角速度センサ装置
【課題】本発明は、振動型のセンサ素子を用いた角速度センサ装置に関し、検出精度の向上を目的とする。
【解決手段】本発明はセンサ素子1とこれを制御する制御IC2とからなる角速度センサ装置において、センサ素子1に設けられる駆動手段5および検出手段6を電極で圧電体層7を挟み込んだ積層体で形成するとともに、一方の電極を駆動回路11或いは検出回路12に接続して他方の電極を制御IC2にて形成される基準電圧Vrefに接続した構成において、他方の電極から基準電圧Vrefに至る接続経路17に対する断線検知手段16を設けた構成とした。
【解決手段】本発明はセンサ素子1とこれを制御する制御IC2とからなる角速度センサ装置において、センサ素子1に設けられる駆動手段5および検出手段6を電極で圧電体層7を挟み込んだ積層体で形成するとともに、一方の電極を駆動回路11或いは検出回路12に接続して他方の電極を制御IC2にて形成される基準電圧Vrefに接続した構成において、他方の電極から基準電圧Vrefに至る接続経路17に対する断線検知手段16を設けた構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型のセンサ素子を用いた角速度センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に角速度センサ装置は図1に示すように、角速度の印加により生じるコリオリ力を電気信号に変換し出力する振動型のセンサ素子1と、このセンサ素子1を基本振動させるとともにセンサ素子1から出力された検出信号から角速度信号を形成する制御IC2とをパッケージ3の内部に収容しリッド4で封口した構造となっている。
【0003】
また、センサ素子1は図2に示すように、センサ素子1を基本振動させる駆動手段5やコリオリ力を電気信号に変換する検出手段6を有しており、これら駆動手段5や検出手段6は図3に示すようにPZTからなる圧電体層7を電極8,9で挟み込んだ積層体により構成され、駆動手段5であれば上側の電極8に対して制御IC2から駆動信号が印加され、下側の電極9は制御IC2から駆動信号が印加されるか制御IC2にて形成される基準電圧に接続される。検出手段6であれば下側の電極9が基準電圧に接続され、上側の電極8から制御IC2に検出信号が出力される。
【0004】
そして、このような角速度センサ装置における故障検知は、従来、駆動信号や検出信号といった上側の電極8に起因する信号を検出し判定していた。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−193459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの故障検知を行う中で、故障でないとする診断結果の下で検出信号が不安定となる現象が生じ、結果として角速度センサ装置としての検出精度が劣化してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、角速度センサ装置の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明は、センサ素子とこれを制御する制御ICとからなる角速度センサ装置において、センサ素子に設けられる検出手段は圧電体層を電極で挟み込んだ積層体で形成するとともに、一方の電極を検出回路に接続し、他方の電極を基準電圧に接続した構成において、他方の電極から基準電圧に至る接続経路に断線検知手段を設けた構成とした。
【発明の効果】
【0010】
この構成により本発明は、角速度センサ装置の検出精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における角速度センサ装置を示す分解斜視図
【図2】同角速度センサ装置を構成するセンサ素子を示す上面図
【図3】同センサ素子に設けられた電極の断面図
【図4】同角速度センサ装置のシステム構成を示すブロック図
【図5】同角速度センサ装置の検出信号を示す出力波形図
【図6】本発明の実施の形態2における角速度センサ装置の回路ブロック図
【図7】同駆動回路のリミッター手段の回路図
【図8】同角速度センサ装置の動作状態を示す出力波形図
【図9】本発明の実施の形態2におけるなお書き記載の回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1に記載の発明について説明する。なお、上述した従来の技術と同様の構成については同じ符号を付して説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態1の角速度センサ装置を示したものであり、その基本構造は振動型の角速度センサ素子1と、この角速度センサ素子1を制御する制御IC2とをセラミックからなるパッケージ3の内部に配置しリッド4で封止した構造としている。
