対して斜めに振動してしまうことがある。このため、調整用タイバー31aをさらにカットして左右非対称にし、センサ部10の斜め振動を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 センサ部
20 パッケージ
21 ケース
30 リード
31 固定タイバー
31a 調整用タイバー
31b 連結用タイバー
32 リード部
33 実装部
40 接合部材
50 ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度に応じた電気信号を出力するセンサ部(10)と、
中空部(21a)に前記センサ部(10)を搭載するケース(21)と、
前記ケース(21)と前記センサ部(10)との間に配置される弾性を有する接合部材(40)と、
前記中空部(21a)内に露出すると共に前記ケース(21)の外部に突出する状態で前記ケース(21)に備えられ、前記センサ部(10)と電気的に接続される複数のリード(30)と、を備える角速度センサ装置の製造方法において、
隣接する前記リード(30)が前記ケース(21)から突出している部分において固定タイバー(31)によって連結されているものを備える前記ケース(21)を用意する工程と、
前記ケース(21)に前記接合部材(40)を介して前記センサ部(10)を搭載する工程と、
前記固定タイバー(31)の一部を前記リード(30)に残しつつカットして前記リード(30)を分離することにより、前記センサ部(10)を前記リード(30)のうち前記ケース(21)から突出する部分および前記固定タイバー(31)の残部にて構成されるリード部(32)の共振周波数に対する振動を吸収する動吸振器として作用させるカット工程と、を行うことを特徴とする角速度センサ装置の製造方法。
【請求項2】
前記カット工程の前に、前記センサ部(10)および前記接合部材(40)で構成されるユニット(50)の共振周波数を測定し、当該共振周波数から前記接合部材(40)のバネ定数を演算する工程を行い、
前記カット工程では、{前記センサ部(10)の質量/前記ケース(21)の質量}をμ、前記接合部材(40)のバネ定数をkとしたとき、前記リード(30)に残す前記固定タイバー(31)を調整することにより、前記リード部(32)のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけることを特徴とする請求項1に記載の角速度センサ装置の製造方法。
【請求項3】
前記ケース(21)を用意する工程では、前記固定タイバー(31)として、少なくとも一部が前記リード(30)に残される調整用タイバー(31a)と、隣接する前記調整用タイバー(31a)の間に配置されて当該隣接する前記調整用タイバー(31a)を連結する連結用タイバー(31b)と、を有するものを用意し、
前記カット工程では、前記連結用タイバー(31b)をカットして隣接する前記リード(30)を分離する工程と、前記調整用タイバー(31a)の一部を残しつつカットして前記リード部(32)のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づける工程と、行うことを特徴とする請求項2に記載の角速度センサ装置の製造方法。
【請求項4】
前記カット工程では、前記調整用タイバー(31a)をカットする工程と、前記連結用タイバー(31b)をカットする工程と、を同時に行うことを特徴とする請求項3に記載の角速度センサ装置の製造方法。
【請求項5】
前記カット工程では、前記リード部(32)のうち前記ケース(21)の外部に突出している前記リード(30)における前記ケース(21)側と反対側の部分に構成される被実装部材に実装される領域となる実装部(33)を除いた部分のバネ定数を{k×(1+μ)}/μで得られる値に近づけることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の角速度センサ装置の製造方法。
【請求項6】
前記ユニット(50)の共振周波数を測定する工程では、前記ケース(21)を固定した状態で前記ユニット(50)を加振して測定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の角速度センサ装置の製造方法。
【請求項7】
角速度に応じた電気信号を出力するセンサ部(10)と、
中空部(21a)に前記センサ部(10)を搭載するケース(21)と、
前記ケース(21)と前記センサ部(10)との間に配置される弾性を有する接合部材(40)と、
前記中空部(21a)内に露出すると共に前記ケース(21)の外部に突出する状態で前記ケース(21)に備えられ、前記センサ部(10)と電気的に接続される複数のリード(30)と、を備える角速度センサ装置において、
前記リード(30)は、前記ケース(21)から突出している部分に隣接する前記リード(30)を連結していた固定タイバー(31)がカットされた際に残された当該固定タイバー(31)の残部を備えていると共に、前記ケース(21)から突出している部分における前記ケース(21)側と反対側の部分に構成される被実装部材に実装される領域となる実装部(33)を有し、
前記リード(30)のうち前記ケース(21)から突出する部分および当該リード(30)に備えられる前記残部で構成されるリード部(32)のうち前記実装部(33)を除く部分のバネ定数が{k×(1+μ)}/μで得られる値と一致していることを特徴とすることを特徴とする角速度センサ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−64662(P2013−64662A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203968(P2011−203968)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】