説明

解体作業機

【課題】被解体物を構成する1つの部材をもう1つの部材から引き離し分離することができる解体作業機を提供する。
【解決手段】少なくとも2つ部材で結合された被解体物を解体し分別する解体作業機であって、走行体1と、この走行体1に旋回可能に設けた上部旋回体2と、この上部旋回体2に俯仰可能に装着した多関節形式の作業腕とこの作業腕の先端に設けられ前記被解体物の一方の部材を保持する作業具とからなる第1の作業腕6と、前記上部旋回体2の前方で前記第1の作業腕6とは運転室を挟んで左右反対側に揺動可能に設けた揺動装置8と、この揺動装置8に、前記上部旋回体の前後方向軸線回りに回動可能に設けた回動装置9と、この回動装置に俯仰可能に装着した多関節形式の作業腕とこの作業腕の先端に設けられ前記被解体物の他方の部材を把持する作業具とからなる第2の作業腕7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設廃材等の産業廃棄物を解体処理するために用いる解体作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
解体作業機の一例として、走行体と、この走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体に基端が支持され、先端に作業アタッチメントを有する第1の作業機と、上記走行体に取り付けられた第2の作業機とを備え、第2の作業機を、走行体に対し揺動体を介して上下方向に揺動可能に取り付けるとともに、この第2の作業機と揺動体との間に、第2の作業機を揺動体に対し旋回可能にするための旋回装置を設け、第1の作業機と第2の作業機とで被解体物を引きちぎる場合、第1の作業機で被解体物を保持したまま、第2の作業機の揺動と旋回との組み合わせにより、被解体物を引きちぎることもできるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、解体作業機の他の例として、走行体と、この走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体に基端が支持され、先端に把持具を有する作業アームと、上記走行体に取り付けられたクランプアームとを備え、このクランプアームで被解体物を把持固定し、作業アームに設けた把持具によって、被解体物を構成する部品を被解体物から分解するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−9355号公報
【特許文献2】特開2005−185975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業廃棄物の内、建設系の産業廃棄物として、例えば、木枠に嵌め込み固定されたアルミ製の窓枠、鉄筋が入り込んだコンクリート等のものが発生する。これらのような少なくとも2つの部材が結合した建設系の産業廃棄物は、それらの部材を解体して分別し、リサイクル又は廃棄処理する必要がある。
【0006】
このため、例えば、上述した木枠に嵌め込み固定されたアルミ製の窓枠においては、アルミ製の窓枠を木枠から、又は木枠をアルミ製の窓枠から分離したりする等の解体処理作業が要求されている。
【0007】
この種の解体処理作業において、アルミ製の窓枠又は木枠を、木枠又はアルミ製の窓枠からそれぞれ引き離す場合、アルミ製の窓枠又は木枠を、それぞれ木枠、又はアルミ製の窓枠に対して横方向、或いは斜め上方に移動させて引き剥がす必要があるが、特許文献1に記載の発明では、第2の作業機の揺動方向が上下方向に限定されるため、この種の解体処理作業には不向きである。
【0008】
このため、上記の解体処理作業を行う場合、作業員による人力でこれを処理するか、又は、特許文献2に記載の発明のように、走行体に被解体物を保持するクランプアームを備えた建設機械を利用し、クランプアームにより被解体物を保持するとともに、作業アームの先端に設けた把持具を有する把持具でアルミ製の窓枠又は鉄筋を把持し、建設機械の旋回体を旋回させて、アルミ製の窓枠又は木枠をそれぞれ引き離す作業を行わざるを得ない状況である。
【0009】
上記の作業における人力での作業では、その処理作業に多大な時間を有するとともに、作業人員の確保、及び安全上の問題がある。また、上記の建設機械を利用する作業では、建設機械の上部旋回体を旋回させるため、作業腕(アーム)に捻り力が作用し、好ましい作業ではない。