【0014】
センサ素子1は図2に示すように、シリコンからなる一対の駆動アーム10を有する音叉型基板に駆動アーム10を基本振動させる駆動手段5と、基本振動の振幅量を監視するモニタ手段5aと角速度の印加に伴うコリオリ力による駆動アーム10の撓み成分を検出する検出手段6を有している。また、センサ素子1に設けられた駆動手段5やモニタ手段5aや検出手段6は、それぞれ図3に示すようにAuからなる上側の電極8とPtからなる下側の電極9と、これらの間に配置されたPZTからなる圧電体層7により形成された積層体である。
【0015】
制御IC2は図4に示す如く駆動回路11と検出回路12から構成され、駆動回路11はセンサ素子1における基本振動が一定の振幅となるよう駆動手段5に印加する駆動信号13を形成する部分であり、特に図示はしていないがAGCや増幅器により構成されている。検出回路12はセンサ素子1の検出手段6から出力される検出信号14からノイズ成分などの不要成分を除去し角速度信号15を形成する部分であり、特に図示していないが検波回路やフィルタ回路により構成されている。
【0016】
ここで、駆動アーム10を基本振動させる場合は駆動手段の下側の電極9を図4に示すように制御IC2で形成する基準電圧Vrefに接続した状態で上側の電極8に駆動回路11からの駆動信号13を印加することで、駆動信号13の電圧が基準電圧Vrefより大きい場合、圧電体層7に積層方向における圧縮力が働き駆動手段5が駆動アーム10の延伸方向に伸び、駆動信号13の電圧が基準電圧Vrefより小さい場合、圧電体層7に積層方向における引張力が働き駆動手段5が駆動アーム10の延伸方向に縮むもので、この駆動手段5の伸縮を制御することで駆動アーム10を図2におけるY軸方向に一定の振幅で基本振動させることができる。
【0017】
また、角速度の検出にあたっては、図2におけるZ軸方向に働くコリオリ力に伴う駆動アーム10の撓み成分により圧電体層7に伸びが生じた場合、上側の電極8に基準電圧Vrefより大きい電圧V1が形成され、また圧電体層7に縮みが生じた場合、上側の電極8に基準電圧Vrefより小さい電圧V2が形成され、図4に示す検出信号14としては基準電圧Vrefを中心とした正弦波が検出回路12に出力される。
【0018】
そして、この角速度センサ装置においては角速度センサの故障検知として、駆動信号13や検出信号14といった上側の電極8に対する入出力信号を用いた従来の故障検知に加え、制御IC2の基準電圧Vrefに対する下側の電極9の接続状態を検出する断線検知手段16を付加したのである。
【0019】
すなわち、下側の電極9は上述したように制御IC2の基準電圧Vrefに接続されて上側の電極8に電圧の比較基準を形成するものであるが、この下側の電極9が接続不良により基準電圧Vrefと非接続となった場合、この下側の電極9は単なる浮き電極となってしまい周囲の電圧環境に影響されてしまうことになるがその電圧変化が小さく従来の上側の電極8に入出力する信号(駆動信号13や検出信号14)を用いた故障検知では検出できなかった。しかし、この下側の電極9と制御IC2の基本電圧との接続状態を判別する断線検知手段16を設けることで、下側の電極9の断線故障を検出して故障モードの一つとして判別することができ、角速度センサ装置の検出精度が向上できるのである。
【0020】
なお、制御IC2の基準電圧Vrefに対する下側の電極9の接続状態を検知する断線検知手段16としては、図4に示すように下側の電極9から基準電圧Vrefへの接続経路17に切換手段18を設け、下側の電極9を制御IC2の動作電圧VHやグランド電圧VLや基準電圧Vrefといった異なる電圧に切り換え接続できる構成とする。
【0021】
この構成によれば、通常動作における角速度センサの出力15は図5の(a)に示すように角速度が印加されない状態においては基準電圧Vrefの定電圧信号19が出力され、角速度の印加状態においては基準電圧Vrefを中心とし振幅が動作電圧V1とグランド電圧V2となる正弦波信号20が出力される。そして、(b)に実線21で示す切り換えタイミングで下側の電極9の接続を基準電圧Vrefから動作電圧VH、グランド電圧VL、基準電圧Vrefというように切り換え接続することで、断線故障がない場合で角速度が非印加の状態では(c)の実線22で示すように定電圧の信号が切換手段18の切り換えに応じて変動し、また角速度が印加された状態においては(d)の実線23で示すように正弦波の信号が切換手段18の切り換えに応じて変動する。また、断線故障がある場合には、切換手段18を切り換えたとしても浮き電極となった下側の電極9の電圧変動がないため、角速度の印加状態でも非印加状態でもセンサ出力は基準電圧Vrefの変動の影響を受けない。従って、これらの信号変動を検出することで下側の電極9から基準電圧Vrefに至る接続経路17の断線故障が検出でき、結果的に角速度センサ装置の検出精度が向上できるのである。
【0022】
なお、上述したように基準電圧Vrefと異なる電圧を駆動回路11や検出回路12の動作に要する動作電圧VHやグランド電圧VLを用いることで故障検知用の電圧を別途生成する必要がない。
【0023】
また、別電圧として動作電圧VHとグランド電圧VLの2つの別電圧を用いて、これらの切り換えタイミングを図5に示したように4分の1波長周期で行うことで効率よく故障検知が出来るのである。
【0024】
なお、上述した実施の形態1においては下側の電極9を基準電圧Vrefに接続し上側の電極8を駆動回路11或いは検出回路12に接続した構成を挙げて説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、基準電圧Vrefとこれに接続される電圧との接続経路17に断線検知手段16を設けることで同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2〜4に記載の発明について説明する。
【0026】
図6は本発明の実施の形態2における角速度センサ装置の回路ブロック図である。図7は同角速度センサにおける駆動回路のリミッター手段の回路図である。
【0027】
なお、実施の形態1の図2に同じものは、同一符号を付し説明を省略する。
【0028】
実施の形態1と相違するのは、駆動回路32がAD変換器33、バンドパスフィルタ34、AGC回路35、DA変換器36およびリミッター手段37とにより構成されている点である。そして、このリミッター手段37は、図7に示すように、抵抗38と、第1のダイオード39および第2のダイオード40を直列に接続するように構成されている。前記第1のダイオード39は逆方向バイアスになるように、アノードを低電位V2に接続するとともに、カソードを抵抗38に接続している。また、第2のダイオード40も逆方向バイアスになるように、カソードを高電位V1に接続するとともに、アノードを抵抗38に接続している。そうすることにより、リミッター手段37からセンサ素子1における駆動手段の電極8へは、V2以下あるいはV1以上の電圧が印加されないものである。
【0029】
以上のように構成された本発明の実施の形態2における角速度センサ装置について、次にその動作を説明する。
【0030】
制御IC2からセンサ素子1における駆動手段の電極8に駆動信号が入力されると、センサ素子1が駆動方向に駆動振動する。そして、センサ素子1の駆動振動に応じてセンサ素子1におけるモニタ手段5aから駆動回路32におけるAD変換器33にモニタ信号28が入力され、AD変換器33により、アナログ信号からなる出力信号がデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号からバンドパスフィルタ34により、ノイズ信号を除去して、さらに、AGC回路35により、検出した信号が小さい場合には、センサ素子1の駆動手段における電極8に大きな信号を入力して、駆動振動の振幅を増加させ、一方、検出した信号が大きい場合には、センサ素子1の駆動手段における電極8に小さな信号を入力して、駆動振動の振幅を減少させるものである。そして、この状態において角速度センサ装置に角速度が付加されると、センサ素子1にコリオリ力が発生し、検出手段における電極8に電荷が発生する。そして、この電荷を制御IC2における検出回路12により信号処理して、角速度の信号を出力するものである。
【0031】
ここで、制御IC2における動作電圧VH、グランド電圧VLおよび基準電圧Vrefのいずれか一つと切換手段18を介してセンサ素子1駆動手段における電極9に接続し、基準電圧Vrefと接続経路17との接続状態を検出する場合を説明する。
【0032】
通常の使用状態においては、センサ素子1の駆動振動に伴い駆動回路32から図8(a)に示すような正弦波形からなる出力信号が出力される。
【0033】
そして、図8(b)に示すように、駆動回路32からセンサ素子1における駆動手段の電極8に信号が付加されていない状態においては、センサ素子1が駆動振動しない。そうすると、切換手段18の切換えに応じて、接続経路17を介して駆動手段における電極9の電位が図8(b)に示すように変化する。そして、センサ素子1からモニター信号として、図8(c)に示す信号が出力される。
【0034】
一方、通常の使用状態において、切換手段18からセンサ素子1の駆動手段における電極9に動作電圧VH、グランド電圧VLおよび基準電圧Vrefを切換えることにより、順次入力すると、センサ素子1からモニター信号として、図8(d)に示す信号が出力される。
【0035】