【0010】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、少なくとも2つの部材が結合した被解体物から1つの部材を容易に引き離し分離することができる解体作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、少なくとも2つ部材で結合された被解体物を解体し分別する解体作業機であって、走行体と、この走行体に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に装着した多関節形式の作業腕とこの作業腕の先端に設けられ前記被解体物の一方の部材を保持する作業具とからなる第1の作業腕と、前記上部旋回体の前方で前記第1の作業腕とは運転室を挟んで左右反対側に揺動可能に設けた揺動装置と、この揺動装置に、前記上部旋回体の前後方向軸線回りに回動可能に設けた回動装置と、この回動装置に俯仰可能に装着した多関節形式の作業腕とこの作業腕の先端に設けられ前記被解体物の他方の部材を把持する作業具とからなる第2の作業腕とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記揺動装置は、揺動装置の本体と、この本体の上下方向それぞれに設けた揺動連結用ブラケットと、前記上部旋回体側に設けた固定用ブラケットと、この固定用ブラケットと前記揺動連結用ブラケットとを連結するピン軸と、前記揺動連結用ブラケットと前記上部旋回体との間に設けた揺動用のシリンダとを備えたことを特徴とする。
【0013】
さらに、第3の発明は、第2の発明において、前記回動装置は、前記揺動装置側に固定した内筒と、前記第2の作業腕のブームの基部ブラケット側に固定した外筒と、この外筒と前記内筒との間に設けた軸受と、前記外筒の外周に設けたブラケットと、このブラケットと前記揺動装置側との間に設けたシリンダとを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記揺動装置、及び前記回動装置は、その駆動手段として油圧モータを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被解体物を構成する少なくとも2つの結合部材における1つの部材をもう1つの部材から引き離し分離することができるので、この種の解体分別作業の処理効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の解体作業機の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図4は、本発明の解体作業機の一実施の形態を示すもので、図1は本発明の解体作業機の一実施の形態を示す斜視図、図2は図1に示す本発明の解体作業機の一実施の形態を構成する第2の作業腕を拡大して示す斜視図、図3及は図2に示す本発明の解体作業機の一実施の形態における第2の作業腕を構成する揺動装置及び回動装置を解体作業機の後ろ側方から見た拡大斜視図、図4及は図2に示す本発明の解体作業機の一実施の形態における第2の作業腕を構成する揺動装置及び回動装置を解体作業機の前側方から見た拡大斜視図である。
【0017】
本発明の解体作業機は、図1に示すように、走行体フレーム1aとこの走行体フレーム1aの側部にそれぞれ設けた無限軌道履帯1bとからなる走行体1と、この走行体1上に旋回可能に取り付けた上部旋回体2とを備えている。上部旋回体2の前方左側には、運転室3が取り付けられている。上部旋回体2の後方には、エンジンおよび油圧ポンプを含む動力源装置4とカウンタウエイト5が設けられている。なお、以下の説明では、図1乃至図4に示すように前後左右および上下の方向を規定して、これらの方向に基づいて説明する。
【0018】
旋回体2の前方右側には、第1の作業腕6が、また、上部旋回体2の前方左側には第2の作業腕7がそれぞれ装設されている。
まず、第1の作業腕6の構成を図1を用いて説明すると、第1の作業腕6は、旋回体2の前方右側にシリンダ61により俯仰動(上下動)可能に装着したブーム62と、このブーム62の先端にシリンダ63により回動(上下動)可能に設けたアーム64と、このアーム64の先端にシリンダ65により回動(上下動)可能に設けた旋回装置66と、この旋回装置66に旋回可能に設けた開閉爪を有する第1作業具67を備え、多関節形式の作業腕となっている。これにより、第1の作業腕6の先端の第1作業具67は、上下方向に移動可能であり、また前後方向軸線回りの旋回可能である。
この第1の作業腕6は、例えば、廃棄物を把持し移送したり、部材の引き離し作業時に、部材が埋め込まれた一方の部材を把持し固定保持するために用いられる。
【0019】
次に、第2の作業腕7部分の構成を、図1及び図2を用いて説明すると、第2の作業腕7の基部には、上部旋回体2の前方左側に設けられ、左右方向に揺動する揺動装置8と、この揺動装置8の前方側に設けられ、前後方向軸線回りに回動する回動装置9とが設けられている。
【0020】