ここで、さらに、センサ素子1からの出力信号が駆動回路32に加わることにより、動作する場合を考える。切換手段18をグランド電圧VLに接続した状態で角速度が付加されると、図8(e)に示すように、センサ素子1からのモニター信号41が急激に低下する。そうすると、図8(f)に示す駆動回路32からセンサ素子1に入力される信号42が小さくなる。そして、図8(e)に示すように、センサ素子1から出力されるモニター信号43が小さくなり、駆動回路32におけるAGC回路35の働きにより、駆動回路32からセンサ素子1に過大な信号44が入力され、センサ素子1が過大な振幅で加振され、センサ素子1の縦弾性係数が変化し、角速度センサ装置の出力特性が変動してしまう恐れがある。そこで、本発明の実施の形態2における角速度センサ装置においては、駆動回路32に、リミッター手段37を設け、このリミッター手段37により、図8(g)に示すように、駆動回路32からセンサ素子1に入力される信号をV1以上の高電位あるいはV2以下の低電位にならないように制限することにより、センサ素子1が過大な振幅で加振されることを防止することができるものである。
【0036】
なお、本発明の実施の形態2における角速度センサ装置においては、制御IC2の基準電圧Vrefに対する下側の電極9の接続状態を検知する断線検知手段16としては、図6に示すように、下側の電極9から基準電圧Vrefへの接続経路17に切換手段18を設け、下側の電極9を制御IC2の動作電圧VHやグランド電圧VLや基準電圧Vrefといった異なる電圧に切り換え接続できる構成としたが、図9に示すように、断線検知手段45に可変抵抗器46を設け、モニタ手段5aの他方の電極9に基準電圧Vrefと異なる電圧を印加するようにしても同様の効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、角速度センサ装置の検出精度を向上させることが出来るという効果を有し、特に小型の角速度センサ装置において有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 センサ素子
2 制御IC
5 駆動手段
5a モニタ手段
6 検出手段
7 圧電体層
8,9 電極
10 駆動アーム
11,32 駆動回路
12 検出回路
14 検出信号
16,45 断線検知手段
17 接続経路
18 切換手段
35 AGC回路
37 リミッター手段
46 可変抵抗器
Vref 基準電圧
VH 動作電圧
VL グランド電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型のセンサ素子を用いた角速度センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に角速度センサ装置は図1に示すように、角速度の印加により生じるコリオリ力を電気信号に変換し出力する振動型のセンサ素子1と、このセンサ素子1を基本振動させるとともにセンサ素子1から出力された検出信号から角速度信号を形成する制御IC2とをパッケージ3の内部に収容しリッド4で封口した構造となっている。
【0003】
また、センサ素子1は図2に示すように、センサ素子1を基本振動させる駆動手段5やコリオリ力を電気信号に変換する検出手段6を有しており、これら駆動手段5や検出手段6は図3に示すようにPZTからなる圧電体層7を電極8,9で挟み込んだ積層体により構成され、駆動手段5であれば上側の電極8に対して制御IC2から駆動信号が印加され、下側の電極9は制御IC2から駆動信号が印加されるか制御IC2にて形成される基準電圧に接続される。検出手段6であれば下側の電極9が基準電圧に接続され、上側の電極8から制御IC2に検出信号が出力される。
【0004】
そして、このような角速度センサ装置における故障検知は、従来、駆動信号や検出信号といった上側の電極8に起因する信号を検出し判定していた。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−193459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの故障検知を行う中で、故障でないとする診断結果の下で検出信号が不安定となる現象が生じ、結果として角速度センサ装置としての検出精度が劣化してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、角速度センサ装置の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明は、センサ素子とこれを制御する制御ICとからなる角速度センサ装置において、センサ素子に設けられる検出手段は圧電体層を電極で挟み込んだ積層体で形成するとともに、一方の電極を検出回路に接続し、他方の電極を基準電圧に接続した構成において、他方の電極から基準電圧に至る接続経路に断線検知手段を設けた構成とした。
【発明の効果】
【0010】
この構成により本発明は、角速度センサ装置の検出精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における角速度センサ装置を示す分解斜視図
【図2】同角速度センサ装置を構成するセンサ素子を示す上面図
【図3】同センサ素子に設けられた電極の断面図
【図4】同角速度センサ装置のシステム構成を示すブロック図
【図5】同角速度センサ装置の検出信号を示す出力波形図
【図6】本発明の実施の形態2における角速度センサ装置の回路ブロック図
【図7】同駆動回路のリミッター手段の回路図
【図8】同角速度センサ装置の動作状態を示す出力波形図
【図9】本発明の実施の形態2におけるなお書き記載の回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1に記載の発明について説明する。なお、上述した従来の技術と同様の構成については同じ符号を付して説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態1の角速度センサ装置を示したものであり、その基本構造は振動型の角速度センサ素子1と、この角速度センサ素子1を制御する制御IC2とをセラミックからなるパッケージ3の内部に配置しリッド4で封止した構造としている。
【0014】
センサ素子1は図2に示すように、シリコンからなる一対の駆動アーム10を有する音叉型基板に駆動アーム10を基本振動させる駆動手段5と、基本振動の振幅量を監視するモニタ手段5aと角速度の印加に伴うコリオリ力による駆動アーム10の撓み成分を検出する検出手段6を有している。また、センサ素子1に設けられた駆動手段5やモニタ手段5aや検出手段6は、それぞれ図3に示すようにAuからなる上側の電極8とPtからなる下側の電極9と、これらの間に配置されたPZTからなる圧電体層7により形成された積層体である。
【0015】
制御IC2は図4に示す如く駆動回路11と検出回路12から構成され、駆動回路11はセンサ素子1における基本振動が一定の振幅となるよう駆動手段5に印加する駆動信号13を形成する部分であり、特に図示はしていないがAGCや増幅器により構成されている。検出回路12はセンサ素子1の検出手段6から出力される検出信号14からノイズ成分などの不要成分を除去し角速度信号15を形成する部分であり、特に図示していないが検波回路やフィルタ回路により構成されている。
【0016】
ここで、駆動アーム10を基本振動させる場合は駆動手段の下側の電極9を図4に示すように制御IC2で形成する基準電圧Vrefに接続した状態で上側の電極8に駆動回路11からの駆動信号13を印加することで、駆動信号13の電圧が基準電圧Vrefより大きい場合、圧電体層7に積層方向における圧縮力が働き駆動手段5が駆動アーム10の延伸方向に伸び、駆動信号13の電圧が基準電圧Vrefより小さい場合、圧電体層7に積層方向における引張力が働き駆動手段5が駆動アーム10の延伸方向に縮むもので、この駆動手段5の伸縮を制御することで駆動アーム10を図2におけるY軸方向に一定の振幅で基本振動させることができる。
【0017】
また、角速度の検出にあたっては、図2におけるZ軸方向に働くコリオリ力に伴う駆動アーム10の撓み成分により圧電体層7に伸びが生じた場合、上側の電極8に基準電圧Vrefより大きい電圧V1が形成され、また圧電体層7に縮みが生じた場合、上側の電極8に基準電圧Vrefより小さい電圧V2が形成され、図4に示す検出信号14としては基準電圧Vrefを中心とした正弦波が検出回路12に出力される。
【0018】
そして、この角速度センサ装置においては角速度センサの故障検知として、駆動信号13や検出信号14といった上側の電極8に対する入出力信号を用いた従来の故障検知に加え、制御IC2の基準電圧Vrefに対する下側の電極9の接続状態を検出する断線検知手段16を付加したのである。
【0019】
すなわち、下側の電極9は上述したように制御IC2の基準電圧Vrefに接続されて上側の電極8に電圧の比較基準を形成するものであるが、この下側の電極9が接続不良により基準電圧Vrefと非接続となった場合、この下側の電極9は単なる浮き電極となってしまい周囲の電圧環境に影響されてしまうことになるがその電圧変化が小さく従来の上側の電極8に入出力する信号(駆動信号13や検出信号14)を用いた故障検知では検出できなかった。しかし、この下側の電極9と制御IC2の基本電圧との接続状態を判別する断線検知手段16を設けることで、下側の電極9の断線故障を検出して故障モードの一つとして判別することができ、角速度センサ装置の検出精度が向上できるのである。