第2の作業腕7の基部は、回動装置9に装設されており、回動装置9の前方側にシリンダ71によって回動可能に設けた第1のブーム72と、この第1のブーム72の先端にシリンダ73によって回動可能に設けた第2のブーム74と、この第2のブーム74の先端にシリンダ75によって回動可能に設けたアーム76と、このアーム76の先端にシリンダ77によって回動可能に設けた旋回装置78と、この旋回装置78に旋回可能に設けた第2作業具79を備え、多関節形式の作業腕となっている。
【0021】
これにより、第2の作業腕7における第1のブーム72、第2のブーム74、アーム76及び第2作業具79は、揺動装置8によって上下方向の軸線回りに揺動可能であり、また旋回装置9により前後方向の軸線回りに旋回可能である。更に、第2作業具79は、旋回装置78により、アーム76の先端で旋回可能である。
この第2の作業腕7は、例えば、部材の引き離し作業時に、部材内に埋め込まれた一方の部材を他方の部材内から引き離するために用いられる。
【0022】
次に、前述した第2の作業腕7に設けた揺動装置8及び回動装置9の構成を、図3及び図4を用いて説明する。図3及び図4において、図1及び図2と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
まず、揺動装置8の詳細構成を説明すると、揺動装置8の本体81には、その上部旋回体2側に上下方向に2つの揺動連結用のブラケット82が設けられている。このブラケット82は、垂直方向のピン軸83によって旋回体2側のブラケット21に揺動可能に連結されている。また、揺動装置8の本体81の内側側面には、揺動シリンダ連結用のブラケット84が設けられている。このブラケット84には、揺動用のシリンダ85のピストンロッド86の先端が連結されている。揺動用のシリンダ85の基端部は、上部旋回体2に連結されている。この構成により、揺動装置8の本体81を、左右方向に揺動させることができる。
【0023】
次に、回動装置9の詳細構成を説明すると、揺動装置8の本体81の前方面に固定され、前後方向の軸線を有する円筒状の内筒91と、第2の作業腕7における第1のブーム72の基部ブラケット72Aに固定され、前後方向の軸線を有する円筒状の外筒92と、この外筒92の内周面と内筒91の外周面との間に設けた軸受93と、外筒92を内筒91に対して回動させる回動用のシリンダ94とを備えている。このシリンダ94は揺動装置8の本体81の上面に設けたブラケット95に揺動可能に連結され、そのピストンロッド96の先端は、第2の作業腕7における第1のブーム72の基部ブラケット72Aに設けたブラケット97に連結されている。このブラケット97には、外筒92が固定されている。前述したブラケット95及びブラケット97は、揺動装置8の本体81、及び第1のブーム72の基部ブラケット72Aにそれぞれ一体に設けたが、溶接等によりそれぞれ固定することも可能である。
【0024】
次に、第2の作業腕7における第2作業具79の詳細な構成を、図2を用いて説明する。
第2作業具79は、作業具本体791と、中間部がピン軸792により作業具本体791に開閉可能に設けられた一対の把持爪793と、この把持爪793の端部間に連結した開閉操作用のシリンダ794とで構成されている。
【0025】
次に、上述した本発明の解体作業機の一実施の形態による解体処理作業の一例を、図5を用いて説明する。
図5は、本発明の解体作業機の一実施の形態によって、木枠Wに組み込まれたアルミ製の窓枠Aを、木枠Wから切り離す作業を行う例を示してある。
まず、適宜のカッタによって、木枠Wに組み込まれたアルミ製の窓枠Aの一部を切断しておく。この状態の木枠Wに、本発明の解体作業機を位置決めした後、第1の作業腕6を操作し、その第1の作業具67によって、木枠Wを把持する。これにより、アルミ製の窓枠Aを組み込んでいる木枠Wは、固定状態になる。
【0026】
次に、揺動装置8、回動装置9及び第2の作業腕7を駆動操作して、第2の作業具79の先端を、前述した木枠Wに組み込まれたアルミ製の窓枠Aの切断部端部に略直角対向させたのち、更に、第2の作業具79の把持爪793を開き、第2の作業腕7を駆動操作して、第2の作業具79の把持爪793を閉じて、前述した木枠Wに組み込まれたアルミ製の窓枠Aの切断部端部を把持する。
【0027】
この状態で、図5に示すように、回動装置9によって、第2の作業腕7を上部旋回体2の左側に傾斜するように回動させれば、木枠Wに組み込まれたアルミ製の窓枠Aの切断部を、木枠Wから切り離し立ち上がらせることができる。その後、第2の作業腕7を斜め上方に移動させれば、アルミ製の窓枠Aには、アルミ製の窓枠Aを木枠Wから切り離すための引張り力が作用するので、木枠Wに組み込まれたアルミ製の窓枠Aを、木枠Wから切り離すことができる。その結果、木枠Wとアルミ製の窓枠Aとを、リサイクル物として分別することができる。
【0028】