【0020】
なお、制御IC2の基準電圧Vrefに対する下側の電極9の接続状態を検知する断線検知手段16としては、図4に示すように下側の電極9から基準電圧Vrefへの接続経路17に切換手段18を設け、下側の電極9を制御IC2の動作電圧VHやグランド電圧VLや基準電圧Vrefといった異なる電圧に切り換え接続できる構成とする。
【0021】
この構成によれば、通常動作における角速度センサの出力15は図5の(a)に示すように角速度が印加されない状態においては基準電圧Vrefの定電圧信号19が出力され、角速度の印加状態においては基準電圧Vrefを中心とし振幅が動作電圧V1とグランド電圧V2となる正弦波信号20が出力される。そして、(b)に実線21で示す切り換えタイミングで下側の電極9の接続を基準電圧Vrefから動作電圧VH、グランド電圧VL、基準電圧Vrefというように切り換え接続することで、断線故障がない場合で角速度が非印加の状態では(c)の実線22で示すように定電圧の信号が切換手段18の切り換えに応じて変動し、また角速度が印加された状態においては(d)の実線23で示すように正弦波の信号が切換手段18の切り換えに応じて変動する。また、断線故障がある場合には、切換手段18を切り換えたとしても浮き電極となった下側の電極9の電圧変動がないため、角速度の印加状態でも非印加状態でもセンサ出力は基準電圧Vrefの変動の影響を受けない。従って、これらの信号変動を検出することで下側の電極9から基準電圧Vrefに至る接続経路17の断線故障が検出でき、結果的に角速度センサ装置の検出精度が向上できるのである。
【0022】
なお、上述したように基準電圧Vrefと異なる電圧を駆動回路11や検出回路12の動作に要する動作電圧VHやグランド電圧VLを用いることで故障検知用の電圧を別途生成する必要がない。
【0023】
また、別電圧として動作電圧VHとグランド電圧VLの2つの別電圧を用いて、これらの切り換えタイミングを図5に示したように4分の1波長周期で行うことで効率よく故障検知が出来るのである。
【0024】
なお、上述した実施の形態1においては下側の電極9を基準電圧Vrefに接続し上側の電極8を駆動回路11或いは検出回路12に接続した構成を挙げて説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、基準電圧Vrefとこれに接続される電圧との接続経路17に断線検知手段16を設けることで同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2〜4に記載の発明について説明する。
【0026】
図6は本発明の実施の形態2における角速度センサ装置の回路ブロック図である。図7は同角速度センサにおける駆動回路のリミッター手段の回路図である。
【0027】
なお、実施の形態1の図2に同じものは、同一符号を付し説明を省略する。
【0028】
実施の形態1と相違するのは、駆動回路32がAD変換器33、バンドパスフィルタ34、AGC回路35、DA変換器36およびリミッター手段37とにより構成されている点である。そして、このリミッター手段37は、図7に示すように、抵抗38と、第1のダイオード39および第2のダイオード40を直列に接続するように構成されている。前記第1のダイオード39は逆方向バイアスになるように、アノードを低電位V2に接続するとともに、カソードを抵抗38に接続している。また、第2のダイオード40も逆方向バイアスになるように、カソードを高電位V1に接続するとともに、アノードを抵抗38に接続している。そうすることにより、リミッター手段37からセンサ素子1における駆動手段の電極8へは、V2以下あるいはV1以上の電圧が印加されないものである。
【0029】
以上のように構成された本発明の実施の形態2における角速度センサ装置について、次にその動作を説明する。
【0030】
制御IC2からセンサ素子1における駆動手段の電極8に駆動信号が入力されると、センサ素子1が駆動方向に駆動振動する。そして、センサ素子1の駆動振動に応じてセンサ素子1におけるモニタ手段5aから駆動回路32におけるAD変換器33にモニタ信号28が入力され、AD変換器33により、アナログ信号からなる出力信号がデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号からバンドパスフィルタ34により、ノイズ信号を除去して、さらに、AGC回路35により、検出した信号が小さい場合には、センサ素子1の駆動手段における電極8に大きな信号を入力して、駆動振動の振幅を増加させ、一方、検出した信号が大きい場合には、センサ素子1の駆動手段における電極8に小さな信号を入力して、駆動振動の振幅を減少させるものである。そして、この状態において角速度センサ装置に角速度が付加されると、センサ素子1にコリオリ力が発生し、検出手段における電極8に電荷が発生する。そして、この電荷を制御IC2における検出回路12により信号処理して、角速度の信号を出力するものである。
【0031】
ここで、制御IC2における動作電圧VH、グランド電圧VLおよび基準電圧Vrefのいずれか一つと切換手段18を介してセンサ素子1駆動手段における電極9に接続し、基準電圧Vrefと接続経路17との接続状態を検出する場合を説明する。
【0032】
通常の使用状態においては、センサ素子1の駆動振動に伴い駆動回路32から図8(a)に示すような正弦波形からなる出力信号が出力される。
【0033】
そして、図8(b)に示すように、駆動回路32からセンサ素子1における駆動手段の電極8に信号が付加されていない状態においては、センサ素子1が駆動振動しない。そうすると、切換手段18の切換えに応じて、接続経路17を介して駆動手段における電極9の電位が図8(b)に示すように変化する。そして、センサ素子1からモニター信号として、図8(c)に示す信号が出力される。
【0034】
一方、通常の使用状態において、切換手段18からセンサ素子1の駆動手段における電極9に動作電圧VH、グランド電圧VLおよび基準電圧Vrefを切換えることにより、順次入力すると、センサ素子1からモニター信号として、図8(d)に示す信号が出力される。
【0035】
ここで、さらに、センサ素子1からの出力信号が駆動回路32に加わることにより、動作する場合を考える。切換手段18をグランド電圧VLに接続した状態で角速度が付加されると、図8(e)に示すように、センサ素子1からのモニター信号41が急激に低下する。そうすると、図8(f)に示す駆動回路32からセンサ素子1に入力される信号42が小さくなる。そして、図8(e)に示すように、センサ素子1から出力されるモニター信号43が小さくなり、駆動回路32におけるAGC回路35の働きにより、駆動回路32からセンサ素子1に過大な信号44が入力され、センサ素子1が過大な振幅で加振され、センサ素子1の縦弾性係数が変化し、角速度センサ装置の出力特性が変動してしまう恐れがある。そこで、本発明の実施の形態2における角速度センサ装置においては、駆動回路32に、リミッター手段37を設け、このリミッター手段37により、図8(g)に示すように、駆動回路32からセンサ素子1に入力される信号をV1以上の高電位あるいはV2以下の低電位にならないように制限することにより、センサ素子1が過大な振幅で加振されることを防止することができるものである。
【0036】
なお、本発明の実施の形態2における角速度センサ装置においては、制御IC2の基準電圧Vrefに対する下側の電極9の接続状態を検知する断線検知手段16としては、図6に示すように、下側の電極9から基準電圧Vrefへの接続経路17に切換手段18を設け、下側の電極9を制御IC2の動作電圧VHやグランド電圧VLや基準電圧Vrefといった異なる電圧に切り換え接続できる構成としたが、図9に示すように、断線検知手段45に可変抵抗器46を設け、モニタ手段5aの他方の電極9に基準電圧Vrefと異なる電圧を印加するようにしても同様の効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、角速度センサ装置の検出精度を向上させることが出来るという効果を有し、特に小型の角速度センサ装置において有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 センサ素子
2 制御IC
5 駆動手段
5a モニタ手段
6 検出手段
7 圧電体層
8,9 電極
10 駆動アーム
11,32 駆動回路
12 検出回路
14 検出信号
16,45 断線検知手段
17 接続経路
18 切換手段
35 AGC回路
37 リミッター手段
46 可変抵抗器
Vref 基準電圧
VH 動作電圧
VL グランド電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段とモニタ手段と検出手段とを設けたセンサ素子と、前記モニタ手段からのモニタ信号が入力され前記駆動手段に振動を励起させる駆動信号を出力するAGC回路を有する駆動回路と、前記検出手段から出力された検出信号から角速度信号を形成する検出回路と、前記センサ素子に基準電圧を印加する基準電圧回路とを備えた角速度センサ装置であって、前記駆動手段、前記モニタ手段および前記検出手段はそれぞれ圧電体層を一対の電極で挟み込んだ積層体により構成され、前記駆動手段の電極の少なくとも一方の電極を前記駆動回路に接続し、前記モニタ手段の電極の一方を前記駆動回路に接続し、前記検出手段の電極の一方を前記検出回路に接続し、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極を前記基準電圧回路に接続した構成において、前記検出手段の他方の電極に前記基準電圧または別電圧を印加できる断線検知手段を設けたことを特徴とする角速度センサ装置。