なお、上述の実施の形態においては、木枠Wに組み込まれた長尺のアルミ製の窓枠Aを、木枠Wから切り離す作業について説明したが、長尺のアルミ製の窓枠Aに組み付けた長尺の木枠Wを、窓枠Aから切り離すことができる。また、その他の切り離し作業の例は、コンクリート内の鉄筋を、コンクリートから切り離す等の作業も可能である。
【0029】
上述したように、本発明の解体作業機においては、第2の作業腕7は作業対象物に対して、鉛直方向に作業のみならず、斜め方向、又は横方向からの作業(例えば、引張り力を加える作業等)を行うことができる。その結果、第2の作業腕7先端の第2の作業具79を、作業し易い方向に位置決めして、作業することができるので、各種の解体処理作業性を向上させることができる。また、各種の解体処理作業が可能であり、その汎用性が大である。
【0030】
なお、上述の実施の形態において、揺動装置8、及び回動装置9の駆動手段として、シリンダの直動形の駆動装置を用いたが、油圧モータ等の回転形の駆動装置を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の解体作業機の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の解体作業機の一実施の形態を構成する第2の作業腕を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2に示す本発明の解体作業機の一実施の形態における第2の作業腕を構成する揺動装置及び回動装置を解体作業機の後ろ側方から見た拡大斜視図である。
【図4】図2に示す本発明の解体作業機の一実施の形態における第2の作業腕を構成する揺動装置及び回動装置を解体作業機の前側方から見た拡大斜視図である。
【図5】本発明の解体作業機の一実施の形態における解体作業の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 走行体
2 上部旋回体
6 第1の作業腕
67 第1の作業具
7 第2の作業腕
79 第2の作業具
8 揺動装置
9 回動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つ部材で結合された被解体物を解体し分別する解体作業機であって、
走行体と、
この走行体に旋回可能に設けた上部旋回体と、
この上部旋回体に俯仰可能に装着した多関節形式の作業腕とこの作業腕の先端に設けられ前記被解体物の一方の部材を保持する作業具とからなる第1の作業腕と、
前記上部旋回体の前方で前記第1の作業腕とは運転室を挟んで左右反対側に揺動可能に設けた揺動装置と、
この揺動装置に、前記上部旋回体の前後方向軸線回りに回動可能に設けた回動装置と、
この回動装置に俯仰可能に装着した多関節形式の作業腕とこの作業腕の先端に設けられ前記被解体物の他方の部材を把持する作業具とからなる第2の作業腕と
を備えたことを特徴とする解体作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の解体作業機において、
前記揺動装置は、揺動装置の本体と、この本体の上下方向それぞれに設けた揺動連結用ブラケットと、前記上部旋回体側に設けた固定用ブラケットと、この固定用ブラケットと前記揺動連結用ブラケットとを連結するピン軸と、前記揺動連結用ブラケットと前記上部旋回体との間に設けた揺動用のシリンダとを備えたことを特徴とする解体作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の解体作業機において、
前記回動装置は、前記揺動装置側に固定した内筒と、前記第2の作業腕のブームの基部ブラケット側に固定した外筒と、この外筒と前記内筒との間に設けた軸受と、前記外筒の外周に設けたブラケットと、このブラケットと前記揺動装置側との間に設けたシリンダとを備えたことを特徴とする解体作業機。
【請求項4】
請求項1に記載の解体作業機において、
前記揺動装置、及び前記回動装置は、その駆動手段として油圧モータを用いたことを特徴とする解体作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−293230(P2009−293230A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146230(P2008−146230)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18〜20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト建設系産業廃棄物処理RTシステム(特殊環境用ロボット分野)次世代マニピュレータによる廃棄物分離・選別システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】