【請求項2】
駆動手段とモニタ手段と検出手段とを設けたセンサ素子と、前記モニタ手段からのモニタ信号が入力され前記駆動手段に振動を励起させる駆動信号を出力するAGC回路を有する駆動回路と、前記検出手段から出力された検出信号から角速度信号を形成する検出回路と、前記センサ素子に基準電圧を印加する基準電圧回路とを備えた角速度センサ装置であって、前記駆動手段、前記モニタ手段および前記検出手段はそれぞれ圧電体層を一対の電極で挟み込んだ積層体により構成され、前記駆動手段の電極の少なくとも一方の電極を前記駆動回路に接続し、前記モニタ手段の電極の一方を前記駆動回路に接続し、前記検出手段の電極の一方を前記検出回路に接続し、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極を前記基準電圧回路に接続した構成において、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極に前記基準電圧または別電圧を印加できる断線検知手段を設けたことを特徴とする角速度センサ装置。
【請求項3】
断線検知手段は、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極に印加する電圧を可変にし、基準電圧とは異なる電圧を印加出来ることを特徴とする請求項2に記載の角速度センサ装置。
【請求項4】
前記駆動回路に、駆動手段における一方の電極に印加する駆動信号の電圧を制限するリミッター手段を設けた請求項2に記載の角速度センサ。
【請求項1】
駆動手段とモニタ手段と検出手段とを設けたセンサ素子と、前記モニタ手段からのモニタ信号が入力され前記駆動手段に振動を励起させる駆動信号を出力するAGC回路を有する駆動回路と、前記検出手段から出力された検出信号から角速度信号を形成する検出回路と、前記センサ素子に基準電圧を印加する基準電圧回路とを備えた角速度センサ装置であって、前記駆動手段、前記モニタ手段および前記検出手段はそれぞれ圧電体層を一対の電極で挟み込んだ積層体により構成され、前記駆動手段の電極の少なくとも一方の電極を前記駆動回路に接続し、前記モニタ手段の電極の一方を前記駆動回路に接続し、前記検出手段の電極の一方を前記検出回路に接続し、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極を前記基準電圧回路に接続した構成において、前記検出手段の他方の電極に前記基準電圧または別電圧を印加できる断線検知手段を設けたことを特徴とする角速度センサ装置。
【請求項2】
駆動手段とモニタ手段と検出手段とを設けたセンサ素子と、前記モニタ手段からのモニタ信号が入力され前記駆動手段に振動を励起させる駆動信号を出力するAGC回路を有する駆動回路と、前記検出手段から出力された検出信号から角速度信号を形成する検出回路と、前記センサ素子に基準電圧を印加する基準電圧回路とを備えた角速度センサ装置であって、前記駆動手段、前記モニタ手段および前記検出手段はそれぞれ圧電体層を一対の電極で挟み込んだ積層体により構成され、前記駆動手段の電極の少なくとも一方の電極を前記駆動回路に接続し、前記モニタ手段の電極の一方を前記駆動回路に接続し、前記検出手段の電極の一方を前記検出回路に接続し、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極を前記基準電圧回路に接続した構成において、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極に前記基準電圧または別電圧を印加できる断線検知手段を設けたことを特徴とする角速度センサ装置。
【請求項3】
断線検知手段は、前記モニタ手段および前記検出手段の他方の電極に印加する電圧を可変にし、基準電圧とは異なる電圧を印加出来ることを特徴とする請求項2に記載の角速度センサ装置。
【請求項4】
前記駆動回路に、駆動手段における一方の電極に印加する駆動信号の電圧を制限するリミッター手段を設けた請求項2に記載の角速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−164099(P2011−164099A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7453(P2011−7453)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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